●ラグジュアリーサマー!
そこはUDCアースでも有名なグランピング施設、ラグジュアリー・シー。名前の通り、海の近くでラグジュアリーなひと時を過ごせると人気のスポットだ。
ベルテントに大型のドームテント、別荘風のコテージと好きなスタイルを選べるのも魅力の一つ。そしてそのどれもが充分な間隔があり、多少騒いでも苦情が入るようなことはない。
バーベキューの道具も全て揃っていて、食材もお好みのものをチョイスすることが可能。調理器具も大抵のものはあるので、作りたい料理を楽しむのだって問題なくできるだろう。
そして、目の前に広がるのはプライベートビーチとも言える海、水遊びもバーベキューも花火も肝試しも、きっと何をしたって楽しいひと時になるのは間違いないはず。
そんな場所へのお誘いを猟兵達にかけるのは――。
●とっておきの夏休み~Night time~
夏休みだよ、と深山・鴇(黒花鳥・f22925)が集まった猟兵達に笑いかける。
「今年は各世界で夏休みが楽しめるそうだけどね、今回案内するのはUDCアースの夏休みだよ」
どのように過ごすのかといえば――。
「グランピング、というやつさ。手ぶらでキャンプが楽しめるっていうのが売りだそうでね」
あらかじめ設置された大型のドームテントやベルテント、別荘風のコテージなどがある為テントを張る必要もなく、重たいバーベキュー道具を持っていく必要もない。
「食材も一級品が揃っていて、肉も野菜も豊富にあるそうだよ。器具もバーベキューコンロを始めとして、メスティンやスキレットにダッチオーブンなんかもあるようだから、ちょっとグレードの高いキャンプ飯を楽しめるんじゃないかな」
キャンプご飯を楽しんだ後はきっとすっかり日が暮れているはず、片付けを済ませたら花火を楽しむのもいいだろう。
「隣のテントやコテージとの間は結構距離があるみたいだからね、騒いでも迷惑にはならないよ」
打ち上げ花火できゃあきゃあと騒ぐのも、手持ち花火を楽しむのも、きっと間違いなく楽しいはず。
「テントでゆっくり話をするのもいいだろうね、きっと星が綺麗に見えるはずだ」
ドーム型のテントは透明タイプの物もあるようで、ベッドに寝転がりながら星を眺めれば素敵な夜を過ごせるはず。勿論、ベルテントやコテージに泊まる者は外に出した椅子に腰かけて、のんびり星を眺めることもできる。
眠くなるまでカードゲームに興じるのもキャンプの醍醐味、何をするのだって君達の自由だよ、と鴇が笑った。
「グランピングで出来ることは大抵できるからね、色々考えてみるのも楽しいんじゃないかな」
時間帯は夕方から夜にかけてだけれど、昼にはできない楽しみ方もきっとあるはず。
「ああ、勿論拘りの食材や機材があるなら持ち込みも可能だよ」
愛用のキャンプ用品もいいものだろうからね、と鴇が手のひらにグリモアを浮かべてゲートを開く。
「それじゃ、楽しんでおいで」
黄昏時から夜になる空はきっと綺麗だよ、と鴇が笑って猟兵達を見送った。
波多蜜花
閲覧ありがとうございます、波多蜜花です。
夏休みですね、サマーバケーション! こちらは一章のみのお楽しみイベントシナリオとなっております。昼間・夕~夜・深夜の三部作となっておりまして、それぞれ案内する猟兵が違います。場所は同じですので、お好きなシナリオにご参加いただければ幸いです(複数参加も歓迎です)
水着は特に希望がなければ今年の水着を勝手に描写する場合があります。水着をお持ちでない方も、☆をプレイングのどこかに入れてくだされば、勝手にイメージで水着を着せます(ない場合はプレイングでの指示が無ければ描写致しません)
●プレイング受付期間について
断章投下後にタグやMSページ記載のURL先にてご案内しております、参照いただけますと助かります。
また、参加人数やスケジュールの都合、予期せぬ出来事によっては再送をお願いする場合がございます。なるべく無いように努めますが、再送となった場合はご協力をお願いできればと思います(この場合も、タグとMSページ記載のURL先にてお知らせ致します)
オーバーロードについてはMSページに記載があります、ご利用をお考えの方がいらっしゃいましたらお手数ですが確認していただけると幸いです。
●できること
時間帯は夕方~夜、午後五時~午後九時くらいです。
グランピング施設でのバーベキュー、花火、ご希望のテントやコテージでの一幕など、夕方から夜にかけてできそうな事はお好きなようにやって頂いて構いません。
POW/SPD/WIZは気にしなくて大丈夫です。
●同行者について
同行者が三人以上の場合は【共通のグループ名か旅団名】+【人数】でお願いします。例:【黄昏夏3】同行者の人数制限は特にありません。
プレイングの失効日を統一してください、失効日が同じであれば送信時刻は問いません。朝8:31~翌朝8:29迄は失効日が同じになります(プレイング受付締切日はこの限りではありません、受付時間内に送信してください)
未成年者の飲酒喫煙、公序良俗に反するプレイングなどは一律不採用となりますのでご理解よろしくお願いいたします。
●その他
プレイングでのご指定がありましたら、鴇がご一緒致します。もし何かあればご用命くださいませ、プレイングに記載なければ登場することはありません。
それでは、皆様の素敵なサマーバケーション夜の部をお待ちしております。
第1章 日常
『海を楽しめ!』
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POW : 海の家や屋台廻りでとにかく食べ物を堪能
SPD : 水泳、ビーチバレー、水鉄砲の打ち合い、体を張って夏を満喫
WIZ : 海を眺めて物思いに耽る、もしくはのんびり徹底的に日焼け、パラソルの下でのんびり
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御剣・刀也
ステラ・エヴァンズ(f01935)と一緒に参加
グランピングの後ステラと一緒に波打ち際で星空を眺める
手を繋がれたら握り返し、自分はここから居なくなったりしないと答えるかのように
織姫と彦星の様に別れさせようとする者がいるならたとえ神だろうが斬り捨て誰にも渡さない
ステラは自分の道を照らしてくれる灯台だから
守ってみせるさ。相手が誰だろうと、お前も、ガキどもも。全員な。
ステラ・エヴァンズ
刀也さん(f00225)と参加
グランピングを楽しみまして、波打ち際に腰を下ろしてゆったりとお話を
お空も広いですし星空がとっても綺麗
結婚してもこうして二人で過ごせる時間を頂けて幸せ者ですね
なんて寄り添って手でも繋いでみましょうか
水着も今年は旦那様のカラーリングだったのですけれど、気づいておられないんだろうなぁと波に足をつけてちゃぷちゃぷ
それでも刀也さんを好きな事に変わりはありませんし、お傍を離れるつもりもないのですけれど…
ああ、でも浮かれて仕事を疎かにしないようにしませんと
でないと彦星と織姫のように天の川で離れ離れになってしまうかもしれません
まぁ、刀也さんなら泳いで会いに来てくれそうですけれど
●永遠を誓って
海を前にしてのグランピング施設でゆったりとした時間を過ごしつつ、今年もこの季節が来ましたね、とステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)が御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)へと笑いかけた。
「そうだな、夏って感じだ」
「水着も新調しましたしね」
椅子に腰かける刀也は去年の青と白のサーフパンツとは打って変わって、赤と黒のサーフパンツ。ステラもサマードレスのような水着から一転、今年はスポーティな赤いビキニに黒い上着を引っ掛けている。
「さ、お肉焼けましたよ」
バーベキューコンロの上で美味しそうに焼きあがった肉を皿に盛り、ステラが刀也へと渡す。
「ありがとう」
「ふふ、いただきましょうか」
視線を合わせ、ぺこぺこになったお腹を満たす為に暫しの間、バーベキューを楽しむ。
「美味い。しかし便利なものだな」
「ええ、持ってくるものが着替えくらいでしたからね」
ほぼ手ぶらに近い状態でやってきても、あとは施設に全て揃っているというのだから気軽な一泊旅行のようなもの。昼は海遊びを目いっぱい楽しんで、夕方からはバーベキュー、夜になれば静かに波音を楽しみながらテントで穏やかなひと時を過ごしたり、花火を楽しんだりできる。
「あ、野菜も食べてくださいね」
「ああ」
こんがりと焼け目の付いた玉ねぎやピーマンなどをせっせと旦那様の皿に載せ、ステラが微笑んだ。
「ステラ、陽が落ちたら海の方へ星空を眺めに行かないか」
「ええ、行きましょう」
刀也の誘いにこくりと頷き、ステラがお肉を焼き終わったコンロにおにぎりを載せて味噌だれを塗っていく。
「焼きおにぎりか」
「はい、炭火で焼くなら外せません」
じっくりと焼き上げれば、こんがりとした焼き目に少しの焦げ目。これがまた食欲をそそるのだとステラが笑う。
「ステラの作るものは何でも美味い」
「ありがとうございます」
お世辞でもなんでもない、そのささやかな一言が何よりも嬉しいとステラが言って食べごろの焼きおにぎりをお皿に載せた。
夜空に星が輝きだす頃には用意されていた食材をすっかり使い切り、二人波打ち際に腰を下ろして満天の星を眺めて時折視線を合わせては笑う。
「お空も広いですし星空がとっても綺麗……結婚してもこうして二人で過ごせる時間を頂けて幸せ者ですね」
「ステラが望むなら、いつでも」
自分は決してステラの前から居なくなったりしないと伝えるように、そっとステラから伸ばされた手を優しく握り返す。絡めるように繋がれた手に、ステラが嬉しそうに微笑んで刀也に寄り添った。
二人きり、沈黙だって気にすることはない。優しい時間を噛みしめるように、ステラが波に浸した足をちゃぷちゃぷと遊ばせる。ちらりと横目で刀也を眺め、今年の水着は去年の旦那様が私色にしてくれたように、あなたのカラーリングだったのですけれど、と胸の内で思う。
きっと気付いておられないんだろうなぁと、それもまた愛おしくて足を揺らす。気が付いていてもいなくても、刀也を好きな事に変わりはないし、傍を離れるつもりもないのだ。
「天の川が見えそうだな」
「え? ええ、そうですね。あの辺りかしら?」
星空を見上げ、まるで川のように見える場所を指さす。
「七夕は過ぎてしまいましたけど、今年は彦星と織姫は会えたんでしょうかね」
「雨が降ってもカササギが橋を作るさ」
その言葉に、思わずステラが笑う。
「どうした?」
「いえ、刀也さんなら泳いで会いに来てくれそうだなぁと思いまして」
「ふ、そうだな」
ステラの言葉に刀也が笑って、何があっても会いに行くと繋いだ手に力を籠める。その握る力を心地よく感じながら、ステラが取り留めのない話をするように言葉を紡ぐ。
「空の二人のように、浮かれて仕事を疎かにしないようにしませんと」
「ああ、夏休みが終わったら……そうだな」
「ええ、でないと彦星と織姫のように天の川で離れ離れになってしまうかもしれませんからね」
「離れ離れ……ないな」
ない、と断言した刀也の顔を思わず見つめて、ステラが笑う。
「ないですか?」
「織姫と彦星の様に、俺とステラを別れさせようとする者がいるならたとえ神だろうが斬り捨てる」
「ふふ、過激派でした」
「当然だ、守ってみせるさ。相手が誰だろうと、お前も、ガキどもも。全員な」
ステラは自分の道を照らしてくれる灯台だから、決してその灯りを――微笑みを消すような真似はさせない。
「誰にも渡さない」
「……はい、離さないでくださいね」
ああ、私はこの方と一生を共にするのだと、改めて心に想う。
それはまるで、ステラにとっての灯台のように心の中で輝き続ける想いであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御魂・神治
☆ハーフパンツの水着とアロハシャツ
天将『最近流行のぼっちキャンプですか』
ぼっち言うなや、ソロキャンって言えや。
天将『最低限の荷物の限界ソロキャンプかと思いましたが』
いやいや幾ら天将おるから言うて、死と隣り合わせの事はせんよ??
ほな食う魚取りに釣りでも行こか
天将『日が暮れていますからまともに釣れるものなど居ないですよ』
夜の方が魚が寝ていて油断しとるもんや
天将『何処で...って、施設の溜め池じゃないですか、やめて下さい人間性を捨てないで下さい』
大丈夫やて!なんでも火ぃ通してマックススパイスかけたら食えるんやで!
...クッソ、アメザリ野郎しかとれんかっ――ア"ァ"痛ァ"イ"!!(指を挟まれる)
●Let's ソロキャン!
黒地にハイビスカスのアロハシャツを羽織り、海と空の青を写し取ったようなサーフパンツといったシンプルながらも己に似合うスタイルで御魂・神治(除霊(物理)・f28925)がグランピング施設へと向かう。
『最近流行りのぼっちキャンプですか』
「アホ、ぼっち言うなや。ソロキャンって言えや」
ソロキャンプ、略してソロキャン。そのままではあるが、|これは今めちゃくちゃ流行っているのだ《別にぼっちなんかじゃないんだからねっ!》。
『わかりました、訂正します。どうみても最低限の荷物の限界ソロキャンプかと思いましたが』
「訂正してそれかい!」
『樹海にでも行くのかと』
「いやいや、幾ら天将おるから言うて、死と隣り合わせの事はせんよ??」
そんな青春、十代で終わって……いや、今も割とそうかもしれないのだが。
『そうですか? 軽率にやりそうですが』
「やるかい! ほら、見てみい。これがグランピングや!」
ふふん、と自慢げに胸を張った神治の目の前には一人用のベルテント、一人用と言っても広さはそれなりでベッドも完備されている。すぐ近くにはお洒落な木製のテーブルと椅子が置かれていたし、炭火のバーベキューコンロも用意されていた。
『至れり尽くせり、というやつですね』
「そういう事や。ほな、食う魚取りに釣りでも行こか」
『日が暮れていますからまともに釣れるものなど居ないですよ?』
「夜の方が寝とって油断しとるもんや」
『確かに夜釣りもありますが……何処で? 海ですか?』
それであれば、釣りというよりは銛突きではと天将が首を傾げた。
「海は行かへん、夜の海とか怖いやんけ」
『じゃあ何処で……って、施設の溜め池じゃないですか、やめて下さい人間性を捨てないで下さい。なけなしの人間性まで捨てたらどうなるんですか』
「誰の人間性がなけなしじゃ! 大丈夫やて、なんでも火ぃ通してちょっとマックスなスパイスかけたら食えるんやで!」
ふんふんふ~ん♪ と、鼻歌交じりに神治が釣り糸を垂らす。
「おっ、もう食いつい……アメザリやんけ!」
そこからはもう入れ食いであった、アメリカザリガニが。
「……クッソ、アメザリ野郎しかとれんかっ――ア゛ァ゛痛ァ゛イ゛!!」
『……大人しく用意してもらった食材でバーベキューすればよかったのでは?』
両手の指をザリガニのハサミに挟まれ、ぴょんぴょん飛び回る神治に天将が苦言を呈す。
「おま、そんなんもっとはよ言えやーーー!!」
神治の悲痛な叫びが、星の輝く夜空に響き渡るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
椚・一叶
友のトリス(f27131)と
儂が最近寝泊りしている所よりも豪華なテント
これ本当にテントか?
休む時間も楽しみにしつつ、いざBBQ
戦場に赴く時と同じ真剣な顔でやる
食べやすいサイズに切った肉や野菜、串に刺して焼く
味付けは塩胡椒のみ
久々に料理っぽいことした
少し切り方バラバラだが、味は変わらない
後はそのまま食べれるトウモロコシやソーセージも
焼けたやつからどんどん食べていこう
トリスもたまには腕を振るうといい
厳しく儂が採点してやる
満足ゆくまで食べたら、腹ごなしに花火楽しむ
すすき花火、派手で面白い
…楽しすぎて今日、眠れない気がしてきた
儂より先に直ぐ寝ないように、と無茶言ってみる
眠れなくなる話…?う、後ろに…?
鳥栖・エンデ
友人のイチカ君(f14515)と
テント寝泊まりもグランピングの醍醐味だよねぇ
…って、最近はテントで寝てるんだ…?
詳しい話は置いといて先ずはBBQごーごー
気付けば、切ったり焼いたり
シンプル味付けしてくれてるから
手伝い要るって言われなければ
美味しく食べる役に徹しておくよぅ
カレー粉ふっても一味変わった串になるかも〜
イチカ君が及第点なの作ってるし
ボクは面倒だからいいよ〜それよりお肉おいしい
食後の夜空と手持ち花火も良いよねぇ
線香花火の景色が割と好きかも
眠くなければ他愛ない雑談するのもいいし
眠れなくなるような話でもしようか?
実はさっきから後ろに……(オチは特にない話)
●夜は山盛りバーベキューと花火、それから
昼は海遊びを楽しんで、程よい疲れと空腹のまま椚・一叶(未熟者・f14515)と鳥栖・エンデ(悪喰・f27131)は予約してあったグランピング施設へとやってきていた。
エキゾチックな水着姿のエンデがベルテントを見て、わぁと小さく歓声を上げる。
「テントで寝泊まりもグランピングの醍醐味だよねぇ。遊牧民の移動住居みたいなテントで可愛いね~、ね? イチカ君?」
「……これ本当にテントか?」
大菊の咲いた赤いシャツを羽織り、白と黒のグラデーションがかったサーフパンツ姿の一叶が難しい顔をしてエンデを見遣り、またベルテントに視線を向ける。
「そうだよ~、ベルテントって言うんだって。いんすた映えしそうだよねぇ」
「む、確かに映える……が、儂が最近寝泊まりしている所よりも豪華なテント」
もうこれは家では? みたいな顔をしたけれど、どう見てもテントだよとエンデが笑う。
「……ん? って、最近はテントで寝てるんだ……?」
テントならまだいい気がするけれど、テントじゃなかったらどうしようと思いつつエンデがバーベキューコンロに火を熾す。
「詳しい話は置いといて、先ずはバーベキューごーごー!」
お腹空いたでしょ、とエンデが言えば、一叶が大きく頷いた。
テントで休む時間も楽しみだけれど、先ずは腹ごしらえ。いざバーベキュー! とばかりに、戦場に赴く時と同じくらい――いや、もしかしたらそれ以上に真剣な顔で一叶がバーベキューに挑む。
「さて、何から焼こうかな~」
やっぱりお肉かな~? とエンデが一叶に振り向くと、意外なほど手際よく肉や野菜を食べやすいサイズに切って、綺麗に串に刺すと網の上に置いていく姿が見えた。
「味付けは塩胡椒でいいか」
「うん、いいよ~。取り皿にタレを入れたらいいしね。本格的に味変したくなったらカレー粉振ってもいいかも、一味変わった串焼きになるかも~」
手伝いが要るって言われたら手伝おう、それまでは美味しく食べる役に徹しておこうと、エンデが焼き上がった串を手に取った。
「ん、美味しい~シンプルな味付けって飽きがこなくていいよねぇ」
「久しぶりに料理っぽいことした」
「っぽい、じゃなくて充分料理だよ、イチカ君」
「そうか。少し切り方バラバラだが、味は変わらない。美味い」
ね、美味しいねぇとエンデがほくほく顔で笑う。
「あとはトウモロコシとソーセージ」
「あ、あのぐるぐる巻いてあるのがいいな」
ぐるぐるに巻かれたソーセージが串に刺さっている物を網の上でじっくりと焼き、焼けたものからどんどん二人の胃袋へと消えていった。
「トリスもたまには腕を振るうといい。厳しく儂が採点してやる」
「え~、イチカ君が及第点なの作ってるし、ボクは面倒だからいいよ~。それよりほら、こっちのお肉も美味しいよ」
「む、舌の上で蕩ける」
「いいお肉だねぇ」
〆は肉巻きおにぎりだと真剣な顔で握った米にお肉を巻き付け、じっくりと焼いて。
「お米とお肉ってなんでこんなに合うんだろうねぇ」
「米と肉、最強」
満足するまで食べたら、次は花火だとエンデが花火を取り出した。
「食後の夜空と手持ち花火も良いよねぇ。粋ってやつじゃない?」
「やる」
大きめの蠟燭を石で囲い、火が消えぬようにして手持ち花火の薬筒の先をそっと近付け点火する。シュゥ、という音がしたと思えば薬筒の先から勢いよく火花が噴き出す。
「すすき花火、派手で面白い」
「気に入った~? 色が変わって面白いよね」
物によっては色が変わる瞬間に勢いを増すものもあって、あれもこれもと二人で花火に火を点ける。
「わ、これすごそう」
「どれだ? 手筒花火?」
普通の花火よりも太い筒に期待をして、点火すると――。
「あはは、すごいねぇ!」
「勢いがある」
今までの物とは比べ物にならないくらい、火花が大きく飛んで弧を描く。他にも変わった花火を楽しんで、粗方遊び尽くした後に残ったのは線香花火。
「ボク、線香花火の景色が割と好きかも」
「他のに比べたら大人しい。でもあれだ、わ、わびさび? がある」
「ワビサビ?」
こてんと首を傾げたエンデに、拙いながらも一叶が説明する。
「つまり、慎ましいものにこそ趣があると感じる……気持ち? かな」
「そう、そういうことだ!」
わびさび、とエンデが言葉を口の中で転がして、線香花火の火花に笑みを浮かべた。
「トリス」
「なぁに~?」
花火の火の始末をしながら、名を読んだ一叶にエンデが振り向く。
「……儂、楽しすぎて今日、眠れない気がしてきた」
その言葉に、エンデが小さく噴き出す。
「だからトリス、儂より先に直ぐ寝ないようにするといい」
「あは、眠くなければ他愛ない雑談するのもいいし……それかいっそ、眠れなくなるような話でもしようか?」
一叶の無茶振りとも言えるような言葉に、声を潜めてそう言った。
「なんだ? 眠れなくなる話……?」
「実はさっきから後ろに……」
「う、後ろに……?」
ごくりと喉を鳴らした一叶に、意味ありげにエンデが笑う。オチなんかないので笑って誤魔化そうという魂胆である。
「後ろに何なんだ、トリス」
おい、という声を笑顔で封じ込め、エンデはテントに入ろうかと笑うのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リュカ・エンキアンサス
◎
晴夜お兄さんf00145と
※味覚音痴&自覚無し料理下手
楽しく遊んだからお腹が空いた
バーベキュー?とにかく、焼けばいいんだろう
魚とか肉とか、いろいろ焼いて…(とてもよく火を通す
ねえ、お兄さんこのたれちょっと味薄くない?
唐辛子入れない?要らない?そう…
バーべなんちゃらにはお兄さんの方が詳しいだろうから、
言うとおりにするけど…
でも、アヒージョって何だろう
待って言わないで
今考える
そうだね…きっと蛸を炭になるまで焼いてイカスミを混ぜたものだと思うんだ
あとはそれをたれに混ぜて…
うん。我ながら独特な味がして美味しいと思う
お兄さんのたれにも混ぜておいたよ
え
発想が辛いくらい素晴らしいって?
それほどでも(ご機嫌
夏目・晴夜
◎
リュカさんf02586と
ええ、楽しい楽しいご飯の時間ですね
肉が焼けるまでリュカさんは大人しく待ってて下さっていいのですよ
寧ろ待ってて頂きたい、聞いてくれないでしょうけど!
ええ、カルビとかハラミとかタンとか
色々とバランス良く焼いていきましょう
このたれ全然味薄くない
唐辛子を入れるのはまた来世にしましょうね!(凄まじい量を全て没収
そうだ、器具もあるのでアヒージョも作りませんか
これなら多分すぐには焦げない(重要)
待って下さいね、レシピを検索しますので…
おっと、そうですか。自分で考えてみるのは大切ですよね!
はい、全然違うと思います!
…って、いつの間に作ったんですか!?
しかもたれに混ぜたんですかあ
つらい
●楽しく遊んだ後はバーベキューで!
夏の海遊びはいつの間にか時間が経っているもので、水鉄砲と水風船でバトルを繰り広げていた夏目・晴夜(不夜狼・f00145)とリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)も地平線の向こうに太陽が沈んでいくのを合図に平和協定を結び、グランピング施設へと戻ってきていた。
「楽しく遊んだらお腹が空いたね、お兄さん」
「楽しく……ええ、楽しかったですけど」
半ば殺し合いみたいな水遊びでしたけど、リュカさんが言うならそうかな? と、自身もかなり楽しんでいた晴夜がお腹空きましたね、と頷いた。
「自分で用意するのもキャンプの醍醐味ですが、用意されているというのも便利でいいものですね!」
お腹が空くまで遊んだ後にコンロを組み立てたりする必要がないというのは確かに楽だ、食材もたっぷり揃っている。
「キャンプと言えばやはりバーベキューですよ、リュカさん」
「バーベキュー? とにかく焼けばいいんだろう」
「焼けば……ええ、焼けばなんとかなるはなるんですけどね、ええ」
嫌な予感がして仕方がないが、楽しい楽しいご飯の時間に水を差す訳にもいかない。そしてリュカはとてもとても、やる気に満ち溢れていた。
「魚も肉もすぐ焼けるように準備されてる……味付けは」
「タレで! リュカさん! ほら! ここにタレが!!」
焼き肉のタレは大抵万能なので、滅多なことにはならない。そう信じて、晴夜がリュカに味付けはタレ、焼いた後に各自付けて食べるという手段を推す。
「タレ……確かタレ漬けして焼いたりもするよね」
「どうしてそういう事は知ってらっしゃるんですかね~~~? あれです、衛生面的なアレがソレしてコレですから!」
「……そう? お兄さんがそう言うなら」
取り合えず焼いていこうと、リュカがバーベキューコンロに肉をみっちりと並べ、次に魚を並べていく。
「リュカさんもお疲れでしょう! ささ、肉が焼けるまでこっちに座って大人しく待ってて下さっていいのですよ」
「そんなに疲れてないから大丈夫だよ、お兄さん」
「いえ、寧ろ待ってて頂きたい、聞いてくれないでしょうけど!」
「ところでお兄さん、このタレちょっと味薄くない?」
「うーん、もう聞いてない!」
リュカがタレの味見をし、プロの料理人みたいな顔でおもむろに唐辛子を手にする。
「唐辛子入れない? 丁度良くなると思うんだ」
「待ってください、このタレ全然味薄くないですから! 唐辛子を入れるのはまた来世にしましょうね!」
晴夜がすかさず唐辛子の大瓶を没収し、事なきを得る。
「お肉くらいは……美味しく食べたい……!」
晴夜、心の叫びであった。
「ほらリュカさん、カルビとかハラミとかタンとか、もう良い頃合いですよ! 気持ち焼き過ぎてる気がしますけど!」
「肉は当たると怖いからね、よく火を通さないと」
「正論!! 正論ですがそれは焼き過ぎでああ~~」
タンが焦げていく様を見つめ、晴夜がこのままではいけないとトングを掴み、リュカの皿と自分の皿に肉を盛っていく。
「もうちょっと焼いてもいいと思うけど」
「火力! 火力が強いので大丈夫です!」
ほら食べてください、と促すとリュカがいただきますとお肉に箸を伸ばした。
「やっぱりタレが薄いような」
「丁度いいですね! いやーこれぞタレの黄金比!」
必至である、勿論自分の皿だけにアレンジを加えるなら問題ないのだが、リュカはこっちの方が美味しいと純然たる親切心で晴夜の皿にも唐辛子を盛るだろう。それは避けたい、だってお肉は美味しく食べたい、晴夜が上等な肉を目の前にして本日二度目の心の叫びを洩らす。
「まあ……バーベなんちゃらにはお兄さんの方が詳しいだろうから、言うとおりにするけれど……」
「リュカさん……!!」
焦げた肉を齧りつつ、晴夜が感動したように瞳を潤ませる。
「ええ、肉と魚はこのハレルヤにお任せください!」
「でも何かしたいな……」
「うーん純然たる好奇心と親切心! そうだ、器具もあるのでアヒージョも作りませんか」
これなら多分すぐには焦げない、オイルで煮るのだから大丈夫のはず。
「アヒージョ……いいよ」
でもアヒージョって何だろうと、リュカが首を傾げる。
「待って下さいね、このハレルヤがレシピを検索しますので……」
「待って言わないで、今考える」
「おっと、そうですか。自分で考えてみるのは大切ですよね!」
この時、晴夜は考えるくらいなら問題ないかと思っていたので、スマホの検索画面から目を離さずに答えていた。
――そう、地獄の始まりである。
「そうだね……きっと蛸を炭になるまで焼いてイカスミを混ぜたものだと思うんだ」
コンロの上で|しっかりと火を通されていく《黒焦げになっていく》蛸を眺め、リュカが調味料の場所にあったイカスミを手に取る。何故イカスミが? と思わなくもないけれど、きっとイカスミパスタとか作る人がいるからに違いない。
「あとはそれをタレに混ぜて……」
蛸、いやこれはもう炭、というそれとイカスミを混ぜ、更にタレに混ぜ込む。
「はい、全然違うと思います! アヒージョとはオリーブオイルとニンニクで食材を煮込んだもので……って、いつの間に作ったんですか!?」
「うん。我ながら独特な味がして美味しいと思う」
さすが味覚音痴&自覚無し料理下手である、久しぶりにこのターンきたな……とリュカが遠い目をしている。
「あ、お兄さんのタレにも混ぜておいたよ」
「しかもタレに混ぜたんですかあ」
さよなら、私の美味しいお肉達。
「ほら、食べてみて」
「……はい」
味の想像が付かないタレを手に、一口。
「つらい」
「え? 発想が辛いくらい素晴らしいって?」
「そうですね、常人ではちょっと考え付かないと言いますか」
やらないと言いますか。
「それほどでも」
褒められた、とご機嫌になったリュカがこの後更に色々やらかすのだが、晴夜は肉に塩胡椒でなんとか乗り切ったり乗り切れなかったりするのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御園・桜花
「ダッチオーブンは使ってましたけど、グランピングもメスティンも知らなかったんですよね…勉強になります」
「ラグジュアリーってこう言う事を言うんですね…凄いな、ラグジュアリー」
周囲キョロキョロ
「飯盒炊飯でお粥になったり焦げ焦げになったりしたので、ダッチオーブンのパンに逃げちゃったんですけど。ソロキャンでお一人ご飯なら、兵式飯盒より断然使いやすいです」
メスティンでトマトリゾット
大小メスティンで湯煎して茶碗蒸し
トマトリゾットの残り具材ベーコン・コーン・ベビーホタテをスキレットでバター焼き
ダッチオーブンに爆裂種玉蜀黍とオリーブオイルと塩放り込み最後にカレー粉かけたカレー味ポップコーン
缶ビール開け夕飯開始
●ラグジュアリーごはん!
なるほど、と御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)がグランピング施設を目の前にして、新緑のような瞳を瞬かせる。
「ラグジュアリーってこういう事を言うんですね……凄いな、ラグジュアリー」
一般的に、豪華な、贅沢な、という意味を持つ英語であるが、確かにこれはその言葉に相応しいと桜花が頷く。
「素敵なテントにバーベキューコンロ、机や椅子も木製でしっかりとした造り……」
周囲をキョロキョロと見回しつつ、ダッチオーブンやメスティンを見つけて駆け寄った。
「わ、立派なダッチオーブン!」
ああ、これでお料理を作るのは楽しいんですよね、と笑みが浮かぶ。
「ダッチオーブンは使ってましたけど、グランピングもメスティンも知らなかったんですよね……勉強になります」
キャンプ用品などが一式揃っているのは手荷物が少なくて済むし、手軽に楽しみたい分には最適だ。
メスティンを手に取って、使い方の説明書と見比べながら、ふむふむと読み込んでいく。
「箱形の飯盒なのですね。でもお米を炊くだけじゃなく、茹でたり焼いたり煮たり……汎用性が高い点ではダッチオーブンにも似てますね」
ふむふむ、と使い方を頭に入れて、いざ実践!
「メスティンの使い方に慣れる為にも、まずはトマトリゾットを作りましょう」
お米を研いで、多めの水とコンソメに塩と十字に切り目を入れたトマト、それにベーコンなどの具材を入れて。
「大きなメスティンに小さいのをセットして、湯銭で茶碗蒸しと」
出汁は白だしの素で、具材は鶏肉に椎茸とシンプルに。
「トマトリゾットの残り具材でバター焼きも作ってしまいましょう」
ベーコンにコーン、ホタテをバターで焼けば、なんともお腹の空く香り!
「あとは……ダッチオーブンでの凝った料理は普段でも作りますから……少々ジャンクなものを」
爆裂種と呼ばれるトウモロコシを乾燥させた実をオリーブオイルと塩と共にダッチオーブンに放り込み、蓋をして火にかければ――。
「ふふ、いい音ですね」
ポンッ! パチン! と、ポップコーンが弾けるいい音が聞こえてくる。
「最後にカレー粉をまぶして……カレー味のポップコーンの出来上がりです!」
ふふ、これに缶ビールを合わせれば、最高のグランピングラグジュアリーご飯です! と、桜花のテンションもいつもより高めだ。
メスティンを火から下ろし、そのままテーブルへと並べる。
「どれも美味しそうですね」
ふふ、乾杯! と、缶ビールを暮れゆく空に向けて掲げ、桜花はラグジュアリーな時間を心行くまで楽しんだのであった。
大成功
🔵🔵🔵
太宰・寿
【ミモザ2】◎
キャンプは学校行事で経験あるけど
グランピングは初めて!
屋外でお泊りって新鮮だね
あのね、スモアが食べたいの
焼いたマシュマロをチョコとビスケットで挟むんだって!
知ってる?マシュマロは燃えるんだよ(真剣
動画で見たの、すぐ引火するよ
だからね火加減と距離を気をつけて…あっ
燃えるね、本当に
でもでもこれはこれで香ばしくて…苦い…
英上手…!
器用だなぁ、羨ましい
くれるの?ありがとう!
いただきますしてから食べるよ
…!おいひい!
すっごく甘い!塩味のビスケットで挟んでもきつと美味しいよ
もう一回焼いてみる、上手にできたら英にあげるね
うん、楽しいよ
もう少し遅くなったら、星も見れるね
今日は夜更かししようよ
花房・英
【ミモザ2】◎
キャンプもグランピングも初めて
下調べしてから行く
そうだな、と答えつつ緊張している
ずっと一緒に住んでるけど部屋別々だし
だけど能天気な笑顔を見て緊張するだけ無駄だなと悟る
いいよ
寿が好きそうなやつだな
フラグくさいなと思いながら
火、気をつけろよ
心配しつつ見守ってたら
本当に燃やしてるし
もはや消し炭だな…
ほら、お茶
クーラーボックスから冷えた紅茶を差し出して
貸して、俺が焼いてみる
多分、寿は火に近づけすぎなんだ
遠火でゆっくり串を回しながら焼く
ほら、こんなでいいんじゃない?
チョコとビスケットでマシュマロを挟んで差し出す
それなら良かった
もう燃やさないでよ
焦ても貰うけど
楽しい?
いいよ、偶にはね
●君とスイートスイーツグランピング!
わぁ、と声を上げた太宰・寿(パステルペインター・f18704)の隣で、花房・英(サイボーグのグールドライバー・f18794)もぱちりと目を瞬いた。
「すごい、おっきなテントだね!」
「テントっていうかドームだな」
壁となる部分は外から見えないように布張りだが、天井部分は透明でベッドに寝転がりながら夜空が見られるタイプのドーム型テントに寿のテンションはうなぎ登りだ。
「キャンプは学校行事で経験あるけど、グランピングは初めて!」
あらかじめ寝る場所は確保されているし、バーベキューの器具も使い放題、食材だって豊富となれば楽しくなってくるのも当然のこと。
「俺はキャンプもグランピングも初めてだな」
その分、しっかり下調べはしてきた英が楽しそうな寿の後ろをついて、あちこち見て確認していく。バーベキューコンロの火の熾し方や、メスティンやダッチオーブンの使い方も調べてきたからバッチリだ。
「屋外でお泊りって、なんだか新鮮だね」
「……そうだな」
改めてそう言われると、少し緊張してしまって英がぎこちなく頷く。幸い、寿はドームテントの中を探検するのに忙しく、英の様子には気が付いていない。
「ベッドも広々だし、空も見えるし、素敵だね!」
ベッド、と言われて見てみると思ったよりも並んだその距離は遠く、英はほっと胸を撫で下ろす。何せずっと一緒に住んではいるが、部屋は別々。同じ部屋に泊まることなんてないのだから、緊張するのも仕方ないはずなのだけれど――ふう、と息を吐いて英はその緊張を解いた。
能天気に笑ってベッドがすごいと笑顔ではしゃいでいる寿を見ていたら、緊張するだけ無駄だなと悟ったからだ。
「ね、英」
「何」
「私ね、スモアが食べたいの!」
ほら、色気より食い気だ。
「いいよ。どういう食べ物?」
「あのね、焼いたマシュマロをチョコとビスケットで挟むんだって!」
「寿が好きそうなやつだな」
一通りドームテントの探検を終えたところで、外に出てまずはバーベキューをしようと英が提案する。
「スモアはデザートにしよう、それで腹が膨れたら勿体ないだろ」
「それもそうだね、じゃあバーベキューしよ!」
火を熾し、用意されていた食材を網に並べて焼いて、小さめのダッチオーブンで簡単にソーセージとじゃがいもの蒸し煮を作る。ダッチオーブンの料理が出来上がるまでは焼いたお肉や野菜に舌鼓を打ち、寿が夕焼けに頬を赤く染めながら美味しいと喜んだ。
「こっちもそろそろいい頃だ」
「うん!」
危ないからと、熱々の出来立てを取り分けるのは英。渡された紙皿にはプリプリのソーセージとホクホクのじゃがいも。シンプルな塩胡椒の味付けがこれまた美味しくて、寿がおかわり! と皿を差し出す。
「あんまり食べるとスモアが食べられなくなるよ」
「大丈夫、甘い物は別腹だから!」
入る胃は同じだと思うけど、と思いつつ控え目にお代わりを盛って渡すと寿が満足そうな声を上げて笑った。
バーベキューが終わったら、今度は焚火の準備。火台に置かれた薪に火を点け、燃え上がるのを待つだけだ。
「知ってる? マシュマロは燃えるんだよ」
真剣な顔をして、マシュマロを串に刺す寿が言う。
「動画で見たの、すぐ引火するよ」
「……火、気をつけろよ」
それはフラグってやつじゃないか? と思いつつ、英が心配そうに寿を見守る。
「だからね、火加減と距離を気を付けて……あっ」
「……燃えたな」
本当に燃やすとは思わなかったな、と英が目を瞬かせつつ寿と燃えたマシュマロを見遣る。
「燃えるね、本当に。動画で見たのと同じだった……」
「もはや消し炭だな……」
真っ白だったマシュマロが茶色を通り越して黒い。
「でもでも、外はパリパリで中はふわふわかも!」
えいっと齧りついた寿が、何とも言えない顔をする。
「うん、これはこれで香ばしくて……苦い……」
「ほら、お茶」
すかさずクーラーボックスから取り出した冷えた紅茶を差し出すと、涙目になった寿がありがとうと受け取った。
「仕方ないな、貸して」
俺が焼いてみる、ともう一回焼こうと寿が串に刺したマシュマロを英が受け取る。
「多分、寿は火に近づけすぎなんだ」
見ていたところ火の中に突っ込むような位置だったからと、英が遠火でゆっくり串を回しながらマシュマロを焼いていく。ふんわりと膨らんで、薄っすらと茶色くなったマシュマロを見て引き上げる。
「ほら、こんなでいいんじゃない?」
「英、すっごく上手……! 器用だなぁ、羨ましい」
「焦らずゆっくり、遠火で焼けば寿もできるよ」
言いながら、チョコとビスケットでマシュマロを挟んで差し出した。
「わ、くれるの? ありがとう!」
スモアだ、と嬉しそうに受け取って、いただきますと寿が齧りつく。
「……! おいひい!」
「それなら良かった」
「あのね、すっごく甘い! これなら塩味のビスケットで挟んでもきっと美味しいよ」
すっかり食べきって、もう一回焼いてみると寿が串を持つ。
「もう燃やさないでよ」
「う、頑張るね! 上手にできたら英にあげるね」
「うん」
焦げても貰うけど、と思いながら英が頷く。寿が自分の為に頑張った物なら、なんだって。
「楽しい?」
「うん、楽しいよ!」
今度は上手に焼けたと、寿がスモアを英に渡しながら笑う。
二人でスモアを齧りながら、暮れていく空を見上げて。
「もう少し遅くなったら、星も見れるね」
「そうだな」
「そうしたら、今日は夜更かししようよ」
「いいよ、偶にはね」
今日は特別、二人っきりの夏休みだからと英が柔らかく寿に微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】◎
いやー、キャンプ飯美味しかったねぇ
外もすっかり暗くなったし、今から……花火大会をしようっ
持ってきた手持ち花火をじゃーんと見せる
ほら、早速行くよ~(梓をぐいぐいしてテントの外へ
ススキ花火、スパーク花火、線香花火、etc…
色々持ってきたんだー
最初は定番のススキ花火かな
見てみて梓、この花火どんどん色が変わっていくんだよ
高速で花火を動かして文字や絵を描いたり
その度に梓に見せびらかしたりして花火タイムを満喫
わぁ、焔自家製の花火だね
焔とダブル花火でキャッキャしていたら零も寄ってきて
ごめんごめん、零だけ仲間外れは良くないよね
その時俺は浮かれてて失念していた
零のブレスって水系だったなと…
乱獅子・梓
【不死蝶】◎
ああ、ダッチオーブンを使った料理も良いものだな
それじゃあ、あとは星を眺めながらゆっくり……
今から遊ぶのか!?
こいつの食欲と体力は底なしだな…
花火にはしゃぐ綾の姿はまるで小学生のようで
火傷しないように気を付けろよー、と
声をかける俺は完全にオトンのそれ
しかし、花火の匂いやパチパチとした音は案外心地いい
まさに夏の風物詩ってやつだな
綾ほどではないが俺ものんびりと花火を楽しむ
仔竜の焔が花火の横で小さめの炎のブレスを吐く
はは、お前も一緒に花火をしたいのか
それを見て零も「混ぜて」と言わんばかりに寄ってきて……
あっ(零のブレスで儚く消えた花火
その後、可哀想だが零は花火を見学させることにした
●バーベキューの後のお楽しみ
「いやー、キャンプ飯美味しかったねぇ……お腹いっぱいになったよ~」
ダッチオーブンを使った料理を思う存分楽しんで、ついでに串に刺した肉と野菜もバーベキューコンロで焼いてもらった灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、椅子に座ったまま暮れていく空を眺めて満足そうに声を出す。
「ああ、ダッチオーブンを使った料理も良いものだな」
使ったものや食器の片付けをしようとしたら、施設のスタッフが全てやってくれるというので空いた時間で暮れゆく空を眺めていた乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が大きく頷く。
「片付けるまでが料理だと思っちゃいるが、片付けしなくていいっていうのは楽だな……」
「ね~、ちょっと癖になりそうだよね」
キャンプで片付けまでするのも楽しいだろうけれど、グランピングで美味しいとこ取りというのもまた贅沢でいいと綾が笑った。
「それじゃあ、あとは星を眺めながらゆっくり……」
一番星でも探すかな、なんて言いかけた梓の言葉に被せるように、綾が口を開く。
「外もすっかり暗くなったし、今から……花火大会をしようっ」
「今から遊ぶのか!?」
「えー、だって花火は暗くなってからやるものでしょ」
ほら、と綾が持ってきた手持ち花火をじゃじゃ~ん! と見せる。
「お前……こういうのだけは準備いいな……」
「いいでしょ~、ほら早速行くよ~」
こいつの食欲と体力は底なしだな……と思いながら、腕をぐいぐいと引っ張られて仕方なく梓が立ち上がる。
「しっかし二人で花火大会も何もなくないか?」
「じゃあ、焔と零も呼ぼうよ」
大量の花火を並べながら、綾が名案と顔を上げた。
「まぁ……呼ぶのは構わないし、あいつらも喜ぶか」
可愛い仔竜と花火というのは間違いなく癒しだと、梓が二匹の仔竜を喚び出した。
「ほら、これがススキ花火で、こっちがスパーク花火、あとは線香花火に手筒花火でしょ、それからネズミ花火と~打ち上げ花火もあるよ」
「えらく買い込んできたな」
「だって、どれも楽しそうだったから」
「小学生か」
「小学生はこんなに買い込めないでしょ~」
大人の財力を持った小学生だな? なんて思っていると、綾が花火用の蝋燭を火が消えないように空き缶へと入れたので、大人の知恵もあるな……と半ば本人に失礼な事を考え始める。
「梓~~いくよ~~! 最初は定番のススキ花火だからねー」
「あ、ああ、火傷しないように気を付けろよー」
「はーい」
いやこれ完全に小学生男子とそのオトンの会話じゃないか?? と思いはすれど、薬筒の先から花火が噴き出せばその美しさに笑みが浮かぶ。
「見てみて梓、この花火どんどん色が変わっていくんだよ」
「綺麗なもんだな」
花火の少し煙たい匂いや、パチパチと弾けるような音は案外心地いいと梓も花火に手を伸ばす。
「ほら、焔と零も見てみて」
名を呼ばれた二匹がキュ、と鳴いて綾の方へと飛んでいく。
「梓も見ててよ~」
「はいはい」
花火を手にした綾が焔と零に火花が行かぬようにしながら、高速で花火を動かして文字や絵を描いていく。
「今ね、焔と零って書いたんだよ」
「残光がそれっぽかったな」
自分達の名前が上がったからか、二匹も嬉しそうに飛び回っている。その光景に笑いながら、梓も手にした花火に火を点けた。
「まさに夏の風物詩ってやつだな」
「でしょう? ほら~、持ってきた俺は偉かった」
褒めて、と言わんばかりの声に、偉い偉いと答えて手にした花火を梓が楽しむ。そんな梓と綾の姿に感化されたのか、焔が花火の横で小さめの炎を吐いた。
「はは、お前も一緒に花火をしたいのか?」
「わぁ、焔自家製の花火だね」
二人の間で更に火花を散らすようにブレスを吐けば、花火に負けないくらいの美しい軌跡を描いた。
それを見ていた零が、ガウ! と寄ってきて自分も混ぜて! と言わんばかりに二人を見上げる。
「ごめんごめん、零だけ仲間外れは良くないよね、零もブレスで――」
ブレス、と言われて零が息を吸い込んで、放つ。
「あっ」
「ありゃ」
『キュ!』
零の操る氷のブレスで、花火の炎が儚く消えていく。
「あ、あ~……零のブレスって水系だったね……」
「まぁ、当然の結果というか」
『ガウ……』
しょぼんとした零を励ますように、慌てて梓が言い繕う。
「いや、大丈夫だ零! お前のブレスで遊び終わった花火を消火できる!」
『ガウ?』
「うんうん、花火の不始末は怖いからね」
だから、零のブレスは最後に取っておこうと宥め、梓が零を頭の上に乗せて引き続き花火を楽しむ事にした。
「これなら零も一緒に花火をしてる気分になるだろう?」
『ガウ!』
『キュー!』
「仲良し親子みたいだね~」
そんな言葉に満更でもなさそうに梓が笑い、最後のひとつまで二人と二匹で花火を楽しんだのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
※今年の水着着用
深山さん、ご一緒しーましょ
僕バーベキューしたいんだ!
料理は得意分野…なんだけど
バーベキューって普通の料理とはなんか違う気がして
栄養バランスとか、美味しい味付けとか…関係無くって
誰かと食べるからこその美味しさというか?
初めての交流には丁度いいと思うんだよね
だから僕、今日は深山さんの好み知りたいな
好きな食材とか、嫌いな食材とか
焼き加減の好みとか…代わりに僕のも教えるから
深山さんとは、依頼の案内人としてじゃなく、守り守られの立場でもなく
ちゃんとお話しするのは初めてだから
※なお、澪は食の好き嫌いは無し
特別甘味が好きという程度
嫌いなものは加工されてない牛乳
しっかり火が通ってるのが好きです
●ウェルカムバーベキュー!
後は焼くだけ、という状態になったバーベキューコンロを眺め、ウェディングドレスのような真っ白で可憐な水着を着た栗花落・澪(泡沫の花・f03165)がうん、と大きく頷く。
「よしっ」
気合を入れて、辺りを見回す。そして見つけた彼、深山鴇に向かって大きく手を振った。
「深山さん、ご一緒しーましょ!」
「うん? 俺かい?」
名を呼ばれ、鴇が澪の方へと歩み寄る。
「うん、僕バーベキューしたいんだ!」
「俺でよければご一緒するよ」
「やった、ありがとう! 僕、料理は得意分野……なんだけど」
澪が紡ぐ言葉に頷き、その先を促す。
「バーベキューって普通の料理とはなんか違う気がして」
「違う?」
「うん、お料理って栄養バランスとか美味しい味付けとかを考えるものだと思うんだけど……そういうのが関係無くって、誰かと楽しく食べるからこその美味しさというか?」
伝わるかな? と、澪が鴇を見上げる。
「言いたいことは分かるよ。誰かと一緒に食べる飯は美味いからね」
「そう! だからね、初めての交流には丁度いいと思うんだよね」
「なるほど、一理あるな」
ふは、と笑って、それなら一緒にバーベキューをしようかと鴇がコンロへと近付いた。
「うん! あのね、だから僕、今日は深山さんの好みを知りたいな」
だって、依頼の案内人としてじゃなく、守り守られの立場でもなく――ちゃんと話をするのは初めてだからと澪がはにかんだように微笑む。
「ああ、勿論いいとも」
「やった! あ、代わりに僕のも教えるからね」
ふふ、と笑い合って、互いに好きな食材や苦手な食材を話し合う。
「俺は何でも食べるけど、食材で言えば肉が好きだよ。レアもミディアムも平気かな」
「お肉! 男の人はお肉好きな人が多いよね。僕も好きだけど、しっかり火が通ってるのが好きです」
「苦手……はこれといって無いかな」
「僕はね、加工されてない牛乳がダメだよ」
「チーズとか生クリームは大丈夫ってことかい?」
問い掛けに澪が頷き、なるほどと鴇が笑う。
「それじゃあ、バーベキューの肉はしっかり焼かないとね」
「うん!」
そこからは二人で用意された食材を網の上で焼き、塩胡椒やタレで食べ進めていく。
「あ、僕タレは甘口が良いです!」
「甘いのが好き?」
「甘味は別腹かな」
「俺も甘い物は好きだよ」
意外かな? と鴇が言うと、澪がふるふると首を横に振った。
「甘い物が好きな男性って多いよ! 僕もだしね!」
それもそうかと鴇が頷き、デザートはスイーツピザでも焼こうかと笑った。
「スイーツピザ……! チョコレートも掛けたいな」
「マシュマロも載せてね」
すっかり意気投合して、スイーツピザを二人で作って齧りつく。
「美味しい!」
「温かいスイーツも中々」
パチリと火の粉が舞って、暮れゆく空には一番星とお月様。
食べ終わるまでの間、二人で沢山の話を楽しんだのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)●淡いグリーンの水着。
「やあやあ、墨ねー…勝負だじぇ!」
ビーチバレー用のボールを小脇に名乗り上げるじょ。
一対一で遊ぼーって宣言なんだけど受けてくれるかな?
僕達以外にもバレーする人達がいるかもしれないねぃ~。
だから場所は考えるじぇ。二人ですることになるだろーし♪
「そこっ!」「てや♪」「…見えるじぇ!!」
僕の全機動力とあらゆる脚技を駆使して墨ねーを攻めるッ!
え?脚は反則?ふっ…。これは遊びだから関係ないねっ♪
砂に足を取られちゃって苦労するけど面白いねぃ。これ。
足腰に効くから脚技の訓練にすごくいいかもしれないよ!
墨ねーもいい動きするねぃ。流石剣の達人だねぃ~。
「少しでも気を抜いたら、点取られちゃうじぇ…」
これが終わったらバーベキューでご飯だじぇ!
それまではちゃんと動いてお腹減らしておかないとッ♪
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
突然ですがロベルタさんが勝負を挑んできました。
びーちばれーというのをやりたいそうで。
ルールがよくわからないのですが大丈夫でしょうか?
しながら覚えればなんとかなりますかね?
「…えと。わ、判…ま…た…」
勝負する場所はロベルタさんにお任せします。
「…ッ!」「ッ!?」「…ま…で…す…!」
ロベルタさんの足腰の安定度は流石ですね。
不安定な姿勢からでも苦もせず打ち返してきます。
体幹がしっかりしているからこその可能な技。
動体視力も並外れいましたっけ。ロベルタさん。
こういう方と組んで戦っているのですね私は。
改めて。改めて凄い方です。ロベルタさんは。
しかし私も負けてはいられませんね。これは!
●ビーチバレーで勝負!
海辺のグランピング施設を前にして、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は淡いグリーン色をした水着のスカート部分を翻し、ご機嫌で歩いていた。
「キャンプっていうと山を想像してたけど、海でキャンプもいいものなんだじぇ!」
何より手ぶらというのがいい、面倒な準備はなしで着替えと水着、それから財布とスマホくらいで何とかなるというのが売りの一つだというのだから、施設がどれだけ豪華かは推して知るべしである。
「バーベキューも楽しみなんだじぇ♪」
これが楽しみでやって来たと言っても過言ではない、なのでロベルタは全力でバーベキューを楽しむ為――施設のレンタルコーナーからビーチバレー用のボールをひとつ取り、小脇に抱えてビーチに向けて走り出した。
燦々と照り付ける太陽の下、海はキラキラと輝いて美しく浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)はビーチパラソルの下でデッキチェアに座りながら、フルーツジュースをちびちびと飲んでいた。
「|……と……おい……し……《とっても美味しい》」
フルーティで甘くて喉越しが良くて、ロベルタさんにも飲ませてあげたいと墨が笑みを浮かべる。
「|……そ……ロ……さ……は……?《そういえば、ロベルタさんは?》」
一緒に来たはずだけれど、ドーム型のテントで水着に着替えて外に出て……その後、不意にいなくなってしまったのだ。恐らく興味を引いたものを眺めたり見に行ったりしているのだろう、そしてそれは正しい予想である。とは言え、墨はロベルタの実力を知っているので、単独行動をしていても大丈夫だと信用している。
「|……海……行……知……はず……《海に行くと知っているはずですし》」
多分、遅れてやってくるだろうと考え、美味しいジュースを味わう為にストローを咥え――。
「やあやあ、墨ねー!」
「ッ、ン、ロ……さ……!」
軽く咽ながら墨が顔を上げ、噂をすればなんとやらで現れたロベルタを見上げた。
「勝負だじぇ!」
小脇に抱えたビーチバレーボールを両手に持ち替え、高らかに掲げる。
「こほっ、……さ……何……勝負……で……?」
「ビーチバレーで勝負だじぇ、墨ねー!」
びーちばれー、と口の中で単語を転がして、墨がボール遊びでしょうかと首を傾げる。突然挑まれた勝負の内容がよくわからないのだ。
「ん-、あんな感じだじぇ!」
あんな感じとロベルタが指さす先、砂浜の上で楽しそうにボールを打ち合いしている人々が見えた。
「……えと、球遊……で……ね?」
「簡単に言えばそんな感じ、ルールはあるけどねぃ♪」
ルール、決まり事ですねと墨が頷く。
「どうかな?」
要は一対一で遊ぼうという誘い、それならば墨に否はない。
「……はい……や……ま……しょう……♪」
「やった! それじゃ~……あ、あっちの砂浜のとこでやろー!」
丁度ネットの張られた場所が空いているのを見つけ、ロベルタが駆け出す。大人数用ではなく、少人数用のサイズなのも丁度いい。
待って、という暇もなく駆け出したロベルタを追うべく墨がデッキチェアから立ち上がり、ビキニ姿で惜しげもなくロベルタを追い掛けた。
ルールが判らないという墨に、ロベルタが簡単に説明していく。
「九点先取した方が、そのセットの勝者だじぇ! 一対一だから、難しい事は無しで、コートのラインを越えたらアウト! くらいなら墨ねーも判る?」
「……えと。わ、判……ま……た……」
あとはもう百聞は一見に如かず、習うより慣れろである。
「墨ねー、準備はおっけー?」
「……は……大丈夫……す……」
「いっくじぇー♪」
いざ、ネットを挟んで相対すると、ロベルタが手本だと軽いサーブを打つ。それを難なくレシーブで返し、暫くの間軽いラリーを続けて墨が慣れた所でロベルタが仕掛けた。
「てや♪」
「ッ!?」
足場が砂地とは思えぬほど安定した足腰から繰り出すサーブはラインギリギリを狙っている、それに即座に反応して墨が腕を伸ばすが打ち返した球は高く上がってロベルタがネットギリギリから真下目掛けて打ち返し、まずはロベルタに一点が入った。
「やったじぇ♪」
「……さす……ロベルタ……ん……!」
「ふっふっふ、遊びはここまでだじぇ! ここから僕の全機動力とあらゆる脚技を駆使して墨ねーを攻めるッ!」
「……脚? 反……では……?」
「え? 脚は反則?」
そう言われてみれば、そうではあるが。
「ふっ……」
唇の端を持ち上げ、ロベルタがニヒルに笑う。
「これは遊びだから関係ないねっ♪」
「……では……本……やり……す……!」
遊びも全力で、と墨が体勢を整えるとロベルタもボールを構え――いざ、尋常に勝負!
そこからはいつの間にか軽いギャラリーができるほど、二人の打ち合いは白熱していく。
「砂に足を取られちゃって苦労するけど面白いねぃ。これ!」
こくりと頷き返した墨がラインぎりぎりのボールを上手く打ち上げ、鋭いスパイクを決めた。
「おわっ、と、ととっ!」
砂を蹴って取りに行くが、惜しい所でロベルタがボールを落とす。
「く~、墨ねーもいい動きするねぃ。流石剣の達人だねぃ~」
ロベルタに褒められ、謙遜するように墨が首を横に振る。墨からすれば、不安定な姿勢からでも苦も無く打ち返してくるロベルタの方が体幹もしっかりしていて、予想外の動きをするだけに球の動きが読みにくい。
動体視力も並外れて優れていて、改めて自分は凄い方と組んで戦っているのだと、墨が言い知れぬ高揚感の中でサーブを打った。
「さっきよりキレがいいんだじぇ、少しでも気を抜いたら、点取られちゃうじぇ……っ!」
コートの端から端まで駆け回るように動き、墨の先読みをずらすかのようにロベルタが動く。
「そこっ!」
「……ッ!」
けれど墨とて刀を持つ者、第六感ともいうべき感覚でロベルタの猛攻を防いだ。
ロベルタさんはすごい、私も負けてはいられませんね、これは! と、渾身のスパイクを打ち放つ。
「……見えるじぇ!!」
カッと目を見開いたロベルタが脚でボールを高く上げ、そのまま片足で跳んで空中で身体をひねり、後ろ回し蹴りを球と共に墨のコートへ叩きこむ!
「……流石……で……す……!」
墨の頬スレスレを掠めるように球が砂地へと吸い込まれ、墨が思わず拍手をしてしまう。
「へへ♪ 勝負あった、だじぇ!」
九点を先取したロベルタがVサインを決め、墨へと駆け寄った。
「すーっごく楽しかったんだじぇ、墨ねー!」
はい、私もと墨がこくこくと頷く。
「それでね、墨ねー」
「……?」
「僕、お腹が空いたんだじぇ!」
ペコペコだから、バーベキューをしよう! とロベルタが屈託のない笑みを浮かべて墨を誘う。
「……はい……お……空……ね……」
バーベキューしましょう、と墨も口元を柔らかく緩めて大きく頷いた。
真剣勝負の後は、美味しい食事でお腹を満たす――なんとも健康的な二人なのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
結・縁貴
※鴇帅哥を呼び出し
你好、鴇帅哥!今回は呼び出しても好いと聞いて!
夕餉は食べた?まだ腹に空きがあるなら付き合ってよ
俺一人で食事も味気ないしねェ
熟練の主婦曰く、
(※騶虞は仮宿の近くの市場やサクミラで顔役の女将達に全力で媚びて御縁を築いてる)
素人料理は煮込みが好いらしい
(よく煮込まれたビーフシチューを出す)
固形ルーって技術は素晴らしいな、文明の賜物である…
後は肉や野菜を焼いていこうか、そういう場所なんだろう?
食材の質が高いのは好いね、じっくり焼いて塩振るだけでも様になる
酒もあるよ
俺は飲めないけれど、どうぞ鴇帅哥は楽しんで
食後には、俺の故郷だと水菓子と言ったら果物でね
飾り切りは得意な方なんだ。披露させて頂いても?
…さて、言質を取るには気分が好い時の方が捗るよね!
先日、いつもの面々とデビルキングワールドに行ったんだ
でもいつもの面々とだったから…鴇帅哥がいないのが寂しくてね…
今度写真だけでも御一緒してくれない?
皆で揃いの服を着てさ!
(包装された包みを差し出す。中身はドレスに似合うネックレスである)
●縁は異なもの結ぶもの
「你好、鴇帅哥!」
そう後ろから聞き覚えのある声がして、深山鴇は足を止めて振り向いた。
「縁君か」
名を呼ばれ、にっこりと笑った結・縁貴(翠縁・f33070)が淡い翠緑の髪を揺らして立ち止まった鴇に近寄る。
「折角の夏休み、鴇帅哥も楽しんでる?」
「ああ、縁君もかい?」
「それなりにね! ところで鴇帅哥、夕餉は食べた? まだ腹に空きがあるなら付き合ってよ」
バーベキュー? って言うんだろう? と、縁貴が炭火を熾したバーベキューコンロを指さした。
「俺一人で食事も味気ないしねェ」
海辺を散歩したり、グランピング施設をあちこち見て歩くのは一人でも楽しめたけれど、食事……しかもバーベキューというその場で焼いて食べていくスタイルとなると、一人では少々つまらない。
「俺でよければ、勿論」
「太好了! よし、善は急げだよ鴇帅哥」
既に仕込みは出来ているのだと、縁貴が鴇を呼ぶ。
ご相伴に預かろうとコンロに寄ると、ダッチオーブンが熱せられているのが見えた。
「鴇帅哥、熟練の主婦曰く」
「熟練の主婦」
君も綺麗に世俗に染まってきたなぁ、という言葉は飲み込んで縁貴の言葉の続きを促す。
「素人料理は煮込みが好いらしい」
「何処からそんな、いや熟練の主婦からだろうが……」
「こう見えて、サクラミラージュで顔役の女将達と御縁があってね」
「ほう」
実際は立場の強そうな女性に全力で媚びを売っていたら、いつの間にか可愛がられて御縁を築いていたという話なのだが、そこは割愛する。
「確かに、煮込み料理は楽だし早々失敗するものでもないね」
「だろう?」
はい、と皿に盛ったビーフシチューを差し出して、縁貴が笑う。
野菜と肉がごろりと入った、とろりとしたビーフシチューは食欲をそそる香りをしていて、鴇がありがたく受け取った。
「鴇帅哥は自炊する派?」
「そうだね、ある程度は出来るようになったよ」
「俺もねェ、ちょっとやってみるようになって固形ルーって技術は素晴らしいなって思ったよ」
文明と企業努力の賜物である……としみじみ言って、スプーンを渡して縁貴が笑う。
「知ってるかい、他社のルー同士で混ぜると味に深みが出るそうだよ。好みはあるだろうけどね」
「|真的吗?《本当に》今度やってみるかな……」
固形ルー、奥が深いな……と唸りつつ、いただきますとビーフシチューを口にする。
「ん、美味いな」
「ここの施設、いい肉を仕入れてるよね」
ルーが美味しいのはもとより、良い肉を使って作る料理はそれだけで美味いもの。満足のいく味わいに縁貴が笑みを浮かべ、後は肉や野菜を焼いていこうと皿を置いた。
「そういう場所なんだろう?」
「そうだね、自由に食べたい物を網に載せて焼いて食べるって感じかな」
元々は薪や炭火などの弱火でじっくりと食材を焼く料理の名ではあるが、今は屋外で火を熾し網の上で焼いて食べる行為の総称になっている気がするな、と鴇が頷く。
「じっくり焼いて塩振るだけで様になる、いい料理だねェ」
更に食材の質が高いのも好い、適当にやったって美味い。
「鴇帅哥、酒もあるよ」
「でも、縁君飲めないだろう?」
「俺は飲めないけれど、鴇帅哥さえ良ければ楽しんで」
こういう場では酒を飲むものだと聞いたと、縁貴が炙っただけで食べられる肉を口に放り込む。
「|这很美味!《これ美味しいね》」
「リブロースだね、いやほんとに高級焼き肉店並みだな」
これはご厚意に甘えてビールを一缶いただくとしよう、と鴇がビールを開けた。
暫くの間あれやこれやと楽しんで、お腹も程良く膨らんだ頃合いで縁貴がデザートは如何? と問い掛けた。
「俺の故郷だと水菓子と言ったら果物でね」
今が旬の果物を前にして、縁貴が鴇を見遣る。
「飾り切りは得意な方なんだ、披露させて頂いても?」
勿論と頷いた鴇に笑って、カービングナイフを持って器用にパイナップルを鳥のように仕立てたり、マンゴーを花のように盛り付けて、あっという間に華やかなデザートを作り上げた。
「さあさあ、召し上がれ!」
「こいつは見事だな」
縁貴の意外な特技に目を瞬かせ、鴇が果物に手を付ける。
「|最喜欢的?《気に入った》 気に入ってくれたなら何よりだよ」
気に入ったと頷いた鴇に縁貴がにんまりと微笑んで、言質を取るには気分が好い時の方が捗るよね! と話し出す。
「待ってくれ、言質って言ったかい??」
言ったね? という問いを完全に聞かぬ振りで、縁貴が話を続ける。
「先日、いつもの面々とデビルキングワールドに行ったんだ」
「ああ、俺が忙しかった時の」
「そう、鴇帅哥は来られなかっただろう? でも、いつもの面々とだったから……鴇帅哥がいないのが寂しくてね……」
しおらしい風情で話す姿は、そこらの人間であればコロッといくだろう。
「だからさ、今度写真だけでも御一緒してくれない?」
「……まぁ、写真くらいなら」
「いい? よし、男に二言はないよね鴇帅哥」
にまぁ、と笑った縁貴がいそいそと綺麗に包装された包みを差し出す。
「これも付けてさ、皆で揃いの服を着てね!」
これ、と言われた包みを嫌な予感を感じながら開けてみれば、どう見ても先日押入れに仕舞いこんだドレスに似合うようなネックレス。
「……ちなみに、揃いの服とは」
「そりゃあ勿論、鴇帅哥に似合う赤いドレスだよ!」
カラカラと笑った縁貴はそれはそれは良い顔をしていたと、後にドレスを着た彼は言ったとか――。
大成功
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