孤独のウォーターパーク
『夏と言えば!』
「プール!」
施設中に響くようなマイクからの声に、周囲から一斉に応える声が上がる。
と同時にキマイラ達が次々と水の中へ飛び込んでいき、水音が重なっていく。
その光景を眺めていたテレビウムのソリ・テュードは。
「……あれ?」
既視感にテレビ画面を傾げた。
「どこかで見たことあるような……」
「そりゃ見てるもんねー」
「うむ、去年の夏も来たな」
「猟兵も来て楽しかったっしょ」
答えは一緒に来ていた友人達からあっさりもたらされ、ソリもすぐに思い出す。
そうだ。何故か集まったスクラップビルダー達が、集まったならとそれぞれに力作のプールを作り上げ、多種多様という言葉では言い表せないほど様々なプールが詰まったレジャー施設ができたところに、ソリと友人達は遊びに来たのだ。
「面白いからって取り壊さずにそのままウォーターパークにしたんだってー」
ふわふわの銀の髪に猫耳を揺らしたネコキマイラの少女が、元気いっぱいの水着から猫尻尾もゆらゆら揺らして楽し気に辺りを指し示し。
「うむ、さらにプールが増え、休憩所や売店も充実したと聞くな」
もっさりしたたてがみを揺らすホワイトライオンのキマイラが、がっしりした身体を存分に見せるかのように腕を組んで仁王立ちし、鷹揚に頷くと。
「また猟兵もきたら楽しいっしょ」
ジャングルの奥地こそが似合いそうな仮面で顔を隠したヒーローマスクの少女が、本体とは対照的にシンプルで都会的な水着姿で快活に笑う。
そんな友人達を順に見たソリは。
改めて、プールいっぱいのウォーターパークを眺めて。
「……うん。遊ぼう」
「おっけー! それじゃ、どこからいこうかー?」
「うむ、流れるプールはあちらだな」
「水上アスレチックはこっちっしょ」
わいわいと皆で話しながら、楽しいプールに向かって動き出す。
見覚えのあるプールも、ちょっと改良されたかなと思うプールも、真新しいプールも。
どれもこれもが、泳ぎに来た人々を大歓迎しているようだし。
何故かスクラップビルダーが集められているとか、変な怪人に追いかけられるとか、テレビ画面に鍵が映るとか、そういった不穏なこともなさそうだから。
ソリは純粋にわくわくしながら、友人達と共にプールに飛び込んだ。
「スプラーッシュ!」
「……あれ?」
「何というか……奇妙な縁があるテレビウムだよ。本当に」
今更かねぇ、と苦笑しながら、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は今回の騒動の説明を始めた。
舞台は、去年、猟書家幹部『マレーネ・ヴァルハイト』がスクラップビルダーを集めたことで出来上がった複合プール施設。
もうプールと名のつくものなら全部詰め込んだと言わんばかりにごっちゃごちゃで、だからこそキマイラ達に大人気となったそこは、猟書家が手を引いた後も残り、しかも改良・拡張されて、ウォーターパークにまで発展したのだとか。
さらに、周辺のコンコンコンも調べ尽くされて、欲しいものがどこで手に入るのかといった情報が周知され。浮き輪やボート、ビーチボールなどの道具から、やきそばにたこ焼き、焼きトウモロコシやかき氷といった飲食物も、容易に手に入れられるようになっている。売店代わりですね。
もちろん、プールに流れ込む大量の水の補充も相変わらずのコンコンコン。叩くことで水が出て動き出すプールの仕掛けもあるし、通りがかりにコンコンしてね、という緩い給水システムも健在だ。
「そんな大盛況なウォーターパークに……いや、大盛況だからこそ、か。
やって来るのが『怪人アルパカスプラッシュ』だよ」
猟書家のように、特に何か目的があるような感じはない。ただ、プールがあるならアルパカスプラッシュあり、と言わんばかりに湧いて出てくるそうだ。
はた迷惑な。
「まあ、怪人が現れる前に現地には着けるから、プールで遊ぶこともできるし。
怪人を倒すにもプールを利用したりもできるし。
……それなりに楽しめるんじゃないかねぇ?」
そして夏梅は苦笑のまま、ひらりと適当に手を振って。
「よろしく頼むよ」
そのままキマイラフューチャーへの道を開いた。
佐和
こんにちは。サワです。
暑すぎてプールで暮らしたいです。
ソリ君は、ごく普通のテレビウムです。
何となく独りでいましたが、友達ができて一緒にいろいろわいわいやってる模様。
今回は、いつもの友人達とまたプールに遊びに来ました。
ソリ君達について知りたい方は、タグを利用して過去の登場作をご確認ください。
尚、未読で全く問題ありませんし、無理に声をかける必要もありません。
第1章は、ウォーターパークで遊びます。怪人はいません。
どんなプールでもありますので、希望のプールがありましたらご指定ください。
プールに入らず、プールサイドで過ごすのでもOKです。
一応、今回の舞台は『孤独のレジャープール』と同じ場所となっていますが、あれから改良や増築されまくって、いろいろ変わっています。お気になさらず。
(気になる方はこちら https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=36634 )
第2章は、ウォータースライダーで遊びます。怪人がいます。
ウォーターパークに現れた『怪人アルパカスプラッシュ』は、先制攻撃で『アルパカウォータースライダー』を使い、ウォーターパーク全体をウォータースライダーに変えて、迷路のごときその中を流れています。
というか、ただただウォータースライダーを楽しんでいます。
放っておいてもキマイラ達に害は加えませんが、迷路から出れずに困ってしまうキマイラもいますし、せっかくのウォーターパークが改変されてしまうのは勿体無いので、探して倒して元に戻してください。
尚、怪人を探しもせず思いっきりウォータースライダーを楽しむ、というのもOKです。きっと誰かが倒してくれますよ。
それでは、今年も楽しいプールを、どうぞ。
第1章 日常
『Water Theme Parks』
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POW : 完全制覇を目指して遊びつくす
SPD : 浮き輪やボートを使って楽しむ
WIZ : プールに入らずとも日光浴や売店で楽しむ
イラスト:伊瀬井セイ
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
北・北斗
【ワイハン】
『暑い日に、水浴びはいいですよ』
『何か、色々ありそうで、おいらも遊んでみたいですよ』
ウォータースライダーを純粋に楽しむ。
流れるプールでは、流れに逆らったり流れに乗ったりしながら泳いだりする。
ウォータースライダーでは、上から、そのまま滑ってくる。なんか楽しそう。登る際には、超能力で浮きながら上に行く。
『故郷には、こんなのないですからね。鮫や鯱が出るから、別の意味でスリリングだったけどね。』
そんで、楽しんだ後は日陰になっている床で昼寝。
その後は、コンコンコンで魚を出して食べる。
アリシア・マクリントック
【ワイハン】
暑い時期にプールでお仕事はありがたいですね!この世界ならマリアやシュンバーも一緒に楽しめますし。(マリアはウォータースライダーで遊び、シュンバーは広いプールでトレーニングしている)
流れるプールは楽しそうです。のんびり流されてみたり、流れに逆らって泳いでみたり。せっかくみんなで来ているのですし、競争するなんてどうでしょう?
プールだけでなく食べ歩きも!?いろいろな楽しみ方がるのですね。私あまりこういうところで遊んだ経験が無いので他の人に遊び方を教わりたいですね。これも社会勉強です!
国栖ヶ谷・鈴鹿
【ワイハン】
キマフューのプール!
やっぱり夏にいいね、こういうの!すごくハイカラだよ!
●流れるプールでダラダラしてる猟団長にこっそり近づく。
よし!ぼくのもう一つの力、UC、厭穢欣浄パラダヰムシフトでコンコン式無限ウォータースライダーのコースを追加、猟団長に気付かれないように後押し、コースに招待!(澪の手助けももらって)
流れる様子はちゃんとドローンで撮影しておいて、動画作っておくからね!
●普通にスライダーで楽しむ
冷たくて気持ちいい!
ビーチバレーする?任せて、UCでフィールドに程よく浮力を調整して……よーし流れ弾に注意するんだよ!
ひとしきり遊んだら、お昼にしようか!ぼくもおなか空いちゃったし。
雪・兼光
【ワイハン】
(一昨年の水着コンテストの姿)
へぇ、プールねぇ…
『実に良い』
アースは年々この時期は暑くなるし、そうなるとこの依頼は『実に良い』
プールに来たからにやぁやる事は『一つ』だ
適当な場所を陣取ってから…
コンコンコンでサングラスを引いて、
その後は青い空(お姉さん)と白い雲(お姉さん)と眩しい太陽(お姉さん)をウォッチするとしますか
あれー?
……ドリンクとフードしか出てこなくなったぞ
場所間違えた?
いや、だがパラソルとテーブルとビーチチェアは出てきたぞ?
この時間帯からは食べ物ピックアップコンコンコンだぁ?
ソ、ソシャゲのガチャじゃァねぇんだから
しゃぁねぇな。
拠点に持って帰ってみんなで食うか。
オリヴィア・ローゼンタール
【ワイハン】
あ つ い で す ね !
というわけで皆さんと一緒に水遊びに来ました!
オブリビオンが現れるまではめいっぱい楽しみましょう!
白いビキニの水着を着用
流れるプールで【サーフィン】したり、【水上歩行】でボールを追いかけたり!
ざぶーん!と跳び込んで【高速泳法】で水鉄砲やボールを躱したり!
水が冷たくって気持ちいいですね!
聖なる水の加護(トリニティ・エンハンス)を得ることで、水との親和性を増し、さらに加速してびゅんびゅん泳ぎます!
負けませんよっ!
寧宮・澪
【ワイハン】
わーいプール…涼しくていいですよね。
うん、フロートでまったりしたり、アクティブに行ったりですね。楽しみましょー…。
あとおしおきですね…アルパカな怪人。
●まったり流れる
まったり、皆さんのあとをふよふよと…暗色のビキニでついていきますよー。
さて、目指すは流れるプール。
おやつも買いましてー…コンコンしてお水追加し、持ち込んだ猫の浮き輪に捕まりぷかぷか…。
まったりしながら猟団長を運ぶ鈴鹿さんを後押しして、水を少しちょいちょいっと操ってー…楽に運べるようにしましょね。
おやつ食べながら流れていくのを、見守りましょ…あ、これおいしい…。
ひんやり流れるお水と暑い空気もいい感じー…寝ちゃいそう…。
白斑・物九郎
【ワイハン】
gallery/?id=100619
プールにアルパカ怪人が出るだァ……?
王の庭で相も変わらず不敬な輩も居たモンですわな
ま、イイですわ
涼みに行きついでにワイルドハントの王が手ずから狩ってやりまさァ
ってなワケで行きますでよ、避暑に飢えた者共
●流れるプールでダラダラする
ゴーストキャプテンぢからをちょこっと発動
『ワイルドハント号』を小さなフロートのサイズで具現しまさ
ンでそこに寝っ転がる
流れに乗ったまんま、何周でもしながら寝る
陽射しの熱と水の涼感とがまあイイ塩梅で、いついつまででも寝てられる――
……どこっスかココ(寝て起きたら鈴鹿と澪にいいように運ばれてた)
●鈴鹿謹製新コースに流される
アーッ
龍巳・咲花
【ワイハン】
夏に皆でウォーターパークでござるか!
今まで川で水遁の業ぐらいしかなかったでござるからな、こんな楽しそうな所に来るのは初めてでござる!
拙者も陽キャの仲間入りでござるな!?
所でこういう所の遊び方ってどんなのでござろうか?
なるほど、フロートでぷかぷかしたりサーフィンしたりするでござるか?
流れながらビーチボールをポンポンするのも楽しそうでござるな!
トスしたり偶にアタックしたりで、流れ弾に注意かもしれぬでござる?
競泳でござるか!
川登りで鍛えた水泳力を生かす時が来たでござるな?
休憩時間には焼きそばとかかき氷を食べるのもっぽいでござろうか?
一杯持っているなら分けて欲しいでござるよ!
「あ つ い で す ね !」
思わずオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が1音1音力強く言ってしまうほどに、キマイラフューチャーも夏だった。
白いビキニの水着に着替えていても、まだまだ暑さは厳しいから。
「夏に皆でウォーターパークでござるか!」
「暑い時期にプールでお仕事はありがたいですね!」
目の前に広がる数多のプールに、龍巳・咲花(バビロニア忍者・f37117)とアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)は目を輝かせる。
どこもかしこも水で満たされているだけでも涼し気で気持ちいいけれど。
その水が揺蕩うプールは、数えきれない程ある上に、大きさも形も流れも何もかもが全て違う多種多様。もはや共通点は、水がある、というだけではないかというくらい。
そしてそこで賑やかに遊んでいるキマイラ達の姿も輝いているから。
「こんな楽しそうな所に来るのは初めてでござる!」
咲花は期待に胸を弾ませた。
「今まで川で水遁の業ぐらいしかなかったでござるからな。
拙者も陽キャの仲間入りでござるな!?」
レジャー施設に縁がなかった理由がちょっと寂しいし。プールに来たことよりも、誰かと一緒に遊びに来たことに感動しているような気もしますが。
微笑ましくその様子を見ていたアリシアに、咲花はくるりと振り返り、首を傾げる。
「所でこういう所の遊び方ってどんなのでござろうか?」
「そうですね。私もあまりこういうところで遊んだ経験が無いのですが……」
だがその問いにアリシアが答える前に。
「キマフューのプール! 冷たくて気持ちいい!」
降ってきたのは国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)の歓声。
見上げれば、そこには屋根のようにウォータースライダーのコースがあって。半透明なそこを水と一緒に鈴鹿が流されて、結構なスピードで通過していった。
ぐにぐにとコースがカーブする度に聞こえてくる鈴鹿の笑い声に、おお、と咲花が感心していると。
『暑い日に、水浴びはいいですよ』
北・北斗(遠い海から来たトド・f20984)のテレパシーがどこかのんびりと伝わってくると共に。同じコースを滑り降りて来たのが見える。
特に慌てた様子はなく、なんか楽しそうではあるのだけれども。
何しろ見た目がトド。ごろごろ転がってるでっぷりとした海洋生物。
ゆえに、右に左に振り回されて流されていく姿は、助けてあげた方がいいのではないかと思ってしまう。
でも、猟兵はどんな外見でも住民に違和感を与えない存在だし。そもそも周囲にいるのは様々な動物特徴を掛け合わせたキマイラ達ばかりだから。
「この世界ならマリアやシュンバーも一緒に楽しめますし」
気付けば、アリシアの親友である狼のマリアも、北斗に続くように流れてきていた。
ちなみに、アリシアの愛馬、白い毛並みのシュンバーは、広々とした浅めのプールに足を踏み入れ、胸あたりまである水の抵抗をいい感じに負荷にしてトレーニングにいそしんでいるようです。
そんな動物達を眺めているうちに。
「やっぱり夏にいいね、こういうの! すごくハイカラだよ!」
水を滴らせた鈴鹿が、陽気にプールサイドを走ってきた。
意外と近い所にウォータースライダーの出口があったようで。咲花とアリシアに声をかけながらあっさり通過すると、向かう先はどうやら入口側。もう一度、楽しむようです。
『故郷には、こんなのないですからね。
鮫や鯱が出るから、別の意味でスリリングだったけどね』
北斗も超能力でふよふよ浮いて移動して。どうやらこちらも二回戦目。
その後からマリアも走ってきました。
アリシアと咲花を誘うように、足元でくるりと回った狼に、2人は笑い合い。
「へぇ、プールねぇ……」
そこにぽそり、と低い呟きが響く。
振り向けば、2人からは頭1つ分は高い位置で鋭い眼光をプールに向ける雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)が、腰に手を当てて立っていた。
見上げる少女達の視線に気付いているのかいないのか。黒地に緑色のラインを走らせたサーフパンツ姿で、兼光は、ゆっくりとウォーターパークを見渡して。
「実に良い」
難しい顔のまま、深く深く頷く。
「アースは年々この時期は暑くなるし、そうなるとこの依頼は『実に良い』」
そしてそのまま踵を返すと、プールには入らずに歩き出した。
「……何が『良い』のでござろうか……」
「さあ……?」
ぽかんとした咲花と、苦笑するアリシアは、遠ざかる背中を見送って。
「わーいプール……」
兼光が横を通った流れるプールに、寧宮・澪(澪標・f04690)がぷかぷか浮いていた。
「涼しくていいですよね……」
近寄ってきた2人にぼんやりした黒瞳が向けられる。
しかし、暗色のビキニが際立たせる白い肌は、力なく浮き輪掴まっていて。猫耳と猫尻尾がちょこんとついた暗色の浮き輪に突っ伏したその姿は、枕に抱き着くようにして布団に寝転がっているような、まったりしたもの。
視線だけで、顔を向けてはいなかったから、水の流れのおかげで澪の視界からすぐに咲花とアリシアの姿はフレームアウトした。
「で? このプールにアルパカ怪人が出るだァ……?」
くるりと回った浮き輪の動きで、次に澪の黒瞳に映ったのは、すぐ傍を流れていた汎用狩猟船『ワイルドハント号』。鬼火と共に顕現していた飛空艇は、その大きさをかなり減じていて。
ゴーストキャプテンである白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)が寝っ転がったらそれでいっぱいな、小さなフロートのサイズ。
「王の庭で相も変わらず不敬な輩も居たモンですわな」
そこに、良く言えば余裕たっぷりの、素直に言えば怠惰な体勢で、物九郎は起き上がりもせずににやりと笑い。
「ま、イイですわ。ワイルドハントの王が手ずから狩ってやりまさァ」
「おしおきですね……アルパカな怪人」
キマイラフューチャーで王を自称し、そしてその称号に違わぬ統治の腕を魅せる猫キマイラの宣言に、澪ののんびりした声が追いかけた。
まあその宣言も、寝っ転がったままでのもので。
本当なら、立派な海賊帽を被り、しっかりした生地の貴族服をも思わせる上着を肩にかけているところを、虎模様を思わせるハーフパンツな水着だけという気楽っぷり。
「ってなワケで行きますでよ、避暑に飢えた者共」
皆にかける号令も、文言だけなら荒海を制する益荒男のようだが。その口調はローテーションなままだから。
「おー……楽しみましょー……」
物九郎に応える澪の声も、まったりしたまま。
浮き輪と狩猟船フロートは、ぷかぷか流れるプールを流されていった。
またしても、ぽかんとそれを見送った咲花だったが。
「そうですね。オブリビオンが現れるまではめいっぱい楽しみましょう!」
そこに立ち上がったのはオリヴィア。
暑さに文句を言っているだけでは涼しくならないと悟ってか、びしっと指さしたのは、波のあるプール。
というか、上下に揺らされる程度の可愛い波ではなく、周囲に水害を起こしかけてるくらいの大波が、ざばんざばんとたってるんですが。どういう原理ですかこれ。
しかしオリヴィアは全く気にせず、サーフボードを調達すると。
早速、その腕前を披露した。
波の最下部でしっかり体重を乗せたターンを見せると、そこから巻き始めた波頭に乗り上げるように動きを変え。リッピングで綺麗な水しぶきを上げていく。白い肌と白いビキニ、そして大きく靡き揺れる長い銀色の髪が、しぶきの中で一段と煌めいていた。
「すごいでござるな!」
感動する咲花に、オリヴィアは誘うように笑いかけ。アリシアにも背中を押されて。
それではまずはと、咲花はアリシアと波のプールに挑戦することにした。
そうして、皆がそれぞれにプールを楽しみだしたところで。
ただ1人、水に入らなかった男が、兼光。
「プールに来たからにやぁ、やる事は『一つ』だ」
怖いほどに真面目な顔でプールの種類と配置を確認すると、プールサイドである程度スペースのある適当な場所を陣取る。
そこでキマイラフューチャーではお馴染みのコンコンコンを行えば。
出て来たサングラスを装着して。
「青い空(お姉さん)と白い雲(お姉さん)と眩しい太陽(お姉さん)を存分にウォッチするとしますか!」
何か間違った方向へやる気満々にコンコンコン。
パラソル。
長時間のウォッチには適度な日陰が大事ですね。よし。
ビーチチェア。
リラックスした姿勢でゆっくりウォッチできそうですね。まあよし。
テーブル。
ここまで揃ったらない方が不自然かもしれません。よしとしましょう。
と、許容できたのはこの辺りまでで。
遊ぶ気はないのに出て来たビーチボールを放り投げた後は。
ホットドッグにフライドポテト、トロピカルドリンクやクリームソーダ、かき氷、アイスクレープ、炭酸飲料、アメリカンドッグ、唐揚げに焼きそばにチュロスにワッフルと、出てくるのはドリンクとフードばかり。
「え? 場所間違えた?」
偏りまくったラインナップに、兼光が訝し気に首を傾げると。
通りがかった常連客らしいキマイラが見かねて教えてくれる。
「この時間帯からは食べ物ピックアップコンコンコンだぁ?!
ソ、ソシャゲのガチャじゃァねぇんだから」
頭を抱えた兼光は、どんどん飲食物に囲まれていく。
その割と近くのプールでは。
「ビーチボール? どこからでしょう?」
アリシアが転がってきたそれを拾い上げて辺りを見回した。
ビーチボールを探していたり、遊んでいたような人が近くにいないことを確認すると。
サーフボードと一緒に波に呑まれて、ぷはっと顔を上げたばかりの咲花へ、悪戯っぽく笑いながらぽんっと放り投げる。
「何でござるかっ!?」
咄嗟に弾いたビーチボールは、隣のプールに飛んで行って。
見ていたオリヴィアが、水上歩行の技能を使ってすたすたと拾いに行った。
手にしたビーチボールを、さてどうしようかと考えながら振り向いて。目を瞬かせている咲花を見ると。オリヴィアもにっこり笑って、ぽんっとトス。
今度は咲花はその動きに気付いていたから、レシーブで拾い上げる。
「あっ、ビーチバレーする?」
高く弾んだボールを見た鈴鹿が、思い付いたように手を打って。
「任せて!」
辺りに広がるハイカラさんの後光。
理想世界再構築型の光は、ユーベルコード『厭穢欣浄パラダヰムシフト』として、プールの1つをビーチバレーにいい感じに浮力なんかを程よく調整。
「よーし、流れ弾に注意するんだよ!」
そしてボールが水しぶきと共に空を行き来し始めた。
トスがぽんぽんあっちへこっちへ繋がっていく中で、たまにアタックからのレシーブが混じり、その度に楽し気な声が大きくなる。
その光景を、ぼーっと眺める澪は。
相変わらず流れるプールにぷかぷか浮いていて。ウォーターパークをそれなりにぐるっと回って戻ってきたところ。というか、循環型じゃなかったらそのままどこかにいなくなってしまっていたのではと思うくらい、流されるがままです。
とはいえ、途中で給水ポイントを見つけたら緩くコンコンしていたし。何だか食べ物が沢山あったプールサイドからはおやつを幾つかいただいていて。つまり、まったりするためだけには、ちょっとは動いていた様子。
どちらかというと、本当に何もしていないのは物九郎の方。澪と同じように流されるプールで、ワイルドハント・フロート号に寝っ転がったまま、本当に昼寝中です。まあ、趣味の1つですし。
陽射しの熱と水の涼感とがいい塩梅だし、流れが生み出す揺れもゆったり心地いいし。誰も起こす者がいないのをいいことに、快適な昼寝を満喫していた。
そんな2人に気付いた鈴鹿は。
オリヴィアにビーチボールをトスして渡すと、踵を返し。
満面の笑顔で流れるプールへ向かう。
元気に飛び込みそうな印象とは真逆に、そっと水の中へその身を沈めると。
「ここはぼくの領域。
さあ、コンコン式無限ウォータースライダーだよ!」
流れるプールの先に、ハイカラさんの後光を照らし、ビーチバレーのフィールドを創った時の要領で理想の世界を構築。
「わー……それじゃ、コンコンしましょうかー……」
早速その仕組みを理解した澪が、水を足しつつちょいちょいっと操れば。
フロートをこっそり押していた鈴鹿の動きが楽になって。
「猟団長をぼくのコースに御招待!」
物九郎だけが、出来立てスライダーに流れていった。
「流れる様子はちゃんとドローンで撮影しておいて、動画作っておくからね!」
「それは、楽しみですねー……」
そんな会話には気付かずに。
「こっちは何のプールでござるか?」
ビーチバレーを切り上げたらしい咲花達も、流れるプールにやってきた。
「流れのあるプールですね。
ああやってフロートに乗ってのんびり流されるのも楽しそうです」
アリシアが指し示す澪の姿に、咲花はなるほどと頷いて。
そこに、ざぶーん! と飛び込んだのは、オリヴィア。
「水が冷たくって気持ちいいですね!」
プールの作りよりも水そのものを楽しむ様子に誘われるように、アリシアと咲花も続いて水の中へと身を浸し。ゆらゆら流れる水の感覚を味わえば。
その流れにすごい勢いで逆行してくるトド。じゃなかった北斗。
『流れがあるとより楽しいですよ』
皆の間を縫うようにして、あっという間に上流側へと巨体が遠ざかっていく。
「凄いスピードでござるなぁ……」
流されながら見送る咲花の呟きに、ぽんっとアリシアが手を打って。
「せっかくみんなで来ているのですし、競争するなんてどうでしょう?」
思い付きにはすぐさま、賛同の声が上がった。
「競泳でござるか! 川登りで鍛えた水泳力を生かす時が来たでござるな?」
「私も負けませんよっ!」
「え? 今度は競泳コース創ればいいの?」
若干一名違う方向にやる気を見せていましたが、それは止めおいて。
「それでは……よーい、どん……」
適当な澪の号令に、4つの姿が北斗を追いかけるように上流へと向かっていった。
言い出したからには負けられないと綺麗なフォームを見せるアリシアに。
忍者として鍛えた修行の成果をと意気込む咲花。
オリヴィアに至っては、ユーベルコード『トリニティ・エンハンス』まで使って、聖なる水の加護を得ると水との親和性を増し、びゅんびゅん加速していく。
鈴鹿の後光も、今度は一体何をしているのか。
遊びというには結構ガチな様子です。
「皆さん、元気ですねー……あ、これおいしい……」
澪は、おやつを食べながら、まったりとそれを見送り。
こちらは流されるままに、浮き輪の上で眠そうな様子を見せて。
ぷかぷか。ぷかぷか。
ふと気付くと、先ほどおやつを頂戴した、何だか食べ物が沢山あった辺りにぐるっと戻ってきていた。
「おや……」
「ん?」
そこでようやく、食べ物に囲まれた兼光に気付く。
どこか諦めたような雰囲気でビーチチェアに座っていた兼光も、澪の小さな声を聞き留めてか、サングラス越しの鋭い眼光を向けてきて。
「……食うか?」
「ありがとう、ございますー……」
おやつが補充されました。
よく見ると、横のパラソルの下で、北斗がごろんと寝転がってます。
『ちょうどいい日陰ですね』
ひとしきり遊んだ後の休憩、といったところかと理解して。
澪もふわりと水から浮き上がり。浮き輪ごとふよふよ移動して。
スペースがあって食べ物が近い適当な場所に降りると。
「おなか空いちゃった。お昼にしようか!」
それを見ていたのか、ざばっ!と流れるプールから鈴鹿が上がってきた。
「あら、いろいろありますね」
「休憩時間に焼きそばとかかき氷を食べるのもっぽいでござろうか?
分けて欲しいでござるよ!」
「プールだけでなく、いろいろな楽しみ方があるのですね。これも社会勉強です!」
オリヴィアに咲花、アリシアに続いてマリアとシュンバーも集まってくる。
「しゃぁねぇ。みんな食え! 余ったら拠点に持って帰るぞ」
『あ、魚もらえますか』
何故か自棄気味の兼光の誘いに、早速北斗が、芸のように手を挙げた。
そして、ドリンクとフードを振舞い、コンコンコンでまた増やしたりするうちに。
「そういや、猟団長は……?」
「あ。忘れてたよ」
ようやくその不在に気付いた兼光の声に、鈴鹿がはっと思い出す。
トロピカルドリンクを飲みながらドローンの映像を確認すれば。
『……どこっスかココ』
鈴鹿謹製新コースに流された物九郎が。
さすがに異変に気付いて、目を覚ました、直後……
『アーッ』
「うん、いい動画になりそうだよ!」
鈴鹿は天真爛漫な笑みを満面に浮かべて頷いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
富士・日和
キャンプも楽しいけど、たまにはこういうレジャー施設に来るのも楽しいよね~
大きめな浮輪に乗って流れるプールに流されながらグルーっとパーク内を見て回ったり、波の出るプールでボディーボードを使って波に乗ったり揺られたり
この世界のコンコンっていうシステムも楽しいね
ここを叩くと焼きトウモロコシがでてきて~、ここを叩くとコーラが出てくるんだ! えっ? そっちはスナック菓子が出てくるの? 私にもコンコンさせて~
利用させてもらうんだから、給水のお手伝いも遊ぶ序にしておかないとね
わわわ! ここを叩くと噴水がでてきて、あっちはバケツがひっくり返したみたいな水が降ってくるんだー! すごーい!
コンコンコン。
ここを叩いてね、と書かれた、周囲と何ら変わりない場所に、興味津々で手を伸ばした富士・日和(キャンプ好きの人間・f37908)は。
自身の動きの直後、隣のプールの中央に吹きあがった噴水に目を丸くした。
「わわわ!」
わくわくしながら次のポイントを見つけて、再びコンコンすれば。
今度は、プールの上でバケツをひっくり返したかのように水が降って来る。
「すごーい!」
話には聞いていた、キマイラフューチャー特有のシステム。
プールを利用させてもらうんだから、遊ぶ合間に給水のお手伝いもしておかないと、と思った程度だったのだけれど。これはこれで楽しく遊べるから。
「この世界のコンコンっていうシステムも楽しいね」
面白くなった日和は、プールサイドをぴょこぴょこ歩いて、次々コンコンしていく。
「ここを叩くと焼きトウモロコシがでてきて~、ここを叩くとコーラが出てくるんだ!」
そのうちに、お店もないのに屋台エリア扱いされているところにもやってきて。
「えっ? そっちはスナック菓子が出てくるの?
私にもコンコンさせて~」
実践して確かめたり、コンコンしているキマイラ達を見て飛び込んでいったり。
早速舌鼓も打ちながら、出てくるもので楽しんでいたけれども。
次に出てきたのは、大きな浮き輪。
軽いけど、いきなり出てくると持ちにくいそれに、あわあわして。ぽろっと取り落とせば、浮き輪はプールサイドを転がって水に落ち、ぷかりと浮いた。
それを見た日和はハッとする。
ここはプールであるのだと。
改めて認識して。
ならばプールを楽しまなければと、日和は浮き輪目指してぴょこんと飛び込んだ。
「ぷはっ。冷たくて気持ちいーい!」
ちょうどそこは、ウォーターパーク内をぐるーっと回る流れるプールだったから。
折角大きめな浮き輪もあることだし、と乗っかって。日和はゆったり流されて水を楽しみつつ、パーク内を見て回ることにする。
「あのプール、滝がある! 岩山も登れるのかな~?」
「サーフィンしてるよ! かっこい~い。わたしもボディーボードで波乗りしたいな」
「ぐるぐる渦巻くプール……だけど、泡がすごいねー。洗濯機?」
「あっ、噴水が! ええっ、横からも!? すっごいアドベンチャー!」
「わわ、氷のお城!? 隣は冷たそうな……巨大かき氷プール、でいいのかな?」
「ここまでくると、普通の競泳プールの方が珍しいね」
本当に多種多様すぎる程のプールの数々に、そしてそこで楽しむキマイラ達の様子に。
日和はわくわく目を輝かせる。
「キャンプも楽しいけど、たまにはこういうレジャー施設に来るのも楽しいよね~」
にまにまと眺めを楽しみながら、次はどのプールに行こうかな、と考え始めた頃。
プールサイドに正座して、ひたすらコンコンしている同年代らしき少女を見つけ。
大きな帽子を被った姿に、泳がないのかな、と首を傾げた瞬間。
少女の周りに吹きあがる、幾つもの噴水。
高く低く、長く短く。バラバラに動く噴水は、踊るように躍動して。
煌めく飛沫で美しい芸術を創り上げていたから。
「すごーい!」
日和は浮き輪の上でパチパチと手を叩いた。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、アヒルさん、なんで私は今年もこっちにいるのでしょうか?
そして、なんで正座なんですか?
ふえ?今年はタイミングが命って、それに去年よりコンコンする場所がいっぱいあるのは何でですか?
ふえ?!アヒルさんの指示する場所をリズムよくコンコンしろって、いきなり言われても・・・。
ふぅ、どうにかできました。
ところでこのコンコンはいったい何なんですか?
す、ステージの演出って、そういうのは段取りを知ってるスタッフさんがやることじゃないですか。
ふええ、次はもっと大変って、ちょっと待ってください。
ふええ、待てないって、そんなぁ。
大小様々なプールが作られたそこは、去年以上に盛り上がっていた。
よく見れば、同じプールでも改良が加えられていたり、全く新しいプールが追加されていたりと、種類も数もバージョンアップしている模様。
ウォーターパークと呼ぶにふさわしい規模となったレジャープール施設を、去年に引き続いて訪れたフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、懐かし気に、同時に新鮮な気持ちで眺めたけれど。
「ふええ。アヒルさん、なんで私は今年もこっちにいるのでしょうか?」
やっぱり今年も水の中ではなく、プールサイドにいるのでした。
プールが変わっても給水システムは変わらないらしく。壁に描かれた丸いマークと、傍に建てられた『通りかかったらコンコンしてね。プールに水が供給されるよ』の説明看板はとても見覚えのあるもので。
その前にいるフリル、という図も去年と同じ。
尚、大きな帽子を被っているのと、手の中にアヒルちゃん型のガジェットがいるのは、去年どころかいつも通りの変わらなさです。
「そして、なんで正座なんですか?」
違うのは、壁の前に座らされたまま、まだコンコンコンが始まっていないことか。
どうせまた今年もプールでは遊べないのだろうと諦めつつも、ただ正座で待たされている状況に、足以上にフリルの心が痺れてくるから。
ガジェットに恨みがましい視線を向けるけれども。
「ふえ? 今年はタイミングが命、って……」
何か考え事をしているかのような、どこか上の空なガジェットの返答は、フリルにはよく分からないものだから。
困ったような情けない顔で、フリルは改めて、目の前の壁を見上げて。
「それに、去年よりコンコンする場所がいっぱいあるのは何でですか?」
去年は丸マーク1つだけの場所だったのが、今年は一気に10ヶ所程に増えているのに嫌な予感を覚えつつ、尋ねた。
説明看板は去年と変わらないから、この全てが給水システム……つまり、コンコンすればどこかから水が出てくるポイントなのだろうけれど、何故こんなに数があるのか。
しかしガジェットは、そんなフリルの疑問に答えるどころか、黙ったままで。
フリルも所在無げに、それでも正座し続ける。
そして、いつの間にかユーベルコードが発動していて。フリルが正座をさせられている時間に応じて次の行動の成功率が上昇したところで。
ガアガア。
「ふえ!? アヒルさんの指示する場所をリズムよくコンコンしろ、って……
そんな、いきなり言われても……」
急にガジェットが鳴き声を張り上げ。フリルを急かすと。
ガア。ガア。
「ふ、ふええ!?」
勢いに圧されて、フリルは指示通りに、あっちをこっちをコンコンコン。
まるで楽器を演奏するかのように、リズムを刻んで動いていく。
そして。
「ふぅ、どうにかできました」
ユーベルコードの効果か、指示を全てクリアしたフリルは、その場にへたりこみ。
「ところでこのコンコンはいったい何なんですか?」
不思議そうに首を傾げた。
水を補給するだけならば、リズムなんて関係ないはず、と当然のように思ったのだが。
自身の周囲で見事な噴水ショーが行われていたことに気付いていないフリルに、ガジェットは胸を張ってドヤ顔でひと鳴き。
「す、ステージの演出、って……
そういうのは段取りを知ってるスタッフさんがやることじゃないですか」
フリルは完璧に裏方のスタッフ扱いですね。
というか、ガジェットはこういう裏方作業が好きなんでしょうか。
さらに非難の声を上げかけたフリルの言葉を封じるかのように、ガジェットは移動指示の鳴き声を響かせ。
「ふええ、次はアドベンチャープール、って何ですか?
もっと大変になる……ってちょっと待ってください」
勢いに圧されて、フリルはプールサイドを移動し始める。
「ふええ。待てない、ってそんなぁ」
頑張れフリル。次のプール(の裏方作業)が君を待っている!
ガア。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
こう暑いと泳ぎたくなるね
水着が可愛らし過ぎるのが難点だけど
あら、華があって良いと思いますの
というか晶が選ぶものは地味すぎますの
泳ぎやすくて良いんだけどなぁ
と反論したら反証と言わんばかりに
可愛い服飾が増えるから黙っておこう
分霊の水着とか泳ぐ気ないよね、あれ
フロートに捕まりながら
流れるプールをのんびり流れてるよ
冷たくて気持ち良いね
他のお客さん達の様子を眺めたり
軽く泳いだりして涼んでよう
しばらく涼んだらジュースや食べ物を取りにいこうか
焼きそばとか暖かいのも欲しいね
ここに詳しい人がいたら助かるんだけど
教えてくれそうな人がいれば聞いてみよう
確保したら波打つプールのビーチチェアで
過ごしてる分霊と合流するよ
「へぇ、噴水ショーか。綺麗だね」
フロートに掴まりながら、煌めく水しぶきを見上げた佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はのんびりと呟く。
流れるプールに流されるままに、水の冷たさを楽しんでいた最中。唐突に始まり、そしてまた唐突に終わった涼しく楽しい余興に、周囲のキマイラ達も大盛り上がりで歓声と拍手を響かせていた。
その見事な光景と。
そして何より、浸かった水の心地良い冷たさに、晶は青い瞳を細め。
でも、水から出てた白い肌をじりじりと熱する夏に、眉を寄せる。
「こう暑いと泳ぎたくなるね」
ふと見れば、流れるプールの流れに逆らって、競うように泳ぐ少女達の姿もあって。
ちょっと混ぜて欲しいかも、と一瞬思うけれども。
「水着が可愛らし過ぎるのが難点だけど」
苦笑して、晶は、いつもの服と同じ黒色一色の水着を見下ろす。
三角ビキニの上からラッシュガードな上着を着ている、と簡単に言い表せば、まだ泳げる気がするけれども。肩の紐や胸の下にフリルが揺れているし、ボトムにも腰の後ろにスカートのような飾り布がふんわりついている。ラッシュガードも袖や裾にフリルをあしらった可愛らしいデザインで、フードにはウサギのような長い耳まであった。
水の中でふわふわ浮き揺れるその衣装は、確かに泳ぐには邪魔かもしれません。
「あら、華があって良いと思いますの。
というか、晶が選ぶものは地味すぎますの」
だがしかし。そんな晶に反論するのは、晶と瓜二つの容姿を持った少女。
実は晶と融合した邪神の分霊である彼女は、晶以上に泳げなさそうな、ドレスと言っても違和感がないくらいにひらふわした水着を纏っていて。プールサイドで、まだ濡れていないそのスカートを魅せるように、楽し気にくるりとその場で回って見せる。
(「泳ぐ気ないよね、あれ」)
可憐なその水着姿に、晶はそっとため息1つ。
機能性重視、というよりも、女の子らしいひらひらふわふわした服がまだ苦手な晶と対照的に、分霊はドレスもレースもフリルも大好きだから。
(「泳ぎやすくて良いんだけどなぁ」)
そう言ったら最後、反証と言わんばかりに可愛い服飾が増えるのは目に見えている。
ゆえに晶は、思いをぐっと飲み込んで。
流されるままに、分霊の傍を離れて、プールを流れていく。
「……気持ち良いね」
フロートに寄りかかるようにしながら、水の流れを楽しみ。様々なプールを様々に楽しむ人達を眺めながら、のんびりと涼んでいく中で。
ふと、飲食物に囲まれた男性の姿を見つける。
コンコンコンする度に増えるドリンクやフードを、何故か物が出てくるたびに落胆しているように見える男性を、ゆったりと青い瞳に映し。
(「しばらく涼んだらジュースや食べ物を取りにいこうか」)
焼きそばとか、暖かいのも欲しいと考え。暑さから逃れて涼をとっている中で、そんなことを思う自分に、苦笑気味に微笑んだ。
でも、これもプールの楽しみ方の1つと、ちょっと言い訳のように思いながら。
眺めるプールサイドに、友人達とわいわいコンコンしているテレビウムの姿も映る。
ここに詳しい人がいたら助かる、と思っていたけれど。ああやって一緒に探していくのも楽しいかもしれないと思い直しもして。
「……合流、しようかな」
晶は、フロートを押して泳ぎ出しながら、分霊の姿を探した。
波打つプールのビーチチェアで優雅に過ごしていた分霊を見つけるまで、そう時間はかからない……
大成功
🔵🔵🔵
セシル・バーナード
黒のブーメランパンツにヨットパーカーで。
プールだよ、プラチナちゃん。今年はペンギンいないから、思いっきり楽しもう!
代わりにアルパカいるけど。
プラチナちゃんは肌色のマイクロビキニ。ボトムの横は紐で結んであるようなの。
さ、色々回ろう。
わー、波のあるプールは見た事あるけど、洗濯機みたいな渦巻くプールは初めてだ。
看板に「心まで真っ白にします」って書かれてる。
あの泡は水だけか洗剤混じってるのか?
とにかく入ろう。プラチナちゃんとしっかり手を繋いで。
これ、渦の逆方向に進むの無理だね。
プラチナちゃん、こっちへ。
え、水着の紐が上下とも切れた? じゃ上がる時にパーカー貸してあげる。今はプラチナちゃんで楽しませて。
「プールだよ、プラチナちゃん」
誘うように笑ったセシル・バーナード(サイレーン・f01207)は、銀髪の少女の白く細い手を引いた。
黒のブーメランパンツにヨットパーカーを羽織った姿はとても楽しそうだけれども。
手を引かれた少女は、どこかもじもじと、周囲を気にするように身を竦めていて。
「どうしたの? 水着姿が恥ずかしい?」
「……はい」
おずおずと頷いた少女の水着は、艶やかなその肌によく似た色合いの、生成りの生地でできたマイクロビキニ。トップは首の後ろと背中で、ボトムは腰の左右で、ちょっと大きめなリボンに結んである。
布面積の狭さと色とで、裸体をそのまま晒しているかのようにも見えてしまう上に、普段は下ろしている長い銀髪を高い位置に結い上げているから、隠すものは何もない。
少女が困惑するのも当然だと思われるのだが。
「去年、ペンギンのコンテストでも着たよね?」
「そう、ですけど……何回着ても慣れないというか……」
「今年はペンギンいないから、大丈夫。思いっきり楽しもう」
「ええと、不安なのはペンギンじゃなくて……」
「まあ、代わりにアルパカいるけど」
「……え? 何ですかアルパカって。どういうことですか?」
予想外な単語に、もじもじ俯き気味だった少女が驚きに顔を上げたところで。
セシルはにっとどこか悪戯っぽく、しかし妖艶な魅力を持った笑みを返し。
「ほら見て。この看板、心まで真っ白にします、って書かれてる」
近くのプールを指差した。
プールらしからぬ案内文言に、少女はまた首を傾げて、覗き込むと。
そこはぐるぐると水が渦巻いている円形プール。
「わー、波のあるプールは見た事あるけど、渦巻くプールは初めてだ」
セシルも珍し気に、楽し気な声をどこか呑気に上げる。
しかし少女には、疑問ばかりが浮かんでいるようで。
「……あの、めちゃくちゃ泡なんですけど……」
「そうだね。白い泡がいっぱいだね」
「何だか、巨大洗濯機、みたいな……」
「水だけであの泡ができるのかな? やっぱり洗剤が混じってる?」
「これってプールなんですか!?」
「プールじゃないかな」
困惑を深める少女に、だがセシルは変わらずにこにこと、何でもないことのように、むしろ少女の反応を面白がるかのように答えて。
「とにかく入ろう」
少女としっかり手を繋いで、泡立つ渦巻きプールに飛び込んだ。
「わあ。しっかり泡だね」
「わっ、流れが……」
「うん。早い早い。これ、渦の逆方向に進むの無理だね」
2人は泡と一緒にぐるぐると、プールにしては強い渦に流され、回されて。
少女も、泡と水で身体が隠れるのに少し安心したのか、好奇心に満ちた驚きと、初めての体験への喜びを見せるようになり。
本当に洗われているかのような強い水流を、楽しんでいたのだけれど。
「あっ……」
不意に、少女が慌てた声を上げた。
「どうしたの? プラチナちゃん」
セシルが尋ねても、少女は辺りを必死に見回すばかりで、分からないから。
「こっちへ」
繋いでいた手をぐいっと引き寄せ、その身体を抱きしめるように近づけば。
少女の首元に見えていたはずの、肌色のビキニの紐が、ない。
もしかして、と繋いでいないもう片方の手を少女の背中に回すと。予想通り、滑らかな肌を伝った掌に紐らしきものは当たらず。腰へと下ろしてみても同様。
どうやら、激流で、水着の細い紐が解けたか切れたかしてしまった模様。
セシルの確認に身体を強張らせている少女に、くすりと微笑んで。
「上がる時にぼくのパーカー貸してあげる」
水の中にいるうちは見えないから大丈夫と安心させると。
抱き寄せた柔らかな身体を撫でながら、セシルはその耳元で熱く囁く。
「だから今はプラチナちゃんで楽しませて」
そして。
看板に書かれていた通り、少女はプールの中で、心を真っ白にされていった。
大成功
🔵🔵🔵
駒鳥・了
よっしゃー!
夏だしオレちゃんことアキでめっちゃ楽しむ!!
まずは急カーブありのスライダー!
ビーチボードの先端を凍らせてから乗ったらめっちゃ滑り良くなるかなあ?
コースアウトしても猫の手でしゅぱっと戻ればいーしね!
ゴールでたっぷり水に浸かったら次はアスレチック!
さっきはスライダー自体に目が行ってたケド
今度は岩場の頂上から一旦ココの状態を一望してみよ
ん?なんか見覚えのある赤茶いしっぽと黒髪少女
行く先は…ははーん?
ちょーっと脅かしに行こっかなー?
と思ったけど!
焼きトウモロコシとチョコバナナとかき氷が
オレちゃんの行く手の邪魔をする!
まーいっか!
折角だしコッチから堪能しちゃおっと!
アドリブ絡み歓迎!!
「よっしゃー!」
ウォータースライダーのコースから、元気な駒鳥・了(Robin & Rook・f17343)の声が流れ響いてくる。
急流を思わせる水音と共にそれを聞くだけで、急カーブだらけのスライダーを目一杯楽しんでいるのが伝わってくるというもの。
しかも了は、ビーチボードを使っているから滑りがよく。さらに、ボードの先端をちょいと凍らせる工夫を凝らしていたから、つるつるひやひやでスピードアップ!
勢いがつきすぎたせいで、上が空いた半円形のコースから、カーブを曲がり切れずに飛び出してしまうけれども。
「いやっほー!」
コースアウトすら楽し気に歓声を上げ。
先端に三ツ爪型フックのついた鋼糸『猫の手』をしゅばっと投げてコースの縁にひっかけると、静音電動リールを巻きあげてぐいんとコースに戻っていく。器用な。
そうして、最後までスライダーを滑り切ってゴール。
ばしゃん!
大きな水音と共に、了の身体がプール深くに沈めば。
しばしの静寂のあと。
ざばっと水から飛び出すかのように顔を出して。
「めっちゃ楽しかった! 夏だね!」
けらけら笑いながら、今度はプールを泳ぎ出した。
ウォータースライダーのゴールになっているからだろう、波があったり渦巻いていたりといった仕掛けのないごくごく普通のプールだけれども。逆にそれが小休止に丁度いい。
泳ぐというより、半ば浮かんでいる状態で、たっぷりの水をのんびり楽しむと。
「よーし。次はアスレチック!」
またすぐにエンジンがかかって、目を付けていた次のプールへと向かっていく。
それは、大きな岩山が真ん中に聳え立っているプール。見上げる程の高さのごつごつした岩肌は、スポーツクライミング用の壁のような安全面にも考慮されたでこぼこで、キマイラフューチャーらしくビビッドな色でカラフルに魅せている。
岩山の頂上からは常に水が流れ出ているけれども、濡れた手元や足元は思った以上に滑らず安定していて。水の感触を楽しみながら登れるようになっていた。
ちなみに、ぐるっと回った反対側は、水量が増えて大きな滝になっているので、滝つぼに落下するスリリングな遊びが楽しめるようです。
そんな岩山に、先ほどは途中で見かけたスライダーへ寄り道してしまったけれども、今度は真っ直ぐ辿り着くと。了はひょいひょいと登っていく。
気持ちいい水しぶきも楽しみながら、結構な高さを、あっさり登り切って。
「到着ー」
にっと笑って宣言すると、振り返る。
「おおー! やっぱり。いい眺めだね!」
眼下には、数々のプールがひしめいていた。
ウォーターパークを一望できる見事な光景を、了は、目の上に片手を添えてぐるりと眺め。プールの数に、種類に、そしてそれらが詰まった施設の広さに、感嘆の声を上げる。
施設を余すことなく楽しもうと意気込んでいた了だから、どの順番で制覇してやろうかと、数多のプールに目星をつけていっていたのだけれど。
「ん? なんか見覚えのある赤茶しっぽと黒髪少女、発見!」
見知った双子の姿を見つけ、じっとその動きを追うと。
2つの影が向かう先には、聳え立つ氷のお城。
少し距離があるので正確にはわからないけれど、お城の一番高い尖塔が、了が今いる岩山よりも高いかもしれないくらい、でかい。ウォータースライダーのコースが周囲をくねくね飾るように通っていることも相まって、すごく豪奢で綺麗な、多分、この施設のランドマーク的な建物。もちろん、本物のお城のように人が中に入って遊べそうだ。
そんなお城と、向かう双子とを眺めた了は。
「ははーん? ちょーっと脅かしに行こっかなー?」
にやっと悪戯っぽい笑みを浮かべると。
くるりと踵を返して、滝つぼに飛び込んだ。
「やっほー!」
ざぶーん!
恐怖も躊躇いもなく、あっさり岩山を降りた了は、また沈んだ水の中からぷはっと顔を上げると。すぐさまプールサイドに上がって。
目指すお城へ一直線!
「と思ったけど!」
その途中で通りかかったのは、コンコンコンな屋台エリア。
キマイラ達が楽し気に壁を叩き。そして何より、美味しそうに食べ物や飲み物を楽しんでいるところだったから。
「焼きトウモロコシとチョコバナナとかき氷が、オレちゃんの行く手の邪魔をする!」
岩山なアスレチックプールに向かう途中で見かけたウォータースライダーに方向転換した時と同じくらいの唐突さで、ぎゅいん、と進行方向はまたもあっさり変わり。
「折角だしコッチから堪能しちゃおっと!」
了は、美味しい夏に飛び込んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16555)と
1年ぶりのウォータースプラーシュ!
ん、まつりん泳ぐ前に準備体操
体操しつつぐるっと景色を見渡す
ふふ、あひるプール拡張されてる
噴水プールは魔改造されて四方八方からの噴水を掻い潜って進むアドベンチャー仕様に
ソリ達いる?
会えたらいつも通り挨拶して遊びに誘うね
泳ぎは相変わらず得意でないので浮き輪は必須
泳ぎ競走は応援に回り、手に肉串沢山持って観客にも振る舞うね
誰を応援する?わたしはやっぱりまつりんを
まつりん、勝てばお肉あげる
あ、見て
あれは巨大かき氷プール、そしてそびえ立つ氷のお城
のぼりには「氷の城のお化け屋敷」と…
こ、これは夏の催してんこ盛り
ん…、入らざるを得ない(ごくり
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)、あのときのプールだって!
ソリたち、いるかなー♪
おおー、豪華になってる!
お店も出したんだね、カキ氷食べたい!
串焼きもあるんだ、お肉多めでお願いね!
やほー、ごぶさた!
(今年はセーラーベースの水着)
ソリたちも背伸びた?
おいらも、160cmだよ!(もうちょっとで)
去年は三次元プール(?)で遊んだっけ。
今回は普通に泳ごうかな、一緒に行くー?
(アンちゃんにすちゃっと浮き輪装着)
クロール、平泳ぎ、背泳ぎ。
サムエン特有、ニンジャ泳ぎもできるよー♪
競争する? ハンデあげてもいいよ♪(にぱり)
わわ、テーマパークになってる?
……お化け屋敷じゃないよね、だいじょぶだよね……(びくびく)
ひしめき合う沢山のプールを見回して。木元・杏(アルカイックドヤ顔・f16565)は、こくんと1つ頷いた。
「1年ぶりのウォータースプラーシュ!」
「アンちゃん、あのときのプールだって!」
双子の兄である木元・祭莉(まつりん♪@sanhurawaaaaaa・f16554)も、杏の隣で楽し気にきょろきょろ。
「おおー、豪華になってる!」
去年の記憶と比べながら、どのプールから行こう、なんて考えていると。
「ん。まつりん、泳ぐ前に準備体操」
今すぐにでも飛び出していきそうな雰囲気に、杏が慌てて声をかける。
そうして2人、プールサイドで同じ動きをしていくけれど。
やっぱりプールが気になるから。
体操の動きに合わせてあちらをこちらを眺めて、杏もわくわく微笑む。
「ふふ、あひるプール拡張されてる」
あひる型ボートで流れていく大型スライダーはコースが伸びていて、ゴール地点のプールには、小さなあひるが無数に浮いている賑やか仕様になっているし。
「三次元渦巻きプールは何か泡立ってるよ」
流れの勢いで空中に跳ね上がり、三次元的に楽しんだ思い出の渦では、何故か泡がぐるぐる回っていて、去年以上に洗濯機のよう。
「噴水プールは魔改造されてる」
水と一緒に吹きあげられたプールは、下からだけでなく、四方八方から噴水が出てくるようになっていて。噴水を掻い潜って進むアドベンチャープールに発展していた。
さらに、見たことのない新しいプールもちらほらあって。
身体が、体操によるだけでなく期待で温まっていくところで。
「お店も出したんだね。カキ氷食べたい!」
祭莉は、プール以外の施設にも着目。
「串焼きもあるんだ」
「……! 肉……っ!」
気付いた瞬間、杏はお店エリアに突撃していた。
まあ、ほとんど体操は終わってましたしね。準備完了ということで。
コンコンコンで出したお肉を配っている、店員らしき牛のキマイラに、杏がきらきらした金瞳を大きく見開いて向けていたから。
「おっちゃん! お肉多めでお願いね!」
「おう、任せとけ食べ盛り!」
陽気に声をかければ、ずいっと差し出される肉串2本。ちゃんと特盛。
「はい、アンちゃん」
「ん」
兄妹で仲良く1本ずつ、美味しいお肉をいただきます。
舌鼓を打つ中で、そういえば、と思い出したのは祭莉。
「ソリたち、いるかなー♪」
去年もプールで再会し、そして今年も来ていると聞いていたテレビウムの友人を。
もぐもぐしながら、先ほどとは違う視点できょろきょろすると。
「ん、いた」
先に見つけた杏が、肉のなくなった串で、その方向を指し示した。
もう食べ終わったんですね。
そして双子は、揃ってプールサイドを駆け行くと。
「ソリ、こんにちは」
「やほー、ごぶさた!」
「あっ……」
元気な挨拶に、振り向きはにかむテレビウムの少年。
「コートとデイン、リディも。こんにちは」
「やっぱりー。猟兵、いたねー」
「うむ。久しいな」
「これでもっともっと楽しくなるっしょ」
杏は、自身も顔見知りの、ソリの友人達にも挨拶。
銀色の髪のネコキマイラな少女も、体格のいいホワイトライオンのキマイラも、ジャングルの奥地こそが似合いそうなヒーローマスクの少女も、陽気に2人を出迎えた。
そこで祭莉はえっへんと胸を張ると。
「ソリたちも背伸びた? おいらも、160cmだよ!」
正確にはまだ届いていないけれど、ちょっと誇張して成長を主張すれば。
「わー、本当だー。高くなってるー」
「私らと変わらないっしょ」
「でも、まだまだデインには届かないねー」
「きっとすぐ追いつくっしょ」
「うむ。楽しみだな」
わいわい盛り上がる背比べ。
それをぽかんと見上げていたソリは。テレビウムゆえに小柄な少年は。
楽しそうな様子に画面を瞬かせて、そのうちにふふっと微笑んで。
その目の前に、ずいっと差し出される杏の手。
「一緒に泳ごう」
しっかり浮き輪を準備した杏と共に、プールへと入っていった。
「おいらも泳ぐー!」
「わーい!」
「うむ」
「飛び込むっしょ!」
他の皆も次々と、プールに飛び込んで来たかと思うと。
クロール、平泳ぎ、背泳ぎと、祭莉は普通に見事な泳ぎを見せた。
「すごい……」
「えっへん。あ、サムエン特有、ニンジャ泳ぎもできるよー♪」
杏と一緒に浮き輪で浮いていたソリが、ぽつりと感嘆の声を零したのに、祭莉はにぱりと笑って、今度は不思議な泳ぎ方を始めたりして。
「うむ。見事だな」
「競争する? ハンデあげてもいいよ♪」
「おおっ、猟兵に挑戦、っしょ!?」
「わー。楽しそうだねー。やってみたい!」
そのうちに始まっていく競泳大会。
バシャバシャ遠ざかっていく姿を、ソリは憧れるように見送って。
「ソリ、見学?」
「えっ……あ、うん」
残っていた杏に声をかけられ、慌てて頷く。
ちなみに杏は、まだまだ泳ぎの練習中なので不参加です。
「誰を応援する?」
話題にと聞いてみるけれど、きっとソリは誰かを選んだりしないだろうから。
「わたしはやっぱりまつりんを」
杏は率先して答えを告げ。
ぶんぶんと手を振り、声を上げる。
「まつりん、勝てばお肉あげる」
もちろんその手には肉が刺さった串が握られていて。
いつの間に、とソリが驚いていると。
「観客は勝たなくてもお肉」
「あっ、ありがとう……?」
杏はソリにその1本を渡し。
「おかわりを」
「よっしゃ」
プールサイドから、牛キマイラがすぐに肉串を差し出していました。
両手に肉を受け取った杏は、満足そうに頷くと。
「他の皆にも、是非」
「任せとけ!」
牛キマイラのおっちゃんは、杏の要望を叶えるべく、肉串満載で動き出す。
肉を片手に、その光景を呆然と眺めていたソリだけれど。
そこに遠くから聞こえてくる歓声。
「いっちばーん!」
「うむ。速いな」
「さすがー。全然追いつけなかったー」
「この身体だとやっぱり遅いっしょ……」
どうやら決着がついたようで、祭莉や友人達が戻って来る。
勝った祭莉には、杏が笑顔で出迎えて。
「ん。まつりん、おめでとう」
「アンちゃんありがとー」
祝福の言葉だけが贈られました。
2本あった肉串? すでに串だけになっていますよ。
果たされぬ約束にソリはおろおろするけれども。
祭莉は、そんなやりとりがあったことすら忘れているような、あっけらかんとした陽気さで、別のプールに目を奪われて。
「おおー。でっかい」
「あれは、巨大かき氷プール」
こくんと頷いた杏と共に、早速、新しいプールに挑戦。
ウォーターパークのランドマークになりそうなくらい大きな氷のお城がそびえ立つそのプールは、かき氷のような細かい氷に囲まれていて、とってもひんやり。
しかも、お城の入り口が開いていて。中へ続く道が見えるから。
「わわ、テーマパークになってる?」
祭莉が驚きながらも中を覗き込む。
その間に杏は、近くののぼりに『氷の城のお化け屋敷』と書いてあるのを見つけて。
「こ、これは夏の催してんこ盛り。
ん……入らざるを得ない」
ごくり、と唾を呑み込んだ。
「え? アンちゃん、入るの?
……お化け屋敷じゃないよね、だいじょぶだよね……」
実はビビりな祭莉が、狼耳をペタンとさせてきょろきょろ視線を彷徨わせる。
杏は、さり気なくのぼりを背にして、祭莉から見えないように立つと。
「ん。大丈夫」
しっかり頷いてみせて。
手を繋いだ双子の姿が氷の城の中へ消えていくのを、ソリは何も言えず見送った。
2つの背中が見えなくなってから、入り口近くに案内看板があるのに気付く。
そっと近寄り、読んでいくと。
「ええとー、中に氷の彫像が並んでるんだってー。お化けの」
「うむ。芸術的だな」
「じゃあ、脅かし役とか、びっくり箱な仕掛けはないっしょ?」
「そう、じゃないかな……」
後ろから覗き込んだ友人達とそんな会話をした、瞬間。
「うわあぁぁん! 出たー!」
「……っ!」
城から飛び出して戻って来る祭莉と杏。
祭莉は完全に泣いているし、杏の表情もどこか引きつっていて。
看板から想像していたのと全く違う反応に、ソリ達が驚いていると。
「やったね! オレちゃん、大成功!」
双子の後から、別の猟兵が、けらけらと楽しそうに笑いながらやってきていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『怪人アルパカスプラッシュ』
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POW : シンクロナイズドポージング
【量産怪人アルパカマッスルブラザーズ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD : 水も滴るいい体
全身を【力ませて筋肉を鋼の如き硬度】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : アルパカウォータースライダー
戦場全体に、【ウォータースライダー】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:ヤマトイヌル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ニィ・ハンブルビー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
流れていたり、波があったり、渦巻いていたり。
パーク内を一周しているものもあれば、こじんまりと小さなものもあり。
岩山が聳え立っていたり、氷の城が建っていたり。
幾つもの噴水や、大きなバケツを定期的にひっくり返すようなギミックがあるものも。
本当に様々なプールがひしめき合うウォーターパーク。
「次はどのプールに行こうかー」
「うむ。迷うな」
「全部は泳ぎきれない気がするっしょ」
わいわい盛り上がる友人達と一緒に、テレビウムのソリもそんな施設を楽しんで。
「スプラーッシュ!」
「……あれ?」
不意に聞こえた変な声に振り返ると。
そこには、アルパカが、いた。
いや、正確にはアルパカではない。普通のアルパカはボディースーツを着ないし、ムッキムキの見事な肉体でポージングもしないし、多分プールには来ない。
つまり、アルパカではなく、アルパカの頭部を持つ怪人は。
幾つかのポーズを取った後、両手を腰に当てて胸を張り。
やたら大仰な様子で、プールを見渡した。
「プールあるところアルパカスプラッシュあり……」
そして満足気に頷くけれども。
すぐに首をもふもふっと左右に振って。
「だがやはり、プールといったらスプラッシュ。
つまり……これだ! アルパカウォータースライダー!」
いきなりユーベルコードを発動させた。
それは、ウォータースライダーで出来た迷路を作り出すもの。
ウォーターパークの全てのプールを、勝手にチューブ型のウォータースライダーに創り替えた『怪人アルパカスプラッシュ』は、今度こそ、心の底から満足したように頷く。
「うわわわ!?」
「ソリが向こうに流されたよー」
「うむ。はぐれたな」
「言ってるデインもあっちに流されてったっしょ!?」
ソリ達はもちろん、様々なプールで遊んでいた全てのキマイラ達がウォータースライダーにいつの間にか放り込まれていて。分岐が多くやたらと入り組んだ長い長いコースを、水と共に勢いよく流されていく。
迷路のようなスライダーゆえに、ソリと友人達は、そして他のキマイラ達も、バラバラに分かたれてしまった。
そしてそれは、猟兵も例外ではない。
強制的にウォータースライダーに放り込まれ、どんどん流されていく。
その様子を眺めてから、アルパカスプラッシュは、無駄にポージングを取ると。
「さあ、皆でスプラーッシュしようではないか!」
自身もスライダーのコースに身を躍らせた。
キマイラ達や猟兵を閉じ込めたような形になったウォータースライダーは、アルパカスプラッシュを倒せば元のプールに戻る。
しかし、怪人のスライダーは、ウォーターパーク全てを使った超長コース。
迷路のように分岐も多く、複雑怪奇に入り組んでもいるから。
狙った相手に出会うことがまず難しい。
チューブ型で、半透明な壁に上下左右を囲われているため、コースから飛び下りたり空を飛んだりしてコースから脱出することはできないし。
かなりの硬度をもつため、スライダー自体を壊すこともできない。
水の流れが強いので、コースを逆流することも難しそうだ。
そんな中で、嬉々としてウォータースライダーの中をぐるぐる流れまくって移動し続けているアルパカスプラッシュを倒す……
多分、見つけて出会えれば、倒すこと自体は難しくないだろう。
見つけて、出会えれば。
長い長い長いスライダーの中で、猟兵達の奮闘が、始まる。
「スプラーッシュ!」
セシル・バーナード
おっと、プラチナちゃんの水着を買う前に次の|仕掛け《プール》かい?
おお、滑る滑る。あ、パーカー飛んだ。
全裸のプラチナちゃんを、あちこちの目が追ってるよ。ぼくは見せてあげてもいいと思うけど、見られたくなかったらぴったりぼくにくっついてね。
うん、プラチナちゃんの身体、温かくて気持ちいいな。
しかし、どこまで滑るんだろうな、これ。ん、アルパカ? とりあえず空間断裂投げとこう。
今はプラチナちゃんを堪能するので忙しいんだ。アルパカなんかに用はないよ。
終わりの無いようなスライダーの中でプラチナちゃんと二人きり。悪くないシチュエーションだね。
大丈夫だよ、プラチナちゃん。ぼくと一緒にお屋敷へ帰ろう。
セシル・バーナード(f01207)が、いつの間にかウォータースライダーのコースにいると気付いたのは、壁をコンコン叩こうとした直前だった。
「おっと、次の仕掛けかい?」
また水に濡れる感覚と、そこからぐんっと急流に流される勢いに、さすがに少しは驚くけれど。
「おお、滑る滑る」
セシルは割と気楽に状況を受け入れ、むしろ楽し気に流されていった。
だがしかし、共に居た銀髪の少女は、セシルとは真逆に大パニック。
「えっ!? あれっ、これは? 一体、どういう!?」
わたわたと必死に暴れて。状況に対応しようとすることもできず。
ただ先ほどの、コンコンコンスポットへ戻りたいと必死にあがいている。
あそこで手に入るはずだったのは、水着。
そしてそれをコンコンしようとしていた理由は……
「あ、パーカー飛んだ」
「きゃあぁぁぁ!?」
セシルから借りていた上着が、ウォータースライダーの勢いで脱げて。そして丁度差し掛かっていた分岐点で、少女とは違う方向へ流されていく。
上着を失った少女の格好は、全裸。
先ほど、渦巻くプールの中で、少女の水着は無くなってしまっていたから。
「あちこちの目がプラチナちゃんを追ってるよ」
「ひっ……み、見ないでくださいぃぃ! こういう自由はいらないですぅぅ!」
「ぼくは見せてあげてもいいと思うけど、見られたくなかったら……」
「どっ、どうすればいいんですかぁぁ!?」
「ぴったりぼくにくっついてね」
少女に向けられた笑みは、天使のものか悪魔のものか。
それすら考えられない程の極限にあった少女は、言われたままに、反射的にセシルにぎゅっと抱き着いた。
「見えませんか!? これで見えませんね!?」
「うん、プラチナちゃんの身体、温かくて気持ちいいな」
涙目で必死な少女を優しく抱きしめ返して、セシルは微笑む。
そして2人は一緒にウォータースライダーを滑っていき。
全く以ってコースの終わりが見えないことに気付く。
「しかし、どこまで滑るんだろうな、これ」
さほど危機感なく、セシルが首を傾げると。
腕の中の少女が、ようやく少し余裕ができたことで、ウォータースライダーに流される直前に遠目で見た光景をはっと思い出し。
「そ、そういえば、変なアルパカがいましたよね。
あれを倒さないといけないのではなかったですか?」
頑張って、戦いですね、と進言するけれど。
「そう?」
セシルはそれをさらりと流して。
「今はプラチナちゃんを堪能するので忙しいんだ。アルパカなんかに用はないよ」
「うひゃっ!?」
少女を抱きしめた手が艶やかに動く。
一応『怪人アルパカスプラッシュ』を見かけたら空間断裂のユーベルコードを飛ばそうと思っているとは欠片も見せないまま、少女と肌を合わせ。
「終わりの無いようなスライダーの中でプラチナちゃんと2人きり……
悪くないシチュエーションだね」
耳元で囁かれる声に、少女の顔が赤く染まっていく。
「大丈夫だよ、プラチナちゃん。ぼくと一緒にお屋敷へ帰ろう」
帰るまでの間にも、また少女にセシルとの思い出が刻まれていった。
大成功
🔵🔵🔵
富士・日和
うっはは~凄いな~
いつの間にかでっかいウォータースライダーの中にいる~!
これもこの世界特有の現象なのかな?
まあこれもキャンプと同じ! 要は楽しんだもの勝ちだよね!
うっひゃ~、水流すごーい! スピードもすごーい! でも覆われてるから怖くないし安心設計だねぇ
おぉ! 分岐点もあるんだ~本格的ぃ~
まるでウォータースライダーの迷路みたいだね!
あ、他にも流されてる人いる~やっほ~!
(呑気に楽しみながら流されています。UCは本人が無意識に垂れ流している状態で、もしかしたら誰かが戦っている時にアルパカスプラッシュさんへ影響を及ぼすかもしれません)
「うっはは~、凄いな~」
歓声と共に富士・日和(f37908)が流されていく。
それは、先ほどまで楽しんでいた、穏やかに流れるプールではなく。
突如として現れた、急な流れのチューブ型ウォータースライダー。
「いつの間にかでっかいウォータースライダーの中にいる~!
これもこの世界特有の現象なのかな?」
いきなり変わった環境に、今回が初めてのキマイラフューチャーである日和は、この世界を勘違いしかけてしまうけれども。そんなことないです、と言い切れないのが困ったものです。ほら、猟書家が変な異空間に連れてったりもするしね。
そうでなくても、日和も体験したコンコンコンシステムとか、メンテナンスルートを解放すると世界が割れるシステム・フラワーズとか、ありえない仕組みがいっぱいだから。
深く考えたら負けな気がします。
「まあこれもキャンプと同じ! 要は楽しんだもの勝ちだよね!」
考え抜いた末に辿り着いたのか、それとも単純にあっさり受け入れただけか。
どちらにしろ、すごい度量と感嘆する適応力を見せた日和は。
「うっひゃ~、水流すごーい! スピードもすごーい!
でも覆われてるから怖くないし安心設計だねぇ」
外に放り出される心配のない、でも見方によっては閉じ込められた状況で、心の底から楽しそうに、わくわくした笑みを浮かべていた。
凄いスピードで、右に左に曲がりながら流されて。
半透明なコースゆえに、そこからうっすら見える景色も眺めてみたり。
岩山とか氷のお城とか、ランドマーク的なものの周囲をぐるんぐるん回るようなコースもあったから、さらに日和の歓声が高くなった。
「おぉ! 分岐点もあるんだ~。本格的ぃ~。
まるでウォータースライダーの迷路みたいだね!」
そして、通常のスライダーにはない、入り組んだ分岐。
それにより、延々とコースの中に閉じ込められる形になっているのだけれども。
心の底から純粋に日和はこのウォータースライダーを楽しんで。
楽しいあまりに、無意識にユーベルコードが発動していた。
それは、楽しいことへのブームを作り出し、それに囚われた下流に居る者の回避率を激減させるものだったから。
「スプラーッシュ!」
「あ、他にも流されてる人いる~。やっほ~!」
流れゆく先に『怪人アルパカスプラッシュ』の姿を見つけて呑気に手を振れば。
ふっとこちらを向いた怪人に、ちょうど合流していた脇の分岐道から大きな帽子を被った少女が飛び出し、避ける間もなく、出会い頭にぶつかった。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふえ?私達はアドベンチャープールに向かっていたはずなのに何でいつの間にウォータースライダーで滑っているのでしょうか?
もしかして、この展開は幹部猟書家さんでは?
でも、違いますよね。
今日はあのテレビウムさんに会っていませんし、いつものように広いところが逆に狭い所になっていますから違いますよね。
水の勢いが強いから戻ることもできませんし、このまま流れていれば大丈夫ですよね。
そういえば、水の勢いが強いということは戻るどころか止まることなんてできない訳ですし、突然前に誰かが現れたら……。
「ふえ?」
急激に流れていく視界に、フリル・インレアン(f19557)は赤瞳を瞬かせた。
プールサイドを踏みしめ歩いていたはずの足を動かす必要もなく。座った姿勢なのに、景色が勝手に動いていく。さらには、コンコンするばかりでまだプールに入れもしていなかったのに、空模様のワンピースな水着が濡れているし。浅いとはいえ、水の中にいる状態になっていたから。
「私達はアドベンチャープールに向かっていたはずなのに、何でいつの間にウォータースライダーで滑っているのでしょうか?」
大きな麦わら帽子を被った頭を、こくんと傾けて。
フリルは、急激に変わった状況を、きょろきょろと見回した。
そして、はっ、と気付く。
「もしかして、この展開は幹部猟書家さんでは?」
かつて、そんなオブリビオンを相手にした時に、最終決戦に乗り込んだ悪の組織の本部といった感じの場所に、強制的に連れ去られた事が何度も何度もあったことを。
急に変わった景色、という共通点から推測し、身構えたフリルだけれども。
すぐにまた首を傾げる。
「でも、違いますよね。
今日はあのテレビウムさんに会っていませんし、いつものように広いところが逆に狭い所になっていますから、違いますよね」
悪の組織の本部は、様々な雰囲気の場所があったけれど、どれもこれも、こんな2~3人程度しか並べないほど狭い空間ではなかったし。それに、フリルが猟書家やその志を継ぐ者と戦った時は、何故かいつも、テレビウムの少年が巻き込まれていたから。
ウォーターパークでまだテレビウムに出会うことができていなかったフリルは、猟書家の仕業ではないと判断する。
手の中に抱えたアヒルちゃん型のガジェットが何とも言えない顔をしていますが、論理はともかく結論には異論がないからか、黙ったままです。
そんな考えを巡らせる間も、フリルはウォータースライダーを流されていって。
勢いがすごい水の流れに、コースを戻ることもできず。
時々ある分岐を適当に選ぶくらいしかできない。
でも、流されるがままの現状で、そこまで困ることはないから。
「このまま流れていれば大丈夫ですよね」
フリルはどこかのんびりと、水の流れを楽しんでいた。
右へ、左へ、カーブを曲がりながら。
時折、被っている大きな麦わら帽子が飛ばされないように押さえながら。
心地良い冷たさと共に、ゴールの見えないスライダーを滑り続ける。
そして、加速したフリルは、知らないうちにユーベルコード『衝撃?的な出会いから始まる恋?物語』を発動させていたから。
「スプラーッシュ!」
とある合流地点で、急にフリルの目の前に『怪人アルパカスプラッシュ』が現れて。
「ふええええ、止まれませーん。そこの人、どいてくださーい」
パンを銜えて走っていた通学路の曲がり角で定番の様式美が生み出されると。
出会い頭の突進により、怪人は吹っ飛ばされた。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
分霊とはぐれたけど
まあ、何とかするだろう
むしろこういうの好きじゃなさそうだから
力技で解決しようとする前に
解決できる事を祈るよ
ワイヤーガンを天井に貼り付けて
一時停止して周りを見たり
分岐の向こうを見たりして探そう
えらく長いけど出口はあるのかな
エッシャーの騙し絵みたいになってたりしないよね
ウォータースライダー自体が悪いわけじゃないから
強制的に滑らせられるんじゃなきゃ
もう少し平和に解決できそうな気もするんだけど
見つけたらワイヤーガンで攻撃して倒すよ
分霊の方はどうしてるだろう
ああ、もう、水着がくしゃくしゃですの
私はもっとのんびり過ごしたいですの
これ以上続くなら静寂領域で
スライダー全域を覆ってしまいますの
数多の分岐と合流で、迷路のようになったウォータースライダーの中で。
「しまった」
佐伯・晶(f19507)は小さく舌打ちした。
さっきまで聞こえていた文句の声が、ある枝道を通り過ぎたところから急に聞こえなくなっていて。辺りを見回せば、自身と同じ姿をした邪神の分霊が、いなくなっている。
「はぐれたね」
それでも流され続けながら、晶は苦笑した。
別に分霊の身を心配しているわけではない。見た目は少女でも邪神。ごく普通の一般人だった晶になんやかんやで力を与え、その人生を一変させた存在だ。分霊、といういわば切れ端のような存在ではあっても、その根本は色んな意味で変わらない。
だからこそ、晶の心配が向くのは。
「こういうの好きじゃなさそうだったからな……」
ウォータースライダーに放り込まれてから延々聞こえていた分霊の文句。
「ああ、もう、水着がくしゃくしゃですの」
「私はもっとのんびり過ごしたいですの」
不満でいっぱいだったその様子を思い出せば。
「……力技で解決しようとする前に解決できる事を祈るよ」
穏便に穏便に、とまた晶は苦笑する。
そして、銃型デバイスを頭上に掲げると、フック付きのワイヤーを撃ち出した。
チューブ状になっているスライダーコースの天井部分に張り付けると、ワイヤーガンがぐいっと晶の身体を持ち上げ。水に流されることなく一時停止。
すぐ先に見えていた、次の分岐を観察する。
半透明のチューブゆえに、先のコースが少し見えるけれど。片方は真っ直ぐ進んでまた3つに道が分かれ。片方はぐるんとカーブして元来た方向へ戻っていく様子。
さらにそれぞれの進む先は延々続いていて終わりが見つけられないから。
「えらく長いけど出口はあるのかな。
エッシャーの騙し絵みたいになってたりしないよね」
とりあえず、直近の流されコースを選んで、晶はワイヤーガンのフックを外す。
また流されて、覚えた道順に右へ左へ曲がっていって。
ある程度進んだところで、またワイヤーガンで止まって観察。
「ウォータースライダー自体が悪いわけじゃないから、強制的に滑らせられるんじゃなきゃもう少し平和に解決できそうな気もするんだけど」
眺めるのはスライダーのコースそのものだけでなく。
「うわわわわわ……」
「ソリー。どこ行ったのー?」
「うむ。誰もいないな」
「コートともはぐれたっしょ!? 皆バラバラっしょ!」
そこを流されていくテレビウムの少年やキマイラにヒーローマスク、ついでに猟兵達といった、ウォーターパークに遊びにきていた人々。
晶と分霊のように、仲間とはぐれてしまい、困っている者達が多く見えたから。
どうにかしないといけないよなぁ、と晶はワイヤーガンを攻撃にも意識する。
この状況を作り出したのは『怪人アルパカスプラッシュ』。それを倒さなければ、ウォーターパークは元に戻らないというから。
行先の調整をしつつも、それだけでなく晶は銃を構え。
「……分霊の方はどうしてるだろう」
いきなりユーベルコード『静寂領域』で周囲を永久凍結とかしてないといいけど、なんて思いながら流されていった。
大成功
🔵🔵🔵
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)、アルパカさんに会えるかな?
会おー♪(まっするのポーズ)
おおー、びゅんびゅんスライダーだね!
そぉれえい!(ためらわず飛び込む)
あ、アンちゃん忘れた!?
けど、まいっか!
そのうち出会うよね、きっと!(びゅびゅーん)(ひゃっほーい)
あれ、いまソリが流れてたような?
あ、銀髪ちゃんとマスクちゃんも。
ライオンさんはマッスルだから、大丈夫そうかな!
耳を澄ませ、スプラッシュ音を聞き分けて。
分かれ道ではソッチへ……いや、コッチだ!(野生の勘優先)
流されながら、マッスルの練習しとこっと。
ああかな?(てやっとパンチ)
こうかな?(そいっとキック)
あ。
出会い頭でも慌てず、拳蹴コンボでキメ!
「おおー、びゅんびゅんスライダーだね! そぉれえい!」
泣きながら氷の城から出て来たはずの木元・祭莉(f16554)は、しかし目の前に不自然に現れた新しいアトラクション、すなわちウォータースライダーを見るなりぱあっと表情を晴れやかにして。わくわく笑顔で躊躇いなく飛び込んだ。
冷たい水の感覚と共に、びゅんっとスピードを増す爽快感。
祭莉はさらに満面の笑みを浮かべ。
「アンちゃん、アルパカさんに会えるかな?」
ひょいっと後ろにひっくり返る勢いで上から振り向くと。
「あ、アンちゃん忘れた!?」
そこに、さっきまで一緒にいた双子の妹の姿はありませんでした。
「まいっか! そのうち出会うよね、きっと!」
能天気なのか信頼なのか、にぱっと憂いなく笑った祭莉は、再びウォータースライダーに向き直って。
「ひゃっほーい!」
その流れに歓声を上げていった。
チューブ型のコースゆえに、どんなカーブでも外に放り出されることはなく、逆にだからこそものすごいカーブがあったりするし。選ぶ間もなく道が分岐していたり、気付いたら合流して一時的に水が増えて面白かったり。何故か下りだけでなく上りのスライダーも勢いよく滑っていけるから。普通のスライダーコースにはない感覚を祭莉は楽しんで。
半透明のチューブゆえに、周囲の様子が少し透けて見えたりもする。
「うわわわわわ……」
「あれ、いまソリが流れてたような?」
少しだけ隣で並走していたコースに、友人のテレビウムの姿を見つけたり。
「ソリー。どこ行ったのー?」
「あ、銀髪ちゃん」
声に見上げれば、上を交差していたコースを銀色のネコキマイラが通って行き。
「コートともはぐれたっしょ!? 皆バラバラっしょ!」
「マスクちゃんも」
「うむ。誰もいないな」
「ライオンさんはマッスルだから、大丈夫そうかな!」
ヒーローマスクの少女も、ホワイトライオンのキマイラも、姿を見かけたから。
「そうだ。アルパカさん探さなきゃ」
ようやく、このコースを創り上げた『怪人アルパカスプラッシュ』を思い出し。
水音や歓声の中で耳を澄ませ、スプラッシュ音(?)を探していく。
そして差し掛かる分岐点で。
「ソッチへ……いや、コッチだ!」
何となくの野生の勘が示す方へと流されていく。
そして、怪人に会おうと思ったならば。
「そうだ。マッスルの練習しとこっと」
マッスルにはマッスルで応えるのが礼儀であるとばかりに思いついて、祭莉は流れの中でマッスルな練習を始めた。
「ああかな?」
てやっとパンチを突き出して。
「こうかな?」
そいっとキックを蹴り上げて。
試行錯誤を繰り返していくうちに、合流地点にさしかかれば。
「スプラーッシュ!」
「あ」
出会い頭での不意打ちの邂逅だったけれど。
祭莉はとっさに練習の成果を見せ、落ち着いた拳蹴コンボでキメて見せた。
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と…て、
まつりん、どこ?
勢いよくスライダーに飛ばされたらまつりんとはぐれた
むむ…、わたしの浮き輪引率は誰がしてくれるのか
流されながら考えて、とりまうさみん
☆に頼んでみよう
ん…音で情報収集
まつりんの声を探し、そちらに向かって舵取りをうさみん☆にお願いしよう
……アルパカ発見
ポージングでこちらに注意を引きつける
今日こそ以前戦争で鍛えた体幹を見せる時
浮き輪に立ち、木のポーズ
さあ、あなたのマッスル力とわたしのマッスル力、どちらがよりマッスル的魅力が上か、すれ違う一瞬が勝負!
勝負のついでにうさみん☆【Come on together】
ん…落下してポージング無敵解除してもらお
木元・杏(f16565)も、気付いたらウォータースライダーに飛ばされていた。
氷の城から逃げていた勢い以上のスピードで、チューブ状のコースを流されて。
しっかり浮き輪を持ったままだったから、泳げないけどパニックになることもなく。
だから不安気に周囲を見回す理由は。
「まつりん、どこ?」
一緒にいたはずの双子の兄の不在、だった。
それも当然でしょう。唐突なひとりぼっちはやっぱり寂しいものですから……
「むむ……わたしの浮き輪引率は誰がしてくれるのか」
あ、理由はそっちでしたか。
流されながら真剣な表情で考えた杏は、はぐれた兄を頼れないと判断して。
「とりま、うさみん☆よろしく」
うさ耳付メイドさん人形に代わりをお願いすることにした。
小さな人形は、右から左からよいしょよいしょと浮き輪を押さえて安定させ、杏の流れを補佐してくれる。
その働きにとりあえず満足して。
杏は、兄を探して、耳を澄ませた。
探すのは聞き慣れた声。きっと元気に歓声を上げて、何かを見つける度に笑顔で喋っているはずだから。音での情報収集をしながら、人形に舵取りを指示していく。
「コートともはぐれたっしょ!? 皆バラバラっしょ!」
その最中、下の方から聞き覚えのある声が近づき遠ざかり。
「ソリー。どこ行ったのー?」
「うむ。誰もいないな」
「うわわわわわ……」
右隣を、上を、左隣を。次々と、声だけがすれ違った。
スライダーのコースが入り組んでいて、割と近い位置で重なるかのように交差したり並走したりしているところも多いからだろう。違うコースゆえに出会うことはないが、半透明な壁越しに姿だけが見えたり、声が響いてきたりする。
それでも杏は、兄の声だけを探して。
「スプラーッシュ!」
「……アルパカ発見」
しかし、見つけたのは『怪人アルパカスプラッシュ』だった。
しばし並走し続ける隣のコースにその筋肉ムキムキな姿を確認し。進む先へと目を凝らせば、一瞬合流してまた分岐する、一時的に間の半透明な壁がなくなる場所があると分かった。その先ではまたコースは右と左とに別れ、怪人の方には別方向からの別の合流もあるようだ。
一瞬で状況を判断した杏は、即座に決断し。
「今日こそ以前戦争で鍛えた体幹を見せる時」
浮き輪の上に立ち上がり、木のポーズをとった。
「さあ、あなたのマッスル力とわたしのマッスル力……
どちらがよりマッスル的魅力が上か、すれ違う一瞬が勝負!」
張り上げた声は壁越しに怪人にも伝わったようで。
もふっと深く頷いた怪人も、全身を力ませて筋肉を鋼の如き硬度に変え、水も滴るいい体を見せつけるようにポージング。
そして流れの中で。
杏と怪人の間から、半透明の壁が消え。
何に隔てられることもなく、互いのマッスルを見せ合う。
「スプラーッシュ!」
「ん。いいマッスル」
互いの健闘を認め合うように言葉を交わすも、それは一瞬。
急な流れゆえにすぐに間にまた壁が現れてしまったが。
しっかりと勝負はできたと。心の交流を感じ取り、杏は満足気に頷く。
そして。
そのついでにちゃっかりと、妖怪『絡繰人形』の描かれたメダルを、こっそりと怪人に投げて貼り付けていたから。
「うさみん☆」
ユーベルコード『Come on together』。
メダルを貼り付けた者が、うさみみメイドさん人形と同じ行動を取ってしまう効果で。
怪人のポージングを解除させ、その筋肉から無敵な硬度を奪ったところで。
「スプラーッシュ!」
「あ」
怪人と兄の声が聞こえた気がした。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
【ワイハン】
顔周りの毛は水を吸って大変なのでは……?
いえ、敵の心配をする必要はないのですがっ!
ウォータースライダーが強固な迷路と化した上に、怪人は高速移動
捕捉すら困難ですが……迷路自身なら怪人の居場所を知っている筈!
【傾城傾国の艶美】で迷路にお願い(誘惑)
どうかあの怪人のところまで、私たちを案内していただけませんか?
アーク・ボードに乗って【サーフィン】で怪人を追いかける
【地形耐性】【環境耐性】で狭いスライダーの中でもびゅんびゅん加速!
捕捉したら――【怪力】で聖槍を【投擲】!
アリシア・マクリントック
【ワイハン】
ウォータースライダーは楽しいですけれど、閉じ込められるとなれば話は別です。へんし……あっ!(水着なのでセイバーギアが無いことに気づく)なんと高度な作戦!このままでは……
(流し狼と化したマリアが流れてくる)マリア!……もう少しだけ耐えてくださいね。(マリアがつけているポーチに手を伸ばし、セイバーギアを取り出す)変身!セイレーンアーマー!
この姿になれば水は味方です。オリヴィアさんの技で示された道に従ってひたすら加速。槍を手にそのまま全速力で突撃です!躱されたり耐えられたりしても回遊魚のごとくぐるりと回って戻り、再び突撃します!
寧宮・澪
【ワイハン】
賑やかな怪人さんですね…
はい、猟団長の命のままに…
オリヴィアさんのおかげで道を示してくれるままに浮き輪で流され…たままだと、だめですね、うん
少し水に干渉、歌って水を行くワイルドハントの皆さんをウォータースライダーの導く方に、後押しを…
先程猟団長流した時と同じ要領で…
あとは火力支援ですかね…さあ、夏を邪魔する怪人さんは倒しましょ…【謳函】で皆さんを強化します
悪路走破で流れて、流れを操って、支援して…ふふ、楽しいかも
遭遇できなくても、流されるのを楽しみましょね…落ちたら…飛んでスタートから帰ってきましょか
おや、先程の経験が猟団長に活きている…よきですね、うん(とても前向き)
国栖ヶ谷・鈴鹿
【ワイハン】
よーし!オリヴィエのUCで道標になっているなら!
ペンギンクルー部隊(UC)にも手伝ってもらおう!
道案内の誘導ペンギン🐧、幸運ペンギン🐧、援護射撃ペンギン🐧!
みんなに続けー!
ウォータースライダーのどこかにいるなら、見つけたら道案内ペンギン🐧の誘導でみんなに報せていこう!
幸運ペンギン🐧?こういうのは運もあると思うしね!
猟団長は流れに慣れてきて一番接敵できそうかな?
ブラスターをボートにする!兼光もやるなぁ、咲花の援護があれば心強そうだ!
アリシアも水中戦装備かぁ、ぼくもそういうのがよかったかな?
澪の歌が聴こえる!流れが変わってる?
なんだかこれならいけそうじゃない?ワイルドハント!
雪・兼光
【ワイハン】
おい、せっかく楽しんでいたのに邪魔するとは駄目じゃぁねぇか
これは徹底的に追いかけないとな
ユーベルコードでブラスターをボートにして運転と悪路走破を利用して早速追跡開始だ
やぁ、龍巳さんさっきぶり、乗っていかないかい?
俺は運転に集中したくてね
乗ってくれればスリル満点なバトルを約束するぜ
可能な限りロングボウで援護射撃をしてみるよ
メインアタッカーは任せたぜ
ブレーキとアクセルを合わせてスピード調整
カーブではスピードダウン…
遭遇できない場合はスピードを出して楽しむ、ただし搭乗者と周りの人間に注意をしながら運転と悪路走破は忘れずに
こんなこと、こういう時じゃ無きゃできねーからな
その点は怪人に感謝だな
白斑・物九郎
【ワイハン】
なァんかスプラッシュスプラッシュうるせえな
くだんの怪人、どっかに出ましたわな?
狩りの時間だ、者共
ワイルドハントの始まりっスよ
●オリヴィアのコードに続く
作り物相手でも魅了掛けてのけますとか、大したシスターも居たモンですわな……?
ま、役に立つならなんでもイイですわ
迷路が示す道を【軽業】でうまいこと移動
迷路が抵抗しても【野生の勘】で察しを付ける
スライダーん中での身をこなしは慣れたモンっスよ
さっき鈴鹿と寧宮のねーさんとに練習させられましたからな!!(キレ顔)
●攻撃
この左腕でブン殴る
【アイシクルドライブ(属性攻撃)】をブッ込んで――止める!
周りがこんだけ水なら、氷属性技使うのも楽でイイですわ
龍巳・咲花
【ワイハン】
おぉ、これがキマイラフューチャーのコンコンの力でござるかあ!
え? 違う!? 敵の攻撃でござるかあ!?
出会えー出会えーでござる!
なんとスライダーが位置を教えてくれるでござるか!
ふむふむ、オリヴィア殿が? 凄いでござるな!
だけどちょっと遠すぎないでござるかあ!?
近くに兼光殿の気配を感じ取り、そこへ飛ぶでござる!
お言葉に甘えてボートに乗せて貰えば拙者らも攻撃に専念できるでござるな!
急制動に振り落とされない様に注意しながら、ムシュマフと兼光殿の援護射撃に合わせるように、拙者もクナイと手裏剣でアルパカ怪人を狙うでござるよ!
遭遇できない場合はジェットコースターの如く楽しむでござるかあ!
北・北斗
【ワイハン】
『まったく、変なもの作らないでほしいんですよ…』
『アルパカとか言いながら、コイツラ頭だけだし、下手な事しないでほしいですよ』
『この迷宮って、上下に広がっているのかなぁ…めんどくさそうですよ』
『こうなれば、おいら達で|迷宮探査《メトロイドヴァニア》してアルパカやっつけに行くですよ。』
てなわけで、トド12頭呼んでヤツラを捜索、【水中戦】でヤツラを牙で攻撃。筋肉程度で牙を防げると思うな。
その気になれば肉を引きちぎれる食肉目の獣であるからな。普段が魚食なだけでな。
他のワイハンメンバーとも協力して連中をどんどん狩っていくんですよ。
突然現れたウォータースライダーは、楽しんでいた場所を一瞬にして奪い去る。
「おい、せっかく楽しんでいたのに邪魔するとは駄目じゃぁねぇか」
ゆえに、元々鋭い眼光をさらに不機嫌にしながら、雪・兼光(f14765)は流されて。
「ウォータースライダーは楽しいですけれど、閉じ込められるとなれば話は別です」
アリシア・マクリントック(f01607)も、頬に手を当てて困ったようなため息をつきながら、チューブ状のコースが過ぎ去っていくのを眺める。
怒りも困惑もごもっともですが。
人数が集まれば、同じものに真逆の感想を抱くものもいて。
「新しいウォータースライダーコース? これもすごくハイカラだよ!」
笑顔いっぱいで、自ら進んで流されていく国栖ヶ谷・鈴鹿(f23254)がいれば。
「おぉ、これがキマイラフューチャーのコンコンの力でござるかあ!」
素直に感激している龍巳・咲花(f37117)もいた。
まあ、咲花はちょっと勘違いしているようですが、こんなことありえないと言い切れない世界なので、完全否定がしづらいところ。
ゆえに、直接指摘する者はいなかったけれども。
『まったく、変なもの作らないでほしいんですよ……』
北・北斗(f20984)が、両手を身体にぺたっとつけて流線形となり、抵抗なくすいーっと流れながら、呆れたかのようにぼやいていくのが聞こえ。
「なァんか、スプラッシュスプラッシュうるせえな。
くだんの怪人、どっかに出ましたわな?」
昼寝な姿勢からしぶしぶといった様子で身を起こす白斑・物九郎(f04631)。
その間にもしっかりスライダーを流されていき。
遠くで聞こえる、あの掛け声。
「賑やかな怪人さんですね……」
浮き輪に完全に身を任せた寧宮・澪(f04690)も、その声に少しだけ顔を上げ、でもすぐに突っ伏して、ぷかぷか流されていく。
『アルパカとか言いながら、アイツラ頭だけだし、下手な事しないでほしいですよ』
ちゃんと全身トドな北斗のこだわりな怒りに、オリヴィア・ローゼンタール(f04296)は苦笑してからふと、考え込んで。
「顔周りの毛は水を吸って大変なのでは……?
いえ、敵の心配をする必要はないのですがっ!」
もふもふへの杞憂を、ぶんぶん左右に顔を振って振り払う。
そんな皆の声を聞いた咲花も、ようやく間違いに気が付き。
「え? 違う? これはコンコンじゃない……敵の攻撃でござるかあ!?」
あわあわと驚き慌てたところで。
物九郎がにやりと笑って見せれば。
「狩りの時間だ、者共。ワイルドハントの始まりっスよ」
「はい、猟団長の命のままに……」
「出会えー出会えーでござる!」
のんびりとした澪の声と、まだ混乱しているような咲花の声が応えた。
と、声が届き、何となく会話のようになってはいますが。実は皆は割とバラバラにウォータースライダーコースに放り込まれていて。元々集まっていたからスタート地点が近かっただけのこと。
そのうちに、右へ左へ、流される先が分かれ始め。チームの分断が進み、バラバラになろうとしている。
チューブ型のコースゆえに、ウォータースライダーから出ることはできず。また強固なため壊すこともできない。そんな迷路を、元凶たる『怪人アルパカスプラッシュ』は、流れの勢いに任せて高速移動している、となれば。
「これは徹底的に追いかけないとな」
普段から不機嫌そうに見える顔を本当に不機嫌にした兼光が手にしたのは、熱線銃。
「俺のブラスターは質量無視で変形もできるんだぜ?」
ユーベルコード『Get on the blaster』で熱線銃をボートに変形させると、それに乗って怪人の追跡を開始する。
半透明な壁越しにそれを見たアリシアも、続けとばかりに頷き。
セイレーンアーマーへ変身しようと、変身ベルトへセイレーンチャームを装着したA.キーを差し込む慣れた動きを繰り返そうとして。
「へんし……あっ!」
水着姿でいつもの変身ベルトがないことに、ようやく気付いた。
「なんと高度な作戦!」
変身を封じられた状況に悔し気な表情を見せるアリシア。別に怪人もこんな効果があると思ってプールに現れたわけでもないとは思うのですが。
(「このままでは……」)
打つ手がなくなったと思われた、その時。
合流した別のコースから流されてきたのは、アリシアの親友である狼。
「マリア!」
困り顔で流れ狼になっていた親友に、アリシアは再会を喜ぶように抱き着くと、すぐさまその身体についているポーチに手を伸ばす。
「……もう少しだけ耐えてくださいね」
流れの中で苦労しながらもポーチから取り出したのは変身ベルト『セイバーギア』!
「変身! セイレーンアーマー!」
人魚のような姿となったアリシアは、水中での行動強化の効果を得て。
「この姿になれば水は味方です!」
流されるままのマリアを残し、ウォータースライダーを意のままに泳ぎ進んでいった。
「すごいでござるなぁ……拙者も変身とかできるようになるべきでござろうか……」
その光景に咲花は目を瞬かせる。
レジャー施設不慣れな同士だと思っていたら、先を行かれてしまった感。自分も何かしなければと、何となく気が急いていく、ところに。
「やぁ、龍巳さんさっき振り。乗っていかないかい?」
水の流れ以上のしぶきを上げて、滑り込んできたのはボートの兼光。
「俺は運転に集中したくてね。乗ってくれればスリル満点なバトルを約束するぜ」
「拙者も攻撃に専念したいところでござるよ。
では、お言葉に甘えさせていただくでござる」
断る理由など思いつかない程魅力的な提案に、1も2もなく咲花は飛びつき。
ボートの後ろに文字通り飛び乗った。
『この迷宮って、上下に広がっているのかなぁ……』
ごろごろ転がっていた北斗も、半透明ゆえに見えるスライダーコースが、上に下にと重なっているのを眺め。また、下るだけでなく何故か水が勢いよく上っていく部分もあるのを感じて。その三次元な構造に心底面倒臭そうにしながらも。
『こうなれば、おいら達で迷宮探査してアルパカやっつけに行くですよ』
事態の打開に動き出す。やる気を見せた反面、姿勢は寝っ転がったままですが。
しかし、おいら達、と言ったのは共にプールに来た仲間の猟兵のことではなく。
「ヴォウッ! ヴォオオオオオゥッ!」
響いたのはテレパシーではない、肉声。すなわち、トドの鳴き声。
その重低音は『海驢類召喚』となり、北斗と似たトドを12頭呼び出して。
増えた頭数の分だけ広範囲を、でもやっぱり寝転がって、怪人を捜索し始めた。
次々と水に順応し、動き出していく仲間達。
しかしオリヴィアは、怪訝な顔を見せる。
どんなに泳げても、どんなに速くても、どんなに数がいても。
怪人に辿り着けなければ意味がないのだと。
強固な迷路を高速移動し、捕捉することそのものが困難な相手……
「ですが、迷路自身なら怪人の居場所を知っている筈!」
思い至ったオリヴィアは、自身が流されているウォータースライダー、その半透明でチューブ状の壁にそっと艶やかな繊手を伸ばし。眼鏡越しの金瞳を潤ませて、囁いた。
「お願いが、あるのですが……
どうかあの怪人のところまで、私たちを案内していただけませんか?」
ユーベルコード『傾城傾国の艶美』。
生命体はおろか、無機物にまで好意を抱かせる魅惑の仕草は、ウォータースライダーそのものを誘惑して怪人への道案内を得ると。
「さあ、皆さん参りましょう」
その美しく長い銀髪を翻して、方舟の名を受け継いだ木製サーフボード『アーク・ボード』に乗ったオリヴィアは、その見事な曲線美を魅せながら、しなやかにサーフィンをするかのように、怪人を追い始める。
「作り物相手でも魅了掛けてのけますとか、大したシスターも居たモンですわな……?」
そんなオリヴィアに、そして変化を見せるウォータースライダーに、物九郎は皮肉気な笑みを見せるけれども。
「ま、役に立つならなんでもイイですわ」
正しい道を示してくれる迷路、という矛盾すら、有益であるならよしと受け入れて。
軽い身のこなしで、示された道へとうまいこと移動してみせた。
おおー、とそれらを見ていた鈴鹿も。
「よーし! オリヴィエが道標をくれるなら!
ペンギンクルー部隊にも手伝ってもらおう!」
ぽんっと思い付いたように手を打つと。
「とびだせ! ぼくのペンギン乗組員!」
スカイクルーザー・ヨナから召喚するのは、機械仕掛けのペンギンクルー。
「みんなに続けー!」
鈴鹿の技能ひとつを高レベルで使用できるユーベルコードにより、9体のペンギンはそれぞれお役立ち能力を持っているから。
怪人を見つけて『道案内』しようとすいーっと先行するペンギンがいたり、戦闘サポートに備える『援護射撃』ペンギンがいたり、それぞれの技能に合わせて動いていって。
「ん? なんスかこのペンギンは?」
「その子は『幸運』ペンギンだよ!
こういうのは運もあると思わない?」
身軽な物九郎を頑張って追いかけたペンギンは、鈴鹿の解説にぴしっと手を挙げ、任せてくれと言わんばかりのアピール。
ふぅん? と一瞥した物九郎は。ちょっと悪戯っぽくにやりと笑い。
ペンギンを置き去りにする勢いでスライダーを素早く移動するから。
驚いた幸運ペンギンは慌てて、それでも頑張ってついていく。健気。
「わー……ペンギンさん、がんばって……」
相変わらず浮き輪の上でまったりな澪が、声だけは応援します。
物憂げな黒い瞳は、そのままぷかぷかのんびりと、眠ってしまいそうだけれども。
「でも……流されるまま、だと……だめですね、うん」
澪はゆるゆる頷くと。
浮き輪に寝そべってまま、歌声を紡いでいった。
オラトリオの妙なる旋律は水へと響き渡り、その流れに干渉して。
オリヴィアの誘惑で示された道へ、ウォータースライダーの導く方へ、自身を、そして仲間達を後押ししていく。
「先程、猟団長流した時と同じ要領ですよ……」
「このねーさん、要らん経験積んでますわ」
ふふ、と微笑む澪に、物九郎の顔が渋くなりました。
流れるプールで流されながら昼寝をしていたら、いつの間にか鈴鹿謹製ウォータースライダーに流されて、とんでもない目にあわされたのは、つい先ほどのことだから。
澪を見やる金瞳に苦いものが混じるのも道理。
とはいえ、あのコースに比べりゃ楽だと、物九郎は慣れた動きを見せ。
導きと水の流れの支援、そしてもしかしたら、見かねて小脇に抱えた幸運ペンギンのおかげもあってか、すいすいとスライダーを進んでいくから。
「おや、猟団長にも、先程の経験が活きている……よきですね、うん」
「ええ、ええ! さっき、鈴鹿と寧宮のねーさんとに練習させられましたからな!」
とても前向きにのんびり頷いた澪に、物九郎がキレ顔で叫んでいた。
「うん、猟団長は流れに慣れてきて、一番接敵できそうかな?」
物九郎の怒りの一端を担っているはずの鈴鹿も、澪同様、悪びれた様子どころか申し訳なさげな様子すら欠片もなく、むしろ良い事をしたとばかりににこにこ笑いながら状況を見渡して。
「アリシアも水中戦装備かぁ。ぼくもそういうのがよかったかな?」
別のコースに人魚のような姿も見つけ、傍に残っていたペンギンの1匹に意見を求めるかのように、首を傾げて笑う。
大丈夫だと励ますかのように手をぱたぱたさせる『優しさ』ペンギンに、鈴鹿はまた面白そうに笑って。
ふっと顔を上げると、上を交差したスライダーコースを、凄いスピードでボートが走っていった。
「ジェットコースターみたいでござる!」
ボートの後ろに乗っていた咲花が楽し気に歓声を上げる。
喜びの声に気を良くした兼光は、ボートを右へ左へ操って。さらにスピードに乗って、水しぶきの中を駆け抜けた。
曲り道を、ワンテンポ遅れて舵を切り、さらなる急カーブに仕立て上げたり。
直線コースでは、チューブ型なのを利用して天井も一瞬走ってみる。
(「こんなこと、こういう時じゃなきゃできねーからな」)
通常のウォータースライダーではできないちょっと無茶な運転に、兼光は、少しだけ怪人に感謝すらして。水の清涼感が舞う空気と、それを切って走るスピード感、そして楽し気に反応してくれる咲花の賑やかな声を、楽しんでいった。
もちろん、咲花を振り落とさないように気を付けているし、周囲の人間に迷惑をかけないように注意するのも忘れていない。
そして怪人を探して走っていることも。
迷路のようなスライダーコースが道を指し示してくれる、その不思議な感覚もまた楽しみながら、誘導に合わせて舵を切っていく。
「なんと、スライダーが怪人の位置を教えてくれるでござるか!
ふむふむ。オリヴィア殿、凄いでござるな!」
咲花もそれに気付き、拍手を送りかけるけれど。
急制動で慌ててボートにしがみ付いた。
そんなハプニングも楽し気に、ボートはコースを疾走していって。
長い長い距離を走りながらも、ちゃんと怪人に迫っているようだった。
それは、他の流されている面々も同じこと。
迷路の誘導が、歌声響く水の流れが、ペンギンの補助が。
皆を着実に怪人へと導いていたから。
「なんだかこれならいけそうじゃない? ワイルドハント!」
鈴鹿がにこにこと確信した、その時。
「スプラーッシュ!」
「見つけました!」
今までで一番近くで聞こえた特徴的な掛け声に、オリヴィアが叫んだ。
道案内ペンギンも慌ただしく動き出し、皆を集める様に手をぱたぱたさせて。
おおー、と少しだけ顔を上げた澪は。
「あとは火力支援ですかね……」
箱型ガジェット『謳匣』を取り出すと。そのオルゴール型シンフォニアデバイスに組み込んだ歌声を響かせる。
「さあ、夏を邪魔する怪人さんは倒しましょ……」
強化のユーベルコードとなった妙なる旋律が辺りに満ちると。
海獣の鳴き声が響き、茶色い流線形の塊が水の流れと共にいくつも怪人に突撃する。
『普段が魚食なだけでな。その気になれば肉を引きちぎれる食肉目の獣であるからな』
トドの群れの中で北斗の得意げなテレパシーが聞こえ。
『この牙、筋肉程度で防げると思うな!』
でっぷりした質量が生み出すスピードと衝撃、そして鋭い牙が、次々と怪人を捉え。
一撃離脱でどんどん流されていったけれども。
さらに、その後に続くように。
アーク・ボードでびゅんびゅん加速したオリヴィアが、その勢いも乗せて、聖槍を力いっぱい投げ放った。
もふもふっとした首だか肩だか分からない辺りに突き立った槍に、怪人の体勢が大きく崩れ。立て直す間を与えずに、アリシアが突撃。
後ろからの一撃を与えた人魚は、スライダーのコースを読み切り、回遊魚のごとくぐるりと回り込むと、再び突撃せんと軌道に乗り。
その二撃目に合わせ、先回りしたかのように。
「任せたぜ、龍巳さん」
「拙者がきた! でござる!」
分岐路から飛び出したボートから、炎竜ムシュマフの首からの牽制攻撃と、クナイと手裏剣が怪人に放たれる。
「……止める!」
物九郎が、生命の熱を奪う魔の左腕を振りかぶり、流れに乗って殴り掛かった。
刻印を宿した左腕から放たれた『アイシクルドライブ』は、怪人をぶん殴ると共に、氷結によってその身体を縫い留めたから。
「周りがこんだけ水なら、氷属性技使うのも楽でイイですわ」
負傷した怪人が、流されることなく留まっているのを物九郎はにやりと見て。
「響いて、私の魂の歌!」
そこに人魚姿のアリシアが、澪の歌声だけでなく自身の歌でも行動を強化して、手にした槍と一体化したように鋭く怪人に突き当たると。
氷ごとスライダーコースも砕かれて。
「スプラーッシュ!」
最後まで煩い特徴的な掛け声と共に吹っ飛ばされた怪人は。
ウォータースライダーのコースと共にその姿を消し。
「ああ……空中を走っていたコースが急に消えたら、こうなりますよ、ね……」
数多の悲鳴と共に、元に戻ったプールに幾つもの水柱が上がるのを、1人ぷかぷか浮いた澪は、浮き輪に気だるげに寝そべりながらのんびりと見下ろした。
大成功
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