●
旧校舎の中庭が、薊の花で埋め尽くされる頃。
黄昏時に、踊り場の鏡に触れてごらん。
鏡の中に住む神様が、きっと――。
●
「願い事を叶えてくれるってマジかな」
「え? 鏡の世界に連れてくんじゃねえの」
「未来が映るって言ってなかった?」
伝え聞いた話の細部が人によって異なる事などままあるもので、亜種まで数えたら『学校の七不思議』が七つに納まらないなど珍しくも無い。
大人の事情で解体が先送りにされて早数年、すっかり肝試しスポットと化した旧校舎に入り込んだ少年達は、自分の知っている七不思議こそが正しいとばかりに喚き立てた。
「は? 俺は殺されるって聞いたけど」
「それ神様っつーより悪霊とか邪神とかやべえヤツだろ」
愉快な話をしているわけでもないのに大袈裟な程にゲラゲラと笑い声を上げた彼らは、鏡の前に着くなり誰からともなく押し黙った。
木造二階建ての校舎は至る所が朽ちて荒れ放題だというのに。用務員すら手を入れなくなってから久しいというのに。北階段の踊り場の壁に掛けられた鏡は、埃一つ被らず綺麗なままだった。違和感が拭えない。
「誰から触る?」
「何お前、ビビってんの?」
「は?! じゃあお前からやれよ」
「まあまあ、ここはさぁ~……ほら、テメーに一番乗り譲ってやるよ!」
「ははっ、ひっでえ! だからこいつ連れてきたのかよ!」
「やめ、やめてよ……っ」
気弱そうな少年の手首を掴み、無理矢理鏡に触れさせる。叩きつけられた少年の掌が、びたんと大きな音を立てた。
「ほら、何も起こら――……え?」
鏡の中に、少年達の知らない黒髪の誰かが映っていた。
●
薊の花が満開になる時期の夕方、旧校舎の鏡に殺したい相手と触れると、鏡の世界から現れた神様が殺してくれる。まじないのような、都市伝説のような、そんな邪神召喚儀式が存在するらしい。
「いじめっ子がいじめられっ子の手を掴んで無理矢理鏡に触らせたら、条件を満たしちゃったみたいなんだよ」
殺したい程恨むようないじめが存在するのも問題だが、そちらは学校が対処すべき案件だ。今回猟兵に求めているのは偶発的邪神召喚事件の解決である。急ぎ現場に向かって欲しいとカー・ウォーターメロンは早口で概要を伝えた。
「今から転送すると黒髪の少年オブリビオン『日生・一陽』と肝試しに来た男の子たちが遭遇した直後のタイミングだから、上手く逃がしてあげてね」
殺す云々と物騒な召喚儀式にも関わらず、『日生・一陽』自体は少年達を殺すつもりは無いらしい。校舎の外にさえ出してしまえば、後は各々逃げ帰るだろう。
「問題は黒髪の少年の後に現れる骸魂『虚鏡ノ怨嗟』。『誰かを傷つける者を殺す』事に固執するオブリビオンだよ。少年達を避難させないと、間違いなくいじめっ子を殺そうとするね」
『虚鏡ノ怨嗟』の前に現れる眷属『正直者の鏡』も厄介で、少年達や猟兵達の姿を模す可能性があるようだ。そうなっては混乱が避けられない。なるべく早い段階で避難を完了させるのがポイントだ。
「連戦になるから大変だと思うけど、みんなならなんとかしてくれるって信じてるんだよ! よろしくね!」
●
「……君を止めるって、決めたんだ。今度こそ……」
口を衝いて出た決意に、日生・一陽は訝しげに眉を顰めた。何故自分は上位存在である『虚鏡ノ怨嗟』を止めようなどと考えているのだろうか。
骸の海で変質し、生前の記憶は無いに等しくて。ただ強く残るのは――罪悪感。
悍ましい気配に満ちた屋内とは裏腹に、外では鮮やかな夕日が中庭を照らしていた。赤々と燃えるような光に照らされて、薊の花が初夏の風に揺れていた。
――花言葉は、報復。
宮下さつき
二人でワンセットな宿敵さんがいらしたので頑張って揃えました。宮下です。
●世界
UDCアース、偶発的邪神召喚です。
ボス→集団戦→ボスな連戦依頼です。
●二章
集団敵『正直者の鏡』はグリモア猟兵にも変身出来るらしいですが、プレイングに無い限りは「鏡のまま」または「猟兵自身」の予定です。
それではよろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『日生・一陽』
|
POW : 罪禍一閃
対象のユーベルコードに対し【手で薙ぎ払うことで不可視の一閃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD : 浄怨の炎
レベル×5本の【宿敵主に特攻のある炎・光】属性の【太陽のように熱く破魔効果のある炎の柱】を放つ。
WIZ : 太陽は夜も輝くから
自身に【覚悟と太陽のような明るいオーラ】をまとい、高速移動と【POWとSPDと同じユーベルコード】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
イラスト:志摩 ほむら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「天星・零」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
マホルニア・ストブルフ(サポート)
口調:男性的
一人称:私
三人称:お前、呼び捨て
【だ、だな、だろう、なのか?】~か、〜するよ、構わん、等
協力者には丁寧に接する。
行動方針:問題の解決
一般人がいれば保護が優先。
多少の負傷は気にせず行動。
魔術儀式で定着した元AIの強化人間。
元々利害以外の動きを目にすると調子が狂う、機械的な性格。
最近は近しい存在も増え、友好的な行動をとるように。
戦闘時はシニカル。
◇戦闘・技能
知覚端子を張り巡らせ、地形や敵の動向を情報収集しながらサポートしようか。
武器はレヴィアスクかアサルトライフル、白兵戦。移動や捕縛でワイヤーを使うこともあるな。
UCはハッキングとUDC由来の呪詛を組み合わせて実現させる。よろしく頼む。
櫟・陽里(サポート)
『操縦が上手いは最高の誉め言葉!』
乗り物が活躍できる場と
レースとサーキットが得意分野
どんな乗り物も乗りこなしてみせる
走りこそが俺の武器!
乗り物と操縦者の総合力で戦う
サイバーアイで路面、相手の動きなど幅広い情報収集
集中力・傭兵の経験・判断速度で攻め所を見極める
シールド展開バイクで体当たり吹き飛ばし
走り回って撹乱・誘導
仲間を運ぶ足になるのも好き
バイクは機動力のある盾にもなる
壊れたらほら、直すついでに新パーツ試せるし!
明るく話しやすい先輩タイプ
補助仕事もドンと来い
乗り物が無い戦場では手数が少ない
普通の拳銃射撃や誘導、挑発など小技を利かせるしかなくテヘペロしてる
過去は過去に還すべき、その辺割と無慈悲
真っ赤に燃える夕日と、揺れる火の粉にも似た薊の海。それらに目もくれず、片田舎の学校の敷地内に転送された二人は邪神召喚の儀が成立してしまった問題の建物を睨めつける。
「一般人とオブリビオンが接触するタイミングだ。一秒でも時間が惜しい」
「で、俺の出番ってわけだ!」
櫟・陽里は背後に座るマホルニア・ストブルフに任せろと笑い、愛車を走らせた。みるみる近付いてくる旧校舎を前に、スピードを落とす気配は無い。
「現場は放置されて久しい。荒れている可能性が高いが――」
「任せろって」
それは頼もしい、と呟いたマホルニアの声は爆音に掻き消された。ただでさえ半壊していた職員通用口を破るように突入し、一車線のトンネルよりもずっと狭い廊下を突き進む。
「今だ、行け!」
エンジンの音が空間を満たしてから僅か数秒、車体を大きく傾けスライドさせた陽里が叫ぶが早いか、マホルニアが跳躍した。一階から踊り場まで一飛びで移動した彼女は、状況がわからず立ちすくむ少年達を突き飛ばすようにして鏡から距離を取らせた。直後、マホルニアの後背で炎の柱が立ち上がる。
『……新手が来たの?』
「これが鏡。あちらの世界とこちらを繋ぐ窓か」
『早く帰ってよ、じゃないと怨嗟が来ちゃうんだ』
背を焦がされた事を厭うどころか、顔色一つ変えず一瞥をくれた闖入者に、鏡の中の少年は顔を顰めた。鏡の縁に手を掛け、オブリビオン『日生・一陽』がこちらへと這い出してくる。
『……仕方ないか。今のうちに僕が追い返さなきゃ――、ッ?!』
眩い光が、日生・一陽を照らす。敵の気を引くように相棒のヘッドライトを一時的にハイビームに切り替えた陽里が、階下で声を張り上げた。
「子供達に近付くな! 俺の走りを見ろ!」
『ライ』のエンジンが咆哮を上げたかと思えば、次の瞬間には敵へと肉薄していた。トライアルバイクではないというのに、彼の卓越した操縦技術の前には階段すら障害にはならないらしい。
陽里は前面にシールドを展開すると、そのまま日生・一陽を撥ね飛ばす。ど、と鈍い音がした。
『……随分と乱暴なドライバーだね』
受け身を取った日生・一陽が埃を掃うように右手を薙げば、生じた衝撃波がバイクの側面を叩いた。
「生憎、悪天候のツーリングも嫌いじゃないぜ……っと」
転倒は免れたとはいえバランスを崩した陽里に更なる追撃が迫るが、
「セーフティ解除――」
『レヴィアスク』を握るマホルニアの腕が、それを遮った。しなやかな筋肉で構成されていた彼女の腕を、見る間に異形が覆っていく。
「顕現」
冷気。或いは怖気。初夏の空気が孕む湿り気が氷の礫に変わったように肌がひりつき、少年達は初めて眼前で繰り広げられている非現実を認識したようだ。悲鳴が上がり、日生・一陽の視線が少年達に向いた。
『――は?』
撥ねられた時の数倍の衝撃が、日生・一陽を襲った。突然の事に瞠目する彼の様子に、陽里は白い歯を見せた。
「宣告したはずだぜ。『俺の走りを見ろ』って」
ルール違反は切符を切らないとな、と笑う彼に釣られ、マホルニアも口の端を上げた。境界外の概念を纏い、弓状の双刃を振りかぶる。
「後続の猟兵が来たらしい。時間稼ぎはこのくらいにしようか」
鮮やかな天色が奔った。日生・一陽の白い肌に、赤い筋が刻まれた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
青梅・仁
【波咲神社】
いじめられたら殺したくもなるよなあ。
けど、本当に目の前で死なれたらきっと後悔するだろう。
少年オブリビオンも殺す気はなさそうだし……とっとと帰らせるしかなさそうだな。
いじめられっ子の方は嬢ちゃんに任せて落ち着かせておいて貰う。
俺はいじめっ子の方に用がある。
なあ、お前さんらのしていることが相手をどれほど苦しめてるのか少しくらい考えたらどうだ?
考える気がないのなら、俺はお前さんらを助けない。
静かに、声を低くして『恐怖を与える』。
……なんてな!守ってやるから今後は行動を改めろよ?
もしオブリビオンがこちらに攻撃するようなことがあれば戦意を抑えるのに協力しよう。
本当は傷つけたくないんだろ?
尾花・ニイヅキ
【波咲神社】
いじめ……。
確かに許せないが……死んでしまえば謝罪すら出来ない。
今はここから離れさせよう。
……仁、怖がらせすぎたら逆に逃げる気力を削るかもしれないから程々にしておけよ……?
いじめられっこに声を掛けて自力で動けるか確認。
少し落ち着かせてから敢えて皆の先頭に立って逃げてくれないか、とお願いしてみる。
こういう時に動ける人が本当に強い人なんだと僕は思う。君なら、出来る気がするんだ。
大丈夫、皆が襲われないように僕らが足止めをしておく。
オブリビオンが攻撃してくるようならひたすら相殺して攻撃が子供達を巻き込まないよう防ぐ。
……なんでだろう、このオブリビオンを積極的に攻撃する気にはなれないんだ。
「いじめられたら殺したくもなるよなあ」
「仁」
「はいはい」
尾花・ニイヅキの諫めるような声色に、青梅・仁は素直に応えた。言葉が悪かったという自覚はあるらしい。
「けど、本当に目の前で死なれたらきっと後悔するだろう」
「……怖がらせすぎたら逆に逃げる気力を削るかもしれないから程々にしておけよ……?」
「はいはい」
この男は神格故の感覚のズレと、妙なまでの人間味が同居している。いじめの被害者側に多少の肩入れしているのを察したニイヅキが釘を刺したが、聞き入れる気があるのかは怪しい所だ。
「『はい』は一回」
軽口を叩きつつの、ミレナリオ・リフレクション。眩いオーラを纏う『日生・一陽』とニイヅキの間で衝撃波がぶつかり合い、爆ぜた。今だ混乱の最中にある少年達が、怒声とも悲鳴ともつかぬ声を上げる。
「とっとと帰らせるしかなさそうだな」
踊り場の両端。たった数歩、それが一般人とオブリビオンの距離だった。それでも間に割り込めるだけの距離を取らせた猟兵には感謝しかない。少年達を背に庇いながら、仁は地の底から湧き上がるように低い声で尋ねた。
「なあ、お前さんらのしていることが相手をどれほど苦しめてるのか、少しくらい考えたらどうだ?」
何の話かと問おうとした少年は、慌てて口を噤んだ。聞けるような雰囲気ではなかった、とも言う。
「考える気がないのなら、俺はお前さんらを助けない」
「……!」
――お前さんらが何をしていたか、知っているぞ。言外に滲ませる。
仁が肩越しに見下ろせば、少年達の身体がびくりと強張った。仁が壁際でへたり込んでいた少年を意図的に視界から外している事で、彼らには十分に伝わったはずだ。
「……なんてな! 守ってやるから今後は行動を改めろよ?」
冗談だと笑い飛ばしてみせた所で、顔色は悪い。存外効いたと見える。
「平気? 自分で歩ける?」
仁がいじめっ子達を脅かしている間にニイヅキは被害者と思われる少年に駆け寄っていた。手を貸そうとしたが、彼はすぐに自力で立ち上がった。
「うん、平気そうだね。じゃあ、君が皆の先頭に立って逃げてくれないか?」
「え」
「こういう時に動ける人が本当に強い人なんだと僕は思う。君なら、出来る気がするんだ」
思う所は多々あるだろう。ただ、今は共に乗り切って欲しいとニイヅキは思う。
(「……死んでしまえば、謝罪すら出来ない」)
いじめは許されざる行為ではある。だが、まだ和解の可能性がゼロではないのならば――。少年達の未来を願うくらい良いだろう。
「だから、邪魔するのは無粋だと思わないか」
ニイヅキは槍の切っ先を日生・一陽へと向けた。視線をオブリビオンに向けたまま、少年に大丈夫だと囁いた。
(「……なんでだろう、このオブリビオンを積極的に攻撃する気にはなれないんだ」)
せめて少年達が無事に逃げ果せるまでの足止めを。仁もまたニイヅキと同意見らしく、立ち塞がるように日生・一陽の前へと歩み出る。
「そうそう、お前さんも本意では無さそうだしな」
腰に佩いた太刀をすらりと抜き放ち、間合いの『外』で振り抜いた。同時、日生・一陽は迫る神力を手で払い除ける。
「本当は傷つけたくないんだろ?」
『……何を?』
仁が顎でしゃくって少年達を示せば、日生・一陽はくつりと歪んだ笑みを零した。
『見当違いだね。僕は、僕が傷つけたくないの、は――』
少年達に向ける眼差しは、無関心のそれだ。
「なんだお前さん、ワケ有りか。とはいえ、こちらもオブリビオンを見逃すわけにはいかねえのよ」
戦況は膠着状態だ。それでも少年達に冷静さを取り戻させ、逃走を促す事が出来たのは大きな成果だと言えるだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
イージー・ブロークンハート
【暁鏡】
【アドリブ他お任せ】
こおら!みっけたぞクッソガキども!
肝試し不法侵入怒られんのお前らまだ良し!
だっけど一人を多数でイジメって、お前らなあ!因果応報だぞこんのバ……
待て待てバッカ!鏡から出てきた方!襲うのダメだって!何考えてんだ!後悔するぞそんなこと!
囮の暁音や先に戦う鏡介と連携する形で
コードで扱う3種の硝子片で行動を阻害しようとする。
ダメならしゃあなし――ガキは最悪オレが庇う!
――は?
零の兄貴?
えーと、ああもう!
ごめん鏡介、暁音ちょっと任せる!
混乱のまま、とりあえず子供を叱り飛ばしてある程度の距離に退避誘導、踵を返して戦闘に戻る。
零の暴走に対してはガードはするけど仕返しはしない。
代わりに呼びかける。
待てよ、零、ちょっと、仕返ししてもいいけどなんかその状態ダメだと思うぞ!?オレの言葉じゃ届かないか!?
一陽だっけ!?お前兄貴なんだろ!?何したんだよ!?まず言えねえのかよごめんなさいとか!!
反省――あってもなくても、一陽には容赦しない!
鏡介に賛成。マジで早く終わらせた方が良さそうだ!
天星・零
【暁鏡】
enigmaの効果で夕夜も参戦
戦闘はØで相手を攻撃(他3人に合わせて行動
呼方
イージーさん→イー兄
夜刀神さん→夜刀神さん
暁音→暁音
零は霊体化して気配を消す
前半は夕夜が戦闘
零は一陽が4人に集中してる時に虚鏡霊術で作ったピッケルで不意打ち
兄は頭が良く、凡ゆる事に対処してくるのでこの程度では驚いて深傷を負うくらいだろう
微笑み
零『会いたかったよ。兄さん…また殺セル』
『暁音、直グ殺スカラ待ッテテネ』
悪霊化した零が指定UC
零域鏡界を発動して結界を張り呪詛や怪異や装備などで攻撃
全身血塗れで目から出血
和風ホラゲに出てくるような姿
『此処カラ、逃ガサナイ…』
零は兄に怨みを持っている為殺す事に躊躇いがない
理由は
濃藍のレミニセンス
たとえカミソリの味がしても
上記シナリオの2章
その後零がどうなったのかはUC 十一の死『自死』・夢幻鏡界参照
『ミンナ…』
不安定な状態だが、皆の声+暁音の記憶は消えないので暁音達は傷つけない+やりとりの後一旦落ち着く
悪霊状態を引き継ぐかはお任せ
やりとり多め希望
台詞も技などもアドリブ○
天星・暁音
【暁鏡】
虐め…か
認めたり肯定する訳じゃないけど、どうしたってなくなりはしないものだから…心というのはそんなもの
悲しい事ではあるんだけどね
まあ、何にせよ
少し怖い思いはするだろうけど、子供達には逃げて貰わないとね
なるべく派手に動いてこっちに引きつけないとね
とりあえずガトリングでバラ撒いて囮をしつつ、子供達を庇って、皆を全力で回復して…まだ次があるから此処で全部出しちゃう訳にはいかないけども…
後…零のことちゃんと見ておかないとだね
「れーい。そんなものより俺の事を見てよね。俺にとっても過去は何時でも思い出せば心を蝕むものなんだけど…でも、追いかけてくるのなら、一緒にぶっ飛ばしちゃおう」
子供達や仲間達を常に庇える様に意識しつつなるべく派手に攻撃することで囮になろうと心がけます
基本は回復行動を優先しますが、仲間達が攻撃しやすように立ち回ります
近づかれるなら糸や刀、或いは杖を用いた杖術などで攻撃します
暴走する零には躊躇いなく跳びかかって抱きしめます
零との関係は恋人
スキルUCアイテムご自由に
アドリブ歓迎
夜刀神・鏡介
【暁鏡】
いじめに対して思う所はあっても、今はそこに介入している余裕もなし
今はとにかく、子供たちを逃してオブリビオンを倒すだけだろう
子供たちには学校から離れろと言いつつ、利剣を抜いて接近
逃げる子供たちを積極的に狙うつもりはないようだが、念の為に下階に繋がる階段は抑えておこう
だが急な状況だし、すぐには動けないか。いざとなったら1~2人抱えて階段から飛び降りる
夕暮れ時の校内、暗くて敵の顔ははっきり見えなかったが、敵のUCで発生した光ではっきりと顔が見えた
どうも顔立ちが零に似ているような……だが関係あると考えるのも早計か?
零が合流して余裕ができたら聞いてみたい所だが、今は戦闘に集中。連携して少しずつ動きを鈍らせていこう
零の合流後。どうも様子がおかしく見えるが……兄さん?
なら、来る前に教えてくれていれば……いや、聞いた所でどうしようもなかったか
とにかく長時間この状況が続くのは危険そうだ。一刻も早く戦闘を終わらせよう
敵に対して暴れる分には構わないが、それ以上があるなら力付くでも止めにかかるつもり
●
灯りの点いていない旧校舎の中に、朱い光が壊れた窓から差し込んでいる。夕闇が迫る中、人の輪郭だけがはっきりと浮かび上がっていた。顔が分からずとも、体つきを見ればまだ子供だという事はわかる。
イージー・ブロークンハートは肺にめいっぱいの空気を取り込むと、
「こおら! みっけたぞクッソガキども!」
階段の上の人影に向けて、脅かすような声色で叫んだ。こういった役回りは慣れたものだ。尤も、最後に弟妹を叱ったのは何年も前の話ではあるが。
「不法侵入で怒られんのならまだ良し。だっけど一人を多数でイジメって、お前ら――、と」
近付いて初めて彼らの表情に気が付いて、イージーは口を噤んだ。先行した猟兵に脅かされたのが堪えたらしい。少年達の間にはある種の気まずさがあるが、自分達の行いを自覚した証左だろう。
「……こういうの、因果応報って言うんだぞ」
報いとしては小さすぎるくらいだ。イージーと共に夜刀神・鏡介が階段を駆け上がり、『利剣【清祓】』を抜いた。
「急いで学校から離れるんだ」
空を切る音がして、オブリビオン 『日生・一陽』が壁際まで跳ぶ。距離を取った隙に鏡介が少年達に逃走を促せば、彼らは思いの外冷静に駆け下りていく。
「第三者に指摘されて顧みる事が出来る程度の、軽い気持ちだったんだろうね」
「だからこそ、たちが悪いんだけどな」
逃げていく少年達の背を見送り天星・暁音が呟けば、実体化した天星・零の別人格である『夕夜』が嘲った。悪ふざけで刻んだ小さな傷も、癒えぬうちに重ねられれば悪化の一途を辿り、やがて致命傷になるのだと。気付かれずに手遅れになる者達の、どれほど多い事か。夕夜の言葉に、暁音は眉尻を下げた。
(「認めたり肯定する訳じゃないけど、どうしたってなくなりはしないものだよね。……心というのは、そんなもの」)
今回の件もUDC事件に発展しなければ、見逃されていただろう。
「悲しい事ではあるんだけど、ね」
暁音の傍らに在った光球がガトリングガンの形を成し、魔力由来の火を噴いた。光の帯を棚引いて無数の弾丸が放たれ、標的の後背には壁がある。捉えたと思ったのも束の間、立ち上る炎の柱が弾丸を飲み込んだ。
『……君達も、帰ってよ。怨嗟が……』
轟々と燃え盛る火が日生・一陽の苦々しげな表情を照らし出し、鏡介は息を呑む。
第一に、既視感。初めて相対する敵にも関わらず、その顔を知っている。第二に、違和感。他人の空似と言うには、余りにも――。
(「どうも顔立ちが……関係あると考えるのも早計か?」)
見比べる間も無く、夕夜が虚空から喚び出した骸が炎を喰らった。室内に影が落ちる。
「ガキどもはそろそろ外に出た頃か? 生憎こっちは仕事で来てんだ、はいそうですかって帰るわけにはいかねえんだよ」
爪弾くような澄んだ音色が響いて、イージーの剣捌きに日生・一陽は攻めあぐねる。間髪を入れず日生・一陽の左側面に湾曲した刃が突き立てられた。
日生・一陽の脇腹を抉るようにピッケルを振り抜いた零の唇が、弧を描いた。
「会いたかったよ。――兄さん」
●
「――は?」
零の、兄貴? 我ながら気の抜ける声が出たものだと独り言ち、イージーは零の言葉を反芻した。光源が夕日しかない校舎内では顔の判別が難しいが、目を凝らせば日生・一陽の容貌は零によく似ていた。鏡介は自身の直感が正しかったと確信すると同時、一抹の不安を覚える。
(「零。どうも様子が……」)
肉親のオブリビオンともなれば何かしらの想いを抱いて当然であろうが、少なくともそこに再会をを喜ぶ色は乗っていなかった。むしろ――。その時、零は鏡介の感じた不穏を肯定するように、けくけくと引き攣るように哄笑した。『これ』は誰だ。鏡介が問うより先に、暁音が口を開いた。
「零」
暁音は努めて表情を崩さず、零を呼んだ。彼の生い立ちを、日生・一陽が誰なのかを話に聞いているからこそ、呼ばずにはいられなかった。零は愛しい少年の姿を認め、目を細める。
「暁音、待っててね。直ぐ、殺スカラ……」
「零!」
ぱたぱたと雫が落ちて、零の足元に黒い染みを作っていく。影の黒と混じり合い、歪な輪郭を模っていく。
否、霊体の零に影などありはしない。ならば、これは何だ。次の行動に迷いが生じた仲間達を気に留める事なく、零が歩み出る。
「兄サン。マタ、殺セル……」
『兄、さん?』
宵闇に伸びる影との境界が曖昧になり、――黒から、死霊が溢れ出した。一方、オブリビオンになる前の記憶が定かでない日生・一陽は、弟を認識するより先に零と融合する骸魂を認めてしまった。止めねばならない、殺さねばならない相手を。
『……虚鏡ノ怨嗟ァアアア゛ッ!』
ごうと音を立てて幾本もの炎の柱が立ち上がる。猟兵達を分断させる炎の格子だ。浄怨の炎が怨霊を祓っていくが、それでも悪霊を伴う零の歩みは止まらない。
「待てって! お前、せめて躱すとか防ぐとかさあ!」
「イー兄モ。心配要ラナイヨ……」
不生不滅。知ってはいても、弟分が炎に巻かれる様を見逃せるとでも思っているのか。
「お前が傷付くとこ、見たいわけねえだろ?!」
りんと鈴の音に似た音が響いた。イージーの『硝子剣』は忌火をも裂き、日生・一陽まで届いた。彼は腕を掲げて刃を払い除けようとしたが、刃は少し触れただけで粉々に砕けてしまう。これは敵も予想していなかったのか、日生・一陽は降り注ぐ破片を対処しきれず、肌に細い傷が刻まれた。
「兄だとわかっていたのなら。来る前に教えてくれていれば……いや、聞いた所でどうしようもなかったか」
遅かれ早かれいずれは断たねばならない宿怨だ。鏡介は小さくかぶりを振り、踏み込んだ。頭上のガラスに気を取られていた日生・一陽は低い斬撃に反応が遅れ、両大腿を深く斬り付けられる。薄紅の刃文が夕日を映し、燃えるように煌いた。
『邪魔を……するなッ!』
虚鏡ノ怨嗟を止める。その衝動にも似た妄執が、激しい炎を生んだ。イージーと鏡介の足元から火炎が噴き上がり、二人を飲み込んだ。
「っ! 祈りを此処に、生の眩耀、祝福を――!」
紡がれた祝詞は、悲鳴に近かった。星杖から発せられた眩く優しい光が二人の炎を振り払い、爛れた肌に再生を齎した。それとは裏腹に、暁音の悲痛な声を耳にした零から表情が抜け落ちていく。
「暁音ヲ悲シマセル者ハ許サナイ。此処カラ、逃ガサナイ……」
――それは、遺恨が人の形を得たかのような。
骸魂を宿した零は、血に塗れている事を除けば普段の彼から大きく逸脱するような姿をしていないにも関わらず、周囲に息苦しい程の圧迫感を与えていた。悍ましい程の怨毒が、際限なく悪霊を喚び続ける。
対する日生・一陽の炎は、迫りくる怨霊を灼き続けた。自身を取り囲むように炎の柱を出現させる様など、火振り神事を想起させる。破魔の力を宿した炎を前にしては、死霊を引き連れた零が些か不利であると言えた。
「待てよ、零。仕返ししてもいいけどさ、なんか、その状態ダメだと思うぞ?!」
穴だらけの校舎だというのに、何故こうも熱気に苛まれなければならないのか。負傷を厭わず、不利を意に介さず、太陽の如き炎熱に晒されている零に掛けた声が嫌に掠れていて、イージーは歯を食いしばる。零は、こちらを見向きもしない。
「オレの言葉じゃ届かないか……? なあ!」
陽炎に揺れるように。霧に紛れるように。零の像がぶれる。日生・一陽の光と相俟って、光輪が生じた。これではブロッケンの怪物のようだ。零が『人』からかけ離れていく様に、イージーは焦燥を覚える。
とん、と背に軽い衝撃があった。振り返れば鏡介がこちらを安心させるかのような柔和な笑みを浮かべていて、イージーは急速に頭が冴えていくのを感じた。
「……鏡介ぇ。なんだよ、いつもいつも落ち着いてて。年下のくせに」
「誉め言葉として受け取っておく」
「いざとなったら、俺が零を羽交い絞めにしてでも止めるから大丈夫だよ」
二人の軽口に、後ろに立つ暁音が混じる。随分とワイルドな提案だった。この場に居る誰よりも幼くて、同年代の中でも小柄な少年の妙な頼もしさに、思わず二人は吹き出した。
「とにかく長時間この状況が続くのは危険そうだ。一刻も早く戦闘を終わらせよう」
「鏡介に賛成。マジで早く終わらせた方が良さそうだ!」
「じゃあ……一気に行くよ!」
暁音のガトリングががなる。弾の驟雨に身動きの取れなくなった日生・一陽に、イージーと鏡介が肉薄する。
(「俺達が居るよ。だから泣かないで、零」)
零の双眸からは、止め処なく血が滴っている。白い頬に幾筋も伝う紅い線が、暁音には悲しかった。
●
『虚鏡ノ怨嗟を止めないといけないのに』
――止めなければ、この罪悪感から逃れられないのに。そんな日生・一陽の独白は、発砲音と剣戟の音に掻き消された。眼前の猟兵達を忌々しげに睨めつけ、吠える。
小さな太陽が生まれたような白光が、猟兵達の目を灼いた。次々と立ち上る炎の柱は校舎を燃やす事なく、ただ狭い空間を満たしていく。猟兵達を、業火が包む。
「漆の型――【柳葉】」
息をするだけで気道が焼かれそうな熱の中、呼吸一つ乱さずに鏡介が斬り込んだ。薙いだ刀が腹を割き、返す刀は日生・一陽の左腕を奪う。
『何でッ、何でそいつに味方をするんだよ!!』
ずっと味方なんて居なかったじゃあないか、そんな言葉が口を衝いて、日生・一陽は瞠目した。
『これは……僕の記憶?』
「一陽だっけ!? お前兄貴なんだろ!? 零に何したんだよ!!」
何故零の味方をするのかを問う日生・一陽に、イージーは激昂した。逆に問いたいくらいだ。何故兄であるお前が味方をしなかったのか、と。零をここまで追い詰めた少年に、容赦する事など到底出来そうも無い。
『……兄。ああ、そっか。僕は』
「まず言えねえのかよ、ごめんなさいとか!!」
グラスを落としたような音がして、日生・一陽に夥しい硝子片が取り付いた。粉々の硝子は脆いようでいて、鋭く、堅く、冷たく、日生・一陽を捕えていく。そんなきらきらと光を放つ硝子に紛れ、張り巡らされていたのは――『聖なる銀糸』。神気を纏う糸が、日生・一陽の動きを阻害する。
「さあ、因果を断って――零!」
今の零は最早悪霊そのもので、禍々しい憎悪の念を撒き散らしている。だが暁音の声には明確に反応を示した。
兄と弟。同じ血を分け、共に生を受けたはずの双生児。相対する二人はまるで鏡像のようだというのに、相容れる事は無かった。
そしてこれからも。オブリビオンと猟兵という関係が、決定づけてしまった。
「兄サン」
悲しみと、寂しさと、恐怖と、憤りと――、かつて零が抱いた膨大な感情は純化され、やがて恨みだけが残った。災禍にも等しい純然たる怨嗟が『零域鏡界』から這い出でて、巨大なあぎとを開く。
日生・零は、日生・一陽に告げた。
「……サヨナラ」
喰らわれ、消える最期の瞬間まで、日生・一陽の黒い瞳は真っ直ぐ零に向けられていた。
●弟だった少年のはなし
吞み込まれていくかつての兄を、白銅と深緋の瞳が見つめていた。そこには何の感慨も無い。清々しい達成感すら無いのは、少々意外ではあった。
そうだった、まだ両親が。そうだよ、殺さなきゃね。二人は何処だろう。
仲間にそれを伝えると、酷く辛そうな顔をした。みんな、どうしたの?
「零ッ、一旦解除しろ!」
言動の不安定さはユーベルコードを行使した代償だと気付き、イージーは零の肩を掴んだ。
「零。俺達の事はわかるな?」
鏡介が目線を合わせて問えば、零は微かに反応を示していた。
「れーい。過去じゃなくてさ、俺の事を見てよね」
暁音は零に抱き着いて、彼のお腹に顔を埋めた。
「俺にとっても、さ。過去は何時でも思い出せば心を蝕むものなんだけど……でも、追いかけてくるのなら、一緒にぶっ飛ばしちゃおう? ね」
甘えるように見上げれば、零の瞳に光が戻る。暁音の背に手を回し、ぎゅうと抱き締め返した。
「――みんな。……ありがとう」
●とある兄のはなし
殴られたくなかった。罵られたくなかった。……嫌われたくなかった。
だから、見捨てた。
弟もまた、殴られたくなかっただろうし、罵られたくなかっただろうし、愛されたかったのだろうと。そんな当たり前の事から目を背けた結果、刃が突き立てられた。
弟を生贄同然に扱った兄の過去(いいわけ)など、未来に向かう彼に必要ない。
だから、言わない。
この贖えない過去(つみ)は、捨てられる過去(ぼく)が。骸の海へ持って行く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第2章 集団戦
『正直者の鏡』
|
POW : 無貌は笑う
【広範囲に虹色とモノトーンが混じった光】を放ち、命中した敵を【不運を与える硝子状の刃】に包み継続ダメージを与える。自身が【シナリオ担当のグリモア猟兵に内面含め変身】していると威力アップ。
SPD : 無謀に嘆く
【鏡に映らない死角に染み出す闇】を放ち、命中した敵を【生命力を奪う光を反射しない刃】に包み継続ダメージを与える。自身が【シナリオ担当のグリモア猟兵に内面含め変身】していると威力アップ。
WIZ : 無望を憐れむ
【今までの犠牲者の恨みの視線】を放ち、命中した敵を【精神的重圧と不運を与える呪いの声と視線】に包み継続ダメージを与える。自身が【シナリオ担当のグリモア猟兵に内面含め変身】していると威力アップ。
イラスト:唯々
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
日生・一陽を退けた猟兵達は、周囲の景色ががらりと変わっている事に気付いた。
自分達を取り囲むのは、無数の『鏡』。
鏡の中に鏡が映る、所謂合わせ鏡の状態に、空間の広さも、正確な数も把握し辛い。
やがていくつかの鏡が、人の形へと姿を変えた。
猟兵自身を、或いは仲間を模した鏡が、一斉に猟兵へと襲い掛かる。
大豪傑・麗刃(サポート)
一人称は『わたし』『麗ちゃん』
装備(下記持ってない場合は適当にお願いします)
基本:右サムライブレイド左日本刀(試しで使ってみたがやはり刀はエンパイア産の方がすぐれているのだ)の二刀流+随行大剣
スーパー変態人(1or2):右サムライブレイド+フライングシャドウ、左日本刀+妖刀の四刀流
伝説のスーパー変態人:RXキャバリアソード
ひき逃げ時:トラック
大軍を前にいろいろ考えるが結論は「全員やっつければ(斬れば)いいのだ!」
ユーベルコードが
近接系:何も考えずに突っ込んでって無双狙い
集団系:なるべく多数引き付けて一網打尽狙い
ギャグ系:お手数かけますがなんとかお願いします!
それ以外:まー適当に。
神塚・深雪(サポート)
※連携およびキャラを逸脱しないアドリブ歓迎
※お色気、公序良俗に反する行動、所謂R18やR18Gの系統はNG
※口調等はステシ参照ください
元能力者の猟兵。
通常依頼であれば、基本的にはお手伝い/サポート役に徹しますが、状況に応じて対応でも可。判断はお任せします。
サポート優先依頼の場合は、状況に応じます。
基本的には高いステータスのUCを状況に応じて使用します。
他の猟兵に迷惑をかけたり、脚を引っ張る、目的達成に反する行為はしません。
人道から外れたような行いには嫌悪感と怒りを強く示します。
基本的には、礼儀正しい丁寧な物腰。
出身の銀雨世界以外であれば興味津々な様子も見せます。
「起動」
神衣に身を包み、神塚・深雪は素早く周囲に視線を巡らせた。偶発的に成立してしまった邪神召喚儀式への対処という救援依頼を引き受け、こうして現場である学校まで赴いたわけだが、深雪の前には無数の『鏡』が並ぶ異様な光景が広がっていた。古い木造校舎の廊下の先にこのようなオブリビオンの大群が並ぶスペースがあるはずもなく、考えられる事としては――。
「地縛霊の特殊空間……と似たようなものでしょうか」
長らく能力者として活動してきた分、こういった不可思議な現象への順応は早いのかもしれない。深雪とはまた違った冷静さで、大豪傑・麗刃が鏡を指した。
「ああ、これあれだ。遊園地にあるよね」
「ミラーハウスみたいですよね。そう考えると少し楽しくなってくるような気も――」
鏡に映っているのは間違いなく麗刃で、愛嬌のある四白眼は変わらない。けれどその視線に、恨みがましい陰りが見えた。
「そんな目をされたら、折角のイケメンが台無しなのだ」
抜刀。鏡に真一文字の亀裂が入り、上下に分かれて倒れ、砕け散った。その音が引き金となり、四方から怨嗟の篭った視線に晒される。
「数が多いですね」
「ここはひとつ、わたしが派手に引き付けて一網打尽にしてやろう。喰らえ……鬼面フラーッシュ!!」
麗刃は真正面の強烈な視線を寄越した鏡に肉薄し、――渾身の変顔を繰り出した。
ぱりん。原理は一切不明だが、ユーベルコード由来の何らかの力が作用したのだろう。麗刃の変顔を映した鏡が割れると、周囲の鏡が角度を変え、鏡面を麗刃へと向けた。
「やりましたね。……大豪傑さん?」
引き付けるという目論見は成功していたはずだ。だが、刀を振るう麗刃の表情は浮かない。
「笑いが……足りないっ」
自我があるかも怪しい無機物のような敵にリアクションを求める事など出来るはずもなく。今更どうにも出来ない虚無感に麗刃は臍を噛む。
「麗ちゃん、もう鏡直視出来ない……ミラーだけにみらーれない……」
心なしか駄洒落にもいつものキレが無い。それが精神的重圧を与える呪いだと気付いた深雪は千早を翻し、浄化の舞を舞う。
「しっかりなさってくださいっ!」
『麟姫の虹翼』に銀の光を纏わせ、光輝の癒しを齎した。澄んだ光を帯びた羽根に触れ、麗刃の顔に生気が戻る。
「……はっ。こんなガラスハート、わたしらしくないのだ!」
自身を取り囲む鏡を一刀の元に斬り伏せ、やはりエンパイア産の刀の切れ味はなかなかのものだと麗刃は満足気に頷いた。すっかり調子を取り戻した彼の姿に安堵し、深雪も刀を抜いた。透き通った刀身が清浄な光を放ち、邪悪な視線を寄越す鏡を両断する。
「その呪いの犠牲となった無念――、私が祓いましょう!」
「何体居るかわからない? 問題ない、全員やっつければいいのだ!」
鏡の大群を前に怯む事なく、二人の刀が閃いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
青梅・仁
【波咲神社】
思った以上に嬢ちゃんが俺の写しに攻撃するのを躊躇っているようだし、俺が先に動いた方が良さそうかね。
躊躇っていては仕事が進まんだろ?
嬢ちゃんを巻き込むのも覚悟の上で、鏡共に斬撃を叩き込む。
本物なら避けられると思ってやってんだよ、躱せ。
勢いつけられたなら後は心配いらないな。
生命力を多少削られたとしても動けりゃ問題なし。斬り合おうぜ偽物共。
にしても良い刃じゃねーか。じわじわ殺していく力、嫌いじゃねえよ。
……自分を斬るの、案外抵抗ねえな。
寧ろ嫌な自分をイメージして斬るのはある種ストレス解消になるかもな?
偽嬢ちゃんは……たまーに嬢ちゃんにムカつく時あっからその八つ当たりに叩き割らせてくれ。
尾花・ニイヅキ
【波咲神社】
僕の写しだけならともかく仁の写しもいるのか……やりづらいな。
躊躇っていては仕事が進まないのはそうだが、冷静にやらないと同士討ちの可能性もあるだろう?
って、いきなり無差別攻撃をするな!
冷静にって僕は言ったぞ!
まったく、仁は時々訳が分からない……もういい、僕も巻き込むのを覚悟で攻撃するからな!?
敵が写してくるのなら、この技も写してくるかもしれない。
けれど、仁も避けるんだろう?なら問題ない。
一気に攻撃して、一気に割ってやる。
生命力を多少削られるのは覚悟はしているが、長期戦は避けたいしな。
ストレス解消になるかどうかは僕には分からんが、さっきの暴挙の分は仁の写しに全力で叩き込んでやるからな。
奇妙な感覚だ、と尾花・ニイヅキは呟いた。先程から得体の知れぬ闇が飛び交っていて、それらの元凶が目の前の鏡である事は承知している。ただ、敵意だとか、悪意だとか。凡そ意思というものが感じられない無機物を敵だと言われても、しっくりこない。
「呪詛だな」
自身を映す姿見を見やり、青梅・仁が答えた。誰かが願った、不幸。それは自我を持たずとも、それ自体が災厄なのだ。
仁の言わんとする所を理解したニイヅキが得物を握り直したその時、鏡の輪郭が揺らいだ。
「……やりづらいな」
二人を取り囲んでいる鏡の幾枚かが、ニイヅキ、そして仁の姿に変じていた。よくもまあ髪の一筋、鱗の一枚まで精巧に似せたものだと、いっそ感心する。とはいえ、この状況は思わしくない。
(「僕の写しだけならともかく」)
自身と仁の姿が半々といった所か。攻めあぐねるニイヅキを、仁はちらりと横目で見た。
――正直な所、意外だ、と仁は思う。乱戦になる前に動いた方が良い事くらい、彼女もわかっているだろう。
「躊躇っていては仕事が進まんだろ?」
「それはっ、……そうだが、冷静にやらないと同士討ちの可能性もあるだろう?」
柳眉を逆立てたニイヅキは敵に切っ先を向けたままで、未だ踏み込む様子は無い。
(「思った以上に嬢ちゃんが俺の写しに攻撃するのを躊躇っているようだし、俺が先に動いた方が良さそうかね」)
同士討ちを懸念するならばなおの事、早く動くべきだというのに。それでも刃を向ける事を躊躇う程度には、という自惚れが半分。十数年しか稼働していない少女に心配されるという、不甲斐なさが半分。自然と口元に笑みが浮かんで、仁はゆるりと刀の柄に手を掛けた。
「同士討ちは勘弁願いたい所だあな。――ま、それは嬢ちゃんに懸かってるが」
ゆったりとした構えからは想像も付かない速度での抜刀。仁を起点に生じた風の刃が扇状に広がり、視界内の偽物達を切り倒した。
「……って、いきなり無差別攻撃をするな!」
咄嗟に跳ばなかったら脚の一本も持って行かれていた、とニイヅキは不服そうだ。
「冷静にって僕は言ったぞ?!」
「本物なら避けられると思ってやってんだよ、躱せ」
何という言い草だ。こちらの気も知らないで、とニイヅキは憤慨した。
「まったく、仁は時々訳が分からない……もういい、僕も巻き込むのを覚悟で攻撃するからな!」
『月影』に内蔵された魔導蒸気機関がしゅうしゅうと唸りを上げ、蒸気を棚引かせて射出された。ニイヅキの勢い任せの投擲は自身の鏡像を穿ち、仁を騙る鏡を貫き、這い寄る闇を霧散させた。仁は彼女に「そちらは任せた」と背を預け、改めて偽物達へと向き直る。
「……後は心配いらないな。――じゃ、斬り合おうぜ偽物共」
ぶくりと膨れ上がった闇が、仁を喰らう。光を反射しない、即ち不可視の刃を内包した闇を、彼はせせら笑う。
「良い刃じゃねーか。じわじわ殺していく力、嫌いじゃねえよ」
獲物に逃げられちゃあおしまいだけどよ。『銀ノ波』に宿る怨念と共に、仁は鏡の合間を駆け抜けた。妖刀に斬り伏せられた鏡像は、床に転がると砕けて散る。
「……自分を斬るの、案外抵抗ねえな」
寧ろ嫌な自分を斬る、ある種のストレス解消法を仁は見出していた。それは偽ニイヅキに対しても似たようなもので。
(「たまーに嬢ちゃんにムカつく時あっから、その八つ当たりに叩き割らせてもらおうか」)
そんな心の声が聞こえたかのように、ニイヅキは仁に一瞥をくれた。
「さっきの暴挙の分は、仁の写しに全力で叩き込んでやるからな」
ばりばりと鏡を粉砕する音が響く。少し焚きつけただけのつもりが、この少女の直情的な面を随分と甘く見ていたらしい。仁は肩を竦めた。
「おっかねえなあ」
「誰のせいだと!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天星・零
【暁鏡】
enigmaの効果で夕夜も参戦
固まらず別れて戦う
僕は如何するべきなんだろうか?
夕夜「零…。大丈夫か…?」
自分が如何するべきか悩む
夕夜には恐らく分かりきってることだろう
戦闘
夕夜がメイン
『僕は…』
零は指定UC
両者Øで近距離、グレイヴ・クロスで遠距離
更に零は虚鏡魔術、零域鏡界で臨機応変に
夕夜はBlasterでも攻撃
相手のUCはUCでカウンター攻撃
姿関係なく偽物だと第六感、記憶力で判断
躊躇×
心の中
僕は怨んだ
傷つけた人を許せなかったし、それで幸せな人を認められなかった
だから、殺した
その後は、僕以外にも同じような人がいたから
無くそうと思った
けど、無くならなくて
僕は思った
『みんな、いなくなれば友達になれるし悲しむ人もいなくなるよね』って
そんなこと考える自分が嫌で
自分を傷つけて、目を逸らして逃げた
だからアレは生まれた
誰もが誰かを傷つけて生きてる
アレは見境なく殺すだろう
だから止めよう
その為に
自分の気持ちを捨てるんじゃなくて受け入れるんだ
ーあれは僕だからね
その方法は…
やりとりお任せ
アドリブ○
天星・暁音
【暁鏡】
偽物か…
まあ今更、そんなもので手が鈍る訳も無しだよね
とりあえず、俺は零の所に行かないとだから邪魔する奴は、全員蹴って蹴って蹴りまくって、氷と水の刃と踊って貰おうか…
まあ別物は別物、痛みの感じ方は皆違う
どんな痛みを持っているのかも
それはオブリビオンだって変わらない
だから誰がどんな痛みを持つのか分かれば本物と偽物を別けるくらいは簡単なんだよ
その分俺は痛みも強く感じる事にはなるけど…
どうしようもない力で、割に合わなさすぎるのも確か何だけど必要ならば幾らでも
回復も任せて
大丈夫この程度、無理にも無茶にも入らないよ
共苦はアイテム参照
普段は可能に限り抑えている共苦の制御を緩める事で、誰がどんな痛みを持っているのかを知り、痛みの感じ方や種類で敵味方、偽物本物を見抜き水流に乗って滑りながら弧を描くように蹴り飛ばし、氷や水の刃や、氷柱、水圧をかける様に水を放ったりと、遠距離からも攻撃を仕掛けて派手に暴れます
零を心配している為に行動が少し大げさになりつつ癒しの水で仲間たちの回復にも努めます
アドリブ歓迎
夜刀神・鏡介
【暁鏡】
俺達の鏡像。外見だけを模した出来の悪い偽物だな
それで手を緩める訳もなし……待て、零はどこに行った?
先程のアレで体力は少なからず消耗しているだろうし、精神的にもどうか分からない
一人にするのは危険だ。早く片付けて追いかけよう
先程と同様に利剣を構えて敵陣に切り込み
鏡像とはいえ完璧な再現でもないだろうし、細部……顔や眼などを見れば判断できるはず
それと、気配を読む。命のない鏡像がそれを真似できるとは思わない
ただし、どうしても判断が難しい場合は自分の鏡像を叩きにいく
念の為、暁音とイージーとは少し距離を取って双方巻き込まないように
自分の周囲を包む刃も澪式・肆の型【玉輪】で纏めて切り払う
光を反射しない……見えなくとも、そこに在るなら斬れない道理はない
先程の兄との対峙もそうだったが、これは零本人が乗り越えなければいけない事象なんだろう
とはいえ、だ。何を考えてるかは分からないが、独断専行は良くないな?
本気で咎める訳ではなく、少し冗談めかして
でないと、俺達が此処にいる意味がないってものだ
イージー・ブロークンハート
【暁鏡】
自分とか他人なんてそんなもん全ッッッ然手は緩んだりはしないんだなーこれが!!
大丈夫問題な……待って。これオレ味方斬る可能性結構ある――…!(膝から崩れ落ちる)
ウエエまじか鏡介、そんなことできんの!?あ、はい、オレも戦います。
砕けて破片を散らし戻る【硝子剣】を利用してUCを拡散させ、
鏡本体に罅でも入れば、鏡像にも影響でて…見分けつく、かな?
なあ、暁音、鏡介。
零、なんか思い詰めてるように見えるの、オレの気のせい?
オレはさ、この先に待つ元凶と対峙して勝ったあとに。
零が気楽に笑えるような結末を迎えてほしくてついてきたの。
その為だったら、いまは誰かがいるとか、頼るとかわかってもらえんなら、多少の無理無茶無謀に負傷死にかけ承知の上。
だからさ――ええとまず暁音!
敵味方の見分けに、無茶しすぎなくても、いいかんな!
(アドリブ他歓迎です)
●
「何これ」
四方を鏡に囲まれ、天星・暁音は眉根を寄せた。得体の知れない鏡に自身の姿を映される事が、ただ不快だった。
「そこ、退いてよ!」
天星・零や仲間と隔てられた事が、何よりも不愉快だ。突如として鏡の迷宮に閉じ込められた暁音は、正面の鏡を力いっぱいに蹴り上げる。
ぺき、ぱりん。
水氷の霊による加護を宿した小さな足裏は、薄氷を踏み割るが如く、容易く鏡の中央に亀裂を生んだ。そのまま踏み抜くように足を突き出せば、暁音の背丈の倍はあろうかという鏡が倒れ、がしゃんと大きな音を立てた。
「うわっ、ビビった……、暁音か」
突然倒れてきた鏡に警戒していたイージー・ブロークンハートは、鏡の向こうから現れた暁音の姿に胸を撫で下ろした。
「重厚そうに見えて結構脆いんだな、これ。――って、わぁ……」
アンティーク風と呼べば聞こえは良いが、仰々しいフレームの姿見はいかにも何かありそうで。そんな予想を口にするよりも先に、鏡が猟兵達の姿に変ずる。
「でもな。自分とか他人なんて、そんなもんで全ッッッ然! 手は緩んだりはしないんだなーこれが!!」
仲間に擬態する事で攻撃を躊躇わせようなど、随分と見くびられたものだ。イージーは鏡達の愚策をからりと笑い飛ばし、
「大丈夫問題な……待って。これオレ味方斬る可能性結構ある――……!」
三秒後にはがくりと膝を折っていた。仲間に扮した敵を斬る事に躊躇は無いが、もし斬ったのが本当に仲間だったら立ち直れないかもしれない。
――心なしか既に恨みがましい視線に晒されているような気もするが、これは敵の呪いだろう。流石に仲間にそのような視線を向けられる事など無い、と思いたい。そんな時、悶々としながら見上げた自身の写し身がぱっくりと両断され、イージーの喉からはひゅうと変な音が漏れた。
「……イージーは何でこんな所で頽れているんだ?」
真っ二つに割れたイージーの偽物の背後から現れたのは、夜刀神・鏡介だ。見慣れた太刀筋は間違いなく本物だと確信し、イージーは安堵する。
「本物、で良いんだよな?」
「ああ。外見だけとはいえ、細部まで完全に再現されているとは思わなかった」
鏡に映った自分がそのまま抜け出てきたかのようだ。鏡介はにじり寄る闇を斬り伏せ、自身の偽物へと切っ先を向ける。
「まあ、気配を読めばすぐにわかるから然したる問題ではないな。命のない鏡像が、それを真似できるはずもないし――」
「ウエエまじか鏡介、そんなことできんの……」
鏡介は事も無げに言うが、果たしてオブリビオンの大群に囲まれた乱戦状態で気配を探り見極める事が出来る者がどれだけ居るというのか。とはいえ、剣豪に至る程に研鑽を積んだイージーに不可能とも思えない。――彼のこの自己評価の低さは何であろうか。露骨に頬を引きつらせている彼を、鏡介は不思議そうに見下ろした。
「で、いつまでそうしているつもりなんだ……?」
「あ、はい、オレも戦います」
膝を着くのも早ければ、立ち直るのもコンマ以下だった。跳ねるように立ち上がったイージーが素早く剣を抜き、小気味良い音が響く。
「……で、だ。零はどこに行った?」
鏡介の問いに暁音は目を伏せ、首を横に振った。
「だから、俺は零の所に行かないと」
「そう、だな。先程のアレで体力は少なからず消耗しているだろうし」
どちらかと言えば精神的な疲弊の方が不安かもしれない。自分達との合流より敵の殲滅を優先して行動しているだけかもしれないが、今の零にはある種の危うさを感じていた。
「一人にするのは危険だ。早く片付けて追いかけよう」
●
巨大な出刃包丁にも似た大剣が叩きつけられ、零を模した鏡が割れた。零の別人格である『夕夜』の実体も筋肉質とは言い難い華奢な腕をしていたが、扱う『Ø』は身の丈程もある。重量と遠心力を巧みに利用し、かと思えば重さなどまるで感じさせない動きで、敵を翻弄する。
「零……」
夕夜は背中合わせで戦う零へと声を掛けた。仲間の鏡像を相手に片手剣程の『Ø』を振るう動きは淀みなく、一見すると順調ではあった。だが、夕夜は問う。
「大丈夫か……?」
ぱん、と弾けるように銀髪の少年の首が飛んだ。その片目は青金石の色をしていて、ご丁寧に別人格の鏡像まで創り出す眷属に夕夜は顔を顰めた。
「――固まらずに手分けをしよう」
零の声は、酷く落ち着いていた。そこがまた釈然としないが、夕夜は疑念を飲み込んだ。本当は、わかっている。
「……零」
何が、と誤魔化す事もしなければ、大丈夫だ、と嘯く事もしなかった。それが答えだ。夕夜が『Punishment Blaster』で喚び出した骸が牙を剥き、零の愛し子を騙る鏡に喰らい付いた。
●
零に柔らかな笑顔を向けられ、暁音はむっと頬を膨らませた。大切な人の姿で、一番見たい表情をする――偽物。これ程までに嫌悪を催すものがあろうか。
「……まあ今更、そんなもので手が鈍る訳も無しだよね」
むしろ、沸き起こるのは一刻も早く倒そうという戦意ばかりだ。暁音はするりと滑るように懐へと潜り込む。直後、細く鋭く放たれた水が三日月のように弧を描き、写し身の首元を捉えた。
氷と水の刃と踊って貰おうか。偽物を斬り裂いた水は空中で凍てつき、氷柱となって次の獲物へと襲い掛かる。
「えー、暁音もちゃんと見分けついてるの……、あ、そうだ。元が鏡なら、」
イージーは手首を軸に、魔剣を旋回させるように振るった。その動きは大きな得物を用いる際の西洋剣術に近く、繊細な武器の取り回しには向いていない。当然の事ながら『硝子剣』が粉々に砕け散り、鏡の群れへと降りかかる。攻撃を受けた鏡達が、一斉に猟兵達の姿を模した。
「これで鏡本体に罅でも入れば――……」
イージーの前に立つ鏡介の顔に、一筋の傷があった。皮膚の薄い目元だというのに血が流れていないそれは、間違いなく鏡に刻んだ傷だ。
「……大当たりッ!」
刀身が未だ戻らぬ剣の柄頭で顎を殴りつけ、偽物を叩き伏せる。周囲の鏡像も硝子化が始まっており、これならば仲間と間違える心配は無い。胸を張るイージーを、鏡介は少し離れた所からちらりと見やる。
「……どうしても判断が難しい場合は、自分の鏡像を叩けば間違いないけどな」
「あ、それ言っちゃう?」
口先を尖らせたイージーの表情にくすりと笑い、鏡介は腰を落として踏み込んだ。正面には剣を構えたイージーの鏡像。『利剣【清祓】』の棟で刃を捉え、絡め捕るように回転を加える。
「光を反射しない刃、か」
鏡像が構える剣は所詮はまやかしだ。本命は――。忍び寄る影がぐねぐねと形を変え、足元で大きく膨れ上がったが、鏡介が眉一つ動かす事はなかった。
「見えなくとも、そこに在るなら斬れない道理はない」
円を描くように振るった刀が、鏡像と共に何かを斬った。鏡介を覆うように膨れていた闇が、表面張力を失った水滴のように弾け、溶けるように消えていく。
●
鏡が、猟兵を模した鏡像が、目に見えて数を減らし始めた。漸く周囲を観察する余裕が生まれ、イージーは一点を指差した。
「あそこ、ほら」
何も無い空間に、窓のようなものが浮かんでいる。窓の外には、先程まで自分達が居た踊り場と階段があった。
「もしかして、ここは鏡の中なのかな?」
いつの間にか引き込まれていたようだねと暁音が言えば、鏡介が肯定した。
「恐らくあの窓が出入口だろう」
「……なあ、暁音、鏡介」
この鏡の眷属達さえ倒してしまえば、退路の確保は出来そうだ。鏡介がそう所見を述べたが、イージーは歯切れの悪そうな様子で口を開いた。
「零、なんか思い詰めてるように見えるの、オレの気のせい?」
偽物の零を叩き割り、イージーは奥歯を噛む。四散する鏡の破片が革鎧に覆われていない頬を掠め、赤い血が伝っていた。
「オレは、さ。この先に待つ元凶と対峙して勝ったあとに、零が気楽に笑えるような結末を迎えてほしくてついてきたの。その為だったら、いまは誰かがいるとか、頼るとかわかってもらえんなら、――ああ、もう!」
「大丈夫だ。イージーの言いたい事は、俺もわかる」
イージーを挟み撃ちにしようとした鏡像の前に鏡介は割り込み、刀で敵の攻撃を跳ね上げた。そうだ、零も、自分も、一人ではない。
「多少の無理無茶無謀に負傷、死にかけだって承知の上! だからさ――ええとまず暁音!」
突然名を呼ばれ、暁音はきょとんとした表情でイージーを見た。振り返りざまに蹴り抜いた鏡像が白く曇っているのは、冷気によるものか。少なくとも氷を扱う事で暁音の周囲は気温が下がっているはずだが、金糸のような前髪の合間には汗が浮かんでいた。イージーは叫ぶ。
「敵味方の見分けに、無茶しすぎなくても、いいかんな!」
瞠目した暁音は、すぐに困ったような笑顔に変わった。
「ばれてたんだね。……でも」
聖痕。他者に寄り添う『共苦の痛み』。暁音はそれぞれが抱える苦痛を分かち合い、その痛みの種別で仲間を判別していた。
「イージーさんだって無茶してるでしょ」
暁音の指先に生まれた水球がふわりと舞い、イージーの頬を慰撫するように血を洗い流す。ひやりとした感触とともに痛みが失せ、イージーが確認するように頬に触れると、もう傷は跡形もなく消えていた。
「大丈夫。俺にとってはこの程度、無理にも無茶にも入らないよ」
「それでも暁音が苦しんでいたら、零が悲しむ。イージーの言う通りだ、暁音。それに」
敵の一体を斬り伏せ、鏡介は珍しくからかうような笑みを見せた。
「無理をしなくても簡単に見極める方法が一つある。膝から崩れ落ちたら、それが本物のイージーだ」
「そうかもしれねえけど! オレ、それで見分けられるのなんか嫌!」
イージーが八つ当たり気味に蹴り倒した鏡の向こうで、銀色の髪が揺れた。その姿を認め、イージーは声を張り上げる。
「夕夜! 零は……一緒じゃないのか?」
「……手分けする、って別れたぜ。やっぱりお前達とも合流してなかったか……」
夕夜がくしゃりと前髪を掻き上げ、小さく息を吐く。抱く懸念が現実になりそうで、鏡介はかぶりを振った。
「……先程の兄との対峙もそうだったが、これは零本人が乗り越えなければいけない事象なんだろう」
そうは言っても、暁音はきっと気が気でないだろう。不安にさせまいと、鏡介は軽口を装って言った。
「とはいえ、だ。何を考えてるかは分からないが、独断専行は良くないな?」
「……うん。今すぐ零のとこに行こう!」
敵を押し流すように膨大な量の水を放つ暁音の背を眺め、鏡介は独り言ちた。
「……でないと、俺達が此処にいる意味がないってものだ」
●
憎々しげな視線が、零を捉えた。呪わしい声が、耳朶を打つ。
――それがどうしたの、と。何処吹く風とばかりに、零がそれらを顧みる事はない。
「違う。夜刀神さんの構えはもっと綺麗だよ」
鏡像に間合いに入られる前に、『虚鏡霊術』で創り出した鏡の破片を放つ。
「イー兄がそんな冷めた目をするわけないってば」
本当に騙す気があるのかと首を傾げ、零は怨霊をけしかけた。
「どんなに見た目を取り繕ったところで、僕が暁音を間違えるわけがない」
零の前方の虚空に歪が生じ、鏡が顕現する。『正直者の鏡』が撒き散らす呪詛が鏡面で跳ね返り、勢いを増して鏡像達を喰い散らかす。
「――僕は怨んだ。傷つけた人を許せなかったし、それで幸せな人を認められなかった。だから」
殺した。鏡像の砕ける音が、零の声を掻き消した。
「僕と似た境遇の人は居て、痛みも苦しみも辛いもの全部無くしたくて、でも無くならなくて――」
みんな、いなくなればいい。そうしたら友達になれるし、悲しむ人もいなくなるよね。
思った。思ってしまった。故に零は我が身すらも疎み、自身を傷付けた。
「……だから『アレ』は生まれた」
零は正面を向いていながら、その瞳に眷属を映していなかった。見つめるは、その先の。
(「……だから、止めよう。その為に、自分の気持ちを捨てるんじゃなくて……受け入れるんだ」)
零の表情には、悲壮な決意がありありと浮かんでいた。
「――あれは僕だからね」
カシャン、と澄んだ音を立てて、眷属の最後の一枚が割れた。飛び散る際にきらきらと幻想的な輝きを見せ、ぱらぱらと雨粒のように落ちていく。
――そんなきらめきは転瞬の間に消え失せ、背筋に冷や水を浴びせ掛けられたかのような怖気が空間内の猟兵達を襲った。『怨嗟』が、訪れる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『骸魂『虚鏡ノ怨嗟』』
|
POW : 虚鏡ノ夢『無ノ夢』
【敵UCを無効化し戦場に能力を0にする攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 虚鏡ノ夢『零ノ夢』
【敵UCを無効化し、相手の技能を0にする鏡】の霊を召喚する。これは【存在する限り戦場全体に効果を及ぼすこと】や【半径レベルmまでの相手を索敵することで】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 無限怨嗟
攻撃が命中した対象に【12分で体力が0になり戦闘不能になる状態】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【他人にも付与すること(1分範囲外で解除)】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:友憂希
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「天星・零」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ふと気付けば、砕けた鏡の破片の中に、一輪の薊の花が咲いていた。
『……殺ス』
猟兵達が花の存在を認識した次の瞬間、花は一人の少年へと姿を変ずる。
彼は悍ましい程の殺気を纏い、呪わしげな視線を猟兵達へと向けた。
骸魂『虚鏡ノ怨嗟』は、『誰かを傷つける者を殺す』事に固執するオブリビオンである。その予知は間違いではない。
だが、宿縁を持つ猟兵曰く。
その『誰か』は、『自身も例外ではない』。
他者を傷付けないように配慮した結果、自身を犠牲にする事は往々にしてある事で。
つまるところ、誰もが誰かを傷付けて生きている。
誰も彼もが骸魂『虚鏡ノ怨嗟』の標的と成り得るのだ。
薊の花言葉は『報復』、それから――、
――『私に触れないで』。
青梅・仁
【波咲神社】
誰かを傷つける者を殺す、か。過激だが分からんでもない。
傷つけられた者の恨みはただやり返す程度じゃ済まないこともある。
長く苦しめて殺さなければ満たされやしないことだってある。
……いや、それでも足りているかどうかわからんな?
敵の呪いの種類は俺より多いかもしれん。
だが、それで退くほど俺の、俺達の怨嗟も弱くはない。
――行けよお前達、久しぶりに感情のままに暴れても構わない。
『呪詛耐性』と『オーラ防御』の組み合わせで俺とニイヅキが少しでも呪いに掛かる確率を減らす。
普段はヤツらも抑えてくれてるからな、暴れる時間は長い方が良いだろう。
無論、俺も防御に徹する気はない。相手の死角から一太刀浴びせよう。
尾花・ニイヅキ
【波咲神社】
……僕も、誰かを傷つけたことがある。
けれど、傷つけたものを傷つけ返したら、またそれが繰り返されるんじゃないだろうか。
仁に施された防御に加えて、自身でも『オーラ防御』で防御を高める。
UCを展開し、武器全てに氷の魔術を付与。
万一僕か仁が攻撃を受けて呪いを付与されることも想定して、仁とは極力離れて戦う。
相手の動きを一瞬でも凍らせるつもりで、攻撃を放ち続ける。
ずっと遠距離から戦っていると攻撃も見切られかねない。
ヒットアンドアウェイ戦法も織り交ぜて、至近距離での攻撃も喰らわせよう。
誰かを傷つけずに生きるのは難しい。
せめて、その傷を少しでも癒せるようになりたいと思うのは傲慢だろうか。
怨毒を可視化したようだ。青梅・仁は骸魂『虚鏡ノ怨嗟』をそう評し、昔馴染みにでも会ったかのように目を細めた。
「なんだ、仁と似たようなものか」
尾花・ニイヅキの何処か棘のある言い方に、仁は眉根を寄せる。
「全然違う。こちとら游幸神幸に縁なく坐す神になって八百余年――」
「こっちの世界の形而上的な話をされても困る」
怨嗟が在った。故に生じた。その程度の認識だ。よよよと羽織の袖で顔を覆ってみせる仁に目を呉れる事なく、ニイヅキは氷の魔力障壁を展開した。
熱湯に氷を落とした時に似た音がしたのは、果たしてどちらが割れた音だろう。骸魂が白く曇った鏡の破片を浴び、ニイヅキは瘴気を孕んだ氷の礫を浴びた。相殺。事情を知らぬ者が見たら互角に見えたであろう一幕に、ニイヅキは歯噛みした。気付かぬうちに守られていた。身に纏う魔力に神気が混じり、どうにもこそばゆい。
「誰かを傷つける者を殺す、か。過激だが分からんでもない」
きっとこういう所だろうと仁は思う。同調するなと怒られるだろうか。やはり似たようなものだと呆れられるだろうか。『その程度』の認識は、程よい距離感とも言えた。飛来する怨霊を振り払い、仁は骸魂を見た。
「傷つけられた者の恨みはただやり返す程度じゃ済まないこともある。長く苦しめて殺さなければ満たされやしないことだってある。……いや」
――それでも足らんなあ。どれだけの怨嗟を凝らせれば、と言いかけて、仁はかぶりを振った。察するに余りある。そして、詮無い事だ。
「だが、それで退くほど、俺の。俺達の怨嗟も弱くはない」
惆悵と独り生きる絶望。純然たる怨嗟。それに対抗しうる仁の怨嗟は、ただただ数が多かった。品の無い笑い声を上げる幽霊達が、冷たい波と共に寄せる。ざぶり。
『嘲笑ハ、もウ沢山ダ――』
「騒がしくて悪いな。でもな、こいつら……案外気のいい奴らなんだぜ?」
下卑てはいるが、嘲笑ってはいない。そういう奴らだ。まだ幼さの残る少年霊を先頭に、数百の怨霊が虚鏡ノ怨嗟に襲い掛かる。
「――行けよ、お前達」
昇華させたようでいて、彼らの怨恨は未だ水底に燻り続けている。鬱憤を晴らす手助けはしてやれども、棄てられた彼らの恨みは晴らせない。仁はあくまでも『護る龍』なのだ。
「神格も万能じゃないんだな」
「そう言ってくれるな。……嬢ちゃんは何で俺に手厳しいんだろうな」
虚鏡ノ怨嗟から迸る怨霊と、『怨嗟の海』より来たる怨霊がぶつかり合う。まるで合戦のようだ。
『殺ス』
ひと際強力な怨嗟の塊が放たれ、仁が誘う波が押し負けた――ように見えた。引いていく亡霊の波の中から、ニイヅキが飛び出す。氷の魔力のヴェールを翻し、鏡の破片を払い除ける。
「……僕も、誰かを傷つけたことがある」
告解のように神妙に。けれど続けられた言葉は懺悔ではなく提言だった。
「けれど、傷つけたものを傷つけ返したら、またそれが繰り返されるんじゃないだろうか」
ここで不毛な連鎖を断ち切るとばかりに、ニイヅキは穂先に氷を纏わせた。一気に距離を詰めた彼女の槍を、骸魂は幾枚も重ねた鏡で受ける。槍は数枚を貫いた所で止まったが、ニイヅキの足は止まらない。
「残念。僕の膝は魔力の通りが良いんだ」
床を蹴り、氷で覆われた左膝を鳩尾へと叩き込む。骸魂は身体をくの字に折って後方へ吹き飛ばされるが、すぐに空中でふわりと立て直した。
「……誰かを傷つけずに生きるのは難しい。でも」
今の攻撃も決定打に至っていない。そう知っていながら、ニイヅキは槍ではなく掌を差し出した。
「せめて、その傷を少しでも癒せるようになりたいと思うのは傲慢だろうか」
虚鏡ノ怨嗟は応えない。だが、ほんの僅かに。ほんの少しだけ目を開いて、ニイヅキを視界に捉えた。その微かに生じた隙を突いて、仁の太刀が骸魂に一文字の傷を刻む。だらりと零れた瘴気が、隔絶した存在である事を知らしめた。
「――嬢ちゃん、潮時だ」
微々たるものとはいえ、防ぎきれなかった呪詛が二人を蝕もうと鎌首を擡げていた。時間だと言えばニイヅキもそれ以上踏み込む事は無い。
虚鏡ノ怨嗟もまた、領域外へと出る彼らを追撃しようとはしなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
天星・零
【暁鏡】
enigmaで夕夜も
夕夜
猟兵側
台詞、行動お任せ
2章までの武器使用
零
台詞はカナが混じった感じ
自身の怨みの具現体の怨嗟を受け入れ指定UCを用いて猟兵と戦い負の念を放出し怨嗟を止める
(戦闘中は怨嗟の側面が強く猟兵と本気で怨霊として敵対)
『兄さんはいつも満点で僕は1点差でも殴られた。満点でも当たり前だって言われてそんなことで報告してくるなって蹴られた。何がいなかったのかな?悪い子だったからできない子だったから?あは…あははは…あはははは!!』
合体状態で合流しても可
戦闘開始に合わせて異形化
異形化の細部お任せ
基本行動は怨嗟に殉ずる
指定UC使用の為、死霊共鳴の対象オブリビオンの技を使ったり、十の死や鏡、呪詛を用いての冷徹にホラーよりの攻撃
霊体故の空中浮遊
【情報収集】や【瞬間思考力】で戦況を把握して、第六感も用い戦う
負傷時、悲鳴のような声
【継線能力】により、どんなに傷ついても立ち上がる
暁音に『触れて』共苦を分かち合う
皆にお礼と夜刀神さんを鏡兄呼びに
怨みと向き合いながらそれでも前へ
流れお任せ
イージー・ブロークンハート
【暁鏡】
あー……なーるほど。
零は、向き合って、受け入れて、そうしてちゃんと付き合ってくことを選んで、その為にオレたちに余計なモンを任せてくれるっていう、そういうことだ?
おっしゃ、わかった。
ほんじゃあ思いっきり喜んでとこッとん付き合って差し上げますとも!
切り込み隊長もーらいっ!鏡介、暁音、あとは頼んだ。
使うUCは“人斬り”――ばけのものじゃない、人だって言外に込める符牒!
無効化?いいのいいの!攻撃喰らうのが目的!
我が剣は儚き硝子、打ち砕かれて粉々バラバラ、そうして自他含む【範囲攻撃】【貫通攻撃】――傷つけながら元通り!
自分の負傷は【覚悟】済み!
【限界突破】した【激痛態勢】、【継戦能力】修羅場じゃいつものこと。いやちょっと割としんどいんだけど、今はそれより零が優先!
みんな誰だって、多かれ少なかれ傷つける。許されない傷も許される傷も種別構わず、傷ついて傷つけられる。だからさ――いいんだ、零。
抱えた憎悪なんてぜんぶぜーんぶ、ぶちまけちまえ!
(アドリブ他歓迎です)
夜刀神・鏡介
【暁鏡】
おいおい、これはどういう状況だ……いや、わかったよ。これも必要な事なのか
……にしても、零にとってイージーは兄貴分で、暁音は弟。それに夕夜
こうなると兄弟の物語って感じだが、もしかして俺はお邪魔だったりしないか?
なんて、冗談だ。どうあれ俺もここにいる。なら、全力でやれる事をやるまでだ
利剣は納刀して神刀に持ち替え。神気を纏って真の姿を解放
因果や宿業、未練を断つには至らぬ我が身だが。この一時はその境地へ手を伸ばそう
暁音の力はできるだけ零だけに集中させてやりたいし、そもそも負担も考えれば余計な傷は負わない方が良い
そのため、序盤はイージーの突貫を支援しつつ、隙を見つけて攻撃をする
近距離は直接、遠距離は斬撃を飛ばして、呪詛も霊体も切り払う
最後に一度神刀を収めて精神統一。居合いの構えから終の型【無仭】
だが、この違和感は……暁音か
複雑な感情と、それでも感謝も抱きつつ、最大限まで力を引き出した一刀を
とはいえ、あまりに強く結びついていれば斬れたとしても一時的なもの
どれだけの効果があるかは、零次第だ
天星・暁音
【暁鏡】
零
先に行っておくけど…俺は、結構酷い人間なんだ
誰の想いよりも自分の想いを優先させるから
だから、謝らないよ
共苦開放
零の痛みを悲しみを苦しみを憎悪を怨嗟を俺にください
零が嫌がっても貰うよ
その想いを俺がずっとずっと覚えてるから…
零は嫌がるだろうけど、ちゃんと覚えていたいから俺が引き受ける
零に届けてあげてイージーさんの鏡介さんの気持ち
2人のその代償は俺が引きうなけきゃね
途中、負傷や代償の引き受けに気づいた零に手を掴むなりで止められますが
「零、心配してくれてありがとう大丈夫だよこれは俺の我儘だから」
ふわりと笑って受け入れます
指定UCで零の負を奪い取り、自身に記憶し、戦闘後に零の怪我を奪います
共苦の開放で普段感じている他者の痛みが可視化し傷ついて血を流しては、他人の傷なので治るという状態を繰り返し
指定UCで奪った怪我はUC程の力はないですが簡単な治癒術で回復し誤魔化し笑いなが仲間の怪我をコードの代償の寿命や負傷も内緒で奪い取って自分に移し仲間を回復します
アドリブ歓迎
スキルUCアイテムご自由に
●
最初はただ悲しかったのだと思う。
天星・零は骸魂『虚鏡ノ怨嗟』を前に、自身を顧みる。その頃は自分に非があると言うのなら改善しようという前向きな気持ちすらあったはずだというのに、痛めつけられているうちに、歓心を得る努力をするどころか関心を引かぬよう息を潜めるようになっていた。
やがて嘆声を上げる事すら出来ず、積もり積もった澱に耐え兼ねた心は怨みを凝らせ、形にしてしまった。これは、僕の。零は骸魂へとそっと手を伸ばす。
「受け入れるよ。だって、これも」
『僕』。
一切躊躇う事なく、触れた。
「……おいおい、これはどういう状況だ」
猟兵達の現状の目的は二つ。零と合流する事。オブリビオンを撃破する事。
現在、夜刀神・鏡介の前で揺蕩う少年はまごうことなく零の顔をしていて、だが明らかにこの空間を支配する骸魂と同質であった。撒き散らす憎悪はひたすらに禍々しく、邪神の類としか思えない。先程の鏡のように、仲間の姿を模しているだけならば良かったのに――、嗚呼、でも。異形と化していてもわかる。これは、零だ。
「零。……|過去《オブリビオン》を、受け入れたのか」
全てを察したのは、『夕夜』。零の一部であり、理解者。零の別人格として生じたその時から、零の中で、或いは傍らで零に降りかかる理不尽の数々を目にしてきた。
「早くあれを零から引き剥がさないと……ッ」
オブリビオン化は見るからに零自身に負担を強いている。解除させなければと訴える鏡介に、夕夜は首を横に振った。
「……いや。『あれ』も零から生じた存在。零は今、嘗て目を逸らした感情に向き合ってるんだと思う」
単純に猟兵として骸魂を斃す道もあっただろうが、過去を否定するだけでは零は前を向く事が出来ない――、取り込んだ負の感情を消化し、嘗ての不条理を昇華するまで、過去と対峙するつもりなのだろう。
「零と戦え……って事?」
天星・暁音の問いを、夕夜は『Ø』を構える事で肯定した。行き場の無い怨みをぶつける先が必要だ。
「あー……なーるほど」
過去と戦う弟分を、指をくわえて見ているわけにはいかない、と。イージー・ブロークンハートもまた、自身の武器に手を掛けた。
「零は、向き合って、受け入れて、そうしてちゃんと付き合ってくことを選んで、その為にオレたちに余計なモンを任せてくれる……っていう。そういうことだ?」
自分達を信じてくれているからこその選択だと。イージーの言葉は理解出来るが、この刃を仲間へ向ける事など――、僅かに逡巡した後、鏡介は拳をきつく握り込む。
「……いや、わかったよ。これも必要な事なのか」
「おっしゃ。ほんじゃあ思いっきり喜んでとこッとん付き合って差し上げますとも!」
零が過去を受け入れるというのなら、自分達は零を受け止めるまでだ。四人は真っ直ぐに零へと向き直る。
「零。先に行っておくけど……俺は、結構酷い人間なんだ」
憎悪の篭った視線を向ける零に、暁音が告げる。
(「誰の想いよりも――自分の想いを優先させるから」)
こればかりは譲れない。暁音は自身に刻まれた聖痕の頸木を外す。
「だから、謝らないよ」
●
痛い。日生・零は血の味がする唾液を飲み込み、歯を食いしばる。二発目に備えたものの、降ってきたのは拳ではなく深い深い溜息だった。頬は痛くなかったけれど、息を吐き出す音が心をざわつかせる。殴られるよりも胸を抉る行為があるのだと、この時に知った。
「一陽は満点だったのに」
手元のくしゃくしゃになった答案に視線を落とした。一点足りなかった。
「切り込み隊長もーらいっ!」
底抜けに明るく笑い、イージーが飛び出した。突出した彼は亡者達の格好の的だ。零の足下から吹き出した怨霊達が、恨み言を叫びながら隙間だらけの歯列を覗かせた。
(「鏡介、暁音、あとは頼んだ」)
底の見えぬ井戸のような眼窩から感じる視線に総毛立つが、泣き言を口にする気は更々ない。だって、これは――ばけのものじゃない。怨讐に囚われた哀れな御霊と、それらの依り代となってしまった弟分。
心ここに有らずといった様子で、骸魂が、零が口を開いた。
『モウ、間違エなイから』
殴らないで。悲鳴を上げる怨霊に喰らい付かれ、イージーはごそりと力が抜けていくのを感じた。虚脱感。空気すら纏わりつくようで、走り難い。それでもイージーは踏み込んだ。
「……いいんだよ! 人、はっ! 間違えんだよ!」
オレだって、間違えたから女の子にあしらわれたんだぜ。おどけて言ってみれば、少しばかり虚しくなった。すっかり慣れ親しんだはずの魔剣が重く感じられ、たたらを踏むようなステップで振り下ろす。
ツィ――……ィイン。
儚い硝子の剣が奏でる澄んだ音色が、音叉のように後を引く。砕けた硝子片が、イージーと零に降り注ぐ。雨と呼ぶには凄惨な、玻璃の流星群。
怨霊が共振するように悲鳴を上げて、海嘯のように押し寄せる。
「イージー。突貫は援護するが、捨て身は程々にしてくれないか」
あまり酷いと捨て置くからなと冗談交じりに呟いた鏡介は、『利剣【清祓】』を納め、純白の柄巻が美しい刀に手を伸ばした。
何故? 日生・零は状況が飲み込めず、両親が着いたテーブルの横に立ちすくむ。数秒前に期待を込めて差し出したはずの答案用紙が、床の上でかさりと鳴った。
「そんな当たり前のことで」
いちいち報告してくるな。瞥見しただけで払い除けられてしまった満点の答案を拾おうと屈めば、肩を足裏で押されて尻餅をついた。兄さんと何が違うのだろう。
霊符の貼られた鞘から解き放たれ、刀から神気が迸る。黄金色の炎が、鏡介の瞳で静かに燃え盛る。鏡介のそれは、託宣や口寄せを行う神霊の媒介者などという域を超えていた。見る者が法悦を得るか、畏怖を抱くか。そういったものの顕現とも呼べる霊気に満ちていた。
(「因果や宿業、未練を断つには至らぬ我が身だが。この一時はその境地へ手を伸ばそう」)
スラリと『神刀【無仭】』を抜いた。刀の軌道に沿って、線を描くように怨霊の群れが割れた。
『ゴメんナサイ。そンなコトデ、モう煩ワセナイカラ』
蹴らないで。割れた怨霊の壁の向こう、零を守るように並ぶ鏡面から呪詛が放たれ、鏡介に絡みつく。
「良いんだ、零。多少の面倒がなんだ、そんな……寂しい事、言うな」
呪詛に四肢を搦め捕られたまま振るったにも関わらず、鏡介の剣術には些かの瑕瑾も無い。実体の無い、怨霊が、呪詛が。斬られ、千切れ、虚空に溶ける。
「それとも、俺では頼りにならないか?」
玻璃のように透き通った鏡介の髪が、さらりと揺れた。ぐずぐずと崩れていく霊体が鏡介の足下にしがみ付く様は、まるで蜘蛛の糸に救いを求める亡者のようだった。
「鏡介の事、オレはいつでも頼りにしてるぜ!」
「イージーは少し遠慮してくれると嬉しい」
「ひどい!」
戦場に場違いな笑い声が零れる。釣られて暁音もころころと笑った。
「俺も頼りにしてるよ。零に届けてあげて。イージーさんの、鏡介さんの気持ち」
二人の大きな背中が頼もしい。自分にはまだ零を背負えるような広い背中は無いけれど――、暁音の聖痕が、じわりと熱を持った。
(「二人のその代償は、俺が引き受けなきゃね」)
お願い。日生・零は喉まで出掛かった言葉を飲み下す。幾度となく願った事はあれど、何一つ手に入ったためしがない。だというのに願ってしまうのは、強欲なのだろうか。浅ましさに嫌気が差す。
でも、今日くらいは。視線の先の両親は機嫌が良さそうで、手には小さな包みを持っていた。けれどそれが自身の手に渡る事などないと、とうに知っている。
「一陽、お誕生日おめでとう」
高価な物も、美味しい物も要らない。僕が、僕が欲しいのは――。
怨霊が上げた怨嗟の声は、鼓膜以上に聖痕を震わせた。暁音の小さな身体に襲い来るのは、身を裂くようなという比喩が生易しい程の、苦痛。数も多ければ傷も深い、そんな霊体は手心などというものに縁が無い。間断なく湧き続ける怨嗟が、暁音の心身を蝕んでいく。
霞む視界の中で目を凝らせば、零を庇うように強力な怨霊が立ち上がるのが見えた。ジャグリングをする道化が一本のクラブを放れば、イージーと鏡介の足下で炸裂する。夕夜が二人を庇おうと前に出るが、このままでは――、暁音は星杖を前に向けた。
「その痛みを――」
俺にください。全て言い終わらぬうちに、暁音はぐぶりと血を吐き出した。骨が軋むように痛むが、二本の足でしっかと立ち、顔を上げる。視線の先で、体勢を立て直した二人が道化を斬り捨てた。零が霧散する道化に、縋るように手を伸ばす。
(「零、何が見えているの」)
暁音の心の声が届いたかのように、零は応えるように口を開いた。
『母さン、父サン。僕ノ事も見テ……!』
「見てるよ、俺が。これからも、ずぅっと」
暁音の声に、夕夜が目を細めた。
嫌だ。こんな家族が、こんな世界が、こんな――僕が。
親に庇護されない自身の扱いは、家の外に出ても散々で。
「何がいけなかったのかな? 悪い子だったから、できない子だったから?」
誰も答えてくれなくて、自問自答するしかなくて。次第に怨言が混じるようになっても、指摘する者は誰もいない。
『あは、アははハ……アハハハハ!!』
哄笑する零に刃を叩きつけ、夕夜は小さく笑んだ。
「ほら。見ろよ、聞けよ、零。お前の欲しかった……居場所、あるだろ?」
●
硝子が。神気が。刃が。零をずたずたに斬り裂いて、霊体の輪郭をくゆらせた。
――にゃあ。
黒猫の姿をした怨霊が零の頬を伝う血をぺろりと舐め上げる。崩れかけた零の姿が、修復されていく。
「第二ラウンドをご所望か。……たまにはそういう我儘、良いと思うぜ。お前、甘えるの下手だもんな」
とはいえ長引くのは得策ではない。ならば回復手は先に潰すべきだろうと、夕夜は鉄塊の如き刃を直立する黒猫へと振り下ろす。十分に速度の乗った刃物が、黒猫を叩き潰す。
大振りの一撃を繰り出し無防備になった夕夜の背に、怨霊が殺到した。
「あー……割としんどいな?」
割って入ったのはイージーだ。『硝子剣』を水平に構えて防御の姿勢を取るが、彼の魔剣は防戦に向いていない。だが、彼は口の端を上げた。敵の攻撃の速度さえ削げれば、それで良い。何故ならば、彼が居る。
「鏡介」
「ああ」
一閃。神刀に両断された怨霊が掻き消える。人の身に過ぎた神気が業病のように冒していくのを、暁音が食い止める。鏡介は気遣わしげな視線を後背に向けたが、暁音は笑って答えた。
「まだ……っ、大丈夫」
『星具シュテルシア』に凭れかかり、呼吸を整える。
身を挺して庇い合い、助け合う猟兵達を見つめる零の、憎悪に満ちた視線が微かに揺らいだ。怨嗟を紡ぐ唇が、あかね、と呼んだ気がした。
僕に触れないで。もう傷付きたくないから。
僕に触れないで。みんなを傷付けたくないから。
僕は、本当は――。
零の眼窩から、止め処なく赤い涙が溢れ出る。唇を戦慄かせ、絞り出すように言葉を紡ぐ。
『僕ハ』
夕夜を、イージーを、鏡介を、暁音を。過去の虚像ではなく、確かに四人の姿を視界に捉えた。
『僕は『虚鏡ノ怨嗟』日生・零……。僕ノ|過去《怨み》ヲ、終わらセテくレまスカ?』
●
温かい。求めていた温もりを感じ、日生・零は右手に視線を落とす。血の気が失せた手を、小さな手が握り締めていて――、
『暁、音』
柔らかな金の髪は湿り気を帯び、白い額に張り付いている。名前を呼ばれた事が余程嬉しかったのか、暁音は頬を緩ませて繋いだ手に力を込めた。
(「零の痛みを、悲しみを、苦しみを、憎悪を、怨嗟を――俺にください」)
虚鏡ノ怨嗟を苛んでいた、苦痛が和らいでいく。傷が癒えていく。零はその力をよく知っていて、代わりに暁音が責め苦を受けていると察した。
『僕ノ怨嗟モ憎悪モ未練モ僕ノモノダ……!』
僕に触れないで。やはり傷付けてしまった――。零の嗟嘆する声が響き、猟兵達を拒絶するように可視化された怨嗟が吹き荒れた。怨霊が暴威を振るう中、暁音は離すまいと零の腕に抱き着いた。
「零が、嫌がっても貰うよ。その想いを、俺がずっとずっと! 覚えてるから……ッ!」
「暁音! 絶ッ対! その手ェ離すなよ!!」
硝子の割れる音。砕ける音。津波のように押し寄せる怨嗟の只中を強引に突破して、イージーは柄を振り上げた。粉微塵になっていた硝子が収束し、白く輝く剣身を成す。
「みんな誰だって、多かれ少なかれ傷つける! 許されない傷も許される傷も種別構わず、傷ついて傷つけられる! だからさ――」
くしゃりと相好を崩して、イージーは剣を振り下ろす。お人好しの見本市のような男の、剣豪に至る程に鍛え抜かれた殺人剣術。人好きのする笑みを浮かべたまま、人斬りの切っ先は寸分違わず零の胸へ。
「いいんだ、零。抱えた憎悪なんて、ぜんぶぜーんぶ。……ぶちまけちまえ!」
『……イー兄』
全く、手のかかる弟だ。そんなイージーの呟きを拾って、鏡介は動きを止めた零へと視線を向けた。
「零にとってイージーは兄貴分で、暁音は弟。それに夕夜……」
随分と盛大な兄弟喧嘩だと笑い、ふと首を傾げる。
「俺は――零の、何だろうな?」
仲間、同僚、友人、何処にカテゴライズされても間違いでは無くて。そんな絶妙な関係性を打ち壊すように、鏡介は零の過去に干渉している。
「なんて、冗談だ。どうあれ俺もここにいる。なら、全力でやれる事をやるまでだ――」
神気の滾る双眸を伏せ、呼吸を一つ。怨嗟の声が遠のき、鼓動が聞こえる。今。
「――終の型【無仭】」
鏡介は一瞬で距離を詰め、玲瓏たる刀身を抜き放った。閃耀が奔り、零の首に一筋の線を描く。
『……鏡兄』
零の口から零れた声に、鏡介が瞠目した。零の傷口からはどろどろと濁った思念が血の代わりに噴き出して、周囲の鏡面を黒く塗り潰している。
『……暁音』
弱々しく手首を掴んで制止しようとする零に、暁音はかぶりを振って柔らかく笑んだ。
「零、心配してくれてありがとう。……大丈夫だよ、これは俺の我儘だから」
零はもう拒絶する事なく、今度こそ暁音の手を握り返した。共苦を、分かち合う為に。
●
怨霊達が、静かに眠りにつく。新たな怨嗟が這い出る事もなく、復讐の炎が消えていく。零と暁音が、同時に頽れた。
「おっと!」
イージーと鏡介が二人を抱き留め、夕夜がそれを覗き込む。
「……眠ってるな」
「暁音も限界だったか」
いつの間にか五人は旧校舎へと戻ってきていて、窓の外を見ればとっぷりと暮れていた。
「……」
「ん? 何だ、零」
「……寝言か?」
三人は顔を見合わせ、笑った。
――『ありがとう』。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2022年07月30日
宿敵
『日生・一陽』
『骸魂『虚鏡ノ怨嗟』』
を撃破!
|