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オール・フォー・ワン

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #第三層 #禁獣領域 #禁獣『歓喜のデスギガス』

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#禁獣『歓喜のデスギガス』


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●魂人
 異質なる場所であると思ったのが第一印象。
 四つの紋標、即ちスートが渦巻く空間に名があったのだとすれば、その名を『禁獣禁域』。
 常闇の世界、ダークセイヴァーの上層に存在する『闇の種族』ですら近づかぬ、理科不能かつ殺害不能の怪物『禁獣』が住まう領域の名。
 魂人はただ一人、悪夢を体現したかのような姿をした存在を目の当たりにする。
「ようこそ、第四層のひと!」
 歓迎の言葉を告げる悪夢の如き獣。
「ぼくの名前は『歓喜のデスギガス』! ねえ、とろこで質問なのだけれど、君の人生はよいものだった?」
 魂人は、その質問の意味を測りかねていた。
 なんと答えればいいだろうか。

 良き人生であったと言えるだろうか。
 戦いばかりの人生であったように思えるし、それでもかけがえのない出会いのあったような人生であったようにも思えた。
 数多の出会いが己の魂を摩耗ではなく練磨したというのならば、きっとそれは良いものであったと言えるものであったはずだ。何よりも、己に関わってくれた者たちに申し訳がないとさえ思える。
 魂人が口を開こうとした瞬間、『歓喜のデスギガス』は遮るように言葉を紡ぐ。
「……あっ答えは言いよ、ぼくは心が読めるんだ!」
 うんうん、とたわむように『歓喜のデスギガス』の体が弾む。
 喜んでいるのか、怒っているのか、それとも哀しんでいるのか、楽しんでいるか。
 まるでわからない表情に魂人は戸惑う。
 目の前の存在が己にとって良くないものであることは言うまでもない。

「君はみんなと同じように特別でもなんでもなく、辛く苦しいまま一生を終えたみたいだね。喜びも楽しみも、怒りも悲しみも、きっと平等なんだね」
 さらに『歓喜のデスギガス』はよくわからない顔のまま、体を弾ませ、魂人に手を伸ばす。
「最初に教えてあげるけど、ここは死後の世界じゃないよ。ダークセイヴァーに生きる定命の者にとって、死は救いじゃない。この世界の生命は全部、死後はきれいな『魂人』に転生し、上層に棲むオブリビオンの玩具となる」
「それは即ち、今までと同じ人生が続くということ」
「その通り。でも君は僕の前に転生できてラッキーだったね。だってぼくは、友達が欲しいだけなんだ。友達だから、ぼくはなんでもしてあげる」
「こちらの心を読むことができるということは、こちらの望むものもまた理解しているということ……」
『歓喜のデスギガス』は微笑んだようでもあった。

 望むものを望むだけ与える。
 それこそが彼の在り方。どんな高潔な魂であれ、彼の前では玩具に過ぎない。
『純粋な善意』は時として、『純粋な悪意』と転じるのだから――。

●ダークセイヴァー上層
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます……ついに『常闇の燎原』の探索を経て、『ダークセイヴァー上層』へと進出することが叶いました……」
 ナイアルテの苦虫を潰したかのような顔をしている。
 彼女の表情から察するに、『ダークセイヴァー上層』で起こることを予知したからであろう。

「『魂人』と呼ばれるダークセイヴァーで死んだ者がたどる運命をご存知でしょうか? 生前の姿を保ったまま、透き通った肉体を持つ存在が、上層の『禁獣禁域』にて禁獣『歓喜のデスギガス』の前で転生する光景を私は見ました」
 それは驚くべきことである。
 常闇の世界、ダークセイヴァーはオブリビオン支配盤石たる世界だ。
 この世界にあって、時として死は救いであったはずだ。苦しみや痛みから逃れるために人は死を選ぶ。
 理解できなくはない感情であったことだろう。

 けれど、ダークセイヴァーにおいて、それは救いですらなかった。
「『歓喜のデスギガス』は、『純粋な善意』から、自身の目の前で転生した『魂人』を『異形の怪物』に作り変えようとしているのです」
 そして、さらに悪いことには、『歓喜のデスギガス』は撃破不可能であるという事実が猟兵たちの目の前に横たわっている。
 幸いにして、と言うべきではないかもしれないが、転生した魂人は『たった一人』なのだ。
「……『歓喜のデスギガス』は現状、倒すことはできません。悪夢のような弾力で、全ての攻撃が跳ね返ってくるのです」
 ナイアルテの表情の理由を察したであろう猟兵達は選択しなければならないことに気がつく。
 犠牲になるしかない者がどうしても出てしまうかもしれない。
 そのような時、自分の身を守ろうとすることは責められるべきことではない。

「……」
 だが、ナイアルテは、それを言葉にしなかった。言葉にした瞬間、その事実が確定してしまいそうだったからだ。
 彼女の言わんとしていることはわかる。
『魂人を見捨てる事』を選択しなければならないケースも存在する。
『ダークセイヴァー上層』は、これまでとは比較にならぬほどの危険な領域である。
『禁獣禁域』の入り口には、守護者として強力な闇の種族が控えているし、例え、それを倒したとしても、さらに『禁獣禁域』には『番犬の紋章』をはじめとする紋章つきオブリビオンが群れを為して跋扈しているのだ。
 尋常ならざる『ダークセイヴァー上層』。

 その危険度は、これまでのダークセイヴァーとは完全に異なる異質さである。
「……『禁獣禁域』の入り口に座す闇の種族……これを試金石としてください。これを倒せなければ、『魂人』の救出は到底不可能です。私は皆さんの判断を尊重します。誰にも責めることなどできないのです」
 みんなは一人のために。
 一人はみんなのために。
 一つの目標を達成するためには、時として非情なる判断をくださねばならない。

 しかし、ナイアルテの瞳は爛々と輝いていた。
 悲嘆に暮れているわけでもなければ、絶望しているわけでもない。
 彼女が信じる猟兵達は、いつだって不可能を可能にしてきた。今回もそうであるとは言えないかもしれない。
 けれど、それでもナイアルテは頭を下げ、彼等を送り出す。
 安易な言葉では証明できない気持ちが彼女の中にある。
「どうかご武運を」
 ただ、その一言でもって彼女は猟兵たちの背中に頭を下げるのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はついに開かれた『ダークセイヴァー上層』への道、その『禁獣禁域』に座す『歓喜のデスギガス』の前に転生してしまった『魂人』の救出を行うシナリオとなります。

●第一章
 ボス戦です。
『禁獣禁域』の入り口には、守護者として強力な闇の種族、『蛇王ペイヴァルアスプ』が存在しています。
 無数の毒蛇が寄り集まって形成されたような肉体をしており、一種の神の如き神々しさを感じさせますが、闇の種族であり敵です。
 彼が此処に座している以上、これを打倒しなければ、そもそも『禁獣禁域』に立ち入ることすらできないでしょう。
 また、『蛇王ペイヴァルアスプ』を倒せなければ、『歓喜のデスギガス』から『魂人』を救うことすら叶わないでしょう。

●第二章
 集団戦です。
『禁獣禁域』の内部に踏み込めば、そこに群れを為してうろつく『狂忠のヴァンパイアバトラー』が皆さんの道を阻むでしょう。
 この『禁獣禁域』内部で『魂人』を捜索しなければなりませんが、このレベルのオブリビオンですら、全てが『番犬の紋章』を始めとするなんらかの紋章付きであり、一体一体が非常に強大なオブリビオンです。

 いつもの集団戦だと思っていると逆に倒される可能性すらあります。

●第三章
 ボス戦です。
 捜索が続き、皆さんは禁獣『歓喜のデスギガス』とまだ五体満足でいる『魂人』の元にたどり着くことができるでしょう。
 ですが、現状、『歓喜のデスギガス』は倒すことができません。
 悪夢のような弾力で、全ての攻撃が跳ね返ってくる上に、ユーベルコードが放たれ、数百メートルの巨体を誇る『歓喜のデスギガス』の猛攻を耐えしのぎ、なんとか隙を突いて、『魂人』を救出しながら『禁獣禁域』の外側まで脱出しなければなりません。

 それでは、ついに到達した『ダークセイヴァー上層』。死すら救いではない恐るべき魔境たる世界に取り残され、苦痛を強いられる『魂人』を救うため、打倒できぬ敵に立ち向かう皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『蛇王ペイヴァルアスプ』

POW   :    一万の蛇の王
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【大蛇】が出現し、指定の敵だけを【巻き付き締め付け】と【毒牙】で攻撃する。
SPD   :    ヴァイパースマイト
自身の【胸に埋め込まれた『偽りの太陽』】が輝く間、【蛇鞭状の両腕】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    有翼の蛇龍
召喚したレベル×1体の【大蛇】に【龍翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:佐渡芽せつこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ダークセイヴァー上層にありて、『蛇王ペイヴァルアスプ』は、王の名を冠していながら実質的な王ではない。
『禁獣禁域』は、禁獣のもの。
 例え、その領域以外に存在する全てのオブリビオンの頂点に立つのだとしても、その名は虚実そのものであったことだろう。
 胸に輝くは偽りの太陽。
 光放つ球体を胸に抱きながら、しかして『蛇王ペイヴァルアスプ』は嘯くことをしない。
「我が胸に抱きし太陽と同じく、我は偽りの王。この領域にありて、我が名を恥じることを禁じ得ず。我が求めるは真。されど、此処に在る限り、偽りばかりが積み重なっていく」
 蛇が絡みつくようにして形成された体。
 相対すればわかるだろう。
 ただ、それだけでこれまでダークセイヴァーで相手取ってきた紋章つきのヴァンパイアとは比較にならぬほどの力の発露を。

 一歩踏み出すだけで大地が震えるようであった。
 何もしていない。
 ただ、人間が歩むために足を踏み出すような気軽さでもって、『蛇王ペイヴァルアスプ』は大地を揺らす。
「我が抱くは偽り。真のひとつも存在せず。されど、我が真に至るための道程を歩まぬ理由にはならぬ」
 猟兵達は、その凄まじき重圧を前にしても尚前に進むだろう。
 これは試金石だ。

『蛇王ペイヴァルアスプ』を打倒できなければ、そもそも『歓喜のデスギガス』の前に転生した『魂人』を救うことなどできようはずもない。
 今まさに猟兵達は試すのではなく、試される側にある。
 ダークセイヴァー上層という過酷なる環境のすべてが、猟兵達の道を今強大な力でもって押しつぶさんと迫っているのだ――。
七那原・望
偽りだとか真だとか、どうでもいい。
ようやくここまで来たのです。やっと始められるのです。
お前のような雑兵なんかに、躓いてなんていられません。

第六感で敵の行動を見切り、回避を重視しつつ必要に応じて結界術での防御も行います。

……指定したようですね。

敵のユーベルコードにより指定されたらアマービレで一気にねこさんを呼び出し、多重詠唱全力魔法の乱れ撃ちによる猛攻をお願いします。

敵は極めて強力。だからこそ指定から効果の発動までの時間はそれなりにあるはず。

わたし自身も魔力を限界を超えて溜めながらセプテットの乱れ撃ちで攻撃。

大蛇が出現したら全力魔法のLux desireを解放し、大蛇も蛇王も纏めて薙ぎ払います。



 ダークセイヴァー上層は猟兵たちにとっても、ダークセイヴァーに生きる者たちにとっても漸くたどり着いた場所である。
 積層世界であることが明かされたダークセイヴァーにおいて、未だ上層は太陽の光満ちる世界ではない。偽りの太陽。偽りの空。偽りの月。
 あらゆるものが偽りに満ちているが故に、『蛇王ペイヴァルアスプ』は告げる。
「偽り。真たるを求めるは生理的なものだ。我が求めるのもまた道理」
 掲げた指の先より現れるのは無数の大蛇。
 凄まじい勢いで増え続け、まるで大波のように大地を覆っていく。

 怖気が走るほどの重圧を前に七那原・望(封印されし果実・f04836)は立ち止まることをしない。
「偽りだとか真だとか、どうでもいい」
 それは『蛇王ペイヴァルアスプ』の言葉を否定するものであった。
「ようやくここまで来たのです。やっと始められるのです」
 反逆の時。
 今こそが、ダークセイヴァー世界が長らく置かれてきたオブリビオン支配を打ち破る時である。
 その楔と為るように望は大蛇の波へと走る。
「お前のような雑兵なんかに、躓いてなんていられません」
「我を雑兵と呼ぶか。然り。それもまた然り。我は王にして偽りの王。偽りの太陽を抱く者なれば、汝らの言うこともまた理解できうるものである」
 だが、と『蛇王ペイヴァルアスプ』は告げる。
 
 彼のユーベルコードの輝きを望は見ただろう。
 己を見た、という感触が冷たい空気と共に絡みつく。これが殺気だというのならば、望は殺気だけで幾度となく殺されている。
 何故、そうならないのか。
 理由は単純だ。
『蛇王ペイヴァルアスプ』のユーベルコードは強力であるが故に、発動までの時間が長い。
 その時間こそが望にとっての活路。
「……指定したようですね。お願い、お友達」
 白いタクトが振るわれ、鈴の音が響き渡る。突如として現れた魔法猫たちが一斉に鳴き声を上げれば、ひろがるは大量の魔法陣。
 多重詠唱によって生み出された魔法弾の雨が『蛇王ペイヴァルアスプ』へと放たれる。
 乱れ打ち、猛攻。
 そのどれもがしっくりくるほどの物量でもって『蛇王ペイヴァルアスプ』を留める。しかし、そのどれもが決定打になりえない。

「……突き崩せない」
 理解した。
 望は『蛇王ペイヴァルアスプ』をこれでは突き崩せないと知る。故に、七つの銃で構成された超巨大合体銃の砲口とも見紛う銃口を向ける。
 自身の魔力の限界を超えて溜める。
 小手先など何一つ通用しない敵。
 かの『蛇王ペイヴァルアスプ』はそういうオブリビオンだ。並ですらない。その並ですらない敵以上の存在が今、己たちを待ち受けている。

 限界を超える。
 言葉にすれば簡単なことだ。けれど、それが容易ならざるものであることを望は知っている。魔力の炉が己の体にあるのならば、流し込み続ける魔力に寄って己の体は内側から焼ききれていくようであった。
「健気なものだ。力弱き者。偽りの王を前にしても、ひるまぬ。絶対強者たる存在を前にしても、そのように在れるか」
 その言葉をして、望の高められた魔力がユーベルコードの輝きを受けて放たれる。
「全ての望みを束ねて……!」

 煌めくは、Lux desire(ルクス・デザイア)。
 真核より放たれる膨大な光の奔流。
『蛇王ペイヴァルアスプ』の放つ大蛇の大波は、同時に放たれ激突する。
 焼き滅ぼす光。
 飲み込む光の波を前に互いのユーベルコードが明滅する。凄まじき威容、衝撃波がダークセイヴァー上層に吹き荒れ、その戦いの余波が大地を割る。

 望は見る。
 その視界を覆う黒き眼帯の向こうに、未だ見ぬダークセイヴァーの解放を。
 これは一歩だ。
「……全ての生きる人の望み、それを叶えるためには」
 残酷なる世界の真実を知って尚、突き進まねばならぬと、望は光の放出でもって『蛇王ペイヴァルアスプ』の攻勢を凌ぐのでった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

護堂・結城
お前が誰だろうが俺はこの先に用がある
だから貴様を倒す、それだけはっきりしてれば十分だ

戦闘開始と同時にUC発動、雷の鎧をまとって空中戦といこう

「氷牙、吹雪、征くぞ。デカブツにはデカブツだ」

一人一人が弱くとも、打ち倒すまで俺達は挑みかかる。
その数を従えるアンタならわかるだろ?だから、舐めるなよ

大蛇は鎧の雷撃でマヒ属性の範囲攻撃を仕掛けつつ最速で飛翔し振り切る
蛇王には氷牙を無敵斬艦刀に変化させ、限界突破した怪力で一気に振り下ろすギロチン落としの切断攻撃だ

体が悲鳴を上げようがここで止まれねぇ、何が来ようとこの宵闇の中では絶望を砕く『無敵』であると誓った
こんなところで足踏みなんぞしてられるか!!



 膨大な光の奔流が『蛇王ペイヴァルアスプ』を撃つ。
 放たれた大蛇たちが蒸発するように消えていく中、それでも『蛇王ペイヴァルアスプ』は健在であった。
 消耗はあれど、それは彼にとって微々たるもの。
 いや、だがしかし。
「見事であるといえるだろう。お前たちの為すこと。されど、我が求めるのは、この程度ではない」
 偽りの王。
 偽りの太陽。
 それを抱えながら『蛇王ペイヴァルアスプ』は猟兵たちをねめつける。

「お前が誰だろうが俺はこの先に用がある。だから貴様を倒す、それだけはっきりしていれば十分だ」
 護堂・結城(雪見九尾・f00944)は『蛇王ペイヴァルアスプ』の重圧伴う視線を真っ向から受け止める。
 体が悲鳴を上げそうなほどの力量。
 されど、猟兵にとってオブリビオンとの戦いとは常にそうだ。個としての力はオブリビオンに及ばぬ猟兵。
「氷牙、吹雪、征くぞ。デカブツにはデカブツだ」
 結城の瞳がユーベルコードに輝く。
 雪見九尾の夢幻竜奏(ハンギャクノウタヲカナデヨ)は、お供の竜を模す属性魔法による巨大兵装で覆う。

 この世界には理不尽が見ている。
 死すら救いではない世界。
 死した後ですら虐げられる生命がある。いびつであると思えるし、同時にどうにもやるせない怒りが湧き上がってくる。
 命を弄ぶ者。
 それがオブリビオンであるというのならば、その理不尽さに反逆するのが結城という猟兵であった。
 反逆の意志はここに極まれり。

「一人一人が弱くとも、打ち倒すまで俺たちは挑みかかる。その数を従えるアンタならわかるだろ? だから――」
「然り。汝らは侮るに値せず」
『蛇王ペイヴァルアスプ』より放たれる大蛇の群れ。
 己の体を形成する大蛇が膨れ上がるようにして結城に駆け抜ける。大波の如き大蛇の群れ。
 それを前に雷の力を発露させ、最速で結城は群れの中を駆け抜ける。
 手にした無敵斬艦刀が吠えるようであった。

「舐めるなよ」
 肉体が悲鳴を上げている。
 どれだけの恐怖が己の体を射抜いているかわからない。
 圧倒的な存在。
 されど、『蛇王ペイヴァルアスプ』は圧倒的でありながら、試金石でしかない。目の前の存在を打倒できなければ、この後に控える『歓喜のデスギガス』などもってのほかである。
 肉体の痛みは無視する。

 雷が大蛇を討ち滅ぼし、振るう無敵斬艦刀の斬撃が『蛇王ペイヴァルアスプ』の巨腕と激突する。
 振り抜く一撃は両断するには至らない。
 けれど、その身を形成する大蛇を切り裂きながら血潮を噴出させる。
「脆弱。その一言に尽きる」
 結城の筋肉が引きちぎれる音がした。
 振り抜くつもりで打ち込んだ斬撃であったが、頑強たる『蛇王ペイヴァルアスプ』に押し止められるのだ。

「体を悲鳴をあげようが、ここで止まれねぇ」
 そう、止まれるわけがない。結城にとって、ここは足踏みしていい場所ではない。さっそうと駆け抜けなければならない場所だ。
 理不尽から救うために。
 そのためだけに己の中の限界を超えていく。
「何が来ようとこの宵闇の中で絶望を砕く『無敵』であると誓った。こんな所で足踏みなんぞしてられるか!!」
 振り抜く無敵斬艦刀の一撃が『蛇王ペイヴァルアスプ』の巨腕を一刀両断する。
 血潮が降り注ぐ中、結城は己の肉体が悲鳴を上げる。

 されど、その『無敵』たる誓いは反逆の意志に比例するように、断ち切れぬはずの存在を斬撃でもって押し込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK

さあ、始めようか
王かどうかはどうでもいいし、嘘か真かも、さして興味はないけれど
その光は、腹立たしいと思うよ

SPDで
なんでだろうね、力量差なんて分かりきってるのに、同じ土俵でやりあって、一瞬だろうと凌駕してやりたいと想うのは
僕にも多少、陽の光に感じるところがあるからなのか……それとも偽りとなり損ないのシンパシーか
まあそんな感情は重要じゃない

見える分で避けれる攻撃は避ける
逃げられないなら受ける
その腕とこちらの光で相殺できるならぶつける

効率が悪くても、分が悪い戦いでも、ここで退けばこの先、最期までなんて到底行けない
だから、進ませてもらうよ



 猟兵の一撃が『蛇王ペイヴァルアスプ』の巨腕を切断する。
 それは猟兵たちにとって開かれた活路であったことだろう。だが、その活路はすぐさま閉じる。
『蛇王ペイヴァルアスプ』の大蛇で構成された体がうごめくようにして、切断された巨腕を再生し、鞭のようにしならせる。
「弱き者に同情を禁じ得ず。汝らの抵抗に意味はない。我にとって、それは些細なことであるがゆえに」
 偽りの太陽が『蛇王ペイヴァルアスプ』の胸で輝く。
 その輝きをダークセイヴァーに生きる者は求めた。ここが積層世界であることも知らず、天にある月すらも偽り。
 空ではなく天井。

 そんな世界に生まれ落ち、死すら救いでないと知ったのならば、その絶望はどれほどのものであったことだろうか。
 その絶望を啜り、玩具にする存在がいる。
「さあ、始めようか」
 告げる猟兵、肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)は『蛇王ペイヴァルアスプ』がしならせる鞭のごとき腕を前にしてもまるで動じていなかった。
「王かどうかはどうでもいいし、嘘か真かも、さして興味はないけれど。その光は腹立たしいと思うよ」
「然り。汝らが言うところの太陽など此処には非ず。そして、我が抱くは偽りの太陽。汝らの怒りも苛立ちもまた我の糧である」
 ミサキは迫る大蛇の鞭を躱す。

 いや、かわせていない。
 腕のしなる一撃は別方向からも襲いかかる。ミサキの腕に振るわれた一撃が、彼女の骨をきしませる。
 痛みが走る。
 けれど、それはどうでもいいことであった。
 力量差なんてわかりきっている。目の前のオブリビオンはこれまで対峙してきたダークセイヴァーのヴァンパイアとは比較にならぬほどの強敵。
 わかっている。
 本来なら同じ土俵で戦うべきではないと。
 けれど、それでも一瞬であろうとも同じ土俵で凌駕してやりたいと想うのだ。

 意地と呼ぶのならばそうであったのだろう。
「消えなよ、君」
 目障りだと思ったことも本当だろう。
 あの『蛇王ペイヴァルアスプ』の胸に抱かれる偽りの太陽。その輝きがミサキの心に爪を立ててかきむしるのだ。
 いや、それ以上にあるのは偽りとなり損ないがゆえのシンパシーであったことだろう。
 焦げ付いた陽光(ブラックサン)は、それすら重要なことではないと切って捨てる。

 ユーベルコードの輝きは、両眼より放たれ続け、生み出される漆黒の高熱球体から発生する光線が迫る大蛇の鞭と正面からぶつかって四散していく。
 ミサキのユーベルコードは味方を攻撃しなければ寿命が減るという枷を持っている。けれど、彼女は全ての攻撃を『蛇王ペイヴァルアスプ』へと向ける。
「汝の生命を削るに値する行いか。我にはそう考えられず」
「効率が悪くても、分が悪い戦いでも、ここで退けば……」
 そう、此処で退いてはならない。
 ここで一歩後退するということは、一歩以上の意味を持つ。

 彼女が目指すのは最期だ。
 全てを終わらせたいと願い、それを自分自身の手だけで行おうとする彼女にとって、己が傷つくことなど既に最初から度外視。
「最期まで到底行けない。だから、進ませてもらうよ」
 偽りの太陽の輝きを穿つ、黒き太陽の光。
 それをミサキは、我が身を削りながらも解き放ち、迫りくる驚異的な『蛇王ペイヴァルアスプ』の攻撃を相殺し続ける。

 生命が削れてもいい。
 この戦いに意味があるのか、ないのか。それすらも今はどうでもよかったのかもしれない。
 今、目の前の偽りの太陽を抱く存在を一瞬でも凌駕できればいい。
 魂が痛みながらも、それでも振り絞るようにしてミサキは己の力を発露させ、偽りの太陽たる『蛇王ペイヴァルアスプ』の胸に黒き太陽の一撃を打ち込み、貫くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
作り物の空の上もまた絶望と怨嗟の地でしたか
しかし、それでこそ我等がここに至った意味がある

我等が為すのはただ狩り喰らうのみ
この地に満ちる悉くを喰らい尽くさん

【行動】POW
五感と第六感+野生の勘を働かせ瞬間思考力+戦闘知識を使い敵行動や前兆、攻撃を見切る

先制攻撃+UCに怨念の炎を宿し爆破と同時に焼却+生命力吸収の呪詛を付与、敵を蝕む
影の腕が繋がったら残像+フェイントを囮に反撃を回避、黒酸漿を呼び出し大蛇をなぎ払い捕食させる
自身は影の腕を怪力で引き寄せ敵に接近、爆破を受けた箇所を狙って串刺し、UCを流し込み傷口を抉る
とどめにならなければ大蛇をなぎ払い+範囲攻撃で切断し、黒酸漿に騎乗して次の機会を狙う



 常闇の世界、ダークセイヴァーの上層は、地獄と形容するのが相応しい場所であった。
 空は作り物。
 あるのは救済ではなく絶望。
 己たちの生命が一体何をすれば、このような仕打ちが待ち受けるのか。
 何も理解できぬままに『魂人』たちはオブリビオンの玩具へと成り果てる。それでも、彼等は死を否定し続ける。
 暖かな記憶すらも代償にして、彼等は摩耗しながら生きている。

 この地には絶望と怨嗟が満ちているように西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は思えたことだろう。
「しかし、それでこそ我らがここに至った意味がある」
 黒き太陽の一撃が偽りの太陽を抱く『蛇王ペイヴァルアスプ』を貫く。
 その一撃を持って、猟兵達は底しれぬ闇の種族に果敢にも立ち向かう。これが試金石であることは言うまでもない。
 これから猟兵たちが対峙しなければならないのは、闇の種族以上の化け物。禁獣『歓喜のデスギガス』である。

 そう、織久が此処に至ったのは、多くを救うためではない。
「汝らがどれだけ我に立ち向かうのだとしても、全ては徒労であるということを証明する。汝らに意味無し」
『蛇王ペイヴァルアスプ』のユーベルコードが煌々と輝いている。
 満ちる重圧。
 これまで猟兵たちの攻撃を受けて尚、迫る力の発露は凄まじいものであった。これが闇の種族。
 ダークセイヴァー上層の敵。
 織久の中に満ちるのは憎悪だけであった。
「我等が為すのはただ狩り喰らうのみ」
 意味がないと言われようと、織久のやるべきことはかわらない。まったく変わらないのだ。

 距離を詰める。
 敵のユーベルコードは輝くばかり。これこそが『蛇王ペイヴァルアスプ』のユーベルコードの溜めであるのならば、織久に許されたのは、この僅かな時を逃さぬこ

とであった。
「この地に満ちる悉くを喰らい尽くさん」
 黒い影が放たれ、影の腕が『蛇王ペイヴァルアスプ』と繋がれる。怨念の焔が立ち上り、生命吸収の呪詛が大蛇で構成された身を蝕む。
「徒労だと言った」
 だが、その体は無数の大蛇で構成されているがゆえに、呪詛に侵された部分を切除するように大蛇を切り離す。

 この程度は予想できたことであった。
 けれど、影の腕が互いを繋いでいる。逃さないということは、逃れられないということである。
 織久は互いをつなぐ影の腕を引き寄せる。
 凄まじき怪力。だが、『蛇王ペイヴァルアスプ』は引き摺られることはしない。万力でもって大地に穿たれた杭のように動かないのだ。
「――……!」
「膂力、魔力、あらゆるものが我には無意味」
 放たれる大蛇の群れ。
 それらを薙ぎ払いながら、織久は黒き鱗を持つワイバーンにまたがり、空へと飛び上がる。

 敵の力は強大そのもの。
 だが、織久の怪力と黒き鱗のワイバーンの翼でもって『蛇王ペイヴァルアスプ』は漸くに大地に引き摺られる。
「何人たりとも死の影より逃れること能わず。それを知るのならば、我等の怨念の深さは」
 執念でもって織久は『蛇王ペイヴァルアスプ』の肉体を己の領域に引きずり込む。即ち、ワイバーンによる空中へと引き上げるのだ。
 背を蹴って、織久は抜き手でもって、かの大蛇で構成された肉体にユーベルコードに輝く黒い影を流し込み爆破する。

「――、っ、――!!」
 穿たれ、傷を広げる。
 どれだけ強大な存在であっても、削れるまで削り取るのみ。織久はワイバーンの背に着地し『蛇王ペイヴァルアスプ』の身を穿つ一撃を見届ける。
 彼を突き動かすのが怨念憎悪であるのならば、その身にある者たちは言うだろう。
 まだ足りないのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
王を名乗るにしては微温いな

状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを無限に破壊、自身から断絶し否定
尚迫るなら世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給

破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

原理を廻し高速詠唱を無限に加速、循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、敵勢へ向け斉射
更に射出の瞬間を無限循環し戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす

創生し最古の理に例外はない
蛇も闇も等しく消え去るのみ

真でも偽でも構わん
終わったものは正しく終わっておけ

※アドリブ歓迎



 怨念の一撃が爆破でもって『蛇王ペイヴァルアスプ』の肉体を弾けさせる。
 大蛇で構成された肉体は群にして個。
 例え、傷んだ部位を切除したとしても、すぐに形を補填する。煌めくユーベルコードに寄って、切り放たされた大蛇たちに翼が生え、飛翔する。
 それは大波のようであった大蛇の群れを、今度は逃れ得ぬ暗雲の如き姿と変えて、猟兵たちに迫る。
「我は偽りの王。真に至らぬ王。されど、汝らに負ける道理など存在しうること能わず」
『蛇王ペイヴァルアスプ』は己を偽王と嘯く。
 いや、それは真実であったことだろう。

 このダークセイヴァー上層にありては、かの強大なオブリビオンとしての力は王に至らない。
 此処にあるのは禁獣『歓喜のデスギガス』である。
 かの悪夢の如き力はあらゆる力も、どんな攻撃も、どんな理もたわみ弾き返す。理外。言語道断。究極の心理が言葉で現すことができないように、『歓喜のデスギ

ガス』のちからは今の猟兵を持ってしても打倒不能であった。
「王を名乗るにしては微温いな」
 だが、偽りとて王。
 その『蛇王ペイヴァルアスプ』を前にしてアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は淡い青光を纏て迫る。

 すでに戦場は猟兵達によって膠着にまで持ち込んでいる。
 強大すぎる存在。
 猟兵は個としてオブリビオンに勝ることはない。けれど、あらゆる難敵を排してきた猟兵たちにとって個としての戦いに意味はない。
 目の前の『蛇王ペイヴァルアスプ』もまた例外ではない。
 消耗させられている。
 戦いにキレがないといえる。最初の頃のような勢いがない。小手先のように大蛇の群れを解き放つのが証左と言えただろう。
「我は真ならざれば。我は偽りであればこそ、真に至るためにあがくものなり」

 アルトリウスを襲う大蛇の群れは、しかして原理の彼方に破壊されて消えていく。
 自ら断絶し否定するものを全て世界の外に息しながら、余波を無視し、原動力となる魔力すら外より組み上げていく。
「真でも偽でも構わん。終わったものは正しく終わっておけ」
 煌めくユーベルコードが、破界(ハカイ)する。
 障害を無視し万象を根源から消去する創生の権能が顕れる。

 青光の魔弾が空を埋め尽くす。否、天を埋め尽くす。
 ダークセイヴァー上層にありてもなお、空は偽りのもの。空でもなければ、天でもない。ただの天井。
 そこに境があり、今も尚人の絶望を喰らう獣共の領域が広がっている。

 人の生命は玩具。
 それがこのダークセイヴァー上層に存在するオブリビオン、闇の種族の特権でもあった。
 加速する。
 循環し、生み出されていく青光の魔弾が大蛇の群れを穿ち続ける。
 魔弾の軌跡が青色に天を染める。
 偽りの青空。
 されど、此処にあるのは偽りの太陽を貫かれし、『蛇王ペイヴァルアスプ』のみ。
「創生し、最古の理に例外はない。蛇も闇も等しく消え去るのみ」
 闇色に染まるのならば、その上から塗りつぶす。
 いつの日にか、空を見上げることがあるように。そんなものなどもしかしたらないのかもしれない。

 けれど、闇より救われるか。それとも己自身を救うか。
 どちらにせよ、人の魂は大地の底に閉じ込めておけるものではないと示すように青光の魔弾が天を駆ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…まさか、偽りとはいえ太陽を宿した敵が現れるとはね

…確かに強大な力を感じるし、私の力だけで勝てるか分からない

…だけど、それならばそれでやり様はある。その胸に抱く太陽がお前の敗因と知るが良い

「怪力の呪詛」に限界突破した魔力を溜め一時的な防具改造を施し、
敵UCによる両腕の乱れ撃ちを超強化した身体能力で回避して受け流し、
避けきれない攻撃は大鎌によるカウンターと呪詛のオーラで防御しつつUCを発動
死角から召喚した血液魔法陣を敵の体内に切り込ませて肉体改造を施し、
胸の疑似太陽の輝きで浄化される吸血鬼化を試みる

…その積み重ねた偽りに相応しい幕引きを与えてあげる

…さあ、お前自身の太陽に焼かれて灰になるが良いわ



 貫かれた偽りの太陽の如き輝きが明滅する。
『蛇王ペイヴァルアスプ』は強大なオブリビオンである。闇の種族と呼ばれるダークセイヴァー上層を支配する存在だ。
 けれど、その強大な力をしても禁獣『歓喜のデスギガス』には及ばない。
 ゆえに偽りの王。
 王を僭称するだけの存在にすぎない。
「……まさか、偽りとはいえ太陽を宿した敵が現れるとはね」
 強大な力をリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は感じていた。

 己の個としてよりも格段の上。
 みなぎる力は重圧となって己の肌を貫く。己の力では勝てないかもしれないと彼我を判断する。その判断は間違っていない。
 けれど。
 それでも、彼女は誓っている。人類に今一度の繁栄を。そう願われ、祈られ、己の為すべきことと定めたのだ。
「……だけど、それならばそれでやり様はある」
「無論。汝らのそれは徒労。意味のないことである。論ずるに値せず。汝らの言う言葉には意味がない。我には感じられぬ。汝らのいうところのやりようとは如何程

のものか」
 螺旋状にねじれた大蛇の肉体から放たれる、鋭い鞭のような腕のしなり。

 それはリーヴァルディをして、ギリギリの攻防であった。
 いや、怪力の呪詛に限界突破した魔力を込めていなければ、確実にその時点でリーヴァルディは大地に沈んでいたことだろう。
 乱れ打ちのように放たれる『蛇王ペイヴァルアスプ』の鞭の如き腕の乱打。
 それを強化された身体能力で躱し、または受け流す。
 受け流した腕が痺れる。痛みが体中に駆け抜けていく。受け流しきれない。大鎌を手にした腕が限界を告げる。
 オーラを重ねてもなお、伝わる衝撃。
 これが闇の種族。
 ダークセイヴァー上層。これまでとは比較にならぬほどに強大な存在を前にしてリーヴァルディは一歩後ずさる……ことなどするわけがない。

 彼女は走る。
「……其は人ならぬ穢れた血脈、汝は呪わしき咎人、ヴァンパイアなり」
 そのユーベルコードのきらめきが、一瞬で『蛇王ペイヴァルアスプ』に飲み込まれていく。
 それは死を連想させるものであったかもしれない。
 一瞬で食い破られる。
 けれど、その血液魔法陣は『蛇王ペイヴァルアスプ』の体内に取り込まれた瞬間に発動する。
 吸血鬼狩りの業・偽証の型(カーライル)。
「その胸に抱く太陽がお前の敗因だと知るが良い」
 ヴァンパイアとは陽の光に焼かれる存在。
 ならば、目の前の『蛇王ペイヴァルアスプ』が闇の種族であろうとなかろうと、強制的に偽証してみせる。世界の理すら騙すユーベルコードは、『蛇王ペイヴァル

アスプ』の肉体を構成する大蛇の全てをヴァンパイア化する。

 血液魔法陣を敢えて食い破らせたのは、それ自体を飲み込ませるためのブラフ。
「……その積み重ねた偽りに相応しい幕引きを与えてあげる」
「理解しえず。偽りは我が決めること。何人たりとも我を偽れず」
「……いいえ。お前は偽りの王でありながら、偽りのヴァンパイア。ゆえに、その胸に抱く偽りの太陽によって焼かれる」
 リーヴァルディの瞳がユーベルコードにきらめいている。

 内部より焼く太陽の火。
 偽りであったとしても、ヴァンパイアであるという概念付与は絶えず内側から焼き続ける。その痛みが、これまで『魂人』たちを玩具として弄んだ罪であるという

のならば。
「……さあ、お前自身の太陽に焼かれて灰になるが良いわ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

ようやっと来れたのです。ここで躓くわけにはいかないんですよー。ねぇ、皆さん?
(内部への呼び掛け。返答は「応」)
ふふ、本当に…こういう世界だとはねー。

さてさてー、UC発動させておきましてー。ええ、呼ぶがよいですよー。
噛まれようが巻き付かれようが…全ての攻撃を『私たち』の力としましょう。
漆黒風を全力投擲し、四天霊障で押し潰していきましょう。

悪霊として、魂人は放っておけないんですよねー。だって、近しい存在ですからー。
だから、四悪霊はここに来た。退くがいい、オブリビオン。



 ダークセイヴァーは積層世界である。
 それは猟兵たちにとっては周知の事実。既に知り得た情報であるがゆえに、下層ではなく上層にたどり着いた時、新たに実感するものであったことだろう。
 偽りの空。
 偽りの月。
 ないのは太陽ばかり。されど、『蛇王ペイヴァルアスプ』自身の肉体を焼き続ける、貫かれた偽りの太陽は燦然と輝く。
 翼をもった大蛇が放たれ、ユーベルコードの輝きとともに猟兵に迫る。
「我は偽りなれど、我は真に至る者。汝らが我を打倒すること能わず」
 重圧は本物だ。
 これまで対峙してきたどののヴァンパイアよりも強大で、凶悪。

 その巨躯は今や猟兵たちの攻撃に寄って消耗著しい。
 体を構成する大蛇は肉を焼かれ続け、それでもなお、威容を保っていることが闇の種族の強大さを物語る。
「ようやっと来れたのです。ここで躓くわけにはいかないんですよー。ねぇ、皆さん?」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『疾き者』が己の中にある他の三柱へと告げる。
 そう、ダークセイヴァーはオブリビオン支配盤石たる世界。
 その上層に位置するこの場は、さらなるオブリビオンによる嗜虐の地。ゆえに、彼等の応える言葉は、短くも心を同じくするものであった。

「ふふ、本当に……こういう世界だとはねー」
 世界はいまだ悲哀に満ちている。
 己に迫る大蛇の群れと同じく、多くの悲しみと苦しみ、そして痛みに満ちている。それを為すのがオブリビオンであるというのならば、『疾き者』は加減を覚えな

いだろう。
 迫る大蛇が己の体に絡みつき、牙を立て、食いちぎる。
 一瞬で体の全てが貪り尽くされるかのような感覚。けれど、『疾き者』は消えない。消えるわけがない。
 己の中から溢れる呪詛。
 それが自身の肉体を再構成していく。

「因果は巡りて回る。どこまでも」
 四悪霊・『回』(シアクリョウ・マワル)。
 それは彼等悪霊の源たる呪詛があればこそ。あらゆるユーベルコードを敢えて、受け止め、その力を強化していく力。
「全てを『私達』の力としましょう。
 手にした棒手裏剣を握りしめる。ぎりぎりと音を立てるようであった。

 漲る力を渾身たる一投に込めて、宙を切り裂く黒き一撃。
 疾風のように放たれた棒手裏剣を押し留めようと翼ある大蛇たちが殺到する。だが、それで止められるものではない。
「悪霊として、魂人は法っておけないんですよねー」
 近しい存在であるから。
 そして、今も尚苦痛にあえいでいるから。ゆえに、救わねばならない。
 ただ、その一念のみがあらゆる力の差を凌駕する。

「だから、四悪霊は此処に来た」
「意味のないことだ。どれだけ生きても、どれだけ死ぬのだとしても、死は救済ではない。救いなど何処にもない。あるのは永劫回帰のみ」
「退くがいい、オブリビオン」
 めぐる力は、あらゆる障害を貫いて『蛇王ペイヴァルアスプ』の肉体を穿つ。
 穿つ、という表現すら生ぬるい。
 棒手裏剣の一投は、障害を貫き、さらには『蛇王ペイヴァルアスプ』の肉体に巨大な穴を穿つ。

 躓くことなど赦されない。逡巡すら赦されない。
 あるのは、ただ前に進むことだけ。
 己が投げ放った棒手裏剣のように、ただ一直線に最短を駆け抜けるのみ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギヨーム・エペー
まだ、地上は先か。地下とて太陽か海があればいいのにと思ってはいたが、こうも邪悪だとは。おれの考えが甘いのか、果ての果てまで暗闇が続いているのか確かめたくてしょうがない!!
偽りも努力も積み重なるから崩れるんだ。真になりたくば、自ら崩して再構築しないとな!

恐れはしないさ。だが油断もしない。まずは一体一体を氷花で撃ち落とす。翼をよく狙って、地に落ちれば大地に縫い付けるように杭を落とす。その間、召喚主は前進してくるだろうが牽制はしない。しかし見据えて、時を待とう
落ち着いて。魔力を溜めて。フェイントにも力比べにも誘われないように。仕込み杖の刀身が届く距離まで近付かれたら抜刀を。氷水の魔力を叩きつけよう!



 ギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)にとって必要であったのは、地下であれなんであれ太陽か海。
 そのどちらかがあればいいと思った。
 両方あれば良いというのが本音である。けれど、この常闇の世界ダークセイヴァーにおいて、それは贅沢というものであった。
「まだ、地上は先か」
 見上げるのは、ダークセイヴァー上層にありて、偽りの空。否、天井である。
 浮かぶのは偽りの月のみ。

 どこまでも、この世界はギヨームに望むものを与えてはくれない。
「こうも邪悪だとは。おれの考えが甘いのか、果ての果てまで暗闇が続いているのか確かめたくてしょうがない!!」
 激昂ではない。
 あるのは、ただの事実のみ。目の前にある『蛇王ペイヴァルアスプ』の巨躯、その強大な重圧がギヨームの肌を焼くだろう。
「意味のないことだ。偽りゆえに、汝らの行動に意味はない。無意味であると我は断じるだろう」
 穿たれた肉体。猟兵たちの攻撃に寄って大穴を穿たれ、身を焼かれながらも尚、『蛇王ペイヴァルアスプ』はきらめくユーベルコードと共に翼ある大蛇の群れをギ

ヨームへと差し向ける。

 一匹一匹が凄まじい力を持っている。
 自らを偽りの王と僭称する『蛇王ペイヴァルアスプ』ですら、この領域においては前座、試金石にほかならない。
 本物の化け物が、この先に在る。
「偽りも努力も積み重なるから崩れるんだ。真になりたくば、自ら崩して再構築しないとな!」
 ギヨームは走る。
 Prune des neiges(プリュネデネージュ)。放たれる氷の槍。
 迫る大蛇を貫きながら、撃ち落としていく。

「恐れえずとは、愚かなる振る舞いである。恐れもなく、ただ蛮勇にて突き進むのならば、訪れるのは滅びのみ」
「恐れはしないさ。だが油断もしない」
 氷の槍が大蛇の翼を貫き、杭のように大地に縫い付ける。
 一体一体を倒すことは必要ない。
 なにせ、この物量さである。そんなことをしていては、必ず数で圧殺されてしまう。
 だからこそ、ギヨームは走る。
『蛇王ペイヴァルアスプ』は、今や絶対無敵でもなんでもない。
 度重なる猟兵の攻撃にさらされて、その身を崩し始めている。押し込むのならば今しかない。
 見据える瞳は、苛烈さを潜めていた。

 氷の花のような槍の一撃を放ちながら、心を冷たくする。
 熱した感情は押し殺すのではなく、秘める。ゆえに、ギヨームは魔力を溜めていく
 生成される魔力の槍。
 その一射が『蛇王ペイヴァルアスプ』の手のひらに突き刺さる。血潮が噴出する。けれど、それはフェイントだ。
「おれを止めるのは恐れなんかではないさ。そんなもので止められない。お前は蛮勇とこれを呼ぶのだろうが、人は違うんだぜ?」 ギヨームは仕込み杖から刀身を

抜き払う。

 勝負は一瞬。
 この一撃にギヨームは掛ける。本命は刀身に込められた氷の魔力。
 満ちる魔力が刀身より放たれ、『蛇王ペイヴァルアスプ』の巨躯を袈裟懸けに傷を刻む。
 くずぐずに焼けている肉体。
 偽りの肉体を焼き続ける太陽。その一撃は、ギヨームだけではたどり着くことはできなかった。
 猟兵たちが踏み越えねばならぬ強敵は、さらにこの上を行く。
 悪夢だけが己たちの目の前に立ち塞がるのならば、その悪夢すらもギヨームたちは乗り越えていかなければならない。

 躊躇いも、恐怖も、焦燥も、何もかもギヨームは己の心に秘する熱と共に振り払って『蛇王ペイヴァルアスプ』に痛烈なる一撃を刻むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリー・スペルティナ
この世界上も下もホントにいい所ないですわね……やる事に変わりはありませんけど。さあ、さっさとそこをどいてもらいますわよ!

闇に紛れ姿を隠しつつ攻撃には第六感で頑張って避けますわ
多少の痛みは平気ですがこの後がまだ残ってますし

距離があればクロスボウで『使い捨て血晶石』を撃ちだし、近ければ『シュバルツシュテルン』での斬撃を浴びせます。相手のUCは指定から発動まで時間がかかるから、その間にできるだけ出血と呪詛による弱化を狙っておきますわ

いざ発動されたらこっちもUC!「触れた者の強い感情を取り込み奪い去る」呪血の霧に変えて包み、そうしてこの血の中へと溜め込まれ続けた無数の「呪詛」を浴びせてやりますわ!



 ダークセイヴァー世界には救いはないのかもしれない。
 そう思わせるほどに苛烈なる支配が続く。
 死すら救済ではない。死は新たなる支配待ち受ける通過儀礼でしかないことを、ダークセイヴァーに生きる人々は死するその時まで知らないのだ。
 どんなに非常なることであっただろうか。
 支配され、生命の尊厳すらなく殺されていく運命。
 それを呪い、悼み、そして死という救済に憧憬を抱く。誰もが通る道だろう。

 けれど、ダークセイヴァー上層は、死の先にある世界である。
 そこにも救いはない。あるのは、再びオブリビオンの玩具と成り果てるという事実のみ。
「この世界、上も下もホントにいいところないですわね……やることは変わりありませんけど」
 メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は嘆息するだろう。
 けれど、心にあるのは死者を悼む心であった。
 徒に奪われていくだけの生命などあっていいはずがない。
 対峙する『蛇王ペイヴァルアスプ』はたしかに強大な存在だろう。身を焼く重圧は凄まじいものであるし、到底、個としての力は及ばない。

「ならば我は偽り野王として汝らを滅ぼすのみ。我がやることは依然変わらず。我は真に至るまで、滅びず」
「うるさいのですわ。さっさとそこをどいてもらいますわよ!」
 メリーの姿が闇に紛れていく。
 敵の攻撃は強大にして強烈。しかし、その溜めを作り出すために、時間を要する。ならばこそ、メリーは果敢に攻め込む。
 多少の傷はいとわない。
 この後に控える『歓喜のデスギガス』は、『蛇王ペイヴァルアスプ』を遥かに凌ぐ難敵であるのだ。

 ここで立ち止まっている暇などない。
 クロスボウから放たれた血晶石が打ち出され、『蛇王ペイヴァルアスプ』の肉体を穿つ。
 ぐずぐずに焼ききれた肉体であればこそ、この血晶石が打ち込むことができる。猟兵達の攻撃に寄って消耗している証拠だ。
「随分と弱っているご様子。一気に畳み掛けますわ!」
 敵の攻撃の溜めが終わるその時までに、メリーのすべきことは、『蛇王ペイヴァルアスプ』の消耗。
 あの大蛇の群れは、必ずやメリーを押しつぶすだろう。
 ならばこそ、踏み出す。
 恐れを踏み越えて、進む先にあるのは勝利だけだ。

 メリーの手にした波打つかのような刀身を持つ黒き剣が翻り、『蛇王ペイヴァルアスプ』に傷を打ち込み続ける。
 呪詛。 
 それはこれまで多くの人々の生命を弄び、そしてすすってきたものに対する恨み、憎悪であった。
「我が大蛇の波に飲まれて消えるがいい。我は、真に至るもの。今は偽りなれど、汝らを滅ぼす」
 放たれる大蛇。
 その群れは、群れと呼ぶにはあまりにも膨大な数であった。
 大波のような、津波のような痛烈なる一撃。

 けれど、メリーの瞳はユーベルコードに輝く。
「わたくしだってやればできますのよ!」
 強化呪式:紅の冥霧(エンハンス・ブラッドミスト)。それは己の肉体を呪血と同じ性質をもつ紅い霧に変える力。
 触れた者の強い感情を取り込み奪い続ける呪血。
 偽りに対する強烈なる感情。
『蛇王ペイヴァルアスプ』が抱えるのは、そればかりであった。王を冠しながら、己を凌駕するものが跋扈する世界。
 それに対する怒り。
 ただ、己が真に至るために、あらゆる生命を犠牲にしても止むなしと言う、エゴ。それを受けた呪詛をメリーは溜め込み、一気に放出する。

「これがあなたの感情。あなたの呪詛! 思い知るがいいですわ、この醜さこそが、自身を滅ぼすのです」
 放たれた呪詛が大蛇ごと『蛇王ペイヴァルアスプ』を押し流し、その巨体を吹き飛ばす。
 メリーは荒い息を吐き出しながら、その瞳でもって暗闇の世界を見る。
 此処にあるのは悲しみと苦しみばかりだ。
 けれど、永劫回帰の力を持つ魂人は、己の中にある暖かな記憶を摩耗しながらも生きている。
 ならば、その思いにメリーは答えなければならないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
魂人に第三層…
そして歓喜のデスギガス…か
まあ、此処であれこれ考えても仕方ないし先ずは前座を突破させて貰おうか
油断は出来ない相手だけれども…時間を掛ける相手でも無い
先に進ませてもらうよ


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【蒼嵐大系】起動
自身の周囲に竜巻を纏わせて、敵の両腕の攻撃を受け流して対処しよう
それでも突破してくる攻撃は切り払って『武器受け』
後はこっちも接近して両剣で『串刺し』にして、そこから更に蒼き竜巻を発生させて『吹き飛ばし』てやろう
距離が取れたら竜巻を連続して飛ばして、ハメ殺しにしてあげよう

悪いけど、禁獣禁域…此処には興味があるからね前座には退場願うよ



 ダークセイヴァー上層。 
 それは積層世界であるダークセイヴァーにおける新たなる展望。されど、其処に待ち受けていたのは、さらなる絶望であったことだろう。
 ダークセイヴァーに生きる定命の者は、死した後、ダークセイヴァー上層に『魂人』として転生する。
 透き通る体。
 生前の暖かな記憶を抱えた彼等の前に待ち受けるのは、新たなる支配者のみ。
「魂人に第三層……そして『歓喜のデスギガス』……か」
 予兆を見た猟兵ならば、誰もがあの悪夢の如き存在を知るだろう。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は頭を振る。
 そう、ここでそれらに考えを巡らせて詮無きことである。

 今や、猟兵はダークセイヴァーの上層に足を踏み入れた。
 この先に在るのがどれだけの絶望であろうとも、玲は今更止まるつもりもない。『蛇王ペイヴァルアスプ』は猟兵たちの攻勢を前に、その肉体を消耗し続けていた。
 傷は大蛇で構成されるがゆえに、塞ぐことはできる。
 けれど、偽りの太陽で焼かれた肉体は、これまでの鋼鉄の如き堅き防御を崩し始めている。
「倒せないわけではない。まさしく前座ってわけだよね」
 油断はできない。
 けれど、時間を掛けることもできない。転生した『魂人』は『たった一人』。けれど、その『たった一人』を救えずして、これからの戦いを勝利することなどできようはずもない。

「然り。我は前座にして、偽りの王。認めよう。されど、認めず」
『蛇王ペイヴァルアスプ』より放たれる巨腕の鞭。
 それは大蛇で構成されるがゆえに、しなり、唸りを上げながら玲へと迫る。強烈な一撃は、ただの一撃ではない。
 一撃と認識した瞬間に放たれるは九連撃。
 抜刀した模造神器が蒼くきらめき、ユーベルコードの輝きを宿す。
「システム解放。風よ集え」
 蒼き竜巻をまとった模造神器が迫る巨腕の鞭をいなす。ぎりぎりと肉体が悲鳴を上げる。
 一撃一撃が重たい。
 受け流すことすら難しい。けれど、更に恐ろしきは、その九連撃の最中、突っ込んでくる『蛇王ペイヴァルアスプ』であった。

 あの巨躯で迫られたのならば、如何に玲とて耐えられることはできないだろう。
 だが、止める。
 止めなければならない。
「違うね、突き飛ばす!」
 蒼嵐大系(ストーム・システム)はそのための力だ。己の存在は視聴嗅覚では感知不能。
 なればこそ、目測は狂い、己の姿を捉えられぬ『蛇王ペイヴァルアスプ』はあらゆる面を攻撃しなければならない。
 そうなればどうなるかなど明白だ。

 面となれば、攻撃の圧は薄くなる。
 その薄くなった間隙を蒼き嵐が荒ぶ。
「悪いけど、『禁獣禁域』……此処には興味があるからね。前座には退場願うよ」
 突き出した模造神器の一撃が『蛇王ペイヴァルアスプ』を吹き飛ばす。
「――、我を、認めずか!」
 咆哮が轟く。
 けれど、その咆哮すらもかき消す蒼き竜巻が『蛇王ペイヴァルアスプ』を包み込む。
 まさに脱出不可能たる嵐の牢獄。
 削っていく嵐の斬撃は、それだけで『蛇王ペイヴァルアスプ』を消耗させてくだろう。
 玲にとって、最も興味深きことは、『禁獣禁域』のみ。
 ならばこそ、試金石たる闇の種族の打倒は時間を掛けることなどできない。闇の世界に蒼き刀身が煌めき、その道行きを照らす――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

うぇるかむにゅーわーるどっ!
って感じじゃなーい!

でも歓迎はしてくれてるのかなー?
なんだかキミも大変そうだねー
だから次の出番まで楽にしてるといいよ!
ボクたちに倒された後でね!
そう簡単にはいかないって?
それはなおさらやりがいがあるね!

●強敵歓迎!
[餓鬼球]くん1はそっち![餓鬼球]くん2はあっち!3番くんは頭を押さえる役ー!
と複数のビッグ[餓鬼球]くんで【第六感】で大蛇くんの動きを察知して大蛇くんの動きを止めてもらおう
止めきれなくても時間稼ぎができれば十分さ!

【第六感】でさらなる攻撃をかいくぐり見るからに弱点っぽいとこ(玉)にUC『神撃』でドーーンッ!!

かいもーーーんっ!



 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、はしゃいでいた。
 常闇の世界に現れた新たな世界。
 地上と思われていた第四層。さらに地下の第五層。
 そして、新たに判明した上層たる第三層。
 そこは新たな世界だとはしゃぐことを禁ずるかのような重苦しい空気が流れているようにも思えたことだろう。
「うぇるかむにゅーわーるどっ! って感じじゃなーい!」
 先程まではしゃいでいたが、ロニは首をかしげる。

 ここはダークセイヴァーの定命の者にとって、新たな地獄にほかならない。
 オブリビオンに弄ばれ、死だけが救済だと想う者たちにとって、ここは牢獄そのものであった。
 己たちが何をしたのか。
 己たちが此処までの仕打ちを受ける理由があるのか。
 暖かな生前の記憶を持って、死を否定する。その力があるからこそ、『魂人』たちは心折れるまでオブリビオンの玩具になるしかないのだ。
「でも歓迎はしてくれてるのかなー? なんだかキミも大変そうだねー」
 ロニは、蒼き嵐によってずたずたに引きされながらも大蛇で構成された体をうごめかせ、偽りの太陽に焼かれる体を引きずる『蛇王ペイヴァルアスプ』の姿を見やる。
「我は偽りの王なれど、真に至る王なれば。汝らは我に及ばず。されど、我を打倒しようとする」

「次の出番まで楽にしてるといいよ! ボクたちに倒された後でね!」
 ロニは闊達に笑う。
『蛇王ペイヴァルアスプ』の言葉はロニにとって意味のないことであった。過去の化身は、どうあっても過去よりにじみ出る。
 今とは違う存在であったとしても、『蛇王ペイヴァルアスプ』は歪み続ける。
 偽りの太陽を胸に抱き続ける限り、それは変わらぬことであった。
「まあ、そう簡単にいかないって言うよね。わかるわかる。それはなおさら、やりがいがあるね!」

 ロニの操作する球体が中を舞う。
 複数の巨大な球体が大波のように迫る大蛇を躱しながら、押しつぶす。けれど、敵の攻撃は強烈である。
 此処まで消耗させてもなお、迫る力は遜色ない。
「止めるに能わず」
「わーっ! って、止めきれなくてもいいのさ!」
 そう、ロニがほしかったのは時間稼ぎだ。大蛇の群れは、間断なく己に迫っている。
 ならば、ロニがほしいのは時間だ。
 見据えていたのは、その胸に抱く偽りの太陽の如き輝き。あれが弱点ではないかとロニは思ったのだ。

 けれど、あれは他の猟兵に寄って『蛇王ペイヴァルアスプ』の身を焼き続けるもの。確かに弱点と言ってもいいかも知れないが、それ以上に効果的なのは、体を構成する大蛇である。
「さっさと『禁獣禁域』をかいもーんってしないといけないからね! 遠慮なしにやらせてもらうよ!」
 どーんっ! とロニは笑いながら、ユーベルコードに煌めく瞳を『蛇王ペイヴァルアスプ』に向ける。
 構えも何も在ったものではない。
 在るのは拳のみ。

 信心無き者にすら神々しさを感じさせるほどの拳の一撃。
 神撃(ゴッドブロー)はあらゆるものを破壊する。
 迫る大蛇も、強靭極まりない『蛇王ペイヴァルアスプ』の肉体すらも砕く。あの肉体が大蛇で構成されているのならば、その全てを砕く。
「我を――」
「偽りだってなんだって構わないさ。ボクらは猟兵。キミはオブリビオン。ただそれだけさ!」
 だから、また次会おうね、と笑いながらロニは強烈な拳でもって振り抜く。
 己の拳がひどく痛むほどの強靭さ。
 されど、砕く一撃は確かに『蛇王ペイヴァルアスプ』の肉体の多くを削り、吹き飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
いきなりでっけぇのが現れましたわね…
なんの!そちらが蛇王ならわたくしは皇女ですわ〜!

本日のヴリちゃんはゲイルカイゼルですわ
わたくしは背中に騎乗ですわ

ヴリちゃん!蛇に巻き付かれないよう暴れ回りながら突き進むのですわ
手足やブレードで一挙一動が周りを傷付けるのですわ
けれど回転し過ぎるとわたくしがゲロネイジェになってしまいますわ!おろろ!
わたくしも王笏ハンマーでぶっ叩きますわ〜!生き物は頭を潰せば死ぬのですわ!

蛇王本体の下に飛び込んだらヴリちゃんは噛み付くのですわ
わたくしがヴリちゃん伝いに邪王に接近するのですわ
ディバインハンマー!光におなりなさい!
図体がおデカいので当てるのだけは簡単ですわ〜!



 グズグズと肉の焼ける音が響く。
 それは『蛇王ペイヴァルアスプ』の胸にいだいた偽りの太陽によって、その身が焼かれている音でもあった。
 内側から己の臓腑を焼かれながらも、『蛇王ペイヴァルアスプ』の声色は変わらなかった。どれだけ傷つけられたのだとしても、彼に取ってそれは些事であったから

だ。
「我を打倒しえず。偽りの太陽は、我にとって我が偽りであることの証左。ゆえに、我は滅びず」
 大蛇がうねるようにして偽り太陽を包み込み、その巨躯でもって迫る猟兵たちと相対する。

 凄まじいのは巨躯だけではない。
 その身より発する重圧もまた猟兵を圧倒する。
「いきなりでっけぇのが現れましたわね……なんの! そちらが蛇王なら、わたくしは皇女ですわ~!」
 メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は、飛翔する『ヴリトラ』の背に仁王立ちしながら告げる。
 その姿はまさに泰然自若たる堂々としたものであった。
「我に名は意味をなさない。王であれ、皇であれ、我の前では意味のないもの。ゆえに、我は滅ぼす」
 煌めくユーベルコードは消耗させられてもなお輝く。
 己を標的にしたユーベルコードは絶大なる力を発露する代わりに、その溜めが必要である。

 強大であればあるほどに、その時間は長くなるのだ。
 だが、それ以上にメサイアはためらわなかった。敵の射程内に飛び込むことを。『ヴリトラ』が咆哮しながら一気に『蛇王ペイヴァルアスプ』へと迫る。
「ヴリちゃん!」
 その言葉に応じるようにして、放たれた大蛇の群れを『ヴリトラ』は己の手足やブレードで嵐のように暴れまわりながら切り裂く。
 暴風の如き戦い。
 それは迫りくる大蛇の悉くを打倒する。けれど、前に進めない。敵の放つ大蛇の群れの層がぶ厚すぎるのだ。

『ヴリトラ』は回転しながら大蛇を寄せ付けない。 
 けれど、その背に乗るメサイアの三半規管は限界が近い。このままではエルネイジュが、キラキラネイジュになってしまいそうであった。
 うっぷ、と皇女らしからぬ声が聞こえそうになっていたが、ここは皇女の尊厳を死守せねばならぬことである。編集点というやつである。
「――ッ!!」
「暴竜の咆哮など遠きもの」
『ヴリトラ』が『蛇王ペイヴァルアスプ』に強靭な顎でもって噛み付く。

 その身を構成する大蛇を引きちぎりながら、血潮を撒き散らす。
 これまでの猟兵たちの攻撃がなければ、それすらも叶わなかったことだろう。敵の体を構成している大蛇たちが偽りの太陽に焼かれてもろくなっているのだ。
「どんな生き物でも頭を潰せば死ぬのですわ! 動いているように見えても、それはただの電気信号! ならば、頭! ヘッドショット!」
 メサイアの王笏が煌めく。
 それはユーベルコードにまで昇華されたメサイアの超天極光断罪神罰聖皇姫槌(ディバインハンマー)。

 一気に駆け上がる。
 振るわれる一撃は、光。
「ディバインハンマー!発動承認!セーフティデバイス、リリーブ!ディバインヘル!ディバインヘヴン!光に……おなりなさぁぁぁい!!!」
 流星のように放たれるメサイアの王笏ハンマー。
 それは強烈なり光とともに『蛇王ペイヴァルアスプ』の頭部を光へと変える。
 このダークセイヴァー上層にありて、その光は煌々と大地を照らす。死すら救いではないのならば、メサイアは皇女として人を救うまでである。

「図体がおデカイので当てるのだけは簡単ですわ~!」
 光へと消えていく『蛇王ペイヴァルアスプ』を前にメサイアはガッツポーズを取る。
 闇の種族の驚異は言うまでもなく。
 そして、これより彼女たちが対峙するのは、『蛇王ペイヴァルアスプ』よりも強大な存在。
 どうしようもないほどの悪夢じみた実力差。
 けれど、その実力差を埋めるのは、救わねばならぬという思いのみ。ゆえにメサイアは『ヴリトラ』の背に降り立ち、激戦を制したことを告げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『狂忠のヴァンパイアバトラー』

POW   :    ブラッドサッカー
噛み付きが命中した部位を捕食し、【血液と生命エネルギー】を得る。
SPD   :    ヘモイドミスト
レベルm半径内に【自身の血から生み出した赤い霧】を放ち、命中した敵から【体力や魔力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ   :    ゴアフェスト
【一定以上のダメージを受けた際】に覚醒して【コウモリの翼と獣の頭を持つ悪魔じみた姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:あさぎあきら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『蛇王ペイヴァルアスプ』を打倒した猟兵達は、闇の種族の強大さを知るだろう。
 これほどの力を持ちながら、第三層たる上層にはこれを超える怪物がいる。
 だが、試金石は示した。
 どれほどまでに強大な存在であろうとも、猟兵達は個ではなく繋ぐ戦いで持って制することができる。
 ならば、この先にあるであろう『禁獣禁域』へと足を踏み入れなければならない。

「お待ちしておりました。ですが、これよりは『禁獣禁域』。何者も通すわけには参りません。我等が主は禁獣と接触することを禁じておりますゆえ」
 猟兵達は気がつくだろう。
 気配なく、ずらりと居並ぶ『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちの姿を。
 彼等は見目麗しい執事そのものであった。
 けれど、そのひとみに在るのは狂気のみ。彼等は、闇の種族に仕える存在。胸に抱くは紋章。寄生型オブリビオンたる紋章によって強化された存在が、膨大な数でもって猟兵たちを出迎える。

 いや、出迎えると言うにはあまりにも慇懃無礼。
「かの禁獣と相対することは悪夢に対峙することと同じ。皆様方が夢を見る時、これを振り払うことができぬことと同義。ただ徒に心をかきむしるのみとなりましょう」
「ゆえに、我等が主は禁獣を刺激することを是といたしません。我等が忠義は主のために。されば、皆様を此処で葬り去ることこそ肝要」
「どうかお恨みなされるな。これも全ては我が主のため」
『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちが一斉に猟兵たちへと向き合う。

 彼等は全てが紋章つきヴァンパイアである。
 これまで一体であったとしても凄まじい力を持つ強敵であった紋章つき。これが膨大な数となって猟兵達の道を阻むだろう。
 だが、それにためらう時間など猟兵には、『魂人』には残されていない――。
七那原・望
オブリビオンフォーミュラとの戦いも、今この瞬間も、悪夢への対峙なんて今更な話です。
そしてお前達の都合なんて気にする価値もない。
以上です。急いでいるから早急に消えなさい。

果実変性・ウィッシーズラブを発動し、全力魔法の強化で速度の限界を超え背中の翼で空中戦。

この世界でヴァンパイアの手から救い出してくれた旦那様の事を思い出しました。
あの人がいなければわたしも魂人として延々と弄ばれてたのかもですね。
本当に、いつも感謝してもしきれない。

第六感で敵の行動を見切り、全力魔法の乱れ撃ちとセプテットの一斉発射による遠距離攻撃で殲滅を。

万が一近付かれたら咄嗟に敵の口元に結界術を展開し、噛み付きを封じます。



『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは言う。
 己の主のために、この先へは行かせぬと。
 しかし、この先――『禁獣禁域』には『魂人』が存在している。転生したてであり、未だオブリビオンに弄ばれていない五体満足の『魂人』が。
 オブリビオンに見つかれば、生命を弄ばれる。
 玩具のように、ただそれだけのために死すらも救済ではないという絶望に押し込まれてしまう。
 それをさせぬと七那原・望(封印されし果実・f04836)は告げる。
「オブリビオンフォーミュラとの戦いも、今この瞬間も、悪夢への対峙なんて今更な話です」
 取るに足らぬことである望は言う。
『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは、己の主のためにと言った。

 ならば、望は構える。
「そしてお前たちの都合なんて気にする価値もない。以上です。急いでいるから早急に消えなさい」
 ユーベルコードが輝く。
 己の中にある愛。
 それは、果実変性・ウィッシーズラブ(トランス・ウィッシーズラブ)。望む愛。己の愛の強さゆえに、彼女の力は増していく。
 夫や友人。
 親しい人々への愛が彼女の胸から溢れていく。
 翼が羽ばたき、限界を超えた速度で持って迫る『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちを寄せ付けない。

 その牙も爪も、何もかも望を傷つけるには値しない。
 想うのだ。
 愛を望み、与えられ、与える。胸に宿る暖かな記憶があればこそ、『魂人』が永劫回帰の力によって死を否定する。
 ならば、望の想いは今も溢れている。
「本当に、いつも感謝してもしきれない」
 彼女の周囲にめぐるは、七つの銃。
『セプテット』と名付けられた銃より放たれる魔法の弾丸は、己に迫る『狂忠のヴァンパイアバトラー』を寄せ付けない。

 例え、どれだけ紋章によって強化されているのだとしても怯むことはない。
 彼女の胸に溢れる愛は、いつだって彼女の背中を押すし、彼女を守ってくれる。
 この世界でヴァンパイアの手から救い出してくれた夫。
 あの手があったから、あの微笑みがあったから、あの気持があったから、今もこうして望は戦い続けることができる。
 もしも、と考えてしまうのだ。

 あの人がいなければ、自身もまた魂人として延々と弄ばれていたかもしれない。
 暖かな記憶をすり減らし、己の死を否定し続けるしかない日々など地獄そのものだ。望の翼が羽ばたき、魔法の弾丸が『狂忠のヴァンパイアバトラー』を討ち滅ぼす。
 明滅する火球が空を照らし続ける。
 眼帯の奥にある瞳は未だ輝かず。されど、ユーベルコードの輝きは、偽りの空を照らすように。
「わたしは望む……」
 何を、とは問うまい。
 いつだって答えは彼女の中にある。彼女がもらい、与え、溢れ続ける愛によってこそ彼女は戦い続ける。

 紋章つきのオブリビオンであったとしても関係ない。
 展開される結界が、彼女に牙を立てることを許さない。彼女の身は全て彼女の夫のもの。
 気安く触れることは許さない。
「例え、残酷な世界だったのだとしても。この愛は滅ぼされない」
 乱れ撃つ魔法弾が世界を照らす。
 愛こそが望を突き動かす原動力ならば、彼女に限界などないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK

まあ、そっちの主従関係も色々あるようだけれど
まあ安心してほしいのだけど、恨むなんてしないよ
そっちの都合関係無く、ああ、私達はお互い、どちらか死ぬまで戦うって決まってるんだもの
だから、君達、ここで死になよ

POWで
装備した武器で近接と、光熱での範囲焼却も合わせる

この身体に宿る熱を甘く見ない方がいい
夏場なんて、死にたくなるくらいなんだ
それがさらに上がるんだから、噛み付くつもりならそれ相応の覚悟をしてよ
そらに、吸血できるのが自分だけとも思うのも大間違い、私だって不味いゲテモノでも吸い返してあげる

大群で噛み付くなら、引き連れて高く翔んで、もろともに堕ちて潰れようじゃないか



『狂忠のヴァンパイアバトラー』は、己の主のためにと言う。
 その言葉は、このダークセイヴァーにおいてなんとも空虚に響いたことだろうか。彼等がどれだけ忠義を狂えるほどに抱くものだとしても、肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)には何一つとして響くことはなかった。
「まあ、そっちの主従関係も色々あるようだけれど」
 ミサキは呟くようにして言った。
 本心を言えば、大して興味がない。ただ、恨むことのないようにと告げた『狂忠のヴァンパイアバトラー』の言葉だけがどうにも気に食わないと思えたかも知れない。
 いや、気に食わないという感情ですらない。

「まあ安心してほしいのだけど、恨むなんてしないよ」
「ならば抵抗は無駄であると存じ上げておられますか?」
「我等が猟兵を前にして主の驚異を……いえ、それも些細なこと」
「そっちの都合関係なく、ああ、私達はお互い、どちらかが死ぬまで戦うって決まってるんだもの」
 ミサキは己が猟兵であることを自覚する。同時に彼等もそうだろう。目の前にいるものに名前をつけた所で意味はない。
 滅ぼし、滅ぼされるだけの間柄故。
「だから、君たち、ここで死になよ」
 白夜(オールライトナッシング)が訪れる。
 ミサキの体を覆うは白き灼光。
 日輪を背にミサキはドレスを翻すように、白熱し続ける。己の肉体の内側から噴出するような熱は、『狂忠のヴァンパイアバトラー』をして後ずさらせるものであった。

「この身体に宿る熱を甘く見ない方がいい」
 夏場などは死にたくなるほどであると、ミサキは嘯く。けれど、その熱はさらに上がっていく。
 近づくだけで『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちはたじろぐものであった。如何に紋章に寄って強化されていたとしても、ミサキの熱は際限なく上がっていく。
 ただれるような熱を前に彼等は、しかし狂気にも似た忠義を実行するためにミサキへと襲いかかる。
「熱を上げたとて――!」
「噛み付くつもりなら、それ相応の覚悟をしてよ」
 ミサキの言葉と共に振るわれる斬撃が熱を帯びて『狂忠のヴァンパイアバトラー』を一閃のもとに下す。

 白き灼光纏うドレスは、悠然と揺れる。
 その一瞬の間にミサキは空へと飛翔する。何処まで行っても天井がひろがる空。否、天。
 ミサキは己に追いすがる『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちを引き連れながら、反転する。
「吸血できるのが自分だけと思うのも大間違い」
 彼等の血はきっと美味しくはないだろうとミサキは思った。謂わば、ゲテモノだ。誰も好んで吸いたがるとは思えない。
 けれどミサキは構わない。
 どんな味であれば、ヴァンパイアを吸い殺すことができるのならば。

「ガッ――!?」
 一瞬でミサキの腕の中で燃え尽きる『狂忠のヴァンパイアバトラー』。ミサキの熱は、触れるだけで燃やし尽くすかのような膨大な熱を既に放っている。
 近づけば死。
 逃げようとしたとしても逃げれるものでもなし、また彼等にそのような思考はなかった。数で圧殺する。
 狂える彼等の忠義は、それを選択する。ミサキという白熱たる太陽を己の主に近づけてはならない。
 ただその一念のみにおいて彼等はミサキへと襲いかかる。
 熱は伝播する。伝播すれば、それは冷えていくものである。だから数で押すのだ。自分たちの生命すら使い捨てにするものにミサキは負けはしない。

「もろともに堕ちて潰れようじゃないか……いや、燃え尽きよう。君たちはここで死ぬのだから」
 ミサキは微笑むことも、憐れむこともなく、ただただ己の熱を上げていく。己を冷ますものなど何一つ無く。
 ただ、そこに在る、という燦然たる太陽のように迫りくる『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちを熱でもって一掃し続ける。
 太陽が沈む、その時まで――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
ぜぇはぁ…お次は羊の群れですわね
間違えましたわ、執事ですわ
皇女としてこの手の方の気質はよく存じておりますのよ
つまり暴力で捩じ伏せるのですわ!

数は多いしお強いしでおファッキュですわね
ヴリちゃん!滅亡の千光のチャージを始めるのですわ!
その間の守りはわたくしにお任せあれ!

近寄られる前にネメジストで撃ち殺すのですわ
近寄られたら王笏ハンマーで綺麗な御顔をおミンチにしてさしあげますわ〜!

赤い霧が厄介ですわね…
でも背後でヴリちゃんが大口を開けてビームをチャージしておりますので完全な暗闇ではありませんわ
ついでにわたくしの背中にも光輪がありますわ

辛抱堪らなくなったらヴリちゃんに滅亡の千光を発射してもらうのですわ



「ぜぇはぁ……お次は羊の群れですわね」
 違う。
 執事。多分、羊と執事をいい間違えただけである。
 メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は皇女である。ちょっと最近お言葉使いというものが、なんとなくお汚い感じになってきているような気がしないでもないが、彼女は皇女である。
 執事っていうか、爺やとか多分いたに違いない。
「間違えましたわ、執事ですわ」
 こほん、とやっぱりね、と思うようなことをいいながらメサイアは、『ヴリトラ』の背にまたもや威風堂たる佇まいでもって迫る『狂忠のヴァンパイアバトラー』を見据える。

 主のために生命を捨てることをためらわぬ者たち。
 彼等にとって、己の生命以上に優先されることは主のことだけである。猟兵たちが『禁獣禁域』に近づくことが主の不利益になると判断したからこそ、彼等は此処に大挙として現れたのだ。
 しかも、彼等は全てが紋章つき。
 一体であっても猟兵達は手間取る相手が無数に。それは絶望を意味するか。いいや、違う。
「この手の方の気質はよく存じておりますのよ。つまり――」
 どうするのだと『ヴリトラ』は思ったかもしれないし、むしろ、次なる言葉を予想していたかもしれない。

「暴力でねじ伏せるのですわ!」
 メサイアの瞳と『ヴリトラ』のアイセンサーが同調するようにユーベルコードに輝く。
 滅亡の千光(ジェノサイドバスター・ディザスターレイ)湛えたアイセンサーが煌めき、口腔に備えられたジェノサイドバスターがエネルギーを充填していく。
「ヴリちゃん! 敵の数は多いし、お強いしでおファッキュですわね! チャージの時間はわたくしにお任せあれ!」
 なんでもかんでも『お』をつければお敬語になるとでも思っているのか。いや、その調子である。
 なんとも調子の狂うお嬢様ならお皇女様に『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは襲いかかる。

 リズムを崩されている。
「機械じかけの暴竜であろうとも、手繰る者がいるのならば、それを始末するまで」
「御覚悟していただきましょう」
 彼等の身より放たれる赤い霧。
 それは血のような霧であり、それに触れてはメサイアは生命力を吸いつくされてしまうだろう。
 神聖なる大型機械鎧を纏うメサイアが光背たる光を放ちながら、飛翔する。紅い霧を迂回するようにしながら、霧消させるようにビームの光条を放ち続ける。
 打ち込まれたビーム粒子を躱しながら迫る『狂忠のヴァンパイアバトラー』の整った顔が笑う。

 女性であれば、誰もが見惚れるほどの美貌。
 皇女殿下もまあ、年頃である。見とれても仕方がないと思われたが、即座に叩き込まれるのは王笏である。
「そのお綺麗な御顔をおミンチにしてさしあげますわ~!」
 違った。
 見惚れるどころか、ただの撲殺である。放たれた一撃が『狂忠のヴァンパイアバトラ』の顔面を捉え、豪快におスマッシュである。
 ぶっ飛ぶ彼等を前に、メサイアは追撃のキックをぶちかましながら、『ヴリトラ』の背へと戻るのだ。

「ヴリちゃん!ジェノサイドバスター、拡散放射ですわ!」
 チャージを終えた『ヴリトラ』の口腔よりジェノサイドバスターの砲塔が伸び、放たれる破滅の光条が一気に『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちを薙ぎ払っていく。
 光が大地を穿ち、迫りくるあらゆるものを消し飛ばしていく。
 もはやメサイアに迫る者はない。
 破壊の光を放つ機械じかけの暴竜。
 その咆哮が轟く。何人たりとて彼女たちに近づくことはできない。それを示すように破滅の光は、暗闇の世界を切り裂き、煌々とその存在を知らしめるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
理由がどうあれ
俺を止めたくばこれを超えることだ

状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを無限に破壊、自身から断絶し否定
尚迫るなら世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給

破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

原理を廻し高速詠唱を無限に加速、循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、敵勢へ向け斉射
更に射出の瞬間を無限循環し戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす

創生し最古の理の前、万象一切は消え失せるしか許されぬ
抗うなら世界を超える程度は最低限だ

※アドリブ歓迎



『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちにとって猟兵の抵抗は予想外ではなかった。
 ならば、彼等紋章つきのオブリビオンにとって予想外であったのはなんで在ったか。それは一目瞭然である。
 例え紋章つきのオブリビオンであったとしても猟兵は打倒する。
 数で圧殺できないわけではない。
 けれど、いつまで経っても為し得ないことに彼等は焦燥をつのらせていく。
「何故です。此処まで抵抗するとは。我等の力が足りない?」
「そんなことはないはずです。我等は紋章つき。されど、彼等の力は我等に劣る。だというのに――」
 蒼光の魔弾が宙を走り抜け、『狂忠のヴァンパイアバトラー』を吹き飛ばす。

 その魔弾の主は、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)。
 彼の放った魔弾が『狂忠のヴァンパイアバトラー』を吹き飛ばしたのだ。けれど、一撃で打倒されない。曲がりなりにも紋章の力で強化されているのだ。
「侮っていたわけではありませんが、致し方なし」
『狂忠のヴァンパイアバトラー』の頭部が悍ましき獣のものとなり、背に蝙蝠の翼がひろがる。
 彼等にとって、それは奥の手でもあったことだろう。
 増大した身体能力。
 それでもってアルトリウスをくびり殺そうというのだ。
「理由がどうあれ、俺を止めたくば、これを超えることだ」 
 目の前にあるのは己へと害を為す者を消去する無限の原理。
 迫る彼等の速度は、これまでの紋章つきのオブリビオンと同等。それが数でもって
猟兵たちを圧殺せんとしている。

 けれど、断絶の原理でもってアルトリウスは、あらゆる障害を無視する。
 それがきらめくユーベルコード。
 障害を無視し、万象を根源から消去する影響受けぬ創生の権能が現す蒼光の魔弾が解き放たれる。
「これより先は行き止まりだ。俺を止めることなど叶うまい」
 破界(ハカイ)。
 そのユーベルコードはあらゆる障害を破壊する。
 原理を回し、高速詠唱に寄って無限に加速していく魔力循環。天を覆う魔弾が『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちに打ち込まれる。
 さらに戦域を魔弾で埋め尽くしていく。

「創生し最古の理の前、万象一切は消え失せるしか許されぬ」
 魔弾は蒼く輝く。
 この積層の世界にあって、それは皮肉めいた色であったことだろう。
 ダークセイヴァーに生きた者たちは青空を見たことがない。ならば、その輝きは奇異なるものであった。
「抗うなら世界を超える程度は最低限だ」
 放たれる魔弾が『狂忠のヴァンパイアバトラー』を打ちのめす。
 一撃で倒れぬのならば、倒れるまで魔弾を打ち込む。

 原理に寄って生み出された魔弾は、際限なく流れる。
 天井たる空を、その閉塞感すら感じさせる空を、蒼く染めて止まぬ。
 魔弾は止まらない。
 あらゆるものの影響すら無視して。
「馬鹿な、我等の紋章の力が及ばぬと!」
「そのとおりだ。世界を超えることなどできぬお前たちには到達できぬ場所。消えて失せるのが、過去の定め」
 蒼光の魔弾が煌めいて、戦場はさらなる激しさを齎す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

いいえ、通りますよ。どんな手段を使ってもねー。
さて、今度のUCは【戒】の方にしましょうかー。『馬県』の認識は、影にいる陰海月と霹靂がしてますしー。

それに…ふふ、私たちは血液と生命エネルギーから程遠い。四悪霊を構築するのは、エクトプラズムと呪詛と、各々の魂。
どれだけ攻撃されようが、それは私たちの強化にしかなりませんよー?
そうしつつ、漆黒風を投擲or握りこんでの薙ぎ払いしていきましょうかー。


陰海月と霹靂、上層あれそれで凹んでしょんぼり。ぷきゅー…。クエー…。
でも、認識はちゃんとするよ!おじーちゃん無理して!!



 猟兵たちに迫る紋章つきのオブリビオンは膨大な数であった。
『禁獣禁域』に近づく者全てを排除せよと命じられた『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは、数でもって圧殺せんとしている。
 けれど、その戦いの推移は大方の予想を裏切るものであった。
「我等が劣っているわけではない。だというのに……」
「数でも個としても勝るはず……! これでは……!」
 彼等の焦燥も理解できなくもない。

 オブリビオンは猟兵よりも個としての力に勝る。
 紋章つきのオブリビオンであればなおのことである。これまでダークセイヴァーにおいて『番犬の紋章』を始めとした紋章を有するオブリビオンは凄まじい戦力で

あった。
 これを打倒するのにも猟兵達は繋ぐ戦いを用いた。
 そうしなければ、倒せないほどの強敵であったのだ。『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは、まさに一体一体が、それと同等。
 だというのに、猟兵たちを未だ圧殺できないのはどういうわけか。
「此処は通さぬ。我等の忠義が今試されている……!」
「いいえ、通りますよ。どんな手段を使ってもねー」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱たる『疾き者』は告げる。

 瞳に輝くユーベルコードは、四悪霊・『戒』(シアクリョウ・イマシメ)。
 迫る『狂忠のヴァンパイアバトラー』の牙や爪が彼の体を引き裂く。
 けれど、それはどれもが四悪霊を滅ぼすに値しない。届かない。『馬県・義透』という存在を認識する影の中にありし『陰海月』と『霹靂』。
 認識される限り、己の肉体は再構築され、生み出しては封じてきた呪詛でもって己の体を強化していくのだ。
 彼等はきっと、自分たちの身をあんじてくれているだろう。
 無理をして、と怒っているかもしれない。

 けれど、此処は踏ん張りどころである。
 如何に群れを為すオブリビオンと言えど、一体一体が紋章つき。なればこそ、侮ることも、油断も赦されない。
 例え、己の肉体が攻撃のたびに再構成されるのだとしても、何処からほころぶか分からない。
「生命力など私達には無意味。どれだけ牙を立てようとも、吸い取れるものではないでしょう」
 握り込んだ棒手裏剣の一撃が、己に食いついた『狂忠のヴァンパイアバトラー』の首筋に突き立てられる。

 凄まじい一撃。
 それはただの一撃のように見えて、そうではない。溢れる呪詛でもって穿たれ、注がれる呪いそのものだ。
「ええ、四悪霊は滅びず。言ったでしょう。どんな手段を使ってもねー」
 押し通る。
 これより先を守る者たち。
 彼等の主が望むのは、禁獣を刺激しないということ。それが如何様な結果を生み出すのかをまだ猟兵達は知らない。
 けれど、救わねばならぬ者がいる。

 苦しみと悲しみだけが渦巻く世界から開放され、死という救済でもって救われた魂人がいる。
 かの存在は、再びオブリビオンの嗜虐の玩具へと成り果てる。
 それを許しておけぬと、『疾き者』は『霹靂』や『陰海月』と想いを共にする。ならばこそ、振るう棒手裏剣は鋭く速い。
 強化された肉体は、如何なる攻撃手段も通用しない。
 いや、通用したとしても即座に再構成される。他者との境界があやふやになりながら、それでも『疾き者』は、己たちの中から溢れる呪詛を噴出させながら、他者

の認識に寄って、四柱を束ね続ける。

「あなた方の主の語る道理も、死して尚弄ぶ理由にはなりませんよー」
 打ち込む棒手裏剣が、『狂忠のヴァンパイアバトラー』に打ち込まれ、その身を穿つ。
 打倒しきれない。
 けれど、それでもいい。己達は個にして繋ぐ者たち。消耗させた敵を誰かが打ち倒せばいい。
 猟兵達は己たちの役割を心得ている。
 必ずや救いを求める者へと手をのばす。そのために今己ができる全力でもって、道を切り拓くのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

護堂・結城
体が軋むがこの滾る殺気が冷めるものか
誰にも助けて貰えず、死が迫る絶望を知っている。だから俺は助けに来た
かつて助けて貰えなかった自分を救いたいだけの幻想だとしても…迷いはない

「黙って道譲るか、永遠に黙らされて道開けるかだ」

緑月の尾で雷の誘導弾を複製し、噛みつきに来た口の中に放り込んでリミッター解除した電撃
痺れた奴には毒の誘導弾をぶち込んで放置
君は幸せだなぁ?その苦しみは主の為に戦った証だぞ

事なかれに見捨てる選択した奴らに嫌味言ってる場合じゃねぇな
撃滅白狐を発動してさっさと奥に向かうぞ
近寄る奴から殺気を叩きつけ内側から爆破だ

行こう、氷牙、吹雪、ユキ。
大丈夫、今は一人じゃないってわかってるから



 体中が軋んでいる。
 痛みが走る。何をするにしても、苦痛ばかりが己の肉体の中を渦巻いているように思えたことだろう。
 だが、それ以上に護堂・結城(雪見九尾・f00944)の中にある殺気が冷めることはなかった。
 思い出すのは己のことであった。
 誰にも助けてもらえず。
 死が迫る絶望を知る。知っている。

『魂人』にとって、まさに今がその状況だ。誰も彼を助けられない。ならば、己たち手を伸ばさなければならない。
 嘗て助けてもらえなかった自分が救いたいだけの幻想。
「欺瞞、偽善、そんなものが我等が主の道を阻むなど!」
「あってはならない。我等こそが主の障害を取り除くのだ。退け、猟兵ども!」
 その言葉に結城は告げる。
 ただ静かに。

「黙って道譲るか、永遠に黙らされて道開けるかだ」
 それは交渉でもなんでもない。
 選択肢でもない。
 ただ、目の前の存在を打倒し、道を切り拓く者だけが告げる言葉であったことだろう。
 結城の瞳がユーベルコードに煌めく。
「舞い踊れ、白き爪牙。例えどんなに寂しい幻想だとしても」
 漲るは暴れるようにして爆ぜる白狐の濃縮した殺気と魔力。
 迫る『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちの切っ先が己を切り裂かんとしているのが見えた。
 その爪や牙の軌跡がやけにゆっくりと流れるようであった。
 けれど、構わない。

 そもそもこのユーベルコードは己より極々近い距離でしか使えない。こちらから距離を詰める手間が省けたというものである。
「ああ、手間が省けたぜ」
「――!?」
 そのもたげた牙の奥、口腔へと叩き込まれる雷の弾丸が『狂忠のヴァンパイアバトラー』の肉体をしびれさせる。さらに尾でもって生み出した毒性を持つ弾丸を打

ち込み、放置する。
 捨て置くのだ。
 倒し切る必要はない。
 猟兵たちの戦いは繋ぐ戦いである。倒しきれずとも、己以外の誰かが必ず後に続いてくれる。

 それがわかっているからこそ、結城は言うのだ。
「君は幸せだなぁ? その苦しみは主のために戦った証だぞ」
 結城は、その自身の言葉に自嘲する。
 事なかれに見捨てる選択しかしない者たちに嫌味を言った所で、何も有益なものは生み出されない。
 漲る殺気がほとばしるように拳が打ち込まれる。
 雪見九尾の撃滅白狐(ツキハナクホシモナクノコサレタノハサイアクノイチ)は此処にある。

 それを示すように結城の瞳が輝く。
「行こう、氷牙、吹雪、ユキ」
 己のお供をする竜達に告げる。
 己の過去にありし日々が、誰にも手を伸ばされぬ現実であったのだとしても。
 それでも己が誰かに手を差し伸べない理由には成っていない。誰かを恨むことも、憎むことも、何もかもが、それには及ばない。
「大丈夫、今は一人じゃないってわかってるから」
 ただそれだけで結城は戦えるだろう。
 そんな些細な理由でと他者は言うかもしれない。己のために戦うのではなく、誰かのために戦う時、猟兵は尋常ならざる力を発露する。

 証明しなければならないのだ。 
 世界は、欺瞞と偽善に満ちているのではないのだと。どれだけ否定されようとも、人の生きる世界には、闇を切り裂く光もまた同様に存在しているのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…第五の貴族の居城も多数の番犬の紋章持ちが警護していたけど、今回はそれ以上ね

…腕はもう暫く使い物になりそうにない以上、此方も奥の手を使うしかない、か

大鎌を杖に立っているのが精一杯の満身創痍を装い、
地面に落とした「闇の精霊結晶」を踏み砕いて周囲を闇で覆い、
闇の精霊を降霊した「精霊石の耳飾り」で闇の中を暗視しつつ逃走
…する演技で敵の攻撃を誘いUC発動の瞬間を見切りカウンターのUCを発動
敵の攻撃を吸収して自身と敵の血の魔力を溜め吸血鬼化を行い、
魔力や生命力を吸収する赤い霧を放つ闇属性攻撃で負傷の治癒を試みる

…確かに今の私に紋章を宿すお前達を滅ぼす事は難しい

…だから、お前達自身の手を借りる事にするわ



 始まりは、地底都市の門番たるヴァンパイアの胸に輝いていた紋章であった。
 それを『番犬の紋章』と呼び、これまでのヴァンパイアとは異なる次元の強さでもって驚異となさしめる。
 紋章を齎した存在は、やはりこの第三層に存在しているのかもしれない。
『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちの胸に輝く紋章が、それを示唆している。彼等は一体一体が、第五層に存在していた紋章つきのオブリビオンと同格。
 強大なる力の発露。

 されど、彼等は戦いの趨勢がすでに猟兵に傾くことを知るだろう。
「……第五の貴族に居城も多数の『番犬の紋章』持ちが警護していたけど、今回はそれ以上ね」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は冷静に状況を判断する。
 確かに戦いの趨勢は傾いている。
 けれど、猟兵たちも消耗している。『蛇王ペイヴァルアスプ』の強大さは言うに及ばず。
 さらに紋章つきのヴァンパイアが無数と来ている。
 けれど、ここで退くことはできない。
 痛む腕はもう暫く使い物にならない。ならばこ、ここで奥の手を切るしかない。リーヴァルディには、それしかもう残されていない。

「先の戦いで消耗した者がいる。我等が紅き霧で生命力を吸い上げ、嬲り殺す」
「敵を雑兵と侮るなかれ。我等が数で圧殺せんとしてもこらえるものたちであれば……確実に此処で消すのみ!」
『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちにはリーヴァルディが満身創痍で立っているのがやっとであるように思えただろう。
 大鎌を杖のようにして体重を掛けている姿を見れば、そう思うのも無理なからぬことであった。

 けれど、リーヴァルディはそれを装うだけであった。
 地面にトリオとした結晶を踏み砕く。それは闇の精霊結晶。砕かれた瞬間、周囲が闇に覆われる。
「逃げるか!」
 追う『狂忠のヴァンパイアバトラー』たち。もしも、彼等が真に主のことをだけを思うのならば、リーヴァルディを捨て置けばよかったのだ。
 瀕死の猟兵一人が逃げ出した所で、代わりはないはずだったからだ。
 けれど、彼等は追う。追ってしまう。誘われたともしらず、リーヴァルディの無防備なる背中へと紅い霧と共に迫るのだ。

「……限定解放」
 呟く声は静かであった。
 息を切らして逃げ出す哀れな存在を装うのも、リーヴァルディにとっては戦いの術一つでしかなかった。
 暗闇の中にリーヴァルディの瞳がユーベルコードに輝く。
「……禊祓え、血の再誕……!」
 限定解放・血の再誕(リミテッド・ブラッドリバース)。それは完全なる脱力状態に至るルーティンそのものであった。
 放たれた霧を受け止め、無効化して吸収する。

 紅い霧が消える。
 その光景に『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは目を剥くだろう。何が起こったのか理解できなかった。
「消えた……!? 何故……!」
「……確かに今の私に紋章を宿すお前たちを滅ぼす事は難しい」
 リーヴァルディの声が静かに響く。
 紅い霧の中、彼女の眼光が鋭く『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちを射抜く。それは宣戦布告でもなければ、戦いに際しての言葉でもなかった。

 ただ、滅ぼす。
 紅い霧がリーヴァルディより増幅され排出されるようにして、彼等に襲いかかるのだ。
 自身と敵の魔力を持って吸血鬼化したリーヴァルディより放たれた紅い霧は、凄まじい勢いで『狂忠義のヴァンパイアバトラー』たちを蝕む。
 彼等が放った赤い霧よりも強力かつ、凄まじい速度で生命力を吸い上げていく。
「これは……我等が主と、同等……!」
「……ええ、だから、お前たち自身の手を借りる事にするわ」
 静かに告げる。
 宣戦布告でもなければ、戦いに際しての言葉でもないのならば、彼女の言葉はなんであったか。
 答えは明白である。

「……これはお前たちに対する余命宣告。とは言え、もう猶予はないけれど」
 吸い上げた生命力がリーヴァルディの肉体に満ちる。
 その時には、すでに彼女を追った『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは、その言葉を聞くことなく霧消することだろう。
 魔力を余すことなく吸収したリーヴァルディは、満ちる活力と共に『禁獣禁域』への道を切り拓くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギヨーム・エペー
はlはっ全員が紋章持ちでおれだけ持ってないと、異質と見なされるのは当然か! 
どうだ太陽、赤霧は打ち消せそうか? 少し時間での掌握は厳しいだろうが、おれを助けてくれ

暗闇を照らすべく灯りとして放つ火が汝の学習を邪魔するかもしれないが、霧の性質を理解してほしい。霧粒をやさしく包み込んで地に落とすのが難しいと感じたら、水圧で無理やり上書きしてくれ

止血を氷や火で行おうにも自傷されたら霧は生まれるだろう。距離があるうちは槍投げで対処を図りつつ、進む道の霧が薄くなるのを信じて待つ。消す必要はないさ。出どころがわかればタイミングを見切って突攻撃を……なあ太陽! わしに直接水吹っ掛けたらこの霧落とせねえか!?



『狂忠のヴァンパイアバトラー』が放つ赤い霧は魔力や体力を奪う。
 彼等にとって数とは利するものではなかったが、猟兵を相手取る以上、これこそが有効な戦法であると知るだろう。
 猟兵たちの強さは個の強さではない。
 戦いを繋ぐ。例え、一人で倒せなくても、続く者に繋ぐ。そのための戦いをやりなれている。
 そうやってこれまでも己たちよりも強大な敵を打倒してきたのだろう。

 積み重ねたものは崩れやすい。
 けれど、それは一人で戦う場合であった。
 流体の宝石の如き契約精霊『太陽』がギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)に何事かを呟いた。
「ははっ! 全員が紋章持ちでおれだけ持ってないと、異質とみなされるのは当然か!」
 楽しげに笑いながらギヨームは戦場を走る。
 紅い霧に触れては、即座に己の生命力を吸われるだろう。ダンピールにあるまじき結末。ゆえにギヨームは笑って走るのだ。

「どうだ『太陽』、赤霧は打ち消せそうか?」
 短時間で敵のユーベルコードを理解する事は難しい。けれど、敵のユーベルコードが霧であるというのならば、その掌握はやってみなければわらかない。
「厳しいだろうが、おれを助けてくれ」
 それはともすれば猟兵達の戦いにも似ていただろう。一人ではないということは、心強いということだ。
「我等がユーベルコードを無力化しようとしていますか」
「無駄なことを。これこそが我等が血潮。我等が力。掌握しようなど!」
 迫る『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちを前にギヨームは、その手にした氷の槍を生み出し、放つ。

 その射程は優に三倍を超える。
「咲いて飛んで、海を渡ろう」
 打ち込まれた槍の一撃が『狂忠のヴァンパイアバトラー』を貫き、血潮を撒き散らす。しかし、その血潮がさらに紅い霧を濃くしていくことだろう。
「無駄ですよ。我等の血潮こそが力の起点。ならば、あなたのなさろうとしていることは!」
 彼等の言葉も尤もであった。
 血潮が吹き出すたびに霧が濃くなっていく。けれど、霧とは水分が粒子状に成っていればこそ。
 放たれる槍に水がまとわれる。
 いや、違う。氷の槍が紅に染まっていく。何故、と彼等は思っただろう。

 何故、猟兵の放つ槍が紅に染まるのか。
 感嘆なことだ。霧が水分を粒子状にするというのならば、氷の槍は水分を凍結させる。吸着させるのだ。
 霧を穿つように放たれる槍は氷。
「なら答えは簡単だったなあ、『太陽』!」
 ギヨームは走る。
 霧の性質。霧を消すにはどうすればいい。乾燥させる。だが、それだけでは足りないだろう。

 この暗闇の世界にあって炎とは灯り。
 熱を持ち、温度を上げれば当然水分は散るだろう。ならば、氷はどうだ。空気中の水分を凍りつかせる。即ち結合させる。
「まさか、我等の血潮を凍りつかせる……!」
「ああ、その通りだ。消す必要はない。なら!」
 ギヨームの体が水に塗れる。契約精霊『太陽』を纏うかのように肌を湿らせる流体。それは霧の粒子を吸着させる。

 粒子が小さいことが霧の特徴であるのならば、さらに大きな粒子を纏うギヨームに吸い寄せられ、その血潮の紅はギヨームに触れることなく大地に落ちていく。
「馬鹿な……それでも僅かに触れれば、我等に生命力を奪われるというのに!」
「あいにくと、そちらが紋章つきばっかりであっても、こちらには多くの仲間がいるんでね」
 笑って、ギヨームは瞳をユーベルコードに輝かせ、氷の槍を投げ放つ。

 投擲された槍が見る見る間に紅に染まり、その一撃を受けた『狂忠のヴァンパイアバトラー』は己の体内の血液の全てを凍りつかされ、ギヨームの拳に寄って砕か

れる。
 一人ではないということ。
 それは己の心を後押しする。『魂人』が『たった一人』であるというのならば、その肉体だけではなく、心も救わねばならない。
 ギヨームは『禁獣禁域』への道を己の智慧と勇気で切り拓くのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリー・スペルティナ
ふふん、いくら紋章付きヴァンパイアを並べたところで、
罠も細工もないなら単に目の前の敵を突破すればいいだけの話
という訳で、一気に突破ですわね、来なさいケルパー!
……って、これ暴走しおほんおほん!

巨大化ケルパーが暴れわたくしがクロスボウとかで確実に仕留める作戦ですわ(キリッ)

ケルパーはそもそも死霊蛇竜ですし、
(巻き込まれるから)速く動けないとはいえわたくしも負傷と出血は慣れっこ

それに、この血を奪って飲むという事はこの中に渦巻く無数の負の感情……もはや『呪い』としか言いようのないそれを浴び、
そして貴方達自身の想いもまたこの血に奪い取られかねないという事
それでも構わぬというなら、来るがいいですわ!



 紋章つき。
 それはダークセイヴァーにおいて、第五層において多く見受けられるオブリビオンに寄生するオブリビオンの名である。
 寄生されたオブリビオンはさらなる力を得る。
 猟兵達にとって手強い敵であることに変わりなく、しかし、単体であることが多かったがゆえに対処できていた。
 それが今や目の前に多数存在している。
『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちの胸に輝く紋章を見やり、メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は不敵に笑う。
「ふふん、いくら紋章つきヴァンパイアを並べたところで、罠も細工もないなら単に目の前の敵を突破すればいいだけの話」

 メリーにとって、それは容易いと思えることであっただろう。
 策を講じられれば、『禁獣禁域』に存在する『魂人』を助けることが遅れてしまう。そうなれば、『魂人』はオブリビオンの嗜虐を満たすための玩具となってしまう。
 心を摩耗して死を否定する『魂人』。彼等の心がいつ擦り切れてしまってもおかしくはないのだ。
「というわけで、一気に突破ですわね、来なさい我が騎竜ケルパー!!」
 メリーの瞳がユーベルコードに煌めく。
 その輝きは暗闇を切り裂くかのように走り抜け、『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちの前に巨大な死霊蛇竜の姿でもって現す。
 だが、様子がおかしい。

「……」
 メリーは冷や汗を流しながら、クロスボウを構えている。
 威勢よく啖呵を切ったのはいいが、どう見てもこれは……。
「……って、これ暴走しおほんおほん!」
 ごまかすように咳払いしながらメリーはクロスボウより呪詛を撒き散らす紅い結晶を弾丸として放つ。
 膨れ上がるようにして巨大化した蛇竜ケルパーがのたうつように暴れまわり、『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちを吹き飛ばしていく。
 速く動くものを無差別に攻撃し続けるケルパーは、メリーにも制御不能。
 だから、メリーはクロスボウを構えたまま不動であったのだ。今、動けば確実にメリーも巻き込まれる。
 ならばこそ、彼女は冷静に対処する。

 そもそも戦いにおいて、彼女は負傷も出血も厭わぬ猟兵である。
 そして、結晶が撒き散らす呪詛。
 これらが渦巻く戦場は無数の負の感情……もはや『呪い』と言っていいほどの坩堝にある。
「貴方達自身の想いもまたこの血に奪い取られかねないということ……」
「だから、どうしたというのです」
「我等が求めるは主の御身を煩わせる障害の排除。猟兵がそれを為すというのなら」
「その身を滅ぼしても構わぬというのですね」
 クロスボウから放たれる結晶の弾丸が『狂忠のヴァンパイアバトラー』を貫き、その血潮を噴出させる。

 見上げた忠義。
 確かにそれは狂気と呼んでも差し支えのないものであったことだろう。
 元より彼等がもっていたものなのか、それとも彼等が隷属させられているから得たものであるのかはメリーには判別できない。
 けれど。
「ならば来るがいいですわ!」
 メリーの周囲にとぐろを巻くようにして走る死霊蛇竜が迫りくる『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちを薙ぎ払い、寄せ付けない。
 紋章つきゆえに群れであっても頑強そのもの。
 幾度となく組み付き、ふるい落とされ、叩き潰されても尚戦い続ける。

 ダークセイヴァー上層。
 この世界にあるのは、やはり苦痛のみ。地獄の如き世界にありて、それでも『魂人』が生きようと、死を否定しようとするのならば、メリーは如何なる思いで彼らを救うだろうか。
『禁獣禁域』はすぐ其処だ。
 悍ましき悪夢の如き存在が座す場所。しかし、足を踏み入れなければ、救いたいと願う者に手を差し伸べることすらできないのならば、メリーはためらうことなく足を踏み出すだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
悪夢を払う必要などありません
悪夢もまた我等が怨念を滾らせる種火の一つ

我等と成らず死した者が眠れず戦っているならば、我等を止める道理はない

【行動】POW
先制攻撃のUC+範囲攻撃で最前列を攻撃、ダッシュで接近しなぎ払い+切断の範囲攻撃
黒酸漿を呼び出し巨体によるなぎ払いと怪力+補食で襲撃
空中に逃れる敵は黒酸漿で叩き落とすか夜砥+捕縛で捕らえて振り回し周囲をなぎ払う

黒酸漿の攻撃による撹乱、五感と第六感で敵の攻撃を見切り躱しながらの残像+フェイントでの撹乱を織り交ぜながら、怨念の炎を宿したUCやなぎ払い+切断で攻撃
怨念の炎の焼却+生命力吸収の呪詛効果で蝕み弱ら動きが鈍ったらとどめを刺す



 此処は悪夢のような場所であると思えたことだろう。
 死すら救済ではない。
 オブリビオンの玩具という嗜虐極まる境遇。
 死して尚弄ばれるというのは、こういうことを言うのだろう。ダークセイヴァー上層にありて『魂人』は、生きているとは言えなかった。
 ただ、死んでいないだけ。
 死を否定する永劫回帰の力があるからこそ、彼等は暖かな記憶すら摩耗しながら生きている。

 それを『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは悪夢と呼ぶのだろう。
 だからこそ、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は己の中に漲る殺意と狂気を受けて爛々と輝く赤い瞳のままに彼等を見据えて言うのだ。
「悪夢を払う必要などありません」
「ならば、なんとしますか。悪夢は人の心を苛むもの。摩耗し、擦り切れ、折れてしまうもの」
「我等がお止めするのは、そういうたぐいが座す場所であるがゆえ。我が主が刺激するなというのであれば、それが正しいのです」
 彼等の言葉に織久は頭を振る。
「悪夢もまた我等が怨念をたぎらせる種火の一つ」

 交錯する攻撃。
 放たれる怨念と殺意の炎が『狂忠のヴァンパイアバトラー』の肉体を燃やす。黒い炎は燃え広がるが、それでも彼等は突き進んでくる。
 痛みがないわけではないはずだ。
 あるのは忠義のみ。狂おしいほどの忠義によって、彼等は己の身を省みない。ただただ滅ぼす。己の主のためにという理由だけで彼等は突き進むのだ。
「我等と成らず死した者が眠れず戦っているならば、我等を止める道理はない」
 見据える先にあるのは『禁獣禁域』。

 今も尚、そこに『魂人』がいるのならば救わねばならない。
 己達のように怨念ではなく、心に宿る暖かな記憶だけを頼りに死を否定し続ける彼等を助けなければならない。
 それだけが、織久の中に燃える種火の叫びであったことだろう。
 己たちと同じものを増やすことなど赦されていいわけがない。
「ならば、道理と忠義、我等に傾くことを知って頂きましょうか!」
 振るわれる爪と牙。
 それは織久を引き裂かんとするもの。されど、織久の頭上より舞い降りる黒きワイバーンの鉤爪の一撃が、これを切り裂く。

「――! ワイバーン! 飼いならしましたか!」
「問答するつもりは毛頭ありません」
 黒き途切れることのない糸が『狂忠のヴァンパイアバトラー』を捉え、その身を一つの質量兵器とするように振り回しては叩きつける。
 砕ける骨と肉。
 織久の中にたぎる炎が、今も尚煌々と燃え盛る。
 消えることはない。
 オブリビオンに殺された者の無念や恨み。そうしたものが彼の背中を押す。如何に闇の種族たちが『禁獣』を刺激することを恐れていたとしても関係ない。

 ただ穿ち、滅ぼす。
 そうしなければならないという思いだけが彼を突き動かすのだ。
「我等が怨念尽きることなし」
 黒き糸に飛び火する黒い炎が、次々と『狂忠のヴァンパイアバトラー』へと燃え広がっていく。
 この常闇の世界に在りて、黒き炎は世界を照らすものではない。
 オブリビオンに等しく滅びを齎す炎。
 ただそのためだけに己の怨念をくべてこそ、織久は尽きることのない恩讐、そして、その彼方へと歩み続けるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

へぇーそれはごくろうさま!
じゃあキミたちのご主人様にキミの通行許可はいーらないって伝えておいてね!

●ごろごろごろごろ
●ごろごろごろごろ
一気に駆け抜ける!ボクたちはお急ぎだからね!
言い様からすると奥までは追ってこなさそうだしさっさと突破しちゃう
[球体]くんたち!お願い!
とビッグな[球体]くんたちを地平の果てから果てまで踏み均すようにたっくさんごろごろ転がしていってそれにまぎれて突破しよう!

ボクの【第六感】によると見つかるのは、ここの彼(あるいは彼ら)にだけ!
と球体津波のなかで遭遇した相手の攻撃を【第六感】のまま避けてUC『神撃』でドーーーーンッ!!

まかりとおーーーっる!



『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは言う。
 これより先には行かせはしないと。
 何故ならば、これより先は『禁獣禁域』ゆえに。そこに座す禁獣『歓喜のデスギガス』はダークセイヴァー上層に存在する闇の種族であったとしても、触れてはならぬ存在であるからだ。
「ゆえに我等はここで礎となりましょう。我等の生命を使って主の障害を阻む」
「ただそれだけのために我等はあるのだから」
「へぇーそれはごくろうさま!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、彼等を前にしてなお、気安い言葉でもって退ける。

「じゃあキミたちの御主人様にキミの通行許可はいーらないって伝えておいてね!」
 まるで地平線から踏み均すように強大な球体が戦場を蹂躙する。
 けれど、『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちは紋章つきのオブリビオンである。
 例え、その球体が圧倒的な質量で持って迫るのだとしても、彼等はたじろぐことはない。ただの球体ではなくとも、それを止めることはできるのだ。
 きしむ肉と骨。
 彼等は立ち塞がるもの。
 此処に在りて、その力の発露は凄まじいものであった。

 これより先にある『禁獣禁域』は触れてはならぬ者が座している。
『歓喜のデスギガス』。
 アレに触れては、多くのものが無事では居られないだろう。あらゆる攻撃を跳ね返す悪夢のような存在。
 如何なり理不尽も、悪夢の前には泡と消えるように、『歓喜のデスギガス』はそうした存在であるのだ。
「その言い様からするとキミたちはボクたちを追いかけてはこれないようだね! それにね、ボクたちはお急ぎだからね!」
 かまっている暇はないというように、ロニはさらなる球体でもって押し止められた球体を飛び上がり、一気に駆け抜ける。

「それはさせぬと言いました。如何に猟兵が、かの『歓喜のデスギガス』に勝てぬのだとしても刺激することは我等の主に害をなすこと」
「ならばこそ、此処で押し止めさせていただきましょう」
「いーや、まかりと――っる!」
 ロニの瞳がユーベルコードに輝く。
 それは神撃(ゴッドブロー)。あらゆる障害を破壊するかのような理不尽なる一撃。

 その一撃であっても『歓喜のデスギガス』に傷をつけることはできないだろう。
 けれど、猟兵たちの目的は違う。
『歓喜のデスギガス』を打倒することは最終目標であれど、今は違う。
 今求めているのは『魂人』の救出それだけだ。
「というわけでご苦労さま! ボクらは先に行くよ!」
 その言葉と共にロニは『狂忠のヴァンパイアバトラー』たちを吹き飛ばしながら、一気に『禁獣禁域』へと飛び込んでいく。
 彼等はロニたちを追わないだろう。打倒しなければならないが、それは意味のないことであった。

 ロニたちの前にあるのは『歓喜のデスギガス』。
 巨体であることが問題ではないのだ。その悪夢の如き、あらゆる攻撃を跳ね返す特性こそが撃破不能と言わしめ、『純粋な善意』ゆえにあらゆる悪行すらも肯定される。
「ま、そんなのボクらには関係ないよね! ド――ンって言って、さぱって救ってこー――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーん、執事多過ぎ問題
プレミアム感が無いね
けどそんな執事でも紋章付きか…厄介な事で
まあ、止まる訳にはいかないからね
進ませて貰うよ


引き続き《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
強いうえに数がいるんだから、厄介な事この上ないね
【剣技・蒼嵐剣】起動
手近なヴァンパイアバトラーと近接戦闘を始めよう
マッハ5の『なぎ払い』…見切れるかな?
斬撃と風の刃で『吹き飛ばし』、更に残った蒼き竜巻で敵の霧を散らしていこう
後は竜巻を足場利用してジャンプ、上空から『斬撃波』+風の刃で執事達を遠距離から攻撃
更に竜巻を産み出し、それをどんどん活用して攻撃を加えていこう
新技術の実験に付き合って貰うよ?



『禁獣禁域』へと至らんとする猟兵たちを阻む『狂忠のヴァンパイアバトラー』たち。
 その居並ぶ姿をして、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は執事という職種の希少性が薄れることを危ぶむ。
「どうにもプレミアム感が無いね」
「それはどうにも申し訳なく思います」
「ですが、我等が主のため。これより先には何人たりとて進ませるわけには参りません」
 あくまで慇懃無礼。彼等は態度を崩すことをしなかった。
 だが、油断はできない。
 目の前の彼等は慇懃無礼たる態度を取りながら、一体一体が紋章を持つヴァンパイアである。
 これまで幾度となくダークセイヴァーにおいて寄生型オブリビオンである紋章を持つヴァンパイアと戦ってきた。
 どれもが強敵と呼ぶに相応しい存在であったが、それらが群れを為す事自体が脅威。

「どうしても立ち止まってはいただけませんか?」
「禁獣を刺激することは得策ではありません。考え直していただけないのなら……」
「まあ、止まるわけにはいかないからね。進ませて貰うよ」
 彼等は玲の言葉に息を吐き出すことをしなかった。
 呆れることもなかった。猟兵の力が弱いわけではないことを知りながら、けれど、それらを凌駕するのが『歓喜のデスギガス』という理不尽そのもの。
 ゆえに彼等は紅の霧を放出しながら、玲の道行きを阻む。

「強い上に数がいるんだから、厄介な事この上ないね――蒼嵐大系、まずは基本の技からってね」
 煌めくはユーベルコード。
 その衝撃は凄まじいものであった。何が起こったのかわからなかったことだろう。いや、空気の壁を切り裂く斬撃の音が轟音となって周囲に響き渡る。
 その轟音が放たれた瞬間、紅の霧もろとも『狂忠のヴァンパイアバトラー』が吹き飛ばされていた。
「何を――」
「――したかって簡単なことだよ。マッハでぶっ飛ばした。ただそれだけ」
 見切ることを赦さぬ速度。
 その斬撃は風の刃となって、『狂忠のヴァンパイアバトラー』を吹き飛ばすだけに及ばず、その斬撃の軌跡を持って蒼き竜巻となって玲を天へと飛ばす。

「剣技・蒼嵐剣(プログラム・ストームソード)とでも名付けようか」
 手にした模造神器の刀身が蒼く煌めく。
 竜巻の上から睥睨する玲の瞳はユーベルコードに輝き続けていた。生命力を奪う紅の霧も、蒼き嵐によって吹き飛ばされ、その効果を失う。
 さらに彼女は竜巻を足場に軽快に飛び、その凄まじき剣速でもって風の刃を放つ。
 彼女に到達できる『狂忠のヴァンパイアバトラー』は存在し得ないだろう。攻撃は届かず、されど、敵からは一方的に斬撃を見舞う。
 玲の剣技は、ここに体系の一端を見せるだろう。

「新技術の実験に付き合ってもらうよ?」
 編み出した剣技。
 それすらも彼女は技術であると言う。立ち止まらないと彼女は言った。ここが終点ではないことは確かである。
 死すらもダークセイヴァーに生きる者にとって、通過点にすぎない。
 暖かな記憶を摩耗して否定する死。
 それが如何程のものであるかを玲は想像するしかない。ならばこそ、新たなる敵には新たなる技術でもって踏破する。
 
 それが頂きに至る者の導き出した答えであるというのならば、如何なる敵であっても踏み越えていかねばならない。
『歓喜のデスギガス』。
 打倒不能なる存在。
 されど、それは今はという話であろう。いつ如何なる時代において、人は技術の練磨によって外敵を排し、環境すら克服していく。
 その歩みの最端にあるのが玲であるというのならば。
「実験はお終い。さあ、道を開けてもらうよ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『禁獣『歓喜のデスギガス』』

POW   :    デスギガス蹂躙
【闇色のオーラ】を纏い空中高く舞い上がった後、敵めがけて急降下し、[闇色のオーラ]が尽きるまで【腕の振り回しとビルによる踏み潰し】で攻撃し続ける。
SPD   :    歓喜の笑い声
戦場全体に【精神を蝕む耳障りな笑い声】を発生させる。レベル分後まで、敵は【精神破壊】の攻撃を、味方は【デスギガスだけは快く感じる笑い声】の回復を受け続ける。
WIZ   :    喜ばしき忘却
【デスギガスの漆黒の肉体】に触れた対象の【記憶】を奪ったり、逆に与えたりできる。

イラスト:八谷アツキ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『魂人』は数百メートルはあろうかという『歓喜のデスギガス』の巨体を見上げていた。
 あるのは恐怖と絶望。
 だが、同時にそれだけではないことを彼は知っていただろう。
 ゆえに、混在する感情の中で呟くのだ。
「己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力。きっと君はこう思っているんだろうね。君の中にある永劫回帰の力。暖かな記憶を代償に死を否定する力が自覚できなくても、理解できている」
「……死すら到達点ではないというのなら、お前たちが俺たちを玩具にするという理由がわからない」
『歓喜のデスギガス』は先回りするように『魂人』の言葉をつないで、笑うようにたわむ。
 まるで悪夢のような弾性を持つ体。

『魂人』の青年は、ただ巨体を見上げている。
 逃げるわけでもなく、ただひたすらに『歓喜のデスギガス』と問答を続けている。額に汗が浮かび、心がすり減っていく。
「うんうん、とても苦しいね。開放してあげたいって、ぼくは思うんだけれど、もしかして君って、それを望んでいない?」
「お前が俺の心を読めるというのならば、きっとそうなのだろう。否定する材料がない」
「でもでも、君は本当に苦しいはずなんだ。友達として放ってはおけないよ! ねえ、教えて欲しいんだ。君はどうして苦しみながら、苦しみを終わらせたいって思わないんだい? ああ、答えなくていいよ、ぼくは心が読めるからね! きっと君の本当の望みを教えてあげられるよ!」

『歓喜のデスギガス』が次なる言葉を紡ごうとした瞬間、青年の『魂人』が視線を初めて『歓喜のデスギガス』からそらした。いや、違う。そらしたのではない。
 この『禁獣禁域』に迫る猟兵たちの姿を捉えたのだ。
 彼等は『魂人』にとって救いとなるだろうか。
 答えはまだでない。

 何故なら、目の前にある存在『歓喜のデスギガス』は、まさに悪夢そのもの。
 巨体であること、強力なユーベルコードを手繰ることが問題なのではない。あらゆる攻撃を跳ね返す異常なる弾性。
 どんなユーベルコードも、どんな力も、寄せ付けない悪夢。
 その体現者たる『歓喜のデスギガス』は、また思わず笑うようにして言うのだ。
「ようこそ! ぼくが滅ぼすべきひとたち! きっと友達にはなれないって思うな。ああ、答えはいいよ。君たちもきっとそう思っているだろうから――!」
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

ええ、互いに滅ぼすものでしょう。されど、今は届かないのも知ってますよ。
どのような攻撃も効かないのならば、このUC(防御力重視)は『ただ死なないために』使いますよ。
このUC、防御にも使えますのでねー。

『魂人』へ。ここから逃げましょう、と誘いを。助けに来ましたよー。
ええ、私は一人ではない。繋いでいき、あなたを確かに助けます、と。それが猟兵ってものです。

いつか、その元に刃を届かせて見せますよー。デスギガス。


陰海月と霹靂、聞こえない悲鳴あげてる。
ぎゃー、デスギガスぎゃー!
ぼくたちが認識してるけど、おじーちゃんもまた無理してー!



 数百メートルに及ぶ巨体は、まさに悪夢そのものであった。
 ビルの瓦礫が重なったかのような下半身……下半身と言っていいのかさえわからぬ威容。その巨体が恐ろしい事は言うまでもないが、もっとも恐ろしいのは、その体が悪夢のようにはずみ、あらゆる攻撃を跳ね返すという点にある。
 即ち、現時点での打倒が不可能である亜事を示していた。
「わかるよ。きみたちはぼくが滅ぼさなければならないもの。猟兵ってやつなんでしょう。滅ぼし、滅ぼされるだけの間柄には、友達って言葉は似合わないのかもしれないけれど」
「ええ、互いに滅ぼすものでしょう。されど、今は届かないのも知ってますよ」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は告げる。
 どのような攻撃も効かない。
 されど、悪夢のようなオーラをまとって跳躍する『歓喜のデスギガス』は、圧殺するかのように『疾き者』に迫る。

 数百メートルに及ぶ巨体が弾んで己めがけて落下してくる。
 逃げようがない。
 どうしようもないほどの攻勢。
 これが『禁獣禁域』と呼ばれる所以。立ち入ってはならぬ場所。触れてはならぬ獣。ゆえに禁獣。
「ならば――」
「うん、そうだね。『ただ死なないために』って思っているんだよね。わかるよ。ぼくはこころが読めるからね!」
 微笑むような声色が響く。

 けれど、心を読まれていようともやるべきことは変わらない。 
 打倒できないのであれば、打倒しない。倒さない。そして、己が倒れないことが肝要。
「四悪霊は滅びず――さあ、此処から逃げましょう。助けに来ましたよー」
 ユーベルコードの煌めき。
 その輝きを『魂人』は見ただろう。これが己の救いになるのかを未だ測りあぐねているようでもあったし、同時に彼は『疾き者』がどうしてそこまでしてくれるのかがわからなかった。
「だが、あなたが変わりに死ぬことになる。永劫回帰の力無くば、この世界で死ぬことは――」
「ええ、私は一人ではない。繋いでいき、貴方を確かに助けます」
 猶予はない。
『疾き者』は『魂人』を押し出すように、恐怖の如きオーラを放つ『歓喜のデスギガス』が巨体を持って迫る脅威から彼を突き飛ばす。

「あんたは――!」
「ええ、これが猟兵ってものです」
『疾き者』が『歓喜のデスギガス』の巨体に押しつぶされる。
 圧殺。
 その言葉がよぎるだろう。
 けれど、『歓喜のデスギガス』は首をひねる。
「あれー? おかしいな。一つの体なのに、四つも心を感じるね! おかしいね、生命の埒外ってこういうことを言うのかな?」
 呪詛がにじみ出るように『歓喜のデスギガス』の瓦礫の下半身より再構成され、『疾き者』が姿を表す。

 彼という存在を認識する者があるかぎり、『疾き者』は、否、悪霊は滅びず。
「いつか、その元に刃を届かせて見せますよー。デスギガス」
 陰の内側では『陰海月』と『霹靂』が声ならぬ悲鳴を上げている。
『歓喜のデスギガス』とはそういう存在だ。あるだけであらゆるものに恐怖を齎す。どんな者であっても、定命があるのならば、彼等から逃れ得ぬのと同じように。
 だが、それでも『疾き者』は『魂人』を逃し続けるだろう。
 彼が生きること、徒に生命を弄ばれぬことこそが、今の猟兵たちの目的そのものだ。

『魂人』の青年は見ただろう。
 如何に恐ろしき力であっても、目をそらさず、目を伏せず、果敢に立ち向かうものの姿を。
 それこそが、力を恐れぬということである。
「友達が欲しいって思っていても、友だちになれない存在ってあるんだね!」
「ええ、それの最たるものが我等。悪霊にして猟兵。『ただ死なぬ』という点において、ここで足止めさせていただきますよー」
 大いなる足止めが始まる。
 生み出し続けてきた呪詛。封じ続けてきた呪詛。
 それらの全てを開放し、『疾き者』は『禁獣禁域』から『魂人』が脱出するその時まで、『歓喜のデスギガス』を押し留め続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK

ごきげんよう、滅ぼされるべき悪夢
私も友達なんていないけど、お前も消滅する瞬間まで、友達なんて出来なさそうな気配がしているよ
やれやれ、お前、どうすれば死んでくれるんだい

さて、必要なのは逃がすための手段
なら、シャリオに魂人を乗せて、出来るだけ遠くへ、他の猟兵を追跡対象に指定して運ばせるってのはどうかな

それを傍観してくれるわけないから、足止めする必要があるのだけど……
触れてもダメ、攻撃してもダメってことなら、やれることは限られるね
光の焼却を利用した目眩まし
地に足付けた巨体なら足場の地面を殴って壊してバランス崩させるか

無駄な抵抗でも、狙いは時間稼ぎだもの
悪足掻きに付き合ってよ



「もー、どうしてぼくの友達を増やすことを邪魔するのかな。生命の埒外だからって、猟兵だからって、していいこととわるいことくらいわかるでしょ」
『歓喜のデスギガス』は『純粋な善意』を持つ存在である。
 だが、それは額面通りの言葉ではないことを猟兵達は知っているし、『魂人』だって理解していただろう。
『純粋な善意』は『純粋な悪意』へと裏返る。
 ともすれば、隣に立つものであった。そんな悪意とも取れる善意を前に肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)は立ち塞がる。

 先行した猟兵が足止めし、『魂人』を『禁獣禁域』より無事に脱出させるためだ。『歓喜のデスギガス』は打倒不能な存在。
 今はまだ、であるのか、それともこれからもずっと、であるのかはミサキにも分からない。
「ごきげんよう、滅ぼされるべき悪夢」
「やあ、挨拶ありがとう。でもお友達になれない相手に時間を割いている暇なんてないんだ。ぼくは、彼の苦しみを取り除いてあげたいんだ。でもでも、望みを叶えてあげたいって思うのは友達として当然ことだと思わないかい?」
 ミサキは『歓喜のデスギガス』の言葉に首を振る。
 数百メートルはあろうかという巨体を怯むことなくミサキは見つめる。
「私も友達なんていないけど、お前も消滅する瞬間まで、友達なんて出来なさそうな気配がしているよ」
 その言葉は、『歓喜のデスギガス』にとって偽らざる言葉として突き刺さることだろう。

 心が読める『歓喜のデスギガス』は、それゆえにミサキの言葉を繋ぐ。
「どうしてそんな事を言うのだろう。ひどいよ。お友達になれないからって、意地悪したらだめだよ。そんなこと言う子は――」
 漆黒の体から無数の腕が伸びる。
 それに触れては記憶を奪われるとミサキは確信したし、同時に、そのユーベルコードは己に存在しない記憶すら植え付けることを直感的に理解したのだ。
 善意によって他者の望むものを最悪の形で押し付ける。
 それが『歓喜のデスギガス』というのならば、ミサキは『魂人』の手を取って、Chariot(シャリオ)に跨がらせる。

「私の騎馬……頼んだよ」
「どうしてあんた達は其処までしてくれる。俺とあんたには面識はないはずだ。赤の他人のはずだ。どうして此処までしてくれるんだ。あの人も、アンタも」
『魂人』の青年の言葉にミサキは首をかしげる。
 そうしなければならないということだけが確かであったからだ。ただ困っているから助ける。それだけの理由であったのかも知れない。
 そもそも、己の戦いに『魂人』という存在は足かせでしかなかったのかもしれない。
 だから、彼女は己のユーベルコードで『魂人』を逃すのだ。

 この『禁獣禁域』より外、ともすれば、次なる猟兵達の元へと無事にたどりつけるようにと、ただそれだけのことであったのかもしれない。
「さあ、お行き。でもまあ、傍観してくれるわけないよね……」
 ミサキは迫る『歓喜のデスギガス』の巨体がはずみ、迫るのを見上げた。
「触れてもダメ、攻撃してもダメってことなら、やれることは限られるね……やれやれ、お前、どうすれば死んでくれるんだい」
 途方も無い敵。
 打倒すら難しい敵。
 けれど、今のミサキには為すべき目的がある。

 そう、足止めだ。
「こう考えているね! 目くらまししかできないって。これが無駄な抵抗だってことも理解しているのに、どうして邪魔するんだい!」
「簡単なことだよ。これが悪足掻きだから。付き合ってよ、お前が根負けするまで……とは言わない。ただ、あの『魂人』がこの禁域から逃げ出せるまで」
 ミサキは黒い陰をまとう大型二輪車が疾駆するのを背に追いながら、光の滅却でもって『歓喜のデスギガス』の視界を奪い、即座に大地を殴り砕く。
 砕けた大地は隆起し、ひび割れ、その巨体を支えきれず『歓喜のデスギガス』は転倒する。
 
 だが、その悪夢の如き弾性でもってボールのように跳ねながら体勢を整える『歓喜のデスギガス』にミサキはいよいよ辟易する。
「うんざりだって思っているね! わかるよ! ぼくも君たちが邪魔ばっかりするの、いやだなって思うもの!」
「同意ってしたくないんだけど……お前、そんなんだから友達の一人もできないんだよ。相手が望むものを与えているつもりでしかないから、そんなふうに思う。誰もお前を思ってはくれない」
 ミサキは、己の体温を極限まで高めながら、光を解き放つ。
 常闇の世界にあって、彼女の放つ光は標。
『魂人』を乗せた大型重二輪車が疾駆する。それでいいのだとミサキは思う。これは悪足掻き。
 倒せなくても、『歓喜のデスギガス』の目的を阻めればいい。

 もう誰も終わらせない。
 自分が終わらせると、傷つきながらもなお、ミサキは打倒し難き存在に果敢に立ち向かい、悪足掻きと称した戦いを続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

護堂・結城
助けて、と誰かの手から涙と願いが零れた
助けたい、と誰かの手から命と願いが零れた
そうして零れた光を拾い上げる為に身に着けた力だ
取られなかった手や届かなかった手に代わり、俺がその手を掴む

「だからこの世界で俺は『無敵』だ」

星屑一条を発動、全装備を召喚して搭乗兵器に変える
今回は攻撃を半減、装甲を増やそう、倒せないなら倒せないなりの戦い方をすればいい

「さぁ、踏ん張れよ。全員で生きて帰るぞ」

巨体で跳ぶとか存外身軽だな。それだけ勢いがあるなら十分だ
接触のタイミングを見切り、回転しながら巨大な九尾で巨体を受け流し
そのまま相手の勢いを利用して別の方向に押し出す吹き飛ばしを仕掛ける

「少し遊ぼうや。時間は貰うがな」



 零れ落ちるのは生命だけではないだろう。
 人は生命を失うことを恐れる。当たり前のことだ。存在を証明するのが生命しかないのであれば、それこそがもっとも大切なものであったからだ。
「わかるよ。君の考えていること。どうにかしてぼくを此処に押し留めようって思っているね?」
 禁獣『歓喜のデスギガス』は数百メートルもあろうかという巨体から護堂・結城(雪見九尾・f00944)を見下ろしている。
 ふざけた面であると結城は思ったであろうし、同時に『歓喜のデスギガス』との戦いが戦いにすらならぬことを知る。

 悪夢の如き弾性。
 それがあらゆるユーベルコードを跳ね返す。打倒不可能と言われた存在。されど、結城は立ち止まることを忘れたように『歓喜のデスギガス』に迫る。
「ああ、助けてって言っても助けてもらえなかったんだね。助けたいと思っても届かなかったことがあったんだね。つらいね、かなしいね、でもね、ぼくは君たちとはお友達にはなれないんだ。仕方ないよね」
『歓喜のデスギガス』が跳ねるようにして飛ぶ。
 下半身と思わしき瓦礫の如き建造物が足のように結城に迫る。
 圧倒的な質量。
 存外身軽であるなと思えたことであろう。

 たわむ体が空へと飛び上がり、凄まじい勢いで持って結城に落ちてくる。
 それを見上げながら、その瞳にはユーベルコードの輝きがある。
 助けて、と誰かの手から涙と願いがこぼれたのならば。
 助けたい、と誰かの手から生命と願いがこぼれたのならば。
 結城の心にあるのは、そうしてこぼれた光を拾い上げるために身に着けた力。
 取られなかった手や届かなかった手の代わりに、己がその手を掴む。
「だから、この世界で俺は『無敵』だ」
「思い込みってすごいね。でもね、ぼくの体はなんでも跳ね返してしまうんだ。押しつぶしちゃうけど、しかたないよね。ぼくと君とは滅ぼし、滅ぼされる間柄でいsかないんだから!」

 迫る巨体。
 あの大質量であれば、容易に結城は押しつぶされるだろう。一瞬だ。
 けれど、そのひとみに輝くユーベルコードが告げている。
「我等は零れた願い星」
 雪見九尾の星屑一条(スターダストキャバリア)は、そのための力である。己の武器庫にあるあらゆる武装を持って巨大化する九尾の狐をもした搭乗兵器。
 打倒できぬのならば、打倒できぬなりの戦いをすればいい。
「さぁ、踏ん張れよ。全員で生きて帰るぞ」
『魂人』だけではない。
 青年の彼は今、先行した猟兵の作り出した大型二輪車が砕けて消えて身を大地に投げ出していた。

 彼を今守れるのは己だけだ。
 ならばこそ、彼だけではない他の猟兵も、己自身も守って帰る。ただそれだけのことであるのに、途方も無い力がこみ上げてくる。
 迫る巨体を前に狐型搭乗兵器が回転しながら、巨大な九尾でもって『歓喜のデスギガス』の巨体を受け流し、しなる尾の一撃が巨体を吹き飛ばす。
「無駄なのになぁ。君もそれはわかっているんでしょう? なのに、こんなことをするの?」
 弾むように『歓喜のデスギガス』の巨体が大地を跳ねる。
 体制を整える両者。
 そこにあったのは戦いという一方的な意識のみ。

 いや、違う。
 どちらも戦いとは思っていない。
「少し遊ぼうや」
「友だちになれない人とは遊びたくないんだけど、ぷちっと潰しちゃえば、そういうことも言えなくなるよね!」
 迫る巨体。
 けれど、結城はためらわない。
 これは時間稼ぎだ。己たちが『歓喜のデスギガス』を打倒する必要はない。今この背に追っている『魂人』が大地を駆け出す。

 彼もわかっているのだ。
 己たちが勝ち得ぬ戦いに身を投じていることを。わかっている。だから、ああやって振り返らずに走っている。
「それでいい。振り返るな。恐れよ、恐れるなと力を真正面から見据えて言い続けろ。苦しみだけが続く生命であったとしても」
 結城もまた振り返らず、己の駆る狐型搭乗兵器と共に『歓喜のデスギガス』と相対する。

 傷つき、強化された装甲がひしゃげても尚、生きることをためらわない。それは生きることに全霊をかけているがゆえ。
 生きて帰るということだけに邁進する時、結城は必ずや叶えられなかった願いをすくい上げる手をもって、大いなる戦いに打ち勝つのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
でっけぇですわね〜
真の姿のヴリちゃんもでっけぇですけれど、流石に数百メートルもございませんわ
それに海賊みたいな立派な白いお髭ですわ
なんですヴリちゃん?お髭ではない?お口?
なら綺麗な歯並びですわねぇ
でもお友達になりたいとは思えませんわねぇ…お目々がイッておりますし…
あの目付きは危ないおハーブをキメてる目ですわ

お魂人の方〜!いまお助け致しますわよ〜!
ちょっと本気を出さないとヤバそうですわ
ヴリちゃん!かつて旧き時代に我が王国を灼き尽くした力を今ここに!
オーバーロードでリグ・ヴェーダモードですわ〜!
わたくしは頭に乗りますわ

お魂人を掻っ攫ってスタコラサッサですのよ
まともに戦うつもりなんて御座いませんのよ〜!おほほ!
ハイパーブーストですわ〜!
あちらが飛ぶならこちらも飛ぶのですわ
高度を合わせて急降下されるのを防ぐのですわ
後はひたすらガン逃げですわ!
腕やビルぶんぶんは範囲外に逃げる事で避けるのですわ
なんですヴリちゃん!好き勝手言われてムカつくからちょっと攻撃してみたい?
めっ!跳ね返されてしまいますわよ!



 禁獣『歓喜のデスギガス』。
 その威容は見上げるほどであり、数百メートルとも言われる巨体は、まるで悪夢のように弾んでいる。
 猟兵たちが逃した『魂人』の青年は走っている。
 己を逃がすために猟兵達は死力を尽くしている。それがわかるからこそ、彼は振り返らない。
 どうして救ってくれるのかもわからない。
 ただ心の中に苦々しい想いがこみ上げてくるようでも在った。
「彼はぼくのお友達になるんだから、邪魔しないでよ」
『歓喜のデスギガス』は怒るでもなく、ただたわむように弾みながら、その巨体を空に飛び上がらせる。

「でっけぇですわね~」
 メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は、その様相を見上げて思わず呟いていた。
 あまりにも巨大な『歓喜のデスギガス』。
 まるで全容がわからない。それほどまでに巨大な存在が、こちらに迫ってきている。
「ヴリちゃんもでっけぇですけれど、流石に数百メートルもございませんわ。それに海賊みたいな立派な白いお髭ですわ」
 メサイアはオーバーロードによって真の姿を晒した機械じかけの暴竜『ヴリトラ』の頭部に座し言う。
 彼女の駆るキャバリアも巨体ではある。
 機械じかけであることを感じさせぬ有機的な……まさしく竜そのものとなった『ヴリトラ』が咆哮する。

「お髭ではない? お口?」
 あらまあ、とメサイアは、ごめんあそばせというように口元に手をやる。まあ、白ひげに見えなくもない。
 きれいな歯並びですわねぇ、とのんびりとした口調になってしまうのはいつものことだ。
「でもお友達になりたいとは思えませんねぇ……お目々がイッっておりますし……あの目つきは危ないおハーブをキメてる目ですわ」
 メチャクチャな言いようである。
 けれど、『歓喜のデスギガス』が尋常ならざる相手であることは変わりない。巨体が跳ねて、己達に迫っている。いや、違う。

 己たちの咆哮に走る『魂人』の青年を追っているのだ。
「お『魂人』の方~! いまお助け致しますわよ~!」
 真の姿を晒した『ヴリトラ』は、かつて旧き時代にメサイアの王国を焼き尽くした暴竜そのもの。
 その力をオーバーロードの果てに引きずり出す。
 これこそがリグ・ヴェーダモード。
 頭部に座すメサイアが王笏の柄を打ち鳴らし、迫る『歓喜のデスギガス』と対峙する。
「ぼくが友達になりたいのは、彼だよ。きみたちじゃない。君たち猟兵は、見るだけでわかる。絶対にお友達になれないって。わかっているんだ。頭じゃなく、この内側からそう感じるんだよ」
「ええ、まったくもって同感ですわ~!」
 ならば、滅ぼし合うしかない。

 けれど、『ヴリトラ』は真っ向から『歓喜のデスギガス』を打倒しようとはしなかった。こちらに走ってくる『魂人』をかっさらうようにして掴み上げると、一気に飛翔する。
「まともに戦うつもりなんてございませんのよ~! おほほ!」
「逃げるつもりなんだね。わかっているよ。まともに戦おうとはしないんだね。悍ましき暴力の化身たる君が、逃げの一手を選ぶ。そうか、ぼくに攻撃が通じないことを理解しているんだね」
『歓喜のデスギガス』は告げる。
 メサイアのしようとしていることを理解したのだ。ハイパーブーストによって一気に戦線を離脱しようとする『ヴリトラ』。
 けれど、一直線に逃れようとしても、即座に『歓喜のデスギガス』はコースを先取りして弾んで一気に大地を砕くように落下してくる。

 直線距離でなら振り切ることもできただろう。
 けれど、空より落下してくる『歓喜のデスギガス』の攻撃を躱して、となれば話は別だ。
「って、こちらに急降下が鬱陶しいですわね!」
「きみたちの狙いはわかっているよ。高度を合わせようとしているし、ひたすらに逃げようとしているね。だから」
『歓喜のデスギガス』から放たれる瓦礫の如きビル。伸びる腕がハイパーブーストの加速を十分に得られずに飛翔する『ヴリトラ』へと迫る。
 狙いは『魂人』だとわかっている。
 だからこそ、メサイアは『ヴリトラ』を制するのだ。

 わかるのだ。
『ヴリトラ』が苛立つのも。
 好き勝手にこちらの行動を先読みしてくるのも。斯様に言われては、こちらのプライドというものが逆撫でされるようで癪に障る。
「めっ! 跳ね返されてしまいますわよ!」
 メサイアはこちらの攻撃の一切が『歓喜のデスギガス』に通用しないことを理解してる。
 今は『魂人』を『禁獣禁域』の外に逃すのが最優先である。
 速度に全振りしたオーバーロードの力で一気に距離を稼ぐ。まだまだ『禁獣禁域』は抜けない。

 けれど、それでいい。
 追いつかれたとしても猟兵達は一人ではない。
「あとはおまかせ致しましたわ!」
 繋げばいい。『歓喜のデスギガス』に勝利しなくていい。こちらの目的は端から『魂人』を逃すことのみ。
 再戦のその時まで、メサイアはただ『ヴリトラ』を御し、『魂人』を次なる猟兵に託すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
le vent la fleurを発動したまま背中の翼で飛行し、素早く接近。
ただ問答をしているだけなら魂人の手は簡単に掴めるはず。

こんにちは。わたしは望。あなたを迎えに来ました。
こんな恐ろしい存在は放っておいて、わたしと一緒にどこか安全な場所に行きましょう。

戦うつもりも競うつもりも一切なく、デスギガスなんて眼中にもなく。
プレストに魂人と相乗りし、魔力で出来たアネモネに包まれながら悠々とその場を後にしましょう。

他の闇の種族に弄ばれないように問答に付き合ってくれてありがとうなのです。お礼にこの場ではお前に何もしませんよ。さようなら。

けれどいつか必ず、再びお前を灼滅してみせます。



 咲き誇るは、風の花。
 魔力で形成された巨大なアネモネが先行した猟兵から受け取った『魂人』の青年と共に七那原・望(封印されし果実・f04836)を包み込む。青年の手をとって、飛翔する彼女の周囲には麻痺毒の粒子が飛散し、柔らかな風で持って外部からの攻撃全てを遮断する。
 不快な金切り声が鳴り響く。
「どうしてぼくからお友達を取ろうとするのかな! そんなひどいことをするなんて、やっぱり猟兵とはお友達になんかなれない!」
 その声を望は遠く聞く。

「こんにちは、わたしは望。あなたを迎えに来ました」
 彼女は『歓喜のデスギガス』に興味はない。如何に数百メートルもあろうかという巨体で己たちを追っているのだとしても眼中にはなかった。
 黒い眼帯に包まれた瞳には動揺の色はなかった。
 けれど、しっかりと『魂人』の青年の手を取って、走り出すのだ。
「俺は――……」
『魂人』の青年は、己の名を告げられずにいた。なんと言っていいかわからないし、どう答えるのが適切でるのかを測りあぐねている様子でも在った。
 けれど、望は構わなかった。

「こんな恐ろしい存在は放っておいて、わたしと一緒にどこか安全な場所に行きましょう」
 決断は速いほうがいい。
 これまで先行した猟兵たちが稼いだ時間。
 距離を詰められながらも、引き離し、『魂人』の安全を確保し続けているのだ。彼が無事に『禁獣禁域』より脱出することが猟兵たちの勝利。
 必ずしも『歓喜のデスギガス』を打倒する必要はない。いや、打倒がそもそもできない。
 あらゆる攻撃を弾き返す弾性。
 その悪夢の如き力は未だ猟兵達が届かぬ領域にある。

「邪魔ばっかりする嫌な奴らだね。彼は苦しんでいる。でも苦しみから開放されたいとは思っていない。生きていたいと思うばかりで、苦しみを受け入れている。理解できない。彼自身もまた理解できていない。だから」
「だから、あなたが答えを出すと?」
 望は純白の翼を宿す荘厳な姿の宇宙バイクにまたがり、迫る『歓喜のデスギガス』の金切り声を遮断する柔らかな風と共に『魂人』と相乗りして巨体を見上げる。
「そうさ! ぼくと彼はお友達だからね! その答えを出してあげることが、とっても大切なことなんだよ、だから!」
「他の闇の種族に弄ばれないように問答に付き合ってくれてありがとうなのです」
『歓喜のデスギガス』の言葉を断ち切るように望は告げる。

 それは本心から言っている感謝の言葉であったことだろう。
 けれど、『歓喜のデスギガス』にとってはそうではない。目の前の小さな存在は滅ぼさなければならない存在だ。
 それがわかるからこそ、望たちを追いかけているのだ。たわむように弾みながら、空中より巨大な体で持って圧殺せんとしている。
「まだ話は終わってない!」
「お礼にこの場ではお前に何もしませんよ。さようなら」
 望と『魂人』の青年を乗せた宇宙バイクが、大地を砕く巨体より逃れて『禁獣禁域』を目指す。

 追いすがる巨体は容易には振り切れないだろう。
 それ以上に望の心に在ったのは決意であった。
「けれどいつか必ず、再びお前を灼滅してみせます」
 過去の化身であるというのならば、一度滅びた存在である。今は悪夢のような弾性でもってあらゆる攻撃を跳ね返してくる『歓喜のデスギガス』であっても、必ず滅ぼす手段があるはずなのだ

 ならばこそ、望は必ずや訪れるであろう機会を逃さない。
 オブリビオンと猟兵。
 相対する存在であるがゆえに、相容れぬ者。滅ぼすと決めた時、それは必ず為し得るものとして望の伸ばす手の先に結果として訪れるだろう。
 今はまだ、ただその一言だけを残し望は『魂人』を限界まで運ぶのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリー・スペルティナ
ふ、ふふん、わたくしなら時間稼ぎも楽勝ですわよ!

自身にUCの強化呪式をかけ、攻撃は第六感に任せ、必死になって避けます
向こうがこっちをすぐにでも潰せると思っている限り、この呪式は効果を見せますわよ!
そしてちまちまとクロスボウを使い、血晶石を使い切るつもりであの体に向けて撃ちまくりますわ!

……まあ、外しても時間がたてば固体化は解け、血晶石は血に戻る
本命はこの一帯へと血をばらまく事
『ブルートヴァッフェ』、血晶石同様にこの血を凝縮した刃の固体化も解き、「触れれば想いを食われ、無数の怒り、嘆き、恨みが濃縮された呪詛をため込んだ」わたくし数人分の量の血だまりを罠として使いますわ!

※アドリブ連携他歓迎ですわ



 猟兵達は『歓喜のデスギガス』を打倒する術を持たない。
 それは戦う前からわかっていたことであった。けれど、猟兵の誰一人として、転生した『魂人』を見捨てるような選択をするものはいなかった。
 メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は、『魂人』の青年を追う『歓喜のデスギガス』を前に立ち塞がる。
 他の猟兵が彼を連れて逃げている。
 彼を『禁獣禁域』の外まで連れ出せば、猟兵の戦いは少なくとも無駄ではなかったといえるものとなるだろう。
「ふ、ふふん、わたくしなら時間稼ぎも楽勝ですわよ!」
 メリーのその言葉は何処か虚勢を感じさせるものであった。

 けれど、彼女の体は震えてなどいなかった。
 敵は格上。そして、『歓喜のデスギガス』にとってもメリーは格下であるとうなうずけるものであった。
 彼女がとりわけ格下と思われているわけではない。
 猟兵という個はオブリビオンの個に劣るものである。勝ることはない。だからこそ、『歓喜のデスギガス』は首をひねるようにな仕草を見せた。
「よくわからないのだけれど、行動と言動は一致しているのに、その内心は違うように見えるのはなんでだろうね。ぼくはどうしても理解できないのだけれど、猟兵はお友達にはなりえないわけだから、考えなくたっていいよね」
 黒いオーラが伸びる。
 それは触れれば、強制的にメリーの記憶を奪い、都合の良い記憶を押し付けるユーベルコード。

 だからこそ、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
「ほんとうに格下かどうか、その身で確かめさせてやりますわよ!」
 強化呪式:王に届かせる刃(エンハンス・エクリプスブレード)。
 それはまさしく、大物喰いのような、それこそ巨人殺しの如き現状をひっくり返すユーベルコードであった。
 襲いかかる黒いオーラ。
『歓喜のデスギガス』はこちらを即座に打倒できると思っている。無理もない。こちらの攻撃は全て跳ね返されてしまう。
 対する『歓喜のデスギガス』は一瞬で圧殺できるほどの巨大な躯体を持っている。

「……?」
 だが、『歓喜のデスギガス』は首をひねるだろう。何故か攻撃が当たらない。
 メリーは格下だ。
 蟻のようなものだ。無視できるが、煩わしいと思える存在。だからこそ、一息に潰そうとしたのだ。
 けれど、それをメリーは即座に躱す。
 躱しながら、即座にクロスボウから放たれる血結晶でもって応戦している。けれど、それも無意味であるはずだ。
 全ての攻撃が跳ね返されて、血結晶は大地に散らばっていく。
 砕け、破片と共に大地に『染み込んでいく』。

「何を狙っているのかわからないけれど、それは無意味だと思うよ? ぼくに攻撃が通用しないのはもうわかっているでしょう?」
 けれど、メリーは構わなかった。
 放つ血結晶は次々と個体から液体に代わり、大地に染み込んでいく。
 その本命を心を読むことのできる『歓喜のデスギガス』は理解している。血結晶は固体であるが、血を凝縮したもの。
 ならば、それをばらまくということはどういうことか。

「触れれば想いを食われ、無数の怒り、嘆き、恨み……それが濃縮された呪詛を溜め込んだ」
「そのとおりですわ! わたくし数人分の量の血溜まりですわ!」
 開放されたのは、彼女の血の呪法により武器として固定されていた『ブルートヴェッフェ』。
 地に満ちる血結晶が開放された血の海。
 剣の形を失った血液が数百メートルにも及ぶ『歓喜のデスギガス』の巨体へと奔る。

「時間稼ぎってわかっているんだけれど、本当に倒す気なんてなかったんだね」
「言ったでございましょう? 時間稼ぎも楽勝ですわよと!」
 メリーのユーベルコードは己を格下と見る者に対してのみ発動する。
 その瞬間、彼女は王すら殺す刃を持つ者。王飲みを殺せる刃を隠し持つ者。
 ならば、彼女の張り巡らせた血液の罠は檻のように『歓喜のデスギガス』を囲い込む。

 これもまたいずれ破られるだろう。
 けれど、メリーは誇っていい。あらゆる攻撃を跳ね返す『歓喜のデスギガス』を足止めしてみせたのだから。
 あらゆる攻撃を無とする『歓喜のデスギガス』は血液という物理的な檻に阻まれ、その足を止めざるを得なかったのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
何も効かぬ、か
さて本当か否かだが
敢えて今試すこともなかろう

状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを無限に破壊、自身から断絶し否定
尚迫るなら世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給

絢爛を起動
目の前の空気を起点に静止の原理を以て戦域の空間を支配
デスギガス周囲の全てを空間諸共に静止させ全行動を間接的に封じる

デスギガス「は」何も効かぬかもしれんが
言えばそれだけということだろう
周囲の全ては単に動かないのが理となっているだけ
攻撃されねば反射も無意味

抜けてきたら適当に壁に
さて退避するぞ

※アドリブ歓迎



『歓喜のデスギガス』は煩わしそうに血の檻を弾みながら、漸くにして破壊する。
 未だ『魂人』の青年は『禁獣禁域』より脱出できていない。
 猟兵たちの速度をもってしても、逃げ切れない。それ以前に『歓喜のデスギガス』が本気になれば、即座に悪夢のような弾性でもって飛び跳ね追いつくだろう。
 猟兵が編み上げた血の檻は『歓喜のデスギガス』にとって足止めにしかならなかった。否、足止めできたという事実が凄まじい。

 あらゆる攻撃を跳ね返す。
 言葉にすれば簡単なことだ。けれど、その力の凄まじさは猟兵たちをして打倒不能であるということだ。
「何も効かぬ、か。さて本当か否かだが、敢えて今試すこともなかろう」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は、それが時間の無駄であることを悟る。
 すでに戦況は理解している。
『魂人』の青年は今も猟兵と共に『禁獣禁域』より脱出しようと移動し続けている。
 そして、『歓喜のデスギガス』は猟兵の施した足止めを食い破るようにして、跳ねる前段階のようにたわむ。
「もう、ぼくのお友達を連れて行かせはしなんだからね」

 たわむ巨体が跳ねるだけで周囲には衝撃波が吹きすさぶ。
 凄まじい力であると言わざるを得ないだろう。
「要らぬ余波は外に破棄。煌めけ」
 アルトリウスは跳ねる『歓喜のデスギガス』を見上げ、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
 偽りの記憶を押し付け、正しき記憶すら奪い去る黒いオーラをアルトリウスは原理でもって防ぐ。
 絢爛(ケンラン)たるユーベルコードは目の前の空気を起点に静止の原理を持って、空間を支配する。
『歓喜のデスギガス』の周囲全ての空間をもろとも静止させる。あらゆる行動を封じるのだ。

「これでもなお効かぬか」
「そうだよ。ぼくには攻勢の全てが意味をなさない。全て弾き返してしまうからね」
「言えば、それだけということだろう。お前の周囲の全ては単に動かないのが理となっているだけ。攻撃されねば反射も無意味」
 攻撃する意志はない。
 ただ、アルトリウスは原理でもって『歓喜のデスギガス』の周辺の空間を止めたのだ。けれど、『歓喜のデスギガス』は、その止めた空間そのものを弾性でもって弾き、己自身を跳ね回らせながらユーベルコードの範囲外から跳躍する。

「抜けるか……だが」
 アルトリウスは、さらに空間を固定し壁にする。
 静止の原理を持って空間を支配して尚、その支配の外から跳ねて『魂人』の青年を追う執着。
 それが『歓喜のデスギガス』にとって如何なるものであったかをアルトリウスは知らないし、知りたいとも思わないだろう。
『純粋な善意』。
 ただそれだけのことなのだろう。
 友だちが欲しい。たったそれだけのために、完全な善意はくるりとひっくり返って、悪意そのものとなって『魂人』を追う。

 苦しみながら、苦しみを解放されたくないと願う者。
 その意味を『歓喜のデスギガス』は理解できていない。苦しみを得るからこそ、それ以外を得ることができることを『魂人』の青年は知っていた。
「お前にアレを追う資格もなければ、玩具にすることも、救うと嘯くことも無意味だ」
「そんなことなんてないよ! きっと解放してあげなければならないんだから!」
 アルトリウスはもう取り合わなかった。
 壁とした静止した空間をもって、せめて『魂人』を追う『歓喜のデスギガス』の跳躍の距離を引き伸ばし続ける。
 これは時間稼ぎだ。
「さて、退避するぞ」
 理解できぬものを、理解しようとすることは評価できる。けれど、自分本位の善意の押し付けは、結局の所、人を傷つけるだけなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
上層に至ったものの、敵は我等が全てを以てしても届かぬものばかり
我等が無力、我等の脆さが口惜しい
生きては死山血河を築き、死しては怨念となっても届かぬ
口惜しく呪わしい、侮蔑すべきは我等が無力
この憎悪、この慙愧はいずれ果たしてみせよう

【行動】POW
UCの飛翔と空中機動を持つ黒酸漿の連携で魂人が退避できるようにする
五感と第六感+野生の勘を働かせて敵の攻撃を読み、瞬間思考力と戦闘知識を基に魂人が退避しやすいルートを見切り、それを塞ぐ攻撃を優先的に対処

敵わないからこそ滾る憎悪と殺意をUCの速度と力に変換し、連続する攻撃をなぎ払い、ビルを切断した上で怪力によってなぎ払う
魂人が逃げ遅れそうな時は黒酸漿で運ぶ



 足止めに走る猟兵達がいる。
 彼等は己の持つ全てをもって『歓喜のデスギガス』に果敢に立ち向かっていく。
 全ての攻撃を悪夢のような弾性でもって跳ね返す力。
 その特性は、今の猟兵をして打倒不能と言わしめた。だからこそ、『魂人』を逃さなければならない。
 彼を『禁獣禁域』の外に連れ出す。
 そうすれば、『歓喜のデスギガス』はもはや追えないだろう。
 だからこそ、猟兵達は彼を速度で持って『歓喜のデスギガス』から引き離し、また足を止めることに全力を注ぐ。

 だが、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)の中に渦巻くのは慙愧の念であった。
「上層に至ったものの、敵は我等が全てを以ってしても届かぬものばかり」
 ああ、と彼は息を吐き出す。
 己たちの無力。
 己たちの脆さ。
 それらの全てが口惜しいと思うだろう。何一つ『歓喜のデスギガス』には届かない。ただ『魂人』を救うことも危うい。
 このままでは追いつかれ、死してなお『魂人』は欲望を満たすための玩具へと成り果てるだろう。
 二度目の死が如何なるものであるかはわからない。けれど、それはきっと良くないものであることはわかる。

「生きては屍山血河を築き、死しては怨念となっても届かぬ」
 身を焦がすような憎悪が膨れ上がっていく。
 それは『歓喜のデスギガス』に対するものではなかった。
「そんなに君も苦しいんだね。身を焦がす憎悪を捨てることもできなければ、それ自体が自分だと思っているから、そんなにも自分の中にある炎で焼かれてしまうんだよ」
 迫る巨体。
 数百メートルにも及ぶ巨体が織久へと迫る。
 彼の心を読み解くように『歓喜のデスギガス』は言う。心が読めるのだ。だからこそ、度し難い。許しがたい。

「口惜しく呪わしい、侮蔑すべきは我等が無力」
 ユーベルコードに煌めく瞳が見上げる。
 黒き鱗のワイバーンに捕まり、織久は空中へと飛び出す。交錯する『歓喜のデスギガス』の巨体。
 空へと一撃を躱した織久の瞳は見据える。
 己の身に流れる竜の力が全身を覆っていく。見に潜むは竜。天地を遍く狩る竜翼が彼を殺意と怨念でもって走らせる。
 怨竜顕現(エンリュウケゲン)。
 それは身を焦がす己自身に向けた憎悪。

 力足りず及ばない。
 ただそれだけのことである。けれど、それが最も呪わしい。力さえあれば、『歓喜のデスギガス』とて滅ぼす事ができただろう。
 けれど、それができない。できぬ己を呪う言葉が織久の内側から溢れ出していく。

「この憎悪、この慚愧はいずれ果たしてみせよう」
「自分に向けた憎悪を果たそうとするなんて、やっぱり理解できないよ! 猟兵っていうのはさ!」
 放たれるビルの瓦礫を切り裂く。
 ユーベルコードの輝きは織久を漲る力でもって高みへと登らせる。けれど、それでもまだ足りない。
 圧倒的な力を欲し、その力を己が得られぬことに対して憎悪を募らせる負の連鎖のごとき循環。
 
 迫り続ける『歓喜のデスギガス』の攻勢をしのぎ続ける。
 怪力を振るい、弾き返される攻撃の悉くを撃ち落としていく。『魂人』を連れた猟兵たちが逃げ切るその時まで織久は己の心に燃え続ける己自身に向けた憎悪でもって戦い続ける。
 内燃しつづける憎悪ほど恐ろしいものはないだろう。
 目の前に怨敵が存在し続けるだけでもくべられる炎は苛烈。身を焼くほどの憎悪こそが己という鐵を鍛え上げるというのならば、織久の内にある不純物は火花となって散っていくだろう。

 いつの日にか『歓喜のデスギガス』に、オブリビオン全てに届く刃と鍛え上げるは、黒き憎悪。怨念の全てが、過去の化身全てを滅ぼすその時まで、その炎は立ち上り続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…どんな存在であれ絶対無敵なんて物はあり得ない
ましてやそれが過去の残骸であるオブリビオンならば、なおのこと

…精々勝ち誇っているが良いわ、デスギガス
必ずやお前を討ち滅ぼし、この世界を真の意味で解放してみせる

敵UCの精神属性攻撃を自動発動UCにより反射して無効化し、
防具改造術式により魂人に「怪力の呪詛」を付与して身体能力の強化を行い、
魂人を逃す為の時間を稼ぐ為に「血の翼」に限界突破した魔力を溜め、
超高速の空中機動で敵の攻撃を回避しつつ戦闘知識を蓄え次の戦いに備えるわ

…これで多少は速く逃げれるはずよ。後は振り向かずに走りなさい

…私は貴方のような苦しめられている人を救済する為に戦っているのだから



 禁獣『歓喜のデスギガス』は悪夢のような弾性を持つ。
 それは猟兵たちにとってもまた悪夢であったことだろう。あらゆる攻撃を跳ね返す体。如何なるユーベルコードであっても傷つけることのできない存在。
「逃げないでよ。ぼくはただ友達の悩みを解決してあげたいだけなんだから!」
 金切り声が響き渡る。
『歓喜のデスギガス』にとって、それは『純粋な善意』であった。
 悩みを解決すれば、望みを叶えてあげれば、きっとその存在は『歓喜のデスギガス』の友達になってくれると信じて疑っていないのだ。

 けれど、『純粋な善意』は『純粋な悪意』へと裏返るものである。
『歓喜のデスギガス』は『純粋』でしかないがゆえに、相対する者の望むものを最悪の形で叶えてしまう。
「……どんな存在であれ絶対無敵なんて物はあり得ない。ましてやそれが過去の残骸であるオブリビオンならば、なおのこと」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は数百メートルはあろうかという巨体を見上げていた。
 金切り声が人の精神を蝕むのならば、彼女の代行者の羈束・時間王の禁厭(レムナント・サンズオブタイム)は即座に時間を逆流し、それを『歓喜のデスギガス』に反射する。

 左眼の聖痕が煌めき、リーヴァルディは己の精神を守る。
 だが、『歓喜のデスギガス』にとって、その金切り声は心地よいものであった。『歓喜のデスギガス』にしか心地よいと感じない声。
 それは彼自身が己に酔いしれていることを意味していたことだろう。
「おや、おやおや! ぼくの声が世界に満ちている! 気持ちいいね! こんなに心地よいのにどうしてみんな僕から逃げようとするのだろう!」
『歓喜のデスギガス』にとって、それは不可解なことであった。
 望みを叶えているのに恨み節をいわれてしまう。
 他の闇の種族は『魂人』を弄ぶだけだというのに、自分はどうだろう。友達になってほしいから望みを叶えてあげている。
 だというのに、『魂人』の全てが『歓喜のデスギガス』に言うのだ。

「こんなはずじゃなかったって。こんなのじゃないって。どうしてだろうね? ぼくは心が読めるから、みんなの願いは必ず正しいことなのに! ああ、でも猟兵のみんなは要らないよ。滅ぼし、滅ぼされるだけの間柄なんて、きっと友達ではないだろうからね!」
「……」
 その言葉はリーヴァルディにとって勝利宣言に他ならなかった。
 自身が敗れることなどついぞ考えていない言葉。傲慢、と呼ぶにはあまりにも『歓喜のデスギガス』は純粋すぎた。

「……せいぜい勝ち誇っているが良いわ、デスギガス。必ずやお前を討ち滅ぼし、この世界を真の意味で開放してみせる」
 リーヴァルディは、その背に負った血の翼を羽ばたかせる。
 限界を超えた魔力を湛えた翼は、この暗闇の世界にあっても煌々と輝く。
 彼女の瞳にあるのは『歓喜のデスギガス』ではない。猟兵たちがつなぎ、助け、『禁獣禁域』の外に連れ出そうとしている『魂人』の青年であった。
 すでに多くの猟兵が、彼を助け、此処まで導いている。

「……ダメだ。このままではアンタたちのほうが、アレにやられる……」
 青年の言葉にリーヴァルディは頭を振る。
「……これで多少は速く逃げれるはずよ」
『怪力の呪詛』を付与し、『魂人』の青年の身体能力を強化する。これより先には一人で向かって貰うほかない。
 他の猟兵に拾われるまで、彼自身の足で逃げなければならない。
「……後は振り向かずに走りなさい」
 脇目も振らず。
 ただ己の次なる明日を求めて。リーヴァルディは、青年に言葉を許さなかった。

「……私は貴方のような苦しめられている人を救済するために戦っているのだから」
 だから、その思いは無駄にしてほしくない。
 誰かのためにと戦うものにこそ強さが宿るのだとすれば、リーヴァルディは今や限界を超えている。
 迫る『歓喜のデスギガス』に勝利することはできないだろう。
 だが、敗北することもない。
 飛び立つリーヴァルディの翼が魔力を放出しながら『歓喜のデスギガス』の巨体と渡り合う。

 空に跳ねる『歓喜のデスギガス』と空中機動でもってこれを押し止めるリーヴァルディ。
 譲れないものがあるのならば、退いてはならない。
 次なる戦いのためにこそリーヴァルディは、今日という戦いを記憶する。倒せぬ者などいない。今はまだ。そういう言葉をこそ彼女は乗り越えるために、未だ偽りの空を駆けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力。…か
その言葉を、こんな所で、こんな奴の口から聞くとはね。
例え煽るにしたって、君が口にするべき言葉じゃない…事くらいは分かるよ
禁獣、歓喜のデスギガス
スートを司る者
叶うなら…此処で一泡吹かせてやりたいところなんだけど、仕方ないまた今度にするよ
ほんっとーに気に食わないけどさ!!
人命救助…いや、一度死んでるからどうなんだろうそれは…?
まあ、そっちを優先させて貰うから


出し惜しみは無し
真の姿解放、オーバーロード
外装、模造神器全展開
とはいえ、まともに戦うつもりは無いよ
【剣技・嵐狼剣】起動
白狼召喚、ほらそこの君乗った乗った
行ける所まで送るよ
デスギガスから逃げつつ、適宜強化された戦闘力を使って『斬撃波』を飛ばし牽制を続けよう
白狼の纏った蒼き風を『天候操作』で操り風の壁を周囲に生成
更に『オーラ防御』でシールドを張り、音の振動を少しでも和らげる
これで少しはあの耳障りな笑い声も防げるはず
後はガッツで耐えて!
私も耐えるから
行ける所まで駆け抜けるよ!



「己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力」
 その言葉は『歓喜のデスギガス』の口より発せられた言葉であるが、『魂人』の青年の心より紡がれた言葉でもあった。
 禁獣『歓喜のデスギガス』はこころを読む事ができる。
 ゆえに、彼は『魂人』の青年の心より浮かび上がった偽らざる言葉を発したのだ。

 だが、月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとって、その事実はどうにもむかっ腹の立つものであった。
「その言葉を、こんな所で、こんな奴の口から聞くとはね」
 数百メートルにも及ぶ巨体。
 あらゆる攻撃を跳ね返す悪夢のような弾性。
 跳ね、精神を切り裂くような金切り声を上げる異形なるもの。
「どうしてだい? ぼくは友達の心を読んだけだよ。読み上げただけだ。それの何がいけないんだい? だって友達なんだから!」
「例え煽るにしたって、君が口にするべき言葉じゃない……事くらいはわかるよ」
 玲の瞳が超克に輝く。

 オーバーロードによって彼女の真の姿が開放される。
 外装の副腕が現れ、ずらりと引き抜かれるは模造神器の蒼き刀身。四振りの模造神器の輝きが、暗闇の世界を切り裂く輝きとなって満ちる。
「禁獣、『歓喜のデスギガス』。スートを司る者」
「そうだよ! よく知っているね! けれど、どうしてだろう。きみってば怒っている?」
 理解できないというように金切り声を上げながら、歓喜のデスギガス』は首を傾げるような仕草を見せながら跳ねる。
 あの巨体である。 
 一度跳ねれば、それだけでこちらの足止めや時間稼ぎを無為なるものに変えてしまう。これまで他の猟兵たちが稼いだ時間を、玲は無駄にしないために出し惜しみをしない。

 持てる力の全てでもって、これを足止めする。勝利など無い戦い。けれど、それに立ち向かわなければならない時が必ず人には訪れるのだ。
「叶うなら……此処で一泡吹かせてやりたいところなんだけど、仕方ない。また今度にするよ」
「今でもいいよ! できると思うし、できないからって諦めるのはよくないよね。そんなふうに君も思っているんだろう、猟兵!」
「ほんとーに気に食わないけどさ!!」
 いちいち心を読んで先回りしてくる。
 苛立ちのほうが首をもたげるが、それでも玲は掲げた模造神器の輝きにより、蒼き嵐を纏う白狼を召喚する。
 剣技・嵐狼剣(プログラム・ストームウルフ)。
 遠吠えが戦場に響き渡り、白狼が『魂人』の青年を背に乗せる。

「さあ、乗った乗った」
「これは……アンタの生命と共有している……ダメだ、これではアンタが」
「人命救助……いや、一度死んでるからどうなんだろうそれは……? まあ、そっちを優先しないとね」
 玲は笑う。これが『魂人』ジョークってやつかなと思いながら玲は白狼と共に『魂人』を逃がすために『歓喜のデスギガス』に背を向けて走り出す。
「……来る!」
「行けるところまで行くよ」
 斬撃波を飛ばす。それは『歓喜のデスギガス』にとって何の問題にもならないだろうし、牽制にもならないだろう。
 けれど、やらないよりはマシだと考えることもまた理解できるものであった。

「こんな目くらましみたいなことをして。ぼくは友達の苦しみを開放してあげたいだけだって、そうおもっているだけなのにね!」
 巨体が飛ぶ。
 たわむ巨体は、その弾性を持って一飛で白狼に乗って走る玲と『魂人』の青年を空より見下ろす。
 そもそも数百メートルにも及ぶ巨体だ。
 距離など簡単に覆されてしまう。
「耳障りな声な時点で、すでに嫌われる要因になってるって気が付かないところが、ほんとそれっぽい!」
 青年と自身に張り巡らせたオーラが金切り声を軽減する。
 それでも突き抜けてくる声は、己たちの精神を蝕むだろう。オーバーロードによって強化されてもなお、この力。

「ダメだ、アンタが……! 俺は置いていけ。俺がアイツの目的なのだとしたら!」
「あの声が音っていうのなら、空気に伝わる……振動を和らげれば」
 玲は『魂人』の青年の言葉をにべにもなく切り捨てる。それは意味のないことだ。これまで自分たちがやってきたことの全てを否定する選択肢だった。
『たった一人』。
 けれど。
「その『たった一人』も救えないでどうするってね!」
 玲は白狼の首を触る。がんばろう、と励ますようでも在ったし、これから無茶をする、と伝えるようでも在った。

 オーラを積層にする。薄く、けれど、その幅を等間隔に広げていく。あの金切り声が、あくまで声、音であるというのならば。
 積層されたオーラの間に空気という壁を含むことによって音の振動は軽減される。厚さは必要ない。必要なのは数と構造。
「後はガッツで耐えて! 私も耐えるから」
「……! 理由になってない」
「理由になって無くても、行けるところまで駆け抜けるよ!」
 ただひたすらに耐えて、耐えて、耐えて。
 苦しみばかりがあるのが現実であるというのならば、その先にあるのは一体なんであろうか。

 わからない。苦しみがあるから楽しみがある。楽しみがあるから苦しみがある。表裏一体であり、同時に楽しさを得たいのならば苦しみを得ればいい。
 そうすれば、死を実感するから生を感じるように。
 生命の讃歌が今、『魂人』の……いや、この戦場に集まった猟兵達の胸の鼓動となって響き渡る。
「あれは君の闇だ。闇を恐れよ。されど恐れるな、その力……永劫回帰って死を否定する力が宿っているのなら!」
 玲は知るだろう。
 なんのために彼等に永劫回帰のユーベルコードが全てに備わっているのかを。死を否定する。運命すら切り拓く力があるからこそ彼等は、その力を持っているのだ。

 蒼い嵐と共に、生命の歌は高らかに鳴り響く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!


―――意志持つ飛空艇、自称”世界一の運び屋”[ミレニアムドラゴン号]の述懐
「ぎゃあああ死ぬ死ぬ死ぬ!!このクソガキィイイ!!」


なんてこったい!「ボクの心が!」読まれて!
面白ーい!「アハハハハ!!」

友達になれない?そんなことない!
出会いを重ねれば友情を築くことだってできる!
キミってオブリビオンにしてはしぶとそうだし!
だからキミ!ボクたち逃がしなよ!
だめ?んもーケチー!

●ハイヨー!逃げろー!
魂人くん乗せ[ドラゴン号]くんがんばって!
●冴え渡る【第六感】
ハイここで右に避けないと死ぬよー!
妨害に[球体]くんたちぽんぽん飛ばし避けれないのはUC『神撃』でぼよん!と弾いちゃおう!



 渋い声が台無しであった。
 何が、と問われるのならば、それは意志を持つ飛空艇、自称“世界一の運び屋”こと『ミレニアムドラゴン号』の渋い声色のことであった。
 いつもならば、空をゆく航路は晴れきっていた。
 けれど、常闇の世界ダークセイヴァーにおいて、それはあり得ないことだ。空は天井であり、未だ青空は見えない。
 暗闇と偽りの月だけがある空に置いて、『ミレニアムドラゴン号』はなんでこんなことになったのかを自問する。

 いや、自問したところで、今自身が直面している事態が解決するわけではない。
「ぎゃあああ死ぬ死ぬ死ぬ!! このクソガキィイイ!!」
『ミレニアムドラゴン号』は、迫りくる悪夢のような弾性を持つ『歓喜のデスギガス』から逃げていた。
 もっと正確に言うのならば、『たった一人』の『魂人』を逃がすために陽動している、といった方がいいだろうか。
 ともかく、あの数百メートルはあろうかという巨体に踏み潰されようものなら、如何に頑強な飛空艇の竜骨であろうとぽっきり行くことは間違いなかった。

「ハイヨー! 逃げろー! ハイ、ここで右に避けないと死ぬよー!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は『ミレニアムドラゴン号』に乗り、なんとも緊張感のない声で指示を出している。
 跳ねる『歓喜のデスギガス』の軌道はわかりやすい。
 わかりやすいが、避けれるとは限らない。なにせ数百メートルの巨体である。体が大きければ大きいほどに動きが鈍重に為る、ということはない。
 あの弾性が、まさに悪夢のようにどこまで自分たちを負ってきているのだ。
「わかるよー。君は今右に避けようとしているね! でもだめだめ。ぼくの友達を帰してくれなきゃ!」
「なんてこったい! ボクの心が!」
「うん、読まれてるよー!」
「おもしろ~い!」
「アハハハハ!!!」

 イカれてやがる、と『ミレニアムドラゴン号』は後に語ったかもしれない。
 ロニと『歓喜のデスギガス』は何処か似通った部分があったのかもしれない。
「猟兵とは友だちになれないって思っていたけれど、でもやっぱりダメだな。なれそうにないや」
「そんなことない! 出会いを重ねれば、友情を築くことおだってできる!」
 ロニは力説していた。
 そんな力説している暇があったのならば、迫る『歓喜のデスギガス』をどうにかしろと『ミレニアムドラゴン号』は思ったが、今は全速力を出しているために突っ込みが追いつかない。

「キミってオブリビオンにしてはしぶとそうだし! だからキミ! ボクたちを逃しなよ!」 
 そうしたら友達にだってなれるかもしれない! と交渉にもならぬ交渉をロニは告る。
 けれど、答えは当然。
「ノーだよね! むーりー! どこからみても君たちってぼくの敵なんだもの。本能ってやつなんだよね、これが!」
 押しつぶさんと迫る巨体。
 それを神撃(ゴッドブロー)と球体でもって躱し続ける。攻撃、と呼ぶにはあまりにも『歓喜のデスギガス』の弾性は悪夢であった。

 どんな威力の攻撃も、どんな細工を弄した攻撃も、あらゆるものが跳ね返されてしまう。
「だめ? んもーケチー!」
 ロニは、それでも笑っているだろう。
 絶体絶命の状況。
 それでも笑っている。自分は絶対大丈夫だという確信ではなく、ただただ、そうであるというだけで彼は『歓喜のデスギガス』をひきつけながら逃げ続ける。
 挑発するように、そして『歓喜のデスギガス』の興味を退くように。いや、それすらもロニにとっては当たり前の行動であったのかも知れない。

「早くどうにかしりよ、クソガキィ!! もう持たないぞ!」
「だいじょうぶだいじょうぶ。ほら、『魂人』のキミ、どうやらここまで見たいだから、後はがんばってね!」
 ロニは共に乗っていた『魂人』の青年を下ろす。後は、この僅かな時間稼ぎが功を奏するのを見るだけだ。

 ロニの瞳がユーベルコードに輝く。
 例え跳ね返されるのだとしても、その一撃は信心なきものにも神々しさを感じさせる拳。
 放つ一撃は弾む『歓喜のデスギガス』の巨体を押し止めるので精一杯であろう。
 けれど、それでも立ち止まらぬ青年の背を見送り、ロニは『ミレニアムドラゴン号』と共に急旋回して『歓喜のデスギガス』の巨体を躱す。
『禁獣禁域』まで後もう少し。
「じゃあ、がんばりなよ。いつだって人はそうやってあがくから、道を切り開いてこれたんだからね――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギヨーム・エペー
友達って不思議だよなー。殺し合う仲でも友だっていうらしいし、けれどもきみが友達になれないと思ったらそうだろうさ。おれが思っていたとしても、最後に誰と関係を結ぶかを決めるのはきみ自身だから

おれの考えていることはシンプルだ。魂人を宇宙バイクの後ろに乗せて、この場から迅速に離脱する
大丈夫、おれたち猟兵はきみを、きみの思う次に繋げる為にここに来たんだ。きみはこれからどんな所に向かうのかは……後で聞きたいかな! よそ見運転は危ないからなー!

進む道が陥没していたら氷で埋立てて、氷上よりは海上の方がコイツは速度が出るから太陽に水を敷いてもらう。目の前の障害物は速度を維持するべく氷槍の投擲で破壊を試みる。しっかしあんな巨体に背を向けるってのはスリルしかねえな!!
歓喜に笑っているのはわかる。ならおれだって楽観に笑うさ! 期待と喜びだ。デスギガスとの別れは惜しまないし、再会も多分おれは喜ばない
邪魔して悪かったなー! 喜びはなくとも驚きは得られただろう!? だから八つ当たりはよせよ。怒らず、笑い続けるといい!



 猟兵たちの足止めは、功を奏していた。
 多くの猟兵たちが『歓喜のデスギガス』とまともに戦うことを選択していなかった。あるものは『魂人』を連れて速度を上げる。
 あるものは『歓喜のデスギガス』を前に対峙し、足止めを敢行する。
 それは繋ぐ戦いの本領であったことだろう。
 打倒不能なる存在。それが『歓喜のデスギガス』だ。悪夢のような弾性をもって、あらゆる攻撃を跳ね返す。

「ぼくの友達を帰してよ。ぼくが必ず友達の苦しみを解放してあげるのだから!」
『純粋な善意』。
 それによって『歓喜のデスギガス』は、人を傷つける。
「友達って不思議だよなー」
 ギヨーム・エペーは思わず呟いていた。
 先行した猟兵から繋いだ『魂人』の保護。シンプルだ。彼を連れて逃げればいい。
『禁獣禁域』の外にまで飛び出せば、『歓喜のデスギガス』は追っては来れない。
「殺し合う仲でも友だっていうらしいし、けれどもきみが友達になれないと思ったら、そうだろうさ」
 仮にギヨームが『歓喜のデスギガス』と友達になりたいと思っていたとしても、最期に誰と関係を結ぶかを決めるのは『歓喜のデスギガス』自身であるからだ。

 どんなに願ったとしてもオブリビオンと猟兵の間にそれは成立しないだろう。
 あらゆる道理を超えた先にこそ、目の前の存在が滅ぼし合う間柄であると理解してしまうからだ。
「アンタは……」
「大丈夫、おれたち猟兵はきみを、きみの思う次につなげる為に此処に来たんだ。君はこれからどんなところに向かうのかは……後で聞きたいかな!」
 ギヨームのユーベルコードが煌めく。
 またがる宇宙バイクは、ゴッドスピードライドによって凄まじい速度を増強されている。
『魂人』の青年は声を発する機会を失っただろう。

 あまりにも凄まじい速度で『禁獣禁域』を駆け抜ける宇宙バイク。
「よそ見運転は危ないからなー!」
 ギヨームの笑い声だけが風の音に紛れて聞こえたことだろう。
 彼の乗る宇宙バイクはどんな道だって走破できる。頭上より迫る『歓喜のデスギガス』が放物線を描いて、あらゆるものを押しつぶさんとしている。
 けれど、それだって関係ない。
 えぐれた大地は氷で埋め立てる。
 けれども、ギヨームの宇宙バイクは氷上よりは海上のほうが速度が出せる。契約精霊の『太陽』が水を生み出し、敷き詰める。
 ぬかるむよりも速く、ギヨーム達は駆け抜けていく。

 手にした氷の槍が最端を阻む障害を撃ち抜いていく。
「しっかし、あんな巨体に背を向けるってのはスリルしかねえな!!」
 ギヨームは思わず笑ってしまう。
 迫るように跳ねる『歓喜のデスギガス』の顔を見ればわかる。あの笑ったような顔。あれこそが歓喜。
 ならば、ギヨームは楽観的に笑うのだ。
「でも大丈夫だ! 楽観に笑っていれば、大抵のことはなんとでもなるのさ。これが期待と喜びだ!」
 ギヨームは笑う。
 笑って、笑って、笑い続ける。背に迫る重圧は笑いさえも凍りつかせるものであったかもしれない。

 けれど、ギヨームは構わないのだ。
 何故ならば、彼は別れを惜しまないからだ。『歓喜のデスギガス』とギヨームは縁が出来たことだろう。
 滅ぼし、滅ぼされる間柄であるからこそ別れとは即ち、死である。
「きみは此処で滅ぼす! ぼくの友達を奪っていこうというのなら、まったくもって容赦するひつようなんてないんだから!」
 落着する巨体が凄まじい地鳴りを立てる。
 大地が砕け、破片が飛ぶ。それをギヨームはかわしながら、また笑うのだ。
「邪魔して悪かったなー! 喜びはなくとも驚きは得られただろう!?」
 だから、とギヨームは手をふるのだ。振り返ることなく。ただ『歓喜のデスギガス』に手をふる。

「だから八つ当たりはよせよ。怒らず笑い続けるといい!」
『歓喜』という感情しか持ち得ぬのかも知れないがゆえに、常に笑うような口を描く『歓喜のデスギガス』の顔。
 それを見ることなくギヨームは疾駆していく。
『魂人』の思う次が何であるのか。
 苦しみだけが人生ではなかったというのならば、その次は何を得るべきなのか。
 楽しみを得るから苦しみが得られる。
 その言葉を信じるのならば、彼が次に得るのは摩耗するかのような永劫回帰ではないはずだ。

 視界がひらける。
 そこにあったのは『禁獣禁域』の奇妙なる空間ではなかった。
 あったのは、その外側。未だ地獄そのものであるダークセイヴァー上層。けれど、あのスート渦巻く空間ではない。そう、数多の猟兵たちが紡ぎ、勝ち取った次の機会が目の前に広がっている。
 どんなに嘆いても、どんなに悲しみにくれても、機会というものは否応なしにこちらの都合など考えずに現れる。
 永劫回帰が『魂人』の心を摩耗させるかもしれない。折るかもしれない。けれど、ギヨームは、そればかりではない。
 皆が紡いだように。
 こうして、開けた道があることを『魂人』の青年も知るだろう。
 ゆえに、別れの言葉ではなく。目の前の光景をしてギヨームは告げるのだ。

「きみは歩んでいける。何者にも囚われず。苦しみも捨てずに。きっとそうだとおれは思っているよ。きみの思う次は自由だ。きっとな――」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年06月19日


挿絵イラスト