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灰星に願いを

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●セラフィエル
 流星に願う。
 それはUDCアースにおいては誰もが知る願掛けの一種であったことだろう。
 地方に寄っては流れ星を霊魂とみなすこともあったし、吉兆の前兆として捉えることもあっただろう。また逆に凶兆として捉える面もある。
 こうして吉凶の間に揺れ動く流星という天体の現象は、どのようなものであれ、人々に意味という名の儀式として根付いていくのだ。

「時に悪魔に投げつけられる礫として。時に悪魔が砕けた破片であるとして。時に悪行を撃つ火矢として。時に天界より飛ぶ人の魂として」
「また、それは神々が外界の様子を眺めるために天界を開け、その瞬間に天の光に星として流れ落ちる。ゆえに、この時に願いを唱えれば、それが聞き届けられる」
「ならば、君はなんと願う」
 その声は意味のない声。
 問いかけは『ジャガーノート・ハーレー』には意味のないことであった。
 すでに己の人格に関わる事象の殆どを失い、言語機能も半分は喪われている。例え、その声に応えることができたとしても、彼は全てを詳らかに語ることはできなかっただろう。

 されど、問いかけに『ジャガーノート・ハーレー』は応える。
「――、オ、ア……願ウノハ、――、ダ、カ、ラ……」
「そうか、『約束』だからか。か細い糸のようなそれに縋るのだな、八番目の子よ。君は願われた『約束』を果たせなかったことを悔いているのだろう。だから、それに縋るのだ」
 声の主は、ゆっくりと言い聞かせるように『ジャガーノート・ハーレー』に告げる。
 もしも、流星が人の魂であるというのならば、それに願いを掛けることの無意味さは言うまでもない。
 人は人の願いを聞くことができたとしても、神ならざる身には叶えるだけの全能は存在しない。

「人は君の魂が空に軌跡を描くのを見て、己の願いを呟くだろう。八番目の子よ。果たされなかった『約束』を君が叶えたいと思うのならば、君は――せねばならない」
「ボク、ガ……オレ、ガ、スル、事……ソレガ、オレ、ボク、トイウ存在……!」
『ジャガーノート・ハーレー』は星へと変わる。
 強大なるオブリビオン。UDC怪物として地上に召喚される。そのための儀式としての火種は、地上にある。
 人は天を見上げ、その心にある願いを呟くだろう。
 ただそれだけでいい。
 全てを叶える全能などUDC怪物である『ジャガーノート・ハーレー』は持ち合わせていない。

 ただ滅びをもたらす極光として、夜の帳を切り裂くのだ――。

●滅びの儀式
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はUDCアース。皆さんは流星に願い事をしたことはありますか?」
 ナイアルテがそう告げる言葉に猟兵達は、また一体何故そのようなことを言うのかと思っただろう。
 流星を見たのならば、消えるまでに三度願いを唱えれば聞き届けられる。
 それは有名な願掛けであったことだろう。恐らく猟兵たちの殆どがそれを知っているであろうし、UDCアースに住まう人々ならば常識とも言えただろう。

「どうやら、星の巡りと数によって、その願掛けがUDC怪物を呼び寄せる儀式として機能するようなのです」
 オカルトとしては弱い部類だろう。
 怪奇現象、と呼ぶにはあまりにもそぐわぬ儀式だ。
 殆どの場合成り立たない儀式であるとも言える。だが、儀式とカウントされる条件があまりにも緩すぎる。
 空を見上げ、流星を認識し、願うだけ。
 単純ながら、特別な手順を踏まなくても可能な儀式。

「ですが、この儀式の凶悪なところは、儀式事態に悪意がないこと」
 UDCアースではSNSなどを通じて、流星の情報が多く伝播している。流星の一つが大きな火球のように接近することも、煌々とした輝きを長い時間人々の瞳にさらされることも話題となっている。
 だが、それ以上に危険であるのは、この儀式に参加した時点で『流星を見た人間の感覚や認識を著しく狂わせ、いずれ重い狂気の果てに残虐な猟奇事件を引き起こさせる』という特性にある。

「今回の流星という天体ショーは、天候も相まって日本のある街でしか観測することができない、というのが私達にとって幸いな事実でしょう」
 星の巡り、とナイアルテが言ったのはそのことだ。
 儀式へ参加することは簡単だが、達成するための数が問題なのだ。ゆえに成り立つ可能性が極端に低い。
 けれど、日本でその街だけが巨大な流星が見られるとわかれば、多くの人々が貴重な機会と知って集まるであろうし、またその街の人々は話題ゆえに多くが空を見上げるだろう。
 だが、それでも儀式達成のための数には到達しない。
 けれど、儀式は完遂されなくとも、ただ徒に街一つまるごと狂気に堕とされてしまう。

「それをさせぬために皆さんには、その街に赴き、現地のUDC職員の方と協力して頂きたいのです」
 現地ではすでに多くのUDC職員が直に流星を見ようとする者たちを街に入れさせないように多くの細工をしているようである。
「UDC職員の方々がネット上での情報工作を担当してくださっていますが……」
 そう、流星が見られるという情報が拡散したのは、もう避けようがないし、かと言ってこの儀式を完遂しなければ、UDC怪物は現れず、ただ人々を徒に狂気に染めてしまうだけだ。ならば、どうすればいいのか。

「至極シンプルです。この儀式に必要なのは、数。例え、UDC職員の皆さんの情報工作によって、儀式に直接参加する人々が少なくとも、この『流星を見た』という数さえ確保できればいいのです」
 ナイアルテはスマートフォンを手に取る。
 UDCアースの人々に普及した通信機器。それはSNSなどを介する道具。
「流星が見られるのは、日本でこの街だけ。直に『流星』を見た人々の影響は深刻なものとなります。けれど、儀式完遂のための数が足りないのであれば……」
 そう、猟兵達は流星を人々より早く発見し、SNSへと画像を投稿する。その画像を見た者たちに願いを唱えさせれば儀式としてカウントされるのだという。
 例え、実際に目にしなくても拡散した流星の画像を見れば、それは『星に願いを』掛けたことには違いない。

 そうしてUDC怪物を現実世界に引きずり出すしかないのだ。
 けれど、時間を掛けてはいられない。
「時間が経過すればするほどに、流星を実際に見た人々も、画像を見た人々も狂気に犯されていくでしょう。UDC怪物を逃すことも、放置することもできない以上、スピード勝負となります」
 つまり、猟兵達がやるべきことはSNSでの『流星画像の拡散』と現実世界に引きずり出した『UDC怪物の即時撃破』である。
 ナイアルテはうなずく。
 しかし、それが最も困難であることを。

 流星によって召喚される『UDC怪物』の名は『ジャガーノート・ハーレー』……恐らく最も倒され難き『UDC怪物』であったのだから――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はUDCアースにおけるSNSを利用した『UDC怪物召喚儀式』を完遂させ、未知の脅威である怪奇現象の根を断つシナリオとなります。

●第一章
 日常です。
 怪奇現象となる『流星の出現』はすでにSNSや情報媒体に寄って街の人々に広く知れ渡っています。
 しかし、幸いなことに天候などの状況から『流星の出現』を見ることができるのは、ある街だけという限定的な状況となっています。
 この『流星の出現』を見た人々は徐々に狂気に侵されていきますが、儀式を完遂してUDC怪物を打倒すれば、その狂気は共に霧消するのです。

 一人でも実際に流星を見て、重い狂気に侵される人々を減らすために皆さんは天体観測によって『流星の出現』を一般人よりも早く見つけ出さなければなりません。

●第二章
 冒険です。
 儀式に参加する人々は減らさなければなりませんが、しかしこのUDC怪物を召喚するための儀式には参加人数が多くなければなりません。
 皆さんはこの『流星の画像』をSNSや情報媒体に投稿し、また他の手段でもって、狂気の影響を少なくした上で人々に伝播させ、儀式を完遂しなければなりません。

 本末転倒のように思えますが、流星の実物を見るよりは、人々の精神に与える影響がすくないためであり、儀式を完遂しなければUDC怪物の広める狂気を根本的に排除できないためです。
 端的に言えば、SNSでバズらせて数を稼ぎ速攻でUDC怪物を召喚し、実際の流星を見た人々の精神が完全に狂気に侵されて仕舞う前に打倒するしかないのです。

●第三章
 ボス戦です。
 皆さんの儀式によって現実世界に引きずり出されたUDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』との戦いとなります。
 ここで即時撃破しなければ、徐々に人々の意識は狂気に汚染されていきます。
 しかし、『ジャガーノート・ハーレー』はユーベルコードの特性と強大なUDC怪物としての力をあわせており、強敵です。

 ここで確実に撃破しましょう。

 それでは、UDCアースに訪れる流星に掛ける人々の願いを儀式に変えるUDC怪物の悪辣さを打倒する皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『星の観測』

POW   :    星や流れ星を、気合で見つける

SPD   :    星や流れ星を、技術で見つける

WIZ   :    星や流れ星を、知識で見つける

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達はいち早く夜の帳が降りる前にUDCアースにある日本のある街へと降り立つ。
 人々はスマートフォンを手にしている。
 彼等が心待ちにしているのは、この後に訪れる巨大な流星の出現という天体ショーである。彼等に悪意はない。けれど、その流星はUDCアースのインターネット上に拡散されたUDC怪物召喚のための儀式の要因の一つでしかない。
「ねー、この日本でこの街でしか見られないんだって、やばくない?」
「運がよかったよな。せっかくだし、動画で撮っておいて後でSNSにあげようぜ」
「それ良きー! バズっちゃうかもね!」
 そんなやり取りがあちこちから聞こえてくる。
 しかし、彼等がそのSNSでの反響を見ることはきっとないだろう。その流星の出現を目撃した者たちは皆、一様に狂気に蝕まれ、堕とされてしまうからだ。
 徐々に、そして、確実に狂い、残虐なる事件を引き起こしてしまう。

 だからこそ猟兵達は、目を皿にして、またあらゆる機材を使って流星の出現を人々より早く察知しなければならない。
 そして、画像なり動画なりをSNSに投稿し、即座にこのインターネット上に存在しているであろうUDC怪物を現実世界に引きずり出さなければならないのだ。
 スピード勝負であることは言うまでもない。
 流星の出現のタイミングもまた、この時間帯であるということしか判明していない。
 猟兵達は、天体ショーに湧く人々とは違う思いのまま空を見上げ続けるしかない。
 それだけが人々をUDC怪物の撒き散らす狂気から救う手立てなのだから――。
神代・凶津
正に毒をもって毒を制すってやつだな。
「…被害を最小限に食い止めませんと。」

先ずは情報収集よ。
スマホを使ってSNSやネットサーフィンで流星の出現が最初に見れそうな場所を検索。
俺達が下手の横好きで調べるよりも、ネット上の野生の天体観測のプロに従った方が効率的ってもんよ。
「…その場所じゃ他の一般人も集まりませんか?
一般人より早く見付けなければいけないのに。」
なに、俺に考えがあるぜッ!

おーおー、集まってる。んじゃ相棒よろしく。
「…幻朧桜花。」
何人集まろうとここで観測するのが俺達だけなら問題ないってもんよ。事件が終わるまでお休みってな。
後は撮影して投稿っと。ウェーイ。

【技能・情報収集】
【アドリブ歓迎】



 UDC怪物召喚の儀式は、猟兵たちにとって単純なものであったが、同時にそれは狂気にさらされる人々の数が膨大なものとなることを示していた。
 流星の到来。
 それは普段空を見上げるのことのない人々までもが空を見上げ、知らずのうちに儀式へと参加してしまう危険性を持っていた。幸いにして、今日というこの日、日本の夜空が晴天であったのは、猟兵たちが転移した街一箇所だけであった。
『正に毒を持って毒を制すってやつだな』
「……被害を最小限に食い止めませんと」
 赤い鬼面の神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と相棒である桜が街に降り立ち、スマートフォンを手にする。

 二人を照らす液晶画面にはSNSやインターネットの画面がスクロールされていた。
 まずは情報収集というわけである。
『流星が現れる初動をまずは抑えねぇとなッ!』
「とはいえ、どのようにして流星が現れるのかを確認するのは……正直、私達にはどうしていいかわかりません」
 桜の言葉に凶津がカタカタと歯を鳴らす。
 確かに二人はそうした事情に疎いものがあった。UDCアースの世俗は知れど、天文学について明るいわけではなかったのだ。
 ならばどうするべきか。
 桜はスマートフォンの液晶画面を見やり、難しい顔をする。

 けれど、凶津は簡単だと笑うのだ。
『俺たちが下手の横好きで調べるよりも、ネット上の野生の天体観測のプロに従った方が効率的ってもんよ』
 凶津の言葉は最もであったことだろう。
 こうしている間にもUDC職員たちが情報を封鎖し、操作している。多くの人々が流星を見て願いを呟かなければ儀式として成り立たない。
 だが、流星を見たものは、徐々に深い狂気に囚われてしまう。
 凶津が『毒を持って毒を制す』と言ったのはそのためだ。画像や動画として流星を人々に認識させ、狂気を軽いものとした上でUDC怪物召喚の後に即座に撃退する。

 これしか驚異を取り除く方法がないのだ。
『おっ、やっぱりあったな。流星が到来するであろう方角! それにやっぱりあれだな。街中よりも、光源の少ない山間のほうが見やすいと来た!』
「……その場所じゃ他の一般人も集まりませんか? 一般人より早く見つけなければいけないのに」
 桜の危惧も尤もであったことだろう。
 しかし、凶津は己にいい考えがある、と自信たっぷりである。

 桜と凶津はインターネット上にある、絶好の流星観測スポットに足を運ぶ。
 このSNS隆盛たる現在において、そのスポットは即座に知れ渡るものであった。凶津は、その情報を元に集まった者たちを見やる。
 あちこちにスマートフォンの液晶画面の明かりが灯っているところを見ると、やはりSNSのちからは侮れないと思うところであった。
『おーおー、集まってる。んじゃ相棒よろしく』
 凶津はあちこちに点在するカップルや家族連れと言った流星を良い場所でみようとしている人々を桜に示す。
 こんな山間に巫女と奇妙な鬼面のコンビというのもまた目立つものであったが、其れより早く、桜のユーベルコードが煌めく。

「幻朧桜花(ゲンロウオウカ)……ゆっくりおやすみなさい」
 桜の霊力で発生させた花吹雪は、季節外れの桜の嵐であった。
 彼女を中心とした周囲にある天体観測に訪れた人々は次々と眠りに落ちていく。
『何人集まろうとここで観測するのが俺たちだけなら問題ないってもんよ。事件が終わるまでお休みってな』
 凶津はこうして多くの人々をUDC召喚の儀式から遠ざけ、自分たちだけで流星の到来を待ち受ける。

 この戦いは速度が重要である。 
 桜が手にしたスマートフォンのカメラが起動し、後は流星が現れるのを待つだけであった。
『写真と動画、どっちがいいかな、相棒。やっぱり、ウェーイってやったほうがいいんだろうかなッ!』
「……どちらでもいいんじゃないですか。騒がしくなしければ」
 二人は動画にするだろうか、それとも画像にするだろうか。
 どちらにせよ、桜のような美少女と鬼面の組み合わせがカメラに写っていれば、それだけでSNSなどで話題となるはずであろう。

 どう転ぶかはまだわからない。
 けれど、確実のその時が迫っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
「つまり人々に流れ星を見させなければいいわけね」

いる場所はSNSとかで把握できるからこっそりお邪魔するわ。
そして気づかれないように錬成カミヤドリ。
121レベル個の自分の分身…青金剛石を使って流れ星が来そうな方向とは別方向に飛ばす。
そして星の光でかすかに煌く謎飛行物体が多数出現するわけね。

蛍?UFO?
…そんな感じに気を惹いて流れ星のことなんて忘れさせてあげるわ。
その間にこちらはじっくり流れ星を探すわね。



 流星に願いを。
 それは幸福を願う者たちの願掛けであったことだろう。
 所有者に不幸な最期をもたらすとされた希望の宝珠のヤドリガミであるヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)にとって、それはどのような意味を持っただろうか。
 確かに流星に願いを掛けることは幸福な祈りであったかもしれない。

 けれど、UDC怪物召喚の儀式の一部となっている以上、これを止めなければならないのだ。
 UDC職員たちがインターネットなどで情報工作をしていたとしても、今宵、空を駆ける流星を見上げる人々を止めることなどできない。
 猟兵たちにとって幸いであったのは、日本でこの街でしか雲のない夜空を見上げることができなかったことである。
 雲の切れ目から流星を見るということは現実的ではない。
「流星に願掛けをすること事態が儀式。そして、それは実際に見上げれば見上げるほどに狂気に染まる度合いを深いものにしてしまう」
 ヴィオレッタはグリモア猟兵からの情報をもう一度反芻する。

 儀式を阻止することはできなくはないだろう。
 けれど、UDC怪物の存在を放置することはできない。また同時に召喚されたUDC怪物を滅ぼすのに絶好の機会でもあるのだ。
 流星を見れば、人々は狂気に侵されてしまう。
「つまり人々に流星を直接見せず、誰よりも早く察知し、これをインターネット上に画像や動画を拡散し、狂気を薄めた上で儀式に必要な数を生み出す、というわけね」
 ヴィオレッタは流星の観測にもってこいの山間部に向かう。
 SNSを見れば、何処が流星の観測に向いているのか、そしてアクセスはどうすればいいのかがわかるだろう。

「さて、こっそりお邪魔するわ」
 彼女は山間部のキャンプ場にやってきていた。
 確かにここならば流星の観測を終えた後に、そのまま宿泊することもできるだろう。ちょっとした旅行気分で天体ショーを見られるというわけだ。
 こういったレジャー施設に人々が集まるのもうなずける。
 そして、ヴィオレッタは人々に気が付かれぬように己のユーベルコードを発動させる。
 錬成カミヤドリによって錬成されるのは、121個にも及ぶ自分の本体たる宝珠であった。その宝珠は自身の分身となって、流星が現れそうな方角とは別の方角に飛ぶのだ。
 それは星の光でかすかに煌めく謎の飛行物体……いや、流星雨のように人々の瞳には映るだろう。

「わ……! 見て、あれ! あれじゃない?」
「いや、違うよ。今日の流星は火球みたいに大きな奴だって言っていたし」
「でも、すごい! あっ! また!」
「流星群なんて……も、もしや未確認飛行物体!?」
 俄に騒がしくなるキャンプ場に集まった人々。
 その正体は言うまでもなくヴィオレッタの生み出した自身の本体たる『青金剛石』である。
 まるで蛍のように、もしくはUFOのように人々の意識をひきつけ、そしてまた流星が走る空からそらすのだ。

 ヴィオレッタは、彼等の気をそらすためにユーベルコードを使う。
 その輝きは確かに火球の如き流星には及ばないだろう。
 けれど、ヴィオレッタの『青金剛石』の輝きは、星の輝きを受けて煌めく。その美しさは月光をも退けるものであったし、何より人々が見上げる宝珠の輝きは狂気ではなく喜びによって輝くものだ。
 UDC怪物の召喚儀式でもなければ、狂気に落とすものでもない。
 ヴィオレッタ自身の本体は所有者に不幸な最期をもたらすと言われた宝珠であったのかもしれない。

「不幸を知らぬ者が幸福を定義できるわけではないもの……それでも彼等が不幸でなければいい。UDC怪物のもたらす狂気にも侵されなければいい」
 ただそれだけのためにヴィオレッタは己の分身たちを空に駆けさせる。
 か細い輝きであったかもしれないけれど。
 それでもヴィオレッタの放つ宝珠の輝きは、曰くを否定するだろう。彼女の分身を見上げる人々の目はキラキラと輝き、それをヴィオレッタは背に、流星の到来を待つ。
 彼女の背に幸福があれば、彼女の目の前には不幸がある。
 その兆しを人々に見せぬためにこそ、彼女は今此処に在るのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
天体観測なら任せろ! 占星術師兼天文学者の祖母ちゃんの名に懸けて、イイ一枚撮ってみせらあ!
……え? 画像の出来はどうでもいいから怪物召喚のためにSNSで拡散しろって?
うーん、そんなヨコシマな目的で星の映像撮るなんて祖母ちゃんに叱られちまいそうだけど……しゃあない、やるか。

とは言え、拡散しやすくするためにはやっぱウケる絵面の方がイイよな。
教わった〈占星術〉の知識と〈第六感〉を総動員して、一番流星が綺麗に見えるポイントを割り出して、速やかに直行。
〈暗視〉と〈撮影〉のテクを活かして画像を撮ったら、〈アート〉的に映えるように全体のイメージをちょこっと加工してアップロードしてみるか。



「天体観測なら任せろ!」
 そう息巻いていたのは、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)であった。
 彼の祖母は占星術師兼天文学者であった。
 その影響もあってか、彼にもまた星読みの才能があったのかもしれない。それに嵐は火球の如き流星が見られるとあっては、これを最大にして最高のものとして撮影しなければならないと目を輝かせていた。

 それが人々に狂気をもたらすUDC怪物召喚の儀式の要となるものであったとしてもだ。
 彼にとって流星とは、星とは、特別に思い入れのあるものであったことだろう。
 祖母の名に懸けて、とまで言うのだから並々ならぬものがあったはずだ。
 しかし、UDC職員がそんな嵐をなだめる。
「……え? 画像の出来はどうでもいいのか……?」
 そう、今回必要なのは流星の画像や動画である。
 流星を直視すればUDC召喚の儀式の影響で人々は深い狂気に落とされてしまう。実物ではなく、画像や映像であれば、その狂気は軽減される。
 そもそも儀式を完遂させなければいいのであるが、幸いにしてこの街一つだけが日本において流星を観測できる天候に恵まれた……いや、不幸なめぐり合わせとなってしまったと言うべきであろうか。

 人々の目に直接流星を触れさせることなく、UDC召喚の儀式は完遂させる。矛盾しているようであるが、インターネット上に存在するUDC怪物を現実に引きずり出し打倒するためにはこうするしかない。
 画像や動画といったもので狂気を軽減しつつ、数を揃える。
 そのための下地たるSNSは隆盛を極めている。
「うーん、そんなヨコシマな目的で星の映像撮るなんて祖母ちゃんに叱られちまいそうだけど……しゃあない、やるか」
 嵐は怒られることを覚悟しただろう。
 けれど、彼の祖母ならば、それも許してくれるだろう。
 星を見ることは確かに大切な彼と祖母との思い出であったかもしれない。けれど、それ以上に人を救うためとあらば、それに優先されることもないと言うかもしれない。

 嵐は走る。
 何処に、とは愚問であった。
「とは言え、拡散しやすくするためには、やっぱりウケる絵面がイイよな」
 嵐は祖母から教わった占星術と己の第六感とも言うべき勘の告げるままに、流星が最も綺麗に見えるポイントを割り出す。
 それは計算と感覚の融合であったことだろう。
 緻密な星の巡りを計算し、行く末を占うのが占星術であるのならば、嵐は己の感性に任せるままに走り出す。

 彼が目指したのは、寂れた山村であった。
 街から外れてはいるが、しかし、人里でありながら人が少ないことがわかっている。それに人が少ないということは、生活の明かりが極端に少ないということだ。
 となれば、山間部まで足を伸ばさなくても十分に夜の闇は濃くなるだろう。
 そして、火球のように大きな光を放つ流星ならば、その輝きは……。
「やっぱりな! 今の季節なら田んぼに水を引き始めている頃合いだろ!」
 嵐は見ただろう。
 田に引かれた水が、まるで水鏡のように夜空を映し出している。
 この水鏡と流星の組み合わせは、人々の目を惹きつけるはずだ。

「後は流星を待つだけだな……」
 嵐は構える。
 彼の撮影のテクニックがあれば、その一瞬を捉えることは容易であろう。必要ないかも知れないが、全体のイメージを加工してアップロードすれば、即座にSNSの人々は食いつくだろう。
 それ以上にすでに下地はできている。
 稀なる天体ショー。日本で此処だけが見ることが出来る。この要因が重なれば、否応なく注目度を高めることになる。

 嵐はUDC怪物の引き起こす事件でありながら、どこか心が踊るものがあったかもしれない。
 それは事件を解決するためとは言え、己の祖母から教わったことを十全に使うことができる誇らしさも一助となっていたことだろう。
 流星に罪はない。
 その輝きは多くを惹きつける。ならば、狂気に堕とすものではなく、人の心を豊かなものにするものとなるべきだと、嵐は流星流れる夜空を覗き込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーん、つまり…実際に目にする人を減らすのが第一段階
後は他の人より早くバズらせれば良いって事かな…?
とりあえずはまあ、人が多く集まっている所を探そうかな
ネットでそういうスポットを検索して…と
目星を付けた所に移動しようか

人が集まってるようなら、こっそりと【Code:F.G】を起動
上空へ飛翔して一番の撮影スポットもーらいっと
で、飛んでるの見られるのもマズいし流星を見られるのもマズいから
私より下方に『天候操作』で雲を作り出そう
なるべく厚く、広範囲に
これで少しは直接見る人が減るかな
私も遠慮なく良い感じにバズりそうな画を撮影できそうだし
まあ問題は…そんなインフルエンサーなSNSユーザーじゃない事だけど…



 流星を見る。
 それがUDC怪物召喚儀式の第一段階。
 ならば、猟兵たちがするべきことの第一段階はなにか。
「うーん、つまり……実際に目にする人を減らすのが第一段階」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)はうなずく。
 回りくどいやり方であると思えるだろう。儀式事態は完遂させなければならない。何故なら、UDC怪物を放置できないからだ。
 引きずり出すための条件が整うことのほうが難しい状況で、しかし人々に対する影響は最小限に収めなければならない。

「後は他の人より早くバズらせれば良い……てことだね」
 玲はUDCアースの街中を見やる。
 すでに時刻は夜。人々の手にあるスマートフォンの液晶画面の灯りが次々と空へと向けられる。
 これより起こるは天体ショーだ。
 火球のような流星。それ事態は確かに希少な事象であるが、天候によって日本でこの街だけが流星を見ることが出来るともなれば、さらにそのレアケースは人々の意識に深く刻み込まれる。
 ここまでUDC怪物の織り込み済みであるというのならば、それは計算しつくされた企みであったことだろう。

「案の定人が多いなぁ……」
 玲はインターネットで得た流星を観測するスポットを訪れていたが、人の多さに辟易していた。
 多くの人の目に流星を触れさせてはならない。
 儀式として『流星を見る』だけで人々の重度の狂気を齎すことが確認されている以上、猟兵達は人々の目を何処かにそらさなければならない。
 しかし、玲はそもそも見られなければいいのだと判断する。
 空には闇。

 ふわりと浮かび上がる玲の体。
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 重力制御によって玲はゆっくりと空へと飛翔していく。空を飛ぶ己の姿がSNSに流出するなんて以ての外である。
 更に天候操作で後半に雲を作り出していく。なるべく厚く、広く、だ。
「えー、なんでぇ。天気予報じゃ、一晩中雲ひとつないって言っていたのにー」
「急に雲でてきたな……」
「時間までに雲が晴れてくれるといいんだけど……」
 人々の声が眼下から聞こえるようであった。

 彼等には申し訳ないとは思いつつも玲は雲の上へと浮かび、夜空を見上げる。
「雲の上が一番の撮影スポットってね。これで少しは直接見る人が減るかな」
 玲は誰に遠慮するでもなくバズりそうな画を確保できそうである。
 ただし、問題が一つだけあるのだ。
「私はそんなインフルエンサーなSNSユーザーじゃない事ってことだけなんだけど……」
 どうしたものかと玲は首をひねる。
 空にありて、下には雲。
 まるで雲の玉座のようであったし、玲は実際に座っているわけではないが、制御された重力によって考え込む。

 UDC職員の協力があれば、フォロワーの多いアカウントをハックすることもできるかもしれない。
 いやいや、逆に今回の事件を契機にアカウントを作成して、インフルエンサーを目指すのもいいかもしれない。
 ともあれ、玲は到来するであろう流星を待ち構える。
 火球の如き大きな輝きを放つ流星。
 それがUDC怪物によるものであり、また同時に邪神の類の齎す星辰の兆しであるというのならば、悠長に時間を掛けることはできない。

「ここからは瞬き禁止ってね――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
流れ星に願い事なんて珍しくもないのに
儀式になってしまうなんて厄介だね

これだけ話題になっているという事は
何時頃にどちらの空に見えるか
ある程度は軌道が計算されてそうだね
予め情報収集してから現地に向かうよ

できるだけ早く流星を見つける為に
鉑帝竜で雲の上に上がろうか
明かりも少ないから見つけやすいしね

一応装甲を変形させてプロペラ機っぽく
偽装はしておくよ

あら、とても綺麗な雲海と星空ですの

わたしもみたいのですー

物見遊山な気もするけど
目は多いに越した事は無いから
分霊と使い魔にも探して貰おうか
見つけたら声くらいはかけてくれるだろうし

いや、ほんとUDC事件じゃなければ
コーヒーでも沸かしながら眺めたい景色なんだけどね



「流れ星に願い事なんて珍しくもないのに、儀式になってしまうなんて厄介だね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は現地のUDC職員と合流し、打ち合わせる。
 確かに晶の言う通りであった。
 星を見上げることはUDCアースにとってなんてことのない日常の一幕でしかない。けれど、流星の到来がニュースになって人々に知られ、さらには日本でここだけしか見ることができないという希少性が人々に刻み込まれている。
 ならば、その希少性ゆえに人々は普段興味なくとも空を見上げるだろう。
 そうなれば、流星はUDC怪物召喚儀式となって、人々の重大な狂気によって意識を侵していく。

 そうなればどうなるかなどわかりきっている。
 UDCアースの事件を知る者であれば、それが残虐的な事件へと発展することは想像に難くない。
「これだけ話題になっているということは……何時頃にどちらの空に見えるか」
「ええ、すでに判明していますし、一般人にも浸透しています」
「厄介だね。また。情報はこれだけでいいのかな?」
 晶はUDC職員から情報を受け取る。
 端末に記された情報には、空の方角や時間帯まで記されている。それがSNS隆盛たる時代にあっては、何処にでも染み渡っていくようでもあった。
 興味のない人々であっても、その情報を目にすれば空を見上げてしまうだろう。

「できるだけ早くに見つけないといけないね……」
 ならば、と晶は式神武装白金竜複製模造体(ファミリア・アームドワイバーン)と共に空に飛び上がっていく。
 装甲をプロペラへと偽装し、それっぽく見せていることが晶の気遣いであった。
 雲を突き抜けて空へと上がれば、そこには夜空が広がっている。
 何も邪魔するものはない。
「あら、とてもきれいな雲海と星空ですの」
 内なる邪神が、その光景を見て息を吐き出すようであった。確かにきれいな光景だ。下には雲海。月明かりも今日は弱い。
 星の輝きが良く見える日だ。

「わたしもみたいのですー」
 使い魔もまた、その光景を純粋に楽しんでいるようであった。
「物見遊山な気分を出しちゃダメだよ」
 晶は、あくまでこれがUDC怪物召喚儀式を多くの人々の目に直接触れさせぬための行動であることを伝える。
 わかっているのかわかっていないのか、判別できないような使い魔たちの生返事に仕方ないなと思う。

 流星を少しでも早く見つけるためには、多くの目が必要となる。
 遊びでやってきているわけではない。
 けれど、やっぱり思わずにはいられないのだ。流星という天体ショー。
 本当ならば、キャンプ場にでも足を運んで、ひっそりと物静かに空を見上げたい。星に願いを、とは言わないけれど。それでも悠久なる空に思いを馳せることくらい、許されたっていいはずだ。
「いや、ほんとUDC事件じゃなければ、コーヒーでも沸かしながら眺めたい景色なんだけどね」
 鉑帝竜に乗りながら晶は夜空を見つめる。

 戦いはいつだって静かに、そして確実に進行していく。
 それは仕方のないことであったし、UDC……邪神の眷属の齎す事件であればなおさらだ。日常の影から這い出す彼等の行いは、人々に狂気を齎す。
 狂気に侵された者達は皆、一様に残虐なる事件を引き起こすのだ。
 そうした時に危険にさらされるのはいつだって無辜なる人々。
「この星空とは本当に無関係であってほしかったけれど……そうも言っていられないよね」
 晶は、夜空という星々の帳を切り裂く流星の到来を待ち構え、これから片時も息を抜けぬ時間を過ごすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
『希』ちゃん【Oracle Link】と【LVTP-X3rd-van】をフルドライブして、全天スキャン。
見えている星の動きを捉えて、位置をホールドしてくれるかな。

わたしは【電脳潜行】使って電脳空間の中に待機しているから、動きがあったらリンクして知らせて。

『希ちゃん』から連絡があったら、自分が把握している限りのSNSにリアルタイムの動画をアップするね。
できるなら、強制的にトップページとかに割り込ませちゃおうかな。

あ、そのときはもちろん、ハッキングとは解らないように、
『ニュースの更新』って感じでアップロードするね。

流れ星にお願いは、乙女としてわたしもしたいところだけど、狂気つきはちょっと、だよね。



 タブレットモードにしたパソコンとゴーグルタイプのウェアラブルコンピュータが、その機能を加速させる音を菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は聞いたかもしれない。
 AIである『希』に告げたのは、己の持つコンピュータの機能を全開にして夜空……その全天をスキャンするということであった。
「見えている星の動きを捉えて、位置をホールドしてくれるかな」
 理緒の瞳がユーベルコードに煌めく。
 電脳潜行(デンノウセンコウ)。
 それは非戦闘行為に没頭している間、彼女の存在感が限りなく希薄になり、外部からの干渉の一切をシャットダウンんするユーベルコードであった。
 恐るべきは、その間、生命維持の必要がなくなる。

 つまり、今の理緒そのものが人間大の演算装置と化していると言ってもいいだろう。
 電脳空間に沈むように理緒は己の力の使い所を確認する。
 UDC怪物召喚儀式。
 それは『流星を見た』という事実をカウントとして、膨大な数に至ることによって完遂される儀式。
 最も単純で、最も簡単な儀式であった。
 それも特別な手段を講じる必要がない。ただ流星を見るだけでいい。しかも、その行動自体が咎められるものではない。
 星に願いを、と言えば誰もが幸福を願わざるを得ないだろう。

「流れ星にお願いは、乙女としてわたしもしたいところだけど……」
 しかし、それが罠である。
 UDC怪物召喚儀式である以上、それには狂気が伴う。
 流星を実際に見た者たちは、重度の狂気に侵されていく。ゆっくりと、けれど確実に。
 残虐なる行いに手を染めることを厭うこともなく、ただ己の中に芽生えた感情のままに彼等は行動を開始する。それがどんなに残虐なものであっても、最早止めようがない。
 だからこそ、今回猟兵達は実物を多くの者達に見せること無く、狂気の減ぜられた写真や動画をSNSで拡散させることによって、儀式の完遂を早め、UDC怪物を現実世界に引きずり出して即時撃破することを選んだ。

 UDC怪物を放置できず、なおかつ、人々の狂気が溢れる前に倒さなければならないがゆえの本末転倒の如き手法。
「狂気付きはちょっと、だよね」
 理緒は電脳空間にて待つ。
 流星が夜の帳を切り裂く頃合いまで、誤差はあるだろう。だからこそ、全天をスキャンしたのだ。
 星の動きを読み取り、小さな異変すらも見逃さない。
 彼女の手繰る電脳魔術であれば、それもまた可能なのである。

「リンク、開始……来た」
 理緒は即座に動く。
 流星の動画をリアルタイムでアップロードする手はずは整っている。
 さらにそれだけではない。
 彼女が電脳魔術を手繰ることで、あらゆるニュースサイトのトップページに動画を割り込ませる。
 ハッキングとわからぬように細工をすることは当然。
 あたかも『ニュースの更新』と言った体でなせば、人々は疑うことなく動画に目を向けるだろう。

 世界とつながるSNS。
 それはこの時代であるからこそなせる荒業であった。
「狂気は減らして、儀式のための数だけ水増しする……簡単なことじゃないけど、他の世界だったらできなかったことかもしれないよね」
 UDCアースだからこそできたこと。
 ならばこの機会を失するわけにはいかない。UDC怪物を即時撃破。それが最も難しいことであったが、理緒たち猟兵は、そのか細い綱渡りのような橋に今一歩を踏み出したのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『電脳怪異降臨儀式』

POW   :    特殊な舞踊や寝ずの番を行う。

SPD   :    小道具の調達や奇怪なコードの打ち込みを行う。

WIZ   :    召喚術式の解読や魔術儀式の詠唱を行う。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 今宵は月明かりも弱々しい。
 星の輝の瞬きも、普段より強いものであったし、流星の到来は計算されているかのようでもあった。
 夜の帳を見上げる猟兵たちの瞳には星の点しか映っていない。
 彼等が待っているのは、それを切り裂くような糸を引く輝きであった。

「――……!」

 その瞬間を猟兵達は見逃さなかったことだろう。
 星々の空を切り裂く強烈な光。
 最初は点。されど、それは徐々に大きさを増し、火球と見紛うほどの強烈さでもって空を煌々と照らす。
 流星と呼ぶにはあまりにも巨大な光。
 それを運悪く直視してしまった人々は思わず涙した。雄大なるもの、人間の枠にはおさまらぬ自然現象を前にして、感極まったがための涙ではない。
 なぜだかどうしようもない悲しみだけが胸の中に染みのように落ちたような、そんな、どうしようもない感情が流星を見た人々に去来したのだ。

 何故悲しいのか。何故涙が溢れるのか。何故やり場のない感情が浮かんでくるのか。
 何一つ人々は理解できなかったことだろう。
 だが、その悲しみはいずれ狂気へと堕ちるものである。人々の精神を蝕み、残虐なる事件に駆り立てる。
「お願いします!」
 UDC職員たちは猟兵達に託すのだ。
 実物ではない画像や動画によって流星の姿を拡散させ、即座にUDC怪物召喚の儀式を完遂させる。
 本来ならば、徐々に染み渡るようにして儀式は推移するものであった。
 けれど、それを待っていては、狂気に影響された人々は残虐な行いに手を染めてしまう。

 それを防ぐために一気に召喚儀式を終わらせ、UDC怪物を現実世界に引きずり出す。
 SNS隆盛の時代。
 この時代にあるからこそできた強引な手法。
 猟兵達は各々の手段でもって、SNSをざわめかせるのだ――。
菫宮・理緒
流れ星というにはなかなかにダイナミックすぎて、ちょっとロマンチックさには欠けるけど、
『ネットニュース』ってことなら、大成功間違いなしな感じだね。
手はずは整えてあるし、SNSやポータルサイトのトップニュースとして動画をアップしちゃうよ!

んー……これなら儀式に必要な数は稼げると思うんだけど、ちょっとバズりすぎちゃうかな?
あまりに数が多すぎて、UDC怪物の力が増したりしても困るし、
じっくり見すぎて狂気の後遺症とかでても困るから、

視聴数を確認しながら、アップする数を調整して、
あまりに危険そうなら、がぞうのピントとかちょっとぼかしたりしていこう。

召喚は成功させないとだけど、それで被害が出ても困るもんね。



 電脳潜行(デンノウセンコウ)によって、電脳空間にありながら菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は現実世界に現れた流星と呼ぶにはあまりにも巨大過ぎる光の球体を捉えていた。
「流れ星というにはなかなかにダイナミックすぎて、ちょっとロマンチックさには欠けるけど、『ネットニュース』ってことなら、大成功間違いなしな感じだね」
 理緒は、この動画をSNSや各種ニュースサイトのトップへと差し込む。
 その作業は手慣れたものであったし、ポータルサイトのトップ画面に突如として現れた流星の動画は、人々の視線を惹きつける。

 UDC怪物召喚儀式において必要なのは数だ。
 これまで流星が空の帳を走ることがあったとしても、それは達成しなければならない数からすれば、人々の目は僅かなものであったことだろう。
 けれど、今やSNS隆盛極めたる時代であれば違う。
 人々は距離を超えて、その当事者となることができる。
 理緒がリアルタイムで動画を流しているが故に、人々は遠く放たれた土地にいながら、『流星を見た』のだ。
 どんどん動画再生数が跳ね上がっていく。
 数字のカウンターの跳ね上がり方を理緒は見やりながら、これでUDC怪物召喚儀式の達成は容易いものであることを知るだろう。

 けれど、想像以上であったのは、その閲覧数の膨大さであった。
「んー……」
 その推移は確かに早期に儀式を完遂させるためには喜ばしいものであったけれど、多すぎても困ったことに為る。
『流星を見る』ことによって人々には動画や写真で狂気が減ぜられていたとしても、少なからず影響を受けてしまう。
 UDC怪物を撃破すれば、その狂気は消失するが、その間に狂気に蝕まれた人々が何かしらの行動を起こしかねない。
 人の精神は千差万別。
 何が引き金となってしまうかもわからなければ、狂気の許容もまた人それぞれであるからだ。

「ちょっとバズりすぎちゃうかな?」
 あまりにも数が多すぎてUDC怪物の力が増したりすることがあってはならないし、動画や写真をじっくり見すぎて狂気の後遺症などがあっても、それは後処理が尋常ならざるものとなるはずだ。
「……画像はやっぱり狂気の含まれる度合いが極端に低い……動画だと、リアルタイムで見ている分、お願いするためにしっかり見る人が多いから……」
 理緒は電脳空間で計算する。
 このデータの推移を見るだけでも、長い時間をかけられない。他の猟兵たちのこともある。
 視聴数をしっかりと確認しながら、無差別にアップロードするのではなく、数を搾っていくことにする。

 ニュースサイトも訪問者の数から逆算すれば、人々の目に触れる数をコントロールできるはずだ。
「こっちの技術だと鮮明に移り過ぎちゃうから……ピントはぼかして、と……」
 様々な工夫を理緒はこなしていく。
 できるだけ数は稼がなければならない。けれど、それで人々に被害がでては元も子もない。
 だからこそ、理緒はタッチパネルを凄まじい速度で叩きながら、せわしなくデータを瞳で確認していく。
 情報の洪水が理緒の頭の中に入り込んでくる。
 クラクラめまいを覚えるほどの流れ。勢いが凄まじい。けれど、此処で理緒が手を止めれば、それだけUDC怪物召喚儀式は滞ってしまう。

「ここが踏ん張りどころだ、ねー!」
 理緒は溢れるデータを走査し、次なる一手を叩き続ける。
 エンターキーを叩く音が響き渡り、理緒は電脳空間で息を吐き出し、己の仕事が無事完遂されたことを知る。
 後は現実空間に引きずり出されるであろうUDC怪物を打倒するだけ。
 他の猟兵達とさらなる協力をし、理緒は電脳空間からログアウトするのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
今更だけど、星に関わるイベントってのが複雑だなあ。どうせなら邪神とか怪物とかと関わらねえとこで星を楽しんでほしかったな。
……なんて愚痴ってもしょうがねえ。なんとか皆に――出来れば安全に――このイベントに食いついてもらわねえと……!

せっかく星の知識があるんだから、そっちの方向から興味を引くようにしてみるか。
「流星に関する質問受け付けます」みたいな感じで、わかる範囲で丁寧に答えるようにしていけば、評判が上がるかもしれねえ。勿論〈コミュ力〉を活かして、イイ印象を持ってもらえるように努める。
普通の人が狂気に引き込まれ過ぎねえように、核心に迫る質問、例えばオカルトっぽい問いには答えをぼかすようにする。



 星を見上げる時、そこに何を思うだろうか。
 心にあるのは穏やかさと静けさ。波立つことのない時間こそが、星を見上げる時間であってほしいと願うのは、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)にとっては自然なことであったのかもしれない。
 それも今更、と思うものであったが嵐はやはり思わずにはいられないのだ。
「どうせなら邪神とか怪物とかと関わらねぇところで星を楽しんでほしかったな」
 思わず愚痴がこぼれてしまう。
 詮無きことであることは百も承知である。

 けれど、彼のこれ迄歩んできた境遇と道程とが、そう言わしめるのだ。
「なんとかみんなに――できれば安全に」
 思いは力となる。
 いつだってそうだけれど、人のためにと思うことはいつだって自分のことでもある。誰かが楽しんでいる顔が好きだ。誰かが喜んでいる顔を見るのが好きだ。
 当たり前のことだし、ふつうのコトだ。
 けれど、そのふつうの中に邪神はいつだって忍び寄る。
「――このイベントに食いついてもらわねぇと……!」
 その影を振り払う力が嵐にあるのならば、嵐はそれをふるうことをためらわない。

 彼がSNSに投稿した水鏡に映るかのような田園風景を走る流星の画像は、瞬く間にコミュニティにて絶賛され拡散していく。
 ここまでは目論見通りである。
 いつもは星に興味のない人間であったとしても、感情を揺さぶるような画像を前にしては、それをきっかけとしてこの道に足を踏み入れることもあるかもしれない。
「せっかくだしな。この星の知識があるんだから、そっちの方向から興味を持ってもらえたら嬉しいよな」
 スレッドの下に嵐のコメントが打ち込まれる。

『流星に関する質問受け付けます』

 それは簡単な文言であったが、人々は嵐のアカウントにコメントを残していく。
 この儀式において必要のないことであったが、嵐はそれでも丁寧にコメントを帰していく。
 この画像を見て少しでも喜んでくれたらいいし、また星について思いを馳せてくれるのならば、嵐はこの天体ショーを正しい意味でのショーにすることができるだろう。
 UDC怪物召喚の儀式ではなく、本来の意味での天体ショー。
 嵐はコメントを律儀に返していく。
 打ち込む指が疲れたって構わない。
 こうしたやり取りが、流星の持つ狂気を緩和することにつながるはずだと彼は信じる。

「――だよな、祖母ちゃん」
 戦うのは怖い。
 誰にも理解されない戦いが此処にある。もちろん、全てを詳らかに明かしてしまうことはできない。
 けれど、それでも絶望に堕ちることはない。
 ハッピーエンドは諦めない。
 己の非力も、弱さも、全てを飲み込んで嵐は前に進む。

 その直向きさこそが、例え電子の文字であったとしても画面の向こう側の人々には伝わることだろう。
 邪神の眷属が齎す狂気も、嵐は遮るように立ち塞がるだろう。
 誰もが平静ではいられないかもしれない。
 流星の光景は、人の手に及ばぬ力の発露出逢ったようにも思えたからだ。人間一人ができることには限りがある。
 それが嵐の言うところの弱さであったのならば、それは過ちであったことだろう。

 人は一人で生きるに非ず。
 星の巡りを見上げ、占い、昏き先行きを照らすことこそが占星術であったのならばこそ、嵐は己の祖母を誇りに思うだろう。
 その心の輝きこそが多くの人々の心にあるであろう狂気を照らし、霧消させる。
 ゆっくりと、けれど確実に。
 嵐は、誰かのためになりますようにと一つ一つ丁寧にコメントを返していくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
UDC職員に連絡して眠った一般人を保護してもらい、ついでに他の一般人が来ないようにこのスポットを『天然ガスが発生につき立ち入り禁止』ってな感じで封鎖してもらおう。

「…で、どうするのですか?」
普通に写真をのせてもバズらねえだろうからなぁ。
そうだ良いこと思い付いたぜ、相棒【鬼乗せ船】を呼んでくれ。
「…?式、召喚【鬼乗せ船】。」
召喚した船から鬼霊を一体だけ降ろして、大きく流星を撮る時に端に偶然写った感じに一緒に撮る。
心霊写真の完成だ。流星はいやでも目に入るし、これで流星に興味ないオカルト好きも釣れるぜッ!
「…それヤラセじゃ。」
霊は本物だからセーフだろ、多分。


【技能・式神使い、撮影】
【アドリブ歓迎】



『天然ガスが発生につき立入禁止』
 その規制線が張り巡らされているのはUDC職員によってであった。
 神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)がUDC組織に連絡を入れ、相棒である桜のユーベルコードに寄って眠らされた人々の保護を願ったがための対処であった。
 例え、今この場に集まった人々を眠らせ、流星の実物を見せないことに成功したのだとしても、この現状を見られてしまえばパニックになってしまうことだろう。
 だから、こうやって封鎖しているのだ。
『うんうん、我ながらうまく行ったぜッ』
「……UDC職員の人の手柄でしょう」
 凶津が赤い鬼面をカタカタ揺らす。
 それに桜が嗜める。二人のコンビはどこか兄妹を感じさせるものであったが、こう見て数々の事件を共にくぐり抜けてきたのだ。

「……で、どうするのですか?」
 桜は自分たちが収めた流星の写真を見やる。
 この写真をSNSに拡散し、多くの人の目に留めさせなければならない。UDC怪物召喚の儀式は、数が必要なのだ。
 とは言え、流星を見た者たちは皆一様に狂気に囚われてしまう。
 それを軽減させるために実物ではない動画が写真と言った手段を使うのだ。
『普通に写真をのせてもバズらねえだろうからなぁ』
 凶津の面が傾く。
 首を傾げているのだろう。確かに相棒である桜は美少女であるが、それだけでバズるのならば世話ないというものである。

 ぽくぽくちーん。
 凶津の鬼面の上に豆電球が光る。
『そうだ、良いこと思いついたぜ、相棒。『鬼乗せ船』を呼んでくれ』
「……? 式神【鬼乗せ船】(シキガミ・オニノセブネ)」
 桜には凶津の意図がよくわからなかったが、その言葉にしたがって妖刀と大砲で武装した鬼の式神たちを乗せた幽霊船を召喚する。
 その召喚された鬼たちが従うようにして、共に流星が流れる写真に紛れ込むのだ。
 となるとどうだろう。
『フフーン、心霊写真の完成だ。流星はいやでも目に入るし、これで流星に興味ないオカルト好きも釣れるぜっ!』
 凶津の示した策とはそういうことだ。

 この天体ショーがどれだけ稀有なイベントなのだとしても、やはり興味のわかぬ者だっているだろう。
 そうした者たちを数に勘定するためには、彼等の興味を引くような事柄を付け足してやればいい。
「……それヤラセじゃ」
 桜が凶津の策に思わず呟く。
 確かにそうである。捏造、マッチポンプ。まさにそれである。
 けれど、凶津は構わないというようにカタカタ鬼面を揺らして笑うのだ。

『霊は本物だからセーフだろ、多分』
 あっけらかんと凶津が言い放つ。
 そもそもああいうのは偽物だから角が立つのである。本物の、偽証が証明できないものであれば、嘘は付いていないセーフというものである。
 凶津のその理論が強引すぎるものであることを桜は承知していたが、しかして、その写真を持って閲覧数が増えていくのを見れば、これはこれでアリなのだろうと自分に納得させるしかない。
「……でも、ちゃんと後で消しておいてくださいね」
 それがせめてもの良心である。
 例え、本物であっても人心を乱すものがあってはならない。桜は凶津にそういい含め、儀式の完遂までの僅かな時を静かな規制線の中で過ごすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
SNSとかは私には不向きだから、得意分野のお仕事をしましょうか。

ということで無理やり[ハッキング]
ユーベルコード【クォンタム・ハンド】も使って複数の端末で一気にまとめサイトをクラックして拡散させちゃいましょう…もちろん時間が来たら一斉に消えるように仕込むわよ。

「魚拓も許さないわよ?」

保存したファイルは自動的に消去されるわ。
用が済んだら危険データはポイ、よ。



 ソーシャルネットワーキングサービスというのは、人の生み出した文化の最先端である。
 基礎は人の本質を大きく変えるものではなかったが、これまで目に触れることのなかったものを人の目に触れさせる機会を一気に跳ね上げさせたこともまた事実である。
 UDC怪物召喚儀式が、これまで流星が流れるたびに機能していたとしても、完遂に至らなかったのは幸いであったが、此度は事情が違う。
 人目を引く大きな流星。
 そして、日本でこの街でしか見られないという希少性。
 それらが重なった瞬間、人々は空を見上げ、その流星が解き放つ狂気に囚われ、街まるごとがUDCの狂気に落とされてしまう。

 それを防ぐために猟兵達はSNSを利用し、軽減された狂気でもって人々の数を集める。
「私には不向きだから、得意分野のお仕事をしましょうか」
 ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)の瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女から放たれるのは見えぬ粒子結合の手。
 それはクォンタム・ハンド。彼女のユーベルコードであり、目の前にある端末の中に入り込み、更にはネットワークにまで伸びるものである。
 それで何をするのか、と問われればヴィオレッタは簡単なことだと言うだろう。

 粒子結合の手は、ネットワークを介在し、多く存在するニュースまとめサイトをクラッキングするのだ。
「これで流星の動画や画像をアップロードすれば……多くの人の目に止まる」
 閲覧数の多いサイトをこちらで自在に操作すれば、ヴィオレッタの用意した画像や動画は、人々の目に多く触れることだろう。
 無論、彼女は動画や画像に時間が来たら一斉に消えるように細工を仕込んでいた。粒子結合の手ならば、このようなことは如何ようにもできるというものである。

 しかし、ネットワーク上にアップロードしたものというのは、簡単に消えるが、その実、いつまでも痕跡が残り続けるものである。
 いわゆる魚拓。スナップショットのことだ。データは消えたとしても、そのスナップショットが存在する限り、存在したという事実が残り続ける。
 インターネット上を見て回っている人々というのは、得てしてそういうバックアップを取りたがるものだ。
 だからこそ、ヴィオレッタはそこにまで言及するのだ。
「魚拓も許さないわよ?」
 ウェブサイトのスナップショットを取った瞬間に走るプログラム。

 それは保存したファイルを自動的に消去されるという細工だ。
 如何に狂気の減ぜられた流星の画像や動画とは言え、人々の精神に影響を及ぼす危険なデータは残してはおけない。
「こういう後処理までしないといけないから面倒よね。でも、それ以上に面倒事になるのはもっと面倒」
 だから、とヴィオレッタはデータに様々な細工を施していく。
 こういう危険データというものは、用が済んだらポイ、とするのが一番なのだ。

 見えざる粒子結合の手が次々とデータをサイト上にアップしていく。
 人々の目に触れる流星は、どれもが僅かな狂気を含んでいるものであった。けれど、その美しさは変わらない。
 煌々と輝き、夜空を切り裂くようにして流れる星。
 人の魂にも例えられることのあった流星。その流星が齎す狂気は決して人々に齎されてはならない。
 人を不幸にする狂気があるといのならば、ヴィオレッタはそれをこそ防ぐ。
 そのためにこうして様々な手を尽くすのだ。

 残すはUDC怪物が召喚されるのを待つばかり。 
 儀式完遂の手応えを感じたヴィオレッタは、現れるであろうUDC怪物を追うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
さて、いよいよ来たね
ドローンやスマホで撮影した動画や写真を
UDC組織のサーバーに送信してこう

UDC組織ならカバー用のアカウントを
それなりの数持ってるだろうから
サーバーに画像ファイルがアップされたら
予め用意していた文章と共に
ランダムなアカウントに投稿されるように
プログラムを組んで貰ってるよ

情報処理系統の能力は人間離れしてる訳じゃないから
組織の力に頼らせて貰う事にしよう

動画の方は架空の学術団体の投稿としといて
上空での撮影動画をアップし
掲示板とかにアドレスを貼っていくよ

なんというか地味ですの

それが必要だからね
それに誰かさんの権能向きの仕事じゃないしね

あら、あの輝きを永遠にするのは簡単ですの

やめてくれ



「さて、いよいよ来たね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は使い魔や内なる邪神たちの協力を得てドローンやスマホで撮影した動画や写真をUDC組織のサーバーに送信してうなずく。
 今回のUDC怪物召喚儀式の肝は速度だ。
 流星を見たという事実が狂気を呼び込むものであったのならば、その影響を減じた動画や写真を持って召喚儀式の数へと換算させる。
 本来であれば、この天体ショーは儀式成功の数に至ることはなかった。
 膨大な数が必要だからだ。

 しかし、その流星を見ることによって齎される狂気は色濃く、見た人々の精神を蝕んで、必ずや残虐なる事件を引き起こさせる。
 それが邪神たちの目論見であるというのならば悪辣そのものであったことだろう。
「プログラムは問題ないかな?」
「大丈夫です。カバー用のアカウントから、逐次アップロードしています」
「ランダムなアカウントに投稿するように頼んでおいたのは?」
「すでに投稿が始まっています」
 庸人の一念(オネスト・エフォート)とはこういう事を言うのだろう。
 UDC職員たちは事前に準備していたプログラムを走らせる。晶から提供された画像や動画を複数のアカウントに、ランダムに送りつける。

 晶自身は特別情報処理に秀でた猟兵ではない。
 だからこそ、UDC組織の組織力を頼るのだ。それはUDCによって多くの狂気にまつわる事件に触れてきた職員であればこそできるものであったし、またそのための下準備は、類を見ないほどに入念なものであった。
「架空の学術団体の投稿として、すでにネットワークに拡散しています」
「いいね、上空で撮影した動画はどうかな? 飛行機の中から見た、とかそういうのだとわかりやすくていいんじゃない」
「後は個人サイトのBBSにもアドレスを貼り付けていきます」
 UDC職員たちが次々と流星の動画や画像を拡散させていく。

 その勢いは凄まじいものであったが、晶の中にある邪神にはそうではなかったようである。
「なんというか地味ですの」
 確かに地道な作業だ。
 派手さはない。あの流星のように人目を引くような活躍ではないかもしれない。
 けれど、晶はたった一つ確信して言えることがあった。
「それが必要だからね。それに誰かさんの権能向きのしごとじゃないしね」
 晶は特別ではない誰かの手こそ今必要なものであると言う。
 そこに派手さ、地味さなど関係ない。
 誰かがやらねばならぬことを確実にやり遂げる。それこそが今必要なことなのだ。

 流星の輝きのように一瞬の明滅ではない。
 長く続くようにと願われた行動。それがUDC職員たちの総意であったし、他に譲れぬ彼等の決意でもあったのだ。
 一人でも多くを救う。
 ただそれだけのために彼等は全力を尽くしても及ばぬことへと果敢に挑む。

「あら、あの輝きを永遠にするのは簡単ですの」
 邪神の言葉が一体どちらを示しているのかは、晶にはわかっていたかもしれない。
 一瞬の明滅すらも停滞させることのできる権能。
 されど、その輝きをずっと夜空に留めておくことは狂気を拡散させることにほかならない。それがどのような結末を迎えるかなど言うまでもないからだ。
「やめてくれ」
 晶は息を吐きだして邪神をなだめすかす。

 あの輝きは確かに美しいものだ。
 空にある流星の輝きは決してとどめていていいものではない。そして、地にあるUDC諸君たちが懸命に戦う姿もまた輝かしいものである。
 それもまたとどめてはならない。
 輝き続けることなどどんなものにもあってはならぬこと。
 故に、晶は地に在りて凡庸なる人として額に汗する彼等の努力にこそ報いるために、現実世界に引きずり出されるUDC怪物を迎え撃つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
お次はネットに情報拡散かな
今からアカウントを作って拡散っていうのも無理があるから…
うん、気は進まないけど仕方がない
人の人気にあやかろう

SNSや動画サイトとかで、フォロワーや登録者数の多い人を何人かピックアップして…
『ハッキング』してアカウントを乗っ取らせて貰おう
で、撮影しておいた画像や動画をアップ
元々見る人が多いアカウントなら、特に工夫しなくても目には入るだろうし兎に角数うちゃ当たるって事で
どんどん乗っ取ってアップしていこう!
…ちょっと楽しくなってきた
いやいや、お仕事お仕事
決して趣味とか嫉妬とかじゃないし!
それにアカウント乗っ取りなんて、多分よくある事だし!

終わったらアカウントごと消去しとこ



 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は今からSNSのアカウントを作って、流星の動画や画像を拡散させるというのは無理であると断じた。
 SNSとは最早ビジネスそのもの。
 流行を作り出すためには抑えておかなければならないものであり、情報を集めるためのツールでもある。
 そんなSNS隆盛にあって、簡単にバズることなどできようはずもないのだ。
 それに加えて今回の天体ショーである。 
 日本の街一つでしか見ることのできない流星。されど、誰もがスマートフォンを手にし、高画質の画像や動画を撮ることができる状況にあっては、特等席を用意できたとしても簡単なことではな。

「……うん、気は進まないけど仕方ない」
 何が仕方ないのかと言うと、それは玲にとっては不本意なことであったが、人の人気にあやかろうということであった。
 つまり、フォローし、フォローバックされ、人気者に拡散してもらおうというのである。ある意味健全であったし、ネタを提供するという意味では、これ以上ない効果が期待できそうであった。
「……SNS、動画サイトでフォロワー数が多い人……と」
 玲はサイトを眺め、そのサイトで最もフォローされているアカウントを見つけ出す。
 ピックアップされたアカウントはどれもが世界的に見てもトップクラスのフォロワー数を誇るものであった。

 ここから彼等に拡散してもらおうと……。
「よし、アカウントを乗っ取らせてもらおう」
 違った。
 今の今まで語っていたことはまるで間違いであった。アカウントをハッキングして乗っ取った玲は即座に撮影していた画像や動画を次々とアップロードしていく。
 元々フォロワー数が多ければ、特に工夫など必要はない。
 目に入ることが大切なのであれば、ただ流し見するだけでも十分なのだ。
「兎に角、数撃ちゃ当たるって事、どんどん乗っ取ってアップしていこう!」
 気が乗らないと言っていたことが嘘のように嬉々として玲はアカウントを乗っ取っていく。
 いやもう、流星の画像や動画を広めるということではなく、アカウントをハッキングするという手段事態が楽しくなってきている様子でもあった。

 正直、目がちょっとヤバい。
「いやいや、お仕事お仕事」
 断じて趣味とか嫉妬ではない。
 なんだこのキラキラしたアカウントはぁ! とは思ってない。断じて無いのである。それにフォロワー数の多いアカウントが乗っ取られた、ということなんて多分よくあることである。
 珍しくもない。多分。
「閲覧数もすごいことになってるね……でもまあ、通知が鳴り止まなくても何もできないでしょ」
 簡単なお仕事である。
 ワンクリックでできるお仕事。ずっとこれだけやっているお仕事とかないものかと思わないでもないが、玲は流星の画像が多く人の目に触れることを確認してからうなずく。

 後は流星の画像を消去するだけだ。
「UDC怪物召喚儀式に必要な数は達成したし……」
 クリック。もしくは、タップ。
 次の瞬間、玲がしたことはアカウントの消去である。ん?
 アカウントを消去する。
 流星の画像や動画ごと。証拠は残さないということであろうか? いや、それでもアカウントごと消去する必要はないはずである。

 けれどまあ、インターネットって怖いからね。
 全部リセットしたくなる気持ちはわからないでもない。けれど、玲は一晩開けた後に、様々なSNSや動画投稿サイトで名だたるフォロワー数を誇るアカウントが一斉に消去されたと話題になることを知っていただろうか。
 しかし、UDCによる狂気が引き起こす残虐な事件にくらべたら可愛いものである。
 決して嫉妬とか趣味とかそんなのではないと、玲の名誉のために此処に記す。
「ほんとほんと、楽しくなってきたとか、そういうのじゃなくって! お仕事だから! 趣味じゃないから!」
 そんな言い訳にしか聞こえない言葉が、後に発せられたか発せられなかったか。真相は闇の中である――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ジャガーノート・ハーレー』

POW   :    オレハ オ ハ 何ダ?
自身が【斃されるべき"世界の敵"であるという認識】を感じると、レベル×1体の【破滅を齎す彗星】が召喚される。破滅を齎す彗星は斃されるべき"世界の敵"であるという認識を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD   :    ……勝負ハ、3Rマデ ダ
【約束を果たす迄絶対に斃れられない】から、対象の【「再戦」】という願いを叶える【"復活した自分"と復活の度強化される光剣】を創造する。["復活した自分"と復活の度強化される光剣]をうまく使わないと願いは叶わない。
WIZ   :    ――ハ  度デモ 立チ ガル
【瀕死時即復活。復活する毎に前より強い状態】に変身し、武器「【光剣】」・「【瞬間的光子化による超加速】」の威力増強と、【復活回数分の流星を召喚。流星は敵自動追尾】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。

イラスト:落葉

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ジャガーノート・ジャックです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 狂気の減ぜられた流星の画像や動画。
 それは瞬く間に全世界に広まり、儀式に必要であった膨大な『流星を見る』という行為を瞬時に満たしていた。
 猟兵たちとUDC職員たちによる迅速な対応のおかげであった。
 狂気は薄められ、微々たる影響でもってUDC怪物召喚儀式を完遂させた。

 だが、それは喜ばしいことではない。
 狂気は人の心を養分にして育っていくものである。故に、時間が経てば経つほどに人の心の中で狂気は膨らんでいき、爆発するだろう。
 召喚されたUDC怪物を即時撃破。
 それこそが、この戦いの山場にして要であった。

 猟兵達は見ただろう。
 流れる流星が煌々と夜を切り裂き、そして弾けたのを。
 夜空より降り立つのは、一体のUDC怪物。
 いや、怪物と呼ぶにはあまりにも無機物的な姿。鋼鉄の肉体を持つUDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』は華奢な肉体を持って大地に降り立つ。
「オレ、ハ……ボク、ハ……――」
 言語機能の大半を失い、己を自覚するための記憶の多くを損失している存在。それが『ジャガーノート・ハーレー』である。
 彼に残っているのは、たった一つ。

「姉、チャ……ワカラナ、イ……『約束』……」
 彼の頭の中をかき乱すのは、『約束』。果たされなかった『約束』が彼の中で反芻している。
 頭を抱えるようにしてうずくまる『ジャガーノート・ハーレー』。
 けれど、猟兵達は理解する。目の前のUDC怪物が強大なる力を持つ存在だと。即時撃破を目指さなければならない。
 だが、最も倒されがたき力を持つ『ジャガーノート・ハーレー』の存在は、そもそもがこの作戦を破綻させるには十分すぎるのだ。

「倒レ、ナイ……死ナナイ……ボク、オレハ……!」
 咆哮と共に『ジャガーノート・ハーレー』は立ち上がる。徒に狂気を振りまくための存在としてではなく、ただ一つ残った『約束』のためにこそ、彼は猟兵に相対する。
 過去に歪み、過去に捻じ曲げられ、過去に在りし者。
 その力の発露が猟兵たちを襲う。
 手にした光剣が煌めく。

『ジャガーノート・ハーレー』の中に響くのは、いつかの残影。残響。
「お姉ちゃん! ボクだって兄ちゃんたちみたいに、お姉ちゃんみたいにやれるよ! きっとね! 危ない戦いなんてしなくたっていいように! ボクが頑張るから! お母さんもきっと!」
 それは狂気が伝播したいつかの残滓。
「そんなに慌てなくたっていいのよ。あんたが大きくなるその時までには戦いだって終わらせる。だから、『約束』してね。ずっと元気でいるって。だから、そのときまで――」

 決して己は死んではならない。
 倒れてはならない。
 その『約束』のためだけに『ジャガーノート・ハーレー』は、此処に立つのだ。それが世界に狂気を齎し、破滅に導くものであったとしても――。
ガイ・レックウ
【POW】で判定
※アドリブ、連携可
『始まりは約束だったみたいだが、お前は倒さなきゃいけない。全力で倒させてもらうぜ』
【オーラ防御】を幾重にも重ね、【残像】と【フェイント】を織り交ぜながら突撃。【怪力】をのせた【鎧砕き】と【鎧無視攻撃】の【2回攻撃】を叩き込む。
ユーベルコード【二天一流『無双一閃』】を放ち、叫ぶぜ。
『てめえはなんのために約束したのかはわからねぇ‥でも破滅を防ぐためにお前を斬る!』



『ジャガーノート・ハーレー』が手にする光剣が夜空の下で輝く。
 UDC怪物。
 それが今の彼である。
 手にした光剣がどのような意味を持っていようとも、その鋼鉄の体躯が如何なる過去を経て来たのだとしても。
 猟兵達は知るだろう。
 対峙しただけで理解できる。
 今目の前にある存在はオブリビオン。過去の化身にして『今』を蝕もうとするUDC怪物であると。
「ボク、オレ、オレ、ハ……!」
 そして、『ジャガーノート・ハーレー』もまた同様だ。

 目の前にあるのは猟兵。名を知らずともわかっている。己が世界の敵であると。掲げた手の先に集まる光。
 それに引き寄せられるようにして空を舞うは光弾の如き彗星。それが、ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)の前に迫る。
 己を世界の敵と認識せしめる存在。それが猟兵であるのならば、彼にとって優先されるべきは『約束』唯一であった。
「『約束』……『約束』……!」
 倒されてはならない。倒れてはならない。死んではならない。生きなければならない。

「始まりは『約束』だったみたいだが、お前は倒さなきゃいけない。全力で倒させてもらうぜ」
 迫る彗星の如き光弾をオーラが防ぐ。
 いや、防げては居ない。幾重にも重ねたオーラの尽くが砕けていく。僅かな時間稼ぎにしかならない。
 猛烈な光がガイの生み出した残像を焼滅していく。
 否、ガイの左腕を焼く熱が伝わってくる。
 痛みよりもガイの目の前に見据える敵が咆哮する。彼にとって倒れぬことこそが、至上。

「――ガ、名、――……番、ア……!!!」
 意味をなさぬ咆哮。
 言葉にすらなっていない。『ジャガーノート・ハーレー』の言語能力は大半が喪われ、意味なさぬ音となってガイの鼓膜を撃つ。
 理由はわからない。
 どうしてこんなことになっているのかもわからない。けれど、たった一つ確かなことがある。
 目の前の存在は慟哭しているのだと。
 目に見える者が全てではない。ガイにとって、それがなんであるのかはわからなかった。他の誰でも理解できるものではなかっただろう。
 
 彗星の熱が肌を焼く、肉を焼く。骨さえも溶断せしめんと迫る。
 フェイントを重ねた所で無意味であると知るだろう。
 放たれる斬撃の一撃。
 手にした刀は裂帛の気合と共に放たれる。
「てめえはなんおために約束したのかはわからねぇ……でも破滅を防ぐためにお前を斬る!」
 ユーベルコードに輝く瞳が見据える。
 アレは敵だ。
 決して幼子ではない。ガイは己の頭をかすめる疑念を振り払う。あれは敵。どんな姿をしていたとしても、どんな過去があるのだとしても、断ち切らねばならぬ敵である。

「これが俺の奥義!! くらえ、無双の一撃を!!」
 二天一流『無双一閃』(ニテンイチリュウ・ムソウイッセン)の一撃が『ジャガーノート・ハーレー』の光剣とぶつかる。
 一撃目は光剣を切り裂く。
 そして、二撃目が『ジャガーノート・ハーレー』の右腕を切り裂く。
 重たい音を経てて、左腕が大地に落ちる。
 理解も、何もかも遠きもの。
 されど、断ち切らねばならぬものがある。『約束』が『今』を侵食し、破滅を齎すというのならば。

 きっと、それは未練という名のものであったはずだから。
「『それ』は絶ち切らせてもらう。破滅は多くを滅ぼす。てめえの言う『約束』以上のものを。だから」
 今は戻らぬものを切り裂く一撃が、『ジャガーノート・ハーレー』の執着の唯一を斬るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
果たせない『約束』に縛られたまま、存在し続ける……。

できれば骸の海に還してあげたいところだけど、
倒しにくい、倒せない、っていうのであれば倒さなければいい、かな。

この世界には、わたしの家族もいるんだ。
わたしは約束とかしてないし家出中の身だし、この街に住んでいるわけでもないけど、
それでもこのまま狂気を見過ごすわけにはいかないから、少し残酷なことをするよ。

倒せないなら、封じればいい。
あなたの時間を止めさせてもらうよ。

【白の天蓋】を発動してジャガーノートを閉じ込めたら、
「アンダークロック・フリーズ」

時間を止めて、そのまま封印させてもらうよ。
考えることもできないとは思うけど、永遠の約束の中で過ごしてね。



 猟兵の斬撃に寄って『ジャガーノート・ハーレー』の右腕が大地に落ちる。
 けれど、『ジャガーノート・ハーレー』に痛覚はないようであった。己の右腕が切断されたとしても何処か他人事のように、その右腕を踏み潰す。
「ボクハ、オレ、ハ……ナケレバナラ、イ……何処……」
 言語機能の大半が喪われているがゆえに、その言葉に意味を見出すことは難しかっただろう。
 かのUDC怪物が拠り所としているのは『約束』のみ。
 その『約束』が如何なるものであったのかを猟兵は知らないだろう。けれど、このように決して倒れることをしないということは、倒されない、ということが『約束』に関係しているのかもしれない。
 もしくは、生き残ることこそが、そうであったのかもしれない。

 けれど、そのいずれもが『約束』から程遠いものであることを菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は知るだろう。
 彼女の目の前にいるのは狂気を齎し、世界に破滅を齎すものである。
 過去の化身。
 過去に歪んだ、いずれかの残響の如き者。
「果たせない『約束』に縛られたまま、存在し続ける……できれば」
 そう、できることならば骸の海に還したいと理緒は思っただろう。
 けれど、目の前の『ジャガーノート・ハーレー』が強大なUDC怪物であることを知る。倒しがたき敵。
 今すぐに打倒することができない存在を前に理緒は、空に煌めくユーベルコードの輝きを見た。

 彗星。
 あの『ジャガーノート・ハーレー』は己が世界の敵であると猟兵と対峙して自覚する。
 そのユーベルコードは、己を世界の敵だと認識させた者、即ち猟兵を追跡する光弾となって理緒に迫っているのだ。
「この世界には、わたしの家族もいるんだ」
 呟く。『約束』したわけではない。別に何か特別なものがあるわけでもない。何より家出中でもある。この街に住んでいるわけでもなければ、縁があるわけでもない。
 けれど、それでも彼女は『ジャガーノート・ハーレー』が齎す狂気をそのままに見過ごすことなどできない。

「少し残酷なことをするよ」
 今の理緒では倒せない。
 倒せないならばどうすればいいのか。迫る光弾を見やり、理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
「クロック、アジャスト」
 それは電脳空間より召喚された純白の壁。
「アンダークロック・フリーズ」
 白の天蓋(シロノテンガイ)は『ジャガーノート・ハーレー』を取り囲む。それはアンダークロック。
 時間の流れを電子解析し、減速するユーベルコードの力。

 今、『ジャガーノート・ハーレー』と理緒との間に流れる時間は異なるものであった。あちらからは理緒が凄まじい速度で動いているようにも思えたことだろう。
 けれど、現実は違う。
 理緒のユーベルコードに寄って封じられた『ジャガーノート・ハーレー』、そしてその手が放った彗星の光弾は純白の壁を超える頃には劣化し、消滅しているだろう。
「倒せないなら、封じればいい。あなたの時間を止めさせてもらうよ」
 まさにそれは邪心を封印するかのような力であった。
 考えることも、今の『ジャガーノート・ハーレー』にはできないだろう。
『約束』だけが『ジャガーノート・ハーレー』の唯一であった。純白の壁の中で、理緒のユーベルコードの効果が切れるその時まで、彼は懊悩し続ける。
 摩耗し続ける。

 如何なる経緯が在って、かの魂が『ジャガーノート・ハーレー』の中にあるのかはわからない。
 けれど、理緒は思うのだ。
「永遠の『約束』の中で過ごしてね。きっとその『約束』だけがあなたをあなたたらしめるものだから」
 失ってしまえば、存在することはできない。
 何も考えることができなくなるほどの悠久の時間の中、『ジャガーノート・ハーレー』は何を夢見るか。

『約束』が縛り続ける魂。
 きっとそれは永劫の如き檻。
 オブリビオンとして消滅するその時まで続く回廊。
「その狂気を齎すことさえなかったのなら、こんなことしなくてよかったのかな……」
 理緒は摩耗しながら純白の壁より現れる『ジャガーノート・ハーレー』を見る。
 その狂気にも似た眼光が、今も尚悲しく輝く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
こっからが本番、だな……!
すげえ怖ぇけど、あとはやるだけだ。手伝ってくれ、クゥ!

《我が涅槃に到れ獣》でクゥを喚び出したら、〈第六感〉で向こうの攻撃を〈見切り〉ながら〈ダッシュ〉で相手を射程に捉え、〈スナイパー〉ばりの一撃を叩き込む。
あとは必要に応じて、クゥの一撃を入れるために〈援護射撃〉でチャンスを作ったり、〈マヒ攻撃〉で向こうの攻撃を妨害したり。

アンタに譲れねえモンがあるってのは、何となく感じられる。
でも、おれにだって大切なモンがある。きっと、アンタのと同じくらい。
どっちが軽くてどっちが重いかなんておれにはわかんねぇ……それでも、おれは退くわけにはいかないから。

ごめんな。恨んでくれていいよ。



『約束』を果たすという願いは叶えられない。叶えてはならない。それを叶えるということは、世界の停滞を意味するからである。
 世界の破滅を齎すのが『約束』であるということは皮肉でしかない。
 生きていたい。
 死にたくない。
 生きて欲しい。
 死んでほしくない。
 その願いはいつしか『ジャガーノート・ハーレー』を形成するものとなり、過去から滲み出た瞬間に歪み果てた。
「ボク、オレ、ア、ハト、『約束』――」
 果たすまで止まらない。どれだけ世界を傷つけたとしても、必ずや『約束』は果たさなければならない。

 静かなる言葉は、彼の失った言語機能では表現することはできなかった。
 膨れ上がる重圧。
 長大なる時間を経て、摩耗してもなお『ジャガーノート・ハーレー』は立ち上がり、一歩を踏み出す。
 その重圧を前に鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は恐れを抱く。
「こっからが本番、だな……!」
 恐ろしいと思う。怖いと思う。それは仕方のないことだ。オブリビオンとの戦いは、いや、戦い全てに関して彼は恐れを抱く。
 未だ振り払えぬものがある。
 けれど、それでも彼の瞳はユーベルコードに輝く。
「後はやるだけだ。手伝ってくれ、クゥ!」

 我が涅槃に到れ獣(ア・バオ・ア・クゥ)。
 そう唱える声が己の喉から振り絞られ、そして焔をまとった黄金のライオンが嵐を背に乗せ飛ぶ。
 その間隙を縫うようにして打ち込まれた光剣の一撃が大地を砕く。
「――、ア、――、……ッ!!!」
 隻腕となっていたはずの右腕が再生している。
 いや、違う。
 摩耗していた『ジャガーノート・ハーレー』の全てが復活している。これが倒しがたきUDC怪物と呼ばれたるが所以。
 そのユーベルコードの全てが、存在することに全振りされているのである。

 さらに強化された光剣の一撃が嵐を、そして黄金のライオン『クゥ』を狙う。
「アンタに譲れねえモンがあるってのは、なんとなく感じられる」
「――、――、守ラナケレ、――……!」
 何を、とは問うまい。
 それは『約束』である。幼子が約束を守ろうと必死になるように。『ジャガーノート・ハーレー』は、ただそのためだけに己の存在を世界に現すのだ。
「でも、おれにだって大切なモンがある。きっと、アンタのと同じくらい」
 光剣の斬撃が切り上げるようにして嵐と『クゥ』を襲う。
 凄まじい斬撃だ。『クゥ』の獅子としての身体能力がなければ、今頃嵐は斬撃の餌食になっていただろう。

 いや、どちらが欠けても嵐のユーベルコードは輝きを消失させていた。
 互いの生命を共有する力。
 それによって嵐と『クゥ』は正に一心同体となっているのだから。
「大切ナ、モノ……――!」
 放たれる斬撃の一撃を見きった嵐は光をかすめながら、スリングショットから弾を打ち出す。
 その一撃が光剣を『ジャガーノート・ハーレー』の手から弾き飛ばす。
「どっちが軽くてどっちが重いかなんて、おれにはわかんねぇ……」
 わからない。
 嵐の中に渦巻く言葉は、どれもが否定的なものであった。互いに譲れないものが在る。誰かの大切なものを踏みにじることができる足を持ちながら、自身の大切なものを抱え守ることができる手を持つのが人間だ。

 だからこそ、わからないのだ。
 どちらが正しく、どちらが間違えているのか。それさえもわからない。それは恐怖だ。答えが出ないという恐怖。
 されど、嵐は迷わない。
 迷っていられない。迷っている間に己の大切なものが手のひらからこぼれ落ちてしまうことを知っているからだ。
「……それでも、おれは退くわけにはいかないから」
 時が逆巻くことがないように。時間は決して戻らない。過去にはもどらない。前に前に進んでいく。

 だからこそ、黄金の獅子は焔をまとった爪を『ジャガーノート・ハーレー』へとふるう。
「ごめんな」
 それは嵐にとって、できる唯一のことであった。
 焔纏う爪が『ジャガーノート・ハーレー』の体を切り裂く。血は噴出しない。鋼鉄の体はきざまれ、その肉体とも言えぬ器を傷つけるだけだ。
 けれど、嵐は爪の一撃を見舞いながら、己の心が爪立てられるような思いであった。だからこそ、絞り出して言ったのだ。
「恨んでくれていいよ」
「――、ア、ア、ア、――」
『ジャガーノート・ハーレー』がなんと言ったのかを嵐はわからなかった。
 けれど、言わんとするところを嵐は自分の心に収めて答えを出さないといけない。これはどれだけ迷ってもいい。どれだけ悩んでもいい。

 いつの日にか、それが答えと成って彼の道行きを照らすであろうから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
「…転身ッ!」
炎神霊装を纏って速攻決めてやるぜッ!覚悟しなッ!

先制攻撃だ、高速飛翔で突っ込んで生成した破魔の炎刀でぶった斬るぜ。
これで終わり……って訳にはいかねえみてえだなッ!
「…そちらにも大切な『約束』があるとしても、その狂気が世界を壊すのなら止めてみせますッ!」
はんっ、約束を果たす迄絶対に斃れられないってんなら斃れるまで何ラウンドでも付き合ってやるよッ!

炎弾で牽制しながら炎刀で敵の光剣と斬り結びつつ空中高速戦闘だ。
敵の動きを瞬時に見切って攻撃を入れたり、光剣の斬撃に合わせてカウンターを決めたりして敵が倒れるまで戦ってやる。


【技能・先制攻撃、破魔、空中戦、見切り、カウンター】
【アドリブ歓迎】



 そのユーベルコードの輝きは、『ジャガーノート・ハーレー』が持つ『約束』故。必ず生きて、死なず、そう願われたことを果たすための『約束』。
 ただそのためだけに世界を停滞に追い込む程の狂気。
 本来の願いとはかけ離れた歪み。
 オブリビオンになるということはこういうことであると示すかのような歪みを持つ『ジャガーノート・ハーレー』は己の力を発露する。
「『約束』……タメニ、ボク、オレ、ハ……――、――、……!」
 言語機能すらも失っている。
 ただ『約束』を果たすというためだけにあらゆるものを犠牲にする。

 世界すらも破滅に追い込む程の願い。
 それを前に、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と桜は炎翼を羽ばたかせながら、その身を霊装に包み込む。
「……転身ッ!」
『速攻で決めてやるぜッ! 覚悟しなッ!』
 炎神霊装(ブレイズフォーム)は神速のユーベルコード。二人の力を一つにし顕現させた炎翼が一気に加速する。
 構えた刀より放出される炎が一閃される。

 大気すら震わせるほどの神速の一撃。
 けれど、その斬撃に手応えを感じながらも凶津と桜は身を翻す。
『これで終わり……って訳にはいかねえみてえだなッ!』
「――……、――、オ姉……――オ、兄……」
 振るわれる光剣が凄まじい重圧を放つ。解き放たれた光剣の一撃は速度に勝る凶津たちすらも圧倒する。
 凄まじい斬撃が二人を襲う。
 炎翼が絶ち切られ、それでもなお二人は飛ぶ。
「『約束』、シタ……――ッ!!!!」
 迫る『ジャガーノート・ハーレー』の力は更に強大になっている。

 他の猟兵の攻撃が効いていないわけではない。
 確実に攻撃は加えられている。だと言うのに、ユーベルコードに寄って復活する力は、『ジャガーノート・ハーレー』を突き動かし続けるのだ。
 光剣の乱舞の如き斬撃が炎すらも凌ぐ勢いで放たれる。
「……そちらにも大切な『約束』があるとしても、その狂気が世界を壊すのなら止めて見せますッ!」
 桜の裂帛の気合が、正義のヒーローマスクである凶津に伝わる。
 そのとおりである。
 このUDCアースにおいて、UDC怪物が齎す狂気は、人の中で膨れ上がり、いずれ凶行に走らせる。

 そうした時に喪われる生命をこそ、猟兵は救わんとする。
 たとえ、それが『約束』の果てにある狂気なのだとしても、凶津は、桜は、立ち止まるわけにはいかないのだ。
『はんっ、『約束』を果たすまで絶対に斃れないってんなら斃れるまで何ラウンドでも付き合ってやるよッ!』
 凶津の鬼面が咆哮する。
 炎の弾丸が光剣の斬撃と打ち合い、火花を散らす。
 空中を駆け抜ける二人を追う光の斬撃が炎と相殺されながら、光と火の粉をちらして世界を照らす。

 夜空の下を見るがいい。
 空にありし天蓋の如きまばゆき星空も、大地にありし剣閃の打ち合うがゆえに舞う火花には敵うまい。
「……その『約束』こそが、あなたの存在する理由なのでしょう。なら……ッ!」
『すでにそれは此処にはないってことを覚えやがれッ!』
 そう、すでに『約束』はない。
 反故にされたわけでもなければ、失ったわけでもない。
『ジャガーノート・ハーレー』の器に宿る魂が、幼子のように泣き叫んでいるのを凶津と桜は知るだろう。

 あれは幼子だ。
 ただの小さな子供なのだ。ただ、『約束』を守りたいと思う我欲。
 分別のつかぬ、聞き分けのない子供の叫びと同じ。されど、それが世界を滅ぼす。狂気ではなく、ただ一つのことを握りしめるが故に、手放せないように。
 光の剣閃を切り払い、凶津と桜は『ジャガーノート・ハーレー』に迫る。
『ならよッ!』
「……あなたの言うところの『約束』は、もう果たされない」
『果たされない約束っていうのはよ、またいつかってことだろうがッ!』
 それを夢見て、沈むしかない。
 時は逆巻かない。
 決して戻りはしない。果たされなかった『約束』は、そのままに沈むしかない。けれど、願うことはできるはずだ。

 凶津と桜の振るう炎の一閃が『ジャガーノート・ハーレー』の体を切り裂く。
 燃やし、灰となり、そして消えゆく。
 悲しみも、苦しみも、炎が浄化するように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
さあ、最後の仕上げだね
過去に何があったのかはわからないけれど
オブビリオンと化した時点でどうしようもないからね
今を生きる人達の為に討伐させて貰うよ

出現地点まで鉑帝竜で駆けつけたら
飛び降りて戦闘に加わろう

鉑帝竜は目立たない様に空間の穴から
邪神の聖域に戻って貰っておくよ

オブビリオンである以上は斃すしかないからね
召喚された彗星は
UCによるガトリングガンの射撃で落としていこう
手数なら負けないよ

彗星を迎撃したら本体をガトリングガンで攻撃
敵の攻撃は神気やワイヤーガンでの妨害や回避で凌ごう

何故何度も立ち上がろうとするのか
僕には分からないけれど
こちらも諦める事はできないよ
弾切れの心配はないから何度でも撃ち倒そう



 最後の仕上げ。
 それは、このUDC怪物召喚儀式を締めくくるために必要なことであった。
 猟兵達は、かの『ジャガーノート・ハーレー』を引きずり出すために儀式の完遂を為した。現実世界に引きずり出された『ジャガーノート・ハーレー』は掛け値なしに強大な存在であった。
 倒されがたき、と形容された能力はまさに継戦能力を突き詰めたようなものであったからだ。
 空に浮かぶ彗星。
 それは『ジャガーノート・ハーレー』が、自分自身を世界の敵として認識した瞬間でもあった。

「『約束』ヲ、果タサナ、――」
 言語機能の大半を失って尚、すがるはたった一つの『約束』であった。
 生きること、死なぬこと。願われたことを、己がなさなければならないという、幼子が『約束』を守るために必死になるかのような純粋さで、『ジャガーノート・ハーレー』は世界を滅ぼす。
「過去に何があったのかはわからないけれど、オブリビオンと化した時点でどうしようもないからね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は巨大なる鉑帝竜より飛び降り、『ジャガーノート・ハーレー』との戦いに参じる。

 巨体である鉑帝竜が空間の穴から邪神の聖域に戻れば、晶は瞳をユーベルコードに輝かせる。
「今を生きる人達の為に討伐させてもらうよ」
 手にした携行式ガトリングガンのシリンダーが凄まじい勢いで回転していく。
 回転式多銃身機関銃全力稼働(スウィーピング・ファイア)は、熱を帯びていく。ひやりとした夜の空気すらも白熱したシリンダーを前に冷やすことができないことを知るだろう。
 ガトリングガンから放たれる弾丸の凄まじき斉射が、迫る彗星の光弾を撃ち落とす。
「――、――、……ッ!」
 光弾を尽くガトリングガンの斉射で撃ち落としながら、手数で圧倒する晶。

『ジャガーノート・ハーレー』はガトリングガンから放たれる弾丸をかいくぐることのできる速度で持って、間隙を縫うようにして晶に肉薄する。
「手数では負けないって言ったけど……!」
「『約束』ヲ、果タ、――……!」
 振るわれる光剣の剣閃。
 それをワイヤーガンで躱し、晶は空中より『ジャガーノート・ハーレー』の狂気に満ちたユーベルコードの輝きを見るだろう。

 倒しがたき敵。
 どれだけ追い詰めても、『約束』を果たすためだけに立ち上がってくる敵。
 その強烈なる輝きを前に、晶は怯むだろうか。
 いや、怯むことはない。
 何故なら、目の前の敵はどんな理由であれ、過去であれ、今を侵食する存在である。倒さなければ世界が破滅する。
 打ち込まれるガトリングガンの弾丸が『ジャガーノート・ハーレー』の鋼鉄の体に打ち込まれ、その体を吹き飛ばす。

 けれど、それでも立ち上がってくるのだ。
「『約束』……生キル、死ナ、ナイ……――!!!」
「何故何度も立ち上がろうとするのか、僕にはわからないけれど」
 けれど、そう。
 晶は諦めることができない。『今』という現実を。『約束』がどれだけ純粋で、尊ばれるべきものであったのだとしても、それを受け入れてしまえば世界が終わる。
 共に在れるのならば、どんなに良いことだろうか。
 猟兵としての本能が告げる。
 アレは敵だと。滅ぼさなければならない敵であると。世界の敵。停滞と破滅齎す存在。それゆえに滅ぼさなければ、『今』という現実が滅びる。

「アスタ・ラ・ビスタ……」
 ベイビーとは言えなかっただろう。『約束』を守らんとする存在の純粋無垢さ。目の前の『ジャガーノート・ハーレー』は鋼鉄の肉体を纏いながらも、その内側にあるものは幼子のようなものを感じさせるものであったからだ。
 だから、そうは言えなかった。
『またいつか』、『さようなら』。その言葉を晶は告げるだろう。球切れの心配などない。
 立ち上がり、何度も世界に『約束』のために立ち向かうというのならば、晶は何度でもそれを打ち倒そう。

 痛みに喘ぎ、泣くように輝きを増す狂気たるユーベルコードの輝き。
 絶えず繰り返される痛みと死の間際。
 淵をなぞるかのような連続たる苦しみを齎し続けることに変わりはない。だからこそ、晶は『ジャガーノート・ハーレー』を打ち倒す。
「それでも、君は立ち上がってくるんだね。愚直なまでな純粋さは、時として世界を滅ぼす……」
 だから、またいつか、と晶はガトリングガンの放つ轟音の先に『ジャガーノート・ハーレー』を吹き飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーん…よくよく考えるとアカウント消すのはやりすぎ?
でも万が一を考えたら…ね?
いやいや、決して楽しくて調子に乗った訳では…あるけども

けど、8番目…か
アハト…さて、何と言うかこれが名前ならどっかで聞いた符号だなあ…
ご兄弟揃ってドイツ数字の名前だったりする、君?
…ま、だったとしても何も出来ないけどね


オーバーロード…模造神器全抜刀
さてと、しぶとさが売りっぽいから…こっちも火力を上げていかないと駄目かな
瀕死の時に復活変身するなら、ギリギリまで削って後は一気に…ってやつだね
HPゲージが見えれば楽なのになあ…
空を飛ばれても厄介だし『天候操作』でのダウンバーストと、『念動力』でむむん!と上から押し付ける
そして接近して先ずは全剣で『なぎ払い』、『串刺し』コンボで削っていこう
やり過ぎて何度も回復されても困るし削りも程々に
タイミングを見計らって全剣を突き刺し【Unite Dual Core】起動
蒼炎と雷刃で一気にダメージを与えよう

何か言い残す事でもあれば聞いてあげるよ
こーいうのも、また研究の一環だね



 世界同時SNSフォロワー数トップアカウントの消失事件。
 それは一夜にして界隈を激震せしめるものであったが、渦中の人物たる月夜・玲(頂の探究者・f01605)は冷静になって漸く、アカウント消去はやりすぎであったかもしれないと省みる。
「でも万が一を考えたら……ね?」
 あの流星の動画や画像が狂気を含んでいることは明らかである。
 UDC怪物を打倒すれば、狂気が消えるとは言え、確かに万が一のことを考えていたのならば画像を消去するだけでは足りないかも知れない。

 決して楽しくて調子に乗って、人気者のアカウントを消去してしまったとか、そういうわけでは決して無いのである。
「……楽しくて、楽しくて調子に乗ったわけでは……あるけども」
 あ、やっぱり調子に乗ってアカウント全消去という暴挙に出たわけであった。しかし、そんなことを考えている暇を『ジャガーノート・ハーレー』は与えてはくれない。
 猟兵の斬撃。
 その一撃を受けて瀕死にまで追い込まれた『ジャガーノート・ハーレー』の瞳が輝く。
 ユーベルコードの輝き。
 それを視認した瞬間、玲は目の前のUDC怪物が倒し難いという特性を持つことを知る。
 瀕死に至っても、即座に復活し、その力を増大させてくる。
 これまで猟兵の攻撃を受けても尚立ち上がってきたのはそういうからくりがあるのだ。
「けど、8番目……か」
 その言葉にどれほどの意味があるのかわからない。

 確かなことは一つだけである。
「『約束』……、――、オ、兄……」
『ジャガーノート・ハーレー』の掲げた手のひらに呼応するように空より飛来するは彗星の光弾。
 そして、手にした光剣の輝きの増大。
 どれもが強大なUDC怪物である証左。玲はしかし、その告げられた符号をもって己の中にある直感めいた推察に行き当たる。

 ドイツ数字。
 アイン、ツヴァイ、ドライ、と続く数字の名前。符丁のごとく噛み合うものを玲は感じたことだろう。これが偶然なのか、必然なのかわからない。
「ご兄弟そろってドイツ数字の名前だったりする、君?」
 そう問いかけても答えは返ってこない。わかっていたことだ。目の前の『ジャガーノート・ハーレー』は言語機能の殆どを失っている。
 人格を形成していた事象の尽くも消失している。
 それ以上に猟兵との戦いで摩耗しているのだ。
「――、――、――、フュ、……」
 言葉は聞き取れない。けれど、迫る光剣の斬撃は鋭いものであった。振るわれる一撃を玲の瞳が超克に至りし輝きを放ち、外装の副腕と抜き払われた模造神器の四振りで一撃を受け止める。

 力の奔流が荒ぶ中、玲は息を吐き出す。
「……ま、だったとしても何もできないけどね」
 過去の化身。過去より滲み出たということは、どうであれそういうことだ。変えようのないものが過去であるというのならば、此処でどうこう考えをめぐらしたところで無駄であると玲は悟っている。
 対する『ジャガーノート・ハーレー』の力は復活するたびに増していく。
 光剣の一撃も四振りの模造神器で受け止めるのがやっとであった。
「瀕死で復活するのなら、瀕死になる瞬間すら与えない……一気にってやつだね」
 HPゲージが見えれば楽なのに、とサブカル脳で玲は考える。けれど、同時にこちらの意図を読み取ったかのように『ジャガーノート・ハーレー』が飛び退ろうとする。

 飛行能力すら得ている彼にとって、玲と正直に地上で戦う必要はないということだ。
 けれど、それをさせぬのが玲である。
「むむん! ってね! 空を飛ばれても厄介なのはどこでも一緒だし!」
 天候操作によって破壊的な気流の流れが『ジャガーノート・ハーレー』が空に飛び立とうとするのを押し止める。
 空気の流れは凄まじい圧力となって彼の体を大地に縫い付ける。
「――、……ッ!!」
 咆哮が轟き、光剣の一閃が踏み込んだ玲に振るわれる。気流の重さを乗せてもなお、振るわれる斬撃の速度は凄まじかった。

 それを模造神器を手にした副腕が受け止めるも、玲の体が吹き飛ばされる。
 斬撃波を振り抜いて押し留めた『ジャガーノート・ハーレー』の鋼鉄の肉体を削る。けれど、それは微々たるものであった。
 質よりも数。
 振るわれる斬撃波は付かず離れず『ジャガーノート・ハーレー』を追い込み、釘付けにする。消耗戦。それも瀕死に至る直前まで叩き込み続ける泥沼のような戦い。
「やりすぎて何度も回復されても困るしね。削りも程々にって……って、これっ!」
 クソゲーにも程があると玲は呻くだろう。
 こちらの斬撃はちまちまとした威力でしか打ち込めないのに、『ジャガーノート・ハーレー』の一撃は、ただの一撃でもこちらを一瞬で追い詰める。

 当たってはならず。そして、当て続けなければならない。
 そのタイトロープの如き戦いの中においても、終わりは見えるのだ。『ジャガーノート・ハーレー』の体が傾ぐ。
 摩耗し、崩されてきた力が、漸くにして猟兵達に硬い向いた瞬間であった。
「弐神合一プログラム…略してUDC…起動!」
 Unite Dual Core(ユナイトデュアルコア)、それは模造神器に込められた雷と焔の疑似邪神との合体を意味する。
 玲の手にした模造神器より放たれた力が、玲自身と合体することによって力を増幅させ、光の速さで打ち込まれた雷刃の一撃が『ジャガーノート・ハーレー』の肉体を貫く。

「――、ガッ、痛イ、ア、――!!」
「なにか言い残すことでもあれば効いてあげるよ」
 こういうのもまた研究の一環であるからと、玲は『ジャガーノート・ハーレー』の目の前に迫る。
 一気に距離を詰める。
 交錯する瞳とアイセンサーの如き輝き。
 そこにあるのは狂気だけであった。『約束』を果たすためだけに世界に破滅を齎す力。
 その源となっているのが『約束』を果たさなければならないという幼子のような純粋無垢なものであろうとも、過去より滲み出た者が齎す停滞の前には破滅を呼び込むものでしかないのだ。
 だからこそ、玲は浄化の蒼き焔と共に『ジャガーノート・ハーレー』の体を包み込む。

「ア、ア、ア、――」
「自分の名前かな。それとも、誰かの名前かな。『約束』がどんなものであれ、君……君は果たせなかったことをこそ悔いているんだね」
 その言葉が何を意味しているのかわからない。
 けれど、玲はそれを8番目の子供の残した最後の言葉として記憶するだろう。意味などなくとも。ただの口腔が紡いだ生理反応なのだとしても。
「ア、ア、アリ、ガ、……――」
 それでも、過去の化身と成り果てた、果たされぬ『約束』に歪んだ幼子を、その歪みから浄化する焔でもって送るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年06月15日
宿敵 『ジャガーノート・ハーレー』 を撃破!


挿絵イラスト