4
7thKING WAR㉖〜悪を以て巨悪を制し……

#デビルキングワールド #7thKING_WAR #1stKING『魔王ガチデビル』

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#デビルキングワールド
🔒
#7thKING_WAR
🔒
#1stKING『魔王ガチデビル』


0




●1stKING「魔王ガチデビル」の独白
 私は、悪魔達も、猟兵達も、決して侮ってはいなかった。

 全てにおいて万全の計画だった。両者を刺激せず、雌伏の時を過ごしながら計画を練った。異世界より3人の魔王を呼び寄せ、我が配下として手駒に置いた。ジャッジメントガールの目覚めに合わせて白羽の矢が私を選ぶように仕向けた。万全に万全を重ねた計画、如何に百戦錬磨の猟兵と、強力無比たる悪魔と言えど、突破は困難な策であった。

 にも関わらず、僅か半月で私の策をこうも瓦解させるとは。彼らの原動力は一体何だというのだ。猟兵とはそこまで強力な存在だったということか。

 認めねばなるまい、私の力不足と見通しの甘さを。だが、まだ希望はある。デビルキングになる野望は潰えたが、私の計画はまだ終わってはいない。猟兵達の猛攻を凌ぎ続ければ、『悪魔契約書』を幾らかはばら撒き、あわよくば撤退が可能だろう。至善の策が潰えたならば、次善の策に賭けるのみ。

 私の後にデビルキングの称号を僭称した者共……彼らの能力を解析し、5つの『KING宝珠』を作り出した。

 2ndKING『魔王ビストログルメ』。
 3rdKING『堕天使エンケロニエル』。
 4thKING『キング・ブレイン』。
 5thKING『勇者リリリリ』。
 6thKING『ビームスプリッター』。

 全宝珠、起動。

 全てのデビルキングの力を束ねたこの私は、最早1人で万軍が如し。加えて我が大罪を象徴するユーベルコードを加えれば、最早猟兵など敵ではない。悪魔共も烏合の衆に等しいだろう。

 全世界へのカタストロフ──我が最終目的は未だ潰えず! 邪が人を駆逐し、大地は永遠に還らず、天より裁きの光が降り注ぎ、破滅が世界を覆い尽くす! その全ての引き金を、今私が握っているのだ! 全ての世界に破局を、全ての世界に滅びを! それこそが、悪魔輸出計画の究極の目的──!

●悪を以て巨悪を制し、絆の力で悪を討て
 グリモアベースのブリーフィングスペースに集まった猟兵たちは、グリモア猟兵であるベルゼ・アール(怪盗"R"・f32590)から予知に対する説明を受けていた。

「今回のターゲットはオブリビオン・フォーミュラ、1stKINGの魔王ガチデビルよ。文字通りの巨悪、全世界にカタストロフを齎すために全ての悪魔を強制的に従わせる『悪魔契約書』を使い、『悪魔輸出計画』を実行に移そうとしているわ」

 すでに彼が次期デビルキングになることはない。猟兵たちがデビルキング候補の1人を破った時点で、「猟兵という集団」がデビルキングの暫定候補となった。この時点でガチデビルが7thKINGとなることは防がれたのである。

「ただ、ガチデビルはちょっと諦めが悪いみたいでね。ついに私たちを直接倒そうと、歴代キングの力を解析して『KING宝珠』を作成したわ。つまり、私たちはガチデビルを含めた歴代キングを同時に相手してるも同然の状態になるってわけね」

 どうやって倒せと言うんだ、という声が猟兵達の中から上がる。百戦錬磨の猟兵と言えど、強大な存在を6人も相手取るのは非常に困難を極める。

「突破口が無いわけではないわ。KING宝珠は強いものへ味方する……つまり、KING宝珠に対してある程度の攻撃を加えれば、こちらがKING宝珠の力を行使できるわ」

 ベルゼの背後のスクリーンに、KING宝珠の力の内訳が表示される。

 ・2ndKING『魔王ビストログルメ』の宝珠:様々な料理を作って食べさせ、所有者を回復する。
 ・3rdKING『堕天使エンケロニエル』の宝珠:所収者に従う「植物怪獣軍団」を召喚し続ける。時間経過でねずみ算式に増える。
 ・4thKING『キング・ブレイン』の宝珠:新たな知識を脳内に流し続け、戦闘時間に比例して所有者を強くする。
 ・5thKING『勇者リリリリ』の宝珠:宝珠自身が盾のオーラを放出しながら飛び回り、所有者を護る。
 ・6thKING『ビームスプリッター』の宝珠:所有者は通常のユーベルコードと同時に「腹からビーム」を撃てるようになる。命中精度・ダメージ共に大。

「もちろん、これらのKING宝珠の力は奪取しない限り、ガチデビルが行使することになる。だから、KING宝珠からの攻撃とガチデビル本人のユーベルコードの両方に対処した上で、KING宝珠を味方につけなきゃいけないわね」

 言うは易く行うは難しということは承知の上よ、とベルゼは頭を振る。だが、ベルゼのグリモアが見せたものはこれだけではなかった。

「実はね……グリモアがガチデビルに関するビジョンを見せた時、変なノイズが混じってたのよ。そのノイズを解析したところ、こんな言葉が浮かび上がったわ」

 ベルゼがスクリーンの表示を切り替えると、一つのフレーズが示される。

「悪を以て巨悪を制し、絆の力で悪を討て」

 このフレーズを、ベルゼは自分なりに解釈していた。

「悪を以て巨悪を制し……ってのはおそらく、KING宝珠のことだと思う。後半部分の『絆の力で悪を討て』……これは多分、一人よりも複数人で立ち向かうべき、ということなのかもしれないわね。だから、皆には他の猟兵との連携を前提にした戦術で挑んでほしいの。一人で全ての宝珠を対処するのには限界があるものね」

 思えば、これまでもそうだった。猟兵は一人ひとりが一騎当千、万夫不当の力を持っている。だが、その猟兵たちがこれまで強敵を次々と打ち破ってこられたのは、絆の力──仲間との協力があってこそだった。

「今こそ、猟兵の基本に立ち返る時よ。皆で共に戦い、皆でデビルキングワールドの平和を勝ち取りましょう!」

 ベルゼの言葉を受け、猟兵たちは互いに準備を整える。グリモアが輝き、ガチデビルの元へと転送するポータルが開いた。

「さぁ、勝利と希望を盗み出してやるわよ、皆!」

 最終決戦の幕が上がる。7thKING WAR最終作戦、ターゲット・魔王ガチデビルの完全撃破──開始。





●キマイラフューチャー・某所にて
「うーむ、メッセージはちゃんと届いただろうか」

 かつての4thKING、現オウガ・フォーミュラのキング・ブレインは、腕組をしながら首を傾げていた。

「吾輩の故郷の状況を偶然とは言え知ってしまったからなぁ……まさかガチデビルが蘇るとは。正直あんなのが蘇って好き勝手されると吾輩としても寝覚めが悪い。というかぶっちゃけこっち来られても困る……。ま、本来は敵対する立場の猟兵たちに塩を送る格好となってしまったが、吾輩自ら赴いても今のあいつには敵わんだろうし。うむ、やはり大首領たるもの、他人の力を使うのが一番だな」

 グリモアの予知というシステムを利用してメッセージを混入させる。そのためにキング・ブレインは小さな事件を起こした。と言っても、キマイラフューチャーの公園にひっそりと「大首領参上」と落書きをする程度のものだったが。だが、オウガ・フォーミュラたる自分が事件を起こせばグリモアがキャッチする。これを利用して、落書きをしながらあのフレーズを呟いたのだ。

「悪を以て巨悪を制し、絆の力で悪を討て……んー、いい響きだ」

 キング・ブレインはひとつ頷くと、決戦に赴く猟兵達を思い、空を見上げる。

「ここで倒れてくれるなよ猟兵諸君。お前達を倒すのはこの吾輩なのだから……なんちゃって! ブーレブレブレブレ!」


バートレット
 どうも、バートレットです。

 いよいよ7thKING WARも最終盤です。猛攻を掻い潜り、ガチデビルを撃破しましょう。では、今回のプレイングボーナスの発表です。

 =============================
 プレイングボーナス……敵の先制攻撃に対処する/「KING宝珠」を味方にする。
 =============================

 UCの行使1回につき、敵の先制攻撃も1回行われます。複数回UCを使用する場合は回数分の先制攻撃への対処が必要となる点にご注意ください。

 KING宝珠はある程度攻撃を加えると味方につけることが可能です。ただし、ガチデビルが倒されるとKING宝珠も消えるため、持ち帰りは不可能な点、予めご了承下さい。

 一人で全ての宝珠を相手取るのは極めて難しいものと考えられます。そのため、可能な限り他の猟兵との連携を意識したプレイングを心がけてください。リプレイも複数人の連携を行う形での執筆が多くなると思われます。また、お誘い合わせの連携も大歓迎です。もちろん、1人で宝珠を複数個相手取る手段が行使できるならばこの限りではありません。

 OP承認後即座に募集を開始します。締切はシステム的に閉まるまで受け付けますので、奮ってご参加ください。可能な限り執筆いたします。その他諸注意はMSページをご確認いただければ幸いです。

 では、皆さんのアツいプレイングをお待ちしております!
105




第1章 ボス戦 『1stKING魔王ガチデビル大罪形態』

POW   :    『傲慢』
【真なる魔王の姿 】に変身する。変身の度に自身の【操作中のKING宝珠】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
SPD   :    『暴食』
【腹部から放つ顎状エネルギー『暴食顎』 】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【魔王】に変身する。
WIZ   :    『色欲』
【闇色の魔力障壁 】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【ガチデビルと悪魔契約したい気持ち】を誘発する効果」を付与する。

イラスト:落葉

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
もー!とにかく回避重視!当たらないこと!
悪魔的視力で敵の動きを盗んで、魔力やその辺の揺らぎも視てビームや暴食顎による攻撃の予兆を先読み。空にも逃げられる様に宙に錬成したダガーを足場に蹴って移動。武器改造した、爆発特性のダガーを投擲して爆風離脱。
隙を見て【ショータイム!】とある属性が弱点の精巧な偽腕などを贋作生成し、当たったふりして暴食顎に食わせるよ。これは弱点誤認が目的!例えば味方の得意属性が炎なら、よく燃える樹属性の魔王に変身する様に地属性の偽腕を食べさせて魔王形態を誘導ってね。他には3rdKINGの植物怪獣軍団を阻む、贋作迷宮を生成し実体と幻を切り替えた支援にミミック化で反撃。


久遠寺・遥翔
アドリブ連携歓迎

なるほど、強敵だな
出し惜しみは無しだ

イグニシオンに[騎乗]
先制攻撃だけはこの形態で受ける
研ぎ澄まされた[視力]と[第六感]で相手の腹部から放出される顎を[見切り]
[メカニック]技能を駆使して外付けした偽の装甲を捕食させる
偽りの弱点に適合してくれればラッキーなんだが

同時に6thのビームももちろん警戒
[残像]を残しつつ[ダッシュ]回避だ

そしてこちらもオーバーロード、イグニシオン・ソーリスへと変形しUCを起動
戦場にいる全ての敵を[焼却]し味方を癒す焔の領域を展開する
広い分決め手には程遠いが戦場全体を有利な方向へ傾けてくれるはずさ

俺自身は他の味方と連携してまず宝珠の奪取に動く
優先すべきは4thだ
こいつを放置すると他の宝珠のより効率的な使い方を身に着けてしまうだろう
「お前のオリジナルがこの状況に一枚噛んでるんだろう? ならさっさと力を貸しやがれ!」
宝珠を奪った後はその知識も活用しつつ
他の味方が奪取しようとしている宝珠を確認してその援護に回ろう
俺達が力を合わせればなんとでもなるはずさ


カシム・ディーン
共闘希望

共闘か
まぁ本来それが正しいでしょうね
「メルシー達は何時もそうだよね☆」
チームプレイはちげーっての

【情報収集・視力・戦闘知識・集団戦術】
周辺状況
敵の攻撃の性質と宝珠の動き
それらを冷徹に分析
現行の仲間と後続の参加者にも情報共有

対SPD
【属性攻撃・迷彩・武器受け】
光水属性を己達に付与
光学迷彩で隠れつつ水の障壁で匂いや音も隠蔽
同時に無数の立体映像を展開して捕捉させない

UC発動
【弾幕・念動力・スナイパー・空中戦】
超高速で飛び回り他参加者が狙う以外の宝珠を集中的に攻撃して味方につける

【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣と水槍での連携連続斬撃を叩き込み
更に部位やもしも料理が残ってたら強奪し回復妨害


ロビン・コールドラッド
うーん、これはとっても大きなウサギだね☆
一人で狩るのは難しそーだ! でも倒せたら~成果もい~っぱい♪
でもでも、今回は群れで狩るんだって! 頼れる~☆

え~っあっちが先に動くのお? ずる~い! でもなっとく☆
でっけぇ顎が襲ってきたら、広げた「ウサギのコート」の下で「ウサギのボビー」を連続爆発させて、風を受けて飛んで逃げるよお!
引っ掛かりそうなら「ウサギのナイフ」で切るよ。コートでも牙でも。剥ぎ取るってことは物理に干渉する実態あるってことだし。

あとは~その調子で移動しながらほかの人がこわそーとしてる宝珠をUCでぶったたきに行こ~っと☆
邪魔が入りそ~なら、「ボビー」くんの爆撃でちくちく邪魔しちゃお☆


把繰理乃・えんら
先制への対処ですが、攻撃確認後全力ダッシュからの逃げ足で回避を試みますが恐らく避けきれないと判断。
バグルケインを過剰に光らせおびき寄せしそちらを食べていただきます。
バグの弱点はむしろ教えていただきたいくらいです、今後の生活に役立ちますので。

対処後速やかにUC使用、突然で申し訳ありませんがガチデビルと交戦中の皆様と共に地へ潜ります。
この異常空間ならば我々の方が有利なはずです。

他の方が狙っていない宝珠の情報を収集後バグッテルシューターからのレーザー射撃で攻撃、宝珠を味方につけた後本体に目標を切り替え射撃し続けます。
この空間を維持するのが私の役割です、なるべく目立たないよう慎重に行動しましょう。



●Decisive Battle Against DEVIL KING
「共闘か……まぁ本来それが正しいでしょうね」

 決戦の場で、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は一人呟く。オブリビオン・フォーミュラに加えて5つのKING宝珠への対処となれば、単独での突破は無謀。故に連携を行うことは最適解であった。

「あぁ、出し惜しみはなしだ。そうだろ、皆」

 久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)はその言葉に力強く応え、この場にいる猟兵たちに呼びかける。言葉にせずとも、猟兵達の思いは一つだ。眼の前の強敵を駆逐する。それこそが彼らの戦い。

「一人で狩るのは難しそーだ! でも倒せたら~成果もい~っぱい♪ 群れで狩るなら安心だしね! 頼りにしてるよ~?」

 ロビン・コールドラッド(ドン亀・f25775)は他の4人を見回しながら飄々と語る。うんうん、とカシムの横では彼の相棒のメルシーが頷いていた。

「メルシー達は何時もそうだよね☆」
「あのな、チームプレーとは違うからな」
「いや群れで狩るってやつ」
「8桁の人数で蹂躙するのも何か違うと思う」

 メルシーといつもの漫才を繰り広げるカシムだったが、不意に2人は殺気を検知しガチデビルに注意を向ける。どうやら向こうが先んじて攻撃を仕掛けてくるようだ。

「……ってぇ、あっちが先に動くのお!?」
「もー! とにかく回避重視! 当たらないこと!」

 ロビンが面倒そうな声を上げ、ユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)が自分に言い聞かせるように宣言する。

「しかし、全部は避けきれないでしょう……ならば敢えて!」

 全てを避けきれない、と判断した把繰理乃・えんら(嫌われ者のバーチャルメイド・f36793)は手にした光剣、バグルケインを過剰に光らせて攻撃を誘導する。同様に、遥翔もイグニシオンに取り付けた追加装甲に攻撃を受けさせるべく構えた。ユニ、カシム、ロビンの3人はその隙に散開して攻撃を回避する。

「目くらまし、置いとくよお!」
「同じく!」

 ユニとロビンが選んだのは爆風を利用した跳躍だった。ユニは爆発特性のダガーを投擲。ロビンは爆弾人形「ウサギのボビー」を散布して連鎖爆発を決める。派手な爆風がガチデビルの狙いを狂わせ、ユニは空中にダガーを錬成してロビン共々ダガーを足場代わりに跳躍して逃げる。一方、爆発によってガチデビルに意識の間隙が生まれたことを察知したカシムは、メルシー共々光学迷彩で身を隠す。水流の障壁を同時展開することで嗅覚による感知も不能となり、カシムとメルシーは完全にガチデビルの意識外の存在となった。

「3人逃すか。だが、貴様らはそうは行くまい!」

 ガチデビルはせせら笑いながら暴食顎をけしかける。まずイグニシオンの追加装甲を、そしてえんらのバグルケインを喰らった。

「よし……」
「かかりましたね!」

 2人はただ防御手段として食らわせたわけではない。これは反撃の一手であった。突如として暴食顎の挙動がおかしくなる。攻撃の狙いをうまく定められないばかりか、攻撃そのものの手応えがなくなる。

「な、なっ……貴様ら、何をした!?」
「何って、食らわせただけだが。もっとも、そいつは食わせるために装備した偽の装甲だがな。装甲材質は重い、つまり重装型の相手に対応した形となるはずだ」
「っ、貴様は本来高機動型……攻撃の狙いを定められないのはそれが原因か……」

 ガチデビルは暴食顎のコントロールが難しくなった原因を悟る。だが、攻撃自体に手応えがなくなるはずはない。即ち、えんらが食らわせた物の弱点となる。

「私のバグルケインはバグの集合体。つまりバグの弱点になるはずですが……」

 その先を引き取ったのは隠密を行いながら敵の攻撃を解析していたカシムだ。

「バグの弱点、それはデバッグ作業……情報解析しました。現在のガチデビルの攻撃ですが、喰らった瞬間に『我々の弱点が消失』します」
「なるほどね……私たちの弱点に対して『修正パッチ』をわざわざ当ててくれるってことか」

 ユニがニヤリと笑う。これでガチデビルからの攻撃は喰らっても問題がない。いや、むしろ食らったほうが恩恵がある始末。つまり、ガチデビルは迂闊に手が出せなくなってしまったのだ。

「私の攻撃が利敵行為になる……!? そんな馬鹿な話があってたまるか!」
「ズルをしたのはそっちでしょお~? ズルをするような悪いウサギさんは……」

 ロビンは煽るような口調でガチデビルに声をかけるが、不意に鋭い顔つきに変わる。

「食べてやる」

 それが反撃の狼煙だった。5人はそれぞれ、宝珠の奪取を目指す。

 ガチデビルはすぐさま自らの手による攻撃から宝珠での攻撃に切り替える。植物怪獣軍団が迫る中、これに即応するのはユニだ。

「こいつは任せて! ――大怪盗も真っ青、騙りの摩天楼。稀代の贋作師。偽物は真物に。真物は偽物に。偽りの王冠を腕輪に。始めよう、騙り語れ……贋作大迷宮よ!」

 植物怪獣軍団は突如として現れた迷宮に囚われる。真偽が目まぐるしく変わる迷宮は、偽りの出口や壁がひっきりなしに現れては消え、脱出しようと足掻く植物怪獣軍団を幻惑させる。

「アクティベート、オーバーロード! イグニシオン・ソーリス!!」

 次いで遥翔がコクピット内でコマンドを打ち込む。それは超越の力、オーバーロードの起動コード。赤き炎はより温度を増し、青白い炎へと変わる。

「来い、4th! お前のオリジナルがこの状況に一枚噛んでるんだろう? ならさっさと力を貸しやがれ!」

 遥翔は薄々気づいていた。あのメッセージ──「悪を以て巨悪を制し、絆の力で悪を討て」。これを放ったのがキング・ブレイン本人であることに。ならば、キング・ブレインの宝珠は他の宝珠よりも積極的に猟兵に力を貸し与えるはずだと。

 青白い炎が4thの宝珠を灼く。その瞬間、4thの宝珠はイグニシオン・ソーリスへと舞い込む。遥翔を新たな主と認めたのだ。

「えんら! 援護する、6thの宝珠を狙え! 多分それがお前と一番相性がいい! ユニは引き続き3rdの攻略を続けてくれ。カシムは5thを頼む! ロビンは遊撃しながら2ndの攻略を同時並行で進めてくれ、そうすればガチデビルは丸裸だ!」

 溢れ出る知識をもとに、遥翔は司令塔として他の仲間に指示を出す。

「6th……ビームスプリッターですか! 了解です!」
「おっ、6thを狙っちゃう? じゃあ援護しちゃうよー! ……っと、もちろん2ndにも同時攻撃、任せて☆」
「こっちももう少しで攻略完了、援護に回れるよ!」
「5th……勇者リリリリの宝珠ですか。いいでしょう、捉えてみせます!」

 えんらはビームスプリッターの宝珠に対して「バグッテルシューター」を構える。バグデータで構成されたレーザーを放つ光線銃だ。イグニシオンが6thからのレーザー攻撃を引き付け、爆風を活かした機動力でロビンが「ウサギのナイフ」を振るい、ヒットアンドアウェイを繰り返す。2ndの宝珠と6thの宝珠を凄まじい速度で反復しながら両者に攻撃を加えている格好だ。

「傷をつけたよ! 狙うならココ☆」

 ロビンが指差した場所に照準を合わせ、えんらは引き金を引いた。6thの宝珠が撃ち抜かれたかと思うと、えんらの手に渡る。えんらの攻撃に合わせて6thの宝珠の力により、腹部からビームが出るようになっている。

「なるほど、こうなりますか。バグが一つ増えたような感じで妙ですが……単純にDPSが増えるのはありがたい」

 同刻、3rdは攻略の大詰めを迎えていた。ユニによって巧みに操られた植物怪獣軍団は、なんとユニの姿を発見する。その場から何故か動かないユニを植物怪獣たちは一斉に攻撃し、撃破するが……。

「あっと、それはボクじゃないんだな……そう、宝珠だよ」

 なんと、宝珠をユニの姿に見せかけていたのだ。虚実入り乱れる迷宮で、彼らは見事に偽物に引っかかってしまったのである。たちまち、植物怪獣軍団はユニが指揮権を得ると共に、虚実が入り乱れる空間は解除される。

「よし、5thを手伝おう! 行けっ、植物怪獣軍団! 5thの動きを封じるんだ!」

 その5thの攻略を進めるカシムとメルシー。超高速で飛び回って5thの宝珠に追いつき、弱点を的確に狙う。針の穴に糸を通すような狙撃術で、銀貨を飛ばして盾による守りを掻い潜り射撃を繰り返していた。

「しかし、流石に時間がかかりすぎている……!」
「お待たせ!」

 そこへ、ユニが率いる植物怪獣軍団が押し寄せてくる。飛び回る5thは蔦や枝に絡め取られて身動きが取れなくなってしまった。

「感謝します!」
「よーし、一気にトドメだー!」

 ユニに礼を述べつつ、一気に銀貨を叩き込む。メルシーもカドゥケウスからの火線を集中させて、5thを奪取。盾のオーラをガチデビルから奪い取った。さらに2ndの宝珠が生み出す料理をくすねて、体力を回復する。

「後は2ndですか……!」
「もう終わらせるよ☆」

 ロビンのヒットアンドアウェイ戦法は、えんらと遥翔からの援護射撃も相まって、2ndに十分以上のダメージを与えきっていた。全員に軽食が配布され、一口食べることで宝珠攻略のために消耗した体力が戻っていくのを感じる。

「んー、ウサギ肉のハンバーガーなんて、わかってるじゃん?」

 自分の好物を2ndの宝珠から提供されて、ロビンはご満悦だ。

「馬鹿な、全ての宝珠を突破しただと?」

 ガチデビルは驚愕で声を震わせる。最早ガチデビルを阻むものは何もない。

「念には念を……皆さん、少し浮遊体験をすることになりますが我慢を!」

 ダメ押しの状況作成はえんらの手によって為された。ユーベルコード「オール貫通落下バグフィールド」。地上の当たり判定を消失させて全員が地下空間へと落下していく。

「ぬ、おぉぉぉっ……!」

 ガチデビルには飛翔能力はない。対して、猟兵側は空中での行動手段が存在する。この瞬間、地の利を得たのは猟兵側だ。

「皆、攻撃をガチデビルに集中させるんだ!」

 遥翔の号令一下、全員が宝珠と共に一斉に攻撃を開始する。銀貨が、植物怪獣軍団が、鋭いナイフが、空中に浮かぶダガーが、二筋の光線が、そして蒼き炎が、ガチデビルへと収束し、殺到する。

「悪を以て巨悪を制し──」
「──絆の力で悪を討つ!」

 ユニと遥翔の宣言通り、ガチデビルは5人の猟兵と自らが生み出したKING宝珠の手で討たれる。

「馬鹿な……猟兵……ここまでとはッ……!」

 ガチデビルは思い知る。過去のデビルキングの力をもってしてもなお、猟兵という存在はそれを越えてくるのだと──。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リリエル・エルヴィータ
【ドヴェルグ】※アドリブ歓迎
我、場違い……でも頑張らないと!我は神、神なんだよ!

え?いきなり変身?
そ、そういうのは追い詰められてからじゃないのかな!?かな!?
あ、既に他の猟兵さん達が……
うぅ、なら回復した傍から魔法の矢の【弾幕】で【爆破】なんだよ~!
(ガチデビルと宝珠にキューピッド・クロスボウを超連射)

宝珠さんが味方になったら我も【武装せし愛の女神】を発動!
尚人、アイシャ、ポーラ、我の加護(超強化)なんだよ♪
そして我の矢には【優しさ】と【奉仕】の精神を乗せて……ガチさん、良い子ちゃんにな~れ♪

(尚人さんの決め台詞に割り込んで)
愛の力なんだよ♥
ガチさんはみんなの愛、ラブラブパワーに敗れたんだよ♥


ポーラリア・ベル
【ドヴェルグ】アドリブ歓迎
おっかない悪魔さんを氷河期に沈めに来ました。
大好きななおなお(尚人)やあいあい(アイシャ)、あとりりえー(リリエル)と一緒!

闇の先制攻撃だわ!皆散らばんないから防御に徹する!
【天候操作】【全力魔法】の猛凍てつく吹雪で植物怪獣を絶滅させ、お腹ビームはスノーマンロッドから【全力魔法】の氷鏡付き冷凍ビームではじきながら相殺!
闇オーラ攻撃はサイコキャノンから放つ【残像】パワーで逸らしながら皆を守るわ!

悪魔契約……ううん!あたし、なおなおともう愛の契約済みなんだから!
愛の力で一杯のあたしはそんな気持ちを【呪詛耐性】防御するのだー!

さあ反撃なの!
宝珠は【全力魔法】【天候操作】の、氷柱弾幕が混ざった凍てつく吹雪でざくざく攻撃するよ!
風も操ってみんなの攻撃を宝珠に誘導するのー!

UCやビームで更に攻撃して来たら【絶対冷凍】!
全力でガチなデビル攻撃や障壁の魔力の流れを凍らせ止め続けて、みんな!今だよ!やっちゃえー!

(なおなおに抱き着きつつ)ふふん、愛は悪魔の契約より強いのよ♪


日野・尚人
【ドヴェルグ】
引き際を弁えてるとか見た目に寄らず冷静だな。
だけどここで詰めを誤るほど俺たちは甘くないぜ!

襲い来る暴食顎を<見切り>、<武器受け+受け流し>。
受け損ねても魔力障壁(<オーラ防御+ジャストガード>)で防ぐぞ。
宝珠は全て味方に付けるつもりだけど・・・
まだガチデビルの元にあるなら<誘導弾>の<乱れ撃ち>だ!

・・・でも腹からビームはなぁ;

ガチデビル!お前の敗因を教えてやるぜ!
そいつは・・・へ?リリエル?
い、いや、俺が言おうとしたのは・・・ぐ、むぅ;
あ、あーちゃん、ポーラ、援護頼む!
(「愛の力」に照れ&納得しつつUC発動!腹部の口、白羽の矢へ<盗み攻撃>!)
矢か命、どっちにするか選べよな!


アイシャ・ソルラフィス
【ドヴェルグ】
みんな! ケガしてもボクが治すから思う存分戦ってね!
でも出来たらケガしないでほしいなぁ
それとのリリエルちゃんは良い神さまなんだから、ここが場違いなんてことはないんだからね!

相手の先制攻撃は[盾受け]+[全力魔法]と、ほかに使える技能全部を込めた『魔力障壁』で、味方全員を守ろうとします
凌げたら状況を見てボクのUC【シルフィードの輪舞曲】で回復と再行動を挟みつつ、[全力魔法]+[属性攻撃]の組み合わせによる『精霊魔法』で敵の注意をそらすのが目的の後方支援攻撃をします

そうだよリリエルちゃん! あなたはボクたちと尚くんの愛の前に倒れるんだから!
……自分で言ってて恥ずかしいねこれ!!



●最強の絆、それは「愛」
 空中工房ドヴェルグの猟兵たちは、結束力が高い。よって、こと「仲間との絆」という面では他の猟兵グループに引けを取らないと言えるだろう。日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)とその幼馴染であるアイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)、冬の妖精のポーラリア・ベル(冬告精・f06947)、そして放浪の女神であるリリエル・エルヴィータ(記憶喪失の彷徨う謎神・f32841)の4人も例外ではない。

「引き際を弁えてるとか見た目に寄らず冷静だな。だけどここで詰めを誤るほど俺たちは甘くないぜ!」

 そう、尚人の言葉通り、すでに先行した猟兵達の手でガチデビルはかなりの痛手を負っている。だがまだ、トドメを刺すには至っていない。尚人達が望むのは唯一つ、ガチデビルの完全撃破だ。

「我、場違い……でも頑張らないと! 我は神、神なんだよ!」

 集まったメンツを見て、リリエルは少しだけ疎外感を感じていた。というのも、ポーラリア、尚人、アイシャの3人は幼なじみ同士であり、そこに自分が入ってもいいのかという内心の葛藤があったのだ。そんな思いがうっかり口をついて出てしまい、取り繕うように言葉を続ける。

「リリエルちゃんは良い神さまなんだから、ここが場違いなんてことはないんだから」

 そんなリリエルにアイシャはフォローを入れる。リリエルは少しバツが悪そうな様子を浮かべながらも、アイシャに笑みを向けた。

「ともかく、みんな! ケガしてもボクが治すから思う存分戦ってね! でも出来たらケガしないでほしいなぁ」
「よーし、おっかない悪魔さんを氷河期に沈めるぞー!」

 アイシャとポーラリアが全員を鼓舞するように声をかける。

「いいや、せめて貴様らだけでも道連れにしてくれる!」

 ガチデビルは残る力を振り絞って自らの形態をさらに変化させ、一度は猟兵の手に落ちたKING宝珠を蘇らせると、ドヴェルグの4人に向けて苛烈な攻撃を放つ。

「いきなり変身?! そ、そういうのは追い詰められてからじゃないのかな!?かな!?」
「あいつはすでに手負いだからな! 来るぞ、構えろッ!」
「あ、そうか他の猟兵さんたちとの戦いで……!」

 そう、ここで変身をしたということは、言い換えればガチデビルは窮地に立たされていることを意味する。あちらも必死なのだ。即ち、後ひと押しで勝てるのだと尚人は読んでいた。

 全員が防御態勢を取る。ポーラリアがガチデビルの周囲に冷気を充満させ、猛吹雪の防壁を作り植物怪獣軍団の動きを鈍らせる。さらにスノーマンロッドからは氷鏡付き冷凍ビーム、サイコキャノンからは残像を放ってガチデビルと6thの宝珠からの攻撃を相殺。闇色の魔力障壁は幾分威力を弱めたことで、アイシャの魔力障壁とぶつかり合い霧散する。暴食顎は尚人が魔力を込めた障壁と短剣での受け流しで凌いでみせた。

「その魔力障壁で契約なんてさせないんだよ! あたし、なおなおともう愛の契約済みなんだから!」

 ポーラリアは力強く言い放つ。乾坤一擲の全ての攻撃が防がれ、ガチデビルは狼狽した。形態変化でむしろ強化されているはずなのに、何故凌がれるのだろうか、と。

「全て凌ぎ切るだと……先刻よりも強化された攻撃を……!?」
「そんな破れかぶれの攻撃でボクたちを倒そうと思うのが間違いだったね!」

 ガチデビルには余裕がないことをアイシャが鋭く指摘する。故にその攻撃は精彩を欠いており、凌ぐのは容易いと。3人の守りの影にいたリリエルが好機とばかりに飛び出す。

「回復したのなら、もう一度ダメージを与えれば良いんだよ!」

 リリエルが放つのは文字通りの反撃の嚆矢──キューピッド・クロスボウの連射だ。魔法の矢は着弾した端から炸裂し、ガチデビルと宝珠全てへの絨毯爆撃が行われる。

「全部の宝珠に均等にダメージを与えていくんだね! だったらこっちも弾幕だよ!」

 ポーラリアも吹雪を起こし、引き続き植物怪獣軍団を足止めしながらも細かい氷柱による弾幕を形成し、宝珠に着実にスリップダメージを与えていく。5thの宝珠による防御も空間全体に展開される爆撃と氷柱弾幕の前では防ぎきれない。

「ならば6thの宝珠で貴様らをまとめて……むっ」
「さぁ、こっちだよ!」

 6thの宝珠の攻撃はアイシャが精霊魔法を全身全霊の力を込めて放つことで狙いをそらす。こうして出来た間隙を使い、アイシャはユーベルコードを行使した。

「千秋万古より存在する風の精霊たち。どうか彼の者たちに再び立ち上がる勇気を……!」

 その瞬間、一陣の風が吹く。風は4人の間を吹き抜けるとともに、疲労を彼方へ吹き飛ばし活力を与える。これぞアイシャのユーベルコード「シルフィードの輪舞曲」。風の精霊の加護を受けた猟兵たちは事実上、2ndの宝珠に匹敵する継戦能力を得たも同義であった。

「そろそろだな……よし、全部の宝珠、まとめていただくぜ! そこだ!」

 尚人は5発の魔力誘導弾を一斉に射出する。それぞれの誘導弾は正確にそれぞれの宝珠の、ひびが入っている箇所へと吸い込まれるように飛んでいき……炸裂。全てのKING宝珠がほぼ同時に四散したかと思うと、猟兵達の手元へ渡る。

「腹からビームはちょっとなぁ……4thを貰ってくぜ」
「あ、じゃあ6thはポーラが貰う! りりえー、神様だし2つ持ってきなよ」
「うええ、そんな理由で!? じゃ、じゃあ3rdと5th!」
「うん、ボクも2ndが欲しかったしちょうどよかった」

 全ての宝珠の加護を受け、ドヴェルグの面々はいよいよガチデビルを葬らんと構える。

「全ての宝珠を一度に無力化するだと……!?」
「さぁ、年貢の納め時だぜガチデビル! 行くぞ皆!」
「なら、最後にこれを!」

 リリエルはユーベルコード「武装せし愛の女神」を行使。その女神の権能によって自らの神器たる弓を形成する。つがえる矢には優しさと奉仕の心が込められ、さらに戦場にいるカップル──今回はポーラリア、尚人、アイシャの3人に祝福と加護を与えるのだ。

「我の加護だよ、これで万全!」
「如何なる加護があろうと、私の力でそれを上回るのみ……!」

 リリエルの加護、そして宝珠の効果を上回らんと持てる力を振り絞ってガチデビルは猟兵たちへと渾身の攻撃を加えようとする……のだが。

「なにもかも、冬の静寂の如く凍てつき止まる──加護以前に、ポーラたちには絶対に及ばないんだよ、ガチデビル!」

 ポーラリアのユーベルコード、絶対凍結が発動。時間すら凍りつかせるほどの冷気がガチデビルの動きを封じる。

「ぐ……動けない、だと!? ……何なのだ、私を上回るその力は……!」
「ガチデビル、お前の敗因を教えてやるぜ。そいつはなぁ……」
「愛の力なんだよ! ガチさんはみんなの愛、ラブラブパワーに敗れたんだよ」
「へ? リリエル?」

 尚人がガチデビルの敗因を語ろうと言葉を続けようとしたところで、リリエルが割り込んでくる。

「愛……だと?」
「そうだよリリエルちゃん! あなたはボクたちと尚くんの愛の前に倒れるんだから! ……自分で言ってて恥ずかしいねこれ!!」
「ふふん、愛は悪魔の契約より強いのよ♪」

 アイシャが尚人の右手をぎゅっと握り、顔を赤らめながらも堂々と言い切れば、ポーラリアも尚人に抱きつきながらきっぱりと宣言する。

「い、いや、俺が言おうとしたのは……ぐ、むぅ」

 尚人は言葉を飲み込んだ。本来は違うことを言おうと思ったのだが、まぁ愛の力と皆が言うならそうなのだろう、と納得する。実際、その側面もあるのだから。

「愛、愛か……陳腐だが、確かに私を倒すには効果的だな……!」

 ガチデビルは得心したかのように笑う。最早これまでと悟ったのだ。

「良いだろう、猟兵たちよ! その愛の力とやらで、私を見事一撃で打ち倒してみせるがいい!」
「あぁ、行くぜ! あーちゃん、ポーラ、援護頼む!」

 ポーラリアは凍結を維持し続け、アイシャのシルフィードの加護が尚人に力を与える。尚人は飛び出し、ガチデビルに接近するとユーベルコード「静かなる暴風」を発動。風を受けた状態で目にも留まらぬ連続攻撃を放つ。腹部の口、白羽の矢へと3度の攻撃が命中。最後の一撃を振り下ろす直前で寸止めする。

「矢か命、どっちにするか選べよ」
「今更選択権が私にあると思うか? 私はオブリビオン、本来この時代に蘇るべきではない存在だ。それに……絶対悪たる魔王はな、愛の力の前では敗れるのが定めなのだ」

 情けは無用、容赦なく命を刈れ、とガチデビルは頷く。尚人は頷き、最後の一撃を振り下ろした。その瞬間、ガチデビルは満ち足りたような笑顔を浮かべる。

「誇れ、猟兵たちよ……愛の力で私という絶対悪を滅ぼしたことを!」

 ガチデビルの体躯はシルフィードが運ぶ風と共に塵となって跡形もなく消え去る。ここに、猟兵たちはガチデビルとの完全決着を果たしたのだ。

「……ひとつ聞いても良い?」
「……どしたよ、あーちゃん」

 アイシャは尚人に声をかける。尚人は振り向くと首を傾げた。

「さっき、本当は何を言おうとしたの? ガチデビルの敗因として」
「あ、あぁ……アレか。いや、絆の力って言おうとしたんだよ。俺たちの結束は無敵だー、って。でもさ……よくよく考えてみたんだけど、結局は同じことだった」

 だから納得したのだ、と。アイシャは尚人が言わんとしていることを理解し、頷く。

「そうだよね……愛って、究極の絆のかたちだもんね。やっぱり言ってて恥ずかしくなるけど」
「だな……俺もなんか小っ恥ずかしい」
「おーい、帰るんだよー! 早くしないとグリモアのポータルしまっちゃう!」

 アイシャと尚人が互いに顔を赤らめてると、リリエルが2人に声をかける。ポーラリアも振り向いて手を振っていた。

「おぉ、今行くよー! ……んじゃ、帰ろうぜあーちゃん」
「うん、帰ろっか尚くん」

 かくして、4人はついに勝利の凱歌とともにグリモアベースへと帰還する。絆の力、その究極系たる「愛」の力こそが、この戦争を終わらせる原動力となったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月22日


挿絵イラスト