銀河帝国攻略戦⑯~宇宙駆ける旋律
その『音楽』は、知らずうち人々の心に入り込んできた。
表向きは夢心地にするような四分の三拍子。重なる旋律は聞き慣れぬ音でも人々を心地良くさせた――ほんのしばらくの間だけは、それは確かに『音楽』だった。
ひとりの男が力を失って地に膝をつき呟く。
「もう、無駄だ」
ひとりの女が手にした銃を取り落とした。
「何をしたって、意味がないの」
ひとり、またひとり。次々と音楽に心を絡め取られた者たちが、宙に虚ろな目をして言う。
「終わりにしよう」
「何にもなりはしない」
「どうでもいい、どうなってもいい」
こんな世界なんて、どうなろうと構いはしない。
何をしたって救われない。報われない。無理、無駄、無意味、希望などどこにも無い。
こんな世界になんていたくない。
なんと不確かなものに縋っていたのだろう。『希望』なんて、空々しいまやかしに。
●グリモアベース
「銀河帝国とやらも、嫌な手を使ってくるね」
指先でグリモアを弄びながら、ユエ・イブリス(氷晶・f02441)は珍しく不機嫌そうに。
「音楽と心には因果関係が――いや、こんな話をしている暇は無いね。銀河帝国が使ってきたのは『音楽』だ」
銀河帝国軍、黒騎士アンヘル配下『クライングシェル』艦隊の『洗脳音楽通信』。強力な音楽によって解放軍の人々の心を惑わし、あるいは無力たらしめる精神攻撃だ。
意気軒昂と矛を上げていた解放軍の艦隊を動かしているのは人の心、意志そのもの。それらを潰してしまったなら、艦隊は鉄の船の群れと変わり突破も容易くなる。
「今からここを、放送設備を整えた芸能船に繋ぐ。洗脳音楽によって、底知れぬ『絶望』に囚われてしまっている船が見えた。音楽には音楽で反撃する。君たちなら可能だ」
希望や未来、明日を信じる心、夢、光。今を生きる力を塗りつぶす絶望は、人を生ける屍と変えてしまう。何も考えられず、何をすることもできず、息をするだけの人の群れ。
やがて生きることを放棄した人々は、飢えと渇きのまま静かに息絶える。
「全ての希望を閉ざされた世界など、生きているだけで地獄だろう」
猟兵たちが奏でる音楽や歌を、芸能船の電波に乗せて洗脳音楽に侵された船へと届ける。人々を癒し、慰め、鼓舞し、希望を取り戻させるための旋律だ。猟兵でなければできない仕事だ。
「武を誇るだけが猟兵ではない。音楽とは人を楽しませ、安らぎへ導くためにある」
音楽を精神兵器として使われたことが、ユエはどうにも腹立たしいらしい。
一瞬のグリモアの輝きの後、グリモアベースは芸能船のスタジオへと変わった。
「君たちの生命にあふれる旋律が、彼らを救う。さあ、開演といこうか」
高遠しゅん
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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※現実に存在する楽曲の曲名や歌詞、替え歌等が記載されているプレイングは採用できません。
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高遠です。
このシナリオでは音楽、ライヴバトルを扱うこととなります。
シナリオの性質上、全てのプレイングを採用することができない可能性がありますので、ご了承下さい。
既存の楽曲は【使用できません!】。
有効であると判定した場合、数名まとめての描写も可能です。
演奏のみ、歌唱のみ、その他音楽バトルに花を添える熱いなにか。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『洗脳音楽通信を撃ち破れ!』
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POW : 激しいビートで、魂を揺さぶり、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。
SPD : 超絶的な技巧で、聴く者を圧倒して、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。
WIZ : 心に響く歌声で、感情を揺り動かして、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー! 藍ちゃんくんステージも呼び出せるアーティストでもありますので! なんなら芸能船を更に彩っちゃうのでっす! 音楽だけと言わず映像も送っちゃいませんかー? 歌もダンスも舞台演出も盛り盛りなのでっす! 藍ちゃんくん自身もファイナルな存在感でっす! 絶望してても無視できない存在感と歌唱力でお伝えしちゃいましょー! 歌い上げるのは解放軍の皆様のこと! 皆様方が自分の足で戦場に立ってきたのは確固たる事実で。そのあり方こそが希望なのだと。藍ちゃんくんたち猟兵にとっても希望なのだと! 猟兵は皆様方の希望かもでっすが! 皆様方も藍ちゃんくんたちにとっての希望なのでっすおおおおおおおお!
リル・ルリ
*アドリブ、絡み歓迎
「歌は僕の唯一。僕の全て。嗚呼、歌で絶望させるだなんて。許せない
洗脳の歌なんて打ち消して君達の胸にもう1度希望を灯してみせよう」
絶望するにははやい
だって君は生きている――
それこそが希望で
それこそが未来
靡く鰭を翻し真摯に全力で歌う歌
ここは僕の舞台だ
釘付けにしてあげる
【空中戦】を組み合わせ【パフォーマンス】を魅せて
余所見なんてさせてあげないと微笑んで
嫋やかに艶やかに、癒し心に染みる命の歌を紡ぐ
【歌唱】を駆使して全力で響かせ魅せるのは【凱旋の歌】
洗脳の音色なんて聴いてる余裕なんて与えない
絶望してる暇があるなら
僕の歌を聴けよ
思い出させてあげるから
明日への希望と
君の大事なものへの愛を
●繋ぐ
「あーゆーれでぃ? 音だけなんて、すごーくもったいないですねー???」
高らかに響き渡るピックスクラッチが、絶望の音を掻き消した。
紫・藍(覇戒へと至れ、愚か姫・f01052)がマイクを手に、声を限りに叫んだ。
絶望は人が人であろうとする心を暗闇に閉ざしてしまう。声だけでは、音だけではきっと闇に届かない。
ここにはこんなにも華やかなキャストがいるのだ、ならば。
「映像も送っちゃいませんかー!? 歌と音と映像、ぜぇんぶ届けて最高のステージにするのでっす!!」
心を閉ざしても声を、耳を塞いでも音楽を、目を閉じても目を離せなくなる存在感を、大ボリュームで叩き付ける! 荒療治かも知れないが、まずはほんの僅かでもいい。塞いだ耳に、閉じた目に、閉ざされた心に『届かせ』なければ始まらない。なりふり構っている暇など無い!
「藍ちゃんくんを、無視なんてさせないのですよー!!」
天に突き刺すようにマイクを上げる。ユーベルコードが奇跡を起こす。衣装を、スタジオを巻き込んだ煌びやかなステージが出現する。
その超常の頂上でライトに照らされ、藍はぎざぎざの歯を見せて誇らしく笑った。
歌は僕の唯一。僕の全て。嗚呼、歌で絶望させるだなんて――許せない。
静かな怒りは胸の奥に貴石のように秘めて、今はただ、唄を届けるために。
滑るように空中を泳ぐリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)は、月光色した鰭をヴェールのようにたなびかせて舞う。
重力などリルにとっては無用のものだ。白い指先をゆらり揺らし、鰭を水を掻くようにひらめかせ、珊瑚の角隠す淡い淡い蒼を秘めた髪が白孔雀の尾を靡かせ、ひとゆれふたゆれ舞い進むたび、光の粒が尾を引いて散る。
(「余所見なんて、させてあげない」)
両手を天に伸ばし、ゆっくりと胸に抱く。そうして紡がれる声は玻璃細工の鈴のように。絶望の合間を縫う光の如く、響く。それは凱旋を謳う。
絶望などしている暇があるなら、この声を、唄を聴け。
どんな暗闇の中にも、光を届けるから。閉ざした心の奥に凝らせた心を、僕は喚ぼう。
「愛を、どうか」
思い出して。心を、愛を、希望を。悪い夢から覚めるよう、祈りを込める。
猟兵のユーベルコードによって芸能船の機能が高められ、絶望の船全ての回線に音声と映像が映し出された。操舵室に、居住区に、猟兵たちのステージが無数に浮かび上がる。
目を閉じていても、耳を塞いでいても、それらは倒れた人々の目や耳に届き心を揺さぶる。
しかし銀河帝国も黙ってはいない。明らかな妨害に奮い立つように、絶望の音楽は威力を増して鳴り響く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロアル・スクード
※アドリブ歓迎
ユーベルコードを発動し状態異常力を強化
音楽によって精神に働きかけるのも状態異常の範疇ではないかと予想
楽器は演奏できないが、憶えている歌がある
昔、まだ俺がただの盾だった頃に戦場で聞いた、戦士達の為の歌
命すら危険に曝される戦場で彼等を奮い立たせ時に安らぎをもたらし、そして勝利へ導いた歌だ
音楽隊のような技術はないが、俺はその歌を歌おう
…こうして何かを伝えようと、誰かの心に寄り添おうとして、人は音を紡ぐのかもしれないな
せめて声を張って堂々と『存在感』のある歌にしたい
膝をつくのはまだ早い、自らの、隣に居る友の未来を諦めるなと、彼等を『鼓舞』し勇気付けたい
共に戦う仲間はここにも居ると伝えたい
●護る
この身に託されたのは『護ること』。
そうして戦場で護り護り、護り続けたくろがねの盾が、ロアル・スクード(ヤドリガミのパラディン・f07869)として新たな生を歩み出したのだ。
戦場育ちのロアルは楽器の演奏などというものに触れる機会はなかった。しかしヤドリガミとして目覚めるまで、己が本体を掲げ戦場を駆けていった数々の戦士が、今にも崩れそうな戦場で味方を鼓舞する歌を知っている。
戦士が戦士に捧げる歌。勇気を讃え、弱気を支える戦士たちが歌う素朴で力強い歌だ。
技巧も旋律も、歌い手が高らかに愛や夢を讃えるきららかな歌とは違う。しかし、戦場で挫けそうな心に寄り添い、膝を折ろうとする同胞を鼓舞する意味では『戦士の歌』ほど心強いものはない。
――友よ、我等はここに居る。
――友よ、たとえ傷つき倒れようとも。
――友よ、我等がここに居る。絶望にはまだ早い。
慣れた舞い手のようなダンスも、刻むビートも高く響き渡る旋律もない。
「我等がここに在る。ともに戦う我等がある!」
明日を、未来を諦めるにはまだ早い。心に寄り添う仲間がここに在る。これほどまでに心強い支えがあるだろうか!
朗々と響くロアルの歌が纏う奇跡が、絶望の旋律をはね除ける盾と変わる。圧倒的な絶望の音に狂わされ、鉛の如く重くなった身体を地に投げ出した人々が、のろのろと瞼を上げる。
心に寄り添おうとする人の心が紡ぐものが、音楽となって届くのだ。
これはどうしたことだろう。人間はみな絶望させたはずなのに?
銀河帝国軍。洗脳音楽の奏で手は考える。こんなずはない。こんなはずはない、あらゆる望みを絶ったはずだ、あらゆる希望を奪ったはずだ。嗚呼、忌々しい解放軍、忌々しい猟兵ども。
もっともっと絶望を、更なる深い絶望を、電子の海に解き放つ。決して、決して折れるものかと。
成功
🔵🔵🔴
セシル・バーナード
んー、音楽の戦争利用には、ぼくも他人のこと言えないからなぁ。
でも絶望を塗り込めた音楽なんて、それはただの呪詛だ。
砕ける限り砕いて見せよう。
「祈り」をこめた「歌唱」で、生きる喜びを朗々と歌い上げる。理想の自分、大切な家族や仲間たち、この世界の未来を担う次の世代の子供たち。
そんな生きる理由を、ぼくの歌で思い返させてあげる。
今回はヴァイオリンを「演奏」して伴奏にする。
「誘惑」と「催眠術」も織り交ぜる。目には目を、毒には毒を。
これは解放軍の乗組員の精神を舞台にした、ぼくと『クライングシェル』との戦争だ。
相手を「戦場」から追い出したら勝ち。
やることは普段と大して変わらない。交える武器が音楽なだけのこと。
アヤカ・ホワイトケープ
戦わずに無力化させる兵器…厄介ね。
でも、向こうが音楽で来るのなら、わたし達も音楽で受けて立つわ!
わたし達の音楽で、解放軍のみんなを奮い立たせてみせるんだから!
【WIZ】
エスペランサをギターモードにして【歌唱、楽器演奏、パフォーマンス】で
全身全霊の歌を届けて、みんなを【鼓舞】するわ!
戦っている相手は強大だけど、みんなは決して一人じゃない…
共に戦う仲間と、そして何より…わたし達がいるわ!
どんな困難であっても、みんなが力を合わせれば帝国だってきっと倒せる!
だから立ち上がって!帝国なんかに負けないで!!
そんなメッセージを込めた歌をサウンド・オブ・パワーに乗せるわ。
洗脳音楽、絶対に打ち破ってみせる…!
●奏でる
音楽を戦いに使うこと、それは自分も似ているけれど。絶望に導く音楽なんて、呪詛とどこが違うのか。
ヴァイオリンを奏でるセシル・バーナード(セイレーン・f01207)は、ふと思う。滑らかな音の粒が光とともに流れていく感覚がある。高く低く、激しく、そして穏やかに、心までが音に乗ってあふれるようだ。
銃も砲も使わない戦いがあってもいい。だけど音楽を、音を兵器にするだなんて。
『希望』の銘もつサウンドウェポンを、ギターとして響かせる。アヤカ・ホワイトケープ(ロストイノセント・f00740)の日向色の髪が旋律に揺れる。
二人の心は定まっている。敵が音楽を使うのなら、こちらも音楽で対抗するまで。
「砕ける限り砕いてみせよう」
「解放軍のみんなを、音楽で奮い立たせてみせるんだから!」
弾けるピチカートが、爪弾くハーモニクスが、即興と思えぬほど絶妙に絡み合い溶け合って、一つの『心』となって宇宙に迸る。絶望の音楽に囚われた人々のもとへ、一人も残すことなく。
この世界に生きる喜び、理想の自分に成長してゆく遠くて近い未来を歌うセシル。
果てのない宇宙で強大な敵に立ち向かう解放軍の奮闘と、再起を謳うアヤカ。
――愛を。
――祈りを。
――未来を。
――わたし達の音楽で、解き放つ!
深く暗い淵の底に届いた旋律がある。
閉ざされた心に響いた歌がある。
重い瞼を僅かでも開けたなら、すぐ近くに見えるだろう。
光輝くステージから、生命までも一杯に使って懸命に祈りを届ける者たちが、すぐ側にいることを知るだろう。
歌を、演奏を、声を、祈りを。生命の喜びを。
奇跡が闇を剥いでゆく。絶望という闇がユーベルコードの奇跡によって癒され、立ち上がる力を取り戻してゆく。
音楽は心を癒し導き、楽しませるもの、感動を呼び起こすもの。頬を伝う涙が、唇に浮かぶ微笑みが証明している。
絶望の旋律に明らかなノイズが走った。不協和音、不愉快な歪んだ旋律がひとしきり断末魔のあえぎを上げ、完全に停止した。もっと精密なセンサーがあれば、銀河の何処かで負荷に耐えきれず、消滅した艦があったことを感知できたかも知れない。
猟兵たちの演奏は更にヒートアップしていく。
絶望に打ち勝った人々を讃えるために。
大成功
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