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氷の微笑は蜜の味

#デビルキングワールド #戦後 #7thKING決定戦 #アポバルンドグループホールディングス

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●新たなる悪の萌芽
「いやー、まさかこんな結果になるとはねー」
 魔界テレビ局の魔界ニュースを見ながら、ひとり呟く少女。そこでは7thKING WARの結果とその延長戦のようなものについて放送されていた。
 曰く、各種悪魔王遊戯に乱入していた猟兵なる集団が7thKINGとなり、さらに三カ月ほどかけてその代表者を決める競争が行われるらしい。その勝負はデビルキング法に則り談合や贈収賄も奨励されているが、一方その根底に全員が楽しめなければならないという既存のデビルキング法にはない思想が取り入れられているのが新しい所のようだ。
「これはいわゆる新しい風ってやつだね! ただワルいだけじゃもう時代遅れ、時代はワル楽しいってことだ!」
 ニュースを自分なりに解釈した結果、新しい時代の幕開けを予感した彼女は早速行動を起こす。
「よし、早速やるぞ! ワルくて楽しい新しい商売! 幸いここんとこクソ暑いし、ぴったりの商売も思いついた! 原価も安くてボロ儲け! これはきっと流行るぞー!」
 少女は顔の小さな口と、下半身の大きな口を同時に開けて気合いの声を上げた。

●冷たい悪の甘い誘惑
「皆さん、7thKING WARお疲れ様でした」
 ミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)on花園・桃姫が猟兵たちに一礼する。
「候補者全員をしばき倒した結果、猟兵全員が新たな7thKINGということとなりました。また、ガチデビルが倒れたため今後デビルキング法を順守する必要も薄れたということで、少しずつ無理に悪いことをする生活から脱却し始める悪魔たちも出始めているようです」
 元々デビルキング法はガチデビルによる悪魔支配に抵抗するため、大首領ブレインこと若き日のキング・ブレインが制定したものだ。そのガチデビルが倒れた今、36世界最強の一般人たるデビキン民を真の悪に利用できるものもそうはいるまい。
「なので、今まで大っぴらにできなかった問題なく楽しい事、人の為になることを始めようとする悪魔たちも出てきたようです。とはいえ今まで頑張って悪に邁進してきた悪魔たち、いきなり善行ばかりを積むのも慣れていないということで、ここはまずワル楽しいことから始めていく人が多いようで」
 例え必要がなくなったとはいえ、今までの思想を全て捨てることは難しい。
「で、その中で流行りになっているものの一つが、悪魔王遊戯でもあった『悪魔を食材にした飲食店』です。戦争中は遊戯の関係で色々無茶苦茶する必要がありましたが、今は普通においしい料理を作って出すだけのお店なようです」
 デビルキングワールドの文化では、例えば豚がとんかつを揚げる看板が出ていればそれは豚型悪魔が自分の肉でとんかつを作る店という意味になる。削った肉もその分他のものを食って寝ればすぐ元に戻るので、悪魔にとって同族食いはいたって普通な文化なのだ。
「今回も一人の悪魔が飲食店を始めようとしています。ドーリットさんといい、悪魔としては若いラスボスの女性です。彼女は新しい時代の到来を予感して、準備の手間も少ないタイムリーなお店を始めるつもりの様です。具体的に言えば、かき氷屋。ただし彼女自身はラスボスではありますが、氷属性とか持っていません。なので、氷の力を持つ悪魔を狩ってその体を食材にするつもりのようです。そのお手伝いをしていただけたらなと思います」
 確かに最近急に暑くなってきたところだ、そう言ったものは需要があるだろう。だが、商売を始めるつもりなら仕入れルートから彼女が自分で開拓すればいいだろう。それに対して猟兵がどうかかわる必要があるというのか?
「7thKINGは猟兵全員ということになりましたが、その中での代表者を決める必要があります。こうした7thKING WARの結果起こり始めた悪魔たちの生活の変化に関わっていくことで、その代表者として名乗りを上げる権利を得ることができるのです。言ってみれば売名行為ですね。その為に彼女に協力して顔と名前をアピールしてきてください」
 桃姫もちょっと無理しつつ言っているが、デビルキングワールドの風潮に合わせわざと印象の悪い言葉を使っているのだろう。ともあれ、かき氷屋のパトロン(物理)につくことで影響力を高める選挙運動をして来いと言うことらしい。
「まあ、別にそのつもりがなくても、単純に起業のお手伝いというだけの感じで行ってくださっても構いません。氷悪魔についてはドーリットさんが既に生息地を見つけており、『ハニー・ビッグフロスト』というハチミツと氷を操る妖精サイズの群体悪魔を物理的にスカウトするつもりのようです。もちろん相手も抵抗しますので、お力添えをお願いします」
 デビキン民の例に漏れず彼女たちも善良ではあるが、ただで氷と蜜をくれてやる義理もないということだろう。
「氷悪魔たちを狩り終えたら、無事お店はオープンです。どうやら彼女はオープニングイベントとして、かき氷大食い大会を開催する模様です。寒さと頭痛に耐え早く、多く食べる程良いというイベントなので、是非皆様も参加してきてください。もちろんワルらしく他者の妨害や味変という名の小細工もOKです。お呼びいただければ私も同行いたしますので、御用の際はお気軽に」
 猟兵だろうと悪魔だろうと、寒いものは寒いし痛いものは痛い。それを我慢するワル強さを見せつけつつ、店の宣伝もよろしくということだ。
「変な話どんな結果になろうが命にも世界にも何の危険もない依頼です。戦後の息抜きのつもりで、どうぞ行ってきてくださいませ」
 そう言って桃姫は……息抜きなどと言いつつ7thKING WARで一度も依頼を出していない癖にかき氷食べに行く気満々の桃姫はグリモアを起動し、猟兵をデビルキングワールドへ送り出すのであった。


鳴声海矢
 注釈:これは「7thKING決定戦」の対象依頼です。8/22までに、対象依頼での🔵ベスト10の猟兵が「KING候補者」となります。

 こんにちは、鳴声海矢です。戦争お疲れ様でした。
 今回は戦後依頼として、悪魔を食材にしたかき氷屋の企業を手伝っていただきます。

 第一章では『ハニー・ビッグフロスト』との集団戦。一人一人はフェアリーサイズですが、無数に集まって広範囲の攻撃もできる氷と蜂蜜の悪魔です。彼女たちの体と蜜で作ったかき氷は絶品との噂です。悪魔なのでかき氷機にぶちこんでガリガリ削るくらいじゃ死にませんが、強さもそれ相応なので油断なく。

 第二章では店のオープニングイベントとして、かき氷の大食い、早食い大会となります。悪魔の氷で作っているだけありその冷たさと頭痛は悪魔的。それを耐えて食べたり、他の参加者の邪魔をして相対的に好成績を目指したりしてください。新メニュー開発の名目でかき氷のアレンジもOK。基本的に店主悪魔は進行役に徹するつもりのようです……が、あくどく騙して参加させてしまってもいいでしょう。なおこの章に関してはお声がけ頂ければミルケンも同行します。ボディのご指名も可。

 以下起業悪魔詳細。

 ドーリット・アポバルンド ラスボスの魔王×魔獣解体士 人間部分は15歳ほどの童顔少女。下半身は巨大な口の開いた緑色の肉塊。悪魔としては若く、7thKING WARは完全に視聴者側だった。終戦後の流れから新しい流れが来ていると感じ、とりあえずノリで起業しようとして見ている。食べることに関してだけは真面目で、娯楽としての食事は上の口、研究のための食事は下の口と使い分けている。

 それでは、暑さも寒さも忘れさせるプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『ハニー・ビッグフロスト』

POW   :    みんなで集まれば、ぜんぶぜんぶカチコチだ~!
【どこからともなく現れる、沢山の仲間達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[どこからともなく現れる、沢山の仲間達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    甘い、あま~いミツ...いい匂いでしょ?それっ!
自身が装備する【睡眠ミツが入った壺】から【仲間達で一斉に放つ、津波のようなミツ】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【強烈な眠気と、纏わり付くミツによる拘束】の状態異常を与える。
WIZ   :    皆、いっくよ~!何もかも...凍っちゃえ~っ!
【仲間達と連携し、氷属性の極大魔法】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。

イラスト:塒ひぷの

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 7thKING WARも終わり、新しい時代を迎えることになったデビルキングワールド。その時代の波に乗るべく新たな商売、即ち『悪魔を食材とした飲食店』を開業すべく準備を開始したラスボスの少女ドーリット。
 彼女がまず始めたことは従業員雇用兼仕入れルートの確立……つまり材料となる悪魔の確保だ。
「たのもー! 我が名はドーリット・アポバルンド! 新世代起業家系ラスボスとしてあなたたちを捕まえに来たよ! 業務内容はかき氷店食材兼オープニングスタッフ! 安全性の確保されたかき氷マシーンで体をガリガリされて蜜かけるだけの簡単なお仕事! まかない支給!」
 そのために彼女は、氷と蜂蜜の妖精系悪魔『ハニー・ビッグフロスト』の生息地へと赴いていた。デビキン民らしい尊大かつ丁寧な説明の元スカウトをかけるが、そこはビッグフロストたちも歴戦のデビキン民。頑張ってワルそうな答えを搾りだす。
「オープニングスタッフ……つまり私たちがいなければお店は開店できない! よーし、足元みてやるぞー! えーとえーと……昼寝もつけろー! あと社員旅行も行かせろー! こんぱにおんもよべー!」
 とりあえずめんどくさい社員っぽいことを思いつくまま言い返すビッグフロスト。なお発音の怪しさからして多分コンパニオンが何かは分かっていないと思われる。
「く……おのれ生意気な! こうなれば圧迫面接してあげる! 7thKINGの支配する新たなワル楽しい世界の社畜になるがいい!」
 全く持って締まらない空気のまま始まる強制スカウトバトル。正直全く持って猟兵が介入する必要性などないのだが、あえて首を突っ込んでワル楽しい強さを見せつけ7thKING代表戦の選挙活動に利用してしまうのも一興だろう。それに興味がないのなら、デビルキングワールドの新たな潮流を育てるという名目でも構わない。
 さあ7thKINGたちよ、下々の悪魔どもの争いに戯れに手を貸してやるがよい!
死絡・送
SPD
アドリブ絡み共闘OK
「そう言う食文化か、かき氷ならまだ抵抗なく行けるな」
ノーブルバットに変身して仲間達と参加、るこるちゃんなど見知った仲間がいれば協力して戦い素材狩りをする。
オーラ防護と念動力でバリヤーを張り防御を行いながら
装備したアンカーなどで戦いタイミングを計ってノーブルストームを使用する。


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
『再孵化』等の可能性を考えますと、方針転換は若干怖いですが。
今は楽しみましょうかぁ。

この状況で自ら仲間を集めてくれるのは幸いですが、それに伴う強化は厄介ですねぇ。
通常攻撃に備え『FIS』の障壁と『FES』による『火属性の結界』を展開、守りを固めますぅ。
そして【壊霞】を発動、『乳白色の霧』を展開しますねぇ。
元々いた方々は当然、集まった方々も『霧』の範囲に入れば『行動の拘束』が出来ますので、順に捕え『FMS』のバリアで作った『囲い』に捕えて参りましょう。

後は、ドーリットさんとご相談ですねぇ。
『暑い時期に涼しい居場所を提供する』代わりに協力を、等の交渉なら成立し易い可能性も?



 巨大な肉塊の上に童顔の少女という異形の体。人の形をした部分は可愛らしい造作をしているだけあり、巨大な歯が並んだ大口がついた異形な肉塊と繋がった不気味さが余計に際立つ。
 そんな異形の少女を取り巻くのは、多数の尾を持つ身長20センチ強の小さな少女。10倍以上の体格差のある両者は一見すれば敵し得ることすらない差がありそうに見えるが、小さな少女たちは同じ姿の者たちが何百と集まり巨大な群れとなり一切怯むことなく巨大な異形に対峙していた。
 それは凶悪な侵略者とそれに立ち向かうか弱き精霊か。あるいは怪物の伝承を美少女化させたUDCアースのサブカルチャーか。
「さあ、大人しくかき氷屋のオープニングスタッフになりなさい! 悪いようにはしないから! 福利厚生とか!」
「まー手伝ってあげてもいいんだけど、ごねたほうがワルっぽいからごねとくぞー!」
 そんな両者の気の抜けそうなやりとり。そう、彼女たちは36世界で最も強く最も善良、そして最も能天気なデビルキングワールドの悪魔たちであった。
 7thKING WARの結果訪れた新しい風潮を感じ取りそれに乗らんとする悪魔と、別に協力するのは構わないけど既存の慣習に倣いとりあえず相手が困りそうなことをほどほどに言っておく悪魔。超大袈裟に言えば新旧の価値観の対立巻き起こるその地に、その原因を作り上げた者たちが降臨した。
「『再孵化』等の可能性を考えますと、方針転換は若干怖いですが。今は楽しみましょうかぁ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は起こり始めた変革に若干の不安を抱きつつ巨大な異形の側についた。ガチデビルに対抗するためにあったデビルキング法。そのガチデビルが倒れた故の変革であるが、上級のオブリビオンが一度倒しても『やり直し』が効く可能性があることを周知の事実として知る者。そう、彼女こそ7thKING WARの結果新たなデビルキングとなった『猟兵』であった。
「え、誰?」
 猟兵が7thKINGになったことは知っていても個々人の顔までは知らない巨大悪魔。彼女に自己紹介し協力する旨を説明すると、上半身の人型部分だけ器用に折りまげて平伏してきた。
「これはこれは当店オープニングにご協賛いただきまして感謝の念に堪えず、わたくし新世代起業家系悪魔ドーリット・アポバルンドと申しまして、あ、これ名刺です」
「あ、自分らしい調子でやっていただければぁ」
 めっちゃかしこまりながら開業前なのに既に作ってある名刺を渡して来る彼女にそう言いつつ群体悪魔『ハニー・ビッグフロスト』達を見れば、こっちはこっちでなんか盛り上がっている。
「キングだ! キングが来た!」
「しかもなんかあっちについてる!」
「よっしゃ、逆らうぞー!」
 キングが敵側に回ったので、逆らってワルさアピールしようという方向でまとまっているらしい彼女たち。ある意味デビルキングワールドでは真っ当な忠誠アピールをする彼女たちは、なぜかどこからともなく仲間が集まり集団の大きさが膨れ始めていた。
「この状況で自ら仲間を集めてくれるのは幸いですが、それに伴う強化は厄介ですねぇ」
 それが彼女たちのユーベルコードであり基本戦術であることを知るるこるはそう言って増えていく集団を見た。
 敵が増えていくのが好都合、というのにはもちろん理由があり。
「そう言う食文化か、かき氷ならまだ抵抗なく行けるな」
 知己がいれば協力しようと思い、顔見知りのるこるを見つけやって来たもう一人の猟兵死絡・送(ノーブルバット・f00528)が言うように、ドーリットがビッグフロストを利用しようとする理由は『食用』。デビルキングワールドでは常識的な事であり、完成品も氷の体を削って作られたかき氷ということで見た目の抵抗感も薄い商品であった。
「また増えた! 蜜かけろー!」
 さらなるデビルキングの登場に、ビッグフロストたちは手に持った壺を一斉にひっくり返した。一つ一つは小さいながら集団の数ゆえにその蜜の総量はすさまじく、まるで津波のような大きさと勢いになって蜜は猟兵たちを襲った。
「うお、いきなりか!」
 さっきまで長々と話していた所からの奇襲に送は慌ててオーラの幕を張る。オーラにまで平気で纏わりついてくるのはやはりデビルキングワールド製だからか。だがドーリットは下半身の大口を開け、そのオーラからわざわざ長い舌を突き出してその蜜を舐めとっていた。
「おお、これは甘い……普通に生えてる花じゃないね? 多分あの子たちが自分で育ててる品種から自家製の密……うん、これは、売れそう……」
 これも商品にするつもりもあっての味見だったが、上の顔がどんどん眠そうになっていく。それもそのはず、これは攻撃用の睡眠ミツなのだ。
 これを津波のように浴びては流石の猟兵も危ない。送は念動力で蜜をかき分け武器だけをそこから突き出して応戦するが、蜜の拘束力は高く中々思うようにダメージは与えられない。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『霧の加護』をお与え下さいませ」
 そこに兵装から火属性の結界と障壁を重ねつつ、るこるは【豊乳女神の加護・壊霞】を発動した。
 乳白色の霧が辺りに巻かれ、ビッグフロストの集団を飲み込んでいく。
「うわー! 練乳だ、練乳が降ってきたぞー!」
 別にそんなんではないのだが、かき氷の流れから勝手にそっちを連想したのだろう。ちなみにこの技の本来の効果は相手の『中枢』を破壊し行動を拘束する技なのだが、かき氷の材料になるだけあって彼女たちに生命力の中枢っぽいものは実はない。じゃあ何が破壊されて拘束されているのかと言えば。
「とりあえずキングきちゃったし、方針転換に乗ってみる?」
「えー、でもめんどくさいしー」
 旧来のデビルキング法律に従って悪いことをするという何となくの統一意志の方であった。ぐだぐだ話し始めて集団としての動きが止まった所にドーリットが眠気を堪えて舌を突っ込み、何体かのビッグフロストを巨大な口の中に捕食する。
「うお、冷たい! 甘い! でもくどくないしフルーツやクリーム混ぜていける! 練乳の他にもヨーグルトとかでも!」
 ビッグフロスト自身の味見をして商売に見通しをつけるドーリット。なお味見なのでちゃんと終わったらビッグフロストは吐き出して集団に戻している。
「じゃあそろそろ終わらせるか。断罪の嵐が貴様らを裁く、ノーブルストーム!」
 その集団に、送は【ノーブルストーム】の吸血コウモリを放った。コウモリたちは丁度同じサイズのビッグフロストに噛みついてその氷と蜜のエネルギーを吸っていく。
「……なるほど、うまい」
「でしょ? 男性にもおすすめ!」
 その味は送に伝わるが、確かにドーリットの言う通り中々上等な氷菓になりそうな味わいだ。スイーツには少々集め辛い男性意見を聞けたのでドーリットもそちら方面もいけそうと自信を深めている。なおその姿を自分も吸収系UC使えば良かったかとるこるが横目に見ているのはまた別の話だ。
「『暑い時期に涼しい居場所を提供する』代わりに協力を、等の交渉なら成立し易い可能性も?」
 あるいは早く正式商品化を進めるためか、ドーリットにそれを相談してみるるこる。
「確かに今から暑くなるし、それいいかも。ねーあなた達、実は夏って苦手じゃない?」
 それを受けちょっと尋ねてみれば、ビッグフロストたちは『いやまあそれはその……』と痛い所を突かれたような顔。横ではるこるが笑顔を添えているが、そこから彼女らしからぬ妙な圧が出ているのもまた交渉テクニックの一つか。
 7thKING直々の交渉により、旧世代悪魔たちは早くも新時代への転換を余儀なくされつつあるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サハリエ・ステーロ
7thKING決定戦、目立ってる猟兵は沢山いるからね。僕もここらで売名行為に精を出さないと。
という訳で
フーハッハッハッ、話は聞いたぞドーリット・アポバルンド!
この猟兵の兎魔王サハリエ様がその新商売のパトロンになってやろう!

UC【兎の魔王軍】使用
まずは我が最も信頼する配下、【黒炎】使いの『ダークファイア』君。君の炎で『ハニー・ビックフロスト』達を説得するのを手伝ってくれ。必要と思っただけ他の配下を使用してもいいし僕も流星魔法で支援しよう。
そして残った配下達は宿舎を造れ!希望し入居してしまった従業員を快適な住処で逃がさないようにするのだ!
※アドリブ・連携歓迎です


プリ・ミョート
カキ氷か……とけねえのかに? ほら、あの後ろの背景とか溶岩ぐつぐつだべよ! ぜってえべちゃべちゃになるべさ。……まあ暑いからこそちべてーのが流行るのかもしんねーべな、けけけ!
ちゅーわけでスカウトの時間だオラー!! 抵抗は無駄だべ、生え変わる手足が捕まえて物理的なスカウトしちまうからに。
週休六日3食昼寝付き残業なしの超絶ブラック業務に処してくれるべ。遅刻や無断欠勤はダメだべよ。くーっこれはローキも黙ってねえべさ。
…おらもデビキンの悪魔だからいまいちわかんねえけどこれブラックだよに? なんでもえーけどともかく働けー!



 猟兵全てが7thKINGとは言え、その代表は決めねばならない。特別な権限はなにも与えられないが、やはりその特別感は魅力的だ。
「7thKING決定戦、目立ってる猟兵は沢山いるからね。僕もここらで売名行為に精を出さないと」
 サハリエ・ステーロ(時計ウサギの魔王・f37256)は由緒正しいラスボス一族の出とあって、それに名乗りをあげる意欲は高い。たとえ7thKING WARにやや出遅れたり、実の両親とは血がつながっていないという(モロバレな)秘密があるとはいえ、兎魔王として引くわけにはいかないのだ。
 という訳で。
「フーハッハッハッ、話は聞いたぞドーリット・アポバルンド! この猟兵の兎魔王サハリエ様がその新商売のパトロンになってやろう!」
 サハリエは実に魔王然とした態度で堂々と起業家悪魔ドーリットの前に名乗りをあげた。
「おお! これは猟兵の魔王とは! これはもう勝ったも同然! 商売的に!」
 猟兵魔王の登場にその威を借りて調子づくドーリット。もちろんワル的には正しい態度である。
「カキ氷か……とけねえのかに? ほら、あの後ろの背景とか溶岩ぐつぐつだべよ! ぜってえべちゃべちゃになるべさ」
 一方そもそも氷悪魔ハニー・ビッグフロストの現在の住環境に疑問を呈するのはプリ・ミョート(怪物着取り・f31555)。確かにここに限らずデビルキングワールドはどこも地獄の底のような光景である。もちろん悪魔にとっては全く大したことのない環境なのだが、特性が氷とあれば他の悪魔よりは暑いのが苦手でもおかしくはない。
「……まあ暑いからこそちべてーのが流行るのかもしんねーべな、けけけ!」
「その通り! 季節者ものは時期と場所を見極めてこそ! 通年は厳しいからこそそれがあったときの爆発力は強い! 欲しがってるものを需要がある時だけ高く売り付ける悪魔的商法!」
 ワルそうに言ってはいるが商売としては割とまっとうな考え方に乗っ取り、ドーリットはさらに勢いづく。
「ぬぬぬ……そんなワルい交渉に屈するものか! こっちの方がワルい条件をつけてやる!」
 あくまでワルさゆえに抵抗しようとするビッグフロストたち。そうなれば交渉の時間だ。
「相手が多いからね、こちらも説得には人手を用いるとしよう。一人一人が信頼出来る自慢の配下達さ」
 サハリエの声に応え、【兎の魔王軍】が現れビッグフロストたちに『交渉』をかけはじめていく。
「我が最も信頼する配下、【黒炎】使いの『ダークファイア』君。君の炎で『ハニー・ビックフロスト』達を説得するのを手伝ってくれ」
 魔王らしくに丁寧かつ詳細に配下の名前と特徴を説明しつつ、ダークファイアに指示を出すサハリエ。そしてダークファイアはその名に違わず黒い炎をあたりに振り撒いてビッグフロストたちを炙りはじめた。
「うわー、暑い、暑いー!」
「うぅぅ、溶けるぅ……」
 案の定暑いのは苦手なビッグフロストたちはすぐに音をあげる。まあ『熱い』じゃなくて『暑い』なあたりダメージより環境面で攻められているのであろうが、何にせよ効果が出ていることに変わりはない。
「くっつけ! くっついて冷やしあうんだー!」
 大量に仲間を呼び、冷たい身を寄せ合って互いに涼を取り合うビッグフロストたち。多分感覚的には普通の人間が雪山でくっついて暖め合うような感じなのだろう。
「ちゅーわけでスカウトの時間だオラー!!」
 そこから無理矢理引きはがそうと、プリの【疾天伐倒】の手足がビッグフロストに襲い掛かり、一人ずつ捕まえて集団から拉致しにかかった。
「週休六日3食昼寝付き残業なしの超絶ブラック業務に処してくれるべ。遅刻や無断欠勤はダメだべよ。くーっこれはローキも黙ってねえべさ」
「やめろー! 旅行行かせろー!」
 多分逆の意味で労基が黙ってなさそうな条件をつけつつ拉致するが、ごねること自体が目的のビッグフロストたちは抵抗を続ける。
「……おらもデビキンの悪魔だからいまいちわかんねえけどこれブラックだよに?」
 そして言っているプリ自身も色々分かっていない。何しろどれだけ過酷な勤務をしても倒れないし、逆にどれだけ緩い仕事だらけでも経済が成り立ってしまうのがデビキン社会なのだ。厳しさに対する基準が雑になるのも致し方なし。
「こうなったら、数の暴力でこの場をひえっひえにしてやる! 皆、いっくよ~! 何もかも……凍っちゃえ~っ!」
 連れていかれる仲間をつなぎ止めようと、ビッグフロストたちは集団で氷魔法を発射する。一人ずつの力は大したことはないが、何しろ人数が人数。その威力は魔界に吹き荒れるブリザードの如しだ。
「魔王の組織力を甘く見ないことだ。必要と思っただけ他の配下を使用してもいいし僕も流星魔法で支援しよう」
 それに対しても、サハリエが後ろから流星を降らせ灼熱の隕石弾で氷を打ち砕きあたりを火の海に変えていく。まさに天変地異の大災害だが、やっぱりビッグフロストにとっては溶けそうなほどに暑くて不快なだけに留まっているのが恐ろしい。
 そして、暑さを振り撒いたのにはさらなる理由があった。
「そして残った配下達は宿舎を造れ! 希望し入居してしまった従業員を快適な住処で逃がさないようにするのだ!」
 兎魔王の配下たちの中で戦闘に加わらない者たち。彼らはいつのまにか後ろで城や街……と見紛うばかりに豪勢な社員宿舎を築いていた。新築ピカピカ、冷房完備、オートロックでペット可の優良物件である。
「さすがパトロン! 事業拡大を見越して従業員宿舎をはじめ新店舗建設などゼネコン的癒着関係の基盤を一方的に作っておくなんて! さすが7thKINGはワルさが違う!」
 ドーリットが勝手に深読みして関心しているが、あえてそれに含み笑いだけで返すサハリエの真意はいかばかりか。
 ともあれ、その豪華な社宅に捕まったビッグフロストたちが次々運び込まれていく。
「うわー! 涼しい、涼しいぞここー!」
「蜜専用のセラーがあるー!」
 きっちりビッグフロスト用に整えられた環境には抗いがたく、捕われたビッグフロストはそこから出てくることはなかった。
 そのまま次の獲物を求めて迫るプリの切り離された手足に、一部ビッグフロストが自分から飛びついていく。
「あ、こら、裏切るなー!」
「だって最近暑いんだもん!」
「なんでもえーけどともかく働けー!」
 労働契約締結完了とばかりに次々社宅に収容されていくビッグフロストたち。中ではもちろん個々人の希望に合わせ兎の魔王軍が部屋を細かく調整中だ。
「これが……これが猟兵のやり方かー!」
 同じデビキン民でありながら自分たちを圧倒的に上回るワルさを誇る二人の猟兵。それをバックにつけた資本にビッグフロストたちは成す術なく屈して行くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
UC常時発動
「ご主人サマ!かき氷食べ放題だよ!」
いやまだだろ?
取り合えず此奴等しばけばいいだけだな

と言う訳でこういうのは強さを見せつけるのなら上等だ
「メルシー達の強さを見せちゃうぞ☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
悪魔たちの戦力と能力
何処まで耐えられるかを把握
【属性攻撃・迷彩】
光属性を己達に付与
光学迷彩で存在を隠し

お前ら…たっぷりと美味しく食べさせていただきます
【念動力・空中戦・弾幕】
念動光弾を乱射してその動きを止めて
【二回攻撃・切断・盗み攻撃】
鎌剣や短剣で氷を削って奪い取る
その上で味見

…美味しいなこれ
ああ、お前らも食べてみろ?
妖精悪魔達にも食べさせる鬼畜っぷり
「でも割と平気そうだねこの子達?」



 ドーリットのかき氷店は当然ながらまだ開店前である。にもかかわらず、一組のカップルが現れた。
「ご主人サマ! かき氷食べ放題だよ!」
「いやまだだろ?」
「あ、ごめんなさい、まだ開店準備中でして……」
 丁寧に言って帰って貰おうとするドーリットの前で、男の方は短剣を抜いた。
「取り合えず此奴等しばけばいいだけだな」
 二人はカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と【対人戦術機構『詩文の神』】で人化したその相棒メルシー。かき氷店開店準備を手伝うためやって来た猟兵だ。
「と言う訳でこういうのは強さを見せつけるのなら上等だ」
「メルシー達の強さを見せちゃうぞ☆」
 とりあえず、先に戦った猟兵たちの戦闘や一般的なデビルキングワールドの悪魔との戦闘経験から相手の強さを計ってみるカシム。味見されたり燃やされたりしても命には別条ないあたり、見た目は小さいがやはり悪魔たちの平均レベル程度には頑丈なようだ。
「お前ら……たっぷりと美味しく食べさせていただきます」
 なら手加減の必要はない。カシムは自分たちに光属性の魔法をかけて光学迷彩とし、姿を隠しつつビッグフロストたちへと忍び寄った。
「ただでやる氷はない! 凍っちゃえ~!」
 残ったビッグフロストが一斉に氷魔法を前方に向けて発射した。相手が見えなくても人数がいることによる広さでカバーするつもりなのか、狙いこそ適当だがその勢いは凄まじい。
 カシムは消えた状態で念動光弾を乱射しその攻撃にぶつけることで場所を誤認させ、そちらの方へと攻撃を誘導することで相手の行動を阻害した。ビッグフロストたちの魔法は威力と速度両方に秀でるが途中で止めることができないため、その衝突地点にとりあえず放ち続けていく。
 カシムはその間に大回りに回り込み、集団の外縁にいる一体に狙いをつけ短剣と鎌剣でその体を削るように削ぎ落した。
「みぎゃー!?」
 小さな両手が削ぎきられ、悲鳴を上げる一体のビッグフロスト。その悲鳴にも構わず、カシムは剣先についた細かな氷を相手の目の前で自らの口に運んだ。
「……美味しいなこれ」
 雑味がなく、清涼感のある味わい。水道水を凍らせたのでは到底ならない澄んだ味わいはまさに食用の氷。さらに冷気の根源はビッグフロストの体自体なので、削ったその瞬間まで冷え冷えである。
 削ぎ落した肉体をその相手の目の前で食べるという猟奇的行為は、異世界ならワルを超えてホラー&スプラッタの世界だ。
「あ、ご主人サマ、メルシーにも!」
「はいはい」
 口を開けるメルシーにももう片方の剣をはいあーんとばかりになめさせるカシム。
 だが悪行はそれだけにとどまらない。
「ああ、お前らも食べてみろ?」
 剣を無理矢理ビッグフロストの口に押し込み、あろうことかその氷を相手に食べさせてしまった。
 あまりの鬼畜行為にビッグフロストたちは恐怖の……ではなく不満の表情。
「でも割と平気そうだねこの子達?」
「だって自分の体だし、食べ飽きてるしー」
 何しろ自分の体を食べる、食べさせるのはデビルキングワールドでは常識的行為。自分の氷なんていつでもいくらでも食べられる安いおやつ程度でしかないのだ。
 だから実際の所他人に提供するのも構いはしないのだが、素直にそれに従ってはデビルキング法違反と言うものなのだ。
 だがそこにドーリットがすかさず口をはさむ。
「それなら商品化すれば色んな味付けで食べられるよー? 果肉入り果汁シロップに、クリームやチョコソース、さらに氷自体を細かく削ってふわふわ系かき氷も! もちろんスタッフは撒かないで食べ放題!」
 氷は自分でいくらでも出せてもその他の味付けはそうもいかない。もちろん一番合うのは自前の蜜だろうが、それでもそれ一つでは飽きも来るというもの。
 結局最後は食欲的な部分がとどめとなって、ビッグフロストはついに全員がスカウトに屈した。
「これでほんとに食べ放題だよね、ご主人サマ!」
 交渉成立にメルシーも喜ぶ。そのメルシーを、カシムはやれやれといった様子で見るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『魔界の我慢比べ!』

POW   :    自分との勝負、ひたすら我慢する!

SPD   :    妨害してこそ勝負、対戦相手の心を先に挫く!

WIZ   :    我慢すればそこが都、楽しいことをして我慢する!

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 デビルキングワールド某所。そこに一つの飲食店がオープンした。
「アポバルンドかき氷店、本日開店でございまーす!」
 その店先では緑の肉塊の上に乗った少女が声を張り上げ客引きをしていた。その名乗り通り、看板には山盛りのかき氷を持った可愛らしい少女が描かれている。
 呼び込みをかけながら、オーナーであるラスボス、ドーリット・アポバルンドが看板にも描かれている妖精のような小さな少女を掴み、かき氷気に放り込んでレバーを回し始めた。ガリガリという何かが削れる音と共にさらにキラキラと輝く細かな氷が積もっていく。
 その氷の材料が何かは言うまでもなく、まさに身も凍る恐怖の光景……などということは全くなく、心持ち小さくなった少女が平然と機械から這い出してきて、元自分の体のかき氷に蜜をかけて味付けまでし始めている。
「ただいまオープニングイベントとして、かき氷早食い大会を開催しております! 全メニューから好きなものを好きなだけ選び、心行くまでお食べください! 短時間でたくさん食べた方には後日使えるサービスチケットを進呈! ただし! 当店の氷は特性の超低温氷! 冷たさは悪魔的ですので覚悟の上で!」
 ここは俄かにブームとなり始めた悪魔を材料とする飲食店であり、妖精たちはそのスタッフ兼材料。チョコやフルーツなど蜜以外の味付けもせっせと運んで盛り付けているし、氷自体に味をつけようというのかジュースをがぶ飲みしている者もいる。もちろん食べられたところで彼女たちの命には何ら問題などないのはデビルキングワールドの常識だ。
 そして色とりどりのかき氷が長いテーブルに並べられ、そこに興味を持った客たちが座らされていく。
「さあ、寒さと頭痛で苦しむのが分かっていながら止められないおいしさで食べ続けてしまう悪魔のかき氷にどれだけ耐えられるか! ワル楽しい新感覚冷凍スイーツを限界までお試しください!」
 そう言って参加者を煽りだす主催者ドーリット。オーナーである彼女は当然進行役だが、デビキン悪魔のこと、うまく乗せれば彼女を参加者に仕立て上げることも可能だろう。
 さあ、ワル楽しい悪魔の味を楽しみつつ、手段を選ばずこのオープニングイベントを制するのだ!
サハリエ・ステーロ
フッフッフッ、事前の説明通り美味しそうなかき氷じゃないか。さて、この早食い大会も目立てるなら目立ちたいものだが……。残念ながらノープランだ!特に頭痛対策になりそうなアイテム・能力が全くない!
こうなれば気合いで乗り切るしかないだろう!
さて、いただきます。

キーン

うわああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ頭がぁ!

寒いいいいぃぃぃイ゙イ゙イ゙ィ゙ィ゙ィ゙イ゙イ゙イ゙ィ゙イ゙イ゙
UC【兎の魔王軍】使用
ヴァン君温めてぇ!

※アドリブ・連携歓迎です


カシム・ディーン
「ご主人サマ!かき氷だよ!食べ放題だよ!」

映像的には地獄みたいだなこれ!
まぁ取り合えず折角なので食い尽くすか
一つデビルキング目指すなら優勝かましてやる!

【情報収集・医術】
氷の冷たさと味わいを堪能しつつ己の状態に対する影響も把握

対頭痛
【属性攻撃】
おでこを冷やしつつ
己の口内に熱属性付与
口内の三叉神経へ冷たい刺激を抑え混みながら貪り尽くす

「メルシーも一緒に食べるー☆」
それでも何れは痛みも出てくるだろうが
之でも散々酷い目にあってきてるんでな…堪えて見せる!
「メルシー的には痛いにもまた在りだよ♥」
メルシーはどMパワーで頭痛に堪えながら怒涛の勢いで食べ尽くし始める!

ってなんつー対抗策だお前!?



 ついにオープンの運びとなったドーリット・アポバルンド経営のかき氷屋。そのオープニングイベントであるかき氷早食い大食い大会が始まった。
 その参加者としてまず席に着いたのは、この店のオープンに多大なる貢献をしたパトロンたちだ。
「ご主人サマ! かき氷だよ! 食べ放題だよ!」
「映像的には地獄みたいだなこれ!」
 はしゃぐ少女メルシーの横でちょっと引き気味にそう言うのはカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)。何しろ絵的には小さい妖精をひっつかんで機械に入れ、ガリガリと音を立ててその体を削り取っているのだ。何も知らぬ異世界人が見れば発禁ものの残虐映像である。
 とはいえこれはデビルキングワールドではごく一般的な食料提供方。現地人にとっては驚く要素など一切ない。
「フッフッフッ、事前の説明通り美味しそうなかき氷じゃないか」
 事実デビルキングワールド育ちの兎魔王サハリエ・ステーロ(時計ウサギの魔王・f37256)は、一切それに頓着することなど無く目の前に出されたかき氷の出来栄えの方に注目していた。
 キラキラと光を反射し輝くかき氷。上にかかっているのは黄色い蜜だが、低温にもかかわらず過剰に固まらず氷ときちんと融け合っている。シロップもいわゆる色しか違わない的なものではなく、果肉も入った濃厚なフルーツシロップだ。さらには氷自体がジュースを凍らせ削ったようなものまであり、見た目の華やかさが一層の食欲をそそってくる。
 だが、これはただの食べ放題サービスではない。出来るだけ早く、多く食べて己の強さとワルさを見せつける悪魔的大食い大会。このかき氷もたとえ見た目や味が良かろうと、一気食いすれば体が冷えて頭痛がするという特性はばっちり備えているのだ。
「まぁ取り合えず折角なので食い尽くすか。一つデビルキング目指すなら優勝かましてやる!」
 そしてカシムはそれを分かってなお一切怯む様子はない。そう、彼こそ7thKINGである猟兵であり、その中でも代表者を目指し悪魔王遊戯延長戦に積極的に挑んでいるキングの中のキング(候補)なのだ。
 さらにキング代表を目指すのは彼だけではない。サハリエもまた、その座を目指し積極的にデビルキングワールド、さらには悪魔契約書が撒かれた各世界へ飛び出している魔王であった。
「さて、この早食い大会も目立てるなら目立ちたいものだが……残念ながらノープランだ! 特に頭痛対策になりそうなアイテム・能力が全くない!」
 だから、一切対策を用意できない状態だろうと躊躇なくこの悪魔的かき氷大食い大会に挑んでいるのだ。そして古今東西、善だろうと悪だろうと、あらゆる手段を失った時に頼れるものはただ一つ。
「こうなれば気合いで乗り切るしかないだろう! さて、いただきます」
 デビキン民らしく礼儀正しくいただきますしてから、気合いと根性を滾らせ目の前のかき氷を一気にかき込んだ。
 その結果。

 キーン

「うわああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ頭がぁ!」
 案の定というかなんというか、まあ予想通りの結果になった。確かにデビキン民は強いし猟兵はもっと強い。だがそれとこれとは話が全く別なのだ。
 頭を抑えてのたうち回るサハリエを横目に、カシムはまずはゆっくりとかき氷を味わいながら食べていく。
「確かに冷たいな。いくら待っても溶けすぎることもないし、かといってスプーンが通らないほどガチガチでもない」
 やはり氷属性悪魔の体を削って作っただけのことはあり、氷自体の質が最上級。普通に食べていれば至福の味わいのまま食べ終えることもできるだろう。
 とはいえ今は急がねばならない時。この氷の一気食いに耐えるため、自身の体に属性攻撃をあえて使い額に冷気、口内に熱を巡らせ神経への刺激を抑え込んでいく。
 それでも少しずつ痛みは出てくるものの。
「之でも散々酷い目にあってきてるんでな……堪えて見せる!」
 経験から来る耐性でそれも何とか抑え込んでいくカシム。
「寒いいいいぃぃぃイ゙イ゙イ゙ィ゙ィ゙ィ゙イ゙イ゙イ゙ィ゙イ゙イ゙」
 一方自分の力では抑え込むことも耐えることもできず、今度は体が芯から冷えガタガタ震え出しているサハリエ。最早これ以上一人の力では耐えられそうにない。
「ヴァン君温めてぇ!」
 たまらず【兎の魔王軍】の中でも最も信頼をおくヴァンくんことダークファイア・ヴァンパイアを召喚した。よばれたヴァンくんはやれやれと言った様子でサハリエの体に手を回し、自らの黒炎で炙りだす。
 配下とは言うものの元は近所に住んでた同級生の友人。家庭の事情でしばし分かれていたものの最近再会した旧知の間柄とあって、その対処は手慣れたものだ。
 そして相方と言えばこちらも。
「メルシーも一緒に食べるー☆」
 メルシーはカシムの隣にくっついてかき氷を一気食いしている。だが彼女はサハリエ同様、何かの対策を行っている様子は全くない。
「メルシー的には痛いにもまた在りだよ♥」
 どMパワーで頭痛に堪えながら怒涛の勢いで食べ尽くそうとしているメルシー・
「ってなんつー対抗策だお前!?」
 思わず突っ込むカシムだが、ここでどついてしまっては喜ぶばかりとあえて手は出さない。
「もっと激しくツッコんでいいんだよー?」
「断る」
 別方向の痛みを望むメルシーに放置プレイを決め込むカシム。そんなドライないちゃつきの横では、もう絶対離れない(暖房的な意味で)とばかりにヴァンくんにぴったり抱き着くサハリエの姿が。
「うぅぅ、ヴァン君だけが命綱だよぉぉぉ……」
 誇張や比喩表現でなく割とガチな意味で言いながら、黒炎に抱かれて意地でかき氷を食べ続けるサハリエ。
「えー……主催者への精神攻撃は禁止とさせていただきますー……」
 そんな状況に、なぜかドーリットがかき氷以上の冷えっ冷えのテンションになっている。
 新世代起業家系悪魔ドーリット・アポバルンド。彼女は独身世代彼氏いない系悪魔でもあった。
 猟兵や発案者さえ色んな意味で凍てつかせるかき氷大食い大会は、まだまだ始まったばかりである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・アド/絡◎

■行動
さて、後はかき氷ですねぇ。
有難く頂きますぅ。

宣伝を考えますと、出来るだけ目立った方が良いでしょう。
桃姫さんをお招きすると共に『使徒』の皆さんも連れてきて貰い、皆で一緒に頂きますねぇ。

【豊饒佳饌】を発動し[大食い][早食い]を強化、てこのさんの【徹食界】で更に全員が増幅されますので、相当な量でも問題無いですぅ。
対策は『串焼き』『日本茶』に加え、『FXS』の『治癒結界』で全員を包み『緊急時の頭痛の回復』を図りましょうかぁ。
通常の『蜜』を基本に、練乳系等をお願いしましょう。

規定量以上を頂いてもまだ問題無く入りますので、このまま皆で食べ歩き等如何でしょう?


豊雛院・叶葉
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・アド/絡◎

■行動
お招きお礼申し上げます。

氷菓による頭痛の対策の為、様々な種類の『日本茶』を御用意して参りました。
『串焼き』に加え、温かい『日本茶』をお飲み物として頂けば、更に頭痛は起き辛くなりましょう。
【醒倆】を発動し[大食い][早食い]を強化、てこの様の【徹食界】の力もお借りし、頂くことと致しましょう。
これだけの人数、更に女性揃いとなれば相応に目立ちましょうし、宣伝にもなりましょうや。

確かに、売り物が無くなっては申し訳有りませぬ。
規定量を頂いた後は、他を回ってみるのも良さそうに御座いますね。
途中、この美味しい『蜜』を用いた他の料理を検討しても良いやもしれませぬ。


鞠丘・麻陽
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・アド/絡◎

■行動
面白そうなお店なんだよ。
楽しみなんだよ。

対策の『串焼き』と『日本茶』、了解なんだよ。
私は、少し違うけど『焼きおにぎり』を用意しておくんだよ。

【豊饒発現】を発動、[大食い]を強化した状態で【徹食界】に協力するんだよ。
『串焼き』の『焼き役』は『れんこさん』にお願いするんだよ。
『日常の補助』が出来るから、この程度は問題無いんだよ。

提案なんだけど、『串焼き』は設備が要るから兎も角、『日本茶』は比較的準備も少ないし、お店で出してもいいと思うんだよ。

食べ歩き、賛成なんだよ。
他にも『温かい品』が近くで買えれば、持込みで色々出来るかもしれないし、探してみるんだよ。


鞠丘・月麻
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・アド/絡◎

■行動
凄い料理法ですが、美味しいのですよね?
愉しみです。

対策の『串焼き』と『日本茶』、了解です。
私は『海鮮系』の串を中心に準備しておきますね。

【豊饒発現】を発動、[大食い]を強化して【徹食界】に参加します。
私達の食事量やペースを考えれば、『イベント』として成立する範囲の量でしたら、まず問題無く食べきれるでしょう。

折角ですし、残るボディのお二方にもお土産を用意したいですね。
『削るだけの氷塊』の様な形で購入は出来ますか?
てこのさんの『カプセルカー』の冷凍庫か、るこるさんの『FTS』で保管出来るのではないかと。

食べ歩き、賛成です。
追加の御土産も探したいですね。


艶守・娃羽
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・アド/絡◎

■行動
お招き有難う御座いますわ。
これからの季節に良いですわね。

皆で使える『BBQセット』を御用意して参りましたわ。
アイス類を頂く場合は、合間に『温かい物』を挟むと頭痛が起き辛くなりますから、『かき氷』→『串焼き』or『日本茶』の順を繰返す様に頂けば、対策になりますわね。
その分、頂ける量やペースは落ちますが、皆様の食事量やペース、てこのさんの【徹食界】を考えますと、誤差の範疇ですわ。
私も【継巧】を発動、[大食い][早食い]を強化して頂きますわね。

この『蜜』も美味しいですわ。
保存も或る程度出来そうですし、御土産に購入出来ませんかしら?
食べ歩きも賛成ですわね。


甘露島・てこの
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・アド/絡◎

■行動
打ち上げも兼ねて、だねぇ。
有難いし、楽しもっかぁ。

私は『果物』や『焼きマシュマロ』の串みたいな、『甘味串』を中心に支度してきたよぉ。
『串焼き』と『日本茶』が有れば、対策は十分かなぁ?

【徹食界】を発動、全員の『食事量』と『食欲』、[大食い]を強化合体させるねぇ。
元々沢山食べる人が揃っていて、更に『全員の合計』から強化だから、相当凄まじい量でも問題無いんだよぉ。
桃姫さんも『強化』に参加してくれるかなぁ?

一通り食べ終わったけど、強化し過ぎたからか物足りない感じもするねぇ。
食べ歩き、行ってみよっかぁ。
この世界だし、『大食いチャレンジ巡り』なんてどうかなぁ?


絢潟・瑶暖
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・アド/絡◎

■行動
こういうお店が出来るのは有難いですの。
お邪魔させていただきますの。

桃姫さんをお誘いしに行く担当でしたから、お料理の準備はしておりませんの。
代わりに、全員分の『服』を御用意して参りましたの。
『氷』や『蜜』が溶けたり、お食事の影響が体型に出ても安心ですの。

【豊饒憑霊】を発動、[大食い]を強化し【徹食界】に協力しますの。
これで、かなりの量でも問題無く頂けますの。
桃姫さんも結構お食べになるみたいですが、この状態は慣れていないかもしれませんし、何か有りましたらフォロー致しますの。

まだまだ食べられますし、食べ歩きも大賛成ですの。
桃姫さんも、ご一緒に如何ですの?


リュニエ・グラトネリーア
■方針
・同行:【豊饒の使徒】
・アド/絡◎

■行動
やっぱり、故郷の世界は色々と騒がしくて楽しいでぇす。

『肉類』中心の『串焼き』は、私が用意して参りましたぁ。
【豊饒来臨】を発動して[料理]を強化した状態で、『牛』『豚』『鶏』に加えて『ソーセージ』や『ベーコン』なんかも色々と用意して有りまぁす。
メインはあくまで『かき氷』ですが、多目に作っても残ることは無いでしょうから、結構な量を用意しましたぁ。
同時に強化した[大食い]と[早食い]、てこのさんの【徹食界】も有りますから、みんなで思いっきり頂きましょぉ。

食べ歩き、賛成でぇす。
物見高い方々がついてきているみたいですが、これも良い宣伝になるかもしれませぇん。



 かき氷店オープニングイベントの会場。いまそこに圧倒的な質量を持つ集団が押し寄せていた。
「さて、後はかき氷ですねぇ。有難く頂きますぅ」
 それを案内したのは夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。ドーリットがビッグフロストたちをスカウト(物理)するのを手伝った猟兵である。内容としては何のことはない、彼女がオープニングイベント参加させるため知り合いを集団で呼んだ、それだけのことだ。
「お招きお礼申し上げます」
 その集団のリーダー格と思しき豊雛院・叶葉(豊饒の使徒・叶・f05905)がドーリットに対し一礼する。だがそれの対応もそこそこに、ドーリット自身は別の作業に追われていた。
「テーブル足りない! もっと繋げて! 横じゃなくて縦!」
 待機中のビッグフロストにまで指示を出し、用意してあっただけのテーブルをありったけ出して並べていく。客が増えたのだからある意味当然なのだが、なぜか横並びではなく前方に向けて繋いで距離を稼いでいる。
「面白そうなお店なんだよ。楽しみなんだよ」
 その様子を鞠丘・麻陽(豊饒の使徒・陽・f13598)が面白そうに眺めている……が、店側が大変な理由はその胸部にこそあった。
「あれが乗せられたらヤバイ! 足部分補強して!」
「了解! 戦闘用氷! ガチな奴発射ー!」
 テーブルの脚部を氷漬けにして加重耐性まで高めようとするスタッフ一同。そう、るこるが呼んだこの集団、全員が圧倒的な規格外サイズの胸部を持っていたのだ。何しろ片方でビッグフロスト一人より巨大なサイズが9×2で計18個。スペース確保にも一苦労というのも納得である。
 そしてもちろん大変なのは会場の準備だけではない。
「凄い料理法ですが、美味しいのですよね? 愉しみです」
 かき氷が作られる様子を見て、鞠丘・月麻(豊饒の使徒・月・f13599)もそう呟いた。かき氷機もフル回転。氷なのにオーバーヒートでも起こしそうなほどの過剰労働。削られるビッグフロストも自転車操業の如く次々に氷入れに飛び込んでいき、代わりに出てきた者が業務用冷凍庫の中に入って水を飲んで回復を図っている。
「打ち上げも兼ねて、だねぇ。有難いし、楽しもっかぁ」
 甘露島・てこの(豊饒の使徒・甘・f24503)の両手には、『楽しむ』ためのアイテムが大量に持たれていた。『果物』や『焼きマシュマロ』の串みたいな、『甘味串』を中心とした大量のおやつ。本来飲食店に勝手な持ち込みはマナー違反だが、今回は早食い、大食いが目的なので余計な食べ物を持ってくるのは自分の負担を勝手に増やすだけの行為であり、セルフハンディキャップに過ぎない……普通は。
「お招き有難う御座いますわ。これからの季節に良いですわね」
 そう言う艶守・娃羽(豊饒の使徒・娃・f22781)が持ってきたのは、なんと『BBQセット』。調理器具まで持ち込むという無法ぶりにはさすがのデビキン民もドン引き……
「椅子! 椅子も補強して! ラスボス用玉座タイプ持ってきて!」
 なんてすることはもちろんなかった。ワルいのはもちろん歓迎すべきことだし、そもそもスタッフ一同今はそれどころではない。
「やっぱり、故郷の世界は色々と騒がしくて楽しいでぇす」
 それをよくあることと流すのはリュニエ・グラトネリーア(豊饒の使徒・饗・f36929)。この一団の中では新参であるが、デビルキングワールド生まれの生粋のデビキン民である彼女にとってはこれは懐かしくも当り前ないつもの光景。とりわけ猟兵がこの世界に訪れてからのここ一年強こんな騒動が各地で起こってきた。これぞまさに猟兵の知るデビルキングワールドのいつもの姿であり、デビルキングワールドの今の日常とも言えるものだ。
「こういうお店が出来るのは有難いですの。お邪魔させていただきますの」
 そして集団の最後尾に控えるのは、大量の巨大な布を持った絢潟・瑶暖(豊饒の使徒・瑶・f36018)。
 まさかその布まで食べるつもり……なんてことはもちろんなく、その正体は大量の服であった。
「それは着替えですか?」
 その服が何のためか尋ねるのは、この一件をグリモア猟兵として依頼してきたミルケンピーチのボディの一人、花園・桃姫である。ちなみに彼女は他のメンバーと同じ団体には属してはいない外様であるのだが、体系的になじみ過ぎていて完全に集団に溶け込んでいる。
「『氷』や『蜜』が溶けたり、お食事の影響が体型に出ても安心ですの」
 瑶暖は桃姫を誘いに行った関係で食品関係の用意が出来なかったため、こちらを携えての登場だ。体系という言葉に桃姫が一瞬嫌な顔をするが、それでもようやく準備が終わったテーブルを見ればその表情も元に戻る。
「お、お待たせしました……」
 息を切らすドーリット。その後ろには、いくつも繋げられたテーブルに乗せられた様々な種類のかき氷が並べられていた。
 早速席に着きそれを食べ始める一同。なおテーブルを利用するための距離に近づけば何人もの胸がテーブルに乗り、その足がみしみしと音を立てはじめている。
 そして一同手を合わせ。
「大いなる豊饒の女神、豊かなる恵みを齎す叡智をお貸しくださいませ」
「不思今日 豊乳女神の大広前を通行奉れば 甚畏くも叩頭奉り 拝礼奉る此状を」
「大いなる豊饒の女神、《楽園の地》より紅鏡へと、その御力をお貸し下さい」
「大いなる豊饒の女神、《楽園の地》より水鏡へと、その御力をお貸し下さい」
「大いなる豊饒の女神の使徒の名の元に、嘗て女神に仕えし御業の担い手よ、その力を携え我が身に宿りなさい」
「大いなる豊饒の女神様、貴女の僕達に豊饒を体現する力をお与え下さい」
「大いなる豊饒の女神様、貴女の使徒を熟達せし技巧へとお導き下さい」
「大いなる豊饒の女神様、貴女の使徒を豊かなる御業へとお迎え下さい」
 一斉にユーベルコードを発動した。
 そして一斉にかき氷を食べ始める一同。
「これは宇治金時でございますね、なじみ深くあります」
「クリームとハニーシロップのもおいしいんだよぉ」
「あら、きちんとフルーツを潰してシロップにしてますのね」
 その勢いはすさまじく、氷は解ける間もなく消えていく。彼女たちのユーベルコードの効果は多少の際はあるが、基本的に『大食い力を強化するもの』。本当にそれ専用だったり効果をそっちに向けているだけだったりの差はあるが、とにかく彼女たちの食欲はまさにユーベルコード級に強化されている。
 だが、どれだけ頑張っても来るものは来る。一人だけUC不使用だからかあるいはただ根性がないのか、桃姫が頭を抑えてテーブル(というかその上に乗った自分の胸)に突っ伏していた。
「『牛』『豚』『鶏』に加えて『ソーセージ』や『ベーコン』なんかも色々と用意して有りまぁす。メインはあくまで『かき氷』ですが、多目に作っても残ることは無いでしょうから、結構な量を用意しましたぁ」
 そこに素早く串を差し出したのがリュニエ。その宣言通り、いつの間に焼いていたのか大量の肉系串焼きが桃姫を起き上がらせ、そこにかぶりつくことで再起を促していく。
「『かき氷』→『串焼き』or『日本茶』の順を繰返す様に頂けば、対策になりますわね」
 娃羽がそこにさっとお茶を出し、体を温めて調子を整えさせ、そしてまたかき氷に向かって行く桃姫。もちろん他のメンバーも同じ様に、かき氷にお茶と串焼きを挟み頭痛を抑えながら食べ続けていた。
「私達の食事量やペースを考えれば、『イベント』として成立する範囲の量でしたら、まず問題無く食べきれるでしょう」
 食べていく勢いは本当にすさまじいが、月麻の計算通りつぎつぎとかき氷は補充されていき耐えることはない。特に最大の原材料である氷はビッグフロストが回復さえすればいくらでも補充できるため、実質無限とも言えるのだ。
「私は、少し違うけど『焼きおにぎり』を用意しておくんだよ」
「私は『海鮮系』の串を中心に準備しておきますね」
 麻陽と月麻の方では付け合わせの味変も忘れない。いくら大食いだからと言っても同じものを食べ続ければ飽きが来るのは道理。それにも対策してこそ一流の大食い戦士と言えるのだ。
 まあそれはそれでかき氷のオープニングイベントとしてはどうなのかという話でもあるのだが、少なくともギャラリーは大盛り上がりだ。
「これだけの人数、更に女性揃いとなれば相応に目立ちましょうし、宣伝にもなりましょうや」
 叶葉の言通り、そこまで計算しての事。しかも食べれば食べる程なんか色々膨らんでいるような気もしてくるので、そういった意味でも目立ち方はばっちりである。
「通常の『蜜』を基本に、練乳系等をお願いしましょう」
 るこるに至っては自ら注文までする余裕を見せる始末。
「桃姫さんも結構お食べになるみたいですが、この状態は慣れていないかもしれませんし、何か有りましたらフォロー致しますの」
「い、いえ、私は皆さんほどは……」
 瑶暖の言葉にそうは返すが、桃姫も相当な量……少なくとも普通の人間の限界以上にはとっくに食べている。
 その秘密は、てこのの使用した【豊乳女神の恵賜・徹食界】にある。これは簡単に言えば全員の食欲と食事量を合算の上乗算するもの。しかもレベル依存なところに最高レベル猟兵であるるこるが混ざっているのだから、その計算結果はいかほどになるか。
 桃姫も含めた一同の元々大きいそれらが合わさった結果、大量に並べられたかき氷および持ち込みアイテムは、全てその豊満な体の中に吸い込まれて消えていった。
「えーと、大食い部門はコールドゲームということで……」
 かき氷だけに、なんて駄洒落をかます余裕もなく、主催者からのゲームセットという名のギブアップ宣言が入る。
「折角ですし、残るボディのお二方にもお土産を用意したいですね。『削るだけの氷塊』の様な形で購入は出来ますか? てこのさんの『カプセルカー』の冷凍庫か、るこるさんの『FTS』で保管出来るのではないかと」
「この『蜜』も美味しいですわ。保存も或る程度出来そうですし、御土産に購入出来ませんかしら?」
 そこに入る月麻と娃羽からのおみや注文という名の追撃。一部のビッグフロストたちがそれに答え大量に氷と蜜を出し、指定の容器に収めていく。
「提案なんだけど、『串焼き』は設備が要るから兎も角、『日本茶』は比較的準備も少ないし、お店で出してもいいと思うんだよ」
 店側へのフォローとして麻陽が提案も出す。最もその場合今度は茶葉になる悪魔を狩ることになりそうだが、事業拡大も考えればそれはそれでありな話かもしれない。
 そしてこれにて彼女たちのイベントでの出番は終了……なのだが、そこで驚愕の一言。
「規定量以上を頂いてもまだ問題無く入りますので、このまま皆で食べ歩き等如何でしょう?」
「一通り食べ終わったけど、強化し過ぎたからか物足りない感じもするねぇ。食べ歩き、行ってみよっかぁ。この世界だし、『大食いチャレンジ巡り』なんてどうかなぁ?」
 あれでもまだ全員分の食欲は満たされなかったのか、さらなる食べ歩きの提案。もちろん食欲を共有する仲間たちも同館であり、次々とその話に賛同していく。
「まだまだ食べられますし、食べ歩きも大賛成ですの。桃姫さんも、ご一緒に如何ですの?」
「え、いや、まあ、はい、せっかくだし……」
 ごにょごにょと言葉を濁しつつ、桃姫もがっつりついていく。この娘は本当に欲望に忠実で意志が弱いのだ。
「追加の御土産も探したいですね」
「途中、この美味しい『蜜』を用いた他の料理を検討しても良いやもしれませぬ」
 この上まだ色々作って食べるつもりなのかと、そのまさに底なしの食への欲求はまさに暴食の大罪。あまりのワルさにギャラリーたちも前のめりになる。
「食べ歩き、賛成でぇす。物見高い方々がついてきているみたいですが、これも良い宣伝になるかもしれませぇん」
 同じデビキン民のリュニエを旗印に、何人かのギャラリーが同行しようとしている。最も彼らが何を見たいのかはそれぞれ違うのかもしれないが。
「他にも『温かい品』が近くで買えれば、持込みで色々出来るかもしれないし、探してみるんだよ」
 やっぱり店に対するフォローを麻陽が入れつつ、圧倒的質量を揺らしながら巨峰山脈は移動していった。

 これにて圧巻の大食いは終了となったのだが、補足説明を一つ。
 彼女たちは全員ユーベルコードで食事量を強化していたが、その中に消費までカバーしているものは一つもない。別に持っている者もいるはいるが、それはあくまで個人レベルのもの。全員分を纏めることなどもちろんできない。
 全員が各々の体に入れて持ち帰ったカロリーがどこに行くのか……それは彼女たちの胸と腹の中の謎であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

プリ・ミョート
寒さと頭痛、なるほどな。だがそこでおらは閃いたべ。冷たいものと一緒に熱いものも食えばいいんだべさ!
ちゅーわけでおらも勝手に秒速で料理を始めるべさ。名付けてスイーツブュッフェで急にカレーとか食いたくなる作戦だべ! おらかしこい
秒速で腹一杯になったべ。おらかしこくねえ! こうなったらなりふり構ってらんねえな。お口直しに料理配っちゃる。キンキンに痛む頭にあったかいスープとか、相乗効果でダブルで美味しいべよ、ひひひ! お腹いっぱいになーれ!



 猟兵の圧倒的活躍により、オープニングイベント大食い部門は完結した。だがまだもう一つ、早食いの方が残っている。
 そこに挑むのはプリ・ミョート(怪物着取り・f31555)。生粋のデビキン民である彼女の事、もちろん卑怯な小細工は全開だ。
「寒さと頭痛、なるほどな。だがそこでおらは閃いたべ。冷たいものと一緒に熱いものも食えばいいんだべさ!」
 そう言って彼女が自信満々で用意してきたもの。それは大量の食材であった。
「おら流の満漢全席だべ!」
 それを【ブギブギクッキングショー】で素早く調理する。そして出来上がったのは、みんな大好き茶色いあれ。
 巨大鍋一杯のカレーがかき氷早食い会場のど真ん中にどどんと現れた。一切を塗りつぶすその香りが辺りに充満し、ここが何の店だったのかを周囲に忘れさせていく。
「名付けてスイーツブュッフェで急にカレーとか食いたくなる作戦だべ! おらかしこい」
 自慢気にそれを指してプリが胸を張る。そう、かき氷は基本的にデザート、スイーツに属するものであり、さらに言えば氷がメインである以上その温度は常に氷点下。どんなにアレンジしようと『冷たくて甘い』ものからは脱却できないのだ。
 それに対し完全に真逆の属性を持つカレーを用意することは、かき氷から受けるダメージを中和するにはまさにうってつけ。専門店に完全に逆のものを持ち込むというワルさも相まって、まさにデビルキングワールド的解決法と言えるだろう。
 そしてかき氷とカレーを交互に食べることで完全に頭痛を抑え込み一切ペースを落とさず食べ続けるプリ。そしてその結果。
「秒速で腹一杯になったべ。おらかしこくねえ!」
 当り前である。そもそもなぜスイーツに限らずどんなジャンルの食べ放題でもカレーが置いてあるのか? それを考えてみれば仕方のない結果と言えるだろう。しかも味と温度の中和が目的ならただルーを溶かした素カレーにしておけばいいのに、プリのカレーはしっかり具材入りの家庭的カレー、ユーベルコード効果で10秒で一晩寝かせたひと手間付き。もちろんライスも完備である。こうなれば最早どちらがメインか分かったものではない。
 そしてスコアはどうかというと、当然ながらカレーをいくら食べたとてその量は一切カウントされず、一方でタイムはしっかり計測されていく。つまり倍の時間で半分の量という何とも言えない結果となってしまったのだ。
 こうなれば最早自力での勝利は絶望的だろう。そうなれば清く正しいデビキン民としてやるべきことは一つ。
「こうなったらなりふり構ってらんねえな。お口直しに料理配っちゃる。キンキンに痛む頭にあったかいスープとか、相乗効果でダブルで美味しいべよ、ひひひ! お腹いっぱいになーれ!」
 周囲の参加者たちにカレーを振舞い始めた。漂うカレーの匂いにすっかり影響されていた参加者たちは、プリの末路を知りながらもそれに手を出しはじめる。
 こうなってしまってはもう何が何だか収拾がつかない。皆でかき氷をカレーを楽しむだけのパーティとなり、そのまま和やかな時が流れていくばかりであった。
 そしてその時間は、無情なブザーによって断ち切られる。
「はい、タイムアップー。時間内に規定量に届かなかったため全員失格となりまーす」
 流石に主催者だけはイベントの趣旨を忘れていなかった。こうして最後の参加者一団は、プリを含めて全員が失格、記録なしと相成った。まあプリ自身はあのまま続けていてもまともな記録が出るとは思えなかいので、他人を道連れにするワル行為としては十分成功と言ってもいいだろう。
 そうしてプリ登場前に参加していた参加者に早食い賞が贈られ、オープニングイベントは閉幕となった。
 成績優秀者には宣言通り後日仕えるサービスチケットが送られ、そうでないものにも参加証としてやや割引率の低い割引券が配られる。
「いやー、流石は7thKING! これが新しい世代のワル楽しい!」
 そうしてお開きとなった会場で、カレーを食べながらドーリットが満足げに言う。なんだかんだ彼女も食べたかったらしいが、デビキン民らしく職務上の責任感から我慢していたようだ。
「しかしほんと色々組み合わせとか付け合わせってあるもんなのね。夏が終わったらかき氷は売りづらいし、先を見据えて色々考えとかないと」
 猟兵たちが行った様々なかき氷への対策。それを新たなワル楽しい商売のヒントとして考える彼女は、やはり自称通り起業家的な性格なのだろう。
「ま、それは今の商売がうまくいってからでいいか。さあスタッフたち! これから正式オープンよ! 一夏労働条件通りにこき使ってやるからしっかりはたらいてね!」
「おー!」
 デビルキングワールドに暑くて冷たい声が響く。さあ、夏はこれからだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年06月12日


挿絵イラスト