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7thKING WAR㉖〜悪よ、勤勉たれ

#デビルキングワールド #7thKING_WAR #1stKING『魔王ガチデビル』

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#7thKING_WAR
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#1stKING『魔王ガチデビル』


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「私は強い。だがどんな強者も一度奢れば即座に足元をすくわれる。強さに胡坐をかいた瞬間強者は弱者と成り果てる」
 地獄の窯の底呟く者。その姿を現す言葉は悪、暴、魔、邪……そのどれもが相応しく、そしてどれもが物足りない。
「それ故に準備に準備を重ね、ジャッジメントガールの動向にも気を払い、絶対に逆らえぬ契約の下魔王を召喚し、計画を練りに練って時を見極めた」
 恐るべきを成すに一部の隙もあってはならぬと、『それ』は己のなしうる完璧を長き時をかけて作り上げてきた。
「なれど猟兵、そしてそれを担いだ悪魔たちは全てを超えてきた。ここに一切の弁解は無用! 奴らは、私より強い!」
 そしてその完璧さえ打ち破られたことを、悪は潔く認めた。そして、そうであった時の備えをついに持ち出すことを決意する。
「私一人で足りぬなら、私の跡を継ぎし者たちの力を借りよう。五人の悪魔王たちよ。我が力となれ! 我は魔王ガチデビル! 初代デビルキングにしてこの世界唯一最大の悪なり!」
 五つの宝珠が魔王の周囲を回り、その勤勉なる悪に五つの力を添えた。


「こんにちは、7thKING WARの依頼です……」
 アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が集まった猟兵の前で言う……が、なぜか両手に頭を乗せ両脚を引き寄せ、リラックスしている犬のようにうつぶせになっている。
「あ、どうぞ、皆さんも座ってください……何なら寝ててもいいです……」
 そして猟兵にも楽にするよう勧めるアレクサンドラ。そのやけに気の抜けた姿勢から、これは時々あるお遊び要素の強い戦場かととりあえず座ってみる猟兵たち。
「はい、お疲れ様です……それで今回の依頼ですが……ガチデビルとの決戦です」
 ラスボスじゃねーか! 猟兵たちも思わず立ち上がる。
「ガチデビルは本人も中々強いですが、それに加えて歴代デビルキングの力を持った宝珠を5つ従えています。これはそれぞれのデビルキングの能力によってガチデビルを補佐するもので、料理を作って回復、植物怪人軍団の召喚、戦闘知識の付与、オーラによる盾、腹からビームと強力な能力をいくつもガチデビルに付与します」
 自前のユーベルコードと合わせ、6つの能力の同時使用。ただ対処するだけでもとても手が足りない状況だ。
 その対策を、アレクサンドラはごろんと仰向けに寝返りながら説明する。
「ですがこの宝珠、別にガチデビルに忠実なわけではありません。宝珠自体に攻撃を加え続けることで、一時的に宝珠を奪い取ることができます。そうすればガチデビルの能力を封じるとともに、奪った宝珠を自分で使うこともできます」
 いずれも強力な力。一つ奪うだけでも敵の力は大きく削がれ、こちらの戦略の幅は大きく広がるだろう。
「ただ、ガチデビル自身も相応の強敵。宝珠よりもさらに先に、自分のUCで先制攻撃をかけてきます。能力は回復と巨大化、相手を腹の口で喰らった上での形態変化、自己強化の上配下への勧誘……いずれも自己強化能力が入っています。宝珠を奪いたかったらこれをどうにかしてからとなります……」
 彼は己の力を過剰に誇ることこそないが、それでもオブリビオン・フォーミュラを名乗るに相応しい力を持っている。宝珠さえ何とかすればいいという甘い考えで行けばその力の前に膝をつくこととなるだろう。
「ガチデビルはデビルキングワールドでただ一人の真の悪ですが……その悪の為にとても長い時間をかけて油断なく準備し、さらにデビルキングになれなかった時の次善策も考えています……完全に撃破しないと、そのとても真面目な計画の元彼の希望は大方叶えられてしまうでしょう……ちなみに、ガチデビルは別形態も含めて技の名前が全て七つの大罪となっていますが……ただ一つ、怠惰だけは持っていません……多分合わないんでしょう……」
 根っからの悪である以外は非常に勤勉かつ努力家な、ある種非常にデビキン民らしい敵だという。恐らくアレクサンドラも、このオチをつけるためにわざとごろごろしていたのだろう。
「彼の最終目標は悪魔契約書による悪魔輸出産業の確立、そしてそこからの全世界カタストロフ……そのためには一切の努力を惜しみませんし、手段を変えることも厭いません。なので、止めるには撃破しかありません……働きすぎなフォーミュラに、永遠に休暇をあげてきてください……よろしくお願いします……」
 アレクサンドラはそう言って寝たままグリモアを起動し、猟兵を悪しき勤労者の元へと送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。悪と真面目は並び立つということを教えてくれる悪魔王の鑑。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……敵の先制攻撃に対処する/「KING宝珠」を味方にする』

 いつもの先制攻撃に加え、ガチデビルは歴代デビルキングの力を自ら分析、開発した5つの『KING宝珠』を従えその能力を使ってきます。詳細は以下。

 2ndKING『魔王ビストログルメ』:様々な料理を作って食べさせ、所有者を回復する。
 3rdKING『堕天使エンケロニエル』:所収者に従う「植物怪獣軍団」を召喚し続ける。時間経過でねずみ算式に増える。
 4thKING『キング・ブレイン』:新たな知識を脳内に流し続け、戦闘時間に比例して所有者を強くする。
 5thKING『勇者リリリリ』:宝珠自身が盾のオーラを放出しながら飛び回り、所有者を護る。
 6thKING『ビームスプリッター』:所有者は通常のユーベルコードと同時に「腹からビーム」を撃てるようになる。命中精度・ダメージ共に大。

 これらは先制攻撃後常に発動し続けていますが、宝珠を狙って攻撃し続けることでそれを奪い取り、自ら使うことができます。
 一つ奪えればボーナス成立としますが、ワルらしく欲張って複数狙ってももちろんOK。ただしその間もガチデビルや残った宝珠は普通に攻撃してきますので、欲張りすぎには注意。

 ガチデビルは前評判通り非常に悪い奴ですが、その悪を成すためにあらゆる努力と準備を怠りません。ここで撃破しないときっちり事業推進を始めてしまうでしょう。

 それでは、真面目一辺倒をへし折るプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『1stKING魔王ガチデビル大罪形態』

POW   :    『傲慢』
【真なる魔王の姿 】に変身する。変身の度に自身の【操作中のKING宝珠】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
SPD   :    『暴食』
【腹部から放つ顎状エネルギー『暴食顎』 】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【魔王】に変身する。
WIZ   :    『色欲』
【闇色の魔力障壁 】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【ガチデビルと悪魔契約したい気持ち】を誘発する効果」を付与する。

イラスト:落葉

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御形・菘
努力を怠らぬ悪とは実に素晴らしいのう、巨悪かくあるべし!
ならば妾が、万全を期した上での敗北を教えてやろう!

防御のための邪神オーラを尾に集中させ、身体の前面に盾として翳そう
機動力を潰されるのは覚悟して、距離を取られんよう注意
痛みは我慢、一気に速攻で反撃に移る!

ボコる宝珠は6th
厄介な反撃手段を排除したら、突っ込んで攻撃…と見せかけて、当然のように左手での握手だ
護りの盾も反応させんよ
はっはっは、サイズ的に妾の左腕でもイイ感じではないか
これからお主は妾の武器であり盾となるのだ!

余計な思考とか反撃する余裕など与えず、持ち上げブン回して、軍団や地面へと全力で叩きつける!
追撃で腹ビームもドカンだ!



 初代デビルキングにしてデビルキングワールドのオブリビオン・フォーミュラ、ガチデビル。その性格は邪悪にして勤勉という一見矛盾した、だが誰よりもデビルキングに相応しいものであった。
 己が力を過不足なく把握し、為すべき悪に向けて一切の妥協なく邁進する。その上で失敗した時の備えも怠らず、最終目標を明確に掲げたうえでそこに至るための手段は一切選ばない。
「努力を怠らぬ悪とは実に素晴らしいのう、巨悪かくあるべし! ならば妾が、万全を期した上での敗北を教えてやろう!」
 その姿勢は悪として実に好ましいと、御形・菘(オブリビオンではない・f12350)はその勤勉なる巨悪に向かい合った。
「万全! その言葉がいかに信用能わぬかは他ならぬ貴様らが私に教えてくれたこと! この力を持って万全とは最早思わぬ! 今私がなしうる最大を持って、貴様ら猟兵を迎え撃ってくれよう!」
 宣言するガチデビルの周囲に、5つの宝珠が飛び回る。その全てが一瞬ぶれたと思えた瞬間それらは全て二つに分裂し、さらにそれに力を注がれるガチデビルの体がより禍々しく形を変えた。
 羽根を思わせる刺々しい外殻が6つに増えたその様は、傲慢を司る大悪魔にして大天使を彷彿とさせる形。その鋭き外殻を爪のように振るい、ガチデビルは菘を刻みにかかった。
 その斬撃を、菘は蛇の尾を突き出して待ち受ける。邪神を名乗る者としての力をオーラに変えてそこに集め、障壁と成してその爪を受け止めにかかった。
「力比べを挑み来るか!」
 そこに力を籠め、切り裂かんとするガチデビル。決して薄くないオーラの盾を外殻が切り裂き、菘の足にも等しい蛇の尾に食い込んでいく。
「ほほう、これは……!」
 にやりと笑い自分から尾を押し付けていく菘。ダメージは決して浅くはない。だが、それを表情に出すことはない。
 機動力を犠牲にしてでも、強化された一撃をここで食い止める。それは尋常ではない痛みを伴う防御だが、それを相手に、そしてこの戦いを見ている者全てに悟られてはならない。
 やがて、凶悪な六爪の食らいつきが止んだ。魔王の剛力によって押し付けられた爪は深く尾に食い込んでいるが、それはつまり容易には抜けないということ。
「貴様に邪神の眷属となる栄誉をくれてやろう!」
 一気に詰め寄り反撃に出る菘。それをガチデビルは己の巨体、そして宝珠たちで受け止めんとする。
「守れ、攻めよ、喰らえ!」
 光の盾が菘を阻み、植物怪人たちが襲い掛かる。そして周囲には、無限の英知で作られた豪華絢爛な美食の山が魔王の糧となる時を待っている。だが菘もまたそれらには一切目もくれず、ただひたすらにガチデビルの腹に食らいついた。
「選ばれたことを光栄に思え! さあ、誓いの証だ!」
 6thKING『ビームスプリッター』の宝珠が、菘に掴み取られその腹に潜り込んでいく。そしてそれと同時に菘は攻撃……と見せかけ、左手を差し出した。
「見せてやろう、妾の握手力を! そして喜んでくれ! これがファンミーティングの頂点よ!」
 菘の左手がガチデビルの左手と握手の形をとる。その手を、ガチデビルは誠実に握り返した。
 多くの悪魔のように礼儀正しく答えたのではない。左手での握手、その意味するところを知った上で己の力にて握り潰してくれようという意思の表れ。これが悪の握手だと、ガチデビルは悪の誠実さを持ってそれに答えたのだ。
「はっはっは、サイズ的に妾の左腕でもイイ感じではないか。これからお主は妾の武器であり盾となるのだ!」
 ガチデビルの巨腕が菘の手を握り潰す。その瞬間、菘は相手の握力をも利用し、善心の力を持ってその繋がれた腕を振り回した。
「ぬぅぅぅ!?」
 手の握り潰し合いではない。それをも超えた体全てを叩き潰す驚異の振り回しがガチデビルの巨体を宙に躍らせた。
 体全てを振り回されてしまえば食事している間もなく、相手と繋がっていては縦が守ることもできない。さらに振り回されるその巨体はそのまま武器となり、植物怪人たちをなぎ倒していく。当然その間もガチデビルの手は菘の手を握り潰そうとするが、自らつないだ手を離すなどファンサ的にあってはならぬと決して菘は手は緩めない。
「サービスだ、取っておくがいい!」
 最後に巨体が目の前に叩きつけられ、宝珠の宿った腹部から極太ビームが放たれガチデビルを貫いた。
「やはり……超えてきたか……!」
 握手からの握り潰しなどという定番を超えた【アルティメット握手会】。悪のスケールにおいても上を行かれたと、魔王は邪神の前に倒れ伏すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジョウ・クロビス
華澄と行動
アドリブ・絡みOK

野生の勘、ダッシュや見切りで相手の先制を回避しヨルとエルザ、サソナを呼び出す。
グレイブの月牙を抜いてダッシュで接近して囮役をやる。
「殺せるものなら殺してみろッ!俺は不死(しなず)のジョウ・クロビスだ!」
月牙と自身にジヴァ・アラスの覇気を纏わせ怪力に物言わせたなぎ払いによる範囲攻撃、乱れ撃ちの不規則かつ早業による乱撃や連続攻撃を繰り出す。
闘争心や覚悟で負傷をものともせずに攻める手を止めずに魔王へと猛攻を続ける。
ヨルたちが宝珠への攻撃を行う。
「見ない間に随分と変わったな」
ヨルはラヴェンツァは3rd、5thを狙い、エルザと華澄が組んで攻撃を行う。
サソナは魔力を用いた投影と共に4thへと攻撃を仕掛ける。
狡猾と欺瞞の邪神らしく欺く為に動く。


藤宮・華澄
ジョウと行動
アドリブ・絡みOK

野生の勘で相手の攻撃を予測してダッシュで回避を行う。
AK-FAを手にラヴェンツァを呼び出す。
「エルザさん!」
「お久しぶりです、ヨル様」
それぞれ担当を分けて宝珠への攻撃を行う。
エルザと共に2nd、6thを狙い弱体化を狙う。
余裕が出来れば魔王へのレーザー射撃によるマヒ攻撃を行いジョウの援護に回る。
2ndを使っての回復なども行う。
「成長、とでもいうのでしょうか」
もう少女ではないと話し、ある事を言う。
「ラーメンの約束がまだですから」
食い意地が張っていると笑われる。



 ガチデビルの口は顔には無い。それは頭部以上の大きさを持って、腹に開いていた。悪魔の中には自然な生物とはかけ離れた形状を持つ者も多くあり、その王ともなればその程度の異形は当然ということか。
 そしてその口は単なるこけおどしではない。ガチデビルの大きな武器であり、ユーベルコードの元となる重要な器官であった。
 その口を大きく開け、ガチデビルは目の前に現れた猟兵に有無を言わさず食らいついた。
「はやい……!」
 藤宮・華澄(戦医師・f17614)はそれを勘に任せて回避しようとしたが、ガチデビルの動きはその巨体からは想像もできないほどに早い。見切ろうと思って単純に見切れるような生易しい技量ではないそれは、華澄の肉を切り裂きその大口の中で咀嚼した。
 そしてその肉を飲み込むと同時に、ガチデビルの体が変化していく。白い外殻に毒々しい紫色が差し、顔を背けたくなるようなにおいがその体から立ち上りだす。回復を得意とする華澄に対抗すべく、それを上回るほどの猛毒を発する体になったガチデビルはさらにもう一人の猟兵の方にも腹の大口を向けた。
「ただ走るだけで私の口から逃れようとは、準備不足も甚だしい。貴様の弱きも喰ろうてくれる!」
 高い力量を持ちながら慎重に慎重を期すことを良しとするガチデビル。あるいはもし逆の立場であれば、持てる全てを用いて敵の攻撃を防ぎ、躱し、あるいは喰らうことまで想定して行動を考えてきたのかもしれない。
「殺せるものなら殺してみろッ! 俺は不死(しなず)のジョウ・クロビスだ!」
 そのガチデビルを、ジョウ・クロビス(暗黒時代を知る者・f37038)は真正面から挑発しながら待ち受けた。
「慢心! 奢るのは相手を骸に変えてからにすべし!」
 その挑発をただの油断と断じ、ガチデビルはまたも大口を開けてジョウへと噛みついた。
 その動きを見極め、躱そうとするジョウ。だが華澄はそれに失敗し、先手を取られた。オブリビオン・フォーミュラの動きを見切ろうと思うだけで見切れれば苦労はなく、ジョウもまたその牙の餌食となる……はずだった。
「何!?」
 だが、ガチデビルの牙は空を切り、何もない空間を咀嚼するにとどまった。タイミングは完璧だったはずなのに。
「如何な種か……貴様らもまた別な力が!」
 それはフィールド・オブ・ナインの置き土産であり、今は猟兵の秘奥となったオーバーロード。限界を突破し不可能を可能に変えるその力は、オブリビオン・フォーミュラである悪魔王の顎すら見切ろうと思い見切れるだけの目を猟兵に与えていた。
 そして、食らいつきを外せばそこに反撃の瞬間が生まれる。
「行くぞ!」
 得意の召喚術である【守護者召現】で魔術師や邪神、女戦士を呼び出し共に攻めかからんとするジョウ。
 その呼び出された者の姿に、傷を負っていた華澄も思わず立ち上がる。
「エルザさん!」
「お久しぶりです、ヨル様」
 猟兵としてのジョウと共に戦場に立つのは初めてのはずなのに知っている顔の登場に、自らも倒れている場合ではないと【蒼き旅人ラヴェンツァ】を呼び出し共に立ち上がる華澄。その二人は間違いなくよく知る男が従えていた存在であり、この戦場で力になってくれるもの。『AK-FA』を手に、華澄はガチデビルへ向けて攻撃を開始した。
「数を恃みに攻め来るか。それは決して間違ってはいない。故に! 私も同じ手を使おう!」
 ガチデビルの周囲を五つの宝珠が回る。それは各々の力を持ってガチデビルを支援し、あるいは猟兵に攻撃をかけ始めた。
「私はあれを!」
「では私はこちらに」
 華澄はビストログルメ、女戦士エルザはビームスプリッターの宝珠を目掛け攻撃を行っていく。回復と攻撃という戦いの基本とも言える能力の宝珠を抑えることで、敵の手を分かりやすく削ぐ作戦だ。
「そう簡単に奪わせるか!」
「そのつもりだ」
 ガチデビルが猛毒の牙を剥きそれを推しとどめようとする。だが、その横では魔術師ヨルが氷の壁を作り上げ、エンケロニエルの宝珠を植物怪人ごと氷漬けにして抑え込んだ。植物たちは大敵とする霜に閉じ込められその動きを鈍らせ、宝珠の力も弱まっていく。
「集めに集めたその知恵、今の使い方は果たして本意なのか」
 そして欺瞞の神サソナが現れ、キング・ブレインの宝珠を誑かし始める。初めて現れた時はアリスラビリンスにて大乱を起こした逆賊の一人でしかなかった彼だが、その人となりが知れ渡るほどにその本質が善良であることが明らかになっていった。その彼が今キマイラフューチャーのオウガ・フォーミュラとして、そしてその知恵がガチデビルの力として悪に使われていることに、本来の彼はどう思うか。
 知恵という形なき力だからこそ欺瞞の言葉にも惑わされる。
「力は力、以下に抑えようと私を殺すことは出来ぬ!」
「その通りだ」
 それぞれが一人一つの宝珠に当たる状況を、己の力で蹴散らさんとするガチデビル。それ自体の相手には、オーバーロードの力を持ってジョウが自ら当たった。自身に『ジヴァ・アラスの覇気』を纏わせ怪力に物言わせ、グレイブ『月牙』を振るえばそれはまさに凶悪なる暴力となって魔王を襲う。
 不規則に乱れ撃たれるその力を、毒を滴らせる外殻を持って正面からへし折らんとガチデビルは迎え撃つ。その力はやはりすさまじくオーバーロードに至った身すら抉り毒を打ち込むが、そのような負傷も一切意に介さずジョウは攻め続ける。
「見ない間に随分と変わったな」
 苛烈な戦いの横、華澄に声がかかる。
「成長、とでもいうのでしょうか」
 もう少女ではない、そう言ってラヴェンツァと共に答える。
「ラーメンの約束がまだですから」
 それはかつて狂気の戦場の中交わした約束。ラヴェンツァも、華澄も。
 だが、とりわけ華澄がそれを言ってしまえば普段の彼女の行動から、食い意地が張っていると笑われるのもまた仕方ない事。あるいは彼女がビストログルメの宝珠を相手取っているのももしかしたら……
 あるいはそんな心が力になったか、ビストログルメの宝珠がガチデビルから離れ、華澄の元へ飛来した。そしてそれを合図とするかのように、宝珠たちが次々と猟兵側に寝返っていく。
「まさか、全てを奪い取らんとするとは!」
「そのための数だ」
 いかに強力な宝珠と言えど、そこに全力を傾ければ奪い取ることはできる。そしてその間のガチデビル自身の恐るべき猛攻は、ジョウが超克を持って一人相手取った。
 恐るべき魔に引かぬは闘争心と覚悟。それはオーバーロードの名のもとに魔を砕く暴へと変わる。
「魔王なら、最後に頼れるのは自分だろう!」
 己が力を正しく見極め他を頼るを躊躇しない悪魔の王。その体に、己を超えた力を湧き立たせた一撃が強烈に叩きつけられたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
慎重で真面目、且つ優秀で勤勉。
邪悪さ以外は明主になり得た方ですねぇ。

『FAS』を使用し飛行、『FMS』のバリアと『FXS』の結界を展開しますぅ。
『傲慢』は強化系故『攻撃手段』は同じ、相手の向きに着目し『宝珠』による『腹部レーザー』と通常攻撃を『FIS』の転移で『相手から離れた上方』に回避、以降小刻みな転移を繰返し連撃に備えましょう。
『怪獣』は『植物』故地上から生える筈、『FGS』の重力波で抑えて対処しますぅ。
危険なダメージは『FES』破損で無効化、戦闘不能さえ防げれば。

条件が揃い次第【処檻】を発動、広域へ『波動』を放射し魔王さんと『宝珠』全てを対象に『超重力空間』に捕えますねぇ。
内部の『棘』は『対象の強さ』に比例する以上、強化中の魔王さんには相当な効果が見込めますし、『宝珠』は『棘』の効果は無くとも『超重力』で動きは止められますぅ。
後は、2・4・5・他の順で『宝珠』狙い、攻撃に使用可能な『F●S』全てによる攻撃を集中させ可能な限り奪い、その力も重ねて叩きますねぇ。



 ガチデビルは己の力を猟兵に及ばぬと評した。だがそれは猟兵という集団全体を指しての事。個人としての力に関しては、ガチデビルの力は猟兵を大きく凌駕する。そしてそのこと自体はガチデビルも正しく自覚している。彼は自身の強さに奢ることこそないが、無意味な過小評価もまた決してしないのだ。
「慎重で真面目、且つ優秀で勤勉。邪悪さ以外は明主になり得た方ですねぇ」
 その冷静かつ勤勉なる姿勢を、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はそう評する。あるいは頑丈さにあかせ不合理、理不尽な善心のまま行動する他の悪魔より、悪であるが故の冷酷さと疑心によって固められた彼の方が何かを纏める者としては遥かに向いているのかもしれない。
 だが、現実に彼が王となってしまえば次の目的となるのは全ての世界の破滅。間違いなく実直に緩みなくそこを目指していくだろう彼は、確実にここで留めなければならなかった。
「悪であれば敵は多い。隙を見せぬは当然の事。そして隙なくとも貴様らはそこをこじ開ける。ならば全力を持って迎え撃つ他なし!」
 5つの宝珠がガチデビルの周囲を回る。その宝珠が分裂した瞬間、ガチデビルの体がその形を変えた。
 元々巨大であった腹の口がさらに大きくなり、それを要する体そのものも巨大化する。さらに白かった部分が黒みを帯び外殻に短い毛が所々生え、先端は鍵爪のように湾曲していく。
 その姿は嫌悪を催す醜悪な蟲……あるいは神によって貶められた豊穣の神にして暴食の魔王を模したものか。
「その肉、食らってくれよう!」
 大口を開け、ガチデビルはるこるへと食らいつかんとした。それに対し、るこるは自身の装備を動員し空中へ逃れようとする。
「如何に浮こうと我が口の中よ!」
 だが体さえ巨大になったガチデビルの腹の口は、ただ大きく顎を開けただけでもその浮遊にさえ追いすがる。その牙が飛び征くるこるを捕らえんとしたが、それはその身に至る寸前に光の壁に弾かれた。それは飛翔だけで躱しきれぬことを考え張った『FMS』のバリアと『FXS』の二重の障壁。
「なるほど、備えていたか。なれば、口の上にあるは腕!」
 一手に頼り切らぬ備えは良しとしつつも、それはガチデビルにとってもまた最大の得意戦法。高く腕を振り上げるこるを切り裂かんと鉤爪を振るった。
 それに対しては細かく瞬間移動を繰り返し回避を図るるこる。鉤爪の巨大さ故に移動しても完全に離脱とはいかないが、それでも直撃は免れていく。
「一人では足りぬ……ならばやはり、力を貸せ、魔王たちよ!」
 その号令に、増加した宝珠たちが一斉に攻撃をかけ始めた。
 主に攻撃を担うのは腹部のビームと植物怪人たち。それに対しては地から遠く離れる力を持たない植物たちを重力で抑えつけ、腹部からの巨大なビームも移動を繰り返しかわす。だがそれでも圧倒的な猛攻を全てかわしきることは出来ず、ついにビームの直撃を受けてしまった。それは知恵の布『FES』にダメージを肩代わりさせ、破れるまでそれを盾にすることで何とか防ぎきった。
「戦闘不能さえ防げれば……」
 それは知恵の布『FES』にダメージを肩代わりさせ、破れるまでそれを盾にすることで何とか防いでいく。ビームの攻撃力は圧巻であり瞬く間に布は破れ千切れていくが、それが燃え落ちる瞬間、ガチデビルの猛攻はついにその区切りを迎えていた。
「大いなる豊饒の女神の名に於いて、仇なす者達に厳格なる裁きを」
 この一瞬こそ耐えに耐えて待ち望んでいたもの。るこるは【豊乳女神の加護・処檻】を発動、ガチデビルと宝珠全てに女神の波動を当て、超重力の檻へとその全てを捕らえた。
「既に飽きる程待った……もはやこれ以上の雌伏は望まぬ!」
 己が思う最高の状態まで時を待ったのだ、最早何物にも抑えられることなしとガチデビルは己の力を振りかざす。正しく強さを誇るその力はかかる重力さえも振り切らんとするが、それを糧とするかのように重力の内側から生えた棘がガチデビルを貫いた。
「ぐっ……あぁぁ!!」
 それは相手の力に比例して強くなる棘。だが規格外の相手は自分の強ささえ振り切ってくることがある。ガチデビルもそれに能う力があるはずだが、それでも彼はその戒めの棘を抜けることは出来なかった。
 そのガチデビルの目の前で、砲台や爆弾が一斉に攻撃をかけ始める。その狙いはガチデビル本人ではなく、重力に捕らわれ地面にへばりついている宝珠たちであった。
 圧巻の豪快な攻撃が、針の穴をも通す精密さで次々と宝珠を撃ち抜いていく。それに従い、るこるの周りに無数の美食が現れ、それを最大限味わい効率よくエネルギーに変える知識が流れ込み、そしてその食事の邪魔が入らぬよう勇者の障壁が彼女を守りだした。
「我がKING宝珠がこうも容易く……この力、猟兵の域にすらない!」
 瞬く間に奪われた宝珠を見て、ガチデビルは唸る。この相手の力は猟兵すらも逸脱していると。
 その種を、ガチデビルは一度見てはいる。しかし、それを理解できているかどうかはまた別の話であった。
 猟兵に極限以上の力を引き出させるオーバーロード。るこるはそれを今ここで用いていた。ただでさえも猟兵トップクラスの力と装備を持つ彼女が超克に至れば、その力はいったいどれほどとなるか。普段はそこまで手を出さぬそれを用いたは、あるいは戦闘前に彼女が述べたガチデビルへの賛辞、それを態度として示した証なのかもしれない。
 悪という文字には古くは『強者』の意味がある。心身ともに真の『悪』たる彼を確実に仕留めるにはそれを超克すべしと、るこるは限界以上の力を持って彼の力を奪い、そしてぶつけていった。
 強く、早く、正確に、攻撃能力を持つ兵装がガチデビルを撃ち抜き刻んでいく。それは初代デビルキングであるその力を持ってすら抗する手段なきほどに圧倒的で、緻密であった。
「悪は滅びよと……ならば、最後に吠えよう! 我が名はガチデビル! 初代デビルキングにして、世界唯一絶対の悪なり!」
 串刺しにされた体を引きちぎりながら、ガチデビルが体を起こす。最後に腹部の巨大な口を開け、まさに最後の方向の如く巨大なビームを放った。
 その光線は間違いなくるこるの全身を包み込む。そしてその光が消えた時。そこには全ての備えとこの為にと奪った守りの宝珠全てを動員し、身を守り切ったるこるの姿があった。
 そのままそれ以上何も吠えることはなく、ガチデビルの巨体が前に倒れる。そしてその全身に罅が入り、粉々に崩れ消えていった。
「惜しい方、でしたねぇ」
 悪としてのその誇り高さは、傲慢と呼ぶには余りに清々しい。己の力を正しく見極め、冷静に必要なものを整え、他者を己より上と認められるただ一人の悪。あるいは怠惰のみならず、全ての大罪が彼とは縁なきものだったのではないだろうか。
 それでも、カタストロフを望む者ならば。
 最低最悪の名君、最高最上の暴君を討った最強なる者は、悪倒れれど混沌止まぬ悪魔の世界へと戻っていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月29日


挿絵イラスト