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7thKING WAR㉓〜未来の君に託す

作者：萩野 千鳥

「異世界からの魔王ですか……なんとも厄介な敵が現れましたねぇ」
　そんなことを言いながらヒース・アーベル（胡散臭い掃除屋・f35538）は、一人紅茶を嗜んでいた。厄介と言いつつ、余裕そうに見えるのは気のせいだろうか。
「全く余裕なんてありませんよ。ただ、現状彼を撃破することは難しいので、どう対処したものか、と考えているんですよ。私なりに」
　本当か？　と疑いたくなるが、まぁ、それは口に出さなくても良いことだ。それよりも、『彼』とは一体誰なのだろうか。ある猟兵はヒースに尋ねた。
「ああ、彼ですか。彼は召喚魔王『パラダルク』。万物を女の子（ドラグナーガール）に変えて侍らす、なんとも厄介なホスト……もとい、魔王です。はい。なんでも、『碎輝』を探す儀式を行っている最中だとか」
　碎輝といえば、カクリヨファンタズムにいた竜神親分『碎輝』のことだろうか。同一人物かどうかは分からないが、もしそうだとしたら厄介なことになりそうなのは確かだ。
「ええ。ですから、皆さんにはパラダルクが行っている儀式を止めて欲しいのです。そうすれば、撤退してくれそうな気がします。……撤退してくれたら良いですねぇ」
　ヒースはそうあってほしい、と願うようにぼやく。確かに、どうせ撃破できないのであれば、被害を抑えて撤退させるのも手ではある。しかし、儀式を止めろと言われても、どうすればいいのだろうか。
「パラダルクが従えるドラグナーガールが、彼の背後で儀式の舞を踊っているそうです。ですから、それを中断させれば良いかと。とはいえ、彼の下僕となった彼女たちは、そう簡単には儀式の舞を止めないでしょうから……ま、激しい戦闘に巻き込むしかないですね。パラダルクにも協力してもらいましょう」
　にっこりと笑うヒースに、猟兵たちの表情が引き攣る。そんな簡単に出来たら苦労はしない。
「そういうわけですから、未来の私たちが頑張ることを願って、パラダルクを撤退させてください。宜しくお願いしますね」
　ヒースはグリモアを召喚すると、パラダルクのいるデビルキングワールドへと猟兵たちを送り届けた。

第1章 ボス戦 『召喚魔王『パラダルク』ディアブロホワイト』

POW   :    ガールズ・ポシビリティ 自身の【下僕であるドラグナーガール】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後［下僕であるドラグナーガール］は【可能性を使い果たしたこと】により破壊される。 SPD   :    フューチャー・ルーラー 【ドラグナーガール達と連携し、精神支配魔術】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【以降の動き方や使用ユーベルコード】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。 WIZ   :    パラダルク・フューチャー 召喚したレベル×1体の【ドラグナーガール】に【ガルベリオン鋼の機械兵器とダンス技術】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。 イラスト：モツ煮缶 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「これまで大勢の強敵と戦い、どうにか乗り越えてきたが……それでなお勝ち目が薄い、か」
「撃破できないと予知されている以上、撃破できないのでしょうねえ。でも、魔界に来て余裕をかまされるのはムカつきますから、儀式だけでも潰しますわよ！」
　夜刀神・鏡介（道を探す者・f28122）は神刀『無仭』を、アルテミシア・アガメムノン（黄金の女帝・f31382）も『クロノスの大鎌』を構えると、ディアブロホワイトの影響で初老の姿となっている召喚魔王・パラダルクと対峙した。パラダルクは鏡介とアルテミシアに気づくと、困ったように笑う。
「いやぁ、参ったなぁ……どうしても僕を見逃してもらうわけにはいかないのかい？」
「悪いけれど、猟兵として見逃せないな」
「ええ。これ以上、混乱を招くようなことはお断りですわ」
「うーん、そっか。それなら仕方がないね」
　パラダルクは、儀式とは別に侍らせていたドラグナ―ガールの肩にポン、と手を置くと、他のドラグナ―ガールたちと共に二人に襲い掛かってくる。
（……！　あの子だけ、動きが違うな）
　先程、パラダルクに手を置かれたドラグナ―ガールだろうか。彼女だけ、他のドラグナ―ガールたちよりも動きのキレが増している。それを見抜いた鏡介は、彼女から距離を取りつつ、無仭で攻撃を受け流しながら時間を稼ぐ。同時に、アルテミシアは自身の翼から羽型の魔力弾で弾幕を張り援護する。その弾幕を止めようとアルテミシアに魔法弾のような物を放つドラグナ―ガールたちもいたが、それらの攻撃はクロノスの大鎌で防がれてしまう。
「なかなかやるね。それじゃあ、数を増やそうか」
　パラダルクはにっこりと笑うと、どこからともなくドラグナ―ガールたちが生成されていく。森羅万象全てを変えるドラグナ―ガールに変えられるというのは、本当らしい。このままでは埒があかない。
「こうなったら、纏めて薙ぎ払ってしまう方が良さそうですわね。――さあ、審判の時です」
　アルテミシアは六対、十二枚の翼を持つ熾天使に変身すると、空に飛び、無限の魔力を存分に使って斬撃波でドラグナ―ガールたちを薙ぎ払う。背後で儀式の舞を踊っているドラグナ―ガールたちにも、その攻撃は当たっているようだ。とはいえ、まだ舞は続く。しかし、二人を攻撃してきたドラグナ―ガールたちに動揺が広がる。
「幽冥を越えて暁へと至る。黎の型【纏耀】」
　鏡介はその隙を見逃さず、神刀から溢れる神気を纏うと、神器一体の境地へと至る。その姿は彼の真の姿に似ている。強化された戦闘能力で、まずは近くにいたドラグナ―ガールたちに一閃。そして、一気に前へと飛び出し、舞を踊り続けているドラグナーガールたちの元へ向かう。
「そこだ」
　アルテミシアの攻撃で怯んでいたドラグナ―ガールの一人を、そのまま斬り伏せる。流石に、それに気づいたパラダルクは新たにドラグナ―ガールを召喚し、鏡介の背に魔法弾のような物をくらわせる。鏡介はその攻撃を受けると、一度退避する。
「とりあえず、一人は倒せたが……」
「全体的に攻撃は通りましたから、このまま押して行けば問題ないですわ」
　二人は遠目から様子を見ながら、再び攻撃をする機会を待った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「ああ、そこにも潜んでいたのか。邪魔だよ」
　パラダルクは遠目から様子を見ていた蛇塚・レモン（白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152）と山吹・慧（人間の玄武拳士・f35371）の姿を確認すると、すぐにドラグナ―ガールたちを新たに召喚して向かわせる。彼女たちは各々ガルベリオン鋼でできた機械兵器を携えている。
「森羅万象を女の子に変えることで、操って侍らす能力って……」
「何とも随分アレな能力ですね……」
　レモンと慧は実際に何もないように見える所からドラグナ―ガールたちが現れるのを見ながらぼやくと、それ以上は口を噤んだ。
（――来る！）
　ドラグナ―ガールたちは、遠距離にいるレモンと慧を狙って銃のような物で一斉に撃つ。だが、慧はオーラ防御を展開して襲ってくる弾丸を防ぐ。慧が攻撃を防ぐのに徹している間、レモンはパラダルクの様子を観察しながら直感であることを思いつく。
（これ、久々だわ……吹っ飛びなさいな！）
『白蛇神オロチヒメの勾玉』を魂魄型フラッシュグレネードとしてドラグナ―ガールたちの元へと投げる。勾玉の中にいる炎蛇神ライムの魂魄が自爆する。
「なっ……！」
　不意打ちといっても過言ではない、白光と灼熱が二人を攻撃していたドラグナ―ガールたちを襲う。それだけではない。彼女たちよりも後方にいたパラダルクや、儀式の舞を踊っていたドラグナ―ガールたちにも被害が及ぶ。森羅万象をドラグナ―ガールに変えられる能力があるとはいえ、そもそも森羅万象を認識できなければ使えないだろう――そう、レモンは考えたのだ。皆、怯んでいるからか、二人への攻撃が止む。その隙に、二人は反撃を開始する。
（憑装（ソウルユニゾン）、蛇塚シロオロチ神楽。お願い蛇神様、あたいと一緒に踊って……！）
　ぶわり、と黄金の霊波動を纏いながら、レモンは白蛇神降ろしの巫女の姿へと変わると、ドラグナ―ガールたちを神楽を舞いながら武器から衝撃波を放つ。その衝撃波は、儀式の舞を踊っていたドラグナ―ガールたちの元へと届く。
「――っ！」
　既に他の猟兵たちによって傷ついていた彼女たちは、フラッシュグレネードから追い打ちをかけられたことにより、舞を踊るのを止めてしまう。だが、パラダルクはまだその事実に気づいていない。
（全て乗り越えましょう……！）
　オーラ防御を解除した慧は、光の翼に赤い瞳を持った姿へと変わると、自前の炸裂弾で閃光による目眩ましを継続させる。その隙に、光の翼で儀式の舞を中断したドラグナ―ガールたちを衝撃波による乱れ撃ちをしながら吹き飛ばし、二度と再開できないように散り散りにしてしまう。
「はっ――！」
「！」
　慧はそのまま振り返ると、パラダルクの背後から功夫の一撃をお見舞いする。パラダルクはその攻撃に気づくが、目眩ましの影響もあり、その攻撃を受け流すことしかできなかった。
「……随分と、派手に邪魔してくれたね」
　未だに猟兵たちは臨戦態勢だというのに、パラダルクは「はぁ……」と溜息を一つ吐いて、その背にある翼を広げて空に飛んだ。
「ここじゃあ、儀式もまともにできない。悪いけど、退散させてもらうよ」
「それじゃあね」と、パラダルクは猟兵たちに向けて言い放つと、どこか遠くへと去って行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2022年05月13日