――はあ、はあ……!
――どれだけこの迷宮を彷徨っただろうか。
往けども逝けども、出口に辿り付けず。
だからといって、足を止めてしまえば……。
「ぎゃああァァァァァァああッ!?」
ほら、またひとり。床に現れた、大きな“口”に噛みつかれて下半身が噛み砕かれてしまった。
でも大丈夫。私たちはユーベルコードと呼ばれる異能のおかげで、自らの幸せな記憶を凄惨なトラウマへ変えながら、砕かれた肉体を繋ぎ合わせられる。繋ぎ合わせられるから、私たちは死なない。いや、死ねない。
なぜなら私たちは魂人(たましびと)。かつて暴虐な吸血鬼によって殺され、この世界で蘇った存在。ここが『第三層』と呼ばれる世界で、生前の世界が『第四層』だったことは、時々天から降ってくる女性の声で知り得た。
声の主は告げる……。
『この人食い迷宮を脱出できた魂人は、私が大切に愛してあげる』
虐げられてきた私たちは、その愛を信じて脱出を試み続けている。
けれど……終焉は突然だった。
『なぁに? 誰も出てこないじゃない? あなたたちも、私の愛を拒絶するの?』
違う。違います。この迷宮の罠が酷くて、私も今日だけで5回も食べられてて。
私は愛がほしい。あなたの愛がほしい。だから、そんなこと言わないで。
『もういいわ。全部潰して、みんな、私が食べちゃうから』
その言葉が天から降った瞬間、迷宮は全てぐしゃぐしゃに潰され、私たちも圧し搾られて。眼下には、今まで見たことのないような、大きな口が、あんぐりと……。
『……ごちそうさまでした』
――グリモアベース。
蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)の裏人格であり、彼女の肉体に憑依している白亜の蛇神オロチヒメは、招集に応じてくれた猟兵達を前に己のグリモアから予知の映像を投影し終えた。
そして、蛇神は恐るべき事実を猟兵達へ告げた。
「ダークセイヴァー上層第三層のこの予知であるが……実は、この迷宮は超巨大な『闇の種族』と呼ばれるオブリビオンの手のひらでの出来事なのだ……』
手のひら丸ごとが、あの巨大な迷宮だというのか!?
つまり、あの大崩壊は……?
「左様。彼奴が掌を握りつぶして起きた事象である。彼奴は手のひらの上で魂人を散々弄んだ後に、握り潰して滴り落ちる血肉を喰らっておるのだ……。なんと外道で悪趣味な行いであろうか!」
オロチヒメもこれには怒り心頭の様子。だが、猟兵達を一向に現場へ向かわせようという素振りがない。
早く転送するように急かすも、オロチヒメは渋い顔のままだ。
「分かっておるのか? 貴様らも、彼奴の手のひらの上に文字通り土足で乗り込むことになるのだぞ? 一歩間違えば全滅は必至。更に、あの巨大な相手をどうやって殺すか……全く予知が出来ぬ。まぁ、先の大戦で巨大な敵と戦った猟兵達もいるようであるから、勝てぬ算段がまったくないわけではないのだが……」
何とも歯切れの悪い蛇神の口調に、あの『闇の種族』が猟兵達はこれまでのオブリビオンとは一線を画す実力を持つ相手だと察した。
「よいか? 第一目標は【魂人たちの救出】である。閉じ込められている魂人達は11人。全員とは言わぬが、なるべく多くの人数を救うのだ。『闇の種族』の討伐は二の次にせよ。今の貴様らの実力では“大成功”と呼べる戦績は残せぬであろうからな?」
厳しい言葉だ。しかし、それが現実なのだろう。
とはいえ、それでもオロチヒメはニタリと期待に満ちた笑みを浮かべる。
「だが……勝機があると踏んだなら、決死の覚悟で挑む展開を望むなら……。余は貴様らの意思を尊重しよう。むしろ、余は人の子らのそういう強い意志が、大好きである!」
最終的な判断は各自に任せるとして、ひとまずは猟兵達は魂人の救出へ向かうべく『闇の種族』の手のひらへの転送を決意する。
蛇神のグリモアが輝けば、その先は一条の光さえ届かない深淵の闇めいた絶望が待ち受けている。
果たして、猟兵達の命運は……如何に?
七転 十五起
ダークセイヴァー上層、想像以上の絶望ぶりに震えてます。
オロチヒメ案件ですが、新たな冒険へと立ち向かいましょう。
なぎてんはねおきです。
●概要
このシナリオの舞台は【ダークセイヴァー上層】です。
ですが、獲得するWPはダークセイヴァーです。
第1章冒険フラグメントは、人喰い迷宮からの脱出です。
敵は巨大な『闇の種族』で、魂人たちは『闇の種族』の広大な手のひらに出現した迷宮の中に囚われています。魂人たちを散々弄んだ後、手のひらを握りしめて迷宮内の全てをすり潰し、手の間から滴る(闇の種族にとっては僅かな量の)血と肉を啜る未来が待っています。
猟兵たちが転送される場所も当然、巨大な『闇の種族』の手のひらの上であり、もたもたしていたら一緒に握り潰されてしまうでしょう。それほどの危険を冒してでも、迷宮内の魂人11名をできるだけ多く救出せねばなりません。
迷宮内も、魂人らと猟兵たちを喰らわんと、床や壁、はたまた扉から、大口を開ける準備をしています。迷宮全体が“腹を空かせた生き物”だと認識した方が分かりやすいでしょう。噛みつかれることを前提として突っ込むか、襲われないルートを模索するか、それとも攻撃で牽制しながら進むか、最善手を選んでください。
第2章は集団戦です。詳細は断章加筆時に情報を公開します。
第3章はボス戦、巨大な『闇の種族』との対峙です。
未だ猟兵たちは敵の巨体の腕の上、そこから脱出を図ります。
詳細は断章加筆時に情報公開します。装飾品と何か関係ががる、とか……?
なお、『あくまでも交戦して闇の種族を殺す』プレイングも可能ですが、その実力差ゆえか“大成功判定は出ない”ので苦戦が予想されます。
それでも望むというのなら……全力を賭して戦ってください。
状況は非常に厳しいですが、皆さんの全力のプレイングで魂人たちを救ってください。プレイングをお待ちしてます。
第1章 冒険
『人喰らいの迷宮』
|
POW : ダメージ覚悟で突き進む。
SPD : 周囲を警戒しながら慎重に探索を行う。
WIZ : 魔術や罠で人喰らいをあぶりだし、道を探る。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サフィリア・ラズワルド
POWを選択
ああ、なんて酷い、この世界には本当に救いなんて…。
いや、そのために私達がいるんだ!
魂人を見つけたら【白銀竜の解放】で四つ足の飛竜になって背中に乗るように言います。
強行突破をします、噛みつかれても竜の体であればある程度は耐えられます。
でも背中に乗せられる人数は限られている、何人も乗せたら躱し切れないかもしれない、だけど見捨てるなんてできない。
魂人に向かって大口を開きます、口の中なら一人くらいなら安全を約束できる。
「お願いです、信じてください」
この世界で皆を救うことはできないとわかっているけれど、せめて私が関わった人だけでも助けたい。
アドリブ共闘歓迎です。
サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)はダークセイヴァー上層の惨状を直に見聞きして歯噛みしていた。
「ああ、なんて酷い」
自然と両拳に力が籠る。
「この世界には本当に救いなんて……!」
下の第四層で苦しんで死んだ人々が、どうしてこの第三層で更なる加虐を被らねばならなければならないのか。その不条理さに気が滅入ってくる。
だが、サフィリアはすぐに首を横に振って前を見る。
「いや、そのために私達がいるんだ!」
既にサフィリアは『闇の種族』の手のひらの上に転送されてきている。視界に入ってくるのはただの迷宮だが、これも敵の手の一部だというのだから如何にその巨躯なのかが容易に想像できてしまう。
「とにかく、止まっていると駄目なんですねって、わっ!?」
自身の足元に違和感を覚えたサフィリアが背中の翼を羽ばたかせて宙へ浮き上がる。同時に、足元でガチンッと何かがぶつかるけたたましい音が聞こえた。
先ほどまで両足を付けていた床は、巨大な口になって歯がむき出しになっていた……。
「あ、危なかったです……ひとまず飛んでいる間は襲われませんよね」
気付けば、壁や床のあちらこちあらでガチガチと歯を鳴らす音が聞こえる。
予知通り、動きが鈍った魂人を喰らわんと待ち構えているのだ。
早く彼らを見つけなければ、とサフィリアが迷宮内部を飛行していると、目の前の角で今にも足が止まりそうな魂人2名を発見した。2名は互いに声を掛け合って歩を進めていた。
「……もう、足が、動かないよぉ……」
「だめ……! また食べられちゃうよ……!」
ずっと彷徨い続けてきたのだろう、見るからに疲労困憊で今にも斃れそうだ。
そして、遂に片方の魂人の足がもつれ、その身体が床へと傾く。
「あっ……!?」
その魂人の床ががばっと上下に裂けたかと思えば、その中に並ぶ無数の歯がその半透明の身体を噛み砕かんと襲い掛かる!
「させません!! 私の竜よ、私の人間を喰らって完全な者となるがいい!」
サフィリアは竜の力に目覚めると、その身体を完全な白銀竜へと変身する。
「間に合って! ぅぐっ!」
自らの片足を口に突っ込んで惨劇を阻止すると、今にも喰われそうな魂人を鼻先で掬い上げる。そして、もうひとりも前脚で引っかけて床の口から搔っ攫ってみせた。
「助けに来ました! 私の身体にしがみついて下さい! んっしょ!」
噛みつかれた足を引っこ抜けば、床の鋭い歯が数本砕けた。竜の鱗に文字通り歯が立たなかったのだ。
そのまま魂人2名を背中へ乗せると、サフィリアは迷宮の出口を目指して飛んでゆく。
(背中に乗せられる人数は限られている、何人も乗せたら躱し切れないかもしれない、だけど見捨てるなんてできません……!)
そのうち、もうひとりの魂人を発見する。だが、彼は既に片腕を失っており、かなり、体力も限界を迎えていた。
サフィリアは提案する。
「私の口の中に隠れてください。背中にしがみつくのに片手ではお辛いでしょう」
「そういって、私を丸呑みにする気でしょう?」
怯える魂人の女性。
これにサフィリアは口を開けて訴えかけた。
「信じてください。私は猟兵です。必ずこの迷宮からあなたたちを脱出させてみせます」
その背に跨る魂人達も、サフィリアは安全だと訴える。
これに魂人たちの女性は恐る恐るサフィリアの口の中へ飛び込んだ。
サフィリアは彼女の恐怖心を煽らぬように口を開けたまま先を急ぐ。
未だに迷宮の出口は見えないが、3人の要救助者を発見したサフィリアは闇の中で光を見つけた気分であった。
大成功
🔵🔵🔵
大神・狼煙
UCで超小型戦闘機を召喚し片手で掴まる
亜音速飛行する戦闘機でも食われるとすれば、行き止まりや扉など、突っ込む必要がある場所
それらに当たれば後方へ飛び退くようにして機体を放棄
激突させて積載していた弾頭諸共破砕しながら、自身後方より新しい機体を召喚して掴まる
飛び散る瓦礫から食いつかれる可能性を考慮し、バレルロールして機体で瓦礫を弾きつつ通過
壁、扉の破壊に失敗した場合は自身前方より機体を召喚して飛びつき、百八十度反転
生存者は片手で掴み、連れていく
半身砕けて蘇るなら飛行のGにも耐えるはず
二人目の発見時は首裏に噛みつき、牙で脊椎を掴み固定
その後は遭難時のセオリー通り、別れ道に遭う度、右、左に交互に進む
「気に入らねぇ……ふざけるな、俺の故郷の“上”にこんな惨たらしい尊厳を踏み躙る死の世界が存在してたとか、そんなの……気に入らねぇ……!」
大神・狼煙(餓狼・f06108)は憤怒で目を血走らせながら、ユーベルコードで召喚した超小型戦闘機に片手で捕まりながら、迷宮内部を亜光速飛行して魂人を捜索していた。
ダークセイヴァー出身の大神にとって、上層(第三層)の存在は寝耳に水であった。地下世界(第五層)がある事ですら驚きの事実だというのに、第三層はそれを遥かに上回る内容であった。
第四層で死した魂が、第三層で魂人となって甦って『闇の種族』の暴虐に苦しめられている。そんな救いのない現実を見せ付けられ、大神はギリギリと奥歯を噛み締める。
「ふざけるな……『闇の種族』の手のひらだろうが、俺の目が黒いうちは魂人を惨劇に合わせて堪るかよ……!」
亜光速飛行のおかげで、壁や床の口が大神に食らい付くことはない。
だがここは迷宮という閉所だ。扉もあれば行き止まりもある。そして、亜光速飛行する物体は感性の法則で急に停止する事が出来ない。その先に待ち受けるのは、獲物を喰らわんと大口を開ける行き止まりの“魔”であった。
「確かに、その判断は至極正解だ。だが、それは相手が抵抗する術を持たない場合のみ、と注釈を加えるべきだったな?」
大神は何を思ったか、そのまま超小型戦闘機から手を放して、自身の後方から別の機体を召喚する。
先ほど掴んでいた戦闘機は一直線に扉の大口の喉元へ飛んでゆくと、そのまま“口腔内”に突き刺さって派手に爆散!
悲鳴と共に撒き散らされる瓦礫を、大神と戦闘機はバレルロールで緊急回避しながら突き抜けていった。
そして思わぬダメージに肉体の主が驚いたのか、一瞬だけ迷宮全体が大きく揺らいだ。
これに大神は思わずほくそ笑む。
「ざまぁみろ……! 流石に口の中は守りが薄いようだな? 超小型とはいえ、戦闘機が激突すれば戦艦ひとつが沈むほどの威力がある。火薬と鉄屑とガソリンの味はお気に召したか? このクソ野郎が!」
新たな戦闘機に片手でしがみつきながら飛行する大神は、行く先でひとりの幼い魂人を発見すると両腕で優しくキャッチ。
「そんなとこでちんたら歩いていたら喰われるぞ。俺に捕まってろ……!」
年端もゆかぬ幼い魂人は既に体中が継ぎ接ぎだらけで、道中で何度もユーベルコード『原点回帰』による肉体修復を図った事が推測された。
(こんな小さな子の幸福な思い出なんて、たかが知れてるだろうに……それすらをトラウマへすり替えながら彷徨わせることを強いる、この手のひらの主は絶対に許せねぇ……!)
亜光速飛行のGで肉体が修復されることは理解できるが、大神はそれを良しとはせずに少しスピードを緩めつつ移動を再開した。
すると、もうひとり、3~4歳ほどの幼女がトボトボと迷宮内を彷徨っているではないか。
「ちっ……こうなったら!」
大神はなんと、その口元で幼女の頸椎に噛み付いて猛禽類が如く連れ去ってしまう。
その後は遭難時のセオリー通り、別れ道に遭う度、右、左に交互に進むと、次第に視界が開けてゆき……。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
いまの俺達は文字通り敵の手のひらの上って訳か。全く笑えねえぜ。
「…魂人の方達は必ず全員助け出します。」
おうよ、相棒ッ!いっちょ手のひらの上で踊ってやるとするか。まあリクエスト通りにはいかねえけどなッ!
「…式、召喚【捜し鼠】。」
時間との勝負だ、捜し鼠を迷宮に放って魂人達を捜し出すぜ。
なるべく安全なルートを探りつつ移動して助け出す。
襲われる道を行かなきゃならねえなら、攻撃の予兆を見切り大口に破魔弓で放った矢を喰らわせてやる。破魔の霊力をたっぷり味わいなッ!
魂人を見付けたら助けに来た事を伝えて救出よ。腹が減ってるなら『おはぎ』でも食うか?
【技能・式神使い、偵察、見切り、破魔、慰め】
【アドリブ歓迎】
カシム・ディーン
他参加者と連携希望
…あー…久しぶりに…ちょーっとイラつきますね
「メルシーは冥府への権限も持ってるけど…此処は酷すぎるね…」
…目的は忘れねーようにしねーとですね
「脱出ルートと魂人さん達の救出だね☆それなら夏の」
ちげーよ!(だが…あのクソデカヤンデレをやるなら…ぐぎぎ
…魂人の状況を助けられるか賭けだがあれを使う
「…!アスクレピオス君のあれだね!」
【情報収集・視力・戦闘知識】
迷宮の構造
捕食罠の捕捉
その法則や性質を冷徹に分析し他参加者と情報共有
【属性攻撃・迷彩・念動力・武器受け】
光水属性を己達に付与
光学迷彩と水の障壁で熱源嗅覚隠蔽
必要時は破壊
可能な限り魂人を集めれば
UC発動
幸せな記憶を奪い返す!
朱塗りの鬼面こと神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)とその装着者である神代・桜と、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)とその相棒のメルシーが迷宮内に転送されてきた。
凶津は周囲を見渡すが、此処がどう見ても生物の手のひらの上だとは思えないほど無機質な壁が周囲を取り囲んでいた。
「いまの俺達は文字通り敵の手のひらの上って訳か。全く笑えねえぜ」
凶津が忌々し気に口を開けば、桜は決意に満ちた表情を浮かべていた。
「……魂人の方達は必ず全員助け出します」
「おうよ、相棒ッ! いっちょ手のひらの上で踊ってやるとするか。まあリクエスト通りにはいかねえけどなッ! カシムとメルシーもよろしくなッ?」
声を掛けられたカシムは、無言のまま軽く頷くだけで返事とした。
これにメルシーがいつもの調子で明るく手を振ってみせた。
「ご主人サマ! 駄目だよ、共闘する相手にそんな仏頂面なんかしたら!」
「うるせー、脳味噌スッカラカンの駄機神が」
メルシーの顔をキッと睨み返してきたカシムに、普段のようなふざけた雰囲気などなかった。
「……あー。クソが……久しぶりに……カシムさん、ちょーっとイラつきますね」
奥歯を噛み締め、眉間にしわを寄せるカシム。
明らかに普段と態度が違うシリアスなカシムに、メルシーも察した。
「えーっと、メルシーは冥府への権限も持ってるけど……此処は酷すぎるね……」
「死んだら終わり、じゃなくて実は上の階層で蘇って『闇の種族』のオモチャとして虐げられ続けるのでした、とか……なんだこれ? この手のひらの主は即座にぶっ殺してやりたいのはやまやまですが……」
カシムは肺から大きく息を吐き、冷静になる溜息を吸い込んだ。
「……今は目的は忘れねーようにしねーとですね」
「ということは、脱出ルートと魂人さん達の救出だね☆ それなら夏のよう……」
「ちげーよ!」
スパーンッとメルシーの頭を引っ叩くカシム。
だが、内心ではこの手のひらの主を殺す算段として、メルシーの師団単位での増殖させるユーベルコードは有効かどうかを考察するカシムであった。
(この足元のクソデカヤンデレを殺るなら……やむを得ないか? ぐぎぎ……!)
「カシム? すげー顔だぜ? 大丈夫か?」
凶津の声に、カシムは我に返った。
「……ええ、何も問題ねーですよ。おいメルシー、魂人の状況を助けられるか賭けだが……今回はアポロンソウル……あれを使う」
「……! アスクレピオス君のあれだね!」
カシムとメルシーが方針を固めたと判断した凶津は、桜へユーベルコードの使用を求める。
「こういう時にうってつけの式神があるよな、相棒?」
「……ええ、参ります。式、召喚【捜し鼠】」
桜の放った護符から小さなネズミが湧き出してくると、壁や床を走って魂人を創作しようとする。
だがそれをカシムが止めた。
「待ってください。そのまま行けば迷宮に喰われるのがオチです」
「だから、メルシー達の十八番を試していってほしいな☆」
すかさず2人は自身と神代コンビとネズミの群れに光学迷彩魔術を施す。更に水属性魔術によって生物から発せられる熱源と体臭の流出を遮断し、足音も軽減する。
「恐らく、迷宮内の口は振動と嗅覚及び熱源の接近に敏感だと推測します。万が一、視覚情報をこの迷宮内から得ていたとしても、今の僕たちは壁の色と同化してますので発見されにくいはずです」
「この迷彩魔術で、メルシーとご主人サマは数々の死線を潜り抜けてきたぞ☆」
「実績は織り込み済みってことか。ありがたく使わせてもらうぜ」
「……ご助力、感謝します」
こうして4人は協力して、鼠たちの探索能力で魂人を2名発見する事が出来た。
道中の『口』との遭遇も、当初想定していたよりもかなり少ない回数で探索が出来ている(扉で待ち構えられている場合はどうしようもなかったのだが)。
「ちぃ! この扉は駄目だ! 魂人の代わりに破魔の霊力をたっぷり味わいなッ!」
「……舌を射抜きます」
桜色の霊力が宿った破魔の矢が口の中へ放り込まれると、激痛で絶叫する『口』が目の前から消失していった。
「す、すごい……」
「あのお口を、やっつけちゃった……」
呆然とする魂人の2人。2人は姉弟(きょうだい)で、もう既に両親の顔さえ思い出せない程までユーベルコード『原点回帰』を酷使していた。
「ご主人サマ……!」
「分かってる……やるぞ、メルシー! アポロンソウル……リンク開始……!」
カシムが行おうとしているユーベルコード“対病根絶機構『医術の神の子』(システム・アスクレピオース)”は、彼の身体に多大なる負担を強いる。それは一歩間違えば死に至る程の負荷だ。
「ナノマシン……起動……システム『アスクレピオス』起動……! 太陽神の子よ……万物を癒せ……!」
魂人の姉弟へ、光り輝く治療型ナノマシンをメルシーの身体から放出させるカシム。
「カシム、いったい何をしてるんだ? 怪我はしてねぇみたいだが?」
凶津の疑問にカシムが回答する。
「確かに……魂人は肉体をユーベルコードで復元出来ちまうんで、そういう意味での治療は無駄でしょう。ですが、『原点回帰』は幸せな記憶を代償にする上に……惨劇のトラウマへと変えます……だったら、心的外傷(トラウマ)を僕とメルシーのユーベルコードで癒して、初めてこいつらは“回復”するのです! 僕は天才魔術盗賊です。幸せな記憶を奪い返します!」
だが、今のカシムでは、およそ2分間しか1日にこのユーベルコードを行使する事が出来ない。
限界ギリギリまで行使して、ようやく魂人の姉弟の両親の顔を思い出させることに成功したのだった。
「はぁ……はぁ……あと数秒で僕は死んでましたね……」
「思い出せてよかったね、ご主人サマ……!」
姉弟は涙を流しながらカシムへ感謝の言葉を述べ続ける。
すると、安堵で気が緩んだ2人の歯からか盛大に空腹の虫が鳴り出した。
「……よかったら、これを」
桜が持参していた風呂敷の中身を取り出す。それはお手製のおはぎが詰まったタッパーであった。
「助けが来て安心したんだな? よしよし、腹が減ってるならこのおはぎでも食うか? 相棒お手製のおはぎは美味いぜ!?」
そう断言した凶津が真っ先にタッパーの中身をひとつ取り出してかぶりついた。
「んんんッ! 異世界でも、相棒のおはぎは最高だなッ!」
「……褒めすぎだから。恥ずかしい。さあ、あなた達もお食べ?」
異世界の食べ物(しかも真っ黒)におソロお反る手を出す姉弟だったが、ひとくち頬張ればその美味しさを理解して夢中に口の中へ押し込んでゆく。
「では僕たちも……」
「メルシーも食べたい☆」
「おいおい! これは魂人達の糧食なんだがな……まぁ、いっか。1個だけだからな?」
「……たくさん作ってきましたので、おひとつどうぞ」
「「やったー!!」」
こうして、出口を目指しながら一行はおはぎパーティに興じるという珍道中を繰り広げてゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
バーン・マーディ
…成程
この世界では闇の種族とやらが絶対者であり正義か
善い
それがこの世界における正義の在り方であるならば認めよう
だが
我は悪である
その正義に叛逆せん
UC発動
【集団戦術・戦闘知識】
散開し魂人の捜索にあたれ
他の猟兵と情報共有を行う
更に捕食の為の罠の位置をどのような所に仕掛けるかの心理分析
【属性攻撃・オーラ防御】
炎のオーラを己と騎士団に展開
【カウンター・怪力・生命力吸収・吸血】
己を捕食しようとする罠に対して魔剣でカウンター!
切り裂いて逆に剣を介して血を啜り生命を奪う
…忌々しい
この体格差だとまるで我が蚊のようではないか
霊剣(?)
【空中機動・切断】
(虚空より出現しバーンの死角に迫る捕食罠を切断する霊剣!
!?
…その黄金の柄…?(剣を掴んだ瞬間頭に響く声
「…よーぅ…ちょっとその身体僕に貸して…ってロード!?死んだ筈じゃ!?」
何者だ貴様!?
「い、いや…僕を知らないって事は…違うって事だよな?ええと…僕は銀静。この剣に封じられたイケてる勇者だよ」
今貴様我を乗っ取ろうとしたな?
「ハハハ当然自重したよ!無理だし」
「……成程。この世界では闇の種族とやらが絶対者であり正義か」
バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)はヴィランである。
世の中の正義へ叛逆する黒騎士だ。
「――善い。それがこの世界における正義の在り方であるならば認めよう。だが……我は悪である。故に、その正義に叛逆せん。征け、死して尚共に在りし忠臣たる騎士達よ。我が声に呼応せよ。今が戦いの時だ」
すぐさまユーベルコードでデュランダル騎士団の精鋭たちの霊を召喚すると、炎のオーラを己と騎士団に展開させる。
これで迷宮の罠に噛みつかれても、炎の熱で噛み砕くのを躊躇うはずだ。
バーンは召喚した部下達の霊に命令と忠言を渡す。
「散開し魂人の捜索にあたれ。一か所に留まるな。絶えず足を動かし、“口”を見かけたらその魔剣と混沌の槍ですかさず攻撃しろ。特に扉には気を付けよ。この迷宮の主の胃袋に直結してるやもしれぬ」
主の言葉を聞き入れた騎士たちは、すぐさま数人単位の班に分かれて迷宮内を捜索し始めた。
人海戦術は広大な迷宮において非常に有効であり、罠の破壊も効率良く行ってみせた。
「む……? 要救助者を1名発見、か。よかろう。連れてくるのだ」
伝令役の騎士の報告を受け、バーン自らも動き出す。
往く手を阻む“口”が現れるたびに、身の丈以上の魔剣「Durandal MardyLord」の切っ先を刺し貫いて滅してゆくバーン。ついでに『闇の種族』の血液を刃から吸い、己の魔力の糧とする。
「なんだ、このかつてない闇の波動は……? 力が溢れてくる……だが……忌々しい。この体格差だと、まるで我が蚊のようではないか」
しかし、着実に罠を破壊することで、迷宮の主に苦痛を与え続けているのは事実だ。
と、その時、バーンの背後に未だかつて見たことのない巨大な“口”が大きく開く。
恐らく、手のひらの異常を感知した『闇の種族』がバーンを狙って仕掛けてきたのだろう。
だが、バーンはそれに気付いていない。騎士たちが駆け寄るが、間に合わない……!
『ちょっと待ったぁー!!』
その時、脳内に響く大音量の声の主が虚空から飛来してきた!
それは黄金の柄を備えた霊剣であった。
霊剣は一撃で捕食罠を打ち破ると、バーンの手元にすっぽりと収まった。
「!? ……その黄金の柄……? 何処かで……? うっ……!」
突如として頭の中に流れてくる『知らない記憶の断片』と男の声!
『……よーぅ……ちょっとその身体、僕に貸して……っ』
バーンは自身の肉体の危機を察知し、炎の覇気を発散させて自我を保った。
「ぬぅんッ!! 何者だ、貴様!?」
『あれ? 憑依できてないってロード!? 死んだ筈じゃ!? い、いや……僕を知らないって事は……違うって事だよな?』
「何をごちゃごちゃ言っているのだ? 早く我が手から離れろ」
バーンはこの霊剣が自分の意思に反して、手から引き剥がせなくなっていることに気が付いた。
剣からの声が困惑しながらも自己紹介を始める。
『ええと……僕は銀静。この剣に封じられた、イケてる勇者だよ』
『勇者……だと? ふざけるな、貴様、先程……我の肉体を乗っ取ろうとしただろう? 貴様が騙る勇者とはそのような下賤な行いをするのか』
『ハハハ! だって、気が付いたら僕は剣に封印されててさ! 記憶も大部分が封印の際に吹っ飛んだみたいでね! ああ、頑張ればお前を憑依できただろうけど、まさか抵抗されるとは思わなかったし、今の僕じゃ無理だって分かったから、当然自重したよ! しばらくは一緒に行動するから、よろしく!』
「自重の理由になってないのだが……? あと勝手に付いてくるな……」
バーンは厄介な霊剣に呪われてしまったとうんざりしながらも、捕食罠を勝手に破壊し続ける銀静を振るい続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
箒星・仄々
死してなお虐げられ苦しめられるとは
本当に理不尽で残酷です
魂人さん方を出来るだけ、いえ全員、お助けしましょう
迷宮内とは言え
この巨大さならばランも存分に
宙を泳げるでしょう
自身とランさんをペロとして騎乗です
宙を行けば落とし穴はスルーできますし
上下左右からくる攻撃をつるっとすり抜けながら
高速で迷宮を進みます
風の魔力で
空気の動きや音から迷宮の変化を捉えて
予測して回避行動
同様に音や振動を猫耳やお髭で感知して
魂人さんを探索
発見次第
ぺろしてからランさんの背へ
お助けします
ここから逃げ出しましょう
しがみつくところ以外の摩擦抵抗を奪っておけば
万が一噛みつかれても
つるっとして大丈夫のはず
もう記憶を喪させやしません
業火で迎撃したり
激流の盾でも魂人さんを守ります
助けを求める声が聞こえない
=もう魂人さんがいないようでしたら脱出
掌の上というこうとは
上方に脱出口があるのかも知れません
そちらへ向かいましょう、ランさん
魔力を高める為
そして魂人さん方が少しでもホッとしていただけるよう
竪琴を奏でながら上空へ
ミーガン・クイン
私よりも遥かに巨大なその体からもらえる愛には興味があるけどねぇ。
まずはこの迷宮を抜けないとね。
ここは慎重に進もうかしら。
【オーラ防御】や【激痛耐性】で身を守りつつ、【第六感】を働かせるわ。
うっかり床の大口に食べられそうになったら、UCで巨大化して大口を塞ぐわね。
大口よりも大きくなれば壊れるかも知れないし。
巨大化した私の身体は迷宮に収まるのかしら?
窮屈なら壁を蹴り飛ばして壊してしまえると良いのだけれど。
元の大きさに戻って、危なかったら巨大化してを繰り返しながら進むわ。
魂人を見つけたら保護するわぁ。
巨大化に巻き込まないようにしながら出口まで向かうわね。
箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)とミーガン・クイン(規格外の魔女・f36759)は、『闇の種族』の手のひらの上に存在する人喰い迷宮へ転送されてきた。
「死してなお虐げられ苦しめられるとは、本当に理不尽で残酷です。魂人さん方を出来るだけ、いえ全員、お助けしましょう」
エメラルドグリーンの瞳を見開き、決意を口にする箒星。
対して、ミーガンは物体の大きさを拡大縮小する魔法を得意とする魔女故か、ひとまずの興味が『闇の種族』の巨躯へ向けられていた。
「私よりも遥かに巨大なその体からもらえる愛には興味があるけどねぇ。とりあえず、まずはこの迷宮を抜けないとね。魂人も保護しなきゃ」
2人はともに行動し、迷宮を彷徨う魂人の捜索を始めた。
「迷宮内とは言え、この巨大さならばランも存分に宙を泳げるでしょう」
「ランさんって誰かしら?」
ミーガンの疑問に、箒星が指笛で応えた。すると、黒猫ケットシーの足元の影から、体長5mものメカジキが飛び出してきたではないか。
「カッツェンランツェ、ねこの槍という意味を持つメカジキのランさんですよ~」
「うそ、空飛ぶメカジキ!?」
仰天するミーガンをよそに、箒星はユーベルコード『猫の毛づくろい』のため、自身とランさんの身体を丹念にペロペロと舐め回す。こうすることで摩擦抵抗力がゼロになり、どんな狭い場所でも滑り込める上に敵の攻撃が全て受け流されてゆくのだ。
「宙を行けば落とし穴はスルーできますし、上下左右からくる攻撃をつるっとすり抜けられます。そして、メカジキは魚類最速と名高き遊泳速度を誇ります。これで一気に迷宮を踏破できますよ」
「なるほどねぇ。よく考えているじゃない。で、なんで竪琴を抱えてるのかしら?」
いつの間にか竪琴を小脇に抱えている箒星に、ミーガンは小首を傾げていた。
これに箒星は竪琴の弦をポロロンと爪弾いてみせ、発生する風の魔力を披露した。
「ご覧ください。この迷宮内で発生した風と音色は、私のおひげに反響して、周辺の地形や生物の存在を知らせてくれるソナーの代わりになるのです。また、不穏な動きをした壁や扉も、空気が震えて危険予知も出来るでしょう」
「ということは、魂人の捜索にも役立つのかしら?」
「ええ、もちろんです。おや、早速反応がありましたよ。こちらです」
箒星はランさんを反応があった方向へ向かわせると、ミーガンへ付いてくるように指示した。
何度か左右へ角を曲がった先に、今にも壁の捕食罠に噛み砕かれそうな魂人2名を発見する猟兵たち。
「危ないわぁ! 私に任せて! 此処は慎重に……」
ミーガンは魔法で小さくした大型車両を元のサイズに戻すと、それを足場に魂人2名の元へ助走を付けて跳躍する。
だが、足元にはミーガンを狙った捕食罠が大口を開けている!
「その手は食わないわよ? み~んな踏み潰してあげるわぁ♪」
ミーガンの目の前に拡大魔法の魔法人が出現すると、それを潜った彼女の身体が一気に巨大化した!
その倍率、なんと元の身長の114倍!
「これで捕食罠もヒールで塞いじゃうわね?」
爪先で踏み潰し、ヒールを無理矢理ねじ込み、床や壁の捕食罠を次々と破壊してゆくミーガン。
唐突に表れた巨女の姿に、魂人2名は呆然とミーガンの顔を見上げるばかりだ。
「お助けします。ここから逃げ出しましょう」
この隙に箒星が魂人2名のそばへランさんを横付けし、彼らをメカジキの背に乗せる。
これでもう捕食されることはなくなった。
「あとは脱出なのですが……上は天井がありますね。空からの脱出は出来なさそうです」
これを聞いたミーガンが箒星に提案した。
「だったらいっそ、此処を破壊しちゃえばいいんじゃないかしら? 他の魂人の気配はもうしないようだし、手のひらの主を驚かせられるわぁ♪」
「なるほど、壁を突き破るのですね。私一人では考えも至りませんでした。ミーガンさん、やりましょう~!」
こうして、ミーガンと箒星は、ひたすら目の前の壁を攻撃してぶち破り始めた。
主力は巨大化したミーガンの肉弾戦だが、箒星の竪琴の音色からは発生する水の魔力の激流と炎の魔力の大爆発が迷宮破壊を後押しする。
「此処は勇ましく参りましょう。魂人のおふたりも、ご一緒にお楽しみくださいね」
箒星は今まで経験した戦いを英雄譚として歌い上げ始める。
他世界での猟兵の活躍の唄に、魂人たちは目を輝かせる。そして自分たちも助かるかも、という希望を抱き始める。
「これで、どうかしら!?」
力の限り蹴飛ばした壁の向こうは、何も隔たりがない外界に繋がっていた。
つまり、迷宮からの脱出に成功したのだ。
「やりましたね! って、おや、おやおやおや……」
箒星が喜ぶのもつかの間、天高く空の上に、彼は怪しく光る『闇の種族』の双眸を目の当たりにした。
本当に先ほどの迷宮が『闇の種族』の手のひらの上だったことと、脱出できても未だ自分らは手のひらの上であることを、箒星は理解してしまった。
「これは……まだまだ前途多難のようですね」
「でも、諦めないわよ。魂人達は私たちが保護するわぁ」
太陽の如く手の届かない天空から、『闇の種族』の死線と笑い声が降り注ぐのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ヴァンパイア・シャドウ』
|
POW : 粘り蜘蛛糸
【両手】から【粘着性の高い「蜘蛛の糸」】を放ち、【拘束する事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : ハイドインシャドウ
自身と武装を【影】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[影]に触れた敵からは【数秒の僅かな時間であるが、正常な判断力】を奪う。
WIZ : バッドラックシュート
【自らの気力】を籠めた【不吉な絵柄のカード】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【幸運度】のみを攻撃する。
イラスト:赤霧天樹
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「まあ、本当に迷宮から脱出できるなんて。そんなに私の愛がほしいだなんて、すごく嬉しいわ」
闇の種族は嬌声と共に驚く素振りを見せた。
「でも、まさか猟兵まで私の手のひらの上に遊びに来てくれるだなんて、思っても居なかったわね? だとしたら、迷宮だけじゃ詰まらないもの。だから、こういう趣とかいいじゃないかしら?」
すると突如、猟兵らの頭上から吸血鬼たちが大量に“降って”きたではないか!
「いたたた~! え、何? ここ何処なの? いきなりでかい手で仲間ごと掴まれたと思ったら……なんで猟兵が目の前にいるの?」
落ちてきた吸血鬼オブリビオン達は、この状況をさっぱり理解できない。
当然、猟兵らも突然の出来事に困惑せざるを得ない。
この状況を、天空から響く『闇の種族』の声が説明した。
「今、落したのは第四層から私が“掴んできた”玩具たちよ。今から吸血鬼と猟兵で殺し合ってもらうわね? 勝った方が私の愛をあげちゃう♪ でも、もし負けたら……」
猟兵らは身の危険を感じ、魂人達に頭を伏せるように命じた。
その頭上を、巨大な質量の5つの柱が通過してゆく。
「きゃぁっ! ちょ、なにこれ!?」
代わりに、吸血鬼のひとりが空中へ吊られてゆく。あの5つの質量は、まさか『闇の種族』の指先!?
「い、嫌! お願い、そんなに力入れたら、あたしの身体が、ぎゃああああぁぁ!」
哀れ吸血鬼は『闇の種族』の指先にいとも容易くへし折られてしまった!
「は~い、負けたほうは、私が潰して食べちゃうわね?」
柘榴のように潰れた吸血鬼オブリビオンの身体が、遥か頭上の虚空へと消えていった。
何たる暴虐か!
第三層の『闇の種族』は、第四層で猛威を振るう吸血鬼オブリビオンでさえも弄ぶというのか!
ようやく状況を理解した吸血鬼オブリビオン達は、自らの身の安全と『闇の種族』の興を削がぬように猟兵らへ半狂乱のまま突撃してゆく!
「死にたくない死にたくない死にたくない!」
「はやく猟兵を殺さなきゃ!」
「たくさん殺して、元の世界に帰らなきゃ!」
襲ってくる吸血鬼オブリビオンたちも、いわば被害者である。
しかし、猟兵はオブリビオンは滅するのみ。
猟兵らよ。私情を捨て、半狂乱の吸血鬼たちへ引導を渡すのだ!
神代・凶津
悪趣味なヤロウだぜ、闇の種族ッ!
結界霊符を魂人達の周りに貼って結界術を展開、とりあえずこれで戦闘の流れ弾は気にしないで良くなるな。
んじゃ、さっさとケリを付けるぜ相棒ッ!
「…転身ッ!」
雷神霊装を纏って戦闘開始だ。
高速移動で戦場を縦横無尽に駆け回りながら、霊装から放出する雷を妖刀に集束させた斬撃の放射を叩き込んでやる。感知を不可能になってもいる場所を見切ってやるッ!
吸血鬼オブリビオンの操る影なんぞ破魔の雷撃で斬り祓って浄化してやるぜッ!
俺達の妖刀の錆になっちまいなッ!あんなデカブツに弄ばれた末に殺されるよりマシだろうからよッ!
【技能・結界術、見切り、破魔、浄化】
【アドリブ歓迎】
神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は相棒の桜の身体を借りて妖刀を身構えると、救出した魂人達の周囲に結界霊符を展開して防壁を成した。
「悪趣味なヤロウだぜ、闇の種族ッ! あんた達、そこから一歩も出るなよ? とりあえずこれで戦闘の流れ弾は気にしないで良くなるからな」
魂人達は言われるがまま、結界の中でおとなしく身を寄せ合って神代コンビを見守っていた。
対して、いきなり転移させられた吸血鬼オブリビオン達は、血眼になって神代コンビへ襲い掛かってきた。
「か、影を纏って奇襲するよ!」
「視聴嗅覚での感知が出来なくなれば、人間どもは無力だ!」
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!」
闇の種族によって潰された仲間の無残な最期を見てしまった彼女たちは、わが身可愛さにユーベルコードを行使してくる。自身と武器を影で覆い、敵に認知させない感覚遮断効果を得る。
だが、埒外の力には同じく埒外の力で対抗するのが常である。
「んじゃ、さっさとケリを付けるぜ相棒ッ!」
「……転身ッ!!」
神代コンビの二人の力を一つに合わせたその時、その身に纏うは万雷の霊装なり。
「スパークフォームだぜッ! 湧いてきやがったなッ!」
「……雷神霊装、参ります!」
次の瞬間、『雷神』の力を内包した霊装が一瞬でその場から姿を消した。そのスピードはまさしく紫電の如く迅速であり、爆ぜるような雷鳴が轟いた。
「おらよッ! 影なら光に弱いだろッ! 霊装から放出される紫電を束ねた妖刀の一撃で消し飛びなッ!」
妖刀の刀身が紫の雷光に包まれたかと思えば、凶津は前方へ真一文字に刃を振り抜いた。
「「グワアアァァァアアアーッ!?」」
途端、あちこちで悲鳴が轟く!
たとえ猟兵側が認知できなくても、実態は周囲に存在する以上、武器を振れば必ず命中するのは必至だ。しかも紫電を纏っているので生体へ電流が引き寄せられて落雷を誘発!
哀れ吸血鬼オブリビオン達は、たった一振りでかなりの数が黒焦げになってしまった。
「影なんぞ、俺達の浄化の雷で消し飛ばせば何の問題もないぜ!」
「まだだ! こちらの攻撃が命中すれば、敵からほんの数秒だけ正常な判断力を奪う事が出来る!」
「みんな! 一斉に飛び掛かれ! 一撃でも入ればこちらの勝ちだ!」
吸血鬼オブリビオン達が円陣を組んで神代コンビを包囲すると、阿吽の呼吸で一気に手にした槍を突き出した。
「これで勝ったぁァァァッ!」
刺し貫く肉の感覚……が、何故かまるでない事に気が付く。
驚くことに、神代コンビの姿がまたしても忽然と消えてしまっていた。
「や、奴等は一体どこに?」
戸惑う吸血鬼オブリビオン達の頭上から、不意に声が降ってきた。
「此処だぜ! 流石、スパークフォーム! 反応速度がハンパねぇな!」
なんと、跳躍で槍の包囲網を開始していた神代コンビ!
認知できない攻撃を軽々と回避するとは、何たる歴戦の戦闘センスか!
「とっとと俺達の妖刀の錆になっちまいなッ! あんなデカブツに弄ばれた末に殺されるよりマシだろうからよッ!」
地面に降り立つやいなや、妖刀を大地――闇の種族の手のひらに突き刺し、吸血鬼オブリビオン達を足元から感電させる。ダメージと浄化の紫電で纏った影を雲散霧消させると、凶津は迅雷の足運びで次々と吸血鬼オブリビオン達を辻斬りしてみせた。
と、ここで再び5本の巨大な柱……闇の種族の指先が天空から降ってくる。
「ちょっとぉ? 誰よ今、私の手のひらをビリビリ痺れさせたのは? びっくりしちゃったじゃない?」
苛立つ闇の種族が無造作に吸血鬼オブリビオン達の一部を摘まみ上げる。
「え、なんで!?」
「ビリビリさせたのは猟兵だってば!」
「嫌だぁぁあ! 離してっ!」
泣き叫ぶ吸血鬼オブリビオン達の声など無視した闇の種族は、掴んだ彼女らを再び天空へ連れ去ってしまった。
そして頭上からかすかに聞こえてくる断末魔に、凶津も桜も流石にいたたまれない気分になってしまう。
「危ねえ危ねえ、下手したら俺らも柿ピー感覚で摘ままれてたぜ。つか、俺達の全力のスパークフォームが、彼奴にはびっくりする程度で済まされちまうのかよ。とんでもねえな、闇の種族って奴はっ!」
「……ですが、僅かでもダメージは与えられたようです。確かに、死力を尽くせば渡り合えるのかもしれません」
この地へ送り出した蛇神は言った。
――勝機があると踏んだなら、決死の覚悟で挑む展開を望むなら……。余は貴様らの意思を尊重しよう、と。
「第一目標は、魂人達の救出。つまり撤退戦だったな。だが……」
「……凶津、こればかりは、私達だけの判断で決めるのは時期尚早ですよ」
「ちっ! そうだな! それに、今はそれどころじゃないしなッ!」
ひとまず、残りの吸血鬼オブリビオン達の殲滅へ回る神代コンビ。
戦いは、まだ始まったばかりである……。
大成功
🔵🔵🔵
大神・狼煙
敵が上空へ連れ去られた同胞を見ている隙にUCで亡霊共を召喚
攻撃させずに戦場に展開させ、カードを構えた瞬間に腕に食らいつかせ投げさせない
冷静さを欠いた今、焦燥から大振りになるはず
後方に魂人がいる為、何もさせず皆殺しにする
恐怖に駆られた状態で見えない攻撃を受けて悲鳴をあげるはず
腕、脚、腹の順に、死ねないように食い殺させて見せしめに
味方が理解できない死に方をすれば、闇の種族の仕業と錯覚して、何も無い虚空へ攻撃すれば御の字
ダメでも恐怖から、魂人には目もくれず、猟兵だけを狙うだろう
後は同化した吸血鬼を支配下に置き、囁かせながら、見えない、でも味方の声がする『何か』として襲い掛からせ、精神面から嬲り殺す
ミーガン・クイン
とんでもない光景を見せつけられたわねぇ…。
なんて酷く悍ましい、でも最高に興奮したわぁ♡
当てられちゃった、私も真似したいわぁ。
【武器受け】【受け流し】等で攻撃を避けながら。
【誘惑】や【おびき寄せ】でそこらにいる吸血鬼を捕まえて、
大きさを奪って奪って奪いつくして、
かすみたいな大きさのそれを手の平の上で転がして、
最後には摘まみ潰しちゃう。
はぁ…どれほどの甘美な恐怖を味わえるのかしらぁ♡
こんな状況で一人遊びに耽って申し訳ないけど。
もっとおかわりを捕まえなきゃね。
サフィリア・ラズワルド
POWを選択
引き続き飛竜の姿で、魂人達を腹の下に抱えてしゃがみこみます、この人達にUCを使わせないように守るにはこうするしかない。
「何も見ず何も聞かずに伏せていてください」
青い炎を周囲に吐き敵を焼きます、炎を突破してきた敵は尻尾と牙で応戦します。
傍から見たら私が今してることはこの世界の支配者とそう変わらないのかもしれない、生きるために強制的に戦わされている者を躊躇いもなく殺す…。
「ごめんなさい、敵とはいえこんな形で戦いたくはありませんでした」
どうか見ないでください、聞かないでください、これ以上あなた達に辛い思いをしてほしくないんです。
アドリブ共闘歓迎です。
大神・狼煙(餓狼・f06108)が音も立てずにユーベルコードを発現させる。
ヴァンパイア・シャドウ達は、再び仲間が上空へ連れ去られてゆくのを恐怖に慄きながら呆けている。
今なら、猟兵側が戦闘の主導権を握る事が出来ると怒れる大神は状況判断したのだ。
「少しばかり解放してやるから手ェ貸せ……! そのまま奴等に忍び寄れ……!」
召喚されたのは、大神以外には認識できない霊体の群れだ。その正体は、かつて喰い殺した人々やオブリビオンのそれら。殺されてなお大神という復讐の半吸血鬼(ダンピール)に使役させられてしまう、哀れな存在達だ。
大神が策を巡らせている間、サキュバスのミーガン・クイン(規格外の魔女・f36759)が上気した顔を緩ませながら、煽情的に舌舐めずりをしていた。
「また、とんでもない光景を見せつけられたわねぇ……。なんて酷く悍ましい、でも最高に興奮したわぁ♡ そんなのを立て続けに見せ付けられたら、こっちも当てられちゃった、私も真似したいわぁ」
目の前に渦巻く恐怖の感情を摘まみ食いして性的興奮を得たミーガンは、その興奮度合いを更に飛躍させるためにユーベルコードで『闇の種族』の真似事を試みる。
「ねえ? あなたたち、私と遊ばないかしらぁ? もっと近くに来てぇ♡」
だが半狂乱のヴァンパイア・シャドウ達は、丸腰で接近してくるミーガンに向かって攻撃せんと身構える。
「く、来るなぁ! 来たら、このカードを投げわよ!」
「このカードが命中した奴は、幸運が吸い取られちゃうんだから!」
「そうなったら、次に摘まみ殺されるのはアンタだ!」
「いや、もう投げちゃえ! 警告はしたんだし!」
彼女らは混乱しながら、大振りのフォームから不吉のカードをミーガンへ投げつけようと腕を振り被った。
だが、その途端、異変が起きた。
ヴァンパイア・シャドウのひとりの腕が、突然食いちぎられて血飛沫を噴き上げたではないか。
「ぎゃああああぁぁっ!?」
この悲鳴を皮切りに、大神が忍ばせていた知覚できない亡霊達が一斉にヴァンパイア・シャドウ達を食い殺し始めた。
「なになに!? 何が起きてるの!?」
「見えない何かに喰われてるっ!」
「いやぁぁぁっ! あたしのお腹、食べないでよぉ!」
「猟兵よりもそっちを攻撃して身を守らなきゃ!」
「これもあのデカブツの仕業なの!?」
目の前で不可解かつ残虐な仲間の死を目の当たりにすれば、もはや正常な判断力を失ったヴァンパイア・シャドウ達は上空や足元へ不吉なカードを投げ続ける。
この光景に大神がほくそ笑む。
(そうだ、そうやって俺達から目を背けろ。そして闇の種族の糞野郎の幸運度をどんどん削り取れ。それが積み重なれば、魂人達の救出やコイツの殺害の足掛かりになるはずだ……)
大神は更に恐怖を演出するべく、敢えて敵の数体は殺さずに四肢だけを霊たちに喰わせるように指示。喰い殺した仲間はすかさず新たな軍門に下すことでその数を増やし、ヴァンパイア・シャドウ達の耳元で怨嗟の声をささやかせることで精神崩壊を誘発させる。これを繰り返し、哀れな彼女らを追い詰めていった。
対して、ミーガンは目の前の惨状から発せられる恐怖に恍惚の笑みを浮かべつつ、足を食われて動けなくなったヴァンパイア・シャドウに優しく声を掛けた。
「怖かったわねぇ? もう大丈夫よぉ。私があなたの遊び相手になってあげるわぁ♡」
サキュバス特有の誘惑の技量の前に、精神崩壊寸前の敵は赤子のように身を寄せるほか出来ない。だがそれこそがミーガンの罠であった。
「いい子ねぇ? ご褒美として、私の特別な能力、見せてあげる♡ えいっ、サイズドレイ~ン♡」
次の瞬間、敵の身体がみるみるうちに小さくなり、あっという間に手のひらの上に収まるサイズまで縮小してしまった。素肌で触れた対象の『大きさ』を操るミーガンの固有能力だ。
「え、え? 私、小さくなったの? ひっ……!」
状況を把握してしまった敵は絶望する。
「大きさを奪って奪って奪いつくして、かすみたいな大きさのそれを手の平の上で転がして、最後には闇の種族みたいに摘まみ潰しちゃう♡ はぁ……どれほどの甘美な恐怖を味わえるのかしらぁ♡」
「い、いやぁぁ……っ!」
足を失い、逃げることは不可能な敵にとって、更に肉体を縮められて猟兵の手の上で藻掻くしかできないなんて、絶望の極みである。
ミーガンは指先で敵をぐりぐりといじりながら、周囲の惨状を眺めて他の獲物を吟味する。
「こんな状況で一人遊びに耽って申し訳ないけど。もっとおかわりを捕まえなきゃねぇ? あなたも『道連れ(おともだち)』が欲しいでしょう?」
慈愛に満ちた残虐な笑みを湛えるミーガンに、手のひらの上の吸血鬼オブリビオンはただ震えることしかできなかった。
そんな中、サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)はユーベルコードで四つ足の白銀飛竜の姿を維持したまま、魂人達を腹の下に抱えてしゃがみこませて守っていた。彼らにこれ以上、ユーベルコードを使わせないためにも、自らの肉体を盾にして守り続けているのだ。
「何も見ず、何も聞かずに伏せていてください。私が皆さんを守ります」
決意に溢れた言葉で魂人達を安心させてゆくが、その身体は吸血鬼オブリビオン達の放つ粘着性の蜘蛛糸で身動きが封じられていた。
「なんでこんなところにドラゴンがいるのよ!?」
「あれも猟兵だって言うの!? ふざけないでよ!」
「とにかく、奴の動きは封じたわ!」
安堵するヴァンパイア・シャドウ達だったが、ドラゴンに蜘蛛糸で身を封じることがどれだけ無意味かをすぐに思い知る事となる。
「蜘蛛糸は炎に弱いはずです。でしたら、これで!」
サフィリアがその口から灼熱の蒼炎を周囲に吐き散らせば、蜘蛛糸は容易に燃えて無くなり、吸血鬼オブリビオン達は瞬時にその身を灰燼に変えていった。
「ごめんなさい、敵とはいえこんな形で戦いたくはありませんでした」
サフィリアは炎を吐きながら涙を流す。
「傍から見たら私が今してることは、この世界の支配者とそう変わらないのかもしれない、生きるために強制的に戦わされている者を躊躇いもなく殺す……。それはとても残酷な行い……」
蒼炎で焼き払い、巨大な尻尾と牙で敵を粉々に打ち砕き続けるサフィリア。
敵は下層で民草を虐げてきた悪だ。それがここへ召喚されて滅せられるのだから、ある意味では天罰といえよう。
しかし、これが仕向けられた戦いであることに、サフィリアは深い悲しみを背負っていた。
「これは、あなたたちが決して憎いからじゃありません。私には、守らなきゃいけない人達がいるから……ごめんなさい、ごめんなさい、本当に、ごめんなさい……」
腹の下でうずくまり続ける魂人達へ、彼女は悲し気に告げた。
「どうか、どうか見ないでください、聞かないでください、これ以上あなた達に辛い思いをしてほしくないんです……」
魂人達は沈黙を保ったままだ。
言われた通り、目も耳も口も塞いで、今を耐え忍んでいるのだ。
三者三様、信念や心情は違えど、目の前の脅威を着実に排除しつつあった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
バーン・マーディ
神機
…全ては奴の気まぐれか
善い
それがこの世界の在り方ならば
「叛逆って?ブレないねロード!それはそうと剣に魔力を回してくれない?もう少し役立てるぜ?それとも裏切られるのが怖いかな?」
ふん、安い挑発だな?だが乗ってやろう
UC発動
「…久しぶりだなーこうして体が動かせるのは!」(現れるは白銀のデュランダル騎士…そして顔立ちは
…貴様、ぜっちゃんとやらか?(ぜっちゃん類似
「…げ、僕と同じ顔でその綽名…若しかして馬鹿兄貴もきてるのか…!?」
まぁいい…奴も中々の強さであった…貴様はそれに劣るか?
「冗談!弟に勝る兄は存在しないってな!…速さは彼奴に譲るけど」
【戦闘知識】
敵達の戦い方の分析
銀静はターゲッティング
【属性攻撃・オーラ防御】
炎のオーラを己達に付与
【二回攻撃・鎧破壊・鎧無視攻撃・集団戦術】
「ちょいと心苦しいが…容赦はしないよ?」
超高速連携
魔剣で切り刻み
銀静
高速で切り捨てながら蒼いオーラを纏っての超高速連続斬撃で無数の吸血鬼の殲滅を狙う
「本来なら一人に叩き込むんだけど…こういうのも悪くはないな!」
カシム・ディーン
神機
…彼奴…ぜっちゃんじゃね?
「ちょこーっと違うっぽいよ?双子レベルの違いだけど」
ほぼ一緒じゃねーか
それはそれとして…此奴等に同情はしねーが…
なぁ…魂人をしっかり助けてあのデカブツをぶち殺す…出来ると思うか?
「オロチヒメちゃんは難しいと言ってたね?でも…できないと言ってなかったよ☆それに小さいのを虐める悪い子へのお仕置き…もう思いついてるんでしょ?」(にやり
…くそが!(沈痛
【情報収集・視力・戦闘知識・医術】
敵達の陣形と動きを分析
そして…之から戦う闇の種族の規模…肉体構造
それらを現時点でも分析開始
後は…此方を捕捉する感覚器官はどのような物か
視覚嗅覚触覚聴覚かを解析
UC発動
【集団戦術】
3体ずつ合体
4体合体したのはメルシー乗せ
計42体
10体は魂人の護衛
残りは殲滅
【属性攻撃・弾幕・念動力】
念動障壁を展開
火炎ブレスや弾丸を乱射して蹂躙
更に念動力で敵の位置を細かく捕捉して情報共有
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・捕食・浄化】
浄化の力を竜達と鎌剣に付与
切り刻み捕食して更に金目の物は根こそぎ強奪
箒星・仄々
闇の種族さんにとっては
吸血鬼さんも暇潰しの玩具に過ぎないのですね
なんと傲慢で哀れな種族さんなのでしょう
吸血鬼さん方にとっては災難ですが
おそらく第四層で同じような理不尽な仕打ちを
沢山されて来たことでしょう
因果応報でしょうか
文字通り掌の上で踊らされていて
業腹ではありますが
吸血鬼さん方には海へお還りいただきましょう
魂人さん方を背後に庇いながら
竪琴を奏でます
ささやかですが鼓舞や勇気の魔法も込めましょう
旋律と共に練り上げた魔力で
蛍のような炎の球を無数に宙に生み出し続けます
炎の魔力に粘着の状態異常を加えた炎球は
風の魔力でふわふわ浮かび上がり
魂人さん方を守ように周囲に展開させます
蜘蛛糸が例えどんなに細くても
その蜘蛛糸の起こす空気の動きに反応して
炎の球が糸にピタッとついて
そしてすぐさま燃やし溶かします
因みに姿を隠してもカードを投げても
同上です
更に生み出した炎球で吸血鬼さん方を取り囲み
粘着する無数の炎球が全身にくっついて
燃え上がらせます
灰になるまで離れませんよ
終幕
鎮魂の調べ
海で静かな眠りを
紅蓮の炎のオーラを纏うバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は、この不条理な状況に対して深く頷く。
「………全ては奴の気まぐれか。善い。それがこの世界の在り方ならば」
この言葉に、手中に収める霊剣から声が響く。
「叛逆って? ブレないねロード! それはそうと剣に魔力を回してくれない? もう少し役立てるぜ? それとも裏切られるのが怖いかな?」
銀静と名乗る霊剣は、バーンを煽るような言葉をぶつけてきた。
バーンはこれに鼻で笑う。
「ふん、安い挑発だな? ……だが乗ってやろう」
バーンは魔力を霊剣に注ぎ込み、新たなユーベルコードを創出するのであった。
その傍らで箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が悲愴に満ちた顔で目の前に現れたヴァンパイア・シャドウ達を眺めていた。
「闇の種族さんにとっては下層の吸血鬼さんも暇潰しの玩具に過ぎないのですね。なんと傲慢で哀れな種族さんなのでしょう」
竪琴を構えた箒星は、吸血鬼オブリビオン達に語り掛ける。
「吸血鬼さん方にとっては災難ですが、おそらく第四層で同じような理不尽な仕打ちを沢山されて来たことでしょう。因果応報でしょうか」
「うるさい! いきなり連れてこられて殺されるなんて、そんなの誰だって嫌でしょ!」
反論するヴァンパイア・シャドウに、呆れながら首を横に振る箒星。
「だからといって、刃を向ける相手をお間違えの無いようお願いします。文字通り掌の上で踊らされていて業腹ではありますが……私も貴女方と戦わざるを得ませんので。ということで、吸血鬼さん方には、骸の海へお還りいただきましょう」
箒星は懐中時計を竪琴へ変形させると、魂人達を庇うように前へ出ながら演奏を始める。
「さあ、常闇に三食の輝かしい魔力の奔流を御覧に入れましょう。そしてこの旋律が、魂人さん方へのささやかですが鼓舞や勇気の魔法となるでしょう」
音を媒介に世界へ干渉するシンフォニアだからこそ出来る芸当だ。
ヴァンパイア・シャドウ達が放つ粘着性の蜘蛛色を放つも、それは魂人達には決して届かない。何故ならば、箒星が旋律より発生させた蛍火のような小さな火炎が周囲に漂い、蜘蛛糸を焼き払っているからだ。
「旋律と共に練り上げた魔力で、蛍のような炎の球を無数に宙に生み出し続けます。炎の魔力に粘着の状態異常を加えた炎球は、風の魔力でふわふわ浮かび上がり、魂人さん方を守ように周囲に展開させれば守りは盤石です。蜘蛛糸が例えどんなに細くても、その蜘蛛糸の起こす空気の動きに反応して炎の球が糸にピタッとついて、そしてすぐさま燃やし溶かします。更に、水流で吸血鬼さん方を押し流して近付けさせません」
これでは、透明化もカード投擲も箒星には通用しない。
そこで敵は標的をカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と相棒のメルシーの2人に変更する。
「ご主人サマ! 狙われてるよ!」
「分かってるっつーの! 彼奴等め、僕達の十八番を真似やがって……!」
姿と気配を消すユーベルコードで吸血鬼達がカシムとメルシーに襲い掛かる。
2人は念動障壁で初撃を防ぎ、敵の影に直接触れずに済んだ。
「メルシー! ここは一気に蹂躙するぞ!」
「ラジャったよ☆ ダイウルゴスだね!」
阿吽の呼吸でメルシーが敵の攻撃を防ぐための障壁を最大展開すれば、攻撃を防いでもらっている間にカシムが詠唱を口にする。
「万物の根源よ……帝竜眼よ……文明を構成せしめし竜の力を示せ……!」
すると、眼球に数字が刻まれた127体の小型ダイウルゴスが召喚され、それらは次々に合体してゆく。
「3体ずつ合体させます! 4体合体した個体はメルシーを乗せろ! 強化ダイウルゴス42体が相手です!」
カシムは10体を魂人達の護衛につかせると、残りの32体で周囲をところ構わず火炎ブレスで焼き払い始める。
「いくら僕達の認識を遮断していても、この火の海を渡って此処まで来れますか?」
「「ぎゃああああぁぁっ!?」」
念動障壁の堅牢な見えない壁越しから乱射される火球が吸血鬼達を爆発四散させてゆけば、接近してきた敵をカシムが竜の背の上からビーム大鎌剣ハルペーの切っ先で刺突で各個撃破してゆく。
「金目の物は……この赤い槍くらいか? しけてますね、その角や翼を剥いだ方が金になりそうです?」
「ご主人サマ、それじゃサンがブレイクした狩猟生活だぞ☆」
「うるせー! また新作が出たから、とっとと任務を終わらせて徹夜で狩るぞ!」
「メルシーはガンランスでイクよ♪」
そう言ったメルシーは、万能魔術砲撃兵装『カドゥケウス』を竜の背の上から発射して敵を蹴散らしてみせた。
「どっちかっていったらヘビィボウガンじゃねーか! って、あれを見ろ、メルシー?」
カシムが指差した先に、見覚えのある銀髪の青年がバーンと共に戦場を駆け抜けていた。
「……彼奴……ぜっちゃんじゃね? クソマズ漢方チョコの女装の?」
カシムが顔見知りの名を口にすると、メルシーがそれを否定するべく首を横に振った。
「ちょこーっと違うっぽいよ? 双子レベルの違いだけど」
「ほぼ一緒じゃねーか……!」
そんなやり取りがバーンの耳に入ると、銀静と名乗る青年へ今一度尋ねた。
「……貴様、本当はぜっちゃんとやらか?」
この問いに銀静が露骨に嫌な顔をした。
「……げ、僕と同じ顔でその綽名……若しかして、馬鹿兄貴もこっちの世界にきてるのか……!?」
バーンは眉間にしわを寄せて言い返した。
「質問を質問で返すな、愚か者が。では貴様はぜっちゃんでなければ何者だ?」
「本当に僕のことを覚えていない? そっか、それじゃあ……改めて自己紹介するよ! おっと!」
投げ付けられた不吉なカードを、手に携えた魔剣ですぱすぱと斬り裂いてゆく銀静が答えた。
「僕は霊剣『Durandal AG』に封じられた英霊こと皇・銀静! これまでに何度か転生を繰り返していてね? 前世は人類の侵略者だった、気がするよ! ああ、ちょっと記憶があいまいなのは勘弁してほしいな。んで、ロードと僕は前世で浅からぬ仲だったんだけどさ……」
「知らぬ。我は今生のみぞ知る」
バーンは炎の闘気で投げ付けられたカードを身体に触れる前に焼き払いながら、吸血鬼達を巨大な魔剣で撫で切りに伏していった。
銀静はバーンの言動に苦笑いしてしまう。
「まぁ、いっか……それよりも、久しぶりだなーこうして体が動かせるのは! と言う訳で僕、参上ってね?」
「……ぜっちゃんは……奴は、中々の強さであった……弟えある貴様は、それに劣るか?」
これに銀静は食い気味で反論した。
「冗談! 弟に勝る兄は存在しないってな! ……速さは彼奴に譲るけど、パワーなら僕が上だよ?」
「ほう? ならば証明してみせよ。貴様の叛逆を我に示せ」
バーンは生み出されたばかりのユーベルコードを発動させると、自身の身体が急激に軽くなるのを感じた。
「なに……? これは、羽根のように身体が軽い……!」
「ロードも今、僕の本来の力が伝播してるはずだよ。さあ、かつてのように敵を蹂躙しようか、ロード? そして……吸血鬼達にはちょいと心苦しいが……容赦はしないよ?」
銀静とバーンが駆け出した次の瞬間、2人の姿が点滅するかのように残像を残しながらあちこちを行き交って吸血鬼達を切り刻んでみせた。それもそのはず、彼らは今、マッハ12弱もの超音速で何度も突撃を繰り返しているのだ。
息の合った連携のなあに囚われた敵は、斬られた感覚すら認知できぬまま絶命するであろう。
そんな壮絶なユーベルコードを眺めるカシムとメルシーが、戦いながら今後のことについて話していた。
「それはそれとして……此奴等に同情はしねーが……なぁ……魂人をしっかり助けて、このデカブツをぶち殺す……出来ると思うか?」
カシムは爪先で地面こと闇の種族の皮膚を蹴っ飛ばしながらメルシーに問うた。
メルシーは顎に右の人差し指を添えながら思案する。
「オロチヒメちゃんは難しいと言ってたね? でも……できないと言ってなかったよ☆ それに小さいのを虐める悪い子へのお仕置き……もう思いついてるんでしょ?」
にやり、と悪辣な笑みを浮かべるメルシーに、カシムは頭を抱えてしまう。
「……くそが! だがこれには賛同者が必要だ……僕達だけが立ち向かおうが、今回ばかりは周りと歩調を合わせなきゃならねーですからね」
「説得が大事だね☆」
果たして、他の猟兵の理解をカシムは得られるのだろうか?
その頃、箒星は鎮魂歌を奏でながら残る吸血鬼達を掃討していた。
「生み出した炎球で吸血鬼さん方を取り囲み、粘着する無数の炎球が全身にくっつけて燃え上がらせます。灰になるまで離れませんよ。骸の海で安らかにお眠りください。って、おや?」
突然の地鳴りと足元の強い揺れを感じた箒星。それは他の猟兵達も同様だった。
「不味い……手のひらが閉じ掛けている……!」
バーンは徐々に押し寄せてくる4本の巨大な指を背にして、一気に手首の方向へ駆け出してゆく。
「ご主人サマ! 早く乗って!」
メルシーが本来の姿である体高5mの機神へ戻り、カシムをコクピットへ誘う。
「ああ! 早く逃げるぞ! 魂人達はメルシーの手のひらへ飛び乗れ!」
「私達も避難しましょう!」
向かい風と水流を利用して高速移動を行う箒星もまた、魂人達を全員引き連れて脱出を図る。
ものの十数秒後には手のひらは完全に閉じられてしまい、どうにか猟兵達も魂人達も全員無事を確認できたのであった。
だが、真の絶望は此処から始まるとは、誰も予期していなかった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『狂愛の破壊者・アプロディテ』
|
POW : さあおいで私の可愛い奴隷達
戦場全体に【奴隷達の霊】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【奴隷達の剣と盾】による攻撃力と防御力の強化を与える。
SPD : ぁぁ本当に…酷い人
【凝縮された恨みの念】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【ユーベルコードを封じる】の状態異常を与える。
WIZ : 私を愛して
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【自身の魔力で編んだ見えない糸】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。
イラスト:柴一子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ミカエル・アレクセイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「あらあらぁ? 手のひらから逃げ出した悪い子たちがいるのね?」
天から降り注ぐ声は甘く蠱惑的で、とても慈愛に満ちていた。
手のひらを脱したことで、猟兵達と魂人達は周囲の本当の景色を知る事となる。
超巨大な豪華な壁画や装飾品が所狭しと存在し、天には気色悪い笑顔を浮かべた闇の種族がこちらをじっと見詰めていた。
どうやら、超巨大な建物の一室で寛ぐ闇の種族の身体の上に、猟兵達と魂人達は乗っかっているようなのだ……!
「はじめまして。私は狂愛の破壊者・アプロディテ。まさか、手のひらから脱出するだけじゃなくって、第四層のオモチャを全部壊しちゃうなんてねぇ? そんなに私の愛が要らないのかしら?」
慈愛に満ちた顔は次第に憎悪に歪み、愛を語る口は鬼のように口端を吊り上げてゆく。
「ぁぁ本当に……みんな酷いわ。やっぱり、私は誰からも愛されないのね。そんな悪い子たちはお仕置きしなくっちゃ、ね?」
闇の種族は怪しげな魔力を編み上げ始めて此方を抹殺しようとしてくる!
猟兵達は転送前のブリーフィングで言われたことを思い浮かべる。
――闇の種族が見つける装飾品を破壊することで、周囲の魂人達ごと第四層のランダムな場所へ転移する事が出来る、と。
手首の腕輪や閉じられた手のひらの指輪など、破壊する装飾品に困ることはないだろう。飛翔できれば、闇の種族の首飾りや耳飾りも狙えるはずだ。
しかし、敵は巨大にして強大。素直に装飾品を破壊させてもらえるわけもなく、全力で此方を殺しに来るだろう。
故に、ブリーフィングでは撤退戦を強く推奨されている。まともに戦っても【大成功と呼べる戦果を挙げることは困難】だと予知されているからだ。
だが、それでもこの場で闇の種族を殺すという強い意志があるのならば……多くの仲間と共に抗えば、決して勝てぬ相手ではないはずだ。何故なら、デビルキングワールドでの先の大戦において、猟兵達は山よりも巨大な敵と交戦して勝利している実績があるからだ。闇の種族とて、それは同じだ。何よりも、闇の種族を倒したという事実が出来上がれば、今後の未来も大きく変わるだろう。
魂人達の安全を優先しての脱出か?
それとも数々の惨劇を生み出した元凶をこの場で殺すか?
できるだけ意思統一をしなければ、この任務は失敗しかねない。
果たして、猟兵達の選択は――?
神代・凶津
どうする、相棒ッ!?
「…撤退します。私達の勝利条件は魂人の方達の救出です。」
了解、動くなら早い方がいい。
あのデカブツがこちらを舐め腐ってる今が絶好のチャンスだしよッ!
とはいえ、易々とデカブツが見逃してくれるとは思えねえし。ならアレの出番だッ!
デカブツこっちを見やがれッ!
相棒ッ!
「…式、召喚【輝き黄金蝶】」
この式神に戦闘能力はねえ、だが注意を引くのにはこれ以上ねえ式神だ。この闇の世界なら尚更なッ!
今のうちに魂人達全員を連れて近場の装飾品を破魔の霊力を込めた薙刀で破壊だ。
転移に成功したら転移先で結界を貼って魂人達の安全を確保、そうすりゃ一息つけるぜ。
【技能・式神使い、破魔、結界術】
【アドリブ歓迎】
四王天・焔(サポート)
『こんにちは、焔だよー。』
妖狐の人形遣い×ガジェッティアの女の子です。
普段の口調は「無邪気(自分の名前、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、家族には「甘えん坊(自分の名前、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
無邪気で感情の起伏が激しい性格の少女、
武器はからくり人形とドラゴンランスを主に使います。
植物、特に花が好きです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
討伐か、撤退か……。決断を迫られる猟兵達。
「どうする、相棒ッ!?」
朱塗りの鬼面こと神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が、装着者で相棒の神代・桜に尋ねる。
桜は一呼吸置いた後、決断的に告げた。
「……撤退します。私達の勝利条件は、魂人の方達の救出です」
桜は後ろに控える魂人達をちらりと見遣る。
当初の目的を忘れてはならない。桜は固く自身の心に誓っていた。
これに凶津もすぐに賛同する。
「了解、動くなら早い方がいい。あのデカブツがこちらを舐め腐ってる今が絶好のチャンスだしよッ!」
遥か上空でニタニタと見下ろす闇の種族の顔を凶津が睨む。
「うふふ……私の愛を拒む悪い子は、どんなお仕置きを与えようかしら……?」
すぐに攻撃を加えてこないあたり、凶津の言葉通りに闇の種族は自身の絶対的優位を信じてやまない。
故に、そこに付け入る隙があるのは間違いない。
だが、いつまでも動かずにはいられないのもまた事実だ。
「とはいえ、易々とデカブツが見逃してくれるとは思えねえし……考えろ、考えるんだッ!」
凶津が頭を悩ませているところへ、新たな転移の光が間近に輝く。
これはサポート猟兵の到着を意味する……!
「こんにちは、焔だよー。うわー、すっごくおっきなお姉さんがいるよー?」
紫色の妖狐の四王天・焔(妖の薔薇・f04438)が無邪気に天空を指差す。
そんな焔へ凶津は早口で今の状況を簡潔に伝えると、すぐに協力を申し出た。
「……てな感じで、後ろの魂人達を逃がすためにも、あの目の前のでかい腕輪をぶっ壊すぞッ!」
「みんなをいじめるなんて酷い! わかった、焔も手伝うねー!」
焔はまず、花柄の手袋から魂人達を守り覆うエネルギーバリアを展開する。
蒼きドラゴンランス【フローレ】と拳銃型の魔導兵器『青蓮』を左右の手に握り、解き放ったからくり人形のゴシックパペットが鍔部分に薔薇の装飾が浮かび上がる、紫色のフォースセイバー『紫煌剣』を掲げる。
更に、焔は己を自己強化して万全の態勢を敷く。
「ほむらほむほむ――灼熱の炎を纏った紅の巫女になぁーれ☆」
ユーベルコード『妖狐三変化・焔式(フォックステイル・カラフル)』で変身した焔の身体から、紅蓮の炎が噴き上がる!
その熱に苛立ちを覚えた闇の種族が、積もり積もった怨念を込めた指先を焔へ向けて下ろしてくる。
「ぁぁ本当に……酷い人。私を捨てたあの人のように、あなたも私の愛を暴力で拒むのね……?」
「まずいッ! あの指先に捕まったらオダブツだぜッ!」
「……凶津、此方も窮地です」
桜の声で、凶津はもうひとつの手が自分たちへ向かっていることに気が付く。
「やべぇッ! こうなったら易々とデカブツが見逃してくれるとは思えねえし。ならアレの出番だッ! デカブツ、もっとこっちを見やがれッ! 相棒ッ!」
凶津と桜はその場から立ち退こうとせず、魂人達の盾になる。
桜はすかさず霊符を空に放って真言を口にした。
「……式、召喚。【輝き黄金蝶】」
次の瞬間、霊符から黄金に輝く蝶の式神の群れが闇を美しく照らし始める。
そのあまりの美しさに、闇の種族の視線と心を奪うことに成功した。
「まぁ……なんて美しいのかしら……!」
「はッ! みろよ相棒ッ? デカブツの奴、すっかり輝き黄金蝶の虜だぜ?」
「焔の方も攻撃が止まった? 今がチャンスだねー!」
紅蓮の炎を纏った焔が一気に目の前の巨大な腕輪へ駆け寄り、人形と一緒に総攻撃を仕掛け始める。
攻撃力を強化しているので、重い一撃を加えるたびに腕輪に嵌められた宝石が徐々に砕けて破片が飛び散ってゆく。
勿論、神代コンビもこれに続く。
「この式神に戦闘能力はねえ、だが注意を引くのにはこれ以上ねえ式神だ。この闇の世界なら尚更なッ!」
暗闇の中では効果が3倍に跳ね上がるユーベルコードであり、またこの闇の種族が美麗な物に目がない事は、身に付けている巨大な装飾品の絢爛さから見て明らかである。
「……皆さん、早く私達の元へ付いてきてください」
桜が魂人達を促すと、総勢11名中6名……勇気を振り絞った者達が神代コンビの背を追う。
「今のうちに魂人達全員を連れて、目の前の装飾品を破魔の霊力を込めた薙刀で破壊だ、相棒ッ!」
「……勿論です。これで、決めます!」
焔がダメージを与え続けてひび割れた腕輪の宝石目掛け、桜色の霊力を込めた神代コンビの薙刀が大上段から振り下ろすと、それは強かに命中する。
途端、亀裂が宝石全体へ伝播してゆき、甲高い破砕音が闇の中に轟いた。
すると、神代コンビと焔、それに魂人達6名は周囲の形式がぐにゃりと歪んでゆくのを目の当たりにする。
「な、何が起きやがったッ?」
「……これは、何処かへ転送されてるのですか?」
「みんな、焔たちに掴まってー!」
空間の歪みに飲み込まれるように、彼らは第三層から忽然と姿を消していった。
「……あら? 黄金の蝶に見惚れていたら。ふふ……なかなかやるのね、あなた達?」
残された猟兵達へ、闇の種族は愛おしそうに目を輝かせるのだった。
神代コンビと焔が気が付くと、そこは大きな木造の砦の前だった。
「お、おい? 此処って、人類砦じゃねぇか?」
凶津の予測通り、砦の中から衛兵が飛び出してきた。
「ど、どうされました? 猟兵の方々とお見受けしますが……」
「……ここは、何処なのですか?」
桜の問い掛けに衛兵が答えた。
「人類砦ドンザキアです。あの、この半透明の方々は、一体……?」
「衛兵さん、詳しい話はあとでね? まずはみんなに温かいご飯と服を与えてあげて?」
焔がウルウルとした瞳で衛兵にお願いすれば、彼は断る事なんてできない。
「わ、分かりました! すぐに手配を致します!」
慌てて衛兵は砦の上層部へ報告へ向かった。
「まさか飛ばされた先が人類砦ドンザキアだったとはな! こいつは日頃の行いの良さが出たな、相棒ッ!」
「……そういう事にしておきましょうか。ここなら魂人達も安全ですね」
「焔も役に立ててよかったよー!」
猟兵と魂人達は、互いの無事を喜び合いながら人類砦ドンザキアの保護下に入る。
あとは、残された者たちの無事の帰還を祈るばかりであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
箒星・仄々
魂人さん方の安全が第一です
撃破を狙う皆さんが戦闘に専念できるよう
私がお守りします
掛け替えの無い記憶を
思い出を失わせてなるものですか
召喚したランさんに魂人さん方にも騎乗してもらいます
しっかりと捕まっていて下さいね
奏でる音色で勇気づけながら
飛行して位置取り
範囲内に収めた装飾品を
紡いだ魔力で魔力へ変換
風の魔力で糸の動きや音を感知し
炎で燃やしたり
水流で切り裂きます
愛の押し付けは見苦しいだけですよ
更に魔力で編んだ糸は無機物のはずですから
糸そのものを魔力へ解いて
炎水風として操っちゃいます
これが魔法の根源へと制御する
シンフォニアの力です
攻撃を火炎を放って迎撃したり(アチアチですよ
激流で押し戻したりします
疾風をランさんに纏って加速したり
ぼよんとした風のバリアとします
幾度かの攻防の後
三魔力で攻撃を受け止めた瞬間
UCを解除し元の装飾品へ戻し
狂愛さん自身の手で壊してもらい
転移
終幕
魂人さんへ声掛け
決して楽な道のりではないでしょう
けれどどうか未来を信じて歩みを続けて下さると
嬉しいです
私たちが力になりますから
アテナ・アイリス
わたしも戦おうと思ったけど、魂人たち救出しながら戦況を見ていようかしらね。失敗の可能性をなくすことが一番いいと思うからね。
アプロディテを倒しに行く人が多そうだし、戦力的にも大丈夫そうね。あとは、うまく連携できるかどうかで勝負が決まりそう。
まあ、この中に勇者様がいるかもしれないし、みんなの戦いぶりを見せてもらうわよ。
戦闘が始まった時点で、残っている魂人たちを守りながら集め、安全そうな場所に移動する。
大丈夫よ、わたしが絶対守るから安心してついてきてね。
先に装飾品で転移が可能であれば、優先して逃がすようにする。
戦局がほぼ決まった時点で、UC『リターン・ホーム』を使い、残っている魂人たちと、戦闘継続が不可能な猟兵がいたら、まとめて転移して戦場を離脱する。
アドリブ・連携大好きです。
シフィル・エルドラド(サポート)
『皆に元気を分け与えにやって来たよ!』
ハイカラさんの勇者×国民的スタアの女の子。
普段の口調:明るい(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)
嬉しい時の口調:ハイテンション(あたし、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
元気一杯で天真爛漫な性格をしていて、ポジティブな思考の持ち主。
困っている人や危機に陥っている人は放ってはおけず
積極的に助ける主義です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
見上げるほどの巨大な敵を前に、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は断言した。
「魂人さん方の安全が第一です」
これにアテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)も首肯した。
「わたしも戦おうと思ったけど、魂人たち救出しながら戦況を見ていようかしらね。失敗の可能性をなくすことが一番いいと思うからね」
戦況は未だ撤退戦の流れのままだ。
だが、今まで参加し続けている猟兵がグリモア猟兵を通じて増援を要請している。
それを知ったアテナは、これから討伐に向かう彼らの負担を軽減するためにも避難行動を優先することにしたのだ。
「アプロディテを倒しに行く人が多そうだし、戦力的にも大丈夫そうね。あとは、うまく連携できるかどうかで勝負が決まりそう。まあ、この中に勇者様がいるかもしれないし、みんなの戦いぶりを見せてもらうわよ」
「ええ、撃破を狙う皆さんが戦闘に専念できるよう、私もお守りします」
箒星が指笛を噴くと、足元の影から大きなメカジキが飛び出してきた。箒星が『ランさん』と呼ぶそれに魂人達3人を乗せ、指先の巨大な宝石へ空中を泳がせてゆく。
「ユーベルコードの原点回帰を使わせるような状況にはさせません。掛け替えの無い記憶を思い出を失わせてなるものですか」
箒星は竪琴を掻き鳴らしながら、ランさんの手綱を握って前へ前へと泳がせてみせる。
だが、闇の種族が大人しく帰還させるのを傍観するはずもなく、見えない魔力の糸を放って箒星とアテナを絡め捕る。
「逃がさないわ! あなた達はずっとここに居なさいな?」
「見えない魔力の糸……まさか魂人のみんなにも?」
アテナは慌ててアーパスブレードへ魔力を通わせ、周囲を闇雲に切り払い始めた。
「これでどうかしら? この剣は実体のないものを斬り裂く性質があるのよ。魔力の糸が何処で繋がっているか見えなくても、この剣を振り回せば断ち切れるはずだわ!」
魂人達の周辺は念入りに剣を振るうアテナ。その表情は、彼らを安堵させるべく常に笑顔だ。
「大丈夫よ、わたしが絶対守るから安心してついてきてね」
ブーツ・オヴ・エルヴンカインドの効果でランさんの空中遊泳速度に並走するアテナ。
彼女の奮戦ぶりは、魂人達も自然と胸に希望の光を灯し始めた。
「では、私も皆さんを勇気づける曲を披露しましょう!」
勇ましい行進曲のメロディは、周囲の無機物を火・水・風の三色の魔力へと変換させてゆく。
それはつまり、闇の種族が身に着ける装飾品が箒星の武器へと変わることを意味する。
「どんなに見えなくても、風がそよげば糸は震えますし、水を浴びれば水滴が滴り形が浮かび上がります。そして炎がその糸を焼き払うでしょう」
三色の魔力が闇の種族を翻弄してゆき、アテナがユーベルコードで帰還する準備時間を稼ぐ。
「みんな! 私のそばへ近寄って!」
メカジキから飛び降りた3名の魂人達がアテナの元へ駆け寄る。
だがそれを闇の種族が阻止せんと、上空からもう片方の手を伸ばす。
「させませんよ?」
箒星の風圧バリア!
だが巨躯相手に風のバリアはパワーが足りない!
バリアを突き破る指が、魂人達とアテナを掴もうと迫る!
絶体絶命!
だが、そこへ金の髪をなびかせながら、勇者が聖剣を突き付けて立ちはだかる!
「絶対に負けられない、勇者シフィルの力を見せてあげるよ!」
サポート猟兵として派遣されてきたシフィル・エルドラド(ハイカラさんの勇者・f32945)、間一髪で窮地を救った!
ユーベルコードによって勇気の力・万物の知恵・神秘の霊感を宿して自己強化したシフィルは、セイクリッド・シールドを前に突き出して常人離れした防御力を披露した。
「皆に元気を分け与えにやって来たよ! 私が時間を稼ぐから、その人達を安全な場所へ!」
「分かったわ! ありがとう、勇者シフィルさん! みんな、生前の故郷を思い浮かべて! そこへ帰るわよ!」
アテナは3人を抱きかかえると、帰還場所を第四層に想定して念じ始める。
「じゃあ、帰るわね。リターン・ホーム!」
転移呪文を唱えたアテナの身体が、魂人達と共に忽然と消えていった。
「無事に帰還してゆきましたね。シフィルさん、ありがとうございます」
「ううん、もっと早く来れたらよかったんだけどね? あとは私達がどうやって帰るかだけど……」
戦場全体に発生した奴隷達の霊をなぎ倒しながら、シフィルは帰還方法を箒星に尋ねる。
すると、箒星が三拍子のワルツ楽曲を演奏し始める。
「ズンタッター、ズンタッター。このリズムに合わせて、私はユーベルコードを解除します。私のそばから離れないでくださいね?」
「わかったよ! リズムに乗りながら戦うね!」
押し寄せる奴隷たちの霊を弾き返しながら、シフィルは踊るように剣を振るい続ける。
箒星はタイミングを見計らい、そしてユーベルコードを解除した。
「今です!」
迫り来る巨大な指の前に、三色の魔力が一気に集結する。
と、次の瞬間、猟兵たちの頭上に巨大な指輪が現れたではないか!
「変換していた魔力を指輪に戻しました! さあ、そのまま指に激突です!」
勢いよく突っ込んできた巨大な指が、指輪を弾いて虚空へ飛ばしてゆく。
奈落へ落ちてゆく指輪が砕ける音がしたかと思えば、箒星とシフィルは空間の穴の中へ一気に吸い込まれてゆくのであった。
「……やってくれたわね? まさかここまで知恵が回るなんて持ってもいなかったわよ……?」
先ほどまで余裕を持て余していた闇の種族だが、今は声色に苛立ちをにじませている。
圧倒的な体格差と力量を前にしてもなお、猟兵達が歯向かってくる。しかも一度ならず二度までも魂人達を逃がしてみせた。
「いいわ。そんなに死にたいなら、あなた達から殺してあげる!」
残る猟兵達を抹殺するべく、闇の種族は彼らがいる手を大きく振り乱す。
為す術もなく振り払われる猟兵達!
彼らの命運や、如何に……?
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
フィア・フルミネ
【突き指】で参加
闇の種族を殺す。それが弱者を、魂人たちを救う手立てとなるのなら、私は支援する。無謀? それは違うよ。
体全体が戦場と見立てることができる。一撃一撃が必殺と言えるね。つまりここは魂人の猟兵である私の出番。死を否定する《永劫回帰》。私は何をされても、どんな滅茶苦茶な非道を受けても死なない。というか死ねない。殺したければ繋がりを断つことね。私などと繋がっているうちは存分に時間を稼がせてもらう。
当然味方の、カシムやリリー先生の、魂人たちも見過ごせない。攻撃の不意の被弾や、代償も保つ限りは肩代わりする。
言ったよ、無謀ではないと。殺す、とも言った。殺し合おう。うん。キミも死ぬ気で来て。
サフィリア・ラズワルド
【突き指】
“白銀竜の同朋” で飛竜状態を強化して闇の種族の背後を飛び回ります。
UCで発生した霊を炎で対処し、敵味方関係なく炎を吐きます、被弾しても私の炎は味方には効かない、寧ろ味方の身を守るための盾になる。
味方の攻撃に気を取られて私への意識が逸れた時が狙い目、大したことないって油断してる?なら、これならどう!?
代償の人間の寿命を100倍にして髪の束に向かって炎を放ちます、高温の炎は高速で広がっていって頭まで届くはず、頭部を燃やされて平常心を保ってられるやつなんていない。
魂人も私達も誰もお前になんか屈したりしない!覚悟しろ!
カシム・ディーン
【突き指】
機神搭乗
対WIZ
【情報収集・視力・戦闘知識・医術】
周辺状況
部屋の構造
現在位置
敵の死角
敵の肉体構造把握し情報共有
【属性攻撃・迷彩・空中戦】
光水属性を機体に付与光学迷彩で存在を隠し水の障壁で匂いや音も隠蔽
更に周囲に立体映像展開
高速で離脱して可能なら敵のUC射程外へ退避
【浄化】
バルタンの武装に亡霊粉砕の為の浄化属性付与
UC発動
「残念だよ…ヴィナスちゃんと同じ別名だから猶更ね」
この糞ビッチが
今から殺してやるから喜べ
メルシー…存分にやる事を許してやる…!
「「ひゃぁっはーーー☆」」
10師団
主と本体のや魂人の護衛
残り
【念動力・弾幕・スナイパー】
飛び回り念動光弾一斉射撃
全員念動障壁展開
「ちっちゃい子を虐める子はお仕置きだぞ☆」
リリー先生の光輪を潜って加速して顔面に念動幼女砲弾大連射!
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
全身に群がり穴という穴や傷口から体内へと潜り込み肉の内側からも切り刻み蹂躙開始
身も心も破壊しつくす地獄を発生!
一人はUCで接続されるだろうから止め時に共に粉砕されるか此方のUC解除
バーン・マーディ
【突き指】
機神搭乗
「うわ!此奴ダモクレス!?」
「なんですかなそれは?私はマーズ、バーン殿に仕えし機神ですぞ?…しかし…アプロディーテ…私が愛した彼女の別名を持つとは」(少し悲し気
【戦闘知識・集団戦術】
周辺状況と己の立ち位置把握
有効な立ち回りと陣形を把握して仲間達にも伝達
「なぁロード…あれもやる気?」
ああ
どうやら皆も叛逆の闘志を漲らせておるからな
「そっか。それなら僕の技を伝えるよ。戦艦以上に大きな相手ならうってつけさ」
良かろう
対SPD
自己強化は行わず仲間の強化も辞退
【武器受け・運転】
敵の攻撃を軍神の剣で受け流して致命大破を避ける!
耐えよマーズ!貴様の力はこの程度ではあるまい!
「然りぃ!」
UC発動
【属性攻撃・鎧無視攻撃・鎧破壊・怪力・鎧砕き・生命力吸収・切断】
銀静よ!貴様の技…試させて貰う!
闇の種族よ!世界の支配者よ!
我らの!猟兵の!
叛逆の一撃をその身で味わうがいい!!!
超高速で飛び回り超巨大化させた軍神の剣に炎を宿し
上空より闇の種族の頭部に向けて…全ての力を込めた渾身の振り下ろしを放つ!
バルタン・ノーヴェ
【突き指】POW
アドリブ連携歓迎! オーバーロード!
これはビッグサイズな闇の種族!
なるほど、単騎で相手取るのは骨を折りそうデスネ!
オーライ! ジャイアントキリングに加勢いたしマース、カシム殿!
巨大なアプロディテの身体は、ミーガン殿が抑えてくれていマース!
その間にUC起動!
「骸式兵装展開、米の番!」
我輩の声を聴いてくだサイ、猟兵の戦友たち。そして、魂人たちのエブリワン!
今、この場に戦力が集っていマース! 今こそ、かの暴虐を打ち倒す好機であります!
その心に生きる希望があるのならば! 拳を握れ! さすれば抗うための力が宿るであろう!
そして、ワタシ自身も!
カシム殿の支援である浄化属性を付与されたことで亡霊に攻撃が通じマース!
浄化された火炎放射器やチェインハンマーで亡霊を焼き払い、吹き飛ばしマース!
闇の種族の何某殿。
そんなに愛が欲しいというのなら、たっぷり浴びせて差し上げよう!
サフィリア殿の炎の中を突っ切って、リリー先生の光輪で運動エネルギーを増幅!
浄化パイルバンカーの一撃を叩き込んであげマース!
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【突き指】【SPD】
※アドリブ大歓迎連携前提
※愛機搭乗済
※呼称:バルタン→バルたん
カシムさん達の緊急通報に応じたけど
やー…凄いトコにヘルプ寄越したモンだね
ま、ジャイアントキリングを精々楽しもうか♪
◆行動
【コデアンフィニ・オムニポタンス】展開
8基の光輪を連ねてカタパルト形成
運動エネルギー6561倍(3の8乗)
「Gは自分で対処してねっ」
当初は自分自身への強化に使わず
幼女メルシー師団を人間砲弾にしたりバルたん等突撃敢行者を射出
【カイルス】の予知を《瞬間思考力》で読み射出軌道適宜修正
その後は【D・バレット】を光輪で加速狙撃
終盤の反撃を阻害しつつ削っていく
「…フィアさん、大丈夫だよ」
戦後に仲間の心身治療
大神・狼煙
【突き指】
ナイフをばら撒き、痛点を探って、その間を辿り、足元(敵の体)に火薬を仕込んだ針を突き立て、踏み、皮膚に埋め込んでいく
敵が身を震わせるなどして戦場から放り出されたら、飛行可能、もしくは巨大な味方へ飛び移る
備えるUCはWIZ
誰かしかに見えない糸を繋ぎ、同時に殺されなければ死なないと思い込むはず
他の猟兵の攻撃に合わせ、手の中に隠したナイフを握り、血を流す
コレは触れた者のUCを削除する
即ち、呼び出された亡霊も、誰かと繋がれた比翼の糸も、武器に込めた念も、同時に消える
全て失った敵が他の猟兵の一撃を喰らえば足元へ火を放ち、爆導索の要領で埋め込んだ火薬に点火
腕の皮膚を削ぎ落とし、次の猟兵へ繋ぐ
ミーガン・クイン
『突き指』
愛をくれるって言うから命からがら迷宮を抜けて吸血鬼も倒したのに…。
悪い子だからあげないって、そんなのってないんじゃない?
ー行動ー
UC拡大魔法で闇の種族と同じ大きさになるわぁ。
巨大化中に全力で飛び掛かって、動けなくなる前に絡みつくように抱き着くの。
動けずとも、【誘惑】【存在感】【おびき寄せ】【言いくるめ】とサキュバスフェロモンで私に振り向かせてみせるわぁ。
私ならあなたの愛を受け止めてあげられる。
もちろんお仕置きでもいいわよぉ♪
超巨大なあなたの、超巨大な愛を頂戴♡
さぁ、私を見て♡ 私を愛して♡
【視力】皆の死闘奮闘を見守らせてもらうわね。
アプロディテを私の腕の中で眠らせてあげるのを期待するわぁ。
闇の種族に身震いされ、その身体の上に乗っていた猟兵達と魂人達は虚空へ投げ出された。
このままでは数秒もせずに眼下の黒光りする大地へ墜落してしまう!
「飛べる奴は魂人達を受け止めろ! あと俺を助けろ!」
大神・狼煙(餓狼・f06108)が叫ぶ。
そこへユーベルコードで竜化を継続中のサフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)が魂人達を背に受け止め、大神を黄金の後輪を背負う白銀のキャバリアが片手でキャッチした。
『狼煙! 生きてますか!?』
外部スピーカー越しから聞こえるカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の声。
大神はそれで全てを理解した。
「痛え……もっと優しく受け止めろよ、メルシー」
『メンゴメンゴ☆ これでも念動障壁で優しく受け止めたんだぞ☆』
悪態をつく大神にメルシーの本来の姿である界導神機『メルクリウス』がホバリングしながら胸を張る。
「その姿になっても、メルシーはメルシーだな……カシムは大変だな?」
大神は何やら懐を漁りつつ、往年のぶりっ子アイドルのような言動をとる機神をジト目で睨んでみせる。
これにカシムが抑揚のない声で答えた。
『モウ、慣レマシタ……ハハ、ハハハ……』
一瞬、走馬灯のようにメルシーと思い出(ちんそうどう)がカシムの頭を駆け巡ったのは悪い予兆じゃないと信じたい。
そんないつものアホアホ漫談をカシムとメルシーがやっていると、サフィリアが驚きの声を上げた。
「え? あの女の子がキャバリアだったんですか? 」
自身も白銀竜に変身しているわけだが、まさかカシムの連れ添っていた女性(の姿をしたやべー奴)の正体がキャバリアで神様というやべー奴だったことに困惑せざるを得ない。
「私が言うのもおかしな話ですが、猟兵は本当に多種多様ですね」
率直な感想を述べつつ、背中に乗せた魂人の姉妹を気遣うサフィリア。
「しっかり掴まっててくださいね。あなた達は私が守ります!」
白銀竜の背にしがみつく魂人の姉妹は、高所による恐怖のせいか身を屈めて目をつぶっている。
『……マーズよ、魂人達はサフィリアに任せるとしよう。我々は彼奴を殺しに征く』
『御意。バーン殿の仰せのままに』
サフィリアの姿を、少し離れた場所から眺める赤と黒の装甲のキャバリアがホバリングしている。
破城神機『マーズ』。バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)と契約せし軍神の名を冠する神機である。
『では、マーズよ。これより闇の種族『狂愛の破壊者・アプロディテ』への叛逆を開始――』
『うわ! 此奴、まさかダモクレス!?』
突如、バーンの言葉を遮る青年の声。バーンの持つ霊剣に封じられていた英霊こと『皇・銀静』だ。
『なんでエインヘリアルがダモクレスを操縦しているんだ? 教えはどうした、教えは!?』
『銀静……貴様、何を言っている?』
『そうですぞ、銀静殿? 大体、ダモクレスとはなんなのですかな? 私は破城神機マーズ、バーン殿に仕えし戦と炎を司りし機神ですぞ?』
バーンとマーズの回答に、銀静は少し唸ってみせた。
『……しかし……アプロディーテ……。よもや、これから斬る相手が、私が愛した彼女の別名を持つとは……』
諸行無常の心持ちで嘆くマーズ。
そんな中で銀静が若干引き気味に尋ねた。
『なぁ、ロード……もしかしなくても、あのでかい奴も殺る気?』
『ああ、無論だ』
即答だった。
『それにこれは我だけの判断に非ず。カシムがグリモア猟兵を通じて、増援を要請した』
『そろそろ来る頃ですよ、って、ナイスタイミングです!』
外部スピーカーから歓喜の声を漏らすカシム。
その視線の先には、ぐんぐんと巨大化してゆくミーガン・クイン(規格外の魔女・f36759)の姿があった。その身体の周りに、グリモアの転移の輝きが多数瞬く。
輝きの中から、3名の猟兵達が巨大化したミーガンの身体に飛び移ってゆく。
「Oh! これはビッグサイズな闇の種族! なるほど、単騎で相手取るのは骨を折りそうデスネ!」
カシムの救援に応じて馳せ参じた一人、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)がミーガンの左肩の上で闇の種族を眺めていた。
「オーライ! 呼ばれたからには義によって助太刀デース! ワタシもジャイアントキリングに加勢いたしマース、カシム殿!」
「右に同じく。私も闇の種族を殺す。それが弱者を、魂人たちを救う手立てとなるのなら、私は支援する」
魂人の猟兵ことフィア・フルミネ(痺れ姫・f37659)も、カシムの求めに応じて参上したひとりだ。目的はもちろん、目の前の巨躯を誇る闇の種族の殺害だ。
そして、バルタンの背後に遅れて登場したのは、群青の武骨な装甲を纏った量産型重量級キャバリアこと『MPC-RW9r-LEX ナインス・ライン』であった。
『カシムさん達の緊急通報に応じたけど。やーこれはまた……凄いトコにヘルプ寄越したモンだね』
機体の外部スピーカーから愛らしい声の苦笑が漏れる。リーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)はナインスラインのオーナーにしてパイロットであり、この機体を自身の肉体の一部として扱える卓越した操縦技術の持ち主である。
リーゼロッテはバルタンを見かけるやいなや、親し気な態度で声を掛けた。
『おや、やっほー、バルたん♪ ……と、初顔の人もいるか。失敬。アタシは闇医者兼キャバリア乗りのリーゼロッテ。通称リリー先生だよ。さて、目の前のタッパと愛がでかい女をどうにかすればいいんだよね? ま、ジャイアントキリングを精々楽しもうか♪』
総勢8名の猟兵が、撤退ではなく、討伐を目的として闇の種族と対峙する。
闇の種族はこの事態を全く想定だにしていなかった。自身はこの場で絶対的な存在であり、最後は手のひらの命を搾取する事が許されていると信じて疑わなかったからだ。
だが今はどうだ?
11人いた魂人達のうち、猟兵達の助けを受けて9人が脱出していき、残る2名もサフィリアが飛び回り続けているため捕獲が難しい。
闇の種族は苛立ちを露わにする。
「どうして? どうして私の愛を受け入れないばかりか、私を殺そうだなんて馬鹿な真似をするの? そんなに愛を拒むの? そんな玩具はもういらないわ!」
駄々っ子のように泣き喚く闇の種族。
だが、そんな彼女に寄り掛かったのが、巨大化して魔力枯渇による行動不能に陥ったミーガンであった。
ユーベルコード『拡大魔法・巨大娘(マキシマムスペル・ジャイアンテス)』は、使用すると魔力枯渇を引き起こし、ミーガンは一歩どころか指一本すらも動けなくなってしまう。そうなる前に闇の種族の身体へ飛びつき、動けなくなることを逆手に取ったのだ。
「愛をくれるって言うから命からがら迷宮を抜けて吸血鬼も倒したのに……。悪い子だから愛をあげないって、そんなのってないんじゃない?」
「は、放しなさいよ! というか、なんであなたは大きくなれるの!?」
「ユーベルコードに決まってるじゃなぁい。でも、今あなた、何故大きくなれるって……どういう意味かしらぁ?」
「……それよりも、私からどきなさいよ! 身動きが取れないじゃない!」
「そんな、頑張ってあなたと同じサイズにまで頑張ったというのに、その言い草は酷いじゃなぁい?」
ミーガンが抱えるユーベルコードの代償による行動不能の状態異常が、闇の種族の拘束に一役買っていようとは。むしろこれは作戦として織り込み済みなのであるが、闇の種族の口ぶりあらすると、ミーガンが大きくなれるのはイレギュラー扱いのようだ。
「奴め……あの口ぶりからして何か隠してやがるな?」
大神が舌打ちをしながら2人の会話の流れから違和感を拾い上げていた。
一方、ミーガンは動かなくなった肢体を闇の種族に絡みつかせ、自ら肉の退りとしての役割を果たさんと試みる。
「サキュバスフェロモンで私に振り向かせてみせるわぁ。私ならあなたの愛を受け止めてあげられる。もちろんお仕置きでもいいわよぉ♪ 超巨大なあなたの、超巨大な愛を頂戴♡ さぁ、私を見て♡ 私を愛して♡」
豊満な胸元を闇の種族に押し付け、その双丘を伝ってバルタンとリーゼロッテ、そしてフィアがミーガンの身体へ攻め込んでゆく。
がっちりと身体を抱き締められた闇の種族だが、それでも小さな猟兵達に殺される未来などありえないと言わんばかりに豪語した。
「無駄だわ。いえ、無謀よ。虫けらのようなサイズのあなた達が、大きな私を殺すですって? 出来っこないわ!」
「無謀? それは違うよ」
すかさずフィアが反論する。その証左として、仄白きブロンテースと呼称する手折れた枕槍を闇の種族の鎖骨へ突き刺した。途端、穂先から激烈な放電が発生!
「きゃああっ!?」
唐突な痛みに驚き、身体を痙攣させる闇の種族。
バルタンとリーゼロッテが振り落とされないようにミーガンの身体にしがみつき、どうにか落下を免れた。
フィアが闇の種族の左耳元まで走る。
「ほら、痛いよね。体全体が戦場と見立てることができる。一撃一撃が必殺と言えるね。つまりここは魂人の猟兵である私の出番。死を否定する《永劫回帰》。私は何をされても、どんな滅茶苦茶な非道を受けても死なない。というか死ねない」
フィアが闇の種族の片手で払い潰されて、上半身が吹き飛んだとしてもユーベルコード『永劫回帰』を使えば、死の10秒前までは無効化できてしまう。だがそれは、フィアの中の美しい思い出が惨劇のトラウマにすり変わってしまう。
「見えない魔力の糸でキミと繋がっている限り、私はキミを殺せない。それは同時に、キミも私と繋がっている限り殺す事が出来ないということ。殺したければ繋がりを断つことね。私などと繋がっているうちは存分に時間を稼がせてもらうよ」
「魂人の分際で生意気なのよ……!」
フィアが闇の種族の指先で首から頸椎を引き抜かれて殺害されても、すぐに『永劫回帰』で死を無効化されてしまう。
闇の種族がフィアに気を取られている隙に、他の猟兵達が一斉に動き出す。
「私の竜よ、好きなだけ私の人間を喰らうがいい! 白銀竜の同朋(ドラゴン・カムラッド)!」
サフィリアは人間の時の自らの寿命を消費することで、敵だけを焼き殺す蒼炎のブレスを吐く事が出来るのだ。
それを飛び回りながらサフィリアは闇の種族の顔へ何度も吐き散らかす。
味方に引火してもやけどを負うことはなく、むしろ味方に纏わりついた蒼炎で闇の種族が接触しづらくなる。
「どう? 小さい存在が脅威に感じた? そのまま顔を焼いてあげるよ!」
「うるさいわね、このトカゲ風情が……!」
闇の種族は武装した奴隷質の霊の大群を、自身の身体の上に召喚してみせた。
「猟兵達を殺しなさいな」
その命令で、サフィリアとバルタンを狙い出す奴隷達。闇の種族自身も手を払い、サフィリア近くへ寄ることを拒む。
「くっ……なんて数なんだ。これじゃバルタンさんが!」
空を飛べないバルタンは、闇の種族の皮膚の上で大軍を相手取らねばならなかった。
『援護するよ、バルたん!』
リーゼロッテがキャバリア用可変兵器リゲル・タクティクスから機関砲を乱射する。しかし霊体には効果が薄いようだ。
そこへカシムとメルクリウスが上空から接近してくる。
『リリー先生! バルタン! 亡霊粉砕の為の浄化付与効果入り魔法弾です!』
『この光弾を浴びれば、誰でもエクソシストになれちゃうぞ☆』
万能魔術砲撃兵装『カドゥケウス』から放たれた白金の輝きを放つ光弾2発が、それぞれバルタンとリーゼロッテが操るナインスラインに命中した。
「おお! なんだか聖なるチカラに満ち溢れマスネー!」
『カシムさん、メルシーさん、ありがと♪ んじゃ、無双タイムと洒落込もうか、バルたん』」
「了解であります!」
1人と1機が背中合わせになると、たちどころに押し寄せてくる霊体の群れを容赦なく薙ぎ倒してゆく!
「ヒャッハー! 内蔵火炎放射とチェインハンマーが唸るであります! 聖なるグレネードも喰らうでありますよ!」
浄化の属性付与は非情に強力で、半透明な亡霊たちがあっという間に飴細工のように溶けて砕かれていく。これなら、どんなに亡霊たちが強化されても一瞬で成仏させられるのだ。それはリーゼロッテも同様で、時折、直に殴ってくる闇の種族の巨大な手ごと亡霊たちを蹴散らしてみせた。
『よーし、デコルテ付近は掃討完了だねっ! みんなもガンガン仕掛けちゃて! リリー先生もサポートしちゃうよっ!』
ミーガンの指にナインスラインの脚を駆けつつ、リーゼロッテは意思を持つ預言書型メガリスに話しかけた。
『【8(ユイ)】、出番だよ』
《承知。妾の識る【根源】と至宝の【円環】は、如何な【終極】をも汝に騙り得る》
『ならコレで♪」
発動シークエンスが終わった途端、突如、虚空に出現する126cm半径の後輪が8つ出現する。
『この後輪に潜れば、最大で運動エネルギー6561倍(3の8乗)にも増幅するよっ! ただし負荷(G)は自分で耐えてねっ!』
8基の光輪が1つに重なってゆく。これで一度潜ることで、一気に最大まで有働エネルギーが増幅される。
「なら、まずは俺から試させてもらうか……」
大神がスーツの懐から何かを掴んで光輪の中へ放り込んだ。
それは大量のナイフであった。亜光速で射出されたナイフは、それだけで闇の種族の肉体を貫く礫となる。
「痛いっ!?」
流石の巨体も、亜光速の物体が激突すれば大ダメージを被る。
そしてその反応は、大神に次なる攻撃の指標を現すのだ。
続けざまに大量の針を光輪の中へ放り込む大神。
「カシム、俺を奴の身体におろせ」
『分かりました、お気を付けて!』
『それじゃ、念動障壁で包み込んでー、いってらっしゃーい!』
メルクリウスがバリアで大神を包み込むと、いきなり光輪の中へ投げ込んだ!
「おいてめぇ! あとで覚えてろ!?」
味方に半ギレになりつつも、人間砲弾と化した大神が巨大な鋏の切っ先を闇の種族の首筋へ深々と突き刺してみせた。
途端、勢いよく噴き出す鮮血!
普通の人間ならば即死だが、闇の種族は激痛に耐えながらも平然としていた。
「言ったはずよぉ? 見えない魔力の糸であなた達の誰かと繋がってる以上、私は殺せないわ」
これにカシムが呆れた王に言葉を漏らす。
『そんなことは百も承知でてめーに挑んでるんですよ、こちとら』
『残念だよ……ヴィナスちゃんと同じ別名だから猶更ね』
マーズも言及していたが、神機にも美と愛の女神の名を冠した存在がいる。
メルクリウスはそれを知るがゆえに、目の前の闇の種族の外道ぶりにうんざりしているのだ。
一方カシムは、持てる全ての魔力……つまり今まで溜め込んだ帝竜眼からありったけの魔力を吸収し、これから発動するユーベルコードに備えていた。
『この糞ビッチが。今から殺してやるから喜べ。おいメルシー? 今だけ存分にやる事を許してやる……!』
これにメルクリウスがカシムをコクピットから射出させ、銀髪少女の姿を象る。そして、カシムの魔力を一気に吸い上げると、その身体が一気に膨張する!
\\\ ヒャッハー!!!!! ///
次の瞬間、膨張したメルシーの身体が一気に爆散したかと思えば、おびただしい数に分裂してどんどん光輪の中を潜り抜けてゆく!
『念動幼女砲弾大連射だぞ☆』
『ちっちゃい子を虐める子はお仕置きだぞ☆』
『穴という穴を蹂躙してやるぞ☆』
分裂したその規模、なんと10師団(約15万人前後)!
幼女化して小さく分裂したメルシー達が光輪に潜って弾丸となり、その身を闇の種族の皮下組織へ潜り込んでいった。
一方、カシムはユーベルコードの弊害で自分が戦えないため、飛行戦艦『竜眼号』へとワープ。戦艦の自動操縦による斉射で闇の種族へダメージを与え続けた。
その頃、バーンとマーズは苦戦を強いられていた。
『な、何たる膂力か……!』
『右腕部、破損! バーン殿、片腕の身で巨人を相手取るのは厳しいですぞ!』
怨念が籠った素手(とメリケンサックめいた指輪の数々)で攻撃してくる闇の種族を、バーンもまた貫かれまいと受け流しつつ空中戦を行っていた。
『耐えよマーズ! 貴様の力はこの程度ではあるまい!』
「然りぃ!」
だが形勢はなかなか苦しく、このままではジリ貧が確実である。
『おいおい、どうしたんだいロード? 威勢が良かったのは口だけかな?』
『言ってくれるな、銀静……? 貴様も何か出来るはずであろう?』
バーンの怒気に充てられた銀静が、引き攣った笑い声を漏らした。
『あ、あははは……バレたか。それなら僕の技を伝えるよ。戦艦以上に大きな相手ならうってつけさ』
『フッ……善い。ならばさっそくそれを使おう』
バーンが軍神の剣を掲げると、そちらへ銀静が宿り移る。
『銀静よ!貴様の技…試させて貰う!』
マーズの機体に紅蓮の炎めいた闘気が立ち昇る!
「闇の種族よ! この世界の支配者を語る愚者よ! 刮目せよ! 我らの! 猟兵の! 叛逆の一撃を! その身で味わうがいい!!!』
マーズが一気にスラスターで加速してゆくと、一気にマッハ12弱まで加速!
更に、リーゼロッテの用意した光輪を潜り、なんとマッハ78,732まで超加速!
そこから振り被った軍神の剣の刃が急激に巨大化してゆけば、小さな体が振り抜くには似つかわしいほどの大きさへと膨張したそれが闇の種族のこめかみを深々と掻っ捌いてみせた。
「ぎゃあああぁぁっ!?」
此処へ来て、ようやく生死にかかわるほどの大ダメージを被った闇の種族。
「なに、今の!? やだ、血が! 血が止まらない! それよりも熱い! 髪が燃えてる!!」
斬られたこめかみを必死に抑えて止血を試みるのだが、バーンの熱き闘気が闇の種族の金の髪に引火して焦げた匂いを周囲に撒き散らす。
これにより、闇の種族は猟兵にも魂人にも目もくれずに、広大なテーブルの上の飲み物を頭に引っかけて消化を試みる。猟兵達は好機だと踏んで、更に追撃を喰らわせてゆく。
「魂人も私達も誰もお前になんか屈したりしない! 覚悟しろ!」
サフィリアが一気に自身の人間の寿命を燃やし尽くし、蒼炎の大火球を反対側の側頭部へぶつけてみせた。2つの炎は酸素を求め、より激しく燃焼を始める!
「嫌アアァァァぁ!?」
パニックになる闇の種族!
「嘘よ! こんなの嘘よ⁉ なんで小さなゴミ共に私が殺されなきゃならないのよ!? 魔法の糸がなかったら3回死んでたわ!」
泣き叫ぶ闇の種族。
そこへ大神が皮膚の上で駆け回る。
「そうか。死ねないが痛覚は感じる訳だ。だったら、これはどうだ?」
大神は手の中に隠したナイフを握り、血を流す。滴った血液が闇の種族の皮膚を赤く染める。
「楽にしてやるよ……」
ユーベルコード『砕生葬(サイセイソウ)』……対象の傷を癒して強化してしまうが、一方で対象のユーベルコードや異能を削除し、肉体を再構築する恐ろしい効果を持つ。
「コレは触れた者のユーベルコードを削除する。即ち、呼び出された亡霊も、誰かと繋がれた比翼の糸も、武器に込めた念も、同時に消える」
大神の言葉に、闇の種族は試しにユーベルコードを発動させようとするが……。
「そんな、出来ない……!」
「そういうこった。そして俺はさっきからずっと、てめぇの身体に猛毒と火薬入りの針を埋め込んでいった。あとは体内に潜り込んだメルシーの分身と呼応すれば……どうなるだろうな?」
ニタリ、と勝ち誇る大神。
そして同時に、バルタンが残された魂人の姉妹へ演説を始める。
「骸式兵装展開、米の番! オーバーロード!」
大統領モードの姿になったバルタンが、戦場の仲間を鼓舞する。
「我輩の声を聴いてくだサイ、猟兵の戦友たち。そして、魂人たちのエブリワン! 今、この場に戦力が集っていマース! 今こそ、かの暴虐を打ち倒す好機であります! その心に生きる希望があるのならば! 拳を握れ! さすれば抗うための力が宿るであろう!」
これを聞いた猟兵達の身体に活力がみなぎる。それは魂人の姉妹も同様で、仲間を虐げられた怒りを込めて、持っていたナイフで足元の皮膚をめった刺しにし始めた。
「そうだ! 敵は目の前にいて、もはやチェックメイトをコール済みだ! そして闇の種族の何某殿。そんなに愛が欲しいというのなら、たっぷり浴びせて差し上げよう! サフィリア殿! 蒼炎をあの光輪の中へ!」
「分かったよ!」
駆け出すバルタン! サフィリアの蒼炎がその背を押し、火達磨になりながらも光輪の中へ突貫!
「ミーガン殿! この作戦、貴殿の拘束がなければ成し得なかったであります! その行為、吾輩は最大限の敬意を表するであります!」
「お役に立てたのなら嬉しいわぁ❤ さあ、思いっきりイカせちゃって❤」
「く、来るなぁぁぁぁぁぁ!?」
もがく闇の種族を拘束するミーガンが愉悦の笑みを浮かべる。
やけくそ気味に放たれた手がバルカンを抑えようとするが、横から飛んできたフィアのタックルに方向を逸らされた。
「私がいるのを忘れないで。言ったよ、無謀ではないと。殺す、とも言った。殺し合おう。うん。キミも死ぬ気で来て」
「このゲロ糞魂人がああああああああああああああっ!!!!!」
もはや断末魔に近い絶叫!
粉々になるフィア!
「……フィアさん、大丈夫だよ」
リーゼロッテの高速治療がフィアを救う!
そんな闇の種族の心臓目掛けて、亜光速のプラズマ火玉と化したバルタンが突っ込む!
「模倣様式・合衆国大統領(イミテーションスタイル・プレジデント)! これが! 猟兵達の! 大統領魂デース!」
蒼く燃え盛る浄化のパイルバンカーが、闇の種族の心臓を撃ち抜く!
その杭から燃え盛る炎が大神の仕込んだ火薬へ引火すると皮膚の上で次々と誘爆!
「メルシー達もイックよー☆」
「血管を切り刻んじゃうぞ☆」
「脳味噌の欠陥も詰まらせちゃえ☆」
そして15万のメルシー達が闇の種族の肉体をズタズタに切り刻めば、闇の種族は一気に瀕死に陥る。
「リリー先生!」
「トドメを刺すよ、カシムさんっ!」
戦艦の砲口とナインスラインの狙撃銃が光輪の向こうの闇の種族を捕えた。
狙うは、敵の眉間!
「「くたばれええぇぇえぇぇえっ!!!」」
放たれた2つの砲撃が流星となり、闇の種族の頭蓋骨を容易く撃ち抜く。
そしてあたりは真っ赤な豪雨が降り注いだかと思えば、猟兵達も魂人の姉妹も、急激に身体が大きく膨張してゆくではないか!
ある程度大きくなると、闇の種族と同じくらいのサイズになった。
そして彼らは悟った。
――闇の種族が巨大だったわけではなく、自分たちが小人のように縮小化していたのだ、と!
恐らく、身に付けていた装飾品の効果だと推測される。
だからミーガンが巨大化したとき、闇の種族が戸惑ったのだ。
彼らは装飾品のひとつを破壊すると、第四層の人類砦ドンザキアへ転送してゆく。
そこへ魂人の姉妹と他の魂人達を引き合わせて保護を依頼した。
だが、ますます謎が深まる第三層の闇の種族。
今後はどのような魔道具が猟兵達を苦しめるのだろうか。
戦いは、まだ始まったばかりだ。
苦戦
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
最終結果:成功
完成日:2022年07月18日
宿敵
『狂愛の破壊者・アプロディテ』
を撃破!
|