●工芸の街
硝子に鉄、真鍮に砂張―。
生温い風が吹き抜ければ、ちりん、からん、と涼やかな風鈴の音色が響き渡る。
涼しげなのは、其の音色だけでは無い。
目にも鮮やかな色硝子に、透明硝子に浮かぶ夏の景色。
金属製の風鈴だって、負けてはいない。色彩こそ単調な単色であるけれど、灯篭や花冠を模したりと工夫が見て取れる。
陽炎揺らめく、太陽の下。暑さ凌ごうと、考えた末―。
見た目も、音色も涼しい風鈴は、気が付けば街の名物と也て。
気が付けば、風調べの街、と呼ばれるようにまでなっていた。
民家の軒先には勿論の事、立ち並ぶ工芸店には様々な風鈴が揺れていた。
其れともう一つ。此の街では、世に一つしかない、自分だけの風鈴が作れるのだ。
『嗚呼、嗚呼……。世に一つしかない、お揃いの物を持てるだなんて』
―なんて、なんて素敵なのでしょう!
可憐な顔を朱に染めながら。恍惚とした表情で、少女は往来する人々を眺める。
『……もし、其処のお方』
―貴方は、私の愛しき方に為り得るかしら。
声を掛けられた瞬間、世界から全ての音が消える。喧騒も、蝉時雨も、風鈴の音色さえも。
其れを自覚すると同時に、どさり、と崩れ落ちる身体。
ふわり、ゆらぁりと抜け出た魂が、少女の元へと寄り添う。其の数、一つや二つではなく。
うっそりと、妖しく、蕩けた笑みを浮かべながら、少女は。猟書家たる灯籠に照らされし夢魔・お露は、新たなる恋の相手を探す為に、街を練り歩く。
後に残るは、魂なき抜け殻の山―。
けれど、其れを指摘する者は誰もいない。
今や、此の街の住人は全て、お露の虜となりつつあるのだから―。
●恋風
りーんと、透き通るような音色が耳に届く。
じっと風鈴を眺めていた神宮時・蒼(追懐の花雨・f03681)は、集った猟兵へと視線を向ける。
「……報告。……カクリヨファンタズム、で、猟書家の、動きを、察知、しました」
―灯籠に照らされし夢魔・お露。
恋に恋する、夢魔の娘。そして、猟書家の幹部である。
其のお露が、恋の相手を探す為に、街そのものを”恋のお祭り会場”に変えてしまったのだという。
頭痛が痛い、そんな表情を浮かべながら、蒼が自らの米神をとんとんと叩く。
「……ボクには、よく、わからない、のですが」
彼女に骨抜きにされてしまった妖怪が、次々と生霊へと変じている。魂が離れた肉体は、衰弱し、やがて死へと至る。
そうなる前に、お露を倒してほしい、と蒼は告げる。
「……ですが、此のままでは、生霊に、なって、しまった、妖怪が、妨害、してくる、のです」
故に、本当の恋とは何か。妖怪たちに教えてほしい、のだと。
「……倒れている、妖怪の方々、は、お露に、魅了されている、状態、です」
ならば、彼らの目を覚まさせるにはどうすべきか。恋のときめきを与えればいいのだそう。
妖怪の生霊相手に口説くも良し。恋とは、愛とは何か、語るも良し。此れこそが、恋だと見せつけるのも有りかもしれない。
「……妖怪の、方々の、魂が、戻れば、お露が、姿を現し、ます」
誰も犠牲にならぬ内に。お露を倒してほしいと蒼は乞う。
「……ボクに、愛や、恋は、よく、わかりませんが」
皆様なら、何とか、してくれると、信じて、います。
蒼が、転送の準備を始めれば、ふわり、とグリモアの蝶が、周囲を舞う。
風が紡ぐ音色を奏でる街へ―。恋し、愛しい貴方と一時の想い出を作りに―。
幽灯
幽灯(ゆうひ)と申します。
今回は、カクリヨファンタズムのお話をお届けします。
マスターページの雑記部分にプレイング受付日と締め切り日を記載させていただきます。
お手数ですが、一度マスターページをご確認くださいませ。
水着イベントまでには返却の予定です。
●こちらは「2章構成」の猟書家シナリオとなっています。
●一章
様々な風鈴が並ぶ風調べの街で生霊たちの魅了を解いてください。
恋や愛について語ったり、これこそが本当の恋だと想いのまま過ごすも良し。
また、街の人全員が魅了されている訳ではないので、工房に立ち寄れば、オリジナルの風鈴を作る事も可能です。
愛や恋やそういった話題に混じれませんが、風鈴作りのお手伝いや聞き役が欲しい場合は、蒼にお声がけください。
●二章
幹部「灯籠に照らされし夢魔・お露」の戦闘です。
恋を奪われたと勘違いする、ヤンデレお嬢さんです。
恋は盲目という通り、話は多分通じません。
複数名様でのご参加は3名まで。
ご一緒する方は「お名前」か「ID」を記載してください。
それでは、良き冒険になりますよう。
第1章 日常
『風鈴祭り』
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POW : 風鈴祭りを楽しむ/風鈴を手作りする
SPD : 風鈴祭りを楽しむ/気に入った風鈴を買い求める
WIZ : 風鈴祭りを楽しむ/風鈴の音色を楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●風波
ゆらり、ゆらりと風鈴から下がる短冊がゆっくりと揺れる。
からん、と舌が揺れて涼やかな音色を奏でる。
同じ音色はどれ一つとしてなく。
暑さも、喧騒も、置き去りにして。風の奏でる音色は、周囲へと響き渡る。
其れはまるで、波の如く。波紋広がる様に。
恋を、愛を語り、時には見せつけながら。
演技でも、無意識でも。生霊となった妖怪の正気を取り戻す為に。
今は、風の調べが起こす祭を楽しむのもいいのかもしれない。
往生堂・凛々子
「恋は夢見る心だと思うわ」
チリンと風鈴を鳴らしながら生霊達に語りかけます
「恋と呪いは紙一重…どちらも盲目になり狂い、焦がれて…落ちてしまうモノ…」
微笑みかけながら語り続けます
「それが本当にアナタ達の心からの夢ならば私は止めません…恋も愛も形は人それぞれなのですから」
けれども…それが決して心からの望みでないのならば
「今一度自分の心に耳を傾けなさい、アナタの心が何処にあるのかを」
語り歩きながら一人自嘲します
「私自身の心は…何処にあるのかしらね」
自身の生前の持ち物であるかんざしを見つめながらポツリと呟き
「恋か呪いか自分にも分からないのにね」
チリンと自身を慰めるように風鈴を鳴らし生霊達と語らいます
●
温い風が、頬を撫でる。ゆらりと揺れるは、無地の短冊。
ちりん、ちりんと、小さな音が不規則に生まれる。
ほぅ、と漂う生霊の姿を眺めながら、往生堂・凛々子(桜に潜む悪意なき悪霊・f31623)は静かに語り掛ける。
「恋は夢見る心だと思うわ」
恋とはどんなものなのかしら―。
長い年月、様々な恋模様を見てきた気がするような、しないような。
何もかも覚えてはいないけれど、此れだけははっきりと告げる事が出来る。
「恋と呪いは紙一重……」
善き方へ昇華すれば、恋へ。悪しき方へと転がれば誰かを憎む呪いへと。
「どちらも盲目になり狂い、焦れて……、落ちてしまうモノ……」
ふぅわりと、優しい笑みを浮かべながら凛々子は続ける。
「それが本当にアナタ達の心からの夢ならば私は止めません」
其れは、無意識の産物。誰の目にも見えぬ、心を、命を持つ者の業が如し。
「……恋も愛も形は人それぞれなのですから」
親愛、恋慕、共愛、偏愛―。恋を、愛を示す言葉は世に溢れている。
ぱちん、と手にしていた扇を閉じる。
柔らかな笑みを称えていた顔は、気が付けば温度を失くし、無を宿す。
「けれども……」
―其れが、決して心からの望みでないのならば。
「今一度、自分の心に耳を傾けなさい。―アナタの心が何処にあるのかを」
恋に恋して、恋焦がれ。貴方の心は今何処。
一時の情に流されるまま、想うままに行動するのも良いでしょう。其れが、幸か不幸か。知る由も無いけれど。
「……私自身の心は。……何処にあるのかしらね」
ぽつり、と零れた言の葉は、誰に拾われる事なく風に攫われ消える。
其の手には、古びた桜の簪。誰に貰ったか分からない、けれど捨てる事すら躊躇する大切な物。
そっと簪を招き寄せれば、凛々子の動きに合わせて凛と風鈴が音を奏でる。
ちりちりと、焦れる様な、燻る様なこの感覚は。
「恋か呪いか。自分にも分からないのにね」
アナタ達に、心当たりは在るのかしら?そう語り掛ければ、ぴくり、と揺れ動く生霊。
心に宿る此の感情の正体が暴かれる日は、いつか訪れるのだろうか―。
大成功
🔵🔵🔵
ルカ・クルオーレ
風鈴かあ、確か天然石のものもあったよね
ウィンドチャイム的な方のやつだけどそういうのも置いてるのかなあ
瑪瑙とか翡翠とかだった気がする
硝子のも綺麗だよね、綺麗な赤の子が居たら連れて帰っても良いかも
ああ、お祭りが返られてしまっているんだっけ
恋…はよく分からないけど、今までに言われた事を真似る事は出来るかな
僕は物だから、人間の機微までは備わって無いからね
微笑に誘惑の力を乗せておこう
君がこのまま消えてしまうなんて耐えられないな
手を伸ばし、相手の頬に手を添えて
君の前ではどんな美しい花も霞んでしまう…似合う花を見つけるまで側に居てくれないかい?
目が覚めるまで顔を寄せて囁いてあげよう
これでどうにか出来るかな
●
ちりん、ちりんと涼やかな音が風に乗って流れてくる。
じりじりと地面を焦がす陽の光と相反する其の音色は、何処か別の世界に迷い込んだかのような錯覚を起こす。
風に合わせて揺れる風鈴を眺めながらルカ・クルオーレ(Falce vestita di nero・f18732)は、楽し気に柘榴石の瞳を細めた。
「風鈴かあ、確か天然石のものもあったよね」
脳裏に浮かべるは、様々な天然石の瑪瑙を薄く切り取ったウインドチャイム。
からん、からんと高く澄んだ音色を思い出す。硝子の素材も、金属の素材の物も、どれも此れも同じ風鈴であるのに音色が違うのがまた楽しい。
(綺麗な赤い子が居たら、連れて帰っても良いかも)
ちらりと露店に並ぶ風鈴を眺めて、好みの子を探す。―ふぅわりと、実態を持たぬ生霊が目の端に映った。
「ああ、お祭りが返られてしまっているんだっけ……」
忘れていた、とルカは軽く笑みを浮かべる。根本たる問題を解決しなければ、好みの風鈴をお迎えする処ではないね、とそっと息を零す。
そもそも、此の生霊は何をして欲しいのだったか。
(えっと、恋とか、愛とかについて、だっけ)
今でこそ、人と同じ温度を宿しているけれど、もともとのルカの本体は武骨な大鎌。
武器は、振るわれてこそが本懐。けれど、ルカの本懐が果たされる事は無く、今に至る。
故に―。
「恋は……、よく分からないけど、今までに言われた事を真似る事は、出来るかな?」
魂宿りし物であれど、人間になるまではまだ遠く。感情を真似る事は容易であるけれど、心の機微を察するにはまだ経験が足らないのだ。
ので、ルカも恋や愛については深くは知らない。
ならば、どうすべきか―。
ふぅわり、と花が綻ぶように淡く、笑みを浮かべる。見る者が心動かされるような、誘う笑みを。
辺りを漂っていた生霊の動きが、ぴたりと止まる。
「君が、このまま消えてしまうなんて」
―耐えられないな。
何処か泣きそうな表情を作って、そっと生霊へと手を伸ばす。
するり、と頬を撫でて、耳元へと唇を寄せる。其れは、内緒話をするかのように。
「君の前ではどんな美しい花も霞んでしまう……。似合う花を見つけるまで側に居てくれないかい?」
じわり、じわりと生霊の姿が霞んでいく。
(これでどうにか出来るかな)
相手が恋に恋しているのであれば。其の想いを上書きするような、言の葉をぶつければいい。
そんなルカの心境など露知らず、生霊はふるふると羞恥に耐えるかのように震える。
(もう一押しかな)
次はどんな言葉を紡ごうか―。
再び生霊に手を伸ばしながら、ルカは其の唇を耳元へと寄せた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『灯籠に照らされし夢魔・お露』
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POW : わたしの唯一人の味方・お米
【骸魂と化した黒い霧の体を持つ侍女】の霊を召喚する。これは【黒い霧から伸びる白骨化した手足】や【手に持つ牡丹の灯籠から吹き出す炎】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 愛しいあの方との想い出
自身の【恋愛体験を包み隠さず語ること】を代償に、1〜12体の【語りに登場した過去に魅了された者達の生霊】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ : 魅惑の下駄の音
【自分が履いている下駄】から、戦場全体に「敵味方を識別する【歩くたびカランコロンと鳴る足音】」を放ち、ダメージと【時間と共に重みが増す使用者への恋愛感情】の状態異常を与える。
イラスト:おきな
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ルネ・シュヴァリエ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●愛は潰えて
気が付けば、周囲を漂っていた生霊は数を減らして。
ほう、と恋に恋していた少女は、ようやく異変に気が付く。
『どうして……』
ぽつり、と零された言葉に彩は無い。
『どうして……?皆、私が好きなんでしょう?どうして、どうして離れるの?』
ぶつぶつと形の良い唇から、延々と呪詛の言葉が零れ落ちる。
刹那、ぷつり、と少女の―お露の声が途切れた。
ゆらりと幽鬼のように、表情宿らぬ顔を猟兵へと向ける。
『ああ。……そうね。……そうだわ。きっと、私の気持ちが足りなかったのね……』
じゃあ、まずは邪魔者を消さなきゃ……、いえ、あの人たちにも私を好きになって貰わなきゃ。だって、私は愛されるべきなのだもの、そう、そうよ。そうすれば、離れていった皆だって戻ってきてくれるわ、そうに違いないわ、ふふ、あはははっ・
とろんと蕩けていた瞳に憎悪が宿る。ぞくり、と猟兵の背に悪寒が走る。
此の場を切り抜けなければ、己が身が危ない、と本能が危険信号を発する。
此れ以上被害を増やさない為に。そして、猟兵の精神の安寧の為に。
戦いの火蓋が今、切って落とされた―。
谷保・まどか(サポート)
怪奇人間の魔獣解体士×バーバリアンです
普段の口調は 人として生まれたもの(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
興奮したり気を抜くと 蛮族育ちの改造体(オレ、お前、だ、だな、だろう、なのか?)
普段は大人しく丁寧かつやや弱気な優等生少女ですが、興奮が強まってくると荒々しく狂暴な性格が出てしまいます
戦闘スタイルは蛮族式肉弾戦と自身の肉体を変容させて異形化しての戦い方を併用します
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません
あとはお任せ。よろしくおねがいします!
●
可憐な少女の花唇から零れる、途切れる事ない狂愛の一端。
何処で区切っているのか分からない其の内容を正しく理解した谷保・まどか(バルバロス委員長・f34934)が、ひぃ、と小さな悲鳴をあげる。
ふるり、と大きな体躯を震わせ、思わず後退る。
「な、な、何ですかあの人。可愛らしいお顔で、言葉の端がえぐいんですけれども」
これまでに、いろいろな世界を巡り、いろいろな人々に出会ってきた。でも、こういう、何処か歪んだ人に会う回数だけは極端に低くて。
得体のしれない気味悪さが、ぞわぞわとまどかの肌を粟立たせる。
ぐりん、とお露の紅色の瞳が、己の腕を擦っていたまどかの姿を捉える。
『……あの人も、あの人も。あの人だって。私を愛してくれていた筈なのに』
ぶつぶつ呟くお露の背後に、黒き影が人の形を模す。
ゆらり、ゆらり揺れる影から、白骨した腕が、白き焔を称えた灯籠を携え現れる。
そっと白骨化した手が、牡丹灯籠を揺らせば、ぽ、ぽ、ぽ、と空気が弾ける音と共に、白炎が玉と也てお露の周囲に浮かび上がる。
場にそぐわぬ白き炎の美しさに、思わず視線が釘付けとなる。
けれど、次に襲ってきたのは、言い得ぬ焦燥―。
(あれ、きっと当たったら駄目なやつ……!)
飛び交う炎を、しっかりと目で追い、身を捩って躱す。躱し切れずに掠った炎は、じゅ、と高温でまどかの肌を焼いた。
「…あ、っつぅ…」
つぅ、とまどかの頬を汗が伝う。其れを拭う事無く、まどかの視線はお露から決して離される事は無い。
相も変わらず、ぶつぶつと自身が信じる愛に盲信する姿に、恐怖と共に僅か憐れみすら覚える。
自らが持つ感性と、別の感性。其れが、間違いだとは決して思わないけれど。
けれど、ひたすらに其れだけを盲信するのは、哀しいとすら思う。
「私はあなたを愛せませんけど―」
ぐっと地面を踏み締めて。爆発させるようなイメージを持ちて、お露へと肉迫する。
「あなたが普通の誰かだったら」
小さく身体を丸めて、隆起した肉体を武器に、お露の華奢な身体を押しつぶす。
―普通にお話出来る間柄になってたかもしれませんね。
みし、とお露の骨の軋む音が僅かに響く。同時に潰された白骨の腕は、粉々に砕け散って風に流され、消える。
『……ぐ、ぅう』
ふらり、とよろけながらも、お露が立ち上がる。
其の瞳には尚、狂気が宿っていた―。
成功
🔵🔵🔴
神塚・深雪(サポート)
※連携およびキャラを逸脱しないアドリブ歓迎
※お色気、公序良俗に反する行動、所謂R18やR18Gの系統はNG
※口調等はステシ参照ください
元能力者の猟兵。
通常依頼であれば、基本的にはお手伝い/サポート役に徹しますが、状況に応じて対応でも可。判断はお任せします。
サポート優先依頼の場合は、状況に応じます。
基本的には高いステータスのUCを状況に応じて使用します。
他の猟兵に迷惑をかけたり、脚を引っ張る、目的達成に反する行為はしません。
人道から外れたような行いには嫌悪感と怒りを強く示します。
基本的には、礼儀正しい丁寧な物腰。
出身の銀雨世界以外であれば興味津々な様子も見せます。
●
りん、りぃんと、遠くで風鈴の音が鳴り響く。場にそぐわぬ爽やかな音色。
眼前に蹲る少女の、鮮やかな黒髪も風に流され、ゆるりと揺れる。
ふらり、と立ち上がるお露の姿を、神塚・深雪(光紡ぐ麟姫・f35268)は静かに見つめる。
過去の大戦で、いろいろな相手を見てきたけれど、こういう手合いは、初めてかもしれない。
「相手を思いやらぬ愛は、自ずと破綻しますよ」
諭すように、深雪が静かに言葉を零すけれど、お露に耳には決して届かず。
(愛とは、与え与えられる物。押し付けた好意ではあなたの願いは叶わないでしょうに……)
黒曜の瞳をそっと伏せる。脳裏に浮かぶは愛しき夫と、愛らしい娘の姿。
其の姿を思い浮かべれば、胸の中にほわりと優しい光が、熱が灯る。
―だからこそ。
「他に害を為すなら、ここで倒さなければ」
『あ、あ、あぁ……。貴方も、貴方も私を愛してくれはしないのね』
そっか、じゃあ。
―しんじゃえ。
かん、とお露が下駄で地面を強く踏み締めれば、彼方此方からカラン、コロンと鳴り響く無数の足音がにじり寄ってくる。
始めは遠く。段々と近くなってくる足音は何処から鳴り響いているのか。
くるり、と深雪は周囲を見回せど、足音の主は目視出来ず。
(いえ、これは……!)
ずきり、と鈍い痛みが頭に走る。痛みは、足音が大きくなるごとに強くなる。
『貴方も私を好きになる。私も貴方が好きよ。……好き、なの!』
ふ、ふふ、うふふふふ……。カラコロと耳の奥で鳴り続ける下駄の音とは別に、仄暗い笑い声が深雪の耳に届く。
痛む頭を押さえながら、透き通る刀身を持つ麟楔刀を大地へと突き刺す。
「……空渡る、七色よ……。…力を、示せ……っ!」
轟、とお露を中心に風が吹き荒れる。
風は、鋭い刃と也て、お露の身体を切り裂く。
『きゃあぁあ……っ!』
お露の悲鳴と共に、深雪を悩ませていた頭痛もすぅっと消え失せる。
ふぅ、と大きく息を吐き、残っていた痛みを振り払うように深雪は頭を振る。
眼前には、身を裂かれたお露が、敵意を隠さず此方を静かに睨みつけていた。
成功
🔵🔵🔴
シェーラ・ミレディ(サポート)
※OK:シリアス
※NG:エロ、ネタ、コメディ、心情系
※傭兵的なスポット参戦
称号通り、僕の身体を維持するための金儲けと、弱者をいたぶる醜い行いが許せぬ義侠心が行動指針だ。
美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。
性格ブスは醜い。見るに堪えん。
複数の精霊銃をジャグリングのように駆使する、彩色銃技という技(UC)を使って、敵を攻撃しようか。
敵からの攻撃は基本的に回避する。が、護衛対象がいるならかばうのも検討しよう。
……嗚呼、僕を傷付けたなら、代償は高くつくぞ!
●
ぽたり、ぽたりと地面に赤い華が咲く。
ぜぇ、ぜぇ、と荒い息が桜色の唇から零れ落ちる。可憐な容姿は今や見る影も無く。
けれど、紅い瞳に宿る狂気は消えぬまま。寧ろ深くなっているよう。
「…………」
其の様子を、感情宿さぬ瞳でシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)はただ静かに見つめる。
「美しいものは愛でるべきだが……」
かといって、其れが恋愛に結び付くかと言われれば、否。
「愛だ恋だを語る前に、先ずはその性格を直したほうがいいんじゃないのか?」
ああ、容姿の話ではない。しいて言うならば、君は―。
「性格ブスは醜い。見るに堪えん」
ふぅ、とこれ見よがしに息を吐くシェーラの姿を見て、ふるふるとお露の肩が怒りに震える。
『わたしは、醜くなんて、ない……っ!』
ぶわり、とお露の影から黒い霧が吹き上がる。砕け散った筈の白骨化した腕は、罅割れながらも其の姿を取り戻し。
力強く、手にした牡丹灯籠を振り回す。
ぼぼぼっ、と手のひら大の人魂が、お露の背後に生まれる。
『骨も残らず消えてしまええええええ!』
黒髪振り乱し、シェーラに向かって白き炎を打ち下ろす。
けれど、シェーラは慌てる事無く、其の一つ一つを無駄のない動きで躱していく。
(怒りからか、攻撃が単調。これほど読みやすい弾も無いな)
くるり、くるりと手にした精霊銃をジャグリングしながら、弾を穿つ。
桜色だったお露の着物が、じわじわと赤く染まっていく。
「君の敗因は、その自意識過剰な部分だろうな」
憐れみを含んだ視線をひとつ、お露に向けながら。
シェーラは精霊銃の引き金を躊躇なく、引いた。
成功
🔵🔵🔴
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。
逆恨みで怒ってる?…気のせいデスヨ。UCの逆恨みじゃアルマイシ。
戦闘は、範囲系ユーベルコードなら集中砲火、単体攻撃なら可能な限りの連続使用。
必要に応じて、カウンターでタイミングをずらしたり、鎧破壊で次の人を有利にしておく。
……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)
●
愛や恋とは、一体どんな物かしら。憧れが狂気となったのか。
欲しがった理由を、お露はもう覚えてはいない。
『私、は、私を、愛して、くれる、人を……!』
そんな呟きを拾った城田・紗希(人間の探索者・f01927)は、小さく首を傾げる。
「そういうの探すならSNSとかの方が早い気がしますよ」
現代、ネット社会ですし。此処でうろうろするよりもよっぽど現実的かと!
何て軽い調子で告げてみるも、紗希の言葉は聞こえていないようで、ただただ愛を求める言葉のみを呟き零す。
ぽた、ぽたと零れていた赤は、気が付けば地面を染め上げる程の量と也。
真っ直ぐに紗希の姿を見つめる赤い瞳も、よくよく見れば、眼球の動きが定まらず、うろうろと揺れている。
「……もう、聞こえていないみたいですねぇ」
すらり、と手にした日本刀の鞘を抜き放ち、刃先をお露へと向ける。
「なら、さくさくっと倒してしまいましょう」
すっと重心を落として、一気に距離を詰める。大きく刀を振り上げて、頸を切り払おうとするけれど、其れよりも先に黒き霧から伸びる骨の腕に受け止められる。
かつん、と軽い衝撃が手に伝わる。骨故か、痛覚が無いのか刀身を掴み離さない。
ならば、と紗希は日本刀を手放して、袖の中に仕込んだ暗器を展開する。
ぐるり、と骨の腕に巻き付いて、思い切り引けば、ばきん、という軽い音と共に骨が折れる。
『……っ!』
お露の、息を呑む音が小さく零れる。
「武器がこれだけだと思いました?実はまだまだあるんですよー」
じゃら、と此れでもかと服の下から暗器が飛び出す。あちこちから飛び出る暗器に、紗希自身もほんの少し驚いているように見える。
「と、とりあえず、いっくよー!」
様々な暗器が、お露の身体を裂いて、潰し、打ち据える。
血しぶきが舞い、とさり、とお露の身体が地へと倒れる。
―撃破まで、後少し。
成功
🔵🔵🔴
往生堂・凛々子
「ふふふ、嫉妬しちゃう位の激情ね」
敢えてお露の攻撃を受けつつ語ります
「ええ…貴女に…否、私達にはぬるい優しさも、見当違いの同情も要らないわ…欲しいのは魂までも焦がす炎のような激情だもの」
語りユーベルコード《呪縛炎》を自身も《呪詛》を込めて放ちます
「私は貴女が妬ましい、愛されるべき者だと口にできる貴女が!」
彼女の事情など分からない…だが!自分自身愛されていたのかすら分からない焦燥を彼女は理解できないだろう
「だから今の私達に言葉は要らない、必要なのは魂までも焼き付くす炎のような呪いなのよ…」
今の自分達は分かり会えないだろう…しかし
「いつか黄泉の国で語りましょう…私達、良いお友達になれると思うわ」
●
恋に溺れた女の姿は、今や見る影も無く。けれど、何時まで経っても、瞳に宿る狂気だけは褪せる事は無かった。
「ふふふ、詩っとしちゃう位の激情ね」
ゆったりと笑いながら、凛々子が扇を閉じる。
ぱちん、と小気味よい音が消えると同時に、凛々子の顔からも表情がすっと抜け落ちる。
「ええ……。貴方に、否、私達にはぬるい優しさも、検討違いの同情も要らないわ……」
其れは、オブリビオンへ為り得たかもしれない凛々子だからこその言葉。
瀬戸際で猟兵へと覚醒した、身に秘める怨嗟を宿した者だからこその―。
「欲しいのは。……魂までも焦がす炎のような激情だもの」
ゆらゆら揺れる、お露の白炎に対抗するかのように。
冥府へ誘う青い炎に、内に秘めた呪詛を宿し、投げつける。
「私は貴女が妬ましい。……愛されるべき者だと、口にできる貴女が!」
―吼える様な慟哭だった。凛々子には、過去の記憶が無い。
そもそも、そのような過去があったのかすら、分からない。愛を乞うた事も、乞われた事も其れすらも思い出せない。
嗚呼、嗚呼。何ともどかしい事だろう。愛を乞うという事は、過去に愛された実績があるという事。
だからこそ、軽々しく、愛を、恋を願えるのだ。過去の想いに縋るように。在った筈の出来事を再現するかのように。
別に、現在の在り方に不満がある訳でもない。凛々子自身、怨霊としての今を楽しんでいる。
それでも。ふと、過去に縋りたくなる事がある。
―自分は、愛されていたのだという、誰も知らない、過去に。
『わたし、は。……わたし、は、あぁ、あぁあああぁぁぁ!』
ふぅ、と小さく息を零し、桜色の瞳を細めて、凛々子は前を見据える。
「だから。……今の私達に言葉は要らない」
必要なのは。
「魂までも焼き付くす炎のような呪いなのよ…」
きっと、わたしは彼女とは永劫分かり合えないだろう。彼女が猟書家でなかったとしても。凛々子が今の在り方とは相反していたとしても。
根底の価値観が違う二人では、きっと―。
ぶわり、と炎と炎が弾けて、熱波が周囲を巡る。
ちりりん、と熱波が生んだ風圧で、風鈴がゆらゆら揺れる。
拮抗していたかのように見えていた戦いは。お露の生み出す炎が徐々に減って来た事で、終幕を迎える。
『い、やぁああああ……っ』
冥府の炎に包まれ、お露の喉から絞り出すような悲鳴が漏れ出る。
鮮やかな、紫の炎がお露ごと、彼女の狂気ごと焼き尽くす。
真っ黒に焦げた何かが、ぼろり、と輪郭を崩す。
そっと、瞳を伏せて、凛々子は愛に焦がれた女に背を向ける。
「いつか、黄泉の国で語りましょう」
―私達、良いお友達になれると思うわ……。
きっと、仲違いする事の方が多いだろう。でも、きっと。貴女となら。
こうして、愛を乞うた女は。激情を宿したまま、黄泉の門へと旅立った。
見送る様に、一陣の風が吹き、りぃん、と澄んだ風鈴の音を響かせ、消えた―。
大成功
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ルカ・クルオーレ
夢を見過ぎなんじゃない?
恋なんてそんなに素晴らしい物かなあ…僕には分らない
自分を見失って良くない事になる者の方が多い印象なんだけれど
あとその…情念?は好きじゃないな
何にせよ、他人を巻き込むのは終わりにしてもらうよ
さて、どうしようか
恋愛体験を語るなど聞きたくはないけれど、勝手に語られて向こうの戦闘力が増えるのは良くないな
手数を増やすべきだね
錬成カミヤドリ
分身である大鎌を幾つも浮かべて
本体で指揮を執る様に動きを合わせ、お露を追い詰めよう
此処で終わり、恋は叶わない
後始末はどうしようか…放っておいたら普通の街に戻るのかな
工芸品を作り出す場所は貴重だからね、いつかまた風鈴を買いに来たいし
●
―時は少し、遡りて。
大地に平伏す女へ、ルカは侮蔑の視線を向ける。
「夢を見過ぎなんじゃない?」
武器としての本質が強いルカには、恋や愛の何が良いのかが分からない。
むしろ、其れによって引き起こされた悲劇を目にした回数の方が、多いかもしれない。
本能に準じた結果、身を滅ぼした例を、数多く見てきた。
「あとは、その……、情念?は好きじゃないな」
一人で完結するのならばともかく。他を巻き込み火種を大きくするのは、どうしても好かない。
ふぅ、と大きく息を零して。小さくルカは肩を竦める。
「何にせよ、他人を巻き込むのは終わりにしてもらうよ」
そう告げると同時に、ルカの背後に無数の大鎌が召喚される。
鈍い光を称えた鎌は、明確な殺意を持ちて、お露へと向かう。
『私の、初めての、恋は…っ。……健気な、あの人、だったわ……っ!』
文字通り、血反吐を吐きながら、お露が言葉を零す。
其の言葉に呼応するかのように、ぽつり、ぽつりとお露の背後に生霊が呼び出される。
『……少し、大人びた、あの人の、笑った、顔が…っ!』
さらり、とお露の言葉を流しながら、虚無の表情浮かべてルカが腕を振り下ろす。
其の動きに合わせて、まるで指揮するかのように、大鎌が優雅な曲線を描きながら、お露を、呼び出された生霊を切り裂く。
「キミの思い描く恋物語は此処で終わり」
恋に恋しているようじゃ、想いは叶わない―。
本当に、誰かを愛したいのならば。何もかもを棄てる覚悟を持たなければならない。
そんな出来事を。人の身を得る前から見てきたのだ。
恋を、愛を知らないルカでも、其れくらいは、分かる。
べしゃり、と崩れ落ちたお露を見て、もう先は長くないと悟る。
ならば、此れ以上、夢物語を聞かされる前に。ルカは其の場を離れた。
―ちりぃん。
澄んだ風鈴の音が、一斉に鳴り響く。
「……逝ったか」
気付けば、浮付いていた街の雰囲気が、溌溂とした空気に変じていた。
ゆらゆら揺れる風鈴を、ルカはそっと手に取る。
職人の技が、そのまま表に出る工芸品。もしかしたら、後世にヤドリガミになるような逸材があるかもしれない。
そんな想いを抱きながら、ルカは街を歩く。たったひとつの風鈴と出会う為に。
好みの品を探す、此の行為は。人が抱く恋模様に似ているのかもしれない。
そう、独り言ちながら―。
こうして、何事も無かったかのように、今日も世界は回っていく。
大成功
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