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銀河帝国攻略戦㉑~帝国の大幹部・黒騎士を討て

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #黒騎士アンヘル

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「集まれ皆の衆!!銀河帝国に楔を打ち込む時が来ましたよ!」
 もはや恒例になりつつあるぴょこぴょこさせたアホ毛を持つアリア・ヴェルフォード(謎の剣士X・f10811)はそう呼びかける。
「舞台は戦争が終盤に近付きつつあるスペースシップワールドです!」
 現在行われている銀河帝国との戦争において、猟兵と向こうの世界の人々で結成された解放軍は敵拠点『エンペラーズマインド』を陥落させた勢いそのままに優位に戦況を進めていた。
 既に解放軍は銀河帝国の三幹部の直属の部隊を強襲しており、一部ではそれを突破、殲滅は時間の問題となっていた。
「現在私たち解放軍は戦局を大きくこちら側に傾けるために銀河帝国の幹部への進行を開始し始めました」
 敵の幹部は白騎士ディアブロ、黒騎士アンヘル、ドクター・オロチの三人であり、これらを撃破することが出来れば解放軍の勝利は目前だろう。

「その中で今回私が予知したのは黒騎士アンヘルの出現するであろう艦艇の位置情報です!皆さんをそこに転送するので黒騎士アンヘルを討ち取ってきてください!」
 銀河帝国「二大巨頭」のひとり、スペースノイドのフォースナイト『黒騎士アンヘル』、 アリアが言うにはこの敵を逃すことがあっては新たなオブリビオン・フォーミュラとなりうる可能性が残されてしまうらしい。
「すでに黒騎士アンヘルの周りには他の戦力が存在していません!でもそれは相手が1人の戦士として最大限の力を発揮できる戦場であるということです!だから油断は絶対にしないでください!」
 黒騎士アンヘルは確定された過去を操るユーベルコードを持つという。
 つまりは猟兵たちのあらゆる経験を封じたり、過去の傷を一気に蘇らせたりと数々の険しい過去を持つ猟兵たちにとっては天敵にも等しい。
「これを打ち破ってはじめて5分5分です!この能力への対策を万全にしてから挑むようにしてください!間違っても無理はしないように!よろしくお願いします!」
 アリアはそう注意を促し一礼すると、準備と覚悟を決めた順に猟兵たちを順次テレポートで送りだした。


小牧葵
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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 黒騎士アンヘルは、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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 戦争は4作目、こんにちは小牧葵(こまき あおい)です。
 今回は幹部の1人黒騎士のアンヘルを倒すシナリオです。
 難易度は難しいです(判定は厳しく行きます。
 場合によってはプレイングの採用も若干絞るかもしれません。
 その分大いに盛り上がるように頑張っていきますのでよろしくお願いします。
 皆様の熱いプレイングをお待ちしています。
42




第1章 ボス戦 『黒騎士アンヘル』

POW   :    消えざる過去の刃
【虚空から現れる『空間に刻まれた斬撃』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    過去喰らいの三呪剣
【過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣】【過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣】【戦うに至った過去を封じる灰の呪剣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    記憶されし傷痕
【対象の肉体】から【過去に刻まれた傷跡や病痕】を放ち、【一度に再現され肉体を蝕む出血や疾病】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●その黒騎士は待ちわびる
 既に解放軍によって撃墜された無人の艦艇、そこに鮮血の如きオーラを纏わせた黒騎士が佇んでいた。
 彼こそが帝国の二大巨塔の片割れ、黒騎士のアンヘル。
 確定された過去を操るという強大な力を持つオブリビオンである。
 黒騎士のアンヘルはその場で1人、この後にここに訪れるであろう宿敵を待つ。
「来るがいい、我を討ち取らんとする忌まわしき猟兵どもよ。そして知るがいい、貴様らの過去が我に握られているという事実が何を意味するのかを」
 猟兵たちは知ることになる。
 過去とは希望と強さ、あるいは後悔と反省を与える過ぎ去った事象なのではなく、自身に牙を突き立てる巨大な獣の実像であるということを。
トリテレイア・ゼロナイン
黒騎士アンヘル…「白いウォーマシンの騎士」として無視できる存在ではありません。人々の安寧の為に戦う紛い物の騎士として、銀河皇帝に仕える黒騎士に勝負を挑みます
相手は格上、死力を尽くさねば届かないでしょう

「消えざる過去の刃」への対抗策を考えねばなりませんね
「防具改造」で格納銃の予備弾倉を大量に装備、戦場についたと同時に戦域全てをカバーするように乱射
発射した弾丸が切断、弾かれた箇所に刃があるということを「見切り」ます
そこを避けながら「スライディング」接近、「怪力」による「武器受け」「盾受け」で攻撃を防ぎつつ「カウンター」重視の近接戦を仕掛けます

味方を「かばう」際はあえて刃に飛び込む覚悟もいるでしょう


天御鏡・百々
我がヤドリガミとしての仮の体は
これまでの猟兵としての戦いにて幾度かの傷を受けている
それを再現するとは……なかなかに厄介な技を使う

しかし、傷ならば治療すればよいだけだ
我が本体たる神鏡より発する「生まれながらの光」にて
傷を治療し、動きを封じられることを防ぐとしよう
我だけでなく、他の猟兵も傷の再現を受けるならば治療しよう
(救助活動7、医術7)

敵の攻撃に対処したら、今度はこちらの番だ
真朱神楽(武器:薙刀)によるなぎ払い7で攻撃するぞ

ちなみに我が本体である神鏡については
ヤドリガミとなるまでは大切に神社に祀られていたものだ
一筋の傷も無い故、敵の力も通じぬはずだ

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、絡み歓迎



●先鋒戦
 決戦の場に先陣として転送されたのは白いウォーマシンの騎士であるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)と神鏡のヤドリガミである天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)だった。
 トリテレイアと天御鏡は一度お互い顔を見合わせた後に頷き、この先に待つ強大な力を持つオブリビオンがいる部屋へと向かって行く。
 そして部屋に足を踏み入れたと同時に2人を殺気が襲った。
 そこにはこちらを見据えている黒騎士アンヘルの姿。
「待ちわびたぞ、猟兵どもよ。さぁ無駄話は無用だ。早々にかかってくるがいい」
 待ち構える黒騎士を相手に先鋒戦の幕があがった。

 まず最初に動いたのはトリテレイアだ。
 トリテレイアから数多の銃声が部屋に鳴り響く。
 装備していた偽装騎士兜と両腕部の格納銃器により、部屋全体に対して銃弾を乱射したのだ。
 トリテレイアは余すところなく銃弾をばらまくために予備弾倉を何重にも装備してきていた。
 これが黒騎士の『消えざる過去の刃』攻略のために行われたトリテレイアの秘策。
「人々の安寧の為に戦う紛い物の騎士として、銀河帝国の黒騎士アンヘルに勝負を挑みます!いざ覚悟!」
 そして名乗りをあげ、いざ突激せんと脚部スラスターを噴出させたトリテレイアが見た光景は―――彼が予想していたものと違っていた。
 トリテレイアは発射した弾丸が切断、弾かれた箇所に予め黒騎士がつけた斬撃があるものとして突撃しようとしていた。
 だが実際にこの戦場で切断されたのは黒騎士が手に持つ紅色の剣によって為された幾つかの弾丸だけだった。
 それ以外の黒騎士への弾丸はその鎧により弾かれており、その他の弾丸は部屋の壁にその銃痕を残している。
 そう、トリテレイアは1つ誤解していたのだ。
 虚空から現れる斬撃は黒騎士が黒騎士自身の意志によって発動するまで現実には存在していない物であり、現実を舞う銃弾が干渉できる余地などなかったことを。
 自身の予想とは違った。だがトリテレイアは黒騎士へと向かって突撃を行う。
「相手は格上、死力を尽くさねば届かないでしょう」
 名乗りをあげたのだ、ここで止まってしまうのはトリテレイアの騎士道に反する。
 そして突撃したトリテレイアに待ち受けていたのはどこに存在するかもわからない黒騎士による空間に刻まれていた斬撃。
 トリテレイアは高感度マルチセンサーを併用してその斬撃を見切り避けようとする。
 確かに予め来ることが分かっているならば唐突に目の前に現れたとしても一応対処することは可能だ。
 トリテレイアもその例外ではなく完全な回避はできないものの何とか致命傷は避けていた。
 だが―――体内で発生するそれを対処することは彼に限らず誰にとっても不可能だった。
 トリテレイアの身体は体内にて発生した斬撃によってその超重装甲ごと切断される。
「我の部下を屠ってくれたのだ。手心を加える気はない」
 そして黒騎士の言葉に連鎖するように虚空から現れた斬撃が幾重にも彼を斬り裂いた。
 それによってトリテレイアの意識は途絶え―――このまま終わるはずだった。

 時は少し遡り、トリテレイアが突撃を開始した時に天御鏡は彼を援護するために『生まれながらの光』を準備していた。
「トリテレイア殿!今援護し…っ!!!」
 だがその言葉は先が続かなかった。
 なぜなら天御鏡にはいつの間にか数多の損傷、そしてそこから本来ならば有るはずのない出血が生じていたためだ。
 何重にも付けられた傷は今つけられたものではない。
 それはこれまでに猟兵としての戦いに出向いて受けてきた傷跡。
 崩れ落ちていく天御鏡の双眼はこちらを見つめている黒騎士の姿を捉えていた。
 この傷跡を開いたのは黒騎士の『記憶されし傷痕』、対象の肉体から過去に刻まれた傷跡や病痕を一度に出血や疾病として再現することでその動きを封じるユーベルコードである。
 天御鏡の意識が唐突に薄れていく。
 もちろんヤドリガミの肉体は仮初のそれ、本体である神鏡は無事である。
 ヤドリガミとなるまで神鏡は大事に祀られてきた。
 一筋の傷もないから敵の力も通じぬはずだと、天御鏡はそう思っていた。
 だが、仮初の肉体から本来あるはずの無い出血があった。
 流れていくそれはおそらくヤドリガミとして獲得した魂だろうと直感的に感じた天御鏡は危機感を持つ。
「(意識が・・・存在が・・・消える・・・消えてしまいそうだ!・・・はやく、はやく治療しないと)」
 薄れゆく意識の中で『生まれながらの光』を自身の仮初の肉体に使う天御鏡。
 意識を失う前にそれが間に合ったのはトリテレイアを援護しようと準備していたためだろう。
 運がよかった。
 もう少し遅れていたらそのまま意識を飛ばしてしまう所だった。
 聖なる光の治療によって肉体の傷口が塞がる。
 それによって魂の流出が止まった上で回復し、天御鏡はしっかりと意識を取り戻した。
「なかなかに厄介な技を使うものだ・・・」
 そう言いながら顔をあげた天御鏡が見たのは幾重にも斬り刻まれたトリテレイアの姿だ。
「くっ、我が気を取られている間に!」
 そして咄嗟に『生まれながらの光』による聖なる光をトリテレイアに飛ばし、黒騎士に向かって駆け出した。
 高速治療が売りの『生まれながらの光』も損傷が大きすぎたトリテレイアを癒すには時間がかかる。
 トリテレイアが復活するまで黒騎士の攻撃に耐えるのは天御鏡の役目だった。
「ほう、終わりだと思ったが・・・やはりヤドリガミというのはしぶといな」
 接近してくる天御鏡に気付いた黒騎士はそう言いながら紅色の剣を構えた。

 トリテレイアは失いかけていた意識を取り戻す。
 切断されたはずの自身の身体は修復されていた。
 トリテレイアは状況を理解しよう前を向くと黒騎士と薙刀である真朱神楽を持つ天御鏡がお互いの武器を撃ち合っている。
「守るつもりが守られてしまいましたか...ここからはその役目は私が請け負います」
 トリテレイアはそう呟き大型のシールドを構え直して『機械人形は守護騎士たらんと希う』の詠唱を行い乱戦に加わっていく。
「『御伽噺に謳われる騎士たちよ。鋼のこの身、災禍を防ぐ守護の盾とならんことをここに誓わん!』」
 そして天御鏡に振りおろされた紅色の剣を割り込むようにトリテレイアはそのシールドで受け止める。
 仲間を守るためにあえて剣を受けに行くことで身体能力を上げ、力任せにはじき返した。
 それによって生じた黒騎士の動作の歪みに反応した天御鏡が真朱神楽を横になぎ払い攻撃を食らわせる。
「意識を取り戻したようだな、トリテレイア殿。我1人だと少々きつかったところだ」
 戻ってきたトリテレイアに天御鏡はそう言いながら真朱神楽を構え直す。
「ありがとうございます、天御鏡様。ここからは連携で行きましょう」
「礼は終わってからだ。よし、連携だな。では行くぞ」
 そして2人は黒騎士へと向かって行き―――互いにダメージを重ね合った後にグリモア猟兵であるアリアの判断により撤退、無事に帰還することとなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レクシア・ノーレッド
―テレポート前に、【接続/解放】を発動しておこうかな。

対抗策は【緊急射出】!体を分裂させて、敵の<<黒の呪剣>>だけ集中して避ける!
回避後に残ってる個体だけで跳ね返りながら接近、どこでもいいから「捨て身の一撃」をかますよ!
高圧電流を纏った体、触れなくても近ければ感電は狙えるはずだし!

―もし、分裂したうち半数くらい残っていたなら。
接近から【侵食/捕食】を狙おうかな。いくら魔法でも、無詠唱で近ければよっぽどじゃなけりゃ外さないよ!

「今を生きる。過去も未来も、後で考えればいいからね!」
「…生憎、私は戦闘以外の経験は無くてね。目を覚ました時から、私は兵器だったんだよ?」



●次鋒戦
 先鋒である2人の次に黒騎士アンヘルのいる部屋に直接転移してきたのは扇情的な格好をしているブラックタールのレクシア・ノーレッド(アーティファクト クリーチャー - ドレッドノート・f01101)だった。
「次はブラックタールか。本当に様々な種族が入り混じっているな、猟兵どもは」
「悪いかな?色んな人たちがいていいと思うけどね!」
 黒騎士のにレクシアはそう言葉を返す。
 だが内心レクシアは焦っていた。
「(接続/解放が切れてるみたいだね・・・アリアちゃんグリモア猟兵としては新人だからかな)」
 レクシアは転移前に高圧電流を纏った身体へと変身することで戦闘能力を上昇させてから挑もうと思っていたのだ。
 だが転移されてきた途端にその効果が切れていた。
 何が原因かは定かではないが、ここは黒騎士が猟兵たちを出迎えるために設えていた場所でもある。
 そういう可能性も考慮していたレクシアは今ある手を使って戦うことを考える。

 そしてレクシアは『緊急射出』による分離を考え詠唱しようとしたときその身体に1本の白い剣が突き刺さっていた。
 それは黒騎士の『過去喰らいの三呪剣』の1つ、過去の鍛錬の経験を封じる呪剣だった。
「それを使うのをこちらが待つとでも思うのか?」
 黒騎士の周囲には2本の剣が浮き、その中の過去の戦闘の経験を封じる黒い呪剣が射出される。
「(あれは絶対に当たったら駄目だ!)」
 レクシアには戦闘以外の経験はなかった。
 だからこそ戦闘の経験を封じるその黒い剣は絶対に避けなければならないと初めからレクシアは決めていたのだ。
「『行くよ、見切れるかな!』」
 レクシアは『緊急射出』による思考を共有した複数体への分離による回避を試みる。
 その発動ぎりぎり間に合い、分離した内の1体に黒い呪剣が突き刺さった。
 残っている個体はまだまだ多い、この数の暴力で攻めてやろうとしたレクシアを異変が襲った。
「あ・・・れ?」
 抜け落ちていたのだ。この後どう動けばいいのか、戦闘の経験が。
 今まで自然とこのユーベルコードを扱っていたがゆえに気付かなかった罠。
 それは分裂した1体1体は別人などではなく総じてレクシアだということ。
 1体に命中さえしてしまえばそれはレクシアという存在の戦闘経験をすべて奪っていくのだ。
 そこで硬直してしまったレクシアに最後の1本、戦うに至った過去を封じる灰の呪剣が突き刺さる。
 そしてレクシアはここに至るまでのことを忘れた。
 3本の過去を奪い去る呪剣が命中したことにより『緊急脱出』の効果が封じられ分離体は1体へと強制的に戻される。
 呆然としたレクシアに黒騎士が歩み寄り紅色の剣を掲げて告げる。
「これが過去を握り締められているという恐怖だ」
 そしてその剣が振りおろされ―――る前にレクシアは黒騎士へと抱きついた。
「なっ」
 動くはずがないと思っていた敵が急に動き出したことにより思わず黒騎士から焦燥が漏れた。
 そして自身の身体を飲み込もうとするレクシアを剥がすために無理矢理にオーラの放出を行い黒騎士は距離をとり疑問を投げかける。
「なぜ動く?なぜ戦う?貴様にはその理由は分からないはずだ」
「さあ?私もなんでここにいるのか分からないけど、私は兵器だから今を生きて戦うんだ。その他のことは後で考えればいいからね!」
 レクシアが動けた理由、それはレクシア自身が生まれたときから兵器だったことにあった。
 戦闘経験も鍛錬経験もない、だが自分は兵器であり戦うことにすべての意義がある。
 だからレクシアはこの場を戦い抜くことを決め、自身の持つ装備を使って不恰好ながらも黒騎士と戦い抜き、そして転送によって帰還した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

エルス・クロウディス
またコピー……でも、使いこなしてくる前提だろうな。

初手、周囲に逆綴をぶちまけて骸装壊態で補強し、簡易の壁に。
目を塞ぎつつ、<ダッシュ><ジャンプ>で後退。
まずは態勢を整える――と、すれば、即座に追いすがってくるだろ。
壁は避けるかぶち抜くか……そこそこ隙にはなるだろうし、迂回して二段階でくるか?

そこで<残像>と<迷彩>の合わせ技。
加えてエアビートで即座に方向転換し、視覚を欺く。

隙は一瞬でいい。
そうすれば、
「こっちの十八番で、負けてられないよな?」
錬契に切り替えて、今度はこっちの番だ。
落袈勢の欠点は直線機動なわけだけど、これ、実は二刀交互投げである程度カバーできるんだよなぁ!

即興・連携〇



●中堅戦
 既に2戦が行われた艦艇に次に転移されたのはエルス・クロウディス(昔日の残響・f11252)だ。
 エルスは周囲を見渡した後そこに佇む黒騎士を見て気さくに話しかける。
「気分はどうだい?黒騎士」
「ふん。止めを刺そうと思えば逃げだし、そして新しい敵が来る。それが楽しいと思えるか?」
「ははっそりゃそうだ。こっちはあんたを削りに来てるんだからな」
 黒騎士の対応に笑い、そしてエルスは手にもつ十字槍である骸装:闇套を逆綴へと変化させ身構える。
「ほとほとに忌わしき猟兵どもだ。貴様の次もいるのだろう。ゆえにその残弾が切れるまで・・・」
 そこで一拍おいた黒騎士は自身の周囲に3本の呪剣を侍らせる。
「貴様らの過去を喰い尽くしてくれる!」
 そして過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣が射出された。

 白い呪剣がエルスに迫る。
 今からユーベルコードを展開しても1本目には間に合わない。
 ゆえにエルスは砂鉄に似た性質を持ち形状変化が可能な逆綴を周囲へとばら撒き、簡易な壁を形成させた。
 それと同時に手袋から強力な糸である骸装壊態によりその壁を補強する。
 そして直線状に射出された白い呪剣はその壁に阻まれた。
「まずは1本」
 そう呟いた後にエルスは即座にその場を後方へと飛びのく。
 そして壁のすぐ裏、エルスが居た場所の床に2本目の過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣が突き刺さる。
「これで2本」
 壁を作ったのは黒騎士の視界を封じる意味合いがあったのだ。
 その壁の裏でエルスは最後の1本を回避するためのユーベルコードの詠唱を行う。
 そして壁は黒騎士自身の紅色の剣によって破壊された。
 エルスをその視界に捕らえた黒騎士は最後の戦うに至った過去を封じる灰の呪剣を射出する。
 だがその呪剣がエルスを捕らえることはなかった。
 黒騎士は飛びのいたエルスに向けてそれを射出したが、それはエルスによって作り出された残像でありエルス自身は『エアビート』による空中での180度の方向転換を行っていたのだ。
 全ての呪剣が外れたことにより黒騎士の先制攻撃は全て不発に終わった。
「3本目!ここからがリスタートだ!」
 エルスは破壊された壁の元となる逆綴を回収し即座に準機械式巨大剣である錬契へと装備を変えて黒騎士へと迫る。
 そしてエルスの作戦はこれだけではない。
 全てを打ち破った後で5分5分なのだから、そこから先に黒騎士相手にどう攻撃を当てるかをエルスは考えてきていた。
 紅色の剣を身構える黒騎士に打ち込む様相を見せるエルスだが、自身の持っていた錬契を黒騎士に向け投擲する。
 雷のようなものを纏いながら迫る錬契を黒騎士は余裕を見せて回避する。
「なにっ!?」
 だが投げられていたそれは1本だけではなかった。
 錬契は2本の剣を組み合わせて作られる巨大剣、ゆえに投げられた錬契は2本。
 1本目の陰に隠れるように迫っていた2本目の錬契に黒騎士は回避が間に合わずに咄嗟に紅色の剣を間に差し込みそれを防ぐ。
 そしてその2本の錬契に導かれるようにエルスは落雷の閃光の如く超加速し黒騎士に接近。
「『落袈勢!!!』」
 左右の手に錬契を1本ずつ握り締めたエルスはその速度を緩めることなく体勢が崩れた黒騎士に2つの深い斬撃を残して通り過ぎた。
「ぐっ・・・!」
 背後で黒騎士が苦痛を示す。
 エルスは振り返りながら再び声をかける。
「大丈夫か?このまま終わってくれてもいいんだぜ?」
「一度傷を負わせたくらいで舐めるなよ。猟兵」
 血を滴らせながらも黒騎士は再び紅色の剣を構えなおす。
「安い挑発には乗ってくれないか、なら次はこいつだ」
 そう軽口を叩きつつも一切の油断をしないエルスは次の武装へと切り替え、再び黒騎士と打ち合い―――大きなダメージを与えて帰還した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルセティ・ソルレスティア
【チーム名SS】【SPD】
フィオ姉ちゃん達と3人でアンヘルに挑むよ
フォルマ・ベンダバールで戦闘力を増強するよ

【行動】()内は技能
※対先制攻撃
メル姉(f09332)のクイックドロウに連動し、逆サイドから
クラロ・デ・ルーナを(先制攻撃×高速詠唱)で仕掛けるよ
いくら黒騎士でも別方向からの攻撃は対処できないはず
「過去を恐れずに攻撃するよ」

これまでと違う戦い方。
誰かを犠牲にしても未来へ進む意思。姉や仲間が直撃を受けても
心を鬼にして振り返らずに追撃する。
「未来を切り開くのはボクだ」
(全力魔法)でカラミダド・メテオーロを叩きつけるよ!

受けた傷は「戦闘後」にシンフォニック・キュアで回復するよ


メルノ・ネッケル
【チーム名:SS】
そっちが過去を握っとるなら、うちらが握るのは今この瞬間や!

キツネビサイクルに【騎乗】、機動力を確保。

来るなら来い、【先制攻撃】、【クイックドロウ】!
必殺の早撃ち「クイックドロウ」、23分の1秒の銃撃!
これで「先制攻撃に先制」するっ!

無策な攻め?そうやない、うちには仲間がついとる。
団長(f00964)、セティくん(f05803)。そしてうち、三方向からの攻撃!
【勇気】と信頼があればやれる、やってみせる!
アンタの剣とうちの銃、早撃ち勝負と参ろうや!

結果がどうあれ、戦いは続く。例え呪剣を貰って過去を無くしても、まだ両手の銃がある。
最後まで銃は手放さへん、引き金を引ければ戦えるんや!


フィオリナ・ソルレスティア
【チーム名:SS】【WIZ】(敬称略)
■作戦
メルノ(f09332)、フォルセティ(f05803)と連携して
アンヘルに対して三方向からの攻撃を仕掛けることで
誰か一人が犠牲になって残りの攻撃を通す

■行動
(肉を切らせて骨を断つ、作戦ね)
[ダッシュ]で散開し仲間二人とは別方向から
[先制攻撃×高速詠唱]で【バベルの光】を発動
三方向から同時攻撃を仕掛ける

自らが無事の場合は、追撃の手を休めずに【アイオロスの刃】で
アンヘル切り刻む[全力魔法×2回攻撃]
弟やメルノが犠牲になっても、目を閉じ直ぐに見開き、攻撃の手を休めない
振り返ることは「やさしさ」ではないから



●副将戦
 終局が近づいている中、次に転移するのはメルノ・ネッケル(火器狐・f09332)とフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)とフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803のソルレスティア姉弟だ。
 彼女たちは3人で1つのチームを作り黒騎士アンヘルへと挑もうとしていた。
 立てた作戦は単純明快であり、3人で黒騎士を囲んだ上で攻撃を仕掛けるというもの。
 黒騎士より先に放てればよし、そうでなくても誰かの犠牲を乗り越えて黒騎士にできるだけのダメージを与え―――それで仕留めると3人でそう誓った。
 移動力を確保するためにフォルセティは空飛ぶ箒と名づけられたバイクであるFlying Broom GTSに騎乗、メルノは狐火を動力とする呪法改造宇宙二輪であるキツネビサイクルに乗り込む。
 先のレクシアとの戦いにおいて事前に発動したユーベルコードは不発となるといった情報からそれ以上の強化は諦めざるを得なかった。
 だがそれでもやることは変わらない。
「行くわよ2人とも、誰かがやられたとしても黒騎士に集中して」
「任せとき!結果はどうあれ戦い抜いたる!」
「うん、行こう!フィオ姉ちゃん、メル姉!」
 そう声を掛け合った後、そして戦場に向かった。

 戦場に転移したメルノ、フィオリナ、そしてフォルセティが見たのはここまでの先頭において消耗しているも関わらずその殺気と闘志を漲らせた黒騎士アンヘルの姿だった。
「ふむ、次は3人のウィザードと妖狐か」
「そうや、何か文句あるか?」
 黒騎士の言葉に反応したのはメルノだ。
「なに、人数が増えようが我のやることは変わらないからな」
 黒騎士はそう答えながら紅色の剣を構える。
「そう言ってられるのも今のうちや!そっちが過去を握っとるなら、うちらが握るのは今この瞬間や!行くで皆!」
 これはメルノが合図としての言葉だ。

 3人の猟兵たちは作戦を実行しようと動き出す。
 正面に立つのはメルノに任せてフォルセティは黒騎士の右側へとバイクを走らせ、フィオリナは左側へ挟むように自らの足で走りだす。
 このまま作戦通り陣形を組んで他方向から黒騎士を捉える―――そう、確かに黒騎士と言えど囲まれて別々の方向から打ち込めば防ぐことは用意ではない。
 もっとも・・・その作戦のために見落としていた2点がなければであるが。
「な、嘘やろっ」
 メルノの戸惑う声が部屋に伝わる。
 ―――ダァン!!―――
 そして銃声が響き。
「ぐぅ!!」
 最後に聞こえたのはメルノの苦痛の声。
 まだ作戦開始の合図はしていない、一体何が起きたと振り返った2人の視界に映ったのは、身体に3本の呪剣が突き刺されたメルノの姿だった。

 そう、作戦の一つ目の誤算はここにある。
 それは3人が目的の配置につくまでの間に黒騎士は攻撃を行える状況にあったということ。
 黒騎士は既に『消えざる過去の刃』のために空間に斬撃を刻み込んでおり、『過去喰らいの三呪剣』を展開し終えて待ち構えていたのだ。
 ゆえにその少なくとも1本目の白い呪剣による先制攻撃は、猟兵たちが普通のユーベルコードを展開する前にその身体を貫いてきた。

 だがそれでもその先制攻撃に勝る速度を持つユーベルコードがある。
 それは『クイックドロウ』とその派生系。
 0.05秒以内に銃を構えて速射するそれならば先の先が取れた。
 ゆえにメルノは『クイックドロウ』を黒騎士に放つ。
 ―――ダァン!!―――
 銃弾は黒騎士を見事に捉える。
 早撃ち勝負はメルノの勝ち、だがその後が続かない。
 射出後のメルノの無防備になった身体に過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣が突き刺さり、その後過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣と戦うに至った過去を封じる灰の呪剣が続いた。
「くっそ・・・」
 メルノは潜在意識から銃こそ手放さなかったものの、此れまでの全てを失った。
 そしてまず1人の犠牲ができあがった。

「フォルセティ!作戦中止!2人でやるわよ!」
 その光景を見てフィオリナはフォルセティを呼び止めつつ停止し、即座にVF-1オートフォーカスを黒騎士に向ける。
 そして『バベルの光』を唱えようとしたフィオリナは黒騎士と目があい―――全身を痛みと動悸が襲った。
「あっあああああああああああ!!!」
 フィオリナが膝から崩れ落ちる。
 全身にできた傷口から血が噴出していた。
 もちろんそれは黒騎士の『記憶されし傷痕』によって再現されたフィオリナが幼少期からこれまでの鍛錬あるいは戦いによって受けてきた傷跡。
 そして人間である彼女を襲うのはそれだけではない。
 今までかかったあらゆる病気や疾患それが痛みと同時に押し寄せていた。
 そしてそれらの痛みと苦しみによりフィオリナは倒れこんだまま動けなくなった。

 これが、作戦の二つ目の誤算。
 それは黒騎士による攻撃が1つだけだと思い込んでいたこと。
 黒騎士は常に『消えざる過去の刃』を展開させながら『過去喰らいの三呪剣』や『記憶されし傷痕』を使用してきていた。
 つまるところ少なくとも種別の違うユーベルコードを黒騎士は2つ以上同時に使用できるのだ。
 相手は銀河帝国の二大巨塔の片割れである黒騎士アンヘル。
 新たなオブリビオン・フォーミュラとなりうる可能性すらある、今まで3人が相手をしてきた中で最強のオブリビオンだ。
 決して敵の戦力を侮っていたわけではなく、犠牲を出してでも仕留めると挑んだ3人だったがその想定を遥かに黒騎士は越えていた。
 そして2人の犠牲ができあがった。

 先制攻撃から難を免れたフォルセティに黒騎士が一歩ずつ迫る。
 絶望的な状況だ。だがフォルセティは1人になっても諦めなかった。
 誰かを犠牲にしても未来へ進む意思。
 例え姉や仲間が倒れたとしても怯まずに攻撃する。
 そう2人と約束したのだ。
「『放て』!」
 だからフォルセティは聖箒ソル・アトゥースを黒騎士に向け『クラロ・デ・ルーナ』を放つ。
 その一撃は黒騎士を捉え、その足を数歩後ろに下げる。
「未来を切り開くのはボクだ!」
 そしてフォルセティは全ての魔力を込めて詠唱を行う。
「『悠久に揺蕩う無限の星屑よ。星柩満ちて此へ集うは漆黒の紅炎』、カラミダド・メテオーロ!」
 それと共に上空から現れた灼熱の巨大隕石が黒騎士を襲うが
「それは受けるわけには行かないな」
 そう黒騎士が発すると共に巨大隕石は虚無から現れた無数の斬撃によって切断された。
 それは『消えざる過去の刃』、フォルセティが詠唱を行っている間に黒騎士もこのユーベルコードを展開させていたのだ。
 そして歩みを再開する黒騎士を止める魔力はフォルセティにはもう残って無かった。
 
 フォルセティに近づいていく黒騎士。
 ―――ダァン―――
 そこに響いたのは銃声。
 銃弾は黒騎士の前を通り抜けて壁に刺さる。
 撃ったのはメルノだ。
 3つの過去を失っているメルノだが、それでも仲間を守ろうと引き金を引いていたのだ。
「『貫け、バベルの光よ』」
 立ち止まった黒騎士の背後からその声が響き、黒騎士を高出力レーザーが襲う。
 黒騎士はそれを紅色の剣で防ぐ。
 振り返った先では倒れながらも黒騎士にオートフォーカスを向けたフィオリナがいた。
「フォルセティ・・・引くわよ」
「わかったよ、フィオ姉ちゃん」
 弱弱しくもそう言うフィオリナにフォルセティは逆らわなかった。
 フォルセティはバイクを走らせフィオリナとメルノを回収した後、そのまま戦線を離脱する。
 身体から多くの血を流した黒騎士はそれをただ見送った。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジニア・ドグダラ
【WIZ】
相手からの攻撃として、過去探索者や猟兵として行動していた経験から、多数の出血や精神的苦痛が発生し、倒れてしまうかもしれません。

ですが、

「そんな物、私がここに立っている時点で、今更、です」

【鎮痛剤】による【医療】【激痛耐性】である程度出血を抑え、痛みや精神的苦痛を【覚悟】を決めて耐えます。
そのまま耐えつつ、素早く第二人格である『ヒャッカ』に切り替え、【目立たない】よう無言での【高速詠唱】と棺桶の【封印を解く】ことにより、帝国軍により散った者達による骸骨の霊を召喚します。
骸骨の霊には、【呪詛】に満ちている【拳】によって、怒りの一撃を叩きこみましょう。

※アドリブ・他者との協力・踏み台歓迎



●大将戦
 猟兵たちによる4戦の波状攻撃を受け消耗した黒騎士アンヘルを討たんと艦艇に転移したのは大きな棺桶を鎖により背負うジニア・ドグダラ(朝焼けの背を追う者・f01191)だ。
「あなたは、ここまで、です。終わりにしましょう」
 ジニアは傷だらけの黒騎士に相対してそう告げる。
 黒騎士は虹色の剣を右手に構えたまま、左手のひらをジニアに向けそれに応える。
「確かにこの度の我が肉体は既に大きなダメージを負った。このまま続ければ我は倒れるだろう。だが我はオブリビオンであり何度でも蘇るのだ。ならばそれまでに貴様ら猟兵を1人でも多く消耗させてから消えるのは当然だろう?」
「なら、1人でも多くの、仲間を、守るだけです」
「守ってみせろ。お前がこれを耐えられるのならな」
 そしてジニアは身構え、黒騎士は戦闘開始の合図を告げる。

 ジニアの全身が熱くなる。
 それは黒騎士による『記憶されし傷痕』がジニアの肉体からその過去の痛みを、苦しみを再現したためだ。
 ジニアは過去探索者として活動し、そして猟兵となった。
 加えてジニアは多重人格者であり死霊術師でもあり、その人格を扱うために自身に負担を強い、死霊を自身に憑かせることで寿命を削るような戦い方をしてきた。
 これまでに何度傷を負っただろうか、何度精神を消耗させてきただろうか。
 その全てが一度にジニアを襲う。
 全身からの出血はもちろん、その精神的苦痛がジニアを蝕んだ。
 目の焦点が合わない。頭が痛い。心臓が張り裂けそうなほどの鼓動を刻んでいる。
 これでは立っていられない。
 ジニアは両膝と両手を地面につき、それを耐える。
 だがその意識は手放さなさい。
 それがこれまでどんな痛みにも、どんな苦しみにも耐えてきた少女の覚悟だ。
「(痛い・・・苦しい・・・でも、そんな物、私がここに居る時点で、今更、です)」
 震える右手で自身のポケットから即効性の鎮静剤を取りだし飲み込む。
 今までの経験から力の入れ具合で出血を抑えようと試みる。
 しかしそれでも限界は来る。だからジニアはその苦しみを全て引き受けて、自身の第二人格『ヒャッカ』へとその身体を受け渡した。

「(いてえ・・・鎮痛剤打ってこれか・・・すいぶん耐えたな第一人格様、後はワタシに任せときな)」
 ジニア、いやヒャッカは四つん這いのまま無言で詠唱を行う。
 それは今まで銀河帝国軍の侵略により散って行った人々の怨念の塊。
「(『集え、己に刃を突き立てた者への惨劇を祈る、怨恨晴れぬ朽ちた者よ』、蛾者髑髏襲来!)」
 鎖が緩む。棺桶の蓋がズレ、そこから白骨の手が伸び、そして這い出すのは死した人々で構成された巨大な骸骨の霊。
 そしてヒャッカと骸骨の霊は立ち上がり黒騎士の前に立つ。
「ほう・・・耐えきったか。いや、雰囲気が違うな」
「ワタシのことをお前が気にする必要はねえよ」
 ヒャッカの言葉と共に骸骨の霊による呪詛に満ちた巨大な拳が黒騎士に迫り、それを黒騎士は紅色の剣で受け止める。
 そしてヒャッカはその棺桶を振り回して受け止めている黒騎士に横からぶつける。
「くっ・・・」
 それに体勢を崩された黒騎士に骸骨の霊はもう片方の拳による一撃を叩きこんだ。
 殴り飛ばされる黒騎士は空中で体勢を立て直して着地と共に地を蹴り接近し紅色の剣を振るいヒャッカはそれを棺桶で受け止める。
 そして血に塗れた者同士の近接戦闘が始まるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


●終局へ
 黒騎士とジニア(ヒャッカ)、その戦いは過去の全てのダメージを背負っていたためにジニア(ヒャッカ)の体力が先につき、黒騎士に軍配があがる。
 だが多くのダメージを与えた黒騎士にもはや余力は残っていなかった。
 
月鴉・湊
黒騎士よ、お前は俺が殺る。
それがこの刀に集まった者達の、願いだ。

貴様の呪剣は俺が止める。
対策として黒騎士が呪剣を放った瞬間、俺の血の糸を使った早業で絡めとり、軌道を変えるか抑え込もう。
それにより少し、いや一瞬の猶予があればいい。
その瞬間、UCで姿を消し、俺という目標を失わせる。

ここからは俺の暗殺技で奴を斬る。

貴様は過去を操るんだったな。
だが俺は、自分だけじゃない過去を背負っているんだ。
恨みを抱えた者の過去を背負い、恨みを晴らし、俺が恨まれる。
そんなこといくつやって来たと思う?
お前じゃ俺の過去を消しきれない。
この暗殺術はお前が思っている以上に、いくつもの過去を背負っているんだ。お前の首、もらった



●そしてカラスは罪人を裁く
 男は朽ちた艦艇の通路を歩く。
 この先は男にとっての処刑場。
 そこに待つは多くを殺めた銀河帝国の罪人。
 そして男は処刑場に足を踏み入れ
「黒騎士よ、お前は俺が殺る。それがこの刀に集まった者たちの願いだ」
 月鴉・湊(染物屋の「カラス」・f03686)は罪人である黒騎士アンヘルにそう告げた。

 月鴉と黒騎士は数メートルの間を開けてお互いを見据える。
 そして黒騎士はふっと1つ息を吐いた後にその宣告に応えた。
「そうか、貴様が俺の処刑人か。ならばその資格があるか、その技量をもってして我に示して見せよ!」
 その言葉と共に周囲に展開していた『過去喰らいの三呪剣』が射出され、月鴉と黒騎士アンヘルの最後の戦いが始まった。
 放たれた三呪剣は月鴉を仕留めんと音速を超える速さで迫る。
 だが月鴉はそれ以上の早業で自身のマフラーに編まれた咎人の血糸を展開し、三呪剣を絡めとりその軌道をずらす。
 血糸によって三呪剣は月鴉の横をすり抜け地面へと突き刺さった。
 それを見た黒騎士は『記憶されし傷痕』により月鴉を苦しめんと手のひらを向けるが、必中であるはずの攻撃は月鴉を捉えることはなかった。
 黒騎士がその手を向けた時には既に月鴉の姿はその場になかったのだ。
 それは月鴉の『咎の代償は命で払うべし』による自身の透明化による痕跡の消失。
「お前の攻撃には全て共通点がある」
 月鴉の声が部屋に響く。
「それはお前の攻撃は全てお前自身が視認していないとまともに使えないということだ」
 月鴉は黒騎士の脆さを指摘する。
 その指摘は正しい。
 黒騎士の『消えざる過去の刃』は予め空間に刻んだ斬撃を黒騎士の任意によって発動するものだ。
 だから敵がどこにいるか分からない状況では斬撃のタイミングが掴めない。
 それは『過去喰らいの三呪剣』や『記憶されし傷痕』も同様である。
 敵に対して飛ばす三呪剣も、対象の肉体から放つ傷痕の再現も黒騎士がその姿を視認しなければ対象を掴むことができない。
「お前は過去を操るんだったな」
 黒騎士の近くで月鴉の声が聞こえた。
 とっさに黒騎士は自身の周囲を『消えざる過去の刃』で刻んでいた全ての斬撃を起動して部屋全体を斬り裂く。
 だがその斬撃が月鴉を刻むことはなかった。
 月鴉は斬撃の範囲よりさらに黒騎士の近くに接近していたことでそれを躱していたのだ。
「だが俺は、自分だけじゃない過去を背負っているんだ」
 黒騎士の周りを月鴉は歩みながら声をかけていく。
 その都度黒騎士はその声の出所と思わしき場所に紅色の剣を振るうが月鴉に当たることはない。
 月鴉はゆっくりと黒騎士に迫る。
「恨みを抱えた者の過去を背負い、恨みを晴らし、俺が恨まれる」
 柄を握り
「そんなことをいくつやって来たと思う?」
 鞘から抜き放つ
「お前じゃ俺の過去を消しきれない」
 その得物を構え
「この暗殺術はお前が思っている以上に、いくつもの過去を背負っているんだ」
 そして黒騎士の背に立った。
「『お前の死に様は、この染物屋のカラスが見届けてやる。安心して逝くといい』、お前の首、もらった」
 刀が振るわれる。
 切断された黒騎士の首が飛び、その断面からは鮮血が周囲に舞った。


 静寂が包む艦艇の中、罪人の躯を1羽のカラスが見下ろしていた。
 カラスは一度目を閉じて踵を返し、その処刑場を去っていく。
 ここに黒騎士アンヘルの討伐は果たされ、そのカラスは帰路についた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月18日


挿絵イラスト