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恋する蜘蛛女

#デビルキングワールド #シルバーレイン #戦後 #7thKING決定戦 #悪魔契約書 #榊原葉月の受難 #蓮華と橘

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 休日の喫茶店で、時々会うあの人。
 明るく柔らかい色彩の、けれど明朗快活で、学院内でもオフの日ですらも人に遠巻きにされがちな私にも、臆せず接してくれる人。
 名前と、同い年であることだけは、話してくれたから知っている。それ以上を望む勇気はなかった。
 それでも、恋をしてしまった。
 出逢って数ヶ月ほど。一緒にいた時間も少ない。けれど諦めなければならないのは、そんなことが理由じゃない。
 私は、人ならざる者だから。

 ――気紛れだよ気紛れ。あんだけコミュ力高ェ野郎なんざ、女の一人や二人いるに決まってらァ、ヒヒッ。

 解っている。
 解っているのよ、そんなことは。

 ――だったらよォ、迷うことはないんじゃねェのか? お前さんの手でヤっちまえば、アイツはお前さんだけのモノになるぜェ?

 違う。
 そんなことがしたいわけじゃない。

 ――けどよォ、人間が『蜘蛛女』のお前さんを受け入れるかァ? 受け入れねェよなァ? だったらいっそ、

「――私はそんなこと望んでない!!」

 しん、と店内が静まる。
 周りに迷惑をかけたことより、今日はあの人が来ていないかを真っ先に気にかけた、自分が浅ましくて嫌になる。
「……ごめん、なさい」
 店内の人間への謝罪の言葉が、震えていたのが自分でも解った。
 今日は、もうここにはいられない。私は必死で悪魔の囁きを聞かないふりして、足早に店を出るしかなかった。

●学園へ
「俺の父さんは人間なんだ。母さんは雪女として人に災いを与えてきた過去があったから、父さんを好きになった時にもそのことが足を引っ張って、なかなか想いを伝えられなかったらしい」
 でも、二人が互いを受け入れてくれたから、俺は今ここにいられるよと、南天庵・琥珀(ナイトタイムドリーマー・f36445)は柔らかく微笑んだ。
「先の戦争で、僅かに残っていた悪魔契約書をオブリビオンの残党が利用して、他の世界に侵略を始めていると言う話は、もう皆知っているだろうか」
 今回、標的となったのは琥珀の故郷でもあるシルバーレイン。
 何かと故郷の大事に聡い彼はまた、銀誓館学園絡みの予知を受け取ったらしい。
「と言っても、今回接触して欲しいのは学園生じゃないんだ。必要なら話を聞くくらいはできるだろうけれど、重きを置いて欲しいのは学園と交流のある、別の学院の生徒なんだ」
 私立妃花女学院。
 銀誓館学園の鹿苑寺キャンパスに近く、頻度は少ないながらも希望者を募っての合同学習を行うことのある相手だ。
 接触対象、もとい救出対象は、学院の高等部に通う土蜘蛛の少女、八束・夏蓮。
 銀誓館学園とは違い、この学院は来訪者を大々的に受け入れているわけではない。そのため夏蓮は、隠せるとは言え自身の土蜘蛛としての特徴が、一般の生徒や教職員に嫌悪の念を抱かせることを恐れて、正体を隠して在籍している。
 そうして学院内でも独りでいることが多く、また美しい容貌ながら冷淡な印象を与える雰囲気と口数の少なさから、クラスメイトたちにも高嶺の花として畏怖混じりに遠巻きにされているらしい。
 そして、夏蓮は銀誓館学園に通う男子生徒である立花・周太に恋をしている――のだが、問題が幾つかある。
 まず、互いにその正体を知らない。夏蓮は周太が銀誓館学園の能力者であることを知らない。と言うこともあり、周太に自身の正体を打ち明けることもできずにいる現状だ。
 因みに、周太自身は銀誓館学園でも戸叶キャンパスと言う別のキャンパスに在籍しており、また夏蓮が合同学習に希望を出していないこともあり、二人が互いの学び舎で会うことはまずない。
 そして一番の問題は、そうして恋を諦めようと苦悩している夏蓮と同化し、唆し、周太を手にかけさせ――そしてゆくゆくは人間社会を殺戮によって惨劇へと突き落とす、自身の手駒として作り変えようとしている悪魔がいることだ。
「夏蓮の中には詠唱銀化した悪魔契約書がある。その力を利用し、悪魔はいざとなれば夏蓮を殺害して放棄し、逃げ果せることができるだろう。だからまずは一般人の振りをして、夏蓮に接触して心の平穏を取り戻せるように、共に日常生活を過ごして欲しい」
 そのための立場や身分は、銀誓館学園が用意してくれる。特に榊原・葉月という教師はかつて猟兵たちに助けられた恩があり、また周太が自身の担当するクラスの生徒であることから、希望すれば学生で通じる年齢の者には自身と接点のある生徒、それ以外の者には自身の同僚の教職員として口裏を合わせてくれるらしい。
 実在の教師の名前があれば、信用も多少得やすいだろうと。
「因みに学院には職員も含めて女性しかいないけれど、交流のある銀誓館の人間として入ってくる分には男性がいても問題ないらしいから、その辺りは気にしなくていいらしい」
 さて、肝心の夏蓮は、猟兵たちが到着する頃には人の余り寄りつかない学院内の温室で独りの時間を過ごしているようだ。
 そこで彼女の信頼を勝ち取り、黒幕の悪魔――オブリビオンが体外に弾き出されたら、そのまま戦いとなる。体勢を立て直し、再び夏蓮と同化する前に迅速に撃破、その後に放出される契約書も完膚なきまでに消滅させるのだ。
 但し、夏蓮との交流の場にしてその後の戦場である温室はこじんまりとしており、読書や弁当を持ち込んでの軽い食事、体操程度の軽い運動ができる程度の広さしかない。なおかつ極力植物を傷つけない立ち回りを要求されるため、移動や回避に制限こそないものの、余り派手な大立ち回りはできないだろう。
「すぐに悪魔だけを叩けない状況だし、戦闘に入っても何かと制限がかかるけれど、二人の人間の未来と、将来的には大勢の命が懸かっているから。何とか助けてあげてくれ」
 人間――一人は来訪者では? と誰かが問うと、琥珀は再び無邪気に微笑んで見せて。
「確かに、種族的には俺たち来訪者は人間じゃない。けれど、人間と共に生きていくことを選んだ来訪者は、人間、と呼んでもいいんじゃないのかなと。考え方は人それぞれだけれど、少なくとも俺は、そう思っているよ」


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあと申します。
 オープニングなっがい……。
 ここまで読んでくださった方はありがとうございます。

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:日常『温室にて』
 第2章:ボス戦『???』

 第1章では、温室で物思いに耽っている様子の夏蓮と接触、交流を図っていただきます。
 信頼を勝ち取ることで心の平穏が保たれ、内からの悪魔の声に抗いやすくなります。
 親身に悩みを聞いてあげたり、彼女に通じるところのありそうな自身の経験談などを語ってあげるといいかも知れません。

 第2章では、夏蓮の中に潜み彼女を唆そうとしていたオブリビオンとの直接対決になります。
 が、現時点でその正体は判明しておらず、詳細な情報は開示されておりません。
 人を小馬鹿にした言動で、卑怯な手も好んで用いる性質のようですが……?

 なお、夏蓮についてですが、正体を隠し妃花女学院に通う黒髪の美少女。
 土蜘蛛であり、なおかつフリッカーダイヤの能力を有しています。
 自分が土蜘蛛であることと、孤立しがちな性質のために恋を諦めています。
 銀誓館学園が来訪者を受け入れていることは知識として知っていますが、周太が学園所属であることは知りません。

 また、周太についてですが、銀誓館学園高等部所属の男子生徒です。明るく分け隔てなく優しい性格。
 人間のナイトメア適合者であり星のエアライダーです。夏蓮が『少なくとも純粋な人間種族ではない』ことについては薄々感じ取っている模様。

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 戦闘パートの地形などの追加情報も、断章での描写という形で公開させていただきます。
 断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『温室にて』

POW   :    温室をのんびり歩き回る

SPD   :    様々な植物を観察する

WIZ   :    秘密のお喋りをする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●温室へ
 入校許可証を首から下げて、妃花女学院高等部へと足を踏み入れた猟兵たち。時間は放課後で、生徒たちがグラウンドで部活に打ち込む姿や、教室の窓から談笑しているらしい小さな影が見えたりする。
 正面玄関をスルーして、校舎の裏手に回って行くと、緑や花壇が並ぶ区画があり、温室もそこにあった。
 その中に、確かに夏蓮はいた。ベンチに腰掛け、文庫本に目を落としていたが、肩までの黒髪のサイドの一部が、初夏の熱のために汗で頬に貼りつき、少々鬱陶しそうだ。
 猟兵たちの気配に気づくと、彼女は一瞬驚いたように目を丸めたが、入校許可証に気がつくと、軽く会釈し再び視線を本に落とす。
 だが、その身体は少し強張っているように、猟兵たちには見えた。知らない相手と密閉空間にいるから、と言うこともあるだろうが、理由はそれだけではない、のかも知れない。
 とは言え、彼女の信頼を勝ち取らないことには何も始まらない。猟兵たちは、彼女にかける言葉を考え始めた。
暗都・魎夜
pow
【心情】
俺達みたいなちょっとはみ出した力を持っちゃった奴に、そんなのどうってことないって教える
それが学園設立前からの先輩たちの想いなんでな

【行動】
能力者・来訪者の相談役として紹介してもらって、夏蓮に接触
※普段から目覚めた能力者等の保護をしているので別に嘘ではない

警戒を解くためにUCで「コミュ力」の高いモーラットを召喚して遊んでもらう

「日常でなんか不便あったりするかい? あれば聞かせてくれ」

世間話として自身が来訪者と結婚している話や、友人でも人間の男性と結婚した土蜘蛛の女性の話などをする
「文化的な違いとかはあるだろうけど、そんなんどんな人にだってあるもんだしな。大した話じゃねえよ」



●日常へ
「こんにちは」
 暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)が声をかけると、夏蓮は再び顔を上げた。
「能力者・来訪者の相談役やってる暗都・魎夜だ。先生から話、聞いてないか」
「え……あ、ああ、銀誓館学園からいらっしゃるって……」
「よかった、話は通ってたか」
 恐らく、例の葉月と言う教師が上手くこちらの教師に説明してくれたのだろう。とは言え、魎夜は普段から目覚めた能力者等の保護をしているので、最初から何も嘘は言っていないのだが。
(「俺達みたいなちょっとはみ出した力を持っちゃった奴に、そんなのどうってことないって教える。それが学園設立前からの先輩たちの想いなんでな」)
 そしてそれは、過去に自分を救ってくれた『師匠』の想いでもある。その志を継ぐ魎夜に、来訪者として思い悩む夏蓮を放っておくことはできなかった。
「君の正体は知ってる。でも、世間にバラしたりしようってんじゃない。悩んでるって聞いて、力になりたいだけなんだ」
 正体を隠して生きている夏蓮。それを知っていると言われれば、胸中穏やかではないだろう。そう考えた魎夜は、人馴れしコミュ力の高いモーラットを喚び出した。もきゅもきゅと夏蓮の周りを跳ねる。
「あ……」
 少し、強張っていた身体が緩んだようだ。
 今なら、話ができるかも知れない。
「日常でなんか不便あったりするかい? あれば聞かせてくれ」
 あくまで力になるために、話を聞きたいのだと。
 その姿勢を崩さず接すれば、モーラットを撫でながら、夏蓮はぽつぽつと話し始める。
 自身が土蜘蛛であること。けれど人間社会に降りて、同じ生活をしてみたかったこと。もっと人間とも関わりたいが、勇気が出ないこと。
 一通り話を聞いてから、魎夜も世間話として、短く身の上を語った。
「俺自身、来訪者の女性と結婚してるんだ」
「そう、なの?」
 頷く。魎夜の伴侶は雪女だ。種族こそ違えど、夏蓮と同じく人に来訪者と呼ばれる存在。
 友人にも、人間の男性と結婚した土蜘蛛の女性がいる。夏蓮の抱える想いは、排されなくてもいいのだと。
「文化的な違いとかはあるだろうけど、そんなんどんな人にだってあるもんだしな。大した話じゃねえよ」
 すぐには無理かも知れないが、深刻に考える必要もないのだと笑みを向ければ。
 夏蓮は心を整理するように、静かに目を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山崎・圭一
銀誓館学園の高校生として潜入
見た目だけなら高校生で通じるかな、俺
格好もいつも通りでいっかー。常に学ラン(※私服)だし
懐かしいぜ。銀誓館の生徒になるなんて
10歳以上サバ読んでるが…

夏蓮を見かけたら話しかけてみよ

あんた、園芸部?いや、こんな暑いのにずっと温室に居るもんだから
俺、銀誓館学園から園芸部手伝いで来た山崎圭一って言うんだけど
うちの学園先日球技大会があったって知ってる?

ってな感じで会話を始めてみようか
さり気なく夏蓮が悩みを打ち明けるような流れに持ってこれれば
良かったら飲む?スポドリ(本当は俺用だったけど)

知らない人間相手だからこそ打ち明けてみろよ
変わるきっかけって…目に見えるものじゃねーし



●夏空へ
(「懐かしいぜ。銀誓館の生徒になるなんて」)
 とは言え10歳以上サバ読んでるが……と、山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)は内心苦笑した。
 今の圭一の肩書は、銀誓舘学園の男子高校生。格好も学ラン――但しこれは私服である――でバッチリ学生ルックだ。
 実のところ、彼は運命の糸症候群には罹患していない。いないのだが、何故か実年齢よりかなり若く見られることが多い。未だに若々しさを感じさせる顔立ちと、服装のせいだろうか。
「よ。あんた、園芸部?」
「……そういうわけではないのだけど」
「ん、そか。いや、こんな暑いのにずっと温室に居るもんだから」
 夏蓮は訝しげな顔を向けてきたが、入校許可証は発行されているようだしと、追及はしてこなかった。
「俺、銀誓館学園から園芸部手伝いで来た山崎・圭一って言うんだけど。うちの学園先日球技大会があったって知ってる?」
「ああ、それで……そう言えば合同学習に行ってたクラスの子たちが話してるのを聞いたわね」
「そうそう。実はその時に会ったここの子にさ、温室に何か悩んでそうな生徒がいるって聞いたもんだからさ。それってあんたのことかなって」
「……」
 と、これは方便だが。
 幸いにして、夏蓮はそこは疑っていないようだった。ただ、悩みを打ち明けて貰うためにはあと一押し、と言ったところか。しかし刺激しすぎてもいけない、この塩梅が難しい。
「良かったら飲む? スポドリ」
「……いいの?」
「暑いだろ? ずっとここにいてさ」
 本当は自分用だったのだが、致し方あるまい。
 夏蓮も逡巡していたが、やがておずおずと受け取った。一口飲んで落ち着いたところを見計らって、ゆっくりと声をかける。
「知らない人間相手だからこそ打ち明けてみろよ。変わるきっかけって……目に見えるものじゃねーし」
 圭一と夏蓮は、赤の他人だ。だが、それでこそ話せることもあるのではないかと。
 それ以上は何も言わず、夏蓮が口を開くのを待つ。ややあって、薄い唇が動いた。
 学外に、仲良くなりたい相手がいると。けれど自分の生まれは特殊で、学内の人間とすら交流する勇気が持てないと。だから、諦めるしかないと。
「……解って、いるのに……」
「でもさ、今一歩踏み出しただろ」
「え」
「その勇気があれば、友達できるんじゃねえかな」
 ――そしてきっと、恋だって。

大成功 🔵​🔵​🔵​

酒井森・興和
蜘蛛族の若い同胞だね
恋には大いに悩んでも良いけど種族を気に病んで、となると痛ましいな

銀誓館の用務員を装う
僕は卒業生だし実際に用事も頼まれよう
うん
温室の植物の株分け

失礼します
と、普通に温室に入り黙々と作業
ん?ほんとに作業量多いね
…さすがに途中で休憩(少し離れてベンチに

>夏蓮
失礼
さっきから長いこと居ますね
暑いのに図書室じゃなく温室で…
花がお好きですか?
僕は花を分けて貰いに
詳しくないのでメモと首っ引きですが
没頭するとあれこれ悩まずにすむので案外好きですが
貴方の年頃なら思い悩みも多いでしょうが…
世間は狭く
解決の手はあちこちに有り
難しいのは一歩目と何か1つ赦す事と
案外自分だったりね


読書の邪魔を…失敬。



●同胞へ
 酒井森・興和(朱纏・f37018)は鋏角衆である。
 彼らは土蜘蛛とルーツを同じくする、蜘蛛の因子を有する来訪者だ。
(「蜘蛛族の若い同胞だね。恋には大いに悩んでも良いけど……種族を気に病んで、となると痛ましいな」)
 興和自身、人間社会からは一線を引いている身だ。けれど人間そのものは好ましいと思っているし、何より彼には人間と添い遂げることを決めた妹――実は姪なのだが――がいるのだ。どうも他人事と片付けることはできなかった。
「失礼します」
 今の興和は銀誓館の用務員として、温室の植物の株分けのためにやって来た、と言うことになっている。
 因みに、学園の卒業生でもあるからと、実際に株分けを引き受けてきた。黙々と作業を続ける姿が功を奏してか、夏蓮は興和に対して余り警戒心を抱いていないようだ。
(「ん? ほんとに作業量多いね」)
 体よく面倒事を押し付けられた気もする。緑の手入れそのものは然程苦ではないのだが、如何せん先が長そうだ。
(「……途中だけど、流石に休憩……当初の目的もあるし」)
 夏蓮とやや離れてベンチに座る。一瞬、夏蓮が興和を見たものの、気分を害してはいないようだ。
「失礼、さっきから長いこと居ますね」
「え……」
 話しかけられるとは思っていなかったのか、夏蓮の目がきょとんと見開かれる。
「暑いのに図書室じゃなく温室で……花がお好きですか?」
「……ええ、それに……静かですから」
「成程……僕は花を分けて貰いに。詳しくないのでメモと首っ引きですが」
「けれど、嫌いではないように見えるわ」
「確かに、没頭するとあれこれ悩まずにすむので案外好きですが」
 悩み、と聞いて夏蓮はどきりとしたようだ。
 心を波立たせないよう、穏やかに言葉を続ける。
「心に支えることがあるようですね。貴方の年頃なら思い悩みも多いでしょうが……世間は狭く、解決の手はあちこちに有り」
 一人で解決できないのなら、誰かに助けを求めてもいい。けれど、今の夏蓮にそれができないのは。
「難しいのは一歩目と、何か一つ赦す事と……案外自分だったりね」
 夏蓮自身が、土蜘蛛である自身を負い目に感じているから。
 まずは、自身を受け入れるところから、始めてもいいのかも知れない。
「あ、読書の邪魔を……失敬」
「いえ……」
 作業に戻る興和。
 その背を、夏蓮はじっと見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

剣未・エト
地縛霊の鎖を隠し私服中学生に、姉貴分のミニ視肉は高校生な姉妹を振る舞う

温室で夏蓮さんに話しかけるよ
「…これは弟切草だね、秘密を抱えた弟を兄が斬ってしまったという逸話、故に花言葉は『秘密』」

不穏な話に夏蓮さんの心が揺れる直前のタイミングで続きを語ろう
「…けれどドイツでは『希望、信頼、思いやり』という意味があるんだよ
相手を思いやり信頼しているからこそ伝えられない秘密というものも、あるよね。僕もそうさ」
一般人のクラスメイトにはゴーストである事は秘密にしているからね

「誰しも秘密はある、だからそれを今伝えられない事を後ろめたいと思う必要は無いと僕は思う。それにパンドラの箱に残された希望は蓋を閉じられて隠された秘密だからこそ『希望』足りえるんだよ…いつか、強い信頼と絆を結び、未来にそれを問題無く伝える事が出来るであろうという希望さ」
※要約:まずは親密になって好意を抱かれてから大切な秘密を伝えるのもアリだよね

人(生命)と魔(ゴースト)は手を取り合えた、なら人(人間)と人(来訪者)に出来ない筈はないさ



●未来へ
「さぁくーちゃん、行こうか」
 姉――に見えるよう、ユーベルコードの力で人に変じた姉貴分のミニチュア視肉・くーちゃんと共に剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)は夏蓮の元へ。銀誓館学園の中学生と高校生の姉妹として入校許可証を受け取りながらも共に私服なのは、かの学園では制服の着用は任意とされているからだ。
「こんにちは」
「……こんにちは」
 他校のとは言え、年の近い女子生徒の二人組であるからか、夏蓮は今のところ身構える様子もなく、挨拶に応じている。
「小さめの温室だけど、花の種類が豊富だね。あ、早咲きの花もあるのか」
 ほらこっち、とエトは夏蓮を手招きした。
 夏蓮は本に栞を挟むと、エトたちの示した花へと近寄ってくる。咲いていたのは、鮮やかな黄色の可愛らしい花だ。
「……これは弟切草だね」
「可憐な花ね」
「名前の由来は、秘密を抱えた弟を兄が斬ってしまったという逸話、故に花言葉は『秘密』」
「……、え」
 隣からかけられていた声が、震えるのが解った。
 けれど、話はこれで終わりではない。心揺らいだままには、終わりにしない。
 エトたちは、そのためにここに来たのだから。
「……けれどドイツでは『希望、信頼、思いやり』という意味があるんだよ」
 その花言葉の通りに、一筋の希望の光で照らすように、言葉を続ける。
 秘密を抱えることは、確かに後ろめたいことかも知れない。けれど負い目ばかりが重くなり、押し潰されては欲しくないと、心から願いながら。
「相手を思いやり信頼しているからこそ伝えられない秘密というものも、あるよね。僕もそうさ」
 銀誓館は能力者や来訪者を拒まない。しかし、死と隣り合わせではない、ありふれた青春を送る、能力を持たない一般の生徒たちもいる。
 彼らには、エトも正体――ゴーストの子であることは、秘密にしている。そして今も、非日常を知らぬ妃花女学院の人間の目に触れぬよう、地縛霊の証である鎖は巧妙に隠したままだ。
 秘密を抱える時、人は自身を孤独であると感じてしまう。けれど実際は、その詳細こそ異なっていても、同じような秘密を抱えて生きる者は、必ずいるのだ。
「誰しも秘密はある、だからそれを今伝えられない事を後ろめたいと思う必要は無いと僕は思う」
 人は、誰かに全てを曝け出せるわけではない。
 曝け出したい人がいても、元より全てを伝えることは難しいのだから。そしてそれは、特別なことではないのだ。
「それにパンドラの箱に残された希望は蓋を閉じられて隠された秘密だからこそ『希望』足りえるんだよ……」
 その箱が開かれた時、真っ先に世界へと放たれたのは数多の災いだった。人の世には困難が蔓延ったが、ただひとつ残された希望は、奥底に隠されていたからこそ手の届く場所に残り続けた。
 確かに、全ての結末が大団円とは限らない。けれど、何が起きても希望はあると信じることはできる。
「いつか、強い信頼と絆を結び、未来にそれを問題無く伝える事が出来るであろうという希望さ」
 秘密を抱えていても、打ち明けることができる日は来る。
 急ぐ必要はないのだ。まずは親密になって、好意を抱かれてから大切な秘密を伝えるのでも遅くはないと、エトは思うから。
「いつか……」
「そう、いつか、きっとね」
 神によって贈られた女は、世に災いを解き放ってしまった。けれど希望だけは、その手で守りきったのだ。それは、どんな困難の中でも希望はなくならない、その確約。
(「人と魔は――生命とゴーストは手を取り合えた。なら、人と人に出来ない筈はないさ」)
 人間と――来訪者にも。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『人喰い鋏スニップスナップ』

POW   :    独断マップタツ
自身の【配下の悪魔を盾にすることで攻撃を防いで】から、戦場の仲間が受けた【身代わり分のダメージ】に比例した威力と攻撃範囲の【大バサミによる一刀両断】を放つ。
SPD   :    遮断メッタギリ
攻撃が命中した対象に【こびりつく血の目潰し】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【対象の視覚を封じたまま背後からの不意討ち】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    禁断スンキザミ
【サディスティックな悪意】を籠めた【邪気を纏うハサミの刃】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【感じる痛みを瞬間的に増幅することで、精神】のみを攻撃する。

イラスト:塒ひぷの

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠クララマリー・アイゼンバウムです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●決戦へ

「――ウギャッ!?」

 突如、夏蓮から彼女のものとは思えない、濁声が放たれる。
 事実、それは彼女のものではなかった。それは彼女の中に潜んでいた、醜悪なオブリビオン。
 歯のような刃を持ち、血肉を貪るような赤黒いオーラを纏った、人喰いの悪魔――スニップスナップ!
「あーあーあーあーヒデェことしやがる……折角オレサマが一番丸く収まる方法をコイツに教えてやってたってのによゥ」
 苛立ちを誘うような、わざとらしく口を尖らせて拗ねるような声音で鋏はほざく。
 こんなものが自分の中に居座っていたと知った、夏蓮の表情が嫌悪と恐怖で色を失ってゆく。
「あ……ああ……おまえ……」
「夏蓮よォ、お前さんも薄情だよなァ。オレサマはお前さんのためを思って、お前さんがあの野郎に絶対拒絶されないようにと願ってだなァ……オヨヨヨヨ」
「ふざけないで……!!」
「本気本気。オオマジメよ。オレサマは今でもお前さんが心配なんだぜェ……? あんまりにもお前さんが心配で心配で……こうしてお前さんと切り離されても、契約書はお前さんの中に置いてきちまった。一蓮托生ってヤツだなァ。ケケケケケケ」
「そんな……」
 奴の一部が、未だに己の中に。
 唇を戦慄かせる夏蓮を余所に、悪魔は猟兵たちへと交渉を持ちかける。
「さァて猟兵さん方よォ。オレサマだって事を荒立てたくはねェ。見逃してくれるってンならオレサマも静かにここを去るさ。けどもし徹底的にやり合うってんなら話は別だ。そしたらどうしてやろうかなァ……? ここの植物みィんなズタボロにしてやろうかなァ? それとも夏蓮をこの場で殺してやろうかなァ!?」
 見せしめのように悪魔は自らの切っ先を夏蓮に向けようとした、その時。
「――おっと、」
「見縊らないで……!!」
 いつの間にか夏蓮はその手にトランペットを掲げ、ベルを悪魔へと向けていた。
 猟兵たちは、それがただのトランペットでないことを知っている。放たれた音の弾丸が、悪魔の刃を弾いたのだ。
 猟兵でない夏蓮の攻撃では、オブリビオンを倒すことはできない。だが、これではっきりしたことがある。
 ――夏蓮から弾き出された悪魔は、契約書を彼女の体内に残していても、無条件で彼女を殺すことはできない!
 しかし撃破に手間取れば、悪魔は再び彼女の中に入り込むか、殺すかして逃走を図るだろう。
 そうなる前に、決着を!
エドゥアルト・ルーデル
うーん…恋する女の子は胸キュンなんで助けたい
でもリア充は生みたくない…そんなお年頃の拙者でござる

しゃーなしでござるやることはやるか…カモン【流体金属】君!拙者の身体、貴様に貸すぞ!
ウッキ…キマルッ!メタルヒゲマン…なんでござるか拙者をバケモノ見るような凄い目で見て!アイムヒューマン!アイムヒューマン!出るとこ出てもいいんでござるよ!

銀雨世界にまで【配下の悪魔】とかいるんでござるかね?まあ超反応で避けてもヨシ流体化ですり抜けてもヨシでござるが、勿論殴り倒してもいいが
そして流体化すればハサミは一切効かないでござるよ!
後は一方的にぶっ壊れるまで殴り続けるだけだ!オラッ文字通りの鉄拳でござる!



●地獄へ
(「うーん……恋する女の子は胸キュンなんで助けたい、でもリア充は生みたくない……そんなお年頃の拙者でござる」)
 そんな心境で腕を組む、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)。複雑な気持ちです。
「しゃーなしでござるやることはやるか……」
 漢エドゥアルト、まだ見ぬ相手方を爆発させたい気持ちはぐっと呑み込みました。
 その分の鬱憤は、こんな話持ってきた悪魔に思い切りぶつけようと言うことで。
「カモン流体金属君! 拙者の身体、貴様に貸すぞ!」
 流体金属生命体オウガメタル・Spitfireを喚ぶ。彼らは一つとなり、判り合うことができ……、
「ウッキ……キマルッ! メタルヒゲマン……なんでござるか拙者をバケモノ見るような凄い目で見て! アイムヒューマン! アイムヒューマン! 出るとこ出てもいいんでござるよ!」
 えっこれ大丈夫かな。
 そんな眼差しを夏蓮から感じる。スニップスナップでさえも『ハァ?』みたいな顔していた。顔(?)の構造上とても判別し難いけれど。
 見世物じゃねーぞコラ! と言わんばかりに周囲を威嚇するエドゥアルト。しかし実際、メタル黒髭となった彼の姿は客観的に見て人間やめてる感が尋常ではなかった。
(「しかし銀雨世界にまで配下の悪魔とかいるんでござるかね?」)
 今は配下の姿は見えないが、契約書入れてるから味方も同然と屁理屈捏ねられて夏蓮を盾にでもされたら厄介だ。
「まあ超反応で避けてもヨシ流体化ですり抜けてもヨシでござるが」
「オウ随分ナメられたモンだなァ?」
「勿論殴り倒してもいいが」
 言うてる間に鋏の悪魔、隙アリと言わんばかりにガチンと首を落としにかかって来ているのだけれど。
「そして流体化すればハサミは一切効かないでござるよ!」
 寸でのところで液状となり回避。そして再び現れるメタル黒髭。
「ハァ!? 猟兵ってのは頭おかしいこと考える奴らばっかりだなァユーベルコード好き勝手弄りまくってよォ!!」
「おまいうでござるー。つかさては配下もいなけりゃ無条件で八束殿を盾にもできないようでござるな? じゃー後は一方的にぶっ壊れるまで殴り続けるだけだ! オラッ文字通りの鉄拳でござる!」
「ブギャア!?」
 もう何も怖くない。金属状態によるぐーぱんち。
 全ての目をバツマークにして鋏の悪魔は吹き飛んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

酒井森・興和
想像よりげすな寄生鋏が出たものだ
この物言いを四六時中聞いたらやつれてしまう
夏蓮さんよく堪えたね…
その胆力を少し外に向けては?
蜘蛛族は昔から人と共存してきたし
夏蓮さんは魅力的に映る方でしょう
孤独好きで無いなら人間と話すのも楽しいものだよ

敵へは三砂を構え牽制
敵攻撃にUCの活用
その場で一回転、攻撃を【受け流しカウンター】で三砂を撲つ【咄嗟の一撃、重量攻撃】

敵UCを食らっても音の【追跡、集中力と第六感】で被害を少なく抑え背後へ飛斬帽を【投擲】し反撃、接近

敵を捕捉したら【怪力】で敵をねじ上げるかこじ開けるよ

敵の罵詈雑言、自身の傷や流血は気にしない
土蜘蛛に仇なす輩には一矢報いる…
鋏角衆の僕の矜恃だからねえ



●共存へ
 ガチンガチンと大仰に刃を鳴らして、どす黒く嗤う鋏の悪魔。その形相は醜悪そのもので、口のような切っ先から吐き散らかされる毒も聞くに耐えない。
(「想像よりげすな寄生鋏が出たものだ」)
 酒井森・興和(朱纏・f37018)が不快に思うのも、無理はない。
(「この物言いを四六時中聞いたらやつれてしまう」)
 興和にそう思わせるほど、鋏の悪魔は下品で卑劣な存在だった。
 ずっと、夏蓮の頭の中にはこの声が響いていたのか。これでは猟兵たちが介入していなければ、いずれその精神をすり減らし、凶行に走ってしまってもおかしくなかっただろう。
「夏蓮さん、よく堪えたね……」
 感心半分、呆れ半分で興和は呟いた。勿論、前者は夏蓮に、後者は悪魔に対してだ。
 同時に、夏蓮には既に、自身の蜘蛛の糸で雁字搦めになった現状を断ち切る力があるのではないか――そう、興和は感じた。
「その胆力を少し外に向けては?」
「え」
「蜘蛛族は昔から人と共存してきたし、夏蓮さんは魅力的に映る方でしょう。孤独好きで無いなら人間と話すのも楽しいものだよ」
 興和の言葉に、夏蓮が俄にその目を見開く。
「あなたは……まさか……」
 古の土蜘蛛の技術で造られた、三砂の姿に確信を深める。
 ――同胞だと、気づいた。
「オーイ、オレサマを忘れてねェか〜??」
 割って入るように、無粋な濁声が空気を揺らす。
 血が興和の顔に向かって跳ねるよう、肩口を狙って躍りかかるスニップスナップだが。
「……ウオッ!?」
 攻撃と同時に目晦ましも目論む、その魂胆は明らかだ。三砂の柄を噛ませることで軌道を変えて受け流し、ふらふらと虚空を漂う悪魔を、その鋭利な先端で砕くように、撲つ!
「ギャッ!!」
 単なる道具のように、地に叩き落される悪魔。更に起き上がる前に、追撃を。
 元は実際に視界を奪われた時のために、研ぎ澄ませた聴覚に頼って反撃できるよう忍ばせていた飛斬帽。それを浮き上がる前の背面らしき側から叩きつけ、そのまま接近、組み伏せる!
「や……ヤメロ……!」
「悪いけど。土蜘蛛に仇なす輩には一矢報いる……鋏角衆の僕の矜恃だからねえ」
 掌からの流血も気に留めず、興和はスニップスナップの鋏をこじ開け、そして――。
「ア゛アアァアァァァ!!」
 ――ばきん、と。
 根本からでこそないものの、鋏の悪魔自慢の刃の片側が、折れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

剣未・エト
体格からは想像できないぐらいに力強く、けれど優しく夏蓮さんを抱き寄せて立ち位置を変え精神を痛めつけ乗っ取ろうとするのを庇う
「僕の希望(ひみつ)を今取りだそう、イグニッション!」
彼女はその言葉の意味(ひみつ)を理解するだろう、けれど真実はそれだけじゃない
姉の姿は消え肩にはミニ視肉が、王子をイメージした煌びやかな舞台衣装、体から伸びる地縛霊の鎖
「美しい花園を散らさせる事だってしないさ!」
地縛霊の能力、特殊空間という異界を展開
引きずり込むのは敵と夏蓮さんと猟兵達
オペラの劇場の様な空間で、客席で戸惑うであろう敵に対して、舞台上から挨拶を
「お初にお目にかかるよ異世界の悪魔殿。僕の名は剣未エト、偉大なる生命使い達に続かんど、牙無き者の剣足らんとするゴーストさ!…だが、今宵は歌姫を攫いし怪人を演じさせてもらおう、さて、君はたどり着けるかな?」
UCを起動し舞台の奈落に夏蓮さんさん達と共に降りる
これで敵は逃げる事も、花を荒らす事も難しく、夏蓮さんさんを殺したり乗っ取る為には迷宮を抜けなければいけないのさ



●開演へ
「……な……ナメやがって……こうなりゃオレサマも、本気で行くしかねェようだなァ……」
 刃の片側、その一部を失いながらも、スニップスナップはゆらりと浮かび上がり、不穏に呟く。
 その動きに、剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)は瞬時に看破した。奴の言う『本気』とは、どんなに卑怯と罵られようとも、如何なる手段を用いてでも生き残ると言う意味なのだと。
 このままでは夏蓮も、温室の植物たちも今以上に危ない――そう考えたエトは、『舞台そのものを創り変える』ことにした。
「夏蓮さん、ちょっと失礼」
「えっ」
 エトは咄嗟に夏蓮の華奢な身体を抱き寄せるようにして、敵の斜線と雑言を遮るように立ち位置を変えた。エト自身も小柄で、然程筋力はないように見えるが、その一連の動きは外見からは想像できないほど力強く、それでいて優しいものだった。
 そして、高らかに、宣言する!

「僕の希望――ひみつ――を今取りだそう、イグニッション!」

 エトの言葉の意味――ひみつ――は、これで夏蓮も理解しただろう。
「あなたたちは、銀誓館の……能力者……!?」
 その言葉に、エトはウインクひとつで答えるだけに留める。
 エトに関しては間違ってはいないのだが、それに加えて『猟兵』だ。他にも能力者でありながら猟兵であったり、猟兵だが能力者由来の力は持っていなかったりする仲間たちもいるので、詳しい説明は後だ。
 そして、エトが示した真実はそれだけではない。
 纏う舞台衣装はさながら物語の王子の如く、華麗で煌びやか。その方にはミニチュア視肉がちょこんと座り、夏蓮が姉だと思っていた少女の姿はいつの間にか消え失せていた。
 極めつけはその身体からじゃらりと伸びる、地縛霊の鎖。人魔共存の思想が育まれ生まれた、この世界の新たな共存の形!
「トイ・トイ・トイ、さあ、幕が上がるよ」
 ぱちり、夏蓮を支えるのと逆の手で、指を鳴らせば。
 そこは緑溢れる温室ではなく、眩いばかりの舞台の上!
「美しい花園を散らせる事だってしないさ!」
 開演を告げるように、朗々と声を上げれば。
 一瞬にしてここはエトの領域。地縛霊の特殊空間。
 演者はエト。観客は悪魔に、夏蓮に、仲間たち。だが、彼らもすぐに役者となることだろう。
「ハ……?」
「お初にお目にかかるよ異世界の悪魔殿。僕の名は剣未・エト、偉大なる生命使いたちに続かんと、牙無き者の剣足らんとするゴーストさ!」
 胸に手を当て一礼し、客席の悪魔へ語りかける。
「……だが、今宵は歌姫を攫いし怪人を演じさせてもらおう、さて、君はたどり着けるかな?」
 言うや否や、エトはひょいと夏蓮を抱え上げると、そのまま舞台の奈落へと飛び降りる――!
「いやマテマテマテマテ何処行く気だァ!?」
 悪魔と、残された猟兵たちが舞台に登る。
 奈落を覗けば――暗く果てのない地下水路が広がっていた。

「……残してきた方は大丈夫なの」
「彼らも手練だからね。ボクの知る人たちもいるし、遅れを取ることはないはずだよ」
 彼らの勝利を全く疑わない顔で、エトは水路を往く。
 夏蓮は時折上を気にしていたが、自分が戻っても足手纏いと断じたのか、エトと共に身を潜めることに決めたようだった。

 残された仲間たちが、悪魔が奈落へと向かうのを阻んでいる。
「どいつもこいつもフザケやがって……ッ!!」
 悔しげに歯噛みするように、鋏の悪魔は刃をガチガチと鳴らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山崎・圭一
(煙草を吹かし自身の霊気から命捕網を取り出す)
煙草の煙から、人乗りサイズのチョウトンボの白燐蟲登場
なんかあればそいつに乗って逃げるよう夏蓮に指示

敵の攻撃は
①足元から甲虫型【呪殺弾】を繰り出して跳ね上がって躱す
②眼前に百足型呪殺弾を繰り出し、尻尾で俺を後方へ弾き飛ばして躱す

躱す。とにかく躱す。逃げ回る
…ただしUCの血糸を張り巡らして
血の蜘蛛の巣を作りながらだけどな
こんだけ張れば掛かるか?敵のUC封じるぜ
寿命は多分大丈夫(Dランサーで不老長寿得たもので)

放課後といえど、この時期まだ日が出てるな
温室の天井って明るいね。陽光取り込んで温かくて
だから…
天井一面に俺の白燐蟲が覆ってても気付けねーよなァ?
この蟲達はグンタイアリってやつだぜ
敵目掛けて蟲達落とせば、たかが蟻とは言え重い筈
しかも陽光たっぷり浴びてンだ。群れれば熱いだろ?
俺も結構悪どい【蟲使い】ねぇ

なぁ、嬢ちゃん
甘酸っぱい想い抱えてられンのも今だけなんだからさ
恋人との再会を12年も待ち続けてる淋しい男みたいになるなよ

誰の事とは…言わねーけど…


暗都・魎夜
【心情】
まっったく、至らねえな、俺って奴は
これでも10年間結構真面目にやってたつもりなんだけど、目の前の女の子1人が傷つくのを止められなかったんだからな

てめえは逃がさねえ、ここで潰す
半分は八つ当たりだ
加減するつもりはねえから、覚悟しろ

※普段は降伏は受け入れるタイプ

【戦闘】
「言っておくが今回前振りはねえ、全力で行くぜ!イグニッション!」

「殺気」を込めた「フェイント」でカバーリングを避ける
本体への攻撃を狙えるタイミングでUCを発動、「リミッター解除」した「斬撃波」を叩き込む

夏蓮への攻撃は「かばう」
致命傷を負うだろうが「激痛耐性」で耐えて戦闘続行
「知らねえのか?師匠が言ってたぜ、"能力者の戦いは凌駕してからが本番"ってな。この程度、夏蓮ちゃんに比べりゃ軽いもんだろ」

言い忘れてたな、てめえを逃さない残り半分の理由
女の子を傷つけた、十分すぎる理由だろ

【戦闘後】
夏蓮にけががあれば「医術」で応急手当
事情も説明
「ここ最近聞こえてた変な声は全部あいつのせいだ、気にすんな」
他にも悩みがあれば気軽に聞いてくれ



●終演へ
 悪魔の行く手を阻むのは暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)だ。ガチガチと威嚇する刃鳴りも意に介さず、鋭く敵だけを見据える。
(「まっったく、至らねえな、俺って奴は」)
 その胸中で、密かに重く溜息を吐きながら。
(「これでも10年間結構真面目にやってたつもりなんだけど、目の前の女の子1人が傷つくのを止められなかったんだからな」)
 魎夜は、既に夏蓮に打ち明けた通り、能力者や来訪者の保護や相談を請け負っている。しかしそれは本来、銀誓館近辺のみに限らず、世界中を奔走する身だ。
 もっと早く、気付けていればと悔やまずにはいられない。ひとつの見落としもなく救うなんて、難しいことだと頭では解っていても。
 ――せめて、ここで遅れを取り戻そう。
「てめえは逃がさねえ、ここで潰す」
「あァン? 何だよその馬鹿みてェに使命に燃えてますーみたいな目は。正義のヒーロー気取りかァ?」
「半分は八つ当たりだ」
「ア゛?」
 煽ったつもりが予想外の答えに、スニップスナップの口と思しき割れ目があんぐりと開く。
「加減するつもりはねえから、覚悟しろ」
「エェ何コイツ怖……」
 真顔でとんでもないことを言っている。そう感じて鋏の悪魔は気持ち後退るように後退した。
 だが、魎夜にとっては大真面目だ。そもそも普段の彼はどんなに嘘臭くても、降伏する敵を問答無用で追撃したりはしない。
 捨て置くわけにはいかないのだ。この悪魔だけは、困難でも自分の道を往くと決めた、その矜持にかけて。
 ――その、やや斜め後方。
 山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)が、静かに煙草の煙を燻らせていた。
 実年齢より格段に若く見られる容貌に、私服として着用している学生服を身に纏うその姿からは、傍目にはお咎めを喰らいそうだけれど、実のところ何も問題はないのだ。
 彼はとうの昔に、銀誓館学園を卒業した身なのだから。歴とした大人であり、魎夜同様に数多の死闘を経験した、能力者であり猟兵なのだから!
 そしてこの煙、ただの煙ではない。中からするりと現れたのは、煌めく白を纏った人乗りサイズのチョウトンボ――白燐蟲だ。
 圭一は彼ないし彼女に、夏蓮たちを追っていざとなれば背に乗せて逃げるよう指示すると、滑るように奈落へとその姿を消した。
 ――ところで。
「言っておくが今回前振りはねえ、全力で行くぜ! イグニッション!」
 武装佩帯、臨戦態勢。
 魎夜の全身から、突き刺すような殺気が迸る!
「ウオッ!?」
 からの、有無を言わさぬ赤熱する魔剣の一薙ぎは、防御を打ち崩すフェイント。
 慌てて身を躱して、悪魔はいよいよ激昂する。
「ッぶねェなァ畜生! あーもういい纏めてズタズタになりなァ!!」
 兎にも角にも二人の猟兵を突破せんと、赤黒い邪気を纏って滅多矢鱈に斬りかかる鋏の悪魔だが。
「危ないのはどっちだよ……っと」
 咄嗟に圭一は甲虫型の呪殺弾を射出、勢いに任せて飛び上がり、攻撃を回避。
 その後も回避に専念する圭一は、時にまた宙へと跳ね、時に前方に繰り出した百足型呪殺弾の尾で後方へ弾かれるように離脱。
 かと言って奈落への道を拓く狙いで魎夜を狙えば、その場で動きを読み、回避体勢を取りつつも力尽くで突破するなら身を呈してでも止めると言わんばかりの気魄に、迂闊に飛び込むこともままならない。
「マジで!!!!!! 邪魔!!!!!!」
 猟兵たちを見下し、小馬鹿にし、余裕綽々で煽り散らかしていた先刻までの姿は何処へやら、刃の欠けた鋏の悪魔は今や苛立ちを隠しもせず、狂ったように虚空をぶんぶん飛び回る。
 喚くように暴れ回って――不意に、その動きが止まった。
「掛かったか? ……掛かったな?」
 ニヤリと薄く笑みを浮かべたのは、圭一だった。
 よく目を凝らして見れば、辺り一面には赤い糸――血の蜘蛛糸が、網のように張り巡らされている!
「頼んだぜ、アデレイド。敵さんの力、封じてやれ」
 かつて生命の根源・ディアボロスランサーに触れ、共に旅をし、その力で不老長寿を得た彼は、その天命を削ぐことを躊躇わない。
 それよりもこの『舞台』の幕が上がるより前、そう、戦いが始まった瞬間から仕込んでいた、『次の一手』のために、ここで確実に敵の動きを戒める!
「特殊空間入ってて忘れそうになるけど、放課後といえど、この時期まだ日が出てるな」
「ハァ? 唐突に何言って、」
「温室の天井って明るいね。陽光取り込んで温かくて。だから……」
 今は天を仰いでも見えないその場所。
 であれば悪魔にも、見えはしまい。

「天井一面に俺の白燐蟲が覆ってても気付けねーよなァ?」

 ばらばらばら、と。
 舞台の天井を――特殊空間の境目を、すり抜けるようにして雨が降る。
 グンタイアリの姿と性質を持った、白燐蟲の雨だ。
「ギャアアアアアア!!!!!!」
 一匹一匹は矮小な蟻だ。だが、天高くから大量に呼び戻せばその重みに耐えかねて、鋏の悪魔は地面へと叩きつけられる。
 同時に、じゅう、と何かが焼ける音がして、直後に鉄の溶ける臭いが漂った。
「陽光たっぷり浴びてンだ。群れれば熱いだろ?」
 肯定も否定もできずにびたびたと地面を跳ね、悶え苦しむスニップスナップ。
 極悪非道を重ねた敵とは言え、無惨に喚き藻掻くしかできないその姿に、俺も結構悪どい蟲使いだねぇ、と自嘲するように、しかし省みはしないと笑う圭一。
 ともあれ、またとない好機。
 ――魎夜が、動いた。
 トドメの一撃を決めるべく、炎の魔剣と夜の刀剣を振り上げる。
 だが、敵もデビルキングワールドで猛威を振るい続けた悪魔の一体。
「死ンで堪るカァァアアァァァァ!!!!!!」
「――!!」
 残された力を振り絞り、低空飛行で夏蓮のいる奈落の迷宮へと飛び込もうとするスニップスナップ。
 それを魎夜は――己の身で、受け止めた。
 深々と刃が突き刺さった右の大腿から、夥しい量の血が、どぼりと溢れ出る。
「な……!」
 圭一も、スニップスナップですらも、その目を見開いた。
 ――それでも、魎夜の口元は、笑んでいた。

「知らねえのか? 師匠が言ってたぜ、『能力者の戦いは凌駕してからが本番』ってな」

 この世界に来たばかりの悪魔は、『能力者』の底力を知らなかった。
 『能力者』を侮った。故に、この状況を理解できず、恐怖する。
「馬……鹿な……!?」
「この程度、夏蓮ちゃんに比べりゃ軽いもんだろ」
「馬鹿だ、馬鹿げてる!! でなきゃ阿呆かよ!? 何だってんだよお前らはよ!! ……ギャア!!」
 悪魔を引き抜き、投げ捨てる。
 血が噴き出しても構うものか。
 リミッター、解除。魂よ、肉体を凌駕せよ。
 纏うは赤々と燃える、太陽の炎。爆発にも似たその熱気は魎夜の潜在能力を揺り起こして。
「言い忘れてたな、てめえを逃さない残り半分の理由」
「あ、や、ヤメロ、やめてくれ……!!」
 情けはかけぬとそう決めた。
 今度こそ逃さないと言わんばかりに、圭一の白燐蟲が再び溶けかけた鉄に群がる。
 最早、鋏としての原型も失いかけた悪魔に、一対の刃が迫る!
「ヤメロォォオオオオオオ!!!!!!」
 絶叫を掻き消すように刃は煌めき、真空の刃が、波となって悪魔を滅ぼす――!

「女の子を傷つけた、十分すぎる理由だろ」

●明日へ
 悪魔が討ち滅ぼされた、その瞬間。
 ここは戦場ではなくなり、日常に存在する温室へと戻る。
 ――夏蓮も、そこにいた。
「………………」
「おっと」
 はらり、飛び出た契約書を、圭一は念入りに破って握り込んだ。
 彼が再び拳を開いた時、契約書は焼け焦げたかのように黒い煤になり、風もないのにさらさらと虚空に消えてゆく。
 座り込んだままの夏蓮。まだ、一連の騒動に理解が追いついていないのかも知れない。色々なことが、起こりすぎた。
「怪我は……なさそうだな。よかった」
 夏蓮の目線にしゃがみ込んで、魎夜はニカッと笑って見せた。負傷した太腿が悲鳴を上げたが、痛みには耐性がある。聞かなかったことにした。
 そのまま事情を説明し、安心させるようにその細い肩をぽんと軽く叩く。
「ここ最近聞こえてた変な声は全部あいつのせいだ、気にすんな」
「……はい。何だか憑き物が落ちた気分……」
「なら大丈夫だな。他にも悩みや、知りたいことがあれば聞いてくれ」
 納得できるまで、答えるから、と。
 しっかりと魎夜が告げれば、夏蓮も少し微笑んだ。
「なぁ、嬢ちゃん」
 その背に、圭一もぽつりと声をかける。
「甘酸っぱい想い抱えてられンのも今だけなんだからさ、恋人との再会を12年も待ち続けてる淋しい男みたいになるなよ」
「え……?」
 夏蓮に見上げられれば、圭一はどこか居心地悪そうに、頬を掻いて目を逸らした。
「誰の事とは……言わねーけど……」
「もしかして、……いえ、何でもないわ」
 言葉を呑み込む夏蓮。
 彼らの正体も、これからの未来も、彼女には解らないことだらけだ。
 ――ただ、今の彼女がひとつだけ解るのは。

「私は、独りでは、ないのね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年06月16日


挿絵イラスト