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はじまりは千葉県 〜 第二章

#試練の洞窟 -the Cave of Ordeal-

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#試練の洞窟 -the Cave of Ordeal-


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●現代神秘世界 - アジア - 日本 - 千葉県 - 小規模な「試練の洞窟」 - エントランスエリア
「皆さん、エントランスエリアの制圧、お疲れさまでした」
 代表して討魔組の長である如月・アンジェ(退魔師)が一行の前で頭を下げる。
「これから、この地点にこの「洞窟」を攻略する足がかりとなり簡易拠点を設営します」
 「試練の洞窟」はその地の標準時での0時にその姿を変える。
 しかし、これまでの調査で、その洞窟内に人がいる状態ではその変化が起こらない事が明らかになっている。
「なので、簡易拠点を設けることで、探索が格段に楽になります」
 そうでなければ毎日マッピングを一からやり直す羽目になり、冗談ではない。
 もちろんそれ以外にも、簡易拠点があることで、「試練の洞窟」を探索した後の休憩を簡易拠点で行い、再び「試練の洞窟」を探索する、という風に、探索を「試練の洞窟」の中だけで完結させられるメリットもある。
「私達が簡易拠点を用意している間にも、皆さんには「試練の洞窟」の探索を始めていただきたいのです」
 集まっている一行としても、簡易拠点を作っている間、暇しているわけにはいかない。殆どのメンバーは戦闘員だから簡易拠点の作成を手伝わせるのも申し訳ない。
 そんなわけで、簡易拠点を準備している間、碧とアンジェ抜きで「試練の洞窟」の探索を開始することになるようだ。
「皆さんにやってほしいことは……」
「たいへんたいへーん」
 と、そこに、エントランスエリアでの戦闘中に先んじて先行していた要員が戻ってくる。
「な、なんか気持ち悪いクリーチャーがいっぱいいて、しかも、宝箱の中身を開けて回収したりしてるの!」
 碧とアンジェを含む一行が反応する。宝箱とはつまり、「試練の探求者」の面々からすると探索するモチベーションになりうるものだ。それを回収しているクリーチャーがいる、だと?
「どんな見た目でした? 戦闘能力は?」
「写真撮ってきたよ」
 と、差し出されたスマートフォンに映るクリーチャーは、碧やアンジェには見覚えのあるものだった。
「レプリ・ショゴス……!」
 それは玉虫色の粘液で構成された生物で、無数の目玉を持ったクリーチャーだった。
「安曇がこの地にいるということでしょうか?」
「分かりません、ですが、対処が必要なようですね」
 安曇。それは、自らの発見した魔導書「螺湮城本伝」を用いて邪神の復活を目論む悪しき邪本使い(マギウス)の名だ。
 2016年に一度アンジェ達に敗れ、魔術を封じられ逮捕されたのだが、その後紆余曲折の末に、脱獄しており、2019年の即位礼正殿の儀の裏で発生した大規模な戦いでも、二体の邪神の復活を目論んで暗躍していたことは、多くの討魔師にとって記憶に新しい。
 そんな安曇が普段遣いする使い魔、それがレプリ・ショゴスだった。
 もちろん、安曇とは異なる魔術師が何らかの方法で同様の使い魔を使役している可能性は否めないが、目下逃亡中の安曇が何かしらの目的で「試練の洞窟」に関与し始めている、という可能性は想像に難くなかった。
「どうやら、探索を急ぐ理由が増えたようです。レプリ・ショゴスを排除しつつ、探索を開始してください」
 過去の交戦記録によると、レプリ・ショゴスは仲間同士で合体して巨大化したり、鋭い触手で攻撃してきたり、粘膜を撒き散らして魔力を吸収してきたりするらしい。
「特に魔力吸収にはご注意を。魔力とは生きるための活力、精気でもあります。魔術を使わないからと油断しないように」
 碧が念の為、と補足を入れる。「試練の探求者」の中には神秘に明るくない面々もいる。念の為、注意は必要だった。
「それでは、探索を始めてください」


メリーさんのアモル
 こんばんは、『試練の洞窟-The Cave of Ordeal-』へようこそ。
 マスターを努めます、メリーさんのアモルです。
 第一章から引き続き見ていらっしゃる方は、ありがとうございます。今回もよろしければ参加ご検討ください。

 早速ですが、今回の敵、レプリ・ショゴスの情報は下記リンクから確認できます。

●レプリ・ショゴス
https://www.anotherworlds06.com/coo/creature_nearreal.html#replishoggoth

 今回の目的は「レプリ・ショゴスを排除しつつ、「試練の洞窟」を探索すること」です。その比重は皆様におまかせしますが、レプリ・ショゴスは「洞窟」中におり、無視して探索する事は難しいです。

 それでは、「試練の洞窟」の探索、はじめていきましょう!
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

天見・瑠衣


「探索と撃退……うーん 瑠衣は宝箱が気になるけど……」
「でも情報通りの攻撃なら瑠衣でも対処でるかも……」
一撃を貰うとさらに執拗になるのなら食らわなければいい

「よし 宝箱は取るし皆が探索しやすいように敵も全部引き付けてみる!」


数時間後――――――

「無理無理無理気持ち悪いよぉぉ!!!」
大量のショゴスに追われつつ泣き喚き爆走する瑠衣
「あっ宝箱……よし死なない!」
その間でも中身をろくに確認せず持てるだけの品を掴み取っていく
「触手プレイも粘液まみれもやーなーのー! 誰か助けてー!?」
瑠衣が走る先にあるモノは猟兵か拠点か はたまた絶望か

揶揄の軽撃(SPD)で挑戦
さらに【挑発】を乗せ 攻撃は【残像】で凌ぐ
【継戦能力】【サバイバル】で走り続け
【破魔】【属性攻撃】でなんとか少しずつ数を減らすけど基本的に敵の引き付けに徹します



「探索と撃退……うーん 瑠衣は宝箱が気になるけど……」
 最初に探索に出たのは瞳に涙を湛える時、その視界に未来を映し出す能力を持つ討魔師、天見・瑠衣(泣き虫の刀使い・f37969)だ。
 臆病で戦闘に消極的な彼女はレプリ・ショゴスと戦うより、探索を優先したいと考えていた。
 まして宝箱とやらがあるのである。中に何が入っているか、興味は尽きないというものだ。
「テケリ・リ、テケリ・リ」
 しかし、レプリ・ショゴスは本当にすごい数が洞窟内に存在しており、そう簡単には交戦を回避することを許してはくれない。
 そこで、ふと瑠衣は思う。
「でも情報通りの攻撃なら瑠衣でも対処でるかも……」
 レプリ・ショゴスの主攻撃である触手による刺突は強力で、一度命中すると、より執拗に狙ってくる厄介な代物だ。
 だが、あらゆる未来を予知出来る瑠衣なら……?
 瑠衣の能力は遠い未来を見ようとすればするほど多くの涙を要し、その結果、視界が滲み、より数多の未来が映るため、使い物にならなくなるが、短期的な未来予知に限れば、極めて高精度に未来を見ることが出来る。
 目に涙を浮かべながら戦う羽目になるのは御免だが、この相手は極めて自分と相性が良い敵なのではないか。瑠衣はそう思ったのだ。
「よし 宝箱は取るし皆が探索しやすいように敵も全部引き付けてみる!」
 臆病だが思いっきりが良いのは瑠衣の良いところだ。
 瑠衣はすぐに呪符の一つを取り出し、目に涙を湛えながら、手近なレプリ・ショゴスにぶつける。
 その呪符はレプリ・ショゴスを倒すような代物ではないが、レプリ・ショゴスに「攻撃者を一撃で倒したい」という激しい衝動を付与する。
「テケリ・リ、テケリ・リ」
 呪符を食らったレプリ・ショゴスはすぐさま、|攻撃者《瑠衣》の方に向き直り――といっても、全方位に目があるのでどっちが正面かはよく分からないのだが――、瑠衣に向けて鋭い刺突を飛ばす。
「ひいっ」
 瑠衣の涙を湛えた視界に、レプリ・ショゴスに心臓を一突きされる恐ろしい光景が映る。
 その光景が現実とならないため、瑠衣は残像を残してその場から回避する。
 
 そして、数時間が過ぎた。
「無理無理無理気持ち悪いよぉぉ!!!」
 その場には、オンラインゲームで|モンスタープレイヤーキル《MPK》を狙うプレイヤーでさえここまでモンスタートレインはしないであろう、というほどのレプリ・ショゴスを連れた瑠衣の姿があった。
 自身の強みが予知だけであることを理解している瑠衣は基礎トレーニングを欠かせずこなしており、継戦能力と生き残り能力に長けており、数時間走り続けることを可能としていた。訓練の賜である。
 涙を浮かべた瑠衣の視界には、レプリ・ショゴスに突き刺され、粘液をぶっかけられ、触手に拘束され、そんなありとあらゆる攻撃を食らう自身の光景が浮かび上がる。
「あっ宝箱……」
 そんな状況でも、宝箱への関心が尽きないのは大したものだ。
 瑠衣は自身が宝箱を開ける光景を涙の向こうに見て、自身が死なないのを確認する。
「よし死なない!」
 未来予知が出来る瑠衣にとって、宝箱の罠を見抜く程度はお茶の子さいさいであった。勿論、罠アリ宝箱の前に立つたび、その罠で自身が死ぬ光景を見る羽目にはなるのであるが。
「触手プレイも粘液まみれもやーなーのー! 誰か助けてー!?」
 散発的に破魔の呪符で反撃を試みるが、焼け石に見ず。
 かといって、このまま拠点にこの数のレプリ・ショゴスを連れて行くわけにも行かない。
 瑠衣の前に助けは来るのだろうか。
 瑠衣によって『多くのレプリ・ショゴスが一地点に集まっている』。回避するにせよ、攻撃するにせよ、他の「試練の探求者」達にとっても有益な状況であるには違いない。

成功 🔵​🔵​🔴​

禁史・木実

本人か否か、いずれにせよ一筋縄ではいかない仕事になりそうだ

紙とペンを用意します。闇に紛れることを意識しつつ、マッピングしながら探索しましょう。発見されるのは遅い方が良いですから
分かれ道等にマーキングして、宝箱は取得品をメモします
数箇所で土や石、壁や天井の欠片といった|素材《サンプル》採取です
「クリーチャーはマナに還る。では自然物はどうでしょう。宝は持ち帰れるようですが」
……そろそろショゴスも減らしますか
出来る限りコッソリと移動します。敵が集まってたり合体しているなら好都合です
マッシュルーム・ボムで爆破し、腐食胞子で道を阻み、削り倒します
「予備はありますが……触媒が尽きる前に終わりますかね?」



「本人か否か、いずれにせよ一筋縄ではいかない仕事になりそうだ」
 レプリ・ショゴスの登場を前に、そんなことを独白するのは極端に露出の少ない格好が特徴の登録魔術師にして討魔師、禁史・木実(菌糸人間の古い魔術師・f38034)だ。
 俗世を離れている事も多い木実だったが、世界中の討魔師が集められた2019年の即位礼正殿の儀を巡る戦いには彼も参加していた。それゆえ、彼もまた安曇という|邪本使い《マギウス》の厄介さを知る者の一人となっていたのである。
 木実は他の「試練の探求者」の構成員がレプリ・ショゴスの注目を集めている間に、闇に紛れて洞窟の奥へと進んでいた。
 ――発見されるのは遅い方が良いですから。
 その手に持つのは紙とペン。木実が行うのはクラシックなマッピング作業だった。
 分かれ道は忘れずにマーキング、宝箱を見つけたときは、その拾得物がなんだったのかも漏らさず記録する。
「クリーチャーはマナに還る。では自然物はどうでしょう。宝は持ち帰れるようですが」
 そう言いながら、木実は宝物ではなく、土や石、壁や天井の欠片、その辺の草や結晶体を構成する鉱石といった|素材《サンプル》を採取していく。クリーチャーがマナに還ったことから生じた、彼の次なる関心の種であった。
「……そろそろショゴスも減らしますか」
 手持ちの紙がなくなる程度にしっかりと広域をマッピングし、|素材《サンプル》も十分数採取した彼は、紙とペンをしまい、とうとう戦闘へ移行することを決意する。
 とは言いつつも、再びのこっそり移動。
 囮を努める討魔師が集めるレプリ・ショゴスの群れの元へとやってきた。
 レプリ・ショゴスは集まりすぎて、幾つも合体し、巨大な個体になっているものすらいたが。
 ――合体しているなら好都合です。
 優れた魔術師である木実を前に、その程度は問題ない。
「炸裂せよ・胞子・蝕み」
 そして、懐から茸を取り出し、レプリ・ショゴスと囮を努める討魔師の間に投擲した。
 投擲された茸は、地面に接触すると同時に爆発し、同時、半径17mにも及ぶ膨大な腐食胞子を出現させ、レプリ・ショゴスを足止めした。
 木実の魔術:|腐食胞子爆弾《マッシュルーム・ボム》である。
 木実に救われた囮の討魔師は、木実にお礼を言って、設営中の簡易拠点に撤退していく。
 レプリ・ショゴスの足を止めた後は、ひたすら茸を投擲し、ひたすらレプリ・ショゴスを削っていく。
「予備はありますが……触媒が尽きる前に終わりますかね?」
 残る心配は、この魔術は茸という触媒が必要なこと、囮の討魔師がひたすら集めて回ったレプリ・ショゴスの数は膨大。
 レプリ・ショゴスが尽きるのが先か、茸が尽きるのが先か。

 結果、先に茸が尽きた。
 木実は最後の一つを空中で爆発させ、目眩しに使い、レプリ・ショゴスの追跡を振り切って、再び闇に隠れた。
「|素材《サンプル》がどうなるかの確認も必要ですし、一度撤退、ですかね」
 木実は再び闇をうまく利用して、「洞窟」を逆戻りし、簡易拠点に戻った。
 そして、マッピングの結果を共有したのち、|素材《サンプル》を持ったまま「洞窟」を出る。
 直後、不思議なことが起こった。
 「洞窟」を構成していた壁や床の石や土が突然、粒子の如く分解され、消えていったのだ。
 その消え方はまさしくクリーチャーの消失と同じ、マナへ還元されたように見えた。
 どうやら、『洞窟を構成する壁や床の素材は外に持ち出せなくなっているようだ』。そして、壁や床の素材がマナに還ったという事実は、『「試練の洞窟」自体が、マナで構成されている』事を意味する。
 ちなみに、それ以外の『宝物や植物、鉱石は外に持ち出すことが出来るようだ』。
 木実の実験により、「試練の洞窟」への理解が、また一つ深まったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

徳川・翠
【徳川・家将/f37222】◎
「数は多くとも敵は近接攻撃ばかり。なら――」
【UC】を発動しようとした矢先、家将が現れ翠の動きが止まる

「(そんな!? 若様!!? それもあの時の御姿のままなんて……!??)」
甦る暗い記憶。後ろめたさで思わず腰の妖刀を背に隠す

その動揺を突き敵の【UC】

家将に助けられた翠は馬上の威光に思わず跪く。同じ神性を奉る身でありながら、両者の格の差がそうさせた

「(わたしのことは覚えていないようね。ならば、今はこのまま……)」
「高貴なる方とお見受けいたしましたもので。よろしければ、お名前をお聞かせください」

「私は翠。一介の大家でございます」

名乗りを交し、立ち去る家将を座して見送る


徳川・家将
【徳川・翠/f37954】◎
猟兵の力で唐突に出現
敵に囲まれ硬直し今にも触手に捕らえられんする翠を見て【UC】発動
GOTで敵の群れを一掃し緑を救出
【騎乗】したまま【王子様】の【威厳】と【存在感】を無意識に放ちながら緑に近づく

突如跪いた翠にやや戸惑い、聞く
「女よ、なぜ跪く? 偉大なる俺様は寛大故そう畏まらんでも良いのだぞ?」

「俺様は徳川の家将。それ以外覚えておらぬがいずれ十九代将軍になる男であるぞ!」
あえて大げさに笑ってみせる

「翠……?」
一瞬、家将の記憶の奥底で何かが蠢く。しかし何も思い出せない

「まあ、良かろう。翠よ、縁があればまた会おう。さらばよ!」
愛馬に乗ったまま悠然と駆け去る



 レプリ・ショゴスは相当数が最初に入った探求者により一箇所に集められ、次に入った探求者によりそれが大幅に撃破されたが、まだかなりの数が残っていた。
 そして、そんなレプリ・ショゴスの集結地帯に自ら足を踏み入れ、レプリ・ショゴスの討滅に取り組もうとしていたのは徳川・翠(妖怪アパートの大家さん・f37954)だ。
「数は多くとも敵は近接攻撃ばかり。なら――」
 遠距離攻撃で仕留めれば良い。即座にマナ現象を発動させようとした、その時。
 突如として、一人の白馬に乗った人間がその場に姿を現した。
 ダンジョン探索をしている世界があるという噂を聞きグリモア猟兵に転移させてもらった記憶喪失の猟兵、徳川・家将(徳川家幻の第十九代当主・f37222)だ。
(そんな!? 若様!!? それもあの時の御姿のままなんて……!??)
 そして、それを見て驚愕し、困惑するのが翠だ。
 その姿は過去に行方不明となった|現代神秘世界《"この世界"》の徳川家の跡取り、徳川・家将にそっくりだったのだ。
 いや、行方不明というのは表向きの話でその実態は……。
 後ろ暗い記憶が翠の中を駆け巡り、翠は思わず、自身の妖刀・村正を背中に隠す。それは、徳川家を呪うと伝えられる妖刀。翠がそれを持つ理由とは……。
 いずれにしても、翠のその行動、その動きは、明らかに敵を前にして隙を晒す行為である。
「テケリ・リ、テケリ・リ」
 レプリ・ショゴスが一斉に翠に触手を伸ばす。
「む!」
 そして、転移してきて周囲を見渡した家将は敵に囲まれ、触手に囚われようとしている女性に気付く。
「俺様の前で無抵抗の女性に暴力など許さんぞ!」
 家将は即座にユーベルコードを発動。自身の背後に無数の徳川家の秘宝を出現させ、一斉に発射する。
 オブリビオンのいない世界だからか、いつもより弱体化して発露したそのユーベルコードは、しかし、それでも200本もの数の秘宝を放ち、翠に触手を突き刺さんとするレプリ・ショゴスとその周囲のレプリ・ショゴスを一瞬で消滅させた。
「女よ、大丈夫か?」
 馬に乗ったまま翠に近づく家将。そこには確かな未来の第十九代当主としての威厳があり、翠は思わず跪いた。
 その様子に今度は家将が困惑する。
「女よ、なぜ跪く? 偉大なる俺様は寛大故そう畏まらんでも良いのだぞ?」
 しかし、翠はその姿勢を解けなかった。翠も、そして、この家将も、共に東照大権現の神性をその身に宿している。しかし、正当な後継者でない翠のそれは正当な後継者である家将のそれとは格が違った。ゆえに、翠は跪くしかなかった。
(わたしのことは覚えていないようね。ならば、今はこのまま……)
 そんな状況ながら、翠は家将の言葉を冷静に分析していた。似て非なる別人なのか、本人だが記憶がないのかは分からないが、家将は自分のことを覚えていないらしい。だが、もう少し情報がほしい。
「高貴なる方とお見受けいたしましたもので。よろしければ、お名前をお聞かせください」
 故に、翠は問うた。
「俺様は徳川の家将。それ以外覚えておらぬがいずれ十九代将軍になる男であるぞ!」
 その質問に家将は威風堂々と答え、大げさに笑う。
(やはり、若様。そして、記憶がない……)
 事情は分からないが、家将には記憶がないらしい。そして、それは翠にとって、幸運なことだった。
「私は翠。一介の大家でございます」
 翠はそれに対し、名乗り返す。
「翠……?」
 その言葉に、家将の記憶が刺激される。しかし、何も思い出せない。本来、アリスラビリンスと呼ばれる世界に迷い込んだ「アリス適合者」と呼ばれる存在である彼は、アリスラビリンスで自身の扉を見つける以外に記憶を取り戻す方法は原則として存在しない。
 ゆえに、彼の記憶がここで戻ることはないのだろう。
「まあ、良かろう。翠よ、縁があればまた会おう。さらばよ!」
 家将自身もそう感じ、ここで追求することも益がないと考え、今起きたことは思考から除外し、立ち去ることを選んだ。
 決してはやく洞窟探索を始めたかったからではない。
 対する翠は立ち去る家将をただ座して見守った。
 本当に彼がこの世界の徳川家の後継ぎなのであれば、翠は今すぐにでも彼を確保し、家に連れ戻すべきであるはずだ。そうしなかったのは、似て非なる|並行次元の同一人物《アイソトープ》である可能性もあると考えたからなのか、それとも、彼女の持つ暗い記憶に由来するなにか別の理由があるのか。
 それは、立ち去る家将の背中を黙って見つめる彼女自身にしか分からないことであった。
 いずれにしても、「試練の探求者」にとって重要な事実は唯一つ。
 『一箇所に集められていた殆どのレプリ・ショゴスは撃滅された』ということ。そして、即ち『後は細かく生き残った点在するレプリ・ショゴスの殲滅戦になるだろう』ということだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天星・雲雀

宝物が在る事は確定ですね!
先行要員さんは簡易拠点の方に伝えに行きましたが、自分はレプリ・ショゴスに回収される前のお宝を確保しましょう。敵さんも狙ってる物は後々の戦局に響いてきますし。

【行動】オトモたちと一緒に宝探しです。

「オトモ!残ってるショゴスを追っ祓ってください!」
生命力吸収って、オトモに通じるんですかね?この子たちは高次元の本体の影が3次元というスクリーンに写り込んだ影絵に過ぎません。命と言うものではないし。ただ結果が目の前にあるだけです。
個性や個体差は写り込んでいる角度や部位の違いですね。もしかすると本体が数人居る可能性もありますが。

「ここぞとばかりに生命力を吸われたフリをしないでください」

オトモはすぐに持ち直します。

「生物っぽく振る舞いたいのは、理解してますから、今回は押し負けないようにしてください!」

オトモたちがショゴスを祓ったら。マナ現象で、アンジェさんと碧さんに念写の折り鶴を(邪魔にならない程度に)生やして、宝物の位置情報を伝えます。
お宝鑑定はプロの方が良いでしょうし。



「宝物が在る事は確定ですね! 先行要員さんは簡易拠点の方に伝えに行きましたが、自分はレプリ・ショゴスに回収される前のお宝を確保しましょう。敵さんも狙ってる物は後々の戦局に響いてきますし」
 というわけで、他の探求者達がレプリ・ショゴスと戦っている間、宝物探しに動いていたのは狐耳幼女、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)だ。
 もちろん、戦闘を放棄しているわけではないが、本人は先程のアンジェと碧によるブリーフィングを聞いていなかったので、レプリ・ショゴスを優先して倒すべき標的とは認識していないのだろう。
「オトモ! 残ってるショゴスを追っ祓ってください!」
 狐火のオトモをレプリ・ショゴスにけしかける。
 オトモ達は一斉にレプリ・ショゴスに襲いかかっていく。
「テケリ・リ、テケリ・リ」
 レプリ・ショゴスはオトモに触れて魔力を吸収しようとするが……。
(そういえば、生命力吸収って、オトモに通じるんですかね?)
 ふと、レプリ・ショゴスに体当りする狐火を見て、雲雀は思う。
 オトモ達は高次元の本体の影が3次元というスクリーンに写り込んだ影絵に過ぎない。命と言うものではないし。ただ結果が目の前にあるだけの存在だ。ちょうど、|現代神秘世界《この世界》の魔術現象に近いと言えるかもしれない。
 個性や個体差は存在するが、それは写り込んでいる角度や部位の違いでしかない。
(しかし、もしかすると本体が数人居る可能性もありますが……)
 と、そう考えた瞬間、その思考を読み取ったか、オトモ達が一斉にふらふらと不安定な飛行を始める。
「ここぞとばかりに生命力を吸われたフリをしないでください」
 それがフリであるのがすぐに分かった雲雀はオトモを叱責する。
 すると、オトモ達は一斉に持ち直し、レプリ・ショゴスに攻撃を再開した。
「生物っぽく振る舞いたいのは、理解してますから、今回は押し負けないようにしてください!」
 数対数の勝負。オトモ達がサボれば、レプリ・ショゴスが一斉に雲雀へ殺到することになりかねない。

 それからしばらくして、オトモ達がレプリ・ショゴスを祓ったのを確認したら、マナ現象『念写の千羽折り鶴』を発動。
 ようやく拠点が完成した碧とアンジェの体に、千羽にも及ぶ、念写の折り鶴がに生える。
「な、なんですかこれは、まさかあの魔女の仕業ですか?」
「いえ、流石に英国の魔女もこんな子供みたいな嫌がらせはしないと思いますが」
 その突然の出来事に、驚愕する碧とアンジェ。
《ごめんなさい! 私のマナ現象です。これでテレパシーが出来るんです!》
 そんな二人にテンション高く聞こえてくるのは雲雀の声。
「この声は、入り口で挨拶してくれた雲雀さんですね? 拠点に戻ってきたのですか?」
《はい! いえ、まだ「洞窟」を探索中です!》
「ということはこちらを視認していないのに、こちらを対象にとってということですか。これがマナ現象……」
 碧達の常識では、基本的に魔術というものは対象を視認している必要があった。監視カメラや千里眼など、抜け道はあるのだが、視認しているという状態は大きなトリガーであり、絶対条件と言ってもいいほどだった。その制約がマナ現象には存在していない。二人にとっては少し衝撃的な事実だったようだ。
「それでどうしたんですか?」
 二人で驚いていては話が進まない、とアンジェが雲雀に尋ねる。
《はい。宝箱を幾つか発見したので、位置情報を共有しておこうかと》
「「試練の探求者」のルールでは、基本的に宝箱は見つけた人が自分のものにしていいんですよ?」
《でも、お宝鑑定はプロの方が良いでしょうし》
「私達は討魔師としてはプロですが、お宝鑑定についてはあんまり自信はないですけど……」
 苦笑するアンジェ。なにせ「試練の洞窟」で見つかるアイテムは多種多様で、彼女たちの知る常識的な「神秘」とはかけ離れた不思議なアイテムもたくさんあるのである。
「ともかく話は分かりました。後ほど回収させましょう。まとめておきますから、必要なものがあったら持ち帰って下さい」
《ありがとうございますっ》
 と、通信を終えたことろで、一匹のレプリ・ショゴスを発見する雲雀。
「まだいましたか! 行って下さい、オトモ!」
 オトモが一気に突っ込んで、レプリ・ショゴスを吹き飛ばす。
 吹き飛んだレプリ・ショゴスが壁にぶつかり、その衝撃で壁の一部がバタリと倒れる。
 そこにあったのは、次の階層に行くための階段だった。
 早速テレパシーで伝えようとした雲雀、そして「洞窟」にいる全員の頭に「ある光景」が過る。
 それは神秘の世界では「第三視点」と呼ばれる現象。そして、猟兵達が「予兆」と呼ぶ者であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月16日


挿絵イラスト