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肝試しは人形迷宮にて

#アルダワ魔法学園

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●戦慄の人形迷宮
「うっわー、想像以上の雰囲気! 噂通りまさしくお化け屋敷ね! ほら、ちゃんとついてきて!」
「ま、待ってよ~~。お願いだから、もうちょっとゆっくり……」
 薄暗い迷宮を堂々と前進していく一人の女生徒と、その後ろをおどおどしながら付いていくもう一人の女生徒。
 無数の無機質な瞳がじっと見つめてくる中、付かず離れずの距離で進み続ける彼女達であったが、不意に後ろの女生徒が前の女生徒の腕を掴んだ事によって歩みが止まる。
「ちょっ、どした? 怖くなっちゃった?」
「…………えるの……」
「何? もっかい言って?」
 俯き何かに怯えた様子の彼女が、今度ははっきりとした口調で。
「……後ろから、声、聞こえるの。それも、さっきからずっと……」
「ちょっと、止めてよー。私達以外いないのに、そんな訳ーー」
 無い、そう言おうとしたまさにその瞬間、彼女の耳にもはっきりと聞こえてしまった。聞き慣れた親友の声とは違う、誰かの声を。
 背筋を凍らせながらも、確認しない訳にはいかないと恐る恐る振り返る二人。
 そこにいたのはーーー。

●季節外れの肝試し
「にゃあーーーーーっっ!?!?」
 グリモアベースの一角、予知内容を事細かく話していたグリモア猟兵、アイル・コーウィン(猫耳トレジャーハンター・f02316)の突然の叫び声。
 様々な反応をする猟兵達を前にしてハッと我に返ったアイルは、取り繕う様に話を続ける。
「ご、ごめんなさい! 今のはその、えっと……演出! そう、演出よ! 要約すると、みんなにはアルダワ魔法学園のとある迷宮に挑戦して欲しいってわけ!」
 ブワッと立っている尻尾の毛が全てを物語っているが、あえてそこには触れず話を促す。
「ごほん……ともかく分かっているのは、学生達の間で有名な肝試しスポットになっちゃってる程、とっても雰囲気が怖い迷宮って事よ。どんなに明かりを持って行っても何故か暗いし、そして何よりも雰囲気を出してるのが……大量の人形達よ」
 薄暗い迷宮の中にひしめき合うに置かれた、大量の不気味な人形。確かに肝試しにはうってつけの場所だろう。
「何でこんなに人形があるのか不明だし、さまざまな怪奇現象も報告されてる曰く付きな場所だけど、予知で現れた以上はオブリビオンが関与してるのは間違いなさそうね。そして私の勘が正しければ、ボス的な奴を倒せば全て解決するはずよ!」
 いきなり勘というあやふやなものに頼り始めたアイルに一抹の不安を感じながらも、猟兵達は早速準備に取り掛かる。
「とはいえ、まだ実害は起きてない迷宮みたいだし、ボスに合うまでは肝試しみたいな感覚で攻略しちゃってもいいかも。という訳で人形達がひしめく迷宮、略して人形迷宮の攻略、よろしくお願いね! 私は入り口で待機してるから、みんな頑張って!」
 ほら、私は参加出来ないのだから、仕方ないわよね? と言いたげにホッとした表情で微笑むアイルによって、説明を受けた猟兵達は入り口へと転送されたのであった。


鎌切龍二
 初めまして、鎌切龍二と申します!
 初シナリオという事もあり、色々稚拙な部分も目立つものと思いますが、何卒よろしくお願い致します!

 今回挑戦していただく迷宮は、お化け屋敷風の迷宮です。
 大量に設置された雰囲気ある人形達が何やかんやと脅かしてくるので、恐怖に怯えるも良し、強がって突き進むも良し、逆に全く恐怖など感じない屈強な精神を演出するも良しです。
 みなさんのアイディア満載のプレイングをお待ちしております!
(恐怖耐性がどの程度あるかを書いていただけますと、よりイメージに近いリプレイを返せると思います)

●第一章
 薄暗い迷宮内をただひたすら前へと進むだけの章となります。
 要するにお化け屋敷ですので、お化け屋敷へと挑む心意気でお願い致します。
 迷宮内には沢山の分岐点があるので、みんなが同じ道を通るとは限りません。
 つまりそれぞれに色んな仕掛けがあるという事です。
 脅かし役は人形達ですが、迷宮内にある全ての人形が脅かし役ではないので、壊しながら進むのは得策じゃないかと思います。
(人形達は脅かしますが、実害は与えません)
(キャラ性のRP>フラグメントで大丈夫です)

●第二章
 一旦迷宮内の中間地点へと集合し、短めの蝋燭を持って再び迷宮へと挑戦していただきます。
 目的は迷宮内のどこかにある黒い蝋燭に火を灯す事で、全ての蝋燭に灯すとボス部屋への道が開く仕掛けです。
 火を灯す以外は基本的に第一章の続きとなりますので、心してかかって下さい。
 もちろん人形達もおります。
(持ってる蝋燭の火を消しちゃうと中間地点へと戻るはめになりますので、ご注意ください)
(探索方法に関してはフラグメントの技能が有利に働くかもです)

●第三章
 ボスとの純戦となります。この迷宮内での怪奇現象は全てこのボスの仕業です。
 どの様なボスなのかは現時点で不明ですが、人形達を操れるのは間違いない様です。
 例のごとくボス部屋にも人形達はいますので、十分注意して戦って下さい。

 それでは皆様のプレイング、お待ちしております!
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第1章 冒険 『イタズラ人形達の回廊』

POW   :    力こそパワー!人形を蹴散らしながら、力づくで真正面から強行突破する

SPD   :    当たらなければどうということはない!スピードにモノを言わせ、捕まる前に駆け抜ける

WIZ   :    こんな事もあろうかと!行動の穴を突いたり、アイテムをうまく使ったりして要領よく抜ける

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 暗闇の中へと誘うかの様な迷宮の入り口、中を覗けば既に何体かの人形が設置されているのが見て取れる。
 猟兵達は覚悟を決めて、思い思いに迷宮の中へと入っていく。事前の説明通りに薄暗くはあるが全くの暗闇という訳ではなく、何とか前が見える程度の明るさはある。
 人形達の横を通り過ぎてみるが、特に何か起きる気配は無い。どうやら入り口付近の人形達はただの人形の様だ。
 しかし、全ての人形がそうではないという事は事前の説明で承知済み。油断せずに奥へと突き進む猟兵達を待ち受けるものとは、はたして……。
セルヴィ・アウレアム
「幽霊なぁ…これが実害のある悪いやっちゃったらふん縛って、サムライエンパイアの見世物小屋にでも売り飛ばしたるんやけどなぁ」
「今ん所何もしとらん幽霊さんから地上げすんのも来ぃが乗らん。とりあえず本人と『話し合い』してみよか。」

・行動【WIZ:アイテムをうまく使ったりして要領よく抜ける】
バッグの中から取り出したお神酒を片手に、「オバケなんてないさ」を歌いながら行進。
ヘイトを向けてきた人形に対し、全然実害を与えてこないことに胡座をかき、酒を無理矢理飲ませる質悪い上司みたいな絡み方で聖酒を浴びせて鎮圧していきます。


庵・華代
なんや、なんか通づるもん感じるわぁ
…ほんまもんのお化けはんやなければまぁ、怖くはないわな。オブリビオンやてわかってるなら、問題あらへん。うるさいドールもおるしな。

騒ぐドールを先行させとけばビックリ系の脅しもドールが受ける。うちは後ろからゆっくりついてくわ。囮戦法…どうせ自分から行かはるやろしな。

ドールガオトオリダッ!ニンギョウ、オドカス?ドール、オドカスノトクイダ。クケケケケケッ!

…あぁ、あいつが返り討ちにしたらかんにんな



●暗闇を進む二人と一体
「おばけなんて おらへん おばけなんて うそや♪」
 薄暗く人形だらけの迷宮、そんなホラーな雰囲気をもろともせず、陽気な歌を歌いながら進む猟兵が一人。
「ねぼけた人が みまちがえたんや♪」
 器用に歌詞を変えながら歌い、お酒を片手に迷宮を進むのはセルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)。
 色んな迷宮を移り住む彼女にとって、迷宮はもはやマイホーム。
 どんなに薄暗かろうと不気味な人形が何体いようと、物珍しさこそ感じはすれ迷宮自体から恐怖を感じる事はない。

「あらあんさん、歌がお上手やなぁ~。うちも見習いたいわぁ」
 その隣を柔らかな物腰で進むのは、蜘蛛の妖怪を身体に宿す猟兵の庵・華代(はんなり女郎蜘蛛・f14359)。
 正体がオブリビオンなら怖くはない、そんな思いとは別にこの迷宮へと挑んだ理由がもう一つ。
「ドールガオトオリダッ! ニンギョウ、ドールオドカス? ホラ、オドカセルナラヤッテミロ!」
 華代の側を離れ、道端にある普通の人形達にちょっかいを出しつつ勝手に先行する一体のドール。
 友人とも言えるこのドールの存在こそが、通じるものを感じた華代をこの迷宮へと導いたのであった。

●恐怖の市松人形?
「幽霊なぁ……これが実害のある悪いやっちゃったらふん縛って、サムライエンパイアの見世物小屋にでも売り飛ばしたるんやけどなぁ」
「あらやだあんた、すごいこと考えなはるなぁ。うちのドールは堪忍なぁ」
 似たような言葉を話す二人は意気投合し、会話を交わしながら迷宮をどんどんと進む。
 異変が起きたのはそのすぐ後だった。

 先行していたドールが突然ピタッと立ち止まると、同時に前方からクスクスとした笑い声が聞こえてくる。
「クスクスクス……」
「ケタケタケタ……」
「アソンデ……ワタシタチトアソンデ……」
 二人が目を凝らして前方をよく見ると、側面にいた人形達がカタカタと動き出し、立ち止まったドールを取り囲む様に移動していた。
 動き出した人形達は市松人形、和服と黒髪がよく似合う綺麗な人形達ではあるが、今この場においては恐怖の対象でしかない。
 あっと言う間に取り囲まれ、距離をじりじりと詰める人形達。
 しかしドールの方は全く動かず、じっと下を俯いたまま。
 何かをされて動けずにいるのだろうかと心配になり始めた、まさにその時……!
「クケケケケケケケッ!」
「!?」
 不気味な笑い声を上げながら、突然顔を上げたドール。
 予想外の行動に驚いたのかピタッと動きが止まった市松人形達、しかしドールは追撃は止まらない。
「アソンデホシイカ! ナラノゾミドオリアソンデヤルゾ! ナニシテアソブ? ホラナニシテアソブンダ!」
「ヤ、ヤメテー、ハナシテー」
 ドールは市松人形達に近づくと、髪を引っ張ったりガクガクと身体を揺すったりとやりたい放題。
 これには堪らず市松人形達も逃げ出し始め、軽い追いかけっこ状態に発展。
 脅かす側と脅かされる側が逆転してしまい、あっという間に人形達の方が哀れな状況と化してしまった。

「なんというか……気の毒やな」
「あぁ、ほんまかんにんなぁ……」
 人形達に同情の目を向けるセルヴィと、バツの悪そうな顔をする華代。
 とりあえず見てるだけというのもアレなので、二人は戯れる人形達へと近づくとこにした。

●除霊は聖なるお酒で
「ほんで、これからどないしはるん?」
「今ん所何もしとらん幽霊さんから地上げすんのも来ぃが乗らん。とりあえず本人と『話し合い』してみよか」
 ドールは今だ好き勝手に追いかけっこをしているが、とりあえずそれは置いといて。
 逃げのびた一体の市松人形を目の前に、セルヴィはどかっと胡座をかいて座る。
「よおアンタ、なんでウチらを脅かそうとするん? 目的はなんなん?」
 気楽に話しかけてくるセルヴィに対して、市松人形はおろおろとする。
 予想外の連続で混乱し取り乱している様だが、その混乱が功を制したのか、正直に人形は話し始めた。
「ソノ……『メイレイ』サレタノ。ココニクルニンゲンタチ、オドカセッテ……」
「命令? 誰に? ほんでアンタ達は何で動けるん?」
 ぐいぐいっと食い気味に顔を近づけ質問攻めにする様子は、さならが酒に酔った質の悪い上司の様で。
 しかし命令されたという事以外は「ワカラナイ」の一点張り。
 どうやら何故脅かす必要があるのか、そもそも何故動けて言葉も話せるのかも分からないまま、ただ単に命令を実行していただけのようだ。
「まあ、ええわ。ともかくアンタらは普通の状態やない。元のただの人形に戻させて貰うで」
 そう言って手に持っていた酒、お神酒という聖なるお酒の蓋を開けるセルヴィ。
 無抵抗な市松人形に頭からかけると、力が抜けた様にこちらを見上げていた顔がガクっと下がり、ただの人形へと戻った。
 その後、追いかけっこをされていた他の市松人形達にもお酒をかけ、普通の人形へと戻した後に横へと綺麗に並べなおす。
 心なしか笑っているかの様な市松人形達を尻目に、二人と一体は迷宮探索を再開するのであった。

「やっぱり、オブリビオンの仕業なんやろうなぁ」
「せやなぁ。お酒をかけた時、何かの力が抜けていったのを感じよったしなぁ」
 再び雑談しながら、迷宮の奥へと進む二人。
 先程の市松人形がオブリビオンに操られていた事は確かだが、まだどういったオブリビオンなのかは分かっていない。
 この先に待ち受けるものは何者なのか、それを確かめるために確実に一歩ずつ、迷宮を進む二人と一体であった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神元・眞白
【SPD/人形師なので動く人形についてはいつもの事として/絡みは自由に】
動く人形。ボス的なものが全部動かしてるなら見習わないと。
何かを介在して動かしてるなら、……それはそれで。調べられそう?

進む人が多いから、こっちはこっちでマッピング。後からも使えるし。
飛威(人形)にマッピングは任せて私は私で迷宮内の人形達を調べてみよう。
それに、人形以外にも怪奇現状?……気になる事は山積み。
情報を集めるのが第一優先になりそう。気になる点はメモを。
人形以外に出てくるものがあったら、どうしよう。……捕獲?


黒木・摩那
【WIZ】
お化け屋敷の人形が脅かしてくると……

正直、UDCアースに通ってリアルお化け達と対峙していると、
お化け屋敷のお化けと言っても、かわいいものでしょう。


と、思っていたら、結構本格的な人形たちで
意外と怖かったり。黙っていれば人も人形もわからないですからね。
しかも暗いし。
人形だから電脳ゴーグルのセンサーも効かないし。

大体が突然暗がりの中から動けば誰だって驚くものですよ。
キジだって、突然近くから飛び出すものだから、
いつもびっくりさせられるくらいだし。

あんまり脅かすとグーでパンチします。


トリテレイア・ゼロナイン
お化け屋敷迷宮…私みたいに「暗視」センサーやマルチセンサーで音、振動、熱を探知して人形の配置を「見切る」ことができるウォーマシンの身には種も仕掛けもわかってしまって、驚くところがありませんね…

人形とウォーマシンは被造物としてある意味似た者同士ですしあまり怖くはありませんしね
本物のセンサーに引っ掛からない幽霊なら話は別なのですが

隠れている脅かし役の人形さんに声を掛けてみましょうか
人を脅かす理由も聞いて道すがら談笑しながら進んでいきましょう
「脅かす位置もご自分で考えたのですか?」とか話しつつこの迷宮について情報をあつめてみましょう



●恐怖心と好奇心
「UDCアースのリアルお化け達と比べれば、お化け屋敷の人形なんてかわいいもの。だからこんな迷宮、怖くなんてないです」
そう豪語しながら歩くのは、人間の黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)。
 普段は冷静沈着で物怖じしない性格の彼女だが、雰囲気たっぷりのこの迷宮に対しては少しばかり顔が強張っている。
 そんな摩那に対し、全く物怖じしていない者達が二名と一体。
「脅かしてくる人形、とても興味深い。どうやって動いているのか、調べたい」
 メモ用紙を手に持ちながら後ろから付いてくるのは、ミレナリィドールの神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)。
 薄暗い迷宮や人形達に対しては恐怖心より知的好奇心が勝っている様であり、たびたびすれ違う人形達を軽く調べては小まめにメモを取っている。
 そして更にその後ろから付いて来てるのが、彼女の人形の飛威。
 主人から言い渡されたマッピングの命を淡々とこなしながら、これまた迷宮の雰囲気など気にしてない様子。
「この辺りは足場が悪いです。皆様、注意して進んでください」
 そして紳士な対応をしながら先頭を歩くのが、ウォーマシンのトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
 ウォーマシンの強みを生かして迷宮内をセンサーで探索しつつ、彼の中にある騎士道精神にのっとり後ろの猟兵達を気にかけながら先行している。
 もちろん彼にも迷宮を怖がる素ぶりは見えない。

「……えっと、少し聞いてもいいですか? どうしてそんなに余裕そうなんでしょう? いえ、別に私も怖い訳じゃありませんが……」
 怖くなんてない、と自分に言い聞かせる様に語る彼女に対し、二人の返答はあっけからんとしており。
「人形師だから、動く人形なんていつもの事」
「人形とウォーマシンは被造物としてある意味似た者同士ですし、あまり怖くはありませんね」
 チラッと飛威を見る眞白と、気にせず先へと進むトリテレイア。
 ふうっ、とつくため息は迷宮の暗闇へと消えていき、一行は更なる奥へと進み続ける。

●リアリティある蝋人形
「あっ」
「….…っ! な、なんです? なにかいたのですか?」
 短めに声を発し、歩みを止めるトリテレイア。
 突然の事にびっくりして構える摩那と、驚く事なく立ち止まる眞白と飛威。
「目の前に人形の反応があります」
 よく目を凝らせば、確かに迷宮脇に佇む人型の面影。
 注意深く三人が近づいてみると、それは等身大かつリアルな人形。
 蝋によって作られた、いわゆる蝋人形と呼ばれるものである。
「……これ、普通の人形ですよね?」
「そうっぽい」
 いつも通りに眞白が軽く触れて調べてみるが、特に動く気配もないただの人形。
 ホッとしたのもつかの間、突如静かに怒り出した摩那がトリテレイアに言い放つ。
「いったいこれで何度目ですか? 今後は人形を見つけただけで、無闇に声を出さないで下さい。いいですね?」
「申し訳ありません。私は人形の検知は出来ますが、それが動くかどうかまでは分かりませんので……。ですが、何故怒っているのですか?」
 ギクッとする摩那、別に怒ってなんてとあれこれ言い訳するも、眞白からの鋭い一言。
「もしかして、余裕無い?」
「そ、そんな事ありません。ほら、先へと進みましょう!」
 先程の事をあやふやにしようとする一連の動作すらも、理解出来ずに首を傾けるトリテレイア。
 しかし進む事に特に異存もないので、一行は再び探索を開始した。

 しばらくして、メモを取る手を一旦止めた眞白が、前方を行くトリテレイアに疑問を投げかけた。
「そういえば、トリテレイアさん。どうやって人形検知してる? 人形は動かない、熱もないし気配もない」
「それ、私も気になってました。電脳ゴーグルのセンサーも効かなそうなのに」
 同行者二人が自分に興味を持ってくれた事を嬉しく思ったのか、トリテレイアは嬉々として返答。
「眞白様の言う通り、振動や熱では人形を見つける事はできません。なので今は、二つのセンサーをフル稼動して人形の探索を行っております。一つは『暗視』、もう一つは『音』です」
「なるほど、トリテレイアさんは暗視が出来るんですね。この暗闇の中でなら頼もしいです。でも、音?」
「音……普通の人形、動かない。音も出さないはず」
 考え込む二人に答えを述べるトリテレイアの声は、心なしか楽しそうで。
「音は人形が発するものを検知しているのではなく、私達が発する話し声や足音などを検知しております。正確には私達が発した音の反響具合を、つまりはソナーと同じ原理ですね。これでしたら暗視すら効かない暗闇にも対応可能ですし、それから……」
 と、喜んで自身の機能を語っていたトリテレイアが、突然口を閉ざして立ち止まる。
 突然立ち止まる事は何度もあったので、いい加減慣れた摩那と眞白はそれに合わせてピタッと止まる。
 しかし、今回は何かが違う。何度も経験したからこそ、今回のトリテレイアさんの様子がおかしい事に二人は気付けた。
「……トリテレイアさん?」
 眞白の呼びかけにも反応せず、ただそのまま立ち尽くす。
 そして無言のままふと少し前へと歩き出すと、今度は横を向いて再び立ち止まり、何もないただを壁をじーっと見つめ始めた。
「……っ! トリテレイアさん、どうしたんですか? しっかりして下さい!」
 痺れを切らした、というよりは不安に駆られきった摩那が近づき、視線を遮るようにトリテレイアの前へと出る。
 そして、まさにその瞬間……!
 バンっ!!
 背後からの大きな物音に、摩那の身体がビクッと跳ねる。
 何が起きたかを考える余地もないまま、勢い良く振り返ると、そこには……!
 両手を前に突き出しながら襲いかかってくる、動く人間の死体。ゾンビの姿が……!
「ア"ア"ア"ァァァァッ!」
「き……きゃあああぁぁぁぁっ!」

 辺り漂う静寂の中、僅かに聞こえてくるのはゾンビの呻き声。
 あまりの怖さに目を瞑り耳を塞ぎ、しゃがみんでしまった摩那。
 何がどうなってしまったのだろうか、いやそもそも何が起きたのだろうか。
 恐る恐る目を開けてみると、そこには……。
「大丈夫ですか、摩那様。お怪我はありませんか?」
「すごい、本当に動いてる。どうやって、誰が動かしてる? 私も見習いたい」
 ゾンビを片手で押さえながらしれっとこちらを見るトリテレイアと、ようやく会えたと目を輝かせながらゾンビに躊躇なく触れている眞白の姿が。
 ポカンとする摩那、その感じている疑問の一つは眞白の言葉で解決する。
「リアリティある造形、匠の技を感じる。蝋人形なのにこんなに動けるの、どういう仕組み?」
「ろ、蝋人形……?」
 そう、この無駄にリアルなゾンビもまた人形。先程見たのと同じ、蝋人形だったのだ。
「じ、じゃあ、トリテレイアさんのさっきの様子は……?」
「驚かして申し訳ありません。実は先程ソナー探知でこの人形を見つけたのですが、声が出せませんでしたのでそれをお伝え出来ず。まずは危険が無いかを確かめようとしたところ、摩那様が出てきてこの様な事に」
 つまり、人形を見つけても声を出すなという摩那の言葉を守った結果、先程の様な不可解な行動になってしまったという事だった。
「か……隠れてる人形は別でしょ……」
 そう呟いて立ち上がりながら、全てを理解した摩那。
 しかし当の本人と眞白はゾンビ人形に夢中で全く聞いておらず。
「アアァァァ」
「何かを介在して動いてる? 何て言ってるか分かる?」
「少々お待ちください。人形のスキャンを実行中、それとゾンビ語翻訳機能をインストール中です」
 どうやらもう少しだけ時間がかかる様だ。
 一人で先には行けないし、かと言ってゾンビと戯れる気もない。
 どっと疲れが押し寄せている摩那は、ゾンビからなるべく距離を取って休憩しようと、来た道を少しだけ戻ることにした。
「あっ、摩那様」
「もうっ、今度は何ーーー」
 呼び止められて振り返った摩那が、みんなの姿を見る。
 こちらを向くトリテレイア、その手の中でもがくゾンビ。
 ゾンビにまだ夢中となってる眞白と、迷宮の奥でマッピングをし続ける飛威。
 ……奥の方に、飛威?
「そちらにも、まだーーー」
 何故後ろを付いてきていたはずの飛威が奥の方へといるのか。
 その答えに気付けた時には、もう既に遅かった。
 バンっ!!
「ア"ア"ア"ァァァァァッ!!」
「いやあああぁぁぁぁぁっ!!」

●その後色々あって
 二度目のゾンビ襲撃からしばらく後、三人と一体は再び迷宮を進んでいた。
「はぁ……もうゾンビはこりごりです……」
 少しやつれた顔でそう呟く摩那に、余裕のある二人がフォローを入れる。
「ですがあれは、いいストレートでした。摩那様にはそちらの才覚があるかもしれません」
「うん。世界、狙えると思う」
「お願いだから、思い出させないで……」
 それは少し前、間違って迷宮の先へと進んでしまった摩那に、二体目のゾンビ人形が襲いかかった時の話。
 パニックに陥った摩那の咄嗟に放ったパンチが渾身の右ストレートとなり、ゾンビの顔面へと命中。
 動力すら不明のゾンビ人形を見事、一撃KOしてしまったのである。
「あれは事故っていいますか、偶然っていいますか……。何にしても、ゾンビ人形がいなくなったのは幸いです」
 いなくなったゾンビ人形、その言葉を聞いて二人も先程の事を思い出す。
「とても残念。せっかく捕獲、出来たと思ったのに……」
「そうですね。道すがら談笑でもしながらお話を聞きたかったのですが、仕方ありませんね」
 これまた少し前の話、先へと進みつつ話を聞くためにゾンビ人形を連れ回そうとした結果。
 捕獲場所からある程度離れたところで突然ゾンビ人形の動きが止まり、普通の人形へと戻ってしまったのだ。
 一応捕獲場所まで戻ってみたものの再び動き出すこともなく、ゾンビ人形を元いた場所へと戻して再び迷宮の探索を再開、そして今に至るのであった。

「ですが収穫もありました。人形をスキャンした結果、ユーベルコードによって動いていた事が判明しました」
「人形を操るユーベルコード、私も持ってる。原理はそれと同じ?」
「他に何か分かった事はありますか?」
 眞白は深く考え込み、摩那は他にも情報がないかを聞いてみる。
 トリテレイアは少し考え、ある事を思い出す。
「そういえば、興味深い事が。いつからこの迷宮にいるのかを質問した際、『わからない。目覚めた時、目の前にウマそうな奴いた。食べようとしたら、返り討ちされた』との返答がありました」
「えぇ!? あのゾンビ、人を食べるんですか!?」
「歯は無かったし、無理だと思う。多分、ゾンビとしての本能」
 それを聞いて再びホッとする摩那。
 もし最悪襲われてたとしても、どうやら怪我を負う事態にはならなかったようだ。
「これは推測ですが、ゾンビ人形が初めにみた者とはオブリビオンではありませんでしょうか? つまりこの迷宮にいるオブリビオンは、ゾンビ人形視点での『ウマそうな者』かと」
 あくまで推測ですが、と念を押しつつ仮説を提示し、二人も思考を巡らす。
「ユーベルコードで動いてたのでしたら、その可能性は高そうでしょうか? そしてゾンビ人形から見てウマそうな者……や、やっぱり人間ですか?」
 二回も襲われた記憶が少し蘇り、頭から追い払うために首を振る。
「もしくは、見た目が人間に近い種族。例えば私とか」
 ミレナリィドールも見た目は確かに人間、他にも候補に上げれる種族は多そうだ。

 今のところ憶測の域は出ないが、三人での話し合いの結果、オブリビオンは人型である可能性が高いという結論に至る。
 そしてそうこうしている内にだいぶ先へと進んでいた様で、進行方向に大きめな部屋があるのをトリテレイアが見つけた。
 そこで三人と一体を待ち受けるものとは、果たして……….。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『篝火を繋ぐ暗き路』

POW   :    手当たり次第に探し回る。<気合>や挫けない<覚悟>などが助けになるかもしれない。気持ちで頑張る。

SPD   :    出来る範囲をしよう。<暗視>や物を見つける<視力>などが助けになるかもしれない。手数の多さで頑張る。

WIZ   :    よく考えてみよう。目に頼らない<聞き耳>や<第六感>などが助けになるかもしれない。工夫して頑張る。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 思い思いに迷宮を進んだ猟兵達は、ほぼ同時に大部屋へと辿り着き合流する。
 いくつもの道への入り口があるその大部屋の真ん中には、これ見よがしに置いてあるテーブルと宝箱、それと固定され火が灯された大きめな蝋燭。

 まずは情報共有。
 合流した猟兵達の話を合わせてみた結果、人形達は「命令」によってユーベルコードで操られている事、そしてボスであるオブリビオンは人型の可能性が高いという事が分かった。
 そして猟兵達が警戒しながら宝箱を開けてみると、そこには無数の小さめな蝋燭と宝箱の裏に書かれた文字。

「12の黒き蝋燭に聖なる火を灯せた者達にのみ、謁見の機会を与える」

 随分と上から目線のオブリビオンの様だが、会ってくれるというのであれば好都合。
 猟兵達はそれぞれ小さめな蝋燭を手に持ち、テーブル上の大きめな蝋燭から火を貰うとそれぞれ迷宮の入り口前へと立つ。
 これより先はより一層暗闇が深い様子。
 各猟兵は黒い蝋燭を探し出すため、再び迷宮へと挑むのであった。
セルヴィ・アウレアム
「真っ暗な以上、あんま無理はできんなぁ…。下手ぁしたら各個撃破されそうやし。」

●行動「WIZ:他猟兵に付いていき、マッピングを行う。」
背負い鞄から大きめのカンテラと、羊皮紙、押しピン、いくつかの木製の道具を取り出す。
それを組み立て、背負い式の地図台を作り、迷宮の形や蝋燭の場所などを記録しながら他猟兵についていく。

また、隠し部屋がありそうな場所や直感的に怪しい点など、その都度他猟兵と相談して行動する。


トリテレイア・ゼロナイン
こんどは正しいルート探索と蝋燭の炎運びですか

妖精ロボに蝋燭を持たせて黒の蝋燭の在りかを探させましょう
発見できたなら「暗視」でルート上の妨害に警戒しつつ、蝋燭の炎を灯しに行くだけです

よし、早速見つけましたよ。……黒の蝋燭の周りになにか人形が複数台置かれているのが気になりますが早速点灯しましょう。

(人形の口から水が発射されるが盾受けで防ぐ)
…ふう、危ない危ない
(別の人形からの再度の水を見切ってかわす)
…甘いっ!
(三体目の水を武器受けで弾く)
…こういうのを肝が冷えたというのでしょうね…私に内臓はありませんが

(天井から大量の水が落ちてきてずぶ濡れ、蝋燭も消える)

…悪辣なっ!

(その後無事点灯できました)



●メンバーチェンジ
 ただ迷宮をまっすぐ進めば良かった今までとは違い、今回の目的は黒い蝋燭の探索。
 しかも更に濃い暗闇のせいで発見しづらい上、12本と本数も多い。
 固まって行動していては拉致があかないと判断した猟兵達は今までとメンバーをチェンジ、なるべる少人数で広範囲、効率良く蝋燭の探索を行う事に決めた。

「真っ暗な以上、あんま無理はできんなぁ……。下手ぁしたら各個撃破されそうやし」
 そう呟きながら迷宮を歩くセルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)は、背負い式の地図台の上でマッピングを行なっている。
 この地図台はセルヴィの背負う大きな鞄から取り出した道具を組み立てて作った即席のものであり、これにより歩きながらでも比較的簡単かつ精密なマップを作る事が出来る。
 カンテラもぶら下げてはいるものの、迷宮の特性のせいか光量は心許無く、しかし手元の地図台を照らす分には問題ない光源を確保出来ている。
 ちなみにマッピングに集中するため、蝋燭は持ってきていないようだ。
「大丈夫です、そのために私がおりますので」
 そう言いながら彼女の近くを歩くのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
 今回は大型のシールドと儀礼用と思われる長剣をそれぞれ手に持ち、不測の事態に備えつつ迷宮の探索をしている。
 では肝心の蝋燭はどこにあるかというと、なんと二人の前を先導するかの様に空中を漂っているではないか。
 その正体はトリテレイアが操作する妖精ロボ。蝋燭を持って一生懸命に羽ばき、暗闇をふわふわ漂うその姿はまるで蛍の様である。
 先行する妖精ロボ、護衛のトリテレイア、サポートに徹するセルヴィ。
 黒い蝋燭を求める二人と一体は怖れる事なく、暗闇が支配する迷宮を突き進んでいった。

●エジプトの石人形(彫像)
 さてこの二人のチームだが、活躍は目まぐるしいものであった。
 まず先行する妖精ロボとトリテレイア。
 暗視持ちのトリテレイアは暗闇内をもろともせずに見渡し、ソナーを使って地形を把握。
 怪しい箇所や狭い箇所は蝋燭を持つ妖精ロボに探索させ、これにより見事、瓦礫の陰に隠される様に設置されていた黒い蝋燭を発見する。
 そして後方にてマッピングするセルヴィ。
 暗闇によって目印となるものが見え辛い迷宮内において、マップ作成はとても有効なものとなっていた。
 事実、マップにすることで初めて見えてきた怪しそうな箇所を丹念に調べてみた結果、見事隠し部屋と黒い蝋燭を発見する事が出来た。
 その他いくつかの黒い蝋燭も発見し、順調に探索を続けていく二人と一体。
 問題が起きたのは、そんな最中であった。

「これは明らかに罠やろなぁ」
「奇遇ですね、私も同意見です」
 二人が見つけたのは、迷宮内のとある一角。
 通路は一本道かつ奥の方は壁となってる、いわゆる袋小路と呼べる場所だが、そこには他と明らかに異質なものがあった。
 一つ目は奥の方、意味ありげに設置された石棺。
 質素なものではなく、凝った装飾が施されているのが遠目からも分かる。
 二つ目は通路側、左右にズラッと並んだ複数の石の人形。
 外見は普通の人間ではなく、人間の身体に頭だけが犬、猫、鳥、鰐といった別の動物に置き換えられた、いわゆるエジプトの神々を模した姿をしている。
 まるでキマイラの様な石人形、もとい彫像達は通路側を見ながら規則正しく整列しており、もし壁に壁画でもあったなら完全にエジプトのそれとなるであろう風景が広がっていた。
 そしてなぜ事細かくそんな風景を見て取れたのかというと、何故かその一角だけかがり火が焚かれており、十分な光源が確保されていたからである。
 とりあえず近づいてみましょう、というトリテレイアの提案に従い、警戒しつつその一角に近づく二人と一体。
 すると何処からともなく、声が響いてきた。
『コノサキ、セイナルヒノタチイリヲキンズル。タチサルガヨイ』
 聖なる火の立ち入りを禁ずる、つまり蝋燭は持って行けないという事だろうか。
「なるほど、火はあかんと。ほな、少し調べさせてもらうで」
 そう言うとセルヴィが背中の鞄から取り出したのは、一片の薄めの木材。
 パキッと二つに折ると、片方を彫像達が立ち並ぶ通路へと投げつけてみた。
 弧を描いて落下する木材、特に何かが起きる様子はない。
 ちょい借りるで、と妖精ロボの持つ蝋燭の火に木材をかざし、燃え移ったところで今度はそれを同じ様に投げてみる。
 木材がちょうど彫像の前を通り過ぎようとしたその時、今度は彫像の口がガコッと開き、そこから勢いよく水を発射。
 水が命中した木材は軌道を変えながら、地面へ落ちる前に火を消されてしまった。
 火を感知すると発動する水鉄砲の罠。
 尊厳すら感じさせる見た目の彫像の割には随分と可愛らしい攻撃だが、火を運ばなければならない猟兵達にとっては十分脅威である罠だ。
「さて、どないする? こないな罠仕掛けるっちゅうことは、あの石棺の中が怪しそうやけどなぁ」
「では、ここは私の出番ですね。セルヴィ様は下がっていてください」
 盾と剣を改めて構えるトリテレイアと、こくっと頷く妖精ロボ。
 罠と猟兵との戦いが、今まさに始まる。

●水鉄砲には要注意
 ぐっと足に力を入れるトリテレイア、目標はあの石棺にたどり着く事。
 地面を蹴って駆け出し、つられる様に妖精ロボも飛び出して、彫像達が待ち受ける通路へとくり出す。
 一発目、彫像の口が開き飛び出してきた水を盾を使って受け止め防ぐ。
 ふう、危ない危ない、と一息つく間もなく別の彫像の口が開き、蝋燭へ向けて二発目の水鉄砲。
 しかし、それもトリテレイアは予想済み。甘いっ、とばかりに妖精ロボに指示し、飛ぶ軌道を不規則に変えて難なく回避。
 何発も発射され続ける中にて見事な連携で水を掻い潜り続ける二人、そしてゴールが目前へと迫った時、彫像達が最後の抵抗を見せる。
 通路を抜けて石棺の前とたどり着こうとしたその瞬間、突然彫像達の首が動いて妖精ロボを捕捉、狙いをつけた水鉄砲が多方向から一斉に迫ってきた。
 回避は間に合わないと判断したトリテレイアは盾にて防御、しかし大型の盾を持ってしても防ぎ切れなかった水しぶきが妖精ロボへと向かう。
 絶体絶命のこの状況、だがトリテレイアは諦めない。
 反対の手に持つ剣、とっさにこれを妖精ロボを守るように間に差し込み、なんとか水を防ぎきる事に成功。
 それを見た彫像達は首を前へと戻して動きを完全に停止、悪質な罠を見事乗り切ったのであった。
「こういうのを肝が冷えたというのでしょうね……私に内臓はありませんが」
 陽気にウォーマシンギャグを口にしつつ、妖精ロボと共にホッと一息。
 そこへ遠くから眺めていたセルヴィが声をかける。
「流石やなぁ! でも、最後まで気ぃ抜いたらあかんでぇ!」
「大丈夫ですよ、すぐに終わらせます」
 罠はすべて搔い潜った、後は石棺の中を調べるだけ。
 石棺の前へと移動しゆっくりと慎重に開けてると、そこには包帯巻きのミイラ……ではなく黒い蝋燭が。
 だが早速火をつけようと妖精ロボに指示を出した、まさにその瞬間!
 ザバーン!!
 なんと、天井から落ちてきた大量の水によってトリテレイアと妖精ロボはずぶ濡れ、そして蝋燭の火まで消えてしまったのだ!
 石棺を開けた事により発動した最後の罠にまんまと嵌ったトリテレイアは、今までの陽気気分が一転、ふるふると肩が震え出し。
「……なんと悪辣なっ! こんな卑怯な罠を仕掛けた者の性格が窺い知れますっ!」
「あちゃー、言わんこちゃない……こうなったら奥の手や!」
 誰だかに怒るトリテレイアを見て、このままでは事態が収集しないと判断したセルヴィは意外な行動を取る。
 なんと自身のカンテラを取り外し、それを腕ごとグルグルと大きく回し始めたのだ。
「トリテレイアはん、受け取りぃ!」
 そしてカンテラをトリテレイアに向け、大きく投げつけた。
 途中、彫像達が反応しカンテラへ向け水鉄砲が放たれるも、当たった水がカンテラの中で放つ光を消す事は叶わず。
 呼ばれてセルヴィの方を見たトリテレイアは、カンテラが宙を舞ってこちらへと来ている事にびっくり。
 怒りを忘れなんとかカンテラをキャッチ、中で揺らめきながら燃える火を確認すると何かを察して。
「セルヴィ様、このカンテラの中で燃えてる火は、まさか」
「まさかもまさか。大部屋の中にあった蝋燭で付けた、正真正銘の聖なる火や!」
 セルヴィは蝋燭を持っていない、しかし聖なる火を持っていないという訳では無かった。
 実はカンテラの中という比較的安全な場所に、こっそり隠し持っていたのだ。
 こうして石棺内の黒い蝋燭を無事点灯する事が出来たトリテレイアとセルヴィ。
 まだまだ隠された蝋燭は多く残っているが、二人の活躍によってゴールへと大きく近づいたのは間違いないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神元・眞白
【WIZ/絡みは自由に】
オブリビオンは出てきてくれるみたいだから、今はまだ調査しないと。
怪奇現象はゾンビだけ?まだまだ探せば出てきそう。楽しみ。
場所を動かすと効果が切れるユーベルコード?……検証。
飛威は新しい人形、捕獲したら少し離れてみて。

また探索だけど、さっきより暗いみたい?何かがいても分かり難そう。
何か聞こえたらこっちがそっと近づいて様子見てみる。
さっきはゾンビがいたけど、今回もゾンビ?変化球に期待。
指定の蝋燭も黒っていうし、少しでも情報は集めないと。

ボスが人型っていうと考えつきそうな所にあるといいけど……。
この大きな蝋燭。ついてる火が聖なる火じゃないっていうオチがあったりなかったり?



●機械人形と藁人形
 そこは迷宮内の奥ばった一角、特に隠された様子も見せずに置かれた黒い蝋燭を取り囲むように、二体の人形達がたたずむ。
「あーつまんねー! だーれもこないからたいくつだぜ! なあ、おまえもそうだろ!」
 見た目は手におもちゃのナイフを持った小さな男の子の人形、しかし体内に音声再生機能を搭載しているためか悠長にしゃべる事ができる。
 そんな一体の機械人形が話しかけると、となりの人形は無言のままこくっと頷いた。
 アイスホッケーの仮面をつけ、ボロい服を着た大男。
 案山子としての用途のために張り付けにされた姿でたたずむ、藁で出来た藁人形である。
「かー、おまえはほんとうにむくちだな! せっかくうごけるんだから、いろいろしゃべったほうがたのしいしおもしろいだろうが!」
 その様子が気に食わないのか、げしげしと藁人形の足を蹴る機械人形。
 すると、突然。
「私も、そう思う」
「のわああああっ!!?」
 人形達の背後を取る様に近づき声をかけたのは、神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)。
 彼女は自身の人形、飛威と一緒に迷宮を探索。おしゃべりに夢中な人形達に興味を惹かれ、先程まで隠れて様子を見ていたのであった。
「ばっ、おめー、にんげんのくせにおれさまをおどかすなんて、いいどきょうだな! きりきざんでやるぜー!」
 そういうと威勢良く、手に持つナイフを振り回す人形。
 しかしおもちゃな上にリーチも短く、全く怖くない。
「あなた、名前あるの?」
 人形の行動などお構いなし、マイペースに質問する眞白。
 しかし人形はそれを聞くと、ナイフを止めて待ってましたとばかりに胸を張り。
「ほほう、おれさまのなまえがしりたいと。いいぜ、とくべつにおしえてやる。おれさまはジャッキー、そしてうしろのでかぶつはジョンソンだ!」
 腕を組んで得意げに名乗るジャッキーと、こくんとお辞儀をするように頭を下げるジョンソン。
 何もかもが正反対の二体、まさに凸凹コンビというものだろうか。
「あなた、面白そう……飛威」
 だがとことんマイペースな眞白は名前も呼ばず飛威に命令を下し、飛威はジャッキーの元へと近づきひょいと持ち上げ抱える。
「おっ、なんだねーちゃん? おれさまにきょうみでもあんのか、んん?」
 下品な笑みを浮かべて抱えられるジャッキー、そして眞白は更に命令を下す。
「飛威、そのまま離れて」
「ちょ、まてまてこら! おいジョンソン、おれさまをたすけろ!」
 命令通りにその場を離れようとする飛威、抱えられたまま慌てて暴れ出すジャッキー。
 助けを求められたジョンソンは、ただ首を横に振るのみ。どうやら案山子なので自由には動けない様子。
「やっぱり、その場から動かすと効果が切れるの?」
 一旦飛威の移動を止めた眞白は、ジャッキーを見つめながら質問する。
 正直に答えないと離されると悟ったジャッキーは渋々答えた。
「ああ、そうだよ! おれさまたちにんぎょうは、めいれいをまもらないとうごけなくなるんだ。おれさまたちへのめいれいは『ここでろうそくをまもれ』。つまりほかのばしょへといどうしただけでも、ここで、というめいれいにいはんするんだよ!」
 場所移動が直接の原因ではなく、命令違反が効果の切れる原因。
 新しい情報を得た眞白は、気になっていた事を続けて質問する。
「この蝋燭の火、本当に聖なる火?」
 眞白は自身が持つ蝋燭を掲げて見せるも、ジャッキーは呆れた態度を示し。
「はあ? そんなのおれさまがしるかよ? あのくろいろうそくはせいなるひでしかつかないらしいから、ついたらせいなるひなんだろ?」
「でも私、まだ一度も黒い蝋燭を灯してない。これが本当に聖なる火なのか、確証がない」
 眞白にとっては当然の疑問だったのだろうが、話を聞くジャッキーはイライラし始めて。
「だったら、ためしてみればいいだろーが! ちょっとそれかしてみろ! おれさまがやってやる!」
 ひょいっ、と飛威の拘束を逃れてそのまま眞白の蝋燭を奪い、黒い蝋燭へと駆けるジャッキー。
 何かを訴える様にガタガタ揺れるジョンソンを無視し、黒い蝋燭の先端に火を押し当てると、ボウッと火が付き辺りを照らす。
「ほれみろ! これでこいつがせいなるひだとしょうめいされ………」
 言葉を発し終える前にピタッと動きを止めたジャッキーと大人しくなったジョンソン。
 彼らへの命令は『ここで蝋燭を守れ』。命令を自ら破ってしまった彼らは、自ら効果を切らしてしまったのだ。
 もっと色々知りたかったのに残念、と軽くため息をつきつつも、蝋燭を回収して移動を開始する眞白と飛威。
 とんだ変わり種の人形達ではあったが、黒い蝋燭を点けれたのは確か。
 一歩ずつではあるが着実に、猟兵達はオブリビオンへと近づいていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
【WIZ】
やっと人形を抜けて、今度は蝋燭探しですか。
今度はどーんと任せてください。

まずは大部屋の広さを調べるために、ぐるりと外周を回って。
それを電脳ゴーグル上でマッピング。さらに小さな四角に区切って。
あとはこの四角をひとつづつ潰していけば、
蝋燭は見つかります。

少し時間は掛かるかもですが、確実です。

蝋燭の置かれた配置も考えながら、【第六感】も使います。

早くここを抜けて、この面倒くさい迷宮を作ったオブリビオンをぶん殴りたいわ。


庵・華代
黒い蝋燭…探すには視界が狭いわぁ
動く敵、とかやあらへんし蜘蛛の糸をセンサー代わりに使うこともできひん。普通に足で探す。
ただ暗すぎて蝋燭の火だけじゃ心許あらへんな、出発する前に大きい蝋燭から少しちり紙にも火をもろうてドールに食わせるか
行灯みたいに光って綺麗やで?

人形はんが襲うてきたら蜘蛛の糸でとっ捕まえて脅迫、道案内してもらおか



●難航する探索
 迷宮内を探索していた猟兵達が次々と大部屋へと戻ってくる。
 大抵が他の猟兵達と情報共有をするためで、疲労からここで休憩を取る猟兵達もちらほらと。
 しかしそんな大部屋内にて、そのどちらにも該当しない猟兵が一人いた。
 彼女の名は黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)、電脳ゴーグルを装着しながら大部屋内を探索しているが、その顔は浮かない様子。
「この部屋の中にもあると思ったのですが、やはり私の勘違いでしょうか……?」
 時は少し前、迷宮内を探索に出かける猟兵達に倣おうと大部屋をしたところ、第六感がピンと働く。
 相手は小癪なオブリビオン、もしかしたらこの大部屋内にも黒い蝋燭が隠されているのではないか。
 そこで迷宮内の探索は他の猟兵達に任せ、自身は大部屋内を探索する事に決めた摩那。
 まず大部屋の外周を回って電脳ゴーグルでマッピング、さらにそれを小さな区間に区切って一ヵ所づつ丹念に調べ上げる。
 地道で大変だが確実な方法、だが現在に至るまで全く成果が出ず、正直焦りのみが募る。
「あらあら、面白そうなことしてはるなぁ。なにしてはるん?」
 そこに現れ声をかけて来たのは着物を纏う猟兵、庵・華代(はんなり女郎蜘蛛・f14359)。
 突然声をかけられた事に驚くも、事の顛末を説明する摩那。
 するとうんうん頷く華代は手を自分の頬に当てながら。
「色々大変やったんやなぁ、実はうちも苦労しててなぁ。ほらうち、探索とか苦手やし。人形はん捕まえて道案内させよ思うたんやけど、突然動かなるし火は消えるしで、正直参ってなぁ」
 蜘蛛の糸で編んだ操り糸を見せると、そこにはひな人形達が絡まっていた。
 本来は正座してるはずの人形達が思い思いの恰好で固まっているのを見る限り、動いていたのだろう事は見て取れる。
「マッタク、フンダリケッタリダゼ」
 隣にいた彼女のドールが、口から薄い煙をゲプッと吐き出す。
 ちり紙に火をつけてドールの中へと入れていたみたいだが、ちり紙故に途中で燃え尽きてしまった様だった。
「そや、良かったらうちも手伝うわぁ。今更迷宮に戻る気も起きひんしなぁ」
「本当ですか? ありがとうございます、とても助かります」
 こうして人手が増えた事もあり、一気に探索の速度が上がる。
 しかし一向に成果は出ずに、残りはとうとう最後の一区、大きな蝋燭が置かれたテーブルがある真ん中の区画のみとなった。
 流石にここにはないだろう……と諦め半分に調べ始める摩那と華代であったが、テーブルの真下の床に何やら怪しい窪み。
 まさかと思い調べるとそこにあったのは隠し扉で、開けてみるとなんとそこには黒い蝋燭が!
「や、やった! 私の勘は間違ってなかった!」
「流石摩那はん、お見事やわぁ」
 パチパチと称賛を送る華代と、喜々として蝋燭に火をつける摩那。
 彼女達の執念よりまた一つ、攻略へと近づけたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『人の業より生まれし神『メアクリス』』

POW   :    殺戮人形召喚
いま戦っている対象に有効な【複数の自爆機能付きミレナリィドール 】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    ナハト・フリューゲル
自身に【武器や防具にもなる変質的なオーラ】をまとい、高速移動と【氷の魔法術式の込められた羽】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    強制支配命令権
【声を出して物質に干渉する事】から【遠隔操作や超常現象まで引き起こせる命令】を放ち、【言葉に込められた強制力】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はイヴ・イルシオンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ゴゴゴゴゴゴゴ……………

 大部屋にあった大きな扉が、音を立てて開き始める。
 どうやら全ての蝋燭が灯され、オブリビオンへと続く道が開いたようだ。
 猟兵達は終結し、警戒しながら奥へと進む。
 この迷宮にいた人形達を操っていた者の正体とは、一体……。

 扉の潜るとそこは、先ほどではないがそれなりに大きな部屋。
 多くの人形達がひしめき合ってるその部屋に、彼女はいた。
「フフフ……ようやく来たのね、待ちわびたわぁ」
 大きめな椅子に座り、足を組み。
 こちらを見下すような目つきでそこにいたのは、人の業より生まれし神「メアクリス」。
 黒いドレスと羽根を持つ彼女が、どうやらここの迷宮を支配するオブリビオンの様だ。
『扉よ、閉まりなさい』
 ゴゥン、と勢いよく閉まった猟兵達の後ろの扉。
 これにより逃げ出す事は出来なくなったが、それは相手も同じ。

 周りを見渡すと、武器を持つ人形や頑丈そうな人形が数多くいる。
 今までの出来事やさっきの扉を見る限り、これらの人形を使って攻撃してくるのは確実と思われる。
 人形達に罪はないが、無視できる状況でもない。
 この場面に限っては、襲い来る人形達の撃破も視野に入れなければならないだろう。

「ここまで来るのは大変だったでしょう? たっぷりとおもてなししないとねぇ」
 不敵な笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がるメアクリスと、武器を構える猟兵達。
 まさに今、熾烈な戦いが始まろうとしていた。
セルヴィ・アウレアム
「……おい、ゲス野郎。そん子らを離したれや。」
普段の笑顔は無く、真剣な面持ちでメアクリスに声を掛ける。
「そん子ら操んの止めて、詫びいれて逃げ帰るってんなら、許したる。」
こういう手合が降伏することも、まして手駒をみすみす手放すこともありえないとわかった上で問いかける。
無論、拒否されるだろう。それだけでない。おそらく、相手は人形が「肉の盾」として使えると判断し、積極的に投入するだろう。
「…そうか、嫌ならしゃーない。」

●行動:POW【UC/迷宮喰らい】を使用
攻撃を仕掛けてきた人形の武装だけを吸収し、右手に巨大な器械剣を作り出す。
その上で自爆を体で受けつつ、メアクリスに距離を詰め、相手の体を両断する。


黒木・摩那
ついに迷宮主の登場ですね。
このために今まで人形に脅かされたり、地べたを這いつくばって蝋燭探したりと
ひどい目にあってきたわけで。
ここでついに雪辱を晴らせるならば、むしろこちらも大歓迎しますよ。

大体が迷宮にお化け屋敷作るとか、オブリビオンは感覚おかしいです。
怖いを倍掛けして、人の醜態を楽しむとか趣味悪すぎです。

……と思い当って、今までの自分も見られてたことに気がついて。
頭を抱えます。

絶対にここで倒して、記憶抹消しとかないと!


ルーンソードにUC【偃月招雷】を下ろして、攻撃力MAXにして、
メアクリスを倒しに掛かります。


トリテレイア・ゼロナイン
さしずめ人形の女王といったところですか。
ですが人々に災いを齎すのであれば、誰であれ何であれ討ち果たすのが騎士の務め。神を自称する女王にはご無礼を覚悟してもらいましょう

さて、強制支配命令権で止まってしまった猟兵を「かばい」つつ、迫りくる人形達を押しとどめる前衛として戦います

「武器受け」「盾受け」で防御しつつ体勢を崩し大盾殴打での「鎧砕き」で破壊していきます。
数が増えたら「怪力」で複数体を捕まえます。チャンスと考えたメアクリスが自爆を命じる筈、「破壊工作」の知識から爆発の前兆を「見切り」無敵城塞を発動

爆炎の煙を「目潰し」として使いスラスターでの「スライディング」でメアクリスに接近、胴体に盾の一撃を


神元・眞白
【WIZ/絡みは自由に】
…うん、操者は普通だった。面白くない。
今まで集めた情報のピースを集めて、動きの答え合わせ。
ちゃんと終わりを打たないと。

多分、人形の動かし方は仮人格を与えて、簡単な命令の埋め込み。
今回は「敵を倒せ」とかそんな所……かな。
さっきみたいに疑似的に命令違反させるのが無難かも。
動けない様にするのが一番だし、足を外したり壊したりでなんとか?

少しずつ相手方の人形を減らして、こっちの戦術器を目立たない様に
少しずつ投入。全体の数は減ってない様に変装させてカモフラージュ。
あんまりやり過ぎると相手の刺激になるから、侵食。侵略?

帰りはどうすれば扉が開くか考えないと。実は扉も大きな人形?



●対峙する猟兵達の思い
 メアクリスは不敵に笑いながら猟兵達を一人一人見つめ見定めて、何かを考察している様子。
 そんな隙だらけの行動を見せる敵、本来であれば一斉に攻撃をしかけて有利な状況を作るべきなのだろうが、猟兵達は動かない。
 なぜならこの場所は相手のテリトリー、どんな罠があるとも知れないからだ。
「さしずめ人形の女王といったところですか。
ですが人々に災いを齎すのであれば、誰であれ何であれ討ち果たすのが騎士の務めです」
「うん、操者は普通だった。面白くない。ちゃんと終わりを打たないと」
 ウォーマシンのトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)と、ミレナリィドールの神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)は真っ直ぐとメアクリスを見据え、猟兵としての使命感を静かにしっかりと燃やしながら相手の出方を伺う。
「ついに迷宮主の登場ですね。ここでついに雪辱を晴らせるならば、むしろこちらも大歓迎しますよ」
 今までの出来事を振り返れば、人形に脅かされて、蝋燭探しのために地べたを這いつくばって。
 比較的碌な目に遭わされていない人間の黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は鬱憤を全てぶつけるかの様に、キッとメアクリスを睨む。
 あら怖ぁい、と余裕の笑みを浮かべるメアクリスはどうやら品定めが終わったようだ。
 さっと手を掲げると同時に次々と動き出す人形達、いよいよ戦いの火蓋が切って落とされると誰もが思ったまさにその時、それを遮る声が一つ。
「……おい、ゲス野郎。そん子らを離したれや」
 人形達を操り始めたメアクリスに対してそう言い放ったのは、ミレナリィドールのセルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)。
 迷宮探索時の様な笑顔も無く、真剣な面持ちで発する彼女の言葉に当のメアクリスも耳を傾ける。
「そん子ら操んの止めて、詫びいれて逃げ帰るってんなら、許したる」
 猟兵の目的はオブリビオンの討伐、もちろん逃走を許しては失敗となる。
 そんな事は承知の上でのこの提案は、セルヴィにとっての最大の譲歩であったのだろう。
 しかしメアクリスはクスクスと笑いながら言い放つ。
「逃げるぅ? どうして私が貴女達から逃げなくちゃいけないのかしら、むしろ逆じゃなぁい? フフッ、まあ絶対に逃がしはしないけどねぇ」
「……そうか、嫌ならしゃーない。みんな、ちょっとええか?」
 メアクリスから拒否の言葉を受けたセルヴィは、今度は仲間の猟兵達に対して。
「難しいっちゅーことは分かっとる。せやけど、操られてるだけであの子らに罪はあらへん。なるべく無傷で無力化してくれへんやろか」
 普通に戦って倒すのと比べれば難易度が上がってしまうこの提案、しかしセルヴィの思いを受けた猟兵達は頷き答える。
 その様子を見たメアクリスは嘲笑うでも呆れるでもなく、意外な事に激しい怒りを見せた。
「不利になる事が分かってながら、人形の為に手加減ですって? はんっ、笑わせないで頂戴! その化けの皮、今すぐ剥いであげるわぁ!」
 勢い良く手をかざし、今度こそ高らかに命令を下す。
『この者達を始末しなさいっ!』
 この宣言を合図に、それぞれの人形が猟兵達へと襲い来る。
 メアクリスとの戦いがついに始まったのだ。

●襲いくる人形達
「悲しみ、憎しみ、恨み……それらが人間だけの感情じゃないって事、思い知らせなさぁい!」
 戦場の後方より、まさしく女王が配下に命令するかの如く人形達へと発する言葉。
 人形達はそれに応えるかの様に猟兵達へと牙を向ける。
「つ、強い! これ本当に人形ですか!?」
 摩那のルーンソードさばきにも引けを劣らない剣戟を仕掛けてくるのは、和風の甲冑に身を包む武者人形。
 日本刀にて容赦のない攻撃をする様はまさしく武士であり、鍔迫り合いの攻防を摩那と繰り広げている。
 そして武者人形と酷似してる人形がもう一体。
「随分と粋なことをしてくれますねっ!」
 トリテレイアと対峙しているのは、西洋の甲冑に身を包んだマネキン人形。
 シールドで攻撃を防ぎながら刀剣を振るい、女王を守ろうとする立ち振る舞いはまさに騎士そのものである。
 そして幾度もの盾と盾、剣と剣がぶつかり合う音を響かせながら、トリテレイアは西洋騎士へと語りかける。
「私の動きに付いてこられるとは流石ですね。是非とも貴方とは一対一で正々堂々、戦ってみたいところです。ですが、今は」
 再び剣同士がぶつかり合って押し合いとなったその時、トリテレイアの腕から格納されていた銃火器が飛び出し人形を狙う。
 銃撃音と同時、咄嗟に盾を構え直す人形だったが、来るはずだった衝撃は来ない。
「空砲ですよ」
 その一瞬の隙をついて盾による一撃を繰り出し、そのまま壁へと押し付け追い詰めると、人形の首元へ剣を突きつけて。
「貴方の負けです」
 トリテレイアからの勝利宣言の後、西洋甲冑の人形は負けを認める様にガクッと身体の力を抜き、そのまま動かなくなる。
 不意打ちは騎士として褒められた行為ではないが、正面からやり合えば無傷での無力化は出来なかったかもしれない相手。
 仲間との約束のために、トリテレイアは猟兵として勝利したのだった。
「トリテレイアさん、ご無事そうですね!」
 人形を解放するトリテレイアに向かって、走りながら声をかける摩那。
 おやお早いですね、と返事を返すと胸を張って。
「私が本気を出せばこんなものですよ。とはいえ、流石に介錯まではしませんでしたが」
 ちらっと見る摩那の視線を追うと、そこには折られた刀の前で胡坐をかく武者人形の姿が。
 その堂々たる姿はまさしく、負けを潔く認め首を差し出す武士そのものである。
「そういえば、他の二人は……」
「堪忍な、二人共。こっちはまだ暫くかかりそうやっ!」
 近くで聞こえる大きな音と声、向けばセルヴィが戦闘をしている真っ最中。
 無数の斬撃を休みなく繰り出しているのは、人型の中でも一際異形の存在である、千手観音像。
 自由に動く千本にも見える無数の手、その全てに凶器を持ってセルヴィへと襲い掛かっている。
 セルヴィはその向かい来る刃全てを無効化するため、避けつつ一本一本を掴み、食し、蓄える。
 しかし何分本数が多い。全てを食らうにはまだ時間が必要である。
「もう少し、待ってて」
 そして眞白が苦戦を強いられている相手は、ナイフを持つフランス人形の集団。
 一体一体の戦力はそのまでではないが、数が多い。
 息をぴったりと合わせた連携攻撃に合わせ、破壊ではなく無傷での捕獲を目的とするのであれば、これ程厄介な相手はいない。
 戦術人形を投入しすでに数体の捕獲には成功しているものの、まだまだ相手は数多くいる。
「この子らはウチらが倒す! 二人はアイツを頼むで!」
「うん。ここは、任せて」
 加勢しようとする摩那とトリテレイアを拒否し、急いでメアクリスへと向かうように指示する二人。
 見れば第二陣を向かわせるため、ユーベルコードを使おうとしている様子。
「分かりました、ここはお任せします」
「二人とも、ご武運を!」
 戦闘中の二人にこの場は任せ、駆け出す摩那とトリテレイア。
 標的はメアクリス、ついに元凶との勝負が始まる。

●人の業より生まれし神「メアクリス」
「本当に無傷で倒すだなんて、貴方達ってホント馬鹿ねぇ。でも、他の二人は出来るのかしらぁ?」
 傍に二体のミレナリィドールを従え、青いオーラに身を包むメアクリス。
 トリテレイアと摩那が向かって来た事により第二陣へのユーベルコードを中断し、応戦を開始する。
 まずはトリテレイア、自身の剣にて切りかかりつつ隠し銃器を余す事無く展開、全力でメアクリスに対して攻撃。
 そして摩那、サイキックエナジーを纏わせ、まるで電気を帯電させているかの様な輝きを放つルーンソードにて斬撃による攻撃。
 息を合わせた双撃、しかしメアクリスに有効打を与える事が出来ない。
 オーラによる高速移動と防壁によって斬撃を避け射撃を防ぎ、お返しとばかりに氷の魔法術式の込められた羽による遠隔攻撃と二体のミレナリィドールによる斬撃の報復。
「流石に一筋縄ではいきませんね」
「ですが、諦める訳にはいきません」
 実力差を見せつけられてなお立ち向かう二人をみて、メアクリスは嘲笑いながら。
「まだ懲りないのぉ? あれだけビクビクとしてた割には、大した度胸ねぇ?」
「なっ……!」
 迷宮内の様子を見ていたらしいメアクリスはニヤニヤしながら摩那を見つめ、当の摩那は気恥ずかしさを誤魔化す様に勢いよく捲し立てて。
「ぜ、絶対にここで倒して記憶を抹消させて貰います! というか、お化け屋敷の迷宮なんて作って人を脅かすなんて、趣味が悪すぎです! 何でこんな事するんですか!?」
 ぶんぶんと振り回すソードを難なく避けたメアクリスは、一旦距離をとると不敵に笑い。
「そういえば言って無かったわねぇ。いいわ、冥途の土産に教えてあげる」
 ふわっと舞う彼女は両手を広げ、部屋中にいる人形達、いやおそらくは迷宮中の人形達を指して話を続ける。
「ここの人形達はねぇ、みな捨てられてた人形達なのよ。ある子はゴミ捨て場、ある子は廃屋中、またある子は世界を超えて。貴方達の様な身勝手な人間の手によって、無残にもねぇ! だから私はこの子達に、楽園と復讐の機会を与えてあげてるのよ!」
 メアクリスは負の感情を露わにし、猟兵達を睨みつける。
「だから、それを邪魔する奴は許さない! そう、私は神なの! この子達の神、メアク――」
「うっさいわ、ボケェ!」
 隙だらけのメアクリスに走る、鋭い斬撃。オーラによる防御ごと切り裂いたその一撃によって、メアクリスはよろけ悲鳴を上げる。
 斬撃を繰り出したのはセルヴィ、彼女の右手に生成された巨大な器械剣によるものだ。
「アンタがやっとんのは、ただ復讐の押し売りや! それを綺麗ごと並べて正当化すな!」
「そうですね。ここにある全ての人形が復讐を望んでいるとは思えません。少なくとも、先ほどの騎士は違いましたよ」
「それにあなたは、無理矢理人形を操ってますよね? それでは単なる独りよがりです」
 よろめきながらも立ち上がるメアクリス、その目は怒りにより一層の憎悪を宿しており、こちらの言葉が届いているかも定かではない。
 やはり説得は無理なのだろう、猟兵達は再び武器を構えて対峙する。
「絶対にぃ……絶対に許さないわぁ!!」
 傍にいる二体のミレナリィドール、その身体の中に両手をそれぞれ差し込む。
 そして取り出したのは、光りを放つ球体の装置。あれは、まさか――。
「二人共、下がって下さいっ!」
 急いで前へと出るトリテレイア、しかしそれ以上の行動をメアクリスは許さない。
『動くな、止まりなさいっ!!』
 突然動きが停止する猟兵達。
 全員その場から動かない、いや動けないでいる最中、メアクリスは両手のそれを構え。
「これで終わりよぉ!! 死ねぇっ!!」
 両手に持つ装置を投げつけるメアクリス。
 ピクリとも動けない今、回避も防御も行えずに、そのまま……。
 直後。激しい閃光、灼熱の炎。耳をつんざく大音量と共に訪れる、強力な衝撃。
 それはミレナリィドールに仕掛けられていた自爆装置を直接投げつけての、大爆発。
 いくら猟兵とはいえ、まともにこれを受けてしまえば無事では済まない。
「ククッ……アハハハハハッ!! いい気味だわぁ! フフッ……さて、残る一人は……」
 メアクリスは周りを見渡す。
 爆発による煙で良く見えないが、こちらに近づく小さな影が複数。
 歩いて近寄ってみれば、それはフランス人形達。どうやらもう一人もこの子達が始末した様だ。
「フフフッ、これで全員ね。さあみんな、喜びなさぁい! この戦いは私達の勝ち――」
 次の瞬間、身体に走る衝撃。
 これは明らかに攻撃を受けた痛み、しかし何故?
 何故フランス人形達がナイフを私に突き立て攻撃を……いや、違う。これはフランス人形じゃない!
「……人形を操れるのは、あなただけじゃない」
 煙の中から現れたのは、眞白。そしてナイフを突き立てたのはメアクリスが気づいた通り、フランス人形の姿を真似た眞白のカラクリ人形達だ。
「人形達は、すべて無力化した。千手観音も、フランス人形も。あなたの負けよ」
 突然の不意打ちに驚いたメアクリスだったが、今の表情は多少の余裕を見せる。
 なんせ、相手は一人。大した脅威ではない。
「貴方達って、本当にお馬鹿さんよねぇ。人形を無力化してる最中に、お仲間はみんな死んだというのに」
 羽根を大きくその場で羽ばき、風圧で身体を刺す人形達を吹き飛ばして見せて。
「それにこの程度の攻撃、何ともないわぁ! せいぜい足止め程度にしか――」
「ううん。それで、十分」
 その直後、部屋の内部に流れる風。
 先ほどの羽ばたきによるものとは別の風、しかしその風を感じた時点で既にもう遅い。
 煙の中から猛スピードで現れたのは、盾を構えたトリテレイア。
「無敵城塞――何とか間に合いました、ねっ!」
 スラスターによる高速移動、ましてや不意を突いたこの突進に避けるどころか受け身すら取れるはずもなく、メアクリスは直撃を受けそのまま壁へと叩きつけられる。
 傍にいたミレナリィドール二体が危機を察知、すぐさま主人の下へと駆け付けようとするが。
「行かせない、よ」
 眞白のカラクリ人形達がミレナリィドールをすぐさま包囲、身動きを見事封じる。
 壁にひびが入るほどの衝撃を全身で受けたメアクリス、だがこまま黙ってやられる彼女ではない。
 身体がはち切れそうになるのを耐えながら、距離をとるために翼に力を籠める、だが。
「そうはさせませんっ!」
 摩那のルーンソードによる一撃、偃月招雷がメアクリスの片翼を捉え、切断する。
 翼を失い、苦しみもがくメアクリス。その絶好の機会を、猟兵達は逃さない。
「これで――しまいやぁっ!!」
 セルヴィの渾身の斬撃が、メアクリスの胴体を捉える。
 強い思いを全て込めたこの一撃を防ぐものは今や何もない。
 一閃。ぐらりと揺れ地に落ちるメアクリス。
 しかし落ちたのは上、メアクリスの上半身のみ。下半身は力尽きるように壁へともたれかかっている。
 もはや勝負は決した。この迷宮の主、メアクリスに猟兵達は勝利したのである。

●業を背負いし者の末路
 猟兵達は息を整え、周りを見渡す。
 この迷宮内に漂っていた不穏な空気は澄み、深い闇は晴れ、閉じていた扉もいつの間にやら開いていた。
 ようやく迎えた終わりに安堵した猟兵達が、自分達の場所へと帰るために歩き出そうとした、その時。
「……さ……い……」
 猟兵達は振り返り、構える。まさか……。
「……ゆ……さ……ない……」
 それは、メアクリス。いや、メアクリスの上半身。
 力の入らない腕を無理矢理動かし、ゆっくりとこちらへと這ってきている。
 何故この状態でまだ生きているのだろうか。
 改めてメアクリスの切断面をみると、血液どころか内臓も存在していない。かわりにあるのは無機質な機械。
 そう、メアクリスはミレナリィドール。人形達の女王である彼女もまた、人形だったのだ。
「……たい……させ……ない……」
 かすれて聞こえない声を絞りながら、なおも全身するメアクリス。
 戦うどころか、もはや虫の息である彼女。何が彼女をここまで突き動かすのだろうか。
「……こん……な……おも……のこ……たちに……」
 その時だった。
 彼女の二体のミレナリィドール、力尽きて倒れていたはずのドール達が起き上がった。
 まさかと思い身構える猟兵達、しかし二体は見めもくれず、メアクリスの下へと歩く。
「……たし……が……まも……」
「モウ、イイヨ」
「ジュウブン、ダヨ」
 二体のドールは、優しくメアクリスの手を掴む。
 ただ諭すように、ただ宥めるように。
 それを見た猟兵達も、思わずメアクリスへと声をかける。
「迷宮の子らの事なら、心配せんでええ。ウチらが悪いようにはせえへん」
「はい。新しく貰ってくれる人達を探します」
「うん、私も頑張る」
「学園の生徒さん達も手伝ってくれるかもですね」
 人形の言葉、猟兵達の言葉を聞いたメアクリスは、ただ静かに。
「……フ……ほん……とうに……ばか……ね……」
 青い炎が立ち上がり、メアクリスの全身を包み込む。
 灰も残さずに消え去ったメアクリスは、最後にどんな表情をみせたのか。
 それはその場にいた猟兵達と、二体のドール達のみが知る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月27日


挿絵イラスト