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7thKING WAR㉓~監禁ポシビリティ

#デビルキングワールド #7thKING_WAR #召喚魔王『パラダルク』

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#デビルキングワールド
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#7thKING_WAR
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#召喚魔王『パラダルク』


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●完全なる享楽支配
 生き残るための最適解とは。
 集団での文明構築。歴史の書き換え。無限再生。無限成長……。
 他にもあるだろうけど、僕は勝てない戦いはしたくない。
 戦うなら油断はしない。冒険もしない。
 『約束された勝利』を、『勝利の方から』傅かせて、支配する。
 僕の能力ならば、それができる。

 ――それができなかったから、滅んだんだけど。
 定かでない記憶に、憎らしい稲妻に引き裂かれた感覚が残ってる。
 きっと成長する敵に、対策が間に合わなかったんだろう。
 ――でも今、こうして再びの生がある。
 この僕が他人に利用されている状況は、本意ではないけれどね。
 じゃあこう考えよう。これはいい機会でもある。
 僕が『無敵』へ至るために、必要な機会であると。

「さあ踊って、ドラグナーガール。必ず儀式を完成させてね」

●可能性の未来
 実験戦艦ガルベリオン。
 かつて猟兵達が最初にオブリビオンフォーミュラと対峙したスペースシップワールドの銀河帝国攻略戦において、ドクター・オロチを初めとした幹部達が搭乗していた鋼の戦艦である。
 それがどのような経緯を辿ったのか、今この時はデビルキングワールドの上空において召喚魔王の儀式場と化していた。
 辺りに満ちる空気が、薄い。怠い。甘ったるい。
 奥では白と黒の少女達が幾人も集まって踊っている。
 その儀式を背に、召喚魔王パラダルクが猟兵へ振り返る。
「いやあ、参ったなあ……どうしても、僕を見逃してもらう訳にはいかないのかい?」
 眉を下げて肩を竦めるパラダルク。
 しかしそれで引き下がる者達なら、初めからここまで追いかけることはしないだろう。
「だよねえ。本当、困るなあ。僕は別に、この世界に対して何かしようっていう気は無いんだけど……――ね?」
 猟兵達の意図を察しつつも、ただ困ったと。軽く冗談めかして笑った後に、ちらりと目を開く。

 その、ごく自然な。閉じた目を開いて、たまたま視線を合わせただけの仕草。
 それだけで空間内に白き少女の可憐な笑い声がひとつ、ふたつ、みっつ――数え切れないほどに増えてしまう。
 白き少女は、その一人の外見を取れば非常に整った、愛らしさと色気を兼ね備えた存在と言えよう。しかし数え切れないほどに増えた彼女達はどれも皆、同じ外見。同じ赤い目。同じ角。享楽に堕ちた同じ顔に同じ声だ。まともな感覚でいれば狂気に陥りかねない。
 それでも狂気に堕ちないとすれば、鋼の精神力を持っているか、既に彼の『享楽』の支配に堕ちてしまったかのどちらかだろう。
「このドラグナーガール達は、あらゆる未来を知ることができるんだ。猟兵でも打ち破る術は無い。悪いけど、こっちも忙しいからね。このまま退いてくれるのがお互いのためじゃないかな」
 猟兵が仕掛けない限りは、パラダルクやドラグナーガールも積極的に戦端を切り開く気は無いようだ。
 ――より正確には、既に先手を打ったのでその必要が無い、という判断なのだろうが。
 彼が猟兵を退けるための戦闘より優先したいことなど、背後で行われているドラグナーガール達の儀式以外に有り得ないだろう。
 その儀式が、カクリヨファンタズムの竜神親分『碎輝』を狙ったものであることは、猟兵達も予兆で知るところである。
 このパラダルクと碎輝の間にいかなる因縁があるのか、猟兵達は未だその詳細を知らない。しかし、世界を滅ぼさないよう常に最弱であろうと努める竜神親分に、余計な横槍を入れさせる訳にはいかない。
「退くつもりはない、かあ……そういうことなら、仕方ないよね」
 薄水色の瞳が細められる。
 これより魔王が始めるのは、あらゆる可能性の蹂躙と隷属だ。

 仲間である竜神親分から危機を遠ざけるため。
 1stKINGの切り札を削ぎ落とすため。
 ――享楽の魔王を、退けよ。


旭吉
 旭吉(あさきち)です。
 出すことを強いられた気がしたので両方出しました。
 召喚魔王『パラダルク』ディアブロホワイト戦をお送りします。

●状況
 実験戦艦ガルベリオン内部。
 ドラグナーガールが踊るために広い儀式場となっているため、障害物はほぼないです。
 ただし、パラダルクの『享楽』の能力により呼吸のための空気まで彼に従いドラグナーガールとなるため、時間をかければかけるほど不利になります。
 彼を倒すか、背後のドラグナーガールの儀式を止めて撤退させれば勝利です。
 (戦力を0にしても完全撃破は難しいようです)

 パラダルクに何かを問うても構いませんが、正しい答えを得られるとは限りません(特に真の目的等)

 演出や台詞は盛っていきたいと思います。
 あんまり派手な怪我はしたくないとか、装備に万が一にも傷を付けたくないとか、そういう方には参加をお勧めできないかもしれません(判定次第では軽傷・無傷で済む場合もあります)
 ご参加の前に、ご一考くださいませ。

 どなたかとご一緒に参加される場合、お相手のIDか【】で括ったチーム名をお願いします。特殊な呼び名などあれば書いて頂けると助かります。

●プレイング受付
 5月13日8:31~システム的に受付可能な限り受け付けます。
 (完結スピード重視の方にはお勧めできないと思います)
 できるだけ多く採用する予定でいますが、キャパ的事情により、問題が無いプレイングでも流してしまう事があるかもしれません。
 ご了承ください。

●オーバーロード
 必要でしたらご利用ください(採用・不採用には無関係です)
 失効日の関係上、通常プレイングを先に反映することがあります。
 仕上げ狙いの場合はご留意を。

●プレイングボーナス
 このシナリオでのプレイングボーナスは、以下の通りです。
 『敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する(しない限り必ず苦戦か失敗になる)/踊るドラグナーガール達を倒す』
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第1章 ボス戦 『召喚魔王『パラダルク』ディアブロホワイト』

POW   :    ガールズ・ポシビリティ
自身の【下僕であるドラグナーガール】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[下僕であるドラグナーガール]は【可能性を使い果たしたこと】により破壊される。
SPD   :    フューチャー・ルーラー
【ドラグナーガール達と連携し、精神支配魔術】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【以降の動き方や使用ユーベルコード】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    パラダルク・フューチャー
召喚したレベル×1体の【ドラグナーガール】に【ガルベリオン鋼の機械兵器とダンス技術】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●監禁ポシビリティ
 慎重に。確実に。
 少しの油断が命取りになる戦いに、もしもなんてない。
 考えてる間に、取り返しが付かなくなるからね。

 だから、僕にもしもはない。
 その未来を。可能性を。希望を。
 あらゆる成長を、潰させてもらうよ。
桐嶋・水之江
私としては見逃してあげてもいいんだけれど
このガルべリオンと交換条件って事でどう?
イヤ?それは残念

精神支配の魔術は脳に埋め込んでるラジエルに思考を委ねる事で対処するわ
以降の私の意識は遮断
更にガルべリオンをハッキング
迎撃システムを停止(これ重要)させ艦内の防衛機能を掌握
私の周辺の隔壁を全部下ろしてその中に引き籠るわ

そうこうして先制攻撃を凌いでからが本命よ
艦外に待機しているワダツミを海神之剣でこの場に突っ込ませるわ
私の身柄は遠隔操作してるエレノアに回収させてワダツミに退避
そしてワダツミは水之江キャノンを発射
艦内を破壊して儀式を強制終了させちゃいましょう
見えていてもどうしようも無い未来ってあるわよね?



●回路接続、通信良好
 正直に言えば期待はしていなかったが、桐嶋・水之江(f15226)は挨拶代わりにまず交渉してみた。
「私としては見逃してあげてもいいんだけれど、このガルべリオンと交換条件って事でどう?」
「魅力的な交渉だけど、流石に困るなあ。移動手段以外にも色々と必要だからね、これ」
「そう? それは残念」
 予想通りの交渉決裂であった。知ってた。
 そしてもうひとつ。この艦、彼にとって相当大事なものらしい。

 ならば――狙わない手はない。

 意識をスイッチし、『桐嶋水之江』としての自我を遮断すると脳内の超小型量子コンピューター『ラジエル』で艦内をスキャンする。かつてスペースシップワールドに浮かんでいた戦艦なら、スペースノイドである水之江にとってある程度勝手はわかる代物だ。
 また、自我を遮断していれば精神を支配された所で何の影響もない。何が起きていようが、実験戦艦ガルベリオンのシステムさえ掌握できてしまえばこちらのもの――、
『言ったはずだよね。僕は森羅万象をドラグナーガールにできるって』
 遮断しているはずの聴覚、ではない。だからこれは精神攻撃ではない。
 ただ『情報』として、直接『ラジエル』が受信しているだけだ。
『君に触れたドラグナーガールが、何か別の行動をしているらしいと教えてくれたからね。
 彼女を通じて伝えているのだけど……ああ、君の肉体はまだ無事だよ。まだ、ね』
 自然に、さりげなく強調される『まだ』。無事のままで置くつもりはないらしい。
『この戦艦は、故障とか事故とかは無くしたかったからねえ。僕がやりやすいようにさせてもらったけど、何か問題でも起きているかい?』
 問題。スキャンに今のところ目立った不具合は――ある。
 『この戦艦がどうして動いているのかわからない』のだ。
 人員が配置されているわけではない。自律プログラムが走っているわけでも、遠隔操作でもない。
 彼が伝えてきた『やりやすいようにした』という改良は、具体的に何を指しているのか結果を出せない。それがクリアできなければ、システムの掌握も叶わない。
『問題がないなら、そろそろこの肉体も『やりやすいように』してしまうけど。いいね?』
 パラダルクの伝える『肉体の改造』は危険だ。
 しかし、このまま意識を戻せば間近で精神攻撃を受けてしまう。
 自己のシステム保全のため、最適な行動は――。

『痛っ!!』
 水之江に触れていたドラグナーガールが、反射的に手を離す。
『パラダルク様ぁ、この人ったら意識は無いくせに何かを繋ごうとしてくるの!』
「自律防衛機能か何かかな。最初はガルベリオンも――」
 最後まで言い切らぬまま、パラダルクはそのドラグナーガールを伴って場から退避する。

 部屋の壁を破って突っ込んできたのは、水之江のワダツミ級強襲揚陸艦だ。ラムアタックのような形で突っ込んできたにも関わらず一切のダメージを受けていないワダツミは、『ラジエル』が遠隔操作する『アークレイズ・エレノア』が水之江を回収するまで待機した後、極大の水之江キャノン(ハイパーメガビーム)をその場で発射したのである。

 儀式場を戦艦ごと木っ端微塵。これでは儀式の続行など不可能だろう。
 『エレノア』の鋼の手の中で意識を戻した水之江は、その様子を見て満足げに笑んだ。

「流石に、本人達は無事か。でも戦艦がこれじゃあね」
 ――見えていてもどうしようも無い未来って、あるわよね?
 一時は自身のドラグナーガール化の危機もあったことは後で『ラジエル』からのインプットで知ることになる水之江は、今は自機の手に守られて悠々と去って行くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


●『享楽』戦艦
 いきなり派手に破壊され、風通しの良くなってしまった実験戦艦ガルベリオン。
 猟兵のユーベルコードの威力を改めて思い知ることとなった魔王パラダルクである。
 ――が。
「『やりやすいように』手を加えておいてよかったよ……前のままだったら戦艦ごと撃沈だったね、これ」
 そのような姿になってもなお、実験戦艦ガルベリオンは空にあって安定している。
「まあ、世界を渡るには修復が必要だろうけど。儀式は続けられるね? ドラグナーガール」
『はぁい♪』
 白と黒の少女達が、どこからともなく現れて集まってくる。
 手を組んで踊りだせば、中断した儀式は再開された。
「君達は航行と戦艦の修復。任せたよ」
『はーい』
 儀式の少女達とは別に集まった少女達が、こちらでも踊り始める。
 彼女達が踊れば戦艦は水平を保ち、破壊された戦艦の傷も塞がり始める。
 正確には――傷ができる前へと、逆行しているようだった。

 パラダルクが支配下に置いた実験戦艦ガルベリオン。
 これが、その実態である。
三上・くぬぎ
○☆
女の子がいっぱいいるとたのしいんですか?
くぬぎだったらねこさんがいっぱいいるほうがいいです

まずはドラグナーガールからにげることにするです
ちっちゃい体とフック付きワイヤーを駆使して、床スレスレ、天井、ちょっとの隙間、とにかくにげ続けるですよ! ケガしてもがまんです!
にげつつ、すきをみて注射器銃で攻撃です
機械は生えてきたですけど、中身も機械になったわけじゃないですよね?
生身の部分をねらってはやく効く麻痺毒を打って、すこしでも動ける敵を減らすですよ

攻撃してくる集団を抜けたら、儀式をしてるドラグナーガールたちに突撃、まとめてモラスパーク!
ビリビリですー!
そのあとはすばやくにげちゃうですよ
もきゅー!


禍神塚・鏡吾
技能
ハッキング、集団戦術、時間稼ぎ、情報収集、体勢を崩す

「未来視の力を得ながら、過去に執着する姿は滑稽ですね」
と言いつつ碎輝と彼の対決は少し見てみたいですが、そのためにカクリヨの平和を乱すのもね

先制攻撃対策
敵に生えた機械兵器を電脳魔術でハッキングし、同士討ちさせます

対ドラグナーガール
【呪詛耐性】100Lvの兵隊を指揮して集団戦を挑みます
耐性程度では享楽の力に抗し切れないでしょうが、効果を遅延させられれば十分

稼いだ時間で戦艦をハッキングし、制御を奪います
SSWに出現した同型艦の情報があれば、セキュリティ突破の時間を短縮できる筈
成功したら艦内の重力制御を切って上下左右にシェイクし、儀式を妨害します



●盤上大混乱
 辿り着いた儀式場……と思しき空間は、予想外の有様だった。
 そこは既に大破していて、天井から空が見えてしまっているではないか。
「ここまでの道中も、やけに瓦礫が多いなとは思ってましたが……」
「ボロボロ戦艦のたんけんたのしいです! でもでも、もう儀式終わっちゃったです?」
 辺りを見回す禍神塚・鏡吾(f04789)の頭上で、モーラットの三上・くぬぎ(f35607)はくるくると飛び回っていた。
「出迎えができなくてごめんね。いきなり壊されてしまったものだから」
 穴の空いた天井から男の声がすると、白い少女達に続いて竜翼の魔王が降りてくる。召喚されたドラグナーガール達とパラダルクだろう。
「艦の修復と儀式を同時に進めないといけなくなったからねえ。更に忙しくなってしまったわけだよ」
 いかにも困った様子のパラダルクを囲むように、少女達が踊り始める。踊る少女達とは別に、ドラグナーガールは更に増えていった。
「そこまでしてでも、『碎輝』を見つけたいと。未来視の力を得ながら、過去に執着する姿は滑稽ですね」
 敢えて挑発するように、『碎輝』の名と『執着』という単語を選んだ鏡吾。内心ではパラダルクと碎輝の因縁の対決というものに興味が無くは無いが、カクリヨファンタズムを危機に陥れてまで見たいかと言われれば否である。
 パラダルクは可笑しそうに笑った。
「正論をありがとう、反論の言葉も無いよ。本来ならどれほど悔しかったとしても、僕は碎輝に殺されて、その後は無いはずなのにねえ?」
 有り得ない二度目の生。それを可能性と捉えてまで、自分を殺めた碎輝をこの手で殺したい――そこまで己を強く突き動かす執着が自分でも理解できないと、他人事のようでもあった。
「ところで、女の子がいっぱいいるとたのしいんですか? くぬぎだったらねこさんがいっぱいいるほうがいいです」
 純粋な疑問をもきゅっとぶつけるくぬぎ。彼は意外にも猫の可能性について少しばかり考えていたようだったが、それも僅かだった。
「猫は……僕はだめかな。『支配したもの』しか手元に置けないから」
 非常に慎重な性格である彼は、僅かでも自由意志を持つ存在を側に置かない。森羅万象を敢えて絶対服従のドラグナーガールという形に変換して従えるのは、それも一因なのだろう。
「そろそろ、こちらも作業に集中したいんだよね。君達の相手は、彼女達でいいね?」
 視線は猟兵へ向けたまま、パラダルクは白い少女の一人を、その細い顎を軽く撫でる。すると彼女は瞬く間に不思議な色に煌めくガルベリオン鋼の兵器に覆われ、それは他の白いドラグナーガール達にも一瞬で装着された。
「さあ、行っておいで」
『『はーいっ♪』』
 向かってくるドラグナーガール達を前に、鏡吾は僅かな時間でくぬぎに提案する。
「三上さん、できるだけ時間を稼げますか」
「もきゅっ! はじめからそのつもりですよ!」
「助かります、無理はなさらず!」
 鏡吾が下がると同時、くぬぎはドラグナーガールへ向かう――ことはなく、一目散に逃げた。
『あははっ、追いかけっこのつもり?』
『可愛いモーラットちゃん♪ すぐに捕まえてあげる♪』
『じゃあ、あたしはあっちの男を……きゃっ!?』
 下がった鏡吾を覆うとしたドラグナーガールがその場で倒れる。小さなくぬぎが逃げながら張り巡らせているフック付きワイヤーだ。普段はかっこよさそうなファッションとしてしか持ち歩いていないものが、意外な所で役に立っている。
(さあさあ、つかまえられるならどうぞです!)
 武装した少女達は、兵器の力で飛ぶこともできる。推進力を得て追い付かれそうになるぎりぎりのところで、まだ修復が済んでいない瓦礫の影や隙間を縫うようにくぬぎは走り回った。
『そこ! 挟み撃ちよ、あたし!』
『アリガト、あたし♪ モーラットちゃーん♪ これでおーっしまい♪』
 可憐な声と共に放たれるビーム。間一髪で直撃は免れたが、お気に入りのマントが少し破けてしまった。
(むむ~っ、鏡吾さんはまだでしょうか……でもでも、あちらも中身まで機械になってないなら!)
「ぷきゅ!」
 幸い、ガルベリオン鋼の兵器は全身を覆い尽くしてはいない。小さな手でおもちゃのような注射器銃を構えて、ようく狙って放った!
『いったぁい! ……なぁんて、嘘。そんなところも可愛……』
 最後まで言えずに、ドラグナーガールの一人が倒れる。放った弾は即効性の麻痺毒だったのだ。
『ちょっと、あたし!? そっちのあたしも何してるの!?』
『わかんない……兵器が勝手に狙いを、やだ、ぶつかっちゃう!』
 別の場所では、ドラグナーガール同士が兵器の撃ち合いを始めた。こうなってはドラグナーガール達は大混乱だ。
「よくも耐えてくれましたね。ありがとうございます」
 鏡吾の電脳魔術だ。相手がプログラムで動く機械であれば、大体のものはハッキングできる。
(本当は、この戦艦の制御もハッキングしてしまいたかったのですが……)
 儀式場と化しているとは言え、実験戦艦ガルベリオンは機械には違いないはずだった。
 鉄の塊が動くなら、どこかでプログラムを制御しているはず――そう考えて魔力を走らせて可能な限り調べたが、どこにも見当たらなかったのだ。
「これは……君達もあれかな? 銀河帝国の戦艦なら制御を奪えるかも、なんて考えた?」
 ドラグナーガール達の同士討ちを観察していたパラダルクが、見下ろすように中空に浮かぶ。
「僕は『支配したもの』しか手元に置けない。さっきも言ったんだけどねえ」
「……なるほど。そういう事なら、もっと単純な問題ですね」
 魔王パラダルクは、『支配したもの』――ドラグナーガールしか手元に置かないなら。
 この艦の制御自体を、何らかの形で彼女達が担当しているのだ。
 恐らくまともな技能などではなく、今も行われているような儀式によって。
「三上さん、彼女達をまとめてやってしまいましょう」
「もきゅー!」
 電脳魔術の影響でまともに戦闘ができないドラグナーガールの一団を走り抜けると、くぬぎは儀式を行っているドラグナーガール達に突っ込みモラスパークを放つ!
『きゃああぁっ!!』
 その混乱に乗じてくぬぎは戦場からアウェイした。儀式は十分に引っかき回されたので無問題である。
『だめ、艦が……!!』
「そうですね。大変なことになるでしょう……」
 くぬぎのスパークで気配を消していた鏡吾が、鏡の国の兵隊(ポーン)達をすぐそこまで迫らせて少女達を囲んでいた。
『あたし達が消えたら、ガルベリオンは沈んじゃうのよ? あなたも一緒に死んでくれるの……?』
「流石にそれは御免被ります。ですが、儀式を再開されても困りますので」
 兵隊(ポーン)達に戦闘を開始させる。
 『碎輝』のための儀式はおろか、戦艦の制御を儀式で行っていた少女達も大混乱で集中できなくなり、実験戦艦は転覆寸前の事態にまで陥ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
あまりやらない手管だがな
物理的に他を燃やすだけが能ではないぞ

先制攻撃の敵魔術に合わせて【カウンター】、自身に対して【呪詛】【精神攻撃】
己が心を焼く呪いをもって精神支配魔術による干渉を【焼却】【切断】

先制攻撃が終わる頃には余裕綽綽とはならんだろうが
【闘争心】とUC【騎士示すべき克私無想】の【覇気】【集中力】で意識を維持
後は青く燃える鉛の翼での高速【空中機動】、黄金魔剣でパラダルクや踊るドラグナーガールに【切り込み】にかかる

他のドラグナーガールが阻むようなら、反応する兆しの鈴の音を頼りに手当たり次第に斬り捨てる(【第六感】【咄嗟の一撃】)

貴様が見る未来、一つずつ焼き落してやる



●虚ろにて縋るもの
 白い少女達が一人、二人。三人四人。
 見る間に数を増やしていって、中断された儀式の踊りを再開した。

 少女達の可憐な歌声。しゃん、しゃんと響く装飾の鈴。
 音楽に詳しくない騎士鎧のルパート・ブラックスミス(f10937)でも、その響きを悪く思わない程度には良い音だ。
 これはただの音なのか、あるいはこれも既に敵の精神支配魔術なのか。
 起点らしい動作が無い以上、その見極めは困難だ。
(……否。これは……わかる)
 意識が曖昧になる感覚。鎧だけでは防げない、物理的な攻撃では無い精神攻撃。
 痛みを感じるものでは無く、あくまで優しく許されるように、甘くぼやけていく。
 これは少し強引に抗う必要がありそうだ。
(あまりやらない手管だがな……物理的に他を燃やすだけが能ではないぞ……!)
 敵が『許す』ことで侵略するならば、己は決して許さぬ『呪詛』をこの身に。
 甘く優しい歌が鎧を通過して響くなら、己は鎧の内で心を燃やす焔の音を。
 自らへの痛みで以て、『享楽』を焼き焦し退ける――!
「……君は痛い方が好きなのかい? 望むならそっちを与えるけれど」
 精神支配魔術で部分的に干渉したからか、ルパートの燃える心に驚嘆と呆れの言葉を向けるパラダルク。
「フ……貴様の支配に入らんために、手段を選ばんだけだ」
 力と私情に溺れず、理性を放さず、為すべきを為せ――ルパートが定義する騎士の理想論。いかなる理由によっても、手放してはならない理想だ。
「殊勝なことだねえ。『私』なら、跡形も残さず堕としたかっただろうけど。この『僕』はそこまではね」
 許されざる敵への揺るがぬ闘争心と、ユーベルコードによって昇華された騎士の覇気と集中力が、ルパートの意識を綱渡りで保ち続けている。パラダルクとドラグナーガールによる『享楽』支配は退けたが、己の内で燃やし続けている呪詛が今も命を削り続けているのだ。少しでも気を抜いた瞬間、意識が沈みかねないほどに。
 無駄口を叩く余裕は無い。この気力が保つ内に、魔王の未来を焼き尽くさねば――!
「行くぞパラダルク!!」
 鉛の翼を青く燃え上がらせ、宙を駆ける。立ちはだかるものは手当たり次第に、悉く黄金魔剣ルパートで斬り伏せた。
『苦しそう』
『痛そう』
『可哀想』
 同情も。憐憫も。
『大変だったのね』
『頑張ったのね』
『偉いのね』
 労いも。賞賛も。
 騎士鎧のヤドリガミとなったルパートには、全て過去と共に失われたものだ。
 今、この身を焼く痛みは、苦しみは。魔剣で青炎と化した彼女達が言うようなものではない。

 この『痛み』こそが、『ルパート・ブラックスミス』だ――!

「……そういう縋り方。何か感じるんだよねえ……何だったかは失われちゃったけど」
 竜翼が開き、パラダルクが飛んで退く。ドラグナーガールがルパートの進路を塞ぐように集まり、その手足に絡まった。
「失われた記憶の中に、確かなものがひとつだけ残っていたら。それを焼き尽くして無かったことにするか、縋って探そうとするか……君なら、どちらを選ぶ?」
 試すかのようなパラダルクの問い。
 ――否。問いによって思考を支配する、これは精神支配攻撃だ。
「その、答えは……貴様には、答えん!!」
 鎧に触れているドラグナーガール達を、一人残らず焼き払う。
「貴様が見る未来……。一つずつ、焼き落してやる……はああああ!!」
 意識と気力を総動員して、魔王へと斬りかかる。
 刃が骨へと届いた感触は無い。ただ、少女が燃え尽きた儀式場に魔王の呻き声があったことだけは、沈みゆく意識の中に届いた最後の記憶だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・フォーネウス
おう、何もかも女たちを使って戦闘か。随分とワルワルじゃねーか。
にしても、一人相手に物量攻撃っつーのは油断も隙もありゃしねぇな。

『ロギ』と『ヨトゥン』で先制攻撃を対処する。
俺の幻影を至るところに配置して撹乱、『万死ノ双眸』で数秒先の自分の死を幻視して魔術攻撃を『見切り』回避だ。
幻を看破されるまでが勝負だな。

確かにあんたの能力は最高に超最強だ。俺みたいな一介の掃除屋が勝てる道理なんてありゃしねぇ。
だがな、強いていうなら……一番の弱点は、現象概念が3次元存在に落ちちまってることなんだよ。

UC発動だ! 儀式してるドラグナーガール含めて、その体に激痛を付与してやるぜ。

狂乱するほどの激痛だ。そして、ドラグナーガールの認知情報を改変……俺とパラダルクの存在を逆転させる。
するとどうなるか? 邪魔者は排除だよな、麗しい現象たち。
まああれだ、呼び出した女たちに翻弄されるんだ。悪くはねぇだろ。



●『享楽』反転
 儀式場は傷付き、ドラグナーガールの数は不十分。
 当のパラダルク本人も負傷しているようで、これまでの猟兵達の奮戦振りが窺えた。
 それでもドラグナーガールはすぐに数を増やし、儀式を再開する者と周囲を見張る者とに分かれる。
 特に姿を隠してもいなかったシン・フォーネウス(f31485)は、見張りの少女に見つかり主へ報告されることとなる。早くも臨戦体勢――踊りのポジションのようだが、恐らく――を取る少女達を従えて、ゆっくりとパラダルクが現れた。
「おう、何もかも女たちを使って戦闘か。随分とワルワルじゃねーか」
「おや。ここではワルこそが正義じゃないのかい?」
「そーだけど、あんたはだめだ」
 掃除屋のブラシできっと魔王を指す。手下の、しかも女達に全て任せて自分はほとんど何もしないなど、いかにも悪の魔王らしすぎて、ワルすぎて困るレベルだ。
 セオリーとしては、こういう場合本人は弱くあるべきだが――それを確かめようにも。
「一人相手に物量攻撃っつーのは、油断も隙もありゃしねぇな」
「君達の力を認めればこそさ。慎重に、確実に。万が一にも、こんなところで死にたくないからねえ」
 柔和に笑む魔王。そのいかにも親しみやすそうな声とは裏腹に、彼の態度にも少女達の布陣にも一ミリの隙すら見られない。
(隙が無いなら……作るしかねぇ!)
 手袋をはめ直し、三角巾を締める。今回の掃除はかなり厄介だが、放置はできない。
 儀式を行うドラグナーガールを目指して早速飛び出すシンに、踊るようにステップを踏んで距離を詰めた白いドラグナーガール達が腕を絡める。
『そんなに急いじゃダメ♪』
『あたし達と遊びましょ♪』
 彼女達の可憐な声は、驚くほど真っ直ぐ耳へ、精神へ届く。
 強く持っていたはずの心が、一瞬で蕩かされて形を失っていく――。
「まあ、そいつ幻影なんだけど」
 瞬く間に籠絡された幻影は姿を失い、別の場所からシンの声がする。
「ついでにそいつも幻影な」
「俺も幻影だったりして」
「あー俺もどれが本物だったか覚えてないわー」
 全く同じ外見のドラグナーガールが集まっているのと同じように、全く同じが意見のシンがそこかしこに増えているのだ。全ては手袋と三角巾――虚構を投影する幻影御手『ヨトゥン』と、幻影によって主の身を守る自在三角巾『ロギ』を利用したシンの作戦だ。
『たくさんいるなんて素敵だわ!』
『誰も余らず遊べるもの!』
 驚きと興奮が半々といったところか。ドラグナーガールは自分達の多さに任せて、全ての幻影に遊びと称して精神攻撃を仕掛けていく。
(いつまでもこの手が通じるとは思わねぇ。流石にドラグナーガールの数を超える幻影は無理がある……本物を看破される前に、できるだけ沢山のドラグナーガールを引き付けつつ――)

 ――あ。

 それを視たのは、『死の悪魔』の魔眼。本能のようなものだ。
 この一歩を踏み出せば、この顎に細い指が這う。赤い目と合って、意識を逸らせなくなる。捕らわれて、終わりだ。
 急遽自分で自分のブラシに引っかかり、その場に倒れる。とりあえずあの『死』の眼とは合わせずに済むはずだ。
『あらやだ、大丈夫?』
 本来自分を堕としていたであろうドラグナーガールの心配そうな声がする。
『ねえ、顔を見せて? 怪我がないか見てあげる……』
 顔を上げたら詰む。上げなくても本物だとバレる。
 ――詰んだか。
「上げなくてもいいよ。『君は』上げたくないんだろう? 本物だからねえ」
 パラダルクの声が近くなる。
 ――あ、これ完全にわかった上でいたぶるやつだ。
「はあー…………やっちまったなぁ…………」
 大袈裟に溜息をつく。上げなくていいと言われたので、顔は遠慮無く下げたままだ。
「頑張った方じゃないかな? ドラグナーガールも楽しめていたようだし」
「こっちは命懸けだっつの。あんたらの余興じゃねえんだわ」
 視界に映るのは儀式場の床だけだ。しかし、耳にはドラグナーガールが集まってくる声がする。逃げ場はない。
 倒れた体勢から少しだけ体を起こして、降参するように片手を挙げた。
「あーわかったわかった、確かにあんたの能力は最高に超最強だ。俺みたいな一介の掃除屋が勝てる道理なんてありゃしねえ。だがな、」
「…………」
「…………」
 不自然な所で言葉が切れる。自分ではまだ続けるつもりだった言葉が、うまく出てこない。
 恐れではない。緊張ではない。
 先程魔眼が垣間見た感覚と似ている。物理的に殺されていないのに、何の前触れも無く思考が甘く溶ける。
 ふざけるな、と思うのに。そんな自分を保とうとする最後の意識すら形を喪い始める。
 一方的に、暴力的に。閉じ、こめ、られ――

 ――『貴方は私の傍にいてね』

 『享楽』の甘露が満ちる中、仄かな甜香が鼻腔をくすぐる。
 契約が残っている。約束の形がある。
 こんなところで、蕩けている場合ではない――!!

「強いて、言うなら……あんたの一番の弱点は、現象概念が3次元存在<ドラグナーガール>に落ちちまってることなんだよ!」
 その一瞬の変化を感じ取ったか、様子を見守っていたパラダルクが大きく退く。
「死の悪魔の権能を見せてやるよ!!」
 直後、室内に様々な悲鳴が響き渡る。うずくまる者、頭を抱えて悶える者、どうすることもできず体を抱えて涎を垂らす者――彼女らは皆、シンのユーベルコードにより意識を失わないぎりぎりの激痛を与えられているのだ。
『い、や……おね、がっ、ころし、て……!』
『ご、め、なさ……あや、ま……からぁ……』
 痛みに耐えきれず、殺してくれと嘆願する少女まで現れる。
 それでも殺してはやらないシン。代わりに、誘惑をした。
「その痛み、俺にはどうにもできねぇんだ」
『む、り……し、んじゃう……ぅ……』
「お前らは死なねぇよ? 『俺の』麗しい現象たち。『俺達の邪魔者』を排除できれば、楽になれるぜ?」
 言葉に魔力を織り交ぜて、記憶を改変する。
 己こそが彼女達の主で、自分達の敵とは――魔王パラダルクである、と。
「やってくれた、ね……何かするとは思った、けど……『享楽』の魔王が、部下を籠絡されるなんてね……っ」
「まああれだ、呼び出した女たちに翻弄されるんだ。悪くはねぇだろ?」
 ドラグナーガールほどではないが、自身も激痛に苛まれているパラダルク。特に別の猟兵から浴びたと思しき切傷は、さぞかし痛むことだろう。
『あ、ぁあッ あああ!!』
『いた、いの、いたいの、ぁああああ!!!』
 狂乱状態に陥りながらも、パラダルクに向かっていくドラグナーガール達。彼女達は武器など持たぬ『享楽』の娘達だ。創造主である魔王に素手で何ができよう。
 とは言え、彼女達は数が多い。痛む頭で魔王が下した決断は。
「……一旦、退かせてもらうよ。死ぬ訳にはいかないからね」
 ばさりと竜翼を広げると、追い縋るドラグナーガールを振り切り、穴の空いた天井から空へと飛び立つ。
 それきり、魔王パラダルクは戻ってこなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
わからなくもありません
かつて敗れた相手にこだわるというのは
私も同様だからです
ええ、全ての戦争で全てのフォーミュラや幹部たちを討ってきた
この私が唯一勝ち得なかった相手が──白騎士
ゆえに……非常に不快です
その力をこんな茶番に使うなどとは
身勝手? ええそうですよ? あなたと同じにね

早業で鎖を舞わせ衝撃波を発生
足場を崩壊させガールたちの攻撃や舞を阻害
同時に技能の呪詛とアイテムの黒き呪いを二重に込めた暗黒のオーラを
結界として張り巡らせ魔術攻撃を防ぎます

UCを発動しバランスを崩したガールたちへ一斉攻撃
空間さえ削りとる極超高速攻撃で勝負を一瞬で決めましょう
塵は塵に帰りなさい
浅薄な主に似たつまらぬ人形どもよ



●しがらみは鎖となりて
 知っている景色だった。
 実験戦艦ガルベリオン。かつての銀河帝国攻略戦で、多くの有力な幹部を載せていた艦だ。
「わからなくもありませんよ、かつて敗れた相手にこだわるというのは。
 私も同様だからです」
 背後で儀式を行わせながら白いドラグナーガール達を侍らせる魔王パラダルクに、黒城・魅夜(f03522)は僅かばかりの同調を見せる。
「ええ、私は全ての戦争で全てのフォーミュラや幹部たちを討ってきた。
 この私が唯一勝ち得なかった相手が──白騎士。銀河帝国の白騎士ディアブロです」
 まだ、魅夜の力が十分でなかった頃。
 あれは隙の無い作戦のはずだった。未来を読み取られることも織り込み済みで、予想し得ないだろうひと突きを加えるはずだった。
 それが、逆に腹を貫かれた。丁寧に作戦の穴まで解説されながら、そのまま意識を失った。
 最終的な結果として白騎士の撃破に成功していようと、どれほど時が過ぎ力を得ようと、あの屈辱だけは永劫消えないだろう。

 だから、パラダルクが碎輝へ抱くものも全く理解できない感情では無い。
 そこに機会があるなら、今こそ。自分こそが、この手で。それはわかる。
 だが、同時に非常に不快なのだ。
 よりによってあのディアブロの名を、白い未来の力を、こんな少女の形で。

「ディアブロの力を、こんな茶番に使うなどとは……」
「そう言われても、これは僕の能力だからねえ……謝れば許してくれるのかい?」
「まさか。私はあなたと同じに身勝手なのでね」
「身勝手かあ……」
 心外だとでも言いたげに、目を開くパラダルク。しかし、そう間を置かずに目を細め微笑んだ。
「――そうかもね」
 しゃん、と装飾が鳴る。ドラグナーガール達が踊り出す――その足元へ、魅夜は呪いと絆の鎖から衝撃波を奔らせる。
『きゃあっ!?』
『どうしよう、これじゃ踊れな……いやああぁっ!!』
 足場の崩壊が目的である衝撃波で、儚く存在が消えてしまったドラグナーガールもいた。それでも魅夜は攻めの手を止めない。
「私はあなたの支配など受けません。他でもない、ディアブロを騙るあなたには」
 それは敵への悪意と呪いが得た形。呪詛となった暗黒のオーラは、魅夜を完全に敵から隔てた。
「……これは、攻撃ではなくて純粋な質問なんだけど。答える気はあるかい?」
「いいえ。私から話すことは全て話しましたので」
「そうかい。それでも、是非君から聞きたいんだけどねえ」
 誘いには乗らず、魅夜はユーベルコードを発動する。意志を削る鎖と触れた物を風化させる鎖を出現させると、一挙に空間へ張り巡らせる。
『パラダ、……――』
 触れた空間すら風化させる鎖により、ドラグナーガール達は意志を少しずつ削られながらその数を減らしていく。
 減らした傍からパラダルクも新たに生み出していくが、手数で魅夜が勝っていた。
「塵は塵に帰りなさい。浅薄な主に似たつまらぬ人形どもよ」
 最後の一人が消える時に、吐き捨てるように言葉を送った。
 本来であれば、目の前のこの主もまとめて消し去ってしまいたい。事実、今の攻撃で消せていたはずだった。
「万が一、猟兵に戦いで負けることも考えなかった訳ではないからね。この僕を消した所で、僕を完全に殺したことにはならないよ」
「……一応、問いとやらを聞きましょう。その後に消します」
「おや」
 もはや儀式もドラグナーガールもない状態で、それでも最後の保険があるという余裕からか、パラダルクは相変わらず笑っていた。
「じゃあ、消される前に。ディアブロに負けた君は、『未来』の力を獲得したのかい?」
「ありますよ。『白い牙』なら」
「……僕はごめんだね。雷を使う自分なんて、『僕』も『私』も想像したくない」

 やっぱり君とはわかり合えないな――と。
 瞬きの間に振るわれた鎖で魔王の姿は塵となり、後には彼の声だけが残っていた。

 意味する所は、この戦場からのパラダルクの撤退。
 猟兵達の、勝利である。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月18日


挿絵イラスト