これは旅団シナリオです。旅団「OX-MEN:フォース・ポジション」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです。
「……と、いうわけで作り上げた対抗手段がこれさ」
「ほう……お見事ですね」
オックスコーラとタピオカドリンク。龍に立ち向かい、龍の世界で戦い抜くための力をその身に宿したOX-MENは、決戦に向けて最後の魔獣儀式に挑もうとしている。
「相手が動くのを待つ必要はもう無い。アタシ達で扉をこじ開けてやろうじゃないかい」
「どんなに邪悪な龍とか言うのが強かろうが、俺達の敵じゃねェさ」
時は来た。パラドックスマンに先んじて龍の世界への道を開き、乗り込み、倒す。
「……このパラドックスクリフという世界を滅亡の危機から救うためには、それしかあるまい」
「こっちの世界で暴れられたら、世界は救えても被害が大きすぎるからねぇ~」
儀式の名は、夢幻戦塵。
パラドックスシティや双星山での戦いのように、二つの大きな力をぶつけ合う。
「このタピオカドリンクのおかげで、俺達もパラドックスマンと同じ力を持つ……」
「つまり、魔獣儀式が成立する、というわけですね」
即ち、夢幻戦塵とはオックスメン同士が死力を尽くして戦いあう事によって成立するのだ。
「面白ぇ、誰が一番強いか確かめてみようって事だろ?」
「別に誰でもいいと思うけどね」
言うなれば蠱毒のようなものか。戦って戦って戦い抜いて。最後に立っていたものが龍の世界への扉を開くことができる。
「こんな機会は滅多にありません! 全力でやっちゃいますよ!」
「実力ってのを見せちゃうのよ」
……とはいえ、そんな状態で龍との戦いに挑んだとしても全員がボロボロだ。勿論、それについての対策も考えられている。
「フーン、夢の世界の戦い……それなら現実では体力を温存できるね」
「だが、経験は活きてくる。戦いの前の肩慣らしにはちょうどいいぜ」
「つまり、今回は修行回……という訳なのですね」
「よし、全員準備はいいな」
オックスマンが、オックスメンを見渡す。
この戦いが終われば、そのままパラドックスマン――その主たる邪悪な龍との決戦になだれ込むこととなる。
覚悟はどれだけしてもしたりない。
「最終確認だ。俺達はこれより最後の魔獣儀式、夢幻戦塵を発動し、永劫星雲へと向かう」
夢幻戦塵。
邪悪な龍に対抗する力、オックスコーラと、邪悪な龍の世界に適応する力、タピオカドリンク。
この二つを取り入れたオックスメン同士の戦いは、パラドックスシティや双星山での戦いのように永劫星雲へと繋がる道を開くことができる。
「これからの戦いは現実ではない、いわば夢の世界での戦い。だが、互いに全力を尽くさなければ儀式は達成とはならない」
俺も本気で戦おう、とオックスマンが告げた。
「一体誰と組むことになるかはわからんが……全員、うまくやってくれ。向こうでは容赦できんからな」
オックスメンとパラドックスマン。
最終決戦は目前に迫っている。
ここで互いに競い合い、力を高める事もまた勝利へと繋がっていくはずだ。
OX-MENよ! パートナーと協力し、OX-MENの頂点を目指せ!
納斗河 蔵人
遅れてすまない。状況は理解した。俺の立ち位置は破壊者だ。
恒例の旅団シナリオでございます。
説明は旅団掲示板をご確認ください。
オックスメン最強チームの座は誰の手に?
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「フーン、ボクのパートナーは君なのか」
「どうやらそうみたいだな。よろしく頼むぜ、トリガー」
夢幻戦塵の世界へと突入したOX-MENは、それぞれのパートナーと共に戦場へと降り立つ。
マルコと玲頼が辺りを見渡せば、その景色は見覚えのあるオックスマンションの一室。柱時計がぼぅんと音を鳴らした。
「これ、現実じゃないんだよね」
「っていう話だが……まて、それ以上進むな」
何かに気付き、足を止める。それを察し、マルコが銃を一射。
「……フーン、戦いはもう始まってるって訳か」
言葉と共に風が硝煙をかき消していく。
「……気付かれたね」
「そうでなくっちゃなァ」
ミルラは銃声に自分の仕掛けを見抜かれたことを悟る。傍らに立つクロウは楽しげに、笑みを浮かべた。
「折角の機会なんだ、簡単に終わっちゃ特訓にならねェ」
「まあね。それにしても、立ち位置を活かした戦いといわれてもねぇ」
ふぅ、と二人して息を吐く。
ジャマーとサーチャー。この二人が力を合わせれば、たとえOX-MENの仲間であっても翻弄して魅せるであろうか。
「……覚悟しなよ、マルコに玲頼。ここからがパーティの始まりさ!!」
「リケ様と組めてラッキーだったわねぇ~♪ これで勝利間違いなしよ~」
「なるほど、私と組むのはリケさんでしたか」
くしなとリケの周囲は光に包まれている。ここはオックスマンションの庭か。
「私もそうですが、貴方の能力はまだメンバーも理解しきっていませんからね。これはチャンスなんじゃないでしょうか」
「私がいれば、きっと最初は様子を見てくるでしょうね~。そこを突くのよ」
リケがクスクスと笑う。
彼女たちに僅かな隙でも見せてしまえば、クルセイダーのブレイクが強烈な先制を叩き込むことになるだろう。
「相手が誰でも……まずは突っ込んでから考えればいいよね」
バイクの音が辺りに響く。ライカは既にチェーンガンブレードを手に戦闘体勢だ。
「そうだ。敵を癒やすにはまず自分が傷つかなきゃならねぇ」
その相方となったクーガーも積極攻勢に同調している。
メディックたるもの、恐れることなどあってはならないのだ。
「……じゃ、いくよ。相手が誰なのか知らないけど」
「まずは殴って確かめりゃあいい! 突っ込むぜ!」
癒やす者と帰還する者。考えるよりまず行動する者たちである。
「……流石ですね。どこから攻撃が来ているのか容易には悟れません」
「流石にこれだけの狙撃ができるのはスナイパーだけだろうね。」
オックスマンション玄関前。カプラは静かに座し、周囲を探る。
共に立つカタリナも警戒を怠らず、しかし視線をカプラへと向けて告げた。
「この夢幻戦塵という術式はアタシが組んだようなもの。だからわかるけれど……」
パートナーは互いの力を引き出しあう立ち位置。スナイパーの相方になりそうなのはドールだろうか?
自然とそういう組み合わせになるのだ、とカタリナは続ける。
「戦いにくい相手だけれど、それを意識してやっていこう」
「なるほど、ならば私があなたの力を引き出せば勝利に繋がる……それはいい行いですね」
カプラが落ち着いた声色で応えた。
「新兵様、状況は」
「今はまだ大丈夫。でも、すぐにこっちの位置に気付くだろうね」
玄関がほんの小さく見えるだけのその場所で、通信機から響くアマータの声に新兵は小声で答えた。
遠距離狙撃だけでカタをつけられるほど甘くない。この戦い、パートナーとの連携が最も重要だ。
「……場合によっては二人同時に相手をしてもらわなければいけないかもな」
ふう、と息を吐く。いくら現実でないとはいえ、その状況はかなり困難なものとなるだろう。
「如何なる状況でも、当機はそちらにあのお二人を近づけさせませんよ。さあ、どうやって攻めましょうか……」
アマータは淡々と、勝利への道筋を探り続ける……
「意外と乗ってこないもんだねぇ~」
リーオが苦笑いしながらスコープから目を離す。
傍らに立つ源次もまた周囲の状況をスキャンしながら慎重に歩を進める。
「……隙を見せれば攻撃してくるかと思ったが」
「オックスマンさん一人なら絶対してきただろうにねぇ~」
対戦相手の一人はオックスマンなのは確認済み。未だ捕捉できていないパートナーが止めているのか、それとも。
「しかし、根比べとなればこちらが有利だろう」
「だね。赤ずきんさんもよろしく頼むよぉ」
しかし、|オックスマン《クラッシャー》の全力を止められるのは|源次《ディフェンダー》だけであろう。
まずはあの男を封じなければ――
「……遅れてすまない」
「オックスマンさんが遅いので、絶好のチャンスを逃してしまったのです」
オックスマンの謝罪に、アリッサがジト目で返す。
彼女の魔法ならば、源次とリーオの足を止めさせることはできただろう。
しかし、ディフェンダーの守りを抜くならクラッシャーの攻撃力が必要だったのに。
「こうなったら辺り全部を海にして……」
「まて、向こうにはリーオ……ストレンジャーが居る。環境を変えるのは慎重にすべきだ」
最初の相手となるのは、互いに苦手となる立ち位置。そんな夢幻戦塵の法則の前にはオックスマンも無策ではいられない。
「しかし、ここで立ち止まるようではパラドックスマン……邪悪な龍へは届かんのも確か」
「だから言っているのです。ほら、ごーごー」
見覚えのある|景色《オックスマンション》が上下左右に入り乱れ、距離さえも掴めぬ夢幻戦塵の世界。
この魔獣儀式の舞台で繰り広げられる、仲間同士の戦い。
その果てに君たちはきっと新たな力に目覚めるであろう。
OX-MENよ! 仲間の力を信じ、自分自身を越えよ!
*****************
【お知らせ】
今回、全員のレベルは『100』で統一するものとします。
レベルの関係するユーベルコードはそのつもりで使用してください。
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【更にお知らせ!】
【重要!】
↑でレベルは100と書きましたが、普段あり得ない数字の方が面白そうなので
今回、全員のレベルは『1000』で統一するものとします。
レベルの関係するユーベルコードはそのつもりで使用してください。
*****************
今回のプレイングは|301文字以上《オーバーロード》でお願いします。
こちらに書いておくのが遅くなってごめんなさい。
朝倉・くしな
リケさんと
「成程。見切りましたよ
新たなるOX-MEN、アストロとの共闘
なれば相手の狙いはまずリケさん!
敢えて相手の先手は"私が受けに行く"
「リケさん(のモフモフ)は、|私が守りましょう《後程めっちゃモフモフする》!
二人の攻撃を真っ向から受けますが
そこはリケさんの回復を同時に来る事で耐えきって見せます
そして羅刹パワーで掴んで逃さない状態で、指定UC発動!
衣服をブレイクする裁きの光を身に纏う事で、大人版真の姿に
掴んでいる相手の衣服も積極的にブレイクしにいきます
さあここからが反撃です!
(モフっとリケさんの尻尾を掴む
……ここに【利害関係】が生まれた時。
私のジャッジメントクルセイドの光がアストロパワーで金色に輝き
今必殺の『リケさんブレイク!アストロクルセイダー』が完成するのです!
(リケさんの尻尾をむんずと掴み、ジャッジメントクルセイドの光を込める!)
強化能力を失った対戦相手に、私のジャッジメントクルセイドパワーの乗ったリケさんなら負けはしないでしょう!
いけ、リケさん、君に決めた!
(容赦なく投げる)
「……来ましたね」
空に響くエンジン音。
朝倉・くしな(|鬼道羅刹僧《きどうらせつそう》・f06448)は未だ姿すら見えぬOX-MEN……対戦相手の姿を思い浮かべ、口元を緩ませる。
敵の姿は見えないが、一人はオックスリターナーに違いない。おそらくは機動性を活かして先制攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。
「覚悟はいいですか、リケさん」
「もちろんよ、くしなちゃん♪」
傍らに浮かぶ、オックスアストロ………リケ・ヴァッハ(「太陽」を司る小さな聖女神・f35566)に問いかければ、気合十分といった返事。
「この夢幻戦塵とやらの世界、パワーがみなぎるなんてものじゃありませんからね」
「敵も螺旋魔空回廊?っていうのでパワーアップしてたんでしょう? それと同じじゃないかしら」
先ほどから全身にみなぎる力。おそらくはOX-MEN全員がこの力を感じているはずだ。
はるか遠くに聞こえていたバイクの音もとんでもない速度で近づいてくる。邂逅の時は近い。
「しかし、私は見切りましたよ。新たなるOX-MEN、アストロとの共闘――なれば相手の狙いはまずリケさん!」
と、そこでくしなは相手の行動を予測する。
リケがOX-MENとして戦場に立つのは初めて。それ故にメンバー達もその実力や動きを完全に把握しているとは言い難い。
未知の相手を先に叩いてしまうというのは戦術的にも理に適っているだろう。
「故に初手は”私が受けに行く”」
狙いを外されれば相手に隙もできるし、準備万端待ち構えていればダメージも抑えられるはず。
「今回は私はサポート側に回るわね! くしなちゃん安心してちょうだいな!」
「ええ、ええ! リケさん(のモフモフ)は、|私が守りましょう《後程めっちゃモフモフする》!」
「え、ええ……よろしくね」
――ぞわ、とリケの毛が逆立つ。
なんだか執念のようなものを感じるような。くしなはそんなにこの戦いにかけているのだろうか? ちょっと違うような――
そんなリケを知ってか知らずか、くしなはでんと構え、一切の攻撃を引き受ける構え。来るなら来い、といわんばかりだ。
さあ、バイクの音が近づいてきた。その背には予想通りライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)の姿がある。
「ライカちゃんのパートナーは……クーガーちゃんね!」
「――行くぜぇぇぇぇぇぇぇ!」
そして、クーガー・ヴォイテク(自由を愛する聖者・f16704)の叫びが辺りに響き――
「……って、あれぇ!?」
くしなは宙を舞った。バイクによる|攻撃《轢き逃げ》が一直線に彼女へと向かってきたのだ。
「く、くしなちゃん!?」
「オラアアアアアッ!」
更にはクーガーがバイクから飛び出し、拳がくしなの体を捕らえる。
「おっとっと!」
受け止めた両腕に重い衝撃がはしる。
まさかリケには目もくれず、一直線にこちらに向かってくるとは。
自分が攻撃を受けるという狙い通りではあるが、意表を突かれたのも確かだ。
くるくると回転しながらも体勢を立て直し、着地する。
「くしなちゃん、私がついてるわよ!」
そんなくしなへリケが声をかけると、彼女は金色の光に包まれた。
口元を拭い、すっくと立ち上がる。
「フッ……やりますね。 私の裏を掻くとは……」
「あん? 効いてねぇのか?」
「パワーアップしてるのはこっちだけじゃないみたいだね」
くしなの体に負傷は見られない。完璧に決まった先制攻撃だが、それだけで片がつくほどOX-MENは甘くない。
……そうでなくては。
「まあ、やるこたぁ変わらねぇ。殴って殴ってぶっ飛ばす」
「この世界じゃ好きに暴れていいってボスも言ってたしね」
クーガーは両の拳を打ち付け、ライカの手にした鋸剣が唸りをあげる。
「気が合いますね、くしなん達もそのつもりです!」
「全員そんな感じなわけ? まあ私もその方がわかりやすいけどね♪」
黄金の輝きに包まれたリケを傍らに、くしなも仁王立ち。
こうして、OX-MEN同士の戦いは幕を上げたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
リケ・ヴァッハ
くしなちゃんと
「今回は私はサポート側に回るわね!くしなちゃん安心してちょうだいな!」
くしなちゃんが相手2人の攻撃を受けているから私がオックスコード「星光者の利点」で回復しておくわ
おっと!ここでくしなちゃんのユーベルコードが発動したわね!やっちゃいなー!
私のオックスコードの「利害関係」も成立して攻撃力増し増しよー!
ん?くしなちゃんが私のしっぽを掴んできわね…って投げられた!アイエエエ!!
私は咄嗟にユーベルコード【天岩戸神隠】で身を守りながら相手チームに硬い卵をぶつけてやるわー!
・オックスコード
星光者の利点(オックスアストロ・インヴェスメント)
【金色の光】が命中した対象を治療する。また、対象と【利害関係】で繋がっている場合、両者の攻撃力を大きく増加する。
・ユーベルコード
天岩戸神隠(アマノイワトノカミカクシ)
全身を【黄金の羽の生えた太陽の卵】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
「オラッ!」
「私を狙ってくるのならば好都合!」
ずん、と大地が振動する。クーガーとくしなの拳がぶつかり合えば、弾けた空気が周囲を突き抜けた。
「まずは巫女の方から潰す!」
続けてライカの鋸剣が空を裂く。
「くぅっ、すごいパワーね!」
リケの元にもその勢いが伝わる。
破壊力も速度も普段見ている猟兵のものとは違う。それがこの夢幻戦塵の世界か。
「くしなちゃん!」
「この程度で、私を倒す事はできませんよっ!」
「ちっ……うざったい!」
無論、体力、耐久力……そういった部分も桁違いだ。
引き裂かれたかと思われた肉は薄皮一枚を傷つけるに留まり、驚くべき事にその傷も瞬く間に塞がっていく。
流石に纏った服まではその影響下にはないようで、元々大きく晒された肌はより扇情的になっているが。
「くっそ、こりゃクルセイダーだけの力じゃねェな……」
「おやおや、乙女が柔肌を晒しているのに冷静な分析!」
が、クーガーは気付いた。いくら力が増しているとはいえ、クルセイダーの回復力はあり得ない。
と、なればユーベルコード――
「あっちの金猫か!」
ライカが素早く転進し、その切っ先をリケに向ける。
鋭く振動するその刃をひらりひらりと、紙一重で飛び回るが、この状況――冷静ではいられない。
「うぎゃーっ!? く、くしなちゃんよろしく!」
「そうは行きませんよライカさん! リケさんのモフモフを刈り取られちゃたまりません!」
リケの叫びにくしなが構える。|得意技《ジャッジメント・クルセイド》の光が金色と混ざり合い、猛烈なエネルギーを発し始めた。
「|いつもの《ジャッジメント・クルセイド》でいきますよ!」
「させるかよぉっ!」
ライカに向けて放たれた極光はしかし、割って入ったクーガーが受け止める。
「ぐっ、ぬおぉっ、やらせねぇぇぇぇっ!」
並ではない力の奔流。いつも見せている光がこれほどのものであったとは。
そして光に触れて気付いた。これは、何かが違う。クーガー自身も感じていた、内から目覚めようとしている力。
|クルセイダー《くしな》は既に目覚めている。いや、おそらくは|アストロ《リケ》も。
「こいつは……やべぇ!」
感じ取った。この光。クルセイダーの力とは。
「さあ、クーガーさん、ライカさん! ブレイクさせてもらいますよ!」
「いいわ、くしなちゃん!」
ブレイク――即ち、強化破壊。
|審判者の極地《オックスクルセイダー・ブレイクワールド》へと至ったこの光は、ユーベルコードによる強化を破壊してしまう。
しかもそれだけではない。再度発現させようとしても、その力を発揮させず封じ込めてしまうのだ。
「リターナー! クルセイダーの|攻撃《アレ》だけは死ぬ気で避けろ……ッ! それと合図するまでその力は使うな!」
クーガーが全身から血を噴き出させながらもライカに叫ぶ。
それを受けて彼女は心臓代わりのメガリスへと延ばそうとしていた手を引っ込める。
くしなの攻撃を受けたクーガーの直感はおそらく正しい。クーガーもライカも、まだ力を解き放っていなかったのは幸いだった。
しかし、同時にそれはリケの金色の光によって強化されたクルセイダーと、素の力だけで渡り合わなければならないことを意味する。
「……了解。こいつらが危険な相手だって事は……よく分かる!」
滅多に焦りを見せないライカの頬にさえ冷や汗が流れた。
大成功
🔵🔵🔵
ライカ・ネーベルラーベ
作戦:メディックをバイクに相乗りさせ2人でクルセイダーに突撃
彼女を先に潰す
接敵して初手ひき逃げをしたらバイクを捨て白兵戦
金猫は知らないけどあの巫女はどっかで一度戦った気がする
―危険な相手だったっていう危機感だけが確かにある
わたしはクルセイダーを抑える方に集中
強化が飛んでも無駄に頑丈なわたしなら耐えられる
割り切ってガチのダメージレースを仕掛けるよ
メディックはクルセイダーのOCだけは死ぬ気で躱せって言ってた
躱した後は知らないけど
【血統励起・雷竜】
武器も総動員して手数勝負だ
積極攻勢で相手に連携を取る隙を与えない方向性で
ジギタリスのエキスもぶち込んで発狂特攻
相方は自己回復専門とか言ってたし
長期戦はあっちが有利
だからこっちは速攻
初手で自分のOCを切って有無を言わさず致命傷!
「こちとら暴走なんて日常茶飯!テンションアゲるのは得意技!」
負担が重いけど
任せろって言った言葉信じて良いよね、メディック?
まぁ相手も手練
初手で殺し切れると思うのは慢心だよね
「ちゃんと動かなくなるまでブッ壊す!基本だよねぇぇぇ!」
「ラァァァァ!」
「くしなちゃん、ファイトなのよー!」
ライカの猛攻がくしなへと襲い来る。
しかし荒々しい刃が肌を裂こうと彼女は怯まない。金色の光は如何なる傷を受けようとも直ちにそれを塞ぎ、むしろ力を与えてくれるのだから。
「ライカさん、素晴らしい攻撃ですが……ここは私とリケさんで勝たせていただきますよ!」
「チッ……」
力のこもった拳がライカを強かに打ち付ける。
|審判者《クルセイダー》と|帰還者《リターナー》は共に攻撃力と耐久力に優れた立ち位置。通常であれば互角であるはずだが――
「オラァ!」
「そうは行きませんよ、リケさんには触れさせません!」
更にはメディックが加わっても状況はくしなにやや有利といったところ。それには|立ち位置《オックスコード》の性質の違いがあるのだろう。
実質的には二対一であるように見えて、|星光者の利点《オックスアストロ・インヴェスメント》の存在がこの状況を作り出している。
「いいですよリケさん、この調子でいきましょう」
「ふふふ、私もこの力の使い方がわかってきたのだわー!」
とはいえ、|相手《クーガーとライカ》もまだその力を完全に解き放ってはいない。
一撃受けただけで|くしなの力《ブレイク》に気付いたのは流石というべきだが、それ故に手詰まりになっている。
(このままではお互いに体力を削り合うだけ――)
ライカの方にはその覚悟があるようだし、クーガーも逆転の一手を狙っている。
このまま長期戦に持ち込んで勝つことはできるかもしれない。だが、リケだって金色の光を放ち続けて負担がなかろうはずもない。
この|戦い《夢幻戦塵》をそんなふうに続けていいものだろうか?
「――よくないですよね」
クーガーの拳を受け、くしなはつぶやいた。
賭けるなら、互いに全力をぶつけ合ってからだ。
「え、どういうこと?」
「私たちの勝利は劇的に、派手に行かなければいけないということです!」
カッ、と辺りを閃光が包んだ。
「うおっ!?」
「く、くしなちゃん?」
降り注ぐ光がくしなを撃ち抜き、溢れ出すエネルギーが大地を震わす。
「ジャッジメントクルセイドを自らに注ぐ事で成す、|疑似超越《偽オーバーロード》っ!」
纏った衣ははじけ飛び、くしなを守るのは光だけ。|裁き《ブレイク》の化身とでもいうべき姿がそこにあった。
「決着をつけるのね! いいわ、ヤッチマイナー!」
リケの言葉と共に金色の光は更に強まっていく。
「ここで勝負をつける気だな!」
「――任せろって言った言葉信じて良いよね、メディック?」
ここが互いに切り札の切り時だ。ジギタリスのエキスを手に、ライカが飛び退りつつ問いかけた。
「ああ、リターナー、お前を信じてるぜ。だからよ、お前も俺を信じろ!」
羅刹の|力《パワー》がクーガーを掴んで離さない。|超過飛越《デミオーバーロード》の余波でクーガーの服もはじけ飛んでいる。
更に力を増した拳は、逃げ場のないその体を容赦なく打ち付けた。
しかし、激しく吹き飛びながらもクーガーは辛うじてその意識を保っていた。彼の体力でなければ一撃で終わっていただろう。
「派手にやっておきながら……そんなもんかよぉ!」
「もはや負け惜しみにしか聞こえませんよ、クーガーさん!」
満身創痍。受けた負傷は大きく、戦う事は難しいだろう。
だが、|治癒者《メディック》がこれで終わるはずがない。
「くしなちゃん、まずはクーガーちゃんにトドメを刺すのよ!」
「ええ、ここで決めさせてもらいます!」
言葉と共にむんず、とくしなはその手をリケの尻尾へと延ばした。
「ん?」
モフモフの触感。いやしかし、何故この状況で?
リケがその疑問に答えを出すよりも早く、くしなを包んでいた|光《金色》がリケ自身をも包む。
「今ここに、究極の必殺技が完成するのです!」
そして、羅刹の剛力で勢いよくクーガーへ向けて投げつけた!
「いけ、リケさん、君に決めた!!!!」
「アイエエエ!!」
二人の目覚めた力を融合した合わせ技。
突然のことにリケは焦りながらも全身を黄金の羽の生えた太陽の卵へと変化させる。
|天岩戸神隠《アメノイワトノカミカクシ》。
どんな手を残していたとしても全身無敵となった今、|体に宿した金色の裁きの光《リケさんブレイク! アストロクルセイダー!》に耐えられるはずはない!
「待ってたぜ……この瞬間をよぉ!」
それと同時、クーガーがカッと目を見開いた。間違いなくこの一撃が一番の大技だ。
「行くぜリターナー、ここから一気にクライマックスだぜッ!」
「|血統励起・雷竜《アクティベート・ドラゴンハート》」
どくん、と|二つ《ライカとクーガー》の心臓が鼓動する。
クーガーの全身が聖なる光に包まれると同時、ライカの全身に雷光が走った。
大成功
🔵🔵🔵
クーガー・ヴォイテク
「俺たちの勢いを止めれるもんならなァ!!」
まず一気に距離を詰めてクルセイダーを二人掛で殴り落としきるまでやる
俺の怪力なら普通に殴るだけでもいてえだろうしな
「リターナー、お前を信じてるぜ。だからよ、お前も俺を信じろ!」
アストロの攻撃は、基本メディックが体を張って庇い気合い受ける
「そいつを待ってたぜッ!オックスメディック・レスキュードーン!!」
クルセイダーOCのみ、メディックOCで庇って受ける
又、クルセイダーOC受けた後、【聖者の行進】も複合して発動させる
「行くぜリターナー、ここから一気にクライマックスだぜッ!」
『絶対に勝つ』という"強い意志"による戦闘力増強と飛翔能力
OCによる【負傷と状態異常を回復した量】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力
この二つを得た上で果敢に攻め続け、クルセイダーを倒した後でも間髪入れずにアストロを殴り飛ばしに行く
クルセイダーは偶にお色気だすけどよ、興味ねえからどうでもいいか…殴るだけだしよ
クルセイダーOC前の自己強化は絶対にしない
折角のコンビなんだ、絶対勝とうぜ
「覚悟なさいっ!」
「そっちがなァ!」
クーガーの拳とリケがぶつかり合う。すさまじい衝撃が戦場中に広がった。
「ワタしは、まダ終わッてない……ッ!!」
「そうです、まだここからですよ! ライカさん!」
暴れ狂う弾丸の嵐を突き抜け、くしなもライカに接近する。
回転する刃がくしなの肌を裂き、金色の光がすぐに塞ぐ。羅刹の握力が服を、肉を掴み千切り取る。
|帰還者《デッドマン》の体とはいえ、こんな戦い方が回復も無しに長く耐えられるものではない。|クーガー《メディック》の|力《回復》は彼自身にしか届かないのだから。
しかし、それでもライカは止まらない。
「こちとら暴走なんて日常茶飯! テンションアゲるのは得意技!」
「おおおっ!?」
つかみ取ったチェーンガンブレードの振動が激しさを増す。心臓代わりの|メガリス《竜種の魔力核》へ、更なる力をよこせと叫びをあげる。
これが勝利への道筋、|帰還者の道標《オックスリターナー・オーヴァドライブ》。
「もっと、もっト、もット、モットォォォォ!!!!!!!!!!」
「折角のコンビなんだ、絶対勝とうぜ」
|裁きの金卵《リケ》を全身で受け止めつつ、クーガーが笑った。
ライカもクーガーも、自らが傷つくことを厭わない。むしろそれによって得られるものがあるならば、自ら傷つきに行きさえもする。
だからこそ、|新たなる力《オックスコード》はそれを否定するかのような道を示したのかもしれない。
もはや口にさえ出さなかったが、ライカは|治癒者の予見《オックスメディック・レスキュードーン》に従い、その苦痛をクーガーへと委ねる。
力を、速さを。限界よりもはるか先へ。一人ではたどり着けない領域へ。
「オオオオオオオオッ!」
クーガーが叫ぶと同時、ライカの動きは更に加速する。
くしなの纏う光も眩さを増し、回転する刃を殴りつける。
「素晴らしいですよ! ですが勝つのは私たちです!」
裁きの光と、雷竜の光が一つになり、そして。
「私たちの合わせ技を突破できるもんですか!」
「知るかよ! ここまで来たら殴り続けるだけだ!」
ライカの負担までをも引き受け、それでもクーガーは倒れない。
自ら傷つくことで、更なる高みへ。どれほどに傷つこうと、最後に立ってさえ居ればいい。
「無駄よ! 私は無敵! クーガーちゃんが倒れる方が先に決まってる!」
しかしリケの纏った|くしなの力《ジャッジメント・クルセイド》はそうして得た力さえも|打ち砕く《ブレイクする》。
塞がった傷は再び開き、体力の回復も一時的なもので終わった。すさまじいまでの超パワーもみるみるうちに失われつつある。もう一度同じ事はできまい。
それでもクーガーが起死回生の一手を打つとしたら、あのタイミングしかなかった。
OX-MEN同士の戦い、確実な勝利などありはしない。天秤はどちらに傾いてもおかしくはなかった。
「オラァァァァッ!」
「せやっ!」
ライカのチェーンソー剣が叩きつけられた拳をえぐり取る。
「片腕は差し上げましょう! これで、トドメッ!」
片腕を犠牲にくしなのもう一つの手がライカを貫く。
互いが血を吹き、まさしく死闘というべき光景。
「ガッ……ァッ……これで、終わりだァッ!」
「グェッ……ハァッ……」
叫びと共に竜種の魔力核がその魔力の一欠片までを絞り出す。
貫かれたライカの体が、貫いたくしなの腕ごと雷と化し、二人を焼き尽くしていく。
「ちゃんと動かなくなるまでブッ壊す! 基本だよねぇぇぇ!」
「ガハッ……まだです! ジャッジメント・クルセイドォッ!」
光が飛び散り、赤い飛沫が舞った。
くしなの体が遂に限界を越え、その身を倒れ込ませる。
しかしそれでも、|叩き込まれた最後の力《ジャッジメント・クルセイド》はライカを呑み込んでいく。
そしてくしなが倒れたことにより、|リケを包んでいた光《オックスクルセイダー・ブレイクワールド》が消え失せた。
同時、クーガーの宿した聖なる光もまた|全て失われ《ブレイクされ》ていく。
「クソッ、最後までやりきりやがったかクルセイダーよぉ!」
それでもまだ、|太陽の卵《リケ》の勢いは死んでいない。
ライカから半分引き受けていた負担もあって、クーガーも限界が近い。勝敗は彼が耐え抜くか、倒れるかにかかっている。
「終わりよ、私たちの勝ちね!」
「ま、まだだ……終わらねぇ……っ!」
いや、クーガーの目もまだ死んでいない。
残された一欠片の力で、彼は|金の卵《リケ》をその勢いのまま地獄車の要領で放り投げる!
「えっ……アイエェェェェェ!?」
キラリ、と星が光った。
クーガーは地面をそのまま転がり、大の字になって動かない。
それでも虚ろな目で、微かにつぶやく。
「リターナー、俺達の勝ちだぜ」
それを最後に彼は意識を手放した。
大成功
🔵🔵🔵
*********
※オックスマンのプレイング
遅れてすまない、アリッサ。状況は理解した。相手は源次とリーオか。
ふむ……俺達が勝つにはどうにかしてディフェンダーの守りを抜いてストレンジャーの動きを止めねばなるまいな。
俺一人では不可能。君の力が必要だ、トラベラー。
ピンポイントな攻撃は源次には受け流されてしまうだろう。ならば、戦場全体に影響を及ぼす一手が欲しい。
ほう、アリッサもオックスコードに目覚めたか……俺にも確信がある。
物理的な破壊ではない……概念、環境の破壊の力に。
俺の破壊力と君の搦手。合わさればあの二人にだろうと打ち勝てる。そうだろう?
重力の鎖を断ち切れば、君の海の魔力もより強化されるだろう。
この戦場を支配するのだ、アリッサ。
君の助けがあれば……俺が吹き飛ばされたと見せかけて、破壊の力を高め続けることも不可能では無いはずだ。
タイミングが命……ストレンジャーがこの状況に適応するギリギリに……
遅れてすまない。だが、海中に差し込む太陽の光に、俺は勝機を見た。
この一撃が全てを破壊する!漆黒色破壊者光線――ッ!
リーオ・ヘクスマキナ
そーいや、源次さんとはお互い顔は良く合わせるけど連携はしたことなかったよねぇ
ま。好きに動く前衛に合わせるのは得意だし、上手くやるさ
さぁて、相手はあの2人。只の策じゃ破壊されるか環境諸共上書きされる
じゃ。奇策を通り越して、半ば博打と行ってみよう
まずは交戦は最低限に、グラップリングフックの移動力や障壁魔術、赤頭巾さんからの援護を駆使して逃げ回りつつ、周辺を探索して大まかな地形データを改造スマホで収集。源次さんにも送っておこう
これで準備は出来たかな?
俺と赤頭巾さんの戦闘能力だと、真っ当に戦うのはちょっとキツいのは承知の上
だからこのUCは……俺じゃなくて源次さんに使うとも!
「化身の拾参:王の外套」! そしてオックスストレンジャー、此処に在り! 「異邦者の来訪」を重ね掛けする!
只でさえ高火力且つ速い上に、目視も認識も出来ないエグいコンボだとも
尚且つ、今この瞬間だけは此処は俺の領域だ!
2人が状況に対応する前に、一気に行ってみようか!!
「そーいや、源次さんとはお互い顔は良く合わせるけど連携はしたことなかったよねぇ」
油断なく周囲を見渡し、リーオ・ヘクスマキナ(|魅入られた約束履行者《リビングデッド》・f04190)は口を開いた。
この夢幻戦塵に於いて彼のパートナーとなった叢雲・源次(DEAD SET・f14403)もまた警戒の姿勢を崩さず、短く答える。
「そうだな」
猟兵として、OX-MENとして。誰かと轡を並べて戦う機会は数多い。しかし明確にコンビを組んで、となるとなかなか機会は少ないのも事実だ。
「所詮は即席のコンビだ」
チラリ、とリーオの背後――赤頭巾さんへと視線を向ける。
「コンビプレーなどという都合のいいものは存在しまい」
「まあ、そりゃねぇ」
リーオの相棒といえば彼女に他なるまい。それ以上の連携など、誰であろうと不可能だ。
当の赤頭巾さんも当然だといわんばかりに胸を張る。
――しかし、それでも|守護者《ディフェンダー》と|異邦者《ストレンジャー》、二人の力を合わせなければ勝利を掴むことは出来ない。
「作戦は?」
「好きにやれ。俺もそうする」
源次はそれだけを端的に告げると、再び警戒の姿勢に入った。
有るとするならば、互いのスタンドプレーによって生じる相乗効果だけ。源次の言葉はそういう意味だ。
OX-MENの|立ち位置《ポジション》とは個々の役割を果たすことで生まれ出ずる力。
ふぅ、と小さく息を吐き、リーオもまた銃を構え直す。
「了解。ま、好きに動く前衛に合わせるのは得意だし、上手くやるさ」
「あの二人を上回るならば、俺達も|立ち位置《ポジション》の力を最大限に発揮せねばならない」
「なるほど、状況は理解しました」
オックスマン・ポジクラーシャ(遅れてきた破壊者・f12872)の言葉に、アリッサ・ノーティア(旅する雲に憧れて・f26737)は頷いた。
夢幻戦塵におけるパートナーの多くは常日頃から行動を共にしているわけではない。そういう組み合わせにはなりにくくなっている。
この二人も明確に組んで戦ったことはなかった。
「しかし、互いに好き勝手動くのと、作戦を組んで動くのならこちらが有利なのでは?」
「そう単純ならば楽だったのだがな」
この場合、どちらが上という事もない。以心伝心、全てを互いに知り合っているというのならば話は違うが、OX-MENの大半は結局のところ個人主義。
それでも力を結集して最大の結果を導き出す。それこそがOX-MENなのだ。
「ディフェンダーだからといって守るばかりが能ではない。俺がクラッシャーでありながら知性に溢れているように……」
「……その解釈はよく分かりませんが、私たちは作戦をしっかり立てた上で臨機応変に動くという方針は理解しました」
オックスマンの謎理論を遮り、ジト目のアリッサがすっと立ち上がった。
「む?」
「仕掛けておいた泡が弾けました。こちらに向かってきています」
泡を操るといえばアリッサ。あの二人も当然、その存在に気がついたはずだ。のんびりと構えている暇はない。
「オックスマンさんとディフェンダーの前衛二人。このスタイルは明確でしょう」
「うむ、俺の破壊力も|ディフェンダー《源次》相手では十全とはいえん。互角の戦いとなるだろう……と、なれば勝負を分けるのは|ストレンジャー《リーオ》と|トラベラー《アリッサ》。君たちだ」
永劫星雲の彼方、邪悪な龍との決戦には様々な力が必要となる。この夢幻戦塵を戦い抜けば、必ずや|新たなる力《オックスコード》へと至ることが出来るはずだ。
「動体反応2……捕捉」
「あいよっ! まずはその扉だ!」
源次が告げると同時、リーオが指示を飛ばす。
「……フム」
この空間に入ってから感じている、すさまじいまでの能力の向上。
インターセプターから得られる情報の量や精度に加え、それを処理するだけの思考加速。踏み込む力強さ、速度。次々と開かれる扉。
これだけのパワーを得たことで目覚めつつある新たな領域。|守護者《ディフェンダー》としての新たな一歩に至りつつある感覚。
(使いこなさなければ邪悪な龍と戦うことすらできんという事か)
「その廊下は危ない、こっちから行こう」
見慣れたオックスマンションの景色は螺旋魔空回廊が如くねじ曲がり、繋がりはぐちゃぐちゃでどこがどこに繋がっているのかわからない。
だが、先ほどからリーオは既に全てを知っているかのようにルートを選択し、源次へと示している。
リーオもまた、|異邦者《ストレンジャー》として新たな力に覚醒しつつあるのだろう。そしておそらくは、相手となるものも。
扉を閉じると同時に、衝撃と共に泡の弾ける音。そして。
「はあああああっ!」
「ムッ」
正面から漆黒の剣が勢いよく振り下ろされる。オックスマンだ。
腰だめの構えから刀を抜き放ち、切っ先で力の方向をほんの少しだけ変えてやる。
|守護者《ディフェンダー》を名乗るからには、これくらいの芸当は容易にやってみせねばならない。タイミングは完璧だ。
そらされた漆黒剣はオックスマンションの壁へと叩きつけられ、そのまま壁を吹き飛ばした。
「流石だな、源次」
(重いな……)
オックスマンが称讃するが、それでも源次の受けた衝撃は大きい。手首に僅かなしびれを感じる。
流石というべきか、|破壊者《クラッシャー》の攻撃力は甘くない。直撃を受ければ源次といえどただでは済まないだろう。
無論、そんな隙を見せてやるつもりもないが。
「なるほど、ならばしかと動きましょう」
「源次さん、そっちは頼むよー!」
|破壊者《クラッシャー》と|守護者《ディフェンダー》は一進一退。
そうなれば勝負を分けるのはサポートに回った二人ということになる。アリッサもリーオも、それぞれが自らの力を紐解き交戦の姿勢に入る。
「まずは警戒しながらブッ込みましょう」
「おおっとぉ!?」
ぱちん、と泡が弾ける。やはり籠められた魔力は平時とは比較にならない。まともにくらっていたら、それだけでやられていたに違いない。
「怖いねぇー、思ったよりも|ドストレート《脳筋》に攻めてくる!」
ふよふよと、アリッサはゆっくり浮上する。試しに一発撃ち込んでみるが、彼女を取り囲む泡が弾ければたちまち弾丸は力を失ってしまう。
「ほらパプン、もっと頑張りなさい」
頭のクラゲに檄を飛ばすアリッサを見つつ、リーオは思案する。
|異邦者《ストレンジャー》と|旅人《トラベラー》、似たような立ち位置に見えるが、その方向性は大きく違っているようだ。
自分の|力《オックスコード》の正体はなんとなくわかってきた。環境適応……言うなれば、どこに放り出されても生きる術を見つける力だ。
未知を知れば知るほど、辺りは異邦者の領域となっていく。リーオにとって時間は味方だ。
(さぁて、相手はあの二人)
オックスマンが破壊行為をすれば状況は変化していくし、「やりにくい」相手であるのならばアリッサもこの能力に対抗する術は持っているはずだ。
だとするとトラベラーが持っているのは環境そのものを変える方法……?
「おっと、今のはちょっと危なかったのです」
漂う泡を掻い潜りアリッサへと迫った赤頭巾さんの攻撃も届かない。正面から彼女とやり合うのは厳しそうだ。
かといってオックスマンを狙ったとしても、こちらが倒れる前に倒しきれるかは怪しい。
リーオの右手は、改造スマホの上で速度を緩めることなく動き続ける。
左手のグラップリングフックを延ばし、まるで迷宮と化したオックスマンションを見渡しながらリーオは言った。
「……じゃ。奇策を通り越して、半ば博打と行ってみよう」
「……ふむ」
アリッサもまたリーオと対しながら思案を巡らせる。
根底の泡はもはや戦場全体に広がり、要所要所でその足を止めさせる事に成功している。
しかし、オックスマンの重い一撃も源次相手には上手くいなされ、有効打を浴びせる事はできていない。
「この状況、厄介なのはストレンジャーの方ですね」
既にリーオはこの戦場を把握しつつあるらしい。休みなくスマホの上で動いている指がその証拠だ。
彼に時間を与えれば、徐々に優位をとられてしまうのは目に見えている。
――アリッサも状況を引き寄せる一手が、自らの内に生まれているのを感じていた。
しかし、その一手を切るタイミングを間違えればそれは敗北に繋がる。
だからこそ、アリッサはリーオの一挙手一投足にまで注目し、その時を待った。
彼が仕掛けてくるその時を。
大成功
🔵🔵🔵
叢雲・源次
所詮は即席のコンビだ
コンビプレーなどという都合のいいものは存在しまい
有るとするならば、互いのスタンドプレーによって生じる相乗効果だけだ
「好きにやれ。俺もそうする」
インターセプター起動
動体反応2…捕捉
戦闘行動開始
互いに真正面からやり合う事は想定済みだが、それだけでは勝てないのも織り込み済みだ
「下手に示し合わせるぐらいなら、互いが敬意を払いベストを尽くす。さすれば結果などいくらでもついてくるものだ。」
リーオに危機が生じたならば守護者の領域を発動
攻撃を受け流しつつ標的を半径1000M圏内、敵性反応(敵の攻撃によって生じる物体・エネルギー含む)全てに設定。全て叩き落とす。
インターセプターによる戦闘領域再設定…リーオめ、いい仕事してくれる…把握完了…執行…屍血山河…!
憚りながら守護者を冠しているのでな。おいそれと通しはせんよ。
「オックスストレンジャー、此処に在り!」
リーオが叫ぶと同時、空気が変わった。
夢幻戦塵のオックスマンションに|異邦者の来訪《オックスストレンジャー・ネヴァークロス》するときがやってきたのだ。
「ぬうっ!?」
オックスマンが自らの破壊によって生まれた穴に足を取られた。
本来ならばそんなミスを犯すはずがない。これはリーオによる一手先を読んだ誘導だ。
「源次さん!」
リーオが放った銃弾が周囲を漂う泡を弾けさせ、源次がその最中を力強く踏み込む。
ここはもう異邦者の領域。
戦場全てを味方につけ、|異邦者《ストレンジャー》は勝利への|道《未知》を指し示した。
「仕切り直しです」
が、|旅人《トラベラー》もまた|新たな扉《オックスコード》を開いている。
リーオの弾けさせた泡は魔力を失わず、青く蒼く周囲を染め上げていく。
「……ム」
届くはずだった刃が宙を――いや、海を切る。ほんの少しだけ鈍った速度。
(踏み込みが足りんだと?)
深海の魔力は見えない海流を作りだし、源次の切っ先を押しとどめたのだ。
奇しくも異邦者の領域と同じだけの、半径1 kmの戦場はもう一つ。|旅望者の世界《オックストラベラー・スモールワールド》として形を変えている!
「深海となれば有利なのは私に違いありません」
「ああもう、ここまでのデータを台無しにしてきた!?」
|リーオの能力《異邦者の来訪》は状況把握が必須条件。環境そのものを変えられてはその力は発揮できない。
アリッサ達が勝機を掴むならば、このチャンスを逃すわけにはいかない。一気に攻め立てる。
「遅れてすまない。状況は理解した。ストレンジャー、俺達が勝たせてもらう!」
そう、周囲を深海の魔力が包み始めたとき、オックスマンは既に呪文の詠唱を始めていた。
破壊力は十分に高まっており、あとはそれを放出するだけだ。
「これでストレンジャーを吹っ飛ばしましょう。えいえいおー」
「うおっ、やばいやばい」
回避を試みるも、海の魔力はリーオを自由にはさせない。
広範囲を呑み込む破壊魔力の嵐が、リーオの眼前へと迫る――
が。
莫大なまでのエネルギーはリーオから逸れ、天井を吹き飛ばす。
「なんだと!?」
「憚りながら守護者を冠しているのでな。おいそれと通しはせんよ」
光届かぬ深海で、赤く輝く瞳が二つ。つい先ほどまでオックスマンを狙っていたはずの男が、リーオの傍らに立っている。
|守護者の領域《オックスディフェンダー・アームドアームリージョン》に、仲間を傷つけるものはひとつだってありはしない。
「ひゅう、助かったよ」
「ウム……」
源次が刀を振り、納める。オックスマンとアリッサがリーオの力が発現するのを待っていたのと同様に、リーオもまた彼らが必殺の一撃を放つのを待っていた。
それこそが博打の正体。戦いの中で源次とリーオが接触を果たすには、この手しか選べなかったのだ。
「近くに来てもらう必要があったからねぇ」
パン、とリーオが両の手を打ち合わせる。そして取り出したるは薄く透けた半透明の衣。
「さぁさお立ち会い。コレこそは真に『見えない服』ー!」
ばさり、と衣が源次に纏わされる。すると。
「なんだと! 源次はどこへ消えた!」
「よく見てください、たぶんあそこに……居る気がします」
たちどころにその姿は消え失せ、気配さえも希薄になったではないか。
|赤■の魔■の加護《パラサイトアヴァターラ》・|「化身の拾参:王の外套」《キング・オブ・ネイキッド》。リーオはこの衣の力を自身ではなく、源次へと与えたのだ。
それがどれほどの脅威となることか。
「いかん、アリッサ!」
「わかっています」
オックスマンが叫ぶより早く、アリッサは深海の魔力を操り一気に源次とリーオから距離を取る。
「グオオオオオーッ!!!」
激しい海流による猛烈な加速。だが、距離を取ったところで安全とは言い切れない。
「今この瞬間だけは此処は俺の領域だぁ!」
リーオの収集したデータはまだ有効だ。
異邦者の領域から二人が逃れる前に。勝負をつける。
「インターセプターによる戦闘領域再設定……」
抜き放った二振り、対神打刀『灰ノ災厄』と対神太刀『黒ノ混沌』を手に源次は深海と化したオックスマンションを駆ける。
水圧は感じるが、今の彼にとってはさしたる障害ともならない。
深海を引き裂く|屍山血河《ブラディ・ドール》。神速の斬撃は半径1㎞という広範囲に存在する一切を見逃しはしない。
「執行……屍血山河……!」
「ぬうっ!」
漂う泡が弾ける軌跡を頼りに、オックスマンがアリッサと斬撃の間に割り込んだ。
漆黒の鎧に衝撃がはしる。既にアリッサはメイジノートを開き、呪文の詠唱を開始している。この劣勢を覆すためには、彼女にこの刃を届かせるわけにはいかない。
しかし見えない、どこから来るかもわからない斬撃から、いつまでも庇いきれるものではない。
オックスマンは破壊者であって守護者ではないのだ。漆黒の剣に無数の斬光が弾け、徐々に追い詰められていく。
「……アリッサ! 状況は苦しい……」
「雨降りて花を彩り――」
鎧が砕ける。漆黒の剣もその手から離れてしまう。
返事はない。それでもオックスマンは続ける。
「だが、俺の破壊力と君の搦め手。合わさればあの二人にだろうと打ち勝てる。そうだろう?」
その言葉を最後に、オックスマンは|漆黒の風を残して《・・・・・・・・》アリッサのすぐ横を吹き飛んでいく。
同時、小さく頷くような仕草と共にアリッサは顔を上げた。
「雲流れ世界を調和し、空晴れて貴方を照らす」
ダウン・アット・ナイト――太陽の光届かぬ深海に差し込む、圧縮された太陽光の剣。
その数、実に一万本。平時であれば絶望的とも言える圧倒的物量。
しかし。
「リーオめ、いい仕事してくれる」
源次は既にその動きを把握している。更にリーオはこの深海の環境に適応しつつある。
たとえ10万本だろうと、この二本の刀で打ち払って見せよう。
「ここは既に|守護者《俺》の領域だ」
大成功
🔵🔵🔵
アリッサ・ノーティア
なるほど、ならばしかと動きましょう。
まずは警戒しながらブッ込みましょう。
今回の自分はサポート兼攪乱役として行動。
オックスコードの発動は、ストレンジャーがオックスコードを使用後周囲の領域を己の物とした際に使用。
相手は近接の鬼であるディフェンダー。距離万能にしてUDCも操作するストレンジャー。
どちらが厄介かと言えばストレンジャー。しかしディフェンダーの守りを抜くのは容易くない。
なのでディフェンダーは近寄らせず徹底的に邪魔しましょう。えいえいおー。
序盤は周辺環境の観察や敵の行動の様子見も兼ね、周辺に根底の泡を機雷代わりに浮かしながら空を飛びましょう。ほらパプン、もっと頑張りなさい。
中盤、ストレンジャーが慣れてきたタイミングでフィールドを魔力で覆い、私とオックスマンさんの行動補助をより強くしていきましょう。
更にオックスマンさんのオックスコードで、私達はこのフィールドを縦横無尽に泳ぎ回れます。
さ、後は太陽光の剣を出現させ、海流も溶かし目晦ましさせつつ敵の行動の隙を削りましょう。
源次の剣が、リーオの射撃が、赤頭巾さんの斬撃が、幾何学模様を描き複雑に飛翔する太陽光の剣さえをも振り払っていく。
情勢はディフェンダーとストレンジャーに有利。現実として無数の太陽剣さえも時間稼ぎにしかなっていない。
「よし、このまま押し込んでいこう!」
このままトラベラーも退場させてしまえば決着はつく。
だが、それでは終わらないしぶとさがオックスマンに――いや、アリッサにこそあった。
「源次さんっ!」
リーオの声に、源次が即時反応。先ほどよりも更に大きな魔力。戦場全てをも消滅させんばかりのエネルギー。
戦線から退場した|あの男《オックスマン》が、領域の外で練り上げていたに違いない。
「……捨て身か」
アリッサごと巻き込んで全員吹き飛ばそうとでも言うのだろうか。
だが、守護者の領域の前ではそれさえも届きはしない。
瞬時にリーオの前へと現れた源次の刀へと光が触れる。押し込まれる感覚に逆らわず、しかし思い通りにはさせない。
刀をゆっくりと振り抜けば、全てを呑み込む膨大なエネルギーは源次とリーオを避けるようにオックスマンションを消し去っていった。
「捕まえました」
「ムッ」
「げぇっ」
その時、源次の体に太陽剣が突き刺さり、リーオがすさまじい勢いで押し流された。
姿の見えない源次を捕らえることこそが真の目的だったか。
なるほど、極限まで高められたオックスマンの|漆黒色破壊者光線《クラッシャースパーク》は回避不可能。
リーオを護る為に|転移の力《オックスコード》を使えば源次の位置が明らかになるのも道理だ。
「成程な」
更にいえば、守護者の領域はあくまで仲間を護る為の力。|受け流し《クラッシャースパーク》に集中している隙を突かれたか。
「源次さん……!」
海流に押し流されながら、リーオは源次の頭上に浮かぶアリッサを視界に捉える。
「万事幸不幸に成れども、その顔に幸福へと至る結末を掴まんと手を伸ばせ」
体を太陽剣に貫かれながらも、源次は次々と襲い来る追撃を打ち払っていく。
しかし|俺《リーオ》の纏わせた衣は如何なる攻撃であっても守り、癒やす。
自分で言うのもなんだが、只でさえ高火力且つ速い上に、目視も認識も出来ないエグいコンボ。逆転なんかできはしない。
――いや。受けた傷を塞ぐ包帯が現れていない。よくよく考えてみれば、源次の姿がはっきりと見えているなんておかしいではないか!
「マジでぇ!?」
「……ム」
源次もまた、その変化に気付く。王の外套の力が、失われている。
「オックスマンさんは遠くなので、私が代わりに言います。状況は理解しました。これは不滅をも滅ぼす力です」
深海の魔力、無数の太陽剣。そして、アリッサが纏うものはもう一つ。漆黒の風。
|破壊者の解放《オックスクラッシャー・グラビティリリース》――先のオックスマンが告げた言葉は、彼自身ではなくアリッサに力を与えた。
あらゆるものを破壊する破壊者は、破壊できないものさえ破壊する力を宿していたのだ。自分自身だけでなく、仲間にも!
「流石は|破壊者《クラッシャー》と|旅望者《トラベラー》、といっておくべきなのだろうな」
肉が、回路が灼ける匂いが辺りに漂う。
体に刺さった太陽剣を引き抜いて放り投げ、刀へと手をかける。
取り囲む剣は源次だけを狙っている。リーオの元に転移する手も使えない。
「……ならば足掻かせてもらおう」
「私もお付き合いさせてもらいましょう」
無限にも近い剣の波状攻撃。打ち鳴らされる刃のぶつかり合い。
「オオオオッ!」
「むむむ」
次々と襲い来る太陽剣を、源次は全て打ち払っていく。
無論、それは容易なことではない。しかしアリッサもまた二つの|大魔術《ユーベルコード》を行使している以上、限界は近い。
リーオは海流に押し流された。オックスマンも帰還までは時間がかかるだろう。根比べだ。
守護者はたとえ刃折れようとも膝をつくことはない。
「……グヌッ」
そんな戦いの決着は唐突に訪れた。
源次の体へと届いた、一本の太陽剣。それを手にしていたのはオックスマンだった。
「……遅れてすまない」
「本気でもっと早く来て欲しかったです」
アリッサが海流を操り、オックスマンを戦場へと引き戻していたのだ。
屍血山河で受けたダメージで鎧は砕け、隙間から覗かせているのは赤く染まった体。しかも膨大な魔力を放出した後だ、
もはや|アリッサの力《海流による補助》無しで戦える状態ではないだろう。そんな体を強引に加速させたこともあってか、限界が見て取れる惨状だが――
「状況は理解した。源次、お前の|守護《まもり》を破壊する!」
圧縮された太陽の光が、破壊者の力によって解き放たれた。
さしもの|守護者《ディフェンダー》も|旅望者《トラベラー》の魔力と|破壊者《クラッシャー》の破壊力の合わせ技には耐えきれない。
「すまんな、|異邦者《ストレンジャー》……」
源次が目を閉じる。この戦いの勝敗は今決まった。
「いやあ、源次さんのおかげだよ」
はあ、とアリッサが小さくため息。
「むう……やっぱり遅かったじゃないですか」
不満げな声を最後に、周囲から深海の魔力が霧散する。倒れ込むアリッサの背後には赤頭巾さん。
「遅れてすまない、ってね。本当は源氏さんがやられる前に戻ってこられれば良かったんだけど」
その傍らで|異邦者《リーオ》が痛む頭を抑えつつ、オックスマンへと銃口を向けていた。
……不意を打たれた。|源次《ディフェンダー》を倒すにはそれだけの集中力が必要だった。
それでもこれほどまで早くリーオが戻ってくるとは。
「すまない、アリッサ。俺は間に合わなかったようだ」
オックスマンは天を仰ぐ。
二人がかりならばともかく、もはや動くことすらままならないオックスマンとリーオでは勝敗は明らかだ。
「悪いね、オックスマンさん、アリッサさん……俺達の粘り勝ちって事で」
大成功
🔵🔵🔵
ミルラ・フラン
あたしはクロウと。で、マルコと玲頼が相手かい
(カツッとヒールを鳴らして)
一応オールレンジいけるし、玲頼を優先的に狙っていくかね!
レベルが1000!!ということはあたしの神聖パワーと拷問具の冴えと溢れ出る魅力もいつもの約10倍!
いくぞ玲頼!!どっせーい!
(鎖付き棘鉄球に変化させたSignorina Torturaをぶん回し、勢いを付けて叩きつける。暇も与えずArtiglioを投擲)
おい……クロウ…その泥棒猫はなんだよ!!あたしとのことは遊びだったんだね!?
(ミルラ当人の近くにも男の泥棒猫が登場して)
ちょつ!これは……えーとだな、あたしってば罪な女〜!!この美貌とゴージャスなボディラインがいけないのね〜!
ええい!これがオックスサーチャーの実力だー!!
スーパーウルトラジャッジメントクルセイド!!
(祈って魔力溜めて浄化の神罰串刺しヤケクソビームが天から落ちてくる)
カッ、とオックスマンションの廊下にヒールの音が響いた。
「どうやら――あたしの相方はクロウ、アンタみたいだね」
ミルラ・フラン(Incantata・f01082)は口元をつり上げ、楽しげに笑う。
「オックスメンとやり合えるたァ、滾るぜ」
声をかけられた杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)もまた、これから始まる戦いへの期待を募らせている。
武に覚えのあるものならば考えたことはあるはずだ。
共に肩を並べて戦う仲間の強さを感じ、「|こいつと戦ってみたい《どちらが強いか確かめたい》」と。
これは絶好の機会だ。パラドックスマン、そして邪悪な龍との決戦に臨むための儀式という建前はあるが、こんな機会などそうあるものではない。
「ミルラ……いや、サーチャーと組むコトになるとは」
「なんだい、ご不満かい?」
「いや、相手に同情するぜ、って事だ」
ジャマーとサーチャーという立ち位置の強みは、敵をかく乱し惑わす事。あるいは、共に戦う仲間が有利に動けるような状況構築であることは疑いようもない。
相手にとってみれば戦いにくい事はこの上ないはずだ。
「さーて、その不幸な対戦相手は一体誰だろうね」
しかし、オックスメンの仲間はその状況すら覆す。そうでなければ面白くない。
ミルラも、クロウも。その笑みを崩すことはない。自分達もオックスメンであるのだから。
「……フーン、戦いはもう始まってるって訳か」
銃声が響く。マルコ・トリガー(古い短銃のヤドリガミ・f04649)が撃ち抜いたのは、仕掛けられた罠であったようだ。
手段として用いて来そうな相手は複数いるが――漂う硝煙の中に微かに香る薔薇と沈丁花。
「俺達の相手は|クロウ《ジャマー》と|ミルラ《サーチャー》のコンビとみて間違いなさそうだな」
「かな」
梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)の言葉にマルコも同意する。
この罠は宣戦布告。|俺《あたし》達を相手にどう戦う?と問うているのだ。
「フーン」
マルコは仲間の強さをよく知っている。ジャマーもサーチャーもよく知る頼れる仲間だ。
「向こうは嫌がらせと索敵特化。対してこっちはその突破力って所かね。なかなかに難しい相手だ」
だからこそ、簡単に勝てる相手じゃない事も知ってる。
心の中でマルコは考える。
|マルコ《オックストリガー》と|玲頼《オックスウィンド》のコンビの強みとはなんだろうか。
待ち受ける罠。巧みな対応。そんな強敵をも乗り越えてみせる、そんな戦い方を想像してみる。
「風のように掴めないウィンドと起点となるトリガー。即席だけど最強タッグの力を見せてあげようよ」
「宜しく頼むぜ、|相棒《トリガー》?」
軽くあげた拳に、玲頼もまた拳で応えた。
「マルコと玲頼が相手かい」
ミルラがふ、と息を漏らす。こちらのメッセージは伝わっただろう。
そして勿論、ただこちらの情報を与えただけではない。
漂う風、微かに混じる硝煙の匂い――僅かな情報から彼女たちもまた、対戦相手の正体を突き止めたのだ。
「あの二人の能力を考えると……厄介だな」
トリガーとウィンドの対応力は、容易に優位を引き寄せさせない。その事は間違いない。
だが言葉とは裏腹にクロウの口元はほころび、不敵な笑みに彩られている。
「だからこそ、相手にとって不足無し!」
言うが早いか、すさまじい勢いで近づいてくる気配。
これは玲頼か。細かいことを考えている暇はない。
「来るぜ!」
鈍い音を立てて剣と爪がぶつかり合う。一瞬の交叉。目で追おうとするが、ぼんやりした光だけを残して玲頼の姿は既に彼方。
「って、早っ!」
手にしたArtiglioが宙を駆けるが、既に射程の範囲外。
「いや、速すぎるだろ……」
二人は知る由もないが、何しろ玲頼自身がこう言う程である。
マッハ80超というすさまじき速度を捉えるには、何かしらの策が必要そうだ。
――相方であるマルコの姿は見えない。玲頼の速度でこちらの注目を集め、その隙に仕掛けてくるつもりなのだろう。
クロウを見れば、意味有り気な視線。どうやら彼も同じ考えに至ったらしい。
ミルラは頷き、手にしたSignorina Torturaから延びる鎖の先を棘鉄球へと変化させた。
潜んでいるであろうマルコを見つけだし、その連携を崩すためにクロウは既に駆け出している。
「OK、こっちはあたしが引き受けた!」
玲頼をこちらに引きつけるのは当然、ついでに倒してしまっても構わないだろう!
じゃらりと鎖のこすれる音。軽く振り回し、狙いを定める。
「いくぞ玲頼!!」
声と共に、再び迫り来る風へ向けて思いっきり叩きつける。
鎖の先で棘鉄球が風を切り、オックスマンションの床を割り砕いた。
激しく砕ける欠片が舞い上がり、天井まで突き破りかねない勢いだ。
「って、うおっ!?」
――いつもと体の感覚が違う。文字通りレベルが違う。
猛烈な勢いに、体の重心を持って行かれてしまう。
(この力に振り回されているようじゃあ、邪悪な龍とは戦えないってことかね)
僅かな戸惑いの中、巻き上がる瓦礫を突き抜けてやってきたのは、鳥の翼を羽ばたかせる玲頼だ。
「行かせないよ!」
「……こっちの台詞だ」
ぽう、とミルラの体が薄く光に包まれた。どうやら先手を打たれたらしい。
だが、望むところだ。もとより隠れて回るつもりもない。
「悪いが、梟の目は全てを補足する」
ふわりと舞い降りながら、玲頼が告げる。
この夢幻戦塵で目覚めた力。これはきっと、勝利を呼ぶ風を吹かせるためにある。
|風載者の先導《オックスウィンド・ナイトオウル》はきっと|引き金《トリガー》に届くはずだ。
「見てるだけで女を口説けると思うんじゃないよ」
玲頼が翼を広げ、ミルラは鉄球を振り回す。
戦いはまだ始まったばかり。
大成功
🔵🔵🔵
マルコ・トリガー
フーン、夢幻戦塵ねぇ
ボクの相棒はウィンド
相手はジャマーとサーチャー
オックスメン同士で本気で戦う事なんてないから、ま、いいんじゃない?
折角だから、どっちが強いかちゃんと決めようか
ジャマーもサーチャーもよく知る頼れる仲間だ
強さも知っているから簡単に勝てる相手じゃない事も知ってる
だけど、ボクとウィンドも強いからね
風のように掴めないウィンドと起点となるトリガー
即席だけど最強タッグの力を見せてあげようよ
ウィンドは前衛、ボクは後衛
お互いの立ち位置を存分に発揮するこの役割分担が勝機に繋がるんだ
ボクはオックストリガー、起点となる者
ウィンドが炙り出した二人の居場所を狙ってオックスコードを発動
これが始まりの合図だ
ウィンド、ボクらの立ち位置を存分に見せてあげようよ
ウィンドが囮になってくれる分、ボクは相手に捕捉されないように走り回りながら起点となる攻撃をし続けよう
通常攻撃にフェイントを交えて、隙を見て【窮猿投林】も使ってみようか
泥棒猫の攻撃に耐えられるかな?
撃ち出された弾丸がクロウの頬を掠める。
不意を打ったつもりだったが――
「お見事、と言っておくぜ」
「それはどうも」
マルコの反応は、|彼《クロウ》の存在をあらかじめ悟っていたかのように素早かった。
とはいえ、ここまで接近できた意義は大きい。距離を詰めれば|クロウ《ジャマー》が優位を取れる。
玲頼の速度は驚異的だったが、ミルラの相手をしながらマルコの援護まではできまい。
「マルコ、おまえの相手は俺だァ!」
玄夜叉を振り下ろすと、真っ二つになった銃弾が地面に落ちる。
その様子に、マルコが微かに眉をひそめた。
(流石、だよね。ウィンドのおかげでこっちの射撃は冴えに冴えているっていうのにさ)
視界には灯る微かな光。|玲頼《ウィンド》の|先導《オックスコード》はしかとマルコの元まで届いていた。
外す気がしないほどに動きが読める。精度も極まっている。
にもかかわらず、驚異的な反応速度で銃撃の一切を届かせない。
(それでこそOX-MEN、ってことだね)
続けてもう一射。これもまた上手く逸らされる。
「おらッ」
「くっ」
また一歩クロウが踏み込む。一歩下がれば背後に壁面が迫る。
(ウィンドが囮になってくれる分、捕捉されないように立ち回る予定だったんだけどな)
何もかも作戦通りに行くとは思っていなかったが、想定以上であったのも確か。
――しかし|玲頼《相方》はこのチームの強みを突破力、と評した。
追い詰められつつあるこの状況を撃ち抜く|起点《トリガー》を握っているのは、|自分自身《マルコ》だ。
「ボクもキミの好きにはさせないよ」
カッ、と一条の光が走る。素早く放たれた一射は実体を持たぬ熱線。
「ハッ、手を変えても無駄だぜェ!」
クロウが光を剣の腹で受け止める。じゅう、という音と共に僅かに煙が上がった。
そのままなぎ払えば、その切っ先が銃に触れ、跳ね上がる。
「しまっ――」
「ここで落とす!!」
一気呵成に攻め込む。そこにほんの一瞬、隙ができた。
「た、なんてね」
くるくると宙を回転しながら、マルコの|銃《本体》がクロウの頭上から光を放つ。
狙うべき場所は|見え《先導され》ている。これが|反撃の狼煙《トリガー》だ。
紙一重。ほんの少しだけ、受けた衝撃でクロウの剣先が鈍る。
「見事だ、だが俺はこの程度じゃとまらねェっ!」
「――ッ!」
マルコがギリギリのところをどうにかかがみ込み、狙いを違えた大剣が壁を裂く。
転がりながら素早く銃を拾い上げるマルコに向けて、クロウは剣を突きつける。
見事な一射だったが、手の甲に少しばかりの痕を残しただけ。決着までの猶予が少し延びたに過ぎない。
だが、マルコの目はそんな事は承知の上だと語りかけている。
「そうだね、ここからが始まりだよ」
瞬間、クロウは背後から迫る気配にすかさず剣を振り抜いた。振り払った剣の軌跡に舞うは赤茶色の矢羽根。
「――どういう手品だ? こいつは|玲頼《ウィンド》からの攻撃じゃねェか」
半径1㎞。広大な領域に存在する相手を休む暇もなく|攻め立てる印《トリガーズ・バレット》。
「ボクとウィンド、二人掛かりで相手をさせてもらうね」
|発端者の起点《オックストリガー・ダブルトリガー》――今、引き金は二つ引かれた。
降り注ぐ矢羽根。四方から放たれる銃弾の嵐。
「やってくれるぜェ! 面白くなって来やがった!」
絶え間ない攻撃に晒されながら、クロウは怯むことなく剣を振り続け銃弾を、矢羽根を切り払う。
――そうでなくっちゃ。そんな姿に、マルコは微かに笑みを浮かべた。
「この前観た映画にこんなシーンがあってね……」
指で銃の形を作り、撃ち抜く動作。見えない投射物はクロウの首筋へと至る。
刻みつけた印は、|あり得ない紅《キスマーク》。
同時、戦場に似つかわしくない声が響き始めた。
「クロウさまぁ、そんな怖い顔しないでぇ~」
「ちょっとアンタ! クロウの一体なんなのよ!」
「なっ……なンだこいつらァ!?」
次々と現れる女達がクロウの下へ押し寄せ、言い争いを繰り広げていく。
「誰よこの女! こうなったらクロウを※☆%して……」
「どうなってやがる、マルコ!」
いや、頭では分かっている。|窮猿投林《キュウエンハヤシニトウズ》。マルコの得意技に違いない。
「泥棒猫の攻撃に耐えられるかな?」
クロウの問いに、マルコは銃声で答えた。
(……動きが変わったね)
ミルラが素早く視線を動かしながら玲頼の姿を追う。
速度は相変わらずだが、時折明後日の方向へと矢羽根を飛ばしているようだ。
(マルコの方がクロウに何か仕掛けてきたって事かね)
常識外れの速度に多少なりとも慣れてきたところでこれだ。
存分に惑わせてやろうと思っていたのに、逆にしてやられているではないか。
――このまま好きにはさせない。サーチャーを名乗るからには、勝利への道筋くらい見つけだして見せよう。
「玲頼……こんなにいい女を前にしてよそ見だなんて、あんた大損こいてるよ」
「悪いが、お前だけを見ているわけには行かないそうなんでな!」
身をひねり、鋭い一撃を躱す。あれだけの速度で飛び回りながら、玲頼の攻撃はやたらと正確だ。
先ほどからミルラの身に灯った光……おそらくはこれが誘導装置のようなものとなっているのだろう。
だが、夢幻戦塵に突入するまでこんな技を使っているのを見たことはなかった。
つまりはミルラ自身も感じている、|新たなる力《オックスコード》の目覚めに違いない。
(なら、あたしにだってできるハズだろう?)
この先に待ち受ける戦いを彩る力はここにある。
「そこだ!」
声と共に玲頼がミルラへと迫る。
だが彼女はそれを避けようともしない。
超高速で飛び回る風を捕らえるならば、攻撃の、急所を狙うこの一瞬しかない。
鋭い爪先が肉を貫く。鮮血が、広がる。それはまるで紅い紅い薔薇のように。
薔薇が香る。花弁が舞う。我ながら実に|らしい《・・・》光景だ。
ふっ、と口元に微笑が浮かんだ。
「あたしの美肌を傷つけた代償は……支払ってもらうよ!」
「……何っ!?」
玲頼の一撃は確かにミルラを捉えた。しかし突如として、その体はまるで空中で躓いたかの様にバランスを崩してしまう。
まるで飛び方を忘れてしまったかのようにだ。
「くそっ、こういうのもアリなのか!」
棘突きの鎖鉄球が玲頼を追いかける。
|鋭い目と、空を自由に舞う翼《スナイパー能力とフライヤー能力》。その力の一部を奪い取り、一時己のものとする。
それこそが|探索者の微笑《オックスサーチャー・アトラクティブナイト》の秘密だ。
「どっせぇーいっ!」
「うおおおっ!?」
重く激しい音が辺りに響く。芯を捕らえた一撃が玲頼を打ち付け、オックスマンションの天井を吹き飛ばしながら宙を跳ねる。
遠ざかる声。大ホームランだ。
……いくらなんでもあれだけの距離があれば矢羽根も届くまい。|光が消えて《倒し切れて》いないのは気がかりだが――
「今は合流だね。あたしが行くまで持ちこたえろよ、クロウ!」
受けた傷のダメージも感じさせず、まるで空を飛ぶようにミルラは仲間の元へと走る。薔薇と血の香りを残して。
大成功
🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
アドリブ歓迎
模擬戦たァ、滾るぜ
それもミルラ…いや、サーチャーと組むコトになるとは(背負ってた大剣振り下ろし
あの二人の能力を考えると…厄介だな(罠も見抜いたか
だからこそ
相手にとって不足無し!(不敵に笑む
俺が主にトリガーの足止めするわ
放っておけば奴の攻撃は必ず後半に響く(小声
相手を翻弄、妨害
挑発しサーチャーと離れた処に位置取り
常に縦横無尽に駆ける
相手の攻撃は回避か剣でカウンター
トリガーの銃の軌道を読む
銃は剣で弾くか弾を真っ二つ
な、ンだコレ…!(キスマークに唖然
テメ、真面目にヤれ!
なんつーモン俺につけてやがるッ
俺、大事な女が出来たばっかなンだが!?誤解されるだろ!
サーチャーお前…余裕すぎねェ?
襟立てて手の甲でキスマ拭く
仕切り直し
UC使用
ウィンド含め自分に注目集め
トリガーと一気に距離縮め「阻止者の決断」使用
刻印は脇腹を剣で狙うと見せ掛けて貼る
出来ればウィンドにも
有利に働く位置で、剣に炎を出力させて二連撃
刻印消される前に畳み掛け
気絶狙う
さァて遊びは終いだ
決着つけようぜ
最後まで立っているのは、俺らだ
「くそ、マルコ! テメ、真面目にヤれ!」
「ボクは大真面目だよ。実際やりづらいだろう?」
クロウの叫びにマルコが小さく笑う。泥棒猫の存在は彼の行動を大きく阻害していた。
実際、矢羽根や銃撃の全てにまでは対応できず、じわじわとダメージが積み重なってきている。
(薙ぎ払っちまえれば楽なんだがなァ!)
見目麗しき泥棒猫達は、あくまでマルコのユーベルコードによって現れた存在。
なのだが……流石に一刀両断とは心理的にも流儀的にも行かないのだ。
首筋につけられたキスマークに感じる僅かな熱に、ついつい眉をひそめてしまう。
「きゃー、そんな憂いの表情もカッコイー!」
「傷は男の勲章よー!」
「その通りだぜ、全くなァ!」
そこで気付く。矢羽根の攻撃が緩んでいる。いや、届かなくなっている。
(ミルラがやってくれたか! これなら少しは……)
器用に剣を操り、泥棒猫達を傷つけずに囲みを潜り抜ける。
流石に無茶な動き故に、マルコの攻撃を受けてしまうがこの好機は逃せない。
「行くぜェっ!!!」
「くっ……」
剣を横薙ぎに振り払う。背後からは泥棒猫達が押し寄せる声が聞こえている。
「オラァッ!」
手応え。
(キスマークのお返しだぜ、マルコ!)
|阻止者の決断《オックスジャマー・チェイスアート》が芸術的なまでに決まった。
刻みつけた刻印から感じる力。これで更なる追撃へ――
「クロウさま流石! 素敵!」
「おい……クロウ……その泥棒猫はなんだよ!!」
と、そこで響いた声に一瞬動きが止まる。振り返れば再び寄ってきていた泥棒猫と、もう一人。ミルラの姿があった。
「あたしとのことは遊びだったんだね!? あんたのために玲頼をぶっ飛ばしてきたっていうのに……」
「オイ、ミルラ、何言ってやがる!? 見りゃ状況は分かるだろうが!」
ハンカチで顔を押さえてよよよ、と泣きはじめるミルラの姿に、俄然泥棒猫達が騒ぎ出す。
「酷いわ、私たちには手を出してくれないのに、あの女には手を出してたのね!」
辺りには引きちぎられたハンカチが散乱し、まさしく修羅場と行った様相だ。
「お嬢さん、これで涙を拭いて……」
「いや、彼女をエスコートするのはこの私だ。邪魔しないでくれるかね」
――と。ここで更なる|泥棒猫《男たち》の声が戦場に響いた。
いつの間にかミルラの手の甲にも赤い口づけの跡。
「って、お前もかよ!」
「え、えーとだな。あたしってば罪な女~!!」
いつしかきらびやかなスーツに身を包んだイケメン達がミルラを取り囲んでいるではないか!
「悪いけど、今の隙に仕掛けさせてもらったよ」
(オイオイ、いくら何でもそんなヘマを……)
と、そこでクロウは気付いた。態度にこそ見せていないが、ミルラは深手を負っている。
すぐに戦闘不能、とまではならずとも後々響いてくる可能性は大きい。
(マジかよ、結構やられてんな)
そんな状態をおくびにも出さず、体をくねらせ|しな《・・》を作る彼女をよそに、泥棒猫達は争いあう。
誰よこの女、この泥棒猫!
テメー、こいつに手を出そうとはなめた真似してくれるじゃないか。
戦場には似つかわしくない言葉が飛び交う戦場。
「この美貌とゴージャスなボディラインがいけないのね~!」
「サーチャー、お前……余裕すぎねェ?」
修羅場はまだ続く。続いてしまうようだ。
「さあ、このまま決めさせてもらうよ」
泥棒猫達の執拗な追跡は功を奏している。
そして、マルコは気付いている。クロウとミルラ――二人の体に灯る淡い光がほんの少し強くなっていることを。
(……このまま二人の注意を引きつけないとね)
風はすぐに吹くだろう。泥棒猫達の動きに呼応し、マルコは狙いを定める。
だが、そこでクロウの声が響いた。
「|マルコ《トリガー》! お前も仲間に入れてやるぜェ!!」
照準がブレた。景色が変わる。体が一気に引き寄せられる感覚。
脇腹の辺りから感じるエネルギー――先ほどクロウから一撃を受けた箇所だ。
阻止者の刻印がマルコを勝負の舞台へと引きずり出す。
「アンタの立ち位置は修羅場の中さ!」
「うわっ」
そこに咲き誇るは赤い薔薇。そう、|探索者の微笑《オックスサーチャー・アトラクティブナイト》が再びその力を発揮しようとしているのだ。
マルコは|触れた《・・・》。触れてしまった。
自身に宿った力の一部が吸い取られていく感覚。
「終わりにさせてもらうぜ、マルコォ!」
眼前に迫る剣。阻もうにも体が意識に追いつかない。
万事休す――
「グッ……ウィンドか!」
いや、剣が振り下ろされるよりも早く風は吹いた。
超速の勢いで鋭い爪先がクロウの肉を抉り、瞬きする間すらなくその姿は遥か彼方へと吹き抜ける。
「すまない、遅くなった」
「いいや、いいタイミングだったよ」
マルコを抱え、一気に離脱。彼の言うように今の攻撃はまさに会心の一撃。
いくらクロウといえど無事で済むはずはない。
「やってくれるじゃねェか……!」
「ちぃっ! クロウ、その薔薇に触れな!」
が、ミルラの動きも速い。マルコから奪ったばかりの|立ち位置の力《MD能力》を自分ではなくクロウに付与している。
おそらくは先ほど|ウィンド《オレ》の力を奪ったときに負った傷を癒やすつもりだったのだろうが――
(奪った力は自分自身でなく仲間に使わせることもできるのか……判断が速いことで)
ともあれ、回復の暇を与えるわけにはいかない。流れを引き寄せたまま、勝利の風を吹かせる!
「もう一発――ッ!」
急制動、方向転換。マルコが勢いに抗いながら着地する姿を横目に、再び翼を羽ばたかせ追撃に移る。
「させるかーっ! ええい! スーパーウルトラジャッジメントクルセイド!!」
そこでミルラの叫びがこだまする。
やけくそ気味にぶちかましたジャッジメント・クルセイドの光が天から降り注いだ。
「うおっ……!」
すさまじいまでの光量に目を細める。
元々命中率に優れたユーベルコード、爆発的な魔力の放出で玲頼の風を包み込む。
「止められると、思うなよ……ッ!」
それでも光の中を一陣の風は吹き抜けている。
大成功
🔵🔵🔵
梟別・玲頼
向こうは嫌がらせと索敵特化
対してこっちはその突破力って所かね
あちらの戦闘スタイルを中衛二人と仮定して…
オレ達はかっつり役割を分けた方が良さそうだな
さて、宜しく頼むぜ|相棒《トリガー》?
儀式の副産物か…新たな力を感じるぜ
OX-コード発動――風載者の先導!
鳥形態に変じ、相手二人の潜むであろう場所に吶喊
Lv1000の力はマッハ80超の音速を超えた速度で飛翔を可能に…いや速すぎるだろ
けど梟の目は全てを捕捉する
クロウ、ミルラ、そこだな…!
弱い光を灯し続け居場所を炙り出してやる
そう、マルコが二人を狙いやすいようにな
そして出来るだけオレが向こうを引き付ける
マルコのOX-コードの恩恵を得られる距離を保ちながら、矢羽根を撃ち牽制続け
向こうのコードを状態異常・行動制限付与と見なせればオレのUCで反射出来る…!
普通のUCでもそっくりそのまま返してやる
此方が優位な地点=マルコが確実にトリガーの立ち位置を果たせる場所
状況次第で半鳥態で飛行からクリット狙い近接攻撃しつつマルコの盾になる
倒れるまで全力尽くしてやる!
疾風が光から飛び出し戦場に吹き荒れる。空気を巻き上げ、風は止まる。
「マルコ、どうだ?」
「大丈夫、|引き金《トリガー》はボクの手元に戻って来たみたいだ」
何かを放り捨てるような動きと共にマルコは告げた。
|立ち位置の力《MD能力》で阻止者の刻印を引き剥がし、再び銃を手に。
「ミルラ、いけるなァ!?」
首筋につけられたキスマークを襟で拭きさり、クロウは剣を手に立ち上がっていた。
その声にミルラもゆっくりと顔をあげる。
「当然! ここらで決着つけるよ!」
威勢のいい返事とは裏腹に彼女の状態は悪い。
無理もない。結局玲頼から一撃を受けた傷を癒やす暇もなく、戦い続けていたのだから。
だがそれでもミルラはSignorina Torturaを振り回し、クロウは玄夜叉・伍輝を構える。
「滅びの鬼が杜に在りし神宿りの鏡が抱く心は永劫不滅、花開き薫る刻に訣別は済まされたし――」
辺りに漂い始めた香りは複雑で、その内に秘めたる感情を表しているかのよう。
|滅鬼伝阿修羅流「八ノ型・死の沈丁花」《シノセンリコウ》。それは甘い毒。
「いくぜ、マルコ! 玲頼!!」
玄夜叉が閃けば、その刃は沈丁花の花弁が如く。
玲頼は自然と前へと進み出て、マルコを庇うように立ち塞がった。
「自由なる風を縛るなど、何人たりとも出来はしない」
風が吹く。玲頼が告げる。|応報ノ呪嵐《キロロ・リシパ》――彼を縛ろうとする者全てを解き放つ名を。
クロウの一閃は沈丁花の香りと共に玲頼の身を裂く。
だが、戦場には応じるように真空の刃が吹き荒れ始める。
「ちィ、この風ァ……」
クロウの周囲に漂うは嗅ぎ慣れた香り。沈丁花は風に乗り、クロウ自身を蝕もうと主へ帰還する。
乱れ始めた鼓動に、ついつい笑みが漏れた。
「いいぜ、玲頼。そっちがバラバラになるのが先か、こっちが血ィ吹くのが先か……!」
「勝負と行こうじゃないかい!」
それでもクロウは剣を振る構えを崩さない。
ミルラもこの状況を楽しんでいるかのようだ。
「「最後まで立っているのは、|俺《あたし》らだ」」
そして、玲頼も、マルコも。それは同じだった。
「そうだね。そろそろどっちが強いかちゃんと決めようか」
「勿論、俺達の方だがな」
マルコが告げる。|最後《つぎ》の戦いの始まりを。
玲頼は吹かせる。勝利へと続く風を。
銀色の刃が空を斬った。
勢いよく回避したマルコの足先が壁に触れ、僅かに体勢を崩す。
「どうした、動きが鈍ってるよマルコ!」
「サーチャーこそ随分と苦しそうじゃない?」
壁に突き刺さったArtiglioから咲き誇るは薔薇の花。
それに触れれば何が起きるかは分かっている。今の状況でもう一度立ち位置の力を奪われれば為す術は無い。
だが、ミルラの消耗の激しさも見て取れるほど。マルコは今の立ち位置を自分の役割とし、勝機につなげるべく奮戦する。
そして沈丁花の毒の中を玲頼は飛んで行く。
応報ノ呪嵐は毒に応じて真空の刃を吹き荒れさせるが、剣閃そのものを防げるわけではない。
故に動かなくては。自分が力尽きる前にその身を盾とし、そして仕留める。
一瞬の交錯。
鋭い爪先が再びクロウを襲う。もはやその傷を癒やす暇も、蝕み返す毒をどうにかする術も存在しない。
しかしクロウもまた、その瞬間を待っていた。玲頼を捉えられるタイミングはここにしかない。
が、振り下ろした剣は空を斬る。すれ違い様、玲頼がつぶやく。
「言ったぜ、俺は縛られないと」
が、クロウはそのまま左手を振り抜いた。指先が微かに玲頼に触れ、浮かび上がる印。
「縛るのは趣味じゃねェ、そっちから寄ってきてもらう!」
阻止者の刻印が光を放つ。既に彼方へと飛び去っていたはずの風が、再び沈丁花の香りを纏わせる。
「よく来たな、歓迎するぜェ!!」
「させるかよぉっ!」
振り下ろされた剣を受け止め、真空の刃を吹き荒れさせながら玲頼もまた反撃に転ずる。
玲頼の趾がクロウの腹を裂き、クロウの剣が玲頼の翼を断つ。
「ここから先は倒れるまで全力尽くしてやる!」
もはや距離を取ることは無意味。できることは只の削りあい。
すさまじい勢いで体勢が入れ替わり、風が、毒が、血が吹き荒れる。
「これで、仕舞いだァ!」
「くぅっ!」
だが、遂に戦いは終局を迎える。
クロウの一撃が玲頼を打ち付け、玲頼の身が揺らぐ。
「マルコ……ッ!」
だがその目は天を仰ぎながら確かに捉えている。微かな光を。
風載者の先導は今も照らしていた。クロウの位置を。
マルコは只、ゆっくりと引き金を引く。舞い散る羽根の中を一条の光が奔る。
「これで、一人……」
「くそ、トリガーかッ……!」
ぐらりとクロウの身が傾いた。毒に蝕まれたその体はマルコからの一撃に耐えきれない。
だが、攻撃の瞬間は隙でもある。マルコの頭上に差した影。
「そしてこっちが二人だぁ……っ!」
凶悪に延びた棘をいくつも生やした鉄球が辺りを砕きつつマルコを襲う。
体勢を立て直すよりも早く、質量が彼の体を横っ飛びに吹き飛ばす。
「うわっ――」
「ハァ……ッ……どうやらあたしたちの……」
ゼエゼエと息を吐きながらミルラは鉄球を放り投げた。
いや、既に限界だったか。そのまま足の力を失い崩れ落ちる。
それでも意識は保っている。この戦いの勝者は――
「この泥棒猫!」
「……あぁん?」
突如としてバァン、という乾いた音が響いた。泥棒猫の平手打ち。
手の甲に残されていたキスマークが視界に入ったのを最後に、ミルラの意識が途切れる。
「勝利の……泥棒……猫……ってところかな――」
息も絶え絶えに、結末を見届けると共にマルコは視界を暗く閉ざした。
大成功
🔵🔵🔵
支倉・新兵
○基本戦術
やる事は同じ…迷彩で隠れドローン展開・索敵・弾道計算…地形を利用し【跳弾狙撃】での遠距離狙撃だ
…とは言え今回、手口は割れてる
対策として思いつくのは『ドローンを落とされる』
『デザイア』は空中戦はお手の物、十中八九狙われるだろう
だからドローンは飽く迄それを逆手に取りデザイアを空に誘う囮と割り切る
なに今回はチーム戦…独りじゃない
○連携
アマータさん…『ドール』と連携
彼女の使役する『人形』にドローンの役割を埋めて貰いつつこちらの位置を悟らせない囮・攪乱役に
また彼女自身との通信…加えて彼女の眼鏡型デバイスを介せば視認も可能だろう…観測手を担って貰う
○秘策
ただ、これだけじゃ決め手に欠ける…決定打にはもう一押し必要だろう
【狙撃者の神眼】を使用した上で敢えて姿を晒し此方を敢えて狙わせ…その隙をドールに決めて貰う
…キャスター、本来なら及ぶべくもないがこの一瞬だけは『存在感』のお株、奪わせて貰うよ
狙撃屋としてはこの上ない…絶対やりたくない負けだけど…今回はチーム戦
|狙撃屋《おれ》の負けはくれてやるさ
小さく深く息を吸う。
支倉・新兵(狙撃猟兵・f14461)は、ドローンから送られてくる映像を基にスコープを覗き込む。
普段と違っていたのはそのドローンがとてつもない距離を超えてデータ収集していることだ。
通常、彼の跳弾狙撃が届く範囲はおおよそ10 km。ドローンを操れる距離も同程度。
それでさえも驚異的だが、現在の新兵とドローンの間の距離は既に50 kmを越えている。
(我ながらとんでもないな)
たとえここから10倍離れたとしても、易々と目標を撃ち抜くことが出来るだろう。
そもそも、ねじ曲がっているとはいえここはオックスマンションを基にした空間。壁、扉、窓……銃弾の行く手を阻むものは山とある。
だが夢幻戦塵に於いて高まった能力は、そんな障害であろうとものともしないという確信があった。
「新兵様、お相手の反応はまだありません」
「了解、引き続き警戒を続ける」
ドローン映像に映るパートナー、アマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)からの呼びかけに新兵は短く答えた。
――反応がない事が気を抜いていいということには繋がらない。
こちらと同様に相手も強化されている以上、突拍子もない能力――速度であるとか、隠密能力であるとか――で不意を打たれるという事は十分に考えられる。
(つまりは、いつもと変わらないって事か)
全員が異次元の存在ならば結局のところはそこに収束するのだ、|狙撃者《オックススナイパー》の立ち位置とは。
持てる技術全てを用いて、撃ち抜く。
「新兵様」
そして|追従者《オックスドール》の立ち位置とは、共に在る者の能力を最大限に引き出すこと。
アマータは周囲を油断なく見渡し、告げる。
「どうせなら勝ちにいきましょうか」
「勿論」
敵の姿はまだ見えない。
隠しようもない圧倒的存在感。あらゆるものの耳目を引きつける聖護院・カプラ(旧式のウォーマシン・f00436)だ。
その姿を新兵とアマータが認識できていないのは、単純に互いが途方もない距離を隔てているからであった。
「このプレッシャー……やはり迂闊には動けませんね」
「夢幻戦塵の世界が突拍子もない広さじゃなかったら、射程から外れることすらできなかっただろうね」
そんな彼のそばで苦笑いするのは|望求者《オックスデザイア》、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)である。
相手の正体に気付いた彼女が即座に離脱を提案していなかったならば、いつどこからやってくるかも分からない狙撃を警戒し続けなければならなかっただろう。
「いやしかし、どうしたものかな」
「取るべき手段はいくつか思いつきますが……」
相手の戦術は読める。ドールがこちらを引きつけ、スナイパーが狙撃。シンプルかつ強力な戦法だ。
弱点があるとすれば二人が別行動をとらざるをえないこと。一人を撃破できれば、戦局は一気にこちらへと傾くだろう。
もちろん、それは容易ではないのだが。
「まずはスナイパーの目を奪うことを考えましょう」
新兵は超常の力で狙ってくるわけではない。異次元の能力はあくまで人間の延長線上、極まったところにある。
故にその狙撃にはあらゆる情報が必要だ。普段使用しているのはドローン、今回であればアマータからの通信も有用か。
「スナイパーへの警戒、ドールの対処。それらを同時にこなしつつ目的を為す。これは大変な行いです」
難易度は高い。勝利への道筋に考えることは多く、繊細かつ多様な対処を求められる。
だがその言葉ににい、とカタリナは笑みを浮かべた。
「これは自慢じゃなくないけれど、アタシは全衛って奴でね」
ともすれば器用貧乏ともなりかねぬ多彩な技術。それらを全て使いこなし、状況に応じて適切に用いる立ち位置こそデザイアであると彼女は豪語する。
「ありとあらゆる手を尽くさねば夢幻戦塵は成立しません」
「あらゆる手を尽くし勝利を掴む。それがデザイアの流儀さ」
カプラは考える。これは実に面白い組み合わせであると。
狙撃という一点特化のスナイパーと、強大な存在感を武器とするカプラ。
万能の従者として立つドールと、全衛をこなしてみせるカタリナ。
「あなたが万全に動けるよう、全力を以て補佐しなければなりませんね」
「最強の栄冠目指してよろしく頼むよ、キャスター?」
似ているようで全く違う戦い方を選ぶこの二組。
果たして勝利を掴むのはどちらの方なのか。
(……動きますか)
アマータの眉が微かに動いた。これはもはや勘に近いものであったが、同時に確信でもある。
天窓から差し込む光。無限に広がる玄関ホールで靴音が高らかに響く。
指先で糸を手繰り、視線を巡らせる。今はまだ敵は感知の外。しかし接近してくるとすれば一瞬だ。
「……」
周囲を飛び回るドローンのモーター音だけが響く。一気に増す緊張感。
そして、時は来た。
「今!」
通信機から新兵の声が届く。
ドローンの音は途切れた。遥か彼方より銃弾が風を切って飛来する。
「囮の人形として仕事を全うさせて頂きましょう。当機はオックスドールですから」
歌い上げるのは己の立ち位置。相棒が放った一射を届かせ敵を捉えるまで敵を引きつける。それが役目だ。
「――いざ、我らが立ち位置を示せ!」
|追従者の宣誓《オックスドール・ピースメーカー》は高らかに響き渡り、|立ち位置《ポジション》の領域を押し広げていく。
「おっと、これがキミの力かな?」
「当機はドールにして歌い手、聞き惚れてくださいませ」
そして、湾曲する廊下を突き抜けてドローンを撃ち落としていくカタリナにもその歌声が届く。
彼女は一瞬顔に疑問符を浮かべると、軽く手を握り、開いた。
「なるほど、これは迂闊に近づけないな」
言葉とは裏腹にカタリナが薄く笑みを浮かべる。どうやら彼女は既にアマータの狙いを悟りつつあるらしい。
だが構うことはない。この|新たな力《オックスコード》は|立ち位置の力《ポジション能力》を抑えこむエネルギーを秘めている。
どこまでも遠く歌声を響かせ、戦局を優位に引き寄せる。
迂闊に踏み込ませず、且つ踏み込めば新兵の狙撃の餌食。万全でない状態でこれを防ぐことは不可能。
しかし、カタリナは小さく笑い、遥か彼方を見やる。
「そしてスナイパーの超長距離からの跳弾狙撃、実に厄介だ」
「――っ!」
――結論から言えば、銃弾がその力を発揮することはなかった。
背後でガラスの割れる音が響くよりも早く、彼女が小さく左腕を振った。
そしてアマータははっきりと確認している。カタリナを狙っていた銃弾が何処かへと消え失せたことを。
「種明かしをしようか?」
笑みを浮かべたデザイアの姿はまだ宙にある。ポジションの力を封じれば、飛行能力も失われるはずなのに。
これも|彼女《カタリナ》が目覚めた|新たな力《オックスコード》なのだろうか?
「結構です。その謎は戦いの中で解かせていただきましょう」
勝利を撃ち抜くにはまだまだ情報が必要なようだ。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
これは自慢じゃなくないけれど、アタシは全衛って奴でね
あらゆる手を尽くし勝利を掴む。それがデザイアの流儀さ
最強の栄冠目指してよろしく頼むよ、キャスター?
立ち位置が鍵になるこの戦い、ドールのOXコード射程外を維持するのは前提だね
装備[驕傲]の《情報収集+念動力》の力場を広げ
相手の居場所を感知して1000m以上の距離を保つよ
間合いを確保すればアタシもOXコード展開、
立ち位置の裏をかくような奇策を牽制しよう
初撃への対応はアタシの仕事だ
力場感知に《第六感+戦闘知識》を合わせ《見切り》、
【空覇絶閃】で迎え撃とうか
1/1000秒の刹那に閃き、
放つと同時に断ち斬るは理論上無限速度に至る斬撃の極致。
避け得ぬ必中、或いは如何なUCで仕掛けられようとその概念を斬り捨てる
相手二人のUC攻撃、それぞれ一撃目を捌けば十分。
二発目以降は素敵なバディを頼るとしよう
先ずはドール、次にスナイパー。
雷羽の《属性攻撃+誘導弾+弾幕》で隙を作り
空覇絶閃を叩き込む――或いは一秒に千度閃く斬撃の雨を見舞う事で
順に仕留めて仕舞とするよ
「見事な行いです、デザイア」
(お褒めに預かり光栄だね)
|そんな二人《アマータとカタリナ》のやりとりをカプラは少し離れた場所――それでも1 kmは離れているのだが――から確かめていた。
新兵による異次元の跳弾狙撃。カタリナは全周囲に感知を広げ、銃弾を認識したと同時に迎撃行動に移っていた。
「ですが拝見させていただきましたよ、スナイパー」
ユーベルコードをその存在感で|相殺《ソウサイ》する為には、その力を一度見ておく必要がある。
文字通りどこから飛んでくるか分からない狙撃。そんな初撃をカタリナがなんとかする、という半ば賭けに出たのだが――見事果たして見せてくれた。
おかげでここからはカプラが狙撃に対応できる。
「デザイア、私はあなたへ力を送りスナイパーからの攻撃を相殺することに集中せねばなりません」
――彼女は余裕を見せていたが、同じ芸当を二度できるとは思えない。
それほどまでにスナイパーの存在は驚異的。カタリナだって狙撃が来るタイミングを読み切り、その事だけに集中していたからギリギリどうにかなったのだ。
そしてもう一つ、カプラには大事な役目がある。
|伝唱者の真理《オックスキャスター・マインドウィスパー》――アマータの歌声の中、カタリナがポジション能力を失われずにいられる秘密はカプラにあった。
彼の|囁き《オックスコード》は通常のポジション能力とは別に立ち位置の力を与えている。
(重ね掛けできれば能力も跳ね上がったのでしょうが……)
つまり、現在のカタリナはデザイアとしての能力を封じられているが、カプラによって通常と同等の力を用いることができているという事だ。
――オックスメン同士、とりわけドールとの戦いにおいてはまだ本領を発揮していない。
この力はこの後に待ち受ける、邪悪な竜やパラドックスマンとの戦いの為にあるのだろう。
自分だけではなく|オックスメン全員の力《全てのオックスコード》が。
「儀式を通じて、それぞれの立ち位置を確かめる……いい行いですね」
防御と強化。カプラはこの二つをこなし、カタリナの全力をサポートする。それが今回の役割だ。
後光が煌めく。カタリナを狙った銃弾が光の中へと消えていく。
(デザイア、キャスターはあなたと共に在ります。存分にその力を示してください)
(頼りにしてるよ、素敵なバディさん)
念じれば言葉が交わされる。これもまた|伝唱者《キャスター》の立ち位置。
「……」
薄暗い部屋の中で新兵はひたすらに繰り返す。弾を籠め、スコープをのぞき込み、発射。
撃ち出された弾丸は幾度となく壁を跳ね、時にアマータの人形さえもその道筋としてカタリナへと迫る。
しかし命中の直前それを光が包み込み、消える。その繰り返しだ。
(理屈じゃないんだな)
|跳弾狙撃《リコシェスナイプ》は完璧な計算の下、高い精度を以て突き刺さる。
だが、カタリナが防いだ初弾。今にして思えば、あれが彼が得意とする跳弾射撃で勝利を掴む最初で最後のチャンスだった。
(デザイアとキャスターは賭けに勝ったって事か)
ユーベルコードそのものを消し去り、相殺する。あれはそういうユーベルコードだ。
かといって手を緩めるわけにはいかない。射撃を止めればカプラがフリーになる。
二対一になってしまえばアマータであっても長くはもたないだろう。
「――もう一つの手も、使えるのはきっと一度だけだな」
新兵もまた、|新たな力《オックスコード》の目覚めを感じている。
だがそれは、どうにも|自分の流儀《オックススナイパー》とは違うように思えて……使いどころを見つけられずにいた。
(新兵様)
アマータの声が届く。視界の中にはめまぐるしく戦うカタリナの姿。
彼女が引きつけてくれている内に。|狙撃者《スナイパー》としての役目を果たさなければ。
(当機は如何なる状況でもお役目を果たしますよ)
「……そうだったね」
再び引き金を引く。並行して再度ドローンを飛び立たせ、周辺の情報を収集する。
ともすれば、自身の位置を知らせかねない行動。しかし新兵は確信を持って勝利への一手を考える。
「アマータさん、頼み事ばかりで悪いけれどもう少し頑張ってくれるかな」
(勿論ですとも)
この戦いはチーム戦。独りじゃない。
最後に立っているのが自分じゃなくても、それは勝利なのだ。
高速で宙を飛び回るカタリナを、的確に追跡してきているのは可愛らしい人形達。
階段を駆け上がり、跳躍するもの。シャンデリアを揺らして飛びついてくるものまでいる。
「いやはや、一体全体何体の出演者がいるのかな?」
一番の脅威は封じたというのに、楽をさせてはくれない。
カタリナが問いかけると、人形たちから伸びる糸の先でアマータが答えた。
「今回の舞台にふさわしい数、とだけ」
彼女の歌はまだ続いている……|キャスターの力がなければ《ポジション能力を失っていたら》一体どうなっていたことか。
しかし同時に、ドールはここにカタリナを引きつけることを主目的としているようだ。
(デザイア、スナイパーのドローンが再び動き出しています)
(まだ何か手があるって事かな?)
これほどの相手が勝算もなく時間稼ぎに徹するとは考えづらい。
最初の一発を防ぎきったことで狙撃を無力化できたのは僥倖だったが、それをも越える何かを持っている可能性は高いだろう。
(なら予定通り、その前にドールを落とす!)
|一対一《タイマン》ならば優位は保てる。アマータは既に|手の内《オックスコード》を見せている。
その能力を最初に肌で感じたときはこの|対戦相手《カード》に意地の悪さを感じたが……
(キャスター、こっちも始めるよ)
(承知しました)
念話でカプラに語りかけ、カタリナもまた自身の内に目覚め始めていた力を引きずり出す。
自身の能力に自信を持ち、それを駆使することを由とする彼女の中に生まれた力。
それは世界そのものを書き換える。
「立ち位置の力を封じる相手にこの能力、使いづらいかと思ったけどね!」
「む」
天窓から降り注ぐ光の中でカタリナが目を閉じる。変化する空気にアマータが眉をひそめた。
「何をする気かは分かりませんが……止めさせていただきます」
そして、人形達が一斉に跳び上がり、カタリナへと襲い来る。
だが、その動きには微かな乱れ。揺れる灯りや手すりでバランスを崩し、落下するものまで出始めている。
これまでには起こりえなかった事態だ。
アマータ自身は完璧に糸を操っているのに。人形達だけが上手く動かない。
床に広がる「OX」の印。この戦場は告げている。
「この戦いは立ち位置が鍵になるのさ」
|望求者の選択《オックスデザイア・サーベラスハーツ》――この世界は立ち位置を持たぬ者を拒絶する。
アマータが作り上げ、操る人形達は|立ち位置を持たない《オックスドールではない》。
法則に従い、その精度は著しく低下している。
「続けようか。舞台に上がるのはアタシ達だけで十分だと演出家は言っているみたいだよ」
「小道具の仕事を奪うのは良くないかと思いますが」
大成功
🔵🔵🔵
アマータ・プリムス
さて、今回お味方同士で戦うということで
どうせなら勝ちにいきましょうか、新兵様。サポートは当機におまかせを
当機の仕事は新兵様に相手を近づかせないこと
囮の人形として仕事を全うさせて頂きましょう。当機はオックスドールですから
UCを使い人形を呼び出します。今回はいつも以上に呼び出せるようなので大盤振る舞いです
糸を繋ぎ、この子たちには索敵をしてもらいましょう
連絡用に一体は新兵様の元へ
そして当機は『追従者の宣誓』を歌い上げ、相手のポジションを無効にさせていただきます
当機はドールにして歌い手、聞き惚れてくださいませ
これで当機を無視出来ないでしょう。当機を狙えば新兵様の凶弾が撃ち抜きます
人形を操り跳弾を狙えば隠れても無駄です
もし相手が新兵様を狙うのであれば当機が攻撃を担いましょう
UCを再使用、散らばらせていた人形を一纏めに
超巨大な騎士人形を作り粉砕させていただきます
……ちょっと大き過ぎましたかね?まぁいいでしょう。潰してしまいなさい
(ドール、いけるかい?)
「問題ありません。もしデザイアが当機と組んでいたらと思うと恐ろしくはありますが」
カタリナの|新たな力《オックスコード》の影響で鈍くなった人形達の反応を感じながら、アマータは考える。
彼女の|追従者の宣誓《オックスドール・ピースメーカー》でポジション能力を奪い、|望求者の選択《オックスデザイア・サーベラスハーツ》でポジション必須の法則に落とし込む。
これはかなり強力な組み合わせになっていただろう。
(今はドールが仲間でよかった。俺からスナイパー能力を奪われたら何も残らなかったよ)
「冗談を言う余裕がでてきたようで何よりです。……見えていらっしゃいますか?」
人形が弱体化したこともあってカタリナからの攻撃は激しさを増し、攻めるも守るにも苦しくなってきているのは事実。
ずれた眼鏡を直しつつ、アマータは新兵に問うた。
(……もう少しだ)
新兵は探している。勝利への道筋を。射撃を繰り返しつつ、その瞬間を狙っている。
その勝利のために、|追従者《ドール》も殉じよう。
「ならばここで当機も攻撃に転じましょう」
「おっ?」
アマータがバラバラにカタリナを襲撃していた人形達を引き戻し、一箇所に集めた。
|Ab uno disce omnes《アブ・ウーノー・ディスケ・オムネース》――数多の人形を作り上げたのと同じ技術で、今度は新たな人形を作り上げる。
既に数の優位を活かす段階は過ぎた。動きの精度が落ちているのならばむしろ一体に集中し、より高度な動きをさせるべきだ。
アマータ自身の立ち位置は活かされているのだから。
「へえ、こいつはすごいな」
創造と共にオックスマンションの天井が吹き飛び、崩れ行く瓦礫がパラパラと落ちていく。
シャンデリアが砕ける音と共に姿を現わしたのは、身長100メートルをも超える巨大な騎士人形。
「この騎士と当機でお相手させていただきます。第二幕の始まりですよ」
肩に乗ったアマータは糸を操るのとは反対の手に持った箒をくるりと回し、挑発してみせる。
「逃れられるとは思わないでくださいね」
「言ってくれるじゃない。大きいだけの木偶じゃないことを期待してるよ!」
騎士の槍が空を突き、カタリナは空を舞った。
「しかとご覧あれ」
そして巨体の上をひらりひらりと跳びまわり、アマータがカタリナへと迫る。
糸を操りながら、箒に仕込まれた刀を抜刀。
キン、と火花を散らして刀の切っ先とダガーが触れた。
「やるね、これならアタシが空を飛んでいても攻撃が届くって事か」
「さあ、そろそろクライマックスですよ!」
アマータの言葉通り、戦いは終局に向けて突き進んでいく。
「ドールが攻勢に転じて以来、射撃の数が増しています。お気をつけください」
(そこはキミを信頼させてもらうよ!)
連射とも思えるほどに降り注ぐ跳弾狙撃をカプラは一つずつ丁寧に後光で撃ち落としていく。
(それでも、油断はできませんが)
射撃と共にドローンの数も増えている。適宜撃ち落としてはいるものの、カプラ自身の位置を特定されるのも時間の問題だ。
新兵の攻撃を封じている間にアマータを撃破する目算だったが、そうそう狙い通りにいくものではない。
「しかし、一度決めたことを変えるのもいい行いとは言えません」
カタリナへと力を送り、彼女に迫る攻撃を食い止める。これが勝利に続く道であると、カプラは後光を煌めかせた。
アマータが巨大騎士人形を作り上げて以来、戦いの様子はこの距離でも視認できる。周囲を飛び回りアマータと剣を交えるカタリナの姿も。
その様子を眺めつつ、近づいてきたドローンを撃ち落としたとき、異変に気付く。
眼部に宿る緑の光が騎士人形の目を通じ、遥か彼方のスナイパーと|視線を通わせた《・・・・・・・》。
「弾道、入射角……オールグリーン」
人形から送られてくるデータを基に、新兵はカプラへと届かせる銃弾を放つ。
|狙撃者の神眼《オックススナイパー・ゴッドサイト》――これさえも一度見せてしまえば相殺されてしまうだろう。
そして何より、この一射は狙撃屋としての矜持とは全く別の、彼にとっては恐るべき効果を持つ。
「……キャスター、本来なら及ぶべくもないがこの一瞬だけは『存在感』のお株、奪わせて貰うよ」
銃弾が跳ねる。時に壁を蹴り、糸の切れた人形に導かれ、撃ち落とされたドローンを砕く。
これまでの跳弾狙撃とはまた違った、別の技術を極めた一射。そうしてたどり着いた一撃を受けたカプラは。
「これは……いけませんね」
仏として祀られた彼には存在しないはずの大きな衝動。
見逃しては勝利への扉は閉ざされ、勝利への|渇望《デザイア》が失われるという確信めいた予感。
(キャスター、どうした?)
「デザイア、申し訳ありません。スナイパーを止めなければ私たちの勝利はないようです」
それはきっと現実になる。果たして間に合うか。
カプラは持ちうる念の全てを放出しながらスナイパーへと駆ける。
「ふふ、どうしたんだい? ヴォーカルを代わろうか?」
「残念ですが当機の|立ち位置《ステージ》ですので」
カプラの焦りの正体は分からないが、やることは変わらない。
カタリナが新兵の方へと向かうことをアマータは許さないだろうし、何より背を向ける趣味もないからだ。
ここでアマータを倒す。新兵のことはカプラに任せよう。
「歌うか、人形を操るか、刀を振るか絞った方がいいんじゃないかな!」
「ご心配ありがとうございます。ですが当機に気遣いは無用! 全てをこなしてこその|追従者《ドール》!」
カプラの|強めた念《伝唱者の真理》がアマータにも影響しているのだろう、動きにも精彩を欠いている。
耳元というか、脳内というか……テレパシーで囁かれ続ければ集中が乱されるのも当然。
先ほどから銃撃もカプラの後光無しで明後日の方向に飛んでいるし、|カタリナの力《ポジション能力》が戻りつつあるのもその証拠と言えよう。ここまでの戦いではあり得なかったことだ。
(なら、ここらで一気に決めさせてもらおう)
軽くなった体で息を整える。折角強化されたのだから、全力でなければ勿体ない。
雷を纏った羽を宙に浮かべ、同時に力場を展開。
これにて世界は我が手の上に。ピリピリと空気を振るわせながら、念をこめて腕を振る。
「クライマックスを羽根吹雪で彩ろうか!」
導かれるままに羽根が舞い、騎士の周囲を飛んでいく。
「さあ、どう切り抜ける?」
「振り払いなさい!」
狙いは勿論アマータだ。彼女も人形を操り迎撃を試みるが焼け石に水。無数に襲い来る羽を前に徐々に追い詰められていく。
だがそこで素早く方針を切り替え、攻めに転じる。
「だよね、多少強引でもそうするしかない」
巨大騎士の腕が大きく振られ、鋭い槍の切っ先が天を突く。カタリナがそれを華麗に潜り抜ける。
だが問題はこの後。それを隠蓑にしたアマータの直接攻撃。
周囲に薄く念動の幕を展開し、触れたものの全てを読み解く。
当たらない銃弾、相殺された銃弾、転がった人形、ドローン。
そして巨大な人形の上で糸を操り、彼女へと迫らんとする存在。
「森羅万象、我が刃の前にこそ等しく。天命を知れ」
「っ――」
煌めく刃が一瞬にして消失する。
いや、瞬きと呼ぶのさえ遅すぎる。速度という概念さえも越えた、斬撃の極地。
「――なんてね。懺悔は間に合ったかい?」
「これが、最初の狙撃を止めたカラクリですか……」
|空覇絶閃《クウハゼッセン》、何が起きたかも気づけぬほどの刹那に彼女の攻撃は無効化されている。
そして、巨大な騎士人形には無数のほころび。
瞬きの間もなく断ち切られた人形は足場としての役目を失い、アマータもまた落下していく。
「さあ、これで仕舞とするよ」
眼鏡越しに決して目を逸らさないアマータに向けて、カタリナは駆ける。
「そう、あなたはスナイパー。遥か彼方をも撃ち抜く」
そんなアマータの口からは、再び歌声が響き始めていた。
大成功
🔵🔵🔵
聖護院・カプラ
ありとあらゆる手を尽くさねば夢幻戦塵は成立しません。
全衛として動けるデザイアが万全に動けるよう、キャスターとして全力を以て補佐しなければなりませんね。
ドールの歌により声の届く範囲は立ち位置が無効化され、
スナイパーの跳弾狙撃により隠れていても誘き出される……
この布陣に対しては【伝唱者の真理】でデザイアを強化し、
デザイアのOXコードで崩していく他はないでしょう。
スナイパーの初撃を概念系UCで斬り捨ててくれたなら――
2撃目以降は空間に満たした存在感による【相殺】が可能です。
状況変化に対応する為にデザイアとテレパシーで情報を共有し、
ドールから倒れていただきましょう。
勿論OXコードを封じたならUCやドールの人形、スナイパーのドローンが展開されるでしょう。
それらへの警戒・対処は私の役目。
跳弾がなければ障害物で狙撃は避けられ、人形やドローンは有限故に後光で撃ち落とせば此方が有利になります。
ああ、歌うにしても狙うにしても集中が必要です。
【伝唱者の真理】のテレパシーによって耳元で囁かれても無事でしょうか。
「スナイパー自ら己の位置を知らしめるなど、いい行いとは言えません」
頭の中に響く声。なるほど、キャスターのオックスコードにはこんな使い方もあるのか。
「分かってるさ……」
どうしても想像してしまう。位置を悟られた狙撃手の末路を。懐に納めた拳銃の存在を。
ざわざわと震える心を押さえつけ、新兵はスコープを覗き込む。
|狙撃者の神眼《オックススナイパー・ゴッドサイト》は彼が得意とする跳弾射撃を活かした|必中の一撃《オックスコード》。
それによって隙を作り出すことができるが、同時に自身の脅威を知らしめ強く引きつけてしまう。
――接近されたら終わり、と論じて憚らない新兵にとって、それは本来ならば絶対に取りえない選択肢であった。
「だから……こんな声に惑わされている場合じゃないんだよな」
猟兵としての|新兵《スナイパー》は跳弾狙撃を得意とする。一人で目標を捕捉し、弾道を計算し、そして引き金を引く。
しかし彼が今目にしているのはアマータと同じ――眼鏡を通して送られてくる目標の姿。
(新兵様……今です)
そして決定的瞬間への誘導。あとは|観測手《ドール》の声に従って最後の一撃を放つ。
「――間に合いませんでしたか」
カプラの声が聞こえて初めて、新兵は全ての音を意識の外に追いやっていたことに気付いた。
「でたらめなように見えていた射撃は射線を確保するため。そして今の一射は――」
「そう、ユーベルコードでも何でもない、ただの狙撃だ」
拡張した空間認識。大量のドローンと人形による情報収集。二人がかりでの軌道計算。
そうして生まれたのは、ただ超長距離をまっすぐ飛んでいくだけの弾丸。ユーベルコードを相殺するカプラの裏をかける唯一の手段。
「あなたらしくないとは思いましたが、そこまでの覚悟。見事な行いです」
こんなことそう何度もできやしない。
スコープの向こうで銃弾がカタリナを撃ち抜いたのを確かめ、ようやく新兵は顔をあげる。
「|狙撃屋《おれ》の負けはくれてやるさ」
カプラの後光に照らされて遠くなっていく意識。朦朧とした中でも、新兵ははっきりとつぶやいた。
「ハっ……」
|致命的な一撃《クリティカル》。カプラの警戒さえ突き抜けて飛来した銃弾が、見事にカタリナの肺を貫いた。
空気が抜けて行く音。まったく、いくらダメージが残らないからといって容赦のない……思わず愚痴が浮かぶ。
油断はなかった。それでもこの一撃を通して見せたのだから大したものだ。
「お覚悟を!」
空中で体勢を立て直したアマータが人形をけしかけてくる。
だが、このまますんなり倒れてやるものか。カプラのためにも手を尽くそう。
「……ッ!」
力を振り絞り、指先でアマータを指し示す。
雷羽はまだ生きている。激しく迸る光に身を焼かれ、なお突っ込んでくる彼女から目を逸らしはしない。
(キャスター、後は任せるとするよ)
できることはここまでか。失われつつある意識の中、最後に放つ一撃。
(森羅万象、我が刃の前にこそ等しく――)
斬撃が閃き、アマータの人形がなぎ払われる。
その結果を確かめることもなく、カタリナの体は力を失い地に落ちた。
「キャスター、お相手させていただきます。新兵様に後を託されましたので」
「私も負けるわけにはいきません。デザイアの分まで力を振るわせていただきましょう」
崩れ落ちたオックスマンションで、残された二人が対峙した。
アマータはここまでの激戦で精神的にも身体的にも大きく損耗している。
一方のカプラは新兵の一撃こそ受けたもののダメージは少ない。とはいえ、|伝唱者の真理《オックスキャスター・マインドウィスパー》を使い続けていた反動は大きい。
アマータが指先で糸を引き寄せれば、カプラは静かに語る。
「わかっていますか。あなたの人形は有限……尽きればお仕舞いです」
既に|Ab uno disce omnes《ユーベルコード》はカプラに見せてしまっている。
跳弾狙撃を阻止してきたのと同様に、アマータが新たな人形を作ろうとしても相殺されてしまうだろう。
「ならば尽きる前にカプラ様を倒せばいいことです」
「その思い切りの良さ、いい判断です」
溢れ出る存在感から発する後光が人形を焦がす。
しかし、カプラの武器となるのはこれだけ。
|相殺《ソウサイ》を止める訳にもいかないし、|追従者の宣誓《オックスドール・ピースメーカー》を封じる為に|伝唱者の真理《ささやき》も止められない。
即ち、優位を決定づけるほどのものはどちらにもない。後は互いに全てを出し尽くして戦うのみ。
「行きなさい!」
アマータの命ずるままに、光の中を潜り抜け人形達が迫る。
カプラは刃をいなし、拳を飛び越え距離を詰める。
狙うはドール本体。彼女の間合いに入ることになるが、もはや後光を至近距離から叩き込まなければ決定打にならない。アマータもそれを分かっている。
「決着をつけましょう、ドール」
「望むところです」
だからこそ退かず、受けて立つ。彼女もまた長く戦うことはもうできないのだ。切っ先が失われた箒を手にその時を待つ。
勝負は一瞬。
溢れる光が辺りを照らし、風を切る音だけが鳴った。
「……見事です。いい勝負でした」
金色の巨体がぐらりと揺らぎ、大地を揺らす。
カプラの体に突き刺さるのは小さな人形。
そして伸びた糸の先、アマータは光に灼かれ倒れ伏している。
「まだ、決着は…………」
震える指先に力を籠める。もう一手、もう少しだけ――
「いいえ、私たちの勝利です」
ミシミシと鋼が軋む中、声と共に再び光が溢れた。
遠のく意識の中、アマータが見たのは、仲間と共に強大な龍へと立ち向かう自身の姿。
共に高め合い、決戦へと続く道。それはOX-MEN全員の力によって照らされている。
大成功
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