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雪うさぎの広場にて

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 降り積もった雪の中、人ひとりが辛うじて通れる程度に踏み固められた、そんな森の小道を幼い兄妹が駆けてゆく。
 雪道には慣れたもので、白い息を弾ませて。朽ちて樹皮だけが残った巨木のトンネルをくぐれば、そこは――。

「なに……これ」

 見慣れたはずの広場……では、なかった。
 『森の広場』と兄妹が呼んでいるその場所は、ベンチもささやかな丸太の遊具も今は雪に覆われて、ただ一面の白に染まった広場であった筈なのに。
 今や、雪と土が入り混じったぐちゃぐちゃの地面と化し、それを成した者達の巨大な足跡だけが残されていた。

 何か…ここが自分たちの森の広場であったと分かる、そんな何かが残されてはいないかと、歩き回ることしばし。辛うじて見つけることができたのは、昨日作った雪うさぎのおめめ……潰れかけた赤い木の実1つだけ。
 しゃがみ泣き出した妹に、兄はもう帰ろうと声をかける。
 また雪が降れば、白い光景が戻ってくるのかもしれない。ベンチも遊具も、大人に言えば直してもらえるのかもかもしれない。雪うさぎだってまた作る事はできる……けれど、この場所で過ごした楽しい時間まで壊されてしまったようで。
 2人分の泣き声が、樹氷の森に長く響くのだった。


「みなさま、みなさま!アックス&ウィザーズの世界に行って、ドラゴンさんとおっきな木をやっつけてくださいまし!」
 はて?どこから声するのかと辺りを見回す猟兵達の足元に、ぴょんぴょん跳ねる白い影。
 ここです、ここにおりますのーと、自己主張しているのは喋るぬいぐるみ……ではなく、ケットシーのグリモア猟兵フィリオ・グラースラム(煌氷の刃・f10324)であった。

「ドラゴンさんが、配下さんをいっぱい連れて大移動中なんですのよ」
 場所はアックス&ウィザーズのとある森……雪深き樹氷の森を、グラスアボラスと呼ばれるドラゴンが配下を連れて通過しようとしている。
 このドラゴンは花畑を縄張りとする習性があるようで、本来ならば温暖な地域で目撃される事が多い。もしかすると暖かな土地を求めて移動しているのかもしれないが、あらゆる障害物を踏み倒して進むこの侵攻は、いずれ人里さえも潰してしまうだろう。
「森は木がいっぱいですけれど、戦えそうな場所がありますのよ。なので、そこでドラゴンさん達をばしっと倒してくだいですの」
 近くの村の子供たちは、その場所を『森の広場』と呼んでいる。ドラゴンたちがそこを通るのは夜。暗い中での戦いにはなるが、現場に向かう際はフィリオからランタンの貸出があるため、光源の心配は特に必要ない。

 森の広場に着いたら、まずドラゴンの配下である荒ぶる山神達と戦闘になる。巨木がそのまま動き始めてしまったようなこのオブリビオンを先に排除し、奥に控えるドラゴンを倒して欲しい。
「それが今回お願いしたいお仕事なのですけれど……」
 視線をそらし、少し言いよどむフィリオ。
「実はその森の広場に、うさぎさんがおりますのよ」
 立派な針葉のおひげを付けたお父さんうさぎと、ちょっぴりふくよかなお母さんうさぎ、赤いおめめの小さな子うさぎ。それから全長50cm程のうさぎ耳が付けられた雪だるま。村の子供たちが昼間に作った雪のうさぎが4羽、森の広場に残されているのだ。
 今回相手にするオブリビオン達はいずれも巨大な体躯のものばかり。戦いが起これば戦場となる森の広場も荒れてしまうだろうし、雪うさぎ達も決して無事では済まないだろう。それは避けようのない事。それでも……。
「できたら……うさぎさん達を守っていただけたら、フィオは嬉しいんですのよ」
 その場で守るにしても、移動させるにしても……雪でできたうさぎはとても繊細で、注意しなければ簡単に砕けてしまう。だから全てとは言わない。1羽だけでも構わない。もしも守りきれたなら、予知で見たあの光景を変えられるかもしれないから……と。
 けれどこれはグリモア猟兵ではなく、フィリオの個人的なお願い事。ドラゴンを倒す事と猟兵達の無事の方が大事なのだから、決して無理はしないで欲しい。

「無事ドラゴンさんたちをやっつけられたら、良ければ樹氷を楽しんできてくださいですの」
 広場は荒れてしまうだろうけれど、樹氷の森は広く雪も豊富にある。少し散歩を楽しんでくるのもいいし、雪うさぎ作りに挑戦してみてもいい。
 雪うさぎが増えたりしていたら、村の子供たちは驚くかもしれないけれど、妖精さんが出た!くらいの、ちょっぴり不思議な思い出に変わるだろう。だから遠慮なく、一面の樹氷と雪の世界を楽しんで来て欲しい。

「では、風邪を引かにゅよう暖かくして、いってらっしゃいませ!」


音切
 音切と申します。
 まだ手探り状態ではございますが、精一杯書かせていただきますので、一部の章のみでも途中からでも、気軽にご参加いただけましたら幸いです。

『補足』
 ・目的はドラゴンの討伐であり、
  雪うさぎが破壊されても失敗にはなりません。

 ・3章のみフィリオが同行しております。
  何かございましたら、お声かけくださいませ。
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第1章 集団戦 『荒ぶる山神』

POW   :    握り潰す
【人ひとり覆い隠すほどの掌】が命中した対象に対し、高威力高命中の【握り潰し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    踏み潰す
単純で重い【地団駄】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ   :    叩き潰す
【大きく振りかぶった拳】から【地震】を放ち、【その振動】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リティ・オールドヴァルト
ぼくたちの、初陣、っです
(気合いを入れる)
がんばりましょうね、リリィ
(ドラゴンをランスに変えて握り締め)

広場に到着したらうさぎさんたちの位置を確認するのです
できるだけ、守ってあげたい
ぼくもにいさまがいるから…兄妹たちのきもち、わかるような気がするのです

敵の動きを見極めてがんばって避けますが、
うさぎさんのところに攻撃が来たらすべりこんでカウンターで串刺し
【猫の毛づくろい】を一生懸命、しましたから…っ
届きません、よっ!

他にもうさぎさんたちを守る仲間がいたら協力するのです
移動させようとする仲間がいたら援護します
ぼくは、その…作ったことないですし…ちいさい、ので…うまく、移動できる気が、しないのです


三岐・未夜
……ん、と。
多分、雪うさぎを守ろうとしてくれるひとは、いっぱいいると思うんだ。
だから、僕はそういうひとたちが少しでも安全になるように動くよ。

ユーベルコードを発動した上で、【誘惑、催眠術】で敵を自分に引き付けて雪うさぎやそれを守る猟兵たちから引き離すよ。
僕自身も怪我したくはないから、【第六感、見切り】で上手く逃げ回るつもり。
隙があれば、ゆめのはしを開いて斬属性を纏わせて、その扇刃で薪にしちゃうよ。【破魔、属性攻撃、誘導弾、範囲攻撃、援護射撃、先制攻撃、全力魔法】
だってほら、この辺まだまだ雪降ってて寒いしさ。
適当なサイズに斬り刻んで此処に置いて行けば、村のひとが乾かして使えるかもしれないからね。



 足を踏み出せば雪が踏み固められる独特の音。冷たく澄んだ森の空気は、一呼吸ごとに猟兵達の体温を奪っていく。
 本来ならばこの一面の雪に音が吸われ、静寂に包まれているのだろう樹氷の森。
 だが今、猟兵達の耳には木々が折られ砕かれる音が響いている。
 雪の花咲く木々を押しのけて、この寒さにも枯れる事のない緑も深き巨木の群れが、森の広場に迫っていた。


 既に広場に到達している荒ぶる山神達に、リティ・オールドヴァルト(天上の蒼・f11245)は慌てて雪うさぎの姿を探す。
 グリモア猟兵にランタンを借りたとはいえ、広場全体を見通せる程ではない。急ぎ探さなければ――。
 幸い、幾人かの猟兵が迷わず山神達の元へと向かい、その足を止めてくれている。

「……いました!」
 特徴的な形のうさ雪だるまが目印となり、雪うさぎ達はすぐに見つかった。話に聞いていた通り4羽、ベンチの上とその隣に。
 山神達からはまだ少し距離があるが、押し込まれてしまえばそれで終わり。

 予知で聞いた兄妹たちの事は、とても他人ごとには思えない。
 猟兵としての戦いは初めてで、どこまで出来るかは分からないけれど、それでも……できるだけ、守ってあげたいから。リティは雪うさぎに背を向ける。
「がんばりましょうね、リリィ」
 柔らかな青い毛並みを整えながら、頼もしい相棒―リリィ―に声を掛ければ、リリィはその姿をランスへと変えリティの手の中に。

 背後では、別の猟兵がどうやら雪うさぎの保護に動いてくれているらしい。だから、リティは迷わず駆けた。幼きケットシーにとって迫りくる山神達は、遥か高き壁が迫ってくるようだったが、それでも怯むことはなく。


 ドンッと、山神の足が大地を抉る。その衝撃波が届くより先に、三岐・未夜(かさぶた・f00134)は後ろへと飛びのいた。
 巨大な山神達の攻撃は、力こそ強いが動きは鈍い。見切る事はそう難しくはなさそうだ。死角からの攻撃も、懐の刀が危機を知らせてくれている。

 共に現場へと向かう猟兵達と打ち合わせをした訳ではなかったが、未夜の思っていた通り、幾人かの猟兵が雪うさぎの保護に動いた様子は見て取れた。ならば自分は、彼女たちが少しでも安全になるように……その為に、動く。
「こっちだよ」
 宵闇に浮かぶ灯のような瞳に惑わしの力を込めて、未夜は山神を引き付ける。相手の興味を引くような誘惑の言葉の1つも投げかければ、あるいはもっと効果を上げる事ができるのかもしれないが……相手が物言わぬ巨木では、そんな言葉を探すのも難しい。
 それでも、倒れた仲間を押しのけて、戦線を突破しようとした山神の1体が、未夜へと向きを変えた。

 はらりと開くは満天の星空を思わせる、細やかなレースの扇。そんな扇を手に、優しく夢へといざなうように黒き妖狐は舞う。その瞬間――。
 放たれた魔力は刃へと変わり、冷たき空気の中を奔る。向かってきた山神の四肢を切り裂いてなお威力は落ちず、奥に控えた3体をも両断して。白に染まった森に、緑の木の葉が舞った。


 猟兵達の活躍によって確実に山神の数は減っている……が、とにかく切りがない。戦線は徐々に下がって来ていた。
 山神の1体がリティに向かい、足を振り上げる。
 かわさなければ……!しかし、これ以上下がっては雪うさぎ達が巻き込まれてしまうかもしれない。その迷いが、リティの体を縛る。
「こっちで戦え。壊れるだろうが!」
 共に戦う誰かの声が聞こえた。山神の動きが一瞬止まる。今だ……!

 先に毛並みを整えていたリティの体は、山神の足元をするりと抜けて、一気にその体を駆け上がる。
「届きません、よっ!」
 体ごとぶつかるように山神の頭部にリリィを突き立てれば、山神の体がぐらりと傾いた。
 その隙を逃すことなく、再び未夜が扇を振るう。複数の敵を切り裂くことのできる力の全てを唯1体の敵に集め放てば、一呼吸の後、唯の角材と化した体がバラバラに崩れ落ちる――これ以上は、行かせない。
「にいさま、すごいです!」
 頼もしい援護射撃にリティが賛辞を述べれば、実際は見た目よりずっと幼い黒狐は、どう答えたらいいのか迷い……。
「寒いしさ。村のひとが乾かして、使えるかもしれないからね」
 どういたしましての代わりに出た言葉は、何だか言い訳のようになってしまって、未夜は思わず目を逸らしてしまうのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キャサリン・エンスレイヴ
・作戦

1.森の広場に細心の注意を以って先行。隠密行動をとる。
 目的は雪のうさぎの回収し、ユーベルコードによる保護を行なう。
 雪が溶けないようユーベルコードの温度を下げておく
 ↓
2.戦闘では後衛に配置し、極力自身が負傷しない形で【属性攻撃】を使用。
 後衛の理由は自身の戦闘不能が雪のうさぎの破壊を意味するからである。
 選択する属性は遠距離射撃仕様の「対神性属性」とする。
 ↓
3.全てを円滑に進めるため、【情報収集】を用いて他参加者と連携をとる。
 ただし!敗戦濃厚となったら単独での撤退を試みる。
 悪いね。幼い子供の願いの方が、俺には重要なんだよ。
 もちろん、山神やドラゴンを倒す方が近道なら、尽力する。



 素早く広場を駆け抜けて、キャサリンは雪うさぎ達の元へ。話に聞いていた通り、ベンチの上に親子3羽とその隣にうさ雪だるま。
「じゃ、やるか」
 小さいのに耳に残る美しい声で呟くと、まずはお父さんうさぎにそっと口づけを。
 大きさを無視してするり……と、キャサリンの口の中へと消えるお父さんうさぎ。続けてお母さん、子うさぎも消えてゆく。
「んがっくっく…!」
 うさ雪だるまは流石に大きく、ちょっと喉に閊えたようだ。もしかすると耳が取れたりしたかもしれないが、まぁ…直せる範囲ならよしとしておこう。
 雪うさぎ達を食べてしまったようにも見えるこれが、彼女のユーベルコード。今頃雪うさぎ達は、彼女の中にある『アパート』の中で仲良く並んでいる事だろう。

 とにかくこれで、オブリビオン達に壊される事態は防げた。だが、これはこれで別の問題があった。
(さて、何分持つか……)
 出来る限りアパートの室温を下げるよう意識はしてみたものの、元より人間にとって住みやすいように作られている空間だ。森の広場に置かれているよりも確実に早く、雪うさぎたちは解けていく。

 キャサリンは山神達と戦う仲間の様子を伺う。雪うさぎ達を意識しての事だろう。戦線をかなり前の方で抑え、山神たちの意識を逸らすよう動いてくれているのは、見れば分かる。だが、とにかく山神の数が多い。戦う用意はあるが、果たしてここに自分が加わった所で、雪うさぎ達が解ける前に全ての敵を倒せるだろうか?

 キャサリンの判断は早かった。踵を返し、森の広場を後にする。
 グリモア猟兵には、ドラゴンを倒す事こそが目的だと言われたが、それはそれ。猟兵である以前に、キャサリン・エンスレイヴという1人の人間として譲れないものがある。
(悪いね。幼い子供の願いの方が、俺には重要なんだよ)
 オブリビオン達の進行ルートから外れた場所であれば、この森の中でも壊される事はないはずだ。とにかくまずは、この雪うさぎ達を安全な場所へ置いてこなければ。
 一陣の風のように、キャサリンは森を駆けてゆくのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

オーガスト・メルト
俺には雪うさぎを守りながら戦うなんて器用な真似は無理だ。
そういうのは他の猟兵に任せて普通に戦わせてもらう。

【WIZ】他の方との連携・アドリブ歓迎
…ナイツ、足元の雪で足を取られると厄介だ。
【竜帝の宝物庫】に片っ端から周囲の雪を収納しろ。
雪うさぎは収納できるか?『うにゃーん』…そうか、崩れるから無理か。
じゃあ、それは放置でいい。

よし、敵は【見切り】と【2回攻撃】で倒す。
炎の【属性攻撃】を乗せれば倒しやすくなるかな?
敵の地震攻撃をジャンプで回避できればいいが…
場合によっては【蜘蛛の手甲】のフック付きワイヤーで敵に飛び乗って【敵を盾にする】ぞ。

…ちっ、そっちじゃない。こっちで戦え。壊れるだろうが!


モニカ・ラメール
Joyeux noel!
雪深い森の中でブッシュ・ド・ノエルが食べ放題だなんて、気分は遅めのクリスマスね!
それなら飾りがないのは寂しいかしら、ラパン達は守ってあげたいわね

美味しそうなブッシュ・ド・ノエル、だけどあんまり近付いたらおっきな手足が危いかしら
ちょっと離れてラパンに向かわないように火【属性攻撃】で炙って引き付けて、こっちに来たらおなかいっぱい食べちゃうわ!【大食い】
(【弱味漬け込むコンポート】で自身の影を細く伸ばして捉え、影に沿って血の津波を起こして相手を飲み込み(味覚あり)ます)

……噛み付いたらメープルシロップが吸えるかしら、ちょっと試してみたいわね
隙があったら【吸血】してみるかしら


ロー・オーヴェル
こんな寒い中に大移動とはね
春までおとなしく冬眠してくれてたら
俺が今こうして寒さに震えてる必要もなかったんだが

まぁいい
「冬眠しないのなら眠らせるまでさ。目覚めることのない眠りに」


ある程度の時間は雪うさぎの事を心配しなくてもいい感じか
ならばそれを好機として手早く済ませなきゃな

ユーベルコードの効果及び
【見切り】を活用し敵の攻撃を避けつつ攻撃

敵の挙動も注視し
この動きならこの攻撃と把握できる様留意し避けるのに活用

自攻撃の際は【二回攻撃】で威力増加
【フェイント】で敵の虚を突く
【マヒ攻撃】で動きを阻害する等効果的と思える手段を使用

基本的には近接攻撃主体だが
近づくと危険そうならナイフ投げでの遠距離攻撃に切替



 赤い髪をなびかせてオーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)が駆ける。眼前には迫る山神達。雪うさぎ達の事が気にならないのかと言われれば、そうではないのだが、守る事ができるのか?と問われれば――そんな器用な真似は無理だと、そう思ってしまう。
(そういうのは他の猟兵に任せて普通に戦わせてもらう)
 己が役割は戦う事だと見定めて、振り下ろされた山神の一撃をすれすれに交しまずは一太刀。
 巨木の体でも痛みは感じるのか、慌てたように山神は腕を引く。だが遅い。オーガストは体を捻り、返す刀で足を断つ。まずは、一体。

 ひとまずは新たにこちらに向かってくる個体を、引き寄せるのが優先か。それから――。
「ナイツ、『竜帝の宝物庫』に片っ端から周囲の雪を収納しろ」
 途端、竜巻がごとく風が渦巻く。ちょこんと雪上に降りた、黒い大福のようにしか見えない小さな竜―ナイツ―の口に、柔らかな新雪が吸い込まれていく。
 全ての雪とまではいかないが、これでだいぶ動きやすくなった。――ふと思いつき、黒き竜に問うてみる。雪うさぎは収納できるか?と。
 リスのように頬を膨らませていたナイツは、ごくんと雪を飲み込み切ると、申し訳なさそうに、うにゃーんと鳴いた。

 そんなナイツの姿を見て、まぁ……!と目を丸くしているのはモニカ・ラメール(甘く絡めるカラメリゼ・f14455)。
 そんなに盛大に食べる様子を見せられては、何だか羨ましさを覚えてしまう。けれど、慌てる事はない。
「わたしも、いただきます!」
 黄色い丸太はロールケーキ、茶色の樹皮はココアクリーム。チョコレートの葉っぱを添えて、パウダーシュガーで雪化粧。今日はブッシュ・ド・ノエルの食べ放題。グルメツールに炎を纏わせ、一振り二振り切り分ければ、キャンドルのように火が灯る。
「Joyeux noel!」
 気分はまるでクリスマス。さしずめ雪うさぎ達は、ブッシュ・ド・ノエルを彩る飾り。それとも、子供たちへのプレゼント?どちらにしても……。
(ラパン達は守ってあげたいわね)
 大きな手足には注意が要るけれど、まだまだ食べたい。食べたりない。
「さぁ、こっちよ!」
 グルメツールに再び炎の魔力を込めて、モニカは山神を呼び寄せる。ブッシュ・ド・ノエルは丸々1つ、全部モニカが独り占め。雪うさぎ達の所へは、欠片も行かせてあげません。

 やれやれと、ロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)はため息交じりに白い息を吐いた。上着を羽織ってなお、じんわりと身に染み込んでくるような寒さを前に、せめて春までおとなしく冬眠しててくれればと、そんな事を思いながら……ローは戦況を見定める。
 わらわらと押し寄せる山神の群れは全く終わりが見えないが、それでも、その大きすぎる体のせいで猟兵達に攻撃を仕掛けられるのは、手前の数体に限られているようだった。

 ならば、注意するべきは手前の個体のみ。ましてその体躯から放てる攻撃などたかが知れている。手か、足か。掴みか、振り下ろしか。
 攻撃範囲が広いのは厄介だが不思議なことに、敵の攻撃が始まるよりも早くローが飛びのけば、飛び散る土塊の1つすらぎりぎりローには届かない。森に満ちる空気とは別の微かな風が、耳元を過ぎゆくような……そんな感覚に導かれて、くりると身をかわしたその拍子、森の中へと消えていく猟兵の姿が目にとまる。
(ある程度の時間は雪うさぎの事を心配しなくてもいい感じか……)
 あの猟兵が雪うさぎ達を保護したと、見ていいだろう。ただの勘でしかないが、今この戦場に背を向ける理由など1つしか考えられない。
「なら、手早く済ませるとしますか」
 黒き鞭を手繰り寄せれば、いつの間にか腕を絡め捕られていた山神が体勢を崩す。その巨躯が雪上に倒れ伏すよりも早く、静かに振るったローのナイフがその命を絶ち切った。


 次々と現れる新手に、戦線はじりじりと後退していた。
 猟兵達の動きが自然と噛み合い、オーガストとモニカの2人がかりで注意を引きつけ、受け持ち切れなかった個体をローをはじめとした他の猟兵達がフォローに回る布陣が出来上がっている。これがかなりの効果を上げてはいるものの、これ以上、山神達を押しとどめ続けるのは限界だ。
 だがそれと同時に、終わりも見え初めている。ようやくここにきて、数え切れる程度には山神の数が減っていた。

 誰か、雪うさぎ達を避難させてくれただろうか?オーガストがちらりと後方に視線を向ければ、戦線を抜け出た山神の姿が目に飛び込んでくる。
(そっちじゃない)
 思わず舌打ちし、とっさに目の前の山神を足場に高く飛ぶ。蜘蛛を象る手甲より放ったワイヤーフックに確かな手ごたえを感じれば、落ちるに任せ全体重で負荷をかけた。
「こっちで戦え。壊れるだろうが!」
 数拍、山神の動きが止まる。その時……。
「届きません、よっ!」
 オーガストの頭上から可愛らしい声が響き、山神の体が傾げる。
 敵の注意が自身に向けばと思ったが、良かった。まだ後方に控えてくれていた猟兵がいたらしい。ならば、この個体は任せて問題ないだろう。
 太刀と呼ぶには少し短い刀を握り直し、オーガストは残る山神を狩りに走るのだった。

 沢山あったブッシュ・ド・ノエルもそろそろ打ち止め。ここまでは、おしとやかに上品に、綺麗に切り分けてきたけれど、せめて最後の一口くらいは、大きなお口でいただいちゃってもいいかしら?
 モニカは静かに目を閉じて、己の影に意識を寄せる。
 漆黒の影はするりと伸びて、鉄錆に似た甘い香りが渦を巻く。
 赤くて甘いシロップに、満たして、浸して、漬け込んで。しっかり色が変わったら、丸々1つお口にぽいっ。
「あら?」
 きょろきょろと辺りを見回して、モニカは困ったように首を傾げた。
 仕上げのシロップのために、少し残しておこうと思っていたのに……気が付いたら、お皿は空っぽ。
 ケーキの最後の一口は甘く甘く……けれどちょっとだけ、切ない。


 ――夜も更けて、いっそう凍てつく冬の空気に花の香りが入り混じる。

「せめて1本くらい、吸わせてもらえないもんかねぇ」
 はぁ……と吐き出される息は白いが、それは煙ではなくただの吐息。ふるりと体が震えたのは、この寒さのせいか、それとも……。
 ようやく山神達を片付けて、少しは静けさを取り戻せたかと思ったのに。
 ゆらりゆらりと体を揺らし、迫りくる巨大な影。猟兵達の存在に、気づいていない訳がないのに。それでも慌てる様子はなく。

 今は冬。全ての色が沈黙し、白色の下で目覚めの時を待つ季節。
 春の息吹にはまだ早い。
「冬眠しないのなら眠らせるまでさ。目覚めることのない眠りに」
 そうだろう?とローが視線で問えば、赤き髪と赤き瞳の猟兵達が、然りと頷くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『息吹の竜『グラスアボラス』』

POW   :    フラワリングブレス
【吐き出された息吹 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【咲き乱れるフラワーカッター】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ガーデン・オブ・ゲンティアナ
自身の装備武器を無数の【竜胆 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    フラワーフィールド
【吐き出された息吹 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を花畑で埋め】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 抉れ、雪と土の入り混じる大地に、芽吹くものがある。冷たく、そして固く凍り付いた土の下で眠っていた植物の力は強く、雪を押しのけ芽を伸ばす。
 だがそれは、ドラゴンによってもたらされた異様な光景。

 幸い、ある猟兵の手によって雪うさぎ達は広場から姿を消している。
 もう戦線を気にして戦う必要はない。あとはただ、グリモア猟兵に託された通りに……このドラゴンを討ち倒し、冬を取り戻すだけだ。
オーガスト・メルト
よしよし、俺はお前を狩りに来たんだよ、花のドラゴン。
ウチの工房で使う竜素材の確保の為に、その身体を余すことなくいただこう。
(…子供たちが可哀想と思ったのも本当だがな)

【SPD】連携・アドリブ歓迎
デイズ、ナイツ、UC【トライリンクモード】であいつの範囲攻撃を【見切り】つつ戦うぞ。
お前たちの感覚を貸してくれ。
(竜の知覚で広場を探知)…ああ、雪うさぎは誰かが保護したのか。なら遠慮はあまりいらないな。
【2回攻撃】で急所を【鎧無視攻撃】する。こいつも【属性攻撃】が効きそうだ。

子供(人間)の遊び場なんて無視して行けると思ったか?
大人(猟兵)がそれを許す訳がないだろう?



 山神達を相手していた時とは、空気が違っていた。春告のドラゴンは、山神以上に動きは緩慢で。猫のように尻尾の先だけを揺らして、猟兵達を見つめている。
 ただそれだけなのに……ビリビリと肌が刺激されるような、この緊張は。
 人の言葉を発することはないが、明らかにこう告げている――『退け』と。


「子供の遊び場なんて無視して行けると思ったか?」
 ドラゴンのプレッシャーを押しのけるため口から出た言葉は、普段の否定交じりのそれではなく、本心からくる真っ直ぐなものだった。
 ここは今を生きる人間の領域。それを過去が脅かしに来るというのなら、猟兵が退く道理など無い。
「デイズ、ナイツ、お前たちの感覚を貸してくれ」
 竜を狩る為に借りるのは、同じ竜の力。丸々とした黒白の竜達が、オーガストの肩から飛び立つ。
 先の主の言葉に何かを感じてか、白き竜―デイズ―は、くるりくるりとドラゴンではなく広場を見つめて飛び回る。まるで、みてみてと、そう訴えているかのように。
 確かに、『視えて』いる。デイズの感覚を通して、ドラゴンと猟兵しか居ない広場が。それなら、もう遠慮は要らない。

 開戦の狼煙の代わりか、猟兵達の視界を青色が覆う。夜空を青空に変えてしまうほどの竜胆の花びら。
 三方の視点から、その1枚1枚が確かに見えている。見えている……が、立ち位置が悪かったのか、かわせるだけの隙間が存在しない。
 刃では捌ききれぬ。二輪ではナイツを巻き込む。ゆえに、オーガストは鋼糸を選んだ。炎を纏わせ操れば、鋼糸は正しく、その身に当たる花びらだけを焼き尽くす。……なるほど、こいつも炎が効きそうだ。

 同じ考えに至った猟兵がいたのだろうか。竜胆を焼き尽くした先で、ドラゴンの身に火矢が落ゆくのが見える。
 そもそも自分はこのドラゴンを狩りに来たのだ。後れを取る訳にはいかない。あの角と爪……どのような属性を宿しているのか、魔力炉の火力は足りるだろうか等と、少し気が早いことを考えつつ、オーガストは武器を小太刀に持ち替え、ドラゴンの方へ駆ける。
(それにしても、火力強すぎないか?)
 仲間たちの容赦のない炎の攻撃に、今は6つあるも同然な目が少し眩しい。
 ドラゴンの耐久性はよく知っているつもりだが、それでも……剥ぎ取る前に希少な部位が廃材になってしまわないか、少し心配なオーガストだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

三岐・未夜
……このドラゴンは見慣れたよ、大丈夫。こわくない。行ける。

雪うさぎももういないしさ。つまり、炎解禁。燃やし放題ってことでしょ。花畑も竜胆もドラゴンも全部燃えちゃえ。
火矢を生み、【属性攻撃】で強化。115もの矢を用途に応じて四方八方から向かわせる。【操縦、範囲攻撃、援護射撃、誘導弾、先制攻撃、全力魔法、生命力吸収】
とくに、WIZで花畑陣地を広げられた際は焼却を試みる。

自分への攻撃に対しては、【誘惑、催眠術、ハッキング】で思考を誘導して狙いを曖昧にし、【おびき寄せ、見切り、第六感】で避けやすいように動く。

燃やしたって、お前がいなくなれば、もっとあったかくなった頃に新芽は出るよ。
おやすみ。【破魔】



 竜胆の花びらが舞う。それは夜だと言うのに、青空が落ちてくるようで。
 深くかぶったフードをちらりと押し上げて、未夜はその光景を見ている。

 このドラゴンも、この攻撃も、既に何度か見ている。初めて相手にした時は、少しこわくて。けれどそれ以上に、共に戦う仲間が傷つくことがこわかった。
 けれど、慣れるのだと知った。肌を焼く敵意も、心臓を振るわせるような咆哮も、慣れる事ができるのだと。
(大丈夫。こわくない)
 そう自分に言い聞かせて、心を鎮める。

 猟兵達が竜胆の花びらに対応している隙に、ドラゴンの足元に花が溢れていた。冬の風景画の上から、春を無理やり描き足したような異常な光景。ピリピリと肌を刺すプレッシャーが強まったのを感じる。本来、ドラゴンの攻撃が外れなければ、この効果は得られない筈。……あえて外したというのなら、なるほど配下の木偶達とは格が違うという訳だ。

 それでも、行ける。と確信する。雪うさぎ達も、既にこの広場から脱しているのだから。加減する理由が消えている。
 放つのは、あの時と同じ技。けれどその数は、以前を遥かに凌駕する。
 森の広場の全域を煌々と照らし出すほどの炎が吹きあがり、魔を砕く矢を象る。ついと未夜や指を滑らせれば、炎の矢が舞い雨のごとくドラゴンへと落ちていく。
 しかしドラゴンも黙ってやられてくれるわけもなく、咆哮とともに放たれた吐息が火矢をかき消してゆく……だが、元より狙いはドラゴンではなく、その足元。
 数え切れない程の火矢が違わずに、未夜の狙い通りに、花畑に突き刺さる。

 花が燃える。炎熱に縮れ萎み、朽ちていく。
 共に戦う猟兵達の攻撃も重なって炎は高さを増し、熱風が髪を撫でた。
 花に罪がある訳ではない……けれど、これはあってはならない光景。
 それに……。
「お前がいなくなれば、もっとあったかくなった頃に新芽は出るよ」
 火は土を生かすのだから――だから、おやすみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

モニカ・ラメール
アドリブ・連携等は歓迎よ
あらあらご馳走ね、ご馳走だわ!
やっぱりノエルにはプーレロティが付き物よね!

あの大きさが入るオーブンは無いかしら
それなら今日のルセットは……そうね
全身、特にお口をしっかりブリデし(縛っ)て
丸ごと直火でロティールね!【属性攻撃】【料理】

ちょっぴりつまみ食いしちゃってもいいわよね
一緒にワイン(血)も楽しみましょ【吸血】
ついつい食べすぎちゃうかもだけど、仕方ないわよね
だってこんなにデリス(おいしい)なんだもの!【大食い】

あら、みんなも食べたいのかしら?
でもだーめ、さっきはちょっと食べたりなかったもの
今度はぜーんぶわたしが食べるんだから!
……まぁ、ちょっとくらいならいいけれど


キャサリン・エンスレイヴ
・作戦

a.「広場に被害が及ぶのは心苦しいが仕方ない」
敵のWIZの攻撃が外れた事により発生する花畑をユーベルコードの対象とし、敵の強化を防ぐ。

b.敵のSPDの攻撃の使用タイミングに合わせ、その上空をユーベルコードの対象とし、発生した花びらを風圧で吹き飛ばす。

c.【情報収集】を用いて他参加者との連携を図り、自身の攻撃に巻き込まないようにする。
同時に敵の挙動から使用する攻撃を先読みし、自身の行動につなげる。
必要なら【属性攻撃】も使用する。

d.事後は他参加者と協力して可能な限り、広場の原状回復に努める。
 それが終わったら敵…ドラゴンを【料理】だ!
 食べてみないか? なかなかいけるぜ、竜肉ソーセージ。



 今日の食材は大きなプーレ。間違いないわ、そうでしょう?
 だってだってこんなにも、大きな翼があるじゃない。
 作る料理は決まっているけど、とにもかくにも大きなプーレ。とてもオーブンには入りません。
 これはどうしたものかしら?と、モニカは首を傾げます。

 そんなモニカの視線の先で、プーレは炎に包まれて。
「それなら今日のルセットは、丸ごと直火でロティールね!」
 けれど料理は手順が大事。まずはしっかり縛らなきゃ。ふわりふわりと舞わせた鋼糸で、舌に絡まるカラメルみたいに、甘く甘く締め付けて。熱く炎で抱きしめたなら、皮はパリッとこんがりと。お肉はしっとり柔らかく。ゆっくりじっくり、おいしくなーれ!

 柔き新雪を踏みしめて颯爽と駆け戻った広場では、既にドラゴンと猟兵達の戦いが始まっていた。
 花畑は火に包まれて、怒れるドラゴンの咆哮が響く。
 だが、雪うさぎ達は既に遠くに置いてきた。猟兵達の繰り出す炎熱もドラゴンの吐息も届くことはない。

 なら俺もやるとするかとキャサリンは、猟兵達の立ち位置を眺めつつウィザードロッド構える。
 花畑が広がっているなら、吹き飛ばしてやろうと思っていたが……どうやら、他の猟兵が放ったらしい炎で、あらかた焼き払われている。無暗に広場を傷つけるつもりもなく、それなら本体を狙うのみ。鋼糸を振り払わんと暴れるドラゴンの隙をつき、その横腹を殴り上げる。
「おっと……!」
 すさまじい爆音と爆炎が、ドラゴンを襲う。生じた爆風に半ば飛ばされながら後ろに飛んで逃れたものの、回避が一瞬遅れれば自分自身さえ巻き込まれかねないキャサリンの技。
 それでも、この広場への被害を抑えんと、振り下ろしではなくあえて振り上げで放った効果か、爆炎は空へ空へと昇り夜空が朱に染まる。
 村の子供たちの事を考えれば、この広場そのものへの被害も可能な限り抑えたいところ。思っていた以上に広場への被害が少なかったことに安堵の息を吐いたその時、ドラゴンのブレスがキャサリンの身を打つ。
「……っ」
 キャサリンの放った爆炎は、他の猟兵達の炎とも絡み合い、未だドラゴンの姿も見えぬ程に燃え上がっているというのに。その炎壁を越えて、撃ち込んでくるとは……。

 この戦場に集った猟兵達は、ドラゴンとは距離を開けて戦っている者の方が多い。だが、このドラゴンが放つユーベルコードは広さと距離に優れたもの。この立ち位置では、猟兵達の放つそれよりもドラゴンの攻撃の方が強い。

 モニカもまた、ドラゴンの吐息に晒されて。その頬からは血が落ちる。
 ゆっくりじっくり火を通すのが、このお料理のコツなのよ。でもでもどうにもお腹がすいて、もう1秒も待てないの。
 だってほら……声が聞こえてくるでしょう?赤い赤い血のささやきがひそひそと、内緒話をするように。ぜんぶぜんぶ食べちゃいましょう?いっぱいいっぱい頬張りましょう?
「ちょっぴり、なら……つまみ食いしちゃってもいいわよね?」
 プーレに印を刻み付け、モニカは喉をうるおします。お酒はちょっと早いけど、ぶどうジュースで大人の気分。
「さぁ早く、焼きあがってプーレロティ!」
 やっぱりやっぱりノエルには、プーレロティが付き物よね!

 隣には、楽しげに炎を操るモニカの姿。
 プーレロティ……いや若鳥なんて、そんな可愛い代物か?と、思うがなるほど。
 炎、炎、爆炎、炎。これがチキンであったなら、さぞかしこんがり焼けている事だろう。
「竜肉ソーセージもなかなかいけるぜ?」
 思わず軽口を返しつつ、キャサリンはウィザードロッドを構え直す。ユーベルコードを使えば、大きなダメージを与えられはするだろうが……中々怯まぬドラゴン相手に、爆炎で視界を遮るのは避けた方がいいのかもしれない。そちらの方が、敵の挙動も見切りやすいと言うものだ。
 先ほどから、ナイフでフォローに回ってくれている仲間もいる事だし、やや抑えた炎の攻撃で、プーレロティ作りに乗ってみるのも悪くはないか。

「ソーセージ?それもステキね、おいしそう!」
 でもでも、ちょっぴり困ったわ。
(みんなも食べたいのかしら?)
 まだまだ満たされないけれど、みんなもお腹がすいてるの?それはとっても切なくて、寒くて寒くて寂しいの。それならまぁ……仕方がないわ。
「ちょっとくらいならいいけれど……」
 でも本当に、ちょっとだけよ?

 食材の方はまだまだ新鮮、2人の料理もまだ続く。
 さてさて、その仕上がりは……?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロー・オーヴェル
この竜がいなければ
春の訪れを迎えた森という穏やかな光景になったものを

でも春の息吹はいずれやってくる
その前に……
「お前さんの命の息吹を止めるとしようか」


真正面から斬り込むのは俺のスタイルじゃない

戦闘序盤は竜から距離を取りつつ
投げナイフで攻撃

この段階で竜の挙動を注視し
行動の隙をどうすれば突く事が可能か把握する

戦闘も終盤に入り
竜も後わずかで斃れると判断可能時は
ユーベルコードでの攻撃に切替

その際は序盤での注視を生かし
攻撃する様留意


戦闘後は煙草で一服

全くこんな季節に上着なんて脱ぐモンじゃないな
春が来る前に風邪ひいて冬眠しそうだ

「とはいえ寝込む前に……もう一仕事か」
ある意味戦闘以上に
大切な『仕事』がな


リティ・オールドヴァルト
すごいです…
もう春が来たみたい

みんなと協力
ドラゴンさんを倒します

まずは【全力魔法】
うさぎさんがいないなら思いっきり行けますっ
春のドラゴンさんなら寒いのは苦手だったり、しませんかっ
ダイヤモンドダスト、ですっ

魔法に紛れてドラゴンさんに接近し【串刺し】からの
ドラゴニック・エンド
リリィ、お願いっ

ドラゴンさんの咲かせる花は
遠距離だったら【全力魔法】の突風で吹き飛ばし
地面の花畑は凍らせて枯らせます
綺麗なんだけどっ…綺麗なんだけどっ…!
そんなに早くあったかくなっちゃったら
うさぎさんも溶けちゃうし樹氷も見れないですっ

おやすみなさいドラゴンさん
春は大好きだけど
もう少しだけ…冬を楽しませてください
ぺこりとお辞儀



 蹴りつけられ、踏み固められ、荒れた広場。白と、黒と、茶色の世界に、色が芽吹く。緑から赤に橙色。青、黄色。色鮮やかな花々が溢れ、瞬く間に春の風景を描き出す。

 わぁ……と、藍色の目を見開いて、リティは感嘆の声をこぼす。
 雪解けの時期に生れて、春を迎えるのは次で7回目のリティにとって、春は沢山の出会いと驚きをくれる季節。広がりゆく花畑は、故郷の春を思わせて……それがオブリビオンの成したことだと分かっていても、やはり綺麗だと思ってしまう。
 それでもこのオブリビオンは、樹氷を折り、子供たちの広場を壊す、過去より来たるもの。雪うさぎ達を壊された子供たちが泣いていたように。この森を壊されてしまう事は、まるで故郷での思い出が壊されてしまうような、そんな気がして……。
 きゅっと握りしめた白銀の槍は、今は言葉を交わせぬ姿だけれど。心はいつも共にある。
「がんばりましょうね、リリィ」
 山神達を相手にした時と、同じ言葉をもう一度。雪うさぎ達が保護された今、このドラゴンと戦う事が、今回グリモア猟兵に託された最後の仕事。そしてこれが恐らく、猟兵としてのリティとリリィの最初の1歩になると信じて。

 共に戦う猟兵達が先んじて攻撃を仕掛けに行くのを、やや遠巻きに眺めつつ銀灰色のナイフをくるりくるり手の中で遊んで、ローは眉根にしわを寄せている。
 あの花畑はなんなんだ?
 ドラゴンさえいなければ、春を迎えた穏やかな光景として見ることもできただろう。だがあれがドラゴンのユーベルコードである事は、グリモア猟兵から情報を得ている。それが正しい情報であるならば、あのドラゴンは一体、誰への攻撃を外したというのだろう?
 ドラゴンの挙動には注意を払っていた。だが、誰かがブレスで狙われる様など見てはいない。あまりいい予感はしないが、いつまでも眺めている訳にもいかず。
 前方で戦う猟兵達が、ドラゴンのブレスに傷つくのが見える。元より、ドラゴンのユーベルコードは広さと距離に優れたもの。単なる撃ち合いになってしまっては、力で勝るドラゴンの方に軍配が上がってしまう。

 これは随分と、やりがいのある戦場に来てしまったな……と、ローはフードの端をぐいと掴んで。
 撃ち合いで挑むものが多いのなら、自分の役目は敵の隙を突いての攪乱……偶然か何か知らないが、己がスタイルには合っている。それならば……。
「お前さんの命の息吹を止めるとしようか」
 いずれくる本当の春の息吹を、この森が正しく迎えられるように。
 


 一進一退の攻防を、一体どれほど繰り返しただろうか?
 唐突に、ドラゴンがその翼を動かし――跳んだ。
 リティが慌てて飛びのき、ずしんっと地を振るわせてドラゴンが着地する。それと同時に、広がってゆく花畑――あぁ、やはり。わざと外していたか……。
 猟兵達に力で勝るがゆえに、その優位性を絶対のものにするため。あえて攻撃を外し、花畑を広げている。
 だがそれまで全く移動する事なく、要塞のように構えていたドラゴンが動いたという事は、ようやくこのドラゴンの底が見えたという事……!

 リティとローが同時に仕掛ければ、人間の膝にも及ばぬ小さなリティは脅威にならぬと断じたか、ドラゴンの視線はローに向く。視界を埋め尽くすほどのおびただしい竜胆の花びらが舞い上がり、その全てがローの元に。
 だがそれは誤りであった。体は小さくとも確かな力を宿すものはいるのだと、ドラゴンは知る事になる。
「させません、よっ!」
 花畑と竜胆の花……どちらを防げばいいのかという迷いは一瞬。両方放ってくるのなら、その両方を防げばいい!1人では難しいかもしれないが、頼れる相棒と一緒ならきっとできる筈だから。
 全身全霊の力を込めてリティが煌めく風を起こせば、地面の花は凍り付き、竜胆の花びらがローの背を越え、高く高く舞い飛んでいく。
 攻撃を邪魔された事に苛立ったのか、ドラゴンがリティに向かい爪を振り上げれば。踏み出す1歩で上着を置き去りに、ドラゴンの爪が落ちるより早く踏み込んだローのナイフが足を断つ。
「リリィ、お願いっ」
 花は綺麗だし、春は大好きだけれど……それにはまだ早いから。
 態勢を崩したドラゴンにリティが槍を突き立てれば、招かれたドラゴンの咆哮が、猟兵達の勝利を知らせて。
 ――おやすみなさいドラゴンさん。早すぎた春にお別れを。


 ふぅ……と吐き出されるのは吐息ではなく、白い煙。ふるりと体が震えたのは、ようやく一服できたせいか、それとも……も、なにも、ユーベルコードの為に上着を脱いだせいである。このままでは春を待たずに、永久に冬眠してしまいそうだ。
「とはいえ寝込む前に……もう一仕事か」
 と、上着に腕を通しぼそり。
 ドラゴンの姿に戻ったリリィと共に、ちょこちょこと傍によって来たリティが仕事?と首を傾げれば。
 意味ありげに口元をあげたローの笑みは、悪戯を思いついた少年のそれであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『樹氷の世界』

POW   :    仲間たちと共に樹氷を眺める

SPD   :    氷の世界を写真におさめたり、描いたりする

WIZ   :    物思いに耽る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

祝・刻矩
ほうほう、樹氷か
写真でしかみたことがないから楽しみじゃのう
スマホが動くか確認しておかないとならんのう

うう、さむさむ
おお、あれが樹氷か

幻想的じゃのう
自然にできたっちゅうことじゃろ?
ますます幻想的じゃあ

うむ、記念撮影をしておかねばならんのう
(スマホを出していろんな樹氷を撮りまくる)
おおー、あれは太くて綺麗で立派な形をしとるのじゃ

しかし俺はこっちの歪な形をしたのが好みじゃな
自然にできた感じがして見てて飽きんのじゃあ

うむ、良きものをみれたのう

アドリブ歓迎



 祝・刻矩(風の如く、舞う如く・f14803)は、ざくざくと雪を踏みしめて、冬の森を歩く。ランタンの灯に照らされた刻矩のピンクの耳と尾が、暗い森に浮かび上がるように鮮やかで。
 その耳をぴくぴくと動かしてみるものの、一面の雪に音が吸われているのだろう。聞こえてくるのは、自分の足音と息遣いだけだ。

「おお、これが樹氷か」
 根本は太く、青い目を細めて仰ぎ見れば、天に向かい枝は細く細かく分かれ伸びゆく。その1本1本が白く染まり、まさに花のごとく。
「幻想的じゃのう」
 これはきっと、自然の力でなければ成しえぬ光景なのだろう。そう思えばなおの事、どこか愛おしさにも似た感動に胸が震える。
 同じ森でも都会のビルの森は、刻矩を圧し潰そうと迫ってくるようで、どこか息苦しくて。静謐な森の空気をゆっくりと、肺の奥に吸い込んで……吐く。冷たい空気があっという間に体温を奪ってゆくけれど、それさえも、森の香りに自然の息吹を感じればどこか心地がいい。
「うむ、記念撮影をしておかねばならんのう」
 スマートフォンを取り出してはみたものの、はて、この寒さでちゃんと動いてくれるだろうか?
 画面に指を滑らせてカメラ機能を起動してみる――問題はなさそうだ。
 とりあえず、目の前の樹氷をフレームに収めて、1枚。夜の撮影ではあるが、ランタンに照らされた樹氷の写真が画面に映る。
 全容を、幹を、重なり合う枝を、そして星空へ伸びゆく様を。シャッターを切りながら、森の奥へ、奥へ。
「おおー」
 まるで、木々の主かのような一際大きな樹氷を見つけて、思わず声をあげた。
 逞しく、迷いなく天へと枝を伸ばす巨木。これも記念に1枚。
 振り返れば、柔らかく積もった一面の雪の中に、自分の通ってきた足跡だけが残されている。これを辿って、そろそろ広場へ戻ろうかと思ったその時、ふと瘤が付いたような歪な樹氷が目にとまる。
 逞しく美しい巨木もいいが、こんな歪もまた、自然らしくていい。
「帰りも退屈しなさそうじゃのう」
 遠目には同じに見えても、1本1本の樹氷はやはり、違う。そんな自然の間違い探しを楽しむように、刻矩は帰路に着くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オーガスト・メルト
なんだよ、この竜を狩りに来たのは俺以外にもいたのか。
了解した。血と肉は持ってけ。
俺は食わんから、いらん。
代わりに牙と爪と角と鱗…出来れば骨や眼もくれると嬉しい。

【WIZ】連携・アドリブ歓迎
解体して確保した素材を【竜帝の宝物庫】に放り込む。

…あー、そうだ。ナイツ、最初に収納した雪があるだろ?
あれを空から荒れた広場に降らせておけ。戦いの跡くらい消せるだろ。
足りなきゃ他所からも運べばいい。
…最初からこうするつもりだったか、だと?
たまたまだよ。都合の良い偶然さ。

なぁ、デイズ、ナイツ……春になったら、あの竜の息吹がここに綺麗な花畑を作るかもな。
今度はそれを見に来るか?『うきゅ!』『うにゃにゃ!』


モニカ・ラメール
アドリブ等は歓迎よ

悲しいけれど、プーレロティを取り分けるわね……
ポワトリーヌ、ブラン……
あなたたちもお料理手伝ってくれたものね、食べる権利はあるわよね……
キュイス、エロン……

つめやつの?
残った部分は後で丸ごと食べるつもりだったけど、いい、わよ?

それじゃ樹氷を見ながらごはんね。いただきます!
ん~~~! プーレロティもソーセージもおいしいわ!!
がんばったかいがあったわね!

食べ終わったらラパンを作ったりしていっぱい遊んではしゃいで、
……はしゃいでたらお腹がすいてきたわ

ねぇ、そこのシャ(猫さん)。何か持ってないかしら?
シャ……ラングドシャが食べたいわ!
……そうよね、急に言われてもないわよね
じー、じゅる


キャサリン・エンスレイヴ
・作戦

a.ドラゴン――竜肉を食材に料理を行ない、他参加者に提供する。
 パイにハンバーグ、或いは単純に骨付き肉として。
 モツ煮込みはどうだろうか。
 味噌は使わず醤油だけで味付けしてコトコト煮込むんだ。
 グロテスクな物は珍味と言うだろ。目玉も人数分刻んで加えておこう。
 皆が舌鼓を打つ頃、食材と料理法を料理漫画よろしく解説する。

b.あるいは食材がドラゴンと聞いて嫌がる参加者がいるかもしれない。
 嫌々する参加者の口に料理を上目遣いで「あ~ん♡」と差し出すのも良いかもしれない。

c.頭部は丸焼きにしてクロッシュで隠し、ここぞというタイミングで披露して皆の賛辞を受け取るとしようか!

適当に採用お願いします。



 力尽きたドラゴンの前で、鉢合わせする猟兵が3人。
 目が合って、しばし……どうやら互いに目的は同じか?と思い至る。
 モニカが、そうよね……と、少し表情を曇らせて。
「あなたたちもお料理手伝ってくれたものね、食べる権利はあるわよね……」
 と、グルメツールで切り分け始めれば、キャサリンがすかさず、そこの肉はこっちに頼むと口を挟む。
 キャサリンいわく、ハンバーグにすると美味い……って、この場で作るのか?と、首を傾げるオーガストだったが。
「いや、俺は食わんから」
 流石にそこは否定しておくのだった。

 食事と収集。やる事は似ているが、目的は全くの別。
 代わりに爪や角をとオーガストが申し出れば、ちょっと拗ねたような顔をしつつもモニカも頷く。
「いい、わよ?」
 ……丸ごと食べるつもりだったけど。小さくつぶやいたモニカの言葉に、え?と、オーガストはちょっと驚いて。
 いや流石に骨とか鱗とか言わなくても残すだろうと、あえて言わなかったけれど、もしやこの少女、丸ごといける口なんだろうか。
「出来れば牙と鱗……骨や眼もくれると嬉しい」
 オーガストが慌てて追加オーダーを述べれば、キャサリンもすかさずモツ煮はどうだろう?と言い始める。
 あ、なんだかモニカのほっぺが膨れてきた気がするぞ……。

 ポワトリーヌ、ブラン……。キュイス、エロン……。
 ドラゴンを切り分ける時のモニカの表情は、どこか哀愁が漂っていたが、元は大きなドラゴン。細かく分けていけば、各々の所におおよそ希望の部位が行き渡る。
 キャサリンが携行した調理道具を広げ始めれば、しばしの後、じゅうじゅうと聞いているだけでお腹が空きそうな音が、広場に響き始めた。
 簡易コンロの上でキャサリンが骨付きの肉をくるくる回すさまは、まるでキャンプに来たようで、幼い猟兵達の目を引いている。
 とはいえ、ここはキャンプ場ではなく樹氷の森。そして村の子供たちが遊ぶ広場だ。あまり長く火を使っては、せっかくの樹氷も解けてしまう。
 料理が終われば、調理道具は素早く回収。出来上がった料理を、キャサリンが切り分け、良ければ食うか?と差し出せば。ぱっと表情を明るくしたモニカが、その大半をぺろりと平らげる。

 一方でオーガストは、手にした素材の状態を確かめて。肩にとまっていたナイツに声をかければ、雪の時と同じに、素材がナイツの口に吸い込まれていく。
「あー……」
 なぜか少し視線を泳がせて、先の戦いで収納した雪を降らせておけと、ナイツに命じれば、どさりどさりと、ナイツの吐き出した雪の塊が落ちてくる。
 完全に元通りとはいかないが、地面まで抉れた所はならされ、土交じりに汚れてしまった雪も隠されていく。
「にゃ!?すごいですにょ!」
 通りかかったグリモア猟兵――フィリオが、雪を運んできてくださったにょですか!っと目を輝かせれば。
「たまたまだよ。都合の良い偶然さ」
 と、口から出る言葉はやっぱり否定交じりで。それでも、きっと村の子供達も喜びますの。と、猟兵からは感謝の言葉を返されるのだった。

 取り戻した雪で、せっせと雪うさぎを作るモニカ。指はあっという間に冷たくなってゆくけれど、かつてはこんな風に雪にふれるどころか、出歩く自由さえなくて。
 それを思えば、この冷たささえ楽しくて。少しだけ、飢餓感も忘れられそうなそんな気が……。
「ねぇ、そこのシャ。何か持ってないかしら?」
「にゃ!?」
「うきゃ!?」
「うにゃ!?」
 突然に呼ばれてびっくりしたフィリオと、フィリオの声にびっくりしたデイズとナイツ。いやお前たちは呼ばれてないぞ……と、すかさず主のツッコミが入る。
 ちょっとだけ飢餓感を忘れられたような気がしたけれど、遊べばやっぱりお腹は空くものだ。今の気分はそう……。
「ラングドシャが食べたいわ!」
 モニカがそう言えば、フィリオは慌ててポケットを探してみるものの、そう都合の良い偶然は何度もあってくれなくて、しょんぼりと耳を垂れる。
 まぁ、確かに。急に言っても中々あるものではないし……けれど、やっぱりお腹はすいた。
 目の前にはケットシー。白くて、ふわふわで、これはまるで……。
「メレンゲ?」
 モニカが呟けば、フィオはメレンゲではございませんにょー!と、フィリオは慌てて逃げていく。

 フィリオが逃げた先では、キャサリンが自分の分として取り分けていたドラゴン料理に舌鼓中。
「お?グリモア猟兵さんも、食べるか?」
 慌ただしくパタパタと駆け寄ってきたフィリオに、すっと差し出したのは先ほど作ったハンバーグ。
「刻んだ目玉も混ぜたから、中々いけるぜ」
 はい、あ~ん。と、キラキラした笑顔でハンバーグ付きフォークを近づければ、フィオは遠慮させていただきますにょー!と、やっぱりフィリオは逃げていく。
「美味いんだがなぁ」
 結局フォークは自分の口へ。肉汁が口の中へと広がっていく。うん、美味しい。美味しいのに、進んで口にする者が少ない気がするのは何故なんだろうか……と。食文化の相互理解というものは、中々簡単にはいかないようだ。

 走り去っていくフィリオを横目に、オーガストは白い息を吐く。自分に出来ることは全てした。戦いも、それ以外も。
 今はまだ、凍てつく風だけが吹き抜けていくけれど、来たるべき春が来たら、あのドラゴンの吐息がここに花畑を作ったりするだろうか。
 子供たちが泣くことなく、誰もに喜ばれる花畑なら、それもいい。
 今度はそれを見に来るか?と黒白の竜達に問えば、まるで人の子が元気に手をあげるように、ばさりと翼を広げて、デイズとナイツの元気な鳴き声が返ってくるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リティ・オールドヴァルト
樹氷をおさんぽしつつ
きれいーでもさむいのです…っ
春の訪れはやっぱり急なのはだめなのです
はーっと手に息を吐いて
でも…樹氷もうさぎさんも残ってよかった
見回してにっこり
フィオねえさま、教えてくれてありがとうございました…っ
ぺこんっとおじき

にいさまのようには
きっとじょうずに戦えなかったですし
みんなと一緒じゃなかったら勝てなかったかもしれなかったけど
でも
ぼくなりにがんばれたのです
リリィもありがとう
なでなで

フィオねえさまはうさぎさんの作り方知ってますか?
知ってたら教えてくださいっ
一緒に作りませんか?
一緒にがんばったみんなの数だけ作りたいのですっ
気合いを入れて雪を掴もうと

って
とってもつめたいのですっ…!!



 ランタンの明かりに照らされて、夜の闇に浮かんで見える樹氷達。
 まるでおとぎ話の世界に入り込んでしまったような、とても綺麗で、どこか不思議な光景に、心はうきうきと踊るけれど……。
「さむいのです…っ」
 ふかふか毛皮のケットシーでも、寒いものは寒いのです。
 けれどこの寒さがこそが、リティ達が確かに守ったもの。守り抜いたもの。

「フィオねえさま、教えてくれてありがとうございました…っ」
 通りがかったフィリオに、リティはぺこりとおじぎ。
 助けられたり、助けたり。きっと一人では勝てなくて、まだ大好きな兄さまの背中は遠いけれど。
「リティ様も、雪うさぎさん達を助けてくれて、ありがとうございますの!」
 グリモア猟兵は、自身が予知した事件では共に戦う事ができないからと、返ってきたのはお礼の言葉。
 猟兵としてオブリビオンを倒す事。竜と共にある騎士として、守りたいと願ったものを守り通したこと。
 どちらも成し遂げてみせたのだから、これはきっと胸を張っていいことのはずだ。そんな達成感に満たされて、自然と笑顔がこぼれる。それから……。
「リリィもありがとう」
 頼もしい相棒の頭をそっと撫でれば、主の笑みにつられてか、リリィも嬉し気に鳴き声をあげるのだった。

「そういえば、フィオねえさまはうさぎさんの作り方知ってますか?」
 広場で見た雪うさぎ。山神と戦っていた時は急いでいて、あまりよく見られなかったけれど……折角なら一緒にがんばったみんなの数だけ、作ってみたいから。
 お任せくださいまし!と張り切ったフィリオが、丸い感じにと雪を掴んでぎゅぎゅっと握ってみせれば、見よう見まねでリティも雪に手を伸ばし……。
「とってもつめたいのですっ…!!」
 思った以上の冷たさに、思わず手を引っ込める。
 正しい雪うさぎの作り方……まずは手袋の装備から?
 ぷにぷに肉球のケットシーでも、冷たいものは冷たいのです!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロー・オーヴェル
一つくらいは雪うさぎを作っておこう
余り大きな物を作ると手が冷たい時間も長くなる

その後は折角の機会だし
ちょいと森をぶらつくとするか


森はたくさんの衣装を見せてくれる

季節ごとで纏う衣を変えるその姿は
まるで自然の万華鏡だ

春は安らかで
夏は鮮やかで
秋は穏やかで
冬は……厳かな

雪と氷が織りなす光景は美しい
だが美しすぎる光景は逆に近寄りがたさを生む

それでもあの広場とそこで遊ぶ者を受け入れてるように
森は来訪者を拒否しない

「ああ、なるほどね……」

この森を守った事はあの兄妹が遊ぶ世界を守った事に
雪うさぎを守った事はあの兄妹が過ごした時間を守った事に

俺がやった事はそういう事
「子供を守るのは大人の役目、か」
まぁ悪くない



 1歩1歩、足を踏み出すたびに、ざくざく、ぎゅぎゅと、雪を踏みしめる音がする。
 踏みしめる音しか、しない。
 戦闘の喧騒が過ぎれば、森は元通りの静寂を取り戻し、その静けさは、どこか、耳の奥が痛みに似た感覚を覚えるほどで。
 上着のポケットに突っ込んだ手に、ようやく少し感覚が戻ってきた。せっかくだから1つくらいはと雪うさぎを作ったものの、冷たい雪に触れれば瞬く間に熱が奪われて、すっかりと手がかじかんでしまった。

 夜の森は闇深く、空を見上げれば雪の花の間から星が見える。
 あと幾度かの夜を超えたら、ドラゴンが見せたような花畑が森を覆うのだろうか?
 ローは目を閉じ、思いを馳せる。
 花香る安らかな時期を過ぎて、鮮やかに緑煌めく時を過ぎて、動物たちを満たす穏やかな実りを過ぎて……まるで万華鏡のように、その色を変えてゆく森の景色。
 そして今は、自然の力でしか作り出せない、なだらかに美しく広がる白い世界。足を踏み入れる事さえ躊躇ってしまいそうなこれを、あえて言葉にするのなら、厳か……と表せばいいだろうか。

 遠く広場の方から、共に戦った猟兵達の声が聞こえてくる。広場まで戻ってきてみれば、ローが作ったものではない雪うさぎが大増殖していて。
 もうそれなりにいい数だと思うのだが、まだ作り足りないのか、主に小さな猟兵達が雪の冷たさに時折身を震わせたりしながら雪うさぎを作り続けている、にぎやかな光景。
「ああ、なるほどね……」
 今回、この場所で戦った事の意味が分かった気がした。いや、実感した……という方が、近いだろうか。
 森と人の子が共にある場所。遊ぶことが仕事の子供たちにとっての、まだ狭く、けれど大切な世界。幼い猟兵達が楽しそうに雪うさぎ作りに興じているように、その兄妹も同じように笑いあって雪うさぎを作ったのだろう。そして、これからもきっと何度でも、雪うさぎを作り遊ぶことができるのならば、己がここでナイフを手にしたその意味は――。
「子供を守るのは大人の役目、か」
 こんな気分になれるのならば、たまにはこういう役目も悪くはないかと、ローは静かに思うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

三岐・未夜
【るり遥と】
樹氷なんてなかなか見らんないし、折角だから一緒に見たいなーと思って
友達と色んな所行くの、実はちょっと憧れてたんだよね
だから、僕から誘って一緒に行く穏やかな場所の最初は、るり遥が良い

わー……キラキラしてる……
すごいねー、樹氷なんて初めて見た、僕
スマホで写メって、はしゃぐ声と嬉しそうに振られる尻尾

一緒に雪うさぎなんて作ってみたりして
……るり遥、大丈夫?寒くない?
寒さが身にしみるのは僕も同じだけど、多分るり遥よりは幾分マシだと思うんだよね
……貸そうか?
もっふぁ。差し出される尻尾

撮られた写真にきょとんとして
あとで欲しい!
友達との写真とか、一も二もなく飛びついた

……帰ったら大浴場に直行かなあ


松本・るり遥
【未夜】
雪?樹氷?えっ 見る 行く

……そー言われてみれば
未夜から誘うとかあんまないよな
何だそれ いや嬉しいけど 変にこそばいソレ……

なんせ雪の降らない町の男子高校生である
雪とか好きに決まってんだろ、もくもくはしゃいで素手でにぎにぎ小さい雪だるまを作りつつ
一緒に樹氷を眺めて散歩

冷て
やっべすごい冷て
いや寒
ごめん未夜尻尾貸して

尻尾を借り
襟巻のように巻き取ったところで
普段ならまずしねえんだけどさ
スマホを掴む腕を伸ばして一枚、2人の写真なんて撮ってみた

……全っ然未夜しか映ってねーや
けらけら笑って満足した
撮り直しとか別にいらないよな

風呂入りたいな
でももう少し雪見てたい
じんじん寒くて、痛ぇけど、気持ち良くて



 外を恐れて内に内にと、閉じこもって。
 けれど、誰かに手を引かれて外を歩けば、少しずつ――未夜の世界は広がっていく。
 話に聞いた樹氷の森。手元の端末を触ればいくらでも写真は出てくるけれど、友達と外に出る事はこわくないのだと、楽しいのだと知った今は、誰かと一緒に見たい、と。そう、思えるようになってきた。
 では誰と?と、考えたときに真っ先に思い浮かんだその人が、今、隣にいる。

「えっ、見る。行く」
 未夜から樹氷の森の事を聞かされて、松本・るり遥(蛙鳴戦争・f00727)がそう応えたのが先日の事。
 特に深く考えずにその時は即答してしまったけれど、普段外へと向かう事にさえ抵抗を覚えている筈の未夜が出かけようなんて。自分は勿論のこと、誰かを誘っている所も見たことはない。
 それに気づいてしまうとどうにも落ち着かなくて、つい目線を逸らしては一方的な絶妙な気まずさを味わっていたのが、つい先ほどまでの事。
 けれど今は……。

「やっべ、すごい冷て」
 吐く息は白く、踏み出した足はぎゅっと音を立てて沈み、雪に突っ込んだ手は瞬く間に冷えていく。
 雪降らぬ地に住む、青春真っただ中とも言える男子高校生。これでテンションが上がらぬ訳がない。
 先ほどまでの気まずさはどこへやら。るり遥は目に見えてうきうきとした様子で森へと入っていく。そんな様子を見られれば、誘ってよかったと未夜も安堵交じりの嬉しさを覚えて。
 2人で歩く森の中、ランタンの灯に照らされて、夜闇に白い樹氷が浮かび上がる。
 戦いのさなかにも、目には入っていたけれど。やはり落ち着いて眺めてみれば、細やかな枝のその端まで白に染まった光景は、綺麗だと、そう思う。
 未夜がスマートフォンを取り出して、あちらこちらにカメラを向けていると……画面に飛び込んできたのは、凝りもせずまた雪を握っているるり遥の姿。

 雪になどそうそう触る機会もなく、ただ握るだけでは誰もがイメージするような綺麗な雪うさぎや雪だるまにはなってくれず、悪戦苦闘する事しばし。
「……るり遥、大丈夫?寒くない?」
 心配そうに、未夜はるり遥を見る。いや、自分も寒い事は寒いのだけれど、何となく種族的な差という意味では、たぶんるり遥よりマシな気がして。
 ぶるりと体を震わせているるり遥の指は既に赤くなり、はーっと息を掛けてみるものの、痛み以外の指の感覚が遠い。
 ちょっと躍起になって雪に触れ過ぎたかもしれない。
「ごめん未夜、尻尾貸して」
 るり遥が未夜に助け舟を乞えば、丁度そうしようかと思っていた未夜は快く尾を向ける。
 だが、それこそがるり遥の狙い。隙ありとばかりに尻尾を手に取り、くるりと回れば見事な尻尾マフラーの完成である。だがそれだけではない。スマートフォンを取り出して、ぐっと近づき写真を1枚……。
「うわっ!?」
 ……と、思ったのだが。急に引き寄せられる形となった未夜がバランスを崩し、結局2人揃ってぼすんっと倒れる羽目に。
 柔らかな雪のおかげでそれほど痛くはなかったが、写真はちゃんと撮れたのかとスマートフォンを操作してみると映っていたのは未夜の顔。未夜だけの顔。
「写真とったの?」
 スマートフォンの画面をみて、急にけらけらと笑い出したるり遥に、未夜はきょとり。
 確かに倒れる直前に、カシャッと音がした気がする。一緒の写真……友達の写真。
「あとで欲しい!」
 未夜がそう言うと、何故かるり遥はますますけらけらと笑い出す。
 るり遥がなぜこんなに笑っているのかは分からないけれど、友達が笑っているのだからまぁいいか……と、未夜も力を抜いて雪に身を預ければ。じわじわと、雪の冷たさが体に染み込んでくる。
「……帰ったら大浴場に直行かなあ」
 未夜のつぶやきに。るり遥も、それもいいと思う。けれどこの雪の冷たさは、笑い過ぎて熱を持った頭を冷やしてくれているような、そんな心地よさがあって。
 もう少しだけこのまま、樹氷と星を見ていこうかと――そんな2人の姿を、2人の作った雪うさぎと雪だるまだけが見ていた。



 今回の猟兵達の活躍は、誰の目にも止まる事はなく。語られる事もなく。
 この地の人々は、明日もまた平穏を過ごす。
 けれども広場には、4羽だけではない。いつの間にやら沢山増えた雪うさぎ達。
 太陽が高く昇る頃にはきっと、村の子供たちの驚きの声が響くのだろう。
 あるいは遠い未来に、幼き日の不思議な思い出として語られる日がくるだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月25日


挿絵イラスト