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ストーム・フロント

#ブルーアルカディア #世界樹嵐 #フォールン・シンクタンク

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#世界樹嵐
#フォールン・シンクタンク


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●まぶしいほどに、青く
 見果てぬ空ばかりの眺めを、飽いたと言えば贅沢だろうか。
 果てなき蒼は明るさばかりでなく、時に人を憂鬱にさせる。
 なぜならば。どうしようもない程透いた青色は人の生涯とはあまりに遠く、
 突き放すような冷たさも有するからだ。

 大袈裟と思うならば、見るがいい。
 飛空艇に乗る少女らは空の青さに目もくれず、生気のない目で甲板を見続けている。
 やせ細り、歯を折られ、擦り傷と枷の痕は痛々しく、生前まっとうな生涯を送れなかった事は想像に難くない。
 それは奴隷たちを取りまとめるエルフも同じだ。教えを守り、故郷の森ごと雲海に沈んだエルフの成れの果て……森や大地が助けてくれなかったからこそ、彼女たちは教えを棄て空賊に身をやつした。

 どこまでも青く突き刺さる空のただ中、こうこうと吹き荒れる風が耳を刺す。
 風が、大地が我らに何を残した。何も……この世への消える事なき憤りだけだ。
「……お前たち」
 一蓮托生となった同胞へ向け、船の主、蒼星のカエルラは呼びかける。
 眼前には徐々に近づく浮遊大陸の姿、これから自分達が乗っ取り、おそらくは――墓場となろう無機質な岩塊。
「降りるなら今のうちだ。ここまで来た気概に免じて見逃がそう。ただし辿り着いた以上は……運命を共にしてもらう」
 背に負うは甲板に大きく描かれた不可思議な紋様、儀式場。弛まぬ詠唱は間もなく実り、|世界樹の嵐《イルミンスール・グリード》を呼び起こす。

 誰も動くそぶりがないのを見て、カエルラは「ごめんなさい」と本来の口調で短く零す。それが女騎士の本性だと解っているから、空賊エルフたちは彼女の背に手を添えた。

 我ら、嵐の前線に立つ者なり。全てに怒り、全てを超え、見果てぬ空を|際限《おわり》なき雲海へと変える大願を抱く者なり。
 呪文の完遂と同時、みちりと肉が弾け、世界樹の触手が各々の胸から突き出した。こみあげる不快感と激痛を飼い慣らし、女たちは不敵に笑う。

 ――見よ。果て無き空の夢は、ここに潰える。

●怒れる騎士、嵐を駆りて
 その日集まった者たちへ向け、依頼を告げるリグの表情は危急を報せる時のそれだった。
「急いでブルーアルカディアへ向かって。浮遊大陸が沈められそうになってるの」
 屍人帝国の仕業ならば、確かに急ぐが対処は可能。だが、どうもそれだけではないらしい。
「難しいのを承知で、できれば今回は情けをかけず、敵を一人も討ち漏らさず掃討してほしいの」
 どういう事か。問う猟兵達は、今回事を起こしたのは魔導技術に秀でた研究大国、『フォールン・シンクタンク』だと知った。
 屍人帝国として蘇って以後、人道に背く実験ばかりを手がけてきた国家。研究の成果は次なる悪徳に捧げられる以上、情報収集を許せる相手ではない。
「……世界樹嵐、といえば伝わるかしら。彼らが今回狙ってるのは禁忌のユーベルコードの実験結果……それも、一個大隊をまるまる使い潰しての『実験』よ」
 死を恐れぬ軍勢が行う、大実験。研究成果が伝われば更なる不和の種を撒く以上、成就させてはならぬ事は明白だった。

 世界樹嵐の名を聞き慣れぬ者に、リグは「雲海を生み出す禁忌のユーベルコードよ」と短く説明した。術の使用者は樹木に肉体を食い破られる代わり、痛苦に耐え続ける限り雲海を生み出す能力を持つ。オブリビオンの発生源でもある雲海に長時間包まれたならば、人も大陸も、猟兵であっても消滅してオブリビオンと化してしまう。
「今回、大隊を率いるのは女騎士のカエルラ。彼女以下、部下も含めて全員が世界樹の意識を乗っ取られた状態で戦ってくるわ」
 意識だけでなく、樹木の触手による攻撃能力も付与されている。どうにかして猛攻を切り抜けるか、或いは強引に突破して発生源を断つ方が早いかもしれない。
 問題なのは軍勢の数と足並みが揃っている事だ。彼女たちは一致団結し、時に肉壁となってもこちらを阻み、時間を稼ぐだろう。
「厳しい事を言うけれど、時間をかけたらこっちの負けよ。既に大陸を浮かす天使核も人質にとられてるから、思うままにさせたら……大陸だけじゃなく、皆の命もないわ」
 突きつけられる厳しい条件。戦い慣れた猟兵も押し黙り、しばし思い沈黙が場を支配した。

 居合わせたある者がふと、リグに問う。現地に向かう足はどうすればいいのか、と。
「そうね……これまでの皆の努力のおかげで、勇士の皆さんにも力は……それだわ!」
 ポン、と手を打つ仕草。どうやらグリモアの転移だけでなく、現地で飛空艇を駆る勇士の力を借りる事ができそうだ。
「私の転移だけじゃ、皆を有利な場所までは送り込めないの。でも、飛空艇で乗り込むなら、降り立つ場所もある程度は自分で選べるわ!」
 あちらが徹底抗戦の構えである以上、いきなり本陣に乗り込む事は不可能だが、少なくとも配下を挟み撃ちにするぐらいの工夫はできるだろう。

 ひとまずの希望を得た事を確信し、リグはグリモアのゲートを開く。
 向こう側に開けるのは、上も下も見果てぬ蒼。オブリビオンにも事情はあれど、この空を血と涙で汚していい筈など、ありはしない。
「いってらっしゃい、気を付けてね!」
 明るい声に見送られ、あなたたちの意識は此度の戦場、空へと向かっていった。


晴海悠
 浮遊大陸が禁忌の術、世界樹嵐によって沈もうとしています。
 大隊を使い潰しての大実験。
 悲劇が悲劇を呼ぶ展開は、この青い空には似合わないはずです。
 ブルーアルカディアより、愛をこめて。此度の物語を、お送りいたします。

◇依頼概要
 飛空艇の力を借りて浮遊大陸に乗り込み、世界樹嵐の行使を食い止めて下さい。
 敵は死を恐れぬ大軍で、時に肉の壁となって決死の抵抗を試みるでしょう。
 時間を稼がれる手前、工夫が要ります。状況に対しどう動くか、あなたの答えをお聞かせ下さい。

◇章展開
 一章は『奴隷たち』が身を盾に抵抗します。情けをかけては思う壺、ただし倒さず無視すれば二章で挟撃に合うでしょう。
 二章は雲海に落ちた『空賊エルフ』との戦い。樹木の触手を操る追加能力を持ち、全員が術者を護るため命を賭します。
 三章は『蒼星のカエルラ』との戦い。世界樹嵐の術者たる彼女は、屍人帝国の天使核から供給を受け雲海を生み出し続けています。雲海に対抗するか、供給源を断つか、策を考えてください。

◇勇士の協力
 開戦時に降り立つポイントを選び、状況を多少優位に運ぶ事ができます。敵を挟撃する、術詠唱を終えてから飛び降りる……などが可能です(途中参加の方も初登場時に適用します)。
 なお、敵も決死で応戦するため飛空艇で次の章の敵に挑む事は不可とします。あくまで、開戦時の立ち位置を指定できる程度のボーナスとお考え下さい。

◇敵帝国『フォールン・シンクタンク』
 かつて最先端の魔導技術を有した屍人帝国。雲海から蘇って以後は数々の非道な研究に手を染めています。今回の騒動も狙いはあくまでデータ収集。ボス敵含めて『捨て駒』で、帝国は世界樹嵐の実験結果を狙っているので一体も討ち漏らさない事が肝要となります。

 なお今回は滝戸ジョウイチマスターの許可を得て、過去に登場した帝国の設定を共有しています。
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=35935
 独立したお話なので読む必要はありませんが、もし参加された方がいましたら「あの時の帝国!」とお楽しみ頂けましたら幸いです。

◇その他
 執筆期間に関して、タグとマスターページにてお知らせする場合がございます。今回お盆を挟みますので、ご協力いただければ幸いです。

 それでは、リプレイでお会いしましょう。どうぞ、いい航海を!
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第1章 集団戦 『奴隷たち』

POW   :    「いまさら何しに来たんですか?」
自身が戦闘不能となる事で、【抱きついている】敵1体に大ダメージを与える。【手遅れになるまで助けに来なかった嘆き】を語ると更にダメージ増。
SPD   :    肉盾
戦場内の味方の、10秒以内の【あらゆる攻撃】を無効化する。ただし、自身の幸福な記憶ひとつを心的外傷に改竄する。
WIZ   :    「諦めて私たちの仲間になりましょう?」
【底なしの絶望】を籠めた【すべてを諦めた言葉】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【存在価値】のみを攻撃する。

イラスト:スーカラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 からからと舵輪の回る音が操縦席に響く。
 飛空艇の甲板で感じる風は湿り気もなく快適で、
 まもなく悲哀を帯びたものになるとは想像もつかない。

 数隻に分かれて乗り込んだあなたたちは、
 最初の降下地点を見定めるべく身を乗り出した。
 眼下の浮遊大陸には、ぼろを纏った少年少女たちの姿。
 手足に枷を繋がれたまま、こちらを見上げている。

 一見戦闘力のなさそうに見える敵。好んで戦いたい相手ではないが、
 放置して後の戦いで割り込まれてはこちらが危ない。
 何より忘れてはならぬのは、彼女たちは既に雲海に沈んでいる事。
 このまま泳がせたとて未来はない、ひと思いに刎ねるのが慈悲だろう。

 遠く、けだものの吼えるような声が響き、
 続いて巨大樹の蔦のようなものが天空へ伸びた。
 あれなるは世界樹嵐の発生源、樹木と一体化した騎士の本拠。
 幾千もの命と引き換えに時を稼ぎ、やがて大陸を雲海に沈める禁忌の術。

 敵の境遇に思うところはあれど、あなたは武器を握る。
 否……境遇に思いを馳せたからこそ。

 ――彼女たちの怒りは、成就させてはならぬのだ。
シリン・カービン
飛空艇の勇士が言う。
あんな子供たちと戦えるのかと。

心配は無用。
一度獲物と定めたものは、必ず狩る。


子供たちの中心に着地し、精霊猟銃を天に向けて発射。
「逃げられるとお思いですか」
増殖した弾丸は子供たちの四肢を貫き、麻痺の状態異常を与える。
意識を保ちながらも動けない子供たちに、良く通る声で告げる。

「あなたは、私の獲物」

二射目の弾丸は子供たちの眉間を貫く。
モノ言わぬ骸と化した子供たちの中を、次の群れに向けて駆ける。

子供たちの言葉は届かない。
獲物を狩る意志は、決して揺るがない。


勇士が問う。
せめて一発で仕留めてやればと。

死んだことが分からなければ、終われない。
終わらなければ、解放されないのだ。永遠に。



 はるか天上、恵みの光をもたらす灼熱の塊が燃え盛る。木々には慈愛を届けながら、終ぞ奴隷たちへは注ぐ事のなかった光を、否定するかのように緑の外套が遮った。
 深く膝を曲げて地に降り立ったシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は間髪入れず、長い筒のようなものを天へと向ける。
「戦場に立ったのはあなたたち。逃げられるとお思いですか」
 太陽に背いて放たれた銃弾が幾筋にも分かたれ、光の網となって降り注ぐ。次々と四肢の末端を縫い付けるように地へ突き抜け、後からは神経を狂わす電気信号が奴隷たちの肉体を駆けた。
 上空ではシリンをここまで送り届けた飛空艇のクルーが、案じるように覗き込むのが見えた。
 ――あんな子供たちと戦えるのか。
 問いかけた勇士に「心配は無用」と背中越しに告げたのは今しがたの事だ。
「もう、いいんです……あなたも、私たちの仲間になりましょう……?」
 まだ動ける奴隷たちが手を突き出し、救いを請うようにこちらへと前進する。ボルトアクション式の銃で駆け抜け様に撃ち抜き、痺れて横たわる少女の眉間に銃を突きつける。
 すぅ、と獣が死期を悟るように瞳孔が揺れ、少女がぶるりと寒気に身を震わすのが見えた。
「あなたは、私の獲物」
 たんっ。愛想のない乾いた音で薬莢から出た弾は額に食い込み、報われなかった少女の命を骸の海へと押しやった。
 群がる奴隷たちが緑の裾を掴むより早く、蹴り、踏みつけ、一体一体を機械的な動作で屠りながら狩人は征く。
 ――せめて、一発で仕留めてやらないのか。
 作戦を聞いて情けを請うた勇士の顔に、シリンは自分の行動は世間一般の感性からは外れている事を自覚する。温い。手控える必要もないが、わざわざ一撃で仕留めるなど。
 あたたかな慈悲の心など感じようものなら、亡者である彼女たちは戻ってきてしまう。
(「それではダメです。死んだことが分からなければ、あの子たちは終われない」)
 冷え切った心の中、僅かに残る良心を目的の為に噛み殺す。
(「終わらなければ、解放されないのだ。永遠に」)
 二度と迷える魂が迷い出ないよう――切なる願いを胸に秘め、シリンは引き金を引いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御影・龍彦
※連携、アドリブ歓迎

件の帝国は目的があって研究を重ねているのか
それとも、技術を追求しているだけなのか

…どちらでもいいか
成すべき事は変わらないんだから

・飛空艇
味方とは別方向から降下

翼は常に展開

今回は雷の『属性攻撃』を応用しよう
『オーラ防御』も可能な程の魔力を
全身に流して…準備完了

数発、魔弾で敵を派手に空爆
注意を引いてから敵陣へ舞い降り
そのまま一直線に突っ込む

接敵前にUC発動
僕の全身を覆うように影の鎖を纏う
例えるなら、ミイラの包帯みたいにね
宣告するルールは
「僕に触るな」

UCの効果と雷のオーラに滑空の勢いも乗せ
群がる敵を擦り潰していくよ

僕は君達を救わない、救えない
救うべきものは他にあるから
…ごめんね


ハロ・シエラ
なるほど、分かりました。
境遇はどうあれ敵は敵……放っておく事は出来ません。
思うのは後にして、今は斬り込むのみ。
私向きの仕事ではありますね。

降りる場所は敵群に近ければそれで構いません。
レイピアを振るい、ユーベルコードによって敵を【切断】して行きます。
敵も攻撃するには近付いて来なければならないはずなので、【カウンター】で対処出来るでしょう。
ただ、囲まれると厄介です。
蹴りで【吹き飛ばし】たり【体勢を崩す】などしましょう。
また、左手のサーペントベインには【毒使い】の力が宿っています。
この刃による攻撃であれば、敵に致命傷を与えられなくても【マヒ攻撃】として動きを鈍らせられるはず。
後はただ、斬るだけです!



 開戦を迎えた猟兵たちのパラシュートが、迷彩柄の花として眼下に開く。
 憂いと惑いを僅かに残したまま、御影・龍彦(廻る守護龍・f22607)の金の瞳はその光景を見つめていた。
「件の帝国は目的があって研究を重ねているのか……それともただ、技術を追求しているだけなんだろうか」
 帝国の全容は未だ掴めず、実情は見えてこない。だが前者後者のいずれであれ、堕ちた思想の元に成される研究が碌なものである筈がない。
 眼下には捨てられるために集った憐れな命が、自らの惨めさを武器にこちらを待ち受ける。この蒼き空の世界で故郷で見慣れた景色に出会うとは思いもよらず、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は深く溜息を零す。
「分かりました。境遇はどうあれ敵は敵……放っておく事は出来ません」
 心を殺す術なら、少年兵時代に嫌という程叩き込まれた。情を殺してただ斬り込むのみであるならば、自分に声がかかったのも道理だ。
「私は先に降ります。あなたにはあなたの考えがあるようですので……お互い、武運を祈りましょう」
 短く言い添え飛び降りるハロの、短く切り揃えた髪が風になびく。それが浮島へ見えなくなるのを十分に待ち、龍彦はドラゴニアンの雄々しき黒翼を大きく広げる。
「……確かに、どちらでもいいか。僕の成すべき事に変わりはないんだから」
 ふと、大地もないのに口に砂が混じった気がした。どこかの浮島に砂漠があって、そこから風に乗り運ばれて来たのか。
 縁もゆかりもない筈の世界そのものに背を押された気がして、龍彦は幽かに笑みを零す。
 飛び降り滑空する龍彦の翼を、ばちりと弾ける雷電の鎧が覆う。電流を纏って加護を宿したその身で、黒龍の青年は影の杖を高々と掲げた。

   ◇    ◇    ◇

 先んじて降り立ったハロは即座にレイピアを振るい、自身に手を伸べた奴隷少女の喉を掻ききる。苦しげな息と共に血を吐く少女を、続く二振り目でピン、と刎ねる。
 光の糸が閃き、滲み出る赫の雫。もう藻掻く事のない上体が地に落ちたのを確かめ、ハロは脱力した構えで一歩ずつ前へ歩み出る。
「あ、はは……あはは! お姉さん、それで私たちを救えると思っ」
 ピン。手と足についた枷を外してやる代わり、その中身までを一薙ぎで斬る。
「どうして……私たち、こんなに言い付けを守っ」
 キン。閃く光すら見せぬレイピアが、鎖ごと胸を突き、抉り抜く。
 少女たちの境遇に考えが及ぶより早く、肉体が動けばそれでいい。常闇の世界らしき思考に身を委ね、ハロは掴みかかる敵を次々といなし、屠っていく。
 一体ずつならば御する事もできようが、何分、数が多い。蹴り飛ばして間合いを取り、自分のペースに持ち込もうとするが、流石に囲まれ過ぎたか、と唇を噛む。
 左手に隠し持つ蛇毒の短剣の柄を握り、いつ踏み込まれてもいいよう備え――身構えたハロの頭上で、癇癪玉のような何かが勢いよく爆ぜた。
 ――どん。ぱぱん。
 時間差で花開く魔弾の花火が、眼下の大地に血の花を咲かす。こちらを見上げる奴隷たちを視界に収め、龍彦は初撃が首尾よく行った事を確信した。
 窮地を抜け出したハロが短剣を奴隷の喉に押し込み、掴みかかった手をするりと躱すのが見えた。尚も抱きつき道連れにしようとした少女の腕だけが絡み、やがてそれも先に落ちた下半身の元へ崩れ落ちる。
「目的は違えないさ。気が進むかは別として、ね」
 硬く引き結んだ唇のまま、龍彦は愛用の杖を本来の姿へと変える。杖に宿る精霊・エイスが魔力を纏い、影の鎖となって身を縛る。
 敵陣真っただ中に降りた龍彦をミイラのように覆う、幾条もの影。彼を道連れにしようとした少女が手を差し伸べ、無警戒にそれに触れた。
「……僕に触るな」
 バチン。触れた手から伝う衝撃は心臓へと一直線に向かい、少女は血のあぶくを吐いてその場に崩れ落ちた。
 至極単純な命令を身に纏わせ、「触れてはならない」鎖ごと龍彦は無慈悲に突進を見舞う。雷電に灼かれ、鎖に千切られ、後に残るは無残な少女の骸のみ。
「ありがたいですね……この機に、できるだけ」
 彼にばかり、手を汚させぬよう。窮地を救われたハロがレイピアを振るい、少女たちを一刀のもとに斬り伏せていく。
 見敵必殺の名の下に、二つの波が少女たちの海をかき分け血色の凪を齎していく。
(「僕は君達を救わない、救えない」)
 決して救えない、命なきものを斬り捨てでも……救うべきものが、他にあるから。
 影の鎖の纏う闇が、いっそう濃さを増して襲い掛かる。
(「……ごめんね」)
 如何に心がはち切れそうでも。言葉を直接手向けるのだけは違う気がして、龍彦は非情に徹したまま少女たちの華奢な体を引き千切った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎

「奴隷に自立心は皆無、救滅の為殲滅する」
『アテネ・ニケ・パルスフラッシュ』で識別パルスを照射し『アプロディーテ・フューチャーサイト』で1分先の未来を見ながら勇士に指示を出しながら『マルチスタイル・サイコミュ・ファンネルビット』で創造し連絡・偵察・警戒・攻撃ファンネルビットを展開して情報・状況を伝えながら『フルバースト・マキシマム』『アルテミス・レーザー』で先制・索敵攻撃をして『サイコミュ・ファンネルビット・テレポート』で敵の攻撃を空間飛翔して避け『三女神の加護と』で敵のUCを封印/弱体化させます。

無効化を想定したビーム攻撃を可能な限り想定して10秒後以降に殲滅します。



 月の精の纏うドレスは冷たく、月光のカーテンのようにたなびく。
 金の髪なびかせ降り立つ、ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)。月の乙女は並み居る奴隷たちを暫し見渡していたが、死を宣告するように手短に告げた。
「奴隷に自立心は皆無。救滅の為、殲滅する」
 無機質な声が響くと同時、背に負う複数の機関砲からパルス・レーザーが放たれた。波紋のようにうねる拡散レーザーは味方をすり抜け、敵にだけ波長を残して害を及ばす。
 一度はくたばった筈の奴隷たちの屍体が持ちあがり、意思なき肉の盾として立ちはだかる。それも想定の内と、ティティスは即座に次の手に移った。
 掴みかかる腕をいなし、愛と美の女神の力で一分先の光景を幻視する。
「……そこだ」
 複雑に役割の分化したファンネル・ビットを多量に展開し、互いに連携を取らせながら包囲陣形を組む。射出孔のずらりと並ぶ中心、レーザーの的は奴隷たちの中心で音もなく交わっている。ここまで舞台を整えたなら、あとは撃て、と一声命じるだけだ。
「……斉射」
 端的に告げる声。融け合ったレーザーの網が火花を散らし、中心温度を燃え盛る炉の中のように一気に引き上げる。
 殲滅できたか。成果を見張るティティスの眼に、未だ残る複数の奴隷少女の姿が映る。
「……少し、手数を急ぎ過ぎたか」
 ユーベルコードの多重がけによる、精度の低下と敵ユーベルコードの誘発。本能的に危機を察してあちらも同じだけの力を引き出したのだろう。
 まだ小手調べだからいいが、以後の敵に同じ手が通用するとは限らない。何を使うかより、どう使うか――より高度な作戦精度が求められるだろう。
 僅かにしこりの残る勝利を噛みしめながら、ティティスは残る少女たちを薙ぎ払った。

成功 🔵​🔵​🔴​

オメガ・カストゥール
奴隷とな。
だが、我はドラゴン。人間に容赦しない。
どのみちな。
世界樹嵐を引き起こすものが居る以上、それを止めに来た。
ワイバーンとギャラガーにも攻撃してもらう。
【ブレス攻撃】火の【属性攻撃】でファイアーブレスを行う。
命中率を強化して撃つ。
「世界樹嵐を引き起こすものがどこかに居るってことか。見つけ次第、滅する」



 空蒼く、眼下の騒乱を除けば憂いの色は見当たらない。どこまでも澄んだ空は浮島の上で広がる灰と血の色をいっそう浮かせ、異質に際立たせていた。
 既に始まっている小さき者たちの醜き争いに、猛々しき赤鱗の者は忌々しげに火の粉を吐きながら呟いた。
「奴隷とな。奴らと同じ人間ならば情も沸くのだろうが、我はドラゴン。人間には容赦しない……どのみち、な」
 天空に追放された日の記憶を、忘れようものか。オメガ・カストゥール(火焔竜にして、竜神王・f34605)は積年の恨みを籠めるように灰色の襤褸を纏う人の子たちを睨んだ。
 だが、オメガとて私怨でここに来たのではない。やっと住み慣れたこちらの世界を壊す嵐を呼ぶ儀式、見過ごしたとあらば赤龍王の名に傷が付く。
「世界樹嵐なる下らぬ儀式。我の治めるこの空で、引き起こせると思うなよ」
 ぐん、と羽ばたきに大気が乱れ、推力を増した巨体が加速する。羽ばたくごとに勢いを増して翔ぶオメガの傍には、いつの間にか二匹の若い竜が連れ立っていた。
 片や飛竜ワイバーン、人を嫌う野生の者。片や赤竜ギャラガー、オメガより若くも意思を共にする猛々しき者。
 二匹の竜はオメガを護る螺旋状の陣を描いて飛翔し、大地に散発的な火焔の弾を降らす。
 地上の者たちが竜の到来に気付いた。恐れおののく瞳がこちらを捉え、やがて赤龍の目に怒りを見た。
「グルァアアッ!!」
 轟く咆哮に奴隷は身を縮ませる。赤き死が空に舞い、駆けて逃れられる距離全てに覆いかぶさる炎熱の吐息を降らせていく。
「……はは、もう、いいよ。どの道何度蘇ったって、助け……なんて」
 抱きついて述べるべき言の葉を、奴隷はうわ言のように呟き、言い終える前に呑まれた。炎の舌の舐めた後には何も残らず、ただ焦土と人型の炭が転がるのみ。
 だがそれも波が打ち寄せるように骸の海へと帰っていき、後には静かな死の凪がもたらされた。

成功 🔵​🔵​🔴​

キアラ・ドルチェ
降り立つ場所は敵の密集地帯

飛び降りた勢いを借り、近接範囲にスティレットを一閃
動く者がいなくなるまで継続

…麻痺して、感覚もなくして、それで諦めてくれないかな
もう立たないで、私は貴方達を殺したくはない…
「でも、それでも立つなら…」止めを刺しましょうっ

母が言ってた
人を害する可能性あるけれど、心根は優しいゴーストを倒すのを躊躇った事があると
「その気持ち、少しだけ分かりました…」

でも…この腕を振るうのは躊躇わない
それは結局誰も救わないっ!

終わった後、鎮魂の祈りを
涙は流れてしまうけど
これは悲しみではなく、誓いの涙

貴方達の生命は無駄にはしない
この世界を救うため、私は貴方達の生命を預かったのだと
そう想うからっ



 灼熱の舌が舐めた大地をまばらに埋める、灰の子ら。焦土に足を焼かれながらも、縋るようにこちらを見続ける。
 猟兵が次々と降り立つならば、せめて肉の盾として分断を――彼女たちの目論見は、ばさりと降りる人影と、鈍く光りながら降り注ぐ雨によって寸断された。
 十字柄に呪いの彫り込まれた儀礼用の短剣。慈悲を名に冠する短剣は、心臓の代わりに少女たちの神経をぶつりと断ち切った。
「……それで、諦めてくれないかな」
 キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)の表情はいつになく暗く、辛うじて敵を見据えた目を今にも逸らしてしまいそうだ。本懐を遂げられぬ少女たちは最早脅威ではないが、キアラが怯えているのはそこではない。
 母から伝え聞く、かつての戦い。『ゴースト』はひとを害するから――ただそれだけの理由で、心根の優しい者まで倒さねばならなかった事を。
 立たないで――悲愴な祈りは通じず、地の底から響くようなくぐもった声が聞こえた。
「こほっ……あなた、も」
 動かぬ下半身を引きずり、足首を掴む姿。勝てるかではない。この少女たちは最後まで、世界への絶望を知らしめようと動くだろう。
「こちらに来れば、一緒……だから」
「……っ!!」
 日光がギラリと短剣に跳ね返り、その中で何か飛沫が舞った。少女が叫ぶのが意味のある言葉なのかも聞き取れない。
 ただ、今度は慈悲の短剣の名の通りに。振り翳す刃が意に沿わない事だけは、確かだろう。

 動く影が他になくなってからも、キアラは泣きながら歩みだけは止めずにいた。
「お母さんの気持ち……少しだけ、分かりました……」
 躊躇いは心にはあったが、出さなかった。最後には戦いを全うしたと聞いていたから、キアラも母の訓戒に倣った。
 戦力外だと、あそこで見逃せば良かったのか。甘い思考に逃げかけて、その先にある少女たちの末路を冷静に思う。
「だめ……それは結局、誰も救わないっ……」
 咽込み、ぼたぼたと落ちる雫に表情を歪めながら、手だけを動かす。小石の墓標はあまりに粗末だが、敵とてこの程度の手向けは許される筈だ。
「貴方達の生命は無駄にはしません……この世界を救うため、私は貴方達の生命を預かったのだと……そう、想うからっ……」
 先に待つ未来は魔女の慧眼を以ても見通せず、時に運命は試練を与う。
 汝、ネミの白魔女よ。怒りも悲しみも識り育つのが森の子なれば――今歩くこの道こそが、有史以来誰もが通ってきた『経験』という名の正道なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

炬燵家・珠緒
アドリブ歓迎

う~~ん、ちょっと複雑~~
でも、このまま放っておくわけにはいかないしね~~
ところで、どこで降りればいいんだっけ~~?
え?通り過ぎた……?

あなたたちのお願いには応えられないな~~
ごめんね~~?
わたしは、この青い空を護らなきゃいけないの~~
ここはご主人様の大事な世界だから、ね

ん~~何か出来ること、あるかな~~
あ、そうだ~~
わたしの大事な想い出、あげるね~~
ご主人様と一緒に旅した、懐かしい日々の想い出だよ~~
幸せな過去の記憶や家族との想い出、ないかな~~?
それがないなら、今だけでも幸せな気分を味わってみて~~?
逝くなら幸せな想い出と一緒の方がいいでしょ~~

おやすみなさい、またね~~



 戦いに天空の野は荒れ、手づかずの自然が広がっていたとは思えぬほどだ。
 容赦せぬ者。慈悲を噛み殺す者。戦う者の心中は様々で、猟兵とて割り切れる者ばかりではない。
 ゆらり。くゆり。飛空艇の縁に腰掛けた炬燵家・珠緒(召喚獣「猫娘」のキャンプ好き・f38241)の背に、赤みを帯びた茶色の尻尾が疑問を表すように揺れる。
「う~~ん、ちょっと複雑~~。でも、このまま放っておくわけにはいかないんだよね~~」
 いかに依頼といえ、珠緒の好むやり方ではない。本来ならのんびり平和にキャンプでもして過ごしたい所だが、その平和を乱すというなら重い腰を上げなくては。
「ところで、どこで降りればいいんだっけ~~?」
 えいやっと立ち上がって勇士たちの方を振り向けば、呆気にとられた顔。
「え?」
「え……?」
 交わる視線。勇士の本音が「まだ居たのか……」であったと珠緒が知るのは、船が再び大きく旋回してからの事だった。

 殆どの動く影のなくなった戦場へ、赤い下駄の踵でナイス着地を決める。
「うわっとっと~~」
 ……失礼、少々着地は乱れたが、見なかった事にしておこう。
 派手に砂埃を撒き散らしてやってきた珠緒の下へ、奴隷たちの生き残りが群がり、懇願する。
「もう、抵抗は諦めて……私たちと一つに、なりましょう……?」
「う~ん、あなたたちのお願いには応えられないな~~。ごめんね~~?」
 ゆるりと首を振った珠緒は空を見遣り、主の好みそうな綺麗な青に目を細める。
「わたしは、この青い空を護らなきゃいけないの~~。ほら、ここはご主人様の大事な世界だから、ね」
 今ある生を謳歌する珠緒の姿に、少女たちは力ずくで引き入れるしかないと腕まくりをした。鎖で締め落とそうとにじり寄る少女たちへ、珠緒の呑気な声が降り注ぐ。
「あ、そうだ~~。わたしの大事な想い出、あげるね~~」
 札が頬を掠めたと思った瞬間、奴隷たちは皆別々の空間にいた。青空の下で鳥が鳴き、自身の傍にはサンドイッチを頬張る主人の姿。
 ふと目が合う。こちらの頬についたパンの欠片を指先で拭い、サンドイッチをもうひと切れ差し出した。主人につられて口元は緩み、笑顔になるのを感じる。
 そう、これは珠緒から見た在りし日の光景だ。誰にも脅かされる事のない平和な情景。自身を認めてくれるあたたかい他者の温もり。奴隷の少女たちが生前得られなかった追体験が、胸を軋ませる。
(「あんなに世界を恨んでいたから、戻ってきたのに」)
 少女たちの体が糸の切れた人形のように頽れ、地にぱたりと横たわる。オブリビオンとしての根幹をなす世界への絶望。それが薄れた今、彼女たちはもう存在理由を保てない。
「おやすみなさい、またね~~」
 睫毛に残る滴ごと、少女たちが風に吹かれて消えていく。
 消滅を見届け、珠緒は走り去っていった――次の戦場へは遠回りの、断崖絶壁の方へと。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『空賊エルフ』

POW   :    ペネトレイトショット
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【貫通】属性の【魔術装填弾】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD   :    アサシネイトバレット
【敵の視覚を惑わす魔法の木の葉纏った歩法】で敵の間合いに踏み込み、【呪・影・闇・魔の弾丸】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ   :    ダブルトリガー
【天使核マスケットと天使核リボルバー】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。

イラスト:にこなす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 奴隷たちは皆眠りに落ち、背後から襲われる心配はない。
 あなたたちは迷いなく踏み込み、敵の第二陣へと到達した。

 遠目にも見える、うねる大樹の蔦。
 雲海の魔術を阻止せんと駆け行くあなたの足元で、バチュンと硬い何かが跳ねた。
「ここから先は行かせないよ! あたしらの頭が体張ってんだ、通ろうってんなら蜂の巣にしてやる!」
 威勢よく立ちはだかる空賊エルフはいずれも、樹木の芽を植え込まれた者ばかり。
 胸元や腹から食い破る触手の激痛に耐え、口から血を流して凄絶な覚悟を口にする。

「帝国の思惑なんざ知ったこっちゃねぇが、逆に体よく利用してやるよ。ここであんたらを雲海に落とせば、お頭も安心して眠れるってもんサ」
 うねる樹木は成長してエルフたちを取り込み、多頭の樹木獣へと変貌した。
 襲い来る樹木の触手に加え、魔法の木の葉での幻惑ステップや
 二丁の銃から放たれる魔術弾にも対処せねばならない。

 エルフたちを突き動かすものは、世界への怒り。
 教えを忠実に守り、森と共に沈んだ少女たちの今際の願いが、
 雲の海に空しくこだまする。

「てめぇらも! 世界も! まとめて雲海の塵にしてやらあ……!」
 慟哭にも似た咆え声が響き渡り、開戦の合図となった。
御影・龍彦
※連携、アドリブ歓迎

彼女達の境遇は知らない
解るのは、世界を強く憎み続けていることだけ
なら、僕の答えは単純だ
彼女達を永久に眠らせ、世界を守る

翼を出し、飛行状態で戦闘

UC発動
有効範囲内にある敵の銃全てを
闇色の竜巻に変換し操作

エルフ達、樹木の触手
行く手を阻むモノ全てを巻き込みながら戦場を駆ける
攻防一体の動きでいくよ

とはいえ、攻撃が僕まで届く可能性はある
対策はしておかないとね

竜巻の色の『闇に紛れる』ようにして
さらには、こまめに高度を変えて
狙いを付けにくくするよ

保険として魔力の『オーラ防御』も展開
攻撃を『受け流し』て軌道を反らし
できるだけ負傷を少なくできるといいな
此処で足を止めるわけにはいかないからね



 びりりと大気を伝う波。鼓膜が震え、肝までを震撼させる。
 遠く、こちらまで届く少女たちの怒りの吼え声。蠢く森が、胎動する。

 世界のあらゆる事象や空気の粒、生まれたての赤子に至るまでが彼女らの憎しみの範疇だ。境遇は知れずともその事だけは感じ取り、御影・龍彦は瞑目する。
「……そうか。それが君たちの答えなら、僕の答えは単純だ」
 ばさりと翼がはためき、続く二つ目の羽ばたきで宙に舞う。瞬きする間に最高速に達した竜種の青年は、怯まず自身を捉える無数の銃口を静かに睨んだ。
 頬掠める弾丸、糸引く朱。躱しがてら錐揉み旋回で残りの銃弾を弾くが、流石に精鋭。無軌道に舞おうが敵は即座に食らいつく。
「束の間、仮初の自由を与えよう。我がもとに下れ――肚を、満たせ」
 森との繋がりを捨てたエルフたちは、果たして闇精霊の干渉に気付けたか。少女たちの手元で負のオーラが溢れ、慌てる間もなく闇色の竜巻へと膨れ上がる。
「くっ……謀ったな!」
 身近にあったものに不意を突かれ、少女戦士たちの華奢な体が宙を舞う。ただでさえ身動き取れぬ中、龍彦は闇の竜巻を纏って進むのだから、世界樹の加護があろうと堪ったものではない。
 樹木獣の触手がバリケードを築き、龍彦の進撃を阻まんと試みる。だが食い止めたのも刹那、追加の銃を得て上乗せされた竜巻は樹木を巻き込み、べりべりと地面から浮かせていく。
(「手控えるわけには行かない。酷だろうと……此処で足を止めるわけにはいかないからね」)
 最後の一押しに力を籠めれば、根っこの支えを失い、エルフの少女が空高く打ち上げられた。腰に差したもう一丁の銃で嵐に揉まれながら果敢にも弾丸を放つが、それらは僅かに届かぬか、龍彦の手前でオーラの加護に弾かれる。
「ちっ……くしょおおお!」
 地に落ち、細い首がごきりと断末魔を上げるまであと僅か。嵐を纏った竜種の青年はせめて敵への礼儀として、一度も情けに顧みる事なく命を引き千切っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎

「自然沈落は摂理、撃墜はお前たち…滅殺する」
『アテネ・ニケ・パルスフラッシュ』を照射し識別パルスを照射し『アプロディーテ・フューチャーサイト』で1分先の未来を見ながら『マルチスタイル・サイコミュ・ファンネルビット』でファンネルビットを創造して展開し『フルバースト・マキシマム』『アルテミス・レーザー』で先制・牽制攻撃をし『サイコミュ・ファンネルビット・テレポート』で敵の攻撃を空間飛翔して避け『三女神の加護と粛清を』で敵のUCを封印/弱体化させます。
『クリアボディ』『アストラル・エレメント・ヴェール』で透明化し視聴嗅覚を阻害し『ヘラ・エウピション』で猛攻を仕掛けます。


ロビン・バイゼ(サポート)
「困っている人を助けたい」と強く願う少年。
時には自身を犠牲にしてでも助けようとします。

アイテム・技能・UCは状況に応じて好きなものを使わせて構いませんが、拷問具や拷問系UC・咎力封じは基本ヴァンパイア・闇の種族にしか使いません(逆に両者に対してはよく使用)

絵を描くのが好き。でも描く絵はピカソや岡本太郎のような抽象画。だいたい何描いてあるか分かりません。
基本無表情。何があっても表情変わりませんが、芸術的なもの・博物館・拷問具を見ると瞳が輝きます。
「…」や「、」多めの喋り方。
好きに使ってください。よろしくお願いします。

台詞例
「……びっくり、した」
「……すごい」
「……少しは、役に……立てた、かな」



 空いた風穴を即座に埋める、樹木の網。
 朧げなヴェールを靡かせながら降り立ったティティス・ティファーナは、女神にも似た冷めた口調でこう告げる。
「自然沈落は摂理、撃墜はお前たち……滅殺する」
 霞む足元より月精の波長が満ち、明滅する信号が砲塔より放たれた。大気を浸食して伝うパルス・レーザーはエルフたちの体内に残り、数々の感覚異常を巻き起こしていく。
 続く二の手で次なるユーベルコードを発現、ティティスは未来予知の力を得ながら可変型ビットを展開し、敵の銃弾を迎撃できる位置へと配備していく。
「そっちがその気なら……挑戦、受けてやらあ!」
 限界まで力を引き出したエルフたちがほうぼうへ散り、次に視界を覆う木の葉竜巻が舞った。如何に未来予知の力を得ようとも、敵の姿が見えないのでは避けようがない。
「これは……まずい、かな」
 要請を請け駆け付けたロビン・バイゼ(芸術と鮮血・f35123)は、眼前の眺めに戦う女性の危機を察知する。樹木の触手に加えて死の威力を秘めた銃弾、ユーベルコードの多重がけで敵の目を惹いてしまった事。誘発した状況は金髪の女性に不利に働くだろう。
「力になれたら、と思って来たけれど……早速、出番になりそう、だね」
 自前の武具で役に立ちそうなものを握り、ロビンは一時身を隠す。今から行う事を考えれば、行動前に気取られるわけにはいかない。
 レーザーが銃弾を焼き、テレポートによる空間転移で射線から逃れる。ティティスも包囲された状況を考えれば善戦していたが、次第にじり貧になる事は否めない。透明になって敵の目を欺こうとも、舞う木の葉が肉体のシルエットを浮き上がらせては努力が水の泡だ。
「視えた……!」
 ティティスを捉えた銃弾が呪いを刻み、影を撒く。闇の薔薇が咲いた次に待つものは――死。
「これで隠れん坊は終いだ!」
 放たれたエルフの魔弾は勢いよく宙を走り、ガキンと硬質な音に弾かれた。咎人を捕らえて離さぬ鋼鉄の処女が、眼窩から血を流して敵を睨む。
「……何とか、間に合った……みたい」
 気配を隠していたロビンが外套の内から、特大の絵筆を勢いづけて振るう。即座に巨大化した筆の先が魔法の絵の具を迸らせ、敵陣を血の色に塗っていく。
「……お姉さん、大丈夫?」
「ああ。無事だ……世話をかけたな。感謝する」
 残る敵を壊滅させ、ティティスは窮地を救ってくれた小さなヒーローに謝辞を述べる。ここまでの消耗を考えれば、エルフ残党との戦いは後続に任せた方がいいだろう。
「……無理は、しないでね」
 宙を飛翔し、急ぎ敵本陣へと向かっていくティティスの背を、オラトリオの少年は心配そうに見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キアラ・ドルチェ
世界樹に意識を奪われても、その身に残る世界への怒り

森と共に生きる魔女として、植物を操るヤドリギ使いとして、
私は貴方達をそこから解放する責務があると感じます
…それが、生命を絶つというやり方しかないとしても

気後れして勝てる相手ではない、慈悲をかけて救われる相手ではない
それに…涙はもうさっき流し尽くした
今は…全力で戦うのみ!

先手を取る為【高速詠唱】を【多重詠唱】し広範囲に【全力魔法】を飛ばします
「エルフたちよ、あるべき自然に還れ、そして生命の円環のうちに戻れ」
そして貴方達の怒りと悲しみは…私が持っていく!
いつかこの世界をオブリビオンから解放するまで、持ち続けるからっ!

だから…安らかに眠って…ね?


シリン・カービン
彼女らの怒りは正当なものだ。
誰が好き好んで故郷を滅ぼされようか。
世界の理だからと受け入れることなど
到底出来るものではない。

だが、それを許すかは別問題だ。

「闇よ来たれ、影よ行け」
自身を囮として岩の間を駆け抜け
私の影が食いついたエルフを撃ち抜く。
伏兵に気づいたエルフが影を探せば
その隙を突いて私が狙い撃つ。

五感を共有する私と影は、
視界を補い合うので死角が存在しない。
樹木の触手を搔い潜り、
一人一人を迅速に確実に仕留めていく。

無に帰した彼女らの日常は無価値だったのか。
私はそうは思わない。
今も生まれ続ける数多の日常を壊すのは
彼女らが生きた日々の否定。

だから私は彼女らの怒りに応えよう。
あなたは、私の獲物。



 うねる樹木獣の蔦がこちらへと迫り、群体を形成する。中にエルフたちの純然たる意志がどれほど残っているかは分からないが、怒りの元に集った彼女たちが引き返せないところまで来ているのは明白だった。
(「彼女らの怒りは正当なものだ。誰が好き好んで故郷を滅ぼされようものか」)
 自らもエルフであるシリン・カービンは森や大地を奪われる事の辛さを思い、暫し言葉を失った。雲海に沈むのも世界の理だと言われたとて、誰が納得できようか。
「世界樹に意識を奪われても、その身の残る世界への怒り……森と共に生きる魔女として、植物を操るヤドリギ使いとして、私には貴方達を解放する責務があります」
 それは森の智慧を借りるドルイドであるキアラ・ドルチェにも言えた事。決して楽ではない自然の中での暮らしを営んでいた事を思えば、エルフたちには本来何の咎もない。
 あるとすればたった今、世界へ向けて牙をむいた事だけ。
「……解放、してみせます。生命を絶つというやり方しかないとしても」
「ええ。許すかどうかは別問題です」
 示し合わせたかのような連携を取り、駆け出すシリンを森の魔術が援護する。ジェラ、ウルズ、活力と生命を表すルーン文字が宙に浮かび、かつて大地に芽生えたであろう生命を賦活する。
「森のディアナよ、汝が慈悲もて我に想い貫く槍を賜らん……エルフたちよ、あるべき自然に還れ、そして生命の円環のうちに戻れ」
 敵に先んじて編み上げた樹木の槍は、すぐに螺旋状の穂先となってエルフたちの頭上に降り注ぐ。樹木獣の触手が槍を阻んで拮抗するが、折よく地に落ちた無数の影がシリンを援けた。
「闇よ来たれ、影よ……行け」
 シリンが放ったのは闇精霊のもたらす影の分身。自分と同じ背丈の影法師は樹海に紛れ、瞬く間にエルフたちの視界の外へと消え去った。

   ◇    ◇    ◇

 岩の隙間を縫ってエルフたちの元へ接近するシリンを、エルフの一人がマスケット銃で射ようとして動きを止めた。後ろから突き出る黒い腕、シリンの影が後ろから羽交い絞めにしていた。
「てめぇ……かはっ」
 音もなく、暗殺。私の方が早いとばかりに精霊猟銃が火を噴き、空の薬莢が地に落ちる。
「よくもやりやがったな!」
 味方の仇をと背後から樹木の触手を差し向ければ、シリンは背中に目があるように難なく襲撃を躱す。当然だ。影と視界を共有した今、彼女たち二人に死角はない。
(「無に帰した彼女らの日常が無価値だったとは、私は思わない。今も生まれ続ける数多の日常を壊す事こそ、彼女らの生きた日々を否定するようなもの」)
 恨み辛みで牙をむく彼女たちの存在が、自分達を襲った悲劇の側へと傾くのをシリンは善しとはしなかった。怒りに応える代わり、彼女たちの愛した日常を護り抜く事こそ、真に報いたと云えるだろう。
 数を減らし、乱戦になだれ込むエルフの頭上へ、樹木の天蓋が築かれる。光を遮る様はエルフたちの故郷にも似て、地表に届くのは最早僅かな木漏れ日ばかり。
「貴方達の怒りと悲しみは、私たちが持っていく! いつかこの世界をオブリビオンから解放するまで、持ち続けるからっ!」
 その、網目のように形成された節の随所から森王の槍を撃ち出せば。地に轟音が響き、集った樹木獣たちを根絶やしにしていく。
「お前たちは……なぜっ……!」
 樹木の檻を引き千切り、脱け出したエルフがマスケット銃をキアラへと振り向ける。憎しみを一手に引き受けるには心の幼い魔女が一瞬瞳を惑わせたが、銃が火を噴くより早く、影がエルフの視界を遮った。
「あなたは、私の獲物」
 視界を塞ぎ、首筋に当てた銃口が振動を伝わせる。たっぷりと死を自覚させたエルフの手がだらりと垂れ、やがてその場に動くものは二人以外に居なくなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オメガ・カストゥール
ほぅ、お頭とな…
そいつが、世界樹嵐を引き起こしているということか。
しかし、ものの見事に木に寄生されているな。
よく燃えそうだ。

よし、ギャラガー、ワイバーン。
引き続き、奴らも燃やしてやれ。
なに、攻撃は引き付けてやる。
UCで攻撃力を強化。
ギャラガーとワイバーンは空から【ブレス攻撃】火の【属性攻撃】で攻撃。
「貫通攻撃なぞやらせぬ。ならば、周囲を火の海にするだけだ」
自らの火の精霊力を強めて、火の【属性攻撃】【範囲攻撃】【焼却】で周囲の木の根っこも含めて燃やしまくる。
「植物と同化したことを悔やむのだな。我は容赦せん」
そして、空に飛びブレスで殲滅しまくる。



 竜の羽ばたきが天に聞こえ、見上げれば赤龍の口から零れる赤の吐息。若い竜二体を伴った猛き竜を、地表より異形の樹木と同化したエルフたちが睨め付ける。
「出やがったな、トカゲ野郎! お頭の手を煩わせるまでもねぇ、ここで撃ち落としてやる!」
「ほう、お頭とな……そいつがこの世界樹嵐を引き起こしているということか」
「そうだ! 残念だったな、遅すぎだ! てめえらなんざ一網打尽だ!」
 赤龍、オメガ・カストゥールは矮小な者の声には答えず、代わりに居並ぶエルフたちを睥睨するように見回した。
「……ものの見事に木に寄生されているな」
 軒並み木に取り込まれたエルフは、それだけならば大いなる力を手にしたように映る。だが彼女らを見るオメガの目は、明らかに格好の獲物を見た時のように愉悦に歪んでいた。
「それがどうした!」
「何。よく燃えそうだと思ってな」
 ドラゴンたちの口から詠唱が響いていたのはいつからか。完成された竜語魔法が、眠れる火精を呼び起こす。
 巨焔のブレスが隕石のように降り注ぐ間にも、二匹の竜が逃げ惑うエルフたちを狩る。赤龍ギャラガーが牙を打ち鳴らして追い縋り、命からがら逃げ果せたばかりのところを飛竜ワイバーンがブレスで焼き尽くす。
「くっそ……! 竜なんざ翼を貫いて墜としてやれば……!」
 マスケット銃へ弾を装填したエルフが陣を組み、壁をも貫く魔弾の詠唱に入る。味方を犠牲にしてでも時を稼ぐエルフたちの策は、この場に限っては裏目に出た。
「フン。斯様な賢しい知恵など我には通じぬ。そちらが時を浪費するなら、その間に周囲を火の海にするまでだ」
 灼熱のブレスが地を溶かし、煮えたぎるの溶岩へと様相を変える。じらじらと立ち昇る陽炎の中で、意識を遠のかせたエルフたちが次々と倒れ伏す。
 意思を手放した彼女たちを抱き留めるのは森ではなく、炎熱の抱擁。
「我が容赦などせん。植物と同化したことを悔やむのだな」
「ち……く、しょう……」
 竜の咆哮が轟く中、空賊エルフの銃が乾いた音を立て、地に落ちた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハロ・シエラ
その魔法の木の葉が視覚を惑わせると言うのなら、こちらは目を使わずに相手をします。
ユーベルコードと【第六感】が、視覚以外の情報から樹木の触手や敵の動きを教えてくれます。
銃を使われるのは厄介ですが、こちらの間合いに踏み込んでくれるなら好都合です。
こちらの武器は剣ですが【カウンター】で対処出来るでしょう。
4発撃ち込まれれば死ぬ、との事ですが……欲を言えば、銃弾など一発も貰いたくはないので【落ち着き】をもって集中して戦います。
その点ではこの戦い方にもメリットはありますね。
痛々しい姿を見て剣が鈍るのは避けたいですから。
傲慢な事を言いますが……私と剣達が、その痛み、苦しみ、憎しみから解放して差し上げます!


炬燵家・珠緒
連携・アドリブ歓迎

エルフたちを横目に考え込み
貴女たちの事情はよくわからないんだけど~~
でも、このままじゃダメだってことだけはわかるよ~~
ねぇ、もう終わりにしよ~~?

エルフたちの攻撃は避けるのに専念
わわっ、いきなり目の前に来たっ!?
しかも、突然撃つなんて危ないよ~~もうっ
上手いことわたしの銃で受けとめれたからよかったけど~~

ん、今の攻撃は見てたから、わたしにも出来る気がする~~
こんな感じかな~~
先程見たエルフの攻撃を真似て反撃を試みる
今のはいい感じに出来たな~~
師匠にもわたしのカッコイイところ見せたかったのにな~~

森も、大地も
みんな貴女たちのこと好きだったと思うよ~~
そんな気がするだけだけどね



 まばらになった敵影、遠くで響く世界樹の大地割る咆哮。間もなく最後の戦端は開かれ、この浮島を揺らがすだろう。
「貴女たちの事情はよくわからないんだけど~~、このままじゃダメだってことだけはわかるよ~~」
 事態が此処に至っても、炬燵家・珠緒に分かるのは断片的な事ばかり。エルフたちの行いが『よくない』事だけは猟兵の直感で分かるが、なぜという動機は未だ飲み込めずにいる。
「でも、痛いのも痛くするのもいやだから~~、ねぇ、もう終わりにしよ~~?」
 珠緒が言い終える間にも弾が地に跳ね、溢れる殺意をこちらへと届けている。ハロ・シエラの頭に対話による解決は既になく、彼女はゆるく頭を振って歩き出した。
「……話して分かる段階はとうに過ぎているでしょう。どうあれ、討ち果たすほかないですが……あの魔法の木の葉は厄介ですね」
 エルフたちが纏うのは惑わしの効力を持つ魔法の葉。渦を巻きながらこちらへ押し寄せる木の葉の波は、どうにも彼我の距離感を錯覚させる。
「とはいえ、こちらの間合いに踏み込んでくれるなら……私には好都合です」
 目を閉じたハロの肌に、ウミヘビの持つ未知の感覚が芽生える。大気の振動と熱を全身の細胞で感じ取り、ハロは視覚に頼らぬまま歩いていく。
 がさりと木の葉が擦れ、エルフの動く音。銃を構える僅かな予備動作ですら、今のハロには慢心に満ちた大仰な動きに映る。
 銃が火を噴く刹那、低く踏み込み、レイピアの刺突を喉元まで届かせる。弾は頭上を過ぎて明後日の方を撃ち、代わりに鋭く突き抜けた切先が血の泡を散らせた。
「どうしたのです。纏めて来てもいいのですよ」
 挑発に乗り、互いに向き合ったエルフが銃を鳴らした。剣の先で弾いた弾は二手に分かれ、太腿を撃たれたエルフが苦しげに呻き、地に転がった。
 片方を確実に処理する合間に、樹木の触手を伸ばして襲い掛かるも、大きな動作ほどハロには読み取りやすい。駆け上がる少女の剣が大元のエルフを貫くまで、さして時間はかからなかった。

   ◇    ◇    ◇

 銃弾の飛び交う戦場を駆け抜けるハロを見ても、同じ芸当ができるとは思えない。どう戦うかと攻めあぐねつつも、珠緒は避ける器用さに関しては自信があった。
「そこの猫娘、覚悟しやがれ!」
「わわっ、いきなり目の前に来たっ!?」
 続け様に放たれる銃弾を肢体の柔らかさで躱し、最後の一発をカラフルなあめちゃん鉄砲で受け止める。
「……っと。突然撃つなんて危ないよ~~、もうっ」
「こいつ、受け止めやがった!?」
 玩具めいた銃で実銃の弾を受けた事にも意表を突かれ、エルフたちの動きが一瞬止んだ。その隙に珠緒はドロップ飴のような弾を込め、やおら歩き出す。
「ん、今のは見てたから私にも出来る気がする~~。こんな感じかな~~?」
 気まぐれな歩法で姿を消した珠緒が次に現れた時、エルフたちの体には四発の弾痕。コピー・キャットの名の如く、今視た技をそのままに模倣し放ってみせたのだ。
「な……」
 何が起きたかもわからず崩れ落ちるエルフを庇い、他の仲間たちが銃弾の雨を降らせていく。けれど動揺した今では狙いは定まらず、珠緒の纏う幻惑の木の葉に遮られるのみ。
(「今のはいい感じに出来たな~~。ホントは師匠にもわたしのカッコイイところ、見せたかったのにな~~」)
 風に乗り、歩む珠緒の往く先で。相変わらず目を閉じたままのハロが次々と背中からエルフを薙ぎ、斬り伏せていく。
(「この戦い方にも思えばメリットはありますね。彼女たちの痛々しい姿を見ずに済む」)
 レイピアと懐刀たる短剣を使い分けながら、ハロは突き進む。辺りにいるエルフの姿もごく僅かで、彼女たちが最後の一群と見ていいだろう。
 残るエルフたちを斬り払い、同じく片し終えた珠緒と目が合った。最後の汚れ役をこの娘に任せるのは忍びないと、鋭い踏み込みでレイピアの刺突を抜き放つ。
「傲慢な事を言いますが……その痛み、苦しみ、憎しみから。私と剣達が、解放して差し上げます!」
 皮を突き破る手応え、最後の息。突き上げた剣の先で命が零れ、重みが増す。
「……あのね。森も、大地も、みんな貴女たちのこと好きだったと思うよ~~」
 そのまま言葉なしに送るのは、躊躇われる気がして。告げた珠緒の視線の先で、帽子が風に乗り彼方へ飛ばされていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『蒼星のカエルラ』

POW   :    双天双魚
レベル×5km/hで飛翔しながら、【二振りの聖剣】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
SPD   :    カエルラ・ステルラ
【導きの蒼き月光により演算された予知】で敵の間合いに踏み込み、【剣圧による光波】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ   :    ツィゴイネルヴァイゼン
攻撃が命中した対象に【爛れ続ける傷】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【崩壊の呪い】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:FMI

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠シルヴィア・スティビウムです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 天へと突き出す浮島台地の上、断崖を登った先に騎士はいた。
 あなたたちの到来に気付いた彼女は、世界樹の瘤に浸食された姿で剣を振り抜く。
「ここまで辿り着いたか。……どうやら配下の者は皆、お前たちの手にかかったようだな」
 ギラリと聖剣に陽光が跳ね返り、敵意を表すように目に飛び込む。

 即座に襲ってくるかと思われた騎士だが、彼女は一度剣を下げこう告げた。
「戦いとはそういうものだ。逆恨みはしないさ」
 生前も戦いで人が死ぬのを見てきたのだろう。
 女騎士の受け止め方は冷静で、あくまで戦況を淡々と見つめているように映った。
「ただし……目的は通させてもらう」
 言い終えた直後。群体化した世界樹が牙を剥き、地を揺らがす咆哮を轟かせた。

 大地から噴出する白い霧。
 何事かと飛び退いたあなたたちは、すぐにそれが「雲」だと気付く。
 大地に深く根差した大樹は雲海を直に流し込み、
 自らが根を張る大地諸共消し去ろうとしていた。

 霧の粒に触れた大地が欠け落ちたように消え、真下に白き雲海が覗く。
 時間をかければこの浮島自体が過去のものとなり、
 次々と崩落が始まるのは想像に難くない。
 そして、溢れ出す雲海に長時間触れれば。
 猟兵といえど、存在ごとオブリビオンへと作り変えられてしまうだろう。

 状況を把握する間にも騎士は地を蹴り、軽やかなステップで間合いを詰めている。
 気圧されている暇はない。
 ここで討ち果たさねば、あなた達も雲海に消える宿命なのだ。
「深入りしたのが運の尽きだ。お前たちも、来てもらうぞ……!」
 二振りの剣を陽光に煌めかせ、
 女騎士――蒼星のカエルラの咆えるような声が大気の粒を揺らがした。
御影・龍彦
※連携、アドリブ歓迎

そうだね、戦いとはそういうものさ
相容れない者が刃を交え
いずれかが、或いはいずれもが果てる

今日、此処で
果たされるのは、僕ら猟兵の想いだ
そして、潰えるのは――

翼を出し、飛行状態で戦闘

身体に満たした魔力での『オーラ防御』
翼をはためかせ巻き起こす『衝撃波』
溢るる雲海を祓いながら
その根源たる騎士と相見えよう

携えるは杖でなく、黒水晶の剣
剣技は嗜む程度だけれど
彼女相手には、きっとこちらの方が相応しい

五感の全てに『第六感』をも使い
相手と樹木の触手の動きを『見切り』
攻撃を『受け流し』つつ
防戦主体で立ち回る

さあ、抱えた想いのまま攻めてこい
受け止め、傷を負おうとも
この身体が動けばそれでいい
ただ一度の、確実な機会だけは逃さない

『カウンター』で至近距離から叩き込むは
刃でなく、全力を込めたUC

世界樹も、気高き騎士も
全てを包み、燃え上がれ
今日、此処で
散っていった全ての命に安らぎを

そして、何も成せず潰えるがいい
堕ちた思想の下の企てよ



 堂々とした騎士の構え。悪びれる事なく彼我の立場を正しく認識し、それでも尚敵であろうとする彼女には、もうどんな説得も通じない事が見て取れる。
 だからだろう。御影・龍彦の発した言葉は淡々として、敵対者へ宛てるには棘のないものだった。
「そうだね、戦いとはそういうものさ。相容れない者が刃を交え、いずれか……或いはいずれもが果てる」
 それまで手にしていた精霊杖に代わり、光通さぬ黒晶の剣をすらりと抜き放つ。刃には闇の魔力が注ぎ込まれ、僅かに残っていた透明な水晶の面影が消えていく。
「今日此処で果たされるのは、僕ら猟兵の想いだ。そして、潰えるのは――」
「いいさ。皆まで言わなくても」
 言葉尻を遮り、騎士は頷く。手に握る聖剣はまっすぐ、龍彦の胸に刺し込まれる角度で保たれている。
「あとは剣に聞こう」
 踏み込みと共に弾ける火花。両者の思惑は、互いを全力で打ちのめす方で一致した。

   ◇    ◇    ◇

 空翔ける剣士の突きを躱し、上を取る。黒水晶の剣で打ち据えたかと思えど、手応えは硬い。
 咄嗟に護りを固めた龍彦の判断は正しく、片方の剣を盾にもうひと振りの聖剣がオーラの護りを貫いた。
 功を焦って踏み込めば串刺しにされていた。距離感を惑わす雲海を羽ばたきで晴らせば、向こうは即座に距離を取る。雲海の主だけあり、雲を巧みに味方に引き入れていた。
(「まったく……油断ならないな」)
 二度、衝撃波を泳がせ身を隠す余地を失くす。騎士はすぐさま上空へと逃がれ、こちらへ叩き込むべく剣を大上段に振りかぶる。
 この騎士と斬り結ぶには、五感では足らぬ。目に見えぬ背後、全身の細胞と肌の触感を第六の目とし、押し寄せる僅かな気流から敵の狙いを察知する。
「させないさ」
 振り向きざま、硬い剣のかち合う音。二振りめを振らせるものかと薙ぐ力で飛ばし、体勢の整う前に反撃に転ずる。
 剣を交わしながら、龍彦は思う。この騎士はまだ、渾身の力を籠めていない。
(「さあ、打ってこい。抱えた想いのまま攻めてこい」)
 受け止め傷を負おうが、身体が動けばそれでいい。ただ一度、この騎士に致命打を負わせられるならば、手傷のひとつ安いものだ。
 一度距離を離した騎士が螺旋状に体を舞わせるのが見えた。こちらの隙がなかろうとねじ込む作戦だ。力と速さに自信のある騎士らしき、強引に押し崩す姿勢が見て取れた。
 待ち侘びた全力勝負の瞬間に、龍彦は静かにほくそ笑む。倒すに力が足りぬなら、相手の力すらも借りてしまえばいい。
 細身の剣が肩口に食い込む。まだだ。尚も引き付け最大の攻撃、幅広の剣に被せて桜花を放つ。
「――燃え上がれ」
 全てを包み、燃え上がれ。幻朧桜と同じ色した薄紅の焔が、青空に向けて大きく炎上する。
「かはっ……!」
 振り払えど消ゆる事のない焔が騎士を灼き、彼女の往くべき黄泉路へと行先を示す。苦しみ悶えなおも闘志を滾らせる彼女を横目に、龍彦は真に憎むべき雲海の中の者へと視線を遣った。

成功 🔵​🔵​🔴​

キアラ・ドルチェ
「金枝祀るネミの裔、キアラ・ドルチェ…推して参る!」
イグニッション!
魔女服ではなく、動きやすい白ドレスに着替え、両手にケルト十字型スティレットを構えて相対

得物差も体格差もあるので、まともに打ち合っては敵いません
受け流し、避け、隙を狙う…「相手」に一撃をみまう機会を待つ

…でも本当の狙いは…カエルラに気付かれないよう、世界樹の方へと誘導…攻撃範囲に入ったら…

世界樹に向け、宿木剣を行使!
これが私の狙い! 雲海を流し込む樹を破壊すれば、野望は絶たれる!
破壊が無理でも雲海の速度を遅らせれば、他の方が何とかしてくれる!

カエルラ、もう貴方の野望は叶わない
観念なさい…いえ、どうかもうお休み下さい、悲しき騎士よ



 舞い踊り、騎士は一時雲海に身を潜めた。逃げる為でなく攻めに転じるためだ。
 敵の瞳に迷いなき闘志をみたネミの白魔女は身構えこそしたが、彼女にももう怯えの色はない。
 屍山を踏み越え、ここまで来た事の意味。古来ドルイドは戦の調停にも出向き、時に人を裁いたとも聞く。甘く優しさを振りまくばかりでは務まらぬのだ。
「……イグニッション!」
 魔女の服から装いは足元の捌けた白のドレスへ、手に握るはケルト十字をあしらった慈悲の短剣。
「金枝祀るネミの裔、キアラ・ドルチェ……推して参る!」
 戦意に応え、雲海が人の形に盛り上がる。間髪入れず襲い来る騎士を身を捻って躱し、首元に迫った剣を短剣で防ぐ。
 キン、と小気味のいい音を残して去る騎士へ、キアラは防戦に回りながら追い縋る。女性としては長身で体格に恵まれたカエルラの事だ、まともに打ち合えばきっと押し負ける。
 虎視眈々と牙研ぐ獣のように、息を潜めながら剣戟を潜る。女騎士からすれば首を掻く瞬間を狙っていると見えたに違いない。
 読みの半分は正しくそうだ――キアラは機会を伺っていた。故にキアラの真の狙いに気付かなかったのはカエルラの慢心だったといえよう。
(「ヤドリギよ……つらぬくものとなりて、我と共に駆けよ」)
 小声で唱えた複製剣の呪文、無数に並ぶケルト十字が一斉に騎士の方を向く。
(「疾く駆けよ……真の敵の元へ!」)
 マジックのナイフ投げの如く鋭く手首を返せば、一斉に放たれる短剣。その全てを弾こうとした騎士は、ナイフの殆どが自分を無視して通り過ぎる事に目を剥いた。
「な……!?」
「これが私の狙い! 世界樹さえ、破壊してしまえばっ!」
 雲海を発し続ける樹の幹に突き立ち、割れた幹の隙間から雲になる前の蒸気が一気に漏れ出す。慌てたカエルラが崩壊の呪いを刻まんとするが、精彩を欠いた一撃は空を切るばかりだ。
「カエルラ、もう貴方の野望は叶わない。観念なさい……いえ」
 剣を防ぎながら後退するキアラは、騎士の目を間近に見た。苦渋と怒りにこそ満ちていたが、本来は人を想える優しき光が垣間見えた。
「……悲しき騎士よ。どうかもう、お休み下さい」
「わかった風な口を……!」
 手に伝う、剣を防ぐ手応えと痺れに目を瞑る。そうして後続に全てを委ね、力を使い終えたキアラは一時退いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハロ・シエラ
あのサイズの剣の二刀流……ケース・オブ・ソード、でしたか。
同じ様なスタイルの剣士としては負けられませんね。
敵の動きは速いですから、その動きを【見切り】つつ戦う事になるでしょう。
こちらも両手の剣を使い、攻撃を【受け流し】て行きます。
その様に「剣での決闘」を印象付けつつどこかのタイミングで【武器受け】し、【怪力】により敵の両方の剣を押さえつけてしまえれば良いですね。
そうなるとこちらの剣もどちらも塞がってしまいますが、それは承知の上。
一瞬でも良いので拮抗状態を作り、その隙に【軽業】で宙返りしながらユーべルコードを乗せた蹴りで攻撃します。
誇り高き騎士には申し訳ありませんが【騙し討ち】させてもらいます。


オメガ・カストゥール
さて、貴様か。
我々の領域を侵す世界樹嵐を引き起こすものは。
一切容赦はせん。
貴様も植物に取り憑かれおって。
盛大に燃えやすそうだな。

ギャラガーとワイバーンは空中で遠距離から【ブレス攻撃】火の【属性攻撃】による援護射撃で奴を引き付けてから我が【ブレス攻撃】火の【属性攻撃】【焼却】で奴を攻撃、一気にUCで防具もろとも破壊を試みる。
「我々の領域を侵す貴様を竜王が終わらせる。躯の海に消えるがいい!!」

アドリブ歓迎



 野生の考えを色濃く残す竜は、空に縄張りを持ち領空侵犯を見逃さぬ。
 それはオメガ・カストゥールにも言えた事で、世界ごと雲海に包もうとした罪の前では情状酌量の余地はなさそうだ。
「貴様か。我々の領域を侵す世界樹嵐を引き起こすものは」
 厳かに告げる赤龍の声にも、騎士に気圧された様子はない。大きな敵とも戦い慣れているのだろう、二振りの剣を構えたカエルラは宙へと浮かび上がり、射抜くような瞳でオメガをまっすぐに見返した。
「貴様も植物に取り憑かれおって。盛大に燃えそうだな」
「そのまま返そう。お前こそ、図体がでかくて斬るに丁度いいだろうさ」
 好戦的な二者の姿が掻き消え、ガキンと剣と牙の交わる音。互いの武器を挨拶とした二人を遠巻きに見ながら、ハロ・シエラは相手の出方を注意深く見た。
「あのサイズの剣の二刀流……ケース・オブ・ソード、でしたか。同じ様なスタイルの剣士としては負けられませんね」
 聖剣の力か、身に宿した加護か。飛翔能力を備えた騎士は目で追うのがやっとで、斬り結ぶには五感だけでは足りなさそうだ。
「こちらも手控えてはいられません……持てる全てをぶつけると致しましょう」
 レイピアと懐刀、二つの剣で間合いを取り、ハロは龍と騎士の入り乱れる戦場へと身を潜らせる。騎士も手練れ、直線的に向かうとは限らず、目が慣れるまでは受け流すのが精一杯に思えた。
 螺旋を描きながら二頭の竜が舞う中、まずオメガが動きを見せた。
「我々の領域を侵す貴様を、龍王たる我が終わらせる。骸の海に消えるがいい……グルァアアッ!」
 散発的な若竜のブレスに被せるよう、オメガの放つ特大のブレス。燃え盛る恒星の如き火球が大気を巻き込み、赤熱して爆ぜながら騎士へと駆ける。
「流石に竜の長、手強いな……だが!」
 太刀筋が閃き、続いてチンと納刀の音。居合の要領で放つ袈裟の一撃が、火球を真っ二つに割り爆散させた。
「小癪な……!」
 渾身の一撃を防ぎ切った騎士だが、すぐさま追い縋るハロが息をつく間も与えない。剣と剣が交わり身を引いた後に、ハロは決闘を挑むように剣先を突きつける。
「……覚悟しなさい」
「真っ向から挑まれたとあっては受けざるを得ないな。だが……覚悟するのはお前の方だ!」
 聖剣の重圧が小柄なハロを追い込み、徐々に後方へと押しやった。力量の拮抗する剣の使い手が切り結べば、体格に恵まれた方が次第に優勢となるのは必然だ。
 追い込まれて尚、ハロは勝機を諦めずに剣を振る。当然だ――彼女の狙いは正攻法でなく、騎士ならではの油断を誘う事にあるのだから。
 群青の剣が陽光を受けて輝き、ハロの頭上でびたりと止まる。防いだ矢先に来る細身の剣は、首を捻った後に柄を短剣で絡めて辛うじて防いだ。
 二振りの剣がじりじりと首筋に迫り、息が荒ぐ。
「悪く思うな……これも戦いだ」
「そうですね……申し訳ありませんが、決着です」
 言葉だけを残し、ハロの重みがふっと消えた事に騎士は気付く。剣を阻む力が急に消え失せ、つんのめる騎士の眼下の雲には、ひるがえる影。
「これも……戦いですから!」
 鋭く頸椎を撃ち抜く、渾身の蹴り。視界ががくがくと揺らぐ騎士を残し、ハロは後方へと飛びずさっていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シリン・カービン
風の精霊に頼み、自分とカエルラの間の雲海を吹き払う。
良好な視界がこの策の条件。

カエルラの動き出しを見切り、それより早く先手を打つ。
超視力と時の精霊の加護が彼女の動きをスローモーションのように見せ、
その動きより早く照準を動かす。
瞬間移動でも無い限り、予知が見せるのはどう動いても自分を貫く銃弾。

傍目からは二人とも固まったよう。
眉間や心臓を狙わないのかと問われれば、
「それで貴女は止まるのですか?」

予知を封じられれば遮二無二向かってくるだけ。
後は覚悟勝負。
彼女の内の世界樹の核を植物の精霊の力で見つけ出し
火の精霊弾を立て続けに撃ち込む。
光波は避けない。4発目を喰らう前に、墜とす。

「あなたは、私の獲物」


炬燵家・珠緒
おぉ~~見渡す限り雲しかない~~
むむむっ、これはもうあんまり時間が残ってないってことかな~~
遅くなっちゃったけど、わたしも加勢するよ~~

え!?待って、待って、速いよ~~
素早い動きに翻弄されつつ、避けることに精一杯
銃を構え、撃つタイミングを伺うけど…
全然チャンスがない~~
ご主人様、助けて~~

ねぇ
貴女は何に怒っているの?
それとも、怒っている振りをしているの?

――あ、『今』だ
本能のままに狙いを定めて引き金をひき魔弾を撃つ
青い空に虹の滴がキラキラ光って綺麗でしょ~~
今のが本当の『貴女』だね
間に合ったかな?
会えてよかった~~

貴女の目的を果たすことには協力できないけど
貴女の願いが青い空に届きますように



 騎士の動きにも翳りが見え、剣技に当初の冴えは見当たらない。
 だが世界樹の生み出す雲は益々濃さを増している。騎士の失墜と自分達の消滅、敵味方ともに破滅の秒読みが耳元で聞こえるようだった。
「おぉ~~、見渡す限り雲しかない~~」
 目を瞬いた炬燵家・珠緒は雲隠れした騎士の姿を見通そうとしたが、彼女の視力をもっても雲を見透かす事はできない。代わりに見えたのは消えゆく大地。雲海に触れた所が初めから何もなかったように欠け落ちていく。
「むむむっ、もうあんまり時間が残ってないってことかな~~」
「そのようですね。私たちも手をこまねいてはいられません」
 急ぎ、シリン・カービンが風精霊の力で雲を吹き払い、騎士に至るまでの視界を確保した。身を隠す場所を失った騎士が、こちらへジグザグの軌道を描いて動き出すのが見えた。
「え!? 待って待って、速いよ~~」
 慌ててあめちゃん鉄砲を構えるも、シリンのように落ち着き払ってはいられない。目で追うようでは駄目だと知りつつも撃つ間がなく、珠緒はここに居ない主を求めて視線をさまよわせた。
「全然チャンスがない~~……ご主人様、助けて~~」
 ふ、と笑みを零したシリンが精霊猟銃を構え、時を司る精霊に助力を請う。騎士がこれから辿る道筋がコマ送りのフィルムのように空に示され、シリンはその悉くを貫くよう照準をあてた。
「どれだけ予知の能力があっても……これは避けようがないでしょう?」
 己を導く筈の蒼き月光が示す、破滅の未来。騎士の駆け足が空中でぴたりと静止し、両者は動きを止めた。

 高所を過ぎる風が音を立てて吹き抜け、彼我の遠さを引き立たせる。蒼き星の見せる銃弾の軌跡は、いずれもが腿や腕を射抜いていた。
「……この期に及んで情けのつもりか?」
「逆に問いましょう。それで貴女は止まるのですか?」
 急所を外した軌跡にカエルラが疑問を呈すれば、シリンはあえて問いで返す事で答えとした。成程、眉間や心臓を狙われようが、ここまで来て止まれる理由もない。
「ねぇ、貴女は何に怒っているの? それとも、怒っている振りをしているの?」
 一時足を止めた騎士へと、珠緒は胸の内の疑問を投げかける。戦いは避けられずとも、相手の事情を推し量らず銃を向ける事は信条に反するように思えた。或いは――ご主人様ならそうはしなかっただろう、とも。
 真意を問われた騎士は珠緒に、寂しげな笑みを返す。
「怒れる振り……か。確かに今私の胸にある憤りは、我が物だけではないかもしれんな」
 語りながらも飛んでくる光波を躱す際、亜麻色の髪が光に当たって数本空を舞う。
「我ら蒼き魚座の名の下に、天帝をお守りすべく集いし者。亡き魚座の意志を継ぎ、いつまでもお守りする……筈だった」
 かつて覇を唱えた数多の国が栄え、衰え、雲海に姿を消した。カエルラももしかすれば、そうした亡国の騎士の一人だったのやも知れぬ。
 怒りの半分は世界樹。だがもう半分は紛れもなく彼女自身、祖国や帝を亡きものとした世界への怒りだ。その自覚があったから、あえて不名誉な捨て駒の役も引き受けたのだろう。
「さて……もういいだろう。続きは剣で語るとしよう」
 瞬時に消え失せる騎士。シリンの銃が火を噴けば、腿を撃たれたまま騎士は空を蹴り加速する。
 空中で繰り広げられる、目にも留まらぬ攻防。傍観していた珠緒は本能的に何かを悟り、カラフルな鉄砲を掲げる。
「――あ、『今』だ」
 放った魔弾は星屑を散らし、三発目の光波を振り抜いたばかりの騎士の胸に着弾した。虹色の雫が空へと飛び散り、雨となって降り注ぐ。
「……!」
 太陽に滲む虹の円環に、騎士は何を思っただろう。空の美しさか、はたまた騎士の天啓を受けた在りし日の記憶か。
 警戒が留守になった騎士の胸元、無防備な世界樹の核へとシリンの火の精霊弾が吸い込まれる。
「あなたは、私の獲物」
 ごう、と樹木焼く炎が噴き上がり、埋め込まれていた箇所が焼け焦げて黒い穴となる。それきりだった。魚座の騎士として務めたもの――身も心も、微塵もそうとは思わせぬほど精巧にできた『人形』はそれきり動きを止め、雲海の中へと落下していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 核を失った世界樹が動きを止め、根腐れを起こしたようにしな垂れる。
 次第に脆くなる樹はぐずぐずと崩れ、やがて雲の中に霧散した。
 いつの間にか雲海は晴れ、勇士たちが愛する青の晴れ間が広がっている。
 あなたたちは実感する。嵐は過ぎたのだ、と。

 戦場となった浮遊大陸も幸い天使核は無事で、ただちに雲海に沈む事はない。
 世界樹嵐の成果も伝わる事なく、屍人帝国の目論見は失敗に終わった。
 今頃彼らは次の算段を立てているかもしれぬが、
 計画の一端を食い止めた事で彼らの計画は大きく狂っただろう。
 グリモアの導きで敵地に潜入している者もいると聞く。
 あとは彼らの報を待つか、続いて乗り込むか――いずれにせよ、
 屍人帝国との戦いは佳境に入っている。

 空から勇士たちの呼び声が降り、ガレオン船が浮遊大陸の端へと着岸する。
 気のいい彼らは武勇伝をせがむだろうし、歓待を受けずに帰るのはむずかしい。
 覚悟しておく事だ。彼らの振る舞う魔獣料理は食べごたえも満点。
 気を抜けば、満腹で沈められる事さえあるのだから。

 空いっぱいに帆を張るガレオン船が、風の力を受けて飛び立った。
 はるか上空を見上げれば眩しい太陽が輝き、睫毛に虹の円環を滲ませる。

 ふとその中に、騎士の纏う色を見た気がして。
 あなたはゆっくりと目を閉ざした。

最終結果:成功

完成日:2022年08月28日


挿絵イラスト