●白き悪魔
その船は、荘厳な雰囲気を纏う立派なものであった。その船首像には女神像が鎮座し、マストには商会のものであろうか、星とハゲタカがあしらわれた旗がはためいてた。
立派な船に悲鳴が響き渡る。マストが折れ、船体に穴が開き、船はゆっくりと沈み始める。
良く見ればその船体には、巨大な白い触手が巻き付いていることが分かるだろう。その粘液を纏った触手には吸盤が並んでおり、サイズが異常であろうとも、その生物が所謂“イカ”であることが推測される。
「ひゃぁあ!白い悪魔だぁ!助けてくれぇ!」
船の主と思われる、身なりの好い男が供回りと共に小舟で逃げ出していく。奴隷であろうか?身なりが汚く、船へと固定されたままの残された乗員と共に、船は海の藻屑と消えていった。
「いか~♪」
船が沈み、静かな水面がたゆたう海に、その異形の鳴き声だけが木霊した。
●グリモアベースにて
「弱き者が一方的に死ぬなど、許せませんなぁ。」
セバスティアン・ヴァンホーン(真なるお嬢様を探して・f14042)は、いつも以上に筋肉を肥大化させ、静かに怒りを示す。
セバスによれば、今回の事件はアックス&ウィザーズで起こるという。
奴隷船が海上で異形のオブリビオンに沈められてしまう姿が予知された。
その船の主人は逃げ出すものの、固定されたままの奴隷が船ごと沈められてしまうのだ。
「困ったことにそこは海の上、予知からは場所が特定出来ないのです。」
大まかな地域は予想出来ている。まずはその近くで一番の港町で、情報収集をする必要があるだろう。
「そこは貿易で非常に経済が潤っている港町で御座います。様々な商店で日雇いの店員や肉体労働者を雇っておりますので、そちらに潜り込むことで予知で見られた奴隷船と同じ特徴の船の情報を集めては如何でしょうか?」
真面目に働くことで商人の信頼を得ることにより、商人同士のコミュニティを活かした情報を得ることが出来るであろう。
もちろん、店員として潜り込むこと以外の方法で情報を得ても良いだろう。
「残念ながらその国では奴隷は違法ではありません。しかしながら、混乱に紛れ奴隷が逃げられるよう、隠れて拘束を解くことは許されるのではないでしょうか?」
船を特定した後は、船に乗り込む為の工夫が必要だろう。
奴隷に紛れるも良し、忍び込むも良し、奴隷商に成りすましても良いだろう。
乗り込んでからは船での戦いで邪魔にならないよう、奴隷が逃げ出せるように隠れた工作が必要だ。そうして逃げ出した奴隷は、戦いの混乱で無事に自由の身となってくれるだろう。
また、奴隷商売自体が違法では無いとはいえ、それ以外に違法な商いをしている証拠が見つかれば、事件後の奴隷は合法的に逃がすことが可能ではなかろうか?
「異形のオブリビオンとの闘いは、足場が不安定な船の上となります。気をつけて下さいませ。」
オブリビオンとの闘いは不安定な船の上。オブリビオン自体も触手を伸ばすことはあっても、自分から船の上に上がってくることは考え辛い。
何か、戦う工夫が必要だろう。
「ともあれ、まずは船に関する情報収集に励んで下さいませ。それでは皆様、何卒宜しくお願い致します。」
きみはる
●ご挨拶
お世話になっております。新人マスターのきみはるです。至らない点が多いかと思いますが、頑張りますので宜しくお願い致します。
今回は情報収集が必要な依頼を出したいと思い、こんな感じにしてみました。皆様の工夫溢れるプレイングをお待ちしております。
●執筆について
執筆が難しいタイミングがありましたら、マスターページに記載させて頂きます。プレイングを投げて頂ける際には、一度マスターページを確認頂けますと助かります。
●一章について
まずは事件が発生する奴隷船を見つける為、情報収集に励んでください。商店で働くというのは一例ですので、良いアイデアがありましたら、それ以外も可能です。
●二章について
奴隷船に何とかして乗り込んで下さい。その後、奴隷たちを隠れて解放する必要があります。この解放をしっかりこなすことで、三章で足手まといが発生せず、戦い安くなります。最後に参加者無での文章をつけ足せない為、エンディングで描写するのは難しいかと思いますが、商人の不正を発見した場合、描写外で奴隷たちは後日合法的に開放されます。
●三章について
最後は足場が不安定な船上での戦いとなります。雑魚は船の上へと上がってきますが、ボスは海中から触手を伸ばしてきます。海中への攻撃方法の工夫がありますと、戦闘を有利に運ぶことが出来るでしょう。
それでは、皆様の参加をお待ちしております。
第1章 冒険
『店の売り子手伝い』
|
POW : とにかく通りかかる人に声をかける
SPD : 自分の特技を披露して衆目を集める
WIZ : 商品の配置や看板などを魅力的なものに改善する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
シュデラ・テノーフォン
まァ、奴隷をあんな運び方して時点で
ロクな事してないだろうね
港町で商いか、悪くないなァ
ただし俺は手伝いじゃなくてホントに商売してみようか
持参した自作の硝子細工を売り込むんだ
グラスやアクセサリなんて良いかな
いくつかの商店へ、硝子細工『Ⅻ』の品を是非ご贔屓になんて触れ回りながら
そうだな…この辺で店を開きたいけど、働かせる奴隷を扱ってる所はあるかなとか
そんな会話も混ぜてみようか
勿論そんな気は無いけどね
後は露店も良いかな、コミュ力も一応あるし通りがかりに声かけたりして
星にハゲタカを旗にした船を見たことあるかい?
一回見たんだけど見失ってね、好きなデザインだったからもう一度見たいんだ
こんな感じに情報集めよう
●
春を仄めかすような温かい日差しが降り注ぐ。
冬の終わりも相まってか、露店の集まる広場には活気が溢れていた。
「はーい、購入ありがとねー。今後とも、硝子細工『Ⅶ』の品を是非ご贔屓に!」
シュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)は、自ら露店を開いていた。並べられているのは、普段は自身の硝子工房付きBARで取り扱ってる硝子細工だ。
地面に敷かれたカーペットの上に、色とりどりの硝子で出来たグラスやアクセサリーが並べられている。
その一つ一つに刻まれた緻密な紋様が暖かな日差しを照り返し、陳列された硝子細工は幻想的な輝きを見せていた。
「兄さん、景気が良いねぇ。並べてる商人も露店で売るにゃぁ、勿体ない一品だよ。」
シュデラが順調な売れ行きを見せていると、ふと隣の露天商が声をかけてきた。
「有難いことにねー。店も開きたいと思ってるんだけど、中々人手が足りなくてさ。」
資金や商品では無く、人手だけが問題だなんてそいつは贅沢な悩みだと、露天商は笑い飛ばす。
一頻り笑った後、露天商は親切からか言葉を続ける。
「兄さん、ここいらの出身じゃないだろ?ここいらじゃ、それなりに稼げる商人は奴隷を購入して働かせるのが当り前さ。街を海岸沿いに西側の岬の方へに行ってごらん。奴隷を扱っている商店が並んでいる区画があるよ。」
さっそく行ってみると露天商に答え、礼を述べながらシュデラは露店を畳む。
ついでにと聞いた『星にハゲタカの旗』については露天商は心当たりが無いらしいが、まずは広い港町の中から、絞り込みがかけられる情報が手に入った。
共に情報収集に挑む猟兵達へと、情報共有せねばなるまい。
成功
🔵🔵🔴
ルビィ・リオネッタ
古巣のお店を探してお客を集めてみるわね
小さいと信用され難いから実際にやってみせるわ
【楽器演奏】で妖精のフルートを吹く
まずは軽やかな人の耳に届く曲を【早業】のパッセージを織り交ぜて演奏
足を止める人が現れたら、船乗りの故郷を思わせる郷愁たっぷりの曲を
演奏が終われば一礼
今日の目玉商品、足の速い商品の名前を貼り付けて『操りの盾』で聴衆が見易いよう浮かせるわ
人目を集めたら後は商人の腕次第
気分の浮き立つテーマを演奏して購買意欲の後押しをしてみましょうか
「ふふ、頑張ったでしょ!実は人を探してるの。『星とハゲタカ』を使ってる商会に心当たりはない?」
場所を教わったら【視力】で特徴の合う船を探してみましょうか
●
港町の東区画が街の入り口、表の顔だとするのであれば、岬を含めた西区画は裏の顔――酒場や夜の蝶が集まる歓楽街、奴隷商を営む商店も立ち並ぶ。闇市も開催していると噂されるスラム街すら存在する。
そんな西区画の歓楽街に紛れた、老舗のアクセサリー店。
愛用する顧客は一部いようとも大衆受けはしないその店に、普段は見られない人だかりが出来ていた。
その人々の目的は新商品……では無く、店の外で軽快にフルートを演奏する小さな少女――ルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)だ。
軽やかなメロディーを奏でたかと思えば、郷愁溢れるノスタルジックな一曲を披露する。
演奏が終わり静かに一礼すると、遅れて喝采とお捻りが飛び交った。
「お捻りは良いから、是非商品を買っていってねー。」
彼女が操る妖精の盾に商品を乗せ、観衆の前で誘うように飛び回らせる。BGMにと同時に奏でる曲に浮足立ってか、その日の売り上げは嘗て無いほどのものを記録した。
「ふふ、頑張ったでしょ!実は人を探してるの。『星とハゲタカ』を使ってる商会に心当たりはない?」
久々に見た硬貨の山を眺めてホクホク顔の店主に向かい、ルビィは本題とばかりに問いかける。
しかし不思議なことに『星とハゲタカ』に店主は心当たりが無いという。奴隷商と言葉を続けるルビィを気遣うように声をかける。
「嬢ちゃん、家族でも奴隷落ちしたのかい?悪いことは言わないよ、碌なことにはならないから関わるのはもう止めておきな。」
ルビィに感謝しているが故に口を閉ざす店主に対し、彼女は食い下がる。
何とか奴隷船が多く停泊する場所を聞き出しその場へ向かうも、特徴に合った旗は見当たらなかった。
何かがおかしい。
仲間の猟兵と相談すべく、ルビィはその場を後にするのであった。
成功
🔵🔵🔴
彩花・涼
船を襲う生物はもちろん倒すが、乗員や奴隷を置いて逃げた男の方が許しがたいな
奴隷になっている人々はぜひ開放してあげたい
港町の商店で肉体労働者の募集に飛び込もう
見た目で渋られた場合は、【怪力】で荷運びを手伝えば採用されるだろうか
採用されたら【礼儀作法】で商人たちに失礼ないように真面目に労働しながら、それとなく奴隷船の情報を集めよう
積極的に聞きにいくと怪しまれると思うので、あくまで相手から話してもらえるよう促して聞き役をしていこう
奴隷船を特定できたら商店にもう用はないな
【目立たない】でいつの間にかいなくなる感じで切り上げるとしよう
●
西区画の中で酒場が立ち並ぶ一角。
その中で、彩花・涼(黒蝶・f01922)は汗を流していた。
女性と認識されては不都合と少年の装いをし、酒の卸売業者で働く涼。
その少年の格好でも尚、本当に大丈夫なのかと疑われ――目の前で硬貨を引きちぎるという怪力を披露する羽目にもなったが。
「坊主、次はこっちも頼んまぁ!」
最初は半信半疑であった店主や肉体労働者たちも、涼の真面目な働きぶりに次第に彼女を受け入れていった。
筋骨隆々の男たちよりも軽々と荷物を運ぶ涼に対し、次々と酒瓶が詰められた箱が積まれていく。
「よぉーし、皆!休憩にしょう!」
肉体労働者達の雇用主である店主が声をかける。
思い思いに場所に座りながら水分を取る男達に交じり、涼は情報収集を開始する。
「この前貿易船の旗を見たんだが、あれはどういう意味があるんだ?」
物事を知らぬ少年へと、教鞭をとる気分でもあろうか。大した秘密でも無いと口々に解説をする男たちの言葉へと、涼は耳を傾ける。
貿易船が掲げる旗は、その商会のシンボルをあしらっていることが多い。港町に停泊する船で並べられた旗は広告看板でもあるのだ。だが、外洋にいるときには海賊に目をつけられないよう、逆に無地の旗へと付け替える船が多いそうだ。
「それじゃあ、わざわざ外洋でシンボルの旗を掲げている船は?」
この周辺地域の外洋でシンボルの旗を掲げる船は限られる。軍艦、海賊そのもの、またそのシンボルそのものが抑止力となるほどの護衛を雇える大商会、さらには海賊との繋がりがあることの多い奴隷商。
特に奴隷商は商売上恨みを買いやすく、逆に港では旗を掲げないことが多いそうだ。
「奴隷商といやぁ、角向かいの酒場は止めとけよ坊主。奴隷船関連のガラの悪い船乗りが多いからな。」
潜り込むべき店の目途はついたと、涼は口元に笑みを浮かべる。
それに、これ以上の情報はここでは得られないだろう。
休憩終わりに立ち上がる労働者たちに紛れ、涼は静かに姿を消した。
成功
🔵🔵🔴
ルチル・ガーフィールド
【掃除】などの技能を生かし店員として情報収集にいそしむ。子供に見える外見を活かし給仕をしつつ~「そういえば、すごい船がこの前入港しましたよね~ 女神さまが船主にいらっしゃる・・・星と鳥の旗がはためていて~」と、お酒を運びながら無邪気にその船の情報と、その船の船員の方が来ていないかをさりげなく聞き出し、船員さんと接触・・・だぶんブラックな職場環境でしょうし、愚痴を聞き出します「ああ…人手足りていないのですね…う~ん(声を細めて)・・・なにかあったら、その船主さん…一人で逃げそう」(寂しく笑いかける)ああ…そうかもな的なことを言われたら…「大丈夫です♪ きっと、少ししたらよいことがありますよ♪」
●
太陽が沈み、様々な商店が店を閉める頃。酒場は一層の賑わいを見せていた。
「はぁーい、お料理とお酒お持ちしましたー。」
そんな中、ルチル・ガーフィールド(魔法仕掛けの家政婦さん・f03867)は麗しい外観を活かし、給仕として潜り込んでいた。
ガラの悪い船乗りの集まるその酒場では浮いた存在だが、少女ながらその物怖じしない態度故だろうか、不思議と風景に溶け込んでいた――しかしそれは、米寿を超えた彼女の人生経験によるものであることは誰も知らない。
「そういえば、すごい船がこの前入港しましたよね~。女神さまが船主にいらっしゃる……畳もうとしてらっしゃいましたけど、星と鳥の旗がはためていて~。」
その特徴を聴いた船乗りはギョっとして固まった。同業者故かその旗を知る彼は、その商会――『バザードゥ商会』の名前を警告と共にルチルへと伝えた。
「あそこのテーブルが、その商会の奴らだよ。けっこうあくどい商売で有名なんだ。あんまり関わらない方が良いよ。」
(ようやく見つけた……。)
情報をくれた男に感謝し、席を離れる。
給仕を通してターゲットの船乗りたちへ近づいたルチルは、献身的に世話を焼きながら積極的に会話をしていく。
ガラの悪い船乗り故に口に出す下卑た台詞も華麗に受け流し、船乗りたちの愚痴を聞きながら時に褒め、時に不安を煽り、会話を重ねる。
可能な限り情報を引き出したルチルは、最後に言葉を残す。
「大丈夫です♪ きっと、少ししたらよいことがありますよ♪」
成功
🔵🔵🔴
セゲル・スヴェアボルグ
【POW】
人気のなさそうな路地裏に向かうとしよう。
奴隷商人も商品を探してふらついているだろうし、直接聞いたほうが早い。
奴隷船について嗅ぎまわっていれば、噂を聞きつけてご本人登場も有り得る。
商人程度なら締め上げるなど造作はないが……船内を探し回ることも考えたら、むしろ捕まった方が早いか?その場合、ふん縛られて身動きが取れず、声も出せん可能性が高いが。
なら、奴隷商人の一人に少し血を吹っかけて承従タル対者で操るか。しばらくは普通にふるまわせて情報を聞き出し、船に乗った後も利用してやろう。
盗聴器でも仕込んでおけば、他の猟兵にも情報共有できそうだな。後は大きな荷物としてお大人しく運ばれてやるだけだ。
●
喧騒から離れた裏通り、そこは明らかに身なりの汚い人間がたむろする、所謂スラム街であった。
「お前さん、バザードゥ商会について知らないか?」
剣呑な雰囲気が流れる中、すれ違う人々の威圧感を無視しながら我関せずと闊歩するのは、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)だ。
セゲルは仲間から伝えられた商会の名前をあえて言いふらし、自身が探っていると公言することにより、商会からの接触を待っていた。
「てめぇか、俺たちのことを探ってやがる野郎ってのは!?」
釣れた――そう心の中で拳を握るセゲルに対し、ナイフをチラつかせながら威圧する三人の男達。
そこいらの商人であれば身の危険を感じるかもしれないが、猟兵のセゲルからすればもはや児戯に等しい。
言葉の通り赤子の手を捻るかのように二人を手早く気絶させると、三人の男達のリーダー格と思われる残りの一人へ、口内を噛み切ることで滲ませた血を吐きつける。
その血が付着した男の頬が突如小さく爆破されたかと思えば、それまで罵詈雑言を喚いていた口を閉じ、男はまるで雇用主に対するかのようにセゲルへと媚び始めた。
これは、己が血を付着させた相手の心を縛るセゲルのユーベルコード、『承従タル対者(チェナレ・ロイヤリティエット)』によるものだ。
操られた男によれば彼は奴隷商人では無くその護衛に雇われている一人だということだが、船の正確な位置の把握と潜入への下準備には十分だろう。
男へ盗聴器をしかけ、その盗聴器を通して猟兵達へと情報共有を実施したセゲルは、操った男へ自身を捕まえたようなフリをさせ、共に奴隷船へ向かうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『奴隷船の行く先は』
|
POW : 奴隷のふりをして船に乗り込み、村人の解放に奔走する。
SPD : 誰にも見つからぬよう隠密行動をとり、船内部の情報を収集する。
WIZ : 奴隷商のふりをして船に乗り込み、取引先の情報を探る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●潜入!奴隷船
猟兵達はついに奴隷船を発見した。
奴隷船は丁度出港準備をしているようだ。奴隷たちは数か所に纏められ、下働きの奴隷商見習いや護衛が走り回っている。
今であれば、忍び込みようはあるだろう。
隙をついて奴隷の中に紛れるのが一番楽だろう。
忍び込むことで自由に探索するの手だが、航海中に見つからない工夫が必要だ。
奴隷商や通常の商人として相乗りを願い出るのであれば、何か手土産が必要では無いだろうか?
忍び込んだ後も、巡回する人間に感づかれないように、工夫して奴隷を解放する必要があるだろう。
奴隷船の中では、数か所に奴隷が固められている。
すし詰めにされた小部屋は鍵がかけられ、見張りも存在する。
ただし鍵さえ手に入れて渡すことが出来れば、混乱時には自力で脱出出来るだろう。
航海の為の仕事は基本的に船乗りが行なっているが、貨物室等一部では奴隷が肉体労働に従事している。
こうした奴隷は逃亡防止の足枷があるため、これを何とかしなければ自力での脱出は困難だ。
猟兵達は思い思いの方法で、船へと挑む。
ルビィ・リオネッタ
小さい体の上に隠密も解錠も得意よ♪
【目立たない】よう渡り板以外から【空中戦】で乗船してするわ
【聞き耳・視力】で船員の気配を察知して【逃げ足】の後隠れるわ
危ない時は『妖精の家』の中に隠れてやり過ごす
良いお酒なんてきっと奴隷の口には入らないもの
【毒使い】で軽く体調不良になる毒を仕込んでおくわ
隙を見て【鍵開け】で奴隷たちを解放
しばらく『妖精の家』の中に隠れててね
もし奴隷として乗り込む猟兵仲間の希望があれば拘束を解きに行くわね
戦う場合も音を出さないよう一瞬で勝負を決める
【ダッシュ・早業・先制攻撃】からの【暗殺・マヒ攻撃】
殺しはしないけど縄で縛ってこちらも『妖精の家』の中で大人しくしていて貰いましょうか
シュデラ・テノーフォン
アレが星にハゲタカか
さっき港で硝子細工売った金をチップに相乗りしよう
中で不用意に彷徨けないから…おいで、ハーキマー
不可視の狼に乗組員を追跡させ船内を見るんだ
奴隷部屋は勿論、巡回ルートを狼越しに確認
後は鍵の場所と商人の不正…帳簿とか?商人の部屋に在りそう、探しとこ
さて行動だ
基本巡回避けて、動かない見張りはハーキマーに軽く体当たりさせる
姿見えない何かに突然押されたら驚いてそっち見るだろうし
その隙に忍び込んで鍵やら帳簿等を取り、同じ方法で奴隷に渡しに行く
後は貨物室の…足枷鍵も奴隷部屋のと同じ所にあるんじゃないかな
あれば同じ事して彼らにも鍵渡しとこ
奴隷達にはこの後騒動があるからその間に逃げなと伝えるよ
●
大海原を悠然と走る船があった。
甲板にそびえる雄大なマストの帆は大きく風をはらみ、航海の順調さを予感させる。
しかしその甲板には……屈強な船乗り達が青い顔をし、気だるげに働いていた。
「畜生、ぜってぇ仕入れたワインが痛んでやがったんだ。」
航海初日も天気、風共に航海日和と言えるほどのものであり、全てが順調に見えた。
しかしながらその翌日、景気付けにと振舞われたワインを飲んだ船乗り達は皆、二日酔いかのような体調の悪さを訴えている。
酒を水のように摂取する船乗り達が、たかだか一日の酒盛り程度で全員がダウンすることはあり得ず、船乗りたちは皆港で仕入れたワインが痛んでいたものと思い込んでいた。
しかしてその実態は、小さな体を活かして船に忍び込んだフェアリー――ルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)が仕込んだ毒によるものだ。
ルビィはシーフとして精通している毒の知識を活かし、商人達が航海を中止しない程度に体調が悪くなる毒を奴隷の口には入らないであろう酒へと仕込んだのだ。
「いやぁ、皆さん大変ですねぇ。」
そう言いながら船乗り達を気遣うのは、商人を語り港で稼いだ資金を袖の下へと渡すことで相乗りを願い出た、シュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)だ。
シュデラはかいがいしく世話を焼くように船乗り達へと水を配る。しかし、その水には事前にルビィから手渡された毒が仕込まれていた。
船乗り達には調子を戻されても困るし、港へ引き返す判断をされるほどの惨状になられても困る――シュデラはしっかりと事前にルビィに注意された用法容量を守って毒を盛り続けるのであった。
「じゃあ、私は船長さんにも水を配ってきますねー。」
そう言いながら歩くシュデラの瞳には、別の景色が映っていた――『Call Harkimer(コールハーキマー)』により召喚された不可視の有翼狼、その狼の瞳が映す景色だ。
僅かな空間の揺らぎしか見せないその透明な狼を、体調を崩した船員達の目は補足することは出来ていない。
そうして船内を練り歩くハーキマーが把握した船内の構造、奴隷の配置状態、巡回者は全てシュデラの瞳に届き、彼は船員にほとんど出会う事無く船内を移動する。
ふと彼が足を止めれば、船乗り達が居ないことを確認しながら顔を出したルビィが居た。
「船後方部の一番船底側の部屋に病気やケガで、動けない奴隷達が集められているんだ。鍵を開けるだけでは逃げられなさそうだから、お願いしても良いかな?」
船員達の目を盗み、シュデラとルビィは情報を共有する。体が小さく潜伏に適したルビィは、船へと潜入した猟兵同士のメッセンジャーの役割も担っていた。
「まかせて、私の『妖精の家』なら匿ってあげられるわ!」
ルビィのユーベルコード『妖精の家(ヨウセイノイエ)』は異空間へと抵抗しない者を匿うことが出来る。片っ端から奴隷が姿を消しては騒ぎとなるが、廃棄予定で見張りすら立てられていない奴隷達であれば、姿を消しても今の船乗り達は気づきもしないだろう。
ルビィと別れたシュデラは、船長室へと向かう。
ハーキマーによって既に部屋の主の姿が居ないことは確認済みだ。
「船長さん、お水置いておきますねー。」
ハーキマーで通りがかりの者がいないか通路を見張りながら、机の中から鍵と資料を拝借する。
これで奴隷商人の不正の証拠が手に入れば良いのだが。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩花・涼
まずは奴隷にされた人たちの解放が最優先だな
忍び込んで解放するための鍵を手に入れるように動こう
フードを被り【目立たない】で極力存在感を消しながら、船内の【地形の利用】しながら物陰に溶け込むように隠れながら、巡回する人間に見つからないように動く
鍵があるとしたら船の主の部屋が有力だろうか
そこになければ奴隷にされた人たちを指揮してる奴の傍か…
目星をつけて鍵を探し手に入れられたら他の猟兵と手分けして奴隷解放する
小部屋よりは貨物室にいる人たちの方が逃亡が難しそうなので、私はそちらを優先で助けにいく
解放したらすぐに彼らが脱出できるよう【鼓舞】する
慌てず皆で逃げてくれ
セゲル・スヴェアボルグ
【POW】
さて、俺が何処に連れて行かれるかにもよるが……なんせこのなりだからな。他の奴隷以上に動ける保証はないな。
まぁ、繋がれていようが転がされていようが、身動きが取れないのであればやることは変わらん。俺自身は後回しでいい。まずは剛勇ナル手勢で散らばらせて召喚し、奴隷たちの解放だ。船内の状況はあの用心棒にでも伝えてもらおう。
鍵探しで手間取るぐらいなら、物理的に破壊した方が良いか。人数が多い分、見つかる可能性は高い。数の利を生かして手早く拘束具や扉の鍵をつぶさせる。数人はもちろん状況確認のため見張り役だ。
万が一見つかった時も、まずは奴隷を逃がすのことが優先だ。最悪、俺自身はどうなっても構わん。
●
波の音に合わせ、室内には船が軋む音が響いていた。
その薄暗い雰囲気と共に、どこか暗鬱とした雰囲気を感じる一室――そこは船へ運び込まれた品々が積み上げられた貨物室だ。
その奴隷以外の商品は、船へ運び込まれた後もそれぞれの目的地へ向けた仕分けが行なわれており、その肉体労働に一部の体格の良い奴隷が選ばれ従事していた。
「おらおらぁ、テキパキ運べやこるぁ!」
時折振るわれる鞭を受けながら、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)は思案していた。
操った護衛の男の口利きにより奴隷達へ紛れ、その逞しい肉体から肉体労働へと選ばれたセゲルであったが、彼にとって足に嵌められた枷と重りも、その身を打つ鞭も、鞭を打つ見張りの男達でさえ問題とは成り得ない。
猟兵でもオブリビオンでもない奴隷商や船乗り達を制圧することは容易だったが、それで予知の事件自体が起きなくなっては、危険なオブリビオンを放置することになってしまう。
解放は手早く行なうべきだ――既に船内には、『剛勇ナル手勢(トゥルバーディッグ・フロッタ)』により生み出された兵隊達が、操った男の手引きにより船に紛れ込んでいる――だが、そのタイミングが問題だ。
ふと気づけば、目の前には共に船へ潜入した猟兵の一人――少年のような風貌をした女傭兵、彩花・涼(黒蝶・f01922)が立っていた。
見張りに見つかってしまうとセゲルが叱責の声をあげようとし視線を走らせれば、既に三人ほどいた見張りの男達は地へ伏していた。
涼はその手に鍵束を手にし、次々に奴隷達の足枷を外していく。
「この鍵か?船長室に忍び込んだ猟兵が手に入れたものだ。今手分けをして奴隷達を解放している。」
セゲルの分も足枷を外そうと歩み寄る涼に対し、セゲルは不要とばかりにその足枷を力づくで粉砕する。
「だが、まだ早計じゃないのか?奴隷を力づくで解放するのは簡単だが、オブリビオンと出会わずに終わるわけにはいかんぞ?」
セゲルの懸念を涼が否定する。彼女は既に海中に潜み船の周りを回遊する異常に大きい影を発見した。
仲間の協力も得て水中の姿をも確認し確証を得た涼は、作戦を早めて動き出したとのことだ。
二人が会話をしていると、突然船が大きく揺らぐ。
急に船内が慌ただしくなる。衝撃の強さから致命的なものでは無いだろうが、十中八九オブリビオンと船が接触したのであろう。
続く二度目の衝撃に、奴隷達は恐慌状態へと陥いろうとしていた。
「静まれぇい!」
突如吠えたセゲルの怒声により、奴隷達は動きを止める――が、その表情には恐怖が浮かんでいた。
そうした奴隷達の混乱を収めようと、涼が優しく、だが力強く声を張る。
「皆聞いて欲しい!皆が感じているように、今この船は襲われている!だが、今この船には、私達以外にも仲間が君達を解放せんと既に動き出している!そして我々は君達を安全に避難させる用意が出来ている!落ち着いて我々に着いてきてもらえば、皆の安全を約束するっ!」
その言葉には自然と皆を安心させる力強さがあった。
落ち着いた奴隷達を取り纏め脱出しようとする涼を尻目に、セゲルは通信機により己が兵隊達へと指示を飛ばす。
物語は急激にクライマックスへと向かっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『だいおーいかたん』
|
POW : 子分行くイカ!
レベル×5体の、小型の戦闘用【こぶんいかたん】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
SPD : お弁当食べるイカー
戦闘中に食べた【おにぎりや焼き…イカ…?】の量と質に応じて【よくも子分をイカ!と何故か猟兵に逆ギレし】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : イカスミぶはー
【いかたん得意のイカスミすぷらーっしゅ】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を真っ黒に塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●船上の戦い
猟兵達は奴隷を無事解放し終え、安全に匿うことに成功した。
その勢いのまま甲板へと駆け上がった彼らが目にしたのは、悲惨という一言でしか言い表せない。
既に奴隷商や船乗り達が逃げ出した為か人気が感じられない甲板には、そびえ立っていたはずのメインマストがへし折れ、悠然とたなびいていた『星とハゲタカをあしらった旗』は海中へと姿を消していた。
甲板上では多くのイカが飛び跳ねている。
突然大きく鳴り響いた破壊音に反応して猟兵達は目を向ければ、船首に据え付けられた女神像を巨大な触手――件のオブリビオンのものだろう――が粉砕していた。
「ごはんを寄こさないと船を沈めちゃうイカ―!」
可愛らしい声とは裏腹にえげつないことを言い放つイカ達は、ゆっくりと猟兵達へ包囲の輪を縮めようとしている。
その言葉に共感するかのように、粘液をまき散らしながら巨大な白き触手が船を打ち据える。
不安定な揺れ動く船の上で今、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
グレース・マクローリン
出た!食いでのありそうな巨大イカ…!
揺れる船の上での戦闘なら負けるわけにはいかないね。ちっこいイカの方は【毒使い】の痺れ毒でも塗った[サムライブレイド]でがんがん斬ってくよ。体が小さい分効き目もデカいだろうしね。
デカい方のイカは出てくる様子も無し…水面から出てる触手を狙うだけじゃ大して打撃も与えられないね…
それなら、【武器改造】で海面に撃ち込んでも威力があまり減退しなくなる特製弾を使えるようにした【スナイパー】仕様の〔MARカービン〕で船の上から海中のデカいイカを【2回攻撃】の2発タップで狙い撃ち!
何がご飯寄越せだ!お前がご飯になるんだよ!
連携やアドリブ歓迎です。
ルビィ・リオネッタ
思ったよりファンシーね…
右手にダガー、左手にレイピアでガンガン攻めるわ!
召喚された子分は動きを【見切り】、【残像】を残した【ダッシュ】で駆け回り、【早業・先制攻撃】の【2回攻撃】で討ち取っていく
「お待たせ♪下拵えは終わったわ」
子分を倒したらボスと戦うわ
アタシは【空中戦】で海の上でも戦えるから、【目立たない】よう積極的に裏を取って【暗殺】を仕掛けていきましょう
このままじゃ戦いにくいもの
【視力】でよく相手の動きを【見切り】、『sfz』で触手を切断するわ
「隙ありっ!」
味方が泳げるか心配ね
もし【視力・聞き耳】で海に落ちた仲間を見つけたら『装備品の妖精の盾』を操り、掴まって貰って船の上に復帰させるわ
シュデラ・テノーフォン
なんか…和むなァ
でも獲物だからね、狩ろうか
子イカも可愛いけど、的だと思って狙撃しよ
結構脆いな、っと…少し数が多いか
ならCenerentolaに変更
氷の精霊弾をセットしてイカの氷漬け量産
余裕があったら蹴り飛ばして海にリリース
船沈ませたくないしね
イカっておにぎり食べるんだ?
…なんか俺もおにぎり食べたくなってきた
帰ったら作ろうそうしよう
親玉は船に絡みついてる腕を凍らしてったら何事かと顔出すかな
でイカスミは指輪の盾で防いで…うわァ硝子が真っ黒
仲間もかばえたかな、さて汚した代償は払って貰うからね
ほら、周りを見てご覧
複製したAschenputtelが一斉に君達を狙ってるよ
Glasregenの雨に撃たれな!
彩花・涼
思ったより可愛い姿だな、白き悪魔…
しかしここで倒しておかねばまた同じ事が繰り返されるからな
きっちり焼きイカにせねばな
敵は海の中か、足場も安定しないゆえ鋼糸をマストに絡めて命綱にして落ちないように気をつける
黒鳥で向かってくる子分を【2回攻撃】で打ち抜いて数を減らしつつ、【スナイパー】でボス本体へ狙い撃つ
水中に隠れているならダメージを与えて怒らせ、伸ばしてきた触手に鋼糸を絡ませ【怪力】で文字通り引き釣り出す
ずっとは難しいだろうが、味方の攻撃チャンスにはなるだろう
本体が海上に自ら現れた場合は武器を黒華・改に持ち替えUCを使用して【ダッシュ】で接近し【生命力吸収】で削りにいく
●
大きく揺れ、足場の悪い船の上。
その大きな揺れをものともせず、甲板上で飛び交う二人の影があった。
一人は短剣と刺剣をそれぞれ手に持ち、船の揺れなど知ったものかと美しい羽をはばたかせ、自由に飛び回る暗殺者――ルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)。
その小さな体をイカ達は捉えることが出来ず、飛び交う触手の隙間を曲技飛行のようにすり抜けながら、次々とイカを切り捨てていった。
もう一人はその身を包む海賊衣が示す通り、船の揺れに慣れた足取りで走り回る剣士――グレース・マクローリン(現代湖賊・f12443)。
暴れまわる彼女が振るうサムライブレイドからは毒が滴り落ち、小さく傷つけられた者すら動きを止めていく。
「いか~、こいつら手強イカ」
イカ達は船の揺れをものともせず暴れまわる二人に気圧される。そうして動きを止めた者から、多方向より放たれた援護射撃により一匹、また一匹と止めを刺されてゆく。
援護射撃を放つのは二人の猟兵。
一人は漆黒の蝶の群れを付き従え、黒塗りの愛銃、『黒鳥』を手に狙撃をする少年……のような容姿の女性――彩花・涼(黒蝶・f01922)だ。
船の揺れにより大きく振るわれるマストから重力を無視するかのように狙撃する涼。良く良く目をこらせば彼女の身を縛る鋼糸が水面のように太陽の光を照り返しているのが分かるだろう。
そしてもう一人は硝子飾りの大型拳銃『Cenerentola』を携えた青年――シュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)。
彼の愛銃から放たれた精霊弾はイカ達を次々と氷漬けへと変えた。量産されたイカの氷漬けはごろごろと甲板上で鈍い音を響かせながら転がり、船から海上へと落ちていく。
「ん~美味しそうなアイスキャンディーいか~。って、子分じゃなイカ!」
水面に浮かびキラキラと光を反射する氷をアイスキャンディーのようだと食いつき、だいおーいかたんがついに顔を出す。
己の喰らいついたものが子分だと気づいただいおーいかたんは怒り狂い、船を沈めんとその巨大な触手を大きく振るった。
「隙ありっ!」
今まさに船の横っ腹に風穴を開けようと振るわれた巨大な触手が、轟音を響かせながら海面を叩き水しぶきをあげる。
誰にやられたのかと視線を走らせるだいおーいかたんの目に止まったのは、その巨大な触手を切り落としたとは思えないほど小さな少女、ルビィ。
彼女が振るうのはその身の丈ほどの『フェアリーアックス』。その刃渡りは触手の断面には到底達しないにもかかわらず、彼女が振るう高速の斬撃は触手を一つ、二つと切り落としていく。
「やらせないよっ!」
ルビィを叩き落とそうと振るわれた触手がシュデラの精霊弾により氷漬けにされていく。
たまらずだいおーいかたんが海中に逃げようとするも、氷が浮きとなり深くまで潜れない。
「何がご飯寄越せだイカ野郎!」
船主から身を乗り出し、グレースが構えるのは改造された『MARカービン』。そのアサルトカービンから放たれた弾は水の抵抗をものともせず、白き怪物を貫いていく。
「もー、痛イカ!」
逃亡を諦め、再び伸ばされた触手に涼が放った鋼糸が纏わりつく。その外観からは信じられぬほど人間離れした怪力により、だいおーいかたんは海上へと引き上げられてしまった。
「皆、あまり長くは持たないっ!今だ!」
仲間へと呼びかける涼を狙い、だいおーいかたんから起死回生を狙ったイカスミすぷらーっしゅが放たれる。
彼女を海へと弾き飛ばさんと放たれた激しい濁流は、シュデラが掲げた透明な盾により往なされた。
「えーっと……そろそろご飯にしなイカ?」
不利を悟り、停戦を提案するだいおーいかたん。
「これだけ暴れて、何を今更言っているのかしら?」
「俺の作品を汚した代償は払って貰うからね。」
「お前がご飯になるんだよ!」
「うん、きっちり焼きイカにせねばな。」
オブリビオンにかける慈悲は無かった。
※この後スタッフ(解放奴隷)が美味しく頂きました。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵