Like Like a Blue
「学園祭でございますよ」
水着の上から眩しい白のネックフリンジポンチョを纏った虹目・カイ(金狐は虹を目指した・f36455)がにこりと微笑む。
幾ら学園祭だからって学内を水着で歩くか感はあるが、銀誓館学園は猟兵たち同様、毎年の恒例として水着コンテストを開催している関係もあり、アピールも兼ねて水着姿で楽しむ者も多い。ため、珍しいことではないとカイは言う。
「それにですね、皆様にも是非水着でお越しいただきたいお誘いがあるのですよ」
それは、銀誓館学園のプールを海に見立てて、学園にいながら夏の海を満喫しよう! と言う学生企画。
……あれ、プールってここの学園生にとっては戦場なんじゃありませんでしたっけ。
「それはあくまで地下ですから。かつては一般生徒の目を誤魔化す必要があったために、防音もばっちりですからね。ついでに耐久性も」
うん、余り深くは考えないでおこう。
そして、肝心の具体的なお誘いの内容はどんなものかと言うと。
「元々、学園のプールって天井も壁もガラス窓なので、外の青空ははっきり見えるんですよ。だから後は、床とプールそのものを飾り付けて、海っぽく演出しているわけです」
プールサイドには砂……ではなく、砂浜そっくりなマットを敷き詰めて、その上に貝殻なんかも散らしてみたりして。
椰子の木を模したランプに、ビーチベッドやマットも完備。海の家風の旗には、テイクアウト可能な喫茶系の出店から取り寄せられるメニューの一部が記されている。
そしてプールには特別に、漣を立てるための機材が設置されており、穏やかな夏の海を再現しているわけだ。
「と言うわけで。銀誓館学園プライベートビーチにお邪魔してみませんか」
なんて、カイは悪戯っぽく笑った。
●
夏の海へと姿を変えたプールサイド。
砂浜でのんびり過ごすのもいいが、海に出たいならフロートマットを浮かべてみて。
薄く柔らかなそれは二人までなら悠々と乗せて、波間を漂ってくれる。飲み物やスイーツだって少しなら乗せて行けるから。
テイクアウトメニューを持ち込み用に提供してくれる喫茶出店も充実していて、その分メニューも幅広い。
ドリンクなら、ハーブティー専門店からミントにカモミール、マロウにハイビスカスをアイスティーで。タピオカドリンク店からタピオカミルクティーと、各種タピオカフルーツジュース。フレーバーはレモンにマンゴー、パイナップル。定番のコーラにサイダー、オレンジジュースにお茶も当然揃っている。
スイーツなら、ガラスの器に盛ったアイスやシャーベット。バニラ、ストロベリー、チョコに抹茶。チーズケーキ風やチョコミント。シャーベットならイチゴにオレンジ、桃やメロンがラインナップ。器に盛れるのは、一人三個まで。と言う事は、複数人で頼めば……? なんて楽しみ方も。
忘れてはならないのがかき氷。昔ながらのザクザク系か、今流行のふわふわ系か選べて、シロップもイチゴにメロン、レモンにブルーハワイ、宇治金時に黒蜜きな粉なんて変わり種も。
他にも、苺カスタードや、チョコバナナのクレープ。プレーンとチーズ風味から選べるスフレパンケーキ。和風に餡蜜やぜんざい、葛切り。プリンアラモードやフルーツ大盛りのパフェまで楽しめる!
砂浜でビーチベッドやマットに寝そべりながら。波間をフロートマットで漂いながら。
一人でのんびりと、親しい仲で和気藹々と。
学園祭も海も、一度に楽しめる贅沢を、堪能しませんか。
絵琥れあ
お世話になっております、絵琥れあと申します。
銀誓館は学園祭。けれど折角の水着も楽しみたい!
そんな皆様に、水着で遊べる学園祭イベントを。
夏休みシナリオのため、今回は1章構成です。
第1章:日常『銀誓館学園の学園祭』
是非、水着でお越しください(強制ではありませんが、とっても推奨です)。
できること、頼めるものはオープニングに。フレーバーならこんなのない? なご提案もどうぞ。
ありそうなものなら是非採用させていただきたい所存です(確約ではございませんが……)。
団体様でいらっしゃってくださる場合は。
プールサイドで過ごされるのであれば、三名様まで。
フロートマットを楽しまれる方は、二名様までとさせていただきます。
また、当方グリモア猟兵の内、琥珀・カイ・清志郎・亨次・慧の五名がこの場におりますので、お声がけいただければひょっこり現れます。何かございましたらお気軽にどうぞ。
(お誘いいただいていない方のところに許可なく首を突っ込むことはありませんのでご安心ください)
断章なし、公開された時点で受付開始です。
それでは、よろしくお願いいたします!
第1章 日常
『銀誓館学園の学園祭』
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POW : 体力の続く限り沢山の企画を巡る。
SPD : 穴場的なスポットを見つけ、こっそり楽しむ。
WIZ : おすすめの企画を紹介してもらう。
イラスト:十姉妹
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御園・桜花
「学園祭 …水着で参加が基本なのですね」
学歴は尋常小学校迄なので間違った知識を信じ込んだ
白ビキニ着用
「マロウ…?バタフライピーのように色が変わるんですか?じゃあ、マロウのアイスティーと…桃とメロンのシャーベットと、バニラを」
学校には
知らない事が満ちている
学校は
知らない事を教えてくれる
学校は
調べたいと思う切欠をくれる
異世界でプールに行った事はあるけれど
尋常小学校の水練は川だった
「凄いです、此の世界の学校って」
銀誓館程ではなくても
きっと此の世界の学校はこんな感じなのだろう
自分で調べた事は絶対正しいかは分からないけれど
学校で教えるのはその時正しい事
「凄いな、学校…」
キラキラした目で周囲を見回した
●
「学園祭……水着で参加が基本なのですね」
清楚な印象すら与える白のビキニを涼やかに着こなしつつも、間違った知識を得てふむ、と頷く御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)。
銀誓館学園程のマンモス校がこうなのだから、他の学校もきっとそうなのだと考えるのは、学歴が小学校までで止まっている身としては仕方ない――筈だ。多分。
ともあれ、早速メニューに目を通す桜花。
「マロウ……? バタフライピーのように色が変わるんですか?」
桜花が喩えに挙げたそれも、元になる植物は違うが、青、紫、そしてピンクへと見事な色彩の変化を遂げるお茶だ。時と共に夜が明けるように。
「じゃあ、マロウのアイスティーと……桃とメロンのシャーベットと、バニラを」
輪切りのレモンの添えられた、海色のアイスティー。本来ほぼ無味に近い味であるせいか、カモミールのブレンドがされているようだ。
グラスの器に盛られた氷菓は、優しい色合いのバニラアイスにピーチシャーベット。そして鮮やかなメロンシャーベットがころんと器に収まる姿は見て愛でる分にも楽しい。
けれどそれでは味わう前に溶けてしまうから。桜花はマロウティーを一口味わい、ピーチシャーベットをスプーンで掬って、舌の上で転がす。
上品で優しい甘みがふわりと口の中に広がり、満たされてゆく。
(「学校には、知らない事が満ちている」)
知識も、経験も、新たな発見が溢れた場所。
(「学校は、知らない事を教えてくれる」)
それは師であったり、自らの体験であったり。
(「学校は、調べたいと思う切欠をくれる」)
そしてそれはきっと、とても幸せなことだ。
(「異世界でプールに行った事はあるけれど、尋常小学校の水練は川だった」)
彼女が通っていた小学校。
そこには、学びのためのプールは存在しなかったから。
「凄いです、此の世界の学校って」
銀誓館程ではなくても、きっとこの世界の学校はこんな感じなのだろう――それを思えば。
(「自分で調べた事は絶対正しいかは分からないけれど、学校で教えるのはその時正しい事」)
この世界の学校は、これだけの設備が整っている。
そこから得られる学びはきっと、豊かなものだろう。
「凄いな、学校……」
桜花は噛み締めるように改めて呟き、我知らず輝いた瞳で周囲を見渡す。
マロウの夜は、明けていた。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
ここが話に聞いていた銀誓館学園か!
銀誓館学園は必ず来たい場所だったんだよね。
お、ちょうど学園祭やってるじゃん。これは付いてる。ラッキー☆
え? 水着??
まだ来たばかりで持ち合わせもないし、水着もないな……
学園指定の水着でもOKだと? それ着ます着ます。
水着なんて普段着ないけど、小さいんだな。
無事に学園に乗り込んだからにはスイーツだな。
特にかき氷は必須。黒蜜きな粉もいける。
頭が痛くなるまでザクザク食べてやるぜ。寒さには強いんだ。
●
「ここが話に聞いていた銀誓館学園か!」
おお、と感嘆の声を上げるシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)。
「銀誓館学園は必ず来たい場所だったんだよね。……お、ちょうど学園祭やってるじゃん」
大きく掲げられた看板に、行き交う人々の心弾むような熱気に、楽しいことに目がないシモーヌの瞳が煌めいた。
(「これは付いてる。ラッキー☆」)
意気揚々と、企画をやっていると言うプールへ向かった――のは、よかったのだが。
「え? 水着??」
辺りで客として満喫している人々や生徒たちが皆、揃って水着でいるものだから。
郷に入っては郷に従えと言う。しかし来たばかりのシモーヌに今すぐ買ってくるような持ち合わせはなく、水着そのものなんて言わずもがなだった。
どうしたものかと考えていると、学園指定の水着でも大丈夫と案内係が言うものだから。
「それ着ます着ます」
早速、試着室を借りてぱぱっと着替えて。
鏡の前でシモーヌが思ったことは。
(「水着なんて普段着ないけど、小さいんだな」)
正確には、全体のサイズ自体は然程問題はないのだ。ただ、キツい。主に胸周りと腰回りが。
まあ、食い込んで痛いと言うわけでもないし、仕方ないかとシモーヌは早々に切り替えた。
気を取り直して、学園祭満喫します!
「無事に学園に乗り込んだからにはスイーツだな」
ビーチベッドに腰掛け、真っ先にメニューのスイーツ欄に目を通す。するとかき氷があることを知って、再びきらんと目を輝かせるシモーヌ。
「かき氷は必須だな。黒蜜きな粉もいける」
早速オーダー、ずらりと並ぶ色とりどりのシロップや盛りつけのされたかき氷。
「よーし、頭が痛くなるまでザクザク食べてやるぜ。寒さには強いんだ」
スプーンを手に、まずは定番のザクザクイチゴ氷を一口。昔懐かし、古き良きかき氷の食感とシロップ味、そして夏の暑さを吹き飛ばすひんやり感。
(「これこれ!」)
満足満足。だがまだ、大満足ではない。
目指すは全制覇! シモーヌは学園祭の夏を全力で堪能すべく、スプーンを進めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
凶月・陸井
妻のシリル(f35374)と一緒に
久しぶりのデートだし、何よりシリルの喜ぶ気持ちが伝わってくる
水着のデートは初めてだしちゃんとエスコートしないとな
「ふふ、楽しみなのも分かるけど慌てないようにだぞ?」
折角の銀誓館だ。学生時代を思い出しつつ楽しんでいこう
「さ、お手を、俺のお姫様」
「飲み物は…あぁ、あっちみたいだぞ」
折角だから一息つくためにハーブティーを選ぶかな
ハイビスカスティーを選びつつシリルの飲み物も受け取って
「こうしてデートでゆっくりできるのも久しぶりだからな」
銀誓館のプールでデートっていうのも不思議な感覚だ
学生の時はこうして楽しむのも文化祭の時くらいだったし
シリルが見つけた懐かしい顔に俺も思わず笑みが零れる
ただ、今の状況の事は耳にしてる
「俺も懐かしい顔に会えて嬉しいけど…そう言われても困るよな
初めまして。俺は凶月陸井。シリルの夫で、俺もシリルも銀誓館の卒業生だ」
一先ず挨拶だけに済ませて
俺達の今の様子を見せてあげられたらそれが一番だな
またどこかで声をかける機会があれば必ず
シリルーン・アーンスランド
夫の陸井さま(f35296)と御一緒を
陸井さまと併せての水着にて意気揚々とお出かけを…
本当に初めての事でございますゆえ、心がただ浮きたちまして
「しかも銀誓館でございますもの!」
此処は授業以外は学園黙示禄が秘密裏に行われます所
催しで足を踏み入れるのは嬉しくてたまりませぬ
エスコートを下さいます陸井さまの素敵さに頬は赤らみ
ずっと耳朶まで熱い有様でございますが…嬉しくて
「陸井さま、わたくし嬉しゅうございます…」
語彙力を失くしてしまいますの
「飲み物は如何でございまして?」
お好みの品をお運びしプールサイドで語らいましたら…
懐かしいお顔に顔がほころびます
「フェイさま、お懐かしゅうございます」
つい、グリモア猟兵の陸さまにそうお声を掛けてから
「いえ、今は初めましてでございますね。わたくし、シリルーン・
アーンスランドと申しますの。以後お見知りおきくださいませ」
と名乗り、微笑み優雅に一礼を致します
時の流れの先であれど、わたくしは横に立つ陸井さま
ともども、何も変わらぬことをお見せ出来ましたら
嬉しゅうございますわ
●
共に青を纏い、連れ立って睦まじく。
羽織とパレオの裾が揺れれば、二人の間を流れる空気も涼やかに。
凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)とシリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)は夫婦であり、この学園の卒業生だ。ゴーストとの激しい戦いを幾度も乗り越え、死と隣り合わせの青春を、共に駆け抜けた世代の。
と、あれば母校での学園祭デート。シリルの心が浮き立ってしまっても、それは無理のないこと。
デートは久しぶりではあるものの、何しろ水着で、それも銀誓館学園でなんてどちらも初めてのことだし。
「ふふ、楽しみなのも分かるけど慌てないようにだぞ?」
「本当に初めての事でございますゆえ……しかも銀誓館でございますもの!」
その声音から、シリルの本当に喜ぶ気持ちが、陸井にも伝わってくる。
しかも、このプールと言う場所は、銀誓館学園の能力者たちにとっては、授業以外ではお互いに切磋琢磨し、力を高め合うべくぶつかる闘技大会――学園黙示録が行われる場所、と言った印象がどうしても先行する場所。
だからこそ、催しで足を踏み入れるのが嬉しくてたまらないのだと。
平素は穏和で物腰柔らかく、静やかたるシリルの欣喜雀躍といった様子に、陸井の表情にも自然と穏やかな微笑みが浮かぶ。
(「初めて尽くしだし、ちゃんとエスコートしないとな」)
折角の銀誓館、学生時代を思い出しつつ楽しんでいこうと思いつつも、陸井はすっと、流れるような所作でシリルへと手を差し出し。
「さ、お手を、俺のお姫様」
今の陸井はまるで、シリルだけの王子か騎士のよう。或いは両方かも知れない。
そんな余りの素敵さに、シリルは頬が熱を持ち、赤らむのを止められない。
ずっと耳朶まで熱く、それでも、照れ以上に胸を占めるのは、溢れんばかりの嬉しさで。
「陸井さま、わたくし嬉しゅうございます……」
それしか、言葉が出てこない。けれどそれだけ胸が詰まってしまって、言い表せないほどの幸いだったのだ。
笑みを深める陸井の掌に、自らのそれをそっと重ねる。熱いのはきっと、夏のせいだけではないのだろう。
「飲み物は如何でございまして?」
「飲み物は……あぁ、あっちみたいだぞ」
テイクアウトのドリンクメニューに目を通し、折角だから一息つくためにハーブティーを選ぼうか、と。
陸井がハイビスカスティーを頼めば、シリルも一緒にオーダーを。
鮮やかな赤の彩りに、添えられたシルバーメモリーのお揃いが嬉しい。
二人分を受け取った陸井が、後は向こうでゆっくり過ごそうか、と笑みを向ければ、シリルもそれに微笑みを返してこくりと頷く。
「こうしてデートでゆっくりできるのも久しぶりだからな」
「ええ、本当に……望外の幸せにございます」
満ち足りた気持ちは途切れることなく、ぽつりぽつりと想い出を語り合いながら、比較的人の少ない、ゆったりと二人で過ごせそうなプールサイドの一区画へと。
ビーチマットを並べて、二人隣り合って座る。
「銀誓館のプールでデートっていうのも不思議な感覚だな。学生の時はこうして楽しむのも文化祭の時くらいだったし……」
「あの頃は学校行事であっても、何処か気の抜けない日々が続いておりましたし……それを思えば今日は、……あら?」
シリルが何かに気づき、次の瞬間にはその表情を柔らかく綻ばせる。陸井もその視線を追って――彼女の笑みの理由を知り、そして自身も、思わず笑みを零した。
「フェイさま、お懐かしゅうございます」
そこにいたのは、二人のよく知る人物。
燃えるような赤毛に、男らしく精悍な体躯――かつての戦友にして、今はグリモア猟兵の、|陸《ルー》|・《・》|慧《フェイ》。
運命の糸症候群か、在りし日の姿に戻ってはいるが、間違いなく、慧だ。ただ、身に纏うその水着は、些か二人の知る彼らしくはなく。スポーツウェア風の黒のスイムスーツ姿だった。
陸井は、伝え聞いていた彼の現状を思い返していた。曰く、彼の記憶はその大部分が抜け落ちてしまっているのだと。
シリルの呼びかけにも首を傾げるその様子に、それが事実だったのだと改めて知る。
だが、決して二人は悲観しなかった。
「いえ、今は初めましてでございますね。わたくし、シリルーン・アーンスランドと申しますの。以後お見知りおきくださいませ」
微笑みながら、パレオの裾を摘みつつ名乗り優雅に一礼するシリルに並んで、陸井も穏やかな笑みを浮かべながら挨拶を。
「俺も懐かしい顔に会えて嬉しいけど……そう言われても困るよな」
「……、……いえ、ご丁寧にありがとうございます」
すぐに、人の良さそうな笑みを返してくれる慧だが、かつての彼からは考えられないほどに、その感情は凪いでいる。
それでも、慧は、慧だ。
陸井にとっても、シリルにとっても。
「初めまして。俺は凶月・陸井。シリルの夫で、俺もシリルも銀誓館の卒業生だ」
「凶月様に、シリルーン様でございますね。私は、ロー……いえ、陸・慧でございます。以後、お見知り置きを」
とは申しましても、お二人は私のことをご存知のようですね、と問われたが、無理に思い出さなくてもいい、と二人は穏やかに笑った。
勿論、思い出してくれれば、嬉しい。けれど、一先ずは、またこうして出会えた。今はそれで充分だ。
――だった、のだが。
「………………う、っ……」
「フェイさま?」
シリルが、思わず再びかつての名で彼の名を呼んだのは。
徐ろに慧が片手で頭を押さえて、短く呻いたからだ。
(「……思い出しかけている?」)
陸井は直感的にそう思ったが、この場はすぐに治まったようで、失礼しました、と軽く告げられる。
いずれにしても、焦る必要などないのだ。
(「俺達の今の様子を見せてあげられたら、それが一番だな」)
(「時の流れの先であれど、わたくしは横に立つ陸井さまともども、何も変わらぬことをお見せ出来ましたら……」)
変わってしまうものはある。けれど、友であることは、変わらない。少なくとも陸井とシリルは、そう思っているから。
「またどこかで声をかける機会があれば、必ず」
「ええ、私の方こそよろしくお願いいたします」
今はただ、共に過ごしたこの学び舎で、確かな約束だけを交わして。
大成功
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