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銀河帝国攻略戦㉑~御使いの翼を手折るが如く

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #黒騎士アンヘル

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 『クライングシェル』『アゴニーフェイス』の艦隊を突破した『解放軍の艦隊』は、ついに、黒騎士アンヘルとの決戦に挑む。
 黒騎士アンヘルと『解放軍』をさえぎるものは、もはやなにもない。
 しかし絶好の機会を前に、『解放軍』の艦隊は黒騎士を撃ち破ることができなかった。
 なぜなら。
 スペースシップの砲撃も、戦闘機の攻撃も。
 『黒騎士アンヘル』を捕らえる事が、できなかったからだ。

 不利を悟った『解放軍』は黒騎士の撃破を諦め、銀河皇帝を守る艦隊へと、攻撃の矛先を変えることを決めた。
 銀河皇帝を滅ぼす今回の作戦において、戦力のことごとくを失った『黒騎士アンヘル』は、もはや重要では無いからだ。

 しかし、猟兵にとってはそうではない。
 オブリビオン・フォーミュラである銀河皇帝を撃破しても、二大巨頭である『白騎士』『黒騎士』が逃げ延びれば、新たなオブリビオン・フォーミュラとなりうる可能性が残されてしまう。
 そうでなくても、銀河皇帝撃破後、銀河帝国の残党あるいは、スペースシップワールドの不平分子等を集めて、悪事を行う危険が大きい。

 銀河皇帝との決戦は、最重要事項。
 しかし可能ならば、『黒騎士アンヘル』の撃破も行なうべき。
 そう考えた猟兵達は、許される最大戦力で『黒騎士アンヘル』の撃破に向かう――。


「黒騎士アンヘルの周囲に、他の敵戦力は存在していない」
 ヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)の言葉に、猟兵たちが耳を傾ける。
「だが、これは黒騎士が『一人の戦士』として、最大の力を発揮できる状況でもある。つまり。たとえ猟兵の精鋭であっても。勝敗は、五分五分。敗北する危険性が高い」

 黒騎士は『確定された過去を操る』ユーベルコードを扱う強敵であり、『必ず先制攻撃』を行ってくる。
 攻撃を仕掛けるには、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要だ。
 もしも対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないだろう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性が高い。
 また、黒騎士アンヘルのユーベルコードと、猟兵本人の過去との噛みあわせも、勝敗の要因となることは間違いない。

「黒騎士アンヘルは、常に一体。しかしその力が尽きるまで、骸の海から蘇る力をもっている」
 猟兵が勝利し、黒騎士を『骸の海』に放逐したとしても、黒騎士はすぐに『骸の海』から蘇り、別の場所から再出撃してくる。
 猟兵が敗北した場合も、黒騎士は『一旦、骸の海に撤退し、完全に回復』したうえで、ふたたび別の場所に再出撃してくるのだ。
「黒騎士が『骸の海』から出現する場所は、破壊された黒騎士配下の艦艇のいずれかとなる。俺たちグリモア猟兵の予知によって、どの艦に出現するのかは確率的に予測されている」
 おまえたち猟兵は、それぞれのポイントに出現する黒騎士を待ち伏せすることで、完全撃破を目指してくれと告げて。
 ヴォルフラムは早々に、転送準備に入った。


西東西
 =============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 =============================

 こんにちは、西東西です。

 『スペースシップワールド』にて。
 戦争マップ【21】黒騎士アンヘルへ進撃するシナリオです。

 銀河帝国「二大巨頭」のひとり、スペースノイドのフォースナイト『黒騎士アンヘル』と戦います。
 オブリビオンのため何度でも蘇りますが、短期間に戦力回数分倒されれば、復活は不可能になります。

 ※アンヘルは必ず先制攻撃します。
  敵のユーベルコードに対抗する方法をプレイングに書かない限り、必ず「苦戦」か「失敗」になります。


 難易度相応の判定を行います。

 それでは、ご武運を。
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第1章 ボス戦 『黒騎士アンヘル』

POW   :    消えざる過去の刃
【虚空から現れる『空間に刻まれた斬撃』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    過去喰らいの三呪剣
【過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣】【過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣】【戦うに至った過去を封じる灰の呪剣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    記憶されし傷痕
【対象の肉体】から【過去に刻まれた傷跡や病痕】を放ち、【一度に再現され肉体を蝕む出血や疾病】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 壊滅した艦艇の残骸がデブリとなって漂う、はるか漆黒の宙域。
 過去の残滓たるオブリビオン――黒騎士アンヘルは、緋色の花を思わせるあざやかな髪をなびかせ、その場に君臨していた。
 グリモア猟兵の転移をうけ、次々と現れる猟兵たちに気付き、臨戦態勢に入る。
「いいだろう。君たちが向かいくるというのなら、すべて、蹴散らすまでだ」
セルマ・エンフィールド
剣に対して銃の取り得る最大の対策は至極単純、『間合いに入らないこと』です。【氷の狙撃手】の最大射程600m、スコープの視力補助、スナイパーとしての技量を以って、敵の射程外から狙います。

ですがむざむざ撃たれるだけではないでしょう。接近される等で敵の射程に入り、攻撃されるのは【絶望の福音】、第六感で察知し、軌道を見切り避けます。

避ける優先度は黒>灰>>>白。鍛錬などしている余裕はありませんでしたから、私の技術はほぼ全て実戦の経験によるものです。それゆえに黒だけは避ける必要はありますが。

余裕があれば他の猟兵の援護射撃を、放たれる3つの呪剣のうち1つでも凍てつかせれば封じられることは防げます。




(「剣に対して銃のとりえる最大の対策は、至極単純、『間合いに入らないこと』です」)
 そう考え、セルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)は愛用のマスケット銃『フィンブルヴェト』のスコープ越しに、敵の姿を見据える。
 最大射程距離は625m。
 スコープの視力補助、スナイパーとしての技量をもって、敵の射程外から狙おうという算段だ。
 実戦を経て磨き続けてきた射撃の腕には、それなりの自負がある。
「さて、完全に凍り付くのは何発目でしょうか?」
 引鉄をひいたその瞬間、スコープ越しの黒騎士が腕を振るい。
 同時に、唇がうごいた。

 ――あさはかな。

 セルマが言葉の意味に気づいた瞬間、全身が『空間に刻まれた斬撃』によって引き裂かれ。
 撃ちはなった氷結の弾丸が、あらぬ方角へと飛んでいくのが見えた。
 とめどなく流れ、あふれる鮮血が、緋色の玉となって周囲に浮かんで。
 傷口を強く押さえながら、セルマは激痛に耐え、歯を食いしばった。
 これだけ離れても、十分ではなかった――。
 駆けつけた他の猟兵たちが、セルマの身柄を確保し、急ぎ、後方へと撤退させる。

 敵の正確な間合いがわからない以上。
 黒騎士アンヘルの周囲は、攻撃の射程圏内である可能性が高い。
 つまりは。
 攻撃をかいくぐるすべがなければ、一矢報いることは難しい、ということだ。

失敗 🔴​🔴​🔴​

鼠ヶ山・イル
うひー!超強いじゃん黒騎士アンヘル!
必ず先制攻撃ってもう、ずるくね?
んでもこっちは複数人だからさ、まーなんとかなる。ってか、なんとかするんだよ

つええ相手はまず技を封じる、一手を潰せば勝機が見える
この栞、イカしてるだろ?オレのお札なんだ
あんま気は進まねーが、命の賭けどころだからなここは
相手にも封術があるんだろ?その三呪剣とやら、必ず潰してやる
一本でも当たらなきゃあいい
【激痛耐性】で剣に貫かれても体が動くようにして、絶対にオレの符呪を当てる!それも【全力魔法】でな
仕事を果たしたら、あとは他のみんなに任せた

一対一だったらぜってー勝てねぇよ
命がけの戦い、楽しいもんだねまったく


弥久・銀花
変なマスクは兎も角この力量は剣士として尊敬に値しますね。

1対多ではありますが、この状況を得がたい物として臨ませて頂きます。


愛刀の白嵐玉椿の鎺を外し、居合いの構え。
右半身で敵から刀身を隠して接近戦を挑みます。



相手が素早いのは重々承知、今の私では受ける事を想像する事すら難しいでしょう。
避けるなんて、振るう腕が見えてからの絵空事です。

ならば後の事は治療班に丸投げする勢いで突っ込むまで!


スキルの【オーラ防御1】と【見切り18】と【激痛耐性3】で何とかダメージを右腕一本から体幹の外側に納められる様に頑張ります。

刀の間合いに強引に入れたら、左手で逆手に抜いた刀で鋭刃線閃を繰り出しましょう。




「うひー! 超強いじゃん黒騎士アンヘル! 必ず先制攻撃ってもう、ずるくね?」
「変なマスクはともかく、この力量は、剣士として尊敬に値しますね」
 容赦なく猟兵を刃に伏す敵の姿に、鼠ヶ山・イル(アヴァリティアの淵・f00273)と弥久・銀花(隻眼の人狼少女剣士・f00983)が、思わず声をあげる。
 だが、無駄口を叩き続けるだけの余裕はない。
「んでも、こっちは複数人だからさ。なんとかなるってか、なんとかするんだよ――!」
 次のユーベルコードの発動より一秒でも早くと、イルはすかさず黒騎士へ向けて迫った。
 駆けながら、栞の形をした呪符『蓮華栞』を手の内に広げる。
 ――あなたにもう一度会いたかった。
 その呪詛だけを込めた、気に入りの札。
「あんま気は進まねーが、命の賭けどころだからな、ここは!」
 イルの接近に気づき、黒騎士は自身の周囲に白・黒・灰の剣を浮かべて。
「悪あがきだな」
 呟いた瞬間、三呪剣を撃ちはなつ。
 回避する暇さえ与えない。
 剣は瞬く間にイルに迫り、吸いこまれるように次々と色白の肌を貫いた。
 その色は、【白】と【黒】。
「ッく……!」
 飛び散った血が、握り締めた札を朱色に染める。
 想定を超える激痛に、耐性などほとんど効果をなさなかった。
 手放しかけた意識を、しかし、イルはすんでのところで繋ぎとめて。
(「一本でも当たらなきゃあいい。三呪剣とやら、必ず潰してやる……!」)
 砕けんばかりに奥歯を食いしばり、身をよじる。
 逸れた灰剣が脇腹をえぐり、切り裂いていく。
 ――『戦うに至った過去』だけは。今なお、己の内に在る。
 腹に二本の剣を抱えたまま。
 イルは血濡れの札をはなち、叫んだ。
「イカした栞だろ? ――命がけのオレの符呪、喰らいやがれ!!」
 呪詛をはらんだ栞は、命中したアンヘルの力を一時的に封じた。
 イルが命がけでつくった、一瞬の隙。
「この状況を、得がたい物として臨ませて頂きます……!」
 その瞬間を最大限に生かすべく、銀花は愛刀『白嵐玉椿』のハバキを外し、白い髪をなびかせ宙空を一直線に駆けた。
 相手が素早いのは、重々承知している。
 今の己では、受けることを想像することすら難しい。
 避けるなど、振るう腕が見えてからの絵空事で。
(「ならば、後のことは治療班に丸投げする勢いで、ただ、この身ひとつで突っ込むまで!!」)
 眼前に迫った黒騎士は早くも体勢をたてなおし、銀花めがけ手にした剣を振るった。
「己の無謀を、悔いるといい」
 周囲の空間が切り裂かれると同時に、銀花の右腕が弾けるように血を噴いた。
 痛烈な一撃は、淡いオーラもろとも切り裂いており。
 続いて脚が裂け、踏みこむごとに激痛がはしる。
 それでも銀花は見切りを駆使し、斬撃による傷を、ぎりぎりのところで体幹の外側に留めた。
(「――避けきった!!」)
 まともに攻撃を受け、だらり垂れさがる右腕は、もはや使いものにならない。
 だが、それも想定内。
 返り血を浴びた左手を、刀に掛けて。
 間合いに迫った黒騎士めがけ、逆手で抜刀。
「研ぎ澄まされた刃に斬れぬ物無し! ――鋭刃線閃!」
 かろうじてかばった体幹を駆使し、黒騎士の脇腹を、深く鋭く、切り裂く。
 猟兵の一撃が。
 黒騎士に傷を穿った、瞬間だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

銀座・みよし
わたくしが知恵も技量も足りぬとはいえ、
何一つ足掻こうとせずに倒れるなんて…マダムの従者にあるまじき行為にございます

・POW
UCでホルスさんを呼んで掴まり、視界を共有し防御力をあげます
…というだけでは不足にございますれば

虚空から現れるのならば、第六感と視力に聞き耳、戦闘知識を活用して現れるタイミングを計りたく思います
…攻撃までの僅かなタイムラグさえあれば避ける事も可能でございましょう

ただわたくしが見切ることができず、
その上で斬撃を受けてしまったらホルスさんと力を合わせて耐えましょう
…耐え切ったならばそのまま黒騎士の方に向かって突撃にございます
390km/hにも及ぶ隼の急降下をお召しになりませー!


一駒・丈一
【POW】
流石は黒騎士。


俺はUC『決して何事も為し得ぬ呪い』を使う。

此方の発動前に、『消えざる過去の刃』が飛んでくるだろうが
寧ろ構わん。後手で此方のUCを発動させるのが狙いだ。

予め自分の服の下に大量の爆弾を仕掛け、一定時間経過後、或いは起爆スイッチ押下後に爆発させる。
敵の攻撃ではなく、寧ろこの爆弾のダメージを防ぐためにUCを使用するわけだ。
この爆弾の爆破に敵を巻き込みダメージを与える。

この戦法では、初撃を耐える必要があるが……。
可能な限り『見切り』『第六感』『戦闘知識』で避けることに全力を注ぐが
避けられない可能性が高いので、予め鎮痛剤を飲みまくっておく。

後の己の身の回収は、他の仲間に任せるか。


オリヴィア・ローゼンタール
POW
間合いの差はないものと考えた方がいいですね
むしろあらゆる距離が敵の刀圏と考えるべきですか
しかし、斬撃を放つには「剣を振る必要がある」のですかね?
であれば攻撃の予兆は掴めるはず
一歩ずつ近づきましょう
視線がこちらを向いたり、腕を動かしたりすれば、【オーラ防御】を上乗せした【無敵城砦】を発動し防御
そういった動作もなしに攻撃できる可能性も考慮して、
強化された【視力】や【聞き耳】、或いは【第六感】で斬撃の飛来の感知に努めましょう

槍の間合いまで近づけたら、【怪力】を以って【なぎ払う】
二刀流に加えて宙に浮かせた剣の動きにも注意して斬り打ち穿つ
我が槍技、帝国の二大巨頭にどこまで迫れるか――!


春日・釉乃
【POW】【連携・アドリブ改変可】
みんなが苦戦している――あたしの力が役立つなら助けにいくよ
…黒騎士アンヘル、あなたが『過去に起きた事象』を操るというのなら!

まずは[コミュ力]で近くにいるPOWの猟兵を半径5m以内へ集め
左目の魔眼を完全解放し【ラプラスの瞳】を最大限まで発動

[第六感]を駆使してアンヘルが操作する【消えざる過去の刃】の攻撃位置を逆探知
猟兵に攻撃が当たる前に[早業]と[先制攻撃]で攻撃が命中するという因果を書き換えて軌道を逸らすよ

アンヘルの過去操作へ全力の現在改変で立ち向かうから、あたしは動けない
けど囮になって皆を守護すればきっと背中にいる仲間が反攻してくれると信じてるから!


鷲生・嵯泉
彼我の力量差を考えれば小細工等通じまい
耐えるにも限度がある事は承知の上
それでも手段を尽くして短期戦に賭けよう

見切りと第六感、戦闘知識を駆使して致命傷だけは避ける様に
激痛耐性とオーラ防御、覚悟で耐えるしかあるまい
無駄は承知でカウンターと衝撃波での威力軽減も図る
最悪でも腕1本と走る脚が残れば構わん
相討ちですら贅沢、必要なのは1太刀でも届かせる事
今なら喰らう血に不自由はせんだろう、我が刃
妖威現界に怪力・鎧砕き、己が膂力の全てを乗せ
怯むも止まるも覚悟で捻じ伏せ斬撃を叩き込む

元より命を惜しむ心算は無いが、為すべきを果たさず死ぬ気も無い
この身が動く限りは抗ってくれる




「間合いの差はないものと考えた方がいいですね。むしろ、あらゆる距離が敵の刀圏と考えるべきですか」
 攻撃の機会をうかがっていた銀髪金瞳のシスター、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の言葉に。
 同じく金眼の男、一駒・丈一(金眼の・f01005)がうめいた。
「俺も色々検討してはみたんだが。今考えている戦法では、初撃を耐える必要がある……」
「彼我の力量差を考えれば、小細工等通じまい。耐えるにも限度がある事は承知の上で、手段を尽くして短期戦に賭けよう」
 人間の剣豪である鷲生・嵯泉(烈志・f05845)も柘榴にも似た赤い隻眼を向け、その意気やよしと共闘を辞さぬ構えだと伝えて。
「案があるなら、わたくしも力になりましょう! 知恵も技量も足りぬとはいえ、何一つ足掻こうとせずに倒れるなんて……マダムの従者にあるまじき行為にございます」
 シャーマンズゴーストの銀座・みよし(おやしきのみならいメイド・f00360)らの申し出に、丈一が「ありがたい」と礼を告げる。
 春日・釉乃(”CHIPIE”・f00006)は、一度、ぐっと言葉を飲みこんで。
 茶色の瞳に決意の色を浮かべると、きりと顔をあげ、凛とした声で言った。
「――みんなが苦戦しているんだ。あたしの力も役に立つなら、喜んで力になるよ!」
 悠長に作戦を練っている時間はない。
 5人は手短にそれぞれができることを確認しあい、もっとも確率が高いと思われる作戦をとることに決めた。
 いきあたりばったり。
 戦場で組みあげた、ぶっつけ本番の作戦。
 ――しかし彼らは、この策に賭けた。
 それぞれに動きはじめた猟兵に気付き、黒騎士が剣もつ手を掲げる。
「何度挑もうとも、どんな策を練ろうとも同じことだ」
 その言葉に全身で抗うべく、声をはりあげたのは、釉乃。
「黒騎士アンヘル、あなたが『過去に起きた事象』を操るというのなら――」
 瞬間、己の身の側で虚空がひらいたのがわかった。
 空間に刻まれた斬撃が迫る、寸前。
 左目の魔眼『ラプラスの瞳』を完全解放し、釉乃は叫んだ。
「みんなを守護るためなら、あたしはこの瞳を受け入れる!!」
 見ひらいた切れ長の瞳は、『半径5m以内の因果律を己が意のままに変える』力をもつ。
 すなわち。
 釉乃はその力をもってして、攻撃が命中するという因果を書き換え、斬撃の軌道を逸らした。
 しかし、続いて向けられた攻撃を避けきることはかなわず。
 『記憶されし傷痕』によって、かつて巣食っていた病が、ふたたび身体を蝕んでいくのがわかる。
 苦悶の声をあげながらも、釉乃は不敵な笑みをうかべ、黒騎士を見やった。
(「この苦しみは、すでに克服したもの。だから、あたしは大丈夫。あとは、仲間が反攻してくれる。そう、信じてる……!」)

 時はすこし巻き戻り。
 黒騎士が釉乃に攻撃を定めた瞬間、みよしもまた、声をあげていた。
「さあ、ホルスさん。あの黒騎士の元まで、おつかいに参りましょう!」
 宇宙空間であろうとも、神話級の巨大隼は主の呼び声に応え、どこへなりとも飛んでくる。
 猟兵たちを認め、雄々しく羽をひろげて。
 主であるみよし、そして、同行者である丈一が脚に捕まったと確認するや、翼を打った。
 一羽と2人が発ったのを確認し。
 武器をたずさえたオリヴィアと嵯泉の2人もまた、行動を開始する。
 追撃を受けた釉乃の悲鳴が、背中越しに響いて。
 それでも。
 彼らは振り返らず、役目を果たすために進撃を続けた。

 巨大隼はぐんぐんとスピードをあげ、黒騎士の死角に迫った。
 振り落とされまいとその脚にしがみつきながら、丈一は黒騎士がこちらの存在をとらえたことに気づき、みよしに警告を発する。
「次撃、くるぞ!」
「望むところにございます。丈一様は今のうちに!」
 その声に頷き、丈一が隼の脚から手を離した瞬間、周囲の空間がぱっくりと裂ける。
 ホルスとの視界の共有によって、みよしはかろうじて直撃を免れた。
 主もろとも斬撃を受けた隼は一瞬きりもみ状態になり、折れた翼を震わせて。
 しかし、
「ホルスさん!!」
 呼びかける主の声に、みよしが「太陽と月で出来ている」と称する瞳を、大きく見ひらいた。
 その瞳に映すは、黒騎士アンヘル。
 力強い羽ばたきひとつ。
 みよしは愛おしいその脚を撫で、意気揚々と声をはりあげた。
「390km/hにも及ぶ隼の急降下を、お召しになりませー!」
 特攻を仕掛ける敵に対して、さすがの黒騎士も無視を決めこむことはできない。
「愚かなことを……!」
 三色の剣を撃ちはなてば、召喚した鳥は悲鳴とともにかき消えて。
 剣に貫かれたみよしが、ユーベルコードを封じられた状態で殴り飛ばされる。
 攻撃を受ける寸前、隼の脚から離脱し、単身敵に迫っていた丈一は。
 この瞬間を、待っていた。
「俺の忌まわしき宿命を、今、この場にて顕現させる――」
「貴様は……!」
 アンヘルがその姿を間近に認めた時には、もう遅い。
「俺は、決して何事も為し得ぬ呪いを背負う。唯の、断罪人だ」
 告げると同時に、全身が咎人の怨嗟を纏う断罪人の姿へと変じて。
 手にした起爆スイッチ押下と同時に、身体に仕掛けていた大量の爆弾が、連鎖的に爆発していく。
 爆破による衝撃は、黒騎士にはほとんど傷を与えなかったが。
 目くらましとして時間を稼ぐには、十分すぎるほど、その役目を果たした。
「おのれ!!」
 わずかに焦りをはらんだ声を聞き、一矢報いることができたかと、口を曲げる。
 ユーベルコードは爆弾のダメージを耐え凌ぐためと、決めていた。
 もとより、次の攻撃は受ける覚悟だ。
 次の瞬間。
 過去喰らいの三呪剣が、丈一の胸に次々と生えて。
 こみあげる血を宙へと吐きながら、丈一は笑った。
(「さすがは黒騎士。鎮痛剤なんざ、効きやしねえ」)
 これでお役御免。
 後のことは仲間たちに任せるかと、胸中でつぶやいて。
 男は、激痛に意識を手放した。

 丈一が自爆攻撃を仕掛けた瞬間。
 仲間たちの犠牲の影に間合いを詰めていた2人の猟兵たちも、次々と爆炎から飛びだしていた。
 丈一へと追撃を仕掛けるその死角から、怪力をもって聖槍を薙いだのは、オリヴィア。
(「我が槍技、帝国の二大巨頭にどこまで迫れるか――!」)
 繰りだした黄金の穂先が、漆黒の鎧を穿つ。
 しかし、アンヘルは槍を己の手でしかと掴み、オリヴィアの動きを封じるようにして、言った。
「次から次へと。呆れたものだ……!」
 声とともに、虚空が裂ける。
 至近距離からの、身動きを封じられた状態での斬撃。
 通常であれば、致命傷は避けられない。
 しかし。
「結局。予備動作の有無は、どちらでも構わないのですね」
 寸前にユーベルコード『無敵城塞』を発動していたオリヴィアには、黒騎士の攻撃は効果をなさなかった。
 どのみち身動きをとれなくなるのだ。
 動きを封じられたことも、彼女にはさして不利益にはならなかった。
 アンヘルが己の槍を掴んでいるということは。
 敵もまた、身動きをとれないということなのだから。
「!」
 金の瞳に人影を認め、アンヘルが手を離した時には、もう遅い。
 死角から迫った嵯泉が『縛紅』と呼ぶ禍断の刃で掌を裂き、流した血と精神力を贄に、呼びかける。
「――代償はくれてやる。相応の益を示せ」
 瞬間、その身が天魔鬼神へと変じて。
(「相討ちですら贅沢。必要なのは、ひと太刀でも届かせること」)
 嵯泉は己が膂力のすべてを乗せ、怯むも止まるも覚悟で、黒騎士へと刃の一撃を叩き込んだ。
 漆黒の鎧がひび割れ、砕けゆき。
「おのれ……!」
 苦痛に表情を歪めた黒騎士黒騎士めがけ、さらに追撃を仕掛けたのはオリヴィアだった。
「これは、倒れた仲間たちの分です!」
 繰りだした槍は、先ほどよりも易々とアンヘルの身体を貫いた。
 最悪でも腕1本と、走る脚が残れば構わぬと構えていた嵯泉も、仲間たちへの謝意を胸に、重ねて刃を振るう。
「元より命を惜しむ心算は無いが、為すべきを果たさず死ぬ気も無い。この身が動く限りは、抗ってくれる――!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジャハル・アルムリフ
既に過ぎ去った過去など
確かに変えようもなかろうな
…だが

・近くに他猟兵がいる場合は連携を意識
相手が攻め易いよう
また、防いでいる間は攻撃を行い
隙を埋めるべく行動する


先手は必ず打たれる――
ならば黒剣を構え、アンヘルへと駆ける
刃が襲い来る瞬間に合わせ【星守】を発動
防ぎきれば即解除し、一撃を見舞う
他猟兵の攻める隙となれているならば
タイミングをずらして攻撃へ移る

間に合わぬ攻撃はオーラ防御で
出来得る限り受け止め、耐え反撃の時を探る
死角から襲われぬよう感覚を研ぎ澄ませ
第六感で感じ取れた危険に即対応出来るよう
UCで動けぬ者あれば背へ退避させる

旧き海へ捨てられた貴様等とて足掻くなら
今在る者が諦めるわけにはゆくまい


ビードット・ワイワイ
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。
過去より来たりて今を喰らう。過去は既に過ぎしもの。
過去を操る汝の御業、未来へ進みし我らの前では無為と知れ。
未来へ進み続ける限り、我らが過去に呑まれない。
汝の破滅はここにあり。

汝か過去を操るならば我も過去をここに見せよう。
過去に敗れし反乱軍よ、死して我を守れ。我は汝らの屍を踏み越えよう。
【世界知識】により戦史を参照、UCにより反乱軍達を呼び覚ます。
その突撃をもってUCを防ごう。怨敵はそこにおり。今こそIFを成し遂げようぞ。

過去の記録であろうとも、【覚悟】は本物なり。
故に我も喚起して共に【決死の一撃】喰らわせよう。
これが過去の覚悟なり。汝が屠りし過去であり。


ペイン・フィン
……過去を食らう剣、ね。
……まあ、なんとか頑張ってみようかな。

放たれたコードの3つの剣のうち、
【戦うに至った過去を封じる灰の呪剣】……これに集中して、回避しよう。

鍛錬の経験も、戦闘の経験も、封じられてもいい。
傷つけるだけのものだった自分の過去、
それは、自分の戦うための理由とは、少しかみ合わない。
だけど……。戦う理由、これだけは封じられたくない。
第六感と情報収集で敵の攻撃予測、
目立たない、迷彩、残像、空中戦で回避補助、
それでも厳しいときは、石を盾に盾受けを試みるよ。

攻撃を受けきったら、反撃の開始。
コードを使用。
この戦争で発生した怨念、憤怒、悲哀を宿すよ。
経験を封じられた分も強化して、攻撃しよう。


セゲル・スヴェアボルグ
あらゆる場所がやつの射程範囲内である可能性があり、命中すれば確実に切断されると。
ならば、まずは盾を多重具現させ、自身を包囲するように配置し、初撃を凌ぐしかあるまい。5枚……いや、10枚あれば確実だろう。ついでに力溜めもしておこうか。
当然、相応の重さになるが怪力とグラップルである程度は何とかなる。どうせ切断されるのであれば、武器改造と防具改造で強度を落とし軽量化するのも一考だな。
攻撃の隙を見て、盾を構えながら追加の斬撃に注意しつつ距離を詰め、狂飆の王を叩きこむ。念には念を入れて2回攻撃で攻めるぞ。衝撃波のおまけ付きだ。
けったいな鎧だが鎧無視攻撃と鎧砕きを持ち合わせた一撃、果たして耐えられるか?


アイ・エイド
先制攻撃か…なら!
ゼロシールド展開して盾受け!
ゼロシールドは攻撃時の狂気に反応して
展開されるぜ!

もし、すぐにシールドが壊れても
一瞬でも時間を稼げればいいんだ…
盾受けした時からユーベルコードは発動してんだよ!オレの超高速連続攻撃を全て避けきれっか!!

【プログラムド・ジェノサイド】
プログラムの最初は
ゼロシールドでの【盾受け】だ!
次からは痺れ毒を塗った
小刀【雷】で【マヒ攻撃】の超高速連続攻撃!

マヒしてくれりゃ楽なんだが、
まあ、そうならなくてもオレの担当は囮だ!
ただ目の前を【ダッシュ】で【早業】に繰り出される攻撃と【挑発】で
敵の目がオレに向いてれば、
他の奴らが動きやすいだろう!!


イア・エエングラ
泰然とひとり、いらっしゃるだけあるかしら
必ず先を取られるというなら覚悟もできるもの
病の記憶は、もたないけども
死霊の子を呼ぶから、下がっていることが多いものな
伸べる片手は、落としたことはない
それでもどれだけ為せるかは分からないけれど
いつかのよにこの身が欠けようと、次の手へ

同胞とともにタイミングを合わせて、いきましょう
反撃の為に須臾でも間が、僕か、仲間へあるように
たとえ届かなくとも、発動までに次の誰かが、駆けるため
ひとつ、深く吸い込んで
見据えたら、逸らさずに
傷をえぐるように同じ軌道へ
狙うのはそのまんなかを
紡ぐ間だけ、示すまでだけ、伸べて伏せないで
当てやすいのを頼りに黒糸威で穿ちましょう
届いて、穿て




 いくらか深手を負ったとて、黒騎士アンヘルの一撃は猟兵たちにとって脅威であることに変わりはない。
 力尽きた猟兵たちが撤退していくのと入れ替わるように、咎人殺しのペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は新たに戦場へ降り立った。
「……過去を食らう剣、ね。……まあ、なんとか頑張ってみようかな」
 とはいえ、たった一人で挑むより、手数は多くあった方が良い。
「泰然とひとり、いらっしゃるだけかしら。必ず先を取られるというなら、覚悟もできるもの」
「オレは、ゼロシールドを展開して盾受けを試みるぜ!」
 歌うように語るイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)と、勇み告げるアイ・エイド(腐れ人狼・f10621)に続き、
「俺も盾を多重具現させ、自身を包囲するように配置して、初撃を凌ぐつもりだ」
 「5枚。いや、10枚あれば確実だろう」と告げたのは、時を同じくして転送されてきた、ドラゴニアンのセゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)だった。
 同じくドラゴニアンのジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)、ウォーマシンのガジェッティアであるビードット・ワイワイ(根源的破滅招来者・f02622)も、力を惜しまぬと協力を申し出る。
 ――全員が同時に進撃すれば、すべてが攻撃を受けずにすむのではないか。
 うまくいく確証はどこにもなく、失敗すれば、もろとも攻撃を受けることになるかもしれない。
 しかし。
「どのみち命中すれば確実に切断される。どうせ切断されるのであれば――」
「試してから、斬られてみようか」
「敵の目がだれかに向いてれば、他の奴らが動きやすいだろうしな!」
 セゲル、ペイン、アイの言葉に、猟兵たちは互いに頷き交わし、黒騎士の周囲へと散開。
 全速力で接近を試みる。
 しかし、
「甘いッ!!」
 黒騎士は、目立たぬようにと迷彩をまとっていたペインの気配を逃さず察し、顕現させた3色の剣を撃ちはなつ。
 真っ先に迫った白の呪剣が、ペインの胸を貫いて。
 続く黒の呪剣は、第六感を駆使して直撃を逸らすも、避けきることは叶わなかった。
 飛散する鮮血と痛みに。
 いつか聞いた悲鳴たちが、耳の奥に蘇る。
(「鍛錬の経験も、戦闘の経験も、封じられてもいい」)
 ――『傷つけるだけのもの』だった、過去。
 それは、自分の戦うための理由とは、少しかみあわない。
(「鍛錬の経験も、戦闘の経験も、封じられてもいい。だけど――」)
 黒の瞳を見開き、ペインは石抱き石“黒曜牛頭鬼”を盾として灰剣にぶつけるべく、手指を振りあげた。
「戦う理由、これだけは封じられたくない……!」
 叫びとともに叩きつけた石は、わずかに三本目の剣の軌道を逸らした。
 ユーベルコードを封じられなければ、反撃が叶う。
 ――苦しみ、死んでいった者の怨念。
 ――今なお、虐げられる者の憤怒。
 ――悲劇に対し、無力な者の悲哀。
 この戦争で発生した想念をその身に感じながら、己の内に力があふれてくるのを感じる。
「……辛い、けど、そうも言ってられない、ね」
 黒騎士を見据え『親指潰し』を仕掛ければ、その代償に、毒が身体を蝕んで。
 反撃を受け動きを止めた一瞬を、セゲルは逃さなかった。
 アンヘルが気づいた時には、声は背後に迫っていて。
「けったいな鎧だが――」
 とっさに剣で振りはらおうとするも、その切っ先は、多重具現させていた盾にはばまれ、届かない。
 敵の動きを見届け、ニイと口を曲げる。
「鎧無視攻撃と鎧砕きを持ちあわせた一撃、果たして耐えられるか?」
 持ちあわせた怪力に、グラップルスキル。
 さらに渾身の力をこめ、セゲルは錨斧【イースヴィーグ】――斧とは名ばかりの鎚を振りおろした。
「無理も通れば道理になる。その土手っ腹に、風穴を開けてやろう!」
 暴風の如き一撃が黒騎士を打ち、襲う衝撃波に吹き飛ばされる。
 黒騎士が反撃を行おうとした、その瞬間。
 アイのプログラムが、相手の剣よりも早く発動。
 受けとめたゼロシールドが消滅するも、残る呪剣の軌道は、すでに見切っている。
「盾受けした時からユーベルコードは発動してんだよ! オレの超高速連続攻撃を、全て避けきれっか!!」
 眼にもとまらぬはやさでアンヘルに迫り、UDCの肉体を加工して造り上げた小刀【雷】で死角から斬りつける。
(「マヒしてくれりゃ楽なんだが――。まあ、そうならなくてもオレの担当は囮だ!」)
 敵の周囲を機敏に駆けまわり、翻弄。
 次々と痺れ毒を塗った刃をひるがえせば、疲労の蓄積していた敵の身を、毒が着実に蝕んでいき。
「銀河皇帝の二大巨頭がこの程度か? この程度で強敵面なんざ、笑っちまうぜ!!」
 あからさまな挑発ではあったが。
 すでに己の不利を察していた黒騎士は、アイへと剣を向けた。
 ――それは、騎士の誇りゆえだったのかもしれないが。
 ひとつ、深く吸い込んで。
 見据えたら、逸らさずに。
 傷をえぐるよう、同じ軌道へ――。
 夜の裾曳く装束をまとい、クリスタリアンの死霊術士・イアは、すいとその指を黒騎士へ向けた。
 狙うのは、そのまんなかを。
 紡ぐ間だけ、示すまでだけ、伸べて伏せぬように。
「貫き、留めて」
 死霊より紡いだ黒槍が、アンヘルの胸にずぶりと生えて。
 それでも抗うべく向けられた剣は、機を逃すまいと駆けつけたジャハルの竜鱗装甲が受け止めた。
 呪詛が模るそれは、あらゆる攻撃を通さない。
「触れるな」
 厳かに告げる声は、ただただ、静かに響いて。
「どれだけあがこうとも、過去は変わらない……! まだ終わりはしない!!」
 声を荒げた黒騎士に。
「既に過ぎ去った過去など、確かに変えようもなかろうな。だが――」
 ジャハルは影なる剣を一閃させ、言った。
「旧き海へ捨てられた貴様等とて足掻くなら。今在る者が、諦めるわけにはゆくまい」
 髪色にも似た体液が、宇宙空間に飛散する。
 それは、彼の者の薔薇の指先にも似て――。
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。過去より来たりて今を喰らう。過去は既に過ぎしもの」
 敵の敗北を悟り喝采の声をあげたのは、ビードットだった。
「過去を操る汝の御業、未来へ進みし我らの前では無為と知れ。未来へ進み続ける限り、我らが過去に呑まれない。――汝の破滅はここにあり」
 まるで、最初から勝負は決していたのだと言わんばかりの言葉に。
 黒騎士は、表情を歪めた。
 けれど。
 気力尽きた騎士には、もはや指ひとつ動かす力も残っていない。
「ロードルーイン。星の記録を読み解きし人の傲慢。その再来を望む。かくして彼らは滅んだ」
 ビードットはより戦史を参照し、コンテナに収納された【仮想破滅招来補助具】をまとう。
 ――汝が過去を操るならば。
 ――我も、過去をここに見せよう。
「過去に敗れし反乱軍よ、死して我を守れ。我は汝らの屍を踏み越えよう」
 声に応じ顕現したのは、星間を埋めつくすほどの大軍勢。
 それは、かつて黒騎士が屠ってきた、反乱軍兵士たちの姿であり。
「過去の記録であろうとも、【覚悟】は本物なり。故に、我も喚起して共に【決死の一撃】喰らわせよう。――これが過去の覚悟なり。汝が屠りし過去であり」
 アンヘルはその言葉を受け。
 自嘲するように嗤った。
「なるほど。過去が、過去を屠りに来たというわけか」
 是とも、非とも答えず。
 ビードットは兵士たちへ向け、言った。
「怨敵はそこにいる。今こそ、IFを成し遂げようぞ」
 『根源的破滅招来者』は、最後に入力された命令に従い破滅を実現させる。
 ――破滅のためにハッピーエンド。
 最後に笑うのは、彼ではない。

 かくして。
 黒騎士アンヘル――意図してのものだろうか。UDCアースの言葉で『天使』の名を持つ騎士は、ふたたび骸の海へと還っていった。
 何度目かの。
 死の記憶を、抱いて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月20日


挿絵イラスト