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#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #第三層

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#ダークセイヴァー
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#ダークセイヴァー上層
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#第三層


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「――さあ、黒い花を咲かせましょう」

 黒い女の一言で、刹那の内に地獄に堕ちる。
 平和な村だった。限界まで擦り減らした幸福を、幾つも幾つも積み重ねて、ようやく勝ち取った平和だった。
 慈悲もなく、躊躇もなく、瞬く間に蹂躙されてゆく。
「いやだ、もういやだ……! ……ああああぁぁぁぁああああ」
「助けてくれ! たすけて、たすけ、……はは、は、ははぁはははは……」
「おかあさん、おかあさぁん! おかあさ……ぁ、あ……ぁ……?」
 命を奪われかける度に、それをなかったことにして、大切にした想い出を塗り潰されて、傷だらけになったその時、ひとり、またひとり、己でなくなる。
 壊れた抜け殻の上に、大輪の赤い花が咲いた。
 女が触れると、赤は黒へと変わり果てる。
 宛ら、鮮血が時を経て黒く淀むように。
「花束がいいかしら。花冠を編むのもいいわね。美しく気高い、闇の色……」
 静寂の闇の中、女は花の苗床の上を、何の感慨もなく踏みつけ歩く。彼女の頭を占めるのは、己が染めた黒花への愛と、今はもうひとつ。
 ――彼の方は、喜んでくださるかしら。
 静かに、ほくそ笑む。

●まだ白く
「酷いもんだ」
 その光景は余りに凄惨すぎた。
 他に言葉が見つからないほどに。
 猟兵として覚醒したその時、山立・亨次(人間の猟理師・f37635)は救いを求める悲痛な声を聞いた。幸福の記憶を削ぎ落として、生きて生きて生き延びて――もう、擦り切れてしまいそうだと、か細くも切実な、慟哭を。
 これが、そのひとつだと言うのか。亨次は僅かに眉を顰め、脳裏に叩きつけられた未来を、静かに語り始める。
「ダークセイヴァーの上層に住む『魂人』。そいつらが色んなもんを犠牲にして、やっとの思いで築いた村が、下層の『第五の貴族』とその配下に襲われる」
 何故、上層に第五の貴族が?
 どうやら敵は――黒咲姫と呼ばれるその女吸血鬼は、何らかの功績を打ち立てたことにより、上層を訪れ上位存在である闇の種族への面会を認められたらしい。
 その手土産として、魂人の血肉から咲く自慢の黒花を献上しようと言う心算なのだ。
「功績云々、言うだけのことはあって強敵だ。配下の花も、大将もな。だが、勝手知ったる敵でもあるんじゃないか?」
 亨次は新参者ゆえ疑問系だが、確かに何度か報告書にも上がっている敵だ。未知の相手ではない。
 更に今回は、転移した時には村は既に囲まれているものの、襲撃そのものが開始される前に滑り込める。魂人も、オブリビオンにとどめを刺すことこそできないが、この過酷な環境を生き延びてきた者たちばかりだ。戦力として共に戦ってくれるだろう。
「問題は、大将が『花中花の紋章』を着けてきてること、か」
 聞き慣れない紋章の名だ。
 その紋章は黒いイランイランの花のような紋様として、黒咲姫の鎖骨の中央部に刻まれている。甘く華やか、それでいて優美な香りは嗅いだ者を魅了し、紋章の主への攻撃を躊躇わせてしまう。
 厄介なのは強靭な精神力で心への干渉を阻んでも、身体の方が意思に反して脱力してしまうと言う点だ。
 だが、対処のしようはあると亨次は言う。
「あくまで香りだからな」
 香りを取り込まないよう立ち回れば、紋章の影響は受けない。かつ、紋章の発動から一定時間以上、誰も魅了することができなければ紋章の主の方が脱力してしまうと言う。
 なお、魂人たちに関しては共闘を頼むのであれば、事前に伝えておけば自身で対処してくれそうだ、とも。
「あと、これはただの『嫌な予感』なんだが。大将を倒せばそれで終わり、とは行かなそうだ」
 敵は精鋭。その上、紋章持ち。
 加えて、戦いを終えても何が起こるか解らない。
 間違いなく、危険な戦いに身を投じることになるだろう。
 ――それでも。

「助けに行きたいか?」

 頷けば、その言葉を待っていた、と言わんばかりに。
 亨次は、それと解らぬほど微かにではあったが、口元を笑みの形に変えた。


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあと申します。
 出さねばなりますまい、と言う使命感に駆られました。
 強敵と、未知との戦いです。よろしくお願いいたします。

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:集団戦『『死花』ネクロ・ロマンス』
 第2章:ボス戦『『黒咲姫』ブラック・ブロッサム』
 第3章:ボス戦『???』

 第1章では、主に付き従い上層の村を死の花園に造り変えようとする『ネクロ・ロマンス』の集団と戦っていただきます。
 なお、オープニングにもある通り、到着時点で魂人たちは無事ですので、共闘を頼むこともでき、それなりに頼れる戦力となります。
 但し永劫回帰を何度も使うような状況に陥ってしまうと、冒頭の悲劇が再現されてしまいますので、ご留意いただければ幸いです。

 第2章では、魂人の血肉から咲かせた花を闇の種族へ献上しようと企む『ブラック・ブロッサム』との決戦となります。
 『花中花の紋章』を宿していますが、オープニングの情報から適切な対処法を取ることができれば有利に働くでしょう。
 なお、この戦いにも生存している魂人が参戦してくれますが、永劫回帰の扱いについても第1章と同様のものとなります。

 第3章、グリモア猟兵の『嫌な予感』が現実となり、最後の決戦が始まります。
 敵の詳細は判明しておりませんが、第2章の相手とは比べものにならないほどの強敵のようです。
 そのため【魂人たちの『永劫回帰』の力を借りる旨のプレイングがなければどんなに優れたプレイングでも成功止まり】となります(=大成功の判定が出せません)。
 勿論、成功のみを重ねてクリアすることも不可能ではありません。が、敵の性質上、判定は厳しめになりますことを予めご了承いただければ幸いです。

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 戦闘パートの地形などの追加情報も、断章での描写という形で公開させていただきます。
 断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『『死花』ネクロ・ロマンス』

POW   :    パイル・ソーン
【既に苗床となったヒトの手による鷲掴み】が命中した対象に対し、高威力高命中の【背から突き出す血を啜る棘を備えた茨の杭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    フラバタミィ・ニードル
【体を振い止血阻害毒を含んだ大量の茨棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    バイオ・ビュート
レベル×5本の【木属性及び毒】属性の【血を啜る棘と止血阻害毒を備えた細い茨の鞭】を放つ。

イラスト:綴螳罫蝉

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●白から赤へ
「駄目だ、迎え撃つしか……!」
「で、でも、皆これ以上『永劫回帰』を使えば……!」
 村を囲む、毒々しいまでの黒い花。
 悪趣味な花園の形を取って押し寄せるその中心を、堂々と歩むのは、黒と死を何よりも愛する女王気取りの徒花。
 幸福を削ぎ落として、恐怖に心を抉られ続け、切れてしまいそうなか細い糸の中、魂人たちは生きてきた。その事実が、抗戦を、死地へと向かうことを躊躇う。
 これ以上は皆の心が壊れてしまう、誰もがそれを悟っていた。抗わずとも、迫る外敵からは逃げられないと知りながら。
 ――だが、状況が変わった。
 村の中央、光と共に、魂人とも外敵とも、違う何かが現れる。
「……あ……貴方たちは……?」
 魂人のひとりが、思わず光の中の人物に声をかける。
 彼らからは、自分たちへの悪意を感じない。彼らなら、もしかしたら。
 永劫回帰に頼るしかない戦いを、終わらせてくれるのかも知れない。たった一時だとしても。
 そんな、一縷の希望を込めて。
フィア・フルミネ
希望を込めてもらって申し訳ないが、私もキミたちと同じ魂人よ。見慣れた存在でごめんなさい。私の使命は魂人の救済。《永劫回帰》で心をすり潰すことは認めない。キミたちこそが未来への希望になるの。
こちらの話よ。キミたちを助けた思い出が私にとってあたたかな、やさしい記憶になるというだけ。
さて始めよう。といっても多勢に無勢。魂人たちを守りながら。ノーダメージなんて難しいよ。囲まれて棘に串刺しにされ鞭で打擲され、苦しみ悲鳴をあげのたうち回る。《永劫回帰》で打ち消すけれどね。元から流血も生傷も絶えないから、必要なものだけ、ね。ああトラウマになりそう。



●赤く染まっても
「――希望を込めてもらって申し訳ないが、私もキミたちと同じ魂人よ」
 光の中から聞こえた言葉に、魂人のひとりが、はたと気付く。
 そこにいたのは、色を抜いたように白い髪、鮮血のように赤々と輝く双眸、そして生気の感じられない白い肌――死してなお虐げられ、絶望の中に身を置き続ける、同胞。
 見慣れた存在でごめんなさい――罪はなくとも自責するように、フィア・フルミネ(痺れ姫・f37659)は目を伏せた。
「私の使命は魂人の救済。永劫回帰で心をすり潰すことは認めない」
 告げる――ことと、甘んじることは、どちらが残酷だろうか。フィア自身にも、もう解らなかった。
 けれどもこれは、切実な願いでもあった。どちらも残酷な道ならば、選ばせて欲しかった。
「キミたちこそが未来への希望になるの」
「え……」
「こちらの話よ」
 キミたちを助けた思い出が私にとってあたたかな、やさしい記憶になるというだけ――自分にしか聞こえない声で、ぽつり、零す。
(「さて、始めよう」)
 掲げた槍は、無惨にも折れていた。だが、望まずして発電機関に変えられた己の身体は仄白きブロンテースを帯電させ、細く小さな雷へと変える。
 赤が揺らめく。ひらり、ゆらり、花が、苗床となった下層の民が、傷だらけの身体に棘鞭を伸ばす。
 薙ぎ払う。貫き穿つ。白い電流に苗床が痙攣し、動かなくなる。けれどもその間に、別の鞭がフィアの腕へと絡みつき、締め上げる。
 多勢に無勢。魂人たちを守りながら――無傷でなんて、いられるわけがない。解っていた。
 思考の間にも、同胞が狙われれば庇って打たれる。棘が食い込み、串刺しにされる。傷跡を抉られれば、苦悶に声が漏れた。
「ぁぐ、……ッあぁ……!」
 のたうち回るほどの激痛。それでも幾重にも戒められた身体は逃れられない。抵抗虚しくフィアの意識は白く塗られて、そして。
 ――掻き消えた。傷跡も、元より在ったものの他には何もない。
(「元から流血も生傷も絶えないから、必要なものだけ、ね」)
 永劫回帰で真白に戻る。だから必要だったのだ。同胞たちがあたたかな記憶を保ち続けてくれる、その希望が。
 フィアの僅かで細やかな幸福は上書きされる。その穴を埋めるために。けれど、それでも。
(「ああ、トラウマになりそう」)
 守ると決めた。だから――また、その身で痛みを、受け止める。

成功 🔵​🔵​🔴​

葛城・時人
転送後直ぐ魂人たちに救援猟兵だと言い戦闘告知
即戦闘態勢を取るがこれだけは絶対に言う

「一緒に戦ってくれるのありがたいし、頼りにさせて貰うよ。
けど、頼む。今此処では、自分たちの命を戻す以外で永劫回帰は
使わないで欲しい」

特に今回は緒戦だ。初手から摩耗させたくもない
一つでも多く優しい思い出を幸福な記憶を失わせない為に
猟兵として必ず全力を尽くすと告げて

UC白燐大拡散砲詠唱

高速・多重詠唱も駆使、可能な限り沢山のククルカンで
戦場を覆う
同時に蟲笛でも呼び魂人を優先し護るよう伝え

攻撃を受けても止血が阻害されてもククルカンが防ぎ
治癒が続けば敗北はない!
「喰らえ!癒せ!」
蟲たち任せにせず剣でも切り込み早期撃破を期す



●白光は染まらず
「救援猟兵だ! 助けに来た!」
 力強く、高らかに、葛城・時人(光望護花・f35294)の声が響く。活力に溢れ揺るぎないその声の、言葉の、どんなに頼もしいことだろう。
 直後、すかさず抜剣しつつ、蟲笛を携えて。魂人たちを背に守り、彼らを顧みる。
「一緒に戦ってくれるのはありがたいし、頼りにさせて貰うよ。けど、頼む。今此処では、自分たちの命を戻す以外で永劫回帰は使わないで欲しい」
 彼らが戦い始める前に、これだけは伝えておかなければと決めていた。
 彼らは時人たち猟兵に、希望を見出している。危機に陥れば、躊躇いつつも永劫回帰を使ってしまうかも知れない。
 この先、敵の大将も控えている。そしてグリモア猟兵の『嫌な予感』――永劫回帰の力を借りなければならないほどの消耗戦になる可能性が高い。だが、今はその時ではない。
「一つでも多く優しい思い出を幸福な記憶を失わせない為に、猟兵として必ず――全力を尽くすよ」
 だから、信じて欲しいと告げれば。
 魂人たちは、恐る恐るながら、頷いた。
(「不安を、取り除かないと」)
 自分たちが倒れるようなことがあれば、信じてくれている彼らの心が折れてしまうかも知れない。そうならないためにも、奮起せねば。
 息を深く吸う。喚ぶ言葉を、疾く強く紡ぐ。
「――常闇に広がれククルカン、希望の光で敵を討て! そして気高き魂に、清らかな癒しを!」
 明けない夜に、希望の星を。
 天の川の如く広がるククルカン。もっと多く、もっと厚く。何度も奏でて、呼びかけて、応える鳴き声が増えていく。少しずつ、確かに。
 彼らは時人の意志を共有し、守ると決めた命を守るべく光をもたらす。即ち、魂人たちへと。
 赤を咲かせる苗床の民が身体を震わせ、弾かれるように棘の弾丸が村へと飛んだ。その全てを光輝く友は食らい、傷跡残すことすら許しはしない。
 棘が生え変わらぬ内に、時人の剣が閃いた。悪の芽を剪定するように、花開く邪悪な赤を割いてゆく。
 剣振るう腕を、再生し食い込む棘が苛んでも、白い燐光が即座に癒す。その恩恵は勿論、時人のみならず、魂人たちにも。
 苛烈な攻めが続こうと、それを上回る治癒が続く限り――敗北はない!
「喰らえ! 癒せ!」
「きゅい――!」
 白光が、強さを増していく。時人の決意に応えて。
 ならば、自分も――全力を以て、守り抜く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
少し難しい依頼って聞いてたけど
一人で飛び出すとは思ってなかった
間に合うかは分からないけど相棒を追いかけないとな

転送と同時に、魂人達には声をかける
「大丈夫。俺は味方だ」
魂人達が落ち着けるように敵へ牽制攻撃を仕掛けながら
「一緒に戦えるならありがたいけど
永劫回帰は使わないようにしてくれ
背中の文字にかけて、君達を護る」

多分相棒は先に戦ってるだろう
一人で無茶しないように俺も最初から全力でいく
【水遁「無尽霧影分身撃」】を発動し
分身で敵の攻撃の妨害と、爆弾への変化を使用して
魂人達の護りと敵への攻撃を兼ねるよう分身を操る
「魂人達には指一本ふれさせない」

分身を操りながら自身も銃撃とナイフで攻撃し
早期決着を目指す



●染み出す青に
(「何とか間に合ったか」)
 先行した『相棒』の、奮戦する後ろ姿を双眸に捉えて凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は短く安堵の溜息を吐いた。
(「少し難しい依頼って聞いてたけど、一人で飛び出すとは思ってなかった」)
 彼の気質は能力者時代の長い戦いを経て、よく知っている。急ぎ追いかけて正解だったと、戦況を認めて胸を撫で下ろす。
 さて、相棒始め先行した猟兵たちによって、魂人たちには自分たちのこともある程度は伝わっているのだろうが、改めて陸井からも。
「大丈夫。俺は味方だ」
 言葉をかける間にも襲い来る茨の主へと、護るための短刀銃で牽制射撃を仕掛けながら、続ける。
「一緒に戦えるならありがたいけど、永劫回帰は使わないようにしてくれ」
 真摯に、誠実に、言葉を重ねれば、魂人たちも、控えめながらも頷いて。
 彼らが信じてくれている。その証を得た陸井は、その信頼に答えるべく、前を、敵を、強く鋭く見据える。
 『護』一文字が風にはためき、その姿を確と現した。

「背中の文字にかけて、君達を護る」

 能力者として背負った、その誓い。
 それは、猟兵となっても、変わらない。
 術式を編む。果たすために。そして、何かと無茶をしがちな相棒を独り戦わせないために。
 最初から、全力で。初戦でも油断せず。
「通りたければ俺を見つけてみろ――捉えさせるつもりは、毛頭ないが」
 陸井の姿がぶれる。そのまま、霧のようにぶれは広がり――否、霧そのものが陸井の形を取って、無尽蔵にその姿を現す分身となり敵味方入り乱れる戦場へと広がる。
 水遁『無尽霧影分身撃』――水練忍者としての力を高めて編み出した、攻守一体の分身術。
 彼らは魂人たちを全力を以て護りながら、主と同じ武器を駆使して殺到する茨棘を撃ち落とし、敵の核たる苗床へと爆撃によって着実に傷を蓄積させてゆく。
 そして、陸井自身も。武器を、技量を振るうのは、そう、護るために。
 茨棘を刃で叩き落として、一条の弾丸で胸を撃つ。倒れ伏した苗床の民の、心臓があるはずのその場所からは、搾り取られた故か血汐が地を染めることはなく。
 だが、誇示するように花開いていた赤が萎れて醜く黒ずむのが、敵の企みを阻んだ証。
「魂人達には指一本ふれさせない」
 その言葉を、真とする。
 背負ったその一文字は決して、違えない!

大成功 🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
アリス、アリス…!
頑張ったね、皆のお声届いたよ
ええ、此処からは私も一緒に戦うわ

この大地に希望の光を届ける為に
さぁ皆も手伝って!
【Gift】発動し咲かせるのは白薔薇達
村を包むよう芽吹かせ守りの生垣を
迫る黒い花さんを、
伸ばした茨で捕縛したり攻撃からかばうの
捕えたら生命力吸収でダメージを付加
魂人や猟兵のアリスの手助けや時間稼ぎになれたら

鞭受けても毒と激痛耐性で耐え
白薔薇で体勢を崩し隙作り
トロイメライで紡いだ、浄化を籠めた風で属性攻撃
植物同士だもの遠慮はなしよ

戦う想いは尊重したい
でも、できれば永劫回帰は避けてほしいから
私達が少しでも不安を払ってあげれたら
…茨はね、悲しませる為じゃない
護る為に咲かせるの



●守護の白薔薇を
「アリス、アリス……!」
 澄んだ声が、凛と響く。
 幸福の花が摘み取られる未来を、芯から憂うような呼び声が。
「ああ、アリス!」
 光の中から、城野・いばら(白夜の揺籃・f20406)のぱあと綻ぶような笑顔が咲いて。
 護るべきアリスたち――魂人たちの悲劇が、未だ幕開けていないことに見せた、ほっと安堵の色。
「頑張ったね、皆のお声届いたよ」
「あ、貴女も、助けに来てくれたのですか……?」
「ええ、此処からは私も一緒に戦うわ」
 にこり、少しでも恐怖を和らげるよう柔らかく咲む。
 そのままくるり、人々の血肉を糧に種を繋がんと目論む悪意の花へと向き直る。柔和な表情はきりと引き締められ、この地を地獄になどさせないと、意志の光を宿した花緑青の眼差しで。
「この大地に希望の光を届ける為に――さぁ皆も手伝って!」
 ふわり、花開くは純潔にして純白。
 煌めき透き通る花弁は儚くも美しく、そしてどこまでも優しい。
「咲いて、咲かせて――輝きを、大地へ。根を張って、闇をも照らして」
 願いに応えて広がる白薔薇。害意を柔らかく押し留める生垣として村を包み込み、悪意の赤と黒へと絡みつく。
 魂人たちの魂を刈り取ることも、汚れなき花は咎めるように緑の腕を伸ばす。その生命の源を自らに還元し、幸福を摘み取る力を沈めてゆく。
「危ない!」
 護られた魂人のひとりが、いばらを狙う鞭に気付いて声を張った。
 だが、避ければその魂人が危ない。迷わずいばらは己の身体でそれを受け止めた。
「大丈夫、大丈夫よ」
 安心させるよう、笑顔で。
 痛みは、ある。だが、毒と激痛なら耐えられる。
 受け止めたそれに白薔薇を絡ませ、敵の体勢を崩したところへ夢紡ぐ白きトロイメライで風を喚ぶ。
 糸が織物として連なるように、浄化の風は束ねられて、苗床の民ごと吹き飛ばしその花を散らした。
「植物同士だもの、遠慮はなしよ」
 気丈に笑う。
 魂人たちに、憂いを与えぬように。
(「戦う想いは尊重したい。でも、できれば永劫回帰は避けてほしいから」)
 どうしようもない地獄にだって、きっと笑顔の花は咲く。
 いずれ花綻ぶその時を信じて、護りたいから。
「……茨はね、悲しませる為じゃない。護る為に咲かせるの」
 それを忘れた花には過去へとお帰り願おう。
 柔らかい風が、微笑む白薔薇が、魂の花を包んで護る。

成功 🔵​🔵​🔴​

神塚・深雪
「助けに、来ました……ッ!」

到着と同時に、UC『天落つる銀羽』を発動。
可能な限りUCの効果が途切れないよう、高速詠唱や多重詠唱も利用して、少しでも敵を減らすことと、魂人達や、参戦しているであろう他の猟兵達を癒すことを最優先に立ち回ります。

「死花の相手は、こちらで引き受けます! 魂人の皆さんは今は傷を癒して……!」

永劫回帰の力そのものを、できることなら否定したい。
けれど、そういう訳にもいかないのが現実としてあるのは、理解は、しているつもりです。
それでも、可能な限りそれに頼りたくはないんです。
あの人達の生きるための灯であるはずの、優しい暖かい思い出を、軽率に反転させるわけにはいきませんから。



●闇照らす白銀を
 ――その時、闇を清らかな銀光が割いた。
「助けに、来ました……ッ!」
 光と共に村へと届く、その言葉はまさに希望。
 神塚・深雪(光紡ぐ麟姫・f35268)の降らす清浄なる羽根が、黒く淀んだ花々を切り裂いてゆく。
「死花の相手は、こちらで引き受けます! 魂人の皆さんは今は傷を癒して……!」
 呼びかけながらも、深雪の唇はすぐに更なる詠唱を重ねて。
 光を、羽根を、絶やしてはならない。その一心で世界を照らす言葉を紡ぐ。世界が再び闇に沈まない限り、悪しき花は剪定され、仲間や魂人たちに降りかかる痛みは払えるはずだから。
 少しでも、永劫回帰に頼らなくて済むように。
 死してなお苦難に塗れた魂人たちを、己として繋ぎ止める残された幸福な記憶を、少しでも彼らの中に留め置くために。
(「永劫回帰の力そのものを、できることなら否定したい」)
 死を否定するための必要な代償。
 だとしても、希望さえ見えないこの世界に生まれ落ち、なおも救いなき世界に蘇った人々が命を繋ぐために求められるのが、幸福を苦痛に塗り替えることだなんて、到底、受け入れ難い。
(「けれど、そういう訳にもいかないのが現実としてあるのは、理解は、しているつもりです」)
 どれほど拒んでも、一度定められた現実は容易には変わってくれない。
 胸を痛めても、理不尽だと叫んでも、目の前に横たわる事実が、重い腰を上げることはしないのだ。
(「それでも、可能な限りそれに頼りたくはないんです」)
 今も魂人たちは、救いの手を差し伸べてくれた猟兵たちに勇気の灯火を得て、護られながらも襲い来る死に抗う気概を示し始めた。
 絶望しかけていた彼らを思えば、その変化は危険を伴いはするものの、理不尽に屈せず立ち向かわんとするその姿は、猟兵たちの心をも強く奮い立たせるものだ。
 だからこそ、再び折れるようなことが、あってはならない。
(「あの人達の生きるための灯であるはずの、優しい暖かい思い出を、軽率に反転させるわけにはいきませんから――」)
 だから、世界よ、輝け。
 理不尽はここに明けない闇の姿を取って、無辜の民をも無慈悲に喰らい尽くす。
 ならば絶えてくれるな光よ、降り注ぎ続け、一瞬でも長く、世界を白く清く染め上げろ――!

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『黒咲姫』ブラック・ブロッサム』

POW   :    【確定ロル型UC】ダークフラワー
【前章で猟兵の身体に密かに植えていた、】【種子を開花させる事で、猟兵の生命力を】【強制的に奪い、その生命力を吸収する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    【確定ロル型UC】ヤドリギマックス
【前章で猟兵の身体に密かに植えていた、種子】から【猟兵の体内に向けて無数の根】を放ち、【生命力を奪い、その身体を乗っ取る事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    【確定ロル型UC】千死万香ノ花
レベル×5本の【前章で猟兵の身体に密かに植えていた、魔】属性の【種子を開花させる事で、その花から強烈な毒】を放つ。

イラスト:sai

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●赤から黒へ
「あらあら。あらあらあらあら。随分としぶとい害虫もいたものね」
 自慢の黒花が散り果てて、それでもなお、黒を纏った花の吸血姫は優雅に笑みさえ浮かべて前へと進み出る。
 猟兵たちが魂人たちを庇うようにその斜線を遮れば、さも愉快そうに黒咲姫は笑みを深めた。
「まあ、いいわ。一寸の虫にも五分の魂とは言うけれど……貴方たちほどの魂の持ち主なら、私の自慢の花をより強く、美しく咲かせる最高の苗床となるでしょうね」
 そのようなことにはならない。苗床にされる前に、片を着けるまでだ。
 視線で語れば、黒咲姫は美しい笑顔のままで、嘲るように最悪の事実を告げる。
「ああ、おかしい。決まり切った未来を受け入れられないなんて――自分の身体をご覧なさい?」
 言われるまま視線を落とし――気付く。
 猟兵たちの顔に、首に、手に足に、根を張り小さく皮膚を貫いて、小さく芽吹く黒が在ることを。
 先の乱戦の内に、密かに植えつけていたのか。
「貴方たちも私の花の苗床になるの。そして最高傑作としてずうっと、愛でてあげるわ。大丈夫、彼の方にも渡さないわよ。今までで一番の花になるでしょうから。貴方たちは私だけのものよ」
 くすくすと、忌々しい含み笑いが猟兵たちの鼓膜を嫌でも震わせる。
 だが、冷静さを欠いては敵の思う壺。打開策を考えなければ。
 幸い、魂人たちは種を植えつけられてはいないようだ。種の影響が及ぶのは猟兵たちのみ。
 彼らを守りつつ、戦うと言う方針自体は変わらない。問題はこの種をどうするか、それから――、
「無駄な抵抗はおやめなさい。花中花の紋章の香りが村を覆い続ける限り、貴方たちに逃げ場など、何処にもないのだから」
 余裕綽々と言った様子で、勝ち誇るように胸を張る黒咲姫。だが――ふと、その言葉に猟兵たちは思い至る。
 もしかすると、この種の成長も花中花の紋章の及ぼす影響と比例しているのではないだろうか。
 だとすれば尚更、その香気を取り込むわけには行かない。
 噎せ返るような甘い香りの誘いを――拒絶せよ!
フィア・フルミネ
体が動かない、か。一呼吸で行動を制限されるなんてタチの悪い冗談みたい。もっともこの世界が悪趣味の坩堝みたいなもの。今更といえば今更か。
生体電流を暴走させ、自分の感覚が正常に働かないようにする。小型の結界を纏う要領、自己結界だよ。本来とても繊細な作業だけど、私は電流操作そのものは制御しないから。
何が起こるかと言うと、私は感電する。肉が焦げるのは厭わない。体が焼き切れるまで存分に戦えばいい。この雷を纏っている間私の体は自在に動く。
種も焼き枯れたの? オブリビオンというのも存外根性がないね



●弾く蒼白
(「体が動かない、か」)
 手の甲で鼻と口を塞ぎながら、微笑みを崩さぬ目の前の女に、フィア・フルミネ(痺れ姫・f37659)は憮然としたような眼差しを向ける。
(「一呼吸で行動を制限されるなんて、タチの悪い冗談みたい」)
 悪趣味だ。悪趣味極まりない。尤も、この世界が悪趣味の坩堝みたいなものかとフィアは思い直した。
 それも、今更と言えば今更。
「さあ、貴方たちの花を咲かせて頂戴?」
 妖艶に誘う黒咲姫。敗北の予感など、微塵も感じていない顔。
(「皮肉でも、こんな時は役に立つのね」)
 かつて、自分の命を奪った高電圧の電流。
 己の身に宿ってしまったそれを、生体電流の暴走を、フィア自身の奥深くで、静かに引き起こす。
 ばちばちと、内側から絶えず針で刺されるような、痛覚。広がる。大きくなる。もう、止められない。
「っく、……ぅあ、あ……ッ!」
 いたい。痛い、痛い。痛い痛い痛い痛い痛痛痛痛――痛み。痛覚。それ以外の感覚が、麻痺する。
 小型の結界を纏う要領で、電流の自己結界を張った。本来はとても繊細な作業だが、フィアは電流操作そのものは制御しない。
 故に、感電は避けられない。肉が焦げる。今にも身体が焼き切れそうになる。
 だが、構わない。今は存分に、戦うだけ。雷を纏う間、フィアの身体は痛みと命を代償に自在に動く。
 フィア自身の肌のように、蒼白の雷によって形作られた槍もまた、稲妻を差し向けながらもその穂先で敵を捉えんと伸び続けた。
「まだ抗うつもり? 無駄なのに」
 無駄かどうか、試してみればいい。
 苦痛に苛まれても、フィアの瞳はそう物語っていた。
 未だフィアは自由の身だ。少なくともこの女の意のままになどなってやらない。
 魅了できなければ――お前はどうなるのだったか。
「……ッ!!」
 黒が、停滞を始める。
 逃さず、稲妻の先端はその白く細い肩口に深々と突き刺さった。諸共に広がる電流に、初めて眼前の女の顔が負の感情に歪む。
 同時に、フィアの身体から少しずつ、ぼろぼろと小さな炭が零れ落ちた。
「種も焼き枯れたの? オブリビオンというのも存外根性がないね」
 忌々しげに、睨まれる。
 ああ、一矢報いてやった。少しだけ溜飲が下がる。
 同胞の希望にはなれなくとも、今はきっと、それで充分なのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

瀬古・戒
【アウグスト(f23918)】と
グスト呼び

記憶ねぇけどダークセイヴァーの出身だから、助けたい
…死んだ俺の父さん母さんも何処かにいるんかな

ほーん、つまりは楽しい息止め大会開催か?と思いきやグストさんきゅ!後でラーメン奢るよ
軽口はここまで
念のため呼吸数は最小限にハンドサインで連携を
やられる前にやるまでだ!
体の種は速攻拳銃で撃ち飛ばしたり、ガントレットでほじってポイ
地獄の炎で焼き止血
痛みは丁度イイ目覚ましだ

紋章からの香ならば、なるべく距離をとり、魂人を背に遠距離から撃ち抜くまで
落ち着いて、でも急ぎ誘導しUCを頭に叩き落とし、一気に畳み掛け仕留めちゃる
「視力」と「スナイパー」にゃ自信ある
外さねぇよ…!


アウグスト・アルトナー
【戒さん(f19003)と】

まず、紋章の香り対策ですが
ローズマリーをたっぷり詰めたペストマスクを着けておきます
これでおそらく、ぼくが香りを取り込むことはないはず

敵の種は……おそらくぼくらにも植え付けられているでしょう
兄さんのナイフの封印を解き、自分に突き立ててえぐり出します

それから、【救済の花】を発動
イランイランの香りを、クリスマスローズの香りで上書きします
精神に作用する魅了能力であれば、このユーベルコードで打ち消せるはずです

念のため呼吸は最小限に
戒さんとの連携はジェスチャーで

ここから2分弱が勝負です
【救済の花】はギリギリまで発動し続けます

敵への攻撃はあなたに任せます、戒さん
信じていますよ



●青金より風出づる
 女の肌に花開く黒花。
 花中花の紋章から漂う甘い香りは、濃密な死の香りだ。
(「ほーん、つまりは楽しい息止め大会開催か?」)
 香気を取り込まないためには、香気そのものを散らすか、自ら遮断するしかない。辟易した瀬古・戒(瓦灯・f19003)がじっとりと瞼を半分だけ下ろした、その時。
 ――ずぶり、肉を抉るような音。
 甘い泥を洗うような、清く爽やかなローズマリーを食むペストマスクでその端正な顔を覆い隠した、アウグスト・アルトナー(黒夜の白翼・f23918)。
 邪心ひとつない香りを、アウグストは胸一杯に吸い込む。これでまず自らへの誘惑は断ち切れる。後は、戒にも。
 そう願って彼の右腕に突き立てられた刃は、強い意思の力で解き放たれた兄のナイフの銀色。植えつけられた種と共に引き抜かれたそれは、確かな煌めきと鋭さを以て奇跡を起こす。
「……これは」
 黒咲姫が、その闇色の目を瞬かせる。
 描かれた傷跡から花開く、清廉たる花。心を安らげる彼の花――クリスマスローズの香りは魔を払い、狂気から正気へ引き戻すとされる。
 そしてこの花中花――イランイランの香りが超常の力持つ紋章の効果によるものならば、このクリスマスローズの香りもまた然り。
(「精神に作用する魅了能力であれば、このユーベルコードで打ち消せるはずです」)
 香りを上書きし、精神への干渉も阻む。
「グストさんきゅ! 後でラーメン奢るよ」
 呼吸は浅く、短く感謝を告げて。
 軽口はここまで――と、今度はしっかり、戒はそのネオンブルーアパタイトの瞳全てに討つべき黒を映し出して。
 ここからは、言葉も呼吸も最小限。
 連携はハンドサインで。マスク越しに視線を交わして、さあ。

(「――やられる前にやるまでだ!」)

 己の覚悟を、再確認して。
 ならばもう、迷いなく。己の身体に根を張る種を、戒は双銃で弾き出し、手甲から伸びる猫の如き爪で抉り取り、捨てた。噴き出す赤は湧き出る地獄の蒼炎で焼き止める。
 痛いし、熱い。けれど、構わない。
(「丁度イイ目覚ましだ」)
 思考が冴える。悪しき香気の影響下から僅かでも逃れるべく、即座に飛び退き距離を取る。
 それを認めて、アウグストは敵へと向き直る。
(「勝負は二分弱。限界まで保たせます」)
 クリスマスローズの守護とて無限ではない。
 限界を超えれば、アウグストの命さえ危うい。それでも、その直前まで命を燃やして、花を咲かせる。
(「上層の魂人たちを、一人でも多く守り、幸せにする――」)
 続ければ、いつか死に別れた家族にも届くと信じて。
 ここではないけれど、きっとこの上層の何処かに、愛する家族がいるはずだから。
 これが、彼が己に課した戦い。限界まで、全力で。
(「信じていますよ、戒さん」)
 攻め手は戒へと、一手に任せることになるけれど。
 胸に手を当てて再び彼女へ視線を送れば、ニッと口元が笑んだ、ように見えた。
(「落ち着いて、でも急いで――」)
「逃げられるとでも?」
 女の視線は、魂人を背に庇った戒へと飛んだ。踏み出し距離を詰めようとするその足元にまずは一発。
 まだ牽制、そして陽動だ。本命は、これから。
(「――記憶ねぇけど」)
 一度、背後を顧みる。
 生の色を抜かれた魂人たちは、かつての下層の住人。
(「ダークセイヴァーの出身だから、助けたい」)
 そこはアウグストの故郷であると同時に、戒の故郷でもあった。
 未だに、どうしたって思い出せはしないけれど。
(「……死んだ俺の父さん母さんも何処かにいるんかな」)
 こうして、上層の魂人たちを救い続ければ、いつか巡り逢える日も来るだろうか。
 だが、今はその思いを振り払う。想起するのは後でもできる、生きてさえいれば。
 生きるために、守るために――狙いを定める。
(「これでも視力と遠距離射撃にゃ自信あんだ」)
 銃口は既に、女の頭を捉えた。後は、引き金を引くだけ!

(「外さねぇよ……!」)

 弾ける。
 破裂音は高らかに天へと響く。
 黒い影はゆらり避けようとした。
 ――だが、できなかった。
 戒とアウグストは、女の支配を全て拒絶した。
 従える者がいなければ、女王にはなれない。
 揺らいだ礎では、立っているのが精一杯。
 女の頭が、ごうと燃えた。
「……ッ、ぁああ!!」
 蒼く、炎は黒を塗り潰す。
 青白く燃える星が、頭上へと降り注いだが如く。
 裁きのひとつが、ここに下された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
【護】

なるほど、そういう攻撃もあるんだな
でもそんなもので止められる訳にはいかない
背中の魂人達を護る為にも
「逃げる?悪いがそりゃお門違いだな」

俺の力じゃ香りには対処し辛い
でも俺には仲間達が居る

香りが対処されれば身体の乗っ取りも封じ込めも
片腕が動けばナイフが振える
指一本動けば引き金を引ける
後は覚悟のみ
根と種子を目視で確認し
ナイフで自身の肉ごと根を抉り
銃弾で種子を打ち抜いて排除
「自分の体なら気楽なもんだ」

排除しながら空いた指で文字を描き
【戦文字「死龍葬弾」】を書き上げる

「時人、後で回復は任せた」
相棒に声をかけ、文字を装填
血に塗れながら全力で前へ
縛りも妨害もないのなら、後は全力で叩き込むのみ


神塚・深雪
【護】
※黒咲姫には機嫌が悪い口調で対応

姑息なことをなさいますね……!

身体に巣食う姑息な種が芽吹き開花しようとする感覚に薄ら寒いものを感じつつも、振り払わんと

――今、仮初の解放を

一時的に真の姿を解き放ち、UCを展開
赤光纏う炎の嵐を喚びおこして、身に巣食う黒花を灼き祓い、風で毒香を巻き上げ散らし

身を灼くからには傷も負うかもしれませんけど、私は独りじゃないですから
肩を並べて、背を預けあえる人達が、此処に
それに私達は、魂人の皆さんの、希望。
なら、斃れるわけにはいかない……!

忌まわしき毒花と共に燃え落ちて、在るべき骸の海へ還りなさい!

真の姿:白い翼に髪と同じ毛色の狼耳。其れは彼方に眠る、正しく『真の』姿


葛城・時人
【護】

そうきたか…だが

動けなくてもそれは俺の体だけの事だ
言葉も詠唱も必要はない

…ククルカン!
忌む人たちの為に形を変えてからずっと
相棒と同じ位共にいる蟲を呼ぶと
一匹が肩の後ろから顔を出す
彼らは俺が動けなくても関係はない

往け!そしてこの香りを消し飛ばし無くせ!

そして同時に仲間も魂人も癒せと念じて
白燐大拡散砲を渾身の裂帛の想念、気合で送り出す!

彼らの突撃は戦争で始皇帝の水銀宮殿もほぼ破壊した
飛翔と攻撃の相互作用で人が居ない方向へ香りも飛ばせる!

目論見通り香りが飛び一時的にでも動けるなら
即時蟲笛から更にククルカンを呼び攪乱
同時に技能の全ても使い振払い全力で攻撃を!

決して諦めない…全てを護り抜くために!



●高潔の黒一文字の元に
 ばらばらに戦っていた、武道館の仲間たち。
 『護』その一文字の意志の元に集った彼らは、乱戦を乗り越え、今ここに合流を果たした。
 だが――無事を喜び合っている余裕はなかった。
「姑息なことをなさいますね……!」
 神塚・深雪(光紡ぐ麟姫・f35268)は今、その黒真珠の如き瞳に静かな憤りの色を宿して、卑劣なる黒の吸血姫と相対していた。
 無理もないことだ。今、彼女と仲間たちの身体には、抗う暇も与えられずに邪悪の種を植えつけられていたのだから。
「卑劣? 随分可愛らしいことを言うじゃない。ここでは強さが全て……謀も実力の内ではなくて?」
 軽やかな嘲笑さえ、憎らしいほど艶めかしい。
(「謀も実力の内……と来たか」)
 葛城・時人(光望護花・f35294)は己の胸の奥へと意識を向けた。
 怒りは確かに、秘められて。だが、それでもまだ、冷静に敵と向き合えている。自覚しただけで幾分か頭が冷えた。
 善悪など最早、この世界では機能していない。
 そう言った意味では黒咲姫のその持論は、どこまでもこの世界の住人なのだと思い知る。
 だが、それも過去のことだ。この悪姫に、未来を踏み躙らせてなど、やるものか。
 相棒に――凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)に、ちらと視線を向ければ。彼は、静かに頷いた。
(「そういう攻撃もあるんだな。でも――」)
 時人も、深雪も、気持ちは同じだ。それは確かめるまでもなく、解っていたことだ。陸井に初めから、迷いはなかった。
(「そんなもので止められる訳にはいかない。背中の魂人達を護る為にも」)
 それこそが、陸井の、仲間たちの決意。困難でも、ここで戦うと決めた、その胸の内。
 護の意志を心に掲げた者たちの、すべきこと。それは、何があろうと変わりはしない!

「逃げる? 悪いがそりゃお門違いだな」

 卑劣な罠に嵌められようと。
 濃密な悪意に侵されようと。
 必ず、護る――その意志は決して、折れない!
「何処までも無駄に足掻くのね。諦めて仲良く花になってしまえば楽なのに」
 一瞬、嘲笑うその胸元の黒花が、どくんと脈打ったように陸井たちには見えた。それが香気の広がる前兆なのだと、本能的に察する。
 ざわりと寒気がした。深雪は己の腕を一撫でする。ここにも、姑息な種のひとつが巣食い、開花の時を待ち望んでいるかと思うと。
 だが、恐怖に震えて立ち尽くすとでも思ったら、大間違いだ。悪意の根など全て、振り払ってしまえばいい。
「――今、仮初の解放を」
 神々しいまでの銀光が、深雪を覆った。
 眩さに皆が、思わず目を伏せる。
 光はやがて、赤光纏う炎の嵐へと変わった。黒花の芽を焼き払い、虚空に広がる毒をも遥か巻き上げる。
 赤の中から、白銀の翼と狼の如き耳を得た深雪が現れた。それは常ならば彼方に眠る『真の姿』に違いなく。
 仲間の覚悟を見て取った時人も、即座に動いた。
(「躊躇う時間さえ惜しい。動けなくてもそれは俺の身体だけの事だ。言葉も詠唱も必要はない――」)
 自らの身すら灼き続ける、深雪にばかり負担はかけさせられない。
「……ククルカン!」
 相棒の名と同じく、呼び慣れたその名前。
 忌む人たちのために形を変えて、今まで、ずっと。
 高らかに応えるように、鳴いて。時人の肩からその姿を現し、白く輝きを放って空へと躍り出る。
 時人の身体が言うことを聞かなくなっても、彼らはその意志を確かに汲んで、願うままに動く!
「往け! そしてこの香りを消し飛ばし無くせ!」
 応える声が、ひとつ、またひとつ増えて、広がる。
「絶えず輝き世界を照らせ! 仲間も魂人も、癒やし続けるその光で――!」
 渾身の裂帛の想念を、咆えるように吐き出した。
 戦争で始皇帝の水銀宮殿をもほぼ破壊した、白き戦友たちを、今この瞬間にも信じ続けるが故に、打ち破れることを疑わず。
 気合を乗せた、時人の声。深雪の心にも、強く響いて震わせる。
(「私は独りじゃない。肩を並べて、背を預けあえる人達が、此処に」)
 その存在の、何と頼もしいことか。
(「それに私達は、魂人の皆さんの、希望。なら――」)
 ふらついてでも、力奪われても、膝は折らない。
 独りだけで、戦っているのではない。だからこそ。
「斃れるわけにはいかない……!」
 深雪が送り出す、空渡る七色のひとつが姿を変えた天恵の赤は未だ、毒を阻む熱風の壁となっていた。
 共に時人の白き風もまた毒の香気を吹き飛ばす。熱と羽ばたきが、魔ごと祓うかのように。
 そしてその恩恵を受けるのは、彼ら自身と魂人、だけでは、ない!

「――陸井!」
「お願いいたします……!」

 その言葉を、待っていた。
 陸井独りの力では、香りに対処する手段に乏しかった。口惜しいが、その自覚はあった。
 だが、時人が、深雪が、それぞれの風で道を切り開いてくれた。
 身体は動く。根の侵食も止まりつつある。
(「片腕が動けばナイフが振える、指一本動けば引き金を引ける。後は――覚悟のみ」)
 だが、それももう。
 決まりきっていたこと。
 躊躇わず、視界に捉えた黒に刃を突き立てる!
 痛みに歯を食いしばりながらも、止まらず肉を抉って腕を滑る鈍色が、根をも引きずり出して。
 その源たる種を、弾丸が全て撃ち砕く。
「自分の体なら気楽なもんだ」
 口元には、笑みすら浮かんで。
 赤の滴る腕が、虚空に文字を描き示す。
「手間はかかるが、」
 その威力は陸井自身のお墨付きだ!
「くだらない。完成さえしなければ、――!」
 成就を阻もうとした黒花は、しかし白き燐光がちかちかとその主の周囲を取り巻き撹乱する。
 腕が動く。指が笛を繰る。時人の奏でる楽の音が、黒咲姫の動きを抑え込んでいるのだ。
「決して諦めない……全てを護り抜くために!」
「忌まわしき毒花と共に燃え落ちて、在るべき骸の海へ還りなさい!」
 白の合間を塗って、赤の光も再び熱を伴い、攻めに転じる。悪しき花を残さず焼き尽くさんと、波のように村の外へ向かって押し寄せる。
「時人、後で回復は任せた。神塚さんも、余り無理はしないでくれ」
「あ、」
 その文字は、ここに完成した。
 血に塗れながらも、陸井は前へと力強く、踏み出して。
 現れたるは総画、六十四。正方に並んだ四匹の龍が表す『テツ』の一文字。
 準備は全て、整った。後は全力で――叩き込むのみ!

「さぁ……受けてみな」

 炎に巻かれ、蟲に喰らいつかれ、自由に動くことすらままならぬ花の主。
 紋章の意思とも関係ない、護る意志を保ち続けた彼らの力が実を結んだ――逃れる術はもう、ない!
「種も……残さず、消し飛べ!!」
 一画一画を凝縮した、言の葉の弾丸を。
 砲弾とも呼べるほどに膨れ上がったそれを解き放てば、真っ直ぐに飛び、黒咲姫の胸へと狂いなく吸い込まれる!

「――――――!!!!!!」

 悲鳴すら、なかった。
 理解ができない。魂人も猟兵も、取るに足らない存在のはずだった。
 それが、何故、我ら上位種族を、打倒できるのか。
 きっと最後まで、その答えは解らないまま。
 大輪の黒花が、散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
頑張って咲かせた花弁をね
褒めてくれるのは嬉しいけれど
アナタの方法は好きになれない
ペンキで塗り潰されるのと変らないもの
それに…愛でてほしいって想うのは、アナタじゃないから
お気持ちには応えられないわ

蝶柄のリボンにそっと触れ
心落ち着ければ、考えも広がって
グリモアのアリスが言っていた大将って、あのコね
完全に発芽してないのなら、方法はあるの
それにいばらは、茨だもの
きっと栄養にはならないのよ

【白夜の魔女】になって、魔力と体内の茨を活性化
先ずは村を覆う香りを、
トロイメライで紡いだ浄化の風で属性攻撃
吸わない様に、吹き飛ばしちゃおう
出来るだけ広く範囲攻撃してね、
戦う皆への影響を防ぐ時間稼ぎになれば
魂人さんも、風の届く場にいてくれるよう伝えるの

魔法の糸を紡ぐ間は、薔薇の皆にお願い
追尾の茨で、攻撃を武器受けたり
黒花さんのお邪魔虫を
体の痛みには毒と激痛耐性で耐えつつ、
茨で追尾し捕まえて生命力吸収
逆に、糧とし枯らしてしまうわ
遠慮はなしって、言ったでしょう

魅了を避け、吸血のアナタが脱力した所を
一気に仕掛けましょう



●白夜に香る
 遂に黒花は散った。倒した。
 ――そう誰もが思った、その時だった。

「やって、くれるじゃない」

 ゆらり、女の影が立ち上がる。
 黒花は、何度でも咲き誇ると示すように。
 第五の貴族。その力と、執念は、より陰鬱なこの上層に在っても、変わらないと言うのか。
 その感情の向かう先が、闇の種族の元へ参ずることなのか、猟兵たちを花と変じることなのか、解らなくなっても。
(「頑張って咲かせた花弁をね、褒めてくれるのは嬉しいけれど」)
 花の化現たる城野・いばら(白夜の揺籃・f20406)の常緑の眼差しには、憐憫さえも込められて。
 だが、それでも、花として。
「アナタの方法は好きになれない。ペンキで塗り潰されるのと変らないもの。それに……」
 想起する。
 胸に広がるのは、優しい色の面影。ここにはなく、目の前の女には――否、代わりなど誰にも、生み出せぬもの。

「愛でてほしいって想うのは、アナタじゃないから」

 お気持ちには応えられないわ、と。
 答えと共に、再び悪意がいばらを、アリスたちを覆い尽くさんと、広がった。
 絶望を煽るような光景。だが、想いのかたち、そのひとつ、蝶柄のリボンにそっと触れれば、心も落ち着く。
 胸のざわめきが凪いで止めば、考えの及びも広がりゆく。
(「グリモアのアリスが言っていた大将って、あのコね」)
 紋章の力の源は、あくまで香りだからと。そう、彼は言っていたはずだ。
 そして本人の言から、香りによる魅了と植えつけられた植物の成長は、ある程度連動するものと推測できる。
 今はまだ、完全に発芽はしていない。ならば、切り抜ける方法はある。
「それにいばらは、茨だもの」
 花であり、茨。そう、いばらは、身に宿る種と、元は同じ存在なのだ。
 だからこそ、解る。理解ができる。
 黒花の本質も。
「きっと栄養にはならないのよ」
 そして、白薔薇は――魔女と成る。
 薔薇の挿し木を楔とし、魔力が、荊棘が、溢れて、満ちる。
「さあみんな、力を貸して――」
 夢紡ぎの紡錘は今一度白く煌めき、風を織る。清らかに吹き渡り、誰の鼻腔にも口唇にも毒香が触れぬよう、遥か彼方へ吹き飛ばす。
 敵が起き上がる限り、戦い続ける仲間たちを。
 敵が倒れぬ限り、固唾を飲んで結末見守る魂人たちを。
 この風で、守るために。もっと、遠くへ。
「風の届く中にいてね。きっと、護って見せるから」
 不安げな民たちへと、優しく声をかけて微笑む。
 大丈夫なのだと、心から思って貰えるように。
「ち……」
 充分な種の成長が見込めなくなった黒咲姫はそれを悟ると、花弁の刃を投擲するように、いばらやその周囲へと差し向けるが。
 花守る茨が、それを許しはしない。
 鞭のようにうねり、叩き落とす。空舞う黒がなくなれば、足元を掬おうと地を張って、敵の動きを堰き止める。
 護るための茨を。我が身に咲き、萌え出づる花は、そうでありたいと、願いながら。
 芽吹かずとも僅かながらも身体を蝕む毒と痛みに耐え抜いて、時を待ちながら。
「どうして、抗うの。抗えるの! 弱者に希望など、ありはしないのに!」
「遠慮はなしって、言ったでしょう」
 黒の色に苛立ちが見える。
 白の色はただ、それだけを告げた。
 応えるように、伸びる茨は遂にいばらの身を食い破って咲き乱れんと現れた芽を締め上げた。
 いばらの身から奪った生気を、取り返す。元より宿っていた生命すらも糧として、枯れるまで。
 そして遂に、相反する黒へと伸びた茨もその身体を確と捕らえ。
「!」
 四肢に絡みつき、棘で食いつき、逃さぬように。
 二度と、悪しき花園を生まないために!
「――おやすみなさい」
 白薔薇が、黒花を包み、覆い尽くした。
 それは永遠の夢路への誘い。
 茨に抱かれ、眠るがいい。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『赤い靴のカーレン』

POW   :    レッド・シューズ
【踵による踏みつけ 】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    シャル・ウィ・ダンス
指定した対象を【ダンスの伴侶 】にする。対象が[ダンスの伴侶 ]でないならば、死角から【脚を狙い続ける斧】を召喚して対象に粘着させる。
WIZ   :    ダンス・フィーバー
【踵を打ち鳴らす 】事で【熱狂的なダンサー】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:和狸56

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミツキ・ヨモツです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●黒から赤へ
 今度こそ、終わった。
 安堵の空気が村に広がる。だが、猟兵たちは思い出していた。
 事前に告げられた『嫌な予感』を。
 気を緩めず、周囲を警戒する。だが、不審なもの、嫌な気配は、感じ取れない。
 ――その時だった。

「……ぁ、あ」

 白薔薇が、揺れた。
 黒咲姫を包み込んでいた花が、茨が、痙攣するように揺れた。
「ぁがっ……ぁ、あ、あ……っ」
 苦悶の声。紛うことなく。
 倒した。しかし、強敵だった。紋章の力を込みにしたとしても。
 その強敵が、苦しみ、花の中でのたうち回っている。
 茨の中から現れた手は、助けを求めるように天へと伸ばされ。
 黒く塗り潰された爪が――赤く、彩られてゆく。
 纏う黒すら、一呼吸の間に赤へと変じる。
 染められる。黒より強い赤で。
 そして、茨から解き放たれたのは。

「アハハ、アハハハハハハ! 御機嫌よう! 舞踏会にはいい日和ね?」

 赤花纏った女が嗤う。
 まるで無邪気に、しかしその深紅の瞳に、確かに悪意を淀ませて。
 その存在は明らかに、黒の吸血姫とは、異質なもの。蹂躙する立場と言う点で、変わりはないが――格が、圧倒的に違う。
「観客も沢山。踊らなければ損と言うもの! さぁさ、靴も脚も、壊れるまで踊りましょう!」
 猟兵たちに、誘いの手を。
 ざらり、心が、綯交ぜになる。
 去来するのは拒絶、嫌悪。しかし同時に――甘受。
 香りは、もうない。あの悍しささえ覚えるほどの甘い香りは、失われていると言うのに。
 あれを、胸一杯に吸い込んでしまったのかと、錯覚するかのように。身体が、意思に反してその手を、取ろうとする。
 ふらり、ふらり、一歩ずつ、進み出る。跪き、手の甲に口付けてしまいそうな身体を、しかしそれだけはどうにか、叱責した。
 だが、このままではこの身は、その手を取ってしまう。
 取れば、きっと、終わりだ。どうしようもない悪寒が、全身で警鐘を鳴らしているのに。
 ――ふと、思い至る。
 永劫回帰なら。その手を取り、破滅への舞踏に身を任せてしまっても、『なかったこと』にできる。
 意志の力だけで、振り払うのが困難であるのなら。ああ、だが。しかし。それは。
 葛藤が、逡巡を生む。だが、提示された選択肢は己を選べと今にも我が身を追い込んで。
「Shall We Dance――踊りましょう?」
 決断を、迫られる。
アウグスト・アルトナー
【青金】

死に至る舞踏への誘いに応じる、ですか
ええ。死んでも嫌ですね

とっさに、必要な枷を足にはめますが
こんなわずかな狂気耐性、焼け石に水ですね

魂人に叫びます
――ぼくに永劫回帰を!

【救済の花】使用
先刻、限界ギリギリまで使っていたので、ぼくは死にます

目の前が暗く
ひどく寒い
ああ
これが

……魂人に礼を言います

改めて【救済の花】を用い、舞踏への誘いをはね除けます

後は真っ向勝負ですね
拳銃をクイックドロウし、戒さんを支援する形で敵に援護射撃
動きを阻害するように

敵に近づかれたら、オーラ防御を全開にし
オーラの内側から零距離射撃します

倒れた戒さんを抱え上げて、戦場を離脱
生きて帰りましょう
待っている人が、いるんですから


瀬古・戒
【青金】
お前なんぞと踊る気なぞ欠片もねぇ、が、ナニ、コレ…頭おかしくなる
ぶはッ!グストにまた助けられた感謝しきれねぇ

グストのUC発動後、即UC使用
刺し違える覚悟でガントレットの爪で切り裂いてやる
合図し魂人に永劫回帰を使用して貰い、刺し違え俺が死ぬ未来をなかったことにして貰う
刺し違えるくれーじゃなきゃ致命傷与えらんねぇだろ
覚悟の上だ…やってやるさ!

グストの覚悟を、魂人の記憶を、無駄にしたくねぇ
俺の記憶を燃やし、今の持てる限りの力で、「破魔」の力を叩き込んだる!

110秒後、俺は倒れるけど
他の猟兵が継いでくれるて信じてるから

はは、そーすね帰、らなきゃ
…わりぃグスト、首輪に書いてある病院に転がしといて



●金落ち青溢れ
「死に至る舞踏への誘いに応じる、ですか」
「お前なんぞと踊る気なぞ欠片もねぇ」
「ええ。死んでも嫌ですね」
 アウグスト・アルトナー(黒夜の白翼・f23918)の、瀬古・戒(瓦灯・f19003)の、意志は固い。
 例え拒めば踊る間もなく首を刎ねると言われたとしても、それは変わらないと胸を張って言えるだろう。
「が、ナニ、コレ……頭おかしくなる」
「……」
 先に異変を感じたのは、戒の方だった。
 殺戮者と踊る曲などない。その意志は揺るがないと、今だって言えるのに、脚が、身体が、操られるように言うことを、聞かない。
 アウグストも、咄嗟に己の足首へと枷を嵌めた。彼には必要なはずのそれは、しかし今は焼け石に水でしかない。と、アウグスト自身が痛感していた。精々一歩、進み出るのが遅れだけだ。
 だが、その一瞬で彼は、声を張ることができた。
「――ぼくに永劫回帰を!」
 その一言だけで、伝わったはずだ。
 信じて、破邪の花を再び、咲かせる。
 限界を、1秒、たったの1秒だけ、超えた。
 どくり、アウグストの心臓が大きく脈打った。

 ――目の前が暗く、ひどく寒い、
 ああ、これが――、

 そうして、アウグストは死んだ。
 かつて家族も、こうして最期を迎えたのかと想い馳せながら。
「……ありがとうございます。その痛みを、無駄にはしません」
 そして、蘇る。
 否、最初から、死んでなどいなかった。そう言うことになった。永劫回帰の力で以て。
 魂人の一人が、胸を押さえて呻いている。だが、アウグストの死とその事実が返上されるまでの間は、全くと言っていいほど空いていなかった。
 躊躇わなかったのだろう。猟兵たちがいなければ、彼らはこの赤にすら相見えることなく蹂躙されていたのだから。
 ならば、全霊を以て応えよう。まっさらになった身体で再び、命を糧に花を咲かせて。
「ぶはッ!」
 そしてその決死の行動は、今にも望まぬ手を取りそうになっていた戒を、既のところで連れ戻した。
 反射的に数歩分飛び退き、状況を理解する。
(「グストにまた助けられた、感謝しきれねぇ」)
 ラーメンに餃子もつけるか、なんて一瞬考えて。
 だがすぐに、己を焦がす地獄の炎が燃え盛る。
 戒自身の記憶すら焼いて勢いを強める業火は、彼女の潜在能力を瞬時に限界を超えて引き上げた。
「――死んだら、頼む!」
 魂人を、傷つける選択だと解っていても、今はその力を借りて。
 絶対に、生きて、勝つ。仲間を、護るべき人々を、誰も死なせない、例え刺し違えてでも!
(「覚悟の上だ……やってやるさ!」)
 燃えろよ焦がせ、そのために必要な記憶なら、くれてやる。
 今、戒の持てる限り全て注いで、破魔の力を叩き込む!
「あら、激しいダンスがお好み? じゃあ、貴方の舞台で踊ってあげるわ! 特別よ?」
「ダンス、ね。――後悔すんなよ?」
 軽口に軽口の応酬。だが、軽やかに笑い踊る踊り子に相対する戒の唇はきゅっと引き結ばれ、鋭い眼差しで光なき瞳を射抜き続けている。
(「グストの覚悟を、魂人の記憶を、無駄にしたくねぇ。だから俺も――!」)
 何度も、何度でも、研ぎ澄まされた爪を振るう。
 ひらりひらり、躱される。踊らされている。自覚はある。それでも粘り強く、喰らいついていく。
 ――だが、ダンスパートナーは伴侶に従順たれと。
 何処からか飛来した斧が、迫り来る。
「戒さん!!」
 アウグストの悲鳴染みた呼び声が、戒の鼓膜を突き刺した。
 脚が、膝から、根本から叩き斬られる。
 夥しい量の血が、滝のように噴き出した。戒の身体が、傾いで倒れる――その前に、ぱっと血の海は消えた。
 五体満足で己を燃やし続ける戒は、今だ赤の踊り子の眼前だ!
(「110秒。110秒だ。あと1分もない。決める、絶対に決める……!」)
 タイムリミットを過ぎれば、戒はもう動けない。だから、決着はそれまでに。
 尚も踊ろうとする赤の花が揺れ動かぬよう、アウグストの向ける銃口もその足元を捉えている。
 雪踊る銃身から目にも留まらぬ神速で撃ち出される何条もの弾丸が、その脚を地へと縫い止める。
 舞台は万全、熱気は最高潮。クライマックスは、勝利で飾らなければ!
「ダンスの相手にゃ、他を当たりな」
 きらり、閃く。
 赤。花でも、ドレスでもなく。
 自慢の靴より鮮やかな赤、滴り落ちる。
「あら」
 自らの腹部に、深々と突き刺さる爪を見下ろして、踊り子は間の抜けたような声を短く上げた。
 それを見届けて、今度こそ、戒の身体が緩慢に、頽れる。
 すかさず、アウグストがその身体を抱え上げた。追撃を許さぬ清浄なるオーラに身を包み、近距離から銃声、一発。
 爪を引き抜き、躱される。その隙に、アウグストは戒と共に後方へと退いた。
 仲間の猟兵たちが、入れ替わりに進み出るのを認めて、魂人たちに導かれて戦線を離脱する。
「生きて帰りましょう。待っている人が、いるんですから」
 愛しい虹色の卵、その煌めきは今もアウグストの帰りを待っている。そして、戒にも。
「はは、そーすね……帰、らなきゃ」
 白を纏う彼の守神には、怒られてしまうだろうか、なんて少し考えて。
「……わりぃグスト、首輪に書いてある病院に転がしといて」
 後に続く猟兵たちが、継いでくれると信じて。
 戒は意識を手放した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィア・フルミネ
魂人の安寧を脅かすキミがわざわざこの手をとってくれるの? あいにく、半透明な手では満足に握り返すことも叶わない。誰のせいだと思う
そして足も半透明。触れるにはこうして武器を介さないといけないわ。「絶えゆく星の心臓」でゼロ距離雷撃を喰らわせる

あとは極限まで高めた電撃耐性で自分ごと巻き込む放電で徹底的に懲らしめてやる
安心して。私が私の電撃で壊れるまで、ダンスに付き合うから。黒い煙を口から吐くまで踊り明かしましょう。他の魂人に目をくれる時間も余裕もキミには与えないよ
花は散る時が最も美しいね



●仄白く舞い
「魂人の安寧を脅かすキミがわざわざこの手をとってくれるの?」
 フィア・フルミネ(痺れ姫・f37659)は淡く微笑む。その和らいだ瞳に最大限の皮肉の色を乗せて。
「あいにく、半透明な手では満足に握り返すことも叶わない。誰のせいだと思う」
 ねえ、と昏く染められた眼で問いかけようと、憎らしいほどに鮮やかな赤は悠然と微笑むだけだ。手を差し伸べたままで。
 自分も、奴にとっては取るに足らない魂人の一人であり、有象無象の猟兵の一人と言うことか。暴虐で以て君臨する者は、民草とは見えている景色が違うわけだ。反吐が出る。
「そして足も半透明。触れるにはこうして――」
 抗わない。フィアは恭しく、その手を取った。

「武器を介さないといけないわ」

 敬愛すべき支配者様に、痺れるほど激しい思いを込めて。
 口付けの代わりに裁きの雷槌を。捕らわれていないままの手で、零距離から傷口へと抉り込む!
「あ」
 びくんと、踊り出す前の身体が痙攣する。
 染み出しているはずの赤は、ドレスと混じり合い黒ずむまで同化した。
 それでも踊り子は、からからと笑いながらもう片方のフィアの手も取った。
 フィアはやはり、拒絶しなかった。代わりに全身を発電機関として活性化、自ら絶えず電流を流し続ける拷問具と化す。
(「いたい……いたい、でも、いまさら、パートナーを変えさせてなんか、やらない」)
 かつて受けた苦しみの、極々一部でも味わえばいいと希いながら。
 慈悲など死んでも乞うてやらない。これは宣戦布告であり、下剋上だ。
「安心して。私が私の電撃で壊れるまで、ダンスに付き合うから」
「あは、あはあは、あはは」
「黒い煙を口から吐くまで踊り明かしましょう。他の魂人に目をくれる時間も余裕もキミには与えないよ」
 既に狂ったように、壊れたように笑って、痺れた身体はあべこべな舞踏を続ける。リードはフィアが。譲らない。
 これでは伴侶に相応しくない。そう言いたげに迫る斧も、くるりと主を盾にして、阻む。フィアの半ば透けた脚ばかりを執拗に狙うのならば、こうして阻み続けるだけ。
「あは」
 やがて、愉しげに笑いながら、踊り子は倒れた。フィアはもう、支えようとはしなかった。
「花は散る時が最も美しいね」
 どうせまた、起き上がるのだろう。
 けれどこの時、フィアは確かに、高嶺の花を自ら散らしたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

城野・いばら
踊りたい気持ちは否定はしないの
でもね、お相手を気遣えない自分勝手なダンスは
きっと誰も褒めてくれないわ

拒む意志がある内にUC発動、真の姿解放
私、全身棘だらけですけれど
それでも誘ってくださる?
…これは私に与えられた呪いであり、祝福
構わず触れてくるなら、アナタにも鋭利な棘を贈りましょう
相手のペースに吞まれぬ様、
茨を地面に串刺して全力、怪力で留まるの
たとえ千切られても
生命力吸収で得た魔力で、何度でも茨を伸ばし継戦能力を維持

踊りには音楽も必要だわ
夢路と小さなうたごえの皆にお願いして
バラバラなお喋りや歌唱を咲かせよう
踊りたがりなあのコの注意を惹き付けて
アリス達に誘いの手が向かないよう、
そうして微かでも、隙を作れるよう視線をお誘いし
怪力籠めた茨で反撃

…まるで、真っ赤に焼けた鉄の靴で踊る様
踵鳴らすアナタに追いつけなくても、
自ら命を燃やしてくれるなら
いばらは最後まで咲くコトを諦めない
茨を伸ばし、武器受けて攻撃を防ぎ
捕縛でお邪魔して少しでも時間稼ぎを
でも、もし挫けそうになったら
…アリス、一緒に戦ってくれる?



●真白枯れ
「踊りたい気持ちは否定はしないの」
 ぽつりと零した、城野・いばら(白夜の揺籃・f20406)の脚は震えていた。
 恐怖ではない。いばらの心から目を背け、歩き出しそうになるのを懸命に、抑えているのだ。
「でもね、お相手を気遣えない自分勝手なダンスはきっと誰も褒めてくれないわ」
 それでは、ダンスとは言えない。
 パートナーを得て踊るダンスは、共に心から楽しめるものであって欲しいと、いばらはそう思うから。
 だから、その手は取れない。
 どうしても、と言うのなら――、

「私、全身棘だらけですけれど」

 それでも誘ってくださる? と。
 問いかけるいばらの右眼を覆い隠すように、大輪の白薔薇が花開く。
 髪は漆黒へと変じ、広がるそれはしかし大地に横たわることはない。
 彼女を護るように伸びる茨が、その身体を天へと晒すように、掲げているのだ。
「まあまあまあ! それがほんとうの貴女かしら? 踊ることも、歩くことさえ叶わない白薔薇、私がその手を取ってあげるわ!」
 さも楽しそうに、よく通る声で笑う赤花の踊り子。
 そう、といばらは諦観と共に小さく溜息を吐いた。
 いばらの言葉は、砂糖の一粒ほども響いていないのか。それが少し、哀しかった。
「……これは私に与えられた呪いであり、祝福」
 構わず触れてくるなのら、アナタにも鋭利な棘を贈りましょう――。
 それでも踊りたい舞姫は、躊躇わずに手を染める。赤く、赤く。その自慢の靴にも負けぬほど。
 棘だらけの手でくるり、ひらり、舞おうとするけれど、いばらは動かない。
(「相手のペースに吞まれぬ様に……」)
 舞台には、立たない。
 茨を地面に打ちつけて、自身を地に縫い留める楔とする。
 引き抜かれ、千切られようと、棘から吸収した赤の命で、何度だって留まり続ける。拒絶、し続ける。
「踊りには音楽も必要だわ。ね、皆?」
 夢路を導く碧いメロウの羽ばたきを。
 小さなうたごえ囀る花の、小鳥の、ばらばら、重なり合わないお喋りを、歌を。
「あら? あらあらあら?」
 合わせようとすれば、ステップは滅茶苦茶。それでもくるくる、今度は自身が回り出す。
 今や、魂人たちへの注意は逸れている。蝶と花と小鳥たちと、彼らの音へと視線が向いたなら。
「あ」
 鞭打つように、甲高い音が響いて。
 赤が、べしゃりと地べたに落ちる。
(「……まるで、真っ赤に焼けた鉄の靴で踊る様」)
 伸ばした茨を我が身に戻せば、何事もなかったかのようにまた、赤は咲いて。
 狂ったように笑いながら踊り続けるその姿。
 ねえ、ほんとうは、その靴は、赤熱しているんじゃないかしら。
 熱と痛みの余りに、踊り続けるしかなくなってしまったの?
 そう、刹那の内に感じるほどに。
 だが、好都合だ。
(「踵鳴らすアナタに追いつけなくても、自ら命を燃やしてくれるなら――」)
 再び取られそうになる手を、茨で阻んで。
 この花、この命、摘み取ろうと言うのなら、そのすらりと細い手でさえも、棘に傷つく覚悟を頂戴?

(「いばらは最後まで咲くコトを諦めない」)

 ダンスはいよいよ盛り上がり、激しさを増してゆく。
 喩えるならばワルツからタンゴへ。踵鳴らせば情熱的に、熱狂的に。
 もう、いばらの手を取ることばかりに固執はしない様子で。真っ赤なヒールの踵が、槍のように何度も、何度も白を塗り潰そうとするけれど。
 茨で弾き返す。絡みついて振り回し、放る。
 これがいばらなりのお相手。独り善がりなダンスなら、伴侶にだってその権利があるでしょう。
 ――でも、もしも。
 余りに身勝手な動きに、ついていけなくなったなら。
 傷つき、疲れ果て、心挫けそうになったなら、その時は。

「……アリス、一緒に戦ってくれる?」

 彼方に消えかけた意識が、浮上する。
 アリスが、心を砕いてくれた。それを悟る。
 無駄にはできない。絶対に、この茨で護り抜く――!
「あら?」
 今度こそ、強かに。
 還元した力全て振り絞り、茨鞭は悪逆の花を、落とす!

成功 🔵​🔵​🔴​

葛城・時人
【護】

真の姿:全盛期の能力者・大人・錫杖構え

時間はない…きっと直ぐ抗えなくなる
使わせたくない…優しい思い出は何より大切な尊いもの
でも勝てないこのままでは勝てない

死に物狂いで必死に思考を巡らせ…そうだ!

魂人たちを振り返り不安にさせない為に笑顔で
「ね。俺が来たのって…ちょっとだけでも嬉しかった?」

来た時の震える姿や掠れた声
けど、俺を見て安堵した顔が増えて
説明した時のかすかな笑顔も
だからきっと、これで

「それを使って!」
どうしても永劫回帰が必要なら一番近々の俺を忘れればいい
「俺のコトなんて忘れちゃって良いんだ。
大事な沢山の事をこそ、覚えてて?」
笑顔で促して
「ごめんね。使わない人は使った人連れて下がってね!」

ありがとう!絶対に勝つから!と叫んで永劫回帰を受け
十全に復したら即時

光刺杖詠唱

「…貴様は絶対に倒す!」

「往くよ!」
恐れずに大地を蹴り間合いへ飛び込んで

俺だけじゃない!陸井も神塚も一緒だ!
「頼む!」

撃たれても決して諦めない
護るべきものを護り抜く為に
力なき者の盾となる為に!

「光に焼かれて失せろ!」


神塚・深雪
【護】
※前章から引き続き真の姿
※相対する敵には不機嫌な時の口調

呪詛耐性が多少あるとはいえ、力を解放していて良かったのかもしれない。
そう、身体が意に反する感覚に不快さを覚えながら思う。
永劫回帰に頼ることを最小限に出来る方法がないかを早く考えないと。

私達が斃れない為にも、彼等が生き延びる為にも、頼らなければならない事実が悔しい。焦りにも似た感覚でそう思った矢先の、信頼するひとの提案は思いもしなかった視点。
「……そう、ですね。私達が来たことが、どんな形こそででも、礎になれるのなら」
だから、魂人のみなさんには、笑ってそれを促す。

「向けられる目に込められるものが反転することなんて、些細なもの……!」
助力……と、言い続けていいのかはわかりませんけど……を受ければ、鼓舞するように振り切るように翼を打ち振るって。

「そんなに踊りたいのならお付き合い致しましょうか!」
UC『光舞翔乱』を発動。
例え、全てを命中させなくたって、先輩も葛城さんだって居る。
「せめてこの地は護らせて頂きます。在るべき場所へ還れ……!」


凶月・陸井
【護】
真の姿:全盛期の能力者

今は気合で耐えているけど、吸い込まれるような感覚がある
それでも躊躇う理由は皆同じだと思う
俺自身、こんな状況でもどうにか回避できないかを考えている
此処へ飛び込んだ時の魂人達の様子も覚えている
失うのが何よりも怖いという事も理解できる

振り返って魂人達に声をかける相棒のそれは
本当に思いつきすらできなかった事だ
「俺が来たときもそうだったか?」
それで使えるのであれば、それで勝てるのであれば
「俺の事は気にするな。むしろ頼んでごめんな」

俺の事は忘れても、心的外傷になってもいい
この戦いから護り抜いて、魂人達が無事に生きていけるなら
使用してもらったら分からなくても構わないから
優しく微笑みながら言葉をかける
「後は俺達に任せてくれ」

永劫回帰を受けたら迷わずに前へ
先行する仲間達の攻撃を追いかけ
敵に接近したら【退魔術「闇穿」】を使用
攻撃を回避すると同時に仲間達の攻撃で
弱っているであろうカーレンの背後へ
「悪いが、お前は此処で終わりだ」

「魂人達には、今後も指一本触れさせない。俺達の勝ちだ」



●藍散る、然れど
「――ッ!!」
 全身が総毛立つ。
 嫌悪から来る悪寒と悪心を覚えて、葛城・時人(光望護花・f35294)と凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は咄嗟に、秘されし己の真の姿を解放した。
 既にその姿を神性に近く変じていた神塚・深雪(光紡ぐ麟姫・f35268)も、思わず息を呑む。
 本来の生きた年月をその身に取り戻しながらも、能力者としての全盛期の力を保ち続ける時人と陸井。だが、それでも。
(「時間はない……きっと直ぐ抗えなくなる」)
 神経の一本一本さえ、思い通りに動かなくなる感覚がある。自分の身体なのに、主導権を他に明け渡してしまったような、そんな感覚。
 思考だけが、最後の一線を頑なに守り、時人たちを辛うじて己足らしめている、そんな事実。
(「呪詛耐性が多少あるとはいえ、力を解放していて良かったのかも知れません」)
 だが、それも長くは保たないこと、深雪も嫌と言うほど理解していた。
 自分の身体のことだ、それが意に反する感覚に不快さを覚えるのは当然のこと。だと言うのに、それを決定的に打破する手段が、ない。
(「今は気合で耐えているけど、吸い込まれるような感覚がある)」
 己のものではない衝動を抑えながら、陸井も必死で、惟る。
 思慮、思案、思索――だがどれだけ考えを巡らせても、未来を、打開、できない。
 その方法が、何処にもない。
 ――いや、ひとつだけ、方法はある。
(「それでも躊躇う理由は皆、同じだと思う」)
 本当は、最初から頭の片隅にはあった。
 だが、その選択肢を選び取ることができないのは。
(「使わせたくない」)
 時人の、その思いが、重くのしかかっているからだ。
(「優しい思い出は何より大切な尊いもの。でも……勝てない。このままでは、勝てない」)
 痛いほど、噛み締める。
 能力者であった時分から、幾度となく視線を潜り抜けて来ても――否、潜り抜けて来たからこそ、強い願いが必ず叶うわけではないと、解ってしまっている。
 そしてそれは、深雪も陸人も、同じ思いでいる。
(「俺自身、こんな状況でもどうにか回避できないかを考えている」)
 もう、陸井たちは、見てしまっていたから。知ってしまっているから。
(「此処へ飛び込んだ時の魂人達の様子も覚えている。失うのが何よりも怖いという事も理解できる……」)
 絶望に噎び泣き、屈服するしかない、そんな魂人たちを、何としてでも護りたい。陸井たちは、その思いでここに来たのだ。それは、最優先。
 だが、今そのために選び取れる最善の手段もまた、魂人たちが恐れていたことだ。この絶望の中で大切に抱え続けてきた記憶を、希望を、更なる絶望で塗り替えられてしまうことは。
(「何とか『永劫回帰』に頼ることを最小限に出来る方法がないかを早く考えないと……」)
 そう、永劫回帰。
 死を白紙に戻す代わりに、染みたインクを無理矢理に消し飛ばした報いは、そのインクで優しい記憶を痛みの記憶に書き換えられる。
 深雪だって、そんなことにはさせたくなかった。
 だが、考えれば考えるほどに、思い知ってしまうのだ。他に方法はない――と。
 按ずる間にもじりじりと、身体は望まぬままに前へ、前へ。緩慢ながらも、着実に死へと向かっている。
(「頼らなければならない事実が、悔しい」)
 淡く生に彩られた唇を、噛み締める。
 自分たちが斃れないために、魂人たちが生き延びるために、これは必要な選択なのだ。
 だが、生き長らえたとてそれでは、魂人たちの心はどうなる?
 さりとて選ばなければならぬ。焦燥が深雪を追い立てる。死だけが、近づいてくる――その、矢先だった。
 時人が、はっとその澄んだ青の目を見開いた。それから、背後の魂人たちを顧みる。
 柔らかな、笑顔で。

「ね。俺が来たのって……ちょっとだけでも嬉しかった?」

 彼らを見守っていた魂人たちが、きょとんと目を丸くする。
 深雪と陸井も一瞬、同じ表情を浮かべたが――すぐにその問いの意図を悟る。
 想起する。
 村に降り立ったその瞬間の、震える姿や掠れた声。
 時人の姿に、広がる安堵の色。言葉に、微か綻ぶ笑顔。確かに、覚えている。ならば。
「それを使って!」
 魂人たちの、心を護る盾に、きっとなれる。
「俺のコトなんて忘れちゃって良いんだ。本当に大事な、沢山の事をこそ、覚えてて?」
 躊躇いはないと、示すように笑う。
「……そう、ですね」
 ぽつり、深雪も。
 信頼するひとの、思いもよらぬ提案。一人では、見えてこなかった視点。目の前を覆っていた闇が、晴れた気分だ。
 だからもう、深雪にも、迷いはない。
「私達が来たことが、どんな形こそででも、礎になれるのなら」
 たとえそれが、魂人たちの記憶に残らなくとも。
 彼らが生きていることが、深雪たちがここで戦って、護った、その証だから。
(「本当に、思いつきすらできなかった事だ」)
 けれど時人のその言葉は、陸井の中にもすとんと落ちた。
 彼らが、僅かでも、陸井たちの存在に、希望を抱いてくれたのなら。
 それが、陸井たちにとっての、希望だ。
「俺が来た時もそうだったか?」
 それで、使えるのであれば。
 それで、勝てるのであれば。
 それで――護れるのであれば!
「どうか、お願いいたします……!」
 もう、身体は完全に、主の制御を失っていた。
 深雪は、頭を下げられなかった。その代わりに、精一杯の誠意を込めて、魂人たちへと、笑って、告げる。
「あはは、待ちくたびれちゃった!」
 既に手負いとなった花。
 それでも咲って、手を取るのを待っている。
 最初のお相手は深雪と。ゆったりと、優雅に回るワルツ。
 パートナーを変えて時人と。力強く、スピードを上げて歯切れよくタンゴ。
 ラストダンスは陸井と。軽快に陽気に、飛んで跳ねて踊りましょう、クイックステップ。
 そして、踊り終えて皆、解放されて。
 伴侶でなくなった者の脚は、もう要らない。
 陸井の、時人の、深雪の脚が、無惨にも、斬り落とされた。

 そして冥界の海に沈むべき彼らの魂は、ぐいと急激に浮上する――!

「……ありがとう、ございます……!」
 全てを悟った深雪が、声を振り絞る。
 大勢の中の、誰が使ってくれたのかは解らない。それでも、こうして生きていた、その時間に戻れた。その確かな事実が、あればいい。
「ごめんね。使わない人は使った人連れて下がってね!」
 咄嗟に、時人も声を上げて。
 皆、こうして生きている。けれどそれが、代償を伴う行為であることは、変わらない。
 それでも気遣わしげな魂人たちに、陸井も力強く頷き、微笑んで見せる。
「俺の事は気にするな。むしろ頼んでごめんな」
 何処かから、聞こえる呻き声。心傷まないわけでは、ないけれど。
(「俺の事は忘れても、心的外傷になってもいい」)
 どう転んでも、心に傷は負わせてしまう。
 けれど、痛みを残しながらも、彼らが守りたかった記憶と共に、彼らが生きてくれるなら。
 誰かは解らない、その人へ、どうか届きますようにと。
「後は俺達に任せてくれ」
 優しく、陸井は微笑んだ。


 誰かが村の奥へと、引きずられてゆく。
 啜り泣く声、声にならない叫び。
 それらを背負って、陸井たちは再び、巨悪と対峙する。
「あ……あぁ、いやだ、いやだ……もうおしまいなんだ……!」
 突き刺さる、苦痛の声。
 覚悟はしていた、ならばその覚悟を力に変えて、この地を脅かす敵を、討たねば。
「向けられる目に込められるものが反転することなんて、些細なもの……!」
 深雪のその言葉は、皆の心の代弁だった。
 それでもいい、自分たちは、意志を貫くだけ。誰もがそう思っていた――その時だった。

「大丈夫だ! あの方たちが助けてくれる!!」

 力強い、誰かの声。
「え……」
 思わず振り向いた陸井の視界に、飛び込んできたのは。
 震える魂人を引きずるように抱えながらも、声をかけ続ける別の魂人の姿。
「諦めなくていいんだ! 今は、耐えろ!」
「もうすぐ終わる……終わらせてくれるから!」
 時人も、その一瞬に言葉を失う。
 だが、すぐにその魂へと、活力が漲るのが解った。
「ありがとう! 絶対に勝つから!」
 その信頼に、応えるために。
 身体に絡みつく糸のような、儘ならない呪縛の気配は、もう感じない。ならば今、仕掛けるしかない!
「……貴様は絶対に倒す! 光杖よ、破邪の力をここに!」
 この手だって、脚だって、もう自由だ。
 何処へだって、翔けて行ける。恐れることは何もなく、時人は力強く、大地を蹴る!
「往くよ!」
 飛び込む、それを合図に。
「そんなに踊りたいのならお付き合い致しましょうか!」
 輝きと共に、翼はためかせて。
 聖なる光の共演で、深雪も後に続く。
 先程はリードを譲った。今度は、こちらの番だ。
 ふたつの白光が、赤の踊り子へと踊りかかる。光の槍が、銀の翼が、深紅のドレスを深く切り裂く。
「あらあらあら、まあまあまあ! テンポアップね? そう言うの、嫌いじゃないわ!」
 振り払う、光の届かぬ場所。
 立つ背後から、静かに、闇が迫る。
 陸井の護手の、その内から生じる不可視とも錯覚しかねない、静謐の刃が、瞬時に閃き背筋を裂いた。
(「決して諦めない、護るべきものを護り抜く為に、力なき者の盾となる為に!」)
(「例え、全てを命中させなくたって、先輩も葛城さんだって居る……!」)
(「一人でいい。誰か一人が、全て当てさえすれば。だが、俺も時人も神塚さんも、外すつもりは毛頭ない――!」)
 三方から花を散らせと狙う、四重の攻め。
 その力全て、誰か一人でいい、叩き込めさえすれば――確実に、殺せる!
 時人の光条が、空を切る。
 だが、彼は独りじゃない。
(「俺だけじゃない!陸井も神塚も一緒だ!」)
 信じて。
「頼む!」
 深雪の羽が、風に散る。
 だが、彼女は独りじゃない。
(「繋いでくれる仲間がいる……そのためにも、最後まで、舞い続ける……!」)
 信じ抜いて。
「まだまだ!」
 踊り続ける花。
 その動きが、僅かながら、鈍り始めた。
 陸井が、動く。死角への転移。瞬歩。
 最後の、刃。
「悪いが――」
 花は、もう、逃げられなかった。

「お前は此処で終わりだ」

 呼応して、光もまた、殺到して。
 闇が、黒が、赤を刺し貫いていた、その場所へと、より深く、その終焉を確かなものにするために。
「せめてこの地は護らせて頂きます。在るべき場所へ還れ……!」
「光に焼かれて――失せろ!」
 爆ぜる。光も闇も混じり合って、希望を糧に咲く花を。
 ――手折れろ、と。


「あは、あは……は、」
 赤は、花弁散らすように、そのまま朽ちるように、さらりさらりと、黒い灰へと変わりゆく。
 それでも、笑っていた。何も、変わらない風情で。
「嗚呼、楽しかったわ」
 最期の言葉ごと、風に攫われて、消えた。
 静寂、暫し。誰も言葉を発さない。
 ――打ち破ったのは、陸井の声。

「魂人達には、今後も指一本触れさせない。俺達の勝ちだ」

 全ての危機が、絶望が、去ったわけではない。
 それでも、護り抜くと誓った。違えることは、決してない。
 時人も、深雪も、顔を見合わせ、力強く頷いて。
 瞬間――わあと、村のあちらこちらで、歓声が上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年07月09日


挿絵イラスト