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ウィークエンド・マチネ

#シルバーレイン #【Q】 #ナンバード化オブリビオン #蓮華と橘

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#シルバーレイン
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#【Q】
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#ナンバード化オブリビオン
#蓮華と橘


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 土曜日の正午少し前。
 電車を降りて、近くの坂を軽やかに登る。
 少年は知っているのだ。坂の上にある公園からは港の風景が一望できる。園内には色とりどりの薔薇が咲き乱れ、訪れる客人を出迎えてくれる。
 立花・周太は昼寝と美術と喫茶店巡りを趣味とする学生だ。ここにはよく、絵を描きに来る。港の絵と薔薇園の絵が、スケッチブックを埋め尽くしている。
(「そうだ、彼女は――」)
 数ヶ月前に喫茶店で知り合った少女。
 隅の席で、人を避けている割には寂しそうな背中が放っておけなくて、根気強く話しかけ続け、先日やっと連絡先を交換するに至った子。
 彼女を呼んでみようか。予定が空いているかは解らないが、聞いてみるだけなら。
 メッセージアプリでお誘いを。程なくして『すぐに行くわ』の返事。
 それを確認して――周太は、はたと気付く。
(「……血の臭いがする」)
 一息に駆け上がる。
 咲いていたのは――赤薔薇ばかり。
 人々が、血溜まりに沈んでいる。動かない。それも、一人や二人ではない。癒しの風景が、地獄絵図と化している。
 物言わぬ肉片と化した屍を、執事のような風体の男たちが片付けている。ゴーストだろうかと、能力者である周太は思い至ったが、日の高い内に堂々とこのように派手に動くだろうか、などと考える内。

「見つけましたよ」

 夏だと言うのに、ぞっとするほどの寒気を覚えて。
 振り返れば、病的なまでに美しく――異様な風体の男が、そこに立っていた。
 その顔に、周太は覚えがあった。面識があるわけではない。だが周太は彼を『記録』として知っていた。

「……貴方は、倒されたはずじゃ」

 ぞぶり、と。
 問いかけを遮るように、腹に刃を――否、刃状に鋭く研ぎ澄まされた『それ』の先端を、突き立てられた。
「かは、……ぁ……」
 痛みの余り声さえも出ない。
 それよりも熱が、周太の感覚を支配する。
 黒く染まりゆく意識を、どうにか手繰り寄せて繋ぐ。
(「……そ、そうだ……」)
 倒れ伏した弾みで、転がり落ちたスマートフォン。
 来ては駄目だ。伝えなければ。
 力を、振り絞る。手を伸ばす。
 ――届かなかった。


「もしかして、こいつは……」
 南天庵・琥珀(ナイトタイムドリーマー・f36445)が、考え込むように唸っている。
 覚えがあるのかと問えば、確証はないと彼は緩く頭を振った。
「標的を狙う黒幕――ナンバード化オブリビオンの正体は、予知でははっきりしなかったんだ。けど、被害者の反応からして、多分昔に、銀誓館学園が戦って倒したことのある敵が、蘇って現れたんじゃないかな」
 尤も、銀誓館学園に残されているかつての戦いの記録は余りに膨大だ。そこから的確にその正体を当てることなど、不可能に等しい。
 学園関係者ならばヒットする可能性は皆無ではないかも知れないが、それでも情報が少なすぎる。無理に調べようとしなくていいと、琥珀自身も難しい顔でそう告げた。
「ともあれ、また延命を狙うナンバード化オブリビオンが、能力者の命を狙う事件が起きる。皆には阻止を頼みたいんだ」
 ナンバード化オブリビオン――それは、強大な力を得る代わりに胸元に死へのカウントダウンを刻まれたオブリビオン。
 彼らは能力者を屠り、その命を喰らう。それが存えるための唯一の方法なのだから。
「狙われているのは立花・周太。俺は直接の面識はないけれど、先輩にあたる」
 つまり、銀誓館学園生だ。高等部に在籍していると言う。
 猟兵のことは知識として知っているが、自身は覚醒していない。ナイトメア適合者と星のエアライダーとしての能力を持ち、そのアビリティ――この世界の能力者たちの攻撃手段だ――を習得している。
 人となりは、明るく分け隔てなく優しい性格。好意のある相手に対しては時折、からかうような言動を取ることもあるが、相手が本気で嫌がるようなことはしない。比較的顔立ちが整っていることもあり、人好きのする少年だ。
 能力者としても実力は高い方なのだが、オブリビオンには関係ない。たとえその世界で最強と謳われていようと、猟兵に覚醒していない限りは敵にすらならないのだから。
「だから、黒幕とその配下を倒すのは、皆に任せたい」
 幸い、配下の姿は判別できたと琥珀は言う。
 土を司る者『ヴェイグ』――主に忠実に従う彼らは、暗殺と土属性の精霊術に長ける。
 まずは彼らが主の障害となり得る市民たちを排除しに現れるため、これを殲滅。頃合いを見て現れる黒幕を、周太を守りながら討ち果たすことになる。
「皆にしか、できない。よろしく頼むよ」
 琥珀はそう締め括り、掌の中の雪兎が煌めきながら跳ねた。


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあと申します。
 その後の話はどうしてもお届けしたかったもので。
 お付き合いいただけますと幸いです。

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:日常『今日は観光日和』
 第2章:集団戦『土を司る者『ヴェイグ』』
 第3章:ボス戦『???』

 第1章では、さりげなく一般の方々を公園から遠ざけつつ、周太と接触を図っていただきます。
 周太は猟兵に実際に会うのは初めてですが、存在は知識として知ってはいるので、事情は包み隠さず話してしまって問題ありません。
 人払いを終えたら、オブリビオンが来るまでは自由に過ごしていただいて構いません。薔薇園や港の眺望の他には軽食も取れるビアガーデン(未成年はソフトドリンクですが)もありますし、神社仏閣の代わりに見学のできる昔の洋館の遺構があるようです。

 第2章では、ナンバード化オブリビオンの障害を排除すべく現れる『土を司る者『ヴェイグ』』の集団と戦っていただきます。
 基本的には周太を優先的に狙いますが、主に捧げる必要があるためトドメを刺そうとはしません。そこに付け入る隙はあるでしょう。
 また、前章で人払いをしっかり行っていただけた場合、この戦闘が少し有利に働きます。

 第3章では、遂に姿を現したナンバード化オブリビオンとの決戦となります。
 が、現時点でその正体は判明しておらず、詳細な情報は開示されておりません。
 かつて銀誓館学園が戦った相手のひとりであり、それも苦戦を強いられたことのある相手のようですが……?

 余談ですが、第3章の結果が確定した時点で現場に『八束・夏蓮』と言う少女が現れます(初出『恋する蜘蛛女』)。
 決着後の到着のため、彼女に対し何かしなければ不利になるようなことは一切ありません。が、決戦に敗北していた場合は彼女に悲惨な光景を見せることになってしまうでしょう。

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 戦闘パートの地形などの追加情報も、断章での描写という形で公開させていただきます。
 断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『今日は観光日和』

POW   :    ご当地グルメを満喫する

SPD   :    街中や自然の中を散策する

WIZ   :    神社仏閣を巡ってみる

イラスト:乙川

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 休日の公園は、人で賑わっていた。
 混み合っていると言うほどではない。だが、晴れやかな空と見事な薔薇は、近隣住民や観光客を引き寄せるには充分だった。
 何もしなければ、ここは程なくして、地獄と化すだろう。
 逆に迅速かつ的確に人々を遠ざけられれば、敵の出現を遅らせることができる。また、今まさにここに向かっているはずの周太とも接触できるはずだ。
 風景画を描くのであろう周太に付き合ってもいいし、ビアガーデンや洋館の日陰に連れ出してもいい。どうにか狙われていると言う原状を伝えられれば、彼も能力者だ。警戒してくれるだろう。
 オブリビオンが現れる前に、できることはやらなければ。周太だけではない、平和な日常を生きる人々を救うためにも。
御園・桜花
「…寝かせてテロルを標榜して救急車を沢山呼ぶ…余計なパニックが起きそうです。此の世界の歌を知りませんけれど、歌の方が良いでしょうか」

何をするか悩み、結局クレープ屋台と歌(UC「魂の歌劇」)同時展開
公園入口もしくは併設駐車場にケータリングカー停めマザーグースやクレープ販促用にもじったマザーグースの替え歌を歌いながらクレープ販売

「公園入口や駐車場側なら、有事の際に其の儘皆さんが公園の外に逃げ易いと思うのです。マイクも使用してそこそこ遠く迄聞こえるようにしていますし。ただ、購入後は結局歌が聞こえる範囲の散策に戻られてしまうので、誘導が成功したとも言い難いです…」
口と手を必死に動かしお客を捌く




(「……寝かせてテロルを標榜して救急車を沢山呼ぶ……」)
 嫋やかで儚げな風貌とは裏腹に、胸中物騒なことを思案する御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)。
(「……余計なパニックが起きそうです。此の世界の歌を知りませんけれど、歌の方が良いでしょうか」)
 流石に思い留まったようだ。
 しかし、だとするとどう動くべきか。桜花は考えた末に、精神に作用するユーベルコードと、観光地にありそうな屋台の客引きで人々を誘導する方針で動くことにした。
「魂の歌劇を、此処に……」
 軽やかに歌い上げながら、揃いの桜色で彩られたケータリングカーを公園併設の駐車場に停めれば、そこはパーラーへと早変わり。
 今回は、クレープ屋台として展開。日差しの強い夏だから、飲み物も一緒に。販促にと英国の古き良き童謡――マザーグースやその替歌を歌いながら焼き始めれば、香りと歌に惹かれた人々が列を成した。
(「公園入口や駐車場側なら、有事の際に其の儘皆さんが公園の外に逃げ易いと思うのです。マイクも使用してそこそこ遠く迄聞こえるようにしていますし」)
 思った通り、既に坂の上まで登り切っている人々も興味を示して下りてくるのが見える。
 後は極力、坂の上に戻らず付近に留まっていてくれればベストなのだが。
(「ただ、購入後は結局歌が聞こえる範囲の散策に戻られてしまうので、誘導が成功したとも言い難いです……」)
 自分自身のユーベルコードのことだ。効果が及ぶ範囲は限られていること、桜花自身も理解はしていた。
 それでも、かなりの人数の足を屋台へと運ばせることができたのは確か。後のことは、他の猟兵を信じ、任せることにしよう。
 だが、だからと言って決して手を抜くことはない。桜花は、桜花自身にできることを、最後までやり遂げようと決めた。
「お人好しサイモン、クレープ売りと出会った……♪ おひとつ、如何でしょうか」
 できるだけ長く、多く、この場に人を寄せて、留める。
 パーラーメイドたるもの、接客販売は専売特許と言うものだ。
 明るく笑顔で、声を張って。桜花は必死に口と手を動かし、行列に対応するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

酒井森・興和
夏蓮さんの。
縁は異なもの…とはよく言った

現場人払いは銀誓館でも常套手段
最寄り駅に偽の張り紙
件の公園案内に
『本日は園調整・清掃の為休園。ご了承下さい』
周太が勘付けるように(協力:銀誓館)と記
関係者を装い駅員さん【言いくるめ】客に休園らしいと話を振って貰う

>来園中の人
急なのですが本日調整が必要で、と退園促し
【陽動、薬品調合】無害だが変な匂いを散布

あと
ろばのコニーを歩かせ「移動動物園から逃げたみたいで。お客様、退避頂けますか」と咄嗟の一撃、いや嘘も使う

スケッチブック持った少年に声掛け
銀誓館の周太さんだね
僕は元銀誓館の鋏角衆、酒井森というよ
君が殺される予知を阻止しに来た
…突拍子だけど信じてくれるかな?


山崎・圭一
行って来い!ガブリエル!(※ゴキ型白燐蟲)
人払い効果はあるだろうが…
俺がたーいせつに育てた白燐蟲達が
キャーキャー喚かれるのはやっぱ納得いかねーなァ

(絵を描いている少年を捜す)あぁ、あいつか
かーもーめ〜〜のすぅいへーいさん♪って知ってる?童謡だけど
と気楽に話しかけて名乗るわ
んで自分が銀誓館学園の卒業生で元能力者現猟兵なのも。
まずは会話で打ち解けて、事情を話すのは後に回そう

この辺野良猫とよくエンカウントすンだよなァ
此処。いつも来ンの?夜景がねー、結構綺麗よ?

てな感じでのんびりと

で、本題に入らしてもらう
ナンバード。分かるよな?お前、狙われてンだぜ
病的に美しくて異様な風体の男らしいが…覚えあるか?




「行って来い! ガブリエル!」
「キャー!!」
「うわあー!?」
 山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)が放ったのは、白燐蟲である。
 だが、何も一般人に見境なく攻撃するとか、そんな野蛮なことはしない。圭一の自慢の可愛い子たちなのだ。ただ、見た目が、あの、コードネームGに酷似した姿をしているのである。
(「人払い効果はあるだろうが……俺がたーいせつに育てた白燐蟲達がキャーキャー喚かれるのはやっぱ納得いかねーなァ」)
 悲鳴を上げながら公園から離れていく群衆を眺めながら、圭一は溜息を着いたのだった。
 ――さて、所変わって圭一たちの尽力で人気のなくなった園内、その公園案内に何やら細工をする者が。
『本日は園調整・清掃の為休園。ご了承下さい』
 と書かれた張り紙が、案内の上から掲げられた。
 そして、下の方にはさり気なく、しかししっかりと目に着くように『協力:銀誓館』の付記がある。
(「現場人払いは銀誓館でも常套手段だからね」)
 学園のOBである酒井森・興和(朱纏・f37018)の手際もよいものである。
 勿論、事前に最寄りの駅員も関係者を装い言いくるめ――話をつけて、これから公園に向かうであろう人々に休園らしいと話を振って貰う、根回しも抜かりなく。
(「しかし、夏蓮さんの。縁は異なもの……とはよく言った」)
 立花・周太――その名前に、興和は聞き覚えがあった。
 先日、異世界から来訪した悪魔の魔の手から救出した少女。彼女が密かに想う相手。
 そして興和にとっては学園の後輩でもある。張り紙の付記も、周太が状況を少しでも察してくれることを期待してのことだった。
「さあ、もう少しだ。あっ、済みません」
 今度は後方に声を掛ける興和。そこには、何故か悠々と歩いているロバ――興和と共に山で暮らしているコニーだ――と、それを遠巻きに眺める観光客の姿。
「移動動物園から逃げたみたいで。お客様、退避頂けますか」
 咄嗟の一撃、ならぬ咄嗟の嘘。能力者時代も何かと行使したスキルである。
 コニーを追うような動きを見せつつ、密かに調合していた刺激臭のする無害な薬品を散布し、既に来援中の人々にも退園をと声をかけて回るのだった。


「……あれ、ここにゴーストが出るなんて話、あったかな」
 周太は張り紙の前で立ち往生していた。
 興和の狙い通り、銀誓館の名前に反応している。
(「あぁ、あいつか」)
 園内が解放されていれば、その中で絵を描いている人物を当たるつもりだったが、興和から園内を閉鎖したと聞いて、案内板前で画材などを持っている人物がいないか、注視していた圭一。
 スケッチブックと、恐らく画材が入っているのであろう鞄を下げた少年に当たりをつける。
「かーもーめ〜のすぅいへーいさん♪」
「え?」
「って知ってる? 童謡だけど」
 からりと笑って、声を掛ける。
 それから、自分の名前と、銀誓館学園の卒業生であること、そして元能力者であり、現在は猟兵であることを、話した。
「この辺野良猫とよくエンカウントすンだよなァ」
「ああ、僕も見かけたことありますね」
「だろ? 此処。いつも来ンの? 夜景がねー、結構綺麗よ?」
 昼もいいけど、夜の港の煌めきも。
 絵を描くには向かないけれど、きっとインスピレーションの刺激になるんじゃないの、なんて。
 そうですね、なんて人好きのする笑顔を向ける周太は、素直に圭一との対話に応じている。物分かりは悪くなさそうだ。
「じゃあ、本題だ」
 この分なら、打ち明けても問題ないだろうと。
「ナンバード。分かるよな?お前、狙われてンだぜ」
「……ナンバード……? ……まさか、蘇ったと?」
「その通り。話が早くて助かるよ」
 頃合いを見て、興和も姿を現す。
「銀誓館の周太さんだね。僕は元銀誓館の鋏角衆、酒井森というよ」
「……酒井森さん、も……猟兵と言うことですか」
「そう。そして、君が殺される予知を阻止しに来た。……突拍子だけど信じてくれるかな?」
 と、尋ねるものの。
 これまでの様子から、周太が二人の話を頭ごなしに否定することはないだろう。興和は微苦笑を浮かべた。
「なんて、聞くのは野暮だったかな」
「いえ。話には聞いていましたし、疑っているわけではないですが、具体的にはどんな予知だったのかお聞きしても?」
 猟兵二人が揃えて自分が殺されると口にしたのだ、周太は改めて自身に迫る聞きを確信したのだろう。
「君がこの園内でオブリビオンの群れに囲まれ、その主であるナンバード化オブリビオンに殺される。そんな予知をグリモア猟兵……運命予報士のような存在が、受け取った。ただ、配下は兎も角、主の正体がはっきりしていなくてね」
「そーそー、俺らも対策立てかねてンの。過去に俺らの世代が戦って、記録にも残ってる相手。で、病的に美しくて異様な風体の男らしいが……覚えあるか?」
 圭一にそう問われれば、周太は少し考え込んで。
「あくまで、学園が戦った敵としての来訪者と言う前提でのイメージですけど、その条件で思い当たるのは……」
 過去の記録を思い返す。
 そして周太の頭に浮かんだ、可能性。

「――貴種ヴァンパイア、でしょうか」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
ナンバード、トビアス……ドクターオロチのいない今に現れることもないと思ってたが、困ったもんだぜ
デート前の少年を邪魔するようで申し訳ないが、俺以上のお邪魔虫が来るんじゃあな

【行動】
銀誓館学園OBであり、猟兵でもあることを告げて堂々と接触

「お休み中にすまねえな、少年。ナンバード化オブリビオンが来るって言えば、状況理解できるかい?」
「ま、茶位は奢るから勘弁してくれ」

『かつての戦い』にも参加したこと等話して安心させる
「少年と違って優等生って訳でもなかったけど、アドバイスに乗れることがあれば乗るぜ?」
勉強でも能力者としての生き方でも、恋愛絡みでも

空いた時間には世間話
「そう言えば、そろそろ学園祭の時期だっけ? 何かやったりするのか?」
「学園祭だったら、他校の友達とか気になる子呼んだりするのもアリだよな」
俺らの代はそういうこと気軽にできる情勢でもなかったしな

人払いに「天候操作」で豪雨を降らせる
「何が来るかは知らねえが、本来もう少しはマシな時代に出来るはずだったんだ。そう易々とやらせはしねえよ」




(「ナンバード、トビアス……ドクターオロチのいない今に現れることもないと思ってたが、困ったもんだぜ」)
 暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)はまさに苦虫を噛み潰したような思いで公園へと向かっていた。
 異形、そしてその手先である抗体ゴーストが一種であるナンバード。奴らには能力者たちも長く辛酸を舐めさせられてきた。その時代を経験している魎夜は、その復活に再び、この世界が危機に曝されていることを思い知らざるを得ない。
 ともあれ、今は目の前に繰り広げられかけている惨劇を、止めなければ。
(「デート前の少年を邪魔するようで申し訳ないが、俺以上のお邪魔虫が来るんじゃあな」)
 幸い、目的の少年は既に他の猟兵たちと接触していたこともあり、すぐに見つけることができた。彼らは『休園』の張り紙が掲げられたはずの園内のベンチに腰掛けて、言葉を交わしている様子だ。
「お休み中にすまねえな、少年」
「貴方は……?」
 銀誓館学園OBであり、猟兵でもあることを包み隠さず告げると、少年――周太は魎夜も先に接触した猟兵たちと同じ目的でここに来たのだと、理解したようだった。
「ナンバード化オブリビオンが来るって言えば、状況理解できるかい?」
「はい。蘇った……と言うことですよね」
「ああ。だから事が済むまで、俺達の傍を離れないで欲しい」
「解りました。猟兵の方が動いていると言うことは、僕ら能力者ではもう手に負えない事態と言うことなんですね」
 周太は頷くと、自分の掌に視線を落とした。表情に起伏は余り見られなかったが、能力者として彼なりに悔しい思いがあるのかも知れない。
「ま、茶位は奢るから勘弁してくれ」
 敢えて、魎夜は気楽に振る舞って見せた。周太が必要以上に背負い込まないように。
 周太が再び頷いたのを見て、魎夜たちは場所を変えることにした。


 ビアガーデンにはまだ休園の張り紙を見ていないのか、それなりに客が出入りしていた。
 とは言え、ここは現場になる予定の場所からは離れているから被害が出ることはないだろう。ただ、復活した世界結界があるとは言え、万一のことがあってはいけないので、そこは念入りに園内で人払いをしていた仲間が後で手を回してくれるだろう。
 敵が現れるまで、まだ少し時間がある。
「少年と違って優等生って訳でもなかったけど、アドバイスに乗れることがあれば乗るぜ?」
 『かつての戦い』にも参加した、大先輩として。
 勉強でも能力者としての生き方でも、恋愛絡みでも何でも聞くと笑えば、強張っていた周太の表情も和らぐ。
「そう言えば、そろそろ学園祭の時期だっけ? 何かやったりするのか?」
「僕は……部活で展示と、結社で喫茶店ですね」
「水着は?」
「一応、賑やかしで。周りがやたら推薦するもんですから」
「ははは、一通りやる感じだな。そうだ、学園祭だったら、他校の友達とか気になる子呼んだりするのもアリだよな」
 先日助けた少女――夏蓮のことを、魎夜も思い出していた。
 休日に遊びに誘うくらいだ、周太からも少なからず彼女に好意はあるのだろう。
「俺らの代はそういうこと気軽にできる情勢でもなかったしな」
「大変だったと聞きました」
「これから、その再現だ。何、一回は倒した相手だ。遅れは取らねえさ」
 さて、そろそろ時間だ。
 席を立ち、会計を済ませて外に出ると、ぽつりぽつり、雨が降っている。
「何が来るかは知らねえが、本来もう少しはマシな時代に出来るはずだったんだ。そう易々とやらせはしねえよ」
 やがて、豪雨になる。人を寄せつけないように。
 こんな悪天候の中、やってくるのは余程の痴れ者か――人ならざる者だけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『土を司る者『ヴェイグ』』

POW   :    死神の定め
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【黒く実態のない糸】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。
SPD   :    餓えた土のゴースト達
【漆黒の円月輪】を放ち、命中した敵を【不可視で無数の触手】に包み継続ダメージを与える。自身が【瀕死に近い程の負傷】していると威力アップ。
WIZ   :    土を司るモノ達
戦場全体に【砂塵(サンドストーム)】を発生させる。レベル分後まで、敵は【土の眷属(サンドワーム)達】の攻撃を、味方は【土の精霊(サンドフェアリー)達】の回復を受け続ける。

イラスト:田口 マサチヨ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 敵が動き始める前に、猟兵たちは周太を連れて、公園へと舞い戻る。
 周太を連れて逃げられればよかったが、標的を失った敵が彼をおびき寄せるために、更なる凶行に走りでもしたら堪ったものではないからだ。
 果たして、敵は待っていたと言わんばかりに、薔薇を見渡せる園内にいた。執事然とした同じ顔の男が、恭しく出迎えるように、待ち構えている。
「ご機嫌よう。生憎の天気でございますね」
 その内のひとりが、降りしきる雨の中、慇懃に声をかけてくる。
 しかし、その背に確かに背負った円月輪がある限り、猟兵たちが警戒を解くことはない。
 向こうも、そのようなつもりは毛頭ないのだろう。躊躇いもなく、その柄部分へと手を掛けた。
「さて、立花・周太様。我らが主のため、その崇高なる志を絶やさぬため――そのお命、頂戴いたします」
 はいそうですかと、引き渡すわけには行かない。
 武器を取り、その企みを阻止するのだ!
御園・桜花
「分かりました、あの円月輪に当たらなければ問題ない、と言うことですね?」

UC「侵食・花霞」
稲妻のような速さで流れ行く花霞に姿を変え、敵の間をすり抜ける
物理攻撃無効で敵には電撃与え凄まじいスピードで何度も敵の間をすり抜けていくので逆に花霞がその場に滞留しているように見える

「此れでそこそこ敵は減らせたと思うのですけれど…如何でしょう」
UC後は制圧射撃で敵が立花に接敵しないよう牽制
敵の攻撃は第六感で躱す

「実は私、此の世界にあまり詳しくないのですけれど。彼等もUDCのように生贄を求めるのが普通なのです?其れとも特殊事例なのでしょうか?」
首を傾げる




「分かりました、あの円月輪に当たらなければ問題ない、と言うことですね?」
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)の葉桜色した眼差しは、敵の背で鈍い輝きを放つ円月輪を鋭く射抜いている。
 土の精霊を呼ぶ気配は、今のところない。ならば武器による物理攻撃に注意を払っておけばいい。そう、物理攻撃に。
「――骸の海から世界を引き入れる。幻朧桜の桜吹雪よ、過去を纏って此の地の物理法則を変じ、我が身に力を――」
 ふわり、淡色の桜が舞う。
 ひらり、桜花もその一部と成る。
 雨に墜ちる筈のそれは、しかし意になど介しておらず。吹き抜ける風に攫われるかのように、黒衣の男たちの元へと舞い来たる。
 ――刹那、男の一人がその胸を撃ち抜かれた。
「何……?」
 別の男が呟いた、その言葉の通り、何が起きたか解らない。
 今の桜花の姿はまさしく、流れ行く花霞。しかし、ただ悠長に舞い踊るだけの花ではない。
 花弁が正体と見抜き刃を振るったところで、桜花を捉えることは叶わない。何故ならそれは稲妻の――光にも等しき疾さで全てをすり抜ける、滞留する花霞の残像に過ぎないのだから。
 ならばと当初の目的通り、周太へと肉薄しようとした男の一人は、しかし足元を花弁の弾丸に射抜かれ阻まれた。そうこうしている内に、一人、また一人と花より弾ける雷によって斃れてゆく。
 ユーベルコードの恩恵で得た回避能力と、第六感をも組み合わせれば、敵の動きなど今の桜花にはその全てがお見通し。
 闇雲に攻撃する男たちを翻弄するように、花の形をした雷霆は土を司る者たちを次々土へと還す。そして、骸の海へと。
「此れでそこそこ敵は減らせたと思うのですけれど……如何でしょう」
 一度その姿を人のそれに戻し、周太の元へと降り立つ桜花。
 敵はまだ残ってはいるが、桜花のユーベルコードを警戒し始め、攻めの手が鈍ってきている。少しは護り易くなっただろうか。
「実は私、此の世界にあまり詳しくないのですけれど。彼等もUDCのように生贄を求めるのが普通なのです? 其れとも特殊事例なのでしょうか?」
「……ゆー……? ……まあ、ナンバードが特殊な事例なのは確かですね」
「ふむ……」
 いつかは全ての世界に、影朧のような転生を――そう考える桜花としては、これを機にこの世界の知識も仕入れていこうか、と考え始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山崎・圭一
危ねーなァ。その背負ってるの。取り上げねーとなァ
【呪殺弾】を真上に振り上げて空中で破裂
降り注がせるは蟲型ゴースト共。円月輪に憑依するよう指示
なにせ自分達からご丁寧に放ってくれるんだ
周太を狙ってるのはもう丸分かり

上手いことUCで円月輪を蟲化出来たら、もうこいつら俺の“蟲”な
俺、扱い方分かんね―から
【蟲使い】らしく使役さしてもらうわ。数匹は周太の護衛やらしとく
さぁ…舞って来い!チャクラ虫!
切れ味はこのエセ執事共が保証するってよ

極めつけにそーねぇ…港の船…蟲化させっか?
これが本当の船虫にしてフナムシってね
でけーけど俺の蟲使いの腕前見してやンよ
陸上で船が暴れるなんて滅多にお目にかかれないぜ?




 土を司る者。
 対峙するその姿で一際目を引くのは、洗練された風体とは裏腹に、背負った無骨な円月輪。
「危ねーなァ。その背負ってるの」
 相対する山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)も、その獲物を最大限に警戒する。隠そうともしないのは、その扱いに対する自信の現れだろう。
 で、あれば、放置する謂れはなく。
「取り上げねーとなァ」
 呟くと同時、その円月輪が一斉に放たれる。
 圭一は、それに対して呪いを内包する白の弾丸を――真上へと、振り上げた。
「山崎さん?」
「まあ、見てなって」
 幻夢のバリアを猟兵たちへと張りながらも、一見すると明後日の方向を狙った圭一に首を傾げる周太。
 だが、言われた通り見守れば、弾丸は遥か上空で破裂し、蟲型のゴーストたちが戦場へと降り注ぐ。
 標的は、封じるべき敵の武器。その機動の殆どは周太に向けられるものと解っているから、捕捉は容易い。
 一部、蟲たちを仕留めようと円月輪を投擲してくる者もいたが、逆に好都合。
「もうこいつら俺の『蟲』な」
「な……」
 武器を奪われ、呆然とする男たち。
 ここからは、圭一の独壇場だ!
「つっても俺、扱い方分かんね―から。『蟲使い』らしく使役さしてもらうわ」
 円月輪であった筈のそれは、薄く軽く機動に優れた翅、細かな毛に覆われた細い脚、そして鋭敏な触覚と光を受けてきらり輝く一つ目を得て、巨大な円形の蟲と化している!
「さぁ……舞って来い! チャクラ虫! 切れ味はこのエセ執事共が保証するってよ!」
 数匹を周太の護衛に残しつつ、我が物とした円月輪――もといチャクラ虫をかつての主の元へと差し向ける。
 咄嗟に土壁を作り防御する者もいるが、基本的に丸腰の相手。猛攻を完全に防ぎ切ることは不可能に等く、戦場は混乱を極めていた。
「極めつけにそーねぇ……港の船……蟲化させっか?」
 再び呪殺弾を、遠く船へと撃ち込めば、船が重々しくもふわりと浮かび、一直線に飛び込んでくる!
「これが本当の船虫にしてフナムシってね。でけーけど俺の蟲使いの腕前見してやンよ」
 重たく、制御は容易ではない。だが、構わない。
 その巨体で薙ぎ倒すだけで、多くを蹂躙できるのだから。
 周太と花を傷つけないようにだけ、気を配ればいい。
「陸上で船が暴れるなんて、滅多にお目にかかれないぜ?」
 鯨の如く転げ回る船が、荒れ狂う!

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
敵は吸血鬼、だったな?
ちょっと最悪の想定もしつつ、ひとまずは子分からやらせていただきますか

【戦闘】
「礼儀正しいのはありがたいが、立派な羊羹とか手土産に持ってくるレベルの頼み事じゃねえか?」
「行くぜ、少年! イグニッション!」

暗殺と土属性の精霊術に長けるってことだが、この群れに紛れて暗殺ってのは素直に優秀な奴だぜ
主人を守る力もあるようだし、早々に行くか

UCで円月輪の動きを「見切り」、攻撃パターンを周太に伝える
「斬撃波」「切断」「なぎ払い」でゴーレムを倒し、「索敵」「偵察」は欠かさない

「(周太に)右から来るパターンだ、気をつけろ、少年!」
「(ヴェイグに)ようやく見つけたぜ。これで終いだ!」




「礼儀正しいのはありがたいが、立派な羊羹とか手土産に持ってくるレベルの頼み事じゃねえか?」
 飄々と軽口で返す暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)だが、手土産があっても渡すつもりは毛頭ない。
 抜かりなく敵の様子を観察しつつ、思案する。
(「敵は吸血鬼、だったな?」)
 周太が、黒幕の正体をそう推察した。まだ断定はできないが、最悪のパターンを想定しつつ動くべきかと、気を引き締めて。
 懐から取り出すイグニッションカードは、魎夜が猟兵でありながらも、能力者でもある証。
「行くぜ、少年! イグニッション!」
「はい!」
 リミッター、解除。
 瞬時に武装し、日常から神秘の世界へと。
(「暗殺と土属性の精霊術に長けるってことだが、この群れに紛れて暗殺ってのは素直に優秀な奴だぜ。主人を守る力もあるようだし……」)
 何より、配下と言う立場でありながら、本人もなかなかの手練と見た。そんな彼らを従える主も、一筋縄では行かない相手だろう。
 まずは露払い。とは言え、長期戦は得策ではなさそうだ。なるべく迅速に片を着けなければ。
「ちと待ってな」
 周太を庇いつつ、敵の初手を誘う。ならば望み通りとばかりに、黒を纏った円月輪が飛来する。
 それをまずは己の動体視力のみで見切り、弾き返す。そう、敵の技を己の目で視認することこそ、魎夜の狙い。
「知らねえのか? 銀誓館の能力者に一度見せた技は通じねえってことを!」
 能力者としての、戦いの経験が。
 嵐をもたらす者と呼ばれた先達の、確かな記憶が。
 魎夜に、この状況を打開する力を与えてくれる!
「右から来るパターンだ、気をつけろ、少年!」
 声を張り上げ、周太に注意を促す。同時に魎夜は同じ顔の敵の内、一人の懐へと肉薄した。遮る土の偶も紅と蒼の一対の刀剣で斬り裂いて、生まれた衝撃波で、周囲に固まる一団ごと薙ぎ払う。
 そうして周太に回避の指示を出しつつ、敵群の防御を打ち破って、増援や奇襲にも即座に対処できるよう、常に神経を尖らせながら戦場を制圧すれば。
 密かに周太を捕らえようとする敵の気配も捉えた。瞬時に地を蹴り飛ぶように後退、周太の背後に迫る影へと刃を振るう!
「ようやく見つけたぜ。これで終いだ!」
 防御を固める隙も与えず、一刀の元に斬り伏せる。
 何人たりとも手出しはさせない。その気魄で、敵の接近を許さない!

大成功 🔵​🔵​🔵​

酒井森・興和
…貴方達は主に忠実らしいな
人の子の命ひとつ、なにかの荷の様に言ってくれるけどそんなに軽いものでは無いねえ
この子は連れて行かせない
周太は自分が負傷しても攻撃を【受け流し、かばう】

>敵UC
【集中力と第六感】で円月輪を見定め躱すより飛斬帽を【カウンター、投擲】し迎撃
被弾時の触手ダメージは【落ち着き】で意識外へやって耐える
…が、やられたら報復する気

傷が深いほど威力が増すなら反撃時に一気に仕留める/瀕死敵の数を減らそう
三砂で機動力を奪う為足を狙い数体まとめて【怪力・重量攻撃でなぎ払い、二回攻撃として追撃】にUCを撃つ
敵の動きが解ってきたら掃討に徹しよう
不意の攻撃には倒れた【敵を盾にし、咄嗟の一撃】で対応




「……貴方達は主に忠実らしいな」
 酒井森・興和(朱纏・f37018)の諦観のような短い溜息は、雨音に掻き消されて消えた。
「人の子の命ひとつ、なにかの荷の様に言ってくれるけど……そんなに軽いものでは無いねえ」
 そんな風に消費されていい命なんてない。
 そんな風に搾取されていい人生なんてない。
「この子は連れて行かせない」
 何処にも。
 問答無用とばかりに差し向けられる漆黒の輪を、桔梗色の飾りが揺れる飛斬帽――丹霞で受け流し、庇う。たとえ武器を振るう腕が間に合わなくなっても、己の身を呈してでも周太のことは護る、その覚悟が興和にはある。
 集中力と第六感を研ぎ澄ませ、敵の攻撃を回避することは興和にとってもそう難しくない。だが、今回は護るための戦いでもあるゆえに、敢えてカウンターによる反撃を狙う。
(「もしも被弾したとしても、心を落ちつければ不快な攻撃も意識の外にやれるだろうし。……まあ、後で報復はするけれど」)
 だから恐れず、進み出る。
 ひたすら、飛び交う円月輪へと丹霞を投擲、纏めて弾き返す。けれどまだ、追撃はしない。何故なら。
(「傷が深いほど威力が増すなら、反撃の時を待って一気に仕留めようか」)
 敵全体を、満遍なく弱らせる。それが狙いだ。
 負傷に応じて切れ味や土精の加護を増す刃に、その恩恵を極力与えないために。そして、頃合いを見計らって。
「八相、烈火――」
 重量を乗せた土蜘蛛の戟――三砂を、全身全霊の力を込めて敵勢の足元目掛けて薙ぎ払う。機動力を奪い、逃げ場をなくした一団へと、更に穂先を撃ち下ろし追撃。
 生じた衝撃は、敵のみを灼く高熱の炎となり戦場を奔り抜ける。黒で覆われた脚が燃え上がり、その視界と呼吸を奪う。
「――機は熟したかな。掃討を」
 死角から反撃を試みる敵の一撃を、倒れたままの同じ顔を盾にすることで防ぎつつ。
 息吐く暇のない三砂の、流れるようでいて力強い乱舞がまた、衝撃を生み、敵陣を炎の海で包む。
 だが、こんな熱すら奴らには生温い。
(「彼は、孤独に苛まれていた同胞の、希望だ。そして何より、これからも未来を生きていくべき一人の若者の、命だ」)
 過去を存えさせるための、糧などではない。
 それを履き違えた無粋者たちは、在るべき世界の外へと追い返す!

大成功 🔵​🔵​🔵​

剣未・エト
「おおっと、少し遅刻してしまったかな?」
公園の高い所に昇って制服姿でポーズ
「やぁ、初めまして先輩。僕の名は剣未エト、ゴーストさ」
チャリチャリと体から生えた鎖を尻尾のように動かして周太へと挨拶をする姿は、一見すると隙だらけ
敵の実体無い糸が襲い掛かるのを避けられそうもないが、肩のミニ視肉のくーちゃんが飛び出して代わりに全て受ける(作戦)
これで敵の命とくーちゃんが繋がってしまった、が、彼女は気にする様子も無くブチブチと体を千切って糸から逃れる、そう視肉とは尽きない無限の肉塊、一瞬で彼女の質量は戻る
その間にエトは腰のポーチから小瓶を取り出して詠唱銀を撒きUC発動カウンターで範囲内の敵を全て貫く




 雨は徐々に止みつつあり、雲間から微かに光が差す。
 戦いは既に始まっている。その戦場を、隣接する展望台の屋根の頂点から見下ろす、中性的な王子様然とした少女がいる。
「おおっと、少し遅刻してしまったかな?」
「……何者です?」
 だが、得てして主役とは遅れて登場するもの。此度の主役は、この剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)が見事務めて魅せよう。
 そう、ポーズを決めてまずは舞台挨拶を。
「やぁ、初めまして先輩。僕の名は剣未エト、ゴーストさ」
「ゴースト……マヨイガからの新世代かい?」
「ご明察。聡明な先輩には既にお気づきのことだったかな?」
 チャリチャリと音を鳴らして、その身体から生えた鎖を尻尾のように動かして会釈する姿は、一見すると隙だらけだ。
 乱入者には制裁を――そう言わんばかりに、敵勢から実体なき黒糸がエト目掛けて矢のように射かけられるが。
 ぴょんと飛び込む影ひとつ。エトより遥かに小さいその正体は、ミニ視肉のくーちゃんだ。
 強制的にエトへと結びつけられようとしていた偽りの絆を、その身で肩代わりするくーちゃん。エトは難を逃れたが、代わりにくーちゃんが敵と自らの命を繋ぐ運命の糸に絡め取られてしまった。
 しかし、くーちゃんは意にも介さず、そして躊躇いなくブチブチと音を立てて身を引き千切り、糸の呪縛から逃れることに成功した。
「聡明でないオブリビオン諸兄は忘れているだろうから、改めて説明しよう。視肉とは尽きない無限の肉塊なのさ」
 故に、再生も瞬時に。くーちゃんの質量が、刹那の内に元に戻る。
 その間、エトもただ立ち尽くしていたわけではない。腰のポーチからさっと取り出したのは、詠唱銀入りの小瓶。
 残り少なくなった敵勢へと、銀の雨を降らせるように、小瓶を一振り、詠唱銀をぱらりと撒いて。
「――あぁ! 空をご覧、その雨は彼等の身も心も刺し貫かんが如く激しい!」
 右手を天へと掲げ、左手を胸へ。
 そして再び、雨は降る。先刻までの温い水ではなく――冷たい刃の雨が!
「……!」
 ダガーの姿を取った詠唱兵器は、エトの言葉通りに一人残らず敵たちへと降り注ぎ、その身を幾度も、幾度も刺し貫いた。
 血に汚れた土を洗い、押し流すように。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『慈悲深きものクロード』

POW   :    何故、世界には苦しみや悲しみが存在するのか……
対象への質問と共に、【自身の体内】から【妖獣のアーマードタートルかマグネクワガタ】を召喚する。満足な答えを得るまで、妖獣のアーマードタートルかマグネクワガタは対象を【自身が使い潰されることで得た高い攻撃力】で攻撃する。
SPD   :    あなた方に、慈悲を与えましょう……死という名の
自身の【体内に蓄えられた地縛霊一体】を代償に、【使い潰される地縛霊の絶望】を籠めた一撃を放つ。自分にとって体内に蓄えられた地縛霊一体を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
WIZ   :    私は手にしたのです、原初の力を――
【体内のリリスを喰らい大きく回復しつつ黒炎】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【これを解除しマヒ】の状態異常を与える。

イラスト:あま井

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠石蕗・つなぎです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 雨が、止む。
 光が再び、降り注ぐ。
 動く者は、猟兵たちと周太しかいない――今は、まだ。
 ――カツリと、不意に硬質な靴音が響く。
 音の源を視線で辿れば、そこにいたのは確かにこの夏の陽射しの中には不釣り合いな、病的なまでの美しさと異様さを兼ね備えた黒衣の男。
 ――貴種ヴァンパイア。そして、恐らくは。
「……原初の、吸血鬼だ」
 周太が、静かに呟く。
 彼の者の名は、慈悲深きものクロード。
 その名に、聞き覚えのある者もいただろうか。
 目の前の男はかつて、原初の吸血鬼へと至るべく狂気の『ゲーム』を開催。当時の銀誓館学園の能力者たちすら退け、その企てを成就させた。
 体内に数多くのゴーストを蓄え自らの配下として使役する能力を得、また自身の能力そのものも大幅に強化され、その理念――と言う名の狂気――である『全ての生きとし生ける者の悲しみや苦しみを、死によって解放する』と言う目的のために大きく前進してしまった。
 しかし、続く日本制圧を目論む吸血鬼艦隊の侵攻を阻止した能力者たち。そこにはこのクロードもおり、能力者たちはこれを討伐。雪辱を果たした――と、記録には残っている。
 なお、原初の吸血鬼となった貴種ヴァンパイアは程度の差はあれ日光を嫌うようになるはずなのだが――今、この太陽の下に現れたのはオブリビオン化したことで克服した故か、はたまた黒衣の下に刻まれているのであろう、自身の死へのカウントダウンに対する焦燥故か。
「見つけましたよ。少々、邪魔が入ったようですが」
 ぞっとするほど端正な顔立ちからは、感情の起伏の薄さを容易に想像させる。が、この時クロードの眉は、僅かながらも顰められているように、見える。
 ――やはり、焦っている?
 だとすれば、その焦燥に付け込むことができれば、戦況を有利に運ぶことが出来るかも知れない。だが、周太は猟兵たちへと小声で告げた。
「奴は、か弱いと断じている存在……女性や子供を優先して狙う傾向があったそうです。それでも最優先は僕だと思いますけれども、僕ばかりを狙うことが非効率だと感じれば、該当する人に標的を変えて、攻撃が苛烈になるかも知れません。お互い、気をつけましょう」
 そうでなくとも、相手は原初の吸血鬼。
 油断は、できない。だとしても、今再び、奴に死を与えなければ、周太も、彼の先に待つ『か弱い』人々も、死と言う名の慈悲を与えられてしまうだろう。
「死により貴方は救済され、そしてその命は生命の救済への一助となる――素晴らしいことだと思いませんか」
「思いませんね。僕は今、生きてて楽しいので」
 頼れる、信の置ける猟兵たちと言う心強い味方を得て、周太ははっきりと言い放つ。
 クロードが、やれやれと頭を振った。
「ならば、仕方ありません」
 実力行使だと言わんばかりに、マントの裾が広がる。裏地の赤が曝されると同時、その先端が刃のように鋭利に尖る。
 その救済を――拒絶せよ、猟兵!
御園・桜花
「吸血鬼にも原初があるんですね。物語だと真祖とか言いますけど、其れと同じような感じでしょうか」
首傾げ
「銀誓館の討伐には詳しくなかったので。強敵だと言う事は伝わりました。では私も、最強の精霊を召喚します」
UC「召喚・不滅の精霊」使用
他の仲間や周辺に被害を出さないよう射線には注意する

UC後は高速・多重詠唱で破魔と浄化を付与し制圧射撃
敵の足止めしながら立花のカバーに入る
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
躱せないと判断した攻撃は盾受けし可能ならカウンターでシールドバッシュを狙う

「転生が難しいなら、骸の海へお還りなさい。何時か貴方が転生できるよう、私も強くなりますから」
鎮魂歌歌い送る
怪我人には其の後応急手当




 ――原初の吸血鬼。
 周太が零したその言葉に、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は小さく首を傾げた。
「吸血鬼にも原初があるんですね。物語だと真祖とか言いますけど、其れと同じような感じでしょうか」
 とは言え、原初とは『至る』ものなのか。初めからそう在るものではないのか。
 疑問は尽きない。が、確かなことは、ひとつある。
「銀誓館の討伐には詳しくなかったので。ですが強敵だと言う事は伝わりました」
 そう、強敵だ。
 周太や、この場に集った能力者兼猟兵たちの反応を見れば、それは火を見るよりも明らかだった。
「――では私も、最強の精霊を召喚します」
 全力を以て。
 その強さに、敬意すら払って。
「我が敵の命を捧げる、我が敵の存在を捧げる、原初の精霊であり不滅の精霊であり名なき畏怖である汝に希う――」
 原初に相対するに相応しき、原初を。
 神をも殺す、風の精霊を。

「彼なるものを、喰い尽くせ!」

 びょうと、四方から突き刺すような風が、慈悲深き者と謳われた男へ突き刺さる。真っ直ぐに、ただ男のみを射抜くように。
 並大抵のオブリビオンであれば、神風の威で瞬時に虚無へと転じているところだ。それを、浅くはないとは言え負傷と、足止めのみで済まされている辺り、やはり油断ならない相手だと桜花は再認識する。
「その華奢な身体で……これほどまでの力を行使するとは。その境地に至るまでに、苦しむことも多かったでしょう。楽におなりなさい」
「お断りいたします。私には成すべきこと……いえ。成し遂げたいと、希うことがあるのです」
 その為には、ここで『慈悲』を乞うわけにはいかない。元より、そのつもりもない。
 風の戒めを受けながらも、悲愴な断末魔を伴って放たれる怨念が、黒濁した気弾と成って桜花へと襲いかかる。
(「絶望した地縛霊……願わくば、転生の輪に乗せて差し上げたかった」)
 容易く風を突き抜け、迫り来る。だが、見切れない攻撃ではない。躱し、時には破魔の力を込めた銀盆で反射しつつ、幾重にも成る詠唱にて己の魔を祓う弾丸で、軽機関銃による制圧を試みる。
 やがて弾が尽きようかと言う頃――漸く、敵が地にその膝を着いた。
「転生が難しいなら、骸の海へお還りなさい。何時か貴方が転生できるよう、私も強くなりますから」
 その時にはどうか、鎮魂歌で送らずに済むように。

成功 🔵​🔵​🔴​

神塚・深雪(サポート)
※連携およびキャラを逸脱しないアドリブ歓迎
※お色気、公序良俗に反する行動、所謂R18やR18Gの系統はNG
※口調等はステシ参照ください

元能力者の猟兵。
通常依頼であれば、基本的にはお手伝い/サポート役に徹しますが、状況に応じて対応でも可。判断はお任せします。
サポート優先依頼の場合は、状況に応じます。

基本的には高いステータスのUCを状況に応じて使用します。
他の猟兵に迷惑をかけたり、脚を引っ張る、目的達成に反する行為はしません。
人道から外れたような行いには嫌悪感と怒りを強く示します。

基本的には、礼儀正しい丁寧な物腰。
出身の銀雨世界以外であれば興味津々な様子も見せます。




「原初の吸血鬼……」
 それがどういう存在であるのか、神塚・深雪(光紡ぐ麟姫・f35268)も嫌と言う程に理解していた。
 ヴァンパイアの業――と言う名の見えざる狂気――に駆られ、血を求め、血を流す、残虐極まる存在。
 蘇って、しまったと言うのか。それも、能力者では、太刀打ち出来ない|存在《オブリビオン》として。
(「……歯痒い。嘗ての私達も、長きに渡って苦しめられて来たと言うのに」)
 深雪自身は、能力者でありながら猟兵に覚醒した身だ。オブリビオンと戦い、倒す事だって出来る。だが、能力者としての後輩達は同じ土俵に上がる事すら、世界は許していないのかと思うと――。
(「せめて、護って見せます」)
 頭を振って、敵を見据える。
 後輩に、理不尽な死を迎えさせるわけにはいかない。
「何故、世界には苦しみや悲しみが存在するのか……考えた事はありますか」
 問いと共に、周太へと差し向けられるマグネクワガタ。
 一体だが、原初の吸血鬼としての、そしてオブリビオンとしての力でより強化された存在として、襲い来る。
 だが、深雪は臆さずその前へと立ちはだかった。
「通しはしません。赤珠光、瑠璃光、玻璃光――三光の力に懸けて!」
 清く透き通った、一見すると容易く折れそうな程に繊細な、結晶の刃。
 しかし深雪が掲げ敵の一撃を阻んだそれは、三光を纏った事により、金剛石に勝るとも劣らぬ硬度を以て、乱暴狼藉を許さない!
「彼は貴方を拒絶した。貴方に奪えるものなど何もない。還りなさい――骸の海へと」
 猟兵として、能力者として、この一線は、譲れない。

成功 🔵​🔵​🔴​

剣未・エト
「なるほど、あれが原初の吸血鬼…正直僕にとって気分の良い光景では無いね」
腹の中から支配された同族達が引きずり出される姿に眉をしかめると質問が投げかけられ
「それは、『生命』が存在するからさ」
事も無げに答える
この宇宙のかつての姿、死のみの停滞と静寂の世界にはそんなものは存在しなかった
死(ゴースト)だからこそ確信を持つよ

「けれど、それはそこまででしかない」
限りある時間の中で苦しみと悲しみを抱えながらも、生命はさざめき躍動し繋がり、世界を広げそれを上回る喜びを、光を得る

誰かを想う心も、笑いあう喜びも、全て生命(かれら)がもたらしてくれたものさ

だから死である僕が君の理念を否定する
苦しみと悲しみは生命がもたらしたが
生命であるからこそ乗り越えられるものなのだ
死で終わらせる、そんなものは解放ではない!

UC発動
劇場の特殊空間を展開
天井に下げられた銀の星が雨となって降り注ぎ手の中で剣型詠唱兵器となる
服装も制服姿から王子のような出で立ちに変わり
妖獣達を苦しませぬよう一太刀で斬り捨て敵に肉薄して一撃を入れる




 聞いたことはあった。
 しかし、相対するのは初めてだ。
「なるほど、あれが原初の吸血鬼……正直、僕にとって気分の良い光景では無いね」
 平素であれば、敵の前ですら爽やかな笑みを絶やさない剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)すらも、この時ばかりは思わずその柳眉を顰めていた。
 ずるり、と目の前の細く薄い腹から、引きずり出される支配された同族達。使い潰される為だけに囚われた、彼らをそうした相手に本能的な嫌悪さえ覚える。
「何故、世界には苦しみや悲しみが存在するのか……その理由を貴女は、どう考えているのです」
 慈悲深さを以て、吸血鬼は『女』『子供』である『エト』へと問いを投げ掛ける。
 隷属を強いられ、エトへと差し向けられる同族達。彼らの為にも――屈するわけには行かない。
 エトはその口を開き、告げる。

「それは、『生命』が存在するからさ」

 朗々と、迷わず答える。
 生命が齎した感情が、苦しみと悲しみの根源に他ならないと。
(「この宇宙のかつての姿、死のみの停滞と静寂の世界にはそんなものは存在しなかった。|死《ゴースト》だからこそ、確信を持つよ」)
 その言葉は、それだけを聞けば敵への賛同。生命の否定。
 だが、エトの意図はそこにはない。敵へと阿り攻めの手を緩めようなどと言う、自身を曲げるような言葉を、エトは決して紡がない!
「けれど、それはそこまででしかない」
 限りある時間の中で苦しみと悲しみを抱えながらも、生命はさざめき躍動し繋がり、世界を広げそれを上回る喜びを、光を得る。
 それもまた、エトが|死《ゴースト》であるからこそ、知る事が出来た生命の姿。
 生命を負の感情の種でしかないと決めつけた、哀れな男には辿り着けない答えだ。
「誰かを想う心も、笑いあう喜びも、全て|彼ら《生命》がもたらしてくれたものさ」
 それが、エトの、答えだ。
「……そうですか」
 諦めたように俯いて、吸血鬼は再び配下をエトへと向かわせようと、その腕で虚空を緩やかに薙いで。
 今度こそ、同族達がエトを死そのものへと還さんと迫る。だがエトは、恐れる事など何もないと言わんばかりに、堂々と、そこに在る。
「だから死である僕が君の理念を否定する。苦しみと悲しみは生命がもたらしたが、生命であるからこそ乗り越えられるものなのだ!」
 安易な死で不当に断ち切り、終わらせるなどと。
「そんなものは解放ではない!」
 はっきりと、答えた。
 瞬間、取り巻く景色ががらりと変わる。
 天に浮かぶかの如く下げられた銀の星が、絶え間なく瞬く豪奢な劇場、エトの舞台――特殊空間。
「遍く輝く星よ、聞け――僕は、未だ届かざるとも、牙無き者の剣たらんと欲する!」
 星が、エトの元へと降り注いだ。その手に集い、新たな姿を得て、生まれ変わる。
 銀の刀身。柄の上で回転する動力炉。
「――[起動]せよ、詠唱兵器!」
 剣の姿を取った、エトの詠唱兵器だ!
「救済を。――一刻も早く!」
 微かながらも焦燥に駆られた男の声音が、エトを死の世界へ還せと急くように響く。
 だが、銀星の剣を手にし、その使い手に相応しい、希望に満ち溢れた勇敢な王子の如く、秀麗にして華麗な出で立ちへと変じたエトは、同族達を一太刀の下に斬り捨てた。
(「せめて、苦しまないように」)
 そして、敵の瞳に動揺の色が滲んだその瞬間。
「ご退場願おうか!」
 エトの身体は躊躇いなく、悪しき吸血鬼の懐へと潜り込む。
 そして銀色を閃かせ、胴を裂く――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

山崎・圭一
半分死靈術士の俺を前に死を救済とほざくか
しょっぺぇギャグ
可愛い後輩苛められちゃ先輩黙ってられないよォ?

そっちがゴースト呼び出すなら上等よ
クロ助ちゃんよォ。蟲は好きか?
全力込めた【呪殺弾】ぶち込んで、奴の影ごと飲み込んじまえ

そしてオブリビオンとなって出て来い『ムカデ王』!
さーて。制御出来るかー?俺。いや、するさ
俺は【蟲使い】なんだから
虫は関節の1つ1つが生命体だ
体の何処かを破壊したって死にやしない
毒牙で本当の【マヒ攻撃】ての見してやれよ

ところで。死は救済だったか?
死は虚無だ。お前が思う程、死は優しくない
原初の対になる言葉が何かって
一度死んだ奴なら尚更よく知ってンじゃねーの?
見えてるだろ?その蟲の幻影が見せてくれるさ
お前という映画のエンドロールを

○撃破後
おい、周太。夏蓮来てるぞ
うん、大丈夫。何事も無かったぜ
白燐蟲に持たせてた俺の一眼レフ、今手元にあるけど
二仕事もしたんだ。報酬に写真ぐらい撮らせろよって
お熱〜いワンショット頼むぜー

そんじゃ俺はお暇しようか
あとは若いお二人でお幸せになー


暗都・魎夜
【心情】
やっぱ原初か
蘇ったのに時間制限付きってのは哀れなもんだが
土曜の公園にふらっとやってきていい奴じゃねえぞ

【戦闘】
原初のゲームと吸血鬼艦隊にいた奴だな
あの時、死んだ人たちのためにも生かしてやる道理は無ぇな

「(周太に)よく言った、この後はデートもあるもんな!」
「わりぃな、少年。2分間死ぬ気で耐えてくれ!」

「なぎ払い」で妖獣を牽制しつつ「武器受け」「かばう」「2人乗り」で周太を守りって戦闘

「さすがにきつかったぜ」
「苦しみや悲しみ?てめえみてぇな悪党がいるからだろ」
「俺は、てめえなんざより何倍も強い『伯爵』を倒すまで死ぬつもりねえよ」

UCが発動したらゴーストに妖獣の対処を任せてクロードを「切断」
原初の本質は軍勢
オブリビオンになろうが本体だけを狙うなら丸ごと相手にするより楽だろ?
「(誰何に)通りすがりの能力者さ、覚えておきな!」

【戦闘後】
夏蓮が来たら周太の手当てを依頼して立ち去る
「公園に現れた危険な敵の対処してたんだ、周太君の協力が無かったら本当にやばかった」
「(周太に)後は上手くやれよ?」


酒井森・興和
夏の真昼に夜の来訪者が御出ましかい
でも貴方がご執心の少年は死なせないよ
僕や貴方と違って彼は正真正銘、この世界の未来だからね

>周太
防衛と自己回復を促し
近い場合は被弾構わず【カウンターで受け流し】彼を【かばう】

>クロード
死が救済…なんて言いながら迫る刻限に焦るなんて
尊大で鷹揚な吸血鬼らしからぬ反応…
死の素晴らしさ、とやらは貴方自身が否定している様だね

挑発と逆鱗を【誘導弾】とし周太から目を外させ
敵UCへは「感情と他者を被虐する輩が存在する所為でしょう」とにべもない
使役される妖獣には【足払い、追撃で重量攻撃】使い捨ての末端同士と感情抜きで対峙しクロードへ接近
【早業と追跡、狩猟】活用し三砂の嘴で掻き寄せ手首でも首でも【怪力】で抑えUCで攻撃
反撃に備え相手を蹴って離脱+【咄嗟の一撃】逆手に隠した逆鱗で離れ際に刺し裂く
行動は負傷構わず攻撃寄り


夏蓮さんと無事に会わせてあげたいねえ
『あまり言葉のかけたさに…』の唄みたいな純情でそっけない娘さんだけど
周太さんならきっと彼女を人の世に溶け込ませてくれるだろう




「よーしよく言った、この後はデートもあるもんな!」
 暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)がぱしゃりと周太の背を軽く叩けば、彼は先程までの人好きのする笑みを浮かべた。
(「うん、割と好感触だね」)
 その様子に、少し離れたところ――と言っても、何かあればすぐに庇いに入れる距離ではある――から、場の動きを見守っていた酒井森・興和(朱纏・f37018)も、得心が行ったように頷いた。
 夏蓮は、密かにこの周太の事を好いていたから。
 だが、白昼堂々現れたお邪魔虫は。
「やっぱ原初か。蘇ったのに時間制限付きってのは哀れなもんだが、土曜の公園にふらっとやってきていい奴じゃねえぞ」
 打って変わって鋭い眼差しを向ける魎夜が、確かに呟いた。
 欧州の吸血鬼達が原初へと至る為の、悍しいゲーム。そして、勝者として原初の名を冠して君臨した連中が、徒党を組んで襲来した吸血鬼艦隊迎撃戦。
 そこに確かに、このクロードの名前があった事を、魎夜は思い出していた。
(「あの時、死んだ人たちのためにも生かしてやる道理は無ぇな」)
 同情の余地はない。ましてや、生前の凶行を繰り返そうとするのなら尚更。
「夏の真昼に夜の来訪者が御出ましかい。でも貴方がご執心の少年は死なせないよ」
 興和もまた、拒絶の意図を突きつける。
「僕や貴方と違って彼は正真正銘、この世界の未来だからね」
 猟兵もオブリビオンも、全ての世界の埒外となった存在だ。故郷は確かにこの世界だが、この身体はもうこの世界だけのものではない。
 だが、周太は――未来を担う、この世界の若き能力者達は、違う。この世界で生きて行く、希望の芽なのだ。
 必ず、護る。
 そして、芽を摘む無粋者へと、制裁を!


「今一度、考えてみるべきではありませんか。何故、世界には苦しみや悲しみが存在するのかを」
 他の猟兵達と何度も繰り返した問答に、とうとう山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)は、辟易するように大きく溜息を吐いた。
「半分死靈術士の俺を前に死を救済とほざくか、しょっぺぇギャグ」
 笑えない。ああ、全く以て、笑えない。
 死すれば全てが終わりなんて、そんな、夢物語。
 現に目の前の男すら、それを体現しているではないか。
「可愛い後輩苛められちゃ先輩黙ってられないよォ?」
 とどのつまり、そういう事だ。
「苦しみや悲しみ?てめえみてぇな悪党がいるからだろ」
「感情と他者を被虐する輩が存在する所為でしょう」
 魎夜と興和も、望む答えなどくれてやるつもりは毛頭ない。
 愚かな、と小さく呟くその声が、敵の一手のその合図。
 体内に飼うリリスを食らい、纏う黒炎は傷をも癒し、刃と化したマントの裾で周太を直接灼き殺さんと、瞬間移動とも錯覚しかねぬ程の速度で距離を詰めるも。
「させないよ」
 興和がその手に振るう三砂の柄で受け流し、返す石突で腹を狙う。咄嗟に飛び退いて回避されたが、周太から一旦引き離すことは出来た。
「ありがとうございます。……僕は、下手に手を出さないようにしますね」
「ああ。退屈かも知れねーけど、さくっと終わらせるからさ」
 賢明な判断だと圭一は思った。さて、信頼には答えねばなるまい。
 その間にも、敵の腹からはアーマードタートルが現れ、エネルギー砲と化した甲羅上部から放つ雷電の砲弾で周太に狙いを定めるが。
「わりぃな、少年。2分間死ぬ気で耐えてくれ!」
 すかさず、魎夜が飛び出し炎の魔剣と夜の刀剣を振るい、照準を合わさせない。守りは堅固だがその分、動きは亀だけあって遅い。
 周太を庇うような位置取りを心掛け、足元をを薙ぎ払えば砲塔を機能させる余裕は敵にはもうないようだった。
 だが、魎夜独りに全て任せるわけには行かない。
 相手もゴーストを喚ぶのであれば上等だと、圭一は不敵に笑った。
 目には目を。歯には歯を。ゴーストには、ゴーストを。
「逆に聞くぜクロ助ちゃんよォ。蟲は好きか?」
「何を……」
「色々うじゃうじゃ飼ってんだろ、嫌いだとは言わせねェよ」
 虫取り網にも似たそれは、蟲喚ぶ杖だ。
 それは網ではなかった。それはまるで巣だ。掲げられた輪から放たれる、巣食う蟲の弾丸。死に至る呪いを内包した蟲達の。
「全力ぶち込んでやるからよ、奴の影ごと飲み込んじまえ」
「!」
 呪いの魔弾が、長身の男一人など取るに足らぬと言わんばかりに広がる。
 回避に時間を割かれるクロードの刻限は、すぐそこまで迫っている筈だった。
「ひとつでも、多く。その生命に終わりと言う名の救済を――このようなところで、私が終わるわけにはいかないと言うのに、」
「死が救済……なんて言いながら迫る刻限に焦るなんて、尊大で鷹揚な吸血鬼らしからぬ反応……」
「!」
 確かに募る焦燥を見て取った興和が、即座に言葉を投げ掛ける。
 その感情を煽る言の葉の弾丸で、理性の水面を波立たせてゆく。
「死の素晴らしさ、とやらは貴方自身が否定している様だね」
「戯言を。遍く等しく死を齎さなければならぬ故と、何故理解出来ないのです」
 平静を装う反論の言葉。しかし、その瞳には隠し切れない憤怒の色が宿り。
 更に湧き出るアーマードタートルにも、興和は焦る事なく冷静に、その脚を掬って崩れた身体に、重量を乗せての刺突の一撃を。
(「使い捨ての末端同士、ならば感傷も必要はないさ」)
 淡々と、感情を抱く余地もなく、処してゆく。
 その時、まだ碧く明るい午前の空に、きらりと星が瞬いた。
「やっと来たか。流石にきつかったぜ」
 我が身と握る刀剣のみで敵をいなしてきた魎夜の口元に、笑みが浮かんだ。
 ――星では、なかった。その輝きは、まさに銀色の雨!
「降り注げ、詠唱銀。その神秘の力、存分に暴れさせろ!」
 現れたのは、100体を優に超える宇宙ゴーストの大群!
 如何に何度もお決まりの問答で、繰り返す度に増援を呼ぼうとも、この圧倒的な物量には敵うまい!
 敵の妖獣達を、宇宙ゴースト達が抑える。黒幕への道は遂に拓けた!
「さァて頃合いか、オブリビオンとなって出て来い――『ムカデ王』!」
「は……っ!?」
 圭一の喚び掛けに応じて躍り出、暴れ狂うはムカデ王。
 彼の妖狐最強と謳われた『七星将』が一人、其に従う強大な『尾』の一角。
(「さーて。制御出来るかー? 俺。……いや、するさ」)
 ――だって俺は『蟲使い』なんだから。
 その矜持に懸けて、最強の蟲すら御して見せる。
 関節の一つ一つを生命体とする蟲は、身体の一部を破壊したところで死にはしない。炎の刃で貫かれようと、それが燃え広がる類のものでないなら、損傷箇所を切り捨ててでも獲物へと縋るのだ。
「毒牙で本当の麻痺攻撃、ての見してやれよ」
「く……っ」
 威容に、気魄に、クロードはここに来て初めて、その容貌に明らかな驚愕の表情を乗せた。
 その隙を見逃さず、興和も静かに、けれど迅速に、動く。
「ムカデが嫌なら蜘蛛ならどうです」
「……! 離しなさい!」
 獲物を追跡し、狩るが如く、三砂の嘴が神がかった早業で、マントの端を捉えた。引き千切られる前に、その痩身を掻き寄せて押さえつける。
「鋏角衆、と呼ばれる我らの牙はダテではないよ」
「ぐあ……ッ!」
 興和の柔和な相貌からは想像もつかない程の強靭な牙で、折れそうな肩口に噛み付けば、とうとう苦悶の声が掠れて響く。
 だが、興和は次の瞬間、咄嗟に逆鱗を傷口へと刺し込みつつ、先に斬られていた腹を蹴ってその場を離れた。反撃を警戒しての事もあったが、大きな理由はまた別に。
「――ッ!!」
 クロードの背後から、ムカデ王がその両肩に牙を立てたのだ。うねる巨体は興和がいた場所をも薙ぎ払った。
 牙の追撃を幾重にも喰らい、更には流し込まれた麻痺毒で、その膝が地に沈む。
 そこに、影が差す。

「観念しな。俺は、てめえなんざより何倍も強い『伯爵』を倒すまで死ぬつもりねえよ」

 紅と蒼の刃。
 見下ろす夕焼けの色は、空ではなく、決意を秘めた魎夜の双眸。
「巫山戯た事を、……!?」
 体勢を整えようと、体内のリリスを喚ぶ原初の吸血鬼。
 しかし、応えるリリスはいなかった。
 クロードは、気付かない。沙羅の花と、宇宙の虚無で構成された蟲の幻影が、己の周囲を取り囲んでいる事に。
「ところで。死は救済だったか?」
 圭一の声。
 気付けば蟲は、吸血鬼の四肢へと群がり、食い尽くさんとその身体を登り始めている。
「死は虚無だ。お前が思う程、死は優しくない。原初の対になる言葉が何かって、一度死んだ奴なら尚更よく知ってンじゃねーの?」
「あ、」
 喰われる。矮小な蟲如きに。
 その悪夢が、拭えない。
「見えてるだろ?その蟲の幻影が見せてくれるさ。お前という映画のエンドロールを――」
 圭一の声は、もうクロードには聞こえなかった。
 そして、魎夜の声も。
「原初の本質は、軍勢。オブリビオンになろうが本体だけを狙うなら、丸ごと相手にするより楽だろ?」
 ゲームの時だって、駒がいた。
 艦隊にだって、部下がいた。
 そして、今も、いた。
 もう、いない。
「平和になったと信じてた。でも、ならなかった。そのツケがこの盛大な後始末だって言うなら――幾らだって払ってやるよ!」
 一閃――否『切断』。
 無防備な胴が、上下に分かれる。
 その瞬間に、悪夢がぱちんと弾けて覚めた。
 理解する。死ぬのだと。
「ああ、ああ……一度ならず二度までも……原初の力を得たと言うのに……このような、つまらないところで……」
「――だから、ですよ」
 だからお前は、敗れたのだと。
 興和は、冷え切った声で言い放った。
 やがてその意味も理解出来ぬまま、過去へと還る、その直前。
「俺は――俺達は、通りすがりの能力者さ。覚えておきな!」
 何度蘇ろうと、その度にまたお前を討つだろう。
 能力者の前に現れる限り、何度でも、何度でもだ。
 それを覚えて還れ――魎夜の思いは言葉と共に、過去の残滓と混ざり合って、虚空に溶ける。
 穏やかになったそよ風の音だけが、残された。


「……本当にありがとうございました」
「君が気にする事はないよ。しかし……」
 この後、夏蓮が来ると聞いている。
 お邪魔虫は片付けたから、無事に会わせてやりたいところではあるが――と、興和が考えた、まさにその時。
「おい、周太。夏蓮来てるぞ」
 真っ先に気付いた圭一が、小さく声を上げる。
 彼の視線の先を見遣れば、見覚えのある黒髪の少女が辺りを見渡しながら歩いて来ていた。
「八束さん?」
「あ……橘君。……と、え?」
 何故ここに? と言う顔で、猟兵達をきょとんと見つめる夏蓮。
 更に周囲には、何やら荒れたような跡が。流石に敵は既に消滅しているので、デート前に気分の良くないものを見せる羽目にはならずに済んだが。
「公園に現れた危険な敵の対処してたんだ、周太君の協力が無かったら本当にやばかった」
 九割は本当。残り一割はさり気なく、周太を持ち上げておく魎夜。
「いや、僕は何もしてないよ。全部、先輩達のお陰さ」
「そう……」
 周太のその言葉も、謙遜と受け取られるだろう。聡い周太自身も、それは理解しているだろうと魎夜は思った。
 それでも、周太は猟兵達にその言葉を伝えたかったのだろう。少しむず痒さを覚える猟兵達。
「ま、そんなわけだから大丈夫。戦闘はあったけど、特に何事も無かったぜ」
「それなら、いいのだけど。橘君も皆さんも、怪我はない?」
 圭一の言葉に首を傾げる夏蓮。すると魎夜が、思い出したようにぱんと手を叩く。
「それだ。俺達は平気だけど、周太君は頑張ってたから怪我とかしてるかも。手当て、頼めるかい?」
「え、ええ」
 頷く夏蓮に、ニッと笑う魎夜。
「な。白燐蟲に持たせてた俺の一眼レフ、今手元にあるけど、二仕事もしたんだ。報酬に写真ぐらい撮らせろよって、お二人さん」
 これくらいの褒美はあってもいいだろうと、カメラを構える圭一。
「あ、あの……」
「いいね、折角だし撮って貰おうよ」
 戸惑う夏蓮の手を引く周太。
 ああ、二人共護れたのだと、噛みしめる。
「お熱〜いワンショット頼むぜー」
「もう」
 照れ笑いの夏蓮と、にっこり笑顔の周太。
 いい画が撮れたぜと夏蓮に声を掛ける圭一の傍ら、魎夜は周太に耳打ち。
「後は上手くやれよ?」
「いい結果を報告出来るように、頑張るので。また遊びに来てください」
 その言葉は夏蓮以外の全員の耳に届いた。ばっと振り返る圭一、目を丸くする興和。夏蓮だけが首を傾げている。恐らくは、意図してのことだろう。
「やるな、少年……勿論、また様子見に来るよ」
 それは、これからを約す言葉。
「そんじゃ俺はお暇しようか。あとは若いお二人でお幸せになー」
「今日は本当に、ありがとうございました」
 周太と夏蓮が、並んで手を振ってくれる。圭一は背を向けながらも、それに手を振り返す。

 帰路、声こそ掛けなかったけれど、優しく二人を見守っていた興和は、彼らの未来に思いを馳せる。
(「『あまり言葉のかけたさに……』の唄みたいな、純情でそっけない娘さんだけど」)
 恋慕う気持ちは確かにあるのに、つい天気の話なんてしてしまいそうな、同胞の少女。
 興和自身、人間の事は好ましいと思いつつも、彼らの営みの中に息づく事の難しさも知っている。
 けれど、それでも共に在りたいと思える人間を見つけた『妹』もいる。そしてきっと、夏蓮にとっては、周太がそうなのだ。
(「周太さんならきっと、彼女を人の世に溶け込ませてくれるだろう」)
 彼らは、これからも共に駆け抜けてゆくのだろう。
 死と隣り合わせの――それでも輝かしい、青春を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年07月20日


挿絵イラスト