●Side [Reiher]
「…………」
ヒーローズアースのとある墓園。
猟書家の侵攻による事故で亡くなった少年アルデアの墓の前で、手を合わせて佇むヒーロー・ライアーはこれまでのことを報告するような表情を見せていた。
ライアーは元々ヴィランだったのだが、弟のアルデアが亡くなった事故をきっかけにヒーローへと転向し、先日ようやくヴィランとしての自分との決別を終わらせた。
人の優位に立つこと。それだけのためにヴィランとしての活動を続けていたが、猟兵達が彼に『ヒーローも悪くない』と教えたことで、ダークヒーローとしてではあるがヒーロー側の活動を好むようになってきた。
「まあ……それでも、昔の評判ってのはずっと残るものなんだよな」
過去の自分を蔑むような嘲笑を浮かべるライアー。過去やこれまでの評判と言うのは簡単には覆せないため、今更悔やんでもしょうがない。
これから現れるヴィラン達を倒し、人々を守り続けること。それを弟に約束するかのように、ライアーはもう一度墓の前で手を合わせる。
これから起こることに、何も気づかないまま。
●Side [Liar]
「あーあーあー! いいのか、ただ逃げるだけで!」
同時刻、ヒーローズアースの病院付近ではライアー――の姿をした何か――が暴れまわっていた。
音波をメインに戦うその姿は、現在はヒーローと名乗っているヴィラン『嘘つきライアー』そのもの。自由自在に、蛇のようにしなるケーブルを操っては病院の院内放送でスピーカーに繋ぎ、人の脳を壊す音を流し続けていた。
頭が痛む。脳が壊れる。身体が言うことを聞かない。
街がこうなったのはあの嘘つきのせい。
ヒーローになったと嘘をついた、黒鷺のライアーのせい。
誰かが言う。『やっぱりアイツは嘘つきだったんだ』
誰かが言う。『ヒーローになったなんて、とんだ大嘘つきじゃないか!』
誰かが言う。『早くアイツを倒してくれ!』
人々の心に植え付けられた疑惑の種は徐々に芽吹いて、広がり、収まりを見せない。
それを嘲笑うように、『嘘つきライアー』は地上を見下して、呟いた。
「さあ、出てこいや本物。お前がまたヴィランになるように、舞台は整えてやったからな」
牙を剥いて笑うその表情は、僅かにライアーではない何者かの歪みを見せていた。
●Side [Jäger]
「ったく、厄介なモンがヒーローズアースに出て来よったなぁ……。ってことで、ちょっと手伝って欲しいねんけど、ええか?」
少々眉根を寄せながら、ローラント・ローゼンミュラー(閃光の挑戦者・f36440)は集まってくれた猟兵達に今回の事件についての説明を開始する。
舞台はヒーローズアースにあるとある都市。そこでは現在、ヒーローとなったはずの男ライアーが暴れているという予知が見受けられた。
しかしローラントは予知で見たライアーの行動は『オブリビオンの仕業である』と断定する。その根拠として彼は一度は揺らいだものの、猟兵達との数多もの会話を経てヒーローとして戦い続けたからだと言う。
「おそらくやけど、オブリビオンが昔のライアーの姿を取って、過去の戦法を真似して街の人達に疑念を与えてん。その疑念が広がれば広がるほど、オブリビオンの思う壺や」
「ホンマはライアー自身に倒してほしいねんけど……あん人、今、弟さんの墓参りに行ってるっぽくてな。この事件のことを全く知らんみたいやわ」
本当ならこのまま、故人を偲んでおいてほしさもあるが、きっとそれは無理だろうと軽く笑うローラント。ライアーという人物は、過去とのけじめをつけるために猟兵達に手を貸すだろうと告げる。
「昔の戦い方を知ってるのは本人だけやからね。話を聞くだけでも良し、彼と共に戦うのも良し。……兎も角オブリビオンさえ討伐できれば、それで良し!!」
最後まで立っていたもん勝ちだ! と大きく笑ったローラント。
彼は手伝ってくれる者達に目を向け、まずはライアーのいる墓園へと転移の準備を進めてゆく。
決別のための戦いが、もうすぐ始まる――。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
ヒーロー・ライアーとの共闘シナリオ第三作目。
こちらのシナリオは『【猟】幸と不幸のショータイム』『思い悩む鷺は地に伏せる』の続きとなっておりますが、このシナリオだけの参加でもOKです。
少し重ためなお話(死亡した弟の話)なども入りますので、参加の際にはご注意ください。
こちらのシナリオは2章構成となっております。
初めての方はMSページをご確認の上、ご参加ください。
●第一章:日常シナリオ
墓園で故人(弟アルデア)を偲ぶライアーと会話をし、過去の話を聞くシナリオ。
既に猟兵の皆さんはグリモア猟兵から「街の中でヴィランだった頃のライアー(※オブリビオンが化けている偽物)が戦っている」事を知っている状態ですので、それを伝えてから対処法を聞くことになります。
なお、この第一章でライアーと共に来てほしいかどうかを選べます。
来て欲しいが多数になると第二章でもライアーは戦いに馳せ参じます。
●第二章:ボス戦シナリオ
ボス敵『『鋼の鷲』ハウルホッパー』との戦いです。
情報を聞き終えた猟兵達の前に、ライアーの偽物に扮していたオブリビオンが現れます。
第一章でライアーに来てもらうかどうかで少々状況が変わります。
詳細は断章にて。
皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
第1章 日常
『時には故人を偲ぶ一時を』
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POW : 故人のお墓または思い出の場所をきれいに清掃
SPD : 故人のお墓または思い出の場所について尋ねる
WIZ : 故人のお墓または思い出の場所へ祈りを捧げる
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リーベ・ヴァンパイア
過去からは逃れられない。……過去に罪を犯したとしたら、それを償わなければならない
ーーそして彼は今、それをしている。その邪魔をする者がいるなら……止めなければな
方針
まずは彼と会うとしよう。彼がどんな人物で、何を思っているか、話して聞いてみよう。(その際、弟さんの墓に来る前に買った花を置いて、手を合わせる)
その際に俺がヒーローであることを、そして今起きている事を伝える。
そして同行についてはーー付いてきてもらいたいが、彼に判断を任せる。今回の件は確かに彼の過去が原因だが……今の彼に非はない。事故のようなものだ。
ーーだが、そうだな。もし来てくれるなら有難い。君がいるなら更に多くの人達を救えるだろうしな
●贖罪の道を
「過去からは逃れられない。……過去に罪を犯したとしたら、それを償わなければならない。――そして彼は今、それをしている、か」
墓に添えるための花を片手に、リーベ・ヴァンパイア(Notwendigkeit・f37208)はライアーがいるという墓園へと足を踏み入れる。グリモア猟兵に場所を聞いておいたため、真っ直ぐに彼の下へと向かった。
ライアーは今、手を合わせたまま目を閉じてそっと祈りを捧げている。アルデアが亡くなってからのこと、ヒーローへ転身したこと、様々な報告をしているのだろう。彼がリーベが来たことに気づいたのは数分してからのことだった。
「ん……アンタは?」
「同じヒーローさ。ライアー、君と話がしたくてな」
「俺と? ……また何か起こったんじゃ」
「そうだな、起こった。が、まずは弟さんの墓に花を添えても?」
「ああ、それは構わない。……花、買ってきてなくて」
ライアーの視線の先に映る墓石には、別の誰かが添えてくれたであろう花がある。添えられて日数が経っているせいで既にしおれていたため、リーベは水換えのついでに花を全て入れ替える。
花を添えて、そっと手を合わせるリーベ。数分ほど合掌をした後に、場所を変えてライアーに今回の事件について話を進めた。
「……過去の、俺が?」
「そうだ。ヴィランだった頃の君の姿を形取り、悪評を流し続けることで人々の心に疑念を植え付ける……というのが、今回の相手だ」
事件のあらましを告げると、ライアーの表情が少々曇る。過去、自分がしてきたことを思えば当然のことだとは呟くが、それでも、街の人々には関係がないだろうと怒りを見せているのがわかる。
リーベはその様子に対して小さく笑みを浮かべた。ライアーという人物がどういうヒーローで、どういう理念を持っているのか、それを知ることが出来たのだから。
「過去の俺か……ってことは、ハッキング関係使ってるかもな……」
ぽつりと小さく呟いたライアーは、過去に自分が使っていた技術についてポツリと呟いた後、もう一度リーベへと視線を送る。
「それで、俺はどうしたらいい? 付いてこい、というのなら付いていくのだが」
「おっと。こっちから判断を仰ごうとしたんだが、その様子なら大丈夫か?」
「当たり前だ。過去の俺だかなんだか知らねぇが、むしろ過去の俺をぶっ叩けるなら今がチャンスってやつだろ?」
「今回の件は確かに過去の君が原因だが、君に非はない。事故のようなものだ。それでも……来てくれるのか?」
リーベの再三の問いかけに対し、ライアーは闘志を目にギラつかせて『行く』と答える。その姿はまさにヒーローの姿そのものだと納得がいった様子で、リーベは頷いた。
「君がいるなら、更に多くの人達を救えるだろうな。期待している」
「期待されるとちょいと恥ずかしいが……まあ、頑張るさ」
2人のヒーローはお互いの拳と拳を軽く重ね合わせ、決意を見せていた。
大成功
🔵🔵🔵
平坂・火乃華
アドリブ等歓迎
ヒーローとして歩みだした矢先に自分の成りすましか
この一件、早期決着が望ましいだろうな。墓参りの邪魔をするのは少々、気が進まねぇ気もするが、話を聞きに行くしかねぇな。
とは言えだ、墓参りの邪魔をするのは無粋ってモンだ、あまり直接的な事は聞かず、ライアーの近況やこの墓園に対する思い入れなんかを聞いておくとするか。
タイミングを見計らって、今回の一件を軽く説明し対策を聞こう。
過去の自分を超えられるという滅多にないチャンスだ、ライアーとしては逃す手はねぇ筈だから、一緒に戦って欲しい所ではあるが、それは本人次第ってとこだな。
●『嘘つき』の所以
「この一件、早期決着が望ましいだろうな……。しかし、ヒーローとして歩みだした矢先に、自分のなりすまし……か」
ライアーがいる墓園へとやってきた平坂・火乃華(さすらいの銀狼・f35951)はあたりを見渡し、小さく呟いた。
火乃華はライアーがヴィランからヒーローへと転向した経緯、そして彼が何故思い悩んでいたのかを知っており……ヒーローになる彼の背を押してあげたこともある。だからこそ、今回の事件はいわば過去の自分を乗り越えるための試練。彼の手で解決してほしいとさえ考えていた。
「だが、まあ……これは本人次第か。さて、本人はなんて言うかね……」
ふう、と軽くため息をついて、火乃華はライアーを探し出す。
「……よし、これでいいな」
墓石周りを綺麗にしていたライアー。あとは何をすればいいんだっけ、と考えている間に近づいてきた火乃華に気づく。墓参り中だったからと少々気にしている火乃華だったが、ライアーは特に気にせず彼に久しぶり、と伝えて近づいてきた。
「なんだ、いいのか? 弟さんの墓参り」
「ああ、いや……よくわからねぇんだ、こういうの。手を合わせるだけじゃないんだぞって、こないだ知り合いに怒られてよ。掃除とか、ちゃんとやれって」
「ライアーってそういうところは割とズボラなんだなぁ……ほら、じゃあ次は墓石を洗ってあげよう。周りの掃除も大事だが、墓石も綺麗にするといい」
そういうと火乃華は近くに放置されていたバケツを片手に、水を汲んで持ってくる。長らく掃除が行き届いてなかった墓石は埃っぽく、火乃華が気づかなかったらこのままずっと埃が積もっていたかもしれない。そう思うと、来てよかったのでは? と思っていたりもした。
墓石を水で絞った雑巾で拭き取り、埃を綺麗に払いながらもライアーと火乃華は他愛の無い話をしていた。近況、墓園に対する思い入れ、様々な事を。
そうして話は今回の事件についてになった。ライアーは既に別の猟兵からも話を聞いているようで、既に事件の首謀者の下へ出向くとは告げているようだ。
「じゃあ、そうだな。昔のアンタってどういう戦い方をしていた?」
「昔か……昔は音楽機材をハッキングして使ってたな。嘘つきの異名は、音のない場所で音を出すように動いてたから付いたし」
「あー、じゃあ今回の敵も……?」
「多分。対策は俺が逆ハックするか、超強力耳栓をするかのどっちかになる」
「なるほどなぁ……」
うーん、と考える火乃華。ハッキングの技術にはハッキングが有効だと聞かされたため、やっぱりライアーに来てもらうのが1番だと判断し、今一度彼に向けて来てくれるかを問いかけた。
「過去の俺をぶっ飛ばせるなら、それはそれで僥倖。楽しいパーティになりそうだ」
「それならよかった。頼んだぜ、ライアー」
牙を剥いて笑うライアーのその姿に、火乃華は一安心。残る墓参りのあれこれを済ませるまで、少し時間をくれと言って、ライアーは墓に向き直ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
忌塚・御門
WIZ
過去の罪が許されないとしたら、俺は相当の大罪人になるな
ま、俺の罪を裁ける奴は俺の世界にゃ居ねぇが
ざけんじゃねぇよ。新しい人生ってのを始める権利は誰にでもあんだ
過去如きに、それを咎められてたまるかってんだ
ライアーの下に赴いて
「よう、ヒーロー。しんみりしてるとこ悪いが、事件だぜ」
俺が猟兵である事は伝える
49ersじゃあねぇが、この世界じゃ猟兵である事が名刺になるからな
俺としちゃ同行してもらいてぇ
この世界に詳しくねえんでな
折角墓前に来て何もしねえってのも何だ
弟さんが好きだったものでも聞いて
「隠世の夢」でそいつを現実化させて供える
本物だ。盗んできたわけでもねえ
普段はしねえんだが特別だぜ、ヒーロー
●アルデアの好きなものは
「過去の罪が許されないとしたら、俺は相当な大罪人になるな。……ま、俺の罪を裁ける奴は俺の世界にゃ居ねぇが」
小さく、喉の奥で笑いながらも忌塚・御門(RAIMEI・f03484)は墓園へと立ち寄る。いくつも立つ墓の中からライアーの居場所を探り合ってるまでそう時間はかからず、彼は足早にライアーへと近づいた。
……その際、御門は僅かに怒りを覚えた。今回の事件は過去のライアーを模したオブリビオンによって引き起こされた、現在のライアーを貶めるための事件。これから新しい人生を歩むはずだったヒーローの道を断つための、悪趣味な演劇。
「……ざけんじゃねぇよ。本当に」
――新しい人生を始める権利は誰にでもあるのだから。
「よう、ヒーロー。しんみりしてるとこ悪いが、事件だぜ」
ライアーの背後を取った御門は気さくに話しかけ、彼に自分が猟兵であることを告げる。ライアーは一瞬目を丸くしたが、どことなく納得がいった表情を見せると御門から今回の事件の内容を告げられる。
「俺としちゃぁ、同行してもらいてぇんだ。この世界に詳しくねえんでな」
「行くに決まってんだろ。アルデアが安心して寝れなくなるからな」
「……アルデア?」
「墓の下に眠ってる弟だ。……前に、事件に巻き込まれて死んでしまってな」
「なるほどね。……流石に墓に来て何もしねえってのも何だかな……」
ふむ、と考え込んだ御門。せっかく兄貴の方を借りるのだから、弟にちょっと挨拶でもしようと何を供えてやろうかと考え込んだ。が、普通の供え物をするのもなんだか違うなと思い、御門はライアーに『アルデアの好きなもの』を聞いた。
アルデアの好きなものは、ヒーロー。いつしかヴィランの兄貴をぶっ飛ばしてくれるヒーローが現れて、いい勝負を見たいと言っていたそうだ。
「いい趣味してるねぇ。……じゃ、これでいいか?」
「えっ……それって」
軽く笑った御門は万年筆・隠世の夢を取り出して、サラサラと目の前にいる『黒鷺ライアー』の姿を描き、写真として現実化させて墓へと供える。
カメラを使ったわけでもない、ましてや描いただけのものに少々驚きの表情を見せていたライアー。盗んできたものじゃないぞと告げるが、やっぱりまだ信じられない様子でいた。
「普段はしねえんだが……特別だぜ、ヒーロー」
「お、おお。……なんかちょっと、恥ずかしいなコレ」
「弟はヒーローが大好きだったんだろ? 目の前に丁度いいヒーローがいたからな」
「うぐぐ」
してやられたという表情を見せたライアー。そんな彼をさっさと連れ出し、現場へ急ぐように忠告した御門は街を睨めつけ、最後に呟いた。
「……忘却の過去《オブリビオン》如きに、咎められてたまるものか」
大成功
🔵🔵🔵
ベアータ・ベルトット
話は付いたみたいね
アンタの疑いを晴らすには、大衆の目の前で、自分の手で偽物を討つしかない
最悪引き摺ってでも連れてくつもりだったけど…手間が省けて助かるわ
私が思うに…アンタの姿を真似てる敵は、ヴィラン時代のアンタしか知らない可能性がある
『嘘つきライアー』には無くて、ヒーローになった今のアンタだけが持ち得る物―明暗を分ける鍵はソレと見たわ
聞かせて頂戴。過去のアンタが抱えてた弱さと脆さを―ヒーローに目覚める過程で見出した、それを打ち破れるだけの強さの源を
きっと突破口が見えてくると思うの
兄が無実の罪を被ってるなんて知ったら、弟も安らかに眠ってられないでしょ
任せなさい。アンタの戦いを全力でサポートするわ
●『黒鷺ライアー』は立ち上がる
「話はついたみたいね?」
「……アンタは……」
墓園の外で待っていたのは、ベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)。他の猟兵達との話が終わるまで彼女は待ってくれていたようで、街はもうそろそろ危険だということを告げる。
「アンタの疑いを晴らすには、大衆の目の前で、自分の手で偽者を討つしか無い。最悪引きずってでも連れてくつもりだったけど……手間が省けて、助かるわ」
過去のライアーに対抗するには、現在のライアーを連れていけばいい。そう結論付けていたベアータはここで来ないと言われていたらどう連れて行ってやろうかと考えていたようだが、完全なる杞憂だったようだ。
そうして街へ向かう道すがら、ベアータはグリモア猟兵から預かった情報を元に今回の敵について考えをまとめる。なんてことはない、過去のライアーを真似している敵は、ヴィランだった頃のライアーしか知らない可能性があるだろうと。
「だから、『嘘つきライアー』には無くて、ヒーローになった今のアンタだけが持ちうる物……それが明暗を分ける鍵だと思うの」
「嘘つきの俺には無くて、黒鷺の俺にあるもの……」
「聞かせて頂戴。過去のアンタが抱えてた弱さと脆さを。ヒーローに目覚める過程で見出した、それを打ち破れるだけの強さの源を」
「――……少し長い話になるけど、いいか?」
「要所は外さないようにね」
ライアーは語る。自分がヴィランになっていたのは『優位に立ちたかった』から。ヒーローという存在を打ち破ることがその近道だと信じて疑わず、長くヴィラン活動を続けていた。
「ハッキング技術を利用すれば、遠くにいても悪の存在を知らしめて優位に立てる。……ずっと、ずっとそうしていたんだ」
「じゃあ、変わったきっかけは?」
「ああ、それはやっぱり、アルデアが殺された事件のせいだな」
不幸をばらまくヒーロー――という形を取ったオブリビオンに弟アルデアが殺されてから。その時に情報を集めるためにヒーロー活動の真似事をしてみたら、色んな人から感謝をされて……それから、少しずつ考えが改められた。
「優位に立つことは悪いことじゃない。ヒーローになってでも出来るんだと、いろんなやつに教わった。……思えば、悩んでた時も猟兵に励まされたっけな」
「昔の戦い方はどうしてたの?」
「ヒーローになった時に全部やめた。ヴィランの俺との決別の証として」
「なるほどね。……結構色んな人に支えられてるのね、アンタ」
「まあ……親なし、弟だけの家族だったからな。支えなしには生きてけなかった」
「支えがあってもなくても、もう、アンタは立派なヒーローさ。……そんなヒーローな兄が無実の罪を被ってるなんて知ったら、弟も安らかに眠ってられないでしょ」
走りながらも、ベアータはライアーの腕をべしんと叩いて励ます。ここから先、街へ入ればそこはライアーの戦場。それを自分はサポートするだけだと。
「任せなさい。アンタの戦いを全力でサポートするわ。少しでもいい、過去に一泡吹かせてやりなさい!」
「任せろ。過去と戦えるなんて最高の現場、この俺が見逃すはずねぇからな!!」
――牙を剥いて笑うヒーローの姿を、ベアータは見逃すはずもなく。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『鋼の鷲』ハウルホッパー』
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POW : HOWLING
【あらゆる防壁を貫通する破壊音波】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : be affected
【肉体と繋がった切っても再生するコード】によって、自身の装備する【強い自殺衝動を齎す歌声を流すスピーカー】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
WIZ : resonance
【切断不可能なコードで背後の巨大スピーカー】と合体し、攻撃力を増加する【魅惑的な歌声】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【精神を錯乱させる歌声を放つスピーカー】が使用可能になる。
イラスト:十姉妹
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠シャオロン・リー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
ああ、やってきた。やってきた。
嘘つきのライアーがやってきた。
ヒーローになったなどと嘘をついて、また、街を壊すんだ。
大音響を鳴らして、街の中をうるさくして、頭の中を、脳を、精神を、全部を、ぐちゃぐちゃに、ぐるぐるにして――。
「――これだから、昔の俺はよぉ!!」
備え付けられたスピーカーが鎖によって叩き落される。
大きく鳴り響いていた音が途絶えた途端に、街の人々は困惑の表情を向けるのだ。
『嘘つきライアー』と『黒鷺ライアー』がいる、と。
何が起こっているのか、どっちが本物なのか、住民誰もが困惑の表情を見せている。
けれど、黒鷺ライアーだけはその視線を外さぬように、しっかりと睨みつけていた。
嘘つきの方はと言うと、飄々とした様子でライアーに挑発をかけている。
それも過去のライアーの姿の真似……というわけではなく、どうやらオブリビオン本来の性格が滲み出てきているようだ。
それを的確に指摘したライアー。過去の俺でもそこまで飄々としてねぇよ、とツッコミを入れると、そんなところにツッコミが入ると思ってなかったようで、動揺を見せたオブリビオンは元の姿に戻った。
「あ、アカン。ちゃうねん、こっちの姿にならんとアカンて」
どうにかこうにか、嘘つきライアーの姿へともう一度変貌したそのオブリビオンの名は、『鋼の鷲』ハウルホッパー。
過去のライアーへと変貌したのは、どうやら同じく音を扱う系統のヴィランだったから。それに気づいたライアーは、それなら本物の『嘘つきライアー』も見せてやろうか? とハウルホッパーへと笑いかけた。
「とは言え、アンタらの指示に従うさ。『嘘つきライアー』も『黒鷺ライアー』も、今は等しくヒーローとなって手助けしてやるよ」
猟兵達に向き直り、ライアーは言う。
今回の俺は、ヒーローとしての戦いも、ヴィランとしての戦いも、どちらでも使って過去と決着を付けてやるさ、と。
「まあ、嘘つきの方はあんまりいい気分にはならねぇと思うけど。それでも、アンタらが許すなら……今一度、過去との決別のために使わせてくれ」
小さく懇願するような声を出したライアー。
過去との決別のため、彼に与えた選択肢は――。
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プレイング受付:6/24 8:31~
ボス敵『『鋼の鷲』ハウルホッパー』との戦いです。
今回、第一章でライアーを連れてくるプレイングが多かったため、ライアーと共同して戦うことになります。
彼に行動を控えておいてもらうことももちろんOKです。
場所は街の外。様々な車が立ち止まり、人々が苦しむ様子が見受けられましたが現在はライアーとハウルホッパーの一連の流れにより人々は避難が完了しています。
また街中はビルが立ち並び、街路樹が多く非常に視界を遮りやすいですが、ビルの建築材のせいか音だけはかなり響き渡ってしまいます。
そのためハウルホッパーのユーベルコードの音、後述するライアーの戦術の音、その他猟兵が扱う音系のユーベルコード類は一瞬にして威力増加が起きます。
なお飛翔、キャバリアの使用は問題なく使用可能となっております。
・ライアーについて
彼は猟兵達の指示に従い、『嘘つきライアー』の戦い方と『黒鷺ライアー』の戦い方を使い分けて支援してくれます。
『嘘つきライアー』はスピーカー類にハッキングを仕掛け、ハウルホッパーの持つユーベルコードの音に対抗する音を鳴らす戦術を。
『黒鷺ライアー』は自分の意志に従って自由自在に操れる鎖をいくつか操り、肉弾戦と遠距離攻撃を扱う戦術を使います。
ただし、彼は一度にどちらかの戦術を取ることしか出来ません。その点だけはご注意ください。
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リーベ・ヴァンパイア
君は今こうしてこちら側(ヒーロー)に立っている。……それで充分に償いになっていると俺は思う。ゆえに
ーー気持ちよく戦おうではないか、『黒鷺ライアー』。共に、ヒーローとしてな。
まずはあの音をどうにかせねばな。彼にヒーローとして戦ってくれと言った手前、俺がどうにかせねばな。
……まあ、あれだな。
ーー単純に壊すとするか。
作戦
そちらが音でこちらを妨害するなら、こっちはーー視線で妨害させて貰うとしよう。【高位種の眼】で奴へと【精神攻撃+マヒ攻撃】を仕掛ける。
どうだ? そんな状態では歌うのに集中出来ないだろう?
そうして奴を妨害しながら【Bloodline】でスピーカーへと攻撃だ
ーーさて、後は任せたぞ、ライアー
●必要ならば、黒鷺は現れる。
『嘘つき』と『黒鷺』、どちらのライアーもお互いを睨みつけて動く気配はなく、数分が経過。ライアー本人はどちらの力を使って戦うかを考えあぐねているようで、額から汗がわずかに滴り落ちる。
対して隣に立っていたリーベは、先程のライアーが言った宣言に対してはっきりと『君はこうしてこちら側に立っている』と言い切った。2度とヴィラン側へは行かないという強い意志をはっきりと感じ取ったと。
「それで充分に償いになっていると、俺は思う。……故に、気持ちよく戦おうではないか。『黒鷺ライアー』。共に、ヒーローとしてな」
「……ああ、そうだな。『嘘つき』は今はいらない」
リーベの力強い後押しに、ライアーは指を鳴らして何処からともなく鎖を呼び寄せる。ヒーローとして立ち上がったその瞬間に手に入れた力をもって、目の前にいる嘘つきを倒すと約束するかのように。
「ふ……っざけんな。アンタの評判、こっち側に傾けてやろう思って準備してきたのに……今更、ヒーローヅラかぁ!?」
ヒーローとして立ち上がったライアーに対し、『嘘つきライアー』――もとい『鋼の鷲』ハウルホッパーはキレた。彼がヴィランとして戻ることがないのならば、あとは、もうライアーという過去の悪を知らしめることだけが自分の役割だと言わんばかりに。
背後に並ぶ巨大スピーカーにコードを突き刺し、ハウルホッパーは歌う。
大音量の音をかき鳴らし、天へ暮れる男の歌を歌い、己の力を上げるように。
大音量の音をかき鳴らし、光の色を探す心を壊す歌声を響かせるように。
ライアーの鎖を弾き飛ばし、リーベの一撃を軽々と躱し、ハウルホッパーは軽快な動きを交えて彼らを翻弄し続けていた。
「なるほどな、音でこちらを妨害か。……ならば、こちらは視線で妨害させてもらうとしよう!」
己の眼を高位種の眼へと切り替え、精神攻撃には精神攻撃を返すと言わんばかりにハウルホッパーをにらみつけるリーベ。音のかき鳴らしをやめろと言う圧を乗せて、頭の中を痺れさせるような視線はハウルホッパーの頭の中までぐるぐるとまぜこぜにしていく。
「くっ……この程度で俺が止まるとでも!?」
「ああ、思っちゃいない。だが、歌うのには集中できないだろう? ……それに、今必要なのは――これだな」
リーベはこの状況にとある必要性を感じ取ったのか、ユーベルコード『Bloodline』を発動させて109本の赤い矢を呼び寄せ、それら全てを大音量で音を鳴らすスピーカーへとぶち当てる。
ガン、ガン、と矢が当たる度に音にノイズが走り、まともにハウルホッパーの歌声を届けられない。それに焦り始めたハウルホッパーの表情を見て、リーベはただ一言、ライアーに向けて告げた。
「――さて、あとは任せたぞ。ライアー」
黒銀の鎖がじゃらり、じゃらりとまとわりつく。
己の過去を封じ込める檻を形成するように。
大成功
🔵🔵🔵
ベアータ・ベルトット
あの音は厄介ね…
ライアーの鎖にスピーカーを追って貰って、遠隔操作を牽制しましょ
機関の制限を解除、駆動音を激化させ耳を塞ぐ。餓えは生への渇望―狂気耐性で自殺衝動に克ち、眼帯を外して舌で音を受け止めるわ
BFを射出してコードを切断。再生するでしょうけど、一瞬でも音が止んだ隙を見逃さず、敵にUCを発射
その影響で遠隔操作が鈍るかも。ライアーの鎖が捕縛してくれたら、両腕の機関銃・光線を斉射しスピーカーの破壊を試みる
過去に留まり続けてる上に、他人の過去の真似事しか出来ないなんて…私がアンタでも死にたくなるわね
―支えてくれたみんなの為にも
黒鷺ライアー!過去を断ち切る力を、ソイツに思いっ切りぶつけてやりなさい!
●過去は、切り落とす。
「くぅ……!」
あたりに広がる歌声と音に一瞬だけ耳をふさいだベアータ。『鋼の鷲』ハウルホッパーが放つ歌声には様々な衝動を湧き起こすものが含まれているようで、長く聞き続けると危険だと脳が信号を発していることに気づいていた。
このままではまずい。そう判断したベアータは機関の制限を解除し、駆動音を激化させることでスピーカーの音を遮断、一時凌ぎではあるが安全圏を作り出した。
「っ……アンタの力、いただくわよ!!」
ハウルホッパーの自殺衝動を齎す歌声に抗いながら、音をユーベルコード『Bugbear's Eye C-type』によって発生した右眼から伸びる獣の舌で受け止める。
「流石にあの音は厄介ね……ライアー! 鎖であのスピーカーを追える!?」
「任せろ! そいつの相手をしばらく頼む!」
「任せなさい!」
黒銀の鎖がライアーの手元へ再び引き寄せられると、彼の意志にしたがって鎖はハウルホッパーの周囲に飛び交うスピーカーを絡め取る。ノイズが走る音と同時にライアーはスピーカーを引き寄せたが、ハウルホッパーの身体と繋がるコードによって彼も同時に引き寄せられていた。
「はははっ! 残念やったな、このスピーカーと俺は一心同体! つまりはスピーカーを寄せれば俺も引き寄せられるってワケや!」
「あら、じゃあ切ってしまえば問題ないわね!」
ライアーの下へ引き寄せられるハウルホッパーに1つ蹴りを入れた後、ベアータは体内に流れる液体状の刀・Brutal Fluidをコードに向けて射出。丁度蹴り上げる瞬間に切った故に、ハウルホッパーの身体は勢いよく空へと飛び上がって……。
「それと、これはお返しよ!」
先程喰らった音を空に打ち上がったハウルホッパーに向けて射出したベアータ。自分が発生源となる故に一瞬だけ自殺衝動が脳を支配したが、機関に備わった狂気耐性がそれを塞ぐ。
がしゃん、と1つだけスピーカーが落ちてくる。ひたすらにライアーに叩かれて、ベアータが発した音がトドメとなって壊れてしまったようだ。
「過去に留まり続けてる上に、他人の過去を真似しか出来ないなんて……私がアンタでも、死にたくなるわね」
過去は過去だと割り切ることの出来ない存在――ハウルホッパーに対して、ベアータは小さく呟く。ライアーを過去に留まらせるのが目的だとしたら、それは間違いなのだと示すかのように。
「さあ、黒鷺ライアー! 過去を断ち切る力を、ソイツに思いっきりぶつけてやりなさい!」
「言われずとも、やってやらぁ!!」
――己の未来ぐらい、自分で切り開くのが道理ってもんだ。
そう告げるように、黒銀の鎖が1つの刃を作り出した。
大成功
🔵🔵🔵
忌塚・御門
ったく。ヴィランの戦い方だろうが、それでヴィランを倒すんならお前はヒーローだろうが
つーわけで「嘘つき」の力を貸してくれや
具体的には「スピーカーから逆位相の音を流して、敵の音を相殺してくれ」
特に自殺衝動を齎す音!相殺しねぇとお前もやべえからな
「隠世の夢」で【忌塚御門は自殺衝動に捕われない】と書き現実化させて対策
は、自殺なんざ出来なかったから、俺は今小説家をやってんだよ
UCでスピーカーを【不可視の圧力】を現実化させて圧壊させて
【不可視の刃】を現実化させて敵本体を斬る
コード切っても再生するってんならお前を斬る以外に仕方ねえよな?
ま、俺はヒーローでもヴィランでも戦士でもねえから
綺麗な斬り方は出来ねえぜ
●その心意気に違いは無く
他の猟兵達の後押しで、ライアーは一撃を何度も何度も何度も叩き込んだ。それでもなお、『鋼の鷲』ハウルホッパーは嘘つきの真似をして反撃を繰り出していた。
「ほらほら、どしたぁ! 『黒鷺』ばっかやとつまらんやろが!」
「くそが……っ!」
いくつかスピーカーを落としたとは言え、まだその力は健在だ。自殺衝動を齎す歌声を放ち続けるハウルホッパーを前に、このままでは先に自分が脱落してしまう……そう考えていた矢先のこと。
「ったく。ヴィランの戦い方だろうがなんだろうが、それでヴィランを倒すんならお前はヒーローだろうが。無理に自分を抑え込んでんじゃねぇ」
御門が前に出て、隠世の夢にさらりと一筆書き連ねる。内容は『忌塚御門は自殺衝動に捕われない』の一言のみ。それ以外の効力はまた後でと言わんばかりに、現実化させて自殺衝動を耐えきっていた。
「お前……」
「ほら、とっととスピーカーから逆位相の音を流して敵の音を相殺してくれ。お前にしか出来ねぇことなんだから」
「……わかった。けど、流石に動いてる状態だと難しいぞ」
「任せろ。何のために小説家がここにいると思ってるんだ」
そう言うと御門は再び筆を執り、ユーベルコード『虚構からの猛追』を発動。不可視の圧力をスピーカーに与えて圧壊させ、その動きを止める。流石にまずいと動いたハウルホッパーの身体も、不可視の刃を作り出して縦横無尽に切り裂いていく。
ハウルホッパーの身体から伸びるコードは切っても切っても、何度も再生してしまう。ならばあとは本体を切り刻んでしまえばいい、というのが御門が導き出した最適解。あとはスピーカーの音をどうにかするだけだと、御門はライアーに視線を送る。
ふう、と大きく息を吐いたライアーは精神を集中させると何処からか伸びたワイヤーを自在に操り、ハウルホッパーのスピーカー1つを繋いでハッキング工作を開始。空中に浮かぶキーボードとモニターを使い、自殺衝動を齎す音を相殺させる音を入力して爆音で鳴らすように調整をかけておいた。
「ぎゃぁ!? なんちゅー音量出しとんねん!?」
「テメェが言えた義理かよ! おい、これでいいか!」
「ん、上出来だ。あとはアイツを斬っていくだけなんだが、なかなか上手く仕上がらねえなあ……」
上空で不可視の刃に打ち上げられては地面に叩きつけられてゆくハウルホッパー。自殺衝動を打ち消されてなす術もなくなった彼は、延々と、延々と、小説家の書いたシナリオ通りに事が運ばれていった。
『嘘つき』と名を付けられても、その心意気がヒーローであればヒーローなのだ。
それを証明した彼こそが、まさに真のヒーローと言えるのではなかろうか。
大成功
🔵🔵🔵
七詩野・兵衛
アドリブ等歓迎
この事件に対しては『黒鷺ライアー』への応援が
必要だと感じた応援団長として参加します。
戦闘中は基本的に応援団長として、
『黒鷺ライアー』君を支援する役に徹します。
『鋼の鷲』ハウルホッパーの攻撃に対し、
ユーベルコード「応援活法『生命流転』」を使うことで、
『黒鷺ライアー』を治療することで対抗。
「今の『黒鷺ライアー』君ならば、これで十分か?」
可能ならば、声援拡声器『大声疾呼』も使い声の相殺を狙います。
「我輩も声には自信があるのでなッ!」
最大の目的は、戦闘を有利に進め、
『黒鷺ライアー』君の勝利に導くこと。
その為なら、自身のある程度のダメージはやむを得ない。
●応援団長、駆けつける
幾人もの猟兵達が駆けつけた。いくつものスピーカーを壊した。けれどまだ『鋼の鷲』ハウルホッパーは倒れる様子はない。ライアーもハウルホッパーもどちらも息を切らす様子が見えるが、まだまだ戦いは終わらない。
「ちっ……タフすぎるだろ……」
「うるさいな。あんさんを真似してるだけでも結構しんどいねんぞ……」
ぜぃぜぃと大きく息を吸って吐く2人。どちらかが先に動けば、後の方が不利となるような状況。そんなライアーの背後から突如、大声が響き渡った。
「ライアー君、辛いとは思うがここが正念場だ! もう少しだけ頑張ってくれないだろうか!」
「……アンタは……?」
振り向いてみれば、そこにはいつの間にか七詩野・兵衛(応援狂?の空を舞う熱血応援団長・f08445)が駆けつけていた。しっかりとハチマキを締め、彼を応援するためにここに来たのだと兵衛は告げる。
他者への応援こそが、兵衛の真骨頂。故に彼はすべての攻撃を『黒鷺ライアー』に任せ、自身は後方支援を行うと言うが……ライアーは頭を抱えた。音に対抗する手段が難しくなる、と。
「黒鷺ライアーとして戦うなら、あの音をどうにかしねぇと……」
「その点に関しては心配ご無用! 我輩の声量を甘く見ないでいただきたい!」
「そんならその自慢の声量、どのぐらいのもんか見せてもらおうやないかぁ!」
背後の巨大スピーカーとコードを繋げ、己の力を増長させる歌を歌い始めるハウルホッパー。シンセサイザーの音源が辺りを包み込んだかと思えば、次に動いたのはまた別のスピーカー郡。
僅かに聞いただけでも対象の精神を狂わせ、壊し、廃人へと堕とす魅惑の歌声。ライアーも兵衛も狂わせてやると言わんばかりに声を張り上げたハウルホッパーは軽快に、魔性の歌声を広げていく。
さあ、どう動く。ハウルホッパーは笑う。
さあ、どう動く。兵衛は片手に何かを構える。
「――黒鷺ライアー。今の君ならば、これで十分であろう」
僅かな一瞬の間、2つの視線が交わり――そうして、辺りに広がったのは、声援拡声器『大声疾呼』によって大きく音量が上がった兵衛の声。
「……ここが、今こそが! 踏ん張りどころじゃあぁーー!!」
ビリビリと空間が揺れるその大声に思わずライアーも驚いたが、刹那、その身体を蝕んでいたはずの精神が修復されていることに気がついた。
これが、これこそが兵衛の支援。ユーベルコード『応援活法『生命流転』』によって気愛と情熱をのせた応援を聞いて共感した者達を癒やす、まさに応援団長の真骨頂!
歌声による侵蝕さえなくなれば、あとは『黒鷺』としての力を発揮するだけ。牙を剥いて笑うライアーは久しぶりの高揚感に、ただひたすらに感謝していた。
「はっ、ありがとよヒーロー! 応援なんてもんを受けたのは、いつ以来だろうなぁ!!」
「君が良ければ、我輩はいつでも駆けつけよう! そのための応援団長なのだからな!」
――応援されるのも、悪くはない。
そう笑った『黒鷺』は黒銀の鎖を振るった。
大成功
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平坂・火乃華
アドリブ等歓迎
音か、範囲は広い上に目にも見えない、それにだ、どうやらここは、音が通りやすいみたいだな、この環境は相手に有利ってワケだな。
被害を拡大させないためにも勝負、短期決戦に持ち込むのが得策とみた。
さて、まずは凍獣銀牙を発動、獣たちに奴の気を引いてもらう、長くは持たないだろう、持って1分弱って所か?、その間、【残像】で奴の死角を取り、隙を突いて、【軽業】で間合いを詰め、【餓狼闘気】を用いた【グラップル】でスピーカーを破壊し、そのまま離脱。
さぁて、最後の見せ場は譲るぜ、ライアー、仮にも鷲を名乗ってるんだ、過去の自分という名の獲物を狩ってみせろ、黒鷲ライアー。
●最後は華々しく、舞い踊れ。
「音か……」
周囲を確認する火乃華は考える。この場所はどうしても音の通りがよく、相手にとって非常に有利な場所だ。故に、幾人もの猟兵の手を借りて長く戦い続けているライアーにとっては既に状況は芳しくない。
だがそれは『鋼の鷲』ハウルホッパーとて同じ。何人もの猟兵達がライアーに手を貸し、スピーカーを破壊して来た故に、彼の声もそろそろ限界が近い。
これが最後の一手となる。それを判断した火乃華はライアーにアイコンタクトを取り、動きの制限を行うから自由に戦え、といった視線を送っておいた。
(とは言え、もうライアーも限界だ。彼には一直線に、ヤツを殴って貰ったほうがいいな)
火乃華は知っている。ライアーの全力はこんなものではない事を。過去彼と戦ったときはもっと軽やかで、黒銀の鎖もしなやかに彼の手のように動いていた。
けれど今は、長く続いた戦いで溜まった疲れが彼の動きを阻害している。このままでは彼が先に倒れてしまうと判断した火乃華はユーベルコード『凍獣銀牙』を発動。生命力と体温を代償に、複数匹の氷で精製された狼を呼び寄せる。
「さぁて、どうするかな、っと……」
視線を動かし、氷狼達に指示を与えた火乃華。ハウルホッパーの気を引くために縦横無尽に走り回ってもらい、ライアーへの攻撃を通さないように壁となるような動きで翻弄し続けた。
「狼呼んだところで俺の音を防げると思うなよ!!」
スピーカーと自身の肉体を繋ぎ、強い自殺衝動を齎す歌声を発したハウルホッパー。彼も酷く疲れている様子で歌っているが、それでも、ライアーと火乃華を潰すという勢いだけは止まらない。
「ああ、止められるとは思ってない。むしろ、そっちに視線を送った時点でお前の負けだ」
氷狼達に視線を向けたハウルホッパーは気づいた。氷狼だけが自分の視界に映るが……その氷狼を呼び寄せた火乃華の姿が何処にもない、と。
彼は氷狼達に縦横無尽に動いてもらっている間に、ライアーと共に死角となりえる場所を次々に飛び移ってスピーカーとの距離を詰めていた。頭の中に響く自殺衝動は餓狼闘気によって破壊のエネルギーへと変貌しており、1度の振り下ろしだけでほとんどのスピーカーを叩き落とした。
「さあて、最後の見せ場は譲るぜ、ライアー。仮にも鷺を名乗ってるんだ、過去の自分という名の獲物を狩ってみせろ!!」
火乃華の声に後押しされたライアーは、黒銀の鎖を大きく振りかぶる。
過去を撃ち落とし、現在の自分こそがこの地上に立つべき『ライアー』なのだとハウルホッパーに示すかのように。
●正真正銘のヒーロー
黒銀の鎖がハウルホッパーへ最後の一撃を叩き込む。
スピーカーが全て壊れ、もはやこれまでだと言うハウルホッパーが最後に気にかけたのは、ライアーがヒーローなのかヴィランなのかという点。
「これで……これで、あんさんの評判は地の底まで、落ちたはずや……」
「…………」
ふう、と大きくため息をついたライアー。どちらの評判となったとしても、それが住民の総意だというのなら仕方がないと言った様子だ。
しかしそのライアーの反応とは裏腹に、住民たちは皆、ライアーに感謝をしていた。
あとから来たほうが本物だったんだ。
やっぱりライアーはヒーローだったんだ。
偽物を倒したライアーはカッコイイ!
いろいろと言ってすまなかった。などなど。
そんな反応が返ってくる中で、ライアーは少々照れくさそうな顔をしながらも倒れ伏したハウルホッパーに向けて一言だけ言い切った。
「これが『黒鷺ライアー』だ。覚えとけ」
――その後、ハウルホッパーの姿は一旦消えた。
次に現れるのは、いつになるやら。
大成功
🔵🔵🔵