Plamotion Little Actor
●君が思い描き、君が作って、君が戦う
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』。
それがこのホビースポーツの名である。今はまだ公式競技化はされてはいないが、心・技・体を兼ね備えたスポーツであるとされている。
『プラクト』とは、自身の作成したプラスチックホビーをフィールドに投入し、自分自身の動きをトレースする『モーション』か、もしくはプラスチックホビーに搭載された操縦席を操縦する『マニューバ』かでもって動かす競技である。
人型ロボット、美少女プラモデル、カーモデル、クリーチャー、ミリタリーモデル。
どのプラスチックホビーを使用するにしても、必ず『ユーベルコードを発するための装置』を組み込まなければならない。
こうすることで、あらゆるプラスチックホビーがアスリートによって動かされ、彼等の動きを忠実に再現するのだ。
勝敗条件は、自分のプラスチックホビーが完全に動かなくなることのみ。
ただし、他のスポーツ競技が全てユーベルコードを使う過酷な競技であるように『プラクト』もまた同様である。
前述した勝敗条件が『プラスチックホビーが完全に動かなくなること』というのは即ち、プラスチックホビー本体に組み込まれた『ユーベルコードを発するための装置』の破壊である。
どこに組み込むのかもまた戦略の幅を広げるし、使用するプラスチックホビーの特性によって立ち回りも変わってくるだろう。
『プラクト』は自分の『心』で思い描いたプラスチックホビーを自分で作る『技』術と、それを動かすアスリートとしての『体』がなければ成り立たない高度なホビースポーツ競技であると言えるのだ――。
●幸せな夢を見る
『プラクト』はプラスチックホビーを作って戦うという性質上、どうしても競技人口の年齢が低年齢化するという体質を盛っているがゆえに、未だ公式競技化されていない。
だが、『プラクト』に参加する少年少女アスリートたちにとって、それは大した問題ではない。
「アッハッハッハ! 遅い遅い! そんなんじゃ、私の『セラフィム』には追いつけねーぜ!」
「うわぁ!?『アイン』ちゃん、それずるいよ!」
「んなこたぁねーよ! こういうのはさ、本気でやらねーとなぁ!!」
『プラクト』のフィールドに響くのは、少年少女たちの歓声であった。
彼等は皆、一様に模型店のスペースに供えられたフィールドの様子を写すスクリーンに釘付けになっていた。
スクリーンの中では、フィールド内を縦横無尽に駆け抜け、戦うプラスチックホビーがアニメーションのように映えばえしい活躍を見せていた。
白いロボット型のプラスチックホビーが、緑色のロボット型を打倒し、画面に白いロボット型の勝利を告げる表示が騒々しく映し出される。
「よっしゃー! これで20連勝だぜ!」
『アイン』と呼ばれた少女がにこやかに笑っている。
「やっぱり『憂国学徒兵』シリーズのプラモデルは、強いなぁ!」
「だろー? 私はこの『熾煌』が好きなんだよなぁ。白い『タイプ・ヒルド』が一番扱いやすいって思うんだぜ!」
『アイン』と呼ばれた少女が、自身の愛機であろうプラスチックホビーを手に同じ『プラクト』に興じる少年少女たちと和気藹々と語っている。
だが、その時、模型店の自動ドアが開き、一陣の風が吹き込む。
初夏のカラッとした空気であったが、それはどんよりとした雰囲気をはらんでいるように思えただろう。
「――……此処がそうですか。『五月雨模型店』。『プラクト』のチームがあるというのは」
入ってきたのは『アイン』と同じ年の頃の少女であった。
彼女の背後にはなんでか体操服に身を包んだ『騎馬戦軍団』の中高生くらいの女子生徒たちが立ち並び、とてつもない威圧感を放っている。
「なんだ、お前ら? 妙な雰囲気だしやがって!」
「我等は『サスナー第一チーム』。『五月雨模型店』の皆さんに『プラクト』による勝負を挑みに参りました。私の名は『ツヴァイ』。人呼んで、『迅雷』」
「『憂国学徒兵』気取りってやつかよ。大仰なこと言いやがって。勝負を挑むってことは、今すぐにか! いいぜ、やろうぜ!」
「気の早い方です。勝負は一週間後。御存知の通り『プラクト』はチーム戦。どちらかのチームのプラスチックホビーが全滅するまで続けられます。ですが、我等『サスナー第一チーム』は、ご覧の通り膨大な数を有しています。このままでは勝負にすらなりません」
『ツヴァイ』と名乗った少女が笑う。
「だから、一週間という猶予を与えて差し上げます。それまでに仲間を増やしておいてくださいね? 歯ごたえのない戦いは、私の最も嫌うものです」
「あぁん? 敵に塩を送るみてーな真似しやがって!」
「『閃光』とあだ名される『アイン』さん。私に迫ることができますか? それとも白旗を上げていますか? どちらにせよ、楽しみにしておりますよ――」
●プラモーション・アクト
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)が何やら真剣な顔をしてカチャカチャやっている姿であった。
何を、と思ってみていると、彼女の顔がぱぁっと明るくなる。
「できました! 最強の幻影と名高い量産機、その名も――」
わー! と明らかにテンション高い顔をしていた彼女の頬が真っ赤に染まる。やらかしたって顔をしていた。
「……皆さんは『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』と呼ばれる競技をご存知ですか?」
流した。
『プラクト』とはホビースポーツである。まだ公式競技化されていないスポーツであり、自身でプラスチックホビーを作って、戦うスポーツなのだ。
ユーベルコード発生装置を組み込んだプラスチックホビーを自分自身の体で操作し戦う。
勝敗条件は『ユーベルコード発生装置の破壊』であり、チーム戦はどちらかが全滅するまで。そして、そのチームメイトの数は無制限。
即ち、オブリビオン『ダークリーガー』に寄って倒されたチームは全員が『ダーク化』し、そのまま戦力として吸収されてしまう。
「今回は『五月雨模型店』と呼ばれるチームが標的とされているのです。ただし、効率よく『ダーク化』させるためにメンバーを集める期間を敢えて『ダークリーガー』は突きつけているようなのです」
ねえ、ところでそのプラスチックモデルのやつは。
「そこで、皆さんには『五月雨模型店』に参加しプラスチックホビーを作成し、『プラクト』を練習して頂きたいのです。皆さんが参加すれば、きっと『ダークリーガー』の『サスナー第一チーム』の猛攻もしのげるはずなのです!」
ぐいぐいナイアルテが来る。
有無を言わさぬ早口。
「さあ、皆さん! どんなプラスチックホビーでもいいのです! ロボット、クリーチャー、戦闘機に洗車にカーモデル! はては美少女プラモデルだってかまわないのです! 『レッツ・アクト』です!!」
あ、それが合言葉なんだ。
猟兵たちは勢いでごまかそうとするナイアルテに若干冷めた視線を送りつつ、アスリートアースにおいて未だ公式競技化されていないスポーツ『プラクト』習熟のために、なんとなーく転移するのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアスリートアースにある未だ公式競技化されていないスポーツ『プラクト』のチーム『五月雨模型店』を救うシナリオになります。
※『プラクト』は正式には『プラモーション・アクト』と呼ばれるホビースポーツです。
フィールド内に自作したプラスチックホビーを投入し、アスリートの動きをトレースする『モーション』タイプと、操縦席を作り込んで操作する『マニューバ』タイプが存在しています。
主に『モーション』タイプはロボットや美少女プラモデル。『マニューバ』タイプは、カーモデルやミリタリーモデルとなっております。
●第一章
冒険です。
ダーク化チームである『サスナー第一チーム』との試合を控えた『五月雨模型店』に接触し、『プラクト』に慣れるべく、ルールを学び、自分のプラスチックホビーを作成、練習しましょう。
今回はチーム戦です。
チームに参加する人数は規定されておらず、一人から数百人以上であっても構わないというざっくりルールです。このルールのため、『ダークリーガー』は次々とチームを撃破し、吸収することで、雪だるま式に『ダーク化』チームメイトを増やしているのです。
この章でトレーニングに成功した皆さんは、第二章、第三章と自動的にプレイングボーナスを得られることとなっております。
●第二章
集団戦です。
いよいよ試合当日です!
ダーク化したチーム『サスナー第一チーム』のアスリートは『ツヴァイ』と呼ばれる少女を筆頭に『騎馬戦軍団』を主軸とした集団戦に慣れた『プラクト』アスリートたちばかりです。
ルールは単純。
プラスチックホビーが撃破されたとカウントされるのは、プラスチックホビーに組み込まれた『ユーベルコード発生装置』の破壊のみです。
扱うホビーによって位置が違うので、一筋縄ではいかないでしょう。
●第三章
ボス戦です。
チーム戦はいよいよクライマックスです。
思いがけず膠着した試合に『ダークリーガー』、『ブラッド・エンプレス』が『サスナー第一チーム』の『エース』としてフィールドに姿を現します。
試合に勝利すれば、選手たちのダーク化は解除され、ダークリーガーも消滅します。
それでは、新たなるスポーツ競技『プラクト』を巡るダークリーガーと戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『その他スポーツを練習しよう』
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POW : 体当たりで果敢にチャレンジする
SPD : 器用にコツを掴みながら練習する
WIZ : ルールや戦術の理解を深める
イラスト:十姉妹
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「あんな勝負受けちまってどうするんだよ、『アイン』ちゃん! こっちにはあんなにチームメイトいないんだぜ!?」
「そんなこと言ってもよー……しかたねーじゃん。だって、あいつなんか腹立つんだもんよ」
「また、そういうこと言う……でも、ホントどうしよう」
「あいつら、最近ここらのチームを片っ端から荒らしてる連中なんじゃないかな? 隣町のチームもこの間チーム戦で全滅させられたって聞くし……」
『五月雨模型店』の前で少年少女たちが難しい顔をしている。
自分たちの『プラクト』の技術は割と大したものであると自負している。
けれど、対する『サスナー第一チーム』の数は膨大と言ってもいい。あれだけの数を相手にまともに戦えるとは思えない。どう考えても、こちらのチームメイトの数が足りなさすぎるのだ。
「でもなぁ……みんながみんな『プラクト』に興味あるわけじゃないし」
「弱気になんなって! なんとかなるさ!」
『アイン』と呼ばれた少女が、このチームのリーダー格なのだろう。バシバシとチームメイトの少年少女たちの背中を叩き、発破をかける。
だが、彼女にも現実がしっかり見えていた。
みんなの言う通りだ。
どれだけ自分に自身があっても、どうにもならないことがある。
「ともかく! みんな今日は一度帰って自分のプラモをきちんと整備しようぜ! しつよりりょー! って言うだろ!」
そんなふうに自分自身をも鼓舞するように『アイン』は頷いて、仲間たちを帰す。
だが、『アイン』だけは一人立ち止まったままだ。
「……どうする……? 誰か大人に助っ人を頼むか? いやいや、駄目だ。生半可なやつを連れてきても、ただやられるだけだ……! でもっ!」
そんな彼女の顔に影が落ちる。顔を上げた先にあったのは見慣れぬ者たち。だが、どうして確信があった。
不安でいっぱいになっている胸をさやかな風で吹き飛ばしてくれるような。
「……あ、あんたたちは……!?」
そんな彼女の前に猟兵たちは現れるだろう。
それこそ彼女がアニメでみたピンチに現れるヒーローのように――。
メサイア・エルネイジェ
はて?どこかでお聞きしたお名前とお見えになったお顔の気がしますわね
まぁこまえけぇこたぁよろしいんですわ
それよりもプラクト!おプラモデルでバトルですわね!
要はちっせぇキャバリアですわ!わたくしにお任せあれ〜!
兎にも角にもおプラモを作らねばお話しになりませんわね
わたくしにお似合いの物を見繕ってくださいまし
恐竜型がよろしいですわ!
パーツ数多いですわね!妖怪パーツ隠しにご注意ですわ!
こちらを黒く塗って…完成ですわ〜!
名付けてビルドヴリトラですわ!
お次は練習ですわ
わたくしの動きをおプラモが真似っこするのですわね
お減量に丁度よろしいですわ!
キャバリアとはまたお勝手が違いますわね…覚えるより慣れろですわ〜!
『五月雨模型店』。
それはアスリートアースの一つの街にある個人経営の模型店である。新気鋭のホビースポーツである『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』のフィールドを完備しており、豊富な品揃えで知られている。
周囲に小中学校が存在する学区内であることからも、放課後には少年少女が集まる遊び場にもなっている。
「はて?」
そんな場所に場違いの皇女のような姿をしたメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)が訪れる。
彼女を見上げる少女の顔になぜだか見覚えがあるというか、面影があるというか。
というか、名前と面影が一致するような気持ちになりながらメサイアは首を傾げたのだ。
「こ、コスプレか……!? コスプレイヤーなのか!?」
『アイン』と呼ばれる少女が驚愕しきりである。
メサイアの格好はまさにお姫様。ザ・プリンセス! 見たことのない人物に『アイン』は若干たじろいだ。
しかし、そんな『アイン』のたじろぐ姿にメサイアは泰然自若として振る舞う。
「まぁこまけぇこたぁよろしんですわ」
「いいのか!? え、本当に!?」
「ええ! それよりも『プラクト』! おプラモデルで、おバトルですわね! 要はちっせぇキャバリアですわ! わたくしにお任せあれ~!」
え、えー!?
『アイン』にとっては驚天動地の展開である。
なんかお姫様っぽいコスプレイヤーがきたと思ったら、なんかこっちに都合の良い展開になっている。
「兎にも角にもおプラモを造らねばお話になりませんわね」
「え、作ってないのか!?」
「ええ、ですからわたくしにお似合いの物を見繕ってくださいましね」
微笑むメサイアに『アイン』はちょっとドギマギした。
普段彼女が作っているのは『憂国学徒兵』シリーズのロボットものばかりであった。そんな彼女であるから、メサイアのようなお上品なお姫様みたいな人には何が似合うかよくわからなかった。
美少女プラモデルとかがいいのかなって思って、『五月雨模型店』の店内に入れば、メサイアの一喝の如き声が響き渡る。
「そう、恐竜型がよろしいですわ!」
「――!?!?」
驚きの連続である。おおよそ姿格好からは考えつかないチョイス。びっくりしつつも『アイン』は、じゃあ、これかなって、動物型のメカががっちゃんがっちゃんやるプラモデルを指差す。
「『フルーインフェルノ』シリーズ、けっこうパーツ数多いんだけど、その分可動域がスゴイから、『プラクト』には向いてると思う」
「なるほどですわね~……って本当にパーツ多いですわね! 妖怪パーツ隠しにご注意ですわ~」
メサイアと『アイン』はメカ恐竜型プラモデルの老舗『フルーインフェルノ』シリーズから、作中でも、販売数でも屈指の人気を誇る『暴竜型』を手にとって作成を開始する。
バリ取り、合わせ目消し、ギミック。
どれをとっても細かいパーツのオンパレード。しかし、組み上がったときの達成感は尋常ではない。
脳からこう、なんていうか、アドレナリンどぱどばですわ。
「カラーリングは?」
「黒ですわ! 黒! 黒! パワーイズブラックですわ~! 名付けて『ビルドヴリトラ』ですわ!」
完成したメカ恐竜型の『ビルドヴリトラ』を手にメサイアと『アイン』はきゃっきゃしている。
だが、これで『プラクト』は終わりではない。
そう、『プラクト』は作って、戦うホビースポーツである!
「わたくしの動きをおプラモが真似っ子するのですわね」
「そうそう。このフィールドにセットして……そんで、スイッチいれると……」
メサイアの周囲がユーベルコードの輝きに包まれる。
選択肢には、プレイヤーの動きを追従させる『モーション』タイプと、メカの内部に再現された操縦桿を操作する『マニューバ』タイプが存在している。
「……お減量に丁度よろしいですわ!」
メサイアはすっかり目的がすり替わっている気がするが、『アイン』の『タイプ・ヒルド』と練習を開始する。
いつもは慣れているはずの『ヴリトラ』の動きとは異なる操縦方法。何より『ビルドヴリトラ』の巨体は重たい。
動くのにも一苦労である。
「動きが重たいって思ったのなら、それは鍛え足りてないってことだぜ! じゃんじゃんいくぜ! 試合は一週間後! ビシバシ! 私のことは、コーチと呼べ~!!」
『アイン』もノリノリである。
「覚えるより慣れろですわ~!」
メサイアは額に汗しながら『プラクト』の技術を習熟していく。慣れないことも多い。けれど、それでも楽しいと思えるだろう。
流れる汗は爽やかに。けれど、決戦の時は確実にやってくる。それまでどれほどのことができるかわからないが、メサイアはおそらく決戦の日までには目標体重をクリアしていることだろう。たぶん、めいびー――!
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
ふふふふふ。
こういうのは大得意だよー!
キャンプで充電もばっちりだし、なにより……。
美少女フィギュアおっけーって言ったね。言ったよね!
これはもう『菜医愛流帝』フィギュ……。
ごめん。ごめんて!
謝るから本気の涙目は許してー!?
……かぁいいけども(ぼそっ)
で、でもそれなら、
ナイアルテさんと同じのにしようかな。
この子が動くところ、ナイアルテさんも見たいよね!
模型店のひとにルールを確認して、できる限りのチューンをしていくよ。
最強の幻影で量産機なら、バランスはいいと思うから、
基本はそのままで、駆動系やアクチュエータ、追随性なんかをブラッシュアップ。
タイプはマニューバだよね。
『ユーベルコード発生装置』はふくらはぎに仕込めば、バランス取りやすいかな。
武器は、やっぱり遠距離メインかな。
剣と盾も持ってはいくけどね。
完成したらさっそく試運転と、とっくんだね。
わたしの運動能力は、メイド服で補っていくとして、
本番前に「勝ってこい」と命令してもらえれば、完璧かな!
ナイアルテさん、天の声的に命令してくれないかなー?
思い描き、作り、戦う。
それが新気鋭のホビースポーツ『プラモーション・アクト』である。
自分が作ったプラスチックホビーが実際にフィールドを駆け抜け、撃ち合い、斬り合う。
その姿が設置されたモニターに映し出される。
宛ら劇中のようなシーンが連続し、それを自分たちが動かしているという快感は、低年齢層でなくともわかるものであったことだろう。
「ふふふふふ」
そんなホビースポーツ、通称『プラクト』を前にして菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の心は燃え上がっていた。
「こういうのは大得意だよー!」
先日のキャンプで気合もモチベーションも充填完了している彼女。
もともと、こういうものが得意であるということも含めても彼女はテンションが高い。『五月雨模型店』に差し迫っている『サスナー第一チーム』の『ダークリーガー』。周囲の『プラクト』チームが次々と敗れ『ダーク化』しているという現状を顧みれば、否応なしに気分が高まっていく。
そして、なによりも。
「美少女フィギュアおっけーって言ったね。言ったよね!」
言ってない。
美少女プラモデルとは言ったが、フィギュアとは言ってない。関節を仕込んだりすれば可能かもしれないが、確実に理緒が考えていることはわかる。
「これはもう『菜医愛流帝』フィギュ……」
言わせねーのである。
それ以上はいかんのである。
わりと涙目になっている者だっているんですよ! それってば、黒歴史って言うんですから!
理緒はならしかたないとばかりにうなずく。
涙目は許して欲しい。けれど、可愛いからいいやとも思っているところが、こう転んでもただでは起き上がらないって感じで、底が知れない。
「で、でもそれなら同じのにしようかな」
理緒が言っているのはグリモア猟兵がグリモアベースで完成されていたプラスチックホビーのことだ。
最強の幻影とも名高い量産機。
お前のような量産機がいるか、とかそんなことを言われているプラスチックホビーである。
組み立てるのにも難易度が高いし、何より機体の塗装が大変なのである。
理緒からすれば、同じものを作りたいと思っていたし、このプラスチックホビーが実際に動くところもみたいだろうと思ってのことだ。
なんとも理由の中心がずれている気がしないでもないが、早速『五月雨模型店』に入店して理緒は店主に諸々のことを教えてもらう。
店主は理緒の姿を認めると一つうなずく。
「できる限りのチューンをしていきたいんだけど、工具とかって……」
「レンタルがあるよ。パーツは購入してもらうことになるが」
「大丈夫。スペースも完備してるんだね。ここで塗装もオッケーなのが嬉しいな!」
そう言って理緒は早速組み立てていく。
基本の形はそのまま。
バランスのよさを活かして、駆動系やアクチュエータ、追随性をブラッシュアップさせようと理緒は、改良や形状、駆動範囲など確認して組み上げていく。
「……うーん、此処ってどうしたらいんだろう。駆動範囲を広げようとすると、どうしても装甲削らないといけないし……そうすると被弾した時に転倒しちゃうし……」
この機体で『プラクト』に参加するのならば、転倒することだけは避けたい。
ならば、理緒はふくらはぎに『ユーベルコード発生装置』を組み込む。
こうすることで重心が下に下がって転倒を防止できるはずだ。
「面白いアイデアだ。だが、被弾したときのリスクが高まる」
店主の言うことも尤もだ。
だが、長く戦い続けるというのならば、地上戦においてバランスが取りやすいというのは、大きなアドバンテージにもなる。
リスクを負って得るものがあるのならば、理緒はそれを試さずには居られないだろう。
「武器はやっぱり遠距離メインかな」
剣と盾は標準として装備する。左右のカウンターバランスを取りながら、理緒は完成した機体をフィールドにセットし、試運転と行くのだ。
「タイプ『マニューバ』を選択っと……本番前に『勝ってこい』って命令してもらえれば完璧かな!」
理緒はメイド服に身を包む。
これもまた一種の戦闘服だ。こうやって気合を自分自身に入れることも大切だ。理緒はグリモア猟兵が応援してくれることを希望しつつ、ともあれ、目の前のことに集中する。
『マニューバ』は『モーション』にくらべて、アスリート本人の体力の消費は少なく済む。
だが、その代わり、煩雑な操作系統を一人で制御しなければならない。
速度の維持、バランス、武装の管理。
『モーション』であれば、本人の運動能力が全てに直結し、そのあたりのことは考えなくていい。直感で動かすことで『モーション』タイプは、体力の代わりにアドバンテージを得る。
『マニューバ』が逆だ。体力は温存できるが、細やかな動きは知識と手先に寄って管理される。
自分の身体能力以上の動きをアドバンテージとして得られるのは言うまでもない。
「じゃあ、練習してこうかな!」
フィールドに降り立ち、理緒は機体を動かす。
足を踏み出す。ふくらはぎに『ユーベルコード発生装置』を配置したのは間違いではなかった。
動きの安定感が凄まじい。
出力も十分。接近されても接近戦で圧倒できるだろう。しかし、それ以上に『マニューバ』による操作性は非常に悪い。
少しでも集中を切らせば、即座に動きがカクついてしまう。
「こういうところも改良の予知、あり、かなー?」
とは言え、決戦まであと数日はある。
機体の操作の習熟を重ね、理緒は己の組み上げた最強を恣にする機体のチューニングを急ぐのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
わ、プラモだぁ!
にぃなちゃんこーゆーの大好き!
ここの少年少女達に、大人の【メカニック】なおねーさんの本気を見せちゃおうかな☆
とゆー事でバイクのプラモを見繕おう。
テンプテーションをモデルに改造するから、そんな感じの丸みがありつつシャープなのがいいな。
まぁ全然似てなくても、自分で理想に近付けて行けば良い!
後はパテとプラ板を自前の工具で加工して何とかしちゃうもんね!
ユーベルコード発生機構はエンジン部に付けるけど、どこまで無茶な事出来るのかな?
変形機能が搭載出来たら最高なんだけどな!
そんなこんなでマニューバタイプで操縦出来て重火器満載の戦闘バイクが完成!
名前は……リトルテンプテーション、で行こう!
プラスチックホビー。
一言で言っても、商品は多岐に渡ることだろう。
動かして遊ぶことを前提とした頑強なるモデルもあれば、固定して飾ることを目的としたもの。かと言えば、そのどちらの良い部分も吸収したものもある。
言ってしまえば、プラスチックホビーは懐の深いホビーであるといえるだろう。
そんなプラスチックホビーを使ってアスリートアースのアスリートたちがスポーツ競技をすることは可能であっただろうか?
現実的に言えば答えはノーである。
けれど、『ユーベルコード発生装置』がそれを可能にした。
超人アスリートたちが発露するユーベルコード。それを誘引し、プラスチックホビーに反映させるシステム。
プラスチックのホビーは、フィールドの中で駆け回り、互いに撃ち合い、斬り合う。そして、『モーション』と『マニューバ』の操作系統によって自身の動きをトレースする。
心と技、体。
そのいずれもが欠けては勝利を得ることは出来ない。
そんな『プラモーション・アクト』――『プラクト』を前にニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)の目がキラキラと輝く。
「わ、プラモだぁ! にぃなちゃんこーゆーの大好き!」
ニィナは『五月雨模型店』のショーケースの中に飾られたモデルを見て、大はしゃぎである。
彼女はメカニックでもある。
ならばこそ、こういした作製技術は子供たちのものとは比較にならないだろう。
「お店のおじさん、バイクのプラモデルってある?」
「あるよ。そこの棚だ。『プラクト』に出るのなら、サイズの規定はない。けれど、なにか大掛かりな仕掛けを組み込むのなら……」
「大きなスケールのがいいってことだよね☆」
ニィナは心得たとばかりにスケールの大きなバイクのプラモデルを手に取る。
細部まで再現されたプラモデルはパーツわけも細かく、作るのは大変だ。けれど、ニィナは改造前提でそれを選んだのだ。
「うんうん、この丸みがありつつシャープなのがいいな」
自分のバイクである『Z17テンプテーション・カスタム』とは違う型であるが、構わない。
自分の理想に近づけることが自分の手でできるのがプラモデルの良いところだ。
「一応組み上げたけど……うーん、『ユーベルコード発生装置』はエンジン部につけるとして……どこまで無茶な事ができるかな?」
理想を言うのならば変形機能をつけたいところである。
具体的に言うのならば、テンプテーション・ギガンティック、即ちバイク形態から二足歩行のロボット形態への変形である。
「できないことはないだろう。けれど、変形機構ゆえにフレームの強度が足らなくなる。所詮はプラスチックであることを忘れてはならない。ユーベルコードで強度を増す、そういった手段は可能かもしれないが……」
ニィナは店主の言葉にうなずく。
やれることは全部やってみよう。なにせ、ニィナは少年少女に大人のおねーさんの本気を見せようとしているのだ。
大人とは子供らの前に立ち塞がる壁ではない。
手本になるべきだ。
おとなになるということは可能性の中からなにか一つを選び取ることではなく、可能性を拡張することなのだと。
だからこそニィナは己の技術の限界を超えてプラスチックのバイクを改造していく。
「名前は……『リトルテンプテーション』、で行こう!」
ニィナは完成したバイクを手にフィールドにセッティングする。後は『マニューバ』による操作を覚えていくだけだ。
簡単なことではない。
自分の体は此処に。
けれど、戦うのはプラスチックホビーだ。己の動きをトレースするシステムは『マニューバ』によって操作される。
体力の消耗は抑えられるが、煩雑な仕様は集中力を削っていくだろう。
けれど、ニィナは構わなかった。自分の大好きを詰め込んだプラモデル。それを動かすという楽しさを笑いながら、フィールドに示すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
迅瀬・ナクタ
「なるほど、似たスポーツはやっているが操作性が全然違う……本番までに慣れるしかねえな。」
自分が持っている小型ロボット『OM-NATAKU』に似たプラスチックホビーを制作。
槍のような武器を持った人型のロボットを『モーション』で操縦します。
後はひたすらに練習
経験者や他の猟兵に模擬戦を挑みながら操作を慣らしていきます。
アドリブ・他キャラとの絡みは歓迎です。
『プラモーション・アクト』。
それは正式に競技化されていないホビースポーツの一つである。
メーカーがこぞってこの手のホビースポーツを提案し続けるのは自社の商品を買ってもらうためだ。
けれど、『プラモーション・アクト』はどんな他社製品だろうが、プラスチックホビーである限り、制限を設けていない。
それはアスリートアースにおいて、アスリート本人の資質が勝敗を分かつからである。
プラスチックモデルを作る『技』。勝利を願う『心』。それを可能にする『体』。
そのどれが欠けても勝利はあり得ない。
だからこそ、『ユーベルコード発生装置』を組み込んだプラスチックホビーは、アスリートの動きを反映し、フィールドの中を駆け抜けるのだ。
「なるほど、似たスポーツをやっているが、操作性がぜんぜん違う……」
迅瀬・ナクタ(闇を抱くトイロボバトラー・f37811)は本来異なるスポーツのアスリートである。
『トイロボバトル』。
それが彼の本来の戦うスポーツである。
けれど、彼は元は『ダークリーガー』に倒され、『ダーク化』していたアスリートの一人であった。
年端も行かぬ少年である彼が何故今も猟兵として戦うのか。アスリートとして戦うのかには理由がある。
落ちていた謎のロボット『OM-NATAKU』を手にしたのが運命であるというのならば、病床に伏せる彼の母親をすくための治療費を稼ぐために『トイロボバトル』に身を投じるのまた運命であったのかもしれない。
「……やっぱり動かし方が違う。自分の体の動きが全部機体に反映される。オレがためらえば、機体もためらう。逆に言えば、オレがオレを信じられるのなら、機体も機体を信じることができる、か……」
「おう! そういうこったな! 私は『アイン』!『五月雨模型店』のチームに参加してくれるんだろ? ソロ練も大切だけどさ、やっぱ実戦してなんぼだよな!」
ナタクがフィールド内で操作性を確認していると、目の前に白い人型ロボットのプラスチックホビーが降り立つ。
この『五月雨模型店』チームのリーダーともいえるアスリート。
彼女なナタクよりは年下のようであるが、なんだか偉そうである。
「そっちも『モーション』タイプなんだな! ならさ、私とやろーぜ!」
ワクワクした目をしている。
ナタクのように母親の治療費を稼ぐ、という確固たる目的のない、屈託のない笑顔であった。
ただ遊びの延長線上。
そのために『プラクト』をしている。生ぬるいと思うだろうか。それとも、練習相手には良いと思っただろうか。
どちらにせよ、ナタクには理由がある。
戦う理由が。
「本番前に壊れても知らないぜ」
「いんだよ、そういうのは。壊れたら直せばいいんだからさ! それより見せてくれよ! その機体の凄さをさ! 感じてるんだぜ、あんたが『やるやつ』だってことはさ!」
ナタクは機体に槍を構えさせる。
『モーション』タイプの欠点は体力を大きく消費するということだ。
けれど、逆に言えば、アスリート自身の体力があるのならば、無尽蔵に戦えるということでもある。
「じゃあ、慣らしに付き合ってもらおうか!」
ナタクは『アイン』の白いロボットに仕掛ける。槍の一撃を躱す白いロボット。
打ち込まれる弾丸を槍で弾きながら、さらに距離を詰める。
互いに動きは悪くない。
『モーション』タイプの良いところだ。操作性がダイレクトに伝わり、己の反射神経の隅々までがホビーと一体化していることを感じさせる。
「いいじゃん! やるじゃん!」
「当たり前だ。この程度で終わりだと思うな」
ナタクと『アイン』の模擬戦は更に続く。加熱し、さらに高まっていくモチベーション。
互いに譲らぬ一進一退。
理解する。これがホビーと一体化するということ。ならば、ナタクは確信するのだ。この『プラクト』を習熟すれば、きっと『トイロボバトル』にも活きてくると――。
大成功
🔵🔵🔵
神谷・マリー
新谷・むと(f37795)と参加
クックック、パパにトイロボを作って貰った時に、別の団体で類似のロボットを開発中とかいう噂は聞いていたわ。
お互いにまだ公式化されてない競合その他スポーツ。トイロボバトルの伝道師として、ここで活躍してプラクトをトイロボに吸収してやるわ!!!行くわよ、むと君!
え、なにこれスゴーイ、どんな仕組みで動いているのかしら?
なるほど『ユーベルコード発生装置』、これを突っ込めばウチの子もプラクトに参加させられるかも。
シャーシの駆動はあまり弄れなそう、外装の肉付けとかでの改造が重要そうね
うふふ、アマテラスちゃーんこれから素敵におめかししましょうね。
※アドリブ・連携関係
新谷・むと
神谷・マリー(f37810)と参加
へぇ、トイロボバトルに似た競技ってあるんだな。人型以外にも色んなメカがあってこっちも面白そうだぜ!
って、マリー姉ちゃんなんか怖い顔してるぞ!落ち着けよ、どっちのロボもみんなで楽しむ為のものだぜ。
改造でツクヨミもプラクトに使えそうだけど、トイロボとは操作方法が大きく違いそうだな。自分の動きに合わせるか、大きな操縦桿を操作するか。どっちが良いかわからねぇ!とりあえず練習あるのみなんだろうな。よしっ、やってやるぜ!
※アドリブ・連携関係
『トイロボバトル』とは、小型ロボを戦わせるスポーツである。
新気鋭という意味では『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』と同じであり、類似したホビースポーツであったことだろう。
神谷・マリー(自称トイロボバトル伝道師・f37810)は、その『トイロボ』を開発した『カミヤトミー』社長の娘であり、トイロボが好きすぎて高校に『トイロボ部』を設立したり、近所の子供らを集めて『トイロボ』の魅力を布教している。
その弟である新谷・むと(闇夜照らすトイロボバトラー・f37795)もまた同様だ。「へぇ、トイロボバトルに似た競技ってあるんだな」
「クックック、パパにトイロボを作ってもらった時に、別の団体で類似のロボットを開発中とかいう噂は聞いていたわ」
「こっちは人型以外にも色んなメカがあって、面白そうだぜ!」
確かに、むとの言う通りであった。
『トイロボバトル』は『トイロボ』を使ってのスポーツである。
逆に『プラクト』はプラスチックホビーならば、どんなものでも『ユーベルコード発生装置』を組み込んでいたら良いというアバウトさがある。
互いにまだ公式化されていない競技であり、競合するスポーツであったことだろう。
そんなスポーツになぜマリーがやってきたのかを、むとは疑問に思っていたのだ。
「クックック、トイロボバトルの伝道師として、ここで活躍して『プラクト』を『トイロボ』に吸収してやるわ!!! 行くわよ、むと君!」
わりと打算的であった。
けれど、その考えは間違っていないだろう。『プラクト』と『トイロボ』。似ているが故に、そこから動線を引けば、互いに競技人口が増えていく。
そうなれば、お互いに公式化する芽もあるはずだからだ。
けれど、むとはちょっと怖い顔してるなーって思ったのである。どっちかというと、マリーのほうが悪の科学者顔しているとも思っただろう。
「落ち着けよ、どっちもロボもみんなで楽しむ為のものだぜ」
「んもう、わかってるわよ、むと君。ロマンでしょ、悪の科学者顔しちゃうのって!」
そんなこんなで二人は『ダークリーガー』に狙われているという『五月雨模型店』へと入っていく。
そこには様々なカテゴリーのプラモデルで溢れていた。
工具も揃っているし、スペースには塗装ブースや貸し出しなんかもある。
モデラーのためにいたれりつくせりな空間となっているのだ。
それ以上にマリーの目を引いたのは、『プラクト』の原理である。
「え、なにこれスゴーイ、どんな仕組みで動いているのかしら?」
彼女の目の前にあるモニターには、今模擬戦をしている白いロボットの動きが映し出されている。
フィールド内を縦横無尽に駆け抜ける白いロボットを動かしているのは、『アイン』と呼ばれる、むとよりも少し年下の少女であった。
彼女の動きに追従するようにロボットが動いている。
これが『モーション』タイプと呼ばれる操縦方法であった。アスリートの動きをダイレクトに伝えるシステム。
逆にカーモデルや飛行機、戦車といったものは『マニューバ』タイプと呼ばれる操縦方法で動かされる。
これはモデルの中に再現された操縦席をアスリートが操作することで動かすことになる。
どちらも一長一短ある操作であり、どちらが優れているということはない。
「なるほど『ユーベルコード発生装置』。これを突っ込めば、ウチの子たちも『プラクト』に参加させられるかも」
「でも、トイロボとは操作方法が大きく違いそうだな。自分の動きに合わせるか、大きな操縦桿を操作するか……」
むとが唸る。
確かにそのとおりだ。『モーション』はダイレクトに操作が伝わり、直感的に操作できる。けれど、自分の体を動かさなければならず、体力の消耗が激しい。
かと言って『マニューバ』は煩雑な操作やコマンド入力などシビアな操作性があるが、一定の動作を繰り返すのに体力の消費は少なく済む。
こういうところを考えると、どうにも彼は困ってしまうのだ。
「とりあえず、どちらも試して見てはどうだ?」
困り果てていた、むとに『五月雨模型店』の店主が教えてくれる。自分に合った操作方法で戦うのもまた練習のうちだ。
「よしっ、やってやるぜ!」
練習在るのみと、むとは早速自分の『トイロボ』に『ユーベルコード発生装置』を組み込んでフィールドに降り立つ。
「おっ、にゅーかまーってやつだな! いいぜ、やろうぜ!」
『アイン』と呼ばれる少女の白いロボットがフィールドで、むとの『ツクヨミ』を迎え撃つ。
今は模擬戦仕様になっているから破損のことはあまり心配しなくていいだろう。
じっくりと自分に合う操作方法を見つけることのほうが重要だった。
「シャーシの駆動はあまりいじれなさそうね……」
そんな、むととは対象的にマリーは機体の構造の方に重きを置く。
トイロボを『プラクト』仕様にするのは難しくはない。
『ユーベルコード発生装置』を機体の何処かに組み込めばいいのだから。けれど、『ユーベルコード発生装置』は機体を動かす原動力である以上、そこを破壊されては動けなくなってしまう。
即ち、敗北だ。
ならば、『ユーベルコード発生装置』は心臓部として胸部に備えるのがセオリーなのだろうが、セオリー故に敵もそこを突いてくるだろう。
だからこそ、マリーは悩むのだ。
「外装の肉付けとか改造して装甲を増やした方がいいのかしら……チーム戦はチームメイトの数の上限なし。どちらかが全滅するまで戦うってことだから、やっぱり生き残るのが最優先よね」
ならば、装甲を盛ることは間違いではないだろう。
パテを盛り付け、マリーは自身のトイロボを可愛がるようにして回収していく。
「うふふ、『アマテラス』ちゃーん、これから素敵におめかししましょうね」
マリーは微笑みながら自分のトイロボに改修を重ねていく。
『トイロボバトル』も『プラクト』も、どちらも互いに高めあっていけばいい。
そんな願いを叶えるため、そして、それを阻む『ダークリーガー』の野望を阻むため、マリーと、むとは決戦の日まで改修と練習を繰り返し、徐々に腕を高めていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『たまにはこういうのありかもな』
モーションタイプの操作で練習していくぜ!
作成、使用するプラモは愛機コスモ・スターインパルス…を再現したビルドスターインパルス!!漆黒の高機動型機体だぜ!…隠し玉として【武器改造】で機動戦艦天龍もプラモで再現しとくぜ。
プラモの武装はライフル、刀、ブレードを選択しとくかな…ハイペリオンランチャーは流石にむずかしいか?…とにかくプラモができたら練習あるのみだな!
「たまにはこういうのもありかもな」
そう『五月雨模型店』の制作スペースでつぶやいたのは、ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)であった。
彼は今、塗装ブースや工具の貸し出しなどを行っている『五月雨模型店』に訪れ、来る週末の『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』と呼ばれる未だ公式競技化されていないホビースポーツにて自身が扱うプラスチックホビーを制作しているのだ。
彼が作っているのは、愛機であるキャバリアの再現モデルだ。
芯となるロボットシリーズのプラモデルを元にパテやプラ板で工作している。
『プラクト』は心技体の兼ね備えられたホビースポーツである。
自分の機体は自分で作る『技』。
こうありたいと願う『心』。
それを実現する『体』。
どれもが欠けては『プラクト』のプレイヤー足り得ないのだ。
「『ビルドスターインパルス』!! とでも名付けようか! 漆黒の高速機動機体だぜ……!」
「こういうのは初めてじゃないのか? オリジナルの機体を組み上げるとは……」
『五月雨模型店』の店主も驚いているようだ。
それほどまでにガイの自分の機体を造り上げたいという想いが強かったのだろう。
「さらに隠し玉として、機動戦艦天龍も再現しとくぜ!」
「ええー!? そんなに大丈夫か? だってこれ、『モーション』タイプで動かすんだろ? そこにさらに戦艦まで用意するって……」
『アイン』と呼ばれている少女が驚愕している。
『モーション』タイプの操作は、アスリートの動きがそのままトレースされる。
それ故に、体力を消耗するがダイレクトな操作感が魅力なのだ。しかし、ガイが作り出そうとしている戦艦は、おそらく『マニューバ』タイプでないと動かせない。
となれば、操作を切り替えるか、もしくは自動操縦にするかである。
そもそも戦艦だ。
スケールを合わせるとなるととてもじゃないが、膨大な時間を要するだろう。
「流石に練習の時間が足りなくならないか?」
「まあ、やれるだけやってみるさ。それに武装だって用意してあるんだぜ?」
ガイは、『ビルドスターインパルス』のライフルや刀、ブレードを見せる。
さらにハイペリオンランチャーまで用意しようとしているのだ。
流石に欲張り過ぎかも知れない。
けれど、何事も全力で。
それこそ限界を超えていくのが猟兵というものである。
ならば、ガイは笑って作業を続ける。間に合わない、間に合うではない。間に合わせるのだ。
ガイはそこから不眠不休で戦艦を組み上げていく。
「プラ板も塗料も尋常じゃない量を使うなこれは……」
「よしっ、私も手伝うぜ! こっちのは、この図面でいいんだよな!」
『五月雨模型店』のチーム一眼となって戦艦を造り上げていく。それはアスリートアースならではの光景であったことだろう。
誰か一人が勝利するのがアスリートの、スポーツの常であろう。
勝者がいれば敗者がいる。
明暗分かつものがあるのは仕方ないことだ。けれど、これはスポーツだ。チームだ。ならば、共に戦い、共に勝とうとする意志が在る限り、そこには最も大切な『心』が宿るだろう。
『技』だけでも成り立たず、『体』だけではたどり着けない。
そこにある『心』が2つをつなぎあわせるからこそ得られるものがある。
「よーし、完成だ! これで漸く練習できるぜ! ありがとうな!」
ガイは笑い、フィールドの中に自分の機体と戦艦をセッティングする。チーム『五月雨模型店』にとって、母艦という拠点が出来たことは大きいだろう。
しかし、練習する時間が大きく削がれたことは仕方ない。
「なに、あとはやるだけさ――!」
ガイは臆すること無く『ビルドスターインパルス』を己の体躯そのものとし、フィールドを駆け抜けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
手先が器用
聞き付けた陰海月にねだられましたー。まあたしかに、ぬいぐるみとか作ってたらねぇ。
そして、その陰海月が模型店の中に突っ込んでいったと思ったら。
霹靂に似たモーションタイプのを見つけてきまして…よく見つけましたね?
翼のパーツが多いですけど、私と陰海月の二人(?)がかりなら組み立てはあっという間でしてー。
あとは、これに慣れるだけですねー。結構楽しいですよー。
※
陰海月「ぷっぷぷぷっきゅー!」
ノリノリ陰海月、立体造形は勉強になるよ!パーツ多いなぁ。
霹靂、模型なぎ倒しそうなので影にいたら、友が何か見つけてた。
世界には様々なプラスチック模型が存在している。
ロボットや美少女、クリーチャーに車、飛行機に艦船、戦車……上げればきりがないし、人の心に創作意欲というものがあるかぎり、作れぬものなど存在しないのだ。
だからこそ、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『疾き者』は孫のように思っている『陰海月』にねだられるままに『五月雨模型店』へと足を運んでいた。
店内に入れば、所狭しとプラモデルの箱が棚に収められている。
さらには制作スペースも存在しており、塗装まで行えるようであった。
『霹靂』が影の中から恐る恐る覗き見ている気配を感じる。
どうやら自分の体が店内に入れば、諸々をなぎ倒してしまいそうだと遠慮しているのだろう。
「まあ、たしかにぬいぐるみとか作ってたらねぇ」
『陰海月』の趣味がそうであるように、このようなプラスチックホビーに興味を示すのもまた無理なからぬことであろう。
様々な経験を積むというのは良いことだ。
すでに『陰海月』はたまらないと言った様子で店内に突撃し、商品を見ている。
吟味していると言ってもいいだろう。
どんなものを作るのか、どんな思いを込めるのか。
それこそが『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』にとって最も大切なことであるからだ。
「ぷっぷぷぷっきゅー!!」
そうしていると『陰海月』が一つの箱を手にもってすごい勢いで戻ってくる。
まるで、これこれー! と喜び勇んでいるようでもあった。
それが微笑ましいものであるからこそ、『疾き者』は、はいはいとよく見ずに『陰海月』が持ってきた箱の会計を済ませてしまう。
「これを制作するには工具も貸し出してくれると聞いたが……」
「ああ、あっちのほうが制作スペースだ。塗装ブースもあるので、それを使うといい」
店主が示す先にあったのは工具なども揃っているスペースだ。
なるほど、と『疾き者』がうなずけば、『陰海月』が早く早くとせっつかせる。
『疾き者』は箱を開けて驚いた。
そこにあったのは『霹靂』、即ちヒポグリフのプラモデルであった。
見ればなかなかの造形美と可動範囲。
とは言え、それを再現するためには多くのパーツが必要であり、翼に至っては全てが稼働するという尋常ならざる仕様であった。
「これは……ですが、二人がかりなら組み立てはあっという間でしてー」
「ぷっきゅ!」
『疾き者』と『陰海月』がパーツを次々と切り離していく。
翼のパーツがもっとも多く、処理も大変であったが、役割分担だ。『陰海月』が切り離し、『疾き者』がペーパーを欠けてつなぎ目やパーティングラインを処理していく。
処理の終わったパーツは触腕がさらに組み上げていく。
「慣れると、結構楽しいですよー」
『疾き者』はノリノリな『陰海月』との共同作業を終えると、一体の小さな『霹靂』とでも言うべきヒポグリフのプラモデルが完成する。
壮麗な翼。
力強い体躯。
猛禽であることを示す爪。
どれもが造形としても可動物としても素晴らしい出来栄えと思えるだろう。
そして、これを『モーション』タイプの操作で動かすのだ。
フィールドに降り立つヒポグリフのプラモデル。
その輝きは誰にも負けないものであったことだろう。『疾き者』と『陰海月』は満足感と共に週末の『ダークリーガー』たちとの戦いに備えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
橘・小雪
むむむ
あたし、こういう戦いには心が震えちゃうんだ
プラスチックホビーとか作り方全然わからないけど
だって『憂国学徒兵』とか
サクラミラージュ出身には胸に刺さるシリーズ名じゃない!
じゃあね、あたしもアインさんと同じ
『タイプ・ヒルド』ってやつをつくってみる!
手先は、まあ不器用ではないから
平均的にはできるんじゃないかな
できるなら淡い桜色で塗装もして
名前はそうだね、『桜風』とでもしようかな
ユーベルコード発生装置は右腿のあたりに
『モーション』タイプで
まず、歩くところから練習しないと!
武器は刀、近接タイプ!きゃー、憧れ!
歩いて刀ぶんぶん振り回して
走れるようになった頃には慣れてるかな?
アインさん、一緒に戦おう?
人の心が震えるとき、それは魂の叫びと変わるだろう。
誰しもが心の琴線に触れるものを欲している。人の心は千差万別。だからこそ、触れるものによって音色が変わるのだ。
「むむむ」
橘・小雪(Tea For You・f37680)はアスリートアースにある『五月雨模型店』の『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』のフィールドの様子を映し出しているモニターを見て唸っていた。
モニターには白いロボットが他の猟兵達の操るプラスチックホビーを相手に大立ち回りをしているところが映っていた。
全てそれは実際にフィールドにあるプラモデルが行っていることだ。
この『プラクト』はアスリートの心技体が不可欠。
思い描く『心』。作り上げる『技』。そして自在に動かす『体』。
どれが欠けても勝利は為し得ないだろう。
「あたし、こういう戦いには心が震えちゃうんだ」
プラスチックホビーの作り方はまったくわからない。
けれど、それでも小雪の心は震えていた。モニターに映る白いロボットのように、自分もあんなふうに動かしたいと思ったのだ。
何も難しいことはない。
誰しもが初心者であった頃があるのだ。
「心配しなくてもいい。そこにある制作スペースでじっくり作るといい。わからないことがあったら呼んでくれていいから」
『五月雨模型店』の店主が、そう教えてくれる。
小雪はまず自分の機体を作らなければならない。どれにしようかとか小雪は深く考えなかった。
いや、違う。
正確に言うのならば、すでに心に決まっているものがあるのだ。
「だって『憂国学徒兵』とか、胸に刺さるシリーズ名じゃない!」
そうなのだ。
サクラミラージュ出身の小雪にとっては、聞き馴染みのあるフレーズなのだ。それに、あの白いロボットもまた同じシリーズのものであると小雪は知った。
なら、これはもう運命だ。
「これが『タイプ・ヒルド』ってやつなんだね……手先は、まあ不器用ではないってくらいなんだけど……」
「おっ! 私とおんなじのか! いい趣味してるぜ、ねーちゃん!」
そんなふうに言うのは猟兵たちのとの模擬戦闘を終えた『アイン』であった。ちょっと小休止とばかりに制作スペースに立ち寄れば、自分の機体と同じプラモデルを作っている小雪がいたのだ。
これを見なくて何を見るというぐらいの気持ちでもあった。
「色は、桜色かー! 綺麗でいいよな! あっちのエアブラシ使おうぜ!」
「エアブラシ? あ、色を塗るってこと?」
「そうそう。まずはグレーから立ち上げてさ、白を塗ってから薄く明度を上げた色つかおーぜ! 簡単なのはクリアー混ぜることかな! 下地の白をうまく透かして、綺麗な桜色ぬろーぜ!」
小雪は『アイン』と共に塗装ブースで自分の『タイプ・ヒルド』を塗っていく。
形は元の模型のままであるが、色が自分の思うカラーリングへと染まっていくのだ。此処にあるのは小雪だけの『タイプ・ヒルド』。
正真正銘、世界に一つしかない華のようなプラスチックホビー。
「でき、たぁ……!」
彼女の機体は『ユーベルコード発生装置』を右の太腿に供えている。重心が右に傾くが、刀を振るうという動作を行う時に返ってバランスが取りやすくなるだろう。
「いいじゃんいいじゃん! こういうカラーリングもいいなぁ!」
『アイン』と二人で喜びながら、早速フィールドにセットする。
ユーベルコードの煌めきを受けて小雪の動きをトレースする『桜風』。
そう、桜色の装甲を纏い、風のように舞うから『桜風』と名付けたのだ。
「まずは歩くところから練習しないと」
武器は刀。
近接タイプである。それだけで小雪のテンションが上がりっぱなしだ。
「きゃー、憧れ!」
ぶんぶん刀を振り回し、歩く。
普段ではできないこと。けれど、これが楽しいのだ。自分の足が踏み出すと、『桜風』もまた歩き出す。
慣れてきた頃合いを見て、『アイン』の『タイプ・ヒルド』もフィールドに降り立ち、彼女の指導が入る。
「近接武装を振るうのは割と簡単かもだけど、『モーション』タイプだともろに武装の重さが体に負荷としてかかるから注意だぜ! あ、あと、無理に走るより背部に意識を集中すると、バーニアで加速できたりするから」
「なるほど……うん、わかった」
背部に意識を集中させると、言われた通り機体が加速するように空へと舞い上がる。
足を地面に付けているのに浮かんでいるような奇妙な感覚。
不可能を可能にするホビースポーツ。
これが『プラクト』かと小雪は理解するだろう。楽しい。だからこそ、『ダークリーガー』との戦いには勝利しなければならない。
「『アイン』さん、一緒に戦おう?」
「ああ、頼りにしてるぜ、小雪ねーちゃん!」
こうして小雪は『プラクト』というホビースポーツに出会い、また自分だけのプラスチックホビーを手にしたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
俺達が来たからには大船に乗った気でいなッ!
「…私達『プラクト』をやるのは初めてでしょう。」
俺達の実力を十全に発揮できるのは『モーション』タイプ。となりゃ作るべきプラモは人型、それも相棒の体に近い造形が望ましい。
つまり俺達が選ぶべきプラモは『美少女プラモデル』…ッ!
敵がネタ枠だと思って油断するかもしれねえし、決まりだなッ!
おあつらえ向きに何かのアニメの巫女さんのプラモがある。こいつを作るぜッ!
巫女さんプラモを作ったら次はカスタムだ。
他のロボプラモから拝借した刀や弓型ライフルを装備。そして細かくチューンしていくぜ。
完成したら後は練習あるのみだ。アインの嬢ちゃんにもアドバイス貰うか。
【アドリブ歓迎】
アスリートアースにはスポーツが存在している。
数多あるスポーツは、数だけ特色を持ち、熱狂的なファンを生み出し発展していく。
未だ公式競技化されていないスポーツもまた同様である。
ニッチな需要だと侮ることなかれ。
ホビースポーツにおいてもそれは顕著であった。
『俺たちが来たからには大船に乗った気でいなッ!』
そういうのは、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)であった。
彼は赤い鬼面をカタカタ揺らしながら、相棒である桜と共に『五月雨模型店』へと足を運んでいた。
何を、と思うだろう。
模型店とスポーツ。
あまりにも対極にあるであろう組み合わせ。
「……私達『プラクト』をやるのは初めてでしょう」
冷静に桜が告げる。
彼女の言う『プラクト』とは『プラモーション・アクト』の通称である。『ユーベルコード発生装置』を組み込んだプラスチックホビーをフィールドに投入し、プレイヤー自身が『モーション』や『マニューバ』といった操作方法で動かし、競い合うホビースポーツだ。
子供が玩具で遊んでいる、とも思えるかも知れないが、これがどうして奥が深いのである。
機体を動かす『モーション』タイプは、文字通りアスリートの動きがダイレクトにホビーに伝わる。
その動きはまさに本人そのものである。
だが、ダイレクトに伝わるということは、機体の疲労度もまた肉体に反映されるということだ。動きやすい、操作しやすい反面、体力が不足すれば動きも鈍る。
逆に『マニューバ』タイプは、ホビーに作り込まれた操縦桿を操縦することで動かす。
『モーション』タイプのようなダイレクトな操作感は得られないが、代わりに人体でゃ動けない機動や挙動、システムを構築することができる。
そのため煩雑な操作に集中力が削られるが、体力は温存できる。
『とまあ、そんな競技なんだなッ! となれば、俺達の実力を十全に発揮できるのは『モーション』タイプ。となりゃ、作るべきプラモは人型。それも相棒の体に近い造形が望ましい』
凶津が店内のプラモデルの箱を眺める。
それは吟味していると言ってもよかっただろう。
カッ! と凶津の鬼面が輝く。
そこにあったのは、『ガールズジョブズ』というシリーズのプラモデルであった。
『つまり俺たちが選ぶべきプラモは、美少女プラモデル……ッ!』
「なかなか理に適った選択だ」
『五月雨模型店』の店主がうなずく。いきなりでてきた。
『ガールズジョブズ』とはアニメシリーズに搭乗する美少女たちをプラスチックモデル化したシリーズである。
特徴的な職業の衣装をプラスチックで表現し、その幅は他のジャンルプラスチックモデルにも負けないほどである。
そして、それ以上に『プラクト』に向いている理由は『モーション』、すなわちアスリートの動きをダイレクトに伝えるシステムにある。
『敵がネタ枠だと思って油断するかもしれねえし、決まりだなッ!』
「人体に近い構造で作られているからな。組み方次第では、剛性も十分。また『ユーベルコード発生装置』を胸部に配置すれば、その装甲故に堅牢な守りとなるだろう」
『カスタムすればいいってことか! 細かくチューンしていくぜ、教えてくれよなッ!』
そんなふうに男同士で盛り上がる凶津と店主。
桜はすっかり置いてけぼりである。組み上がったとて、それを操作するのは桜自身であるのだが、そんなことそっちのけでやんややんやと制作スペースで二人はアニメ風巫女プラモデルを組み上げていく。
「他のプラモデルからパーツを流用すれば、戦闘に耐えられる」
『刀や弓ってあるのか? それと巫女服なんだが、装甲として使うのもアリなんだろうが、スラスターなんかに使えないかッ!』
「いいアイデアだ。推奨する。御札をビットのように飛ばすホルダーを作ってもいいかもしれない」
「……男の子って……」
桜は若干呆れながらも、楽しげにしている凶津の姿に肩をすくめる。
こうなっては自分ができるのはアスリートとして、出来上がった機体を動かすことのみだ。
「お、ねーちゃんもプレイヤー? ならさ、出来上がったら模擬戦しようぜ! 体を動かすって楽しいぜ! それに自分のプラモが自分と同じ動きをするんだ!」
『アイン』と呼ばれた少女が桜と何やら話をしている。
きっと『プラクト』の魅力を一から教え込まれているのだろう。
そんなふうにして決戦のときまで、凶津は機体を。桜は操作方法を習熟していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アリルティリア・アリルアノン
バーチャル魔法少女アリルちゃん、ログインなーう☆
プラクトというのは初めてですが、キマフューにもプラモファイター…まあ似たような遊びがあったので大船に乗ったつもりでいてください!
アリルが使うならやっぱり魔法少女ロボです!
そんなのない?なら作るんですよ!
女の子っぽい丸みを帯びた機体に、魔法のステッキやフリフリのドレスに見立てたパーツを着けて、ミントグリーンに塗装すれば完成です!
え?見た目全振りなせいでバランスが良くない?
こういうのは使ってて楽しいのが一番ですよ!
まあお荷物では話にならないので、そこは試しに動かしつつ調整としていきましょう
操作方法はゲーマー的にマニューバ一択でしょう!
キマイラフューチャーはごきげんな近未来世界である。
人類の滅びた世界に生きるキマイラたちは、楽しいことが大好きである。ならばこそ、流行というのは隆盛が存在する。
かつて、キマイラフューチャーにも似たようなホビースポーツがあったのだ。
その名を『プラモファイター』。
似たような遊びであるが、アスリートアースにも存在する『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』に通じるものが在るだろう。
「バーチャル魔法少女アリルちゃん、ログインなーう☆」
アリルティリア・アリルアノン(バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639)は、ネガティヴハートにスマイル配信♪を合言葉にアスリートアースに降り立つ。
目の前にあるのは『五月雨模型店』である。
今や此処は、『ダークリーガー』によって『ダーク化』された『プラクト』アスリートたちとの決戦を控え、急ピッチで猟兵たちのホビーや操作技術の習熟が行われていた。
「似たような遊びもあったし、大船に乗ったつもりいでいてください!」
「それはとても助かるんだけど……それ、コスプレ?」
『アイン』と呼ばれた少女が首を傾げている。
猟兵は他者に違和感を与えない存在である。けれど、不思議な格好をした者たちが多く訪れれば、彼女もまたアリルティリアの姿にちょっとびっくりするのだ。
なんならちょっとうらやましいとさえ思っているのだ。
「魔法少女です! そして、アリルが使うならやっぱり美少女ロボです! そんなのない?」
「あるにはあるけど……ちょっと難易度高いよ? 塗装もマスキング地獄だし……」
今から作るにはちょっと……と『アイン』が渋った顔をしたが、そんなのアリルティリアには関係ないのである。
ないなら作る。
作ったらできる。
それが模型の良いところである。故に、アリルティリアはポジティヴハートのままに『ウェブ戦機』シリーズのプラモデルを手に取る。
確かに大変そうである。
女の子型のメカ。その機体の塗装は困難を極める白ストライプ塗れ! いや、これはこれで可愛いのだが! はっきり言って地獄である。
「色はミントグリーンのストライプにしましょう。その方が可愛いですから!」
「えっ!?」
「あと丸みをもたせましょう。魔法のステッキにフリフリドレスも見立ててパーツを取り付けます!」
「――!?」
アリルティリアの改造は続く。
はっきり言って時間的な問題のほうが大きくなっている。けれど、それ以上に困ったのが機体のバランスだ。
確かにアリルティリアの打ち出した三面図は、完成すれば途方も無いほどの完成度となって脚光を浴びるだろう。
けれそ、それには時間が足りないのだ。
「ちょ、ちょっと妥協とか……」
「しません! こういうのは使ってて楽しいのが一番ですよ! なら、妥協は一番しちゃいけないことです!」
アリルティリアの言葉に『アイン』も感銘を受けたようである。
打ち震える彼女は、アリルティリアの手伝いを申し出、デスマーチもかくやという勢いで機体を組み上げていく。
完成したアリルティリアの機体は、それはそれは可愛らしい魔法少女ロボであった。
ミントグリーンに白ストライプが走り、フリルのようなパーツから覗くのは、スラスター。機動性を確保しつつ、可愛さを損なわないデザイン。
「完成だ! やったな!」
「ええ、決してお荷物にはなりませんよ。早速試してみましょう!」
アリルティリアは早速フィールドに機体を下ろして操作タイプを選ぶ。『モーション』でもよかったが、彼女はゲーマーである。
ならば、選ぶは『マニューバ』タイプ。
操作が煩雑であることは言うまでもない。けれど、譲れぬものが彼女には多いのだ。
「いっきますよー☆」
飛び出すミントグリーンの魔法少女ロボ。
可憐に美麗に飛び立つ姿は、戦場に咲いた一輪の華のように。きらめくユーベルコードの粒子を解き放ちながら、不規則な挙動で戦場を席巻するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
ユーシア(2P)「これはわたし最推しキャラの『アルミィ先生(1/12 フルアクションプラスチックモデル)』の出番っすね!
ほらはやくするっすよわたし(1P)!」
……なんだかすごくわたし(2P)が張り切ってるけど、持ち込みプラモってありなのかな?
まずはルールを把握(【WIZ】)して必要な改造をしますよ!
ユ(2P)「元々魔剣持ちの元軍人な女主人公プラモの改造品だから基本の動きは変わらないし、操作法はモーションで、コアは胸元っすね。
……ほんとはわたしが動かしたいけど、2Pキャラで付属品なわたしはメインでは動けない、だから壊されないように本番までわたし(1P)は特訓漬けっすね!」
め、目が笑ってません……
『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』はホビースポーツである。
その競技性は高く、心技体揃っていなければ勝利を掴むことができないと言われている。
即ち、自身の想像を生み出す『心』。
空想を形にする『技』。
形作られたものを動かす『体』。
そのどれもが欠けていては勝利はできない。それ故に、『プラクト』はホビースポーツの中でも幅広い多様性を獲得していた。
使うプラスチックホビーは、プラスチックであればなんでもよい。
ロボット、カーモデル、クリーチャー、はては美少女プラモデルであっても構わないという徹底ぶりであった。
『ユーベルコード発生装置』を組み込むことを前提としているため、どこに配置するかも戦略性を高めるだろう。
「これはわたしの最推しキャラの『アルミィ先生』の出番っすね!」
くわっ! と開眼したのは、ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)であった。
いや、正確には分化した2Pキャラとも言うべきか。
ちなみに『アルミィ先生』とは愛称である。
もともと魔剣持ちの元軍人な女主人公をモチーフにした美少女プラモデルである。再現度半端ないと話題になった一品である。
大人なお友達の間では、いろいろな衣装バージョンを自作したりと、高度なやりとりが生まれたとか生まれてないとか。
まあ、そんなプラモデルに『プラクト』用の改造を施さなければならない。
「ほらはやくするっすよ、わたし!」
便宜場1Pと呼称するユーシアは急かされるようにして『アルミィ先生』を改造していく。
「なんかすごく張り切っているけど、持ち込みプラモってありなのかな?」
「ありだよ」
そんなふうに言ってくれるのは『五月雨模型店』の店主であった。
制作スペースを提供してくれているおかげで、工具や塗装を扱うことができるのがありがたい。
「美少女プラモデルは『モーション』タイプするのならば、アスリートとの動きに差異がでづらい。見た目には貧弱に見えるかも知れないが、その実、『プラクト』向きだともいえる」
「なら、コアである『ユーベルコード発生装置』は胸元っすね」
2Pのユーシアがうなずく。
胸部装甲が分厚ければ、動かすために必要な『ユーベルコード発生装置』という弱点をカバーすることもできるだろう。
こういう時に美少女プラモデルの強みが出るとは思いもしなかったかも知れない。
「……ほんとはわたしが動かしたいけど……」
2Pのユーシアが残念そうに言う。
彼女は付属品ゆえにメインで動くことはできない。ならば、本番である決戦までに自分が1Pのユーシアを特訓漬けにしなければならない。
自分の推しキャラが壊される光景など見たくない。
ついでにいうと傷一つ付けてほしくない。
此処まで改造して愛着が湧いたのも在るし、何より、戦うのなら勝って笑いたいのだ。
「め、目が笑ってません……」
1Pのユーシアがたじろぐ。
だが、たじろいだところで特訓漬けが変わるわけではない。
「いくっすよ! 1P! わたしの『アルミィ先生』に傷をつけたら承知しないっす!」
「え、えー!?」
こうしてフィールドに降り立った『アルミィ先生』はユーシアの『モーション』タイプによる操作によって戦場を駆け抜ける。
ステップ、ダッシュ、ジャンプ。
切り払いに、打ち込み、突き。
さらには魔剣覚醒のSP技まで。ありとあらゆるゲーム内のキャラの性能を引き出す特訓にユーシアは決戦当日までヘロヘロになるまで特訓漬けになり、本番直前まで己の体が『アルミィ先生』そのものであると錯覚するまでに至るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シニストラ・デクストラ
判定:POW
「プラクト…これもスポーツなの?兄様。」
『プラクト…これもきっとスポーツなんだよ?姉様。』
シニストラが武器担当で、兄弟の魔王剣と勇者の銃を模したものをフルスクラッチで作りました。
デクストラが期待担当で、『憂国学徒兵』シリーズを使ったミキシングビルドで未知のクロムキャバリア型を作ってうます。
(六腕四脚型の複座型な異形機体)
そのまま意気揚々と模型店に持って行ってルール的に問題ないか確認したり、修正しています。
その後、実際のプレイでチャレンジします。
「私が上半身担当なの。攻撃は任せてなの兄様。」
『僕が下半身担当なのです。移動は任せてください姉様。』
シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)はもともと魔王と勇者である。
元、というのはまあ、そういうことである。
バージョン、アスリートアースとでも言えばいいのか。
ともあれ、それは些細なことである。今回は『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』と呼ばれるホビースポーツがオブリビオンである『ダークリーガー』によって脅威にさらされている。
それを解決するために彼等は『五月雨模型店』にやってきたのだ。
「プラクト……これもスポーツなの? 兄様」
『プラクト……これもきっとスポーツなんだよ? 姉様』
二人は疑問であったのだ。
プラスチックホビーを使ったスポーツ。体をもって何かをするのがスポーツであるというのならば、なんとなくイメージがわかなかったかもしれない。
言い換えれば『プラクト』におけるプラスチックホビーは、野球で言うところのバットやボール、グローブ。サッカーで言うところのボールであった。
フィールドにプラスチックホビーをセットし、ダイレクトにアスリートの動きをトレースする『モーション』タイプの操作と、ホビーに再現された操縦桿などを操作する『マニューバ』タイプと2つの操作方法がある。
どちらも一長一短ある。
『モーション』はダイレクトな操作性であるが、体力を著しく損なう。それに動きがプレイヤー依存であるため、プレイヤー以上のことが出来ない。
『マニューバ』は操作性は悪いが、体力を温存できる。だが、機体を制御するために煩雑なシステムを理解しなければならない。けれど、プレイヤー以上の挙動が可能となるだろう。
「なら、私が魔王剣と勇者の銃を模したものをフルスクラッチで作るね、兄様」
『じゃあ、僕は機体を作ろう。この憂国学徒兵シリーズを使ってミキシングするね、姉様』
二人は『五月雨模型店』の制作スペースでそれぞれ分担して機体を作り出さいていく。
ビルドされていく機体は異形のクロムキャバリア型。
六本腕に四脚を供えた機体であり、複座型であることがわかるだろう。
シニストラが制作した武器は、フルスクラッチとは思えないほどの出来栄えであり、製品と見紛うものであった。
魔王剣の刀身を塗装で再現した煌めきは、あらゆる装甲を切り裂くであろうし、勇者の銃は重厚な仕上がりで大きな出力にも耐えうる銃身を持つ。
「これでルール的には問題ない?」
『問題があるのあら修正しないと』
二人は『五月雨模型店』の店主に自分たちが作った機体を確認してもらう。せっかく作ったのにレギュレーションで参加できないなんてことがあったら悲しいからだ。
けれど、そこは『プラクト』である。
プラスチックホビーであればスケール差やジャンルなど一切問わないのだ。
「大丈夫だよ。これで問題ない。せっかく作ったんだものな。動かしてみたいだろう。今ならフィールドが開いているから練習がてら使うといい」
どうやら、彼等が作った機体はレギュレーションでは問題ないようであった。
二人で動かす複座型であるから、人数的な有利さは失ってしまう。
けれど、『マニューバ』でもって動作と火器の操作を分けるのならば、異形の機体を制御するのも無理ではないだろう。
「私が上半身担当なの。攻撃は任せてなの兄様」
『僕が下半身担当なのです。移動は任せてください姉様』
二人は異形のクロムキャバリア型ホビーをフィールドにセットし、複座型の操作パーティションの中に収まる。
互いの操作をわけ、双子ならではの息ぴったりな操作は、異形の機体であれどあっさりと俊敏な動きを見せるだろう。
戦場を駆け抜ける異形の四脚。
振るう六腕が武装を次々とスイッチしては、遠近共々好きのない戦いを見せる。
こうしてシニストラとデクストラは、扱いが難しいであろう異形のホビーを扱うアスリートとして、『五月雨模型店』で一役人気を集めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
フフーン!
普段破壊神だとか破戒神だとか思われてるボクが作るのも得意だってことを見せてあげるよ!
●せいさく
●UC『神知』使用
●【素材採取】1240レベル
どん!とプラスチック粘土塊を置いて
確かここらへんに~…と[神様の影]を漁って…
じゃじゃーん!思念に反応して自在に変形する宇宙怪獣(マインドミナVBA)の欠片!
これを粉にして混ぜま~す!そして思念成型!
出来たよ!全身が8つから10個のビーム砲に分離する…名付けて…バラバラX!!
発生装置は頭部(トップ)!
●れんしゅう
【操縦】が大変そうだって?
混ぜ混ぜした欠片のおかげしかも脳波コントロールもできる!
ぶ~~~ん!ドドドドドドッ!
「フフーン! 普段破壊神だとか破戒神だとか思われてるボクが作るのも得意だってことを見せてあげるよ!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はアスリートアースにある『五月雨模型店』の制作スペースで意気込んでいた。
何を、と問われたのならば、少し微妙な顔をしなければならない。
彼が今作っているのはプラスチックホビーである。
けれど、目の前にあるのはプラスチック粘土。
今はまだただの土塊の如き塊である。何物にもならぬ状態のそれを前に彼は、何やらかけらを手にする。
なにそれ、と『アイン』と呼ばれる少女が覗き込む。
金色のような銅色のような、よくわからないかけら。それをプラスチック粘土に埋め込んで、ロニは集中する。
「ふっふっふ、これはね! じゃじゃーん! 思念に反応して自在に変形する宇宙怪獣のかけら!」
「……何いってんだこいつ」
『アイン』は身もふたもないことを言う。
彼女にはよくわからないのだろう。他世界であるスペースシップワールドに存在する宇宙怪獣の外殻。
それを材料として巨大な惑星ロボだって作り上げることのできる素材なのだ。
ロニはそれを使って、自分の思念で『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』で自分が使うプラスチックホビーを生み出そうとしているのだ。
「思念成型!」
まさに夢の素材。
いや、夢の技術であろう。
空想を形にする力。手先の器用さや技術など関係ない。思うままに形作られていくプラスチック粘土。
ロニの頭の中にあるのは、一つのビジョンであった。
もやもやとしたものを形作る神知(ゴッドノウズ)。
「出来たよ!」
びっかーとユーベルコードが雑に輝き、制作スペースのテーブルの上に降り立つのは、おそらくロボットタイプであった。
おそらく、と表現したのは、ロニの説明がなんとも物々しいものであったからだ。
「前進が8つから10個のビーム砲に分離する……名付けて……」
「ごくり」
『アイン』が喉を鳴らして見守る中、その機体の名が知らしめられる。
「……バラバラX!!」
『アイン』が、えぇー……という顔をする。ダセェとまで言った。そのまんますぎると。
だが、プラスチックホビーとは得てしてそういうものである。
小難しい名前よりは、覚えやすく言いやすい名前。ならばロニは何一つ間違っていないのだ。
「『ユーベルコード発生装置』は頭部(トップ)!」
「でもこれ、どうやるんだ? 操作。バラバラになった状態なんて『モーション』じゃどうにもならないだろ?『マニューバ』にしたって、10個もバラバラに動かすのなんて、一定のリズムに成って読まれちゃうぜ?」
「だいじょーぶ! 混ぜ混ぜしたかけらのおかげで、しかも脳波コントロールもできる!」
そんな事が可能なのか? 怖かろう?
「ぶ~~~ん! ドドドドドドッ!」
ロニのぶんどどがフィールド内に響き渡る。
けれど、バラバラに動かす脳波コントロール。『マニューバ』タイプであることが推察されるが、尋常ならざる集中力が必要とされる。
さらに頭部に『ユーベルコード発生装置』を配置したことによって、一つ一つの砲身の防御力が低下している。
出力も一定を保つためには、再合体しチャージしなければならない。その瞬間が決定的な隙ともなるだろう。
「そこをなんとかしないとなー」
『アイン』とロニは決戦の日までに、この諸問題を解決し、挑まねばならない。例え、解決しなくても『ダークリーガー』たちはやってくる。これを無事にロニは解決できるだろうか――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
へぇい
皆さんは何かこうプラモでバトル競技…プラクトをご存じでしょうか
私も日々最強を目指しプラクっています
してて
…さておき、人型にするか車系統にするか…
まずは組んでみて考えよう
まずは人型からかな
市販品の入門型のを買って…パーツは2度切り、目の粗いやつから順にヤスリ掛けして面を綺麗にして…
それでスジボリして、ついでに情報を増やすためにプラ版張って…
後はサーフェイサー吹いて…塗装!
出来た!渾身の1体
じゃあこれは飾っておいてね
作ってて惜しくなったんじゃないし!
本番用の機体はもっと単純な構造の方が良いと思っただけだし!
とりあえずスピンしながら相手に攻撃する車タイプのにして
頑丈さとトゲトゲ感を増して完成!
『五月雨模型店』が急に真っ暗になる。
暗転し、停電か? と『アイン』と呼ばれている少女が慌てる。年の頃はまだ小学生ほどだろうか。
普段の男勝りで勝ち気な彼女からは想像もできない声が聞こえた気がしたが気のせいである。多分。
そこに突如としてスポットライトが閃く。
白い明かりの中にあるのは一人の女声であった。彼女はスツールに腰掛け、背を向けていた。
くるりと、スツールが回転し彼女の姿が顕になる。
「へぇい。皆さんは何かこうプラモでバトル競技……『プラクト』をご存知でしょうか」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)なんかスーツ姿に眼帯してそうな雰囲気であったが、気のせいである。
彼女は神妙な面持ちで、まったく神妙ではない語り口で語り続ける。え、何? 何が始まった? と『アイン』は戸惑いっぱなしである。
「私も日々最強を目指し、プラクっています」
ひょいっとスツールから降り立つ玲は、何事もなかったかのように停電から復旧した店内にあるプラスチックホビーの入門用の人型ロボットを手に取る。
え、おしまい!? と『アイン』が目を丸くしている横で玲はお会計を済ませる。
「えっ、今こんなに安いの!?」
「入門用だからな。お手軽にっていうのが今の主流。制作スペースはあっち。工具は貸し出し……いや」
「うん、自前のあるから大丈夫」
そう言って玲は箱を開ける。
アスリートアースにあるプラモデル。初めて見るが、なかなかどうして。ランナーの配置もわかりやすいようにパーツが固まっている。
頭から順番に組み上がっていけば、不要になったランナーを捨てられるように成っているのだ。
最初、玲は人型にする車系統にするか悩んだのだ。けれど、まずは組んで見てから考えようと人型ロボットを選んだ。
うん、サクサク組める。入門用と銘打つだけあって組み味はシンプル。
マイニッパーでゲートの処理は二度切り。白化しないようしつつ、残ったゲートをペーターで処理をしつつ面をしっかりと出していく。
C面などの処理も慣れたものである。パーティングラインなど見逃すわけもない。
「うん、あとはスジボリしようかな。タガネ、タガネ……」
スジボリでディティールを追加していく。ささくれた彫った面をペーパーをあてて 処理すつつ、モールドを広げる。
スミ入れをする時に、こうすればはっきりとラインが出てきれいなのだ。
「へぇー……」
「情報量も増やしていこうね。プラ板をこう、切って……足りなければランナーを加工してもいいよね」
「塗装もするのか?」
「そりゃあね。小さな傷も残っているかも知れないから、まずは粗目のサーフェイサーで様子見して……」
下地を均一にするサーフェイサーの灰色がプラスチックに乗っていく。処理した面の傷跡は見えなくなっている。
うん、と頷いて玲と『アイン』は塗装ブースに映る。エアブラシも口径を揃えているところがありがたい。
「ベース塗って、ハイライトをかぶせて行こうか。濃淡が出ると一気に高級感あるし、関節部はメタリックにパールスムースで仕上げるとさらにぐっと特別感あがるよね!」
「はえー……すごい」
そして出来上がる渾身の一体。
間違いなく逸品。だが、玲は、それを店内のショーケースに飾る。
えっ。
使わないの?
「作ってて惜しくなったんじゃないし! 本番用の機体はもっと単純な構造の方が良いと思っただけだし!」
「え、えー!? なんで!? あっちのがいいじゃん! あれにしようぜ! ねー! ねー! てばぁ!」
「ええい、大人には大人の事情があるんだよ! とりあえずスピンしながら相手に攻撃する車タイプのプラスチックホビーを私は使いたいの! クラッシュしたいの!」
玲と『アイン』がわーわー言いながら、本番用の機体が組み上がっていく。
そんあこんなで、なんかトゲトゲと頑丈さが取り柄の車を模したプラスチックホビーを手にした玲が、きりっとポーズを決めている。
それを写真に収める『アイン』。
なんかもう、めちゃくちゃだなぁって『五月雨模型店』の店主は思いながら、ショーケースに飾られた超絶ハイクオリティの作例が所在無く素立ちのポージングのママきらめいているのを見やるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!(ポーズ決めながらお約束
なんか久しぶりにいい感じに決まった気がします!
はい、はじめまして私サージェです!
プラクトの助っ人に来ました!
ふっ、私のスナイパーが火を吹くぜ?
え?スナイパーが何かって?
スーパーナイアルテの略ですね
(なんかどこかで見たチョコ肌たゆんアイドルのフィギュアっぽいプラモデルが出てきた)
あえて言いましょう
プラモデルは自由だ!と!!
え?これダメ?クレーム入った?
そんなあ〜〜3徹したのにぃ〜〜
もー仕方ありませんねー
ちゃんとしたのを組みますかー
せっかくなので弾幕ばらまくタイプの重量砲弾タイプにしますかねー
ふふふ、私のクノイチ力(ちから)をみるがいい!
あ、今回はちゃんとロボットにします
ウサ耳ロボットですけど
レールガンとか背面ミサイルポッドとかロングレンジライフルとか浪漫ですよね!
「お、またコスプレイヤーか?」
『五月雨模型店』のリーダー格であるアスリートである『アイン』と呼ばれている少女が首をかしげる。
『サスナー第一チーム』との決戦が決まって以来、この『五月雨模型店』を訪れるアスリートたちの姿格好があまりにも多種多様のカオスめいたものになっていることを彼女は違和感を感じないことに違和感を感じていた。
今も目の前に現れたセクシーでダイナマイツな猟兵に、もう慣れましたって顔を向けているのだ。
「お呼びとあらばさんじましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
お約束であった。
ポーズまであわせてお約束であった。
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はアスリートアースの『五月雨模型店』の前に降り立ち、ポーズを取る。
そんな彼女を見上げている『アイン』はアイスの方に若干意識を取られていながら、なんとなーく冷めた目をしていた。あーはいはい、って顔をしている。もう慣れたのである。
そんな彼女の様子にサージェは、えぇ……顔をするしかなかった。
いい感じに決まった気がしたのも気のせいである。
「はい、はじめまして私サージェです!『プラクト』の助っ人に来ました!」
「あ、うん。ありがとう。で、えっと……」
「ふっ、私のスナイパーが火を吹くぜ?」
「なにそれ……スナイパーってライフル?」
『アイン』はもう多くの猟兵と触れ合っているため、もうそんなでもないのである。新鮮味という意味では、最後に訪れたサージェが一番薄い。
ひどすぎる扱いであるが、サージェは気にしなかった。
スナイパーとはなにか。
「スーパー――」
言わせないから。そういうのは言わせないから。インターセプトである。
だが、彼女の手にあったのは、どこかで見たチョコ肌たゆんアイドルのフィギュアっぽいプラモデルである。
いつまに立体化したのか。
「あえて言いましょう。プラモデルは自由だ! と!!」
「絶対クレーム入るやつ。肖像権とか著作権とか、その他諸々で裁判沙汰になるやつ」
『アイン』は冷静であった。
えっ!? とサージェはこの素晴らしさが伝わってない? と驚愕する。この素晴らしさならば法律など簡単に乗り越えられるはずだと信じて疑わなかったのだ。
けれど、残念なことにサージェの三徹はパーである。
いやまあ、ご自宅の棚に飾っておいてくれたら嬉しい。その情熱だけは誰にも汚すことのできない立派なものであるから。
「もー仕方ありませんねーちゃんとしたの組みますかー」
明らかにテンションぐだ下がりである。もうやる気ないんか? ってなるくらいであったが、せっかくなのでと手にとったプラスチックホビーに目を通す。
弾幕を張るタイプが好み7日、重量砲弾タイプの武装を手に取る。
「ふふふ、私のクノイチ力(ちから)を見るがいい!」
「いや、あんまりクノイチっぽくない。どっちかっていうと砲兵っぽい……忍べてないと思う」
『アイン』の冷めたツッコミがサージェにぶっ刺さる。
だが、時間がない。
こうしている間にも決戦までの日は迫っているのだ。
「うさみみも付けましょう!」
「アンテナって言おうぜ! せめて!」
「あと色は白がいいです!」
「私のとかぶる!」
「あとレールガンとか背面ミサイルポッドとかロングレンジライフルとかロマンですよね!」
「わかるけど、クノイチ要素何処にもないぞ!」
そんなこんなでサージェと『アイン』は仲良く制作スペースで機体を造り上げていく。どっちかというと、漫才みたいなやり取りのほうが多かった。
でも、それもまたホビーの良いところである。
やってはならないことはない。やらなければならないことはあるけれど。
自由な発想は、きっとサージェの中のクノイチをプラスチックホビーに込められることだろう。
それが他人から見たらクノイチ……か……? ってなることもあるだろう。
けれど、敢えて言わせてもらう。
ホビーは自由だと!
ならばこそ、サージェは己のクノイチちからの発露たる機体を掲げ、早速フィールドで操作を習熟していく。
「お、重い……せ、背中が思いですよ!?」
「ロマンとか言っていっぱい武装積むからだよ。減らす?」
「いえ! ロマンは重たいもの! ならば、この重さこそ愛するべきなのです!」
くわっ! とサージェは目を見開き、『モーション』タイプの操縦を習熟していく。ゴリゴリ削れる体力。
けれど、ダイレクトな操作性の『モーション』は重量級の装備ながらサージェのクノイチ力を発露し、規格外の俊敏さを見せるだろう。
「行ける! 高火力高機動! あとの問題は……! サージェねーちゃんの体力だな!」
「本番は止まってブッパします」
それだと何処かのぶっぱする魔女見たくなるけど。
けれど、まあ、それも戦略の一つだろう。サージェは『アイン』と共に機体を整備し、決戦の日を迎えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『騎馬戦軍団』
|
POW : キバセン・ファイナル
自身の【身体部位】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[身体部位]は【疲労骨折】により破壊される。
SPD : ビクトリー・ウェーブ
戦場内に、見えない【勝負運】の流れを作り出す。下流にいる者は【負け運】に囚われ、回避率が激減する。
WIZ : スター・オブ・キバセン
【フォーメーションを組んでの高速疾走】によって【味方を鼓舞する英雄の幻影】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
そして決戦の日が訪れる。
週末、『五月雨模型店』に集まったのは、膨大な数の『プラクト』アスリートたちである。
チーム『五月雨模型店』の面々は、『ダークリーガー』に率いられた『サスナー第一チーム』のメンバーの多さに驚愕した。
『五月雨模型店』は商店街のアーケード街に存在している。そのメイン通りを埋め尽くす『サスナー第一チーム』のメンバーたち。
流石に多すぎだろ! と思ったかもしれないが、これはまっとうなルールである。チーム戦の場合、人数制限に上限はない。
先鋒となる『騎馬戦軍団』を率いているのは『ダーク化』したアスリートの一人である『ツヴァイ』と呼ばれる少女。
年の頃は『アイン』と同じくらいだろうか。
彼女は不敵に微笑みながら『五月雨模型店』のリーダー格である『アイン』に歩み寄る。
「逃げなかったことだけは褒めて差し上げます。ですが、無駄な抵抗だと思いますよ? 数だけではない。私は『エース』ですから。我が『サスナー第一チーム』のトップ、『ダークリーガー』が出るまでもなくすりつぶして差し上げましょう」
「『迅雷』って渾名はどうやらしみったれた奴が使うものみてーだな! こっちはしつよりりょーってやつだ! 覚悟しやがれ!」
「『アイン』ちゃん、それ逆。室より量じゃなくて、量より質」
「……――うっせー! いくぞ、お前ら!!」
『アイン』を始めとする猟兵と近隣小中学生たちの混合チーム『五月雨模型店』が一斉にフィールドに機体をセットする。
するとチームメイト全員をユーベルコードの粒子がパーティションで区切るように生み出され、それぞれの操作系統に即した光を放つ。
「威勢のよいことで。そちらがどれだけ数を整えられたか知りませんが……無駄です」
『ツヴァイ』の言葉と共に『サスナー第一チーム』もまた戦闘態勢に入る。
彼女の手にしたホビーもまた『アイン』の持つ『憂国学徒兵』シリーズのものだ。青と白のツートンカラーのロボット型。それが先陣を切るように集団の前に立つ。
その背後に付き従う『騎馬戦軍団』の操るホビーはロボット型。量産型であるようだが、油断は禁物だ。
商店街のアーケードの屋根が展開し、立ち上がるのは巨大モニター。アーケードに面する十字交差点に備えられたモニターは、今日という日の決戦を周囲に知らしめる。
「じゃあ、行くぜ――『レッツ』」
「――『アクト』!!」
それが試合開始の合図。
響き渡る『ユーベルコード発生装置』の唸るような音。
一斉に動き出すプラスチックホビーたち。乱戦上等。大規模なチーム戦が幕を開け、『五月雨模型店』を巡る一大決戦が、今『プラクト』の歴史に刻まれるのであった――。
メサイア・エルネイジェ
多いですわね!
お減量の相手にとってお不足無しですわ!
ビルドヴリちゃんをセット!
ついでにわたくしもアンサーウェアにお着替えして参りましたわ!
モーションの操作タイプで魂とカロリーを燃やしますのよ〜!
大乱戦ですわね!
こんな時はこれですわ
ベルセルクシャウト!ばうばうばう!
敵だけを吹っ飛ばしてさしあげますわ
怯えなさい!竦みなさい!おプラモの性能を活かせぬままお逝きなさい!おほほ!
わたくしが怖いでしょう?
わたくし、貴方達の人生なんてどうでもよろしいのですよ?
おビビりになられている所を引き裂いてぶっ叩いてスクラップですわ〜!
勝負運とか回避率なんて存じませんわ〜!
壊される前に壊してしまえばよろしいのですわ〜!
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は本気であった。
本気と書いてマジと読む。
そんなただならぬオーラを放つ彼女は、彼女専用のパイロットスーツであるアンサーウェアに身を包んでいる。
これもコスプレなのか? と『アイン』は首を傾げたが、もうここ数日の猟兵たちの訪れですっかり慣れきっていた。
だから、メサイアのマジなコスチュームは華麗にスルーしたのであった。
「多いですわね! お減量の相手にとってお不足無しですわ!」
『ビルドヴリトラ』をフィールドにセットし、メサイアはカロリーを消費するために『モーション』タイプの操作を選択する。
全てはお減量のため。
耐従兄の針を戻すため。
「魂とカロリーを燃やしますのよ~!」
「動機がどうにも不純すぎませんか! というか、どうみてもダイエットが必要そうには見えないのですが!」
先陣を切って迫るのは『サスナー第一チーム』の『ダーク化』アスリートである『ツヴァイ』と、それに従う『騎馬戦軍団』の機体であった。
すでに『五月雨模型店』のメンバーたちとの戦いは混戦模様を呈していた。
あまりにも『サスナー第一チーム』の戦力が多すぎるのだ。
「大乱戦ですわね!」
だが、メサイアは慌てることはなかった。
『ビルドヴリトラ』は暴竜型。
駆け抜けるには、『モーション』ではコツがいる。
けれど、此処数日の特訓によってメサイアは、メサイア自身が『ヴリトラ』になることだ! という極意をえている。
敢えてカロリー消費の激しい動きをすることに寄って突いた余分なものを削ぎ落とすように『ビルドヴリトラ』が駆け抜ける。
だが、目の前に展開する『騎馬戦軍団』の機体が取り囲む。
「突出しすぎましたね! 今です!」
『ツヴァイ』の号令と共に一斉に放たれようとする火器。
だが、その瞬間『ビルドヴリトラ』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「ばうばうばう!」
え、何それかわいっ! ってなったのも僅かな時間であった。
彼女の咆哮は、狂竜咆哮(ベルセルクシャウト)。
全方位に放たれる物理的衝撃波。
だが、それらは全て味方を識別するチート技であった。避けようのない衝撃波が恐ろしい咆哮となって戦場を走り『騎馬戦軍団』の機体を吹き飛ばすのだ。
勝負は時の運。
「怯えなさい! 竦みなさい! おプラモの性能を活かせぬままお逝きなさい! おほほ!」
ばうばう言っていたのが嘘みたいな悪役ヅラである。
人型が3、タンクもどきがなんちゃらかんちゃらって感じである。まじで百戦錬磨な武人の雰囲気をメサイアは醸し出す。いや、単純に此処数日の『モーション』ダイエットのせいであるが、まあ、それはいいとしよう。
「わたくしが怖いでしょう? わたくし、貴方達の人生なんてどうでもよろしいのですよ?」
ばうばう。
メサイアは構うこと無く咆哮し続ける。
彼女を打ちのめそうと殺到する『騎馬戦軍団』の機体を物ともせず、ぶっ飛ばし続けるのだ。
勝負は時の運と言った。
運を掴んだものが勝利するのだと。だが、そんな小賢しいこととは無縁のところに真の強者が存在するのならば、メサイアとはそういう存在なのだ。
「おビビリになられている所を!」
『ビルドヴリトラ』の顎が『騎馬戦軍団』の機体を噛み砕き、引き裂き、スクラップにしていく。
まさに暴竜。
この暴威を前に勝負運など些細なことである。
荒れ狂う悍ましき暴竜の姿は、数で勝る『サスナー第一チーム』を完全に恐慌状態へと叩き落とすだろう。
「壊される前に壊してしまえばよろしいのですわ~!」
なんたる脳筋。
なんたる暴威。
メサイアは今や、カロリーモンスターである。いや、消費するって意味で。きっと彼女は、このバトルが終わった後、大変にお腹がすくだろう。
それほどまでに『モーション』タイプの操縦はエネルギーを使うのだ。
だが、気をつけろ。
空きっ腹に任せて食べてしまうと、リバウンドという名の恐ろしき敵がやってくる――!!
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『数だけいてもな!』
【オーラ防御】を自身のプラモ、ビルドスター・インパルスにまとわせ、【戦闘知識】で見極めて【見切り】と【武器受け】で対処!
ライフルの【制圧射撃】とブレードでの【鎧砕き】をたたき込んでいくぜ!
『さあ、ショータイムといこう!』
相手が集まった頃合いでオーラを幾重にも重ねがけしたあとにユーベルコード【獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』】を発動。俺の炎が焼き尽くすぜ!
『五月雨模型店』の襲い来る『騎馬戦軍団』の数は尋常ではなかった。
フィールドを埋め尽くす量産型のホビーの群れ。
ギラつくアイセンサーが陽炎の向こう側から群れをなして歩み寄る。
彼女らは、その名を体現するかのように数機でフォーメーションを組んで、『五月雨模型店』のメンバーたちに襲いかかる。
「フォーメーションを崩さず、各個撃破を。彼等は数で劣ります。それも覆せないほどの圧倒的な数の差なのです。焦ることなく。ただ犠牲を厭わず進みなさい」
『サスナー第一チーム』の先陣を務める『ツヴァイ』は、『ダーク化』されたアスリートの一人である。
彼女が陣頭に立って指揮を採っている限り、『騎馬戦軍団』のフォーメーションを突き崩せないだろう。
「数だけいてもな!」
躍り出るように漆黒のロボ――『ビルドスター・インパルス』が迫る『騎馬戦軍団』の操る量産型の攻撃を刀でもっていなす。
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は『ユーベルコード発生装置』から発露するオーラに寄って機体を守りながら、数の暴力ともいえる『騎馬戦軍団』の攻勢をかいくぐる。
細かい攻撃を躱しきれないのは仕方のないことであった。
己の戦闘の知識。
経験を総動員して、降り注ぐ重火器から放たれる銃弾を躱し、受け止め、ライフルによって応戦する。
だが、やはり数の暴威は凄まじいものがある。
「とは言っても、この数だぜ! どうすんだよ!」
『アイン』が自分の機体を操りながら防戦一方になっていることを告げる。
これを覆すには正直骨が折れるだろう。
ブレードの一撃を『騎馬戦軍団』の機体に浴びせかける。だが、『騎馬戦軍団』はとっさにフォーメーションを変え、さらには変幻自在な機動でもってガイを追い込んでいく。
「たしかにな……だが!」
ガイの瞳がユーベルコードに輝く。
ライフルとブレードを地面に突き立てる。何を、と思っただろう。彼の周囲に集まった『騎馬戦軍団』の量産機たちが『ビルドスター・インパルス』を取り囲む。
「さあ、ショータイムといこう!」
打ち込まれる弾丸。
雨あられと放たれた弾丸を幾重にも張り巡らせたオーラで防ぐ。だが、あまりにも数が違いすぎた。オーラが破られ、弾丸が突き抜けてくる。
「我が刀に封じられし、獄炎竜の魂よ!!荒ぶる紅蓮の炎となりて、すべてを灰燼と化せ!」
膨れ上がる機体より立ち上る炎が、弾丸が装甲に到達する前に溶かし落としていく。
さらに天をつく炎が九つの首をもした獄炎となって戦場をなめるように駆け抜けていく。
「獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』(ゴク・グレンカイホウ・ヴリトラ・ファンタズム)! 俺の炎が焼き尽くすぜ!」
ガイの『ビルドスター・インパルス』より放たれる炎が次々と『騎馬戦軍団』の機体を飲み込んでいく。
フィールドに熱風が吹き荒れ、フィールドの外で操作しているアスリートたちの頬を撫でるだろう。
この熱量こそが『プラクト』の本領でもある。
再現された力は、フィールド内で発生したとしても現実に地続きだ。
九つの獄炎が『サスナー第一チーム』を分断する。
「これで敵は分断できる。いくぜ!」
ガイはブレードとライフルを取り、戦場を駆け抜ける。炎に寄って分断された『サスナー第一チーム』が体勢を整えるよりも早く、これを打倒していかなければならない。
質でも量でもない。
敵の強みを細切れにして分断する。『五月雨模型店』のメンバーたちはこれに続き、突破口を開こうと快進撃を続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
ヒポグリフモーションの師匠・霹靂と一緒に慣れましてー。
羽をどうやって動かしてるかって?…それは秘密です(内部三人が四天霊障伝って手伝ってる)
まあねー、騎馬戦。ならば、こちらもいきましょうか…!
発生装置は胴体部分になりますから、そこがきらっと。
ええ、騎馬戦には騎馬戦を。本物の騎馬兵ですよー。いきなさいなー。
ふふ、その攻撃は見切りましたよー。それくらいは、朝飯前というやつですー。
※
霹靂、まさかの自分そっくりに驚いてた。クエ!?
陰海月、お手製のぽんぽん持って応援中。これも運動。ぷきゅ。
人生において師とは常に周囲に存在するものである。
どんなものにも学びを得ることができるのならば、それは真に知恵あるものであったことだろう。
よく識るということは、多くのものを受け入れることにほかならない。
つぶさに観察する瞳あれば、己が人の五体を持っていたとしても、四足の翼在る獣、即ち『ヒポグリフ』の挙動を学ぶこともまた可能であったことだろう。
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『疾き者』は、『陰海月』と共にクリーチャーモデルであるヒポグリフを『霹靂』に見立てて完成させていた。
今日という決戦の日に備えて、数日練習に励んでいた成果を此処に示す時であった。
フィールドに所狭しと存在していた『ダークリーガー』によって『ダーク化』された『ツヴァイ』や『騎馬戦軍団』たちが一斉に戦場を駆け抜ける。
だが、それは猟兵のは成った炎に寄って分断され、各個撃破する機会を得るに至った。
しかし、分断下とは言え、未だ敵の数は膨大そのもの。
「ヒポグリフモーションの師匠、『霹靂』と一緒に慣れましてー」
羽は意識すれば、その動きがわかる。
空を飛ぶためにはどうすればいいのか理解する。
簡単なことではないだろう。
現に『疾き者』の内部にある他の三柱たちが手伝ってくれている事は秘密だ。
『モーション』タイプはプレイヤーであるアスリートの動きをダイレクトに伝える。『マニューバ』でないのならば、自然『疾き者』の体は四足の態勢を取るだろう。
「なんです、あれは! あんなものが、人の動きで再現できるのですか!」
『ツヴァイ』がうろたえている。
それほどまでに『霹靂』を模したヒポグリフのクリーチャーモデルは人が動かしているようには思えなかったのだ。
「『騎馬戦軍団』! 騎馬を組み、フォーメーションでもってアレを!」
『ツヴァイ』の号令と共に『騎馬戦軍団』の機体が騎馬を組んで突撃してくる。確かに突進力は凄まじいだろう。
けれど、それを前にして『疾き者』は落ち着きを払っていた。
確かにあちらは四機で一機。
だが、こちらは四柱で一人である。他者との意思疎通が必要な彼女たちと違い、『疾き者』たちは、その魂ごと結束しているのだ。
「…懐かしの、我らが同胞」
ヒポグリフのモデルの内部に組み込まれた『ユーベルコード発生装置』がきらめく。
発露するは、四天境地・兵(シテンキョウチ・ツワモノ)。
一斉に召喚される騎馬兵たちが、『騎馬戦軍団』たちの機体を打ちのめす。
「ええ、騎馬戦には騎馬戦を。本物の騎馬兵ですよー。いきなさいなー」
「騎馬の召喚……! こちらの数を見越してきた! ならば、動きで……!」
「ふふ、その攻撃は見切りましたよー。それ位は朝飯前というやつですー」
跳ねるようにしてヒポグリフのクリーチャーモデルが空を舞い、一気に天空より爪の一撃をもって『騎馬戦軍団』の機体を切り裂く。
騎馬となっても、本物の騎馬兵たちの機動力に勝てるものではない。
凄まじい速度で戦場を撹乱するように駆け抜ける騎馬兵たちと『疾き者』の手繰るヒポグリフのクリーチャーモデル。
「陣形が崩される……! このままでは、こちらの数の有利を活かせないままに撃破される!」
『ツヴァイ』にとって、それは屈辱そのものであったことだろう。
彼女の最たる特性は、操縦技術よりも部隊を指揮する能力だ。それがあるからこそ、膨大な『サスナー第一チーム』の『騎馬戦軍団』の連携を崩すこと無く戦えていたのだ。
けれど、炎と騎馬兵の投入によって、その均衡が崩れる。
突き破るようにして突出してくる炎の中から飛び出す騎馬兵と『疾き者』が手繰るヒポグリフがそれをさらに瓦解させるのだ。
「そちらの敗因はだた一つ。数の利を活かそうと、貴方自身が自分の戦いをしなかったこと……こちらには一騎当千の強者たちが控えているのですよ」
『疾き者』は笑い、そして背に『霹靂』と『陰海月』の声援を受け、さらに戦場をかき乱すように疾駆するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
橘・小雪
さあ、勝たなくっちゃ!
あたしと紅茶と『桜風』が参る!『レッツ・アクト』!
背中のバーニアを噴射して加速
スピード勝負で一体ずつ斬っていくけどキリがない!
あぁん、近接ってロマンだけど、あたしの実力じゃ無力!
いや、落ち着け、あたし
まずは冷たい紅茶を一口
ここは、あたしが囮になるように動いて敵を引き付け――
UCで一斉攻撃!狙うは『ユーベルコード発生装置』!
【部位破壊】を利用、ティースプーンで殴打!
囲まれちゃう前にもちろん逃げるよっ
アインさんに教えてもらったからバーニアだって自由自在
お茶も一緒に飲めないような相手に
負けるわけにはいかないんだからっ
アドリブ歓迎です!
『五月雨模型店』と『サスナー第一チーム』との決戦の火蓋はすでに切って落とされた。
大方の予想は、『サスナー第一チーム』の勝利である。
如何に猟兵たちが質で勝るのだとしても、戦いは数の多いほうが圧倒的に有利なのだ。個として優れていたとしても、群がる数の暴威に晒されるのならば、これに叶う道理はない。
だが、しかし橘・小雪(Tea For You・f37680)の心には決意があった。
決戦の日まで『アイン』とこれだけ特訓を積んだのだ。
「勝たなくっちゃ!」
あの特訓の日々は楽しかった。プラスチックホビーに慣れ親しんだことはなくとも、楽しいと思うことだけは変わらなかった。
紅茶も楽しむものだ。
ならば、プラスチックホビー、『プラクト』もまた小雪にとっては同じことであっただろう。
「あたしと紅茶と『桜風』が参る!『レッツ・アクト』!」
心を鼓舞する。
フィールドにセットされた桜色の装甲を持つロボット型のホビーが小雪の動きをダイレクトに受けて、再現する。
走る。飛ぶ。
それは基本中の基本であった。けれど、わかるのだ。
『アイン』に教えてもらったように、バーニアを意識して加速する。思うだけで機体がバーニアを噴射させ、一気に空を舞う。
体勢を整える。
まだたどたどしい動きであった。
「その程度の腕で迫るか!」
量産型の機体が『桜風』を取り囲む。膨大な数の敵は、ただそこに在るというだけで脅威だ。
振るう刀の斬撃が『騎馬戦軍団』の操る量産機に叩き込まれるも、即座に別の機体が小雪と『桜風』に襲いかかる。
「あぁん、近接ってロマンだけど、あたしの実力じゃ無力!」
小雪は嘆く。
もっと力強く打ち込めればいいのにと。けれど、彼女の腕力ではこれが限界であった。
「小雪ねーちゃん、落ち着けって! やたらめったらふるったって斬れないぜ!」
『アイン』の言葉が響く。
そうだ。落ち着かなければ。小雪はポットに入れていた冷たい紅茶を口に含む。
『騎馬戦軍団』からすれば、唐突に『桜風』が何やら飲む動作をしたので、警戒したことだろう。
何をするつもりだ、と。
「――?」
「いいよ、おいで! 一体ずつ斬ってもキリがないからね!」
まるで挑発するように小雪の『桜風』が口元を拭う。
まさか、試合中に敵前で紅茶を飲む者がいるとは思わなかったのだろう。それは『騎馬戦軍団』たちのプライドを傷つけるものであり、同時に激高を誘うものであった。
「おちょくるのも――!」
「いいかげんにしろ!!」
『騎馬戦軍団』は、一気に距離を詰めるようにフォーメーションを組んで『桜風』を取り囲む。
絶体絶命であった。
『プラクト』歴の浅い小雪では打開できようはずもない攻勢。
だが、彼女は猟兵である。
戦うすべを持つ存在で、そして『桜風』には『ユーベルコード発生装置』が組み込まれている。
小雪の瞳がユーベルコードに輝くのと同時に『桜風』のアイセンサーにも光が灯る。
「狙うは一点突破!『ユーベルコード発生装置』が機体の要で、弱点だっていうのなら!」
機体の周囲に幾何学模様を描き、複雑に飛翔するティスプーンが現れる。
それは彼女のユーベルコードの発露であった。
ビットのように飛ぶティスプーンが次々と『騎馬戦軍団』の機体を取り囲み、袋叩きにするようにして殴打し続ける。
どこに『ユーベルコード発生装置』が組み込まれているのかはわからない。
けれど、これだけの数でもって殴打すれば、いずれかがヒットするだろう。
「さぁ、召し上がれ(サァメシアガレ)って、言ってる場合じゃないよね! 囲まれちゃう前に!」
「ああ、こっちだ!」
『アイン』が小雪の援護に回るように敵陣を切り裂いて飛び込んでくる。
「お茶も一緒に飲めないような相手に負けるわけにはいかないんだからっ」
小雪は機体のバーニアを噴出させ、『アイン』と共に包囲網を突破する。
それは見事な脱出劇であったことだろう。
敵の数は多い。けれど、それ以上に小雪たちには培ってきた経験と、機体に対する思い入れがある。
数を間に合わせるために煩雑に造り上げた『サスナー第一チーム』の機体に負けるわけにはいかないのだ。
「このままいくぜ、小雪ねーちゃん!」
「うん、敵の親玉を引きずりだそう!」
小雪は『アイン』と連携し、戦場を駆け抜けていく。
其処には不慣れであった、先程までの彼女は居ない。本当の実戦を得て、今小雪は立派な一人のアスリートとしてフィールドに立つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アリルティリア・アリルアノン
グレート!数だけは多いぜぇ!
ですが物量なら負けませんよ!ユーベルコード発動…小型支援メカ軍団を召喚!
これで質も量も兼ね備えたアリルは無敵!やられたい人からかかって来いたたた!?
ビジュアル重視の機体と突出気味の位置取りが[悪目立ち]したのか、相手の集団はこちらを集中攻撃するつもりのようです
これは無理と逃げ回るも、ついに追い詰められ――たと思いましたか?
今までのは周囲を高台に囲まれたこの場所、いわゆるキルゾーンに[おびき寄せ]る為の演技!
まんまと誘い出された敵を、ここに伏せてもらった火力自慢のチームメイト達による一斉砲火で一網打尽です!
『サスナー第一チーム』のメンバーの数は膨大そのもの。
それもそのはずである。
『ダークリーガー』は勝敗でもって他のアスリートたちを『ダーク化』し、己のチームの傘下に加える。
こと『プラクト』のチーム戦においては、メンバーの数は上限を設けられていない。数こそ即ち力なのである。
『ダークリーガー』はアスリートに勝利し、雪だるま式でチームの勢力を拡大し続けてきたのだ。
『五月雨模型店』の『プラクト』フィールドには、その傘下である『騎馬戦軍団』が『ツヴァイ』と呼ばれた『ダーク化』したアスリートに率いられ、圧倒的な物量とチームワークで攻め込む。
「グレート! 数だけは多いぜぇ! ですが物量なら負けませんよ!」
アリルティリア・アリルアノン(バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639)が操るのは、見た目華やかな魔法少女ロボであった。
そのステッキが振るわれると、機体に組み込まれた『ユーベルコード発生装置』が煌めき、エレクトロレギオンが出現する。
小型支援メカ軍団は、一斉に『騎馬戦軍団』の操る量産型の機体へと群がる。
「これで質も量も兼ね備えたアリルは無敵! やられたい人からかかって……」
「怯むことはありません。所詮は焼け石に水程度の数!」
『ツヴァイ』と呼ばれた『ダーク化』アスリートがエレクトロレギオンの機械兵器たちを前に『騎馬戦軍団』たちを鼓舞する。
「って、いたたた!?」
アリルティリアの出現させたエレクトロレギオンはたしかに数が膨大である。しかし、程々の強さしかもたず、一撃でも受ければ消滅してしまう。
それを『ツヴァイ』は看破していたのだ。
それにアリルティリアの魔法少女ロボは、その華やかな外見と相まって兎に角目立つ。
悪目立ちしていると言ってもいいくらいに目立っているのだ。
そんな彼女を狙って『騎馬戦軍団』たちが一気にフォーメーションを組み上げて、迫りくる。
「なかなかどうしてねばってくれますね!」
「こっちを集中攻撃! これは無理無理!」
「逃しません! 部隊を分けます。『騎馬戦軍団』は、あの魔法少女ロボを追いなさい!」
必死に逃げるアリルティリアの魔法少女ロボ。
『マニューバ』タイプの操縦系統故に、逃げるという行為は煩雑な操作性も相まってうまくいかない。
これがもし、『モーション』タイプであったのならば、もっと効率よく逃げられただろう。
徐々に包囲網を狭められ、アリルティリアは『騎馬戦軍団』に追い込まれてしまう。
「さあ、観念してもらいましょうか。ちょこかまと逃げ回って、時間を稼ごうとしたのでしょうが……」
「ただアリルが逃げ回っていたと、追い詰められたと思いましたか?」
だが、彼女は闇雲に逃げていたわけでもなければ、『マニューバ』タイプの操作性に振り回されていたわけでもない。
そう、アリルティリアの魔法少女ロボが逃げ込んだのは、谷間のような地形。
周囲を高台に囲まれた場所であった。
そこに数多の『騎馬戦軍団』を引き入れて、彼女は追い詰められた――のではない。
「そう、ここはキルゾーン。おびき寄せられたんですよ!」
まんまと誘い込まれた敵を高台から囲むのは『五月雨模型店』のメンバーたちの機体。
「よっしゃ、よい陽動だったぜ! アリル!」
『五月雨模型店』の『アイン』が笑って、一斉に号令を掛ける。
アリルティリアを追い詰めていた騎馬戦軍団の量産型たちが次々と射撃に寄って打ちのめされていく。
「火力自慢のチームメイトって頼もしいですね! 次もじゃんじゃん引っ張り込むので、頼みましたよ!」
アリルティリアは己の目立つ魔法少女ロボの華やかさを十二分に発揮し、踊るように戦場を駆け抜ける。
華に引寄されるように『騎馬戦軍団』が次々とおびき寄せられ、撃墜されていく。
アリルティリアは機体の特性を見事に引き出し、数の暴威を退けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
試行錯誤の末、店主の協力のもと完成に至ったアニメ風巫女プラモデルの御披露目だぜッ!
巫女服スラスターにより機動力の大幅な向上、脚部のホルダーから展開する結界霊苻ビットで防御力の向上、弓ランチャーでの遠距離攻撃、極めつけはあらゆるプラモから選び抜き一から鍛えて完成させた妖刀『プラ切丸』ッ!『ユーベルコード発生装置』を胸部に配置し動きに支障が出ない黄金比バランス、美しい完璧な美少女プラモデルだ。
相棒、派手にぶちかませッ!
「…行きます。」
スラスターで高速移動しながら敵ホビーの動きを見切り、的確に刀で斬り捨てていって大暴れだ。
更に弓ランチャーで【破魔の祓矢衾】発動、一網打尽だぜッ!
【アドリブ歓迎】
巫女型美少女プラモデルは、試行錯誤の末に『五月雨模型店』の店主の協力をもとに完成に至った。
アニメ風の塗り分けも美しく、巫女服のデザインをメカ要素を盛り込んだ姿は、壮麗にして美麗であった。
フェイスのアイペイントもばっちりである。
白い巫女服がはためき、赤い袴がフィールドの砂塵の中に映えるだろう。
それよりなにより巫女服にメカデザインを盛り込んだのは正解であったと神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は赤い鬼面をカタカタ揺らしながら絶賛する。
巫女服スラスターにより機動力の大幅な向上。
脚部のホルダーから展開することのできる結界霊符ビットにより防御力も向上している。
さらに特筆すべきは弓ランチャーでの遠距離攻撃。
『相棒、派手にぶちかませッ!』
「……行きます」
相棒である桜が『モーション』タイプの操作でもって機体を動かす。
弓ランチャーの使い方は通常の弓と同じ扱いであった。
即ち、エネルギーの矢をつがえ、弦を引く。そこに必要な膂力はアスリートとして備わったものが必要となるだろう。
筋力が足りなければ、引くことすらままならない。
だが、足りない筋力は武装の機構で補えばいい。非力なものでも扱うことのできるボウガン。
その弦を巻き取る機構を備えた弓ランチャーが限界までエネルギーの矢を引き絞り、その出力を増大させるのだ。
これが『プラクト』ならではの工夫であったことだろう。
「――……散開しなさい!」
『サスナー第一チーム』の『ダーク化』アスリートである『ツヴァイ』が凶津たちの巫女プラスチックホビーが大出力の矢を放とうとしている事に気がつくがもう遅い。
『遅いぜッ!』
その言葉と共に放たれた大出力の矢が分断されていた『サスナー第一チーム』のプラスチックホビーを一瞬で飲み込む。
そこに駆け込むのは、やはり桜の操る巫女プラスチックホビーであった。
「機体の大出力……! 高機動……! 美少女プラモデルと思って侮っていたわけではありませんが……!」
『ツヴァイ』が呻く。
桜の操る機体は神楽を踊るように『騎馬戦軍団』のフォーメーションを突破する。
『そらそうよ! あらゆるプラモから選びぬき、一から鍛えて完成させた妖刀『プラ切り丸』ッ! 『ユーベルコード発生装置』を胸部に配置し、動きに支障が出ない黄金比バランス、美しい完璧な美少女プラモデルだぜッ!』
凶津のカタカタ鬼面が鳴るのを桜は聞き、同時にこれのモデルが自分であるということが、少し羞恥を煽るかもしれない。
美少女って相棒である凶津に言われるのは、なんともこう、他人から言われる以上にこそばゆい気持ちになってしまうかも知れない。
スラスターを噴射させながら、一気に『騎馬戦軍団』の量産型を切り裂く『プラ切り丸』。ゲートの白化など断じて許さぬとばかりに研ぎ澄まされた刀身が爆発の光を受けてきらめく。
「……逃しません」
『一網打尽だぜッ!」
弓ランチャーをさらに構える。
大出力の一撃ではなく、今度は連写モード。
破魔の祓矢衾(ハマノハライヤブスマ)たる霊力を込めた力が、胸部の『ユーベルコード発生装置』より発露し、分裂した破魔の矢を解き放つ。
それは一瞬で『騎馬戦軍団』たちを飲み込み、周囲に爆発を広げていく。
どれだけ数の暴威に晒されようとも凶津と桜、そして店主の作り出した美少女プラモデルは負けはしない。
美しさと強さを兼ね備えるのが現代の女性の在り方であるというのならば、桜をモデルにした巫女プラスチックホビーは、『プラクト』に新たなる黎明を生み出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
いぇーい、にぃなちゃんだよー!皆見てるー?
まずはそんな感じでモニターの向こうにグラビアポーズで【パフォーマンス】!
とっときのライダースーツでばっちりキメとくぞ☆
前もってマニューバタイプの操縦席もバイク風に【武器改造】しておけば、違和感なく【操縦】出来そうだね。
相手は騎馬戦かぁ……味方の少年少女達、対抗してにぃなちゃんに乗ってく?
どっちにしてもやる事は一つ、【オーラ防御】しつつ突撃して搭載した火器を【乱れ撃ち】!
どこがユーべルコード発生装置かも集中して観察すれば分かるかもだけど……相手がこの数じゃめんどくさいな。
出し惜しみ無し、たっぷりのミサイルでまとめて【吹き飛ばし】ちゃえば終わりだよね☆
とっておきのライダースーツを身にまとい、ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は『ユーベルコード発生装置』が発する光のパーティションから商店街の大型モニターに映し出しているカメラに向かってグラビアポーズでパフォーマンスする。
これもまた一つのプロモーションというやつである。
『プラクト』、『プラモーション・アクト』は未だ新気鋭のホビースポーツである。それゆえに、公式競技化されていないのだ。
だが、そんなことは関係ない。
公式であろうが非公式であろうが、今さに『ダークリーガー』によって狙われているのならば、競技人口を増やしてこれに対抗するのもまた立派な猟兵としての戦いであった。
「いぇーい、にぃなちゃんだよー! みんな見てるー?」
見目麗しいニィナの姿に商店街を行く人々は、一斉にモニターに釘付けになるだろう。
アイドルかなにかの宣伝かと思っていた者もいただろう。
けれど、モニターが切り替われば、それが『プラクト』のフィールド』を示していることがわかるだろう。
数多のプラスチックホビーがフィールドを駆け抜け、一進一退の戦いを繰り広げている。
『五月雨模型店』のメンバーの善戦は素晴らしいものであった。
数の暴力に頼る『サスナー第一チーム』を戦略と質でもって抑え込んでいる。だが、『ダーク化』したアスリートである『騎馬戦軍団』のフォーメーションも見事であった。
「少年少女たち、対抗してにぃなちゃんに乗ってく?」
ニィナが手繰るのは『マニューバ』タイプのバイクホビーであった。
自走することもできるが、やはりバイクとは誰かを乗せて走ってこそだろう。その言葉に『アイン』と呼ばれた少女や『五月雨模型店』の少年が応える。
「タンデムでいくぜ!」
「振り落とされないでよね☆」
ニィナは合点承知とばかりに自身のバイクホビーに二人の機体を乗せて戦場を走り出す。
風を纏うオーラを噴出させながら、ニィナのバイクホビーから展開した火器が乱れ打たれる。
無数の高機動マイクロミサイルと乗せた二人分の機体の火器とが嵐のようにフィールドに飛ぶ。
迫る『騎馬戦軍団』がどれだけフォーメーションに優れているのだとしても、彼等は量産型。さらに言えば、効率化されたフォーメーションでもってこちらを追い込もうとしている。
「数に頼ってばかりじゃあな!」
「でも、この数じゃめんどくさいな。出し惜しみなしでいこーよ!『ユーベルコード発生装置』の位置はやっぱり胴体部分だね!」
「量産型だから、全部位置を変えているってことはないだろうし!」
ならば、とニィナの瞳がユーベルコードに輝く。
ミサイルカーニバルはここからはじまるのだ。
「目標、射程範囲全部ろっくおーん!カーニバルだよ、れっつだーんす!!!」
その声と共に展開される高機動マイクロミサイル。
それは糸をひくようにフィールドを飛び、『騎馬戦軍団』の手繰る量産型ロボたちへと直撃していく。
「どれだけ数がいようともミサイルでまとめて吹き飛ばしちゃえば終わりだよね☆」
いえーい、とニィナは爆発の光が自身を照らすのを確認し、操作のためのパーティションからちょっと抜け出して、カメラの前で勝利のグラビアポーズでパフォーマンスするのだ。
「これがプラスチックホビーを使ったホビースポーツ『プラモーション・アクト』。略して『プラクト』だよ☆ みんなも『レッツ・アクト』!」
ニィナはプロモーションに余念なく一頻り商店街のモニターに映り、大々的に宣伝するのだ。
彼女のプロモーションは商店街をわかせ、大好評を博すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
操縦の繊細さはちょっと意外なほどだったけど、とっくんはしたし、
機体の調整は万全だし『最強の幻影』の力を見せるときだね
開幕ぶっぱは女の浪漫。
まずは【テスカポリトカの鏡】で騎馬隊を薙ぎ払っていこう。
相手の先陣を吹っ飛ばしたら、次は【mist sprayer】で放水。
相手は騎馬戦部隊だし、これで足下を悪くすれば安定した重心がより有利になるもんね。
相手の動きが鈍ったら剣……【Magne Truncheon】だけど……で突撃!
バランスの悪いところに電撃つきの打撃は効くんじゃないかなー?
濡れ透けのまま痺れる女の子とか、運動会の華だよね!
……いえ、これ狙いとかじゃないですよ? これは結果! ついでだから!
『最強の幻影』
それは言葉にすればなんとも頼もしいものであった。
だが、最強たる要因は、その繊細さにもあった。機体のデザインももとより、細部にまで組み込まれた関節部やメカニック。
完成させることができたのならば、きっと最高であることは言うまでもなく。
そして、それを『プラクト』用の機体として扱うのであれば、繊細さの中に剛性を持たせなければならない。
『プラクト』は『モーション』と『マニューバ』の二種類に大別することができる。
どちらにも一長一短あるものであるが、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)にとって、それは意外なほど気を使わなければならないものであることを知るだろう。
けれど、特訓はしたのだ。
「それに機体の調整は万全だし『最強の幻影』の力を見せる時だね。そして――」
開幕ぶっぱなは女の浪漫。
本当にそうか? と誰もが首をひねったかもしれない。
機体に組み込まれた『ユーベルコード発生装置』が唸りを上げるように出力を上げていく。
目の前に迫る『サスナー第一チーム』のプラスチックホビーの量産型が一斉に襲いかかろうとしている。
だが、理緒の瞳にあるのは、恐れでも焦りでもなかった。
あるのは確固たる浪漫のみ。
「射線クリア。いっちゃえ――!」
テスカトリポカの鏡(テスカトリポカノカガミ)が起動する。己の機体が構えた大口径主砲が発射形態へとロングバレルを展開し、出力の最高値まで一気に高められたビームの光条がフィールドにありし『サスナー第一チーム』の機体を薙ぎ払うのだ。
「また大出力の砲撃……! 数で劣るのならばとやけを起こしましたか! 機体の『ユーベルコード発生装置』が焼き付くのも厭わぬとは!」
『ダーク化』されたアスリートである『ツヴァイ』が呻く。
彼女の持ち味は、大規模戦闘における陣頭指揮である。そんな彼女の指揮を打ち砕くのが、大出力による砲撃と分断であった。
数の暴力とはよく言ったものである。
だが、数とは連携が取れてこそだ。そして、数が膨れ上がれば上がるほどに統制は取り難くなる。
「次は放水だよ! そっちがフォーメーションを強みとして騎馬戦でくるのなら!」
機体の放熱を抑えるために備えられた冷却機能によって冷水が噴出し、フィールドを満たす。
ぬかるんだ大地は、『騎馬戦軍団』にとって足を取られる以上に機動力をそがれるものであったことだろう。
「機動力を……分断して、こうきますか!」
「お前の相手は私だっつってんだろ!」
『ツヴァイ』の機体に躍りかかる『アイン』。
フィールドのあちこちで一進一退の攻防が繰り広げられている。
戦いは佳境に入っていることがわかる。
数の暴力を押し返し、『五月雨模型店』は勝利できるのか。だが、まだ足りない。勝利を確実のものとするのならば、この『サスナー第一チーム』を率いているリーダーである『ダークリーガー』その者を打ち倒さなければならない。
「突撃!」
手にした電撃を放つ剣に見立てた棍棒を理緒は抜き払い、機動力を削がれた『騎馬戦軍団』を突き崩す。
機体が動くたびに冷却用の冷水が噴出し、フィールドの外にまで及ぶ。
「わざとじゃない。わざとじゃないよ」
理緒は弁明しているが、本当にそうなのかと疑いが晴れない。
彼女の機体が放つ冷水は、あまりにも量が多く『騎馬戦軍団』の少女たちの体操服を濡れて透けさせるのだ。
「濡れ透けのまま痺れる女の子とか、運動会の華だよね!」
どこの世界にそんな華があるのか。いや、ここか、と思わないでもない。
「これは結果! ついでだから!」
物の序でみたいに、女の子を濡れ透けしびれにするんじゃあないと誰もが思ったことだろうし、モニターで見ていたギャラリーも思ったことだろう。
だが、時としてスポーツはこのような場外乱闘もまた見ものであるし、華でもあるだろう。
新気鋭のホビースポーツとして『プラクト』はいろいろな意味で注目を集めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シニストラ・デクストラ
「チームで相手なんて負けれないの。ねえ兄様」
『連係プレイで負けれないのです。ねえ姉様』
機体に名をつけました。
『ラルヴァ』悪霊の名を冠する六腕四脚双頭の機体
「あ、頭増やしたんだ兄様。」
『うん、頭増やしてみたんだ姉様。』
六腕に銃を装備させ、≪乱れ射ち≫
近づいてきた敵には≪ダッシュ≫で体当たりして≪吹き飛ばし≫
「兄様、このスイッチを押したいの。」
『姉様、ここはそのスイッチを押す時です。』
ポチっとなとスイッチを押したらラスボス変身。
ラルヴァが腕を倍に増やして、敵を掴んで≪ぶん回し≫て戦場を『蹂躙』します。
「あれ?勝手に動くの兄様。」
『うん。勝手に動くんです姉様。』
説明しよう。≪バーサク≫モードである
「チーム戦で相手なんて負けれないの。ねえ兄様」
『連携プレイで負けれないのです。ねえ姉様』
シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人は、双子である。
もともと一人で生まれるはずであったが、何らかのアクシデントで一人で二人の躰と精神という異形を持ってきた存在である。
どちらが妹か弟かで本気の殺し合いに発展するレベルで嫌がっているから、互いを兄と姉と呼び合う。
そういう意味では確かに彼等は連携という意味では、このチーム戦に敗北は許されなかった。
『ラルヴァ』と名付けられた悪霊の名を持つ機体をフィールドに走らせる。
その異形は凄まじいものであった。
六腕四脚双頭の機体。
「あ、頭増やしたんだ兄様」
『うん、頭増やしてみたんだ姉様』
『五月雨模型店』で制作し、改良を重ねたプラスチックホビー。
やっぱり二人で操作するなら双頭だよねって思い立ったのは、自然な流れ出会ったのかも知れない。
「異形であろうと、はったりでしかありません!」
『ツヴァイ』と呼ばれる『ダーク化』アスリートの機体が迫る。双頭であろうと上半身と下半身の操作系統を分担するのならば、2つの頭に意味はない。
けれど、その目算は見事に外れたと言ってもいいだろう。
『ラルヴァ』の六腕が一気に動く。
装備した銃が乱れ打たれ、弾丸が機体に敵を近づけさせぬとハリネズミのように弾幕を張るのだ。
「弾幕……それに機動力!」
「邪魔だね、兄様」
『うん、吹き飛ばしちゃおう姉様』
四脚が走り、ショルダーチャージの要領で『ツヴァイ』の機体を吹き飛ばす『ラルヴァ』。
そこにカバーするように『騎馬戦軍団』の機体が駆け込む。
取り囲まれてもシニストラとデクストラは構わなかった。
むしろ、好都合だとも思っただろう。
「兄様、このスイッチ押したいの」
『姉様、ここはそのスイッチを押す時です」
ぽちっとな、とスイッチを押したらいきなりのラスボス変身である。え、今!? とモニターの向こうで見ている観客たちは思っただろう。
そういうのってもっとこう、もったいぶるものじゃないの!? と。
だが、そんなお約束など二人には関係ない。
『ラルヴァ』の腕が更に倍に増え、迫りくる『騎馬戦軍団』の量産型ロボットを掴み、ぶん回して鈍器そのものとして敵機を打ちのめしていくのだ。
まさに暴風。
まさに理不尽。
「あれ、勝手に動くの兄様」
『うん。勝手に動くんです姉様』
二人もよくわかっていない様子である。いや、そこはわかっておかないと!?
そもそも『プラクト』とはアスリートの動きを反映するホビースポーツである。勝手に動くってどういうこと!?
「説明しましょう兄様」
『うん、説明しよう姉様。これはね」
「ええ、これはね」
『バーサークモードだよ』
あっ! アニメとかでよく見るやつー! と観客たちは納得……いや、納得しかねるな!?
勝手に動くプラスチックホビーがどっかんどっかんと理不尽の極みみたいな動きをして多腕をうごめかし、次々と敵をなぎ倒していく。
暴風そのものな『ラルヴァ』は、異形のホビーとしての役割を十全に果たしているとはいえるが、その戦いぶりはあまりにも規格外過ぎたことだろう。
それ以前に自動で動くって、それはいいのか? と誰もが思ったことだろう。
「兄様」
『姉様』
二人はお互い見合ってうなずく。きっと『ダークリーガ』を倒すまで、戦いは終わらないだろう。
ならばこそ、この混沌めいたフィールドを制するには、自分たちの力を使うしかない。
ラスボスの変身ってのは、大抵後一回二回は変身を残しているものだから――。
大成功
🔵🔵🔵
迅瀬・ナクタ
「相手の数が多いな。……トイロボバトルを初めた時を思い出す。多くのアスリート達にバトルを挑んだ……まぁ、今は立場が逆なんだろうがな。 ……思い出に浸るのもここまでだ。
模擬戦を通して分かってきたぞ。『プラクト』と言う競技、こいつの動かし方、そして模擬戦で戦ったアイツらがどんな動きをするのか!」
UC【オリジナル・スタイル】使用
練習中に編み出した構えや呼吸法で機体を動かします。
『五月雨模型店』や他の猟兵のプラスチックホビーと連携を図りながら、各個撃破を目指します。
アドリブ・他の猟兵との絡み歓迎です。
「助けた訳じゃない。たまたまオレが倒そうとした奴がお前と戦ってただけだ。」
『サスナー第一チーム』の物量は圧倒的であった。
戦いの推移は、試合時間の経過とともに拮抗していく。だが、これだけの戦力を持ってしても尚、敵のチームは削りきれていない。
それどころか、親玉である『ダークリーガー』の姿すらまだ出てきていない。
「とは言え、このままでは押し切るのは時間の問題です!」
『ダーク化』アスリートである『ツヴァイ』は『騎馬戦軍団』を率いて、分断されたチームを再編していく。
彼女の特筆すべき能力は、この軍団とも言うべき数を統率することのできる指揮能力だ。
彼女がいなければ、『騎馬戦軍団』は個々のフォーメーションに頼らざるを得ず、またそれ故に猟兵達に各個撃破されてしまう。
「相手の数が多いな……」
未だ拮抗している戦場を見やり、迅瀬・ナクタ(闇を抱くトイロボバトラー・f37811)は『トイロボバトル』を始めた頃を思い出していた。
多くのアスリートたちにバトルを挑んだあの記憶。
チャレンジャーであった自分。
いや、今もそうなのかも知れない。けれど、あのときは立場は逆だ。『ダーク化』していた頃の自分ではもうない。
今は猟兵として、『トイロボバトル』のアスリートとして、この『プラクト』のフィールドに立っているのだ。
決戦の日まで特訓した模擬戦を通してわかったことがある。
この『プラクト』という競技は己の体の動きこそが全て。そして、機体がどのような動きが可能なのかを理解することに尽きる。
思い出に浸るのはここまでだ。
後は戦うのみ。
「わかるぞ……アイツらがどんな動きをするのか」
ナタクは息を整える。
独自な構えと呼吸法。
それによって編み出されるのは、オリジナル・スタイル。
『五月雨模型店』で編み出した構えは、期せずとも彼の『プラクト』仕様の愛機の動きを完璧なものとしていた。
「行くぜ……!」
疾風のようにフィールドを駆け抜けるナタク。
風が頬を撫でる感触すら感じるようであった。機体の装甲にぶつかる砂塵。軋むフーレム。
そのどれもが己の肌、骨格にダイレクトに伝わる。
想像できるということは実現可能であるということだ。
「動きが、早い……! この動き! まさか!」
『騎馬戦軍団』の量産型ロボを一蹴するナタク。
それは偶然にも『五月雨模型店』のメンバーたちが苦戦していた戦いを手助けするものであったことだろう。
だが、ナタクはふいっと顔をそむけて、あらたなる敵を求める。
「あ、ありがと……!」
「助けた訳じゃない。たまたまオレが倒そうとした奴がお前と戦っていただけだ」
素直じゃない。
そんなふうに見えたかも知れないし、本当にそうであったのかも知れない。
けれど、ナタクの動きは『五月雨模型店』のメンバーと交わした模擬戦によって、彼等がどんなふうに戦い、動くのかを熟知していたものだった。
もしかしたら、彼等の窮地を救うために飛び込んだのかもしれない。
彼の胸の内は吐露されない。
ならば、それはナタクの言葉通りであるのだろう。
受け取る側がどう思うのかまで、ナタクは想像していない。己の機体と己の体が合一する感覚を手に、彼は槍を振るい『騎馬戦軍団』を撃滅していく。
プラスチックの爆散する破片が機体装甲を叩き、爆発の光が機体を照らすだろう。
「こんなところで立ち止まってはいられないんだから、オレは」
そう、病床に伏す母親を救うために。
今は戦うことだけが、ナタクの道なのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
数が多くたって負けませんよ!
ユ(2P)「負けたら被弾回数分(ゲームする時の)テレビ優先権取り上げっすからねー!」
常に移動して、側面や背後を取られないように気を付けて……
向こうの攻撃は見切って回避、攻撃を剣で受け流してから剣で反撃です!
やっぱり数の負担が大きいです……でも、各個撃破にさえ持ち込めば十分勝ち目はありますよ!
魔剣“終わりなき蒼穹”を掲げ、UC!
「超強力な無敵徘徊モンスター」の巣を召還、巣を目撃した敵を追跡・襲撃する無敵徘徊モンスターで相手の陣形を崩し、孤立した相手から確実に倒していきます!
わたし(2P)が「それ先生とは違うゲームのネタじゃん―!!」って騒いでるけど今は無視です!
「負けたら被弾回数分、テレビ優先権取り上げっすからねー!」
そんな声がフィールドに響き渡る。
誰の声って問われたのならば、2Pのユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)の声である。
テレビゲームをする際にどちらが優先権を持つのか。
それは古今東西、兄弟が存在するご家庭には必ずと言っていいほど発生していた問題である。
兄弟仲が悪くなる原因の一つである。
一家に一台のテレビなど、もうわりと昔のことである。
テレビも車も一人に一台の時代に、まさかの優先権が存在するとは『プラクト』フィールドに参加しているアスリートたちの誰もが思わなかったことだろう。
「数が多くたって負けませんよ!」
1Pのユーシアは必死であった。被弾回数までカウントされているなんて思いもしなかったし、彼女が操作する『アルミィ先生』は美少女プラモデルである。
『モーション』タイプの操作で動かす以上、その動きはユーシアの肉体がダイレクトに反映される。
機敏に動けば、機敏に。鈍重に動けば鈍重に。
これこそアスリートアースのホビースポーツであるといえるだろう。
だが、ユーシアはバトルゲーマーである。
ならばこそ、こうした戦いはサバイバルゲームのようにセオリーを構築しているのだ。
「常に移動して、側面や背後を取られないように気をつけて……」
『アルミィ先生』がフィールドを華麗に舞う。
いや、舞うっていうか、これはあれだな。ジャンプキャンセルとかしている感じであろうか。
ゲーマーゆえの動作ともいえる。だが、ロックオンを外すためのジャンプキャンセルは、こと『プラクト』においても有効であったことだろう。
一見意味のないモーションに見えて、その実、合理的なのだ。
敵もまた『モーション』で機体に己の反応を追従させているのならば、ユーシアの動かす『アルミィ先生』の動きは、その動き故に視線を釘付けにするのだ。
「戦いづらい……! この動き!」
「見切って回避。受け流してから反撃……です!」
ユーシアはセオリー通りに、いや、コマンドどおりに体を動かすように『騎馬戦軍団』のフォーメーションを切り抜け、魔剣による斬撃を量産型ロボに見舞い、機体を一刀両断するのだ。
「やっぱり数の負担が大きいです……でも、各個撃破にさえ持ち込めば十分勝ち目はありますよ!」
さらにユーシアの瞳が輝く。
『アルミィ先生』が掲げる魔剣がきらめく。
終わりなき蒼穹と名付けられた剣が、胸部に備えられた『ユーベルコード発生装置』から光を受けてきらめく。
「それ先生とは違うゲームのネタじゃんー!!」
2Pのユーシアが叫ぶ。何を、と『騎馬戦軍団』の面々は思っただろう。
あの魔剣の光が何を齎すのか理解できていなかった。
そう、ユーシアのプレイ日記~ダンジョンRPG2~(キョウフノシンボルエンカウント)にはこう記されている。
「わたしだって苦労したんです! そう簡単に対処できないですよ!」
いや、何が?
魔剣より飛び出すのは、超強力な無敵徘徊モンスターの巣であった。
びっくりモンスターハウスとでも言うべきか。その中に取り込まれた『騎馬戦軍団』たちは地獄を見ただろう。
巣を目撃した敵を追跡し、襲撃する無敵徘徊モンスター。
何度と無くランダムエンカウントし、装備もアイテムも整ってきた頃合いを見計らったかのように遭遇してしまう徘徊モンスター。
まともに戦おうとしても無駄だ。
逃げるしか無い。
けれど、簡単に逃してくれないのが、この手のモンスターのいやらしいところである。
ついでにいうと『アルミィ先生』の登場するゲームには、この手のモンスターは出現しない。
だから2Pがわあわあと騒いでいるのだ。
「そういうの今は無視です!」
勝つためには手段を選ばず。
ユーシアにはテレビ優先権がかかっているのだ。この程度のワイルドカードを切るなど、躊躇いなどないのだ。
「さあさあ、わたしのあの日の恐怖を味わってもらいますよ!」
対処不能な無敵徘徊モンスターによる蹂躙。
それが『サスナー第一チーム』の膨大な数を食い散らかすようにフィールドを蹂躙していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
人型が多いならさー、兎に角足回りだよ足回り
えっとマニューバタイプだから操縦席で…と
兎に角回転…回転は全てを解決する…
うおー!インド人を右に!じゃなくてハンドルを右にきる!
回転しながら、各所のトゲトゲでガンガン足回りを責める!
『オーラ防御』で機体を更に頑丈にして兎に角ぶつかる!
うお…目が回る…!
だけど、細かいテクニックとか無しでぶつかるだけだから楽!
そして【Code:T.S】起動!
各所のトゲトゲから雷刃形成!
流石に大きすぎると色々斬り過ぎちゃうからホビーサイズ雷刃!
ダルマ落としに下から順々に斬り落としてあげる!
ええい!作りこみが甘い!
そんなんじゃあ、プラクトスピリット指数が全然足りないぞ!!
『プラクト』において戦場の華はやはり人型ホビーであった。
『モーション』タイプ、『マニューバ』タイプとアスリートの動きをトレースし、伝えるシステムがそうであるように、人型であるというアドバンテージは大きい。
今や『五月雨模型店』と『サスナー第一チーム』の戦いは、商店街のモニターに映し出され、そのアニメのシーンを再現するかのような苛烈な戦いに人々は目を奪われている。
「人型が多いならさー、兎に角足回りだよ足回り」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、そんな人型ホビーの席巻する戦場にあって、人型でもなくクリーチャー型でもなく、クラッシュな車型のホビーでもって参戦していた猟兵の一人であった。
『マニューバ』タイプで操縦する必要があり、最後まで『アイン』は彼女の作った美麗な作例ともいえる人型ホビーでの参戦を説得していたが、玲はそんなこと知らんとばかりに刺々しい装飾のついた車型ホビーでもってフィールドに飛び込んでいた。
「えっと『マニューバ』タイプだから操縦席ってことね」
機体に組み込まれた『ユーベルコード発生装置』によって、玲の周囲には光のパーティションとホビーに再現された操縦席が展開される。
車型だけあって、ハンドルとアクセル、ブレーキ、シフトなどがありタコメーターもちゃんと作り込まれているところが芸の細かいところであると言えただろう。
「兎に角回転……回転は全てを解決する」
アクセル全開! ブレーキング? なにそれ必要なの? とばかりに玲はフィールドに飛び込み、大地を疾走する。
「なんだなんだ!? え、あれって車の……!」
「そうだよ! 玲ねーちゃんだよ! あれだけ説得したのに、やっぱりあっちなのかよ!」
『五月雨模型店』のメンバーたちが、まじかよって顔をしながら玲の車型ホビーの疾走を見送るしかなかった。
「うおー! インド人を右に! じゃなくてハンドルを右にきる!」
ぐるりと機体が反転する加速度Gを体感しながら玲は各所に取り付けられたトゲトゲでもって『騎馬戦軍団』の要ともいえる足回りをガンガン攻めるのである。
オーラ防御で機体を頑丈にして、もとより頑強なプラスチックホビーをさらに頑強にしている。
そんな機体が激突すれば、トゲトゲスパイクにぶっ刺さった『騎馬戦軍団』の機体がぶん回され、大地に叩きつけられ、叩きつけられた端からさらに玲の機体が回転しながら蹴りつけるみたいにまたぶっ飛ばすのだ。
えげつない。
「うお……目が回る……!」
だが、細かいテクニックなど無用。
ただハンドルを固定して、アクセル全開するだけで機体は回転し、凄まじい勢いで『騎馬戦軍団』の機体をぶっ壊していく。
すんごく楽! と玲は思ったが三半規管が持つのか!? ともいらぬ心配をしてしまいそうになる。
それほどまでに凄まじい加速なのだ!
「そんでもって、出力上昇、雷刃形成――Code:T.S(コード・サンダーソード)」
こういうホビーにはつきものである必殺技である。
いや、再現であると言った方が正しいであえろうか。
玲の瞳がユーベルコードに輝き、横回転と共に残光がフィールドに走る。いや、残光ではない。
炉である『ユーベルコード発生装置』より放たれた雷刃が回転と共に凄まじい勢いで『騎馬戦軍団』の機体を足元から切り刻む。
流石に大きすぎると色々と斬りすぎてしまうからとホビーサイズの雷刃にしたのが玲さんの温情であったのかも知れない。
まるで達磨落としであった。
切った端からさらに雷刃が振るわれ、さらに斬撃が『騎馬戦軍団』の機体を切り刻んでいくのだ。
「ええい! 作り込みが甘い!」
「こんな、冗談みたいなホビーに負けるなんて……!」
如何にアスリートと言えど、ちょっと予想外のホビーの必殺技には対処などできようはずもない。
高台から『アイン』たち『五月雨模型店』のメンバーたちは、えげつなーって思って見ている。
「そんなんじゃあ、プラクトスピリッツ指数が全然足りないぞ!!」
「初耳だけど!?」
なんだ『プラクトスピリッツ指数』って!? と『アイン』たちが突っ込む。あるのか、そういう数値が!? 後乗せサクサク設定で生えてくるのか!?
その真偽は定かではない。
けれど、時として、ホビースポーツにはあるのである。そういうものが。
「プラクトスピリッツ指数……まさか、この片田舎にもそれを知る者がいるとは……」
なんか、黒幕っぽい影が意味深な事を言うシーンも差し込まれてる!
しかし、玲さんは構うことなくぶんぶん機体から放出される雷刃をぶん回し、次々と『サスナー第一チーム』を蹂躙していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み関係
●ぜんじつ
そうボクは一番の難関と戦っていた…めんどうくさくなってきたのである!
複雑にしすぎたねー
大体ボクって七日かけて天地創造するより一時間で更地にする方が得意だしねー
●ひらめき
ん…?
天地創造? 創造? そう!
これはいわばボクの創造物!
●かいけつさく
全身をさらに流体VBAプラ粘土で包み込み強度確保!
アンド分離時も自己切断・再接続も容易なワイヤードエネルギーラインを形成可能!
●めりっと
いっけー!バラバラX!バラバラ攻撃だ!
って雑…シンプルな命令でも独自の判断でいい感じに動く!
だって彼は生きているもの!(UC『ゴッド・クリエイション』使用)
これがボクたちの友情!努力!勝利!
これは前日譚である。
いや、大仰な言い方をしたけれど、『サスナー第一チーム』と『五月雨模型店』の決戦の前日の記録である。
制作スペースで頭をうんうんさせているのは破壊神ならぬ破戒神ならぬ、創造もできちゃう神様ことロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)であった。
彼は唸っていた。
彼が生み出した『バラバラX』の問題点を解決しようと戦っていたのだ。
いやまあ、もう言っちゃえば、めんどうくさくなってきていた。
「複雑にしすぎたねー」
プラスチックホビーと言えど、侮れないものである。
『プラクト』の性質を考えれば、まあ当たり前であるのだが『モーション』タイプであれ『マニューバ』タイプであれ、彼の生み出した『バラバラX』の操縦は煩雑さを極めたものであった。
「大体ボクって7日かけて天地創造するより一時間で更地にするほうが得意だしねー」
投げおった。
見事にぶん投げおった。
しかし、そこにロニに閃きが差し込む。
「ん……? 天地創造? 創造?」
あ、きてるきてる。閃き来てる! とロニは飛び上がる。
「そう! これはいわばボクの創造物!」
彼は手にした『バラバラX』と共に小躍りするように制作スペースで飛び跳ね、決戦の日を迎える。
そんでもって後日。
いや、決戦当日。
ロニが手繰る『バラバラX』は戦場に降り立ち、即座にバラバラになっていた。
改めて見るとすごい光景である。
人型がまあ、ここまでバラけたもんだと思うほどにバラバラであった。
「な、なんだあれ……」
「どうやって動かしてのあれ……」
フィールドに居る敵も味方も、モニターでみているギャラリーも、みんなあんぐりとしていた。
そこにあったのはワイヤーに繋がれてバラバラに飛び交う『バラバラX』であった。
全体にマインドミナの粒子をまぶしたプラ粘土で包み込み、強度を確保。さらに分離時に自己切断・再接続も容易なワイヤードエネルギーラインを形成しているのだ。
正直言って、あれを動かしているロニが今どんな感じなんか誰も理解できていなかった。
「いっけー!『バラバラX』! バラバラ攻撃だ!」
あんまりにもネーミングであったが『サスナー第一チーム』のメンバーは、これに対応できていなかった。
オールレンジで砲撃される攻撃に、翻弄されフォーメーションを崩してしまう。さらに追い打ちをかけるように、生物的な動きで回り込むバラバラの子機たち。
「ふふ、だって彼は生きているもの!」
ゴッド・クリエイションによって機体そのものに生命を与えている。
それってチートっていうんじゃって誰もが思ったが、ユーベルコードの範囲ならば、超人スポーツである以上認められるものである。
凄まじい勢いで『バラバラX』はバラバラになって敵へと波状攻撃を加えていく。
この波状攻撃を前に耐えられる機体など存在しないだろう。
ロニは高らかに操縦するパーティションの中で宣言するのだ。
こういう時、ホビーアニメではお決まりの単語があるってものである。そう!
「これがボクたちの友情! 努力! 勝利!」
いや、3つのうち2つは、そうなのか? と疑わないといけない立ち振舞であったが、ロニはそんなこと気にすることもなく、フィールド内を縦横無尽にバラバラになって駆け抜け、観客たちのツッコミを心地よく感じながら『騎馬戦軍団』を蹴散らし続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
よーしいきますよー!
後方支援というこのスタイル
まさに味方に紛れるクノイチスタイルといえるでしょう!
装備が大きすぎて隠れてないとかそんなことないもんっ!
というわけで重すぎて身動き取れないので定点砲撃いっきまーす!
全弾発射の初手最大火力で出鼻をくじきます!
まあ当然のように狙われるわけですが
そこで【VR忍術】地面隆起の術!
動けないなら他のものに動かしてもらえばいいじゃない
複雑な動きが出来ないのが弱点ですが
まあこうエレベーター的に上に回避しながら砲撃し続けるとかできると思います
世を忍ぶクノイチです
最高到達点から再度の全弾発射
倍返しだー!!(なんの)
あ、被弾は普通にします、てへ☆
「よーしいきますよー!」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はとても張り切っていた。
後方支援という機体スタイル。
それは謂わば、味方に紛れて戦うクノイチスタイルなのでは、と自身で思い至ったからである。
目立たず、敵を討つ。
なんか言葉にするととってもカッコイイことに思えたし、何よりクノイチっぽい。いや、クノイチっぽい……ぽい、ぽい、よなぁ……って『五月雨模型店』のメンバーは思っていた。
いや、うん。
サージェのお姉ちゃんがそう思っているのなら、そうなんだろうと彼等は喉までデカかった言葉を飲み込む。
「いや、装備が大きすぎて隠れてな……」
「そんなことないもんっ!」
『アイン』の言葉を遮ってサージェが言う。隠れてないな。だがしかし、サージェはきにしなかった。
背面に装備した火器がおもすぎて身動きが取れないとは言え、定点砲撃ということにおいて、彼女の機体は凄まじいポテンシャルを持っていることは容易に伺える。
「全弾発射の初手最大火力で道を切り開きます!」
放つ火器のブッパは凄まじい。
もう絶対に仲間のことをとやかく言えないあれである。
だがしかし、それだけの火力を放出すれば、彼女の機体は否が応でも目立ってしまう。そして、それだけの火力を有しているのならば、真っ先に排除しようと狙われるのまた道理。
『騎馬戦軍団』の量産型ロボたちが一斉にサージェへと襲いかからんとフォーメーションを組んで飛び込んでくる。
「サージェねーちゃん、来たぞ!」
「わかっていますよ! メモリセット! チェックOK! 参ります!」
操縦パーティションの中でサージェの瞳がユーベルコードに輝く。
VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)、地面隆起の術である。
「動けないなら他のものに動かしてもらえばいいじゃない」
隆起したフィールドがサージェの機体を跳ね上げるように上下運動する。定点砲撃ということだけに重きをおいた戦い方は一点突破に秀でていたことだろう。
なんかこうエレベーターのような昇降運動をするサージェの機体。
はたから見れば、派手なことこの上ない。
しかしながら、サージェは一点見落としているのである。
上下運動。
それはいい。だがしかし、上下する視界はいともたやすくサージェの三半規管を試すだろう。
戦いが終わるまで、持つのか、サージェの三半規管。
虹色エフェクトが出てしまうのではないかと別の意味でハラハラしてしまう。
「ふっ、世に偲ぶのがクノイチです。最高到達点から全弾発射の倍返しだー!!」
別に何かされたわけではない。
けれど、こういうときはそういうのがお決まりだしお約束というものである。
サージェの機体に備えられた背面装備の全てが火を吹き、凄まじ勢いで『騎馬戦軍団』を壊滅させていく。
その代わりにサージェは操縦パーティションの中で目まぐるしく上下する己の視界、モニターにぐるぐると三半規管が狂わされていくのを感じただろう。
しかし、彼女はクノイチである。
忍びである。
ならばこそ、耐えなければならない。
彼女の真の敵は、眼前にあらず。己の目の前の視界にこそ存在している。
そう、決してこの戦いを移しているモニターに虹色エフェクトなど出してはらない。サージェは今、己との戦いにこそ注力し、『騎馬戦軍団』の壊滅などついて回った結果のようにこみ上げるものを抑えるように頑張り続けるのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ブラッド・エンプレス』
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POW : リミットレス・チューンナップ
自身が操縦する【マシン】の【最高速度】と【加速力】を増強する。
SPD : 絶対なるトップ
自身の【移動速度】を、最も近接する対象と同値にする。対象が変わらない限り、自身の[移動速度]のみ徐々に上昇する。
WIZ : 揺るぎなき女帝
敵より【優位なポジションや順位にいる】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
イラスト:ねぎとろ軍艦
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『サスナー第一チーム』と『五月雨模型店』の戦いは拮抗していた。
『騎馬戦軍団』はあいも変わらず数の暴力で持って猟兵たちとメンバーを圧倒しようとする。だが、それに対して猟兵たちはアイデアと質でもって対抗し、これを分断しては各個撃破を狙っていく。
まさか此処まで拮抗するとは『サスナー第一チーム』の『ダークリーガー』である『ブラッド・エンプレス』は思いもしなかっただろう。
いや、自分が出る必要すらないと思っていたのだ。
だが、今やその判断は過ちであったことを認めるほかない。
「『プラクトスピリッツ指数』の高い者がいる……ならば、『エース』として私がでなければなるまい……」
彼女が手にしていたのは、かつて他世界……UDCアースとカクリヨファンタズムで一斉を風靡した『ハチヨン駆』!
四輪駆動の車型プラスチックホビー!
カスタマイズ自由な速さを競うホビースポーツのプラスチックホビーを手に、彼女は叫ぶ。
「『レッツ・アクト』――!!」
飛び出す黒と赤のファイヤーパターンの『ハチヨン駆』。
その速度は全てを置き去りにする速度。炎がオーラのように走り抜けたフィールドに刻まれ、その圧倒的な力を示すように『五月雨模型店』のメンバーの機体を弾き飛ばし、空中で爆散させる。
『アイン』と『ツヴァイ』の機体は、その爆発の最中、鍔迫り合いを重ねる。
「みんな――!」
「よそ見をして!!」
切り結ぶ機体と機体。
完全に実力は互角。互いに譲れぬものがあるのならばこそ、そこに勝敗を分かつものはなく。
「よくも、みんなを!!」
「これが戦いというものです!!」
『アイン』と『ツヴァイ』の機体が激突し、空中から大地へと落下する。土煙が晴れた時、そこにあったのは二機のプラスチックホビーが相打ちで崩れ去る姿であった。
「わたしが、相打ち……?!」
「にーちゃん、ねーちゃんたち、ごめんな。後は頼んだぜ!」
『アイン』の言葉に猟兵たちはうなずくだろう。
熱き魂の咆哮が『プラクトスピリッツ指数』を上げていく。
「これほどの高まりを見せるか……ならば、来るがいい。私の『ハチヨン駆』は止められぬ!」
『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』は凄まじい速度で持って大地を疾走する。
誰も彼女を止められないのか。
だが、猟兵たちは戦う。このプラスチックホビーを、『プラクト』を『ダークリーガー』の思いのままにさせてはならぬと――!
神代・凶津
『ハチヨン駆』ッ!?よもやUDCアースの代物を持ち出してくるとはなッ!
「…くっ、弓ランチャーが当たりません。」
こうなりゃ奥の手だッ!ユーベルコード発生装置の出力を限界まで上げて発動ッ!
雷神霊装(スパークフォーム)だぜッ!
妖刀『プラ切丸』以外の武装を全てパージッ!スラスターを吹かせて雑魚敵ホビーを薙ぎ払いながらハチヨン駆を追走するぜ。
スピード勝負と行こうじゃねえかッ!
ちぃ、敵もユーベルコードを発動しやがったッ!?
徐々に移動速度が引き剥がされるぞ、相棒ッ!
「…このままじゃ負けます。ならっ!」
おうよ、ハチヨン駆の移動経路を見切ってそこに雷撃を集束させた斬撃の放射を叩き込んでやるぜッ!
【アドリブ歓迎】
『ダークリーガー』、『ブラッド・エンプレス』の手繰るホビーは車型であった。
いや、もっと正確に言うのならば『疾走疾駆ハチヨン駆』である。UDCアースで一斉を風靡し、忘れ去れられ、カクリヨファンタズムに流れ着いたホビースポーツの金字塔。
嘗ての栄華は其処にはなく。
けれど、此処アスリートアースで再び『プラクト』のプラスチックホビーとして返り咲くなど誰が予想できたであろうか。
『ハチヨン駆ッ!? よもやUDCアースの代物を持ち出してくるとはなッ!』
赤い鬼面、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が驚愕に開けた口が塞がらない思いであった。
相棒である桜も『騎馬戦軍団』との物量に寄る激突によって、弓ランチャーの弾数が心もとないことになっている事に気がつく。
それ以上に『ブラッド・エンプレス』が操作する『ハチヨン駆』の凄まじい速度たるや。
これが最速を誇る彼女のマシンの性能であるとでも言うのだろうか。
「私に追いつけるものなど存在しない。私が到達したのはスピードの頂きだ。貴様らなどに、私の前を征かせるものか!」
「……くっ、弓ランチャーが当たりません」
なけなしの弓ランチャーの矢を放っても、『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』を捉えられない。
あまりにも自由自在にフィールドを駆け抜ける姿は、嘗てコースレースで遊んだどの『ハチヨン駆』よりも速いと実感させるには十分であった。
『こうなりゃ奥の手だッ! 相棒、ユーベルコード発生装置の出力を限界まで上げるぜッ!』
その言葉に桜はうなずく。
二人の瞳がユーベルコードに輝く。敵の強みは速さの一点のみ。だが、その一点を極めたがゆえに、『ブラッド・エンプレス』を捉えうる者は存在しない。
『雷神霊装(スパークフォーム)――決めるぜ、相棒ッ!』
「転身ッ!!」
二人の力が一つになり、巫女型ホビーの武装がパージされる。防御用の霊符ビットすらも投棄し、限界までスラスターを噴射させ、間に立ち塞がる『騎馬戦軍団』の量産型ロボを妖刀『プラ切り丸』の一閃で切り払う。
「ほう、私の速度に追いつこうとするか、面白い」
『スピード勝負と行こうじゃねえかッ!』
互いの機体がフィールドを駆け抜ける。
まるで閃光のように駆け抜ける『ハチヨン駆』と巫女型ホビー。
だが、追いつけない。徐々に突き放されているとさえ感じる。
『ちぃ、敵もユーベルコードを発動してやがるッ! このままじゃ引き剥がされるぞ、相棒ッ!』
それは桜も理解している。
相手が速度に優れ、徐々に離されているというのならば。
「……このままじゃ負けます。ならっ!」
桜は覚悟を決める。
ここは『ハチヨン駆』のコースではない。そう、『プラクト』のフィールドだ。
ならば、彼女は手にした妖刀『プラ切り丸』に雷撃を集約させ、スラスターを切る。
大地に立つ巫女型ホビー。
空に暗雲が立ち込め、稲妻が走る。明滅する背景の如き空を背に巫女型ホビーが構える妖刀『プラ切り丸』が煌めく。
「その位置から私に斬撃を加えようなど! 私の速度に追いつけぬ者が――なんだ、この『プラクトスピリッツ指数』の高まりは!?」
『ブラッド・エンプレス』は見ただろう。
妖刀を構える巫女型ホビーのただならぬ気迫を。
集約した雷撃が斬撃を振り下ろした瞬間に放射され、扇状に放たれる。
桜が狙ったのは『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』の軌道。その移動経路の見切りであった。
追いつけないのならば、軌道を予測する。
『ハチヨン駆』という速度に勝り、またこの『プラクト』のフィールドに在りて自由に動くのならば、コーナーリングを意識することはない。
ならばこそ、そのホビーの残骸や、機体を縫うようにして走る経路を割り出すのは可能であった。
「……これならっ!」
『行けるぜ、相棒ッ! そのまま雷撃を叩き込めッ!』
扇状に放たれた雷撃が『ハチヨン駆』の動きを止め、さらなる二撃目の集約された雷が振り下ろされ、『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』を吹き飛ばすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シニストラ・デクストラ
「プラスティックモデルなら何でもありみたいなの兄様。」
『プラスティックモデルならプライドはいらないですよ姉様。』
人型(おまいう)ホビーの戦場に車型がつっこんでくる光景に呆れ大。
加速して突進してきた敵に≪ダッシュ≫で体当たりして≪吹き飛ばす≫真っ向勝負を仕掛けます。
元勇者なので!!
「なんか期待されたのでもっと変身するの兄様。」
『期待の応えるのがラスボスです姉様。』
原初の魔神を発動。シニストラとデクストラとラルヴァが融合して機体の損傷が回復して魔神化。
さらに通常のラルヴァが増える阿鼻叫喚絵図爆誕!!
このまま銃の≪乱れ射ち≫と腕の≪ぶん回し≫の≪二回攻撃≫で戦場を≪蹂躙≫します。
『ダークリーガー』の操る『ハチヨン駆』はかつて他世界で一斉を風靡したホビーである。
『疾走疾駆ハチヨン駆』。
その名を知る猟兵もいれば、知らない猟兵もいるだろう。
だが、それは些細なことであった。
フィールド内を縦横無尽に駆け抜ける速度たるや圧倒的であった。
走る軌跡がユーベルコードの光を残光として残し、光速の如き速さを演出している。あれこそが、この周辺の『プラクト』アスリートのチームを壊滅させ、『ダーク化』させては己の傘下に加えてきた原動力である。
「なかなかやるようだが……だが依然、スピードの女帝はこの私だ!」
『ブラッド・エンプレス』はそう叫び、『ハチヨン駆』のエンジン部に積まれた『ユーベルコード発生装置』の力を持って、さらなる加速と速度を得る。
止められない。
いや、追うことすら難しいだろう。
「プラスティックモデルならなんでもありみたいなの兄様」
『プラスティックモデルならプライドはいらないですよ姉様』
シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人は人型ホビーが戦場の華であるフィールドに車型が突っ込んでくる光景に呆れ果ててていた。
わかる。
だが、お前が言うなというモニターの前の観客たちの心もまた否定できるものではない。
凄まじい加速と速度で持って突進してきた『ハチヨン駆』。
それに双頭六腕四脚の『ラルヴァ』が体当りする。
『真っ向勝負を仕掛けます。元勇者なので!!』
だが、その一撃は逆に『ラルヴァ』が吹き飛ばされる。
パワー負けしているのだ。加速によって得られた運動エネルギーを直進するだけにつぎ込んだ速度。そしてクラッシュに耐えうる剛性をもった『ハチヨン駆』は二人が思う以上に頑丈であったのだ。
「わりと頑丈っぽいホビーみたい。兄様」
『そうだね。確かに頑丈ですね。姉様』
異形のロボットらしく『ラルヴァ』は体制を整え、その双頭の愛センサーをユーベルコードに輝かせる。
「なんか期待されたのでもっと変身するの兄様」
『期待に応えるのがラスボスです姉様』
原初の魔神(チェントロ)。
それこそがシニストラとデクストラの本来の姿にして新たなるシニストラとデクストラ。
さらに『ラルヴァ』をも融合した姿は、新生『ラルヴァ』……というにはあまりにもおぞましい異形であった。
しかも、その躰から生まれた新しいシニストラとデクストラが操る『ラルヴァ』も増える阿鼻叫喚絵図。
爆誕した絵図を前に『ブラッド・エンプレス』は不敵に笑むだろう。
「数を頼みにしたこちらを覆す数で来るか! 面白い! スピードだけでなくパワーでも負けているという事実を飲み込ませてやろう!」
速度を上げる『ハチヨン駆』。
スピードでは捉えられない。パワーでも押し負ける。ならば、数だ。いや、面である。
「そのとおりだわ、兄様」
『うん、まったくもってですよ姉様』
何もバカ正直にやる必要はないのだ。魔神化したシニストラとデクストラは『ラルヴァ』の持つ銃の乱れ打ちと腕のぶんまわしでもって迫る『ハチヨン駆』を抑え込む。
いや、パワーで振り切られるし、スピードでは叶わない。
けれど、数で勝る。
面を押さえれば、直線的な動きしかできない『ハチヨン駆』を捉える事は可能だ。
蹂躙するかのような銃撃の面射撃。
それを躱す『ブラッド・エンプレス』。一進一退の攻防にフィールドは破壊され『騎馬戦軍団』の残存していた機体すらも巻き込んで爆発を巻き起こす。
「これがラスボスというもの。期待した以上のものよね兄様」
『ラスボスの宿命の破壊。それがこれですよね姉様』
二人は双子。
仲良くフィールドを破壊しながら、『ブラッド・エンプレス』の得る加速を削り取り、さらなる混沌へとフィールドを叩き込む魔神としての存在感をモニターに様々と見せつけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『いくら速くてもな…やり方はあるんでね!』
【オーラ防御】を幾重にも重ねがけ自身の周りを【拠点防御】スキルで補強し、右手でライフルでの【制圧射撃】をしながら左手で天龍のシステムを自動操縦で起動。【戦闘知識】援護砲撃で相手の動きを限定するのを狙うぜ。
『さて、一ついくぜ!』
ユーベルコード【呪炎解放『煉獄』】を発動し、相手を正面においこんでからランチャーと戦艦の火器による一斉攻撃をかけるぜ!
銃弾が雨のように降り注ぐ戦場を疾駆する『ハチヨン駆』。
その車型ホビーを手繰るのは『ダークリーガー』である『ブラッド・エンプレス』であった。
彼女を打倒しない限り『ダーク化』されたアスリートたちは己を取り戻すことはない。それ以前に彼女の打ち勝たなければ、新気鋭のホビースポーツである『プラクト』は『ダークリーガー』のものとなってしまう。
なんとしてもそれは阻止せねばならない。
けれど、『五月雨模型店』のチームは壊滅的な打撃を受けていた。
『サスナー第一チーム』の『エース』である『ブラッド・エンプレス』がフィールドに出てきただけでチームメンバーの大半が倒され、リーダー格であった『アイン』さえも『ダーク化』アスリート『ツヴァイ』と相打ちになって倒れた。
残されたのは猟兵達だけだ。
彼等だけでなんとかして『ダークリーガー』を倒さなければならない。
「どれだけの物量であろうと私の速度の前には何者も道を阻めないのだよ!」
速度と加速。
限界はとっくに超えていた。
凄まじいまでの速度は、まるで光速のごとく軌跡をユーベルコード発生装置ともにフィールドに残光として残すのだ。
「いくら速くてもな……やり方はあるんでね!」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は漆黒のホビー『ビルドスター・インパルス』と共にフィールドを疾駆する『ハチヨン駆』を追う。
だが、目で追うだけ無駄であると理解しただろう。
尋常ならざる速度。
しかも、もともとクラッシュすることを想定し頑強に作られた『ハチヨン駆』は、人型ロボットと激突してもパワー負けしないだけのポテンシャルを持っているのだ。
いくら『プラクト』のフィールドの花形が人型ロボットであろうと、『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』の前には無意味であった。
「ちっ……やっぱり当たらねぇか!」
ライフルで牽制の射撃を行っても、なんの苦もなく『ハチヨン駆』は凄まじい速度で駆け抜けていく。
躱す必要すらないというように圧倒的な速度で持って『ビルドスター・インパルス』へと迫るのだ。
「となれば、やることは一つだな」
ガイは操作システムを『モーション』タイプから『まにゅーば』タイプへと切り替える。
そう、彼が作成したのは『ビルドスター・インパルス』だけではない。
『五月雨模型店』の皆と共に造り上げた機動戦艦『天龍』があるのだ。
システムの自動操縦を起動し、援護砲撃をもってフィールドを疾駆する『ハチヨン駆』の軌道を制限していく。
「はっ、この程度で私のハンドリングを誤らせようとはな! 笑わせる!」
突っ込んでくる『ハチヨン駆』。
おそらくパワー負けすることをガイは理解していただろう。真正面から突っ込む車体。受ければ確実に機体のほうが押し負ける。
だからこそ、ガイの瞳がユーベルコードに輝き、『ビルドスター・インパルス』に組み込まれた『ユーベルコード発生装置』がきらめく。
「さて、一つ行くぜ! バカ正直に真正面から突っ込んでくるのならッ!」
「それが女帝たる私の道だからだ。お前たちが私の道を阻むのならば、吹き飛ばしてでもまかり通る!」
迫る『ハチヨン駆』。
それを迎え撃つのは、呪炎解放『煉獄』(ジュエンカイホウ・レンゴク)。
掲げた手のひらから巻き起こるは荒ぶる黒き炎の竜巻であった。荒れ狂うように炎がフィールドを包み込み、『ハチヨン駆』を逃さぬコースとして己の眼前へと迫らせる。
「これが狙いか、だがな!」
放たれる戦艦からの砲撃とランチャーやライフルに寄る火器の一斉攻撃。それでも止まらない。頑強さは示されている。
けれど、ガイは止まらなかったことだろう。
奮った拳が『ハチヨン駆』に激突し、砕けていく。だがガイは見ただろう。『ビルドスター・インパルス』の手のひらに集約された黒き竜巻が『ハチヨン駆』のシャーシの一部を破壊したのを。
走行には問題はない。
けれど、確実に手傷を与えた。楔となる一撃を叩き込み、ガイは己の『ビルドスター・インパルス』の限界を悟る。
砕けた腕部。
これが『プラクト』である。破壊されても、何度だって自分の手で治し、造り上げ、強化していく。
その真髄を感じながら、ガイは後に続く猟兵達に戦いを託すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
おDQNカーですわ!
あんなのお車検通りませんわよ〜!
お速いですわね!追いつけませんわ!むきー!
こんな時は…五月雨模型店のスタッフの方〜!
インストレーションシステムコール!ゲイルカイゼル!
ご説明致しましょう!ビルドヴリちゃんは戦闘中に装備を換装する事で様々な状況に対応できるのですわ!
これでスピード勝負ですのよ!
わたくしの頭文字はMですわ〜!
並走してどったんばったん激突し合うのですわ
折角綺麗にお塗装したボディが傷塗れですわ〜!
むむ!まだおハチヨン駆の方がお速いですわね!
ではハイパーブーストですわ!
もっと速く!
魂とカロリーを燃やすのですわ!
跳ね飛ばしてひっくり返ったお亀のようにしてさしあげますわ〜!
『プラクト』のフィールドを疾走疾駆する四輪駆動の車型ホビー。
その名を一時は知らぬ者がいないほどに席巻したのは『ハチヨン駆』と呼ばれるホビーであった。
UDCアースで知られ、忘れられ、カクリヨファンタズムに辿り着いた『ハチヨン駆』使いがアスリートアースにて再びブームを再燃させようとしているのだろうか。
『ダークリーガー』、『ブラッド・エンプレス』の思惑を猟兵たちは知らない。そして、彼女も語らない。
何故ならば、彼女が必要としているのはスピードだけであったからだ。
他の追従を許さぬ速度。
それを己の力で出すことだけが彼女の目的だった。
「私の道を阻むものなどいるわけもない。例え、貴様たちが猟兵であろうとな!」
『ダークリーガー』はオブリビオンである。
彼女を倒す必要はない。ただ『プラクト』で勝利すればいい。爽やかささえ感じさせるオブリビオンとの決着。
だが、それが最も難しいことをメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は知るだろう。
「おDQNカーですわ! あんなのお車検通りませんわよ~!」
あ、車検という概念は知っているんだな、とモニターを見やる観客たちは思っただろう。てっきり車検とかなにそれな世間知らずお姫様なのかと思っていたが、わりと常識ある感じなのに、ほっとするやら残念がるやら不思議な気持ちに観客たちは戸惑った。
しかし、『ブラッド・エンプレス』の手繰る『ハチヨン駆』の速度は凄まじいものであった。
その車体に書き込まれたファイヤーパターンがまるで具現化するようにフィールドに炎のオーラをきざむ。
あまりの速さに残光がほとばしるほどだ。
『ビルドヴリトラ』であっても追いつけない。
「お速いですわね! 追いつけませんわ! むきー!」
メサイアはプリンセスらしからぬ声を上げる。
だが、それも無理なからぬことだ。
それほどまでに『ブラッド・エンプレス』の速度は凄まじい。それにその速度であっても操作を誤ることのない見事な『マニューバ』は、猟兵たちを苦しめる。
「こんなときは……『五月雨模型店』のスタッフのお方~! インストレーションシステムコール!」
「いいだろう。叫び給え、コールサインを!」
ノリノリである、この店主。
「『ゲイルカイゼル』!」
その言葉とともに『ビルドヴリトラ』が謎のシーンバンクに入る。なんで!? とモニターの前の観客たちは驚くだろう。
なんかこう、邪魔されないように光の粒子が放たれ、そこを走る『ビルドヴリトラ』の背後からハイパーイオンブースターが追い抜く。
「ご説明致しましょう! ビルドヴリちゃんは、戦闘中に装備を感想することで様々な状況に対応できるのですわ!」
『ビルドヴリトラ』が大地を蹴り、飛び立つ。その背に追うのはスーパイオンブースター。ドッキングを放ち、咆哮する『ビルドヴリトラ』は、大型推進装置を唸らせ『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』へと迫るのだ。
「これでスピード勝負ですのよ! わたくしの頭文字はMですわ~!」
「面白い、『プラクト』最速理論の実証というわけか!」
メサイアはスーパイオンブースターを背負った『ビルドヴリトラ』と共に『ハチヨン駆』に迫る。
だが、あらに『ブラッド・エンプレス』は加速する。
凄まじい速度に並走する『ビルドヴリトラ』を風圧だけで吹き飛ばす。それでも食らいつくのだ。
「直線では追いつけるだろうが! カーブならばどうだ!」
「食らいついて見せますわ!」
カーブする『ハチヨン駆』。激突する機体と車体。
装甲がひしゃげながら剥離していく。傷まみれになる。あの日々を思い出す。塗装ブースで防毒マスクを装着し、エアブラシで塗料を吹き付けた日々。
漆黒のカラーリング故に下地をしっかりと研ぎ出し、クリアーを吹き付けても水研ぎをして艶を出したあの日々。
それが今激突に寄って剥げ落ちる。
ああ、なんとも悲しい。
「せっかく綺麗にお塗装したボディが傷まみれですわ~! むむ! まだ『ハチヨン駆』のほうがお速いですわね! では、当たって砕くのですわ!」
メサイアの瞳が涙を拭って光り輝く。
傷つかずに勝てる勝負などない。
ならばこそ、メサイアは叫ぶのだ。
「もっと速く! 魂とカロリーを燃やすのですわ!」
暴竜猛襲(ハイパーブースト)たる一撃が『ハチヨン駆』を吹き飛ばす。コースアウトしたクラッシュよりも強烈な衝撃が『ブラッド・エンプレス』を襲うだろう。
「ぐううう!?」
「わたくしのカロリーを燃やし、お亀のようにしてさしあげますわ~!」
メサイアの咆哮が『ビルドヴリトラ』を通して響き渡る。
カロリーは此処に燃焼される。
燃やし尽くさんばかりの勢いでメサイアはコールするだろう。人の歩みを押しすすめるのはいつだってハイカロリーであると――!
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
は、速い!
ユーシア(3P)「いえ、車である以上その動きは「直進」と「方向転換」です。常に相手を視界に入れ、極力側面や背面を取るように動けば危険度は下がりますよ!そして速度を殺すなら……あのUCです!わたし(1P)!(メガネくいっ)」
……(💡ぴこん!)あれですね!
UCを発動し戦場を「マップを全部埋めて地図を完成させないと脱出できない樹海の迷路」で埋め尽くします!(2P「だからそれは別の」3P「ちょっと黙っててください」)
後は曲がり角、十字路、行き止まりの存在で相手の利点を殺しつつ
曲がり角や横道からの側面攻撃を狙います!力尽くで突破しようにもUC製のかなりの硬度の迷路、無事じゃ済みませんよ!
猟兵の一撃で持って『ダークリーガー』、『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』はクラッシュアウトするようにフィールドの大地をバウンドする。
だが、それで壊れるほど『ハチヨン駆』はやわではない。
シャーシの剛性。
カウルの強靭さ。
何よりもモーターたる『ユーベルコード発生装置』が今も尚きらめくようにしてカウルに施されたファイヤーパターンの塗装を体現するかのように揺らめいているのだ。
「まだだ! 私が走る限り、戦いは終わらぬよ!」
四輪が凄まじい勢いで回転し、一気に加速する。
揺るぎなき女帝は此処に在り。
その加速をユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)は見ただろう。
「は、速い!」
「いえ、車である以上その動きは『直進』と『方向転換』です」
メガネをくいっと上げてユーシアの3Pが言う。
効率重視の3Pのユーシアは、『ハチヨン駆』の特性を瞬時に見抜いていた。
「常に相手を視界に入れ、極力側面や背面を取るように動けば、危険度は下がりますよ!」
その言葉に1Pユーシアはうなずく。
『アルミィ先生』はまだ戦える。
メガネをくいっとする3Pユーシアに1Pユーシアがうなずく。
「速度を殺すなら……あのユーベルコードです! わたし!」
その言葉と共に『アルミィ先生』が掲げた剣より放たれるのはユーベルコード。
戦場たる『プラクト』フィールドの大地を埋め尽くすのは樹海であった。
1Pユーシアは、ぴんと来ていたのだ。
彼女がユーシアのプレイ日記~ダンジョンRPG1~(チズガウマッテナイヤリナオシ)に記していたのは、何もアクションゲームだけではない。
マッピング……即ち迷宮探索ゲーム。
彼女のユーベルコードは踏破し地図を完成させないと出ることのできない樹海で出来た迷路を作り出すもの。
「コースを作り出したか! だが、その程度で私が怯むとでも!」
樹海のコースを走り抜ける『ブラッド・エンプレス』の『ハチヨン駆』。ローラを駆使して、疾走する速度は凄まじい。
「だからそれは別の」
「ちょっと黙っててください」
2Pユーシアが何かいいかけたが、3Pユーシアがそれを押し止める。
今は1Pユーシアのユーベルコードに掛けるしかないのだ。猟兵たちが先行しダメージを与えている車体。
あれをさらに後に続く猟兵のために少しでも消耗させなければならない。
「『ハチヨン駆』っていうからには、モーターだけじゃあなくって、電池も必要だよね! なら……!」
この迷宮コースで消耗させる。
力づくで突破しようにも、この迷宮はかなりの硬度をもち、出口は一つしかない。無理矢理にでも突破しようとすれば電池の消費を招き、速度をおとしてしまうだろう。
「曲がり角、十字路、行き止まり! それならそっちのスピードは殺されたも同然! いくよ!」
1Pユーシアは『アルミィ先生』を操り、魔剣を手にして迷宮に待ち伏せる。自分が常にゲームをする時、待ち伏せされる側であるからこそ、自分がやられたら嫌なことを敵に押し付ける。
曲がり角から飛び出し、不可避のアンブッシュをしかけるのだ。
「速度が、出せない……これは!」
「躱せないでしょう! この一撃、無事じゃ済みませんよ!」
振るう魔剣の一撃。
元軍人の魔剣持ち。覚醒技を使わなくても、戦い方次第で、こんなふうにも敵を消耗させられるのだ。
放つ斬撃の一撃がリアウィングを切り裂き、空力性能を奪っていく。
「これで! 明日の優先権はわたしがもーらった!」
ユーシアは空中に舞うリアウィングの破片を魔剣に突き立て、死守した優先権を誇るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
橘・小雪
は……速い!しかも車型!
サクラミラージュにはあんな車走ってなーい!
UDCアースとかすごーい!
いや、それより、アインさんに託されたんだ
なんとしてもあいつに一撃だけは入れてやりたい!
バーニアを吹かして最高スピード
でも、並びはしても追い越せないしここはスピードレースでもない
あたしができるのは相手の後方からの斬撃波!
紅茶の香りを漂わせ
少しは壊れろ、この車ー!
あたしの『桜風』はUCの反動で壊れちゃうと思う
頑張ってくれてありがとう
あたしね、知ったの
みんなで勝てばいいんだって
だから、あたしはここでリタイア
先輩猟兵さん、あとはお願いしますっ
アドリブ歓迎です
『プラクト』は、自分でプラスチックホビーを作り、その作ったホビーで戦うスポーツである。
だからこそ、どんなものだって壊れる定めにある。
だが、壊れることを恐れてはならない。
傷つき、壊れ、それでも自分で直し改良していく。
人の成長と同じように思えただろう。
「は……速い! しかも車型!」
サクラミラージュにはあんな車走ってないと橘・小雪(Tea For You・f37680)は叫びそうに成った。
UDCアースってあんな玩具が流行っていたんだと思った。
だが、それ以上に小雪は託されたのだ。
『アイン』に、『五月雨模型店』のメンバーたちに。
失いたくないという願いが、彼女の背中を押す。壊れたホビーは治せばいい。だが、此処で敗北すれば彼等の笑顔はずっと『ダーク化』によって奪われてしまうだろう。
ただ、戦い続けるだけの日々に漬けこまれてしまう。
それだけはなんとしても阻止したい。あいつに一撃入れてやりたいと小雪は己のホビーの『桜風』のバーニアの出力を上げる。
最高速度に到達する速度をとってもなお、『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』には届かない。
いや、並ぶことはできた。
「チィッ! あの迷宮コースでバッテリーを消耗させられたか……!」
そう、他の猟兵たちがシャーシにダメージを与え、リアウィングを切り捨て、車体を傷つける。
さらにはバッテリーの消耗を誘って此処まできたのだ。
そこまでしてなお五分。
小雪は自分にできることを考える。構えた刀から放つ斬撃波は紅茶の香りをまとっている。
「ユーベルコードの斬撃波か!」
「紅茶をどうぞ?(コウチャヲドウゾ)なんて言わないよ。だって、止まってはくれないだろうからね、せめて香りだけでもご堪能あれってね!」
放つ斬撃が『ハチヨン駆』を捉えることはない。
まだ足りないのだ。
小雪にはまだ足りていないものがある。機体が軋むのを聞いただろう。
紅茶の香りが不思議と操作パーティションにまで薫る。フィールドに満ちる紅茶の香り。それを小雪は楽しむ。
知っている。
この感情を。『アイン』たちがこの『プラクト』というホビースポーツを愛していることを。
だから、小雪はずっと共に作成した『桜風』を大切にしたいと思っていた。
けれど、勝利を掴むためには傷つくことを恐れてはならない。手をのばすことをためらってはならない。
そして、小雪は自分自身が勝利する必要がないことをしっていた。
最高速度はとっくに超えている。機体の耐久値も超えている。
「がんばってくれてありがとう」
『桜風』に告げる。
ひび割れるフレームの音が響く。だが、止まらない。止められない。自分と『桜風』の背中を押しているのは、ただのユーベルコードだけではない。
「小雪ちゃーん!! がんばれー!!」
「いっけー!!」
そんなふうに操作パーティションの外から『アイン』や『五月雨模型店』のメンバーたちの声援が聞こえる。
「振り切れないだと……! この私が! パワーダウンしているのか!?」
『ブラッド・エンプレス』は己の機体の消耗を見やる。だが、それだけでは証明できない速度を『桜風』は出して追いすがる。
「あたしね、知ったの。みんなで勝てばいいんだって」
だから、自分はここでリタイアだと小雪は渾身の力を持って刀を振る。
今まで一度も当たらなかった斬撃。
届かない斬撃。
けれど、『桜風』のアイセンサーがきらめく。
機体の限界を超えた力を発露するホビーの放つ力。衝撃波が紅茶の香りをまとって『ハチヨン駆』へと迫る。
トップスピードすら凌駕する斬撃の衝撃波は『ブラッド・エンプレス』の理解を超えていただろう。
「先輩猟兵さん、あとはお願いしますっ」
その衝撃波が『ハチヨン駆』の車体を吹き飛ばす。そこで『桜風』は膝を付き、大地に脱落するだろう。
傷だらけの勝利者が、其処に在った。
ただ一人で掴むのではなく。みんなで掴む勝利はすぐ其処まで来ていると、小雪は知った――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
お、車が出てきたね。
車輪の付いたプラモ同士、ここはレースで勝負と行こう!
今までの戦闘で荒れた地面なら、パワーでは負けても小回りと【悪路走破】能力に引けは取らないはず。
暫くレースを楽しみつつ、この勝負を盛り上げちゃおう☆
とは言えこのままじゃ勝負が付かない。
となるとやっぱりチキンレースにお誘いしようかな?
向かい合ったら【リミッター解除】。
【エネルギー充填】して一気に【ダッシュ】だ!
激突の瞬間【早業】でロボットに変形させれば、相手が避けようとしても手足があるからパンチやキックで捉えられるはず。
元はプラモデルでも、ここならキミも立派な宇宙バイク。
やって魅せなよ、リトルテンプテーション・ギガンティック!
斬撃に寄る衝撃波が『ダークリーガー』、『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』をついに捉える。
バッテリーの消耗、シャーシへの打撃、フロントウィングの消失。
どれもが猟兵たちがいなければ為し得ぬことであった。
「やるようだが……! まだだ!」
『ブラッド・エンプレス』の瞳がユーベルコードに輝く。
煌めくユーベルコードは『ハチヨン駆』のモーター部分である『ユーベルコード発生装置』からバックファイヤのように噴出し、規格外の加速を見せるだろう。
最高速度はあまりの速さに目で追うことすらやっとののことであった。
「車輪の付いたプラモ同士、ここはレースで勝負と行こう!」
ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は同じく車輪……二輪駆動のバイク型ホビーを操り、加速する。
彼女の『リトルテンプテーション』のタイヤはオフロード用である。戦いであれた大地は路面といえるほどのものではなかった。
だが、共に駆動でもって走るホビーであるのならば、ここで退くことは許されない。
「この私に並ぶか! デッドヒートはお手の物だと言っておこう!」
ニィナと『ブラッド・エンプレス』の加速に付いてこれるものなどいなかった。
四輪駆動の『ハチヨン駆』はそのパワフルでダイナミックな走行でもって安定した走りを見せる。
逆にニィナの『リトルテンプテーション』は二輪故に小回りがきく。四輪駆動と比べると安定性はないが、直線での加速力は空力も手伝って矢のような速さで大地を飛ぶように走るのだ。
「やるね☆ とは言えこのままじゃ勝負がつかない」
となれば、やることは一つ。チキンレースだ。互いに向き合うように離れれば、十分な距離を得る。
これまでのように『プラクト』のチーム戦は、相手チームを全滅させるまで終わらない。ならばこそ、『ブラッド・エンプレス』は真正面からニィナの『リトルテンプテーション』を迎え撃つ。
どちらかが先にハンドルを切れば、それで勝敗がつく。
けれど、どちらもその意志はなかった。ハンドルも意志も曲げない。真正面からぶつかって弱いほうが負ける。
ただそれだけのシンプル。
言葉はいらなかっただろう。『ユーベルコード発生装置』は互いにエンジン。故に煌めくユーベルコードの輝きを発露させながら、凄まじい速度で正面から激突する。
勝負は一瞬。
だが、ニィナはここで終わりだとは思っていなかった。
「派手にやっちゃおう☆テンプテーション、モード・ギガンティック!」
『ハチヨン駆』と『リトルテンプテーション』が互いに激突すると思われた瞬間、そこにあったのは『リトルテンプテーション』のロボット形態であった。
『五月雨模型店』の店主から警告されたように、たしかに変形機構はアイデアである。それ次第では様々な可能性を見出すことができるだろう。
けれど、変形機構ゆえのフレームの剛性の脆弱性は否めない。
「元はプラモデルでも、ここならキミも立派な宇宙バイク」
ニィナは心から信じている。
自分の思い描いた心と作り上げた技術。そして、自分の体で動かす『リトルテンプテーション』の力を。
ならば、それに応えるように『リトルテンプテーション』のアイセンサーが煌めき、真正面から受け止めた『ハチヨン駆』の衝撃を受け流す。
「受け止めた……だと!?」
「やって魅せなよ、『リトルテンプテーション・ギガンティック!」
唸るようにユーベルコード発生装置が炉のようにエネルギーを発露する。受け止めるのにだいぶエネルギーを消耗したが、これならもう速度は関係ない。
『ハチヨン駆』の車体を持ち上げ、ニィナは『マニューバ』タイプの真髄を見せる。予め仕込んでいたコマンドを入力する。
それは単調な動きであったかも知れない。
けれど、敵が車体であったこと。移動するには車輪を大地につけていなければならないということが条件。
ニィナは持ち上げた車体を投げ飛ばす。
脆弱なフレームがきしみ、動きを止める『リトルテンプテーション・ギガンティック』。
その勇姿は商店街のモニターならず、配信された先々でニィナと『リトルテンプテーション』への喝采が巻き起こるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
さてー、参りますかー。ええ、最後まで気を抜かずにね?
しかし『ハチヨン駆』…陰海月が好きそうですね?
ふふ、実はね?この動き…このUCを使ったと似ていることに気づきましてー。
なので使いましてねー。ふふ、その素早さも…追い付けるかどうかねー?
それに、雷は避けるのも難しいと思いますよー?
避けたとして…その避けた先に落ちることもありますからね?
ええ、爪で攻撃したりもしますよー?使えるものは使いますからー。
ああ…さすがに…四足の動きは疲れますねー…。
※
陰海月、ダンスしつつ応援。ぷきゅっ!
『ハチヨン駆』…有ったらねだろうかなぁ?
霹靂、首を左右にゆらゆらさせつつ応援。クエッ!
帰る時におじーちゃん乗せよう。
喝采が世界中から聞こえるようであった。
『五月雨模型店』と『サスナー第一チーム』の戦いは商店街のモニターに映し出されていたが、白熱する試合についにギャラリーの誰かが試合を配信しはじめたのだろう。
猟兵たちのアイデアと『ダークリーガー』の巨大な力が激突する。
それはアスリートアースにおいては、立派なスポーツとして認められるものであったし、人々の熱狂具合がそれを示していた。
「さてー、参りますかー」
最後まで気を抜かない。
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は、ヒポグリフ型のホビーを操作しながら、見据える。
敵の強みはあの加速と最高速度である。
何より、クラッシュアウトする可能性を考慮して組み上げられた頑強なるシャーシやカウルは、これまで猟兵たちの攻撃を受けて尚五体無事に動いている。
車型であることも幸いしたのかもしれない。
先行した猟兵たちのおかげでバッテリーは消耗し、フロントウィングは喪われている。車体もしたたかに打ち据えられ続けている。
だが、それでも。
「『ハチヨン駆』……『陰海月』が好きそうですね?」
負けられないのである。
ヒポグリフ型のホビーを『モーション』タイプの操作で動かすのは骨が折れた。だが、『騎馬戦軍団』との戦いで一つ理解したことがある。
「ふふ、実は気が付きましてー」
それは雷のように(ウゴクコトライテイノゴトク)轟く咆哮であった。
「――!」
『ブラッド・エンプレス』は軋む車体をコントロールしながら、フィールドを疾駆していた。
咆哮に気がついた瞬間、迫るのは獣であった。
翼の生えた獣。
「あれは虎か……? いや、違うな! 気迫が私にそう見せているか!」
「ええ、追いつけるかどうかねーと思っておりましたが……皆さんのおかげでだいぶ消耗してくれているご様子」
雷を放ち続け、『ブラッド・エンプレス』を追い回すヒポグリフ型。
加速と速度は未だあちらのほうが上。
だが、雷は戦場に満ちるように打ち下ろされ続けている。例え、弱い雷であったとしても雷を躱すのは至難の技だ。
「だが、私は『ブラッド・エンプレス』だ! この程度の窮地を乗り越えられずして何が女帝か!」
炎のオーラを放ちながら『ハチヨン駆』が凄まじい軌道で雷を避けていく。
だが、それにばかり注力していれば、迫るヒポグリフの爪にまで注意を払うことはできないだろう。
なにせ、『ハチヨン駆』は直進と旋回しかできない。
速度を得る代わりに、上下の運動が自分ではできないのだ。そこを突くヒポグリフの爪が『ハチヨン駆』のカウルに爪痕を残す。
影から『陰海月』と『霹靂』が応援していた。
その声援を受ければ、『疾き者』は疲れも吹き飛ぶだろう。彼等がこの戦いの後でいろいろなものをねだってくるであろうことは自明の理であった。
これだけの戦いを、いや、戦いと呼ぶのは当然であったとしても、これはホビースポーツだ。
滅ぼし、滅ぼされる戦いではない。
炎のオーラが風に乗って操作パーティションにある『疾き者』の頬を撫でるだろう。一筋の汗が爽やかな涼を呼び込む。
これがホビースポーツ『プラクト』である。
ただ戦って勝つだけではない。作るだけでもない。思い描くだけでもない。
それ以上の何かを自分で見つけるホビースポーツなのだと、『疾き者』は理解しただろう――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
サージェさんと
スピード勝負でくるんだね。
たしかに今の速度なら、
いくらサージェさんの胸と火力が凄くて、どこからみても忍べてなくても、
さすがに当たらなさそうだよね。
それなら、まずそこを潰してあげよう。
『希』ちゃん【Density Radar】起動。
全方位を3D化したら【フレーム・アドバンス】とリンクさせて発動。
『ハチヨン駆』をめいっぱい減速させちゃうよ、
スピードのない『ハチヨン駆』なんて、ただの的だー!
さぁサージェさん!
いまこそその、無駄に分厚い胸部装甲からのビームの出番だよー!
え?そこからは出ない?
そなの?だしてもいいのに。
まぁ、ビームでなくてもガン見されてて忍べてないのは変わらないけどね!
サージェ・ライト
理緒(f06437)さんと
やっと理緒さんと合流できたので
魂の叫びをあげましょう
なんでスナイパー言わせてくれなかったの!!
あと誰が腹ペコぺたん魔女ですか!!
ハチヨン駆ナンデ?!
ふぅ、さてクノイチのお仕事に
え?忍べてますけど?
しかし確かに絨毯爆撃しても突破されそうです
理緒さんの作戦を待って仕留めましょう
とはいえ棒立ちはヤバいので
牽制でミサイルポッドを
走る範囲を狭める感じで援護です
ってなんかちょいちょい暴言が混じってる気がするんですが??
胸からビームはスーパーロボットの特権だし
忍べてますから!胸はクノイチの特徴ですから!
というわけで狙い撃つぜ……!
威力重視のレールガン、いっきまーす!
「なんでスナイパー言わせてくれなかったの!!」
その雄叫びはサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)のものであった。
「あと誰が腹ペコぺたん魔女ですか!!」
魂の叫び。
なんで、クノイチなんで? となるところである。
しかしながら、サージェは漸くフィールド内で菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)と合流を果たす。
う、理緒さんのプラモデルかっこよ! って思いながらサージェは自分のプラスチックホビーが背面に背負いすぎた武装のためにまったく動けないことを……まあ、別に気にしていなかった。
その彼女たちの機体の前を走り抜ける『ハチヨン駆』。ファイヤーパターンのカウルを残光のようにフィールドに刻みながら『ブラッド・エンプレス』は未だ勝負はついていないと言わんばかりに音速を超える。
「この『ハチヨン駆』を前にお前たちが私を捉えることなどできはしまい! このまま最高速度でぶち抜く!」
「『ハチヨン駆』ナンデ!?」
「スピード勝負で来るんだね。確かに今の速度ならいくらサージェさんの胸と火力がすごくて、何処から見ても忍べてなくても、流石に当たらなそうだよね」
「今、忍べてないって言いました!?」
いや、その前も大概のこと言われているが、気にする所其処なんだ、とモニターでみてきた観客やギャラリーは思った。
『五月雨模型店』のメンバーも思った。
みんな思っていた。
あ、忍べてない理由、わかってないんだなぁって。
「敵の強みは速度。なら、まずはそこを潰してあげよう」
「え? 忍べてますけど? 忍んでますけど!? 確かに絨毯爆撃しても突破されそうだなーって思ってましたけど!?」
「『希』ちゃん、空間密度の計算よろしくね」
理緒はサージェの言葉をわりとさらっとスルーして、AIとレーダーによって空間密度を計算し、全方位を3D化する。
そのデータをフレーム・アドバンスをリンクさせ、『ハチヨン駆』をトリミングし、現実世界から速度を奪う。
『ブラッド・エンプレス』にとっては、それは脅威そのものであったことだろう。
ホビースポーツ『ハチヨン駆』にとって最も重要なのは速度である。
その速度を奪われた『ブラッド・エンプレス』はベストポジションにありながら、どうあがいても速度が上がらぬことに歯噛みする。
「馬鹿な、私の速度が……私が遅い!?」
「スピードのない『ハチヨン駆』なんて、ただの的だー! さあ、サージェ三! 今こそその、無駄に分厚い胸部装甲からビームの出番だよー!」
「なんかちょっとちょいちょい暴言が混じってる気がするんですが??」
サージェは疑問に思っていたのだ。
理緒はなんかこう、最近自分に対するあたりが強いっていうか、雑っていうか、こう忍べてないことに対しての指摘がエグい。
いや本当に忍べてるはずなのだ。
前口上で忍べてないとかそんなことないもんっ! って言っているが、本人としては至極まっとうに至極真面目に忍んでいるのだ。
無駄に分厚い胸部装甲って、そんな言い方ないのではないかと思ったが、サージェは自分のプラスチックホビーのことを言ってるんだなって良い方向に解釈した。
「ええ、たしかに胸からビームはスーパーロボットの特権だし、忍べてますから!」
いや、忍べてない。
スーパーロボットとか言っている時点で、すでに忍ぶことを放棄しているようなものであるのだが、ミサイルポッドの牽制で『ハチヨン駆』の軌道を制限することも忘れないのが、クノイチ汚いなぁってなるところである。
「威風堂々(シノベテナイクノイチ)と狙い撃つぜ!」
背部よりマウントされたレールガンを構えるサージェのロボットホビー。
いや、出ないんかい! とギャラリーのみんなは思った。
「その胸部装甲は本当に胸部装甲なの!?」
理緒は愕然とした。
なんで? え、そこからは出ないの? 背面の武装ラックから普通にレールガン出してる。セオリーも知らないのかな、このクノイチって理緒は思った。
「忍べてますから! 胸はクノイチの特徴だから!」
「そなの?」
胸から出してもいいのになぁって理緒は思った。無駄に分厚いんだし、と二度言った。
けれど、サージェはお構いなしである。
「動きが鈍い……この私が遅いなど! あってはならない!」
限界まで高まった『ハチヨン』の加速。未だ理緒のフレームアドバンスによって動きを制限されているが、それでもなおミサイルを躱すところは、凄まじいと言わざるを得ない。
「威力重視のレールガン、いっきまーす!」
「ねえ、ビームでなくてもガン見されてて忍べないのは変わりないけれど、当てられる? サージェさん」
「心配ご無用です! なにせクノイチですから!」
「あ、これだめなパターンだね。『希』ちゃん、弾道予測と誤差修正。データリンクしよう」
理緒はサージェの機体の背後に立ち、マニュピレーターの隙間から出たコードでサージェの機体と接続し、そのトリガーのタイミングを残して全てのマニュアルを操作し、狙いを修正する。
「では、ご唱和くださいね! 私はクノイチ、影より悪を討つ――」
「はい、トリガー」
「あああああ――!」
レールガンから弾丸が放たれ、速さを失った『ハチヨン駆』へと吸い込まれていく。
頑強なカウルを砕く一撃は、漸くにして『ブラッド・エンプレス』の牙城に穿たれた楔となるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
迅瀬・ナクタ
神谷会長(f37810)とむと(f37795)と合同で
「早い…!これが『ハチヨン駆』……攻撃が当たらねぇ。……なら、挟み撃ち、そして範囲攻撃だ!アイツらならきっとオレの攻撃はよけるはずだ!」
UC【复仇之海】を使用
ダークリーガーのハチヨン駆をむと達の方に追い込み挟み撃ちを仕掛けます。仲間『五月雨模型店』のダメージの分攻撃範囲が広くなっているので、神谷会長やむと達の機体も攻撃に巻き込む可能性がありますが彼等なら避けるなり耐えるなりしてくれるだろうと信じ、そのまま攻撃します。
アドリブ・他の猟兵との絡みは歓迎です。
新谷・むと
神谷・マリー(f37810)迅瀬・ナクタ(f37811)と参加
先輩猟兵達は強いな。実戦には慣れてるし、ロボの操縦経験もあるからか、どっちの操作も凄いヤツらばっかりだぜ!
気づいたらダークリーガーがこんなに減っている。
ん、あれは?『ハチヨン駆』!たしか、今回の元凶はアイツだったよな。
それと、その後ろの機体は……、
そうか、ナクタも参加していたんだな。なんやかんや人が多くて気づかなかった。
こっちに来たって事は挟み撃ちだな、わかったぜ!
UC【オリジナル・スタイル】
呼吸を整え脳を活性化させ
『マニューバ』の操縦席のコントロールパネルに操作を打ち込む
ナクタの追い込みに加え3つの勾玉型ビーム砲ビットで敵の移動ルートを狭めてそこに斬り掛かる!
(技能【フェイント】【援護射撃】)
その後、ナクタの攻撃に巻き込まれないよう後ろに下がります
※アドリブ・連携歓迎
神谷・マリー
新谷・むと(f37795)迅瀬・ナクタ(f37811)と参加
プラクト、なかなか奥が深い世界ね。それに戦闘慣れした猟兵が加わってなかなかカオスな事になってるわ。
いいなー、これほどの戦いをトイロボバトルでもしたいわー!
私がグリモア猟兵にだったならいち早くダークリーガーを見つけてトイロボを渡して猟兵達と戦いをセッティングしてやるのに。
って、こっちに走ってくるのダークリーガーじゃない!その首寄越しなさい!
アマテラスのホバー機構からジェットが吹き出てくる。
(技能【ジャンプ】)
UC【応援の翼】使用
むと君が戦ってる間にUCでスピードをあげ上から強襲を仕掛ける。
って、ナクタ君、アマテラスちゃんごと攻撃しようとしてない?
うぎゃー!
こ、装甲を強化して良かったわ……。
※アドリブ・連携歓迎
楔のように打ち込まれた弾丸が『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』のカウルに亀裂を走らせる。
だが、それにすら頓着しないかのように限界以上の速度で持って『ブラッド・エンプレス』はスピードの向こう側まで疾走するように速さを追い求めていた。
彼女に比類する者はなく。
彼女を止められる者もまたない。
彼女にとって目の前にあるのは誰もいない景色だ。
止められない。止められるわけがない。己が止まるときはゴールチェッカーを割った時だけだ。
「そうさ、私は止まらない……! この程度で止まれるわけがないのだ!!」
彼女の咆哮を受けるように『ハチヨン駆』の『ユーベルコード発生装置』が唸りを上げ、炎のオーラをまとってフィールドを駆け抜ける。
「速い……! これが『ハチヨン駆』……攻撃が当たらねぇ」
迅瀬・ナクタ(闇を抱くトイロボバトラー・f37811)は驚愕しきりであった。自分が照準をあわせた瞬間に、まるで霧のように残光を残して『ハチヨン駆』が消えるのだ。
打ち込む攻撃の尽くがかわされ続ける。
そんなナタクの苦戦を援護するように新谷・むと(闇夜照らすトイロボバトラー・f37795)と神谷・マリー(自称トイロボバトル伝道師・f37810)が駆けつける。
「『プラクト』……なかなか奥が深い世界ね」
「うん、それに先輩猟兵達は強いな。実戦には慣れてるし、ロボの操縦経験があるからか、どっちの操作もスゴイやつらばっかりだぜ!」
むとは姉の言葉にうなずく。
猟兵たちの戦いは繋ぐ戦いだ。だからこそ、彼等は己の持てる力の創意工夫でもってオブリビオン、『ダークリーガー』へと対処することができる。
『ダークリーガー』によって『ダーク化』されたアスリートたちの数がフィールドから殆どリタイアしていることがその証左だ。
「『ハチヨン駆』! あれが今回の元凶だったんだよな……それにあの後ろの機体は……」
むとは、ナタクの機体を見やり微笑む。
なんやかんやで人が多くて気が付かなかったのだが、ナタクがいるのならば心強いと思えただろう。
逆に姉であるマリーがなんとも静かなのにむとは気がつく。
いや、逆だった。
「いいな、これほどの戦いを『トイロボバトル』でもしたいわー! 私がグリモア猟兵だったらいち早く『ダークリーガー』を見つけてトイロボ渡して猟兵たちと戦いをセッティングしてやるのに」
「……いつもどおりだったぜ!」
「何をしている! 挟み撃ちにするぞ!」
ナタクがしびれを切らしたように、むととマリーに声をかける。
そこで漸くマリーは気がつくのだ。自分たちに突進してくる『ハチヨン駆』の炎のオーラ。それが只者ではないことはわかる。
「こっちにまっすぐに来ているのは『ダークリーガー』じゃない! その首よこしなさい!」
「いや、車型だから首とかはないんじゃないかな?」
「いいから速くしろ!」
「わかったって! 挟み撃ちってことだろう、わかったぜ!」
むととナタクがうなずき合う。マリーは機首なら首になるんじゃない? とか思いながら『ハチヨン駆』のカウルをみやっていた。
なんともバランスの取れないトリオであったが、それは上辺だけのことであった。
彼等が共に戦うのならば、自然とちぐはぐに見えても噛み合うのだ。
デコとボコがかっちり歯車のように噛み合って前に進むように、むととナタク、マリーという三人がギクシャクしながらも、互いを認め合い、互いの不足を補う。
むとは呼吸を整える。
ユーベルコードに煌めく『ツクヨミ』のアイセンサーが炎まき散らす『ブラッド・エンプレス』を迎え撃つようにフィールドに刻まれる。
『マニューバ』はたしかに体力を消耗しづらい。
けれど、その煩雑なコマンドや操作方法は集中力を膨大に要する。だが、むとはそれをオリジナル・スタイルでもって超える。
コントロールパネルに打ち込み、先行入力をし、己の機体を一定のモーションで動かすのだ。
そこにナタクの機体が追い込むように斬撃を『ハチヨン駆』に見舞う。
当たらない。
けれど、それは織り込み済みである。
「ビット、敵の移動ルートを狭めろ!」
放たれる3つの勾玉型ビーム砲が『ブラッド・エンプレス』の挙動を制限する。放たれるビームもかわされてしまう。
消耗しているはずだ。先行した猟兵たちがバッテリーを消耗させ、カウルに傷を打ち込んでいる。
だが、それでも速度を上げ、さらに全てを燃やし尽くすようにフィールドを走り抜けているのだ。
「いくよ、『アマテラス』ちゃん! 飛んで!」
マリーの瞳がユーベルコードに輝く。勝利への意志を共有するフィールドにある者たち全てに光の翼が出現する。
マリーの機体『アマテラス』のホバー機構からまるでジェットが羽のように広がり、『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』を追い込む。
ビーム砲の射撃、追いすがるナタクの斬撃。
そのどれを躱しながら、疾走疾駆する『ハチヨン駆』。だが、それを捉える速度で『アマテラス』が迫るのだ。
「直進、急旋回はお手の物かもしれないけれど! 地を這うホビーなら、上からのことは何も考えてないはず! だって貴方の敵は左右と前後にしかいないのだから!」
放つ一撃が『ハチヨン駆』の車体を左右に降らせる。
体勢が崩れた!
「ナタク、いまだぜっ!」
「おう……!『五月雨模型店』のみんなが受けたダメージ分は、受けてもらうぜぞ!」
ナタクの機体のユーベルコードが輝く。
复仇之海(フクシュウノウミ)。それはこれまで破壊された『五月雨模型店』のメンバーたちの機体のダメージを得て、攻撃力を増大させる力。
フィールドにあるダメージは膨大だ。
それほどまでに多くのホビーが破壊された。
これが『プラクト』というホビースポーツだ。誰もが必死に、そして楽しく作ったものだ。
それを壊される事は耐え難いものであったことだろう。
けれど、ナタクもマリーもむとも理解していたのだ。戦って、壊れて、治して、戦って。
傷は傷のままではいられない。
思い出にもなるだろう。勲章にだってなるだろう。その日が来る迄、その傷をこそ大切にしなければならない。『トイロボバトル』に通じるものがあるはずだ。
だからこそ、ナタクの掲げた光をマリーはみあげる。
「って、ナタク君、『アマテラス』ちゃんごと攻撃しようとしてない!?」
あれ!? とマリーは驚く。むとはさっさと巻き込まれないように退避しているし、ナタクは二人ならば避けるなり耐えるなりしてくれるだろうと信じていた。
マリーだけが、不測の事態に驚愕している。
だが、それが『ブラッド・エンプレス』を回避に全力を尽くさせないためのブラフとなった。
一体だけが離脱しようとせず、『ハチヨン駆』を追いすがっている。
ならばナタクの攻撃はブラフだと思わせたのかもしれない。
「味方ごとだと……!?」
「あの二人なら大丈夫だって信じているんだ……だから!」
放つ光が『ハチヨン駆』と『アマテラス』を飲み込む。
「相変わらず、すっごい威力だぜ……!」
骸の海をまとった砲撃を受けて『ハチヨン駆』が吹き飛ぶ。巻き込まれた『アマテラス』もまた無事ではすまないだろう。
だが、骸の海が荒ぶフィールドの中、一体のホビーが立っていた。
『アマテラス』である。
頑強なる装甲はナタクのユーベルコードの一撃を受けて尚、まだ合っていたのだ。
「そ、装甲を強化していて良かったわ……」
びっくりした、とマリーは胸をなでおろす。
その光景にナタクはどう思うだろうか。耐えると信じていた。けれど、これだけの攻撃を耐えたマリーの『アマテラス』にも驚愕する。
『トイロボバトル』で戦うこともあるだろう。
手強い敵となるかもしれない。
その事実を受け止めるも、むとの機体と共にマリーを回収し飛ぶ。
「やったな、ナタク!」
そう屈託なく笑う、むとにナタクは悪くない、それくらいには思えただろうか。
「あとで修理手伝ってもらうからね!」
あ、と思い出したようにマリーが言う。
この三人のデコボコトリオは、歯車のようにまた噛み合って、何処まで前に突き進む。そんな未来を感じさせる戦いであった――。
大成功
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アリルティリア・アリルアノン
「プラクトは自由だ!」って誰かが言ってましたけど、武器のひとつも積んでないのは思い切り良すぎでしょう!?
しかしエースを張るだけあってその走りは本物…ぶっちゃけアリルの腕でも当てられる気がしません!
ですが見た所、走り抜けた後に残る炎を除けば、攻撃手段は体当たりだけのようですね
つまりこちらを倒す為には、絶対突っ込んで来なければならない…
そのタイミングこそ、こちらが攻撃する最大のチャンスでもある!
結界術とオーラ防御による二重の防御壁を展開、ほんの一瞬でも突撃を受け止められれば、そこにUCを浴びせて完全に動きを封じる事が出来る…!
上手く決まればこっちの物!ダメ押しの全力魔法でぶっ飛ばしてやりますよ!
『プラクト』は自由だ。
その言葉はどんなホビーにもいえる言葉であったことだろう。
自由とは囲われたものであるけれど、その可能性を縛るものではない。それゆえに、自由という言葉はホビーにおいて最も大切な言葉となるのだ。
「武器の一つも積んでないのは思い切りが良すぎでしょう!?」
アリルティリア・アリルアノン(バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639)は自身のホビーである魔法少女ロボにすら武装が積んであるのに、『ダークリーガー』、『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』はただ走るだけの機能に特化していることに驚くのだ。
何かこう、ニードルが出るだとかそんな武装があってもおかしくないと思っていたのだが、先行した猟兵たちとの戦いを見る限り、そのような武装は搭載されていなかった。
ただ単純に速度だけで猟兵たちを圧倒し、そして消耗させられたのだ。
「『エース』を張るだけあって、その走りは本物……ぶっちゃけアリルの腕でも当てられる気がしません!」
「そのとおりだ。私は走る。貴様たちの手の届かない彼方まで。あの速度の向こう側までな!」
ひび割れたカウルに描かれたファイヤーパターンが残光のようにフィールドにオーラとなって刻まれていく。
加速が凄まじいのもそうであるが、それ以上にポジショニングもまた舌を巻くものであった。
だが、アリルティリアは気がついていた。
炎のオーラを出す以外には攻撃方法は真正面からの突撃。即ち体当たりだけ。
「なら、こちらを倒すためには、絶対突っ込んでこなければならない……」
でも、とアリルティリアは理解していただろう。
攻撃する最大のチャンスは、攻撃を受けること。
そのタイミングのシビアさを。すこしでも遅れれば、体当たりの勢いでこちらが吹き飛ばされ、破壊される。
『五月雨模型店』のメンバーたちもあれでやられたのだ。
「私を止めようとするか! 二度も止められるかよ、この私が!」
『ブラッド・エンプレス』の瞳が輝く。
凄まじい速度。加速。あらゆるものを置き去りにする速度で持ってアリルティリアを襲う『ハチヨン駆』。
あの衝撃を殺しきれるか。
ただその一点において、アリルティリアは賭けるしかなかったのだ。
重ねられた結界にオーラ防御。
防壁は彼女にとって、最大のもの。これを打ち破られた瞬間、自分の魔法少女ロボは砕け散るだろう。
「でも、やってやらなければ、はじまらないです!」
だから受け止めるのだ。
障壁が砕ける。砕け散るオーラ。結界。だが、それはわずかに一瞬『ハチヨン駆』の動きを止める。
わずかであった。
まったく意味のない一瞬であった。けれど、アリルティリアはその一瞬を無為から有意に変える。
「……パシャリ☆」
魔法少女ロボの振るうステッキから放たれるは、エネルギーを停滞させる波動。
それは専用アプリで撮影した被写体の動きを完全に封じるユーベルコードであった。
フォトジェニック・ステイシスと呼ばれるユーベルコードは空間を撮れた画像と同じ構図で固定する。
そうすることで敵の動きを一時的に封じるのだ。
どんなに『ハチヨン駆』が加速しようとも、その構図のまま――アリルティリアの魔法少女ロボの前で停止するのだ。
「上手く決まればこっちのもの! 賭けはアリルの勝ち! ダメ押しの――!!」
魔法少女ロボのステッキが振るわれる。
掲げたステッキの先に備えられた宝石を表現したスワロフスキーが煌めく。
全力の魔法。
煌めく魔法の一撃が『ハチヨン駆』を捉える。
「私の、『ハチヨン駆』が、道が! ここで止まる!? 止まらせるわけには!!」
だが、全てのスポーツの勝敗が決するように。
この『プラクト』にも終わりは来る。魔法少女ロボの放つ魔法の一撃が、『ハチヨン駆』を吹き飛ばし、アリルティリアは再び専用アプリで自身と魔法少女ロボを、パシャリ☆っと撮ってSNSに『プラクト』の魅力を発信するのであった――。
大成功
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ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
なんてこったい!ハチヨン駆だって!(よく分かってない)
なるほど相手をスピードで圧倒して…云々
●いけーっ!バラバラX!『神の鏡像(ゴッドシャドー)』!
そっちがスピードで上回るならこっちはさらにそれを更新する分身たちを生み出していこう!
それをさらにUCで上回ってみせるだって?ならこっちもさらに時間切れがくるまえにUC重ね掛けでコピー!&発動!
どこまで着いてこられるかな!?
さぁ目指せ無限連鎖で光速!更地にしよう世界!
と、いうわけにもいかないし!
【第六感】で機会を見出し…
今だッ!!
VBAプラ粘土ワイヤーを放出してシャーシを絡め取れーっ!!
これがボクたちの友情!努力!勝利!
「なんてこったい!『ハチヨン駆』だって!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はよくわかっていなかったが、なんとなくノリで驚愕していた。
かつてUDCアースでホビーシーンを席巻した『疾走疾駆ハチヨン駆』。
モーターホビーとして知られ、ブームに乗って姿を消したホビーである。忘れ去られたがゆえにカクリヨファンタズムに流れ着いたのであるが、こうしてアスリートアースで日の目を見ることになるとは、誰も思わなかったことだろう。
だが、現実として『ダークリーガー』である『ブラッド・エンプレス』は、『ハチヨン駆』を駆り、『プラクト』のフィールドを疾走している。
だが、今や見る影もない。
猟兵達によって打撃を受けた機体のカウルはひび割れ、ひしゃげている。シャーシは傷つき、バッテリーも弱っても尚、突き動かすのは『ブラッド・エンプレス』の速さに対する執着のみであった。
「なるほど相手をスピードで圧倒して……云々! いけーっ!『バラバラX』! 神の鏡像(ゴッドシャドー)だ!」
ロニはバラバラ状態からドッキングした『バラバラX』と共に『ブラッド・エンプレス』の駆る『ハチヨン駆』の突進を受け止める。
砕ける機体。
けれど、後から増やせる分身……つまり、神の鏡像(ゴッドシャドー)はさらなる速度を得て、同じユーベルコードを解き放つ。
「私の速度を取り込んだ!?」
「その通り! でもこれじゃあ、勝負はつかないから時間切れが来る前にコピー&発動! どこまで付いてこれるかな!?」
目指せ、無限連鎖で光速! とばかりにロニが笑う。
途方も無いことである。
互いのユーベルコードが張り合うように速度を更新していく。
「更地にしよう世界!」
いや、フィールドである。だが、互いのホビーが持たないだろう。なにせ、元はプラスチックである。
過度の強度は期待できない。
光速というか、今ですら音速を超えている。
轟雷のようにフィールドを埋め尽くす、空気の壁をぶち抜き続ける2つのホビー。あまりの速度にモニターを見ている観客たちは何が起こっているのかわからないだろう。
互いのホビーが描く炎とオーラの軌跡だけが、いまだ勝負がつかぬことを知らしめる。
「どこまでもってわけにもいかないし!」
「何故だ! 私はもっと行ける! この速度の向こう側まで私は――!」
「こんなの堂々巡りだしね! というわけで、今だッ!!」
『バラバラX』の機体が再びばらばらになり、ワイヤーケーブルで繋がれる。まるでそれは、蜘蛛の巣のように『ハチヨン駆』を絡め取り、その車体を大地に叩きつける。
「これがボクたちの友情! 努力! 勝利!」
なんかいい感じにロニが言っているが、やっていることはただのバックドロップもびっくりな『バラバラX』の張り巡らせたスパイダーネットからの脳天直下である。
車体が叩きつけられ、シャーシが歪む。
バッテリーも弱り、そのカウルには傷の付いていないところなど無いだろう。剛性が他のホビーよりも頑強であったことが、未だ形をとどめていることの証明であろう。
「キミは独りで女帝を気取っていたからね。勝利はできてもボクらが持っている友情と努力には及ばないってことだよ!」
『プラクト』が心技体の揃ったスポーツであるように。
このチーム戦を勝利するために必要であったものを『ブラッド・エンプレス』は持っていなかった。
ただチームメイトのアスリートたちを隷属させるだけ。
友情もなくば、努力もない。
勝利だけの結果に人は何も感じない。
そこにかけがえのないものを見出すからこそ、勝利に価値がでるのだ。
ロニは『ハチヨン駆』を受け止めた衝撃で砕ける『バラバラX』を手に取り、『ブラッド・エンプレス』を孤高なる玉座から引きずり下ろすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
まさか此処までのプラクトスピリッツ指数の持ち主がダークリーガーに居るとは…居ると…
え…何それ知らん…
こういう時はアレだ
最後にはノリが良い方が勝つ!
多分きっとそう!
やるべき事は一つ!
『念動力』で周囲の壊れた部品を機体に纏わせる!
特にメッキパーツとかアンテナとか、まあ武器でも良いや
そんなのを集めて無理矢理引っ付けて指数アップ!
なんか知らんけど指数がアップするんだって、その辺の付けたら!
そして相手が四輪なら、こっちも前面にパーツを集めて突撃体勢!
歪なカブト虫のような形状に部品を集める
【蒼嵐大系】起動
何か良くわかんないノリをミリオンチャージ!
纏った竜巻と前面の角を車体に潜り込ませて『吹き飛ばし』だ!
車体が歪み、カウルが砕けても尚、『ブラッド・エンプレス』の『ハチヨン駆』は走ろうとしていた。
失ったカウルは炎のオーラでもって補い、さらなる速度を目指す。
ただ走る。
それだけが『ハチヨン駆』というホビーの本質であった。
競い合うものであるが、それ以上にまっすぐ走るということだけを突き詰めたホビーの本懐を果たすまで朽ちぬという気概を猟兵たちは感じただろう。
「ゴールするその時まで諦めない。それが私の……!『ハチヨン駆』だ!!」
『ブラッド・エンプレス』の咆哮に応えるように『ハチヨン駆』に組み込まれた『ユーベルコード発生装置』が光を放つ。
アフターファイヤーが火花のように『ハチヨン駆』の後部から噴出し、凄まじい勢いで加速する車体。
それを見て、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は腕を組み、意味ありげにつぶやくのだ。
「まさか此処までの『プラクトスピリッツ指数』の持ち主が『ダークリーガー』に居るとは……居ると……」
驚愕せしめるところであろう。
『プラクト』というホビースポーツに関わる以上、それとは切っても切り離せぬものであった。
燃え上がる『プラクトスピリッツ』に反応してホビーは燃え上がる。あの『ユーベルコード発生装置』が見せる粒子の輝きが、その証明だ。
玲さんは最初からそれがわかっていたのである。
「え……何それ知らん……」
こわ。と玲さんはつぶやいた。
え、こわ。なに『プラクトスピリッツ指数』って。知らない単語ですねって顔をした。いや待って欲しい。
なんかオブリビオンである『ダークリーガー』も意味ありげに言ってたじゃないですか!
しかし、玲さんは知っている。
こういう時に勝利するのは、ノリの良い方である。たぶんきっとそう。
ならばやるべきことは唯一!
フィールドに散った数多のプラスチックホビーたちの残骸。
それが玲のユーベルコードに寄って、彼女の車型ホビーへとまとわせる。なんか重点的にメッキパーツやアンテナとかを拾ってきているところに玲らしさを感じさせる。え、これもしかしてあの喪われた技術で作られているという多重射出成形パーツ!? とかマニア垂涎のパーツが玲の車型ホビーにくっついたりして、無理やり『プラクトスピリッツ指数』を上げていくのだ。
「なんかしらんけど、指数がアップするんだって、そのへんのつけたら!」
「まさか……! 貴様!」
「え、なに、また知らないこと言うつもり? その口は縫い留めさせてもらうよ!」
いや、玲ねーちゃんが始めた言葉だろ。
そんな『アイン』のつぶやきが聞こえた気がした。しかし、玲は大人である。大人なので、そういう都合の悪いことは聞かなかったことにするし、あとのせサクサクの設定を飲み込んで楽しんでこそのホビーである。
「相手が四輪なら、こっちも前面にパーツを集めて突撃体勢! なんか知らないけど、えーと、えーと、こう、カブトムシっぽい……!」
クラッシュ・ビートォ! とかなんかそんな名前になりそうなホビーへと姿を変えた玲の車型ホビー。
トゲトゲは鳴りを潜め、まさにカブトムシのような様相となる。
羽ばたくように多重射出成形のパーツがきらめく。もう作ったら赤字にしかならんと言われているパーツを贅沢に使った玲の車ホビーが『ブラッド・エンプレス』の『ハチヨン駆』と正面から激突する。
互いに忘れ去られたホビーと技術。
その激突には哀愁すら感じせるものがあった。此処まで猟兵たちが削っても消耗させてもなお、五分。
互いに譲らぬ気迫があった。
「システム解放。風よ、集え」
此処にあるは、ホビー神話大系。
いつの時代にもホビーは子供らの心を牽引してきた。創造は破壊と同義。ならば、固定概念を打ち払い、新たな概念を生み出す。
「なら、よくわかんないノリをミリオンチャージ!」
輝くはユーベルコード。
蒼嵐大系(ストーム・システム)は、カブトムシのキラキラと輝くインモールド成形を一層深く、綺羅びやかにするだろう。
蒼き竜巻をまとったよくわからんノリで、よくわからぬ技名を叫んだほうが勝つ!
それが古今東西、温故知新。
ノリのよい奴が勝つ! ということである。
「馬鹿な、この私が! この『ブラッド・エンプレス』が! 負ける! 負ける……いや、そうだな……独りで全てを得ようとするからこうなるのか……ホビーとは皆で楽しむもの……孤高を気取る私が……」
そぉい! と玲さんのビンタが飛ぶ。
えっ!? とギャラリーも『五月雨模型店』のメンバーもびっくりした。いや、リアルで吹き飛ばしは拙いっすよ、玲ねーちゃん、と『アイン』が突っ込む。
いやさ、違うのだ。
猟兵たちも同じ思い出あっただろう。
「見なよ、このフィールドを。みんなで遊んだだけだよ。勝ち負けはあるけど、終わったらノーサイドでしょ。作って、戦って、壊れたら治して。また遊ぶ。『プラクト』ってそういうホビースポーツでしょ」
なら、勝ち負けの後にこそ来るものがある。
それを気づかせるための張り手。いや、張り手しなくてよかったかもと思ったかも知れないけれど。
なんか良い雰囲気のまま『ブラッド・エンプレス』は満足げに頷いて霧消していく。
『プラクト』フィールドに爽やかな風が駆け抜けていく。
嘗て忘れられたホビーも『プラクト』の中でならば平等に共にあれる。その可能性を猟兵たちはアスリートアースに魅せるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵