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銀河帝国攻略戦⑭~降り注ぐくろいなにか

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●災厄のプレゼント
「我々は難攻不落の帝国大要塞、『エンペラーズマインド』の突破に成功した! このまま一気呵成に突き進むのだ!」
 『解放軍』に所属する宇宙戦艦。そのブリッジにて、艦長が部下たちに檄を飛ばす。猟兵たちの活躍により、破竹の快進撃を続ける解放軍の士気は高い。その視界に確かな勝利の兆しを見、まさに意気揚々と行軍を続ける。だが、銀河帝国もまた、黙って苦汁をなめているはずもなかったのである。
「これは……!?」
「何かッ!」
 レーダー監視員が声をあげるのへ、副長が尋ねる。
「こ、高速で何かが接近中……サイズは輸送艦クラス!」
「なんだと!? 映像、映せ!」
 副長の命を受けた船員がパネルを操作すると、船のメインディスプレイに、彗星もかくやという速度で突き進む、帝国の輸送艦の姿があった。
「そ、速度なおも上昇中……正気か!? このままだとぶつかるぞ!?」
 敵船の非常識な挙動に、思わず裏返った声をあげる船員。
「回避行動! 間に合うか!?」
 艦長の判断は早い。速やかに回避を命じるも、
「ダメです! 間に合いません! 衝突まで残り10秒! 10秒ッ!」
「総員、ショックに備えろ!」
 艦長が声をあげたその数秒の後に、すさまじい振動と轟音が、ブリッジを包み込んだ。わずかな静寂の後、すぐにコンソールが悲鳴のようなアラートを鳴らしだす。
「直撃! 直撃! 敵輸送艦は右舷に接触後、自爆した模様!」
「輸送艦を捨て駒にした……!?」
 ブリッジ内には困惑と、船が沈まなかったという安堵の空気が流れ始め――しかし次の瞬間には、その空気は凍り付いた。
「どうもです。おてやわらかにです。やわらかです」
 非常時に似つかわしくない、のんきな声であった。
 それは、ブリッジの入り口から、さも当然のように入ってきた。その身体のあちこちを、赤い液体で濡らして。
「どうもです」
「どうもです」
 やって来る。やって来る。ブリッジの入り口から、次々と、次々と、それはやって来る。そのどれもが、赤い液体で濡れていた。扉の向こうから、悲鳴らしきものも響いていた。
 あまりに非現実的な光景に、ブリッジの船員たちは、言葉を失った。あるいは、笑いがこみあげてくるものもいたかもしれない。あまりにも突然な状況に陥った時、人は笑うしかないのだ。
『おてやわからにです。やわらかです』
 それはぐにぐにと体を揺らしながら、一斉に蠢きだした。
 それからわずかな時間の後に、その船は宇宙の藻屑と消えた。

●突撃するくろいなにか
「『『白魔』艦隊』の仕業であるな」
 両手をむにむにとこすりつつ、マイン・ラクーンは猟兵たちへと告げた。
 『『白魔』艦隊』は、遥か昔『伝説の解放軍』を散々に翻弄し苦しめたと伝えられる、高速艦のみで編成された白騎士ディアブロ直属艦隊である、と語られている。
「その実態は、全滅上等な特攻艦隊である。この艦隊は、高速輸送艦に強襲用の兵力を満載して敵艦隊に特攻。敵艦隊内部で輸送艦を自爆させて、敵を混乱させた所を、強襲兵力で蹂躙する、という戦法をとるのである。血も涙もあったものではないのだな」
 なんでもこの作戦は、優勢な敵に対する反抗作戦として行われる、作戦に参加した兵士は確実に全滅するという捨て身の作戦であるらしい。そのため、この作戦に参加している帝国兵は、銀河帝国皇帝に絶対の忠誠をつくし、死を恐れずに戦うのだとか。
「『伝説の解放軍』のみなさんは、この作戦に対する対応策がない様でな、多くがやられてしまうようだ。で、あるが、我々猟兵には、『グリモア猟兵の転移』という対抗策があるのだ」
 つまり、グリモア猟兵の力を使って、猟兵たちを直接、移動中の敵高速輸送艦内部に転送するのだ。
 そして、輸送艦が解放軍の船に到達する前に、輸送艦に搭載されている自爆装置を作動させ、輸送艦を破壊する。
「輸送艦を自爆させるには、輸送艦のコアルームにあるコアマシン、それに直結された自爆装置を起動させるのである。……が、この作戦もちとつらい所があってだな。君たちを直接、コアルームへと転送させることができないのである」
 という事は、輸送艦に転送された後は、コアルームへ向かって艦内を移動する必要がある。だが、輸送艦には無数の敵が待ち構えている。もちろん、敵を全滅させることは不可能だろう。よって、敵を倒しつつ、可能な限り素早くコアルームを制圧し、船を自爆させる必要がある。
「船の自爆装置を起動できさえすれば、そのまま我が転移能力で回収するのである。よって、帰り道は心配するな。では猟兵諸君よ、バシッといって、見事勝ってくるのだ」
 そう言って、マインは猟兵たちを送り出した。


洗井落雲
 お世話になっております。洗井落雲です。
 『白魔』艦隊の攻撃を阻止し、解放軍の艦隊を守りましょう。

●成功条件
 『白魔』艦隊・高速輸送船の自爆装置を起動させる。

●このシナリオについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●状況
 皆さんには、『白魔』艦隊・高速輸送船の一隻に向かって、船の自爆装置を起動、船を破壊してもらいます。
 輸送船へは、グリモア猟兵の転移能力で直接侵入させることができますが、自爆装置が存在するコアルームへは、直接転移させることができません。
 また、船内には大量の敵がおり、全滅させることは不可能です。そして猟兵たちの侵入に気づいた敵たちは、猟兵たちを撃退するために集まって来るでしょう。
 よって、可能な限り速やかに、敵を倒しつつコアルームを制圧、自爆装置を起動させなければなりません。戦闘はもちろん、コアルームへと素早く向かう・見つけ出すためのプレイングも必要になるでしょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『ふていけいせいめいたい』

POW   :    のびーるんるん
自身の肉体を【完全な球体】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
SPD   :    ぽよんぽよんぽよんっ
予め【身体をぽよんぽよんと弾ませる】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
WIZ   :    れっつぶんれーつ
レベル×1体の、【おなか】に1と刻印された戦闘用【ふていけいせいめいたい】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●黒く、丸いものの群れ
 敵輸送艦へと転送された猟兵たちを待ち受けていたのは、まさにその数、無限に思えるほどの、『ふていけいせいめいたい』の群れであった!
「てきですか」
「てきですね」
「ここにきては、だめです」
「てきは、やっつけて、たべましょう」
「そうしましょう」
 『ふていけいせいめいたい』たちが次々と言葉をあげ、震えるや、次の瞬間には、一斉に猟兵たちへと視線を移した。
『どうもです。おてやわらかにです。やわらかです』
 シュールな光景――それ故に心を蝕む恐怖。『ふていけいせいめいたい』は猟兵たちを敵と認識し、襲い掛かってきた。
 さぁ、この敵の群れを突破し、コアルームへと向かえ!
アルト・カントリック
「さて……ひとっ走りでもするかな」

全ての敵を相手にする事が出来ないなら、この漆黒の宇宙バイクに乗って目的の所まで逃げ切ってやろうかな?

きっと僕達の行く手を遮るようにうじゃうじゃ居るんだろうね。他の猟兵の為に、道が切り開ける事を願って、ユーベルコード【嬰鱗矢の如し】で変形させたバイクで、突っ込んで行くよ!

そんなゴム球のように跳ねたところで、僕のバイクに撥ねられちゃうよ!……なんてね。

■嬰鱗矢の如し
●おどろおどろしい、蛇の化け物のようなバイクに変形する。


八重森・晃
見た目は普通にかわいいんだけどなあ…普通にえげつない脅威なんだよなあ…とかちょっと複雑に思っちゃう気持ち、とりあえず敵の固まってる所にサラマンドラの呼ぶ鈴を鳴らして不特定多数をサラマンドラのおやつにあげよう、ダメージ量には不安があるけど、分散して何匹かに当てる感じで、極力距離を取りつつ全体の攪乱に努めたい、あれだね、ヘイトを集める役をする感じ。他のメンバーが火力高めの攻撃や探索を行う間、私が注意を引いて相手の動きを止めたいと思っているよ、サラマンドラたちが満足して帰ったら、≪属性攻撃≫≪全力魔法≫でちょっかいを出しつつ、足を止めずに全体をひっかきまわしていこうと思うよ。


甘夏・寧子
【SPD判定】
……自爆装置ね。オッケー。ならスピード勝負ってわけか。それならアタシの宇宙バイクの出番かね。最近、あんまり走らせてなかったし、ここで派手にぶっちぎるのも悪くないと思うんだけど。

敵は撃破よりも退ける程度に叩くぐらいにしておくよ。足っぽいのがあるし、その頸部を狙えば少し位態勢を崩してスキができるだろう。
あとは宇宙バイクで無視して突っ走ればいい。
問題はコアルームがどこにあるか、か。
この手の話では敵がより厚く固まってるところが怪しいけど……どうだか。はぁ、艦内マップがあればいいんだけどなぁ。
特に連携できる味方がいなければとりあえず虱潰しに怪しい場所を探していくよ。


揚羽・王子
駄目よ、お手柔らかには出来ないわ。

【フォックスファイア】で前方の敵を燃やして、通りたい場所の炎を消して進めば進みやすいのではないかしら?
れっつぶんれーつをした個体は優先的に燃やして、合体前に倒してしまうわ。

コアルームを探すのは、そうね。回避主体の【エレクトロレギオン】を最大数召還して、人(?)海戦術でしらみつぶしに探してしまおうかしら。
召還した【エレクトロレギオン】自体には、報告の手間が発生しないようにGPS機能を搭載。あたくしが召還したのですもの、位置情報をハッキングしておくのでもいいわ。

移動時には【親指姫の絵本】で高速移動できると、更に時間が短縮できて良いと思うの。

他の方との絡み・連携歓迎



「まったく、見た目は普通にかわいいんだけどなあ……普通にえげつない脅威なんだよなあ……」
 八重森・晃は複雑気な表情で呟いてから、ちりん、と魔法の鈴を鳴らした。
「おいで、サラマンドラ、たっぷりお食べ」
 その言葉に応じるように現れたのは、【炎の精霊】属性を持つ、【光るトカゲ状の矢】だ。トカゲの矢――サラマンドラは、主の言葉に応じるように、次々と『ふていけいせいめいたい』へと突撃。その口を大きく開いて食らいつく。
「ああ、いたいです」
「たべるのはすきです。でもたべられるのはいやです」
 ぷよん、と球体に変形しつつ、『ふていけいせいめいたい』たちが一斉に、晃へと襲い掛かる。敵を引き付けるのが晃の目的ではあり、それは達成できたが――。
「数が多いっ! サラマンドラ!」
 ふたたび鈴を鳴らし、サラマンドラを放つ。襲い来る『ふていけいせいめいたい』とサラマンドラが衝突し消滅するが、それを逃れた『ふていけいせいめいたい』は猟兵たちへと迫る。
『おてやわらかにです』
「駄目よ、お手柔らかには出来ないわ」
 だが、そんな『ふていけいせいめいたい』たちへ、いくつもの【狐火】が殺到し、次々と炎上させる。揚羽・王子の『フォックスファイア』だ。
「うーん、うぇるだんです」
「やられました」
 『ふていけいせいめいたい』は次々と倒れていくが、その屍を乗り越えて、次々と増援がやって来る。
「うぅん……やっぱり、これじゃあ長くはもたないわね」
 王子がほほに手をやりつつ、言った。敵は無尽蔵だ。いつまでも足を止めているわけにもいくまい。
「コアルーム、大体のあたりはついたのかい?」
 『ふていけいせいめいたい』を迎撃しつつ、尋ねる晃。王子はたおやかに、頷いて返した。
「ええ。でも、まだ確証はないわ」
 王子は、戦闘用の【機械兵器】を別に召喚して、捜索に当てていた。戦闘用であること、そして攻撃を食らえば消滅してしまう事がネックではあるが、人海戦術としては使えるだろう。
「じゃ、あとは走りながら探すか」
 甘夏・寧子はそう言って笑うと、宇宙バイク『夜建鴉』を変形、設置した。またがり、アクセルを回せば、唸るエンジン音が空気を震わせる。
「さて……ひとっ走りでもするかな」
 同様に、アルト・カントリックもまた、『宇宙バイク(ピュートーン)』を変形させた。『嬰鱗矢の如し(バイパー・エクスプレス)』の名のままに、おどろおどろしい蛇の怪物のような見た目である。
「いいバイクじゃないか」
 寧子がそう言って笑うのへ、
「君のもね」
 アルトが頷く。二人の相棒が、発進はまだかとエンジンを鳴らす。
「突っ走るよ。引き続き、コアルームの探索はお願いね」
「まぁ、見つからなきゃ虱潰しさ! 行くよ、着いてきな!」
 アルトと寧子、二人はそう言うと、アクセルを全開にした。二つのマシンは吠え猛り、放たれた矢のごとく突進する。仲間達もまた、遅れまいとそのあとに続いた。
「おてやわらか――」
「これはストライク――」
 前方をふさぐ『ふていけいせいめいたい』などものともせず、速度を落とさぬまま突撃。寧子は次々と『吹き飛ばして』行く。一方で、アルトはわずかな段差を利用し、車体もろともジャンプした。そのまま『ふていけいせいめいたい』を、車体で思い切り踏みつける。
「おてやわぶぎゅう」
 うめく『ふていけいせいめいたい』を後に、アルトは速度を落とさず走り抜ける。
 猟兵たちを先導する二人のバイクは、決して速度を落とさない。これは、二人のテクニックのなせる業だろう。バイクは前方の敵を蹴散らし、うちもらした敵は追従する猟兵たちが処理していく。
 目まぐるしく景色が変わるのを、猟兵たちは油断なく見据えていた。敵兵の数や、放った『エレクトロレギオン』達からの情報。様々な情報から、コアルームのある場所を推察してく。
 そして、その努力は実を結び、やがて猟兵たちは、コアルームへと通ずるドアの前へと、到達したのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

中村・裕美
「……足止めなら…任せて」
ミームインベイジョンで相手の知能に直接【ハッキング】し、常識や行動パターンを変えてゆく。【催眠術】も使えるか?
改変内容としては「一人一人は弱いので、合体しよう」「数が少ないとすぐ倒されるので分裂しよう」の二つの矛盾する行動を繰り返すように書き換え。ちょうどいい数と強さの落とし所が見つからないように調整もする。
「……マルチタスク」
【高速詠唱】で同じような常識改変をできるだけ多くの個体に施してゆく。
あとは味方にコアルームを攻略してもらえばいいが、余裕があればコアルームにもハッキングして自爆装置を起動させておきたい


甘夏・寧子
【SPD判定】
ここが肝心のコアルームか……。自爆装置の起動ができればこっちの勝ちだけど、さてどうするか……。
敵がいるならマシンを操作する時間が稼げるぐらいは掃討しとかないと。邪魔されたら元も子もないしね。二丁熱線銃が火を噴くよ!
連携できる仲間がいるなら、掃討とマシン起動の役割分担ができるといいね。マシン起動が得意な仲間がいるなら任せたい。
……もしいなかったら……まぁ、メカニックの技能は持ってるし、一応手探りで起動させてみるよ。
じゃあ、最終ミッションと行こうかね!!



「時間がない、突っ込め!」
 寧子が叫び、コアルームへの扉へと、『レイヴン』と『クロウ』の二丁の『熱線銃(ブラスター)』の銃撃を叩き込んだ。熱線が、扉を飴細工のように溶かしていくのをしり目に、猟兵たちはコアルームへとなだれ込む。
 室内、正面へと視線を移せば、巨大な装置と、その下部に取り付けられた操作盤のようなものが見える。あれが、自爆シーケンスを起動させるカギだろう。目標は目の前。だが、そんな猟兵たちの前に、
「いけません、ここはたちいりきんしです」
「おかえりください」
「いえ、いかしてはかえしません」
 次から次へと『ふていけいせいめいたい』が現れ、ぐにぐにとその身体を震わせる。
「……あなた、装置の操作は、できる……?」
 中村・裕美が呟くように尋ねるのへ、寧子は頷いた。
「一応。メカニックの知識は、少しね」
 熱線銃を構え、『ふていけいせいめいたい』たちを見据える。『ふていけいせいめいたい』は、ぐにぐにと揺れながら、徐々に猟兵たちの包囲を狭めていった。
「そう。お願い……できる? ……足止めなら……任せて」
 そう言って、裕美は『電脳魔術デバイス』を起動する。裕美の眼鏡に投影されるのは、電脳世界のイメージだ。重なる現実と電脳、二つの世界。それによって、現実にプログラムの介入できる余地が生まれる。それはすなわち、この世全ては裕美のフィールドであるという事だ。
「……任せた!」
 寧子は叫び、一気に駆けだす。『ふていけいせいめいたい』が、寧子を阻止すべく、蠢いた。だが、寧子の走りに躊躇いも迷いもない。裕美は『任せて』と言ったのだ。ならばそれを信じ、走り抜けるのが寧子の役割だ。
「……ハッキング開始……常識改変プログラムをαからδまでスタート……対象のルーチンをオーバライドして、認識ループに陥らせる……」
 裕美の手指が、高速で宙を叩く。裕美の眼鏡を通してみれば、裕美の指が踊るその先に、キーボードの姿が見えただろう。電脳空間に存在する入力デバイス、それを用いて走らされる【常識を書き換えるプログラム】は、電脳空間を通じて現実へと影響を及ぼす。そのプログラムはすぐに、『ふていけいせいめいたい』達へと影響を及ぼした。
「では、ぶんれつします」
「いえ、まとまったほうが、つよいです」
「そんなばかな。ぶんれつしましょう」
「いえ、まとまりましょう」
「だきょうてんをさぐりませんか」
「いいですね。はなしあいましょう」
 『ふていけいせいめいたい』たちは、『れっつぶんれーつ』を用いた攻撃を行うか否か、行うなら分散させるべきか合体させるべきかという命題について、突如として話し合いを始めたのである。常識的に考えれば、こんなことを敵前で悩む必要などないはずだが、その思考のループへと叩き落したのが裕美の『ミームインベイジョン』だ。
「やるぅ!」
 寧子が口笛を吹きつつ、操作パネルへと取り付く。操作盤を確認した寧子は、一瞬、顔をしかめた。だがすぐに気を取り直すと、パネルのスイッチをはじき始める。
「……長くは、騙せないわ……!」
 裕美が声をあげるのへ、寧子は声をあげた。
「わかってる、もう少し! こいつを開いて……おしまいだよ!」
 力強く、スイッチをはじく。途端、耳障りなアラートが艦内に鳴り響き、自爆シーケンスの作動と、実行までの時間制限を謳い始める。
「成功だ! 撤退するよ!」
「……了解……!」
 寧子の声に、裕美は頷いた。裕美が再び電脳空間のキーボードを叩くと同時に、猟兵たちの姿は掻き消える。転移による脱出が、行われたのだ。
「つまり、1と2では、2のほうが……おや?」
 裕美のユーベルコードの効力が切れた『ふていけいせいめいたい』たちが、ふと正気に戻る……だが、もう遅い。次の瞬間には輸送艦の自爆シーケンスは完了して、輸送艦は乗員である『ふていけいせいめいたい』達もろとも、巨大な光と熱に飲まれて、宇宙の塵へとなり果てたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト