5
厨二病棟24時

#UDCアース

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース


0




●七十五日間の呪い
 ねえ知ってる? 厨二病棟の話、ここに行けば何でも願いが叶うって。
 それは違うよ! 厨二病棟の話、本当の自分を教えてくれるんだって。
 何を愚かな事を、厨二病棟の話、それは世界の真実を詳らかにする……。

「まあ、等と言う、狂気的証言がですね……」
 虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)は嘆いていた。何故俺には故郷の大戦の予知が来ない、と。
「……で、まあ思春期によくある、ちょっと背伸びしちゃったり欲求増大になったり妄想過多になる感じの、この世界で言う中二病という俗称のね、病気を餌にした邪神が」
 相手は邪神だぞやる気出せ、マグロの時より酷い、中二病は病気じゃない生き様だ! と飛び交う野次を受け更にしょげる志郎。仕方が無いのだ。君はココ担当なのだ。
「って言うかね、思春期の少年少女ってのは何処から何処まで真実か分からんのよ! 俺が視たヴィジョンはあくまで、“厨二病棟の噂”“何かを得る少年少女”“その裏には相当悍ましい邪神”、この3つ。この情報から厨二病棟について捜査し、少年少女を可能な限り救い出し、邪神を制して貰いたい! 詳しい話だぁ? いいだろうよく聞いとけよ!」
 とうとう吹っ切れたのか、気の篭った口調で志郎は説明を再開した。

●射した影を追え
「この噂の主な出所は、その名の通り中学生。14歳前後の少年少女からだ」
 発生源は首都近郊のベッドタウン、そこからSNSで更に広まっているという。
「まずはこのベッドタウンで噂の発生源と厨二病棟の場所を調べて欲しい。根源を叩けば被害の拡散を防げるかもしれないしな」
 呪いの基を絶てばそれが広まらないとは限らないが、闇雲に探すよりは一番噂が広まっているであろう彼の地を調べるのは、確かに妥当と言える。

「少年少女から話を聞くのは、学校でも塾でもファストフード店でも、思いついた場所でいい。手あたり次第当たってくれ。職員がサポートするから、多少の無茶は通る筈だ」
 正攻法に正面から聞いてもいいし、仲良くなって懐を探るのでも、ひっそり追いかけたっていい。
「あと、既に何か貰っちまってる奴がいるかも。そしたら遠慮無くそれを取り上げてやってくれ。ブツだったらいいんだが……細かい事は職員がまあ、何とかする筈だ」
 物理的な何かを手にしているのであれば、それを取り上げるだけで災禍は防げるかもしれない。しかし呪い的な、形を持たない類のものだとしたら……想像するに恐ろしい事態が、既に進行しているのかもしれない。

「大事なのは厨二病棟の場所を探る事だ。子供に信じて貰って話を聞くにゃあ、同じ年頃の方がいいかもな。大人だったら、信じられるに値する何かが必要かな」
 目的を違えてはいけないと志郎が釘を刺す。呪いの物品確保はついでで、目的は“厨二病棟の捜索”なのだと。
「目標は厨二病棟の捜索、可能であれば既に撒かれた分の何かの回収。そして相手は相当厄介な奴って事しか分からない……面倒な依頼だが皆、よろしく頼む!」
 説明を終えると語気も強く、志郎は皆に頼み込んだ。


ブラツ
 日頃お世話になっております。ブラツです。
 今回は捜査→集団戦→ボス戦の三段階になります。
 また、今回のボス戦は探索時に対象から何かを取り上げられると、
 ボス戦の判定が有利になります。

 基本、最初に頂いたプレイングの失効日に合わせてリプレイを用意致しますが、
 背後都合により早目にリプレイを返す場合もあります。

 シーンの都合上、他の方と纏めて描写をさせて貰う場合が多く、
 単独リプレイを望まれる方は、お手数ですが文頭に、
 ×
 とご記入ください。

 それでは、よろしくお願いいたします。
174




第1章 冒険 『子どもたちの秘密』

POW   :    力強い言葉で子供たちを説得

SPD   :    子どもたちの尾行や周辺の調査

WIZ   :    子どもたちと仲良くなって情報収集

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

河南・光
厨二病棟ねぇ。
やっぱり厨二病的な?
もし何事も無く平和に過ごせてたら、私もそんなのに罹ってたのかしら。
なんてね。

さて、とにもかくにも情報収集ね。
幸い年齢的にも丁度いいし、学校に転入生として潜り込んで調査しましょうか。同じ年齢層の人が多い分情報も得やすそうだしね。

とりあえずちょっと儚げな雰囲気の庇護欲を掻き立てる感じで行きましょう。
集める情報は噂の発生源と厨二病棟の場所、後は物理的な何かを持ってたらそれの奪取ね。
……ふむ、出来れば穏便に行きたいし、もし同年代の異性が相手なら色仕掛けとか有効かしら。試してみましょ。
同性なら普通に仲良くなった方が良さそうね。
いずれにせよ普通に貰うのが無理なら強奪。



●マッド・ストレージ
――某日、城北大付属第一中学校・2年A組
「厨二病棟ねぇ。やっぱり厨二病的な?」
 河南・光(神殺し・f12216)は傍目には呑気そうな風情で此度の事件を思った。
 もし何事も無く平和に過ごせてたら、私もそんなのに罹ってたのかしら、なんてね。

 兎にも角にも、先ずは情報収集。
 事件当事者とは幸い、年齢も背格好も近い。UDC組織に頼み偽造した身分を使って、校内へ潜入調査を試みる。
 儚げな雰囲気を纏い、周囲からの関心を引く。どこから来たの? 何かあったの?
「そうね……少し、疲れちゃって」
 さらりと伸ばした黒髪をいじりながら、ため息交じりに話を続ける光。ここまでは上々、今の私は悲劇のヒロイン。
 嫌な事があるの? だったらいいおまじないがあるのよ。それはね……
「それはもしかして……厨二病棟?」
 光と向き合っていた女学生がおもむろに唇に手を当てる。あまり大きな声で言っちゃダメ。先生に聞かれたら、私達だけの秘密じゃなくなっちゃう。
「秘密……ですか」
 そう。私達の、私達による、私達の為のおまじない。どんな願いもかなえてくれるの、厨二病棟で貰える、この小箱をずっと離さないでいれば。
 匣。10cm四方の小さな、それでいて奇妙な箱。黒の様な、赤の様な、捻れた幾何学文様が描かれた、仄かに暖かい魔法のアイテム。
 既に願いを叶えた子は、一番×××××××××を……
 いけない、これはいけない奴だ。全身が警報を鳴らす。これ以上、関われば、この娘も、自分も破滅する。
「ちょっとだけ、触らせてもらえるかしら」
 いいわよ、これで貴女も秘密の仲間よ。
 ありがとう。手にした匣はガジェットで作ったフェイクとすり替え、偽物を彼女に渡す。
「私も貰えるかな? その厨二病棟は――」
 うん、厨二病棟はね……

【祭具確保:1/4】
【情報:厨二病棟について】

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
【WIZ】
「奇怪な病棟に蔓延る病魔か。此処は私の出番と思考すべき。己の言の葉が『彼等』の好みに合うならば僥倖。先ずは患者に出会うべきか。否。出『遭う』と説くべきか」
それらしい中高生の隣に座り、勧誘するように
相手が『特別』なものの如く語って魅せよう
「貴様。妙な力。怪異に遭った事は在るか。私は奴等を研究する機関の『エージェント』だ。最近、超常的な。超越的な魔道具を配る教団が在ると噂でな。貴様から『強い』反応を見出したのだ。周囲に『似たような』仲間は居ないか。教え給え」
コミュ力と情報収集。奇妙なオブジェクト(自身の持ち物)を晒し『本物』だと臭わせ、話を合わせよう



●必讐狂呵
「奇怪な病棟に蔓延る病魔か。此処は私の出番と思考すべき」
 ロバート・ブレイズ(シャドウ・f00135)は普段とは打って変わり、厳めしいその形をあるべき形に当て嵌めた。千の貌は変幻自在、混沌の様に在り様は如何にでもなる。
 己の言の葉が『彼等』の好みに合うならば僥倖。先ずは患者に出会うべきか。ふらりと赴く先は圏内屈指のスィーツカフェ。
 ぎゃあぎゃあと飽きもせず語らう学生達を静かに見やり――居た。矢張り、会うべくして出『遭った』と識るべきか。

 カフェの窓際で独り、イヤフォンを掛けて読書に耽る女学生へ。失礼、貴様――
 面食らう女学生を置き去りに、ロバートは懐の『Tru'nembra』を出す。その異形に魅了される女学生を眺め、一言。
「貴様。妙な力。怪異に遭った事は在るか」
 只今を除き、それ以前に。その問いに女学生は頷く。言葉も無い、あたしと同じ仲間がこんなにも近くにいるなんて。
「否、私は奴等を研究する機関の『エージェント』――貴様から『強い』反応を見出したのだ」
 何という偶然、いや必然。厨二病棟は真実だった。さよなら現世、あたしは闇の世界の住人に。
「然り、周囲に『似たような』仲間は居ないか。教え給え」
 手持ちがあるならば、今すぐ此処に。わかりました、匣はこちらです。
 ありがとう。そしてさようなら。器物は回収した。拠点は判明した。ちょっとまって、それはあたしの。
「否、これは化野。幽世を孕む奈落の門故」
 お前はここまでだ、『立ち去れ』と焔が。あたしはそこで気を失った。
 あれは一体、何だったのだろう。

【祭具確保:2/4】
【情報:敵集団について】

大成功 🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
【WIZ】
…えぇと、確か14歳前後だよね?
学校の制服を借りて、潜入してみようかな…
あ、設定はお任せしまーす、何も浮かびません!

【行動】
学校に制服を借りて、潜入する
【コミュ力】や【失せ物探し】、【聞き耳】を駆使して、【情報収集】する

話題に入るために自分が見て体験したことを題材にした上で、(【世界知識】)作り話という体で仲間入り、誘って貰おうかな?
あ、いろんな世界で傭兵として旅したから話題はあると思う…多分

なんらかの物品を所持している場合は、相手の気をそらした上で【盗み】、ポケットなどに【物を隠す】



●噂泥棒
「あ、設定はお任せしまーす、何も浮かびません!」
 あっけらかんと言い放つアトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)にUDC職員は全力を以って完璧な偽装経歴を作り上げた。
 後に本件を担当した専任参事官曰く『美少年は得』だとか。
 兎に角、アトシュ・スカーレット15歳男性は順風満帆なスクールライフを送る転入生として、UDCアースに三度舞い降りるのであった。

 話題のアイドル候補生? 流浪の美少年? 謎が謎を呼ぶアトシュの存在に、教室中がざわついている。
 君さ、どこから来たの?
「異世界」
 何それギャグ? 結構ゲームとか好きなの?
「ゲームは分かんないけど、色んな旅をしてきたんだぜ」
 当たり障りのない程度に、これまでの冒険譚を語る。雪の降る迷宮、密林の冒険、侍世界のカチコミ等々……
「まあ色々見て来たけどさ。ここにも面白い所、あるんだろ」
 面白い所、何の事? もしかしてアレかなぁ。
「アレって厨二病棟って奴か?」
 え、何で知ってるの。俺達だけの秘密の筈じゃ。
「教えてくれよ、そいつを知る為ここまで来たんだぜ。何か無いの?」
 強引にスマイルを見せて押し切ろうとするアトシュ。押し切られた一人の生徒が、懐から匣を取り出した。
「こいつか。へぇ……凄いな」
 邪気が。
 程無く、教師が戻ってくる。悪ぃなと、匣を出した生徒に箱と同じ重さを、それと分からぬ様に懐へ押し込む。
 ちなみにこれは誰が作ってんだ? それは厨二病棟の教主様だよ。
 へぇ、教主。
 そいつが首魁か。

【祭具確保:3/4】
【情報:敵首領について】

大成功 🔵​🔵​🔵​

テン・オクトー
中二病か〜。皆大なり小なりなるんだろうけれど、大きく中二病になるのは…やっぱり物事を色々考える人かな?学校に行った後更に勉強してる子達をターゲットにしてみるね。
SPD
塾行く子達に【聞き耳】使用。
塾入る時、塾中、塾からの帰宅時ずっと粘ってみる。会話で怪しいと感じた子や、塾から家に帰らず寄り道しそうな子にUCを使う。沢山は無理だけど数人なら追尾できそう。トカゲさん達は小さくて目立たないし、狭い所や屋内も、壁も登れるし子供の足で行ける所の追尾ならうまくいくと思うんだ。あ、もちろん何処行くかの追尾もだし、怪しいもの持ってないか落とさないかも気をつけるよ。
何か見つけれるといいな。

連携アドリブ歓迎です



●山猫は眠らない
「中二病か〜。皆大なり小なりなるんだろうけれど、大きく中二病になるのは……やっぱり物事を色々考える人かな?」
 テン・オクトー(気弱な小さき猛獣・f03824)は自分なりに対象を考え、行動に移る。
 よく考える子……学校に行った後更に勉強してる子達をターゲットにしてみよう。
 UDC組織に見学に来た子という身分を貰い、オクトーは県内有数の巨大学習塾に潜入した。

 学習塾はとても静かな、ある種の精神修養の鍛錬場を彷彿させる異様な雰囲気に包まれていた。
 それは邪神の手によるものか。否、これが彼らの日常。期待と羨望と希望を極大のプレッシャーと受け止め、それを机上の問題集に発散する。しかしそれだけでは、心がすり減る事必定。故に、いつの時代も子供らには縋るモノが必要だ。
――おい聞いたか、アイツの厨二病棟の話。
――知ってる、あのお守りで××高校一発で受かったって奴でしょ。
――ろくに勉強もしてなかったんだろ……あやかりてえよな。
――だったらさ、この後行ってみない?

「厨二病棟に行くなら、ヤモリさん!」
 ぬらりと、オクトーの影から【シャドウなヤモリ達】が姿を現す。そして即座に厨二病棟へと向かった4人の子らを追いかけた。
「でもこれって……結構ヤバいんじゃ」
 オクトーは仲間達と合流すべく、直ちに連絡を取った。
 厨二病棟を見つけた、今すぐ集まって欲しい、と。

【祭具確保:3/4】
【情報:厨二病棟への道】

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『風魔衆・下忍』

POW   :    クナイスコール
【ホーミングクナイ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【クナイ手裏剣の連射】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    サイバーアイ演算術
【バイザーで読み取った行動予測演算によって】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    居合抜き
【忍者刀】が命中した対象を切断する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そこは幾重にもロープが巻かれ、立ち入り禁止の立て札が掛けられた古い病院。
 小児科、産婦人科の文字の所だけが、何故か怨念めいた赤黒いペンキで塗り潰されている。
 それほどまでに、何か強い恨みを抱えていたのだろうか。
 そして中へ一歩、直ちに影が現れる。

『こちらは小児病棟です。大人の方は』

 さ よ う な ら

 白刃が猟兵達を襲った。
 この敵を斬り抜けつつ、中へ入った子供達を見つけ、外に出さなければならない。
アトシュ・スカーレット
さーて、お仕事お仕事…
UDCアースの学生、平和ボケしてるよな…

【行動】
突入前に【付与術・天災式】を発動
Joyeuse・剣形態に業火、村雨・刀形態に氷雪、更に双方に腐敗の【呪詛】を付与
自身に雷の魔力を付与。反射速度を無理矢理引き上げる

敵の襲撃を魔力障壁(オーラ防御)で防ぎ、【残像】が見える速度で【ダッシュ】で駆け抜ける

先に入ってしまった子供達の痕跡を集め(情報収集)、【追跡】
発見出来たら、場合によっては【言いくるめ】る
逃亡までの【時間稼ぎ】、攻撃されそうなら【庇う】



(UDCアースの学生、平和ボケしてるよな…)
 迎え撃つ下忍に対し、アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)が先陣を切る。その手には一対の剣と刀――『Joyeuse』と『村雨』が。
(ま、その平和を守るのがオレ達の仕事なわけだが)
 【付与術・天災式】発動。剣に業火、刀に氷雪、そして腐敗の呪詛を込め、更に我には雷を。迅雷斯くや、悪を斬らん。十重二十重に張り巡らされた異界の業が、秘めた威力を放つ時を伺う。

「さーて、お仕事お仕事……!」
 瞬間、疾走。眼前に放たれた苦無の雨を掻い潜り、偽りの虚像でその目を欺く。
 魔力障壁は、掠らせど当てさせはせず、手応えを感じさせぬアトシュの疾き業は、返す刃で詰めた間合いから一人、また一人と下忍の首を胴から分断つ。くるりと手首を返し、纏わりついた血を払う。
「ま、こんな所か? まだやるなら相手になるぜ」
 刀を肩に掛け、剣を敵へ向け、挑発。圧倒され陣を立て直す下忍を見やり、密かに子供らの痕跡を探るアトシュ。足跡も気配も無く、そんなに遠くへは行ってない。ならば。
「来ないならこっちから、だ!」
 跳躍。頭上の脅威と化したアトシュの斬撃を避ける為、更に大きく後退した下忍ら。

 これでいい、こっちに子供はいない。これで退路は確保した。
 今の内に早く逃げろ。こっから先は埒外の領域だ。
 呪い事なぞしなくとも、願いを叶える時間は沢山あるんだから、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロバート・ブレイズ
「精神は常に子供だが、何方にせよ此処は冒涜の領域と化す。鏖殺の時間だ。私が蹂躙されるのも悪くないが」
闇堕ち発動
寄生体を召喚し、自らに宿す事で変貌
巨躯の怪物デモノイド
寄生体の害敵駆除能力に身を委ね、青き拳を叩き憑け、鎧諸共破壊する。必要ならば肉体に繋げた鉄塊剣で薙ぎ払い、面での攻撃も行おう
相手が攻撃を予想し回避するならば回避困難な一撃一撃を繰り返すのみ。可能ならば異の輪郭で恐怖を与え、その場で動けなくして魅せよう
更に情報収集で忍者が『逃げそうな』場所を把握し、其処に集中攻撃。敵が先を読むならば先を読めば問題ない
「クカカッ――仔を探すのは爺の仕事。蒼色の怪物と病魔の蔓延り。何方が男子に好かれるか」



 先の戦場だった待合室から程近く、薄汚れた内科の診察室だった所に子供達は隠れていた。ちょっとした冒険のつもりが、気が付いたら異様な集団が、少年と悪夢の様な斬劇を演じている。
「迂闊な、そも叶わぬと識って何故此処へ」
 そしてゆらりと冒涜爺、ロバート・ブレイズ(シャドウ・f00135)が音も無く現れた。その威容に、遂に押し殺した恐怖が漏れる。
「クカカッ――仔を探すのは爺の仕事。何方にせよ此処は冒涜の領域と化す」
 早々に立ち去れと、退去を促す影狩人は子供達を幽世から現世へ。今ならば間に合う。そして忘れよ。

 しかし、そんな楽観を闇の住人達が許すわけも無く。不忍の下忍が刃を手に、影から滲む。
「……さて鏖殺の時間だ。私が蹂躙されるのも悪くないが」
 蒼色の怪物と病魔の蔓延り。何方が男子に好かれるか。
 ぞわりと、禍々しさを圧縮した様な塊が現れ、ロバートと重なった。
 塊――寄生体と混ざり顕現したデモノイド、【闇墜ち】した冒涜王は宣告する。
「精神は常に子供、故に暫しの戯事に付き合ってやろう」
 覚悟せよ。蒼き無貌の輪郭が、惨劇の幕を引き千切った。

 先に動いたのは下忍、双眸を覆う電子演算機が怪物の動きを予測するが、それでも。
「足りぬのだ、それでは視えぬ」
 我等を相手するには些か不足。
 恐怖の輪郭が演算を阻害し、蒼褪めた拳が闇を蹂躙する。
 知識は我等にも在り、その為の探索と解答。
 先駆けを追い、冒涜王は更に奥へと進んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

テン・オクトー
(ペンキで塗りつぶされた小児科、産婦人科を見て)嫌な感じだ。子供がらみは許せない事案が多いんだ・・。
WIS
長い刀に、飛び道具にもなるクナイ、こういうのは召喚にお任せしよう。UCをぶつけるよ。ボクと同じ強さの死霊なら、下忍を少しは削れないかな?もしボクが【忍者刀】をもらいそうになったら、唇を自分で噛んでUC解除。【第六感・見切り】で命中しないよう避ける。

急いで小児病棟内に入った子供の捜索をしたいな。

連携アドリブ歓迎です



 ペンキで塗りつぶされた小児科、産婦人科を見てテン・オクトー(気弱な小さき猛獣・f03824)は思う。
(嫌な感じだ。子供がらみは許せない事案が多いんだ……)
 虚無からの冒涜を退けたいつぞやの狂夢、此処でも同じ事が起こるのならば。
「絶対に阻止しなくちゃ……!」
 ふと眼前には駆ける子供達の姿が。出口はこっちだ、急いで逃げて。

 その背後からは悍ましき下忍の強襲。距離がある、ならば詰める事風の如し。
 騎士と竜の死霊が――【リザレクト・オブリビオン】、オクトーの意志から発現した。狙うは先頭、頭を挫く。
 ふわりと舞った竜が、その咢を大きく開いて下忍に飛び掛かる。遅れて騎士が、後背で子供らを護る。
 二つの威力が下忍の白刃を潰し、砕き、捌き、尽くを無為へと成した。
 後の先を潰された居合なぞ、気の抜けた炭酸並みの愚かさ。手遅れなのだ、それでは。

 しかしその暴威を抜けた影が、子供らの生命を奪おうと迫り来る。
「そんな事は、させない!」
 かちり、と。口内に血の味を滲ませながら、オクトーは愛用のフレイルをじゃらりと担ぎ上げる。
 不意打ち、威力は此処にも有り。代償に消えた死霊に代わって、その懐に無慈悲な鉄球が入り込み、下忍は来た道へ吹き飛ばされた。

 眼前には死霊に屠られ、そして先程吹き飛ばされた下忍だった血袋の丘が。
 背後には埒外の暴威より逃れし小さき者達が。
 無事でよかった、後は元凶を叩くだけだね。
 再びフレイルを仕舞い込み、オクトーは先立った者達を追って病棟の奥へと進んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

河南・光
残念ながらこちとらまだ小児科にかかれる年齢なのよね。
よってあんたらの方がさ よ う な ら!

さて、こんな所で時間食ってる場合じゃないし、なるはやで片づけたいところね。
相手の数も居る事だし、開幕フルバーストで一気に削ってやるわ。
その後は、ホーミングクナイは厄介だし【武器落とし】で確実に落としていきたいわね。
ショットガンとハンドガンを上手く使っていきましょ。



 残念ながらこちとらまだ小児科にかかれる年齢なのよね。
「よってあんたらの方がさ よ う な ら!」

 河南・光(神殺し・f12216)は【フルバースト】で全ての武装を解き放ち、下忍の群れを一掃する。既にこの場所にはそれほどの数は残っていない。一気呵成に突き進んで、首魁を討ち滅ぼす。

 愛用の『GodSlayer』を構えて、前へ、前へ。
 飛び交う苦無を撃ち落とし、返す銃撃が次々と下忍を屠る。
「こんなんじゃ、私は止められないわよ」
 手にした『Howling Silver』が下忍を吹き飛ばす。
 圧倒的な火力は、撒き散らされる暴力をものともせず、
 圧倒的な意志は、待ち受ける悪意を恐れもせず、
 残る敵を無慈悲にも処断していくその姿は鬼神の如く。
 鬼が出るか蛇が出るか、子供達を逃がされたそれは果たして、
 どのような顔で光達を、猟兵達を待ち構えるだろうか。

 闇は深く、出口はまだ見えない。
 だが、光はここに在る。
 その闇を晴らすのは、もう直ぐだ。

成功 🔵​🔵​🔴​


――廃病院・二階
 猟兵達の追撃から逃れ、下忍らは二階への逃げ延びた。

 そこはさながら異界の様相。
 壁一面に張られた奇怪な文様の呪符。
 血の様な赤い紙に、この世の物ではない象形。
 更に明滅する照明が、そこに立っているだけで精神に負担を掛ける。
 奥へ進むと、開かれた部屋の中はどす黒い、何かが蠢いている様な。

 それはよく見ると、匣の形をしていた。
 どす黒い何かは呪詛の類か、その黒が次々と匣の形を成している。
 そして一際黒い部屋があった。否、部屋ではない。
 そこは壁一面にびっしりと置かれた、匣の山。
 ここは呪いの匣が生み出されている場所であった。
美星・アイナ
この光景、宛ら絶望だけ詰まったパンドラの箱の山ね
こんな悪趣味極まりない真似してる奴、さっさと引き摺り出さないとね

ペンダントに触れて切り替えるのは破邪顕正の刃持つ天の御使い
『子供達は返して貰いますよ』

レガリアスシューズの爪先を2、3度鳴らすと天井高く飛び上がり
壁、天井、瓦礫を足場にして【地形の利用】を駆使し蹴撃と【踏み付け】

歌うようにユーベルコード詠唱し青玉の矢を【一斉発射】

その間に後ろに回り込み【だまし討ち】
大鎌形態の黒剣で【2回攻撃】の【なぎ払い】から【傷口をえぐる】
敵のユーベルコードは【見切り】、喰らった場合は【激痛耐性】で耐える

さて、鬼が出るか蛇が出るか
そろそろ顔を見せなさいな(冷笑)



 闇色の匣に囲まれた絶景に、炎のような赤が舞い上がる。
「この光景、宛ら絶望だけ詰まったパンドラの箱の山ね」
 美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)はそれらを眺め、その根源への怒りを燃やした。こんな悪趣味極まりない真似してる奴、さっさと引き摺り出さないと。
 だがその炎を鎮めんと闇が再び、猟兵の前に姿を現した。その手には禍々しい白刃が。
「来たわね……それじゃ『子供達は返して貰いますよ』」
 手に触れた『インフィニティ・アンロック』が呼び起こすは、破邪顕正の刃持つ天の御使い。闇を裂くダンスステージが幕を開けた。

 爪先を軽く打ち付けステップを。襲い来る白刃を跳ねる様に躱し、タイミングを合わせて下忍の頭蓋を『Shadow Dancer』が踏み砕く。アイナは壁を、天井を自在に足場と化し、忍の敏捷さすら寄せ付けない。
「悲しみの雫達よ、蒼穹に集え!」
 唱えるは蒼き戦慄。撃ち払うべきは群がる悪意。ステップで斬撃を躱しながら、一つ一つの想いを紡ぐ。
「汝らの振り積むその想い、我が冷たく蒼い雨に変えて闇に放とう……」
 大鎌と化した『DeathBlade』が白刃を打ち据え、続く刃がそっ首を抉る様に切り伏せる。そして。
「さあ、蒼の雨の中で貴様の罪を数えな!」
 照準を絞る様に大鎌を下忍らへ向け、裁きの蒼が解き放たれる。
 アイナの【罪を穿つ青玉の雨】が、立ち塞がった全ての闇を薙ぎ払った。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
 下忍だった屍の山を通り越し、最上階へ向かう。
 そろそろ顔を見せなさいな、その首を晒しなさい。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『都市伝説』コトリバコ』

POW   :    カゴメ、カゴメ
全身を【囲む様に子供の霊を召喚、内部を安全領域】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    そして皆いなくなった
【コトリバコから敵対者を追尾する無数の小鳥】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    【常時発動型UC】子取りの箱
【自身から半径レベル三乗mの一般の女性、子】【供を対象に寿命を奪い衰弱させる状態異常を】【付与。また、奪った寿命でレベルを上げる事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Bird of Prey
『イッポウ、ニホウ、サンポウ、シホウ』
 それは童歌を謡う童女か。
『ゴホウ……足りない、足りない』
 否、それは呪いの唄。
 汝、子獲りの餌食なり。
『寄越せ』
 偽りの怪異、顕現した邪悪。

【状況ボーナス/足りない匣:3】
【情報ボーナス/敵首領について:1】
【ボーナス:(3+1)/2≒+2D】
河南・光
へぇ、あれが『教主様』。
人に教えを説くような顔にも言動にも見えないけどね。
まぁ、どうでもいい。
邪神だろうが眷属だろうがそれに類するものであろうが
全て、殺すだけよ。

で、なにこれ、結界?
相当広範囲ね。少なく見積もっても1㎞以上はありそう。
発生源は……あの匣?ならまずはあれをぶっ壊すべきかしら。
相手は能力強化されてるようだけど、だったらこっちも【殺意の共鳴】で強化して戦うだけよ。
味方が戦いやすいように【援護射撃】もしないとね。

※激励台詞は状況や面子によっても変わるので、その辺りも含めアドリブ・連携歓迎


アトシュ・スカーレット
テメェが黒幕か!
…コトリバコって子供の一部が詰められた呪いの箱…で、都市伝説の一つ…なんだっけ?

【行動】
【暴走術式・天災】を発動させるよ!
…これ、対策してないと指先の感覚なくなるんだよね…
(火炎耐性、氷結耐性、電撃耐性)
業火、氷雪、腐敗の【呪詛】を剣と刀に付与!
自分の体に雷の魔力を付与し、反射速度を無理矢理引き上げるね

【2回攻撃】で手数を稼いで、【傷をえぐって】いくよ!

回避…は避けきれないみたいだから、魔力をオーラの代わりにして【オーラ防御】かな

アドリブ、共闘大歓迎


美星・アイナ
あれが全ての元凶
噂には聞いた事あるけど不気味としか言えない

「コトリ」は子獲りの災いに通じる言ノ葉
ならば開くその前に此処で骸の海に還さなければ

人格は第二章と同じ破邪顕正の刃持つ天の御使い

鋼糸を【ロープワーク】の要領で両腕に巻き付け
引き寄せながら頭上高く飛び上がり【踏み付け】した後
脚元へ【スライディング】

ユーベルコードを歌うように【高速詠唱】
複製の剣状態の黒剣で【なぎ払い】【2回攻撃】で【傷口をえぐる】
最後は【一斉発射】で【串刺し】

コトリバコのユーベルコードは【激痛耐性】【覚悟】で耐える

回収された件の箱
その中身が噂通りなら職員でも耐えられない筈
急いで蹴りを付けて知らせないと

アドリブ、共闘歓迎です


テン・オクトー
コトリバコ…子供に持たせてたのはその匣なの?なんて事を。生贄が足りない?子供たちの命を奪うなんて許せない。
でも…この子はよく見ると子供の姿をしているね。もしかしてこの子自身、過去に匣の中に入れられた子なのかな?…もしそうなら可哀想ではあるけれど、でも無関係の子供達の命を奪わせるわけにはいかない。容赦はしないよ。
WIZ
ボク子供だから…気をつけないとね。近づくとあの子が強くなってしまうようだから、少し離れてUCに頼るよ。接近してしまうようなら【呪詛耐性】【オーラ防御】で耐えつつ応戦するよ。

連携アドリブ歓迎です。


ロバート・ブレイズ
「如何なる病魔でも私の脳味噌を侵蝕する、蛆虫以上の毒物は在らず。如何なる呪物でも我が精神は呑み込み、取り込み、冒涜するのみ」
冒涜王発動
自らを普遍的無意識領域の領域と化し、総ての魂を取り込む『空間』と成る。空間なので不可視と思考でき、敵対『者』として認識されるか否か。
対象の魂(エネルギー)を啜ると同時に鉄塊剣を叩き込む
鎧(おそらくは呪術的なもの)を破壊し、頭部を狙う
効果的ならば対象を根源から哄笑し、存在を否定する事で恐怖を与える
「貴様が仔を。世界を。幻想で閉ざすと蔓延する場合は覚悟せよ。我々猟兵は地獄の門を叩き、数多の魔物を屠り去って魅せる。何。不安は要らぬ。最初から此処には闇『病』が在るのだ」



――廃病院・三階
「テメェが黒幕か!」
 アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)は銀の双眸に怒りをあらわにして叫ぶ。
 コトリバコって子供の一部が詰められた呪いの箱……で、都市伝説の一つ……なんだっけ?
 まあいい、どちらにせよその伝説は今日でお終いだ。手にした『Joyeuse』と『村雨』を刀剣形態へと変え、炎と氷と腐敗の呪詛を纏わせる。
「へぇ、あれが『教主様』。人に教えを説くような顔にも言動にも見えないけどね」
 河南・光(神殺し・f12216)が紫の瞳を薄く閉じ、眼前の童女めいた怪異を睨む。確かに見た目だけなら、日本人形めいた愛らしさもあろうものか。
『教え……説く? 否、魂の軛から生命を解く。そして』
 その生命は絶やす、童女の眼が鈍く光った。闇色に塗り潰された壁一面に、赤い呪詛が奔る。
 それは血管のように蠢きながら建物を浸食し、まるで生物の体内めいた気味の悪い異様な空間を創り出す。
『……滅べ』
 一言、赤い匣を手にした童女が呟くと共に、幾人かの猟兵は力が奪われる様な脱力感に苛まされた。

「これが……呪い」
 体が重い。気力で何とか耐えるが、テン・オクトー(気弱な小さき猛獣・f03824)の表情は険しい。
 近付けば怪異の力を増幅しかねないと考えたが、その力は想像を遥かに超えていた。半径15kmを超える範囲が射程内、多少離れた所で効果は無い。今や艶やかな毛並が総毛立ち、身震いが止まらない。
 その呪い、常に発動している【子取りの箱】は、年若い猟兵達を蝕んだ。一般人では抗う事もままならないであろうその威力は、しかし一人の猟兵には通じなかった。
「……貴様が仔を。世界を。幻想で閉ざすと蔓延する場合は覚悟せよ」
 冒涜爺が一歩、前へ出た。
「我々猟兵は地獄の門を叩き、数多の魔物を屠り去って魅せる」
 漆黒の仮面を被るロバート・ブレイズ(シャドウ・f00135)は処刑人の様相。その手には黒の碑『立ち去れ』と刻まれた禍々しい鈍器が。
 迫りくるロバートを見た怪異は、赤い匣から無数の小鳥を、魂を喰らう異形を放つ。呪いの通じないロバートへ、その猛威が殺到した。
「何。不安は要らぬ。最初から此処には闇『病』が在るのだ」
 目の前の囀りを気にも留めずに、ロバートの姿形が薄っすらと闇に溶ける。普遍的無意識たる【冒涜王】は、空間と成ったのだ。
「我こそが冒涜の王。貴様の魂を招待しよう」
 ぬらりと、澱んだ空気が震えた気がした。【そして皆いなくなった】と、啄む対象が消えた小鳥達は狂った様に喚き、代わりに眼下の他の猟兵へ狙いを定める。
「全ての、元凶……噂には聞いた事あるけど、不気味としか言えない……でも」
 異形を睨みながら、美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)は重たい身体を精神で動かし、心を入れ替える。私達は一人じゃない、皆で立ち向かうんだ、と。精神を揺さ振るならやりようはある。そして呼び起こされた破邪顕正の刃は、澱んだ空間に苛烈な歌声を響かせた。
「……悪夢に踊りし閃く刃、余所してたら待つのは地獄!」
 アイナは赤い髪を振り乱しながら、手にした剣状の『DeathBlade』を、21本の宙を舞う殺意へと分裂させた。
「さぁ……全てを見切る自信があるなら、今此処でやってご覧なさい!」
 無理だと、思うけどね。【閃刃は悪夢に踊る】――放たれた黒が猛然と異形へと襲い掛かった。宙を乱舞する剣戟が執拗に異形らを斬り付ける。その僅かな隙に、冒涜王が何も無い空間より童女を侵食した。
「如何なる呪物でも我が精神は呑み込み、取り込み、冒涜するのみ」
 虚空より語り掛ける声が怪異を嘲笑う。魂の略取。童女が手にした赤い匣に、僅かながらの亀裂が入った。

 その一撃が匣の呪いを微かに緩めた時、刹那に束縛が解かれた猟兵達が走る。
「絶対にぶっ殺す。今はそれだけでいい。こんな呪い如きに、皆をやらせたりしない!」
 【殺意の共鳴】――祈りが、皆の威力を解き放ち。
「我が身に宿りし天災よ! この身を喰らいて蹂躙せよ!」
 【暴走術式・天災】――雷が、二つの牙に新たな力を宿し。
「負けるものか……ボクだって、一人じゃない!」
 【サモニング・ガイスト】――呼び出された太古の英霊が、道を塞ぐ悪意を吹き飛ばす。
 反撃の時、燃え上がる若い命が、怪異目掛けて殺到した。
『……終わると思うか、これで』
 怪異は先陣を切ったアトシュの斬撃を片手で受ける。触れた先より染み出た呪詛と、炎と雷を纏った衝撃がその腕をどす黒く変容させ、肉が焼き付いた様な異臭が漂う。しかしもう一方の手、赤い匣をアトシュへ翳してその動きを封じようと恨みの念を飛ばした。
「そう来ると、思ってたぜ!」
 返しを予測していたアトシュの二本目が、その匣を断ち切ろうと容赦無く振るわれた。刀と匣の呪詛がぶつかり合い、赤黒い稲妻が辺りに奔る。
「もうそいつは効かねえんだ、よッ!」
 僅かな間隙、光より齎された激励の念が、匣の呪詛を曇らせた。合わせてロバートの一撃の痕へ重ねる様に、振るわれた一刀が再び、赤い匣に深い傷をつけた。

『……死ね』
 それでも怪異の憎しみは止まらない。片腕を喪失しかけながらも、匣より溢れた怨念が、亀裂より赤黒い閃光となって放たれる。その衝撃に二刀を振るって体勢が崩れたアトシュは、一歩後ずさった。
「死なないよ。それに誰も、死なせない!」
 瞬間、オクトーが呼び出した英霊が一歩下がったアトシュの前に暴風を放つ。閃光の直撃は逸れて、どす黒いエネルギーの奔流となって辺りに巻き散らかされた。
「私達の心は、魂は、あんた何かに屈したりしないわ!」
 そして光が最大の念を飛ばす。邪神だろうが眷属だろうが、殺して殺して殺し尽すだけだ。その意志は絶対に折れたりはしない。
「その通りよ、だから邪魔なんてさせない!」
 背後から、全ての異形を串刺しにし尽くしたアイナが跳ぶ。閃光と暴風を天井に巻き付けた『KillingWire』で飛び越え、怪異の頭上を『Shadow Dancer』の一撃で踏みつける。
『……死ね』
 ぐらりと、頭頂より赤黒い液体を垂れ流す怪異。しかし三度掲げられた匣から、異形は姿を現せなかった。
「何度も言わせんな、死なねぇよ」
 アトシュが、オクトーの英霊が、一対の刀剣と鉤爪でその匣を上下から抑え込む。
「然り、そして如何なる呪物でも我が精神は呑み込み、取り込み、冒涜するのみ」
 影からロバートが、再び黒の碑を担いで顕現した。
「如何なる病魔でも私の脳味噌を侵蝕する、蛆虫以上の毒物は在らず。して、汝は何か?」
 それらに比肩するや否や。冒涜爺はあくまで尋ねる。
『……死ね』
「承知した。では立ち去れ」
 童女の頭蓋を、容赦の無い冒涜が打ち砕いた。
 そして、それは音も無く、崩れ去った。

 童女の怪異が冒涜爺に滅された直後、廃病院を覆っていた赤黒い何かは溶けるように消えていった。その部屋は手術室だったのだろうか。薄汚れた機材と、何かの書類が残されていた。
「これって……カルテ?」
 オクトーが手にしたそれは、望まずして生を受け、否応無く消された魂達の記録。これが門に成ったかとロバートは暫し考え込む。
「あの子も、過去に匣の中に入れられた子だったのかな……?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかも。それより回収された匣や、されなかった匣が気になるわ」
 さっきの戦いの余波でよからぬ事が起こっていたかもしれないと、アイナは考える。
 今や消失させられた魂の行方は誰にも分からない。しかし、それが他の魂を殺めていい理由にはならないだろう。
「それじゃあさっさと行こうぜ。学校にも箱を持ってる奴がまだ残ってるかもしれないし」
「そうね。元凶は倒されたとはいえ、さっきの影響が無いとは思えないわ」
 アトシュと光は一時身を寄せた仮初の学友達へ思いを馳せる。
 厨二病棟なんてものは無い。破滅へ至る願望なんか抱かせてはならない。そんな物は猟兵が何度でも止めて見せる。
 再びの惨劇を防ぐ為、猟兵達は廃病院を後にしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月01日


挿絵イラスト