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キンダーガートン・イェーガー

#サイバーザナドゥ

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#サイバーザナドゥ


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「俺もよくよくガキに縁があるらしいやなァ」
 ぼやくように話し出したグリモア猟兵の我妻・惇は、だらけた姿勢で椅子に座り、そのままぼやくように話を始めた。

「今回のお仕事は、孤児院の襲撃だ」
 その孤児院は名前の通り、保護者がいなかったり、保護者の保護下になかったり、あるいは保護者を奪われたり。そんな諸々の理由で『孤児』と呼ばれる立場になった子どもたちが集められ、育てられている施設である。
 もちろん猟兵の襲撃を受けるからには、普通の……というか、善良な施設ではない。その背後には当然のように巨大企業群の影があり、将来的に彼らにとって都合のいい商売の種になるように、子どもたちに洗脳教育を施しているということなのだ。
「そンなわけで、今回のお仕事は孤児院の襲撃……ガキのお守りだ」
 皮肉たっぷりに言い換えたグリモア猟兵だが、その言葉ほどには――大変さはさておいて――平和な内容ではない。

 まずは孤児院の子どもたちを、敵に気付かれないように保護する必要がある。そのためには見つからないように潜入する手段を考えねばならないし、その上さらに。
「なンせ連中の都合の良い事だけ吹き込まれたガキどもだからな」
 馬鹿正直に『助けに来ました』などと言おうものなら、すぐさま人を呼ばれてしまい、救出は困難になるだろう。落ち着いて真摯に話をするか、うまく言いくるめて騙してやるか、それとも無理矢理さらって連れ出すか……ここにも工夫が必要だろう。

 逃げ出したら終わりではもちろんない。養っていた子どもがいなくなれば、当然施設の者は気付いて追ってくるし、周辺に配備された警備や応援の者も呼び出される。
「まァ、お次はケンカだわな。真ッ当な連中じゃねェし、思いッきり倒しちまッて良いぜ」
 幸い大きな騒ぎに駆けつける真っ当な警官も近くにはおり、救出した子どもを安全に押し付けることもできるようである。

「ブッ倒す相手はサイボーグ拳士、身体を弄ッた喧嘩屋だ」
 追跡者は肉体をサイバーザナドゥ化したサイバネ外家拳の使い手の集団であり、徒手であったり武器を携えていたりと様々な戦い方を持っている。加えて互いにデータリンク機能で連携し、隙を生じぬ連続攻撃を行うことも可能であるそうだ。個々の能力から見ればそれほど大きな脅威ではないが、油断できる相手でもないだろう。

「全部ブチのめしたら、あとはガキどもの引き渡しだ。家に帰るまでがなンとやらッてなァ」
 とは言え、寄る方もない子どもたちにとって安全な場所などそう多くはないため、一時的に不便であっても隠れ潜む必要がある。
「そこで、だ。ダストエリア、ッつーのか?」
 氏も素性も怪しい人の集まりの中で子どもらを匿ってもらおうという訳だ。勿論、彼らも楽な暮らしをしているわけではないし、はいそうですかと面倒を見てくれるはずもない。
「ンなわけで、もうひと仕事だ」
 面倒を頼むのだから、こちらも彼らのために一肌脱いでやるべきだろう。
 幸か不幸か、住人たちの多くは健康面に大なり小なりの問題を抱えており、それはこちらにとって重要な交渉材料となりえる。可能な限りの手当や診療、それでなくても簡単なマッサージや話を聞くだけでも良いかもしれない。
「まァアレだな、人にモノを頼む態度ッてヤツか」
 そんな風に聞こえの悪い言い方で説明を締め括ると、のそりと立ち上がったグリモア猟兵は皆を送り出す準備を始めた。


相良飛蔓
 お世話になっております、相良飛蔓です。大変ご無沙汰しておりますが、今回もお読みいただきありがとうございます。

 第一章は、巨大企業群の息の掛かった孤児院への潜入、洗脳教育を受けている子どもたちの救出が目的です。わるいおとなに見つかってしまうと子どもを隠されたりしますので、陽動や暴れたりはあまりオススメしません。
 そして子どもたちも洗脳教育を受けて敵対的なので、説得や対話については工夫してやってもらえると嬉しいです。

 第二章は集団戦です。囲まれていて逃げる事はできませんが、子どもたちは現地の方が守ってくれますし、敵にとってもコストを払った大事な品物で無闇に傷つけたりはしないので、避難や護衛は考えなくて大丈夫です。

 第三章は日常パートで、苦境の住人の皆様と交流したり治療したりしてもらいたいです。連れてきた子どもたちのケアをしたり、傷病を抱えた住人のケアをしたり。性別も年齢も改造具合も病状なども様々いるので、対象とする住人はご自由に指定いただいてOKです。

 そんな感じで、お久しぶりによろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『悪徳孤児院の子供達』

POW   :    巨大企業群や孤児院の関係者を痛めつけて孤児院に潜入する

SPD   :    孤児院に忍び込んで潜入する

WIZ   :    巨大企業群や孤児院の関係者を装って孤児院に潜入する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

新田・にこたま
孤児院に正面から入り、施設の職員や警備員、子供たちにデータ攻撃を仕掛けUCを発動。
『私が潜入捜査でメガコーポ傘下の武装警官として子どもたちの教育役という立場に収まっていた場合』というシミュレートを彼らの記憶に上書きし、私の記憶もそれと同期させます。

お疲れ様です。子供たちの様子はどうですか?

子どもたちには『お願いします。深くは聞かず、私と一緒に逃げてください…!私はあなたたちを守りたいんです!』と、これまで構築した信頼関係を盾に、ついてきてもらいます。

メガコーポめ…私の大切なこの子たちをいいように利用させたりなんてしません…!
(リアリティを出すために自分で捏造した記憶に完全にのめり込んでいる)



●敵を欺くには

「お疲れ様です。子供たちの様子はどうですか?」
 その孤児院の正面、いかにも屈強そうで、いかにも悪辣そうな守衛の脇を通りながら、一人の武装警官がそう声を掛けた。小柄な体格はともすれば頼りなくも感じられるが、強い意志を覗かせる金色の瞳や、切り揃えられて生真面目な印象を与える黒髪、そして礼儀正しく凛とした声音が、体格の大きな守衛たちに引けを取らない強さを感じさせる。
「おうおう、こちら問題ございませんです、ってか」
 男は品のない視線で見下ろしながら、丁寧な物言いを揶揄するように出鱈目な言葉遣いで同僚である武装警官――新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)に返事をした。そうしてがはは、とやはり品のない笑い声を発する守衛を尻目に、にこたまは施設の内部へと進入した。
 猟兵である彼女は、巨大企業群の手先である守衛の男の同僚などではないし、孤児院の関係者などでもない。正義の使命に熱く燃える、清く正しき武装警官である。

(この世界では潜入捜査に掛けられる時間はないんです…!)
 味方ではないはずの守衛を欺いたのは、彼女のユーベルコードである。施設の運営に携わる人間や洗脳教育を受けている子どもたちにデータ攻撃を仕掛け、『新田・にこたまが潜入捜査でメガコーポ傘下の武装警官として子どもたちの教育役という立場に収まっていた場合』というシミュレーションによる情報を、彼らの記憶として上書きしていたのだ。
 つまりにこたまは、施設内のほぼ全ての人間と一定の信頼関係を築いている……ということになっている。彼女がどこを歩いていようと怪しむ者はいないし、まして教育役が子どもたちのもとに一直線に向かっていたって、一切の咎め立てはされないのである。
「お願いします。深くは聞かず、私と一緒に逃げてください…!私はあなたたちを守りたいんです!」
 現れるなり、跪くようにして目線を合わせ、真摯に訴えてきた教育役の武装警官に、彼女に教育を施された子どもたちは、当然ながら驚いた表情をしていた。
「せ、先生?」
 覗き込めば、強い決意と怒りを宿したにこたまの瞳。
「メガコーポめ…私の大切なこの子たちをいいように利用させたりなんてしません…!」
 さらにその口から溢れ出た、自分たちのために怒り、護ろうとしてくれるその言葉。もはや子どもたちには、理由を問う必要も、否を唱える必要もありはしなかった。

 重ねて述べるが『先生と子どもたち』の関係は、にこたまが設定し同期させたものであり、事実関係は一切なく――子どもたちも、にこたま自信も信じ切ってはいるが――彼らと彼女はまったくの初対面、である。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 こうして連れ出された一部の子どもたちは、さしたる問題もなく猟兵に付いて来る。この後も問題がないように外まで案内する必要はあるだろうし、さらに別の所に収容されている子どもも居るかもしれない。
 捜索を行うか、護衛を行うか。必要に応じた、あるいは信念に応じた行動を。
穂藤・野々
子供は未来……大事にしなくちゃ

下準備として、組織内部情報へハッキング
関係者データにアクセスして、職員や勤務体制の情報を入手しておくね

抽出した人物データを再現します
今の私は、子供達の教育に関わる孤児院職員
本物が帰宅した後に、忘れ物したフリをしてしれっと孤児院へ戻るよ
何の変化もないように見えるけど、此処はもう私の仮想世界なの

職員の姿のまま、他の目がない時を狙って子供達へ
非常時の避難経路に変更がありました
教えるので整列してついて来なさい
押さない駆けない喋らない
今が非常時と思って迅速に行動しなければなりませんよ

そうやって誘導するのは、仮想世界にだけ存在する「避難経路」
このまま孤児院の外まで抜け出すね



●マスク・アンカー・バックドア

 こちらの猟兵によるデータ攻撃は、書き換えを伴わないものだ。孤児院を運営する組織のデータ群へとハッキングし、そこから有用な情報を探し、必要であれば複製する。足跡を辿らせない軽やかさは、まるで自由に踊ってでもいるように。
(子供は未来……大事にしなくちゃ)
 反してその心は軽妙軽快とはほど遠い、強い想いに満ちていた。バーチャルキャラクターである穂藤・野々(虹を描く少女・f36805)は、自らの世界を、未来を壊され奪われた者だ。そうして今また未来を奪われんとする者たちがすぐそこにいるのだから、他人事ではないのだろう。

 下準備を全て終え、野々が施設の門をくぐった時、違和感に気付けた者はきっとない。門前に立つ守衛にしてみれば、見知った職員が退勤後に忘れ物をしたと言って院内に引き返して行ったくらいで、特別なことなど何もなかった。
 しかし無理もない。気付けるはずもない。目の前の全てが見慣れている“ような気がする”だけで、本当は見たこともない仮想世界だなんて、信じられようはずもない。

 子どもたちの目の前には、いつもと変わらない教育役の姿。人目を避けるように静かに後ろ手に扉を閉めるその姿に、特段の違和感を抱く者もなく。ハッキングしたデータから職員の姿を再現し、なりすました野々は、自分を見上げる子どもたちを見渡して言う。
「非常時の避難経路に変更がありました。教えるので整列してついて来なさい」
 指示を受けた彼らは、日頃の教育の賜物か、非常に迅速に準備を整え、教育役の前に整列してのけた。そうして彼女はひとつ頷くと、厳しい指導を受けてきたであろう彼らに背を向けて歩き出した。
「押さない駆けない喋らない、今が非常時と思って迅速に行動しなければなりませんよ」
 言われた通りに言われるままに、静かに静かにおとなしく、教育役に子どもたちが付いてくる。その敏速かつ冷静な挙動は、実際の非常時においても彼らの命を助ける力となることだろう。
 実のところ、今がまさに非常時である。何せ、教育役を詐称する侵入者によって、仮想世界に設られた、あるはずのない抜け道を利用して、孤児院の子どもたちが集団で誘拐されようとしているのだから。

 子どもを連れた野々が去ったら、仮想世界は元通り。あるはずのない抜け道は、当然変わらず壁である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

こども はーめるん
音を立てぬ笛を吹こうか

迷彩お誘い催眠術UC
花を模した髪飾り(宝貝)から香りを発し念動力で範囲に拡散
『抜き打ちで慰問に来たメガコーポ重役令嬢』
と警備員、職員、児童に刷り込む


礼儀作法落ち着き優しさ手をつなぐ集団戦術

わたしのおともだちになって みんなついてきて
一緒じゃなきゃ嫌?なら一緒にいらっしゃい

ちょっと話を聞いたり撫でたりスキンシップを交えUCの効果を可能な限り多くの児童たちにより浸透させる


いいこたくさん つれていく
お父様には、宜しく申し上げておきます

飽くまでも落ち着き払って礼儀正しく「逆らうと拙い」と軽く恐怖を与えつつ
職員警備に扉を開かせ堂々と連れて行く



●泣く子と地頭には勝てぬ

 強面の守衛は今や、腰も頭も低くして、平身低頭を絵に描いたような態度を見せていた。
 相手は見るからに幼い少女。ぼんやりとした表情で、機嫌が良いのか悪いのかも分からない娘に、男はへらへらと笑いながら懸命に諂って見せていた。
「案内していただけるかしら」
 美しい姿勢と言葉遣いで請われれば、職員も背筋を正して丁寧な返事をかえす。娘の髪を彩るはただの髪飾りではなく、五桃花七宝という宝貝。それは愛らしい花のような姿で、花よりもなお芳しく、まるで心を搦めとるが如くに抗いがたい香りを放つ。
 こうして魅力的で高貴な少女は、悪質な男たちにさえ敬意と好意を抱かせていた。少女の肩書きは『抜き打ちで慰問に来たメガコーポ重役令嬢』、実に適任であろう。御堂・伽藍(がらんどう・f33020)、彼女もまた猟兵である。

「わたしのおともだちになって」
 子どもたちの前に案内されると、伽藍は歩み寄り手を伸べて、自らも子どもらしくそう呼びかけた。凛とした雰囲気とはやや不似合いな幼さに少し驚かされながら、一人の少女が猟兵の手を取れば。
「みんなついてきて」
 そのまま歩き出そうとする伽藍。時には別の子の手を引いたり背を押したり、無邪気な子どもがそうするように、見る間に皆に溶け込んで……あるいは、滑り込んで行った。
 新たな友達にはしゃぐようにも見えるその姿だが、突然の蛮行を止めようとする職員に向けるその目は冷たく、異議を許さないものである。結局ほとんどの邪魔をさせぬまま、そして子どもらに不信や不安を与えぬままに、外界と孤児院とを隔てる門まで辿り着いたのだった。

「お嬢さま、これはいったい……」
「いいこたくさん つれていく」
明らかに狼狽する守衛に、変わらず礼儀正しく平然と、子どもたちを引き連れた伽藍は言う。
「しかしいくらお嬢さまでもこれはその、許可できないと言いますか……」
 逆らいがたい少女と、逆らってはならない大人との板挟みになった子どもたちも狼狽えながら、相反する絶対者の顔色を窺っている。
 と、伽藍の目がすっ、と細められ……
「お父様には、宜しく申し上げておきます」
その言葉に、守衛の男は顔を青くして速やかに道を開けた。取りようによっては単に『自分の行動はきちんと父に報告する』という内容の発言だが、男の捉え方はどうやら違ったようだ。即ち『意向に従わなかったお前のことはきちんと父に報告してやる』と。
 そんな重役令嬢様を、守衛はよりいっそうの諂いの笑顔を浮かべ『本当に、くれぐれも、宜しくお伝えくださいね!ね!?』と念を押しながら送り出したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

ん、孤児院に新しく入った孤児として潜入
わたしは見つからないよう見切りでこそっと忍び込んでいくけど、まつりんは?
潜入方法を確認し、お互いを補完し連携しつつ、見つかれば孤児だと言いくるめ、それでもダメならそっと怪力で気絶させる

こそりとUC発動
孤児の皆と新入り称してお話しよう
両親は遠くにいる事、外では色んな冒険したこと
そう、外には美味しい屋台に熱いカーレース、そして夜の星に浮かぶナイトスパ
以前娯楽の街で体験した楽しいを熱く語って、皆の外への好奇心をくすぐり、孤児院の外に出る誘惑を誘おう
…特に食べ物はとても美味、最高

ん、別の部屋の子達が外に出る気配
わたし達も行ってみよ?


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とだよ!

孤児院かー。
転校生として入れてもらえないかな?
んー、ムリかー。

じゃあ仕方ないや、潜入しようっと。
子供達が建物外に出るタイミングを狙って、しれっと合流。

警備員さんにご挨拶。
初めまして。おいら、まつりん。
新入りなんだ。ヨロシクねっ♪

あれ、聞いてない?
おかしいなあ、だって偉い先生に行ってこいって言われたよ。
名前?
わかんないー。

入れたらヨシ。
入れてもらえなかったら、こっそりメカたま呼んで、陽動してもらおっと♪
そぉれぃ♪

孤児院の子たちに会ったら、駄菓子オススメ。
自分で好きなの選んで、詰め合わせるのが楽しいんだー♪
たまこの芸も見せ……ギャー!?(襲われ)

と、逃亡ー!?



●百聞は一見に如かざれば

 木元・杏(アルカイックドヤ顔・f16565)は警備の隙を突き、難なく正門付近の高い塀を突破することに成功した。音もなく物陰に滑り込み、ひとまずの安全を確保すると。
(まつりんは?)
 今回も一緒に事件に臨む、双子の兄の姿を探して正門の方を見やる。

と。

「初めまして。おいら、まつりん。新入りなんだ。ヨロシクねっ♪」
 守衛の男に、満面の笑みで、元気にご挨拶する良い子の姿が見えたし、聞こえた。
「そんな話は聞いてないよ」
「あれ、聞いてない? おかしいなあ、だって偉い先生に行ってこいって言われたよ」
 そう言って首を傾げた少年が杏の兄、木元・祭莉(まつりん♪@sanhurawaaaaaa・f16554)である。訝しげにする守衛は、少年を通すつもりはなさそうだ。
「その偉い先生ってのは誰だね。名前とか、ほら、紹介状とかは」
「名前? わかんないー」
「じゃあしょうがないな。ほら、行った行った」
 手をひらひらと振ってぞんざいに追い返そうとする守衛に、食い下がろうとする祭莉。平行線のままに少しずつ緊張感は増していく。
「お前、何のつもりか知らねぇが、良いかげんに……」
「じゃあ仕方ないや……」
 さても一触即発か、というところで。

「えい」
 と言う可愛らしい掛け声と一緒に、首筋をきゅっと絞められた守衛は、一瞬のうちに意識を刈り取られてしまった。
 一触即発あらため鎧袖一触の怪力でもって大男を昏倒させた杏は、祭莉に目で合図を送ると孤児院の玄関へと向かっていく。兄も手元に呼び出しかけた何かをそっと元通りに収めると、妹の後について建物の内部へと入って行った。

「お外は、楽しいよ」
 子どもたちのいる場所にたどり着いた双子は、新入りと称して彼らの中に入り、話を始めた。美味しい屋台や熱いカーレース(とお肉)、そして夜の星に浮かぶナイトスパ(とかケーキとか)……賑やかで煌びやか、外の世界の楽しいことを熱く語って彼らの外界への好奇心をくすぐる作戦だ。その声音にはユーベルコードの力が乗り、聞く者の耳にはとても心地よく、その言葉すべてが魅力的に聞こえている。内容はもとより、可憐な杏の姿にぽうっと見惚れる少年もちらほらといるような具合だ。なお、次第においしい食べ物のトピックが増殖しているが、興味を引ければ良かろうである。
「自分で好きなの選んで、詰め合わせるのが楽しいんだー♪」
祭莉は祭莉で、おいしいと楽しいをことさら楽しそうに跳ねて語り、全身で魅力を伝えている。多くの子どもの興味を惹きつけるには充分なパフォーマンスと言えるだろう。
「いいなぁ」
「すごく楽しそう!」
実際、何人もが目を輝かせながら身を乗り出していた。
「でしょでしょ!あ、そうだ、たまこの芸も見せ……ギャー!?」
 そんな彼らにもっと楽しいものを見せようと、杏の飼う雌鶏を連れて来た祭莉だが、速攻で突き回されて悲鳴を上げる羽目になった。まぁやはり、興味を引ければ良かろうである。

「お父さんが帰ってきたら、連れて行ってもらおう!」
「先生にお願いしたら、作ってくれるかな!?」
 しかし、子どもたちの盛り上がり方は、猟兵の期待とはいくらか乖離したものであった。洗脳教育を受けている彼らにとって、ここは居心地の良い場所であり、施設の人間は保護者であり、勝手に出ていこうと言う発想には至らなかったのだ。
「わたし達も行ってみよ?」
 他の猟兵によって外へと連れ出される子どもたちの声を呼び水にと、杏は今一度その魅力的な言葉で呼びかけるが、やはり反応は芳しくない。
「でも、ぼくたちはここにいなきゃ」
「ママが迎えに来た時に困っちゃうから」
 切実で残酷な希望のために、彼らはここを動かない。そうする間に外のざわめきは遠ざかっていった。

 それから間もなく、数人の男の怒号が聞こえ始める。昏倒した守衛が発見され、不審者の存在が露呈してしまったらしい。賢い子どもたちには、残念ながら職員たちの怒号の内容と意味が分かってしまったようだ。
「先生、ここです、ここにいます!」
大きな声が部屋の外まで届けられた。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『サイボーグ拳士』

POW   :    サイバネ外家拳
【サイバーザナドゥ化された拳脚】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    データリンク羅漢陣
【位置情報を共有した味方との連携攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    カンフーアクション
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【カンフー】の威力と攻撃回数が3倍になる。

イラスト:滄。

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 それぞれに脱出した猟兵たちと孤児院の子どもたち。道々に説明を受けたり言いくるめられたりして、今のところは施設に戻ろうと言い出す者はいないようだ。
「待ちやがれ、誘拐犯たち!」
 しかしさすがに、世話している子どもの大半が一度にごっそりといなくなったのでは、それほど長い時間ごまかすことは難しい。すぐさま追っ手が掛かり、改造した身体の能力を活かした連携によって、街中で素早く包囲されてしまった。

 加えて不幸なことには、施設内で侵入が発覚した者は仲間と分断するように包囲されている。裏を返して幸いなことには、包囲が二手に分散し、それぞれへの攻撃を僅かずつ手薄にしている。
 突破して合流もできない距離ではないし、油断はできないがやってやれない相手でもない。

 そしてもう一つ幸いなことに、敵は今なお自分たちを信じる、子どもたちの奪還を狙っていて、傷つけることを避けようとしているようだ。
「待ってろよ、『先生』たちがすぐに助けてやるからな」
 こちらの目的地までももう一息、相手が“商品”を諦めて“損切り”を始める前に、速やかに倒してしまおう。
新田・にこたま
ホールド・アップです!大人しく投降しなさい!先生方!
あなたたちが本当に子どもたちのことを想っているというのなら、『武装警官』である私と共に、この子たちを逃がす側に回りなさい!

メガコーポ側の洗脳教育でも(メガコーポに利する存在として)武装警官は正義の味方だと教えているはずですし、子どもたちにとって武装警官である私は(前章での出来事も含めて)信頼できる存在のはずです。
そして上記の要求に対して敵が肯定するわけがないので、その反応で私以外の『先生』は自分たちを想っているわけではないと子どもたちも気づけるはずです。

敵の殲滅自体は、動けなくなった拳士が連携できるはずもありませんし、銃撃で瞬殺しますよ。



●正義(建前)と正義(本音)

「ホールド・アップです!大人しく投降しなさい!先生方!」
 子どもたちと自身を取り囲む『先生方』――そう自称するサイボーグ拳士の集団に対し、新田・にこたまはその手に構えたサイバー軽機関銃を差し向けた。彼女の義体化された右腕と基準を同じくするその武器は、小型ではあるが高い威力を持ち、いかなサイボーグといえども連射されればひとたまりもない代物だ。
 そうしてほんの一瞬でも怯んで足を止め、この猟兵に要求を紡ぐ時間を与えてしまえば
「あなたたちが本当に子どもたちのことを想っているというのなら、『武装警官』である私と共に、この子たちを逃がす側に回りなさい!」
もはや彼女の武装警官式交渉術より、逃れる方法はないと言えよう。

 もちろんこれはただの交渉ではなく、にこたま自身のユーベルコードの行使だ。投げかけられた要求に対し、応じれば意識を、逆らえば移動能力を、そして要求を理解できない者からは攻撃能力を奪うこの技術は、本来は生かす必要のある相手を制圧することを目的としたものである。メガコーポの手先の下っ端でしかない彼らの安否などは、事件解決上必要なことではないのだが、子どもたちを導く先生としても、あるいは守る正義の味方としても、その眼前での一方的な殺生などは望む所でないのも確かであろう。
「何を言ってるんだ、そんなことして良いわけないだろうが!」
と、怒鳴り返して詰め寄ろうとした拳士の一人が、つんのめるようにして動きを止めた。要求に逆らおうとした彼は、その移動能力を奪われたのだ。追従して歩を進めた者たちは皆同様に移動の自由を奪われた。それは即ち、猟兵の要求の言葉に照らし合わせれば――『本当に子どもたちのことを想って』の行動は、選択されなかったということだろう。

「先生……」
 子どもの口から心配そうにこぼれ出たその言葉はしかし、やや遠くで憤怒の形相を浮かべる男たちと、眼前でその背に自身を庇ってくれる少女と、どちらに向けるべきかと未だ宙を泳ぐこととなっていた。どちらの『先生』も、どちらかだけを切り捨てるには一緒に時間を過ごしすぎたのだろう……少なくとも記憶の上では。
「あなた達のことは、私が必ず守って見せます」
 力強い言葉と視線は、今少し子どもたちの迷いと不安を払拭し切るには至らなかったが、今この瞬間、“それ”と“これ”とは別である。言葉と視線と同様に、真っ直ぐ相手を捉えた銃口は躊躇なく容赦なく咆え立てて、その右腕の名に相応しく、悪辣な敵を撃ち倒して行く。

成功 🔵​🔵​🔴​

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

せんせい だれが?
厚顔無恥。我楽多も呆れる破廉恥よ…!

先制UCを最大範囲発動
自身にリミッター解除強化効果付与

残像陽動フェイント忍び足でゆるゆると接敵
射程に入り次第念動怪力炎雷地空属性衝撃波UC
すてぜにのフェイント二回攻撃を交え範囲ごと薙ぎ払う
鎧無視マヒ捕縛気絶吹き飛ばし
敵の電子部品に電磁波ダメージ

敵の攻撃を落ち着いて見切り
残像陽動味場習熟フェイント忍び足にて躱す

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

ゆーかいはん だれが?
随分と手の込んだ自己紹介ね?
さばきの かみさま
その名乗り、地獄の雷神が記すだろう

いいこたち みんなつれてく

鎮め沈め骸の海へ
さようなら
さようなら
御然らば
御然らば





「せんせい? ゆーかいはん? だれが?」
 取り囲もうとする男たちに、御堂・伽藍は侮蔑を寄せる。既に重役令嬢という化けの皮は剥がれ、威圧としての用をなす物ではないが、構うことではない。
「厚顔無恥。我楽多も呆れる破廉恥よ…!」
演技や模倣ではない。心からの感情、怒りであり、その発露は彼女の力の安全限界を一時的に取り去った。
 ゆるりゆらりと捉え所なく歩み寄るそれに、敵は一瞬鼻じらむ。彼らをたじろがせていた擬態が暴かれた今、眼前の少女は、『逆らってはいけない者』から『揺り起こしてはいけないモノ』と見えた。綻びを封を剥がさねば、中身を歪を零さねば……

「誘拐犯が偉そうに!」
 そうして正面からいつの間にか迫った伽藍に、意を決したように拳士が駆ける。あるいは正面から身を沈めて撃ち込み、あるいは壁を蹴って頭上から浴びせかけ、またあるいは拾い上げた石の礫を投げつけて、咄嗟にしては手強い連携で一度に伽藍へ攻め寄せる。
 しかし彼女は再びの茫とした表情のままに、動いたかも分からないような足取りで、するりとそれらを躱してのける。驚く様子の悪漢たちがその相貌へと視線を向ければ、そこにあるのは伽藍堂。虚ろの穴を覗くごと、闇を湛える、がらんどう。

「随分と手の込んだ自己紹介ね?」
 言葉に続いてちり、と、小さな金属のはねる音。誘拐犯との謗りをそっくり返された悪漢たちは、ほんの僅かに、そのすてぜにの音に意識を奪われた。その、僅か。
「さばきの かみさま」
衝撃を伴った紫電の剣が、疾く疾く敵を貫いた。吹き飛ばし、切り裂きながら、肉体を焼き、義体を毀す。
「その名乗り、地獄の雷神が記すだろう」
 幾人が倒れ伏す中で、運良く消え残った者たちは――ともすると、運が悪かったか。ほとんど間もなく、新たに迫る八つの雷霆を、少ない人手に割り振られ、その身に受けることになったのだから。

「鎮め沈め骸の海へ さようなら さようなら 御然らば 御然らば」
 その言葉が届いたものかは分からない。彼らのあるべき骸の海へ、がらんどうなる虚ろの闇へ、至ったものかは分からない。とかく伽藍に立ちはだかった、悪漢たちはもういない。

「いいこたち みんなつれてく」
 そして、再び紡がれるその言葉。善い子らなるはその背にありて、猟兵の背についてくる。
 さりとて浄穢を善悪を、隔てず拒まぬ伽藍の御堂、連れて容れるはいずれの子なるか。いずれの骸か、いずれ、骸か。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂藤・野々
教育役の姿は維持
他の猟兵さんの潜入捜査の話に乗っちゃお

追い付かれたら、こっそりワールドを塗り替えて
全施設職員をプレイヤーに指定

彼らのアクションはサイザナ化された肉体に裏付けされたもの
でも、そんなの関係ないの
斜面でジャンプしたら大ダメージとか
高い身体能力に慣れているからこそ、地形で死んじゃう紙防御を想定して動くのは困難

実は彼らも仲間です
彼らが本来こんなに弱くないことはよく知っているでしょう?
あれは全て、演技です

そう言って、私もスカイカナルで応戦
この為にフロートボードが得意な職員を選んでおいたの
優しく、蹴散らしてあげるね

沢山の人が貴方達を助けるために身体を張っています
皆さんは必ず逃げ延びなくては



●瓢箪から駒

 子どもたちを連れて早足に施設から遠ざかるのは穂藤・野々、今なお教育係の姿に擬態したままだ。
 しかしその怪しい動向やデータリンクの齟齬などから、施設の者たちからはすぐに侵入者のそれであると看破されてしまった。それでもこと今に至っては特段に困ることではない。彼らに見破られることよりも、子どもたちを信用させられる事の方が重要なのである。

「そんな格好までして、誘拐犯め!」
 血相を変えて駆けてくる敵から子どもらをその背に隠し、野々は対峙し、警告する。
『迂闊に進まない方がいいよ』
もちろん脅しかはったりであろうと、拳士たちは取り合わない。そのまま波状攻撃を展開しようと、ビルの壁面を足場に、積まれた荷箱を足掛かりに、義体による優れた身体能力を遺憾なく発揮し……

 そんな気迫や気勢をくじく、軽快かつ脱力感あるメロディが鳴った。
「ぐわっ!?」
「どうなってんだ!?」
ここは再びの野々の世界。誇るべき主人公の脆弱性にて栄誉に与る、薄っぺランカーの世界である。階段を1段踏み外した程度の段差で死ぬ、飛び越え損ねても死ぬ、もちろん射弾でも爆風でも他者との接触でも死ぬ。期せずしてそんなゲームの世界のプレイヤーキャラクターに設定されてしまった拳士たちは、ビルの壁面を蹴って大ダメージを受け、積まれた荷箱で踏み切って大ダメージを受け、強靭な義体を豆腐のように損傷させて大ダメージを受けるのだった。

「実は彼らも仲間です」
 次々と倒れる敵たちを見ながら、孤児院の職員に化けたままの野々が告げた。
「彼らが本来こんなに弱くないことはよく知っているでしょう? あれは全て、演技です」
“先生”たちの暴露によって、避難ではなく脱走であると既に知る子どもたちを、さらなる嘘で丸め込んでいく野々。確かに、あまりにもわざとらしく勝手に倒れていく者たちを見れば、演技と言われても納得も行こうというものだろう。

「優しく、蹴散らしてあげるね」
 職員の姿をした野々は、仕上げとばかりにフロートボード【スカイカナル】に足を掛けると、地面を蹴上げて飛び出した。注意しながら向かってきていた残りの追跡者たちを吹き飛ばして倒しながら、孤児院から脱出路への一本道を切り開き、改めて子どもたちの前へ。
「沢山の人が貴方達を助けるために身体を張っています。皆さんは必ず逃げ延びなくては」
 その身に纏う姿は嘘で、その創り上げた世界は虚構で、その言葉はここにおいては偽りで。
 子らを思うは真実で、逃げ進むべき道の先は現実で、幾人もが助けるを望み動いたのも本当で。
 綯い交ぜの虚実で子どもらを叱咤し、野々は皆を導いてまた歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

木元・杏
まつりん(まつり・f16554)と

む、バレた
そうね、お互いバカ正直にいこう(UC発動

攻撃はまつりんとの声掛け連携や第六感での回避、うさみん☆で受けたり灯る陽光のオーラ防御で凌ぎつつうさみん☆の怪力MAXパンチで反撃

ん、わたし達は子供達を連れ出しに来た貴方達にとっての悪
わたしは子供達に外の世界を自由に遊び、色んな人の考えを学ばせたい
それを「先生」は許さない?何故?

口下手で言葉巧みは無理ながらも、子供達を商品と考えてる言を誘導するよう「先生」達に声掛けてく
子供達、先生の言葉なら信じるでしょ?

先生、うさみん☆から目を逸らすと戦いに不利よ?

施設の外に追い詰めてって
他の猟兵や警察の皆さんに子供達を預ける


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)、囲まれたー!
まいっか、みんな無事だし♪(あっけらかん)

ふぅん、アンタたちが先生?
おいらも、功夫足りてるって言われたコトあるよ?(ふふーん)

それじゃ、いっくよー!
ふわり回って、ゆべこ発動。
真の姿で踊るように、白炎発動。(やる気削ぎ)

キミ、先生のコト好き? なんで?
へえ、優しいの?

ねー先生、おいらも仲良くしたいなって……わわっ!?
何するのー!(せいやっとカウンター)
もー、危ないなあ。

アンちゃんと連携して、味方との合流狙い。
敵の攻撃は護拳受け防御、ときどきカウンター!
先生が本性出してきたら、遠慮なく!!

やられたら、同じくらいやり返していいんだー。
ウチの母ちゃんの教えだよ♪



●皮の内側を較ぶれば

「アンちゃん、囲まれたー!」
「む、バレた」
 居並ぶ拳士たちに対し、慌てて見せる木元・祭莉と、少しだけ眉根を寄せる木元・杏。なんだかどちらも、どこか能天気な様子でもある。
「まいっか、みんな無事だし♪」
 実際に祭莉は大した危機感を抱かずあっけらかんとしているし、
「そうね、お互いバカ正直にいこう」
杏も冷静に、次の動きを検討しはじめている。ふてぶてしいほど不敵な侵入者たちは、大人たちに怒りと警戒を、子どもたちに戸惑いを感じさせていた。
「いっくよー!」
 そうして敵たちが襲いかかるより先に、祭莉が仕掛けた。白炎の狼を伴い、拳士たちの真ん中へと躍り込み、くるりふわりと踊って見せる。いつの間にか長く伸びた銀糸の髪も流れるようにさらりと輝き、周囲を圧倒し、魅了する。
「ねー先生、おいらも仲良くしたいなって……」
 さらに不敵に、大柄な男を見上げるように、祭莉は近付いてそう言った。屈託なくもどこか妖艶なその笑顔は、向けた相手をたじろがせ。
「くっ、こいつめ!」
「わわっ!? 何するのー!?」
 狼狽しながらも振り下ろすように放たれた義体の拳に、今度は祭莉が慌てる番。動物じみた反射でもって寸でのところでなんとか躱し、ついでの反射で白炎を纏った拳を伸ばして敵の顎へとかち上げるようして撃ち込んだ。
「もー、危ないなあ」
 膝から崩れ落ちた拳士に、心外そうに膨れた少年は言った。まぁ、なんというか、よく言ったものである。

 拳士が倒されるを見るや、子どもたちも浮き足立つ。自身を守る、尊敬すべき人が酷い目に遭っているのだから、無理からぬことである。そしてそれを為す侵入者たちを、悪と思うのも当然の帰結で。
「ん、確かにわたし達は子供達を連れ出しに来た貴方達にとっての悪」
そんな思いを杏が代弁し、さらに肯定するとあって、そのざわめきも大きくなった。その波立った空気に負けじと、いくらか声を張り、続ける。
「わたしは子供達に外の世界を自由に遊び、色んな人の考えを学ばせたい。それを先生は許さない?」
 子どもたちは顔を見合わせ、拳士たちの言葉を待つ。大人たちは丸め込むための言葉を紡ごうとし。
「何故?」
 と、促すような杏の言葉とともに、その足元に現れた可愛らしい人形の踊る姿を、見た。
「決まってるだろ!逃げられると困るからだよ!」
「え?」
「馬鹿お前、何言ってるんだ!」
 取り繕おうとした剣幕そのままに、男の口から“真実”が転げ出ていた。耳を疑う子どもの声や、失言に叱責する怒声や、さらに賑やかに紛糾し、その中でさらに杏は言葉を投げる。
「この子たちは、貴方達にとって、何?」
 射竦めるように見つめる少女の目は、決して嘘を吐くことを許さない。悪漢たちが無垢な瞳への呵責に堪えかねる、などということではもちろんない。それこそが杏のユーベルコード。うさみみメイドの人形こと“うさみん☆”を視界に収めている間、相手は真実を口にすることを強制されるのだ。
「大事なもの、だよ」
「大事な……何?」
 ある意味で大人らしい曖昧な表現を、しかし杏は許さない。沈黙も、誤魔化しも、この力の前では剥ぎ取られてしまう。そしてついには。
「大事な……ああ、商品、金ヅルだよ!クソッ!」
 ついには悪漢は観念し、自棄ぎみにそう叫んでいた。今や多少の疑心がありつつも、それでも彼らを信じていた子どもたち。彼らを振り向いた杏の目にはいくらかの同情や憐憫があるが、その残酷な嘘で甘やかし続けるわけには行かないのだ。それは優しさではきっとない。
「先生の言葉なら信じられる?」
 自分も相手も傷つける、優しいとどめを杏が刺した。

「それじゃ、遠慮なく!!」
 化けの皮が剥がれ、敵意と悪意を剥きだしにした拳士たちを、迎え撃つ祭莉もまた、剥いた犬歯を光らせる。軽快に踊って見せていた少年は、今や多くの子どもたちと、妹である杏の前に立ちはだかり、皆を守らんと立っていた。群れの年長者として、あるいは狩るべき獲物を蹂躙せんとて――いずれ捕食者たる白狼は。
「もう構わねえ、やっちまえ!」
 開き直って一斉に襲い掛かって来る男たち。道は踏み外したとはいえ、彼らもそれぞれが一廉の拳士であり、侮って良い相手などではない。しかしそれでも、兄として立つ祭莉は臆することなどなく、退くことなどないのだ。
 迫る拳に沿うようにして身を滑らせて空振らせ、肘をかち上げ脇腹を撃ち、そを振りぬいて吹き飛ばす。続く男の素早い蹴りを、屈み沈めて身を躱し、さらに素早い蹴り足でもて地に着く足を刈り取って、浮いた体を強か蹴りつけ、これも同じく吹き飛ばし。
「やられたら、同じくらいやり返していいんだー。ウチの母ちゃんの教えだよ♪」
 不敵に笑って誘う祭莉に今度は一度に迫る敵。しかし慌てる事もなく、迎える男に固めた拳でカウンター。かくて二人が同時に吹き飛び、さらに怯ませることとなった。
「先生、うさみん☆から目を逸らすと戦いに不利よ?」
杏の声に再び合わせるように、今ほど敵の顔面を盛大に撃ち抜いたうさみみメイドが今度は祭莉に並び立つ。意志の宿らぬはずの瞳は爛々と輝いて見える。愛嬌という化けの皮を、自ら剥いだ兎と狼。
 縦横無尽に飛び回っては並み居る敵を蹴散らした、ある猟兵の開いてくれた退路に沿って驀進し、殴り飛ばしながら蹴散らしながら、ついには全てを退けて、仲間との合流を果たすのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『廃棄区画に健康を』

POW   :    マッサージを行う

SPD   :    診察を行う

WIZ   :    カウンセリングを行う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 追跡者を撃退し、子どもたちを引き連れて、猟兵たちがたどり着いたのは、ダストエリアのとある一角。そこでは多くの住民達が共同生活を営んでいた。
 しかし共同とは言っても、最低限互いの邪魔をしないだとか、後の面倒を避けるために手を掛けてやるだとか、その程度。実際のところ、それぞれが生きていくだけで精一杯であるようだ。

 かたや信じていた物が一度に失われてしまった子どもたち、かたや自らの暮らしを立てることも難しい住人たち。なんとか彼らを心身ともに力付けて、支え合って生きられるようにしてやりたい所だろう。

『衣食足りて礼節を知る』とは言ったもの、彼らに礼節や思い遣りを分け合うだけの余裕を取り戻させるために、さあ、アフターケアのお時間です。
御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

がらんどうの いやし
我楽多に体は癒せぬ。が

礼儀作法忍び足存在感
そっと人々の間を練り歩き

落ち着き優しさ釣り祈りお誘い手をつなぐ催眠術UC
時にスキンシップを併用し、心に溜め込んでいる不満などを存分に吐き出してもらう
落ち着いたら軽く眠ってもらう


にんぎょうが うけとめる
話し相手、それもがらんどうの本領

たくさんなく あめがふる
雨の後には、太陽も出る

てをつなぐ やさしくなでる
触れるとは、触れさせること

わたしはずっと がらんどう
だが我楽多とて、いつまでも我楽多ではない

それでも つかれたら
ほんのひと時、夢の休みへ

おやすみ
御休み
おやすみ
御休み


穂藤・野々
あれは世を忍ぶ仮の姿……皆さんを信用して本当の姿をお見せしましょう
子供の姿では自由に動けませんから

ダストエリアであっても顔役のような人はいるはず
まずは子供達と、その人にご挨拶ね

住民さん達ともご挨拶を兼ねてお話
お困りごとありませんか
体調を崩しやすい……ヘルスマシンの動作不良を放置してない?
電子回路関係は得意なの
メンテナンス方法も伝えておくね
生身の不調がある人は魔法である程度治療できると思うの
外に出て、空を見上げていて

子供達も肩たたきとか出来ることを
皆さんはまだ学ぶべきことが沢山あります
でも、それは教えられるがままに覚えることじゃない
これからは、自分の目で見て、自分の頭で考えるの
世界は広いんだから



●あめのちはれ

 穂藤・野々は連れてきた子どもらを引き連れて、ダストエリアの避難先を進んでいた。積極的ではなくとも保護を求めるのだから、挨拶などしておくのが筋というものだろう。向かう先はこの集落の顔役のもとである。
 彼女の外見は逃避行の時とは違い、可憐な少女のそれである。追っ手の全てを撃退した今となっては変装し続ける必要もなく、子どもたちや住民への、信頼と友誼の証として本来の姿を晒したのだ。“先生”が本当は自分たちと同じくらいの女の子であったということに、戸惑いながらも親近感を持つ子も多く、感触は良好であるらしい。

 その後を辿るように、しかし追わずゆったりと歩む御堂・伽藍は、道中の人々に注意を向ける。その表情からは本当にそうとは分かりにくいものだが、丁寧に声をかけたり、跪いて手を握って見せたりと、慈愛に満ちた様子からは間違いようのない労りが感じられた。
 ーー我楽多に体は癒せぬ。が
 伽藍はじっくりと向き合いながら、手に触れ、頭を撫で、言葉を聞き、その痛みを、苦しみを、悲しみを、受け止める。
 話し相手となるのは、元来人形である“がらんどう”の本領であり、少女は苦とする様子など一切見せず、皆の話を聞き続けた。時に怒り、時に涙しながら語られる言葉を、ただ静かに受け止め続ける。

「お困りごとありませんか?」
 対して、挨拶を一旦終えた野々は元気に賑々しく、ついて来る子どもたちを引き続き引き連れながら住民の中へと向かっていった。
「体調を崩しやすい……ヘルスマシンの動作不良を放置してない?」
 大部分を義体へと換装した老人の言葉に、そんな要因を提示すれば、相談者とついでに周辺の住民と子どもたちが目を丸くして思い思いの声を上げる。電子回路関係を得意とする野々がメンテナンス方法を案内し始めれば、同様の不調を抱える者がちらほらと集まり、その場は即席の説明会のようになる。改めて先生となった猟兵の言葉に、一部の子どもらは集中して耳を傾けており、そんな様子に野々は微笑む。
 誤ったものだったとはいえ、与えられてきた指標を失った子どもたちは、今後は自らできることや進む道を見つけなければならない。そのためには、自ら学び、考えることが大事である。
「世界は広いんだから」
 閉じた世界でも、終わった世界でもないのだから。

「外に出て、空を見上げていて」
野々が宙に描く青雲より、煌めく雨粒が降り注ぐ。それは人の身体を癒す魔法であった。子どもたちは目を輝かせ、傷を抱えた住人たちは心地よさに目を細める。そんな空を、子らと手を繋ぎ、伽藍も見上げている。明るい空より降る雨に、しかしふさいだ様子のままの、痛みを手より感じながら。
 受け入れ、受け止めるままのがらんどうに、この降る雨のように癒す力はありはせず。
(わたしはずっと がらんどう)
にんぎょう、がらくた、がらんどう。癒しの力もいのちの熱も、与えられない虚の器。しかしそれでも
 ーー我楽多とて、いつまでも我楽多ではない
 できることも進む道も、当然に不変のものではない。その手は今、子らへ確かに熱を伝え、その暖かさは子どもたちと住人と、皆の体へ癒しを与える。
『あかるく、あたたかい。埋火の如き希望、温もりを慈しみもたらす』
その熱は、伽藍の裡、がらんどうへと納められたランタンの一灯によるものである。その明かりに触れたものに安らぎと癒しを与える、たくされたきぼうのともしび。その光は意味を持ち、力を持ち、がらくたではない。
 確かにこれは、我楽多たるがらんどう自身の力ではない。しかし行使することを選んだのは伽藍自身で、彼女の心より発するものであろう。我楽多とて、いつまでも我楽多ではないのだ。

 子どももまた、いつまでも子どものままではない。明るく鮮やかな蒼の惠みに顔をあげて笑えば、悲しみや苦しみより立ち直って、いつかはきっとそれらを乗り越えていかなければならないだろう。野々の教えは、野々の魔法は、きっと彼らの助けとなった。疎らながらも笑い声は聞こえ、あちらこちらで明るい空気が広がり始めている。
 皆がすぐにそうなれるわけではない。心が折れ、挫け、立ち直れない者も、老若を問わず少なくはないのだ。今すぐ顔を上げられない者であってもしかし、進まなくてはならない。残酷だけど、生きるとはそういうことだろう。
 ーー雨の後には、太陽も出る
だから、前を上を見ることもできない人へ、或る道具屋の魔法の灯火の温もりを。
 ーーほんのひと時、夢の休みへ
ゆっくりと休んで目覚めたら、少しでも顔を上げられるように、一歩ずつでも前へ進めるように。そのために今は
「おやすみ」
 笑って、眠って、またあした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年07月14日


挿絵イラスト