ビーチの視線をかっさらえ!
●ヒーローは休めない
ヒーローズアース。そこは幾度となく善悪の激しい戦いが繰り広げられた世界。だがその世界も三年前のアースクライシス、そして僅か5カ月前のオウガ・フォーミュラとの決戦を経て、差し当たっては平穏と呼べる世界になりつつあった。
「海だ! めっちゃ広い! 向こうが見えない!」
「3月にも見ただろ」
「だってあれ下からだったし!」
そのどれだけ続くか分からぬ平和の中、ビーチではしゃぐ少女と呆れたようにそれを見る若者。夏ならば世界中のあらゆるビーチに存在していそうな何の変哲もないありふれた光景だ。
「全く……何で僕を付き合わせるんだよ」
「だってアニマくんもステントルおじさんも海知らないって言うし、メリンダさん忙しいみたいだしー」
「僕だって暇じゃないけどね?」
そう言い合う二人の関係は友人か。確かにそれも間違いではないが、もう少し違う特別なものでもあった。
とは言ってもそんな色のある話ではない。直近の大乱であるミストレス・バンダースナッチとの決戦。知られざる文明を駆け抜けたその戦いで、二人はそのぞれの出身、あるいは所属する文明からの使者として猟兵の手助けをしたヒーローであった。
はしゃぐ少女はラグランジュポイント出身のアームドヒーロー、セレス・ダイアリー。呆れる若者は地上出身でありアトランティスに協力するダークヒーロー、『シーカーボーイ』ことロバート・ノット。
二人は他の文明に属する仲間と共に様々な奇縁をもってヒーローチームとなり、地上と各文明の交流促進のため活動していた。そしてミストレス・バンダースナッチとの戦いで猟兵結社スナークに協力した関係で彼らの顔も、猟兵には遠く及ばねどある程度人の知るところとなってしまっていたのだ。
「でもさ、最近取材とか全然こなくなったし、もうみんな忘れてんじゃない?」
「まあ、五カ月前だしね。人の興味なんてそんなものかもね」
しばらくはその関係でなれない対応に追われていたが、最近はそれもないと地上に興味のあるセレスが強引にロバートに頼み込み海へと遊びに来ていたのだ。
だが、若さとヒーロー歴の短さもあってのことだが、二人の判断は甘かったと言わざるを得ない。
「あれ? あの二人……なんかテレビで見たことある気が?」
「あー……そう言えば」
「え、まさか、付き合ってるの? お忍びデート!?」
確かに世間はどんなニュースもすぐに忘れる。だが個人は、実物を見れば思い出す。
そして、思い出してしまえば、後は悪意なく勝手な想像と興味のままに行動するのだ。
●猟兵は休まない
「皆さん、お疲れ様っす。海に遊びに行きませんかっす!」
そう勢いよく言うのはミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)のボディの一人、アカリ・ゴールド。
「今年は水着コンテストに合わせて全部の世界でなんか色々やるんすけど、皆さんにはヒーローズアースの海に遊びに行ってもらいたいっす」
スナークゾーンという新たな謎はあるものの、オウガ・フォーミュラも倒され比較的落ち着いている世界だ。だが、それはあくまでオブリビオン事件においてのみの話。元々ここはヒーローとヴィラン、そしてそれを取り巻く一般人たちの騒動絶えぬ世界でもあるのだ。
「で、そのついでなんすけど、そこに遊びに来てるヒーローもいるんで、その人達が普通に遊んでられるように人目を引いちゃって欲しいんす。その人たちは普通のヒーローなんすけど、あたしの依頼でミストレス・バンダースナッチ戦に協力して貰った関係でちょっとだけ有名になっちゃって、それでビーチで一般人に見つかって色々囲まれちゃうんす」
囲む側にも悪意はないのだが、だからこそ邪険にも扱い辛く、あまり気が休まらなくなるのだという。
「二人とも猟兵のことは知ってるんで、姿を見れば大体のことは察してくれるっす。あともう一つの手段としては、いっそ彼らと付きっ切りで遊んじゃって他の割り込む隙をなくしちゃうってのもありっす」
男女二人組だが、とりわけ女の方は思い付きと勢いで行動するタイプらしくそう言うのにも躊躇はないようだ。
「やり方はお任せするっすけど、ヒーローショー的なものを突発でやったり、ちょっと能力も使ってエクストリームスポーツ的なものをやったり、多少派手な方が注目を集められていいんじゃないっすかね。そっち側になら付き合わせてもヒーローたちも気疲れはしないと思うっす」
ヒーローズアースならば猟兵は既に有名人だし、異能者もその辺にいくらでもいる。多少無茶な能力を使ったところで注目はされど何か問題が起こることはないだろう。
「まあ基本的に思いつくまま遊んでくれればいいんすけど、やっぱり場所がビーチなんで、持ってるなら水着着てった方がいいと思うっす」
水着同然のコスチュームを持つヒーローも多いがそれはそれ。ちなみにヒーロー二人も水着姿なようだ。
「なんかお手伝いがいるならあたしも行くっす。他の手がいるようなら仲間にも声かけてみるんで使ってくださいっす」
元々彼らが猟兵と関わるようになったのもアカリの予知がきっかけなので、その辺りにも微妙に責任を感じているようだ。
「ちょっとお仕事もあるっすけど、基本的に遊んで目立てばそれでいいし、倒さなきゃいけない悪者がいるわけじゃないんで、気楽に言ってくださいっす。それじゃ、よろしくお願いしますっす!」
そう言ってアカリは、手慣れた様子でヒーローズアーズへの道を開き猟兵をそこへ案内するのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。
まず注意として、このシナリオは一章完結のグリモアエフェクト対象となるシナリオです。発表から15日以内の完結を目指しますので、参加の方は早めのプレイングをお勧めいたします。
今年の夏はヒーローズアースで、一般人に囲まれ取材や質問攻めに合いそうな二人のヒーローをガードしつつ遊んでいただきます。
ガード方法はヒーローより目立って注目を集めたり、二人と付きっ切りで遊んで他の入る隙をなくすなどご自由に。目立つ、遊ぶ方法もお任せ。UCを使ってもOKです。一般人も悪気があってやってるわけではないので、派手に楽しませてあげた方が喜んでそっちに注目します。
場所はアメリカンなビーチです。普通のビーチにありそうなものは大体あるほか、自分で何か持ち込んで遊んでも構いません。
水着を着ることでプレイングボーナスとなりますが、別に今年の水着でなくても構いませんし、イラストがない方でもどういう水着を着ているかプレイングに書いてくださればOKです。
お呼びいただければミルケンも同行します。ボディのご指名も可。
以下囲まれてるヒーローのデータ。
ロバート・ノット ヒーロー名『シーカーボーイ』 人間のダークヒーロー×サバイバルガンナー(16歳、男)
元ヴィランで、他者を観察しその動きを予測することに長ける。一方戦闘力は低いので、アトランティス製装備を持つことでそれを補っている。冷静だがややダウナー気質、かつ普通の少年期を送っていない関係で部分的に精神年齢が未成熟。丈長めのハーフパンツ型水着。
セレス・ダイアリー 強化人間のアームドヒーロー×電脳魔術士(14歳、女)
地上に興味を持つラグランジュポイント出身者。猟兵発案で開発された兵器を操作する天才型強化人間。反射的な思考力が高いが、テンションに任せて行動する癖がある。まっ平らな体形に合うワンピース型水着(スク水風)
二人の登場作はタグ『 #アカリのヒロアス紀行』シリーズにてご確認ください。ちなみに一般人が勝手に言っているだけで、別に二人は付き合ってたりはしません。
それでは、視線を独り占めするプレイングをお待ちしています。
第1章 日常
『バカンスの平和を守れ!』
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POW : 正体を隠したヒーロー(ヴィラン)の代わりに人々の注目を集める。
SPD : さりげなく一般人を誘導し、ヒーロー(ヴィラン)から遠ざける。
WIZ : ヒーロー(ヴィラン)と会話し、強引な一般人を割り込ませないようにする。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ビーチにやって来た二人のヒーロー。初めての海に騒ぐセレスを呆れ気味にロバートが見守っているが、さらに遠くから彼らを見る視線は徐々に増えている。
「たしかあれでしょ? なんかクライング・ジェネシスの後釜みたいなのをやっつけた……」
「猟兵……じゃないけど関係者だっけ?」
不完全な情報と曖昧な記憶を元に勝手に話を広げていく者や。
「ちょっと子供っぽいけど、割といい男?」
「ぺたん娘美少女……うへへ……」
欲望丸出しな視線を向ける者。
「何か分かんないけど、サイン貰っとけば後で売れるかも!」
しょうもない事を考えている者も。
あるいはこういった一般人をあしらうのもヒーローとしてのスキルの一つかもしれないが、夏の休暇に来た若者二人にそれをさせるのも可哀想だというのもある。
そしてただのヒーローである彼らから好奇の視線を奪うにはどうすればいいか。
ここは夏のヒーローズアースだ。派手な興奮と熱狂に飢えた人々がそこかしこにいる。そこに世界のスーパーヒーローである猟兵が現れればどうなるか。それはいう間でもあるまい。
さあ、若きヒーローのため、あるいは己自身のため。あらゆる手を使ってビーチの視線を奪い去れ!
クロネ・ネルネコン
アドリブ歓迎です
猟書家との決戦に協力してくださった方達ですね。ヒーロー達の休暇を守る為にミューカス・レディ頑張って目立ちます!
バトルスーツでもあるベストと競泳水着を組み合わせた新作水着でビーチにいきますね。
大手水着メーカーのCOCYTUS社と共同開発した優れ物です!
目立つためにはやはりパフォーマンスですね!
UCで粘液の波を作りサーフィンの要領でミューカス・ボードを使って波に乗り、周囲の方に会社の新商品をアピールします。
さあ皆さんネルネコンカンパニーの新商品、夏に最適ミューカス・シューター、水鉄砲です!別売りのミューカス・ボトルをセットすれば粘液水弾も撃てますよ。ご購入は近くの海の家にGOです!
ビーチに遊びに来た二人のヒーロー。ヒーローとしての活動歴自体は短くそこまで大きな実績があるわけでもないが、少し前に大きな戦いの手助けをしたことがあった。今回彼らの休暇が邪魔されてしまうのも、偏にそのその大きな戦いの協力者となり結果名前と顔が広く知られることとなったからだ。
だが彼らはあくまでただ微力を添えたのみ。その大きな戦いの真の主役。この世界に侵攻してきた巨悪を打ち倒した一大ヒーローは他にいた。
「猟書家との決戦に協力してくださった方達ですね。ヒーロー達の休暇を守る為にミューカス・レディ頑張って目立ちます!」
クロネ・ネルネコン(ミューカス・レディ・f36457)もまた、まさにその一人であった。その時はまだ自分でもヒーローとなって日が浅いと自覚していた彼女だが、その戦いの中でオウガ・フォーミュラすら敵とみなすほどに成長した、今や押しも押されぬ世界のヒーローである。
その世界に名だたる最強ヒーローの一人がここに来たのは、その時の協力者である二人の休暇を守るため。そしてその姿は、今週仕入れたばかりのバトルスーツでもあるベストと競泳水着を組み合わせた新作水着だ。
大手水着メーカーのCOCYTUS社と共同開発した優れ物なその水着を纏い、クロネはまずはあえて人目を避けながらサーフボードを抱えて海へと出る。そしてビーチから離れすぎない程度の場所まで行ってから、クロネはミューカス・レディとしての能力を解放した。
「粘液の波に巻き込まれたらただじゃすみませんよ!」
周囲の海を粘液の海に変え、【ミューカス・ウェイブ】を巻き起こすクロネ。そしてその波に颯爽と乗り、文字通りに海の上を滑りながら颯爽とビーチへと乗り付けた。
「目立つためにはやはりパフォーマンスですね!」
その言通り突如現れた粘液の大波、そしてその上に乗るクロネの姿にビーチの人々の視線は一気にそちらに奪われていく。
「な、なんだ!?」
周囲の目が自分に向いたのを確認し、クロネはエアマット風ボードの『ミューカス・ボード』の上で堂々とアピールを始める。
「ミューカス・レディ参上!」
その姿と名乗り、そして粘液を扱うという特異な能力は見た者に数カ月前、大きな悪の首魁を倒した主役の名を思い出させる。
「ミューカス・レディって……」
「猟兵のヒーローでしょ? デビューしてすぐなんか凄い悪者を倒したとか……」
何しろ協力者のヒーローすら顔を見られれば囲み取材を受けることになるのだ。実際に戦った猟兵ともなればその注目度はどれほどか。
「粘液使いっていうからちょっと不気味そうなイメージもあったけど……」
「なんかテレビで見るより実物の方が可愛いな!」
やはりこちらはこちらで好き勝手言い始めるギャラリーだが、クロネとしてもどうせ目立つなら自分のイメージアップ、そして自社の宣伝も兼ねた方が何かとお得だ。
クロネはボードの上でそこが平地であるかのように堂々と立ち、一丁の水鉄砲を構える。
「さあ皆さんネルネコンカンパニーの新商品、夏に最適ミューカス・シューター、水鉄砲です!」
そこから始まるセールストーク。何しろ彼女のヒーローになったきっかけは業績の悪化した父の企業を救うため。もちろんその身に宿る正義に心は本物だが、正義だけではやっていけないのもヒーローが日常にいるこのヒーローズアースでは否定できない真実だ。
さらに自分を取り巻く粘液を水鉄砲に詰め、辺りに向けて撃ちかける。
「別売りのミューカス・ボトルをセットすれば粘液水弾も撃てますよ。ご購入は近くの海の家にGOです!」
こっそり事前に話をつけておいた海の家への誘導をしてみれば、一部のギャラリーがそちらへ移動していく。さらにアピールするため粘液濡れになりながらボードに寝そべるなどすればギャラリーからは大歓声。
その合間に、クロネは注目から外れた二人のヒーローにちらりと視線をやって軽く微笑んでおく。
「うわー、やっぱ猟兵ってすっごい……で、あたしもあれ買いに行っていい?」
「いや、今はやめた方がいいと思うよ?」
それに対しすっかりギャラリー側になるセレスと、猟兵の登場の理由を考えるロバート。その二人の様子を確認しつつ、クロネは夏の日差しに粘液を輝かせながら、マットの上でさらにアピールを続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
死絡・送
POW
アドリブ絡み共闘OK
デートの邪魔はされたくはないよな、ならば協力するか。
ノーブルバットに変身しジガンソーレに乗って、ビーチに出動。
ジガンソーレを安全かつ目立つ場所に着陸させてオートモードで
機体の型の上に乗る。
「残虐ファイトのチャンピオン、ノーブルバットのゲリラライブをぶちかますぜ~~~!」と大声とブームの仕掛け人を組み合わせて人目を集めようとする。
ジガンソーレはステージ兼音響設備、歌唱と楽器演奏を組み合わせて
デスメタルを数曲歌い引付けられるだけ引付ける。
ユーベルコードのプロミネンスバスターは、上空に向けて花火代わりに使用。
役目を終えたら機体に乗って飛び去る。
突然の猟兵、それも少し前にあった世界を巡る戦いで活躍した者の登場にざわつきだすビーチ。それが自分たちのためとはまだ完全には気づかないままに周囲の一般人同様うろたえる若きヒーロー二人を、囲みの外から死絡・送(ノーブルバット・f00528)は優しく見守っていた。
「デートの邪魔はされたくはないよな、ならば協力するか」
当人たちには聞こえない場所からの言葉ゆえ、いや別に付き合ってないし、という訂正は入らない。だが悪意なき好奇の目に囲まれることで二人の休暇が休まらないことになってしまうのは事実なのだ。それを阻止するべく、ヒーローの先達として送は愛機『ジガンソーレ』と共にここへやってきたのであった。
そして機体に乗り込み、ビーチの目立つ位置に颯爽と降り立つ送。そのまま機体を自動操縦モードにし、コクピットから飛び出してその肩の上へと飛び乗った。
「残虐ファイトのチャンピオン、ノーブルバットのゲリラライブをぶちかますぜ~~~!」
大声での名乗りと共にジガンソーレから大音量で重低音が鳴り響く。その名もまた、数カ月前の戦いを思い出させるに十分すぎる実績を持つ名前であった。
「今度はノーブルバット? 何でこんな次々と!?」
「俺コラボバーガー食ったことあるぜ!」
送は猟兵がヒーローズアースにやってきたころから、もっと言えばその前からヒーローネームを持ち活動しているヒーローであり、その活動も多岐にわたる。当然その知名度も相応であり、戦い以外の部分で彼を知っている者もまたそれなりの数いるのだ。
ゲリラライブの宣言の通り、低い声でデスメタル調の歌声を披露するノーブルバット。ヒーローとしてその選曲は……と思えばさにあらず。そもそもノーブルバットの本業はダークヒーロー、正義のためなら手段を問わぬダーティープレイのヒーローである。
そもそも、いかに悪を裁くかはヒーローによって違う。ただ無力化してあとは法に委ねる者もいれば、悪に許しはないとして凄惨に処断、断罪する者もいる。そしてそれらが互いを偽善者、殺人鬼と誹り合い正義をぶつけあう……ダークなヒーロー同士のクロスはそんな救いのないものも往々にしてあるのだ。
さすがにノーブルバット自身はそこまで尖ったことはしないが、一方で世界の為に戦った多くのヒーローの一人でなく、ソロ活動中のダークヒーローとして己のみに注目を集めるならこれくらいエッジの効いていた方がいい。
さらに次の曲では自分でも楽器を弾いて声を張り上げる。さしずめそれはオープニング、キャラクターソング、劇中歌、エンディングと繋げていくノーブルバットメドレーか。
他のヒーローの歌をさしはさみぶつけ合うなどすればより気の効いた演出になろうが、今は自分一人に注目を集めるべき時。行うべきは己だけのワンマンライブだ。
そしてラストからのアンコールが終わる際、一際大きな声で絶叫。
「太陽の紅炎が一切の邪悪を焼き尽くす、プロミネンスバスター!」
上空に向けて花火代わりにぶっぱなされる【プロミネンスバスター】。もちろん技名部分は観客も一緒の大絶叫だ。
魔炎が夏空を熱く焦がし、ビーチの熱を最高潮に盛り上げる。最早観客の心は、ノーブルバット一色だ。
それが終われば送は即座に機体の中に入り込み、来た時と同様唐突にそのまま飛び去っていく。ダークヒーローは多くを語らない。闇の正義を理解するのは己ただ一人だけでいいのだ。
「なんだったんだろ、今の……」
「さあ……」
去り行く中、送はカメラ越しにすっかり観客の一部と化していた二人のヒーローを見る。時折彼女募集の告知を出す送だが、二人でビーチに遊びに来た若者二人に嫉妬の感情はない。それは一切の影も作ることなく全面に光の投射されるセレスの体型によるもの……かどうかは分からない。果たして彼らのチームのもう一人の女性ヒーローがお相手だったらどうであったか、それも余人の知るところではない。ダークヒーローノーブルバットは、余計な情報など明かすことなくクールに去るのみであった。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・水着着用:2022水着JC参照
・アド/絡◎
■行動
ああ、あのお二人ですかぁ。
慣れないのも分かりますし、皆で御協力させて頂きますねぇ。
『FTS』で大量の食材を持込み、【豊饒現界】を発動し[料理]と[誘惑]を強化、浜辺でBBQを開始しましょう。
香りで注目を集めると共に人を集め、お二方を誘いに行く方が見つけ易い様にしますねぇ。
お二方の顔を覚えている方の中には、『どの猟兵と関わったか』をご存知の方も居るでしょうから、私が誘う分には違和感はない筈ですぅ。
後は「突発的に発生したBBQ会場」として、皆さんの注意を『食』と『豊満さ』で惹きますねぇ。
場合により[大食い]ショー開催も?
豊雛院・叶葉
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・水着:『通常JC』の生地を元にアレンジされたビキニ/詳細はお任せ
・アド/絡◎
■行動
立場の変化故の大変さは理解出来ますね。
お手伝い致しましょう。
BBQ、了解に御座います。
それでは、手伝いに残る方を除き散開、お二方を探すと共に各所で視線を集めて参りましょう。
【豊饒顕現】を用いて[誘惑]を強化、視線を集め易い状態とした上で、比較的近場を回って参ります。
戻って後は、BBQの手伝いに入りましょうや。
お二方には、夢ヶ枝様にご紹介頂きご挨拶して参りましょう。
また何かが起きる可能性は否定出来ませぬ故、面通しも宜しゅう御座います。
BBQに混ざりたい方は歓迎、皆で宴を楽しみましょう。
鞠丘・麻陽
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・水着:『通常JC』の生地を元にアレンジされたビキニ/詳細はお任せ
・アド/絡◎
■行動
色々と条件が重なっちゃった感じなんだよ?
BBQと散開しての宣伝、了解なんだよ。
私達からすれば、或る意味定番の行動だし、直ぐに準備するんだよ。
【豊饒発現】を発動して[誘惑]を強化、目立つようにして月麻ちゃんと一緒に買い出しに行くんだよ。
るこるさんの準備した分が有るけど、多目に用意して備えるのと、「BBQやる」って回りに知らせる為のパフォーマンスにいいんだよ。
BBQが始まったら、お二人やミルケンさんとお話しつつ、興味のありそうな周囲の人も手招きするんだよ。
来る者拒まず、皆で楽しむんだよ。
鞠丘・月麻
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・水着:『通常JC』の生地を元にアレンジされたビキニ/詳細はお任せ
・アド/絡◎
■行動
慣れるまでは、周りのフォローも必要ですよね。
BBQと散開しての宣伝、了解です。
視覚だけではなくて嗅覚や味覚にも訴えられますから、丁度良いかもしれませんね。
【豊饒発現】を発動して[誘惑]を強化、麻陽ちゃんと一緒に買い出しに行きますね。
出来るだけ人目を惹ける様、近くにある大型店の場所を人に尋ねたりしてみます。
BBQが始まったら、皆さんと色々とお話してみますね。
その過程で、皆の前でお二人に「ここに来た理由」を尋ねれば、少なくとも近くにいる方の誤解は解けるでしょう。
楽しい宴になりそうですね。
艶守・娃羽
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・水着:『通常JC』の生地を元にアレンジされたビキニ/詳細はお任せ
・アド/絡◎
■行動
何れは慣れる必要も有るでしょうが、今は仕方の無いことですわね。
方針了解ですわ。
【豊饒天印】で[誘惑]を強化、視線を惹きつつロバートさんとセレスさんを探しに参りますわね。
お二方に会えましたら、強化した[礼儀作法]でご挨拶、猟兵であることを伝え、るこるさんの名前を出してBBQへお誘いしますわ。
会話の際に「自由参加」という言葉も出し、人を招きますわね。
BBQが始まりましたら、お二方に「人の噂」についての話をお伝えしますわ。
お二方の立場上、何れまた大きな舞台に立たれることも有りそうですわね。
甘露島・てこの
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・水着:『通常JC』の生地を元にアレンジされたビキニ/詳細はお任せ
・アド/絡◎
■行動
るこるさんが協力して貰ったって言うし、次は私達が力を貸す番だねぇ。
やってみようかぁ。
BBQと宣伝、了解だよぉ。
【豊饒覚醒】で[誘惑]と[存在感]を強化、娃羽さんと一緒に色々と回りつつ、ロバートさんとセレスさんを探してみるねぇ。
人の多い所を中心に、[幸運]が働けば会えるんじゃないかなぁ。
BBQが始まったら、色々と食べてみよっかぁ。
「美味しく食べているところ」を見たら、気になるものだよねぇ。
近付いて来た人が居たら「自由参加」って答えて誘おうかなぁ。
大食いショー開催や持ち込みも歓迎だよぉ?
絢潟・瑶暖
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・水着:『通常JC』の生地を元にアレンジされたビキニ/詳細はお任せ
・アド/絡◎
■行動
大変そうなのは理解出来ますの。
御協力させていただきますの。
ミルケンさんをお誘いしますの。
御一方なら桃姫さん、出来れば残るお二人もご一緒出来ると嬉しいですの。
私やリュニエさんの様に、この世界が初めてで知名度の薄い者もいますから、49sのミルケンさんにご一緒願い、注目を集める手伝いをお願いしたいですの。
散開後は最初の場所に残り、るこるさんのBBQの準備をお手伝いしますの。
【豊饒憑霊】で[怪力]と[誘惑]を強化、力仕事を中心にしつつ視線を集めますの。
折角ですし、皆で楽しめると嬉しいですの。
リュニエ・グラトネリーア
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・水着:『通常JC』の生地を元にアレンジされたビキニ/詳細はお任せ
・アド/絡◎
■行動
この世界も色々と有ったのでぇす?
方針、了解でぇす。
【豊饒来臨】で[誘惑]と[料理]を強化、人目を出来る限り惹けるようにしつつ、るこるさんのお手伝いをしまぁす。
人を集めるみたいでぇすし、メンバー的に余りが出ることは気にしなくても良いでぇすから、出来るだけ沢山作りましょぉ。
BBQが始まったら、比較的人目に付く位置で食べる様にしまぁすね。
他の『使徒』やミルケンさんとお二方のお話が終わるまで、出来るだけ視線を惹きましょぉ。
大食いショーも楽しそうでぇすし、私達も皆さんも楽しめればベストでぇす。
突然の猟兵の登場に賑わうビーチ。その既に一介の協力者のことなど忘れているようにも見える喧噪の中に、周囲をまさに圧倒せんばかりの一団が現れた。
「で、でかい……」
それを目にした誰かが呟く。そしてそれにつられるよう次々と同じ方向に大勢の視線が送られるが、そこから出てくる言葉もまた全く同じ方向を向いていた。
「おおきい……」
「ありえない……」
「Amazing……」
それは大きさに対する驚愕、感嘆。それが何に向けられているかは、この集団の胸部を見れば明らかであった。
「立場の変化故の大変さは理解出来ますね。お手伝い致しましょう」
集団のリーダーと思しき位置にいる豊雛院・叶葉(豊饒の使徒・叶・f05905)の体は、上は白、下は赤のビキニ姿。だが、そのビキニはいわゆるブラの形ではなく、中央を何とかまとめて支えてはいるもののその両脇からは多分に肉の溢れ出す高露出なもの。下に関しても、厚い腿と腰回りの肉に埋もれてしまいそうな程だ。
そして叶葉のその言葉通り、この集団はただ遊びに来ただけではない。
「ああ、あのお二人ですかぁ。慣れないのも分かりますし、皆で御協力させて頂きますねぇ」
合わない水着を何度も直しながら言う夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の言葉。そう、彼女たちもまた二人のヒーローの休暇を守るためにここにやってきたのだ。
「るこるさんが協力して貰ったって言うし、次は私達が力を貸す番だねぇ。やってみようかぁ」
そしてそこに甘露島・てこの(豊饒の使徒・甘・f24503)の言葉が重なる。その言葉に、るこるの胸ではなく顔の方に注目していたごく僅かな数人が得心言ったような顔をした。
「るこるって、やっぱりあの……」
るこるは活躍目覚ましい猟兵。ヒーローズアースにも何度となく依頼で出撃し、ミストレス・バンダースナッチとももちろん戦っていた。だがそれよりももっと前。
「49ers49位!」
「凄い、戦いの中でさらに成長している!」
アースクライシス2019に置いて活躍目覚ましい猟兵に送られた称号。三年前のこととはいえ、猟兵の名を世界全土に知らしめたそのランキングの影響力は今も絶大だ。それにランクインしたるこるは当然ながらこの地で様々な形でコミック、フィギュア、ドラマ等々各種メディア化されている。
それにさらに沸き立つギャラリーの姿を、圧巻の紅蒼が感心したように見ていた。
「色々と条件が重なっちゃった感じなんだよ?」
「慣れるまでは、周りのフォローも必要ですよね」
鞠丘・麻陽(豊饒の使徒・陽・f13598)と鞠丘・月麻(豊饒の使徒・月・f13599)の姉妹。金銀の刺繍が入った中華風模様のビキニにチャイナドレスの下部分をイメージしたようなパレオ……なのだが、その巨大さ故に水着も色々と意味をなしていない。直接あの戦争には参加していない二人だが、今や猟兵である彼女たちもそれを名乗れば当然一躍人気者だ。二人はこの世界で名を上げるということがどういうことなのか、周囲の熱狂から改めて察する。
「何れは慣れる必要も有るでしょうが、今は仕方の無いことですわね」
肩ひもなしの白ビキニに、胴回りに帯のようにチューブの撒かれたスリーピースという一風変わった水着の艶守・娃羽(豊饒の使徒・娃・f22781。彼女の言う通りに、彼らがヒーローとしてこれからも活動していくならばこういった一般人あしらいも覚えていかなくてはならないことだろう。この世界においてヒーローとはただ強く、正しければそれでいいわけではないのだ。この世界の出身である彼女にはそれがよく分かっており、それを知らぬ頃のてこのに対して案内を務めたこともあった。
そしてまた、猟兵であっても未だそれを知らぬ者もいる。
「この世界も色々と有ったのでぇす?」
「大変そうなのは理解出来ますの。御協力させていただきますの」
リュニエ・グラトネリーア(豊饒の使徒・饗・f36929)と絢潟・瑶暖(豊饒の使徒・瑶・f36018)。二人はこの一団の中では猟兵としての活動歴が短い方であり、ヒーローズアースに来るのは今回が初めてであった。リュニエのほうは普段着からスカートとニーソックスを取っただけのような水着から伸びる悪魔の尻尾が示す通り、デビルキングワールド出身。彼女が猟兵の名を知った時にはもうアースクライシスは過去の話となっており、詳しい事を知らないのも致し方なしである。
瑶暖は緑のデザインだけは大人しいビキニ姿だが、その姿態に緑色を纏っていれば連想されてしまうのはスイカかメロンである。彼女もまた一見すれば普通の女性だがその実態はカクリヨファンタズムの妖怪であり、猟兵となった時には既にアースクライシスは過ぎ去った後であった。
だが、だからと言って二人はただついてきただけということはない。
「それでは、手伝いに残る方を除き散開、お二方を探すと共に各所で視線を集めて参りましょう」
一同は叶葉の号令に従い、各々にユーベルコードを発動しバーベキューの準備を始めた。
まず会場設営から始めるのはるこる。『FTS』から大量の食材と器具を出し、手慣れた様子でその場に広げていく。見た目は店でも始めるのかというぐらいの圧巻の量だが、彼女、そして【豊饒の使徒】を知る者ならばこれがむしろ足りないくらいな量であることは明白だ。
そしてそれは誰よりも彼女たち自身が分かっていること。あえてこの程度の量に抑えておいたのは理由がある。
「るこるさんの準備した分が有るけど、多目に用意して備えるのと、「BBQやる」って回りに知らせる為のパフォーマンスにいいんだよ」
「出来るだけ人目を惹ける様、近くにある大型店の場所を人に尋ねたりしてみます」
麻陽と月麻は、その足りない分を近くの大型食料品店に買い出しに行くことで補っていた。ビーチというのは一つの観光資源であり、それを基盤としている人々が生活する街が周囲にあるというのはどの世界でも変わらないこと。当然それらの人々向けの、観光とは少し線を引いたような店がそこにはあり、自身のユーベルコードで注目を集めるようにしながら二人は食料品の買い出しにいそしんでいた。
一方でビーチ側に散会した者もいる。
「視線を惹きつつロバートさんとセレスさんを探しに参りますわね」
「人の多い所を中心に、[幸運]が働けば会えるんじゃないかなぁ」
娃羽とてこのの二人は、それぞれの体を存分に曝しながらの探索。娃羽はともかくてこのは運任せは気楽が過ぎるのでは……と思われるかもしれないが、その幸運すら味方につけるのが猟兵と言うもの。ビキニの上にピンクのシースルーの薄いサマードレスを羽織ったその姿は隣の娃羽と合わせて良く目立ち、人々の注目を否応なしに集めていく。
「うわー、すごいすごい! たしかあの人ってラグランジュポイントにも来てくれた人でしょ? 知り合いも凄い人ばっかり!」
「いや、出ない方が……あぁ、もう!」
そうしてあっさりと好奇心の強いセレスが釣りだされ、それを止めようとしたロバートも連鎖的に出ざるを得なくなった。
「お初にお目にかかります。わたくしは艶守・娃羽。るこるさんの知り合いでこの世界出身の猟兵ですわ」
「甘露島・てこのだよぉ」
それに対しては娃羽が丁寧に挨拶をし、てこのがそれに続く。
「我々このビーチで自由参加のBBQを行うつもりでして。是非それにお二人をご招待したいと」
「もし来たい人がいれば誰でも歓迎なんだよぉ。BBQが始まったら、色々と食べてみよっかぁ。「美味しく食べているところ」を見たら、気になるものだよねぇ」
二人を招きつつ自由参加という部分を強調すれば、それに食いつくようにギャラリーたちも近づいてくる。
「BBQってあれでしょ、海とか山でなんか焼くやつ!」
「まあ、間違ってはいないけどね……分かった、行かせてもらうよ」
こうして二人はヒーローを安全にサルベージしつつ、大勢のギャラリーも連れてBBQ会場へと戻っていくのであった。
そして会場に戻ってみれば、そこにはちょうど麻陽と月麻、そして彼女たちに魅了された大量の一般人たちが一斉に肉を焼きだしている所であった。もちろんこれも意図的に連れてきたもの。娃羽たちと同じように、買い出し組の二人もまた自身の魅了術を強化して出来るだけ大勢の人間を参加者としてこの場に集めていたのであった。
そしてさらに、近場を回っていた叶葉、さらにはこの場に残っていたるこるやリュニエが各々招いた人々もいる。
それに加えてまた別の……あるいは二人のヒーローが取り巻かれたのと同質な熱気にまかれた人だかりもあった。
「ミルケンさんをお招きしたくありましたが……皆さん来ていただけて良かったです」
そう言う瑶暖の隣にいるのは、二人に関わる予知を幾度となく出したグリモア猟兵ミルケン・ピーチ。代表としてゴーグルを頭に乗せている花園・桃姫を先頭に、花園・ぺしぇ、アカリ・ゴールドの三人がそろい踏みだ。ちなみにやはり三人とも色々とサイズが合わずはみ出しているビキニやスクール水着を着用している。
「まぁ、私たちは猟兵的にはミルケンのおまけみたいなものですから……」
恐らく別ボディ召喚のユーベルコードを活用して呼んでいる状態なのだろう。だが彼女の実態をよく知らない者からは、桃姫、そしてぺしぇこそが49ers19位ミルケン・ピーチに見えることだろう。
ヒーローズアースとの縁がまだ薄い瑶暖は、彼女らとともに行動することで大勢の人々を呼び込むことに成功していた。
「あたしもアースクライシス見てた時はこんな感じでしたからね。気持ちはよく分かるっす」
まさにアースクライシスでのミルケンの活躍の結果ボディの仲間入りとなったアカリには、ヒーローの姿に惹かれて集まる人々の気持ちはよく分かるところであった。あるいはだからこそ、瑶暖もミルケンに49ersであることをことさら強調するよう勧めたのかもしれない。
「うわー、すっごい人。やっぱ猟兵ってすごいわー」
このあたりの客と住人全てが集まっているんじゃないかという程の大集団を見回し、セレスが感心の声を上げる。だがその隣でロバートは何かを考えているような表情だ。
「いらっしゃいませ、お久しぶりですぅ」
そんな二人に、面識のあるるこるが挨拶する。手際よく肉を焼くその隣ではリュニエが自身にも注目を集めパフォーマンス気味に肉を焼き、るこると二人のヒーローに過剰にギャラリーが殺到しないよう人の流れを調整していた。
「久しぶり! さっきから知ってる人ばっかり来るけど、何かあるの?」
「何か……って言うか、僕たちが目的じゃないか? それもあまりいい話じゃなくて」
ポジティブかつ反射的にものを言うセレスとネガティブに熟慮を重ねるロバート。その様子に聞いていた通りだと思いつつ、代表として叶葉が進み出た。
「初めまして。豊雛院・叶葉と申します。また何かが起きる可能性は否定出来ませぬ故、面通しも宜しゅう御座いますかと」
まずはロバートの考えの方を肯定し、しかし急を要することではないと捕捉する形で話を進めていく叶葉。
さらにそれを皮切りに、残りの面々も次々とるこるを解する形で挨拶をしていく。一々るこるを通しているのは、二人と関わった猟兵である彼女が仲介として自分の仲間を紹介しているという形をとり、過剰な不自然さを消すという目的もあった。
一通り挨拶が済めば、今度は猟兵とヒーローの歓談の時間とでもいう風に月麻が二人に問いかける。
「それで、お二人はどうしてここへ?」
「海が見たかったから!」
「ああ……ラグランジュポイントには海がないからね。アトランティスとつながりがある僕が案内することになったんだ」
素直に言うセレスに、各文明の交流促進のためという仕事としての側面を強調し答えるロバート。それぞれの性格に合わせた答え方だが、月麻の狙い通りそんな色っぽい話ではないという印象を周囲に与えるには十分な回答であった。
「お仕事ご苦労様、だよ。よかったら、ヒーローのお仕事について色々教えて欲しいんだよ」
「恐竜さんと仲良くなれるよ! あと宇宙でセミさんとかやっつけた!」
「え、あたしデリバリーの配達員と変な豚しか知らないんだけど!」
その後を引き継いで麻陽が尋ねると、ぺしぇとセレスが好き勝手言い始める。
こちらの直感組は麻陽と月麻に任せておいてと、ロバートの方には娃羽が話しかけた。
「人の噂、というのはとても厄介なものです。お分かりかもしれませんが、あるいはあなたが思っている以上に」
「ああ……そうみたいだね。でも、猟兵がこれだけ集まっている方がそう言う意味では危ないんじゃ?」
そう答えるロバートに、やはり本当の危険は分かっていないようだと察した娃羽が続ける。
「いいえ、わたくしたちはミルケンさんたちを含めて全て女性ですし、元々大勢いますから。翻ってあなたとセレスさんは妙齢の男女が誰にも知らせず二人きりで海に……この意味がお分かりで?」
「……勘弁してくれ」
額に手を当てて天を仰ぐロバート。その感情の程は伺い知れないが、当人がどう思っていようとそこを勘弁しないのが人の噂なのだと、娃羽の言葉はこれ以上なく彼に教えていた。
その話の間を作っているのは、リュニエの悪魔的肉焼きショー。
「大食いショー開催や持ち込みも歓迎だよぉ?」
「大食いショーも楽しそうでぇすし、私達も皆さんも楽しめればベストでぇす」
てこののそんな言葉に乗ってはじめられた大食いショーは、その勢いはまさに圧巻。食べるとか飲むではなく、吸うとか消えるとかそんな表現の方がしっくりくる勢いはまさに悪魔的だ。
「ショーって……見世物じゃないんですけど……」
「説得力がないのでぇす」
そこに表面上は渋々と参加している桃姫も、食べる勢いはやっぱり彼女相応。あるいは49ersである彼女が参加し、それを上回る勢いで食べているリュニエはまさに期待の超新星といったところか。
「折角ですし、皆で楽しめると嬉しいですの」
そう言いながらせってとおかわりを運ぶ瑶暖。もちろんおかわりとて皿だのグラムだのちゃちな単位での計測ではなく、箱とかキロで計測する量を強化した怪力でいくつも纏めての運搬だ。
「すごいっすね、やっぱ筋肉鍛えてるんすか? スモウレスラーって実は体脂肪率低いらしいっすけど、そんな感じなんすか?」
一見すれば少し脂肪の乗った豊満な体に見える瑶暖に、胸と尻以外には脂肪のないアカリが尋ねる。それに対してはUC効果だからと曖昧に答える瑶暖だが、果たして実体はどうなのか。
ともあれ、セレスは様々な好奇心を満たし、ロバートはヒーローとして無視できぬ人々への接し方を学び、そしてBBQと豊満に惹かれ集まった人々は『肉』を色々な意味で堪能してと、それぞれに得るものがある突発BBQ大会は続いていく。
「場合により[大食い]ショー開催も?」
「もうやってます……」
計画が上手くいったとるこるも大食いに回れば、さらに加速度的に肉は消えていく。桃姫も口調だけは悲し気というか諦め気味だが、手と口の動きは全くそれにあっていないあたり本心はつつぬけだ。
「この光景を守れたというなら、きっとヒーローの戦いは素晴らしいものだったとおもいますの」
「そっすね」
その戦いは知らぬが、その結果がこれならきっとそれは間違っていなかったのだと瑶暖も確信する。
「BBQに混ざりたい方は歓迎、皆で宴を楽しみましょう」
そして宴は終わらぬとリーダーである叶葉が宣言すれば、豊穣の使徒とミルケン・ピーチ、そしてヒーロー二人を中心とした様々な歓談はいつ果てるともなく続く。
「ほんとすごい! 海っていいね! 次は山とか、あと川とか森とか行きたい!」
「僕は海と街以外は専門外だよ。宇宙に行くことになったら、君に頼むからね」
そう言い合う二人のヒーロー。セレスはすっかり海とBBQを満喫しているし、ロバートも対外的に仕事という姿勢は保ちつつも焼いたものを貰ったり、猟兵たちと歓談するなどリラックスしているようだ。
ヒーローに休息はない。だがその舞台を降りている間は休み、遊んでいていいのだ。そしてそれは猟兵もまた。
合わせて11人、22房の豊かな身の中で、ヒーローは夏休みは無事守られたのであった。
大成功
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