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なんでもなくて特別な日に(作者 柳コータ
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#UDCアース 


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#UDCアース


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「今日をトクベツな日にしようよ!」
 おろしたての服の裾をひらめかせて、少女は使い慣れたスマホをみんなに翳した。
 画面の向こうには、青空を透かす硝子の塔の中、さまざまなフォトスポットが点在する。
 藤が嫋やかに咲き誇る一角、ふわふわの風船と飛び跳ねられる一角、ネモフィラの咲く廃墟、青空へ駆け上がってゆくような螺旋階段。ちょっとしたテーマパークのようなその場所は、賑やかな街の真ん中にある。
 すっかりいつもの面々になった友人たちが、勝手気ままに遊び回りながら振り向いた。
「特別って言ったって、いつも集まる面子でいつも遊ぶトコに来ただけじゃん」
「そうだけどいーの、偶然みんな新しい服で来るとか奇跡だし!」
「新しくできたフォトスポットいこって話ならそら……」
「約一名いつものパーカーのひといまーす」
「うるせえオレからフード取るんじゃねえアイデンティティ喪失で泣くぞ」
「ねーねー、それより都市伝説検証やろうよ~あと課題写させてまじむり白い」
「あなたの終わらない課題のほうが都市伝説なんですよバカなんですか。ちょっとこのバカ引きずって先にいつもの店行ってるんで」
「あ~今日シトロンの日だね~。それも行こ~」
「はいはいはい、とりあえず一枚撮っちゃうからねー! よいしょー!」

 カシャン。―― #なんでもなくて特別な日に 。

●ウィークエンド・ハピネス
「なんでもない日常が一番かけがえのないものだというのは、みんなよく知っているとは思うのだけれど。その日常を守って、そして楽しんで来てほしいのだわ」
 何気なく過ぎる日々はあまりに早くて、気づけば月曜で、週末で、季節が巡って変わってゆく。オブリビオンの蔓延る世界で、その日常を守っているのは猟兵たちであると言っても過言ではないだろう。
 行ってほしいのはUDCアースだと、宵雛花・千隼(エニグマ・f23049)は告げる。
「繁華街の大きなショッピングモールの中に、新しいフォトスポットが出来ているの。そこで突然UDCが現れるのを予知したわ。敵は突然、数えきれないほど溢れ出す。アナタたちにはその場にいる人々を守って、なるべくUDCを目にしないようにして欲しいのだわ」
 具体的には、と案内人は至極真面目な顔で続ける。
「少しおめかしをして出掛けて、フォトスポットを満喫して来て」
 フォトスポットは藤棚、風船、廃墟、階段の四種類があり、写真は頼めば撮って貰えるし、自前のスマホやカメラでもいい。
 告げてからやっと小さく笑って、千隼は首を傾げる。
「このあいだ春のコレクションがあったでしょう? あんな風に視線を集めて欲しいの。――先ず現れるUDCは嗚咽する『影』。それは悲しみや負の感情を与えようとするけれど、アナタたちは気にせず日常を楽しみ切るのが一番よ。物理的にフォトスポットを占めてしまえば、自然にそれが避難誘導にもなるから」
 さり気なく猟兵たちでフォトスポットを埋め、そして次の強力なUDCの出現のときには一般人がそれを目にしないようにしてほしいのだと千隼は言う。
「次に現れるUDCが厄介なの。ひときわ強力なその魔女は、見た人間を即座に発狂させてしまうから」
 それは黒づくめの足のない魔女だ。猟兵ならば目にしても発狂することはないだろうが、ひとを絶望させることを愉しみとする彼女は、幸福を極端に嫌う。
「化粧は武装なんて言うけれど、着飾ったアナタたちやその記憶たる写真はきっと特別よ。魔女は絶望させようとするかもしれない。……けれどアナタたちなら、抗えると思うから」
 衣装は勿論、いつも通りだって構わない。気にかかるなら、近くに各種揃えたレンタル衣装店だってある。
 何気ない日々を、幸福を否定するものにどうか負けないでと千隼は一度目を伏せてから上げた。

「ショッピングモールを上がっていくと、シトロンのお店があるの。――ウィークエンド・シトロンをご存知かしら」
 それは週末に大切な人と食べる、特別なレモンケーキ。
 たっぷりしっとりしたレモンアイシングのかかったバターケーキは、一口食べれば甘酸っぱくて爽やかな風味が口の中に広がる。
 週末になると開くその店のシトロンは、レモン果汁を生地にも練り込んでいて風味豊か。アイシングの上にはシロップ漬けのレモンも飾られてカフェメニューとしてもお土産としても人気が高い。
 店で食べるなら、レモンティーやレモネードがセットドリンクとして選ぶことができる。
「戦いのあとのお楽しみよ。大切な人や友人、勿論ひとりだって、きっととても美味しいわ。撮った写真を見たり、ゆっくり話を楽しんだり。……なんでもなくて特別な日を、楽しんで来てね」





第2章 ボス戦 『絶望の魔女』

POW ●希望を届けに来たのだわ
【周囲に纏うルーン】に触れた対象の【希望】を奪ったり、逆に与えたりできる。
SPD ●幸せは続きはしないのよ
【幸福】から【絶望】を召喚する。[絶望]に触れた対象は、過去の【痛み】をレベル倍に増幅される。
WIZ ●あなたが悪い子だからいけないの
攻撃が命中した対象に【両脚を断たれた錯覚】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【終わらない痛み】による追加攻撃を与え続ける。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠宵雛花・千隼です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 嗚咽の声は届かない。悲嘆に引きずるにはあまりに眩しい。
 溢れ出した影は、ついに誰の目にも留まらず骸の海へと還ってゆく。
「随分と楽しそうだこと」
 影に代わるように、するりと何気なく、その黒い女はそこにいた。
 つばの大きな帽子に、表情の伺えぬ骨の面。喪服のような黒のドレス。魔女、と誰かが呟いたのに、魔女はくすくすと笑う。
「折角嘆きの蓋を開けたのに、その嗚咽を聞いてもやらぬのね。幸福に浸って、さもそれが当然のように笑うのね」
 ああ、なんて傲慢なこと。
 魔女は澄んだ声で笑い、そのドレスは風もないのに揺れる。その裾の先には、脚がない。
「知っている? 幸福になるためには、絶望が必要なのよ。……貴方たちは今の幸福を得るために、何を犠牲にして来たかしら」
 大切にしていて失ったもの。大切にできずに零れ落ちたもの。目を逸らし閉ざしたいつかに壊してしまったもの。その全てを踏み台にしたのが、今の幸福だと魔女は言う。
「なんて悪い子。――ええ、貴方が悪い」
 その言葉は、否応なしに耳に滑り込む。そう思い込ませるように、正気ごと削り取ってゆくように。
「けれどね、けれど。貴方たちが絶望すれば、誰かを幸福にすることができる」
 今の幸福を、希望を手放して。幸せは続きはしないのだから。

「――さあ、痛みに嘆いて呪いましょうね」

 貴方は、幸せになってはいけないの。
アリスティア・クラティス
相手の言葉を聞き……思わず笑いなんて零してしまったり
「ええ、そうよ?見て頂戴っ、この写真!私の幸福の思い出がまた一つ増えた瞬間!
だだっ広い屋敷に一人、虚無のような空の机にしまえる思い出がまた一つ!」
目を見開き、魔女に全力で写真と共にクルリと回って自分の服を見せつけて

絶望の痛みには目を見張り
本当は『もういない恋した相手と二人であったかも知れない邸の生活。そこには本当の幸福があったのかも知れない』と思うけれども

「残念ね! 私は傲慢であるが故に、ずっと幸福であり続けるわ!
もしそこに絶望が必要ならば――
『丁度良いわ。貴方が全部背負いなさい』」

そこに人には決して見せない冷たい笑みを刻んで、敵に指定UCを


 しあわせになってはいけない。
 幸福を当たり前に享受することを、罪悪だと魔女は笑う。
 くすくす。くすくす。嫌に耳につくその声に、つられるようにアリスティア・クラティス(歪な舞台で希望を謳う踊り子・f27405)は笑った。
「何を笑っているの。貴方も幸福が当然だと思うのね?」
「ええ、そうよ? 見て頂戴っ、この写真! 私の幸福の思い出がまた一つ増えた瞬間!」
 アリスティアは臆することなく写真を魔女へと掲げる。色とりどりの風船と共に傘で飛んだ一枚には、何よりも楽しげなアリスティアの、友の表情が眩しく映る。それは空虚を埋める一枚だ。
 身に纏ったままのふわふわのドレスを揺らして、くるりと回る。翻る裾も、高い足音も、まるで舞踏会の夜のよう。そんなことは起こらぬと知っているけれど。
「だだっ広い屋敷に一人、虚無のような空の机にしまえる思い出がまた一つ!」
「随分とお喋りが好きなのね。……誰も応えてくれないのではないの?」
 聞き流すばかりの魔女の声は、しかし確かに絶望を引きずり出す。
 誰も応えてくれない――アリスティアが恋した相手はもういない。あのからっぽの邸で、もしかしたならあのひとと過ごせる『本当の幸福』があったのかもしれない。
(そんな希望なんて)
 痛みが胸を圧し潰すようだった。思わず痛みに目を瞠って、息を詰める。
 それでもアリスティアは顔を上げて、強く笑った。

「残念ね! 私は傲慢であるが故に、ずっと幸福であり続けるわ!」

 軋むように痛む胸を張る。その胸元に飾っていた宝石を惜しむことなく掴み取る。連なった輝きは虹色に輝いて、きらきらと砕け――その膨大な魔力を解き放つ。
 その眩しさに魔女が小さく呻いた。呪詛のような言葉が続く。
「いつまでも続く幸せなど、ありはしないわ」
「いいえ、あるわ。私がここに在る限り、ずっと! けれどもしそこに絶望が必要ならば――」
 七色に光る魔力が、鉱石の煌きを残してアリスティアの手元に収束してゆく。
 その光の中でなお笑顔であったアリスティアは、ふとその笑みを冷たいものへと変えた。
 誰にも見せぬ、零度の笑み。笑めど何より冷え切った理解と諦観が眩しい終焉を齎そうとする。

「丁度良いわ。貴方が全部背負いなさい」
大成功 🔵🔵🔵

花房・英
寿(f18704)と

届く呪いの言葉にじわりと這い上がってくる不安感
思わず息を呑む
はじまりの記憶
研究所のことが脳裏に浮かび上がるけど
いつもの声と笑みが現実に引き戻してくれる
…ずっと一緒にいる、幸せになる事を諦めない
小さく頷いて応える
守りたいのに、こうやっていつも守られてる
歯痒い
でもそれ以上に大切にされてるって実感して

幸せな記憶なんてひとつもなかった
そんな過去に囚われたくない
ただ側に居てくれるだけで救われる事があるんだって
それを知らなかった頃には戻らない
…寿、時々急に男前になるよね

強がりの軽口には
そんなに惚れさせてどうするつもり?と小さく笑い
痛みくらいどうってことない
離さないってのは俺も同じだから


太宰・寿
英(f18794)と

約束、ちゃんと覚えてる?
そう、幸せになる事を諦めない
彼女の言葉に惑わされないで
いつもみたいに笑って英の耳をそっと塞いで
私の声だけ聞いて
さっきみたいに私だけを見ててね

この子に絶望は要らないの
英の話したがらない過去には触れてこなかった
話したい時がきたなら話してくれたらいい
全てを知る必要はないでしょ?
私の知ってる英は、私が一緒に過ごしてきた英でいい
大切な人が側にいてくれる幸せを英が教えてくれた
英のことはこれから私がめいっぱい幸せにするんだから
ふふ、惚れ直してくれたら嬉しい

本当は私も怖い
痛みと同時に過去の孤独感が思い出されて
虹霓を握る手が震えてる
けど、離さないってもう決めてるから


 あたりまえのように紡がれる言葉は、まるで呪いそのものだった。
(耳を貸すな)
 頭ではそう思うのに、花房・英(サイボーグのグールドライバー・f18794)の身体は軋むように動かなくなる。じわりと染み込む冷たい感覚が、しまい込んだ記憶を引きずり出す。
 それは、はじまりの記憶。研究所にいた頃のこと。過去のことだと理解しているはずなのに、あの頃と同じ不安感が、腹の底からこみ上げて来る。
 貴方が悪い。幸福になってはいけない。――そんなこと。
(言われなくても、)
「英」
 響いて来る声から逃げられもせず俯いた、英の耳をそっと塞ぐ手があった。
 やわらかくて、あたたかい。随分と頼りない感触なのに、ひどく安心する。
「……寿」
 視線の先に、いつも見ている姿があった。太宰・寿(パステルペインター・f18704)がゆっくりと微笑む。
「約束、ちゃんと覚えてる?」
 やくそく。そう言われて、頷くより先に英の唇が動く。
「……ずっと一緒にいる、幸せになることを諦めない」
「そう、幸せになることを諦めない。彼女の言葉に惑わされないで」
 魔女の言葉は、約束のすべてを否定しようとしている。それを阻むように、寿は英の耳を塞いだまま、そっと背伸びをした。こつんと額が触れ合う。
「大丈夫。私の声だけ聞いて。……さっきみたいに、私だけを見ててね」
 画面いっぱいに収まった寿が笑う姿と、今目の前で微笑む姿が重なった。つよがりだ。なんともなしにわかる。けれどそれを言うことなんてできなかった。英は寿のように、強がることだってできていないのだから。
「……ん」
 小さく頷くのが精一杯だった。守りたいのに、気づけばいつもこうして守られている。それが歯痒くてならない。けれども今は、それ以上にわかる。
(大切にされてる)
 無理でも我慢でも、子供扱いでもない。寿は自分のできる精一杯で、いつだって英を大切にしてくれている。それが幸せだと、英は知ったはずだ。
 幸せな記憶なんてひとつもなかった。――そんな過去に、囚われたくはない。
(ただ傍にいてくれるだけで救われることがあるんだって知ったから)
 それを知らなかった頃には戻らない。寿と出会ったことを、過ごした時間をなかったことのようにはしない。そうしたいと、誰よりも英自身が思っている。
「この子に絶望は要らないの」
 大きな絵筆たる武器を手にして、寿は英の前へ出た。漆黒の魔女が綺麗に笑う。
「何故? どうして? 互いに絶望を知れば、深く解り合えるかもしれないわ?」
「いらない。だって、全てを知る必要はないでしょ?」
 魔女を直視すればするだけ、本当は足が竦みそうなほど怖い。それでも寿は引き下がるつもりはなかった。
 確かに今まで、英の話したがらない過去には触れて来ていない。けれど、それは。
「話したいときが来たなら話してくれたらいい。――私の知ってる英は、私が一緒に過ごして来た英でいい」
 微かに英が息を呑んだ。寿はそれに気づかずに、震える手で握った絵筆を魔女へと向ける。描き出すのは、英と共に咲かせた四季の花。過ごした時間だけ増えた、たくさんの彩り。
(大切な人がそばにいてくれる幸せを、英が教えてくれた)
 強がりだ。けれど、しあわせを恐れないと決めたから。

「英のことは、これから私がめいっぱい幸せにするんだから」

 確かな形を得た花々が魔女へ降り注ぐ。返るのは酷い痛みだ。いつかの空虚な孤独感だ。
「そんなにも痛いのに?」
「ッ、でも、離さないって、もう決めてるから」
「……寿、ときどき急に男前になるよね」
 僅かに痛みに呻いた寿を支えるように腕を回して、英が電子の蝶を舞わせる。攻撃が重なれば、魔女が堪り兼ねたように身を引いた。それに僅かに息を吐いて、寿は支えてくれた英に笑う。
「ふふ、惚れ直してくれたら嬉しい」
「そんなに惚れさせてどうするつもり?」
 痛いのはきっと同じだ。その過去を知らずとも、きっと互いにわかっていた。わかっていて、強がりを言って、二人で笑う。それがふたりでいる今だ。
「離さないってのは、俺も同じだから」
 やがて魔女が不愉快そうに呻き、電子光に舞う蝶と筆跡を残す花が、黒を絶望を塗り替えた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ディフ・クライン
リュカ/f02586と

幸福になるために絶望が必要だって?
聞いたことがないな
オレの過去の絶望は今の幸福の為の犠牲じゃないし
失った大切な人の代わりが、リュカや友じゃない
オレの絶望はオレが抱え続けていくべきもので
誰かの幸せになんかなるものか

リュカ、オレちょっとむっとしたよ
行ってもいい?
眉根ひそめ
喚ぶのは森の主たるヘラジカ、ムース
その背に乗って
珍しいって、オレいつもちゃんとやる気だったよ?

オレが悪いことなんて知ってる
幸せが続かないことも
それでも、今を手放す理由にはならない
悪いね

足の痛みなどいくらでも耐えてやるさ
喪失の痛みよりマシだ
リュカの援護に肩越しにそっと笑み
やろう、ムース
風纏う大角で突き上げようか


リュカ・エンキアンサス
ディフお兄さんf05200と


ごめん、欠片も興味ない。
幸福そうに見える人が幸福だとは限らないし
少なくとも俺は生涯自分を幸福だと思ったことはない
他所をあたって欲しいけど…
しょうがない
お兄さんもやる気か
珍しいね
…成る程(お兄さんの言ってる情緒的なことはいまいち理解できないが作戦は理解できた)、了解
いいよ、援護する
行ってらっしゃい

まずは星鯨をばらまき、周囲の空間を把握
うたいの鼠で、援護射撃を行う
麻痺弾を使用。足や腕等を狙って動きを鈍らせる
(効き目が薄いようなら他の弾・個所を狙う
任されたからには、徹底的に妨害するよ
あなた(敵)も俺とおんなじ
だって、幸せになりたいんじゃなくて、邪魔をしたいだけでしょう?


 背で、藤花が揺れていた。
 作られた場所だ。造られた風景だ。けれどその美しさは、決して偽物ではありはしない。その花の下残した思い出が、友との何気ない幸福を嘲笑うような魔女の囁きに、ディフ・クライン(雪月夜・f05200)は青色の瞳を冷たく眇める。
「幸福になるために絶望が必要だって? ――聞いたことがないな」
 魔女の声は、言葉はさもそれが真実であるかのように響く。あるいはそれを思い込ませることが、このUDCの狂気の根源であるのかもしれない。柔らかく響くくせ、悪意的で嫌な言葉だ。
「オレの過去の絶望は今の幸福の為の犠牲じゃないし、失った人の代わりがリュカや友じゃない」
 隣にいるリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)を見やり、ディフははっきりと言い切った。いつもよりも少し強く言葉が滑り出て、それで憤りを自認する。
「リュカ、オレちょっとむっとしたよ。行ってもいい?」
「……珍しいね」
 お兄さんもやる気か、とリュカは常と変わらない無表情のまま武器に手を掛けて、ディフを見上げた。
 リュカとしては正直なところ、魔女の言うことに欠片も興味がない。何やらごちゃごちゃと言ってはいるが、要するにあれが今日倒すべき敵ならさっさと倒すべきだろう。ディフが憤っているのを見るに、多くのひとの心を逆撫でする事柄なのかもしれない、とは思う。
 ただ単純に、リュカにそれが響かないだけだ。理解ができないと言い換えても良い。
「幸福そうに見える人が幸福だとは限らないし、少なくとも俺は生涯自分を幸福だと思ったことはない」
 幸も不幸もなくそれがこれまで生きて来た結論で、これからのことは知りようがないことだ。詰まるところ。
「他所を当たって欲しいけど……」
「リュカ、あれに他所を当たられると困るからオレたちがいるんだけど」
 そうだった。リュカは短い溜息ひとつで、銃を整える。乾いた武器の音が、平凡な景色に浮いて響いた。
「……しょうがない。珍しいお兄さんのやる気を援護するよ」
「珍しいって、オレいつもちゃんとやる気だったよ?」
 少しばかり心外そうにディフが瞬くものの、その指先は魔法陣を描くことを止めてはいない。月白から氷蒼、そして深碧に彩りを変えた魔法陣が喚び出したのは――死せる深き森の主。その名は。
「ムース。君の力を、貸して」
 巨大なヘラジカの背に乗って、名を呼ぶ。室外でもないのに吹き寄せた風がディフの髪を、リュカのマフラーを靡かせた。
「リュカ」
「了解。いいよ、行ってらっしゃい」
 既に互いにその顔を見合うこともない。視線の先には、敵がいる。
 ムースが駆け出すと同時に、光で描かれた小さな鯨たちが周囲に泳ぎ出した。鯨は空を泳ぎ、周囲の情報をリュカへと報せてくれる。
 リュカが構えた銃に込めたのは麻痺弾だ。ダメージよりも動きを阻害することが目的になる。
「あら、ふふ」
 しかしまず狙った足は何の手応えもなく魔女の黒を貫通した。どうやら脚そのものがないのだ。ならばと狙いを変えて、今度は腕を撃ち抜く。手応えがあった。しかし、魔女はくすくすと笑う。
「興味がないのなら、放っておけば良いじゃない」
「そうも行かない。任されたから」
 興味がなくて、理解ができずとも。突き進むひとが目の前にいて、その背を守る手段があるのだから。
「あなたも俺とおんなじ。だって、幸せになりたいんじゃなくて、邪魔をしたいだけでしょう?」
 銃声。
 それを合図にしたように、力強い蹄の音が魔女へと迫っていた。魔女が笑い声を止める。
 ディフとムースが、目前に駆け込んだ。魔女は咄嗟に身を翻すが、その先に銃弾が撃ち込まれる。ち、と口惜しそうに唇を歪めた。
「なんて悪い子」
「オレが悪いことなんて知ってる。幸せが続かないことも」
 知っていることだ。嫌というほど思い知ったことだ。それでも。
「それでも、今を手放す理由にはならない。悪いね」
「……手放さなかったことで、いつか絶望してしまうのに?」
「だとしても」
 蹄が蹴り上げたそばから、ひどい痛みがディフの足を襲った。まるで逃亡を許さぬとばかりに苛む痛みに呻きひとつで耐える。
(痛い)
 けれど、喪失の痛みに比べればどうということはない。鈍った動きを援護するように、銃弾が魔女を牽制する。背後から声は聞こえない。それでも確かなリュカの一撃に、ディフは肩越しに小さく笑う。
「やろう、ムース」
 風が唸る。ディフの声を受けてムースの雄々しい角に風が集まり、森の主は高く蹄の音を立てて魔女へと突進する。そして大角がその漆黒を捉え、青空へと突き上げた。
 痛みを受け止めて、ディフは魔女を見据える。

「――オレの絶望はオレが抱え続けて行くべきもので、誰かの幸せになんかなるものか」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

陽向・理玖
【月風】

確かに
師匠が俺を庇っていなくならなければ
俺は猟兵にはならなかったかもしれない

瑠碧とは
出会えなかったのかもしれない

そう思った事はある

けど
繋ぐ手をしっかり握り直し
今の幸福は
瑠碧と俺
二人のもんだ

手放したら
他でもない
瑠碧を不幸にする

幸せは続かないんじゃない
今切り取った幸福が
続くようにって
願って
努力するもんなんだよ
撮った二人の写真を大事に仕舞って

衝撃波フェイントに飛ばしつつ残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る

俺がいなければ師匠は
って
何度思ったかしれない

今更
あんたに突き付けられなくても
分かってんだよ
覚悟込めUC

痛みは甘んじて受け激痛耐性で耐え

それでも生きてく
生きていきたいんだ
瑠碧と一緒に


泉宮・瑠碧
【月風】

彼女の言う事が、全て間違いとは思いません
同時に、全て正しいとも思わないのですが…

私が居なければ
姉は死なず、どこかの街で幸せに
森は焼けず、樹々は生き
里も無事で…
不変の日が今も続いていたのでしょう

私が産まれた事
その最初から悪かったのだと思います

理玖と繋ぐ手を握り
…幸福に、当然はありません
犠牲を忘れる事も無く
心の底に己の命を断つ願いが残っていても
それでも今
理玖が居る以上、私は生きたい
…遺される辛さ、知ってますから

両脚を断たれた錯覚は
何となく、目の前の魔女の何もない足を見て
…これは彼女の…?
身体より、推測の悲しみで胸が痛い

この場から動けなくても、円環命域で願います
例えひと時でも、彼女の安らぎを


 幸福には絶望が必要だと囁く魔女の声が笑っている。
 その全てが間違いだとは、陽向・理玖(夏疾風・f22773)と泉宮・瑠碧(月白・f04280)は思わなかった。
「確かに、師匠が俺を庇っていなくならなければ、俺は猟兵にはならなかったかもしれない」
 理玖が呟く。
「私が居なければ姉は死なず、どこかの街で幸せに。森は焼けず樹々は生き、里も無事で……不変の日が今も続いていたのでしょう」
 瑠碧が吐露する。
 それは過去にあった絶望だ。もしその絶望がなければ、互いに今こうして猟兵という立場にはいなかったのだと思う。それはつまり、互いにも巡り会えていなかったかもしれない、ということだ。
 理玖と瑠碧は隣り合う視線を交わす。
 これまでにも、そう思ったことはあった。
 あるいは生まれたこと自体が悪かったのだと、そう考えることもある。
 けれど。
「……幸福に、当然はありません」
 瑠碧が静かに言って、魔女を見据える。
 繋いだままの手を、どちらからともなく強く握り直した。
 絶望ありきの幸福――たとえそうだったとしても。今繋ぐ手のぬくもりを否定するつもりはないのだ。
「わかっているのに幸福を手放すつもりはないの?」
「今の幸福は、瑠碧と俺、二人のもんだ。手放したら、他でもない瑠碧を不幸にする」
 くすくすと笑う魔女の声をさえぎって、理玖ははっきりと言い切った。
 その言葉に、瑠碧が小さく微笑んで頷く。
 かつての犠牲を忘れることはない。心の奥底には、決して口にはできぬ願いが残っていたとしても。
「それでも今理玖が居る以上、私は生きたい。……遺される辛さ、知ってますから」
「幸せは続かないんじゃない。今切り取った幸福が続くようにって願って、努力するもんなんだよ」
 たとえ魔女の言葉が間違いでなくとも、全てが正しいとも思わないのだ。
 戦う合図のように、ふたりゆっくりと繋いだ手を離す。
 瑠碧が願い招いた精霊たちが、その場を優しい光で満たした。浄化を伴う光は魔女の漆黒さえ癒すように包み込む。返される痛みがどれだけ鋭くとも。
(たとえひとときでも、彼女の安らぎを)

 その手を強い拳と変えて握り込みながら、理玖は魔女目掛けて駆け出した。片手にあったふたりの写真は、大切に仕舞ってある。
 一気に加速すれば理玖は残像を残し、敵を虚を衝く。ほんの一瞬で魔女の懐へと潜り込んだ。
「俺がいなければ師匠はって、何度思ったかしれない」
 理玖は低く呟く。拳を引き絞れば、ぎりりと音が鳴った。
 幸福を重ねても、絶望も後悔も、ずっと忘れてはいない。
「今更あんたに突きつけられなくてもわかってんだよ」
 とうに決めた覚悟だ。理玖の拳が紫電を纏い、魔女へと叩き込まれる。同時に返された痛みは、どうにか耐え切れた。
 生きているから、この痛みもある。これからも痛むのかもしれない。けれど、もう決めたのだ。
「それでも生きてく。生きていたいんだ。――瑠碧と一緒に」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リリシュクルリ・リップス
傲慢
幸福
そうね、わたしは幸せもの
だって、今のわたしは“幸福”を纏っているんだから

この姿も、このナイフも
魔法で編んだもの
所詮、幻想に過ぎないの
“ほんもの”を挙げるなら……指輪と
わたしの心、ね

幸福になるための絶望――と言ったね
確かに絶望を味わった
“ほんもの”がその証

でもね、犠牲にしたものは、絶望ほど甘くはなかったの
わたし自身と向き合って、現実を懸命に生きる
……幸福のために犠牲にしたことよ
今のわたしは甘い夢の中

悪い子でしょ

ふふ
だって、“堕ち”ちゃったものね

わたしはもっと悪い子だから、もっと幸せになっちゃうの
もちろん、キミを倒してね
そのためなら、人魚姫が苦しんだような脚の痛みだって、少しも辛くないのよ


「傲慢、幸福。……そうね、わたしは幸せもの」
 うたうように魔女の言葉をなぞって、リリシュクルリ・リップス(あまいゆめ・f31655)はあまく笑った。
「だって、今のわたしは“幸福”を纏っているんだから」
 それは蜂蜜のようにあまいゆめ。今の姿も、この手のナイフも、魔法で編みだしたもの。
 そのことを一番よく心得ているのは、他でもないリリシュクリだ。
「所詮、幻想に過ぎないの」
 何気ないお喋りのようにくすくす笑って、リリシュクリは魔女へと歩み寄ってゆく。魔女もまたくすりと温度のない笑みを零した。
「幻想だと言うならば、手放しても良いでしょう?」
 声と共に、痛みが両脚を襲う。まるで断たれたような――人魚姫が苦しんだような痛みだろうか。リリシュクリは思わず歩みを止めて、魔女を見た。
「幸福になるための絶望――と言ったね」
 確かに絶望を味わった。その証を、リリシュクリは既に得ている。
(指輪と、私の心)
 幻想の中の、ほんの少しのほんもの。
「でもね、犠牲にしたものは、絶望ほど甘くはなかったの」
 自分自身と向き合って、現実を懸命に生きること。それが、リリシュクリが幸福のために犠牲にしたものだ。
 幸せを纏って、幸福のなかにあるために。だから、リリシュクリは現実にいない。いつだってずっと、甘い夢の中にいる。
「悪い子でしょ。……ふふ、だって、“堕ち”ちゃったものね」
 わたしはもっと悪い子だから。自分で言って、重ねて笑う。足を襲う痛みはあれど、幸福の中にいることを知ってさえいれば辛くはない。
「もっと幸せになっちゃうの。――もちろん、キミを倒してね」
 花のナイフを、絶望の魔女へ突き立てる。同時にリリシュクリの足元から咲き誇った睡蓮が、あたり一面を花の水面へと変えた。
 蜜のように甘い声が、絶望の囁きを掻き消してゆく。

 さあ、花の海にとけて。
大成功 🔵🔵🔵