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「約束」は遠く彼方の道標

#UDCアース #カクリヨファンタズム

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「私は逝くことになるけれど」

 女はそう言って手を伸ばす。その手を取り、男は逝くなと意を示す。しかし、声を発することは無い。声を出すための舌はいとしきひとに名と共に捧げたが故。

「……それは、無理な話よ。私はひと、だから……だから……」

 ――代わりに、このせかいを、ひとを護っておくれ。

 今際の際に交わされたそのやり取りは、彼女が男に与えた最後の祝福か、呪いか。



「生者を衝き動かす約束は、時として力となりえる……と、いうのは、今更私から語る事でも御座いませんね」

 ライリス・エルファンシア(天麟万華の欠片・f00325)は、猟兵達に向けて言った。

「過去を持たない私にこのような事が示されたというのも、少々不思議なことでは御座いますが……」

 そう前置きして、ライリスは己に示された事のあらましを語り始める。

 UDCアースに未だ残る「妖怪」が居る。遠い過去に或る巫女と縁を紡ぎ、妖怪たちの殆どがカクリヨファンタズムへと去ってなお、残り続けたその妖怪は、巫女と交わした約束を守るために、そして、何時か生まれ変わってくるであろう巫女を待つ為に、UDCを狩り続けていた。しかし、人々に忘れられた事による妖怪特有の飢えを耐え凌ぐため、斃すべきUDCを喰らい始めた。
 そこまでなら問題は少なく、視認もできないため、UDC組織としてもUDC-Null――虚言の類として捜査すらされていない状態で済んだのだった。
 しかし、UDCを喰らうということは、妖怪にとっては骸魂を自分から身の裡に入れるという事。少しづつ、だがはっきりとその妖怪は妖怪から怪物……すなわちオブリビオンへと変化していっている。

「怪物となってしまえば、彼はかつて交わされた約束すらも忘れてしまいます」

 そうなる前に、彼を助けて、可能であればカクリヨファンタズムへと送りださねばならない。

「彼は、約束が故なのか、飢えを満たすためなのか、UDCを誘う妖気を発しております。運よく……と申して良いのか判り兼ねますが、転送できるのはそれに誘われたUDCたちが集まる只中のようです」

 妖怪がUDCを喰らう前にUDCの群れを駆逐すれば、彼はおのずと姿を現す。

「彼は理性が衝動に塗り潰されておりますので先ずは戦わねばなりません」

 ですが、とライリスは言葉を続ける。

「死にゆく己の代わりに、世界を護れという、かつて彼が巫女と交わした約束。それが、彼の理性を揺り動かす可能性は御座います」

 理性を揺り動かすことができれば、衝動に塗り潰された妖怪とも渡り合う事もできるだろう。

「どうか、約束が約束としてある間に、彼に平穏を」

 ライリスはそう締めると、転送の準備を始めた。


白神 みや
 初めましてのかたは初めまして。そうでない方はお世話になっております、|白神《しらかみ》です。
 約束に縛られて変質したりするのって、おいしいですよね。と、いうことで、そんな感じのシナリオです。

●一章
 妖怪の妖気に惹かれたUDC、『ひよこさん』が集まっている中への転送です。容赦なくお掃除をお願いします。かわいいけど。

●二章
 斃すべきもの、もしくは、餌を奪われた妖怪が現れますので、全力で対処をお願いします。

●三章
 理性を取り戻した妖怪を送る前に彼と共に夏祭りへ。

●お願い
 MSページはお手数ですが必ずご一読ください。
 受付期間についてですが、白神が本業夏休み期間のため変則進行予定です。タグ等で告知いたしますので参照ください。
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第1章 集団戦 『ひよこさん』

POW   :    誰かさんとあなたと
いま戦っている対象に有効な【誰かの魂】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    どこかのあなた
小さな【鈴】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【幻影を見せる異空間】で、いつでも外に出られる。
WIZ   :    あなたの言葉
妖怪【ひよこさん】の描かれたメダルを対象に貼り付けている間、対象に【普段なら言わないような事を言いたくなる】効果を与え続ける。

イラスト:猫柳ひま

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ひよこだまり
 ぴよぴよ。ぴよぴよ。

 転送された先は街の路地裏のようなのだが、見渡す限りのひよこの群れ。ただのひよこと侮ってはいけない。これでもれっきとしたUDC。その名も『ひよこさん』だ。
 猟兵たちの気配を感じて、ひよこさんが一斉に一同の方を向いた。とたん、つぶらな目のひよこさんの目の色が変わった。

 ぴよおおおおおお!!

 威嚇するように一斉に啼き声を上げながら、ひよこさんたちが猟兵に向けて殺到する……!
シリルーン・アーンスランド
わたくしも、命ある限り果たしたいと思う『約束』を
有しておりますれば、とてもの事に他人事とは思えませぬ
必ずやお救いを、そして志をお違えあそばすことなきように
願い、参りますわ
護るべきものを護る為に

それはそれとしまして…何という可愛ゆらしい敵さんで
ございましょう
一瞬羽毛に埋もれたい衝動すら覚えますわ
ですが、見た目に騙されてはならぬのがこの世界全ての
習わしなれば…いざ!

UCさまよえる舵輪を詠唱致します
自身もご一緒の猟兵さまも癒し、山成すひよこさんたちは
討ち果たしますゆえ、良きように思いますの
攻撃を受けましたら技能などで躱したく存じます

武器での直接攻撃には長剣を用いますわ
舵輪はそういう用途には使いません



(わたくしも、命ある限り果たしたいと思う『約束』を有しておりますれば、とてもの事に他人事とは思えませぬ)

 かの妖怪に思いを馳せる、シリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)。彼女もまた心の裡に「約束」を抱える身であるが故か、共感を抱いてこの地に舞い降りることになった。

「それはそれとしまして……何という可愛らしい敵さんでございましょう」

 敵視の目を向けてきているとはいえ、目の前に広がるのは黄色くまあるい『ひよこさん』の群れである。見るからにもふもふである。

「見た目に騙されてはならぬのがこの世界全ての習わしなれば……」

 思わずもふもふの羽毛に埋もれてみたい衝動に駆られてしまいそうになるのをぐっと堪えて、『ひよこさん』たちを見据える。

「いざ! 『お力お貸し下さいませ、舵輪に眠る皆々様…どうか我らに優しき癒しを、そして敵撃つ鋭き刃を!』」

 ユーベルコード「さまよえる舵輪」。シリルーンとは、銀誓館の能力者だった若き日より縁深いメガリスの助力により、銀色の雨が戦場に降り注いだ。

 ぴっぴよ? ぴよおおお?!

 猟兵達には癒しの力を帯びる銀色の雨は、『ひよこさん』にとって鋭い刃の雨となって貫いていく。

「必ずやお救いを、そして志をお違えあそばすことなきように……!」

 シリルーンは長剣を手に、雨を耐え抜いて自身に迫る『ひよこさん』に斬りかかりながら、護るべきものを護る為に戦場を駆けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神白・みつき
かつて交わした約束に縛られる。というのは、ともすれば私や一族の者達もそうなのだろうか。御役目を果たす以上の答えを見出せない私が考えても、それは詮無きことでしょう。
異郷の地で邂逅するは、愛らしいひよこにも似た異形。群れを成して何かを探す彼らに恨みはありません。けれど。

「縛られた魂の解放のため。どうぞ御覚悟を」

UC『灼桜一閃』使用
薙刀の間合いに入れば、一羽たりとも逃がさない。さりとて相手も意思ある存在。抵抗する者もありましょう。私の術が通用するか、逡巡する間はございません。結界術で可能な限りの反撃を凌ぎ、一羽でも多くの敵を屠りましょう。

「哀れとは言いません。あなた方は、生きているだけなのですから」



 神白・みつき(幽寂・f34870)もまた、違う形でかの妖怪へと思いを重ねた一人。彼はかつて交わした約束に「縛られている」のではないか、それは神器を護る役目に「縛られている」自分達一族とにているのではないかと。

(……とはいえ、御役目を果たす以上の答えを見出せない私が考えても、それは詮無きことでしょう)

 考える事をそこで一旦断ち切る事にしたみつきが見据える先には、『ひよこさん』の群れ。可愛らしい見た目で群れを成す彼らに恨みの感情は無いのだが。

「縛られた魂の解放のため。どうぞ御覚悟を」

 みつきは手にした薙刀・紅刃を振るい、その範囲にいた『ひよこさん』を薙ぎ払う。とはいえ、『ひよこさん』は疑似的な標的ではなく、生きたUDC。器用に攻撃を逃れみつきへと反撃をするものもいた。巫女として身につけた結界術で幾らかは凌いで、舞うように薙刀を振るう。

 ぴよっ! ぴぃ!? ぴよぉ!

「哀れとは言いません。あなた方は、生きているだけなのですから」

 ただ、その生まれ方が、相容れなかっただけなのだ、と。みつきは、『ひよこさん』を切り伏せながら呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リグノア・ノイン
あぁ、懐かしきUDCアースです
「約束」という物はとても大切ですね
私自身そういった記憶はありませんが
それでもとても、大事な物という事は憶えています
だからこそ、怪物となる前に必ず
「Ja.依頼。受託致しました」

黄色く、丸く、ふわふわとしている事を確認
確かにお可愛らしく、愛らしいと、最近学んだ事から感じます
ですが今は彼が喰らわぬ為に殲滅を

敵を確認次第【Kanone "Lignoa"】を起動
砲塔を無数に増やし全方位に向けて攻撃回数を五倍と致しましょう
「Guten Tag.初めまして、そしてさようなら。速やかなお眠りを」
躊躇なく、迷わず、即断で、見える限りの対象へ砲撃を
痛みを感じる間もなくお送り致します



(あぁ、懐かしきUDCアースです)

 UDCアース出身のリグノア・ノイン(感情の渇望者・f09348)は、転送された地の空気にそう思った。

(……懐かしいと思うのは、久しく離れていたからなのでしょうか。)

 自然と己がそう思った事に僅かに首を傾げる。サイボーグとして改造され、記憶も来歴も感情すらも朧げな身。世界を渡りながら他者に触れ、多少なりと学んだということなのか。そんな彼女でも、「約束」が大切なものだと理解している。例え自身にそういう記憶が無くとも。

 ぴぃ? ぴよぴよ。ぴよぉ!

 そんな思いを中断したのは、目の前に集まる『ひよこさん』の可愛らしい鳴き声。黄色く丸くふわふわとしたそれは、これまでに学んだことからも「可愛らしく」、「愛らしい」ものなのだと感じる。そういうものは愛玩するものだとも学んではいるが、今はかの妖怪が怪物とにならぬ為にも殲滅をせねばならない。

「|Guten Tag.《ごきげんよう。》初めまして、そしてさようなら。速やかなお眠りを」

 故にそう『ひよこさん』の群れへ挨拶をし、一礼するとリグノアは姿を変える。彼女のユーベルコード「|Kanone "Lignoa"《ホウトウ・リグノア》」。その身体に埋め込まれた兵装により、名の通り砲塔と化した姿は、平素のリグノアの姿から比べると歪にも見える。だが、そうして彼女から放たれた砲撃は文字通り絨毯爆撃のそれで『ひよこさん』を撃ち抜くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天風・光華
いっつも兄様は先に行っちゃうから光華も一人で冒険なの!
グリモア猟兵のお姉様にお話も聞いて準備も万端なの!
でも難しい所はちょっと分かんなかったの。
でもでもきっと巫女さんはオブリビオンになったら悲しんじゃうの!
「巫女さんのお約束、思い出してもらいにいくの!」
だから光華がちゃんと止めに行くの!

「まずはひよこさんのお掃除なの!」
可愛いから可哀そうだけど妖怪さんの為なの!
「騎士さんたち!お一人様一個なのー!お持ち帰りは禁止なのー!」
ひよこさんたち沢山居るけど騎士さん達もいっぱいだから大丈夫なの!
わーっていっぱい出て、わーって圧倒しちゃうの!
光華は騎士さんたちの後ろから眼鏡ビームで攻撃しちゃうの!



「光華も一人で冒険なのよ!」

 そう勢い込んでやってきたのは、天風・光華(木漏れ日の子・f37163)。自分を置いて先行してしまう事の多い兄への意趣返しとばかりに、初めて一人で依頼を受ける事にしたのだ。幼い光華には、グリモア猟兵から聞かされた話でも難しい事も多かったが、大事な人と離れてしまう悲しみは判る。だって、自分も兄以外は一度は無くしてしまったのだから。

(きっと巫女さんはオブリビオンになったら悲しんじゃうの! 巫女さんのお約束、思い出してもらいにいくの!)

 だから、止めに行くのだと、舞い降りた光華の周囲に広がる『ひよこさん』。先行した猟兵達の活躍でだいぶんと数を減らしているが、敵意はしっかりと光華の方にも向けられる。その敵意の籠った目以外はすこぶる可愛いひよこの姿に、思わず可哀そうな気持ちになりかけ、振り切るように首を振って。

「可哀そうだけど妖怪さんの為なの! まずはひよこさんのお掃除なの!」

 そう言うと、持ってきた詠唱眼鏡をすちゃっと装備して。

「『騎士さん達!戦ってなのー!』」

 ユーベルコードにより召喚された幻影の騎士達が光華を護るように召喚される。

「騎士さんたち! お一人様一個なのー! お持ち帰りは禁止なのー!」

 騎士達にそう号令をかけて進軍させる。騎士の壁を越えてきた『ひよこさん』には光華の詠唱眼鏡から発射されるビームが撃ち落としていく。騎士達はその性質上、一対一が限度ではあるが、それでも呼び出した数で圧倒していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『赫絲童子』

POW   :    五鬼招来
【五体の鬼火】の霊を召喚する。これは【餓鬼に変身する能力】や【炎や武器】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    焔環結界
【生者には見えぬ紅き糸を張り巡らせ、触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    呪憎
攻撃が命中した対象に【身体を蝕む溶解毒】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【周囲への空気感染】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:田中友梨

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は東雲・咲夜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●綱渡る焔の危局にて
 途端、総てを巻き込んで焔が周囲を包み込む。
 そうして現れたのは、焔を纏う鬼。正しく鬼神であれば、凛々しく美しいのであろうその姿は、乱れ荒みきっていた。そして、その乱れた髪の奥で暗く濁り赤く光る双眸が、彼が堕ちつつある事を如実に示す。事態はまさに最悪の一歩手前といったところか。
 己が呼び寄せた筈のUDCの代わりにその場に居る猟兵達に、彼はその濁った双眸を向ける。

(邪魔ヲ……スルナァ……!)

 吠えるような思念が、猟兵達に叩きつけられた。その苛烈な思念に、手にした武器を向けようと身体が動きそうになる。
 今の彼は転送前にグリモア猟兵が語った通り、理性が衝動に塗り潰されてしまっている。彼の理性を揺り動かせるのは、かつての思い出の記憶。しかし、一筋縄では届かないだろう。
神白・みつき
猟兵の皆様の助力もあってひよこの多くを排した戦場を、殺気を孕んだ焔が覆いました。現れた化生が、既に会話も困難な程に自我を失いかけているのは明白。
この場に集まった全ての猟兵が全力で対峙したのなら、滅するのは容易いでしょう。ですが、此度の目的はあくまでも、彼の理性を呼び戻すこと。

「お会いできて、良うございました。さあ、貴方が交わしたという約束を、正しい形で果たしましょう」

UC『神剣・天叢雲剣』使用
言霊を紡げば、里より持ち出した神剣が浮遊する。焔の赫に染まる戦場に、何処からか暗雲が訪れる。やがて、雷鳴が轟くことでしょう。

「手荒くはなりますが、どうか御容赦を……参ります」


リグノア・ノイン
【共闘可】

滞りなく殲滅完了致しました
そして完了したからこそ、次は貴方の番です
叩きつけられる思念に応えましょう
「Nein.邪魔では御座いません」
この胸の奥から湧き上がるものの為
「Ja.必ず、止めてみせましょう」

戦闘開始と同時に【Zwangsjacke "Lignoa"】を起動
アンカーを地面に打ち込みワイヤーで拘束します
共闘の際は巻き込まないように注意を
「Vorsicht.対象を拘束致します」

本来で在れば私はこの場に居ていい者ではないのです
ですがこの世界に来て私は学びました
一人でないから、どの様な戦いでも向かえると
「Zurückhaltung beendet.お言葉を届けるのは、皆様にお任せを」


シリルーン・アーンスランド
説得を旨としUC舵輪の加護のみ使用
接遇即詠唱

皆様とも連携し必ずお心取り戻して頂きます
真正面にて真っ直ぐ瞳を見て声を張りますわ

「いいえ、失礼ながらお邪魔させて頂きますわ。わたくし、
大切な事をお伝えに参ったのです。
…巫女さまとの約束をお忘れですか?と」

攻撃は舵輪の皆様が躱して下さいますゆえ恐れません
そしてどれ程の獅子吼を受けてもひるみませぬ

「巫女さまがお戻りあそばされた時…お顔むけ出来ぬ有様と
なるのみならず、巫女さまをも喰らい尽くすモノになられ
たいのですか!?」

迷いや聞く姿勢が見えたら畳みかけを
お嫌でなさそうならお手を取り包みたく存じます

「御身は今のご状態のままでは、巫女さまとのお約束を違え
人を滅ぼすモノに堕ちてしまわれます」

陥られたご状況を説明し、大切な想い出も記憶も
失い、ただ殺戮だけを喜ぶ魔に堕ちる旨お伝えを

「どうかお心強くお持ち下さいませ。護るべきは託されたものだけ
でなく、ご自身と大切な想い出もなのですから…」

真摯に真剣に。時間が掛かれど瞳から狂気のかぎろいが
消えるまで決して諦めません


土御門・泰花
少々出遅れましたか…。ですが、まだ今なら妖怪のままでいさせて差し上げられましょう。

到着と同時、【高速/多重詠唱】で【オーラ防御/結界術】展開
もし猟兵が他に居れば皆にも同時に
その後すぐUC発動

「もし、妖怪さん。おひとつお尋ねしたいことがございます」

【第六感/聞き耳/戦闘知識】で敵の行動を察知、【軽業/早業/地形の利用】にて軽やかに速やかに移動や回避

「素早さには少々自信がありまして…」

防御結界で弾けぬ攻撃は薙刀で【武器受け】、薙刀と黒揚羽に【呪詛】を込め【咄嗟の一撃/カウンター/2回攻撃】
糸も切れたら御の字です

「亡き巫女様との『お約束』、このままではご自身で破ってしまいますが…良いのでしょうか?」


天風・光華
いつき兄様(f37164)と一緒なの!
光華一人で大丈夫なのに兄様来ちゃったの!
むーむーだけど今は妖怪さん助けるの!

「兄様兄様!妖怪さん来たの!手伝ってなの!」
焔であつくてびっくりなの。
でも鬼さんなんだか寂しそうで悲しそうな気がするの。
頑張って頑張って我慢して戦ってるの。
「妖怪さん。兄様に似てるの」
兄様もいっつも無理するの。だからすっごく分かるの。
光華がここで止めるの!

騎士さん達を呼んで皆で抑え込んでもらうの!
すぐに消えちゃってもいっぱいいるから皆でお願いするの!
「妖怪さん。巫女さんとのお約束覚えてるの…?」
「疲れてるの分かるの。だからもうイイと思うの」
「妖怪さん、もう休もう…?」


深山・樹
天風・光華(f37163)を追いかけて!
呼び方はみつか

一人で行くなんて!
けどきっと優しい子だから
聞いて我慢できなかったんだ
だから覚悟きめて追って来た

僕も約束破らないって決めてるから
みつかが助けたいって思ったから、手伝う
殺さないといけないものになって欲しくない
みつかの泣き顔見たくない…

UCの絡糸の縛鎖を使う
これなら攻撃止められるし話聞いてもらえそう
僕は口下手だから説得とか難しいしみつかに任せ
…って、み、みつか、言い方!
(僕には『死んで楽に』みたいに聞こえて)
でも悪気はないしちょっと慌てながら

「そっちにいったら後で絶対後悔するよ!」
「自分がした約束忘れないで!」

届くように大きくハッキリ頑張って叫ぶ



「|Nein.《否定致します。》邪魔では御座いません」

 衝動に塗り潰された鬼神と対照的に淡々と言葉を向けたのは、リグノア・ノイン(感情の渇望者・f09348)。

「わたくし、大切な事をお伝えに参ったのです」
「さあ、貴方が交わしたという約束を、正しい形で果たしましょう」

 シリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)と神白・みつき(幽寂・f34870)がその傍らに立ち、言葉を重ねた。対峙した三人に向けて、鬼神が視線を向けるが応えは無く、ただただ荒い息だけが返る。

「少々出遅れましたか……」

 張り詰め緊張する場に、そう呟くように言いながら姿を現したのは、土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)。焔から猟兵達を護るように結界を構築すると、周囲に視線をやり、状況を見定めようとする。

(まだ今なら妖怪のままでいさせて差し上げられましょう)

 まだ最悪の事態には至っていないと判断した泰花が、式神たる黒揚羽を呼び出し薙刀を構えたその矢先。

「みつか……ッ!」
「兄様?!」

 鬼ではなく、先に立つ三人と共にいる天風・光華(木漏れ日の子・f37163)へ小柄な影が駆ける。光華の兄である深山・樹(処刑人・f37164)が、妹が一人で依頼に向かったと聞いて血相を変えて駆け付けたのだ。妹が無事なことを確認し、どこか安堵する樹と対照的に、光華は少々拗ねた表情を見せる。

「みつかが助けたいって思ったから、手伝う」

 が、兄からため息交じりにそう言われた途端、どこか嬉しそうに光華は頷いた。斯くして「約束」に歪に縛られた鬼神と猟兵達の戦いが始まる。



「『素早さには少々自信がありまして……』」

 最初に駆けたのは、泰花。ユーベルコードで己の身体能力を強化し、薙刀を振るった。その軌跡を起点に、虚空に黒く糸のようなものが浮かび、崩れ落ちていく。鬼神が放っていた糸が、式神の力と共に乗せた呪詛が視認できない糸を断ち切ったのだ。

「手荒くはなりますが、どうか御容赦を……『これより神罰を執り行います。』」

 続いたのはみつき。詠唱と共に鬼神へと向けていた神剣から手を離す。しかし、剣は地に落ちることは無く、切っ先を鬼神へ向けたまま中空に静止した。ユーベルコード「神剣・天叢雲剣」。神剣の銘と同じくするユーベルコードが、天に雲を呼び、雷が鬼神の足を止める。

「|Vorsicht.《ご注意くださいませ。》 対象を拘束致します」

 みつきのユーベルコードと重ねるようにユーベルコードを起動したのは、リグノア。地を穿つ音が立て続けて起こり、ワイヤーが鬼神を縛り拘束する。そうして動きを封じられた鬼神は更に光華の召喚した騎士達に囲まれ、更に樹のユーベルコード「絡糸の縛鎖」により動こうとすればするほど力を削がれていく。
 それを確認したリグノアは、自分は本来このような場に居るべき者ではないはずなのだと、鬼神への警戒を解くことないまま思う。だが、此処までに学んだ経験は言う。「一人でないから、どの様な戦いでも向かえる」のだと。そんな自分がここにいるのであれば、為すべきは自ずと定まっていたのだ。

「|Zurückhaltung beendet.《拘束完了致しました。》 お言葉を届けるのは、皆様にお任せを」

 故に、リグノアは、その警戒を解かぬままに他の猟兵達へと場を譲った。



 拘束は成った。しかし、鬼神は今なお拘束から逃れようと、鬼神でなく鬼の性と衝動のままに、荒い息で口の端から血を流す程に歯を食いしばる。

「もし、妖怪さん。おひとつお尋ねしたいことがございます」

 泰花が菫紫の狩衣を揺らして鬼神へ歩を進めた。ユーベルコードは発動したまま、万一に備えることは忘れない。

「亡き巫女様との『お約束』、このままではご自身で破ってしまいますが……良いのでしょうか?」
「然様で御座います」

 そう言い鬼神のもとへ近づくのは、シリルーン。彼女もまた、縁深きメガリスの加護を借りるユーベルコードを用い、最悪の事態に陥った際の対策を施している。

「巫女さまがお戻りあそばされた時……お顔むけ出来ぬ有様となるのみならず、巫女さまをも喰らい尽くすモノになられたいのですか!?」

 鬼神の眼光に怯むことなく、その目を見据えてシリルーンは澄んだ声音ではっきりと語りながら、歩みを止めず鬼神の傍らへと進み、その手を取ろうとする。鬼神は爪を立て牙を剥き、抵抗を試みる。しかし、加護を受けたシリルーンはそれをすり抜け、傷つけるには至らない。
 猶もその手を取ろうとシリルーンは試みる。それは幾度かの試みの末ではあるが、成功する。手が触れた瞬間、鬼神がびくりと身体を震わせたような気がした。

「御身は今のご状態のままでは、巫女さまとのお約束を違え、人を滅ぼすモノに堕ちてしまわれます」

 直接触れているが故にそれを察したシリルーンは、目を逸らさぬまま畳みかけるように言葉を重ね、今の彼の状況、このまま彼が堕ちいるであろう末路――大切な想い出も記憶も失い、ただ殺戮だけを喜ぶ魔に堕ちてしまう事を、伝える。

「妖怪さん。兄様に似てるの」

 その傍らにやってきたのは、光華。シリルーンが取った手に、背を伸ばして自分の手を重ねようとする。

「兄様もいっつも無理するの。だからすっごく分かるの」

 シリルーンと同じように顔を見ながら、幼さゆえの拙い言葉で、想いを紡ぐ。過去の事は判らないけれど、今の光華にとっての全てである兄。鬼神の姿が、傍で見ている姿の遠い未来の兄の姿のようにも、光華の目には映っていた。

「疲れてるの分かるの。だからもうイイと思うの。
 妖怪さん、もう休もう……?」
「……って、み、みつか、言い方!」

 自分には向かないと、妹たちに任せ一歩退いて見ていた樹が、妹の言葉を彼女の意図とやや違う形に解釈したのか、思わず声を上げた。鬼神の、そして居合わせた面々の視線を受け、居たたまれないような困惑するような心地になる。

「……そっちにいったら後で絶対後悔するよ! 自分がした約束忘れないで!」

 樹とて彼が殺さないといけないものになってなど欲しくはない。なにより、そうなってしまった時に嘆く妹の顔を見たくはない。集まった視線への戸惑いの気持ちもほんの少し混ざりながら、精いっぱいの思いを乗せて樹も叫ぶ。

「どうかお心強くお持ち下さいませ。
 護るべきは託されたものだけでなく、ご自身と大切な想い出もなのですから……」

 シリルーンが更に言葉を重ねる。
 幾重にも重ねられた、猟兵達の真摯で真剣な言葉たち。それらが、鬼神の濁った赤光を少しづつ和らげていく。そうして赤光が薄れ消えた後、鬼神の目に溢れ伝ったのは、涙だった。溢れ伝ったそれが、シリルーンと光華の手を伝い、地を濡らしていく。

(……ッ)

 そして、猟兵達の心に響いたのは、先程の荒々しい咆哮とはまた違う、慟哭の聲。その声ならぬ聲は、最悪の事態を回避することができた証だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『夏祭りの日』

POW   :    催しに参加したり、人混みをかき分けて屋台を巡ったり。

SPD   :    たくさんの屋台を巡ったり。

WIZ   :    踊ったり歌ったり演奏したり。

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●名残の送り火
(……済まない。醜態を晒してしまった)

 幾許かの時が過ぎ、鬼神は猟兵達へ頭を下げた。
 猟兵達から事情を改めて聞かされた彼は、縁と想い出の残るこの世界から旅立つ決意を固めたようだ。

(約束は、貴殿等のような存在が代わりに果たしてくれるのだろう。
 いとしきひとに再び出会う事こそ叶わぬが、致し方あるまい)

 文字通り憑き物が落ちた状態で彼は語る。

(……そういえば、祭りの頃合いか。ならば、一つだけ頼みを聞いて貰えるだろうか)

 そうして鬼神から提案されたのは、嘗て巫女と共に過ごした地での、季節を送る祭りへの誘い。
 在りし日の祭りと比べると、祭事の色こそ薄れても、人の集う喧騒は変わらない。人に姿を認識されぬ彼を伴う、名残の祭り。

(貴殿等の傍で祭りの空気を味わえれば構わない。随意にして欲しい)

 猟兵達の傍らで、鬼神は頭を下げた。
練・玲琳
※泰花様(f10833)と参加

事態が収拾したら是非共に夏祭りへ、と予め伺ってはおりましたが…

ふと、視界に臨戦態勢を解いた泰花様の姿が目に入る
駆け寄って戦のお疲れを労っ…え、慣れっ…!?

「………」

私も泰花様方の様な猟兵になれますでしょうか…いえ、頑張ればきっと


夏祭りがUDCアースという事もあり、どこも馴染みのある光景
ですが、逆にそれが感深いものに見える
提灯が至る所にあり街道を照らしていて、それはとても幻想的な風景の様

「…これは?」

泰花様がくださったものを見遣れば、それは清浄な鈴の根付
澄んだ音色は魔除けになる――その様な品を私に…?

では私からも何か

「折角です、同じ鈴の根付をお揃いで持ちませんか?」


土御門・泰花
玲琳さん(f37650)と参加

無事に妖怪さんが妖怪さんのままでいられて、誠に良うございました。
…様々に想いたいこともおありでしょう。少し、彼はそっとしておいて差し上げましょうか。
その代わり、と予めお誘いしていた玲琳さんを夏祭りへお招きします。

「…あら!私たちの戦いもご覧でしたか!?ふふ、大丈夫ですよ。よくある戦いです」
…あらあら?随分驚かれてしまいました。
ですがきっと…玲琳さんも私たちのようになれますよ。その想いを伝え、共にお祭りの屋台巡りへ。

何かお土産に良いものは…まぁ!これは素敵。
鈴の音は魔除けにもなりますゆえ。…え?私にもお揃いで?
ふふ、嬉しゅうございます。では、同じ鈴を買いましょうね。



 鬼神の様子に、そっとしておいた方が良さそうだと判断した土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)は、様子を見守りつつも輪の中央からそっと離れた。

「あの……泰花様、お疲れ様でした」

 そんな泰花に、練・玲琳(白雪の舞姫・f37650)が声をかけた。

「玲琳さん、いらしていただけたのですね」

 馴染みの後輩分の姿に、泰花は穏やかに笑みを浮かべた。

「ふふ、大丈夫ですよ。よくある戦いです」

 泰花がさらにそう返せば、玲琳が目を見開く。未だ猟兵としての経験が浅い身の彼女からすれば、涼し気にそう語る泰花の姿は遠い存在のようにも見えてしまう。

(……頑張ればきっと)

 その域に届くのだろう。そんな玲琳の思いを察してか、泰花は彼女の手を取って誘う。

「きっと……玲琳さんも私たちのようになれますよ。さあ、行きましょう」

 今、このひと時は、戦いの事は忘れて、祭りを満喫しよう。優しい手に誘われ、玲琳は頷いた。



 鬼神の案内で辿りついたのは歴史を感じる町並み。
 祭りということで屋台が立ち並び人が集うのは、小さな都市であっても賑やかなものである。
 玲琳はUDCアースを訪れたのも初めてである。それでも、祭りの景色というものはそうそう変わるものではない。玲琳は、見慣れない世界で目にする、馴染みの光景に感慨深さを覚え思わず足を止めた。
 そんな彼女に、泰花は手招きする。呼ばれた先は、護り鈴を扱う店だった。

「何かお土産に良いものは……と、見ておりましたのです」

 五色の布がつけられた鈴たちは、手に取ると綺麗な音がする。

「鈴の音は魔除けにもなりますゆえ。いかがでしょう」

 泰花の言葉に玲琳は頷いた。戦巫女でもある故、鈴の澄んだ音色は魔除けになることを、よく知っている。その様な品を自分へ見繕ってくれる優しさに、何かしら自分からも何かと思った玲琳は、おそるおそる提案する。

「折角です、同じ鈴の根付をお揃いで持ちませんか?」
「お揃いですね。ふふ、嬉しゅうございます」

 泰花は驚きつつも嬉しそうに笑みを返す。互いの幸せを願いながら護り鈴を買った二人は、そのまま互いのそれを交換して、穏やかに笑いあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リグノア・ノイン
何一つ、滞りなく完了致しました
なのに、どうしてなのでしょうか
胸の奥が詰まるようなこの感覚は
「Nein.今はまずお見送りを」

自身のエラーは後回しに
詰まる感覚のまま、まずは私が行えなかった
彼の手を取ったお二人に感謝を
「Verzeihung.お嬢様方。先程は妖怪様の為に有難う御座います」
きっと私の言葉では届かないと、そう考えます
「Wahrscheinlich.私の冷たい手と心では閉ざされたと」
だからこそ、これが最善だったとそう判断致します

今の私が出来る事と、出来ない事
それを考えて、伸ばせる腕の中で行える救いを
そして今はただ、妖怪様に祈りを
「Viel Glück.貴方様の行く先に、幸運を」


シリルーン・アーンスランド
ご移動を肯なわれ良うございました
賑やかなお祭りをご一緒しながらお声掛け致します

「ご覧あそばされませ。巫女さまと御身がおいでに
なればこそ此処の方々は護られ、このように」

ですがきっとお心残りがあられましょう
故にご提案を

「巫女さまがお戻りになった時、御身からと分かる
お手紙等、標をお残しになられては如何でしょうか」

恐らく須臾の間とは言えご用意のお時間はあられましょう

任を果たし終え離れられても「約束」を違えられた訳ではなく
それは御身ある限り永遠に輝くもの、そして戻られた
巫女さまにもきっと善き喜びとお伝え致しましたら
少しでもお心強くなられましょうか

遠い旅路に希望をお持ちになれますよう、心からの祈りと寿ぎを


神白・みつき
理性の色が戻った彼の瞳に、未練が全く無いかと言えば嘘になる。けれど、きっと彼はもう、その未練に囚われて過ちを犯すことはないでしょう。幸いなことに、意見を違える猟兵はこの場にはおりません。
遠くから耳を擽る祭の喧騒は故郷で聞いた祭囃子とは異なりますが、浮足立つような人々の楽し気な話し声だけはどの世界も変わらない。巫女としての御役目のある私はずっとその輪に加わることは無く、今宵も遠くから眺めるだけで充分。
けれど、亡き人を想いながら故郷を発つ彼と、罪なき人々の平穏な祭の夜に祈りを添えるぐらいは許されるでしょう。

「どうか、皆様の旅路が善きものでありますように」

WIZ/技能『慰め』で祈りを込めた舞で参加


深山・樹
妹のみつか(f37163)と

上手くいって良かっ…けどみつか一人で…でも

「…心配したけど、みつかは妖怪さんぜったい助けたかった
んだよね?」
押えつけるだけは、だめ
みつかは僕よりうんとかしこくてそれに同じ猟兵なんだから

…なんか叱られた犬か猫みたいな顔してる可愛い
「お祭り楽しもう?妖怪さんとも一緒に」

叱らない
でもこれからもできるだけ一緒にって思いながら
お祭りを歩く

好きなの買ってあげようって思ったけど
やっぱりみつかやさしい…
だったら僕も
「妖怪さん同じの食べよう」
みつかが好きなリンゴ飴
妖怪さんにも、みつかにも、思い出に

泣いたみつか抱きしめて…そうだ!
「妖怪さんまた会おうよ。みつか、連れてく」
「約束だよ!」


天風・光華
いつき兄様(f37164)と一緒なのー。
兄様すっごく心配して怒ってるの分かるの。
光華きっと猫さんだったら耳ペタンなの。
「でもでも、兄様。妖怪さん助けてくれてありがとうなの」
妖怪さんも落ち着いて光華もほんとに嬉しいの。

「妖怪さん!巫女さんが好きだったもの教えてほしいの!」
きっとお祭りでも思い出があると思うの!
光華が代わりに楽しんであげるの!
それに兄様の分と妖怪さんと巫女さんの分も!
「妖怪さん妖怪さん、これ巫女さんと一緒に楽しんでなの!」
渡したら急に寂しくて涙が出ちゃうの。
でもきっと妖怪さんは巫女さんに会えるの。
だから大丈夫なの。
光華も兄様が居てくれるから寂しくないの。
ちゃんと手を振って見送るの。



(……皆、付き合わせてしまったな)

 祭りの喧騒を潜り抜け辿りついた小さな社で、鬼神は頭を下げる。共に祭りを歩き抜けてきた一行は其々にそんなことはないと声を重ねた。

「妖怪さんが落ち着いて光華ほんとに嬉しいの」

 だから一緒にお祭りにいきたかったのだと、天風・光華(木漏れ日の子・f37163)が訴える。その手には、祭りの道中で深山・樹(処刑人・f37164)に買ってもらったりんご飴がある。

「そうだよ。僕も同じ」

 鬼神の分もと提案したのだが、人の目に触れぬ身故に食べる事は叶わないと、託される形になったもう一つのりんご飴を手にした樹もその傍らで言葉少なく頷いた。
 単身依頼に赴いた妹を追って後から合流した樹は、戦いの直後こそそれを諫めたりする姿があったが、祭りをそぞろ歩くうち妹と一緒に年相応の表情を見せるようになっていた。

「ご覧あそばされませ。
 巫女さまと御身がおいでになればこそ此処の方々は護られ、このように」

 鬼神にそう声をかけたシリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)が示すのは、この社の縁起を記した看板のようなもの。名前こそかたられてはいないが、鬼神を従える巫女が怪異から里を護ったという旨が、昔語りのような形で語られている。

(……いつの間にか、時は流れているのだな)

 一同と共に看板を読んだ鬼神がぽそりと零した。

「時は流れたかもしれませんが……」

 神白・みつき(幽寂・f34870)が、言葉を探しながら言葉を紡ぐ。

「私の故郷で聞いた祭囃子とは少し異なりますが、浮足立つような祭の喧騒は、人々の楽し気な話し声だけは、変わりません。
 おそらくは、ご存じの祭りの様子とも、変わらないのではないでしょうか」

 巫女としての御役目を背負うみつきはずっとその輪に加わることは無く、ただ遠くから見守るだけだった。だが、此処まで歩く中で直に祭りの空気に触れてみれば、それはかつてと違う感慨を彼女に与え、その背をそっと動かしたようだ。
 
「巫女さまがお戻りになった時、御身からと分かるお手紙等、標をお残しになられては如何でしょうか」

 シリルーンがそっと鬼神に声をかける。いつか巫女が「戻ってきた」その時に、きっとそれは善き喜びとなるだろう、と。

(……いや、辞めておこう。かのひとに、私のような囚われ方をしてほしくはない)

 やや考えた後、鬼神はシリルーンの提案を辞する言葉を返す。
 輪廻の輪というものがあるとしても、ひとである彼女が覚えている保証もないのだ。それであれば、過去の残滓など新しい道行には不要なものであろう、と。鬼神はそう語る。

「お心を決めておられるのでしたら、差し出がましい事を致しました」

 シリルーンがそう頭を下げると鬼神は黙って首を振った。

(いや、その気遣いに感謝する。それこそが貴殿の美徳なのであろう)

 そう鬼神がシリルーンに伝えると同時に鬼神の周囲に蛍火のような光が溢れる。

(……どうやら時が来たようだな)

 穏やかにそう言う鬼神の表情はどこか晴れやかで、声音と同様に穏やかなもの。

「どうか、その旅路が善きものでありますように、祈りを添えさせてください」

 みつきはそう言うと、舞を舞い始める。亡き人を想いながら故郷を発つ彼と、罪なき人々の平穏な祭の夜に捧げる祈りの舞。蛍火のような光と共に舞う姿はどこか幻想的で、目を惹く。

「|Viel Glück.《ご多幸を。》貴方様の行く先に、幸運を」

 ここまで黙って一同を見守るように居たリグノア・ノイン(感情の渇望者・f09348)が、頭を下げた。

「遠い旅路に希望をお持ちになれますよう」

 シリルーンも笑みを浮かべ一礼をする。

「きっと妖怪さんは巫女さんに会えるの。だから大丈夫なの」
「妖怪さんまた会おうよ。みつか、連れてく。……約束だよ!」

 伝えながら別れに涙を浮かべて鬼神へ手を振る光華を抱きしめながら、樹も言葉をかける。
 彼らの言葉と舞に見送られながら、鬼神は光と共にその姿を消した。



 名残のように残っていた蛍火ような光が、送り火のように揺らいで消えていく。それが全て消え、みつきの舞が終わる。

「|Verzeihung《失礼致します》、お嬢様方。先の戦いの折は妖怪様の為に有難う御座います」

 胸の奥が詰まるような感覚に突き動かされリグノアが声を掛けたのは、戦いの最中に鬼神の手を取りに行ったシリルーンと光華。シリルーンは首を傾げ、光華は兄の腕の中で不思議そうに見上げる。

「|Wahrscheinlich《恐らくは》……私の冷たい手と心では閉ざされたと、そう……考えます」

 未だ感情もこころも未熟な自分には行えなかったことを迷わず行った二人への、リグノアの精一杯の賞賛の言葉だった。

「よくわからないけど……お姉さんは、冷たくないと思うのよ」
「ええ。わたくしも、そのように思いますわ。
 本当に冷たいのなら、そのような表情はなさいませんもの」

 二人の応えに、リグノアはどう返して善いものか判らなかった。どうやら自分は、意識せずに何かしらを示しているということなのか。まだまだリグノアの学びは続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年08月28日


挿絵イラスト