7thKING WAR㉕〜空でウサピョイする簡単な依頼
「というわけで、みなさんにはぴょんぴょんして頂く事になりました」
のっけからトンチキなことを言い出す大神・狼煙(コーヒー味・f06108)であるが、何も間違ってないから仕方がない。
「絶賛戦争中である事はみなさんご存知の通りですが、なんかデストロイデストロイしてる奴が私の担当です」
今回の敵さんは五十メートル級の巨人(テレポートのオマケ付き)ですって。ワンパン即死確定のバケモンが突如目の前にテレポートしてくるとか、それなんて無理ゲー?って話になるのだが。
「此度の戦場において、敵はその異能の一つである、配下を楔とした転移能力が封じられています。ていうか自分でデストロイします」
え、何、あいつそんな馬鹿なの?って雰囲気が漂い始めるが。
「開幕と同時に戦場そのものがデストロイされて、巻き添えになるみたいですね!」
実に爽やかな笑顔で言ってのける狼煙は忘れないだろう。呆気に取られて固まる猟兵とか、ぴょんぴょんってのは砕けて舞い散る大地の欠片を足場にしろって事だと理解して頭を抱える猟兵がいた事を。
「ちなみに、飛行能力を持つ方も多いでしょうが、飛行はお勧めしません。大地が砕かれた衝撃で凄まじい上昇気流が発生しており、常に上に向かうベクトルの負荷がかかり続けていますから」
つまり、跳躍などにより進行方向に向けて運動エネルギーがあるならまだしも、翼やスラスターで滞空すると吹き飛ばされるって事らしい。
「それではみなさまご武運を。デストロイされた時は肉片から蘇生して差し上げますから、安心して死んでくださいね⭐︎」
ジョークか、ガチか、物凄く分かりにくい微笑みを浮かべる眼鏡に、猟兵達は白い目を向けていたという……。
久澄零太
つーわけでぴょんぴょんしながら巨人と殴り合う戦争シナリオですって!!
執筆日は20日の予定!!
敵は先制攻撃もしてくるんで気をつけてね!!
ツメが甘いと挽肉が舞い踊るシナリオにしちゃうぞ!
(狂気の眼差し)
第1章 ボス戦
『デストロイキングボス・大地殲滅』
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POW : デストロイブラスター
自身の【敵の至近距離に移動して】から極大威力の【デストロイエネルギー】を放つ。使用後は【エネルギーチャージ】状態となり、一定時間行動できない。
SPD : デストロイサンダー
【デストロイしたい!という気持ち】のチャージ時間に応じ、無限に攻撃対象数が増加する【デストロイサンダー】を放つ。
WIZ : アルティメットデストロイ
自身の【肉体が究極デストロイモード】になり、【自分の受ける攻撃全てをデストロイする】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
「がはっ!」
背中から地面に叩きつけられクレーターを作る。何も通じなかった。全てデストロイされた。オーバーロードをし、全ての能力を振り絞って防御に全振りしてなおこのダメージだ。
服も肉体もボロボロだ、指一本動かせない、視界もぼやけている。
だが、意識は残っている。
命はまだ繋がっている。
そして、やつは“勝利を確信した”ことだろう。
ならば、私の“対策”はなったのだ。そう、このピンチこそが対策。
新たな強敵に死力を振り絞ってなお届かない、そのピンチに助けに現れるかつての強敵(とも)!
『よくぞ耐え抜いた!後は俺に任せろ!』
頼もしき龍神親分(イマジナリー)の背中。
『俺の攻撃をデストロイして無効化するのか。だが、昨日より今日!今日より明日!俺はどこまでも強くなる!そのデストロイも超えてみせるぜ!』
戦闘の最中でも無限に成長を果たす彼がだんだんとデストロイを越えていく。龍神親分の攻撃にデストロイが間に合わなくなっていく。
『これで終わりだぁ!』
全てを超越した雷龍が顕現する
久井崎・しいな
【アドリブ重傷OK】
おけがへーきなんだってね。がんばろー。
『…正直大丈夫とは思えないわ。』
戦闘時には吹き飛ばされた大地の欠片を蜘蛛の足とママの跳躍力と
第六感、野生の勘を併用して足場を移動する。
デストロイモードを発動した相手への攻撃はすべてデストロイされる危険から
まずは回避に専念しつつ、あちこちの大地の欠片に大量のクモ糸を結びつけ続け、巨大な蜘蛛の巣を形成する。
クモ糸が破られたとしても、強酸を持っている糸を破り続ければ
流石に無視できないようなダメージと蜘蛛糸の粘着で動きを鈍らせ、ダメージを与えることができるはずだ。
ディッセンバー・クレイ
(第四の壁に向かってニッコリ)あ、ご無沙汰しております
私がここに居る理由はステシを読んでいただくとして…
初陣がこれとは、なかなかに厳しいですねぇ
【POW】連携・アドリブ歓迎
吹き飛ぶ足場を跳躍移動するのは…まぁ、執事の嗜みとして出来ますが
移動する際に【深遠の納骨庫】に足場を収納して片付けながら次の足場へ行きましょう
なるべく【目立たない】ように、足場の破片に【物を隠す】ように自らを隠しながら接近します
気付かれての先制攻撃は、収納してきた足場を一気に影から射出し、防御壁・目眩ましにして死角へ移動
後はUC【銀光一閃】を叩きこみます
こちらの世界も掃除のし甲斐がありそうですね…やれやれ
館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎
…人面蜘蛛に転移してくるよりましとはいえ
いきなり戦場全体デストロイするなよ…
下手すりゃ自分をデストロイして自滅しないか?
デストロイブラスターは至近距離に移動してから発射か
移動地点を「視力」で見極め
発射する直前を「第六感」も併用しながら「見切り」
急ぎ足元や翼、脇の下などに「地形の利用、ダッシュ」で飛び込んで回避しよう
何とか避けたら行動不能になっている間に急ぎ肉薄
至近距離から肩へ「ジャンプ」しながら「早業、2回攻撃、怪力」+指定UC発動
黒剣で肩ごと腕を切断し叩き落としてやる!
…挽き肉にしてやると?
その覚悟がなきゃ、この戦場には来れないって!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
難しいですが、やってみますぅ。
『FMS』のバリアを展開、内側に『FXS』を配置し防御と治癒の準備を。
そして相手の接近に合わせ『FIS』で可能な限り上方に瞬間移動、『FAS』の翼を広げ『上昇気流を利用し高速で上へ吹き飛ばされる』ことで回避しますぅ。
『上へ向かう』なら悪影響は少なく、Gの影響は『FGS』で制御、ダメージも直撃より低いでしょう。
そして『FIS』の転移で位置を調整し【星崩】を発動、全身を『中性子星』と同質に変換しますねぇ。
極度の上昇気流でも『角砂糖一個分の体積で10億t』という超重量は支えられません。
そのままボスの上に落下、ヒップアタックで[重量攻撃]しますぅ。
「がはっ!」
戦闘開始と同時、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト艶魔少女・f05202)は致命傷を負った。
「何も……通じなかった……!」
勝てる相手だとは思っていなかった。故にこそ、その生存本能を喚起し、しなやかに成長した肢体を濃厚な桃色の下着に包み、真なるアリスとしてこの場に臨んでいる。事実、彼女お得意の結界術は常軌を逸した精度を誇り、フィンガースナップ一つで多重展開した結界により、自らを宝玉へと作り変えてすらみせた。
球形に展開される結界はただ身を守るだけではない。体躯にして五十メートルという巨躯を持つデストロイキングボスの拳を受ければ拳圧が伝播し、接地面から結界全体へと威力を逃がすことで最大限その威力を殺すものだったはずだ。それが、ただの一撃で粉砕された。
「デストロォオオオイ……中々面白い芸当を見せる技であったが、足りぬ!強度!数!パワー!そして何よりデストロイが足りぬ!!」
拳一発でリソースの大部分を裂いた結界を全て同時に破壊され、急激な魔力の霧散に襲われたアリスは半ば気絶した状態で鉄拳の直撃をもらっていた。全身を強打する暴力の代表者は、成長を遂げた少女の体を容易く吹き飛ばし、砕かれた地表から舞い昇る大地の欠片を貫通する弾丸たらしめた。
いくつの岩に叩きつけられたかなど覚えてはいない。正面から鉄拳を、背面から岩塊を食らう形になり、土の巨大な塊に半球形の穴を開けて打ち込められたアリスの臓腑は、その大半が完膚なきまで叩き潰され液状化を起こし、骨は砕片と成り果てている。心臓と肺がまだ機能していた事は、奇跡と言って過言ではないだろう。
「もはや勝敗は決した……穏やかにデストロイを迎えるがいい!!」
触れたものを問答無用で破壊する手刀が、猟兵へと振り下ろされていくが。
「……む?」
文字通り、一瞬の事だった。小さな稲光が戦場を駆け抜けて、遅れた粉塵が少女の受け皿であった大地の欠片が破壊された事を示す。だがどうだろう、デストロイキングボスのその拳に、デストロイの感触がない。
「よくぞ耐え抜いた!後は俺に任せろ!」
「新手の猟兵か……!」
アリスとは異なる少年の声に、デストロイキングボスが振り返れば、上昇を続ける岩塊の一つに、黄金色の外套を纏った少年が立っている。その腕の中には、力なく浅い呼吸を繰り返すアリスの姿があった。
「否!我が名は最弱の竜神、碎輝!ここから先は、俺が相手だ!!」
「貴様からはデストロイを感じぬ……ユーベルコードによる歴史の再編……幻影か。だが構わん!我はデストロイに相応しき万物をデストロイするのみ!!」
巨大化による神経伝達速度の鈍化を無視して、超高速の鉄拳が飛来するも黄金の雷は既に拳を掻い潜った後。アリスを抱いているため両腕が塞がっている碎輝は、下方にて大きく息を吸い込んで、口から返すは雷霆。死角から到達する高圧電流の直撃を食らってなお、デストロイキングボスは口角を上げ、電気エネルギーは霧散する。
「俺の攻撃をデストロイして無効化するのか。だが、昨日より今日!今日より明日!俺はどこまでも強くなる!そのデストロイも超えてみせるぜ!」
デストロイ言語に若干汚染されている竜神親分だが、それは彼が幻想から生成された幻影だからだと信じたい……。
「ご覧ぜよ、これこそは打ち砕かれる度に無限に成長する俺の力……そして、ここにはアリスがデストロイされた『敗北の歴史』が積み重なっている!!」
アリスが展開し、一瞬で砕かれた数百に上る結界。その全てを糧に、碎輝は急成長を迎えて戦場には強烈な雷鳴が響き渡る……。
「おけがへーきなんだってね。がんばろー」
『……正直大丈夫とは思えないわ』
戦場のど真ん中、上昇気流を無視して蜷局を巻き始める雷雲にデストロイキングボスが意識を向けている隙に、久井崎・しいな(ママの花嫁・f35434)は『ママ』と呼称する死体人形(便宜上『人形』と定義するが、本来使役されるはずの『ママ』に自我と感情に相当する物が見受けられ、真にしいなが蘇生、利用している死者であるか、詳細は不明である)に抱きかかえてもらうと、足場にしていた岩塊を踏み砕くほどの脚力をもって、下へ。デストロイキングボスの姿を頭上に、上昇気流に乗って上がってくる大地の欠片に糸を貼り付けて、つなぎ合わせれば人間大の巨大な蜘蛛の巣が完成する。
「ママ、つぎはあっち!」
『しっかり掴まっててね……!』
しかし、作った蜘蛛の巣は放棄して新しい大地の欠片へと渡ると、また巣作りを始める。蜘蛛の巣は罠のような特性があり、本来は待ち構えるためのものであるが。
「これくらいいっぱいあればだいじょうぶだよね!」
『くっついてくれるといいわね……』
大量の蜘蛛の巣を張り終えたしいなの頭を、ママが撫でる。そこら中に張り散らされた蜘蛛の巣だが、この戦場においては常に上昇気流が発生しているわけで。
「むぅん!?」
下方にて多数展開した蜘蛛の巣は、大気の流れに乗って上空のデストロイキングボスへと襲いかかる!!
「おのれ小癪な真似を……全てデストロイしてくれる!」
上昇してくる蜘蛛の巣を片っ端から踏みつぶしていくデストロイキングボス。だが……。
「デデデデデストロデストロデデデデスデスデストロォオオオイ!!」
最後の一つを踏みつぶした瞬間、破壊した蜘蛛の巣と大地の欠片の影から、何かが飛び出した。
「初陣がこれとは、なかなかに厳しいですねぇ」
ディッセンバー・クレイ(自由気ままな戦闘執事・f36957)は苦笑しながらも、破壊された大地の欠片の残骸を足場にして更に跳躍。
「あ、ご無沙汰しております」
しれっと戦闘中に『こっち』を見るな!?
「OP公開直後に本体(?)が撃破されてしまい、依頼のネタ堕ちを検討していると伺ったものですから……私がここに居る理由はステシを読んでいただくとして」
セリフの途中で叩き込まれた拳に対して身を逸らし、足場のない空中で背面跳びしたディッセンバーの背中の下を、巨大な腕が通過していく。
「またしても新たなデストロイか……よかろう、まとめてデストロイしてくれる!!」
「もはや猟兵もデストロイにカウントされておりますね……」
困り眉のディッセンバー、その眼下の腕が消えた。次の瞬間には彼の正面に陣取る形でデストロイキングボスが滞空しており。
「デストロォオオオイ!!」
「ッ!」
炎を纏った両腕を目の前で重ねられれば、高密度エネルギーを感じさせられる。打撃ではない何かが来る、そう予感したディッセンバーが掌を前にして体に腕を巻けば、虚空から棺が飛び出して。
「オールインワン……失礼。深遠の納骨庫【シャドウカタコンベ】、開帳!」
本来なら影から物体の収納、放出ができるらしいが、空中に影はできない。そのため収納しているガジェット本体を顕現させたディッセンバーが扉を開かせれば、デストロイキングボスの顔面目掛けて、道中にキャプチャーしていた巨大な蜘蛛の巣を発射!
「なにぃ!?」
至近距離で放たれる顔面への一撃。しかし、触れた蜘蛛の巣の方が弾け飛びさほど効果はないようだが……。
「ッツ!?デストロォオオオイ!?」
蜘蛛の巣を破壊したはずの顔を覆い、突然デストロイキングボスがのたうち始めた。
「わーいわーい!」
『さすがに目に直撃したら効果はあるのね……』
はるか下方、ママに肩車してもらって、両手と背中の蜘蛛脚を振り回すしいな。彼女が張った蜘蛛糸はたんぱく質の繊維に強酸が織り込まれた物。本来なら触れればただでは済まない代物だが、それをいくつも踏みつぶして見せた辺り、存在としての強度が違うのだろう。しかし、それも眼球に直接触れたとあれば、灼けつくような痛みに悶える事になるらしい。悶絶する巨躯を前にして、ディッセンバーは身を翻し、気流を突っ切って下方へ。
「こちらの世界も掃除のし甲斐がありそうですね……やれやれ」
落下と共に、微笑みながら構えたるは銀の斧槍。重力に導かれながら、白銀の闘気を上方へ噴き出し更に加速。
「さて、あらゆる攻撃をデストロイするあなたですが、度重なる破壊を受けた蜘蛛の巣は、砕けてなお貼りつくもの。それが強酸性を示すとあらば」
ドスッ、生々しい音と共に、デストロイキングボスの脚に突き刺さった槍をねじ込み、傷口を抉りながらディッセンバーが微笑んで。
「このように、多少なりとも弱体化するというものです」
「デェエエエストロォオオオオイ!?」
猟兵達の動きが重なり、初めて刺さった直撃にデストロイキングボスが絶叫。
「……人面蜘蛛に転移してくるよりましとはいえ、いきなり戦場全体デストロイするなよ……下手すりゃ自分をデストロイして自滅しないか?」
館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は黒剣を携えて上昇していく岩塊を飛び渡ると、ディッセンバーの長得物を足場に、投げ飛ばしてもらって肉薄。悶絶の隙に首を狙うが。
「デェエストロォイ……そこか!」
「チィ……!」
気づかれた。予想より早い視覚の回復。それ自体は想定の範囲内だ。問題は……。
「こっちから突っこんだ分、転移がカットされた上に既に充填が終わってる……!?」
ディッセンバーに向けて撃つはずだったデストロイ砲。それが、撃ち損ねた事で敬輔が想定していた、先制攻撃の回避法が潰れる事態に陥ったのだ。予測より『速い』敵の攻撃に防御姿勢を取るが。
「まま、おねがい!」
『何とか届けます……これを!!』
下方の足場にいたしいなが蜘蛛の巣を編み、ママが腕力に任せてぶん投げた。高速で飛来する蜘蛛糸と大地の欠片の土団子を敬輔が刃の腹で止め、蹴り飛ばして射線から逸れながら一瞬でもデストロイ砲の到達を遅らせようとするが。
「おぉおおお!?」
余波で吹き飛び、戦場で渦巻く雷雲の中へと消えていく。
「……時は来た!」
「今度はなんだ!?」
雲の中、何かにぶつかった敬輔は足場が勝手に動き出したため、傍の岩にしがみついていたが、それは『角』であり。
「久しいな、俺が分かるか?」
ゆっくりと雲を振り払い、上昇気流を無視して浮遊するそれは、鱗の一枚一枚が電流で構築された巨大な龍……開幕早々盛大にやられたアリスの敗北を糧に急成長した竜神親分『碎輝』の姿であった。
「お、おぅ……」
かつて、必要な事であったとはいえ、四肢を斬り落とした相手と顔を合わせる事になり、微妙に気まずい敬輔であったが、幻影なので気にせず話を進めていただこう。
「このまま突っ込む。振り落とされてくれるなよ!!」
「……あぁ!」
竜神親分こと、雷霆龍『碎輝』の首元に、真っ赤な宝珠が見える。その中に、虫入り琥珀よろしく、全裸で丸まったアリスが眠ったまま納まっているような気がしたが、敬輔は何も見なかったことにするのだった。現状、唯一の致命傷者なんでね、そっとしておいてあげてください。
「デェストロォイ……!」
取り囲むように、周囲をぐるりと巡りながら頭上を取る碎輝。身構え、睨みながらも迎撃してこないところを見るに、デストロイキングボスは冷却中で動きが鈍っている事は明らか。
「ここが攻め時か……!」
天上より碎輝が顎を開けば、光条と見紛う雷撃の束が降り注ぎ、巨人の肉体を焼き払うだけに飽き足らず、雷龍はジリジリと距離を詰め、詠唱と共にため込んだ電気エネルギーを放出しきると巨人の喉笛に食らいつく。
「楽しませてくれるではないか、デストロォイ!」
しかし、デストロイキングボスが再び動き出し、雷龍の頭を掴めば握力より先にその怪力をもって粉砕されて、血飛沫と稲光を散らし龍の姿が消えていく……だが、ディッセンバーは見た。落下していった人影が、血みどろになりながら不敵に笑う竜神親分と、急速再生中なのか宝珠に納まったままのアリス、二人分しかなかった事を。
「ゼロ距離、もらった!」
「何!?」
雷龍が頭を掴まれる寸前、すり抜けた敬輔が肩口に剣を突き立てた。敵の肉体に対し、長剣ではあまりに刃が小さく、突き立ててなお傷口そのものは小さいが。
「……挽き肉にしてやると?その覚悟がなきゃ、この戦場には来れないって!」
自らに落ちる拳の影。迫る死の気配に黒騎士は口角を上げて。
「デストロォイ……我が自らをも破壊すると思っているのか?それはノォットデストロォイ!!」
容赦なく振り下ろされた拳の下から、瑞々しい破音と共に黒き鎧の欠片と赤い雫が伝っていく……そして。
ゴリュッ。
「……?」
奇妙な、鈍い音がした。
「なんだ……?腕に、力が入らぬ……?」
滑り落ちていく無惨な肉塊を見送って、デストロイキングボスが首を傾げる。確かに、敬輔の剣は巨人の腕を落とすには至らなかった。だが、最期の瞬間、突き立てた刃を振り払い剣圧で斬痕を伸ばし、翻した刃を残痕の中へ改めて突き立てて、深く斬りつけ肉を裂き、骨の関節まで到達させていたのだ。そこを叩き潰されたことで、デストロイキングボス自身の怪力をもって脱臼を引き起こしたのである。
「おのれ……デストロォイ……!」
筋力をもって強引に骨をはめ直そうとするデストロイキングボスを前に、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が跳んだ。
「やはり一筋縄ではいかないお相手のようですねぇ……!」
三対のオーラの翼を広げ、上昇気流に乗って高速で巨人の上空まで舞い上がりながら、太陽を背にして身を隠す。目を細めて手を翳す巨人の直上へ、るこるがテレポートすると。
「けれど、お相手様が異能というよりも、単純に物理的にお強いという話は聞いておりますからぁ、ここはUC頼みではなく、物理的にお相手しますぅ!!」
膝を抱えるようにして丸まったるこるの体は生物である事をやめて、中性子星……即ち天体と化す。ところが、思考能力を失う前にふと、るこるは気づいた。
「あれ、でもデビルキングワールドって、太陽が見える事ありまし」
思考が終わる前に、彼女は天体と化してデストロイキングボスへと落下。その圧倒的質量を持って勝利を収めたのである。やったね!
「……?」
敵を打ち倒し、元の体に戻ったるこるは辺りを見回し、首を傾げる。
「あれ?私、勝ちましたかぁ?」
「おや、変身中の記憶はないのですね」
自前の箒で『だだっ広い真っ平な戦場』を掃除するディッセンバーがにこり。
「無事、戦いは終わりましたよ……」
「そう……ですかぁ……?」
納得いかない雰囲気のるこるであったが。
「ママ!ごはんたべにいこう!このせかいのごはんはふしぎないろなんだよ!!」
『そうなの……?あまり文化が違うと、調理が大変なのよねぇ……』
しいなとママのコンビ(親子?)は早々に町に向かってしまい、ディッセンバーもグリモア持ちの所へと向かった。『たった一人』残されたるこるは頬を膨らませて。
「なんでしょう……誰かに騙されている気がしますぅ……!」
むくれて黒幕を探し回るものの、何も見つけられず帰路につくのであった……。
「どうしてこうなった……!」
カウンター席にて、出されたアイスコーヒーを前に敬輔が頭を抱える。
「こういう謎空間が存在すると聞いてはいたが、何故俺が!?」
「あら、貴重な体験だと思うわよ?世界の歴史【アカシックレコード】に残せない何かが起こってしまって、私達は本来知り得ない何かを覗き込んでいる……ま、ただの臨死体験かもしれないけどね☆」
バスタオル一枚の姿で空中を浮遊するアリスがウィンクしながら真っ青なジュースをストローで啜っていると、不意に『そちら』を向いて。
「ちなみに、ここから先は本ッ当~~~にくだらないオマケだから、興味がない人はシナリオに『つまらなかった』ってコメントつけて『悪いね!』ボタンを押してブラウザバックすることをお勧めするわ!」
アリスの謎コメントに続き、『ソレ』が長い、長い溜息をついた。
「いやまぁ、ね?一応有効打ではあったし、もうあれこれ厳しい事いう必要もない状況にはなってたよ?でもね、物事には限度ってもんがあるんだよ」
「つまり、俺らの中にやらかした奴がいる、と?」
一周回って悩むことをやめて、怪訝な顔でグラスを傾けた敬輔。濃厚な苦味にほんのり残る酸味を感じ、どうやら『当たり』を引いたと察して、内心胸を撫でおろしていると、アリスがニコー。
「多分、宇宙最凶存在がしれっと参戦したからよね?」
「……は?」
早速ついて来られなくなったらしい敬輔がコスモイェーガー状態になっていると、『ソレ』が虚ろ目になり。
「中性子星ってのはとんでもない高密度の天体で、その重量は文字通り桁違いの存在でな。空間への干渉能力はブラックホールの次に強いとされている。で、コレを破壊するにはブラックホール、もしくは同格の中性子星をぶつけるしかないとされているが……」
「そういう物理法則を無視して破壊できる、デストロイキングボスの攻撃が命中しちゃったのが、今回の問題点ってことよね?」
グラスを空にして、真っ青なケーキを口にするアリスがふよふよ。『ソレ』は敬輔へやたら赤いクッキーを勧めると、再びため息をつき。
「そう。で、普通ならばるこるが文字通りお星様(意味深)になって終了なんだが、中性子星の特性として、破壊された場合にはストレンジ物質と呼ばれるものを排出する可能性がある」
「ちなみに、この辺はいくつもの学説があるから、ここの話を鵜呑みにしちゃだめよ☆」
アリスがどこかへウィンクすると、敬輔がゴクリ……。
「その物質がバラまかれると、どうなるんだ……?」
「世界が物理的に滅ぶ」
「……?」
もはや思考放棄した敬輔がクッキーをサクッ。
「スイカ味ッ!?」
「で、邪神様直々に干渉して、るこるちゃんの敗北……天体破壊をなかったことにしちゃったのね?」
「覚えとくといい、時には直接口にすることで『削除』されることもあるとな」
「ふふっ……はぁい♪」
妖艶に、あるいは無垢な子どものように笑うアリスがふわり、降りてきてカウンターへ腰かけると。
「でも、一応私達は勝った。そういう事でいいのよね?」
「そこは信じてくれていい。お前たちは無事に勝ったとも。ただ、その勝利に付随するモノが問題だった、それだけだ」
ゆっくりと、ドアが開く。外は炎天下なのか、強烈な光で道は見えないが……誰かが手招きしている。そんな気がして。
「さぁ、猟兵どもよ帰るがいい。我々観測者はいつでも貴様らを見守っているぞ……」
「見守っている、ねぇ……監視の間違いじゃないか?」
「敬輔、そんなにネタ堕ちしたいのか?」
「あ、はい、黙って帰りまーす!!」
すたこらさっさと扉の向こうへ消えていく敬輔に続き、裸足で歩くアリスがくるり。
「それでは、またお会いしましょう?」
「二度と来るな。つーかお前も実質即死前提の行動とるんじゃねーよ、調整が大変なんだからな?」
「それは約束しかねるわねぇ……」
仄暗い微笑みを残し、最後の猟兵は去っていった……。
大成功
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