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銀河帝国攻略戦⑯~悲しみの涙を越えて

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「~♪ ~♪」
 何処からともなく儚くも美しい、人々の胸を打つ歌が聞こえてくる。
 ある者には、故郷の母を。ある者には、失われし戦友を。ある者には、どこに居るかも分からぬ恋人を。
 その歌を聞いた人々が、先ず脳裏に浮かべたのは、今までの彼等の人生の中で、最も大切な人と分かたれる事への、悲しさだった。
 彼等が脳裏に浮かべる者達は、皆、その表情を別れに対する寂寥と、悲哀に満ち満ちていて。
 そして……自分達にこう告げてくるのだ。
「さようなら……私(僕、俺、わたし、あたし……)の最愛の人よ」
 と。
 その言葉に衝撃を受ける間に、彼等の脳裏に過ぎった者達は、其々の表情を浮かべて、そして自分達にこう問うてくる。
「一緒に、来てくれる?」

 ――と。

 其々にとって最も大切な人々の、その言葉を無碍に出来る者が果たしてどれ程居るのであろうか?
 それが……例え自身を死へと誘う、破滅への輪舞曲だとしても。
 歌声に惹かれた人々は……問いかけてきた者達へと頷き、そして彼等と共に行く。

 ――裏切り、そして死地と言う名の……戦場へと。


「とまあ、そんな事が今、解放軍の船で起きている訳よ。全く……『歌』をこんな風に使うなんて、私には許せないわ」
 憤懣やるかたない、と何処かムスッとした笑顔を浮かべたエリス・シルフィード(金色の巫女・f10648)。
「正直、私はこういう手合いが一番嫌いなのよ。歌と踊りは例えそれが悲しみや怒りを表しているものでも、それを歌い、踊る人の『心』を癒し、幸せにしてくれる大切な魔法なんだから」
 何やら持論を持ち出しぶつくさと文句を言い続けるエリスの様子に、パチパチと猟兵達が目を瞬く。
 猟兵達の怪訝そうな表情を見て、エリスは御免ね、と小さく呟きつついつもの様な天使を思わせる笑顔を浮かべた。
 ――その米神に怒りマークをはっきりと付けた、明らかにとってつけたその笑みを。
「まっ……こういう事になったのも、皆の協力の結果、難攻不落の帝国大要塞「エンペラーズマインド」を突破した『解放軍』は、帝国旗艦『インペリウム』を目指し快進撃を続けた結果なのよね、ええ。だからこそ……尚更許せないんだけれど」
 エリスの説明を要約すると下記の様になる。
 快進撃を続ける解放軍の戦力を食い止める為に、銀河帝国軍は、『クライングシェル』艦隊と言う虎の子の艦隊の一つを『解放軍』鎮圧のために向かわせた。
 しかし、『クライングシェル』艦隊は、戦闘力で戦う艦隊では無い。
 彼等が行うのは、洗脳。
 洗脳と言うと少し語弊があるかも知れない。
 彼等は、ただ狙いを定めた船に最適であろう、歌を流すだけ。
 けれどもその音楽を聴いた解放軍の人々は、それだけで行動不能に陥ってしまうのだ。
「……まあ、どちらにせよ、戦争の為に歌を使う奴等を許してはおけないけれど」
 でも……、と微かに肩を震わせ、暗い表情を浮かべるエリス。
「この音楽に対抗する為に、皆には芸能船の放送設備を増強して、そこから音楽放送を行って貰うのが最善の方法って言うのは、皮肉かも知れないわね」
 だが……『クライングシェル』艦隊による『洗脳音楽通信』に対抗する、最善の方法がこれしか無いというのであれば、やむを得まい。
 この洗脳音楽通信に対抗できるのは、猟兵達の音楽しか無いのだから。
「と言うわけで、皆にはこの『クライングシェル』艦隊の洗脳音楽に対抗するための音楽を作り、そして奏でて貰い、『クライングシェル』艦隊に対抗して貰うわ。……歌を愛する多くの人々の為にも、こんな風に歌を利用する銀河帝国軍は許せない。それだけは確かだから、ね」
 沈痛な影を漂わせつつも天使の様に愛らしい笑顔でその背を押すエリスに頷き、猟兵達は静かにグリモアベースを後にした。


長野聖夜
 ――生まれ出でる歌は、果たして人々を救う鐘となるか、それとも……。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言うわけで音楽には音楽、という感じで、皆さんには音楽を奏で銀河帝国軍の音楽艦隊『クライングシェル』に対抗して頂きます。
 尚、踊り等、歌以外の芸術に関しましては、それが最終的に『歌』に繋がるパフォーマンスになるのであれば、考慮する予定です。
 今回のシナリオ、絶対に忘れてはいけない下記原則を遵守して下さい。
 ===========================
 現実に存在する楽曲の曲名や歌詞、替え歌等が記載されているプレイングは採用できません。
 ===========================
 この点は、原則になりますので厳守を忘れずに。
 尚、下記ルールも適用されます。
 ===========================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 =============================

 ――それでは、解放軍の心を震わせる良き『歌』を奏でられます様。
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第1章 冒険 『洗脳音楽通信を撃ち破れ!』

POW   :    激しいビートで、魂を揺さぶり、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

SPD   :    超絶的な技巧で、聴く者を圧倒して、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

WIZ   :    心に響く歌声で、感情を揺り動かして、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

祝聖嬢・ティファーナ
WIZでの行動指針をお願いします

『シンフォニック・キュア』で“歌唱”+“鼓舞”+“祈り”+“勇気”+“優しさ”で過去の戒めの苦しみの軛から救い、『生まれながらの光』で癒してあげます☆

ただ、1人で全ての【癒し】を届ける事はムリな事を猟兵の皆には伝えて、手伝い手助けをお願いします♪・u・b

一緒に風の精霊に「ボクと皆様の助ける聲と力を届けて!☆」とお願いします♪≧▽≦
猟兵と精霊にはお仕事の後には“こんぺいとう”をあげて甘味で労を労います☆


敵の勢力やボスには『神罰の聖矢』や『エレメンタル・ピクシィーズ』で光/生命/精神/月の精霊で妨害や邪魔・攻撃をしてもらい、終わったら“こんぺいとう”をあげます☆


ウィリアム・バークリー
歌の起源は神へ捧げる祈りでした。神々への感謝を伝える歌と踊りは、どの文明にも見られたものです。
それを戦争の道具にしようとは、エリスさんでなくても怒りを爆発させたくなります。

ぼくらは芸能船で『クライングシェル』に対抗するだけでいいんですね?
敵艦を沈めるのは解放軍自身の仕事だと理解しました。

さてと、ぼくが音楽を扱うとなると、やっぱり魔法の呪文になりますね。
「優しさ」と「祈り」を込めた呪文の詠唱です。

――沙漠を彷徨う男がオアシスを見つけた時の感動。

それを表現する歌詞に、水の「属性攻撃」の呪文を「高速詠唱」で織り込んで。
オアシスを見つけた喜びを『解放軍』艦艇への帰属意識に繋げて、洗脳音楽に対抗します。


フイ・フイ
無言で一礼。
曲が流れ出す。


見えていたかい
あの一つ一つが 星の光
何万光年 太古の光
遠い過去が
現在(いま)へと 光を放つ

※1
星はまだそこにいるね
光を今も放っているよ
それがここに届いている

見ているのかな その一つ一つを
星の影 何万回にも 繰り返す闇
繋がる過去が
現在(いま)へと 傷を残す

星はまだそこにいるね
影を今も離さずいるよ
君がそこを見つめていて

瞬かない星空に 幾条(いくすじ)も光が流れていく

(※1)

星はまだそこにいるね
君が今も離さずいるよ
それがここに続いている
君が光を放っている

曲終わりに【生まれながらの光】を全身から宇宙を照らすほどに(の気持ちで)放つ。
一礼して退場。
(曲調・雰囲気お任せします)


デイヴィー・ファイアダンプ
(指定ユーベルコードは参考資料程度にお願いします)
この歌声、“キミ”たちに似てるな。
果たせなかった約束や叶わなかった再会を嘆き、
そして“それでも”と姿を現したキミたちにね。

向こうもいろいろとその思いを捻じ曲げてきているようだ。
それならその向こうの思いに重ねて、それを捻じ曲げさせてもらうよ。

だから僕が歌うのは、共に居たいというその思いや、今は遠く離れても再会を願う心を。

……そして簡単にはさよならなんて出来ない、だから再び帰ってくるという約束の歌を、ね。
戦場に向かうのであれば、その約束はきっと生き抜くための理由になるだろう。
共に未来を紡ぐためにも、“それでも”と歌わせてもらうよ。


夜暮・白
せっかくだから猟兵の力でいきます。艦長(所属旅団の団長)さんから艦を借りて、ミュージックスタート! 敵の音楽を取り込みながら、印象をがらりと変えて打ち消すよ。
(操作盤を操りDJっぽいことを始める。事前に考えてたキーワードを繋ぎながら、即興でたどたどしく、心を込めて歌う。以下イメージ)

僕らは集った 旗を掲げて
闇を打ち晴らす 希望を見つけたんだ
心躍った 解放軍の名が いま心に燈る

胸が高鳴る 新しい物語 紡いで
この時間はいつか 贈り物になる

さあ 不意に現れた過去に 別れを告げて
生命ある者の 明るさで照らそう

★アドリブ連携歓迎。クリア済は返却希望




「凄いね、この船キミのなの?」
「いえ、これ団長から借りてきたものなんです。こんな機会ですし折角なので使わせて貰っています」
 ――飛空戦艦ワンダレイ。
 歌と踊りの為の舞台として整えられたそれは、夜暮・白が用意した物だ。
 船上の人となった祝聖嬢・ティファーナの驚きと喜びのない交ぜになった完成に白が思わず笑みを零す。
 ヒラヒラと可憐にティファーナの姿は見ているだけでも綺麗なものだ。
「歌の起源は神へ捧げる祈りでした。神々への感謝を伝える歌と踊りは、どの文明にも見られたものです。それを戦争の道具にしようとは、エリスさんでなくても怒りを爆発させたくなります」
 ウィリアム・バークリーが今までの人類史を紐解きながら話しかけると、白がそうですね、と同意を示した。
「その怒りは存分に解放軍の皆さんの洗脳を解放するために活用して下さいね。その為に借りてきた船ですから」
 白達の話を聞きながらそっと深呼吸をし、心を整えるフイ・フイ。
 そうして飛空戦艦ワンダレイが近付くにつれてその耳に響き渡るその歌を耳にしたデイヴィー・ファイアダンプは、自身が纏う『彼等』がザワザワと騒いでいるのに気がつき、ふと口元に柔らかい笑みを浮かべた。
「この歌声、“キミ”たちに似てるね」
 それは、果たせなかった約束や叶わなかった再会を嘆きながらも、“それでも”とデイヴィーの周りに集まった死霊達の事か。
 それとも……今、この場に鳴り響く深い悲しみや、孤独を思い起こさせる歌声を聞き、それに釣られて永久の眠りへ誘われようとしている解放軍の戦士達へのものだろうか。

 いずれにせよ……舞台は、確かに整った。


 歌により、脱力している解放軍の戦士達の前で、フイが無言で一礼。
「それじゃあ、始めましょうか!」
 白が操作盤を操り、音楽を奏で始める。
 流され始めたのは、美しく、そして優しく瞬く星達の煌めきを思わせるピアノ伴奏。
 フイが用意してきた歌詞に合わせた曲だ。
 もしこれに名を付けるとしたらそれは……。
 
 星の光を

 ――見えていたかい
 ゆったりとしたアルトパートの歌声が、柔らかなピアノ伴奏を背景に人々の心へと染み入れとばかりに周囲に浸透。
 ――あの一つ一つが 星の光
 そのままゆっくりとある一点を指差すフイ。
 彼女が指差したその先には、正しく無限にも等しい星空が広がっている。
 ――何万光年 太古の光
 揺らり、揺らり。
 それはまるで、陽炎の様に移ろう光。
 ――遠い過去が
 少しだけ遠くを見つめる様な眼差しをして、音色を押さえ。
 ……そして。
 ――現在(いま)へと 光を放つ
 一気に声音を高らかに変え、そしてテンポを大きくアップさせた。
 ――星はまだそこにいるね
 フイの声に合わせる様に、伴奏も又、その音色を高らかなものに変え。
 また、上から流れ落ちる川の様に鋭く、何処か儚くも激しい曲調へと変化していた。
 ――光を今も放っているよ
 それは、正しく星々が恒星として自ら輝く光となっているかの様。
 ――それがここに届いている
 フイが此処で息継ぎを一つ。
 それまで其々に輝き続ける光から何処か寂しさを思わせる間奏が入った。
 それを聞きながら、フイは周囲に輝く星々を扇状に指差していく。
 ――見ているのかな その一つ一つを
 それは、何処か静謐を帯びた曲調で。
 ピアノの奏でる音も、少しずつ低くなっていく。
 ――星の影 何万回にも 繰り返す闇
 けれども、それでも。
 ――繋がる過去が
 ピアノの音がより小さく、低くなり、そして……。
 ――現在(いま)へと 傷を残す
 ピタリ、と止まった。
 フイがそこで息継ぎを一つ。
 その音がやたらはっきりとその足を洗脳音楽に捕らわれていた人々の耳に響いた。
 ……幕間
 逡巡とも言えるそれを、聞いた時、再びピアノが高らかで清らかな音色を奏でフイもまた、音調をメゾソプラノへと変え、高らかに歌い続けた。
 ――星はまだそこにいるね
 ――影を今も離さずいるよ
 ――君がそこを見つめていて
 そのまま、高らかに歌いきる。
 ――瞬かない星空に 幾条(いくすじ)も光が流れていく
 ……と。
 最高潮に達したピアノが最後に深く印象に残る一音を奏で……それから、またゆったりとした曲調へと戻っていく。
 ――星はまだそこにいるね
 ――君が今も離さずいるよ
 ――それがここに続いている
 ――君が光を放っている
 静かにそして柔らかく歌いきり、一礼と共にフイが全身から【生まれながらの光】を放つ。
 それに合わせる様にティファーナも又、生まれながらの光を放った。
 暖かく柔らかい光が、解放軍の戦士達を包み込み、その戦意を少しずつ取り戻させていく。
 その様子を見て……フイは、静かに一礼した。


 フイの一礼に勇気づけられた人々の様子を見ながら、良し、とティファーナが頷きを一つ。
 ティファーナのやる気に応じる様に彼女の背の羽を煌めかせた。
「次は、ボクが行くよ! 皆も協力宜しくね!」
「お任せ下さい、ティファーナさん」
 比較的静けさを思わせるフイの歌とはある種真逆とも取れるハイテンションで両手でVサインを出すティファーナに、ウィリアムが頷き青い魔法陣を幾重にも作成する。
 白も又、ディスクを差し替え再びスイッチをオン。
 先程とは打って異なる微かな暗さと明るさがない交ぜになった音楽が周囲を包み込む。
 ティファーナが白が奏でてくれているその音楽に乗って、祈りと優しさを籠めた鼓舞の歌を歌い始める。
 それは、ウィリアムが練っていた希望の歌。
 ――砂漠で迷いし旅人が絶望に至ったその時に、オアシスを見出し天にも昇る幸福を感じた命への希望と神への感謝の祈りを籠めた歌。
『詠唱… 祝詞… 聖歌… 祈りに旋律の生命を!』
 ティファーナがソプラノパートでそれを歌い、ウィリアムがテナーパートでその歌を歌い上げ、更にウィリアムは歌いながら青い魔法陣を高速で編み上げて歌いながらぱっ、と手を上げる。
 それと同時に魔法陣から水が溢れだし、正しく砂漠に浮かぶオアシスを再現した。
 合わせて白が流した音楽のテンションもまた、クライマックスへ。
 そうして解放軍の戦士達に士気を取り戻させる間にティファーナが周囲を漂う風の精霊達へと歌に乗せて願いを届ける。
(ボクと皆様を助ける聲と力を届けて☆!)
 と。
 その声に応じた風の精霊達が、水の精霊達と協力してティファーナ達の歌声を拡大、多くの人々へとその声を届けていく。
 グッジョブ! とサムズアップするティファーナが更にオアシスの歌を歌い切る。
 そして最後に……。
「皆! ボク達の歌を聞いてくれてありがとう!」
 グッ、と親指を立てるティファーナと一礼するウィリアムの姿に多くの兵士達は更に活力を取り戻していた。


(さて……次は僕の番だね)
 フイが歌った星の光が人々に一筋の光明を示し、ティファーナとウィリアムの歌が兵士達に灯った光をオアシスという形にして希望を作った。
 なれば、次に与えるべきは……其々がこの戦いで生き残るというはっきりとした『理由』
 共に未来を紡ぐ為にも、どんな困難や悲しみに心が挫けたとしても……簡単にさよならなんて出来ない、“それでも”と思えるだけの心の存在。
 そう、デイヴィーは考える。
「だから、その歌を皆に聞かせるために……“キミ”達の力を貸して欲しい」
 デイヴィーがそう囁きかけ不死呼びのランタンを掲げたその時、デイヴィーの呼びかけに応じる様に、現れたのは彼に付き従う死霊の群れ。
 彼等も又、本当は生きていたかったのだろう。或いは帰るべき者がいたであろう。
 でも、デイヴィーの今回の招きに応じた死霊の群れ達はその無念の思いとは別の波動を抱えていた。
 それは……戦いの中で、自分達の様な想いをする者、或いは自分達がその様な想いを持たさせてしまった者達を思い、自分達の様な想いをする者が、一人でも少なくなる様に、と言う祈りを抱えた亡者達。
 白が選んでくれた、例え洗脳音楽と同じ故郷の歌であっても、洗脳音楽の様な死を連想させる悲哀の歌では無く……純粋に故郷への郷愁を、そしてそこで待つ大切な人々を思い起こさせる優しき音楽をBGMにその亡者達の想いを乗せて、デイヴィーは歌い始める。
 ――共に居たいというその思いや、今は遠く離れても再会を願う心を籠めた、その歌を。
 それこそ……その無念の思いを抱えて死んでしまった者達と共に。
 それは、ある者には、故郷で待つ恋人や家族のことを思い起こさせ、またある者には今も何処かで戦っている戦友達を思い出させる。
 いや……それよりも、何よりも。
 今、正に洗脳音楽によって捕らわれ死後の世界へと引きずり込まれようとしていた『戦友』達と共に、其々の故郷へと戻りたいという想いを呼び起こさせる。
(よし……これなら大丈夫そうだね)
 自分に力を貸し、共にその想いを伝えるべく影ながらこの歌に付き従ってくれた亡者達と自分の意図を諒解しその思いを強くする曲を流してくれた白に礼を述べながら、デイヴィーはそう確信した。


(皆、凄いな……僕も頑張らないと……)
 背後でDJの様にディスクを交換し、ウィリアム達のBGMを支えていた白がうん、と決意の表情で首肯する。
 フイが与えてくれた優しさ、ティファーナとウィリアムが与えた希望、そしてデイヴィーがくれた理由。
 其々の想いが届き、確実に洗脳音楽から正気に戻りつつある解放軍達に向けて、白はディスクを交換し、そして音楽を流し始める。
『さあ。猟兵と皆さんの力を思い知らせましょう!』 
 白が告げると共に、流れ始めたのは勇壮な行進曲。
 その音楽を掛けて解放軍達の士気を上げながら、白は緊張してたどたどしくなりながらも一つ一つ、はっきりと言葉を選んで歌い始める。
 ――僕らは集った 旗を掲げて
 ややテンポが早いそれに負けられない、とばかりに声を張り上げる白。
 ――闇を打ち晴らす 希望を見つけたんだ
 それは、正しく軍歌であり、解放軍の兵士達を鼓舞する音楽で。
 ――心躍った 解放軍の名が いま心に燈る
 一人、又一人。
 白の音楽に合わせて胸の中を熱くする解放軍の兵士達。
 ――胸が高鳴る 新しい物語 紡いで
 ――この時間はいつか 贈り物になる
 此処まで白が歌い切った時、既に兵士達の顔に士気が漲っていた。
 その其々の表情に押される様に流した音楽もテンポが上がり、白は締めくくるべく歌いきる。
 ――さあ 不意に現れた過去に 別れを告げて
 ――生命ある者の 明るさで照らそう
 そう、白が歌いきった時。
『オオオオオオオオオッ!』
 雄叫びが、解放軍の兵士達から上がった。
 そう……白達の歌は確かに彼等に届き、洗脳音楽を打ち破ったのだ。
「それでは、皆さん、宜しくお願い致します」
「皆! 銀河帝国軍を蹴散らしちゃってね!」
 ウィリアムとティファーナの言葉を切っ掛けに士気を完全に取り戻した解放軍の兵士達は進軍した。

 ――作戦……完了。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月16日


挿絵イラスト