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傀猫

#UDCアース

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#UDCアース


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 ――猫に九生有り、と言う。
 現実には、そんなことはあり得ない。
 だが、これをもし、真にすることができたなら。
 一日一匹、それを九日間。
 九匹の猫の首を捧げて、復讐を希えば。
 神は九生を得て降臨し、その願いを聞き届けるだろう――。


「……自分を殺した憎い相手の願いなんて、猫も叶えたいわけないよ……」
 絞り出すように呟いた、カレル・レグロリエン(緑の夢に星を灯す・f36720)の表情は余りにも苦い。
「あ、急に呼び出してすみません。……UDCアースで、新たな邪神復活の予兆が見えたから、阻止をお願いしたいんです」
 と言っても、儀式は途中まで実行されてしまっている状況。猟兵たちには、儀式の完遂を阻止することで完全な形での復活を阻止、不完全に復活した状態の邪神を撃破して欲しいと言う。
「少し前から、ネットで猫の神の噂が流れ始めたんです。一日一匹、猫を殺してその首を毎日捧げて、九日目に九匹の猫の首が揃った時、復讐の神が願いを叶えてくれるって」
 復讐の神――否、邪神の名前は、首刎ねラトゥーリャ。
 かつて存在したと言う殺人鬼の都市伝説と、人間の戯れに命を奪われた猫の憎悪が交わった時、邪神は生まれた。その名の通り、憎悪と欲望の赴くままに人間を殺め、刎ねた首を蒐集する存在だ。
 それが何故、ネットで復讐の神に昇華されたのかは解らない。だが、放っておけば誤った噂に踊らされた犠牲者が増えてしまうだろう。彼女は間違いなく、人間を憎んでいるのだから。
「そんな彼女の無念に呼応したのかな、儀式……と言っても、台座に首を並べてるだけなんですけど、その付近まで転移した瞬間、皆さんは野良猫の大群に襲われることになります」
 敵意を剥き出しに、その牙で、爪で、猟兵たちを害そうとするだろうと。
 あくまでUDCでも、ましてや邪神でもない普通の猫なので、その襲撃で死ぬことはない。が、ここで撒いたとしても、邪神を倒さない限り、同じ場所を通る度にまた彼らは猟兵たちに牙を剥く。
「彼らを撒きつつ、台座を探してください。彼らは件の台座の近くには寄って来ないみたいですから、見つけた後の邪魔をされる心配はありません」
 そうして儀式の場に辿り着いたら、既に八匹の猫の首が並んでいるから、それらを取り除きつつ、儀式を完遂しようとする犯人を待ち構え、九匹目の首の設置も阻止して欲しいと。
「その場で埋葬したり、供養する暇はないでしょうが、邪神さえ倒せば幾らでも時間は取れますから……」
 犠牲となった猫たちには悪いが、まずは儀式の完遂阻止と邪神討伐を。
 そして猟兵たちが最後の首を確保したその時こそ、邪神は不完全ながらも姿を現す。彼女は同胞を九匹も手にかけた犯人を最優先に断罪しようとするだろう。
 思うところはあるかも知れないが、一般人である犯人を護りつつ、邪神に勝利するのだ。
「訳も解らないまま殺されたんです、彼女が人間を憎んでいても、僕らにそれを責めることはきっとできない。けれど、それでも、僕らは――」
 非日常から、日常を、護らなければ、ならない。
 どうか、お願いしますと、カレルは深く頭を下げた。


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあと申します。
 春頃から温めていたシナリオですが、自分でも犯人が許せなくなっている事態。
 ともあれ、今回は邪神復活儀式の阻止、及び邪神の討伐をお願いいたします。

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:冒険『夕闇鬼ごっこ』
 第2章:冒険『増える生首』
 第3章:ボス戦『首刎ねラトゥーリャ』

 第1章では、邪神復活の兆候にあてられた猫たちからの猛攻を躱しつつ、儀式の要である台座を探していただきます。
 台座がある地点には猫たちを撒くことができれば到達した扱いとなります(台座の捜索や地点の推理にプレイングを割く必要はありません)。
 また、餌で猫を懐柔させるなどは不可能です(餌をばら撒いて注意を逸らす等は可)。殺さず回避・逃走に専念してください。
 余談ですが、カレルは現場到着直後にグリモアの維持に影響が出ない程度の安全地帯まで逃走するため、護衛や救助プレは不要です。

 第2章では、猫の生首が並んだ祭壇から生首を回収、犯人を待ち構え、儀式の完遂を阻止していただきます。
 既に辺りは暗くなっておりますので、犯人に察知されない程度に光源の用意をお勧めします。
 この章に限り、いただいたプレイングの内容によってはお誘い合わせでない方々でも纏まって行動するリプレイとなる可能性があります。予めご了承ください。

 第3章では、不完全に復活した『首刎ねラトゥーリャ』との決戦を行っていただきます!
 攻撃されれば反撃しますが、儀式を行った犯人を優先して狙う傾向にありますので、護衛しつつの戦闘をお願いします。
 因みに犯人が復讐を願った理由は、些細かつ身勝手な逆恨みです。護衛の必要はありますが、詰問されれば悪態をつくような始末ですので、同情の必要はないでしょう。

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 戦闘パートの地形などの追加情報も、断章での描写という形で公開させていただきます。
 断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『夕闇鬼ごっこ』

POW   :    全力ダッシュで逃げる

SPD   :    カーブを曲がって逃げる

WIZ   :    ちょこまか逃げる

イラスト:シロタマゴ

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「……フーッ」
 猫の唸り声が聞こえる。
 転移した瞬間、猟兵たちは猫に取り囲まれていた。
 それを理解する――と同時に、猫たちが問答無用と言わんばかりに、一斉に飛びかかってくる!
 咄嗟に回避し、包囲の薄い点を見つけて突破する。その後は、皆ばらばらに動き出した。
 目指すは一点。儀式の現場。猫が寄ってこない区画を見つけたら、きっとそこに哀れな猫たちが待っている。
 一刻も早く、探し出さなければ。生きて仲間の敵討ちをと猛る彼らの怒りを鎮めるためにも。
 夕暮れの住宅街――人気はなく、まるでゴーストタウンだ――の中を駆け出す猟兵たち。
 その背を金赤に染める夕陽が、嘲笑うように憎らしいほどに、照り輝いている。
アウグスト・アルトナー
因果応報……と言いたいところですが
邪神からヒトを守るのは、ぼくらの使命ですからね

罪なき猫を傷つけず、動きを封じるのには、ちょうど良いユーベルコードがあります

最初に、自分の翼を羽ばたかせ、猫の攻撃が届かない高さまで逃げます

ホバリングしたまま、猫たちを対象に【嘘から出た実】を使用

「この周辺の道路は全て、トリモチに変化します。猫の皆さんの足裏は地面に貼り付き、動けなくなることでしょう」

これで猫たちは動けなくなるはずですが、仲間や自分自身には効果がないのがポイントです
ユーベルコードが効果を発揮したら、ぼくは地面に降りて駆け出しましょう

一度だけ振り向き
怒りに満ちた猫の視線を受け止めます
……謝りはしません




(「因果応報……と言いたいところですが」)
 飛来する無数の小さくも鋭い爪の乱舞を避けながらも。
 アウグスト・アルトナー(黒夜の白翼・f23918)も、グリモア猟兵として予知を受け取ることもあるから。
(「邪神からヒトを守るのは、ぼくらの使命ですからね」)
 今は、それだけに注力せねばと。
 身を翻すと、逃しはしないと追ってくる猫たちに。
(「罪なき猫を傷つけず、動きを封じるのには――、」)
 ああ、丁度いいユーベルコードがあると。
 加速する。そのまま地を蹴って翼を広げ、天に広がる金赤へと身を投げる。
 如何な猫の跳躍力を以てしても、羽持つ者の領域へは届かない。
 そのまま滞空するアウグストは、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。|虚言《うそ》の雨降り注ぐ如く。
「この周辺の道路は全て、トリモチに変化します。猫の皆さんの足裏は地面に貼り付き、動けなくなることでしょう」
 雨は真を芽吹かせ実を結ぶ。
 ぐにゃりと歪む|地瀝青《アスファルト》。
 灰は白に。猫たちの足が呑まれ捕われてゆく。
 アウグストは宛ら、預言の天使だった。
 悠々と地に降り立つ。だがその脚を、偽りの罠は絡め取らない。
 真実となるのは彼の言葉のみ。そう、猫たちの足、と明言した故に。
 今度は、空ではなく地を往く。振り向きざま、置き去りにしようとしている猫たちを顧みる。
 無数の双眸が、憤怒の色を湛えてアウグストを睨めつけ、唸り声を上げて威嚇する。
 ――逃げるな、卑劣者。
 そう、言われているような気がした。
(「……謝りはしません」)
 何も言わず、ただ、受け止める。
 ここで甘んじてその牙を、爪を受けようと、きっと彼らの憤怒は――無念は、収まらない。
 それに、たとえ同情の余地はあれどもこの先にて待ち受けるは、日常に害なす邪神なのだ。放っておけば、仲間の死に憤る彼らの生すら危うい。
 だから、せめて。
 彼らの仲間たちの無念を、晴らすのだ。
 その為にも、今は何を振り切ってでも、進まなければならない。
 アウグストは、もう振り返らなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
【WIZ】

闇色の狼の姿のUDC「ツキ」と梟の姿の精霊「ノクス」を伴って、現地へ。

今回ばかりは邪神に同情の念を禁じ得ませんが⋯UDC組織のエージェントとして、そしてこの世界に住む者としても、邪神復活は阻止しなければ。

「ちっ、数が多すぎるな」とツキが舌打ちして猫達の敵意を警戒して身構える。そんな彼を制して。
敵意があるにせよUDCでもない普通の猫達ですから、攻撃する訳にはいきません。
ここはノクスの力を借りましょう。

【指定UC】で猫達を眠らせることで、無傷で無力化。魔力が齎す眠りに逆らうことは難しいでしょう。
暫くは目は覚めないでしょうが、速やかにその場を後にします。




「――ちっ、数が多すぎるな」
「ツキ」
 忌々しげに舌打ちひとつして、向けられる小さくも夥しい敵意に警戒し、身構える|闇色の狼《UDC》。
 シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は短く彼の名を呼び、制した。
「敵意があるにせよUDCでもない普通の猫達ですから、攻撃する訳にはいきません」
「解ってるよ……仕方ねぇな」
 渋々、といった体で引き下がるツキを認めて、シンも今再び、攻撃の機会を窺いじりじりと迫り来る、猫たちを見据える。
(「今回ばかりは邪神に同情の念を禁じ得ませんが……」)
 殺された挙句、人間たちの身勝手な都合で神へと祭り上げられ願いを押しつけられる――待ち受けているのは、そんな哀しき存在の集合体だと言う。
 神とされたその存在たちも、彼らの死を嘆き人間を敵と恨むその同胞たちも、今回ばかりは被害者だ。
 ――だが、それでも。
(「UDC組織のエージェントとして、そしてこの世界に住む者としても、邪神復活は阻止しなければ」)
「だが、どうするんだ? こいつらはやる気だぞ」
 ツキの言葉通り、少しでも隙を見せれば猫たちは今にも飛びかかってきそうだ。
 しかし、一触即発の空気にもシンは冷静に、傍らの精霊へと呼びかける。
「ここはノクスの力を借りましょう」
 ツキと共に、シンが伴い連れてきたのは梟の姿の精霊。月と闇――即ち、眠りによる安息を齎す者。
 冠する名を、|夜《ノクス》と言う。
「我が友、月と夜の精霊ノクスよ。眠りと癒しの力を貸し与え給え――」
 刹那、黄昏の色に染まる街へと俄に夜の帳が降りる。
 精霊は羽ばたきと共に仮初の夜を喚び、抵抗の術なき者に入眠を促す。それは魔力の天蓋、UDCでもなければ使い魔でもない野良猫たちは、一匹、また一匹と、ぱたりぱたりと夢の世界へと堕ちてゆく。
「これで、無傷で突破出来ます。――互いにね」
 やがて、シンたちを取り囲んでいた最後の猫が抵抗虚しく眠りへと沈んだのを見届けてから。
 暫く目覚めないであろうことを確信し、彼らは速やかに儀式の場を目指し、その場を後にする。
 ――その行く先は再び、茜の色に照らされつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
ネフラさん(f04313)と

復讐の為に猫ちゃん達を殺すなんて許せません!
猫を殺すと祟られるという話を知らないのでしょうか。
祟りは本当にあるのです、私が祟るから間違いありません!

という訳で犯人にはきっついお仕置きをしますよ。
あとついでに邪神討伐も。
(ゴゴゴ…って感じで怒りのオーラが湧いております。)

まずは台座を探します(失せ物探し)。
途中で襲ってくる猫ちゃん対策として、《慈眼乃光》で友好的になれるように。
それでも襲ってくる事を止められないのであれば、ゴムのように柔らかい触感のオーラ防御を展開して、猫ちゃんも自分も怪我しないようにしますよ。

その上でネフラさんにご対応をお願いして、先に進みましょう。


ネフラ・ノーヴァ
詩乃(f17458)と共に。
愛すべき猫を傷つけようとは全く許せないな。
一切構わず括り上げてやりたいものだが、ひとまず事態を鎮めねばな。
ああ、詩乃が祟ると怖いことになりそうだ。

第一波は詩乃に任せよう。
なお迫ってくる猫があれば、猫パンチは見切りで躱しつつUC聖晶血界で眠りに誘う。猫は後でモフらせてもらいたいものだ。
死の匂いが濃くなればやがて件の台座が見つかるだろう。




「愛すべき猫を傷つけようとは、全く許せないな」
「ええ、復讐の為に猫ちゃん達を殺すなんて許せません!」
 猫たちは、怒っていた。
 そして、大町・詩乃(阿斯訶備媛アシカビヒメ・f17458)とネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)も怒っていた。
 詩乃は明らかに、ネフラは静かに――ではあったが。
 台座を探すその最中に遭遇した、可愛らしい猫たちの群れ。二人は今、囲まれているのだ。
 本来ならば美味しいシチュエーションだが、今の彼らは二人に憤怒と敵意を向けている。それは悲しいことだ。しかし彼らのその感情の理由は、人間の悪意によって生じたものであるという事実。
 彼らの怒りも尤もだ――と思うと同時、犯人への怒りもふつふつと湧いてこようと言うもの。
「一切構わず括り上げてやりたいものだが、ひとまず事態を鎮めねばな」
「それにしても猫を殺すと祟られるという話を知らないのでしょうか。祟りは本当にあるのです、私が祟るから間違いありません!」
「ああ、詩乃が祟ると怖いことになりそうだ」
 猫が祟らずとも自分が祟る。そう言ってのける女神様である。確かに怖い。言葉の重みがまるで違う。
 まあ、それだけのことをしている犯人であるわけで。ネフラも怖いと言いつつ玲瓏たる美貌のまま涼しげな顔だし、止める気はない。
「という訳で犯人にはきっついお仕置きをしますよ。あとついでに邪神討伐も」
 犯人への制裁が主目的になってしまった。
 だが、致し方あるまい。猫を虐げ剰え命を奪った、その罪は重いのだから。
 ゴゴゴ……と怒りの炎が詩乃の背から見えるようである。そんな彼女にネフラは一先ずこの第一波を任せることにした。
 彼らは相変わらず二人を威嚇していて、張り詰めた緊張の糸が切れれば即座に飛びかかってくるだろう。
 だから、詩乃は彼らを刺激しないよう、敢えて動かなかった。代わりに、怖くない、自分たちは猫を害さない、寧ろ護りたいのだ――そんな気持ちを乗せて、慈愛の光に満ちた視線を荒ぶる猫たちへと向けた。
「……にゃ?」
「にゃあん?」
 猫たちの警戒が和らぐ。
 ユーベルコードへの抵抗の手段を持たない彼らに、効果は覿面だった。
 デレデレに甘えてこそこないが、二人に近づいて匂いを嗅いだり、傍でじっと見上げたりしてきている。
「可愛い……!」
「うむ、やはり猫はいい。後でモフらせてもらいたいものだ」
 念の為、詩乃は柔らかい触感のオーラで身を纏い、ネフラもいつでも攻撃を躱せるよう構えていたが、詩乃のユーベルコードが働いている限りは大丈夫そうだ。
 その効果は二分より少し長め。残念だが今は頭や喉を一撫でするだけに留める。
 邪神を討ち、そして犯人にも然るべき制裁を加えることが出来たなら、彼らも真の意味で心を開いてくれるだろうか?
「目が醒める頃にはすべて終わらせよう」
 猫たちの怒りが再燃する前に、ネフラの凝血結晶に生じた聖片から放たれた神性の結界が、猫たちを優しい夢の世界へと誘う。
「名残惜しいですが……行きましょうか。犯人……いえ、まずは台座を探しませんと!」
「そうだな。死の匂いが濃くなれば、やがて件の台座が見つかるだろう」
 眠る猫たちに、せめて今だけは全ての怒りも憂いも忘れて仲間たちと素敵な夢を見られているよう、願いつつ。
 二人は再び、目的の台座を目指して金赤の街を駆けてゆく。
 一刻も早く、この悲しい事件に終止符を打つ為にも。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイア・シビック
アドリブ、連携OK

都市伝説ってどこの世界にもあるんですね。私の世界にもありました。

それと、よく犬派?なんてよく言われますけど猫派なんです、傷つけたくはないですね。

猫を撹乱させるためにUCを使用。
青薔薇の花びらで多少混乱しているうちにオルトリオの羽で逃げてしまいまいましょう。

カーブを曲がって、振り返ってみますが謝ってもどうしようもないこと。邪神復活を止めることが私の『役目』なのでしょうから。

さようなら、猫ちゃんたち。罪なき哀れな子たち。




 純粋な恐ろしさと、何処か危険な魅力を孕んだ実在するかも不明瞭な話。それが都市伝説。
 そんな都市伝説に踊らされて、一人の人間が道を踏み外し、猫たちが人間――そして恐らくはそれに親しい種族も含めて――への不信を募らせている。
(「都市伝説ってどこの世界にもあるんですね。私の世界にもありました」)
 この手の話はどこにでも存在するものなのだなと、レイア・シビック(青薔薇の御旗・f38203)はしみじみと感じざるを得なかった。
 とは言え、彼女がこの事件を解決しようとこの世界にやってきた理由は、その類似性への興味意外にもあり。
(「よく犬派? なんて言われますけど猫派なんです、傷つけたくはないですね」)
 だから、この痛ましい事件も放っておくという選択肢はレイアにはなかったし、目の前の猫たちの怒り、その裏側にある不安も取り除いてあげたい。
 その為にも、ここは猫たちを害することなく、尚且つ素早く切り抜けなければ。
 赤く焦がされたような天へと、青薔薇の旗はためく槍の穂先をかざす。蒼く塗り替えるように。
「――空に舞いなさい、蒼穹の花」
 茜天を四度貫く。
 本来ならば敵を確実に仕留める為の|技《ユーベルコード》だが、今回は刺突と共に舞う花こそが鍵。
 踊りかかる猫の顔へと花弁がぶつかり視界を阻む。彼らの動きが乱れたところで翼を広げ飛び去った。
 一度だけ、振り返る。
 猫たちの怒りは未だ収まらず、それでも。
(「謝ってもどうしようもないこと」)
 猫たちの仲間を害した人間は別にいる。きっと彼らも、それは理解しているのだ。
 だからこそ、レイアの謝罪を求めてはいない。ただ、彼らは信じることが出来なくなってしまっているだけ。
 彼らの信用を取り戻すには、このような事件が二度と起こることのないよう、噂の元を断つしかないのだ。
(「即ち、邪神復活を止めること。それが私の『役目』なのでしょうから」)
 だから、ごめんなさい、は言わない。
 彼らのために出来ることは、この先にあるから。

「さようなら、猫ちゃんたち。罪なき哀れな子たち――」

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『増える生首』

POW   :    張り込みで生首が増える現場を押さえる

SPD   :    監視カメラや罠を仕掛けて関係者を確保する

WIZ   :    噂やネットの情報等から次に増えるタイミングを推測する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――|天は薄明《マジックアワー》。
 怒れる猫たちを振り切って、猟兵たちが辿り着いたのは、シャッター街の路地裏にある、八つ首並ぶ台座と呼ぶには余りに粗末な薄汚れた横長の箱の前。元が何の役割を担っていたのかも最早解りはしない。
 首は全て、猫のものだった。
 老いも若いも、雌雄も品種も何も問わず、ただそこにいた猫と言うだけで無造作に選ばれたのだろう、法則も何もあったものではない哀れな命の成れの果て。
 凶行と呼ぶに相応しく、捨て置くわけにはいかない。
 任務の達成も然ることながら、犯人を野放しにはしておけないという思いを持つ者もおり、ならばやはり台座をどうにかするのみならず、犯人を捕捉すべきかと。
 猟兵たちは、それぞれの策を胸に、枝分かれする路地の影に、身を潜ませる。自己を満たそうとするばかりの傲慢な人間が、何も知らずに仕上げにかかるのを、今か今かと待ちながら。
 そして、程なくして日は落ちる――。
シン・クレスケンス
【SPD】

痛ましい光景に目を伏せ。
首だけになった猫の頭をそっと撫で、もう少しだけ待っていてくださいね、と呟く。

猫達の首を先に回収しておくのに異論はありません。
けれど、ある筈の首が無くなっていたら犯人に警戒されそうですので、僕が偽物を作りましょうか?(【指定UC】)
核を埋めていなくても、暗い中で懐中電灯程度の光源ならばある程度近付くまで偽物と気付かれないでしょう。

【逃亡阻止】の為に、入口に近い場所に位置取って【闇に紛れる】ように息を潜めます。ツキもおとなしく傍に控えているようです。

犯人が通り過ぎるのを一旦は待ってから、逃げようとしたら出ていきます。
もしくは、猫達を傷付けた得物を手元に持っているでしょうから、それを取り出した時点で行動。
攻撃を【受け流し】て、【早業】で相手の手を捻り身動きを制限し。
九匹目の首も確保ですね。
ついでに得物を取り上げて、遠ざけておきます。

こういう眼は幾度となく見てきました。真偽が定かでない噂にすら頼る一種の狂気―
⋯この犯人は相手に直接向かう度胸は無い小物でしょうが。


アウグスト・アルトナー
光源として、『零れ灯』を首に提げておきます
手で触れるだけで灯せる、ペンダント型の鉱石ランプです

猫の首には、十字を切って祈ります
そのくらいの時間はあるはずです

台座からどけておかないといけませんが、地面に転がしておくのも可哀想ですね

持参したピクニックバスケットの中に、猫たちの首を入れ、蓋を閉め、台座から少し離れた場所に置いておきます
「後で必ずお弔いしますから、少しの間だけそこでお待ちください」と声がけを

零れ灯に触れて消し、身を潜め、犯人を待ち構えます
来たら、「主よ」とだけ【聖なる詠唱】
一瞬だけ、心身に痛みを与えます
隙を作った後は、他の仲間にお任せします

9匹目の猫の首も、バスケットにしまっておきます


大町・詩乃
ネフラさん(f04313)と

現場の惨状に怒りに震えますが何とか自制します。
二度と繰り返さない様にしないと!
怖いイメージ作りで邪神様なりきりセットに着替え。

ネフラさんと一緒に姿を消して現場で張り込み。
結界術で音が現場から外部に漏れないようにする。

犯人が来て、証拠(新たな猫の生首?)を確認したら、念動力・捕縛で犯人の動きを抑えます。

姿を現して、猫のように手招きする都度、少しずつ念動力で犯人を傍まで引き寄せて恐怖を与える。

「己の身勝手で猫を殺した罪に罰を与える。」の言葉と共に、”とても痛いけれど骨折や後遺症は無い範囲の”《改心の一撃》で張り倒し、「これで悔い改めなければ…判りますね。」と告げますよ。


ネフラ・ノーヴァ
詩乃(f17458)と共に。
これが祭壇か、儀式を成すのであればもっと飾るべきだろう。奪った者への敬意が感じられないな。
首の一つを手に取り額に弔意の口付けを落とす。

UCクリスタライズで片腕を詩乃へ回し共に透明化、待ち伏せる。
犯人が現れれば素早く後ろに回って取り囲む。刺剣は脅しのために見せよう。

詩乃の仕置きが完了すれば、命は大事にするものだよ等と犯人に声をかける。


草剪・ひかり
POW判定
お色気、キャラ崩し、即興連携等歓迎

この後の戦闘を想定して、愛用の戦闘服=リングコスチュームの上に薄緑のサマーパーカーを羽織って現場近くで張り込み

まぁ、理性的に考えればカレルの言う通り
こんな「儀式」で望みが叶うなんてまともじゃないわ
或いは、既にまともでいられない程、復讐しか考えられない状態に追い込まれてしまったか……

いずれにしても、こんな凶事を放置するわけにはいかないし
「犯人」が現れたら、そっと腕を掴んで確保しましょ

私も猫が好きだから、アナタに同情したくはないけど
幸か不幸か「野良猫を殺した」だけのアナタはまだ犯罪者じゃないのよね

だから私は……理性を持って、アナタを守って魅せるわ




「……本当に……本当に、すみませんでした……」
 路地の暗がり、幾つかの僅かな灯りだけが照らす中、男が地べたに伏せり土下座――と言うよりそう見えるような形で蹲りながら、呻き混じりの情けない声を上げていた。
 一体、男に何が起きたのか。
 話は、まだ完全に日が落ちる前へと遡る――。


 そこにあったのは、首だけの無残な姿となって尚、無造作に打ち捨てられたにも等しい扱いを受ける猫たち。
 余りの痛ましい光景に、シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は思わずそっと目を伏せた。
 出来ることなら今すぐ弔ってやりたい――そう思わせる凄惨な光景。だが、もうじきこの悲劇の幕を上げた犯人がここにやって来る。時間はない。
「――もう少しだけ、待っていてくださいね」
 せめて少しでも心安らかにと願って、首だけになった猫の頭をそっと撫で、静かに呟いた。
 傍らでは、アウグスト・アルトナー(黒夜の白翼・f23918)もその死を悼み、一匹一匹ずつ丁寧に、十字を切って祈りを捧げていた。
 その首には、カンテラ型の|零れ灯《ランプ》が揺れている。手で触れるだけで罅入り鉱石が生む唯ひとつの光が灯るペンダントランプだ。
 一匹ずつ、苦しげな顔が照らされるごとに、その想像を絶する酷さに大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)の表情が、憤りとも哀しみともつかない苦いものを深めていく。
 彼女と共に現場に辿り着いたネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)も同じく心を痛めていたが、詩乃の胸中を察してその背に触れ、寄り添った。
 詩乃の身体は震え、それでも背中に触れる|友《ネフラ》の手の感覚にも助けられ、何とか自制する。
「こんなこと、二度と繰り返さない様にしないと……!」
「勿論だ。しかしこれが祭壇か」
 命を奪って行われるこれは儀式などではない、ただの殺戮だ。それでも、儀式の体を取るのであればせめて、もっと犠牲にした命を敬い、相応に飾り奉るべきだろうと、ネフラは思わずにいられない。
「奪った者への敬意が感じられないな」
 アウグストの弔いが済んだ猫の首のひとつを手に取り、弔意を込めてその額に口づける。これで全ての無念が晴れるとはネフラも思っていないが、せめて身勝手で横暴な人間への恐怖に塗れて命を落としたであろう、その小さな魂への慰めになればと。
「それにしてもこんな酷い……話には聞いていましたが、猫ちゃんたちが可哀想です」
「そうね、儀式の阻止が目的ではあるけど、それを抜きにしてもこのままにはしておきたくないわね」
 人智を超えかねない妖艶さで畏怖すら感じさせる黒絹のドレス――曰く、邪神様なりきりセット――を身に纏いつつも、今はまだ猫を愛するゆえの当然の憤りを見せる詩乃のその言葉に、草剪・ひかり(次元を超えた絶対女王・f00837)も同意を示した。
 かく言う彼女も、豊かながらも鍛え上げられた肢体を愛用の|戦闘服《リングコスチューム》に包み、更にその上から薄緑のサマーパーカーを羽織った出立ちで、詩乃とは別種の健康的な色気を匂い立たせている。
 ともあれ、二人の言葉に同意せぬ者はなく。
「確かに、台座からどけておかないといけませんが、地面に転がしておくのも可哀想ですね」
「けれど、ある筈の首が無くなっていたら犯人に警戒されそうですので、僕が偽物を作りましょうか?」
 頷くアウグストに、シンが提案する。自分のユーベルコードの力で、それが出来る筈だと。
 本来ならばシンの血液を素とし紋を刻んだ核を埋め込まなければ、作りの荒い出来になってしまうのだが。
「核を埋めていなくても、暗い中で懐中電灯程度の光源ならばある程度近付くまで偽物と気付かれないでしょう」
「では、よろしくお願いいたします。本物の首は、僕が安全な場所に移しておきますね」
 アウグストが持参したピクニックバスケットの中に、猫たちの首を入れるのを、詩乃とネフラ、ひかりも手伝う。その間にシンはユーベルコードを発動し、猫の首の|模型《デコイ》を作り上げる。
 やはり、リアルテイストに寄せたぬいぐるみ感が否めない出来となってしまったが――光源を隠してしまえば暗がりの中ではすぐにすり替えられているとは解らないだろう。
「後で必ずお弔いしますから、少しの間だけそこでお待ちください」
 バスケットの蓋を閉め、台座から少し離れた場所にそれを安置したアウグストは一声、そう告げて、女性陣と今度はシンの作った模型を並べる作業に加わる。
 そうして、遠目には先程までの惨劇と何ら変わらぬ光景が再現された。
「さあ、きっとそろそろね。隠れましょう」
 ひかりが建物の影に身を隠すのに倣って、各々が台座の近く、すぐに飛び出せる物陰に潜む。
 シンは逃亡阻止も兼ねて、路地の入口付近に位置取る。大人しく傍に控えるツキと共に、闇に紛れるようにして息を潜め、時を待つ。
 アウグストは台座の少し手前の物陰へと。掌を零れ灯へと添え、指先で触れると煌めきは鳴りを潜めるようにふと消えて、影がその姿を隠す。
 詩乃とネフラは――何と脇道に入ったものの、影に身を隠すことをしなかった。だが、問題もない。ネフラが片腕を詩乃へと回すと、ユーベルコードの恩恵で詩乃諸共その姿が世界に透けるように消え失せたのだ。同時に詩乃は結界を展開、ここで発生するであろう音を外界から遮断する。
 それを見届けて――ひかりは、犯人が何故、このような凶行に及ぶに至ったのか、思いを馳せる。
(「まぁ、理性的に考えればカレルの言う通り、こんな『儀式』で望みが叶うなんてまともじゃないわ」)
 ひかりたちをこの場に送り届けた、グリモア猟兵の言葉を思い出す。
 ――自分を殺した憎い相手の願いなんて、猫も叶えたいわけない。
 冷静に考えれば、そのようなことは誰だって思い至るはずだ。そして、思い留まることだってできるはず。
 だが、実際に今回の犯人は、こうして行動に移してしまっている。
(「或いは、既にまともでいられない程、復讐しか考えられない状態に追い込まれてしまったか……」)
 そうなるに至った状況はどうあれ、それほどまでの怒り、ないし狂気を抱えてこの儀式は行われた。
 どんな結末が犯人を待ち受けていようと、その事実を心得、事に当たらなければとひかりは決意を新たにして――その時。
 靴音が、路地裏に響いた。


「はーやっと最後だよ……噛みつかれるわ引っかかれるわシャーシャー煩いわ血腥いわ……最悪だったなァ。でもそんな生活とも今日でおさらばだ。あの調子乗った勘違い野郎ともな」
 現れたのは、頬に引っかき傷を負った、壮年に足を踏み入れたばかりと思しき中肉中背の男だった。モノトーンのよれたスウェットにチノパン、顎に無精髭を生やした姿は傍目には不健康に見える。
 片手にはコンビニの袋を下げている。不透明で中身は見えないが、恐らくあれが最後の猫の首だろう。
「しかしホント、なんであんなのがいいんかね。まあコメ欄なんか信者しかいないんだから当然か。さて、お猫様、何卒よしなにお願いしますよーっと……」
 袋から猫の首を取り出し、雑に台座もどきの上に並べると、ぱんと一拍。
(「――ええ、罪悪感の欠片もなさそうですね!」)
 その様子に、にこやかに詩乃の怒りは容易く頂点に突破した。
「主よ」
 同時に、アウグストが短く唱える。
 自分にも聞こえるか聞こえないか、囁きよりも密かな声で。
 憐れみたまえ――その言葉は今は胸に留めて。
「ん、何だ……?」
 ちり、と。
 男の胸に、痛みが現れる。
 自分より遥かに弱いものの命を奪ったのだ。表面上は何も感じていなくとも、その事実に対する罪悪感――或いは、それが本当になかったとしても、本能的な恐怖は。
 決して、拭い去ることはできない。
 その、一瞬の迷い、躊躇いの隙を突いて。
「――おいでなさい」
「ッ! ……え!?」
 女性の、しかし地の底から響くような低い声が響く。
 反射的にそちらを向こうとした男だが、何故か自分の意思では動くことが叶わなかった。代わりに、自身の意図とは別に身体がゆっくりと声の源へと向き、命ぜられるままに一歩、また一歩、前へと歩み寄る。
 男の瞳には、美しくも怖ろしい、黒衣の|邪神《かみ》の姿が映っていた。
 ――尤も、本来の彼女は邪神などではないのだが、怒りの余り邪神に転じてもおかしくないと自身で思えるほどの憤怒が、より彼女を畏れるべき存在へと仕立て上げていた。
「罪深き人間。その顔を、近くで見せるのです」
 手招き、ひとつ。
 その度に、歩は進む。逃れたいと願っても、神の意思の前には決して叶うことはない。
 一歩、また一歩。
「ひ……」
 恐怖が、頂点にまで達した――ところで。
「これで懲りたかしら?」
「あ」
 横合いから現れたひかりが、そっとその腕を掴んだ。意図してかせずか、その豊満ながらも張りのある胸が男へ通し当てられる。
 これは、最後の一線だ。男が感じた痛みが、ただの恐怖でなく、少しでも良心が混ざっていたのなら。罪悪感が、あったのなら。
(「私も猫が好きだから、アナタに同情したくはないけど。幸か不幸か『野良猫を殺した』だけのアナタは大きな罪には問えないのよね」)
 裁かれることになったとて、残念ながら精々が罰金、懲役刑となっても一年か、長くて二年で済んでしまうだろう。
 人間社会にとって、犬猫の命は人のそれより遥かに軽い。だから後は、本人の良心に委ねるしかないのだ。
 それでも、非日常からは守られるべき存在。ならばせめて、まだ痛む心があればと思わずにいられなかった。
(「だから、私は……」)
 戸惑う男に、諭すように語る。
「理性を持って、アナタを守って魅せるわ。もう、こんなことはやめましょう?」
「う……あ」
 何が何だか解らなくなっている様子の男。
 そんな男の背後に、姿を見せたネフラがそっと近づく。ここで拒んで逃げればどうなるか、と言わんばかりに刺剣をちらつかせながら。
「このまま大人しく儀式を諦めるなら、手荒な真似はしないさ。どうする?」
「わ、解った解った! やめるよ……」
 慌てて片手を上げる男。
 それを受けて、ひかりも手を離し、ネフラも剣を収める。
 男は――そのまま、ネフラを突き飛ばして逃走した!
「に、逃げるが勝ちだ! くそっ最後の日にどうしてこんなことに!」
 その後ろ姿に、ひかりはひとつ、溜息を吐いた。
「……残念だわ」
 ひかりもネフラも、取り逃がしたと慌てる様子はなかった。
 ――逃げられないと、知っていたから。
「そこまでです」
「んなっ!?」
 逃げ道を塞ぐように、姿を現したのはシンとツキ。
 突然のことに男は目に見えて驚くが、咄嗟に猫の首を切るのに使ったのであろう、血塗れのナイフを取り出した。
(「よりによって、あんなもので……もう少しマシなものがあったでしょうに。猫たちも、必要以上に苦しめられたのでしょうね」)
 ならば、遠慮は要らぬ。
「うわああああああ!!!!!!」
 無闇矢鱈に振り回される刃を軽々受け流し、目にも留まらぬ早業でその手を取り捻り、締め上げる。
 そのまま、地面に組み伏せ取り押さえた。落ちたナイフも素早く柄を蹴り飛ばし、ひかりがそれを拾い上げた。
「い……痛い痛い痛い!!」
「猫ちゃんたちは、もっと痛かったですよ……」
 表情に隠せぬ怒りを滲ませたまま、詩乃がその眼前に進み出る。
「己の身勝手で猫を殺した罪に罰を与える」
「ぐえ!!」
 詩乃が宣告する――と、同時にぱんと張られる男の頬。
 途端に男は、先程の胸の痛みとは比べ物にならない威力の激痛に見舞われた。頬だけでなく、全身に伝搬するほどの。
 死にはしないが――寧ろ死ねた方がマシなほどの痛みが、男の中で反響するように蝕む。この痛みから逃れられるなら、何でもする。そう思わせるほどの生き地獄。だってこれは罰なのだから。
「これに懲りたら、命は大事にするものだよ」
「……うう……」
 微苦笑を浮かべながら、声をかけるのはネフラだ。
 人智を超えた裁きを受けたのだ。無碍になどできまい。寧ろ、したら詩乃が黙っていないことなど明らかだろう。
「……本当に……本当に、すみませんでした……」
 これが、顛末。
 見届けたアウグストが、最後の猫の首もバスケットに収める。奪われた無垢な命の一匹も欠けることなく、丁重に弔うために。
 それを見守ってから、再びシンは男を見下ろす。
(「こういう眼は幾度となく見てきました。真偽が定かでない噂にすら頼る一種の狂気――」)
 この路地裏に足を踏み入れた直後の、男の顔を思い出す。
 己の身勝手な恨みが、まるで正当なものであるかのような、根拠のない自信に満ちた瞳の狂気の色。
 だが、そういった手合に限って、得てしてそれが真ではないことを、無意識の内に悟ってしまっている者ばかりだ。
(「……この犯人は相手に直接向かう度胸は無い小物でしょうが」)
 だからこそ、狂気の儀式に手を染めた。
 この恨みは晴らされるべきものだと、信じてやまず。
 そして――その思い上がりを打ち砕くべく。
「――来ましたか」
 |邪神《かみ》は、矮小なる人間の元へと顕現する――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『首刎ねラトゥーリャ』

POW   :    首刎ねの刃
【鮮血にまみれた刃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    八つ裂きの刃
【しなやかな身のこなし】で敵の間合いに踏み込み、【血の臭い】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ   :    人喰いの刃
【長大な刃物】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【邪神獣】に変身する。

イラスト:tori

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アウグスト・アルトナーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――にゃあ。
 猫の声とも、女の声ともつかぬ鳴き声。
 ただ確かなのは、何気ないそれすら悍ましさを孕んでいること。
「あ、あ、猫神様!」
 男は、反省したことなど忘れたかのように、這いつくばり平伏すように、その足元に至る。
「や、やっぱり来てくださっ――」
 ぎろり、と。
 金の目がそれを見下し――瞬間、その首目掛けて刃が振り下ろされる!
「ひぃいいいい!?」
 猟兵のひとりが男の身体を放り投げ、また別の一人が刃を弾く。
 猫神――否、邪神はたたらを踏んで後退したが、何事もなかったかのように持ち直す。
「邪魔を、すルのですか」
 口を開く。今度は、混じりけのない女の声だった。
 だが、紡がれる言葉は憎悪そのもの。
「その男は、獣にも劣ル畜生です。狩って、刈って――その首を、我が物としなけレば気が済みません」
 本来なら、猟兵たちの首も蒐集したいところだが。それは男を差し出してくれれば、諦める――と。
 当然、首を縦に振るわけには行かない!
「残念です。なラば、やはり」
 ――首を、貰い受けますと。
 再びあの、悍しい鳴き声が響いて。
 哀しき邪神が、その刃を振り上げる――!
草剪・ひかり
POW判定
お色気、キャラ崩し描写、即興連携等歓迎

ま、聞いてた通り、こうなるよね
せめてこの後、真の恐怖の一端を知った犯人氏の更生を祈るばかりだけど
……望み薄かな

その前にこの、復讐に燃える邪神様をどうにかしなきゃ

ぶった切られるのを覚悟の上で犯人を庇い立ち塞がる
彼を狙うとわかっていれば、多少の変化や陽動を仕掛けられても対処は可能の筈
躱しきれないと悟って、私に狙いを切り替えてくれれば、後は私の土俵……というかリングの上

彼女の刃で肉も骨もぶった切られても、私の右腕の一撃で彼女の神性、神格を断ち切ってあげるわ

それにしても、こんな誰も得しない都市伝説、誰が広めたのかしら?
或いはこれで得する何者かがいる……?




「ま、聞いてた通り、こうなるよね」
 草剪・ひかり(次元を超えた絶対女王・f00837)は目の前の邪神を見、次いで転がった男を一瞥し――胸中で溜息を吐いた。
(「せめてこの後、真の恐怖の一端を知った犯人氏の更生を祈るばかりだけど……望み薄かな」)
 そのために打てる手は打ったつもりだ。だが、肝心の本人の様子がこれでは……と、思わざるを得ない。
 だが、それでも人の命を諦める理由にはならない。
(「その前にこの、復讐に燃える邪神様をどうにかしなきゃ」)
 不完全な状態での顕現とは言え、相手は邪神だ。
 ゆらり揺れる、首刈りの刃が揺れる――ひかりへと、薙ぐように向かう。
 ひかりがそれを躱すと、邪神はその隙に横をすり抜け男の元へ走る。だが、読み通りだ。
「!」
 刃は、男の前に立ちはだかったひかりの身体を裂いて赤い花を散らす。
 邪神が何度、男に迫ろうとしても、その度にひかりは身を呈し止め続けた。
 邪神は唸り、標的を切り替えた。男ではなく、どこまでも邪魔をする、ひかりへ。
 ――この時を、待っていた。
(「後は私の土俵……いえ、」)
 そう。今や、ここは。

「――リングの上!」

 裂帛の気合をぶつけられた邪神が、一瞬怯む。
 その一瞬で、ひかりには充分だった。
『おおっとここで! 挑戦者・首刎ねラトゥーリャの動きが止まったぞ!』
 どこからか流れる実況アナウンス。
 それこそが、決戦の|舞台《リング》が整った証!
『さぁ、絶対女王草剪ひかり!  ここで遂に、激闘に終止符を打つ必殺の右を繰り出すか!?』
 リングの女王たるひかりの、必殺の一撃。
 右腕を、大きく振りかぶる。たとえ肉を斬られても、骨を断たれても――女王は勝利の栄冠を手にするまで、止まらない!
「その神性、神格を断ち切ってあげるわ――!」
 握り込まれた拳が唸る。だが、プロレスに殴り技は御法度。そう、女王の渾身の一撃は、斧の如く重く固い腕による痛烈な打撃。それが今、邪神の喉へとめり込まんとしている――!
『決まったーッ!! 絶対女王草剪ひかり必殺の右ラリアット、|戦女神の断罪の斧《アテナ・パニッシャー》が炸裂ーッ!!』
 歓声までもが湧き上がる。
 ひかりは髪を掻き上げながら、地面に沈んだ邪神を見つめて。
(「それにしても、こんな誰も得しない都市伝説、誰が広めたのかしら? 或いはこれで得する何者かがいる……?」)
 ひかりは新たな戦いの予感すら覚えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
戦いが避けられない以上、持てる力全てでお相手致しましょう。

【オーラ防御】を調整し防壁のように展開して、犯人の男性を護衛。
「無闇に動くと安全の保証が出来かねます」
詠唱銃や【属性攻撃】魔術で応戦。

邪神が貫いた男性は、今度は血の核を埋めて創った囮で。
造形だけでなく、質感も、切り付けた感触も人間のものと変わらない筈です。
「これがこの│術《ユーベルコード》の真価ですよ」

邪神が立て直すより先に、死角からツキが奇襲。
「やっと食餌にありつけそうだな。待ちくたびれたぜ」

猫達に詫びる気持ちがあるのなら、一緒に弔っていきませんか?
ネクタイの結び目の小さな十字架に触れ、犠牲になった猫達や邪神の魂に、安息の【祈り】を―




 シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は溜息ひとつ落としてから、邪神へと向き直る。
(「戦いが避けられない以上、持てる力全てでお相手致しましょう」)
 しかしまずは、呆然と転がっている男の対処を。
「無闇に動くと安全の保証が出来かねます。命が惜しければ、大人しくしていてください」
 男がこくこくと頷く。シンはそれを一瞥して、白銀纏う詠唱銃を邪神へと向ける。
 男には、シンの張ったオーラの防壁を視認できなかった。だが、実際には男の眼前で邪神の刃は弾かれることだろう。
「――風よ」
 だが、念には念を。多彩な属性魔法をも操るシンはまず、旋風を巻き起こし邪神の身体を切り刻みつつ、同時にその行動を阻害する。動きの鈍った隙に、詠唱銃から炎の魔弾を射出した。
 だが、弱体化していても邪神。彼女は煩わしげにまた、あの悍しい鳴き声を上げ――半ば強引に、旋風から逃れる。そして、駆け出した。
「! しまっ……」
 向かうは、シンの横合いを抜けて、男の下へ。しかもあろうことか、男は防壁の範囲内から抜け出しているではないか!
 そして邪神の構えた刃には、異様な殺気が宿っていた。男へと、振り下ろされる。二度、三度、まだまだ気が済まないとでも言うように。
 そして確殺の四度目の刃が、無慈悲に男の心臓を貫く――!

「――と、言うとでも?」

 パリン、と。
 心臓どころか男の身体が罅割れて、粉々になる。
 本物はそのやや後ろ、未だ防壁の向こう側にいて、ヒッと短く悲鳴を上げていた。
 邪神が目を見開く。これは――シンの血の核を埋めて男を模した、極めて精巧な|囮《レプリカ》だ。
「質感も、手応えも、人間のものと変わラなかったと言うのに……!」
「これがこの|術《ユーベルコード》の真価ですよ」
 邪神が、捨て置いたシンへと振り返――ろうとして。

「やっと食餌にありつけそうだな。待ちくたびれたぜ」

 喜色を声に乗せた|闇色狼《ツキ》が、死角からその肩口に噛みついた。
 押し倒して、貪り喰らうように齧りつく。邪神は、振り払おうと暴れるが、一度喰らいついた狼の牙は容易には外れない。
 悠々とその横を通り抜け、シンは今一度男に歩み寄る。
「猫達に詫びる気持ちがあるのなら、一緒に弔っていきませんか?」
「へ……?」
 呆けた男の視線の先、シンの手は、ネクタイの結び目の小さな十字架に触れる。
「犠牲になった猫達や邪神の魂に、安息の祈りを――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
ネフラさん(f04313)と

《神力発現》で戦巫女の姿に

「貴女の想いは尤もですが、この人にはきっちり償わせます。
そして貴女という存在の仕組みが猫ちゃん達の殺害を生む一因になっている以上、悲劇を絶つ為にも倒させて頂きます。」と
尚、犯人は念動力・捕縛で逃がしません。

彼女の攻撃は第六感で読んで見切りで躱すか、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防ぐ。
ネフラさんの攻撃に続いて、光の属性攻撃・浄化を籠めた煌月によるなぎ払いで斬ります!

終われば犯人に催眠術を掛けて名前・住所・メルアド・IDなど諸々聞き出した上で、「心を入れ替えて猫ちゃん達を供養する」よう厳命。
そして皆さんと一緒に猫ちゃん達を手厚く葬りますよ。


ネフラ・ノーヴァ
詩乃(f17458)と共に。

此奴の首を撥ねて、血を抜き晒し干物にして散らせたい気持ちは良く分かる。しかしその手をさらに汚させるべきではない。

刃の向かう先をこちらに誘導、UC閃血惨花で八つ裂きの刃に相対するように機動し見切りで回避を試みつつ、連撃を仕返す。さすがに4連は当たるまい、詩乃にバトンタッチしてお任せしよう。

退けた後、犯人をこのまま帰しても反省は薄れ行きそうだ。お詣りを欠かすとまた災禍に見舞われることになるぞと吹き込んでおく。
さあ、ゆるりと猫達を供養しようか。埋葬の後、硬貨を一枚供えよう。何かそういう風習を聞いたことがある。




 未だ邪神の金の瞳は、憎悪の色を帯びたまま、剣呑にぎらり煌めいている。
 その男に恐怖を与え、絶望に染まったその顔で、首を落とさねばこの怨み晴れはしまいと。
「貴女の想いは尤もですが、この人にはきっちり償わせます。そして貴女という存在の仕組みが猫ちゃん達の殺害を生む一因になっている以上、悲劇を絶つ為にも倒させて頂きます」
 凛と。発現させた神力を纏い戦巫女の姿に変じた大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)が告げる。
 ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)もまた頷き、邪神の憎しみには理解を示しながらも、譲れない一線の前に立ちはだかる。
「此奴の首を撥ねて、血を抜き晒し干物にして散らせたい気持ちは良く分かる。しかしその手をさらに汚させるべきではない」
 言いつつ、ちらと背後を一瞥するネフラ。そこにはこの事件の元凶である男が、きゅうと目を回して転がっている。詩乃が逃亡阻止のため、不可視の縄で雁字搦めにする如く、念動力で縛り上げているのだ。
 邪神の攻撃から庇う必要はあるが、男がどさくさに紛れて行方を眩ますことはこれでもうないだろう。
 ネフラが視線を邪神へと戻した時、彼女は詩乃に向けて動いていた。
 その肉を剥ぎ、食らわんと刃を振るう。詩乃は第六感をフル稼働、見切り躱し――を繰り返していたが、御し切れない一撃が迫る。すかさず赤が揺らめく神鏡・天耀鏡へと護りの力を集中させて凌いだ。
「つれないな。私とも踊ろうではないか」
 反射結晶で間合いに踏み込み、二人の間に割り込むように刺突を繰り出すネフラ。邪神の肌を掠めた刃から赤の小花が咲く。
「さあ、美しく散る花となれ」
 放置できないと見た邪神はシャアと唸るとその刃をネフラへ向けた。流れるような刃の動きに合わせ、ネフラも回避と刺突を繰り返す。一撃でも回避できればいいのだ。なぜなら全ての刃を重ねられれば絶命する――その性質はネフラ自身のこの|閃血惨花《けんげき》も同様のものだから。
 幸いにして全ての斬撃を躱し切り、邪神の血が幾度かぱっと花開き、そこでネフラは再び声を上げた。
「詩乃、後は任せたぞ」
「はい! ――世の為、人の為、これより祓い清め致します!」
 ふわり、距離を取っていた邪神の元へと詩乃は再び飛来する。
 そしてその懐で神力あらたかなる薙刀・煌月による浄化の刃を煌めかせて。
「どうか、安らかに」
 祈り、希い、無念断ち切る如く、薙ぎ払う――!


「………………」
 邪神は倒れ伏し、動かない。
 それを確認して、詩乃とネフラは彼女のためにも祈った。
 そして、未だに目を回したままの男へと歩み寄り、ぺちんと詩乃の平手をひとつ。覚醒させる。
 だと言うのに夢でも見ているかのようにぼんやりしている男へと、これはこれで都合がよいかと詩乃は催眠術を。
 名前や住所、メルアドやIDに至るまでの諸々を聞き出した。これでいざとなれば出るところに出られる。
 その上で、厳命をひとつ。
「これに懲りたら今後は心を入れ替えて、しっかりと猫ちゃん達を供養してください」
「はひ」
 惚けたまま、男は頷く。
(「詩乃の神力を信じていないわけではないが……このまま帰しても反省は薄れ行きそうだな」)
 そう判断したネフラも、催眠の効果が切れない内にぽつり付け加える。
「お詣りを欠かすと、また災禍に見舞われることになるぞ」
「はひ、はひ」
 こくこくと頷く男。
 一先ずは、これで少なくとも今回のような凶行に及ぶことはないだろう。万が一及んだ場合は――もう、容赦はできないが。
「さあ、ゆるりと猫達を供養しようか」
「そうですね。皆さんと猫ちゃん達を手厚く葬りましょう」
 勿論、ふらふらしたままの男も一緒にである。
 最後まで世話の焼ける人ですねと念動力で男を歩かせる詩乃の姿にくすりと微笑み、ネフラは懐に忍ばせた硬貨を撫でた。
 あの世で金銭に煩わされることのないように。或いは、通行料に困ることのないように。そういった、国によって形は違えど語り継がれる風習をネフラは聞いていた。
 この哀れな猫たちも、これ以上辛く苦しい思いをすることがないように、願いながら。

 ――にゃあ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アウグスト・アルトナー
※宿敵主
※とどめ希望

真の姿を解放
全身のあらゆる部位から翼を生やした異形と化します

ここでこの男の首を差し出したところで
あなたは他の人間の首も刈り続けるのでしょう?
見過ごすことはできませんよ、首刎ねラトゥーリャ
ここで、完全に滅ぼします

敵の一撃からは男をかばいますが
無数の翼のうち一本ぐらいは持って行かれるかもしれません(激痛耐性で耐えます)
……美味しいですか?

ぼくの弱点に対応した姿……
ぼくがかつて救えなかった兄さんの、生首に見えるものを体から生やした獣に、敵は変身することでしょう

攻撃の手が止まりかけますが、ここで死ぬわけには参りません
ぼくには、【あの日の約束】がありますから

妻と約束したんですよ
可能な限り、長く生きると

兄さんのナイフの封印を解きます
無数の翼で飛び立ち、敵の首の切断を狙って振り抜きます
邪神獣への変身のため、敵が四足になっているなら、高く飛び上がってから、ギロチンのごとくナイフを振り下ろします

あなたも弔いますよ
必ず
必ずです

けれど、今は
ほんの少しだけ、ぼくも眠らせてください

良い夜を




 ――ゆらり。
 一鳴きと共に、邪神は再び起き上がる。
 強打を喰らいながら、身体を食い千切られながら、血の花を咲かせ浄化の一太刀を浴びながら――それでも、執念で。
 アウグスト・アルトナー(黒夜の白翼・f23918)はそっと、痛ましげにその目を伏せた。
 そして――瞬く間に変貌する。
 一言で表すなら、今の彼は『異形の天使』であった。
 彼の背から、腰から――頭から耳から目から、手から腕から脚から、全身の、ありとあらゆる部位から、純白の、大小様々な翼が生えていた。
 それこそ、アウグストの真の姿。
 邪神でさえも一瞬、息を呑むほどの神聖と畏怖。
「ここでこの男の首を差し出したところで、あなたは他の人間の首も刈り続けるのでしょう?」
 語りかける。
 だが、答えを得るまでもなく、アウグストは識っていた。
 因縁をずっと、感じていた。これは、自分が断ち切らなければならないものだ。
「見過ごすことはできませんよ、首刎ねラトゥーリャ」
 連綿と続く狂気に、終焉を。

「ここで、完全に滅ぼします」

 アウグストの翼がはためくと同時、その神気が吹き抜ける風となって場を覆う。
 邪神は威嚇しながら後退していたが――せめて男の首だけでもと、強引にアウグストを突破しようとするが、許す筈もない。
 アウグストもまた、自身の翼一枚引き換えにする形で食い止めた。痛覚を遮断すれば、咀嚼される感覚だけが残る。
「……美味しいですか?」
「!?」
 邪神はこれが標的でないことなど解っていながら、獣の衝動の赴くままに噛み千切り、己の肉へと還元してゆく。
 ――その結果、生まれた獣にアウグストはその柳眉を顰めた。
「……やはり」
 覚悟はしていた。
 それでも、胸に苦いものを覚える。
 肉を食らった相手の弱点――いわば『弱み』に対応し、反映した姿の獣に変質する邪神。
 今、四足となった彼女の首のすぐ横には、一人の男の生首が生えていた。
 嘗てアウグストが救えなかった、兄のそれに見えるものが――。
「っ、」
 身体が強張る。
 その隙を、邪神獣は見逃さない。
 仕留める――確かなその意志で、アウグストへと飛び掛かる。
 ――ちかり。
 視界の端、何かが煌めいた。
(「ぁ」)
 罅入り鉱石の、零れ灯。
 過るは恋しき貴石――カンテラオパールの君。
「ここで死ぬわけには参りません」
 想起する。
「ぼくには、『あの日の約束』がありますから」
 忘れもしない、今年の、|愛の日《バレンタインデー》。
「妻と約束したんですよ。可能な限り、長く生きると」
 ――永く、生きてと。
 できる限りでいい。少しでも、同じ時を共に歩めるように。
 だから――生きる。
「――兄さん、」
 ナイフを、抜き放つ。
 想いに応えて、その刃は輝きと鋭さを取り戻す。
 邪神獣が、アウグストの身体に覆い被さる――直前、全身の羽が大きく広がり、羽ばたいた。
 高く高く飛び上がり、振り上げたナイフが煌めく。
 せめて苦しまぬように、祈りながら。

「こんなところで、終われないんです」

 煌めきは断頭の刃と成りて。
 首が、転がり落ちた。
 同時、ふらり、アウグストの身体が傾ぐ。
 崩れ落ちながらも、胴と離れた首を抱え込んだ。
 もう、誰にも傷つけられることがないように。

(「あなたも弔いますよ」)
 声はもう出ない。
 仲間の呼ぶ声が、遠くに聞こえる。
(「必ず」)
 零れ灯が、一瞬だけ、ちかりと光って。
 また、沈黙する。
(「必ずです」)
 瞼が、重い。
 意識が、黒く塗り潰される。
(「けれど、今は」)
 酷く――疲れてしまった。
 長い、長い一日だった。
(「ほんの少しだけ、ぼくも眠らせてください」)
 瞼を、落とす。
 おやすみなさい。

 ――良い夜を。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月27日
宿敵 『首刎ねラトゥーリャ』 を撃破!


挿絵イラスト