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銀河帝国攻略戦㉑~過去を絶つ黒騎士

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #黒騎士アンヘル

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●グリモアベース
「……いよいよ幹部の登場ね」
 無意識に流れ落ちる冷や汗を拭いながら、アンノット・リアルハートは猟兵達の方に向き直る。
「銀河帝国攻略戦もいよいよ佳境に入りました! 今回の任務は銀河帝国二大巨頭の一人にして、最強のフォースナイト、黒騎士アンヘルの討伐になります!」
 クライングシェル、アゴニーフェイスの艦隊が突破されたことで、黒騎士は孤立無援の状態となった。弱き者を助ける手など持たない帝国軍の性質から増援を与えられることもないだろう。倒すチャンスは今だということだ。
「解放軍は黒騎士を標的から外して銀河皇帝護衛艦隊への対応に回ってるけど、黒騎士を放置すれば新たなオブリビオンフォーミュラーとなる可能性があります。そうなったら今までの戦いは水の泡、銀河帝国残党の出現でスペースシップワールドの平和は再び遠のいてしまうでしょう」
 ゆえに、今ここで討つ。しかし黒騎士が戦士として最大限の力を発揮できるのも、一人である時である。猟兵達が束になってもその勝敗は五分五分と言えるだろう。
 まず注意するべき点は黒騎士は必ず先に動く。何の策もなく突撃すれば先制攻撃により瞬く間に蹴散らされてしまうだろう、戦闘の際には必ず相手のユーベルコードへの対抗策を考えなければならない。攻撃ではなく、反撃の方法を考えるのだ。
「正直、私じゃこれと言った対抗手段は浮かばないわ。だから相手の攻撃の特徴だけ説明するわね」
 消えざる過去の刃、空間に刻まれた斬撃を放つユーバルコード。飛ぶ斬撃の上位互換ともいえる空間に残る斬撃、立ち止まれば盾や防具を抜け本体に直接攻撃が叩き込まれ、下手に動けば機雷のように斬撃の位置へ誘い込まれる。牽制と本命、両方に使われるユーベルコードだ。
 過去喰らいの三呪剣、対象の過去を封印し戦闘能力を失わせるユーベルコード。命中すれば何故自分がこの場に居るのかも忘却し、無抵抗のまま攻撃されるだろう。精神を強く保つだけでは足りない、過去を失ってなお戦うことのできる布石を用意するか、当たらないように兎に角逃げ回るか。いずれにせよ厄介なユーベルコードと言えるだろう。
 記憶されし傷痕、対象が過去に受けた傷を開くユーベルコード。猟兵であればこの攻撃を回避することはできない。過去の戦闘で受けた傷、日常で患った病、それらが一斉に再現することで相手の動きを封じるこのユーベルコードは戦士に対して高い特効性能を持っている。
「はっきり言うけど、この戦いは負ける可能性もあります。だから、本当に危なくなったら自分の命を最優先して。……せっかくもらったチョコレート、来年も食べたいでしょう?」

●デブリベルト「旧クライングシェル艦隊残骸」
「……来るか」
 かつて自らの配下であった船の残骸を足場にしながら、黒騎士アンヘルは剣を構えた。
 周囲はデブリで満ち溢れ、視界の自由は聞かない。しかし黒騎士にとってそれらは全て自らが踏み込むための足場でしかない、例えデブリの向こうに敵が隠れようと、まとめて切り裂いてしまえば関係はないのだから。
「言葉は不要だ、解放軍よ。貴様の存在、その根元から断ち切ってやろう!」


マウス富士山
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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●オープニングを見ていただきありがとうございます。今回マスターを努めさせていただきます、マウス富士山と申します。
 いよいよボス戦になります!オープニング書かれている通り、黒騎士は先制攻撃を仕掛けて来るので、必ずユーベルコードの対抗手段と反撃方法を描写してください。また複数の猟兵で連携を行う場合は全員に対して先制攻撃を行います、各々対抗手段を用意するが強力な盾役が最低一人必要になるでしょう。
 反撃に使用するユーベルコードは猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力のものになります。また今回はいつも以上にプレイングが判定に影響するのでその点も注意してください。
 皆様のプレイングを心からお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『黒騎士アンヘル』

POW   :    消えざる過去の刃
【虚空から現れる『空間に刻まれた斬撃』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    過去喰らいの三呪剣
【過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣】【過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣】【戦うに至った過去を封じる灰の呪剣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    記憶されし傷痕
【対象の肉体】から【過去に刻まれた傷跡や病痕】を放ち、【一度に再現され肉体を蝕む出血や疾病】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エミリィ・ジゼル
敵の攻撃は時間を止めて回避するに限ります。
というわけで開幕早々に《時を止めるメイドの術》を使用。
相手がどんな素早い攻撃をしてこようと、時間を止めてしまえば意味がありませんからね。

そして時間を止めたら場所を変え、《増えるメイドの術》で分裂し、《メイド式殺人光線》を一斉発射。
隙だらけの相手に向けてビームをぶっぱします。
増えるのはデコイも兼ねてます。

相手が体勢を立て直したらまた時間を止め、場所を変え、ビーム。
これで一方的に集団フルボッコにしてやります。
ついでに挑発して相手を怒らせて、更に隙を増やしてみましょう。

「タイーム!からのビーム!」
「ヘイヘイ、アンヘルビビってるー!」



●猛攻
 「ターイム!からのいけ、かじできないさんズ!」
 エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)の掛け声と共にデブリベルトが静止する。凍り付いた時の中で不敵な笑みを浮かべた彼女ははすかさず召喚した自分のコピーで黒騎士を取り囲んだ。
 どれだけ素早い攻撃をしてこようが、時を止めてしまえば問題ない。時間という無敵な鎧に守れた絶対安全圏の中でエミリィはユーベルコードの発射体制をとる。
「包囲ヨシ!射角ヨシ!くらえ、メイドビーム!」


 停止した時は確かに無敵の鎧だが、それは相手にも同じことが言える。時が動かない限り光線は黒騎士の肉体には届かない、そのため攻撃の瞬間にエミリィは時間停止を解除しなければならない。
 勿論無策で時を動かすことはない、こと悪知恵に関してはエミリィを超える猟兵も少ないだろう。全てのコピーはチョキにした両手を額に当てる独自の発射ポーズでおでこに書かれた数字を隠し、本体は黒騎士の死角に回る。これで自分は身を隠しつつ、ビームの直撃を確認したら再び時を止め移動する。悪戯好きな彼女らしい戦術だ。
 ただし、その攻撃は圧倒的な暴力の前には無意味だった。
 腹部に蹴りの痕、全身を打ち付けるような激痛、そして右半身が何かに食い千切られたように消滅する。時を動かした瞬間全てのエミリィ現れたこの傷は――。
「そう、貴様が過去に受けたものだ」
 黒騎士の言葉と共に、放たれた三つの呪剣がエミリィの身体をデブリに縫い付ける。過去が封印されたためか再現された傷は消滅するが、代わりに彼女のコピーと放たれた光線が宇宙空間に霧散した。
「……少し喰らったか、まあいい」
 掠めたビームでできた傷を雑に拭うと、黒騎士は再び剣を構える。解放軍の襲撃はこれで終わりではない、接近してくる戦士たちの気配を感じながら、最強のフォースナイトは楽しそうに目を細めた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

マスター・カオス
フハハハ…我が名は、グランドフォースに導かれし、秘密結社オリュンポスが大幹部、マスター・カオス!!

かつての大騎士である我が刃を以って、お前に応えよう!

剣で直接応じるという先入観を持たせながら、動きつつ、同時に周囲のデブリらを念動力で操作し、敵の空間斬撃の矢面に立たせながら敵へ向かわせたり、こちらからも牽制と誘発の仕返しを行う。
近接にて攻撃する様に見せかける為、確実な移動ルートの確保をしていきます。こちらが間合いに入り、敵の斬撃空間もあるだろう場所へとデブリを利用し踏み込むと見せかけたタイミングで、下がり敵の攻撃直後の隙を突いて「天ヨリ簒奪ス原初ノ焔火」を反撃に放ちます。

コレが我が反逆の刃よ!!



●大幹部VS黒騎士
「フハハハハ!その実力、さすがは銀河帝国最強のフォースナイト。だが、その伝説もここまでだ!」
「……何者だ」
 視線の先。デブリとなった艦橋の上に立ち、黒騎士を見下ろすそれは蒼のフォースセイバーを構える仮面の男。
「聞かれたならば答えよう……我が名は、グランドフォースに導かれし、秘密結社オリュンポスが大幹部、マスター・カオス!!」
 マスター・カオス(秘密結社オリュンポスの大幹部・f00535)の名乗りが終わると同時に、彼の立っていた艦橋が両断される。素早く飛び退いて斬撃を逃れたカオスは念動力で周囲のデブリをかき集め、黒騎士へと続く道を作る。
「かつての大騎士である我が刃を以って、お前に応えよう!」
 道を駆け出すと同時にカオスは念動力で新たに壁を作り、同時にいくつかの残骸を黒騎士に向かって投擲する。空間に刻まれた斬撃によって次々とデブリは両断されていき、それを確認したカオスは斬撃が発生しなかった場所に的確に身体を滑り込ませていく。
 自分と距離を積めていくカオスの姿を見て、黒騎士も深紅のフォースセイバーを構える。残り3メートル、接敵まで1秒未満、下段から振り上げた黒騎士の剣と上段から振り下ろしたカオスの剣が、交差する寸前でカオスの身体が引っ張られるように背後に跳んだ。
「かかったな阿呆め!天より落ちし、原初の火よ! フェンネルの火口を以って、敵を焼き尽くせ!」
 念動力で自らの身体を後方に飛ばしたカオスは、そのまま距離を取りながら【天ヨリ簒奪ス原初ノ焔火】を放つ。剣の勝負など始めからブラフ、狙いは始めからユーベルコードによる不意打ちだ。剣を振り抜き隙を曝した黒騎士を襲う原初の炎は、その身体を焼く寸前で二つに裂けた。
 一瞬思考を止めそうになったカオスだったが、状況をすぐに理解した。先程黒騎士が振るった剣は自分と打ち合うものではなく、空間に新たな斬撃を刻み込むための布石。剣術勝負を挑むというブラフ、それが相手にも有利に働いてしまったのだ。
 手がバレた以上これ以上戦闘を続けるのは不利、それを悟ったカオスは念動力による高速移動でそのまま戦場を離脱していった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

神酒坂・恭二郎
【POW】
「こいつは手強いな。皆の前に、削れるだけ削っておかねぇとな」
後続の猟団員の作戦を聞いて、覚悟を決める。

「やれやれ。楽しくなってきたねぇ」
思わず笑みが零れる。
勝負手順はシンプルだ。
敢えて黒騎士の前に身を投げ出し、攻撃を誘う。
一発勝負だ。
しなやかに脱力し、何時くるかとも分らぬ攻撃に身を晒し。
生死の境を求める勝負師の本性に身をゆだね、命を此処に置いて燃やす。

虚空からの刃に合わせて抜刀。
風桜子の一閃で、虚空の刃を斬り割ろう。
無傷は無理だが、死ななければ安い。

次弾が来る前に、召還した宇宙鮫に乗って一息に接敵。
捨て身の一撃で腕の一本でも貰いにいく。
万が一にでも、無傷で後続に回す訳には行かない。



●銀河剣豪
「あんたやるねぇ、こいつは楽しくなってきた」
 散歩でもするような気軽さで現れたのは神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)、しかしその手に握られた愛刀【銀河一文字】は既に鞘から抜かれている。敢えて自分の前に身を曝した剣士を前に、黒騎士は鼻を鳴らす。
「ヘロドトスでの重要戦力の一人か。真打登場というわけか?」
「覚えていただき光栄の極み……これっぽっちも嬉しくはないがね」
 互いに構えは取らない、緩やかに脱力した状態で静かに睨み合う。先程までと一転した静かな戦場、しかし二人の間では既に千を超える打ち合いが繰り広げられている。
 それは状況から判断されるシミュレーション。伸るか反るか、踏み込むか下がるか、避けるか受けるか、斬るか斬られるか。捉え、想像し、判断する、恭二郎一人で勝てる可能性は涅槃寂静にも満たない。故に勝つのではなく傷を付けるのだと考える、賭けるのは自らの命。勝負師として、これ以上の大舞台があるだろうか?
 思わず笑みを零す恭二郎の前で、黒騎士が呟く。
「貴様の剣技、似たようなものを見たことがある」
 挑発だ。ヘロドトスの戦いを見ていたということは黒騎士は全てを知っている。
「なんだい、こちらの手はお見通しってことか?」
 だからこちらも軽口で返す。呼吸はまだ持つ、息継ぎを狙われる心配はない。
「いや、ただアレは……」

 ――弱かったな

 空間が裂ける、風桜子が走る。互いの身体から鮮血が迸る。膝を付いたのは……恭二郎だった。
「ッ!」
 浅い。すかさず絵馬ホルダーから星白鮫を召喚し接敵する恭二郎だったが、捨て身の一撃ゆえに防御を捨てた身体に三本の呪剣が突き立てられる。過去を封じられ、剣術を失い、それでも振り下ろされた刀は黒騎士の手に無造作に掴まれた。刃を握る手から血を滴らせながら、黒騎士は笑う。
「いい剣だ。貴様も帝国に与すれば近衛の地位に付けただろうに」
 そう言うと黒騎士は動かなくなった恭二郎ごと刀を投げ捨てる。意識を失っているにも関わらず、その手が柄から離れることはなかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

峰谷・恵
「過去に空間へと刻まれた斬撃ということは、このユーベルコードに『今』黒騎士が行う斬撃は含まれない」

他の猟兵と連携を取る。
黒騎士に背を向けて走り(【ダッシュ】使用)ながら血統覚醒が発動するまで空間に刻まれた斬撃の回避(【第六感】使用)に徹する(黒騎士が追いかけてきて直接斬ってくるならユーベルコードを凌いだ他の猟兵が仕掛ける隙になるのでそれはそれで良し)
血統覚醒が発動したら反転しアームドフォート、MCフォート、熱線銃の全力一斉射撃(一斉発射、鎧無視攻撃、鎧砕き、誘導弾、マヒ攻撃、武器落とし、2回攻撃の技能を使用)を仕掛けて黒騎士に対応を迫り、他の猟兵が攻撃する機会を作る。


六代目・松座衛門
「覚悟しろ、アンヘル! 六代目・松座衛門、推して参る。」
【白の呪剣】は人形「暁闇」の【武器受け】で掴もう。伽藍洞の人形には鍛錬の経験はない!
【黒の呪剣】は多節棍「双爪丸」で弾こう。多節棍の使い方よりも人形操術の方が大事だ!
【灰の呪剣】は肉体で受けよう。自分が戦う理由「先代の仇討ち、鬼猟流の再興」の思いが砕け散る。

…空っぽとなったはずの心に、なぜかあの異形を倒せと闘争心が残る。
初代から先代までの戦ってきた記憶、自分がヤドリガミとなるまで操作板を受け継いできた人形遣いたちの気持ちが溢れ出る!
「自分は『鬼猟流の松座衛門』だ! その身に刻め!演目「疾風」!」

【SPD】選択。アドリブ、連携歓迎。



●無銘演目
「個人での勝負では勝ち目がなければ、次は数で勝負か。浅いな」
「そういうお前は友達がいないみたいだな、こっちじゃそういうのボッチって言うんだぜ?」
 黒騎士の挑発に皮肉を返しながら、六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)は多節棍【双爪丸】を構え、人形【暁闇】を前に出す。
「こっちは二体、手加減は無しだ……覚悟しろ、アンヘル!」
「なるほど、後ろの女は仲間ではないと?」
 黒騎士の呟いた言葉に、デブリの影に隠れていた峰谷・恵(神葬騎・f03180)が肩を跳ね上げる。松座衛門が相手を抑えている隙に攻撃を叩き込む作戦だったが、隠れている場所がバレた。
「走れ!!」
 松座衛門が黒騎士に飛び込むと同時に、恵は黒騎士に背を向けたまま駆け出した。先程まで彼女が居た場所が身を隠していたテブリごと両断され、彼女の背後で爆発が起こる。
(あの斬撃は過去のものの発露、新たな斬撃が刻み込まれない限り出現パターンは固定のはず……!)
 第六感で安全な道を選びながら離れていく恵を見ながら、黒騎士はつまらなさそうに溜め息を吐く。
「逃げれば攻撃は受けないだろうさ、だが仲間を置いていくとはな」
 自分から視線が外れた隙を付き、松座衛門が動く。しかしそれを予知していたかのように三本の呪剣が放たれた。
 素早く暁闇を操作し、人形の手で白の剣を受け止める。
 続く黒の剣を双爪丸で弾くが、予想以上の威力に双爪丸もまた松座衛門の手から弾かれる。
 最後の灰の剣。手に武器はなく、人形の操作も間に合わない。意を決した松座衛門は呪いの刃をその身で受け、抱き締めるように黒騎士の身体を抑え込んだ。
「……何をしている、貴様?」
 その言葉に返答はない。戦うに至った過去、つまりは記憶を封じられた松座衛門には問い掛けの意味がわからない。そもそもここは何処で、この鎧の人物は誰なのだろうか?
「邪魔だ、離せ」
 不機嫌そうな声に返答はない。貫かれた傷が痛む、身体に力が入らない、明確に近づいてくる、死の気配。
「ああ、それなら……去らばだ」
 別れの言葉と共に振り上げられる奇妙な剣、その向こうに広がる星の海を綺麗だと見つめていた時だった。
「離れて、松座衛門さん!」
 叫びと共に恵の放った無数の砲撃が黒騎士を吹き飛ばし、松座衛門と引き離すように着弾する。
「押し切れ……!」
 恵の瞳は真紅に染まり、身体能力は大幅に強化されている。そんな肉体が辛うじて支えられる反動の一斉射撃を前に、黒騎士は初めて動くことができなくなった。空間に残る斬撃を盾に直撃は防いでいるものの、そこから出れば否応なしにダメージを受ける。
 現実のものとは思えない戦場の様相。それを見た松座衛門は、操作板を強く握り締めた。
 記憶はない、自分が何者かもわからない、だが何をすべきかは身体が覚えている。
「遠からんものは音に聞け、近くばよって目にも見よ……松座衛門の大一番!」
 歯を食い縛り立ち上がる。
 自分の名を呼んだ女性が戦っている、ならば自分も逃げはしない。戦う理由は今できた。
 弾丸の雨を潜り抜け、身動きの取れない黒騎士に、松座衛門は肉薄する。
「その身に刻め!演目『  』!」
 その名前を思い出すことはできない。しかし動き出した人形から放たれる連続攻撃は、黒騎士の鎧を深く切り裂いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

冬晴・キーラ
孤軍奮闘の黒騎士かー、敵ながらかっけえなー。でもまー、負けられねえな☆


【記憶されし傷痕】は過去の傷を開くんだよな?
こちとらバーチャル世界から生まれたての6歳児だぜ、大した傷なんか受けたことねえよ☆
今までキーラちゃんの代わりに『ぬいぐるみさんチーム』が散々殴られてきたしな★

【グッドナイス・ブレイヴァー】で苦戦する様子を放送してパワーアップしてから、『ぬいぐるみさんチーム』で黒騎士の動きを止めて『マジカルメガホン』から星を飛ばして攻撃するー☆

なるべく他の猟兵をサポートしつつ、まとめてせーので一斉に打撃を与えられるように攻撃をカバーリングしたり、同時に攻撃できるように呼びかけたりもするぜ★



●開くのは傷のみではなく
「孤軍奮闘の黒騎士かー、敵ながらかっけえなー。……でも、キーラちゃんとの相性は最悪だな☆」
 八重歯を覗かしながら笑みを浮かべるのは冬晴・キーラ(星空アジタート・f05497)。猟兵として公式に活動できる最低年齢の6歳であり、今までの戦闘の攻撃全てをぬいぐるみさんチームに受けさせていた彼女に過去の傷など存在しない。
「さあ行けぬいぐるみさんチーム、あいつを取り押さえろ!」
 キーラの指示によってぬいぐるみの群れが襲い掛かる。それに対して黒騎士はそちらを一瞥すると無造作に手を振るう。ただそれだけの動作で全てのぬいぐるみの傷が弾けるように開かれ、デブリに倒れ伏す。だがここまでは計画通り、黒騎士のユーベルコードは発動したにも関わらずキーラの身体には傷一つ付いていない。
 既に【グッドナイス・ブレイヴァー】は発動させた、マジカルメガホンを構えたキーラは黒騎士に狙いを定め……手を震わせながらメガホンを取り落とした。
「この力が開くのは傷だけではない、一手甘かったな」
 ドーパミンとノルアドレナリンの異常増加、及びセロトニンの効果減少。引き起こされるのはとある行動に対する強い欲求……すなわちギャンブル依存症、脳という肉体に変化を起こす確かな病。これまで積み重なったガチャに対する欲求を一度に解放されたキーラは我慢できずスマートフォンに手を伸ばし、その隙を付かれ黒騎士に蹴り飛ばされた。
「認めよう、確かに貴様と相性は悪かった……状況によってはこちらが倒れていたかもしれないな」
 予想外の刺客。それを無事撃破できたことを安堵するように、黒騎士は小さく息を吐いた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

明石・真多子
【芋煮艇】の皆で!
むむむ、剣をいっぱい持ってる騎士さんが相手だね! でもアタシだって腕をいっぱい持ってる軟体魔忍だよ!負けないからね!
釉乃ちゃんがバリアを張ってくれてる間にタコの保護色能力で「迷彩」してバルディード君に見つからない様にするよ。
そのまま姿勢を低くしながら起伏などの「地形利用」した「目立たない」ルートを「忍び足」と「ダッシュ」で一気に接近。
死角から「先制攻撃」の【カイトアッパー】で打ち揚げる!
そのままUC効果で黒騎士を吸盤で「グラップル」した【ヒッパリダコ】で掴まえたらハンマー投げみたいにグルっと回してバルディート君に向けてぶん投げるよ!あとは任せたよ!


リック・シックハント
【POW】力を借りるよ釉乃さんっ!
みんなのおかげでたどり着けたこの力で黒騎士を打ち破ろう!

最初の一撃を釉乃さんに守ってもらったあと、解除されない程度に【ラプラスの瞳】の力を借りるよ。
その力を釉乃さんへの感謝の想いを元に【同胞を求めた病獣の狩り】と繋いで『自身への攻撃の因果を断ち切り傷を受けない』効果を獣に付与するね。
大きさも生態も違う300を超える獣の大群で何体かバルディートさんを敵に誘導させながらも連携攻撃を仕掛けて、黒騎士の動きを封じて押し切ろう!
技量も一流だろうけど、ボクと同調して【戦闘知識】と【防御無視攻撃】を得た獣たちなら、相手の動きに対応して強烈な一撃を与えられるはずだよ!


春日・釉乃
【POW】【連携・アドリブ改変可】
アンノットちゃん、今まであたしを助けてくれた分はキッチリここで返すよ
…黒騎士アンヘル、あなたが『過去に起きた事象』を操るというのなら!

まずは[コミュ力]で近くにいるPOW猟兵を半径5m以内へ集め
左目の魔眼を完全解放し【ラプラスの瞳】を最大限まで発動

[第六感]を駆使してアンヘルが操作する【消えざる過去の刃】の攻撃位置を逆探知
猟兵に攻撃が当たる前に[早業]と[先制攻撃]で攻撃が命中するという因果を書き換えて軌道を逸らすよ

アンヘルの過去操作へ全力の現在改変で立ち向かうから、あたしは動けない
けど囮になって皆を守護すればきっと背中にいる仲間が反攻してくれると信じてるから


バルディート・ラーガ
【POW】あれが黒騎士、帝国のお偉いサンってえ奴ですかい。フウン、いけ好かねえなア。

最初のデケえ一撃は釉乃お嬢サンのバリアに守って頂きやして、あっしの方は確実にUCを発動する事に専念しやしょう……【九つ頭の貪欲者】を。
制御のできねエ姿ではありますが、一度変身しちまえば超耐久力。そして「早く動くモノに反応する」っつー特性がありやして。味方にゃ停止や迷彩の使用を伝えてあります。素早い獣たちに誘導して頂いて……いくらかは喰らっちまうかもですが……黒騎士サンとこに突っ込んでいきやしょう。さアて、その剣。どンくらいの速さで振るえますかねエ?ヒヒヒ。



●決戦
「……次が最後か」
 紅の瞳を宇宙へ向ける黒騎士の前に、新たな猟兵達が降り立つ。
「黒騎士アンヘル!」
 真紅に輝く魔眼が黒騎士を睨む。倒すべき敵の姿を確認した春日・釉乃(”CHIPIE”・f00006)は集まった仲間たちに視線を送り、合図を出すように大きく頷いた。
「みんなと紡いだ繋がりよ……」
 最初に動いたのはリック・シックハント(繋ぐ旅人・f00522)。ドリームキャッチャーに手をかざし詠唱を始めた彼に向け、過去の刃が振り下ろされる。本来ならばその身を切り裂くはずの虚空の刃は、しかし何かの干渉を受け近くのデブリを切り飛ばす。
「あなたが『過去に起きた事象』を操るというのなら……私はその一つ先を行く!」
 因果律操作による現在の操作。事象を書き換えることによりあらゆる攻撃を回避する無敵の防壁を前に、黒騎士は釉乃を中心に直径20mを超える巨大な斬撃を解放した。
 釉乃が因果律を操作できる範囲は半径5m、その内側であれば因果を歪め攻撃が当たらない未来に誘導することができる。しかし黒騎士の斬撃はその範囲外にも存在している、そこに存在する斬撃が持っているのは間違いなく攻撃が当たる未来に続く因果律。すなわち当たる未来と当たらない未来が同一世界に存在するという矛盾、それを強引に観測させられた釉乃の脳と神経が、その負荷に耐え切れず弾けた。
「あ、ああぁあ!?」
 左目に熱した鉄の棒がねじ込まれたような激痛、それに耐え切れずラプラスの瞳が解除される。しかし、必要な時間は稼げた。
「想いの欠片を繋ぎ合わせ、その強さをみせつけよう……顕現せよ、ラプラスの獣!」
 【繋がりこそ我が力】、複数のユーベルコードを融合して新たな力を創造するユーベルコード。その力によって生まれた自身に害なす因果を全て断ち切る不死身の獣、300を超えるその群れが一斉に黒騎士へ襲い掛かる。
「ボクは釉乃さんを連れて下がる、後はお願い!」
「あいあいさあ、こっちも準備万全ですぜ……」
 獣の一人にまたがり安全圏へと下がる二人を見送ったバルディート・ラーガ(影を這いずる蛇・f06338)の口からシューシューと爬虫類独自の呼吸音が漏れる。その身体が大きく膨れ上がり、九つの頭を持つ巨大な黒蛇へと変貌する。
「仲間をやられてカチンと来てるんだ……チョイト八ツ当たリニ付き合ッテモライマスゼェ!!」
 咆哮するように、蛇の頭部から炎が吹き荒れる。その首を全て叩き落すように黒騎士が再び巨大な斬撃を放つが、獣達が頭部に突進し強引に攻撃を避けさせる。理性を失ったバルディートは攻撃を避けることもできず、また素早く動く対象全てに攻撃を仕掛けるが、リックの指示のもと完璧な連携をとる獣たちが彼の手綱を握っていた。
 面倒な相手だ。呪剣への持ち替えを考えた黒騎士の背後から、身を隠していた猟兵が跳躍する。
「軟体忍法――」
「見えている」
 明石・真多子(軟体魔忍マダコ・f00079)の身体に斬撃が走り、鮮血が噴き出す。元々近接主体の彼女は釉乃の防御範囲外から攻撃しなければならず、獣達もバルディードの誘導によってカバーに回れない。そもそも下手に動けば迷彩で隠れた真多子を気づかぬうちに炎に巻き込む危険もあった。この結果は必然……ゆえに、真多子は既に動き始めている身体を強引に動かしつつづけた。
「タコ揚げの、術ーー!!」
 崩れた姿勢で放たれた不完全な忍法。それはその先に続くユーベルコードによる追撃まではいかなかったものの、黒騎士の身体を確かに打ち上げた。
「リックくん、やって!」
 打ち上げたと言っても、未だ黒騎士と真多子の距離は近い。ここで炎を吐けば彼女の巻き添えは免れないだろう。しかし真多子の叫びを聞いたリックは、獣たちに支持を出した。
 無数の獣が黒騎士を取り囲み逃げ場を封じる、そしてそれを見たバルディートの九つの頭全てに限界まで炎がため込まれる。赤が青、そして白に、もはや火炎を超え閃光となったバルディードのブレスが解放されると同時に獣達は散開した。
 輝きが黒騎士を、デブリを、真多子を包み込む。光のない宇宙が昼間のように明るくなり、直撃していないデブリすらも余波で融解し飛散する。その光が収まる頃には、空間ごと削られたような大穴がデブリベルトに空けられていた。
 バルディードが元の姿に戻ると、周囲は不気味なほどの静寂に包まれた。
「こいつは……」
 彼の背後に冷たいものが走る。ユーベルコードを発動していた時の記憶はおぼろげでよく覚えていない。しかしデブリ空いた大穴は、自分の記憶にある限り黒騎士の立っていた場所を巻き込んでいる。だとすればそこには真多子が居たはずであり……。
 思わず駆け出そうとしたバルディードの耳に、ノイズに塗れた通信が入る。
『こち……ゆ……真多子ちゃ……確……』
 通信を耳にしたバルディードの目が、こちらに近づいてくる何かを捉えた。
 獣に乗った釉乃が、背中に傷ついた真多子を背負いながらこちらに手を振る。魔眼から涙のように血を流しながらも、彼女はいつものように笑いながら帰るべき場所に戻ってきたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト