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7thKING WAR㉒〜混沌の調べ

#デビルキングワールド #7thKING_WAR #東のラスボス『スーパーカオスドラゴン』

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#東のラスボス『スーパーカオスドラゴン』


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●LASUBOSS
「ゲヒャ〜ッヒャッヒャ! ついにココまできやがっタか猟兵ども!」
「大したもんダガ、残念だったなァ」
「混沌の権化たるオレサマには、ドウやったって勝てやしネェよ!!」

 三つの首が高らかに吼える。
 この声を聞き震えよ。この威容の前に跪け。これこそ我が混沌魔法。

「GROOOOOOOOOOOOOOOOOOOWL!!!!!!」

●Session
「聴こえるかい? あれが東のラスボスの使う混沌魔法だよ」
 遠く響くその咆哮、デスボイスで歌っているようにしか聞こえないそれは、どうやら詠唱に当たるらしい。「良い声してるよね」などと暢気なことを言いながら、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)は歌声の主、スーパーカオスドラゴンの居る方角を指さした。
 白羽の矢に選ばれし魔王候補者、東西のラスボスのどちらかを倒せば、猟兵が『暫定候補者』として繰り上げられ、7thKING確定までの時を稼ぐことが可能となる……まあ、どうもそろそろ西のラスボスが倒れそうなので、その目的はしっかり果たせてしまいそうなのだが。
「まあでも、どうせなら完全制覇を狙いたいよね、僕達としては」
 あはは、と笑いながら、グリモア猟兵は一同にスーパーカオスドラゴンから送られてきたというお菓子を配り始めた。よく見ると、ご丁寧に時節の挨拶と「ぜひ一度お手合わせ致しましょう」みたいな文言も添えられている。
「まあ、うん。この世界で魔王候補になるだけあって、ちゃんとしてるヒトみたいだねえ」
 ご丁寧なお誘いを受けた以上、お応えするのが礼儀。この先、ガチのデビルと戦う前の力試しにもいいだろう、とオブシダンはそう付け加えた。

 ちなみに、東のラスボスからは戦いに当たっての段取りについて、嫌味にならない程度の調子でそれとなく連絡してもらえている。
 聞こえてくる咆哮から明らかなように、スーパーカオスドラゴンはまず混沌魔法による自己強化を展開している。詠唱されているのは「デビルキングワールド全土からカオスエネルギーを集める」という効果のもの。この混沌魔法と三つの首を有効に活用し、彼はそれぞれを『デスボイスの詠唱担当』、『口からカオスビームを放つ担当』、『ラスボスらしく真面目に猟兵を挑発する担当』に分け、ラスボスに相応しい言動を保ちつつ、混沌魔法でエネルギーを集め、それを利用して無制限にビームを撃ち続けるという戦法を取ってくる。
「まずはこれを止めないと、戦場のどこに居ようがまとめて消し炭にされちゃうからね。一人でどうにかするのはかなり難しいけれど、それぞれ一つの首の相手をする形で、皆と協力して切り抜けていこう」
 こうして「カオスのメロディ」の布陣を崩せば、こちらの剣も届くはず。ユーベルコードを駆使して襲い来る敵と、直接戦闘することになる。カオスを標榜する彼はいたって真面目に、冷静に、『混沌の魔王』として大暴れしてくるだろう。
「敵の力は強大だけど、君達だって負けちゃいないはずさ。信じているよ」
 最後にそう言い添えて、オブシダンは一同を送り出した。


つじ
 こちらはデビルキングワールド『7thKING WAR』のシナリオです。一章構成のボス戦となりますので、よろしくお願いいたします。

●「カオスのメロディ」
 敵はUCによる先制攻撃をしてきませんが、戦闘開始時点で上記の混沌魔法を駆使した無限ビーム発射状態になっています。がんばって対応してください。
 プレイングボーナスを使用すれば、素早く解除できるかも知れません。

●プレイングボーナス
 3つの頭部に対応する(どの首の相手をしてもOK)

●段取り
 参加者で協力して混沌魔法を解除→各自戦闘という流れを予定しています。
 複数人まとめて採用する形になるかと思いますので、担当する首を一つ明記して、早めにプレイングをいただけると採用しやすくなります。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『東のラスボス『スーパーカオスドラゴン』兇』

POW   :    ウルトラカオスレイジ
【湾曲した無数の角や爪を生やしたカオスな姿】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ダブルカオスビーム
【詠唱している口以外の2つの口】から、戦場全体に「敵味方を識別する【カオスビーム】」を放ち、ダメージと【ランダムな効果】の状態異常を与える。
WIZ   :    カオティックデスボイス
【『悪魔ならカオスに染まれ』】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【敵味方識別不能】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎

スーパーカオスドラゴン殿は気配りの達人デスネー!
それはそれとして、全力で戦闘に望むであります!
混沌魔法への対処は難しいデスガ……ご期待に応えるためにも、出撃デース!

我輩が狙うのは、ラスボスらしく真面目に猟兵を挑発する担当の首!
至近距離に踏み込み、その角や爪から他の皆様を守りマース!
ファルシオンでパリィ、パリィ!
HAHAHA、ワタシの背後には行かせマセーン!
後衛に手を出したければ、ワタシを倒して行くのであります!
(なおビーム)

そうして前線を維持している間に仲間が混沌魔法の布陣に綻びを起こせば、反撃のタイミング!
至近距離から「六式武装展開、光の番!」
ビームのお返しデース!


栗花落・澪
この見た目からあの丁寧な招待状が来るとは思わなかったよ

デスボイス詠唱担当なんとかします

自身に【激痛耐性】を乗せた【オーラ防御】を纏い
翼の【空中戦】でビームを回避優先で対処
更にいつでも発動できるよう【高速詠唱、二重詠唱】で魔法準備した後
隙が出来るまで【魔力溜め】
歌唱のため口を開けた瞬間水魔法と氷魔法の【属性攻撃】

水流を口に流し込んだ直後に凍結させ
声を出せない、むしろ口を閉じれないよう封鎖狙い

UC発動…できるのかなこれ
もしされても【指定UC】発動
花弁を攻撃用に転換しドラゴンの口に突っ込み
もごもごしてるところに氷の【全力魔法】
前身は無理だとしても、いっそ顔ごと凍らせちゃう

歌わせないよ


エステレラ・ピスカピスカ
※喋る時は全て平仮名と片仮名
首:挑発

ルア(f31387)と
菓子折りを頂いたら菓子折りをお返しに行かなくては

ごきげんよう、混沌の魔王
美味しいお菓子をありがとうございます!
さあルア、お菓子を
我が魔王国のシェフ特製菓子折りです
魔王たる者、礼儀がなっていないと侮られてはいけません

口達者の賢い方
ビームを止めて受け取ってください
折角のお菓子が消し炭になったらわたくしは悲しいです

ルア、めいれいです
わたくしをきにせず、たのまおうをせいあつなさい

わたくしは魔王なので
ちょっとくらい痛くても大丈夫です
本当ですよ?
魔王として拠点防御もいたしましょう
ルアも強い子のはずです

わたくしは星が如く瞬きましょう
さあ、星の裁きを


ルクアス・サラザール
首:挑発

陛下(f31386)と
共に魔王城代表としてご挨拶に参りましょう

はっ、陛下。こちらにございます
質の良い箱と熨斗紙で包んだ菓子折りを差し出し
陛下の前に出て、危険なビームから庇えるように心構えだけは

ああ、陛下の悲しむ顔など私は見たくありません…!
何卒お受け取り下さいませ!
私には陛下のご命令だけが全てなので(割と他のことはどうでもいいで)す!

陛下のご命令とあらば、いかようにも
氷装剣舞にて攻撃を
敵味方が識別できなくなると他の猟兵の方にもご迷惑をかけるやもですが…
私はとにかく大きいものを狙って斬るようにしましょう
ほら、ラスボスって、大きいですから
これなら最悪陛下を傷つけることはないでしょう!


煙草・火花
な、なんとも調子の狂うところはあるのでありますが……
剣を交える以上は全力で挑ませてもらうのであります!

無限の攻撃を放ち続ける首、確かに恐ろしくはありますが……力を合わせて突破させて頂くのであります
口から放つということは如何に長い首があっても、一度に対応できる角度や向きは限定されるのであります
故に、小生は速さにて対抗させて頂きましょう!

頭が狙いを付けるよりも速く、足元を爆発させて急加速してカオスドラゴン殿の周囲を駆けるでありますよ!

立派なのは威力だけでありますか?
小娘一人捉えられぬようでは魔王候補の名も泣くのでは!
挑発しながらびーむの狙いを引きつけて、とにかく掻き回すであります!



●カオスのメロディ攻略
「来やがっタなァ猟兵ども!」
 戦場を震わせる大音声――スーパーカオスドラゴンの咆哮が、猟兵達の耳朶を打つ。悪魔の王の候補として挙げられるだけあり、その物言いもまた堂に入ったもので。
「カオスの権化たるこのオレサマに刃向かうとはなァ……上等だ! 相手してヤらァ!!」
 鋼のように煌めく鱗に、緑色の炎が反射する。そんな、雄々しき三つ首竜の姿を見上げて、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が呟いた。
「この見た目からあの丁寧な招待状が来るとは思わなかったよ……」
「お出迎えの台詞までついてるとは、スーパーカオスドラゴン殿は気配りの達人デスネー!」
 同様に、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)もそれに頷く。招待状の文言を踏まえれば、先程の台詞は「ようこそ猟兵の皆さん。正々堂々勝負致しましょう」みたいな意味合いだろうか。
「な、なんとも調子の狂うところはあるのでありますが……」
 戦いを前にして人柄が透けて見えるのは逆に良くない。少しばかり眉根を寄せながらも、煙草・火花(ゴシップモダンガァル・f22624)は気を取り直すようにして得物を構えた。
「剣を交える以上は全力で挑ませてもらうのであります!」
 軍刀の切っ先と同じく、鋭い視線を送る彼女の言に合わせて、戦いの火蓋は切って落とされた。
「いくゼぇ、オレサマに挑む無謀さを知りなァ!!」
 段取りを踏まえるラスボスらしく、まずは小手調べから。牙を剥き、爪を振るい襲い掛かる巨竜のそれに、対応したのはバルタンだった。
「HAHAHA、ワタシの背後には行かせマセーン!」
 臆することなく敵の側へと踏み込んで、ファルシオン風サムライソードで敵の攻撃を弾き、逸らす。掠めただけでも重傷を負いそうなそれを、頑丈さが売りの刀身で捌いてみせ、前衛としての役割を担う。メイド服の裾を踊らせながら身軽に舞うその様は、挑発的なセリフを放つ敵を逆に煽ってやるのに十分なもの。
「後衛に手を出したければ、ワタシを倒して行くのであります!」
「ハッハァ! 言うじゃねエか!」
 敵を引き付ける効果は十分。だがそれを受けて、スーパーカオスドラゴンの首の一つが高らかに吼えた。

「GROOOOOOOOOOOOOOOOOOOWL!!」

「あー……」
 低く重い、響き渡るデスボイスは混沌魔法の詠唱でもある。魔界中から集まる不可視のエネルギーによるものか、戦場の空気がぴりぴりと張り詰める。そして最後に残った首へと、輝く光が収束していった。
「退避! 退避であります!」
 ぴ、と走った一筋の光を追うように、緑色の光の奔流が放たれる。太い光の帯が大地を切り裂き、カオスエネルギーの濁流となって猟兵達へと迫る。さすがにそんなものまではパリィできない、極太の光条をどうにか潜るように躱したバルタンに代わって、今度は赤い桜火と共に火花が飛び出した。
「無限の攻撃を放ち続ける首、確かに恐ろしくはありますが……」
 混沌魔法によってエネルギーを補充しながら放たれるこのカオスビームは、一度躱した程度では止まる気配を見せない。反動を抑えながらも竜が首を巡らせれば、光線もまたすさまじい勢いで大地を抉りながら、薙ぎ払うように奔る。迫り来るそんな攻撃に吞み込まれる直前で、火花は爪先のそれに着火した。参式『万雷』――怪奇人間である彼女は、可燃性のガスとなった身体の一部を燃やすことで、爆発的な加速を行うことができるのだ。
「小生は速さにて対抗させて頂きましょう!」
 いくら無限に放てるビームと言えど、口から発射している以上狙える角度や範囲には限界がある。ビーム担当の頭を中心に、『万雷』による急加速を駆使して移動を続ければ、、ビーム攻撃に捕まることなく逃げ続けることも可能なはず――。花火のような小気味良い破裂音を響かせて、轟音を上げるカオスビームから身を躱す。今はまだ、反撃に出ることは難しいが。
「立派なのは威力だけでありますか? 小娘一人捉えられぬようでは魔王候補の名も泣くのでは!」
 せめてもの足しにと火花は挑発の言葉を投げる。言動に反し、いたって冷静で真面目なこの竜が、それで熱くなることはないだろう。しかし今度はその真面目さゆえに、スーパーカオスドラゴンは「もっともだ」と火花の言に頷いた。
「ゲヒャヒャヒャ! 良いゼぇ、すぐに捕まえテやるよ!!」
 悪魔王候補として、その力を示すべくカオスビームが彼女を追う。執拗なその狙いを引き付け、なおも直撃を避けるため、彼女はまた足元に炎の花を咲かせた。
 スーパーカオスドラゴンの周囲を舞い、踊るようにして火花は撹乱に徹する。しかしそれも、刻一刻と限界が迫っていた。
「大した逃げ足だがよォ、逃げてるだけで済ムと思ったら大間違いダゼェ!?」
 挑発担当の首による、勝ち誇るような声が響き渡る。万全の布陣を元にしたカオスの顕現、無尽蔵のビームという無法に対し、次に立ち塞がったのはエステレラ・ピスカピスカ(ぜったいくんしゅ・f31386)だった。
「ごきげんよう、こんとんのまおう! おいしーおかしをありがとうございます!」
「おうおう、どういたしましてってなトコだがよォ! 今言うコトかァ!?」
 居丈高な挑発担当にも怯むことなく、エステレラは自らの臣下に呼びかける。
「さあルア、こちらからもおれいのおかしを」
「はっ、陛下。こちらにございます」
 ルクアス・サラザール(忠臣ソーダ・f31387)が差し出したのは、質の良い箱と熨斗紙で包んだ菓子折りだ。
「我が魔王国のシェフ特製菓子折りです」
 魔王たるもの礼節を欠いてはいけない。菓子折りをいただいた以上は釣り合うお礼をしなくては、といったところだが。
「ええい、ヤメロ! そういうノは本番前に済ませテおくモンだぜェ!?」
「しょうちしておりますが! タイミングがわるいからとごまかしては、まおうがすたるというもの!」
「それはまあ!! ソウだろうが!!!」
 割と納得してくれている。とはいえそれを受け入れて止まるのは、デビルキングとしてどうなのか――そんな内心の葛藤があったのかは定かでないが、スーパーカオスドラゴンは口から絶え間なく発射されているカオスビームを、彼女の方へと向けていく。
 大地を破砕し、めくりあげながら迫る緑の光線。全てを押し流すようなそれから主を庇うようにルクアスが立って、しかしエステレラは変わらずお菓子を差し出し続けた。
「ビームを止めて受け取ってください、折角のお菓子が消し炭になったらわたくしは悲しいです」
「ああ、陛下の悲しむ顔など私は見たくありません……! 何卒お受け取り下さいませ!」
 取り下げるつもりの一切ない二人の様子に、スーパーカオスドラゴンは焦れたように叫んでみせた。
「ガアア! 同じ魔王のよしみだ!! 一度ダケ見逃してやる!!!」
 直撃コースだったビーム担当の首が振られて、大地を抉るビームの奔流は、二人のいる地点だけを避けるような軌道を描き、行き過ぎる。はいご丁寧にどうも、とエステレラの菓子折りを受け取ったスーパーカオスドラゴンは、速やかにそれを口の中へ放り込んだ。
「良い味じゃネェか! そのシェフの野郎に、クビになったらオレサマの配下に加えてヤルって言っときなァ!!」
「はい! クビにするよていはないですけど!」
 挑発担当の首はもぐもぐとお菓子を味わっており、ビーム担当の首は一時的に猟兵から狙いを逸らしている。
「あれ……もしかして、今なら……?」
 好機なのでは? 逃さずそれを見て取った澪が、翼を広げて舞い上がる。動きの鈍った首と、こちらに追い付けないビームをひらりと躱しながら、目指す先は天に向かって吼える詠唱担当の首である。終わらないデスメタルのような音色を奏でるそれに向けて、飛翔しながら魔力を練り上げ、竜の頭上を捉えたところで、それを放った。
「GRRRぅごぼっ!? 何しやがっ――」
 彼が紡ぎ出したのは水魔法、迸る水流が大きく開かれたその口に注がれ、詠唱が途切れる。怒声と共にそれから逃れようとする首に向け、澪はさらに追い打ちを放った。
「叫びっぱなしで疲れてるんじゃない?」
 少し喉を休ませた方が良い、ということで水の魔法に氷を這わせて、瞬間冷却。閉じかけた口を凍結させ、その自由を奪う。これならば、そう、詠唱など続けてはいられない。混沌魔法が途切れたことで、無限に吐き出されていたカオスビームの奔流が、細く弱り、やがて止まった。

●綻びを突く
「今であります!」
 絶え間ないビーム攻撃が止んだそこを見逃さず、回避に徹していたバルタンが反撃に出る。敵の全身から歪に伸びた角、口を塞ぐ氷を内側から崩し、周囲への攻撃も兼ねたそれを弾き、合間を縫って、至近距離で剣を掲げれば、そこから激しい光が生じて。
「ビームのお返しデース!」
 六式武装展開、光の番。全身全霊、バルタンの力を丸ごと乗せた輝きは、一条の光刃となって敵の身を斬り裂いた。カオスビームとはまた違う、なんかすごい光に貫かれ、スーパーカオスドラゴンが低く唸る。だが、まだこれでは終わらない。
「ROAAAAAAAAAAAR!!!」
 混沌に染まれ。迸るデスボイスが空間を震わせ、猟兵達の脳を揺るがす。
「ルア、めいれいです。わたくしをきにせず、たのまおうをせいあつなさい」
「陛下のご命令とあらば、いかようにも」
 主を守れる位置から動くのは抵抗があるけれど、命が下るならそれが最優先だ。彼女の言に従い、聖剣を携えたルクアスが反撃に出る。敵のUCの効果だろう、敵味方の認識が阻害されているような気がするけれど。
「……一番大きいのを狙えば、何とかなるでしょう」
 まあそれはそう。最悪陛下だけ傷付けることがなければそれで良い、そんな割り切った思想の下、彼は躊躇うことなく敵の懐に飛び込んだ。
 『氷装剣舞』、勇者の剣が凍てつく冷気を纏い、魔王の身体を斬り裂く。
「少し静かにしていてもらいましょうか」
 傷口から広がる氷の根、それで敵の口を縫い付けるように斬撃を放ち、ルクアスは敵の咆哮を終わらせた。
「オレサマに黙れっテのかァ!? 生意気な――!」
「それ以上は歌わせないよ」
 もう一つの首が引き継ごうとする歌声を、澪の杖から変じた無数の花弁が塞ぐ。口の中に大量に叩き込まれたそれをもぐもぐとやっている内に、再度の全力氷魔法が襲い、声を出せないように固めていった。が。
「――ハァ! この程度でオレサマを止めらレると思うナよぉ!!」
 当初の布陣が崩れた以上はそれに拘る意味もない。まだ無事な首が一声吼えれば、塞がれていた二つの口からカオスビームが放たれて、氷塊を粉砕して迸る。先程のように絶え間なく撃ち続けることはできないようだが、混沌を齎すその光線の威力は健在。地を砕き空を灼いて、うごめく首が獲物を追って。
「これくらい、だいじょうぶです……!」
 防御姿勢を取っていたエステレラが、その光の奔流を受け止める。ちょっと痛いけれど、魔王なので大丈夫。自らそう言い聞かせる内に、ルクアスの斬撃がビームを放つ首を逸らす。そして。
「そこ! 狙いが甘いであります!」
 華咲くは一瞬、明滅する二条の光の間で一際大きな花を咲かせて、火花が真っ直ぐに竜へと迫る。瞬く間にその首に迫り、軍刀を一閃、詠唱を行っていた首に深手を負わせた。歌声は止まり、デスボイスは止んで、ビーム攻撃も後が続かず、攻勢が途切れた。
「こんどはこちらから。ほしのごとく、またたきましょう」
 さあ、星の裁きを。エステレラの錫杖の描いた軌跡が、無数の光剣を描き出す。放たれた流星の群れは、眩く輝き、三つ首の竜を吞み込んでいった。

●決着
「オオ……まさか、このオレサマが……!?」
 猟兵達の刃は確かにその首に届いた。最後まで真面目に、テンプレみたいな台詞を残して、スーパーカオスドラゴンはどうと地に倒れ伏した。
 やるじゃねえか、オマエらならガチデビルとも真っ向からやれるかもなあ。負けを認めた東のラスボスは、猟兵達に賛辞の言葉を送った後、恐らくは最後の戦場となるであろう、彼の地へと首を向けた。

 ――彼等には後程戦いのお礼と「またお会いしましょう」みたいな律儀なお手紙が届くのだが、それはまた別の話だ。
 この戦争の決着は近い。再度気を引き締めて、猟兵達はそちらへと向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月17日


挿絵イラスト