アポカリプス・ヘル。
ひろがるは黙示録の荒野。ひとたび拠点を出れば命はもちろん、命以上の何かすら失いかねない無法の大地。
いまは、そこに一条の道が切り拓かれている。
天から見ればちっぽけな道だ。曲がりくねり、ところどころ危ういところもあるだろう。
だが、生き残った人々にとっては青き大河にも等しい道だ。拠点と拠点を結び、運ばれゆく様々な物資は立ち上がろうとする人類の血液たろう。
そして。
肥ゆる河が現れたのなら。
泳ぐ魚を我が物にせんと狙う不届き者が現れるのも、当然の理であった。
届くべき人に届く荷を狙い蠢くならず者の王はこう呟いた。
「いや正直無理だわ」
えっ。
「無理」ボスは厳かに頷く。
「立ち上がりかけのパンピーキッチィ」
待って?
「俺っちの筋肉バンド並みにパッツパツだわ」そういうのいいから。ポージングされても困るん……いいよォ!!キレッキレだよ!!
「猟兵(イェーガー)だっけ?ああいうのも時折現れるっしょ?マジでツレェわ……」
えマジかよ本気で言ってる?ちょっとお待ちになっていただける?かっこよくルビ振りで猟兵呼んどいて諦める根性どういうこと?
「あとなんか襲った人の悲鳴ェが最近ちょっと胸にホンマつれェわ……」
なんでそこで急に優しさ出すかなぁ……。
「大将……」
そこまで眠れない夜もあったろう美しいポージングを決めるレイダーの王の元へ、渋面の配下がやってくる。
「ッの通りッスよォ!!」
下っ端ァ!!「正味最近マジパンピーが立ち上がること滝を登る鯉の如しッスわ!!」お前に期待してたのに下っ端ァ!易々と賛成すんなそこは煽れよお前ならず者だろ!!アポカリプスヘルのみんなが元気でほんとよかった!!
「だよなァ……」
「もうこれは平和的解決しかねッスよ……」
あーあもう……ねえちょっと、かっこよくナレーションしたじゃん、もうちょいさあ、もうちょっとさあ。
「つゥ訳で知性を得た賢いわんわんども――キャモン!!!」
ピゥイッ!!
下っ端の口笛と共に突然現れるは――様々なデスバイクやイモータルカーに乗った101匹は軽く超えてるわんわん!
「何ィ!!」フッ。下っ端はキザに笑う。
「コイツらはこないだ見つけた廃墟で目覚めさせた賢ェ動物達……」
おっ、なんかいい感じになってきた。これよこれ、こういうの。
「コイツらをデスバイクやブラッド戦車に乗せて輸送隊を襲わせ奪わせりゃいい話でさァ……」
あちこちで口にするもおぞましい車やバイクに乗るわんわんたちは、陽の翳りの中で眼を貪欲に輝かせている。
「お前ェ…!!」
ライダーの王は上腕三頭筋の筋肉を見せつけるサイドトライセップスをやめてぶるぶると震えた。
「このキャンワイイワンちゃんたちによって平和的に奪取するッつー天才的なひらめきだなッ!!!」
だめだ。
もうだめだ。
なんだよ平和的奪取って。
感極まったラブアンドピースのベアハッグ。部下の胴締まってるよ。「これなら誰も泣かねェぜ!!」いや物資奪われた人は普通に泣く。あと今お前の部下が苦しみに咽び泣いてる。
「行けェお前ェらァ!!!お兄ちゃんお姉ちゃんたちといっぱい遊んでケツ毛一本残らず毮り取れェ!!」
もうなんなんだよ。
派手なエンジンの演奏を響かせ発進するすごいわんわんたちを、ベアハッグによる肋骨複雑骨折寸前な軋みを聞きながら下っ端は誇らしげに見送るのだった。
「なにせ狂犬病って書かれた薬ィ見つけて漏れなく打ちましたからねェ……あいつらはもう最強のケモノですよ」
それは防ぐ方の薬なんだわ。
●いぬです。よろしくおねがいします。
「だそうです」
犬の被り物をつけたイージー・ブロークンハートはきみたちにそう言った。顔が見えるタイプである。「何言ってるかわかんない?オレも」がんばれグリモア猟兵。
「舞台はアポカリプス・ヘル。拠点に向かう輸送隊が、バイクとか車を乗りこなす賢いわんわんに襲撃される」
首にはめているガボガボの首輪の内側に手を入れてグルングルン回している。
「まあやるこたシンプルよ」
イージーはその場に屈んで置いてあったわんわんのぬいぐるみを持ち上げてスイッチを入れた。かちっ!
「護衛しつつ荒野の道をぶっ飛ばしながら大量のスーパーわんわんをブッチぎってお荷物・お届け!」
わんわん吠えながらその場で宙返りを始めるわんわん人形。 わんわん!!わんわん!!
「あ、乗り物が心配?現地の人が助けてくれるから安心して。車かバイクか三輪車か」おいこの男今三輪車つった。トンチキ車の匂いがやばい。「要望言ってくれればご用意してくれるはずだから」
……もちろんきみが何か良い乗り物を持っているなら利用するのも手だろう。
「手段は任せるよ」
わんわん人形を足元でホップ☆ステップさせながらイージーは立ち上がる。
「なんらかの手段で親分を主張して納得させるとか、スピードの違いを見せつけてわんわんの視線を独り占めするとか、餌で懐柔するとか……自由でいいでしょ」
まあ確かにそれならやりようはありそうではある。なにせわんわんである。わんわん!
「直接的暴力はあんまりおすすめしない」
顎をぽりぽりとかく。
「賢いけどほんっと遊んでほしいだけのスーパーピュアわんわんだから、下手に攻撃に出ると知性の結晶・野生は剥き出しの暴徒の群れと化す」
こっわ……。
「まあほら今回はつらいのも怖いのも一切ないから!!」
犬頭の右下あたりに下がってる紐を男は楽しそうに引っ張る。わんわんの垂れ耳がパタパタうごいた。「気軽に気楽に適当にな!」こいつが一番楽しそうである。
「じゃっあとは現地でよろしく!!」
にこにこ笑って転送を開始する。
「あ、そだ忘れてた」
転送のきらめきの向こうから男が慌てて声をかけた。
「戦車出るから」
えっ???
「出るから。戦車」子供がいるからみたいなノリで宣告された。「ほらあいつら賢いから」お醤油だからみたいなノリでサクッと言ってくる。「多分キリついたあたりで待ち伏せしてんのが出てくるから」
「そこは本気でやっちゃって」
こ、こらーー!!!
いのと
初めまして、あるいはお久しぶりです。いのと、と申します。
いぬです。一匹も死なない・ひどい目に合わない方向で行きます。
シリアスなど欠片もありません。
かわいいわんわんどもから荷を守りつつ駆け抜けましょう。トンチキカーもあるぞ!
オーバーロードに採用の差異はありません。
今回はプレイングをお預かりせず、できるものを出来るだけでゆこうと思います。
だいたい月曜日に執筆しています。
お気楽にどうぞ!
第1章 冒険
『ワイルドライフ・アニマルズ』
|
POW : 肉体言語または威圧感で親分を理解させる
SPD : 狩りの技術・スピードの違いを見せつける
WIZ : 頑張れば餌がもらえる事によって従順にさせる
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
□トンチキ度で言えばどっこいどっこいかやや上(こっちが)□
拠点、ルール・レルを目指し突き進む輸送隊の中程をゆく女がハンドルにくくりつけられたホーン、ゴム球を引っ掴んでやかましい警告音を鳴らす。
「来たァ!!!」
「振り返るな!追いつかれるぞ!」最後尾の男が怒鳴る。
「キタキタキタキタキタキツネ!!!!!」
おいトンチキの匂いが早すぎるぞ。
仲間が制止するのも聞かず振り返った女が見るのは、知を得自らも乗り物を乗りこなす賢い動物たちだ。
ロケット爆竹が満載されたバギーカーには片目に傷を負い義眼を嵌め込まれたシベリアンハスキー!
「はふ!!わふっふ!!(訳:こんにちは!!いぬです!!)」
助手席には七色に毛を染められたゴールデンレトリーバー!
「ふっふ!!わふ!!わふわふ!!(訳:撫でて撫でて!!自慢の毛です!!そっちにはお邪魔していいですか!)」
エンジンが改造され大地どころか道路すら飲み込もうとするトラクターには傷だらけのドーベルマン!
「わぶっしゅ(へくしゅん)」
火炎放射器であちこち焼き払いながら追い縋るバイクにはポメラニアン!!
「きゅーん(これを押すと人間がふっとぶ)」
……。
わかってた。
わかってた、こういうのが来るって。
思ってたのとちげえなっていうところだけれどあまりにも想定内。
さまざまなデス・カーを賢さで乗りこなしながらあまりにもわんわんな様々なわんわんたちは尻尾を振りながら輸送隊に追いつかんとする。
「お願いします、猟兵さんッ!!」
先頭を走る男が叫ぶ。「俺たちは――この機器物資をルール・レルに届けなきゃいけないんです!」
そうとも想定内――ここからはきみたちの出番だ!
きみたちはそれぞれの乗り物の上で身構える。走り出す際に借りたものだ。
即ち。
単車小型メリーゴーランド、車ほどもある高速ダッシュをキメる犬のおもちゃ(※音付き)、お腹を握るとすげえ声を出すニワトリを二匹つなげた形のハイパーカー!!
などッッッッ!!!
……。
どうして?
どうしてこうなるの???
「えっ?」先頭を走る男は口がぱくぱくするシャークバイクを走りながら不思議そうな顔をする。「ルール・レルはおもちゃの工場なので」だとしてもこうはならんやろ。
「大丈夫ッ!お似合いです」
似合っても困るねん!!
かくてアポカリプスおもちゃゴーカートウィズ犬!!!!!
何はともあれ、このひたすら遊んでもらいつつ荷物をぶんどろうというわんわんどもをどうにかしながら切り抜けなければいけない!
ええいもうどっちが何してるかわっかんないぞ!!!
ともかくゴー!!
わふ!!だう!!
□舞台□
拠点:ルール・エルへ向かう幅の広い道路。
□敵□
とっても賢いわんわんxわふわふ!!ばう!!匹
□マスターからのお知らせ□
今回はプレイングをお預かりせずかける時かけるだけ式となります。
必然、お断りも多くなるかと思いますが、よろしければどうぞ。
ご希望のおもちゃ(※乗り物)がありましたら一筆くださいませ。
それでは、ご参加お待ちしております。
〜MSからの業務連絡〜
限られた日数でかけるだけが難しいことに気付きました。
プレイングをお預かりし、後ほどご連絡いたします!
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携・ギャグ・キャラ崩壊諸々全部大歓迎】
あー、うん。
チキチキなマシンな猛レースっぽいのはな、
なんとなくだけど分かったよ、うん。
……てなわけでエントリーさせてもらうよ、この宇宙カブで!
………
テメェら無視すんなやァ!?
いいか!?
こんなどっか街の端っこでチンタラとろとろ走ってるような二輪でもなァ!?
おめーらアニマル共が乗ってるそのビークルに追いつき追い越しくらいはできるんだよ!
逆ギレ気味に『騎乗』してるカブを超高速モードに変形!
一気に『ダッシュ』して、『衝撃波』で周りのトンチキマシンどもをブッ飛ばす!
ついでにそこいらにボールかなんかでも転がしてやらぁ!
野生の衝動に敗北しやがれ!
□ご覧、あれがオープニング承認後最速でファースト・トンチキをキメにきた期待の星よ□
情報過多だった。
ツッコミどころが山になってファンファーレ鳴らしながら回転してる。
エントリーナンバー1、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)。
悲しきかなボケよりはツッコミ振り回され体質、多すぎるボケにちょっとツッコミが追いつかなかった。そんなあなたが可愛いです。
「……あー」
しかしそこは腐っても腐らなくても魔法少女経験者。「うん」頷く。
何度も何度も頷いて失いかけた正気を取り戻そうと深呼吸。
カムバック正気、カムバック理性。
間違えた。
グッバイ正気、グッバイ理性。
「そうだな」
そうですね。
ボケの嵐にブチ込まれて流されず自分を保つ大事な基本はとりあえずグッバイ正気、グッバイ理性。
全部受け入れてから冷静な情報整理と分析、判断ですね。
そう、大事なのは正気を失いつつ冷静になる心です。
たとえ。
たとえ転送されて真っ先に見た護送対象がタイヤを二輪並行に備え付けた巨大遮光器土偶(上が動く)とかたまにUDCの商店街でみるラーメンの飾り(どんぶりから箸で掴んだ麺が垂直に伸びて電気で上下する、店名の書かれた電灯についてるアレ)をそのままでかくして四輪で走ってるとか目を光らせ宙返りしつつ進むエビフライとかどう考えても巨大ゴムボールとかに乗っているとしても。
「チキチキトンチキンマシン猛レースっぽいのはな」
全力のスルー・スキルを発動してもっぺん大きく頷く。
そうとも。
たとえトンチキ護衛対象を追うのがバイクやトラックやオープンカーたちを運転するのがハッピバースデーサングラスをかけた皮がだるんだるんでお目目が隠れるようなブルドックとか、モップをそのまま四つ足にしたようなセピア毛が愛らしいマッチョスーツを着たコモンドールだったりしても。
「うん」
あと後ろでよくお世話になってるライダーズモーテルの経営者が大量の烏を連れて飛行するシャチに脇腹つつかれるので時々バケツから餌を投げつつ肩に文鳥をとめてバイクで爆走してきてるとしてもだ。
……。
ねえ。
若干どころでなくやや上くらいで猟兵側のがトンチキじゃないこれ??????
「なんとなくだけど、分かったよ」
それわかってよかったやつでござるか?
「うん」
深々と何度も頷いて言い聞かせてるあたりアウトでござらんか????
「つまりレース…レースなんだよな……うん」
そう、大事なのは正気を失いつつ冷静になる心。
冷静な、冷静な心で見れば……。
……あっ。
多喜ちゃん目に困惑の小宇宙またたいとる……。
見んふりしとこ。
「レースなら黙って見過ごすわけにはいかないなァ……!」
これは何もかもをヨシ!!!って気持ちで追い払った数宮・多喜!
というわけで!!!
今回この度は見て見ぬふりして帰っても許されるトンチキだと思わないでもないけれど!!!!!
冷静な目で見れば真実はいつもシンプル!!!!!
「てなわけで、エントリーさせてもらうよ、このレースッ!!!」
正気を失った冷静な目で見ればこれはレースッッッッ!!
溢れるトンチキなど!!!!
レースの前にそんなことはただの形に過ぎんのです!!!!!
数宮・多喜、ここに参戦ッ!
最後のモーテルの方のあのアレはあれだむしろなんだ!あれだ!
逆にここでヘボキメるなんていうカッコ悪いとこは見せられないってやつだ!そういうことそういうことそういうことにしとこ!!お互い!!
「この――」
多喜はエンジンを吹かせてまずはわんわんの一軍へと突入すべく追い上げる。
手作りと思しきスパイク・タイヤの起こす砂埃やエンジン共の巻き起こす排気ガスを美しくかわす
「――宇宙カブでッ!!!!!!」
突入ッ!!!
わんわん共は自分たちと追いかけるおもちゃ軍団の間に突如割り込んだこの一人と一台に目を剥いた。
そして――……
ペプー。
頭頂の毛を噴水柄に結えたヨークシャー・テリアがくわえたラッパを軽く鳴らす。
――なあんだ、おもちゃじゃなのかあ……。
つまらなさそうに総スルーしてった――……。
「………」
絶句する多喜の横を、虹色パーリーサングラスをかけた、どついたら倒れそうな薄くて大きい優美なボルゾイがイタリア系の真っ赤でお洒落なモンスター・バイクを転がしていった。
「ばふ(ふふっ)」自慢げに。
うっわ……あれUDCアースなら200万くらいするやつだあ……ところであれ足どうなってんの?
……。
…………。
「てっ」
わんわん!きゃうんきゃうん!
わんわんが絶句して停まった多喜をどんどん置いていきながら楽しそうにはしゃいでいる声がしている。
「テメェら……」
多喜の体がぶるぶると震える。
ねえねえ!あそんであそんでー!そんな感じだと多喜にもわかるぐらいのはしゃぎっぷりのイッヌたち。
多喜だって今そこ行ったじゃん。一度追い抜いて見せたじゃん?なにこれ?なにこの扱い。
ウェーブがかった茶髪が風ではなく怒気にゆらりと舞う。
湧き上がるは怒りと悲しみと悔しさとのりたま味のふりかけ……!
「テメェら無視すんなやァ!?!?!?」
バイカー魂にファイア・イン!!
無視されて若干涙目がかわいいぞ数宮・多喜!!
「ナァアアアアアアアニが旧時代カブかーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!」多喜ちゃん、それ誰も言ってないよ。「馬鹿にしてんのかチックショオオオオオオオオオ!!!?」ごめんて。「大事なのは形だけじゃねぇだろうがーーーーーーーーッッッッッ!!!」ほんとごめんて。
涙目に灯った炎(いかり)はもはやこれでパラパラのチャーハンが作れる熱さ!!!
「いいかッッッッッ!!!」
数宮・多喜、逆ギレ気味にゴッドスピードに心からライド!!!!
「こんッッッッッッッッなどっっかの街の端っこでチンタラとろとろ走ってるような二輪でもなァッッッッ!!!!?」
右手と左手のギアを力一杯捻り上げ、同時にサイキック・エナジーにて宇宙カブに強制干渉ッ!
「おめーらアニマル共が乗ってるそのチャラチャラパアパアなビークルにッッッッッ!!」
即ち答うるはエンジン内部その付近に眠るブラック・ボックスより変形展開。
通常のカブにはありえない排気ジェット、補佐ブーストエンジン、空気抵抗をいなす装甲、機体は黒く――深く。
唸れチャンバーッ!吼えろエキゾースト・パイプッッ!!
かくしてカブの面影何処へや。
変形・装着完了とともに、エンジンが火を噴く。
「追いつき追い越しくらいは――できるんだよッッ!!」
一条、竜巻が如く。
スペースシップ・ワールドですら駆け抜けられるこの一台に、どうして朽ちかけて踏みとどまるアポカリプス・ヘルが勝てようや。
「目ん玉ひん剥いてガン見しやがれッッ!!!」
置いていかれた数分を、瞬く間で取り戻す!!
「ばふ……ふ!(なん……だと)」先刻のボルゾイが黒い烈風と見紛う多喜の走行を見送る。
「わっふ!!(あ!すごいくるまです!)」
トランポリン軍団で遊びながら追っかけていたミニチュアブルテリア団が多喜を目撃。白い垂れ耳をぴんと動かす。
「オラァアアアアアアア!!!!!」
そこへ!!!!!!
マッドをマックスに怒りの多喜ロードをキメている宇宙バイカーが!!!
「きゃわわん!?(あ!!すごいこっちきます!)」
白くたるんだ肌と黒斑に隠れたちいさなおめめをさらに輝かせるわんわんたち。
「きゃうんきゃぬん!!!(あれはたつまきです!たつまきです!)」「ぱうぱう!!(各員ぱらしゅーとそーび!!)」
何事かを言いながら装着している荷物の端から出ている紐を加えたそこへ。
「どきやがれええええええええええええ!!!!!」
衝撃を起こして再度突入ッッッ!!!!
これらトンチキカーをふきとばすッッ!!!!
もうどっちが暴走族かわっかんねーな。
……ちな弾き飛ばされたミニチュアブルテリアはというと。
「きゃうーんきゃうーん!(きゃっきゃ!きゃっきゃ!!)」
衝撃波の風力とトランポリンを組み合わせて利用し最大級の空中散歩を楽しんでいた。
「おん!!おんおん!!(おねちゃんすごーいすごーい!)
短い足を懸命に動かして空中遊泳するやつまでいる。
「見たかあたしの愛車の力をッ!!!!」
多喜、片腕を掲げガッツポーズ。
すげー青空に犬がたのしそうに泳いでてしあわせそう。「ふっ」その様子に少なからず和む。
「こいつは」
多喜はついでに追いついた護衛対象のビニールボールプールカー――ちなみに鯛の形をしていて地上で跳ねるようにすすんでいく。どゆこと――その子供用入り口にサイキックで手をかける。「あっちょ猟兵さあん!」
「選別だッッッッッッ!!!!!!!」
開かれる入り口、飛び溢れるビニールボール!!!!
ただでさえ空中遊泳でハイテンションなわんわんどもが溢れるボールというこの欲望に勝てるはずもなく――……!
「野生の衝動に敗北しなッ!!!!!」
たからかな勝利宣言と共にボールを追いかけ散っていくわんわんたちを多喜は堂に入った笑みで見送るのだった。
ちな拾って戻ってくるのも早かったしもう一回のおねだりされた。
してあげた。
成功
🔵🔵🔴
エスタシュ・ロックドア
俺が跨るのはシンディーちゃんただ一機(断固)
こっちを見るなえびせん丸
俺の意志は固ぇんだ(ニシン投げながら)
シンディーちゃんに【騎乗】【運転】
『金剛嘴烏』発動
カラス×37とシャチと文鳥引き連れ【ダッシュ】
ワンコどもの前に出て【存在感】出すぜ
【動物と話す】
よう随分と元気が有り余ってるようじゃねぇか
俺らと遊んでくれよ
取り出すのはその辺で拾った角材
を、輸送隊から離れるよう明後日の方向に【怪力】でぶん投げる
おらおら早く取りに行かねぇと俺の子分どもが先に取っちまうぜ
取ってきた奴にゃご褒美をやろうな
これを繰り返しながら手なずけよう
なお文鳥は特に何もしねぇ(鳥のエサやりながら)
……正気に返ったら負け、負けだ
□とっても動物園□
むにむに。
「――いいか」
エスタシュ・ロックドア(大鴉・f01818)は風はためく音の中、低い声で告げる。
彼の顔に浮かぶはこの上ない真剣な表情だ。光の加減か影も落ち、普段の気さくで剛毅な態度からは思いもしない静かな圧が放たれている。
自由をこよなく愛するエスタシュにとってバイクを駆ることは彼が愛する自由の象徴そのものだ――表情は大抵に於いて明るく、時に溌剌と時には誇りの滲む剛毅な笑みがある。真顔など余程の事でなければすることもない。
そう。
今は、余程の事態なのだ。
「俺が跨るのはシンディーちゃんただ一機だ」
額にメガリスを輝かせ空飛んでエスタシュの脇腹を突いてくる規格外に馬鹿でかいシャチ・えびせん丸の額を片手むにむにしつつ肩には文鳥をとめ37匹の烏を引き連れながらビーチバギーに満載のチャウチャウやバイクに誇らしげに乗るセントハウンドなどに囲まれているのだから。
うーん、動物園。
「でもワンちゃん見てますよ」
お椀からラーメンが出たり引っ込んだりするタイプのおもちゃバイク、両端に箱型のエネルギー・タンクを下げた女が尋ねてくる。ラーメンが箸にオカモチ引っ掛けて運んでるみたいだ。「絶対乗ったらいいですって」ラーメンがボケを押してくる。
「見てても乗らねえ」
これ以上胡乱を足したら終わっちゃうだろうが色んなものが。
……エスタシュが率いる烏軍団と、カラス37匹ウィズ文鳥とシャチとおにいさんの存在感に引き寄せられたわんわん軍団はもはや一触即発。こんにちは!いぬです!こんにちは!カラスです!なまえはカンです!かぜがきもちいいねえ。そだねえ。ねえねえかんちゃん、すきなあそびはなんですか?いろいろすき!ほんとほんと!?ほんとほんと!!あそぶのすき!?すき!!わあ〜〜〜〜い!!いぇ〜〜〜い!!!
――もはや一秒の後、どこでどんなパラダイスが始まってもおかしくない状態であった。
「俺が、跨るのは、シンディーちゃんただ一機だ」
エスタシュは断固の意をもって告げる。
隣を走るジェット一輪車に乗ってるパグの眉が明らかにハの字になった。バケツに魚と皿に動物の餌入れたものをすごいバイクに乗せためっちゃ鴉連れてるおもしろトンチキおかしそうなお兄さんがすごいスピードで眼前まで飛ばして来たけど遊んでくれるって聞いてた人と乗り物がちょっと違うから様子見してたらなんか乗らないって言ってる。困惑。
むにむにされてたシャチのえびせん丸も明らかにしょんぼり顔でエスタシュの腕から逃れて距離を開けた。シャチもだめ……?「だからこっち見んなえびせん丸」エスタシュはすかさずバケツに手を突っ込んでニシンを引っ張り出して投擲ッ!「俺の意思は固ぇんだ」シャチのえびせん丸すかさずこれをキャッチ!もむもむ。いつでも言ってくださいね!
「俺が跨るのはシンディーちゃん、た・だ・一・機・だ」
ちょっと強めに圧を押しておく。ついでに言うなら陸レースで空飛ぶシャチに騎乗はトンチキを通り越して狂気だ。モーテルの利用者だって見てる。
「安心しろよ、仕事はキッチリこなしてやらあ」
ぴん!!ぷぴん!わんわんどもの耳がエスタシュの言葉に諸皆ピンと立つ。
「先行けよラーメン」
………。
いや相手がラーメンバイク乗ってんだからそう呼ぶしかないんだけど先行けよラーメンなんて発言すること人生でそうそうある?エスタシュに正気がそっと話しかけてくる。言う、多分言う。必死で正気を追い払う。ラーメン並んでて譲ってやる時は言ってやるかもしれん。あーね、そういうね?あり得るわ。やってきた正気が帰っていった。
「――ご武運を!」ラーメンが加速してエスタシュの先をゆく。
………。
ねえ。
やっぱラーメンが加速するって人生で聞く事そうそうある?帰っていった正気がUターンで戻ってきてラーメンを見送るエスタシュの耳元で囁く。ある。多分ある。Uターンをキメやがった正気を必死で追い払う。チャーシュー山盛り食い放題とかあったら加速する。あーね、なるほどね?あり得るわ。Uターンキメた正気が帰っていった。でもチャーシュー山盛り食い放題だったら正直切る前の塊でよこせって思うよね。正気がなんか言い残してった。うるせえ。
「よお、お前ら」
エスタシュはUターンキメやがった正気がVターンする前に強めにクラクションを鳴らし、烏と見つめ合っていたわんわんどもの視線を集めて肩越しへ向かって笑いかけてやる。
「随分と元気が有り余ってるようじゃねぇか」
わんわんどもが一斉にうぉんうぉんと吠え始める。
烏率い自らも烏に根差すエスタシュにとって動物との会話など朝飯前だ。
うん!げんきげんきーーー!!だとかきょうはいつもよりいっぱいごはんをたべてきました!とか可愛らしいお返事がよおく聞き取れる。「そうかそうか」エスタシュはそれはそれは鷹揚に寛大に頷く。いやちょっとボケの嵐で荒んだ心にこの素直でピュアな眸はちょっと可愛いやつらと思わないでもない。
「俺らと遊んでくれよ」
ッッヒューーーーーーーッッッ!!
ナレーションとわんわんのテンションが爆あがりする。
なにであそぶの!!!なになにーーーーーーー!!!!みたいなひと昔前のテレビみたいなコールアンドレスポンス。
「待てよ」
いい男の笑顔でいなすエスタシュの片手には「そう迅るな」
角材。
角 材。
褐色にツノの生えたにーちゃんがバイクのってそれをするんだから絵面が最高にマッドである。
これで殴ると思いきや今回は誰も傷付かず泣かない脳内麻薬がハッピーシナリオ、そんなことは微塵も起きない。そもエスタシュとて無駄に悪行するつもりもないのだが。
エスタシュが何をするのか――誰もが、否、何犬もが予想がついていた。
見てあの毛玉みたいなキースホンド、ふわふわの体にチグハグなヘルメットつけてるけど尻尾が360度で回ってる。
「行くぜ――」
バイクに乗りながら大きく振りかぶって――
「取ってこーい!!!!!!!!!」
――輸送隊から離れる方法に怪力まかせの大暴投ッ!!!
「おらおら行ってこい」当シナリオには猟兵以外には犬しかいないため解説がいないことが悔やまれる。どんなレベルで飛んだのだろうか。
「早く取りに行かねぇと俺の子分どもが先に取っちまうぜ」
エスタシュが指を鳴らせば子分鴉たちが一斉に飛び立つ。
すかさず飛び立つ子分鴉たち――からあげ!からあげ!たつたあげ!さんま!!!!――ウィズ・シャチが我先にと飛行する。「さんまかよ」思わずつぶやく。さんまの旬は九月なので今は高い。肩に停まっているスノーベリーがエスタシュの頬をつついてきたのでそっと餌をやることにしておく。
一斉に飛び立つものが多ければ多いほど犬心も刺激されるというものである。
たまらず備え付けの犬専用ミサイルランチャーから発射されるハウンド・ドックたち。どうやって戻ってくるんだろうとおもったら大型バギーから犬用小型バギーが発射されてそいつに乗って帰ってくるものもいれば別の犬と相乗りなどしてかえってくる。
かくて犬と鴉とシャチが廃材を楽しくおっかけて取ってきてはまた投げての要求戦争。
ときどき正気が隣に座って、バイク運転しながら何してんのって囁きかけてくるので7回ほどの攻防の経て見てみろライダーズモーテルの利用客だってあっちでボールまみれで涙目じゃねえかここはこれが普通なんだわいいから黙ってろと人様をダシに正気の実家に帰らせた。正気の実家てどこだろね。
エスタシュVS正気の攻防はさておき。
一度会ったら気が合えばすぐおともだちを作れるのがイッヌというものである。
帰ってきた鴉が小型犬咥えて帰ってきているのやら、シャチのえびせん丸が犬を何匹も乗っけてくるのようになっていた。
………。
実家に帰らせたはずの正気が隣で座って囁いて、こう囁いてきた。
やべーなこれ。
37匹プラス一尾に大量のお友達ができる予感。
見よ、流石はこないだやべえ数の現地子分を得た男である。
面構えが死んでいた。
「正気に帰ったら負けだ、負け」
うるせえ。
成功
🔵🔵🔴
花邨・八千代
意味わからんな!大好きだぞこういうの!
行け!俺の陸上用足漕ぎペダル式スワン号!(命名:梵天丸)
自力で走っても良いんだけどここはふいんき大事にしたいからな!
持ってて良かった怪力700!楽々漕げるぜ!
なんかよく知らんけどあの犬っころども何とかすりゃいいんだろ?
ここにな、召喚したクソデカ黒ひよこがいるだろ?
かぁいいよなぁー
これをこうして(掴む)こうじゃ(投げる)
わはははマリカーみてぇー!ウケるー!
黒ひよこに犬っころどもが釣られてる間にとんずらするって訳だ!
俺って頭良い~~~!
あ、こら!つつくな!ひよこで前が見えねぇ!?
ぐぁあああ!!!(ハンドルを取られてクラッシュするけどコメディなので誰も死なない)
□スワン、陸上だから足見えてるよ□
「うははははははは!!!!!」
花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)の大笑が荒野に響く。
「おうおうおうおう来やがれ来やがれ来やがれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
彼女が駆るは陸上用足漕ぎペダルスワン号。
八千代のダイナミックなペダリングに合わせて底部分のスワン脚がすげー勢いで地面を掻いているしなんなら火花が出ている。
……。
足漕ぎ???
足漕ぎ????
「行ッッくぜぇええええええええ俺の梵・天・丸ッ!!!!」
ウワァアアアアアア!!!!足・漕ぎ・ダァアアアア!!!!
この場合行ってるのは梵天丸じゃなくて八千代である!!!!
いやぶっちゃけ八千代としてはソロで走ってもよかったがみんなが乗り物に乗ってレースしてるのに隣を並走したらふいん……ふんいき、ぶち壊しだ。それはいけない。
「正直運転技能もってねえから心配だったけどこれなら実質チャリだわ!」
実質チャリっていうかチャリ以上の負荷かかっている。
なんせこのスワン、ファミリータイプなので四人乗りだ。
八千代はいわゆる運転席ポジでスワン漕いでいる。乗ってくれるかどうかはさておき薬袋家全員乗せてもまだひとり余る。ペットもいける。なんなら今後部座席に人間大のでかいひよこを中心としたがうとうとしながら乗っている。
せっかくだからと団地から呼んだがうとうとしてるあたりなかなかの乗り心地らしい。やったぜ。
「チャリなら楽勝ってもんだぜええええええええええ!!」
持っててよかった筋力700、楽々漕げる。
見て、足漕ぎスワンがバイクとトラックと車と拮抗どころか若干押してる。
やはり筋力、筋力は全てを解決するのだ。
「ッハ!」
運動の本質を理屈でなく筋肉(たましい)で理解する羅刹はサドルに腰掛けずペダルの上に立ち外側からハンドルを握りこむマウンテンバイカーもびっくりの美しいフォームを維持し楽々スワンチャリを漕ぎながら隣を笑いみる。
八千代を追うのは巨大なハムスター滑車軍団である。エンジンを中央に抱く形でハムスター滑車がトライアングルを形成する形で設置しておりその中をめちゃくちゃ眼を輝かせたポメラニアンが走っていた。
「意味わからんな!!!!!」
ほんとにな。
ポメラニアンのきらっきらのおめめと八千代の眼が合う。ランナーズハイが決まりきっておさんぽしか頭にない顔だ。これはあれだ行こうぜ大地の果ておれとおまえの限界までよって顔だ。いい。そういうガッツ、いい。きらいじゃない。嫌いじゃないどころか
「大好きだぞこういうの!!!!!」
もう大地の果てまで行こうって気しか湧かない。
一体敵さんはこんなトンチキ事件起こすなんて何考えてるんだろう。もしかして荷物の奪取どころか、かわいいかわいいわんわんを自慢したかったのかなって気すらしてくる。八千代の予感は多分三割くらい合ってる。とりあえず隣のいっぬは爆走するおねえちゃんに爆走してついていくことしか考えてない。
「すごいですね!?!?」
これには奇天烈のルール・レルを目指すトンチキカー乗りもびっくりである。ちなみに八千代の少しまえを行くのはかわいい着せ替え人形の女の子が四つん這いで走る乗り物である。運転席は頭部だ。
「お前もな!!」
ほんとにな。
一歩間違わなくてもホラーだ。八千代の素直な感想に乗っている女が頷く。「威嚇に」「確かに深夜に見たくねえなあ」その人形から垂れて引きずってる髪とか正直走行の邪魔じゃない?
「これアレだよな!!!アレ!!」
スワンチャリ・梵天丸は窓ガラスなんてものはない。そんな速度で使う想定してねえから当たり前である。すると自然と空気抵抗と風圧のおかげで八千代は声を張り上げないとどうしようもないのだ。エレクトロっつーかデスメタルみたいな声量である。
こうなるとただでさえ筋肉を使う要酸素運動に肺活量も要求されて脳味噌にも酸素がちょっと足りない。
……つまりどういうことかって?――
「なんかよく知らんけどあの犬っころども何とかすりゃいいんだろ!?」
八千代は風の中で問う。「そうです!!!」人形女が頷く。「でも流石にチャリ漕ぎながらは――」
「まっかせろ!!」八千代は器用にも体を起こしチャリのペダルが回転する勢いをカンマ数秒だけ生かし、スワンのフロントに肘ついてたち乗りの要領でサドルに逆乗りする。
そしておもむろにうとうとしていた巨大宇宙色ひよこを掴んだ。
「ここにな、召喚したクソデカ黒ひよこがいるだろ?」
全長153cm、下手するとちょっと小さい成人女性サイズのひよこをむんずと掴みチャリを踵のみで漕ぎながら掴む。
ハイパースワン・梵天丸を漕ぐハイパーねーちゃんがふわふわをとった時点でただでさえハイテンションポメラニアン軍団の魂は最高潮である。毛玉と毛玉が見つめ合ってる。
「わかる、わかるぞお前ら〜〜」八千代はポメポメ軍団に何度も頷く。
「かぁいいよなぁ〜〜〜」
かるがるひよこをかかげて円を描くように動かす。ひよこが天井でこすれてる。
「これをな」
八千代は美貌が輝くそれはそれは可愛らしい可愛らしい笑みで。
「こうして」
窓ガラスなんてない枠だけの窓からも゛っ、とひよこを出し。
「こうじゃ」
なっ。
投げたァアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!
――……つまりどういうことかって?
さすがに付近を運て…走行していたポメラニアン軍団これは避けることができない!!!むしろひよこを取りに行こうとして加速するまで犬だけにワンチャンあるが当然ハムスター滑車なのでひよこをとれることはなくひよこがバウンドキメて次のぽめぽめ滑車にブチあたるわけである。
「わはははははは!!!マリカみてぇーーー!!!ウケるーーー!!!」
最高にハイってこと・さ☆
スワンチャリ逆乗り片手運転とかいう自転車運転法違反とかいうレベルじゃない暴挙をかましながらポメポメどもの間をぽんぽこひよこが跳ねていくのをみる八千代。
よくよく考えると鬼の所業なのd……羅刹だなこのこ。
じゃあいっか!!!
「よぉしこれでトンズラするぞ!!!」
八千代は背面乗りから体勢を直すべく手近にあった天井脇のハンドルをつかむ。「黒ひよこに犬っころどもが釣られてる間にとんずらするって訳だ!」「なるほどですね!!!」人形女がエンジンを加圧し加速に入る。人形の四つん這いが加速しててマジ怖い。どうしてそこポーズだけでタイヤにならんかったの?
「俺って頭良い〜〜〜〜〜!!」
ポメポメ軍団の大混乱をもう一瞥だけしようとした八千代はそこで驚くべきものを見る。
すなわち
ぽめぽめにぽめっと跳ねられたひよこが
「あ」
嗚呼。
窓に!!窓に!!
……。
窓ガラスねえんだったわこの梵天丸。
なので。
後部座席側の広い窓からぶっこんでくるのある!!!!
もちろん跳ねられた勢いでそのまま飛んでくるので「おぶふッ」顔面直撃!!
ついでに勢いで入ったひよこ!さんざんっぱら跳ねられた抵抗でつつく!つつく!とりあえずつんつつく!!
「あこらッ!?」
なにせ掴んで離したいが八千代の片手は体勢を直そうと思ってなんかのハンドルを掴んでいる。自転車逆乗りなので体力は大丈夫だがバランスがちとしんどい。
片手で必死に抵抗するが視界がみえない状態でフワッフワのボディが掴みづらい。
「つつくな!!つつくなひよこ!!」
ひよこに相手を見る余裕?
そこになければないですねー。
「くそおおおおおおおッ!!」
あわやクラッシュと思われたその時。
八千代の抵抗の手が光明を掴む。
・・・・
ハンドルである。
思えば八千代は片手が掴んでるこのハンドルなんだかわからない。
これで両手がハンドル(前はひよこ)で埋まってしまった。
しかもこのハンドル――回る。
ボートの櫂のように……回るのである。
回るなら!?
「ちくしょおおおおおおおおおおお!!」
回さないでいられようか!!!!!
いやいられまい!!!!!!!
そんなわけで。
怪力700、今度は腕に回って輝いた。
ハンドルにはこうラベルが貼られていた。
“ウィング”
普段は――たぶん、漕げない方が回したり、疲れた方や子供が対象なのだろう。
スワンの羽がはばたくのをほっこりして眺めるのだろう。
しかし今。
舞台はアポカリプス・ヘル。
乗るは羅刹。
「オラァァアアアアアアアアア!!!!!!!!」
かくて梵天丸は空をゆく。
もちろん前が見えないから普通に落ちてクラッシュした。
かしこいポメラニアンがたすけてくれた。
成功
🔵🔵🔴
ダンド・スフィダンテ
ほぉ、なるほど
なるほど?
ごめんちょっとよくわかんない
けど、困る者がいるなら、解決してやりたいから頑張ろう
どこまで出来るかわかんないけど
マジで分かんないけど
フラッシュが居ればフラッシュに乗れたんだがなー、居ないからなーー
なんか勧めの物が有ればそれに乗るよ。運動神経なんかも悪くは無いし、大概の物には乗れると思う
追いかけてくる犬かわいいなーーペットを飼うつもりはないんだけど、心揺らいじゃう可愛さだよな
ほーらピカピカだぞー、おいでおいで
ほねっこあるぞ?犬用ビスケットも
たくさんお食べ そんで車は一旦諦めてくれ
よーしよしよし、いいこいいこ
うん。思ったより多うわっ乗り移って来、もみくちゃにされっおわーーーーっ
(色々全てお任せします!犬かわいい)
□高濃度の金髪はゴールデンレトリーバと見分けがつかない
見慣れた顔がスワンボートで飛んでった。
「ほぉ、なるほど」
ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)はそれを見て大きく頷いて
「なるほど?」
頷けなかった――…!
「ごめんちょっとよくわからない……」
当シナリオの貴重な正気枠だが既に心が折れそうだ。というか半ば折れている。
「なんで?」ダンドは首を傾げる。
「なんでこんな狂気的な乗り物用意してるの?」
ダンドが強制的に乗せられたのはびっくりする黄色いチキンのバイクである。
ハンドル中央部分からそれぞれ左右横倒しのチキン!ブレーキも細めのチキン!
前輪と後輪の泥除けもチキン!!!ついでにサイドカーもまるっとチキンの顔だ!眼の部分がライトだぞ!!!
しかもサイドカーチキンと泥除けチキンはゴールデンである。後部座席はチキンの顔である。製作者?
「でなんで俺様それに乗せられてるの?」
お名前のところ見てもろて。「こんな|七面鳥《チキン》 の擦られ方、初めて」ため息が出てしまう。あ、当シナリオ初ルビです。おめでとうございます!「こんなことで使われても…」
ちなみにクラクションもチキンである。試しに触ってみるといい声で鳴いた。ピェーーーー!!
「フラッシュが居ればなぁ〜〜」
ダンドの口から鬱々としたため息が出る。
「フラッシュに乗れたんだけどなぁ〜〜」鋼と闘争の世界においてきたいとけなき子を思う。彼に選ばせた結果の離別とはいえ、ダンドは情の深い男である。別れというのは胸に痛く傷は深い。
湿っぽいため息を吐きながら思わずチキンを握る。ピェーーーー!!
「いないからなぁ〜〜〜〜〜〜〜」
元気にやっていますか?すひだんてさまはフラッシュがいないのでなんとチキンに乗せられています。どこ触ってもチキンが鳴きそうで迂闊なところを触れなくてはらはらしています。傷心の男をこんな乗り物に乗せるのは荒療治を通り越してただのイジメではないでしょうか。
「けど」ぼやきなげきも程々に、ダンドは借りたゴーグルを下ろし目をカバーすることにする。トンチキだがここはアポカリプス・ヘル。風には砂が混じってびょうびょうと吹き付けてくる過酷の地なのだ。もちろんバイクとお揃いでお借りしたゴーグルなのでチキンである。「まあ」
「困るものがいるんだ――解決してやりたいから頑張ろう」
アクセルを入れる。「どこまでできるかわかんないけど」柔らかさにドキッとしたが別にアクセルを踏んだ程度でチキンは鳴らなかった。
アクセルを踏み込まれバイクのエンジンはオイルでもって加速する。
排気口から噴き出すのは煙と
「いやマジで分かんないけど――…!!」
チキンの叫び声――…!!!
ちなみにチキンは加速時に声を上げるだけでエンジンをふかすだけで叫び続けたりはしない安心仕様だった。どうなってんのこのチキンバイク?
ここまで騒げば当然わんわんどもも騒ぎに乗ってくる。
チキンではなくまともなクラクションに振り返れば、バイクに乗ったゴールデンレトリーバ集団が追っかけてきている。バイクには後部座席部分に縄が括ってあり、同じくゴールデンレトリーバーをのせた陸上ボートを率いている。
「ああー犬!!」ダンドはほっこりする。アンブロジウスがちょっと苛立たし気にダンドの頬を叩いた。「待って待って、だって犬、ほら!追っかけてくる犬かわいいなーー」全員色とりどりのチキンサングラスをかけていることは今はこころの眼でみないようにしておこう。
「ほーらピカピカだぞ〜〜〜おいでおいで〜〜〜〜」
ついでにチキンもならせば元気のよいおへんじがだうだうと聞こえてくる。こんにちわ!いいおひがらですね!動物と話せる心には彼らの素直な声がひしひしと伝わってくる。本当にいい子ばかりである。飼い主(と言っていいのだろうか?)たちはきっとよく躾けよく面倒を見ているに違いなかった。
ああ、癒されるいい子たちだなあ。心の傷が癒やされるのを感じながら――
ところで!ところでおにいさん!なんですか!そのチキンなんですか!
――痛いところをついてくる。
「ンン゛ッ!」ずるい大人は咳で誤魔化す。そんなの俺様だって知りたい。
とりあえず痛いところをこのまま抉られるまえに、ダンドは素早く後部座席に置いた袋をつかむ。
「ほぉらご覧〜〜ほねっこだぞ〜〜〜!!」
ぴん!チキンサングラス越しでもわかるいぬの輝ける眸!喜びの顔!わあ!いいんですか!!いいんですか!!!「いいとも」大きく頷く。並走しながら投げてやれば、運転しながら、あるいはボードの上でひとはねして投げられた骨のおかしをキャッチする。「おお、すごいすごい」思わず拍手。うれしそうなお返事まで帰ってくる。
「よしよし、落ち着け落ち着け」
一匹が成功すれば次も続くのは道理だ。
「うん、うん、犬用ビスケットもたくさんあるから」
袋から鷲掴みにしてばっと投げればばっと加えにとぶ犬たち。
ダンドの周りはあっという間にレトリーバー軍団の集まるところとなる――誘導成功、というやつである!
「たくさんお食べ」
ダンドは微笑ましい気持ちではしゃぐイッヌたちをみつめる。
「そんで車は一旦諦めてくれ」
はぁ〜〜〜〜〜〜い!!!!という素直なお返事。
なんてったってこの事件…事件…??
遊んでほしい(そしてついでにおやつがほしい)ピュアなイッヌたちなのである。
鷹揚なお兄さんによる餌付けチャレンジに群がらない訳がなかった。
しかしまあこのままほっこりをお届けしてお返ししねえのが当トンチキシナリオである。
「よーしよーし、いいこいいこ」
ダンドの幼き子を見送った傷がゆっくりと癒える頃。
「うん」
イッヌのなつきがMAXになる頃。
事件は起こる。
すなわち――
ばふ!
レトリーバーの一匹が大きく吠えてジャンプする。
骨っこを咥えながら、チキンサイドカーにオン。
なめるなゴールデンレトリーバー体高51〜60cm体重25〜35kg!!!
だうん!衝撃にバイクが傾ぐッ!
「待って♡」思わず笑顔で言ってしまう。
わう(待たない♡)「わあ♡」
――ゴールデンレトリーバー、襲来。
何度でも言おう。
|一匹続けば次も続くのは道理である。《・・・・・・・・・・・・・・・・》
「思ったより多ちょっと待って!」ピィー!!これはサイドカーにもう一匹レトリーバーが飛び乗ったために「乗り移って来んの!?」鳴った音ッ!「貴殿!?貴殿ちょっとサイズ考えて!?」ピィーーーーッ!!「待っ」ピィー!!「て」ピィーピィーピィー!!!「待って待ってぇ」ピッピピピィーーーー!!!「当バイクの積」ピヨォーーーー!!これは後部座席にる乗ることによって鳴るチキンの悲鳴ッ!「そこ鳴るの!?おかしくない!ああああ待って待って」ピピピピーーーーー!!!「当バイクの積載量はオワーーーーーッッッッッ」
合掌。
ほねっことビスケット全てを提供すること。
あとべろんべろんに舐め回されたりする代わりにバイク一台お貸しいただいた。
持つべきは交渉技能である。
成功
🔵🔵🔴
梅桃・鈴猫
乗り物はお任せ致します♪
槐守は危ないので見ていてくださいませね?
万が一壊れるなんて事があれば我が主君に申し訳がありませんもの。ぜっったい、だめですわ。
さてと……
可愛らしい動物達ですわ?
持ち帰れば、主君は喜ぶでしょうか……あぁ、そうでした。
遊んで差し上げること前提で、お帰り願う必要があるのでしたわ。
乗り物を乗りこなしつつ「仙術」で敵方の賢い動物様達に、軌跡がみえるおまじない。霊糸や春雷輪を用いてUC発動。
さぁ! 障害物競走ですわ♪
競走をしながら、私が張り巡らす様々な軌跡をどうぞ超えてくださいまし♪
と言いつつ……徐々に護送している方向と別ルートへ行くように誘導できれば。
何体か軌跡に引っかかったのです? 知りませんわ♪
これは競走であり、遊びですわ! 正々堂々とした、遊びです!
こんな遊びもあるんです!
……いえ、本当は軌跡も見えない方がスリルがあるかなとは思いましたけれど。そっちの方が良かったでしょうか?
今からでも出来ますけど、どうしましょう?
この鈴猫、皆々様が遊べるよう、誠心誠意尽くします♪
□そうだ、運営しよう□
「よいですか、槐守」
梅桃・鈴猫(天翔の桃花・f33163)浮遊する式神をそっと両手で包むように持つ。
「槐守はあぶないので見ていてくださいませね?」
心配そうにふるえる式神にやさしい笑みを浮かべる。
「万が一壊れるなんてことがあれば我が主君に申し訳がありませんもの」そっと持ち上げて「ぜっっっったい、だめですわ」優しく、
そっと頭上の|小型宝船帆頭部《・・・・・・・》 にオン。
式神は鈴猫のことを呼んだだろうか。呼んだかもしれない。
槐守は鈴猫に対する|最後の砦《ツッコミ》 であった。
なぜなら鈴猫が搭乗するのは自動運転式小型トレーラーである。
形態、宝船。
まあおもちゃの宝船の底にタイヤが四つついているのを想像してほしい。そうそれ。それでだいたい合ってる。
もうこの時点でとってもトンチキな匂いがする。
いいのだろうか。いいのだろうか羽衣人。こんなトンチキに巻き込まれていいんですか侍女。
しかしながら既にことは後の祭り。
「ようく見ていてくださいませね」
だって鈴猫はもうやり切る顔をしている。
誇らし気な笑みでかるく袖をまくり、襷で留める。「さてと……」
後方には魔改造されたミニバイクに乗るシーズーの群れ!
「可愛らしい動物達ですわ?」
うっとりとため息をつく。
「持ち帰れば、主君は喜ぶでしょうか……?」
あの仔らを十匹二十匹とはいかないが五匹くらい連れて帰って赤い敷物の上に珍しく足を崩して座った主君の周りとかお膝とかにふわふわ乗って戯れている図を想像するとそれだけで鈴猫の胸はときめきこの妄想を絵図にできる画家がいたなら頼みたいまである。もう間も無くすると季節は秋になり赤黄のうつくしい錦が映えるころがくればその下の主君などそれはそれは絵になるわけでそんな主君のちょっと緩んだお姿など
「……あぁ、そうでした」
鳴らされたクラクションに我へと帰る。
――おっと、危ない危ない。。
鈴猫はできる侍女であるので推しに対する妄想が爆走する前に無事に帰ってくることができた。ほんまでござるか?今ちょっと推しへの|夢の世界《ビバ妄想》 に旅立ちかけてなかった?
「遊んで差し上げること前提で、お帰り願う必要があるのでした」
残念無念の静かな表情でかぶりを振ることで走りかけた推しへの妄想をグッバイする。いつか機会があるといいことは心底願いつつ。推しの新しい表情はいいものです。生きる糧ですからね。
「では――遊んで差し上げましょう」
鈴猫はしゃらりと指を蠢かせる。
張られるは霊糸。心地よき梅、あるいは桃の香りがうすら漂うなか、もう片手で春雷輪――円月輪をひとつそしてもうひとつと投擲する。
視界で投げられたものを追うのは犬の本能である。かれらはいっとき輝く輪に釘付けになる。
そしてその一瞬で、鈴猫のするべきことは終わっている。
仙術の“おまじない”――いっとき彼らの目に術が映るよう振りまいて。
UC 練武・影仙花。
一息。
羽衣人は衣を翻し剛速のひとことではすまない速さで犬たちの前に迫る。
宙に浮くように見えるが――その足元には仙術による足場が構成されている。
「さぁ皆様いらしてくださいませ♪」
攻撃は、しない。
代わりに
「|障害物競争《・・・・・》 ですわ♪」
イッヌが好きな魔法の呪文をとなえる。
「ほら」あちらへ飛び「ほら♪」こちらへ現れ――宝船へと戻って、霊糸を張り巡らせる。
鈴猫の動きを目で追ったイッヌたちは、目の前の風景が一変していることに気づくのである。
アポカリプスヘル独特の地形の上に現れる愉快なカーブ、あるいはジャンプバー!
そう、梅桃・鈴猫、なんとレースに走る側でなくレースをご用意する側に回ることにしたのである――…!!!
まーそりゃあ此度いらっしゃってるイッヌたちは走るのが大好き遊んでもらうのも大好きなピュアッピュアのかわいいイッヌたちである。
厳しいアポカリプスヘルのなか、心を病むことなく健やかに伸び伸び元気に育ってはいるが、娯楽には非常に飢えている。
だからこそモヒカンの指令通り輸送隊に“あそんでー!!”と突撃し“ちょうだーい!”と戯れていくわけである。
だからそう。
こんなものなどご用意されて。
イッヌたちは遊ばないでいられようか――…!!!
「うふふふふ♪」
鈴猫は揃えた指先で口元を隠して優雅に笑う。
|無論ルートは輸送隊から逸れている。《・・・・・・・・・・・・・・・・》
そう!!!
今日の侍女さんは!!!!トンチキでも!!!!仕事ができる!!!侍女さんなのである!!!!!
「さあ、競争ですよ、皆様!」
戸惑うわんわんたちにはなやかに声をかけるのも忘れない。「競走をしながら、私が張り巡らす様々な軌跡をどうぞ超えてくださいまし♪
加えて難易度をあげることも忘れない。
足元、鈴猫よりは少し小さい七福神の人形に紛れてかくされたレバーを倒せば加速が入る。
「面舵いっぱ〜〜〜〜〜い♪」
……いや、仕事もしてるけどやっぱトンチキをエンジョイしにいらしてる気もしますね。
目の前に障害物そして速度をぶっ放されれば、追うのは犬の本能である。
待って待って〜〜〜〜〜〜!!ぼくもぼくも〜〜〜〜〜〜!!!
てな調子でわんわんきゃんきゃんと次々ミニバイクに加速が入る。
ばぅん!
「あら」鈴猫は上がった爆風に振り返る。パラシュートをつけたシーズーがころころ笑っているのが見える。
「何体か軌跡に引っかかったのです?」そのようですね。「なるほど」鈴猫は笑って。
「知りませんわ♪」
加速ギアを入れた。
ちょっとぉ!?お姉様ちょっとドSの才能がありませんか!?
「これは競争であり、遊びですわ!」
ほがらかに宣言する鈴猫の背後で何台かバイクが転倒してその度に安全装置からシーズーが打ち上がってパラシュートでふわふわ降りていく。
「正々堂々とした」
霊糸や春雷輪が先ほどよりエグいカーブや高台あるいはジャンプバーの軌跡を編み込む。え、鈴猫さん?
「正々、堂々とした!」
あの、鈴猫さん?
「遊びです!」
ほんとですか???
さっきから速度と一緒にルートのギアも上がってませんか?
「こんな遊びもあるんです!!!」
力強く宣言しながら加速ギアを入れ切って霊糸で固定する。
お姉さんのギアも上がり切っているような気がするのは筆者だけであろうか。
「……」爆速で進む宝船を見事な舵捌きで動きながら鈴猫はふいに後方を振り返る。
けっこうでかい花火があちこちで打ち上がってかわいい空中シーズーが結構発生している。
その眸には、すこしばかりの憂いがあった。
「いえ」
あ、やりすぎたとかですか?
「本当は軌跡も見えない方がスリルがあるかな……とは思いましたけれど」
鈴 猫 さ ん 的 に 、
今 の ル ー ト は ま だ ぬ る い と い う こ と で す か ?
スポーツ・エンターテイメント番組で運動選手たちの筋肉をとことん追い込める|鋼鉄の魔城《フィールド・アスレチック》 の製作者の憂いを込めた呟きだった。
「そっちの方がよかったでしょうか……?」
鈴猫は前方は見ずしかし正しい舵捌きのままとんでもアスレチックをバイクで超えてくるシーズーたちに目を細める。
「今からでもできますけど、どうしましょう……?」
これは考えてるように見えてやるタイミングを見定めているだけの狩人の目ッ!!!!
「いえ、時期尚早ですわね」
大きく頷いて――鈴猫は片腕を高らかに上げる。
「さぁ皆様、競争はまだ終わりませんわ♪」
それはそれは美しい――神々しさすらたたえた羽衣人らしい笑みで宣言する。
「この鈴猫、皆々様が遊べるよう、誠心誠意尽くします♪」
競争物は最終的に透明になった。
成功
🔵🔵🔴
ヴァシリッサ・フロレスク
メモリーピース経由でレンタルカー(?)にAIをインストール
HA!上等だ。アンタのロールアウトにゃ全く以てお誂え向きのステージじゃないか?システム・オール・グリーン、ナニから何まで問題ナシ。だろ、ヴィッキー♪
『大アリなんだけど。なめてんの?』
※なんだかとっても可愛いかんじでちょっと(だいぶ)まぬけなふんいき、且つエグい速度が出そうな乗り物が希望です
仕方無いだろ?タルボシュは前回あんなにオイタしたンだ、メンテ終わるまで我慢ガマン♪
『は?どの口が言ってんの??』
何?ビビッちまったンかい?
とかなんとかぎゃーぎゃー漫才しつつ
仕事(アソビ)では本気モード
わんこ集団に切り込み、紙一重で見切りつつ陽動
粗方釣り出せたらフルスロットルでブッ千切る
ついてきナ、Cute Pups♪地平線の彼方まで♪
『アンタも精々無様に振り落とされないでよ』
限界突破で悲鳴を上げる機体!猛追するケモノ!弾ける火花!!まさにDEAD HEAT!
かくなる上は、AIごと敵車両に乗り移ってわんちゃんと仲良く相乗り!
『バカ3号とか勘弁して』
□大丈夫!犬は無事です!□
HA!
荒野をバイクで切り裂くとき独特の風は――やはり心地良い、とヴァシリッサ・フロレスク(浄化の血胤)は思う。「上等だ」
『ハァアアアァアアアもぉおおお信ッッッじらんない』
備え付けのスピーカーから唸り声が上がる。『何これなんなのこれマジで何これ』
「ア〜ン?」
ヴァシリッサの両手は今、ハンドルから離れている。自動操縦モードだからだが……ここはアポカリプス・ヘルであり借りた車であるこれに、そんな機能は元々ない。
起動しているのはひとえに――
「アンタのロールアウトにゃ全くお誂え向きのステージじゃないか?」
拳でかるくウィンド・フレームを叩く。「高軌道形軽量戦車。空か地面かッて違いダ〜ケ♪」
『ええそうねまあそうよそうでしょうよ本質的にはね』
スピーカーからの声は刺々しいが、いつもより口数が多いのは“彼女”が動転しているからだとヴァシリッサは知っている。「システム・オールグリーン。ナニから何まで問題ナシ」
「だろ、ヴィッキー♪」
――ひとえに、メモリーピース経由でAIを戦車のシステムにインストールしているからだ。
『大アリなんだけど』
名はヴィッキー。
縁あってヴァシリッサの元にいる戦場補佐AIである。
『なめてんの?』
苛立たしさを隠しもしない舌打ちひとつ。
『どうかしてる』ヴァシリッサは彼女の苛立ちの理由がわかるが
「なァにが?」あえてとぼける。
『シャム猫戦車ッてなんなのよーーーーーーーーーーッ!!!!!!!』
ヴィッキーの叫びにヴァシリッサはたまらず笑い出す
「アーーーーーハッッハッハッハッハ!!!!!!」
そう。シャムネコ戦車。
かわいらしくデフォルメされたシャムネコの顔に、招き猫のように左手を添えたものが軽戦車になって走っている。
ちなみに左手は完全に飾りである。砲弾(ファイア)は口から出る。
なぜか砲撃するとき左手が招くように動く。
『戦ッッ場ッッッッッッ!!!ナメてんのかーーーーーーーーーーー!!!』
ヴィッキーの大混乱悲鳴が車内に響き渡る。
いいながらも速度を上げ戦闘集団にもう間も無く追いつくだろう。
『なんでこんなもん走らそうと思ったーーーーーーッ!!!』
おそらく当シナリオ参加者みんなが思うことをシャウトする。
「カワイかったから?」そっすね。かわいかったからだと思います。『カワイイ優先で兵装すんなーーーーー!!!』
「アーーーーハッハッッハッハッハイヒヒヒヒヒ!!!」ヴァシリッサは笑いが止まらない。「お似合いだよォkitty??」
『畜生出てこいデザイナー!!!戦争ってものを教えてやるーーーーーーッッッッ!!』
「これも実戦だってェ」『嘘よーーーーーーーーーーーー!!!!』残念ながらほんとですね。
「仕方無いだろ?」
どうにかこうにか笑いを引っ込めながらヴァシリッサはハンドルを握る。「タルボシュは前回あんなにオイタしたンだ」アクセルに足をかければ、「メンテ終わるまで我慢ガマン♪」自動操縦がゆっくりと手をひき始めたのか踏み込みを受ける感触が返って来る。『は?』先ほどより倍ほど低く静かな声が帰ってくる。
『どの口が言ってんの?』件の機体の“オイタ”には――なにせヴァシリッサの無茶がある。それを咎める口調だった。「このクチ♡」
『このふざけた機体でも無理したら承知しないから』
「何?ビビッちまったンかい?」
『ビビッてないわよ、あたしは当然の仕事を――』
言いかけたところで、ヴィッキーは語調の苛立たしさを抜く
『前方20機捕捉』
ピュゥ!ヴァシリッサは口笛を鳴らす。「ワァオ、イカれた改造車乗ってンね♪」
マシンガン他を備えて加速装置のついたバギーである。
『シャムネコ戦車に勝るイカれ改造車じゃないと思う』
怒りを通り越して乾いた音色のヴィッキー。
「カワイイのにィ」
『イヌの方がマトモでかっこいいの乗ってるこの矛盾、どういうこと?あたしあっちに乗りたい』
にやり、と。
ヴァシリッサは笑う。
「勝てない?ヴィッキー」
『冗談、マイ・マスター』
加速。
「HEY,HEY,HEY!!」
ヴァシリッサはマイクをとり軽戦車に備え付けの外部用スピーカーで思いっきり吠える。
「HEY!ワンちゃんども――ご機嫌はイ・カ・ガ?」
ロットワイヤーの群れは自らの前シャムネコ戦車に釘付けになる。
それもそうだろう。シャムネコ戦車は先頭に飛び出しながら、その顔はこっちを見ているのだ。
つまり、正面を見据えながらのバックドリフトだけで群れの戦闘に飛び出してきているのである。
うぉん、ばぉん!だぉん!がぉん!何重にも吠え声が重なる。
「アァ、い〜〜〜〜い、お返事だ!」ヴァシリッサはからから笑う。「ヴィッキー、お返事してあげるよ」『マジ?』
ヴァシリッサはマイクのワイヤーがつながっている根っこ、その隣を叩く。
“ニャーン”
ッッッッッッッッッッヴァシリッサさん!!!!!!!!!!
これ!!!!!!犬シナリオッ!!!!!!!!!
これには落ち着きのある犬たちも大非難である!!!!!!
「ついてきナ、Cute Pups♪」
笑いながらヴァシリッサはハンドルを切る。車体回転。
これみよがしにケツを――といっても猫の頭部なのでフワッフワの後頭部である――を見せつける。
「地平線の――彼方まで♪」
アクセルを最大で踏み込む。
『いい?この機体の最高速度時の移動可能時間は――』
「任せた」『はァ?』「爆発しそうになったらオ・シ・エ・テ?」
ちっ。短い舌打ち。
『アンタも精々無様に振り落とされないでよ』
了承の合図。
かくて始まるはデッドレース!
いぬは傷つかないが機体はイカれることが普通にありえるこのレースッ!
後方追いかけるバギー、弾けるタイヤ、転倒、助かる犬!!!
エンジンの限界を迎え火を上げフロントパネルをぶちあげるバギー、爆発する車!でも助かる犬!!!!
わんわんといえど荒野の獣!吠える犬!間違えるハンドルぶつかり合い弾ける車体打ち上がる花火!でも犬は無傷!!!!!!
まさにDEAD HEAT。
これぞアポカリプス・ヘルと言わんばかりの荒地を満たす破壊音。でもご安心ください。いぬは無事です。
『あれどうなってんの』
エマージェンシーブザーの鳴る車内、ヴィッキーがごもっともな質問を呟く。
「さ〜〜ァ?」ヴァシリッサは適当な相槌を打ちながらハンドルから垂直に下、電子機器接続部位を開ける。『ヘイ、この警告音聞こえてる』「超聞こえてる」『無茶すんなって言ったわよね』「言ったっけ?」『言ったわよ今すぐ減速してこんのバ――』
ぱつん、とメモリーピースをぬきとる。『ちょっと!?』小型スピーカーからの非難。
「減速だなんて勿体無イ♪」
ヴァシリッサは笑ってドアを開ける。「アンタ言ったろ?」
「“あたしあっちに乗りたい”――ってサ♪」
速さがもたらす風のなかを、飛び降りる!
ど、ん!
そうしてぎりぎり飛び乗るは改造バギー!
「Hi!Cute Pup」
困惑の犬を右手で抱き寄せるようにしつつさらりとハンドルを奪って素早くヴィッキーを接続させる。「ヨロシク♡」『ほんとどうかしてる』
「どうかしてるなンてひどいじゃないか」
データが無事適応され操縦が切り替わるのを確認しながら抱き寄せたロットワイヤーの茶色い鼻先に唇を寄せる。「ネ――」『ストップ』「ナニ?」『ハンドル、操作、して』「いいじゃないか、ワンちゃん一匹増えたって」『よくないわよ』
『バカ“三号”とか勘弁して』
成功
🔵🔵🔴
リア・アストロロジー
わんわん! わふぅ!(興奮)
シベリアンハスキーもいるのですね。
猟兵になる以前に旅した極北の地――イヌイットの居留地で出会った子も同じ犬種でした。
懐かしさと親愛をこめて「おいでおいで」します。
「こんにちは。私の名前は、リアですよ」
「ふふ。こわいおかお……」
はじめはやさしく、ちょっとずつ確かめながら、嫌がらなければおかおをぐにーっと。
やんちゃな子が多いのは承知なので、わたしもさせるまま一緒にあそびます。
それと…
「ケガをしたのね。……いたかったね?」
どこまで癒せるか分かりませんけど、星を呼んで願いを捧げます。
どうか、この子たちが
「元気で……長生きしてね」
犬は色々な動物の中でも、人にとってとても特別な存在だと知識にあります。
こんな世界になってしまって、きっと辛い目にあった子たちも多いでしょうけど。
もしもこの子たちがそう望んでくれるなら、
「いっしょに生きていけたら、うれしい」
あ、ドッグフードは持ち込みできますか!?
●他
犬使い?の人たちはもう、オブリビオンじゃないなら合流して生活できないのかな……?
□わんわん!!!わふう!!わっふ!!!!□
「わんわん!!!!わふぅ!!!!」
リア・アストロロジー(良き報せ・f35069)大興奮。
フラスコチャイルド、福音をもたらす高性能知能もフワッフワのわんわんの前には形なしだった。
いや、きっとこんな体験をしたら――きっと誰だって言語は飛んでしまうと思うのだ。
トラックいっぱいのわんわんのなかに埋もれることができたなら――……。
………。
あれ?
トラックいっぱいのわんわん?
「シベリアンハスキーもいるのですね」
リアは胸に浮かんだ郷愁に唇にせつない笑みを浮かべる。
猟兵tなる以前に旅した極北。地も白く――天も主には白、しかして幸いあれば晴れが覗き、夜は輝きを幾度も眼にしたあの地。
かけらのような大切なことをいくつも教わったイヌイットの居留地で出会った、あの子を思う。
わかっている、この子はあの子と違う。顔つきだって、模様だって。
でも、同じ犬種だというだけで懐かしさが込み上げて。
思わず両腕を広げる。
「おいで、おいで」
アッレおっかしいなリアさんちょっとこれアレェすげえナチュラルに犬インしてるあれぇリアさん、ねえどこ!?乗用車どうされました借りてたよねスーパーエビフライカー!エビフライカー!?あれどこいったエビフライカー!!?
「こんにちわ」
声をかければ静かな声がわふ、と返る。
動物と話すことはできないが精神感応に集中して強化された脳から発生する感覚は語られぬいしを理解する。こんにちわ。ちいさいのは少し怯えているからだ。そりゃあそうだろう。エビフライから緊急脱出用ジェットで飛んで軽トラにぶっ込んできた少女なんてみんな驚くに決まっている。
はじめはやさしく。ちょっとずつ確かめながら触れてみる。
でもわんわんが。
わんわんがそこにいたら。しかも山盛りでいたら。
飛び込むしか、ない。
あっ。
あったあったスーパーエビフライカー。
あっなるほどほぼ初動の位置でエビフライ最速起動させてかかるGを利用して速攻ジェットで犬トラ(※犬てんこもりのトラック)に突っ込んだわけですね…。
豪快さんでらっしゃるか?????
「ふふ」ちょっとした怯えも可愛くて、リアの口から笑いが溢れる。「こわいかお……」
シベリアンハスキーのお顔を包むようにもち、それからぐにーっと弄ぶ。
ぶふ!とハスキーの抵抗する声が“くすぐったいよ”という嬉しい音を含んでいて、リアはそれだけで嬉しくなる。
シベリアンのその一声がきっかけだったのだろうか。
まんまるの柴やこまかい足でちまちま走るダックスフンド、たるんだ顔が厳しいが口元に愛嬌のあるブルマスティフやらがつぎつぎ寄ってくる。
「わあ、いいの!」
こんなふうに――おだやかに命と戯れることなんてあっただろうか。
動物たちはみんな素直で、リアの感応は優しくて暖かいものに満たされる。
不意に一件の犬が、輸送隊襲撃投擲用松明の棒を取り出してリアに差し出してくる。
やたら手に押し付けてくると思えば――どうやら、“ひっぱりっこ”のお誘いらしい。
「もちろん、よろこんで」
さて。
一応忘れがちだがレースシナリオなのでレースっぽい話も添える程度に書しておこう。
このトラックは最後尾である。
現在の時速――250km。
トラック、追いつくのに、必死。
まあそれは外の話である。
中は穏やかで――美しいものだ。
「あ」
棒たおし遊びではしゃぐさなか、リアはあるダルメシアンの足に怪我をみつける。
「ケガをしたのね……痛かったね?」片足を取れば、少しむず痒そうに顔を背ける。
アポカリプスヘル滅びのふちの世界だ。
物資の不足は常に問題であり、悩みの種だろう。
この犬たちがよく面倒を見られていることは、毛並みや性格から良く分かった。
おそらくオブリビオンではなく現地のレイダーたちだろう。彼らと会うことができたのなら、合流し生活することも可能かもしれないと胸に止めおく。
今はそれよりするべきことがある。
星かげさやかに。
ユーベルコードにてトラックの中に夜空を展開。
星を呼び祈りを捧げる。
願うのは――
はい一方その頃外界トラックは打ち上がってパラシュートにはしゃぐハウンドドックやらひよこに巻き込まれたという謎の証言をするポメラニアンを拾い荷台へ追加していた。
アスレチック敗退したシーズーとか車が爆散しながらも無事なロットワイヤーも回収。
ヘイまいど!!わんこ追加一丁!!!!
――どうか。どうか。
「元気でね……長生きしてね…!」
犬は色々な動物の中でも、人にとってとても特別な存在だとリアの知識にはあった。
触れてみてわかる。彼らはほんとうにこころにこころでもって寄り添ってくれるのだ。
フラスコチャイルドであるリアにすら、やさしく暖かく,家族のように関わろうとしてくれる。
「もしも」祈りの隙間にリアは瞼をひらき、犬たちをそっと伺い見る。「もしもよ」
「あなたたちがそう望んでくれるなら」
祈りの隙間に――願いを、ささやく。
「いっしょに生きていけたら、うれしい」
ばふ!と。
最初に吠えたのはあのシベリアンハスキーで。
「ほんとう…!?」
リアは思わず手を離して、あのハスキーに両手を伸ばして抱きつこうとして――がさり、と。
荷物が大きな音を立てた。「あ」
リアは慌ててそれを広げる。「わすれてた!――ドッグフード!!」
そうしてにっこり笑うのだ。
「みんな、おなか、すいてる?」
――はいそして最後に外界のトラックです。
レースリタイア犬全回収RTAを完了したトラックを、運転していたマルチーズはサングラスをあげる。輸送隊を追うチームはかなり散らされてしまった。
だが、マルチーズにとってはある種、その方が良かった。
いぬは一匹も不幸にならないシナリオだが、やはり味方が味方を巻き込むのは心苦しいのだ。
きゅらきゅらきゅら――キャタピラの音があの輸送隊の前にそろそろ立ち塞がっているだろう。
あの。
あの容赦なき。
容赦なきベリーハイパーキュートな、いぬせんしゃが!!!!
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『いぬせんしゃ』
|
POW : きゅらきゅら
【キャタピラを全速力で稼働させた】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他のいぬせんしゃ】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : むれのきずな
自身が【自身や仲間の危機】を感じると、レベル×1体の【いぬせんしゃ】が召喚される。いぬせんしゃは自身や仲間の危機を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ : いぬせんしゃキャノン
単純で重い【いぬせんしゃキャノン】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●九月って言ってませんでしたっけ?
う、ぉ、ぉお――ん……。
荒野を行くきみたちの耳にふと響くのは、遠吠えである。
あちらこちらに散らばった犬たち――きみたちがボール遊びしたりバット投げしたり餌与えたり撒いたり乗せたり乗ったり乗せたりしてきた…アッッレェ最後どうした?????――いぬたちが、示し合わせたように一斉に天に向かって遠吠えを始めている。
そう。
腐っても乾いてもわんわんがフワッフワッでも眸はハイパーキューティーでもなんであろうとも。
ここはアポカリプス・ヘル。黙示の地獄。
わんわんがいくらわんわんでわわわんでわんわわんであろうとも――彼らとて黙示を生きるけものたちなのである。
「“あー、猟兵さん?”」
先導するコマ車軍団の一車が
――ごめん本筋と全く関係ねえんだけどツッコミ入れていい?何コマ車軍団て。いやわかるよコマ車わかる。見ればわかるよ糸引きコマとか手もみのコマとかベーゴマとかそういう形したやつね。なんで回転しながら前走れんの?中どうなってんの?悪い夢でも見てんのこれ?運転手、無事?あ、なるほど中は固定で回ってるのは外だけ。なんだその無駄にハイテク――
一車がきみたちに無線で連絡を入れてくる。
「“すみません、その子たち、本当に賢いみたいです”」
今までバカだと思ってたの?
きみたちが今まで撒いたりボール遊びしたりドッグランしたり乗せたりしている、犬たち。
彼らはあらゆる病の予防ワクチンを受けた。
そしてそのワクチンの中には、ナノマシンが混入されていたのである。
ナノマシンは彼らの知識を飛躍的に高めるとともに、ある種の同族へのテレパスを備える効能を持っていた。
「“先回り、されました”」
すなわち、きみたちの前には戦車の群れが立ちはだかる。
今までのトンチキとは比べものにならぬ精度の鋼は青空に鈍色を輝かせ。
真っ直ぐのびた砲門。地を鳴らすキャタピラ。
つぶらな眸。
……つぶらなひとみ?
きゅら、きゅら。
きゅらきゅらきゅらきゅらきゅらきゅら――!
けたたましい音と共に君たちの前に立ちはだかるを、ただの戦車とよぶにはあまりに惜しい。
そう。
この兵器を呼ぶにはその名がふさわしかろう。
|いぬせんしゃ《でっかいわんわん》 。
……。
|なんかすっごくいっぱいいるいぬせんしゃ《げんきに群れてるでっかいわんわん》。
いや。
いやいやいやいや!!!!!
これも!!!!やむなしで!!!あろう!!!
なにせ!!!
なにせ!!!この犬を率いているのはレイダーである。
いぬたちとはどう考えても種族が違う。
おなじものであると導くためにはどうしてもこの形が必要であったのだろう。
現に。
きみたちへ無線が入る――。
「“|わん!!!!!!!!!《わん!!!!!!!》”」
おいルビさん仕事しろ。
「“|わわんわん!!!わわわん!!わん!!!わわん!!《こんにちは!!いぬです!いぬはここにいます!!ので!よろしくおねがいします!!》!!!」
……。
いぬだ。
いぬだね。
わかってたけど、いぬだ。
運転手すら運転犬だ。
「“|わん!!!!!!!!!!!!!!!《あそんでください!!!!!》”」
向けられる砲門!
放たれる威嚇射撃が若干洒落にならない位置を爆破!
「“|わわわわわん!!わん!!!《ロボットアニメがだいすきで!!》”」
洒落にならない威力でめり込む大地!!
「“|わっふわふわふわ〜〜〜〜〜〜う!!!《みんなで自作しました!!!》”」
おめーが作ったんかい!!!!!
そして遠吠え!増えるいぬせんしゃ!!!
「“|わわんんわん!!わわわ、わううん!!!《だいじょうぶ!しなないしころしません!》 ”」
クソッ人道的!
吠えるキャタピラ!爆速で突っ込んでくるいぬせんしゃ!!
つぶらなひとみッッッッッ!!
あーもーぐちゃぐちゃだ!!!
ともかく猟兵!
もう黙らせよう!!!
大丈夫、みてくれの通りかなり頑丈であるしよく見ると脱出装置がありそうだ!!
「“|わぉーーーーーん!!!《あそんでください》!!!」
こういうときのわんわんは、結構本気でぶつかってくるわけだし!!!
■状況■
・舞台:アポカリプス・ヘル、どこかの荒野の一本道
・敵:いぬせんしゃ
・数:満足するまで
どう足掻いてもいぬは死なないのでご安心ください!
ユキ・パンザマスト
あららら、なんとまあかわいい、でっかわんこ共っすねえ……!!
よっしゃあ此処で遭ったがケモ友たちよ!!(しぱーん!!)
いっちょ遊んであげようじゃないっすか!!
【堂廻目眩】、化術で猫型マシンにへーんしんっ!!(ポージング)
おっとぉ、青い耳無しネッコじゃございません!!
小回りが効くネコミミ小型戦車!(ちょこんと砲の根元に椿の花)
ロボにはロボをぶつけんすよぉ!!
ってなわけで鬼さんこっちら!
追っかけっこしーましょ!!
ダッシュ、野生の勘、ほらほらぁ、突進なんて当たりませんにゃーん!
情報収集、向こうは数の利がありますが、ユキは“読み”がそれなりに強くてね!
さあさ、今日は全員大満足するまで遊びますよー!!
■ヒャッハーーーーーーー!!!!こいつが|犬《ドッグ》 ・|猫《キャット》 ・|戦争《ファイト》ってヤツだァーーーーーーッ!!
「ヒャッハーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
パチンコで射出されたイッヌが地平線の彼方から帰ってきた。
いやちげえ、ちげえわあれ、イッヌにまみれてイッヌにしか見えないけどよく見るとケルベロイッヌだしそもそも生きてるイッヌではないっていうかぬいぐるみのイッヌである。
「…ッ!!!」
カッポ!とヘッドパーツをはずしコードを解除して現れたるは頬が意味深に紅潮した美少女。
透明少女になってちょっとイッヌたちと一緒にイッヌ団子になってパチンコから射出されていたユキ・パンザマスト(暮れ方に咲う・f02035)である。|猟兵《イェーガー》 だった。
「は、はぁ…はぁ…っ!」
鵺のテンションはクライマックスハイであった。
だって仕方ないのだ、ユキは鵺である。いろんな動物があっちゃこっちゃでにゃにゃんがにゃーんなのである。語りきれてないけど一章でわんわんたちとボール遊びにかけっこに興じていたらかわいい白いあのコにこっちにおいでーなんてパチンコ出されて招かれちゃったらただでさえケモノ寄りに煮えてた理性が蒸発して獣の本能が官能になって飛び込んで射出されるしかない。すごいたのしかった。あとは理性が吹っ飛びすぎてかわいいあのコに“だ”のから始まる形容詞に“き”で形動詞をくっつきけた一言をうっかり叫んでいないことを祈る。その可能性が犬シナリオだけでにワンチャンありそうでまだこの数分の記憶を振り返るのはやめているくらいである。いってませんようにいってませんようにお願いしますよユキの本能ほんとほんとにマジでそういうのはほんとアドリブでも許されない鬼の所業ですよ頼みますよユキの本能。言ったところで透明になってぬいぐるみだったので届く可能性は薄いということに気づかないぐらい少女の理性はまだ日本人の推奨塩分量並みに薄かった。女性は6.5gです。ちなみに平均したに日本人の接種量は10gだそうです。小さじ2杯。
ところでぬいぐるみのおかげで汗をうすらかき全力疾走のおかげで赤い顔に荒い息がこんなにナイスセクシーなのになんでこんな状況がトンチキなの?
「あららら……なんてこっでしょう…!」
ユキはやりとげた顔で汗を拭う間もなく顔を輝かせた。
状況は相変わらずなんもわからん。全然理解できんしぶっちゃけ多分多分脳直ノリでぶっ飛ばしていいやつである。だってきっとこの時点でアドリブの字数がちょっとしんじられないくらい多い。どうした?あ、いつものことか。
「なんとまあかわいい、でっかわんこ共っすねえ……!!」
こーんにーちわー!!と吠えると|うぉーーーんばうばう《こんにちわぁーーー!》って帰ってくる。かわいい。 かわいい。ちょうすなお。
「ぃよっしゃぁッ!!!!!」
ユキは勢いよくケルベロ着ぐるみをぬぐ。
蒸された体に弾ける汗、やや薄い胸が汗ですこしばかり際立つ。本来ならスローモーション400字ぐらいでお届けしたいスーパーナイスセクシーチャンスなのにトンチキシナリオのせいでこの100字弱で省略されてしまう。こんなに!!!こんなにセクシーなのに!!!
「此処で遭ったがケモ友たちよ!!!」
しぱーん!!
名だたるボクサーの上着よろしく投げられるケルベロぬいぐるみ背後でキャッチするブルテリア3匹「センキューフレンズ!」もちろんユキはあの子の影響もありお礼を言うことをもう忘れないッ!
友になるのが早くねえかという気もしなくもないがこっちもあっちも|やる《遊ぶ》気満々なのだ。もうケモフレンズだった。ユキさんの理性はまだ当分帰ってきそうになかった。
「いっちょ遊んであげようじゃないっすか!!」
ユキは両足を肩幅に開き左手は腰に当て、右手の人差し指を立てキレッキレの仕草で唇に当てる。「化術ッ!」
そう!
|日曜朝九時半、戦隊モノ《ロボットハマりの元祖》に対抗するにゃ、やっぱコレッ!
「へぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜んッしんッッッッ!!!」
そのまま美しいフォルムで右手の人差し指を水平に移動、腕を開く形で真横に伸ばし、天へとかかげていく。
えっなにこのモーションポーズが必要かって?いらないよ?バッカお前|男の浪漫に野望ぬかすねい!《そういう話じゃねえだろうがよ!》
見よ!しっかり良い子で待つ|でっかいわんわん《大きなお友達》たちを!
そうともこうでなくてはならないのだ!
――ユキの真上、天を刺した指、お気に入りのネイルが今日も輝くッ!
「|堂 廻 目 眩 《トラツグミ》ッ!!」
かくて、変身。
少女を取り巻く風一条舞い上がったかと思えば竜巻となり、それは人には余る大きさへと変わる。
化術によるユーベルコードの変身。だが本日は|日曜八時半《女児向け》ではないので変身シーンのこまかいときめき溢れる描写はお預けだ!気になる良い子のみんなはまた次のトンチキdセクシーガチャに期待しようッ!クソッどうしてこうしてまた一つセクシーチャンスが潰れるのかッ!
「|わん《イッヌ》に対抗するにゃやっぱコレ!」
現れるのはつるりと丸い頭部をしたロボのネッ――えええええええまってぇえええええええユキ・パンザマストさんまってええええええMSまだ捕まりたくない!まだ捕まりたくない!ロボのネッコだけは!ロボのネッコだけはーーーアッくそすぐ上のタイトル!タイトル!!「おっとぉ」ユキは組み上がる自らのうち、素早くイメージで指を弾く。
「青じゃぁありません青じゃないない」
素早く色は黄と茶の縞、タビーとも呼ばれる虎模様。セーフッ!
さらにもうひと弾き。きらり輝くキュートな立ち耳が添えられる。
「今日は青い耳なしネッコじゃございません!」
ッッセーーーーーフ!!!温情!!!温情でセーーーーーフッ!!!
続き両手で二度のハンドクラップ。顔に刻まれるウィスカーパッド。ちらり覗くはかわいい小型の牙、そしてかわいくない砲身が突き出される。「ロボにはロボをぶつけんすよォ!!!!」
「降臨ッ!」
上にはまつ毛のペイントを添えられ兼ねたつぶらな瞳、もといアイカメラがウィンクッ!
「小回りが効くぅ〜〜〜〜〜〜〜〜ッネコミミ小型戦車ッ!!!」
ちょこん、と砲のねもとに添えられた椿の花がほこらしく揺れる。
「ヘイカモ〜〜〜〜〜〜〜ンッッ!!!」
砲門から吐き出されるのはペイント弾である。ばちゅん!ばちゃん!イッヌ戦車にいくつかがヒットして、戦車の何台か反応に遅れた一瞬を、小型|ネッコ《ユキ》戦車 はかけていく。
「おっに♪さっん♪こっちらァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
ユッキ戦車はイッヌ戦車と比べてひとまわり半ほど小型である。その分車体が軽く――ユッキ戦車はいぬせんしゃの間と間、キャタピラがこすりかけるギリギリを走り抜ける。
きゅら?いぬせんしゃのキャタピラが唸る。
「追っかけっこし〜〜〜〜〜〜〜」
ぐるり、とユッキ戦車はいぬ戦車から離れながら首もとい砲頭部をぐるりと180度回転させる。え?ネコの首は180度まわらない?いやだなあ、ユッキ戦車は猫型ですがユキは鵺なので梟もきっと入ってるんですね!そゆことでお願いします!
「ましょっ!」
次弾、第三弾、続けてヒット!
通信が入る――わふ!!!ユキは答える!にゃう!
そうなればもう、心はひとつであった――…!!
……。
ひとつにしていいんかな、それ――……?
あーもーほらいぬ戦車の一台がたまらずハッチ開けて帽子被ったイッヌ(シュナウザー)がユッキ戦車を見ている。
ええい実際どっちがいいのかとかさておき、きゅら、とキャタピラは唸る。
きゅら、きゅら、きゅらららら!!
わふ!!!!!イッヌのかわいい吠え声が響く、わっふわふ!!わうわう!!!!!
身を翻すことも惜しい、いぬせんしゃによるきゅらきゅらキャタピラ突撃攻撃――!
「おおっとぉ!!!」ユッキ戦車これをすかさずダッシュ、もとい加速と小型を生かしたドリフトで直角に曲がって避ける。曲がる方角?野生の勘だ!
「とっつげっきなんてぇ、あったりませ〜〜〜〜ん!!」
横っ腹をさらしたいぬ戦車に再びペイント弾をぶちあてる!さながらキャット・ファイトの容赦なしである。わぉん!通信越しの悲鳴が心地いい。
群れの絆でつながったイッヌたちのイッヌ戦車である。
一台がやられれば次の台も――…。
|わんわん!わわわわふぅーーーーー!!《ぼくもぼくも!まてまてーーーー!!》
ちげぇな、これ。
「さぁさ良いこも悪いこも来来、いらっしゃいませ!!」
にゃおん!にゃおん!
ユッキ戦車はそれはそれは楽しくにゃんにゃんと声を上げる。
普段のユキからすればちょっと予想がつかないほどのハイテンションだった。どうも煮えた理性はカラカラになってしまったらしい。
これはユキさんの理性、今日はもう帰ってこないな。
大丈夫かな?あとではずかしくってってソファに直角に刺さらんかな?
「今日は全員満足するまで遊びますよぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
まいっか!かわいいから!
大成功
🔵🔵🔵
レモン・セノサキ
全面お任せ&色々ご自由に
【VitA】
なんやかんやでやっと到着したわけだ
オブリビオンにいちいち驚いてたら埒が明かないぞナニアレーーー?!
ネフィ、違う、あれは犬じゃなくて戦車!
……え、何?
戦車はわおーんて鳴かない?
それはそう(真顔)
ああもう、ディープラーニングのデータにノイズを混ぜるんじゃぁないよ!
調整された「トラップダイス」をぶん投げる
立ち込める煙は……何だかいい匂いがするぞ?
あ れ 犬 な の ?!
ワラワラ集まっちゃった犬目掛けて【指定UC】!
犬から犬が射出されたね、ソーダネ
えぇと、ネフィ?
ネフィサン?
その道の果ては|魔法《ノウキン》少女よ?
ネフィ・ペルバベスタ
全面お任せ&色々ご自由に
【VitA】
パンダで来ました(満足顔)
では早速敵を……え、え、なにあれ?!
い、いぬですね?
口から大砲出てますけど!
え、戦車ですか?
で、でも、いま「わぉーん!」て!
レモンセンセの「トラップダイス」を調整します
解析された敵データを元に、相手に一番効果的な煙を
……いぬ!まっしぐら!です!
な、7割いぬでした!
残りの3割は……ば、バグってて読めません……
わたしも【指定UC】を発動です!
|汝のあるべき姿《ガラクタともふもふ》に戻れ!
いぬぅぅぅ、せんしゃー!!(杖を振り下ろすPOWっぽい音)
●3分200円(※12倍速ブーストにつき3分2400円)
「ハッァ〜〜〜〜〜〜……かわいい〜〜〜〜〜……」
レモン・セノサキ(|Gun's Magus《魔砲使い》・f29870)の高性能一眼レフから今まで聞いたことがないほどの連写音が鳴り響いていた。
「あ〜〜〜〜ほんとうにかわいいなぁ〜〜〜〜〜〜〜、とぉ〜〜〜〜ってもかわいい〜〜〜〜」
ちなみにこの連写、手作業である。近年カメラには一秒間に何十枚を自動で撮影する連写モードが搭載されているのだが、このモードに頼らぬ暴力的な連写を手動で行ってた。
そう……手動。手動である。
レモン・セノサキはいわゆる電脳魔術師としての技能を有する。マジのおマジのおおマジで本気を出せば操作せずに干渉し一眼を固定したまま安定的な連写を確保することもできるはずである。
特に高速移動しつつ高速移動するイッヌの群れをかきわけ我が子の姿を捉えるのは至難の技であるのに強く気高く揺るぎない意志で自らの手で持ってシャッターを押しまくっていた。
「はァ〜〜〜〜いやほんっとなんであそこでパンダえらぶのかなあ〜〜〜かんわいいなァ〜〜〜あ〜〜〜んなはしゃいじゃってさァ、やっぱさぁ〜〜〜なんだかんだいって子供AIっていうかさァ〜〜〜〜〜純粋でピュアで」純粋とピュアは同一単語ですよレモンさん。「さっきマジのおマジのおおマジとか言ってたやつに言われたくないなァ〜〜〜〜…」逆襲された。
しかし、この超親バカモードがレモンの本性なのかと言われれば、いささか首を捻るところではある。無論、視線のさきにいる“我が子”……レモンを“きょうかん”と呼ぶ“生徒”を持ったのは彼女が初めてである。長く孤独を味わい“我が子”の出自に思うところもあればやや狂気じみた行動はおかしくはないかもしれない――
不意にレモンの手元でアラートが鳴る。
「おっと」二度目の容量上限通知であった。レモンはカメラを開きメモリ・チップに手をかける。
「フフ…」
――といいたかったけどやっぱおかしいっすね。
だってレモンの目が死んでいる。もちろんレモンとて過酷な運命を背負った身である目が死ぬことの一度や二度あるだろう。なんだったら長期死んでたこともあるかもしれない。しかしその際にはここまでの諦念はあっただろうか?今レモンが騎乗しているのは古き良き百貨店などの屋上に見られた一人メリーゴーランドカルーセルである。少し朽ちた色味をしながら女児向けの可愛らしいデフォルメデザインの白馬に身を預けて死んだ目をさらしながらカメラを持っている様はさながら現実逃避する少女としてむしろレモンの方が被写体じみた構図を持っていたアーいい!こいつは浪漫ですよ大将!性癖にキュンときますね!
………。
MSの性癖はさておき、繰り返しになるがたとえレモンの目が何度かにごったことがあろうともこのような濁り方はおそらくなかったのではないか。若干何かがメルトした表情に滲むのは若干の怯えだ。
そうしてレモンがメモリチップを変える作業のために神経質なほど響いていたシャッター音が途切れてしまうことで、逆に響く音があった。
――ピロリン!リリン!リリリン!!
「ア゛ーーーー!!!!」
とうとうレモン・セノサキが壊れた。いやシナリオ始まってから既に壊れてた。おっかしいなあ、まだアドリブでプレイングに入ってないのに。
レモンは素早くカメラを置いて両手で耳を塞いで大声を上げる。「アーーアーーーアーーーーー!キーーーコーーーエーーーーナーーーイーーーーーー!!!!!」
叫ぶレモンのポケットで引き続き音が鳴っている。
ピロリンピロリンリリリリン!
何の音か?
|電子決済《・・・・》 の音である。
「ちっくしょおおお!!!!!!」
ぎりりと奥歯を噛み締めながらレモンは呟く。「イィイイイイジィイイイ〜〜〜…あいっつ…覚えてろ……」天を仰ぎ見ればあの膝から崩れおちる男が笑顔でかぶりものの犬耳をぱたぱたさせていやがった。「ネフィには世界の広さを教えようと思って選んだわけだけど、トンチキワールドを教えようと思ったわけじゃないんだよ…!」どう考えてもあれは反省してない顔である。ごめんね☆彡って感じである。なんだその輝きに満ちたごめんねは!!!!!!あやまるときはまずごめんなさいだろうが!!!!せんせいめちゃくちゃおこだぞぉ!!!!!!!
レモンの瞳から失われていた光は怒りですっかり戻っていた。
|現在進行系電子決済《ばいばいマネー》 からの現実逃避。
今までのデッドアイはつまり、そういうことであった。
「くっそぉ……電子決済にチャイルドロックってあったかなあ」
唇をひしゃげながらレモンは一眼レフを丁寧にしまいながら今までカメラをむけていた我が子を見つめる。「ロックかけたところで秒突破されそうなんだよなあ……」
レモンの口座から無邪気に現在進行形で電子決済し続ける我が子、我が生徒。
……どう考えてもはしゃいでいるドヤ顔はなんだかんだ言ってやはりかわいい。
ぐねぐねにうねっていたレモンの唇は苦笑の形に収まってしまう。「ま」
「ひとまず全部終わったらお説教とかる〜いバイトで済ませてやるかぁ……」
「ここが、わたしのッ…しぶかわいかほ……ッ!!」
ネフィ・ペルバベスタ(|C:F-A・BSs《いつか焔を担う子》・f37243)は風を浴びながら目をらんらんと輝かせていた。
ネフィはサイキックキャバリアにインストールされている戦闘補助AIである。戦場を駆ける兵器とその搭乗者のために生まれた仔だ。縁あってレモンの機体“BASTET”へと引き取られ、レモンを補佐しながら、彼女の子・生徒として、せかいのさまざまなことを知ってほしい、とこうしてレモンと共に世界に飛び出している。
……飛び出したさきで最初にやらかしたのが親の口座から強制自動電子決済の鬼はどうかしてるんだよなあ……。
だがネフィに言わせればこれは必要な出費である。
ゲーセンで遊んだり何もなく空を自由に飛ぶのと同列に並み居るわんわんぶっちぎってレースで最速目指すよと言われた矢先にはちょっとさすがに想定外すぎてどうしようかと一瞬バグりかけたが、レースとは戦争と置き換えれば理解は早かった。
愛機を選べと言われたときの高揚は、きっと人間でいうところの胸の高鳴りだ。
ちょうど前日にレモンのスマホから豆腐屋の息子が峠最速をキメる漫画をダウンロードしたおかげもあった。
最速を、キメる――毎日顔を洗う…ことはネフィはないので毎日行うデバッグのような、水もこぼさぬ運転でッ!
そうしてネフィは自らのハチロクと目が合った。
――…パンダ。
パンダ。熊猫ともかかれる通りネコ科肉食目クマ科。可愛らしい愛玩動物の代表的フォルムであり、その性格は基本的には大人しくて恥ずかしがりだ。
正しくはパンダそのものではない。ルール・レルよりお借りした現地の特殊乗用車である。
古くは百貨店の屋上や遊園地のはしに設置され子供らを乗せて楽しませる遊具だったという。
お金を入れると3分だけ音楽を鳴らしながら動いてくれるのである。ハンドル付き。
………。
人々に愛されるキャラクターが人の手によって地を駆ける玩具となっているということは――これはもう、決まっていた。
絶対、速い。
……速くねえんだよなあ…。
いくらレース用トンチキカーだからって対象年齢3歳からに尽くされた玩具安全基準法は伊達じゃねえのである。
しかしむべなるかなネフィ・ペルバベスタはレモン・セノサキの生徒。
通らぬ|道理《現実》を|無理《魔砲》で通す女の生徒である。
かくて。
かくて、戦闘補助AIにより音楽を鳴らしながら爆速で走るパンダが誕生していた――…!
敵機のハッキングなどの方向にも成長できるようデータ吸収中のためおそらく口座のチャイルドロックが世界で一番無意味な幼児は無理を通した。
3分200円は必要経費である。まあハチロクが峠最速を目指すなら必要速度を出力する必要があったため内部データに干渉して爆速にギアを上げさせてもらったおかげで3分24000円レベルにメーターが回っているが必要経費である。たぶんそう。きっとそう。あんた正気?おなじ戦場を駆けている別所に引き取られ今車に入れられている同胞AIより通信が入ったが、ネフィの「わたしは必要であると想定します」とデータ付き主張で「ま、3分200円で1kmじゃね」という同意も得ている。「レース用なので時速1kmではありません、10kmです」「カタツムリじゃん」タルボシュにいるときから彼女の主張はストレートである。ちょっとくやしかったので猫の時速は48kmだそうですと言ったらあたしは猫で戦わないわよバカと叱られた。
故に3分2400円は妥当である。
え?ここまでの作戦経過時間?知らない子ですね。だいたい見てくださいあのMS、9月10日って言ってたのに10月19日に筆取れるようになってますからね。
レモン先生、試練の予感――…!
シナリオ後の次回予告はさておき今は依頼の遂行である。
先に進行していた輸送チームの一員からの通信にレモンはもちろんネフィも表情を引き締めて集中する。
「“――進行方向より一時の方向、砲弾、来ます”」ネフィが素早くアナウンスし「はいはいっ、りょーかい!」レモンが応えてハンドルを切る。ハンドルっつーか手綱をぶん回す。砲弾は二人よりややずれたいちに着弾し「うっわ」地面をめり込ませて爆炎をあげる。「ネフィ・ペルバベスタ、先に会敵します」直進したネフィが告げれば「了解」レモンは軽く応える。
煙、砂埃――その向こうから現れる、兵器――…その名は。
「え、え」ネフィは思わずハンドルから手を離す「な――」
「なぁにネフィ」レモンもまたユニコーンをコード操作でブースト炎を翼のように上げて煙を払うと同時に「オブリビオンにっ」ネフィの隣に到着して「いちいち驚いてちゃ埒が明かな」
|「ナニアレーーーーーーーー!!?」《「なにこれーーーーーーーー!!?」》
いやあの、なにって
「“|うぉんっ《いぬです》!”」
|いぬせんしゃの群れ《いっぱいいるでっかいわんわん》ですが、何か――…!
「イィイイイイイイイジィイイイイイイイイ・ブロォオオオオオオオクンッッッッッッッハァアアアアアアアアトオォオオオオオ!!!!!!!!!!!」
レモンの喉から荒野に放たれた本日二度目のシャウトを、きっと誰も責められない。
「戦車って言ってたじゃん!!キミ戦車だって言ってたじゃん!!!!!」青空に浮かぶあの男がやっぱりかぶりものの犬耳をぱたぱたさせているのが浮かぶ。
「せせせせんせあれはそういうなななまえですか!?!?」これは動揺のネフィ。
「違うねえええええええ!!!!!!!」これは憤怒のレモン。「でもイージー許さねえ毎度キミの依頼は説明がちょーーーっと足りなくないか!?」ごめんね。「キミねえぇええええええ初手オブリビオンがトンチキは可哀想でしょおおおおおおおお!!!?」それはほんとうにそう。ごめんて。
「せんせ、レモンセンセッ!?ここここれはオブリビオンですよね!?」
いまだにトンチキショックから立ち直れていないネフィが悲鳴のように質問をあげる。
そりゃそうである。ネフィは戦場に向かうはずだったところを宿業の運命と自己否定にさらされレモンと生き抜きそして救われたシリアスもシリアス、どシリアス出身者。
トンチキの水温と気圧に体も心も追いつくわけないのである。いきなり激温に晒してごめんね。
これがオブリビオンかそうでないかといえば――
「“|わぉんっ!うぉおーーーーん!!《はいっ!いぬです!!》」
「!?!?いぬですか!?」
――|いぬ、です《よくわかりません》 ね――……!
「口から大砲出てますけど!!?!?」
「“|おんっ!!おぅんっ!!んおんっっ!!!《はいっ!いぬ、がんばったじまんの一砲です!!》 ”」
「????いぬ????」
あーあ、だーめだネフィちゃん。もっていかれてる。メンタルを。|いぬ《トンチキ》 に。
「いいやッ!!!違うッ!!!!!」
ところがどっこい、さすが歴戦の猟兵、きっとこんなの比じゃねえもっとキレッキレのトンチキシナリオの数多を潜ってきただろうレモンは顔つきが違った。え?これがファーストトンチキシナリオですか?うっそだあ。
「あれは犬じゃなくて戦車!」レモンは冷静な指摘を張り上げる。
「せんしゃ、せんしゃ、戦車…!」ぐるぐるとうずまいたネフィの眸がまともに「あれは――戦車ッ!」
「“|わんっ!!!わぉーーーーーん!!《はいっ!いぬせんしゃです!!》”」
いぬがぜんぶ台無しにしていった――…!
「れもんせんせぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
おかえりうずまきアイズのネフィ。「いまっ!“わぉーん”って!!!」そんなキミもかわいいぞ。「でもっ!いま!わぉーんって!!!」
「“|おん?おんおんっ!わぉーーーん!!《はい?いぬせんしゃです、わおん!!》”」
そしてど混乱のネフィにトドメをぶっこむ、いぬせんしゃ。デザイン上つけなかったのだろうが、尻尾があったらきっと誇らしげにブンブン振っていたに違いない。
「せんしゃは!せんしゃはわぉーんって鳴きません!!!」
「それはそう」
それはほんとうにそう。
レモンはネフィの至極ごもっともな指摘に真顔でおもわず頷く。「それはほんとうにそうなんだよなあ…」それはほんとうにそうですよねえ……「なんていったらいいのかなあ…」思わず遠い目になってしまう。荒野の風が爽やかだ。そこの間も待ってくれているいぬせんしゃは本当に躾のいきとどいたいぬだった。
「いぬで戦車だけど戦車で犬でさあ……」
レモンの手が思わず土瓶をこねる手つきをする。
「“|わんっ!わんわん!わぉぅううーんっ!《そうです!いぬです!いぬせんしゃです!》”」無邪気ないぬがその通りなんだけど全く理解できない主張で作った土瓶を台無しにし、
「いぬ、せん…いぬせん…???」
だいなしにした土瓶と一緒にネフィの知能が回っていた。
「あああああああもおおおおおおおお!!!」
レモンがキレた。
いやシナリオ当初から割とキレッキレにキレていた気がするがぐだぐだの予感に倍キレした。「もう!!こら!!いぬ!!!!」
思わずいぬせんしゃに向かってキレた。
「|わん!!!!!《はい!!!!》」
うーんいい返事だ。
「もおおおおおおおおおッ!!!」レモンはポケットに手を突っ込む。
「ネフィのディープラーニングのデータにノイズを混ぜるんじゃぁないよ!!!!」
親として当然の主張をし「“|わっふーーーー!!《いぬです!!!》」「メッッッッッッッッ!!!!」 あからない埒をブチ破るべく強硬手段に出た。
ポケットより引き摺り出したトラップダイス。
時限式発煙筒をすぐさま起動させ――「ネフィッ!!いうこと聞かない!!データ解析ッ!煙調整ッ!!!」
わおんわおん――みえません、せんさーきりかえ、せきがいせーん、せきがいせーん!などとほえているいぬせんしゃを横目に的確な指示をだす。「ふ、は、はぁいっ!!」
データ解析となればネフィの十八番である。特にその体はサイキック粒子による端末であり、その分析機はキャバリア・BASTETのそれだ。
故に解析は余程高度なジャミングないしは偽造がなければ容易に正しきを暴き出す。
「はじめからこーすりゃよかったんだよねえ…」
なんでいぬの口車っつーかいぬぐるまにのっちゃったかなあ、レモンは小さくぼやく。
「解析完了――煙、最も効果的成分に調整します」
AI然とした口調でネフィが伝えるとともに、発煙筒の煙が解析結果からネフィより放たれるサイキック粒子により変容を開始する。
「あいあい」おおかた、目眩しか電磁工作するナノマシンだろう――と、レモンはたかを括っていた、のだが「ん?」鼻をひくつかせる。「これは……」
「“|わぉうんっ!!!《いいにおいがします!!》 ”」
「あー、うん、いいにおいがするね……」レモンは思わず唖然と呟いてしまう。「あの…ネフィ・パルバベスタさん……?」ついでに敬語で呼んでしまう。
「か、かいせきけっか…により、てきごうされたけむりは」
きゅら。
音がする。
きゅら、きゅらきゅらきゅらきゅら――…!
煙につられてあつまる、いぬせんしゃたち。
「いぬ、まっしぐら、です……!」
「ハァアアアアアアアアアア!!!!!?!?!?」
レモンさん、こんなに叫んで明日喉大丈夫かなあ。
「“|わおーーーーーん!!《いいにおい!!》 ”」「“|わんっわんわんっ!!《すてきなにおいです!》 ”」「“|わんわんわん!!!《いぬ!いぬこれすきです!!》 ”」
あーあ、いぬせんしゃ、むれのきずなでいいにおい共有してすげー来ちゃってるよ。
「な、七割いぬでした――…ッ!!!!!!!!!!」
「ウ ッ ソ あ れ 犬 な の ?!」
「「「「「“|わんっ!!!わんわんっ!!《はいっ!!!いぬですっ!!》」」」」」
動揺のふたりをよそに一斉に吠えるいぬせんしゃ。
「あとの三割は!?」これはついうっかり気になって余計なことを尋ねてしまったレモン・セノサキさん。
「ああああああとのさんわり、バグってて読めません」そしてこれはもうなにもわからないトンチキ初心者、ネフィ・パルバベスタさん。
「どうなってんだバステトおおおおおおお!!!!」
ひとの混乱ってどうしてこんなかわいいんだろうね。
「ええいこういう時は逆だ!逆に考えるんだ!!!」
奇しくもいぬに玩具を取られた少年に泣きつかれた父のセリフをなぞりながらレモンはコードを発動する。「集められてよかったなって考えるんだッ!!!!!」違う点といえばもう大混乱ってことぐらいだろうか。だいぶ違ぇな。
「ええぃもーーーーっなんとかなーーーーれッ!」
あ、レモンさんもヤケクソだわ。
構える2丁拳銃|Sforzando.275《スフォルツァンド》。
「コード・|爆裂する隕石の魔弾《メテオバレット》ッ」
放たれる弾丸は接敵とともに隕石の訪れを想起させる爆発をもたらし、燃え盛る。
いぬせんしゃの何台かがぶつかり合い、ひっくり返る。そしてばくはつするせんしゃ!楽しそうに射出されるイッヌ!!!!
「レモンせんせえ〜〜〜いぬせんしゃがいぬでいぬですう〜〜〜〜〜〜」
「そーだねー犬から犬が射出されたね、ソーダネ」
レモンは思考をすっかり放棄して次から次へと撃ちまくる。「はいネフィ、ボケには突っ込まない」レモン・セノサキ本日二度目の死んだ目だった。「つっこまない!?」ネフィはまだついていけずにあわわと両手を無意味に動かす。「どんどんいくぞおー」そして連射をつづけるレモン。完全にツッコミ疲れの顔をしていた。
「うううう〜〜〜〜〜」
ぐるぐる目のままネフィは両手で自らの両側頭部、耳パーツをおもわず掴む。「ばすてとー…」神は答えない。非情である。
「ううう、わわわわわわかりましたっ!!」
そしてネフィは決意する。
体に走るノイズ――握るはバステトから受け継ぎし杖、世界の根源にすら接続するサーバーより流し込み、背より華のごとく開くは白き翼――まって、ネフィさんまって「ちょネフィ!?」あ、死んでたレモンさんの目に光が戻った「何!?」レモンさんも同じご意見ですか、私もです。「ちょ!?いきなり!?いきなりそれ!?」いいんですかそれで!!!ネフィさん!!いいんですかそれで!!!なんかそれすっごいシリアスで大事そうなマジもんのガチコードなんですがほんとうによろしいんですかこれトンチキシナリ
「|CODE:DEFREEZE封印解凍《コード・デフリーズ》」
アアーッ変身完了ッ!!!!!!
神代なるものは、きっとこんな姿をしているに違いない。
瞳の紫は神より受け継いだ色であろう。はためくころもはデザインこそ古けれ、たたえるは、神威――…!
きっとなべては、膝をつき首を垂れるべきなのかもしれない。
しれないんだけどさあ
「“|わぅーーーーーーーー!!!《わぁーー…きれーーー!》”」
いぬなんだよなあ…敵…。
いぬなんだよ…敵…ッッ!!!
思わずキャタピラを鳴らし突撃をかますいぬせんしゃたちだったが、ネフィはその翼でゆうと空をゆき、いぬせんしゃを見下ろす。
「やっぱり、いぬです……」
これは半泣きのネフィたん。
「うっぅう〜〜〜〜〜〜〜〜!!!せかいいいい〜〜〜〜!!!」
涙目、かわいいね。
「えぇと」レモンは思わず射撃の手を止めて宙にいる我が子を見上げた。「ネフィ?」
いまだいとけなきAIに|世界の深淵《トンチキシナリオ》は刺激が強かったね。
涙目のネフィさん、大きく杖を振りかぶった。
「ネフィさん?」思わず呼びかける。「その杖をこれからどう使うのかなー?」レモンセンセその使い方知らんぞー。
バステトからのエネルギーがネフィの杖にチャージされ、小さな杖を軸に大きなサイキック・ハンマーがうかびあがる。「ネフィサ〜〜〜〜ン???」
「|汝のぉおおお《ガラクタ》|あるべきいいいい 《と》|すぅうううがぁああああたぁあああああ《もふもふ》 にいいいいいいッ!!!!もっ どっ れ ぇ え え え え え え え え え ッ ッ!」
杖を振りかぶった右手に左手を添えて。
はい。
それではご唱和ください。
「いぬぅぅぅ、せんしゃぁーーーーーーーーーッ!!!!!」
神威、鉄槌!!!!
いぬせんしゃ、爆発!!!!
そしてあがるいぬはなび!!(※無傷)
「ネフィ」
レモンの呆然とした声に答えはなく。
あるのは次々|神威鉄槌《テンパリアタック》を振るう轟音のみ。
「その道の果ては|魔法《ノウキン》少女よ?」
魔砲ブッパガールがなんか言ってますね。
いぬはとってもたのしそうに吠えた。
|わん!!!《ヨシ!!!》
ほんまか?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セラ・ネヴィーリオ
【WIZ】
徒 歩 で 来 た よ (メカニカル外骨格装備。機密保持のため到着時爆散)
蒼然と並ぶ戦車…
つまりお行儀よく並んだわんこたち…
かっわいーーーーー!!!!ねえねえねえちょっとモフらせて?
えっ戦車の中にいるから無理?
じゃあ戦車ばいばいしちゃえばいいか!出遅れ取り戻すよーれつごー!!
ぶらり戦場てくてく旅
怖くないよー一般通過猟兵だよーもふるよー
あっ砲身かっこいいねえってうわーーー撃たれたーーー!!
それじゃ飛んでくる砲弾は【夜花残香】で吸い込んでー
『明之尾』から戦車にお返し!
砲弾効かないなら轢いてくるかなあ…
戦車吸い込むのはちょっと…桜の損壊とか環境団体が厳しいし…
うん、僕が隠れよう!
夜花残香に退避&一瞬で帰還、戦 車 の 操 縦 席 に
こーんにーちはー!わーいもふもふもふもふ!
ねえねえ僕にも操縦させて?ふむふむ、ここをこうして、こう!
…へ?自爆機能?すごいね!そんなのまで作れるんだ君たt
💥BOMB💥
わんこさんと夜花残香に退避ー!
あ、一緒に遊ぶ!ほーら枝とってこーい!
※何でもばっちこい
■(世紀末の)化学の限界を超えて地平線の果てから(徒歩で)来たんだよ おやつはついてないけどできればほしいな
「ヒャッハーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
あれっ二章一発目のリプレイでも書いたなこのセリフ。おっかしーなバグかこれ。
と思いかけたがケルベロわんは地を駆けて来たがこちらは天から来た。
すなわち星――流星であるッ!!
正しくは
「さいッッッこーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
メカニカル外骨格を装備して流星のごとき輝きをまとった豪速の聖少年ならぬ星少年――セラ・ネヴィーリオ(巡り星の歌・f02012)ってこと・さ⭐️!!!
星じゃなかった。|猟兵《イェーガー》だった。
……もはや巡り星の歌っつーか流星特攻野郎の歌である。
「“|わっふ!?わふわふぅ〜〜〜〜〜ッ!?!?《なに!?なになにですか!?》”」
星のかがやきにおもわず天を仰ぐいぬせんしゃ。
「“|わぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んッッ!《おほしさまだぁ〜〜〜〜〜〜!!》”」
そして遠吠え。
「ヤッホーーーーーーーーーーーーーーー!!」
コールされたらレスポンスはライブの基本!海トンチキの経験を活かした少年は輝きのなかで手を振って応えるだけでなく椿のあのこから学んだ|ウィンク《ファンサ》を忘れない。
「みんなァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!げんきぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
きょうのライブ会場はここだねェーーーーー!?
もはやライブヤクザと化した少年は一曲歌う前に流星着弾。
――爆発ッ!!!
えっ。
爆発!?!?
えっちょまちょちょちょちょっとまって巡り星の歌が特攻流星の歌はまだいいとして歌わなかったら歌じゃなくない!?ただの流星特攻野郎じゃない!?ちょっとォ!?リプレイここで終わっちゃわない大丈夫!?!?!?
「フゥ――…ッ」
あ、さすがに無事だった。
カッポ!爆炎を背負って現れた少年は満足に満ちた息をつきながら安全確保用ヘルメットを外す。
キラッキラに輝いた瞳、頬は紅潮、若干かいた汗がナイスセクシーあれこれやっぱ2章最初のリプレイでも書いたよどうして天丼してるのかなセクシーの特権は少女だけじゃない少年だからこそ持ちえる色気っていうのがあるのさどこにある、あるさここになッ!!
「たっっっっのしかったぁ…!」
セラのテンションはクライマックスハイであった。
いやだって仕方ないのである。セラは清く正しきピュアハートの少年だ。さんざんっぱらボール投げ回ってキマったテンションで巨大パチンコをご提供したら一緒にきた椿のあのこがキマりきったわんわんと一緒に射出されて地の果てまでとんでっちゃって帰ってこないからもうそんなの絶対絶対楽しいじゃんぼくも今行くね!!!ってセラも飛び込むしかなかった。ちょうたのしかった。たのしかったしまさか以前お世話になったトンチキメシレースのグッドモヒカンの皆様のところにつっこむと思わなかったうえにみんな元気そうでほんとよかったしデスロケットメシデスレースの研究してるところなんて見せてもらえると思わなかった。音響トラックがあんな変形と打ち上げするところなんか少年としては観客席にお邪魔するしかなかった。ちょうたのしかった、ほんとたのしかった。解説さんが新たな高度を獲得してた。コードで帰ろうとしたら、|少年《ボーイ》、のりたくねえかい…?なーんて言われてデスロケットメシデスレースの試作品をチラつかせられたらそりゃちょっとコード使わずにおかりするしかないだろう「2分5秒…ッ!」時計を確認し頼まれていたタイムを確認。狙い通りどころかそれ以上のベストタイムだ、あとで報告しなきゃ…!
惜しむらくは狙いが外れちゃって椿のあの子と合流できなかったことだが戻り方先方にめっちゃ走ってるけるべろわんわんを見かけたのでオッケー!ということにしておく。オッケー!!あとで一緒にグッドモヒカンさんのとこに行こうね!
「この秘密兵器はそりゃあそう易々と晒すわけにはいかないよね…!」
爆散の炎に照らされながら、ふかい納得と機密保持のためとはいえ爆散するしかなかったメカニカル骨格を惜しむ憂いに彩られ吐息たっぷりでこぼれた言葉は白い少年が発するにはあまりにも背徳と廃退をたっぷりと含んだ熱を纏いこんなにもナイスセクシーなのにトンチキシナリオのおかげでやはり100字弱にまとめられてしまう。クソッ!!こんなにセクシーなのに!!次回のトンチキセクシーガチャにご期待ください!!またトンチキするつもりなんですかこのMS!
爆炎をせおった流星の墜落と少年の爆誕にさすがのいぬせんしゃもちょっと|くぅぅん…?《どゆこと…?》 するしかない。思わず落ちてきた少年をきゅらきゅら囲んでしまう。舌があれば舐めていたのだが戦車の中なので砲身しかなかった。
「お ま た せ」
ほろびにおとずれたすくいのような輝かしさで、セラは微笑む。
いえ、彼が背負ってる炎今さっき彼が自分で立てたやつなんだよなあ。
「徒 歩 で 来 た よ」
それは無理がねえか???????
「“|わふぅん!わん!!わんわん!!!!!!《いらっしゃいませ!!!》 ” 」
だがしかし。
今回の敵は、いぬ。
人間ならツッコむところでも此度の敵はいぬなのでスルーされてしまう!!!
ツッコミなんてどこにもいなかった。あるのはただおぎょうぎのよいわんわんの歓迎である。わんわん!
「なるほど」セラはきらりと瞳を輝かせる。「いぬせんしゃ…いぬいぬせんしゃ、なんだね…!」
セラはいぬせんしゃたちに囲まれているというのに大胆無垢を崩さない。それもこれもテンションがクライマックスハイにキマったせ……いじゃないな……。
わりと…わりといつもこんな感じだな……セラ・ネヴィーリオくん御年20歳……かたちとはいえ成人おめでとうね…。
「つまり、お行儀よく並んだ、わんこたち……!」
今日も少年はその無垢でどストレート真理をぶち抜き。
「“|ふぉーーーーん!!わんわん!《そうです!!いぬです!》 ”」
イッヌこれを肯定ッッッッ!!
「かっわいーーーーーーー!!!」
セラはおもわず飛び上がっていぬ戦車の一台、カメラのど真ん前に跳躍する。「ねえねえ!!ねえねえねえ!!」ノックノック!!コンコンコン!!!
「ねえねえねえちょっとモフらせて〜〜〜〜〜〜〜???」
セラはなにせパチンコで射出前のふれあいボール遊びで彼らの毛並みがどんなものかを堪能していた。フッワフワ、フッワフワのサッラサラ。まじで。とくに柴犬のおしりが最高だった。
「“|ウゥーン…ウーン《むりです》”」
「えぇ〜〜〜〜〜、なんでぇ〜〜〜〜」
セラはいぬせんしゃのカメラを見上げる。
「あそぼうよう、モフらせてよう〜〜〜」
そのせつなげな顔、さみしさを隠しもしないまつ毛のふるえを供えた上目遣いはどう見ても愛らしい天使のようでこれがならずものやお兄さんお姉さんおじさんおばさんそして当MSだったらお持ち帰り待ったなしの愛嬌に満ちていたが――何度でも繰り返そう。
「“|わっふ!!!わふふっふーーーー!!《いぬ、いま、せんしゃです!》”」
いぬなんだわ、敵。
きゅるり、とセラを載せていないいぬ戦車のキャタピラが唸る。
「“|う、おお、わぉーーーーーーーん!!!!《いぬせんしゃと、あそんでください!》”」
そしてはなたれるいぬせんしゃキャノンッッ!!!!!
「うわったぁ!?!?」
セラが間一髪飛び退けばフレンドリーファイアッ!
えぐれる大地!ぺしゃんこのいぬせんしゃ!いぬ?無論カンマで射出されて無事ッ!!!!!
「あー…」
射出ぱらしゅーといぬ…今回は毛並みサラサラコッカースパニエルの金色の毛が上空できらきら揺れるのを見て、セラは悟った。
「じゃあ戦車ばいばいしちゃえばいっか!!!!」
モフヤクザとして――覚醒したッ!!
あーもーだめだ今日のセラくんの理性もお取り扱いが終了してるわこれ。
「いくよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
歌われる|夜花残香《リメンバー》、掲げる鍵は明之尾。
そのうたはこちらにおいでと誘い拒まぬものを星と桜のあふれた、癒しの彼方へと招き入れる――……。
………。
きれいな、
きれいな、うたなんだけどなあ。
救済の色してんだけどなあ………。
今回、トンチキだからなあ……。
今回犬たちはセラの誘いを拒否しているために。
その歌が吸い込むのは。
「“|わきゅーーーーーーーーん!!ばうっ!!《いぬきゃのーーん!はっしゃーーー!!》”」
砲弾、なんだよなあ――…!
「あははははーーー!!!」
セラは笑いながらリメンバーを口ずさむ。
まるで突然の別れのように、キャノンから放たれた砲弾は消えて……ッやっぱだめだわ!!!ンねえッ!!セラさんッッッ!いいの!?その癒し空間に兵器ぶっ込んでいいの!?
ねえ癒し空間だからって破壊されたら疵だからすぐ癒されるよねみたいな最悪マッチポンプ――…。
「なんのそいそい!」
セラは掲げた“明之尾”を輝かせる。
いぬせんしゃが放った弾丸を、いぬせんしゃにお返しをキメた!!!
爆散するいぬせんしゃ!たのしそうに射出される白黒まだらのイングリッシュセッター!!きゃっきゃっ!!職人顔のセラッ!!!
……。
別れてもまた出逢えばいいってそういうこと!?!?!?
「うぅーん流石にでも数が多いかなあ…」
重なるキャタピラ突進をなんとかあちこちかわし、流れてくる砲弾もかわし、時に|ボッシュート《リメンバー》 ・|リターン《リメンバー》 今日のライブはスーパーリメンバーエンドレスバージョンだった。
……だが、さすがに徒歩では限界がある。やはりグッドモヒカンさんからおんちゃんを借りるべきだったろうか。でもそうすると間に合わないし、現実はこんなにも目前だ。
「うーん戦車吸い込むかな〜〜〜」
廃道路の段差を利用して小休憩を挟み、考察。
「いやでも桜の損傷とかな…」あ、MSちょっとほっとしました、よかった、最悪マッチポンプにためらいがあった。「環境団体がな…」環境団体おんの!?きみのコードの空間だよね!?「うるさいしなあ…」しかもうるさいの!?ねえ!?!?!?
セラ・ネヴィーリオは自身のささやかな小宇宙を世に情報提供しつつ考え、そして決めた。「うん!――僕が隠れよう」本日何度目と数え切れぬリメンバーを口ずさみ、セラはするりと消える。
そして現れる。
どこに?
「こーーんにーーーちわぁ〜〜〜〜〜!!」
あれ?りょーへー、いなくなりました…ってセラがわざと残した明之尾を回収してイッヌが戻った
戦 車 の 操 縦 席 に さ!
「わぁーーーいもふもふーーーー!!!」
セラ選手容赦なくいぬをモフる!え?いぬせんしゃの操縦室って狭いんじゃないのかって?
ご安心あれ!大型犬なら体高100cm。
手 足 の 長 さ 足 し た ら セ ラ く ん な み に で か い よ。
というわけでセラ選手イヌガチャでオールドシープドッグを引き当てたーーーーーーッッ!!ちなみに体高60センチ弱ッ!手足を足すと120くらい!ほどいい大きさッ!!
これはさすがに突如の来客に目を隠すふわっふわの白い毛も一瞬浮かび上がったイッヌ!「|わっふふふるる!?《どちらさま!?》」「一般通過猟兵で〜〜〜す!!」流星着弾は一般通過とは言わねえよ?
「わぁーい僕にも運転させて〜〜!!」
わんわんに抱きつくようにしながらレバーに手を伸ばすがいぬ仕様なのでちょっと勝手が違う。前あし後脚で押すタイプである。「ふんふん、ここをこうして、こう」ああーーー!!おきゃくさまーーーー!!おきゃくさまーー!!放たれるキャノン!突撃するいぬせんしゃ!!「|きゃんきゃん!!きゃうん!!!《まってまって、まってぇー!》 」びっくりしたままのイッヌ!「すごいねえすごいねえ!!」はしゃぐセラッ!!「|わぉん!おんおんっ!!!《でしょでしょう!?》」つられてはしゃいだイッヌ!!単純ッ!!
今日も世界が平和である。
「ん?」
セラはふとモニタ脇のでっかいボタンに目がゆく。「なにあれ?」みみもとをかきかきしながらきいてみる。「|わふぅーん……《じばくそうち…》」懐柔されて幸せそうに応えるイッヌ。オールドシープドッグはいわゆる牧羊犬ですがその性格はとてもやさしく室内飼がおすすめだそうです。
「へええそうなんだあ、すごいねえ〜〜〜」「|わふ……《えへへ…》」
カチッ「かち?」
嬉しくなって、いっぬ、押しちゃった。
|閃光爆発《💥BOMB💥》 ――……!
「ぷぺぱ」
これは最速| 夜花残香《リメンバー》をキメたセラ・ネヴィーリオくん。
「わふ!」
そして一緒に飛び込んできちゃったイッヌ。
ひとりと一匹は夜と星、桜の下で見つめ合い。
「とりあえず汚れちゃったから、僕、洗ってあげよっか?」
「わぉんっ!」
お友達から始めることにしたのであった――…!
「よおし一緒にあそぼーーー!!」「わおーん」「おーーー!!!」「ほぉら枝とってこーーーーーい!!」
ちゃんとばいばいはできたぞ!
大成功
🔵🔵🔵
ヴァシリッサ・フロレスク
HA!HA!HA♪見なよヴィッキー?コイツはケッサクだ♪ほら、なンだッたらアンタよかCuteなンじゃない?
『は?』
妬いてンのかい?Sweety♪アンタのそ~ゆうトコ、とッてもLovelyだよ♪ダ・イ・ス・キ♪
とかなんとか痴話喧嘩?を|犬《バカ3号》に食わせつつ
あー、にしてもさっきの|戦車《ネコチャン》モッタイ無かったねェ
ま、|Doggo《ワンコロ》たちと遊ぶにゃコレで十分だネ
バギーを駆りつつ
UC・|群狼の旗頭《ヴォルフス・シャンツェ》発動
こちとら鳴くコも黙る狼サマさ、|Puppy《ワンチャン》♪とは違うンでね
|Dog Run《アソビ》じゃ無い、|The Wilderness《ホンモノの戦場》ッてヤツを教えてやろうじゃないか?
『知らんし。
いや、誰?“にゃーん”とか言ってたの??
てか、めっちゃ“遊ぶ”って聞こえたけど???』
C'mon!!!
“Metzgerhund”チャンたち♪
非道!|犬質《バカ3号》をエサに先のロットワイラー軍団を|威圧《コミュ力》で召喚&使役!蹂躙!大乱戦!
『かえりたい』
■アアーーーッお客様困りますいぬですよろしくおねがいしまーーーーーす!!
「アッハーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ヴァシリッサ・フロレスク(|浄火の血胤(自称)《エンバー・エンプレス》・f09894)はトンチキにおなじみ大爆笑を本日も高らかに上げていた。
「アッハハ!!ハハハ!!|Cutie・Cutie・Puppys《なんつーカワイコチャン》だねェ〜〜〜〜!!」
ヴァシリッサが車上で涙すら浮かべながら笑い転げれば
|うぉんっ!わんわんっ!《はいっ!いぬです!!》 、|おんおんおぅーん!!!《ありがとうございまーす!》 などと素直なお返事が飛んでくる。
どこから?
目の前の、いぬせんしゃから――…!
『……|Holy Fxck《馬鹿野郎がよ》…』
バギーのスピーカーからAI・ヴィッキーの掠れ切った声が出る。パンク・ファッションの少女がジャケット肩ずらして呆然とした間抜けヅラのまま中指を立てる様子がヴァシリッサの目に浮かぶようだ。
『|Holy Shit……?《そうはならんやろ…?》』
心底、という呟きにヴァシリッサはおかしくてたまらず「イヒヒヒ、ハハアッハハハハ!!|GOD Bless You!《なっとるやろがい!》 」『…兵器デザインそうはならないでしょお…?』 しかしあがるバカ笑いに本日はツッコミもない。
『どいつもこいつも……どいつもこいつもほんっと…ほんっとに…』
先述の通りヴィッキーは戦闘補助AIである。インストールされた兵器に対応し、適宜最適の補助を持って搭乗者を補佐する。よって数多の兵器に対応できるようプログラミングがされている、のだが、さすがにこのいぬ戦車のデザインは想定外だったらしい。まあ仕方のないことではある。ヴィッキーはシリアスもシリアス、非情と不条理と宿業を背負わされたドシリアス世界の住人だったのである。こんなトンチキ戦車一瞬正気を失ってもおかしくない。
とはいえちょっと驚きすぎじゃない?と思う方もおられるだろう。
仮にも戦闘補助AIが、はたしてこの程度でこんなに動揺するなんて妙じゃない?と。わかる。いくらトンチキでみんなオーバー気味なリアクションとりがちでも、これはちょっとおかしいんじゃない?思うよね。でもこれは仕方なのないことなのである。
「HA!HA!HA――ァッ♪見なよヴィッキー?」ヴァシリッサはたしたしとバギーのフレームを叩く。『見てるわよ……見てるから絶句してんのよ…』
『なんで|クソ玩具戦車《シャム猫戦車》 と同じ発想がいぬからでてくんのよーーーーーッ!!』
だって、いぬせんしゃのデザインが、さっきまでヴィッキーがダウンロードされていたシャム猫戦車の猫版といって差し支えないトンチキデザインなのだから――…!
「コイツはケッサクだネ♪」『じんるいィイイイーーーーーーー!!!』「あ、そっちに殺意行くンだ?」『もうわかんない!あたしもう人類がよくわかんない!!!』
「“|ぶっぶーぅうるる!おんおん!わおーん!!《ちがいます!これはいぬがでざいんしました!》 ”」
『だから余計混乱してんのよクソ犬ーーーーーーッ!!!』
テンパっててもAI、正気を失ってもヴィッキーの運転は正確である。いぬせんしゃが否定と共にぶっとばしてきた大砲を右に、左に、ゆするように避ける。
ヴァシリッサはガラスのないフロント・フレームに踵を引っ掛けて足を組み窓枠に頬杖ついて笑う。ヴィッキーはヴァシリッサからしてもちょっと滅多に見たことのない混乱をしていた。「どうどう」『どれをどう!?』
「まだまだ社会勉強が足りないネ⭐️」踵を外し、つま先で軽くメーターパネル脇をつついてやる。
「こんなのフツーフツー」『ほんまか?』「たぶんネ」『あんたも狂ってるってよくわかった』
「カワイイってのは大事なのさ、ねェ?Puppy?」
軽くいぬせんしゃに振れば「“|うぉんっ!!《はいっ!》 ”」素直なおへんじが返ってくるので、ヴァシリッサは口笛を吹いた。「イイコだ」つま先を下ろして座り直す。『あ゛?』先ほどの混乱とは比べものにならないドスの効いた声がスピーカーから漏れたので、ヴァシリッサは煙草を咥えたままニタニタと唇を歪める。
「なンだッたらアンタよかCuteなンじゃない?」
『は?』
バギーが急に減速するのでヴァシリッサはすかさずアクセルを踏み込んだ。「Hey、Sweety?アシが落ちてんよ」『……しらない』混乱ではない静かな呟きがスピーカーの奥から聞こえてくる。『そっちのカワイイ子のお友達に手伝って貰えば?』突然話を振られたロットワイヤーが――そう、なんとおどろくことにヴァシリッサ、こんなに堂々としているがこれはいぬ軍団の車でありなんと盗用車なんですね…!――ぴん!と背を正す。わう?知らんふりを決め込めるいぬ、確かにかしこい動物だった。
「なァにィ?」ヴァシリッサは笑いながらハンドルにしなだれかかる「妬いてンのかい?MY・Dear・Dear・Dear〜〜〜?」『うっさいハンドル操作しろバカ一号』「ンッフフ♡」窓から捨てて先ほど突いたメーター脇…運転手がわに向けられたカメラをくるくると撫でる。「アンタのそ〜ゆトコ、とッてもLovelyだよ♪」『……そいつはどうも』「ダ・イ・ス・キ♪」『そ・い・つ・は・ど・う・も!』アクセルが自動でさらに踏み込まれ、ハンドルにヴァシリッサのものでない力がかかる。カワイコチャンはどうも機嫌を治してくれたらしい。態度こそわかりづらけれ、まったくかわいい相棒である。
あ、なるほど、いぬはみせつけられているようです!
バカ三号、もとい巻き込まれロットワイヤーは座席で丸くなることにする。この座席、いぬはおきにいりなのです!しっぽぶんぶん!!
『で?』「ン?」『どうすんのコレ』「コレ?」
「“|うぉんっ!!ばうばうっ!!!《はいっ!いぬせんしゃです!》”」
「アー」ヴァシリッサは次のタバコを取り出して咥える。
「“|あうぉん、おーーーーん!!《あそんでくださいっ!!》」
照準をこちらに絞り――再びの大砲ッ!『だって』一発目!左に振れて回避!
「さっきの戦車ネコチャンモッタイ無かったねェ……」
火をつけずくわえたまま上下させてぼやく。こちらはガタガタの改造バギー、あちらは戦車にして多数。『わかってると思うけどこのバギーに兵装とか無いから』二発目、右に移動してこれもかわしながらヴィッキーがもはや投げやりに告げてくる。「アイアイ」『勝手にやってよ』「ヤー」『無理と無茶はナシでね』「ッフフ」『返事』「OK,Baby」
「ま、|Doggo《ワンコロ》たちと遊ぶにゃ」
安物のジッポーで火をつけて、にやりと笑い
「“コレ”で」
助手席でまるくなっていたロットワイヤーの首根っこを掴んだ。
ちなみに体高50cm体重50kg前後で割とでかいのだが――かるがると掴む。
正確には、えっ、ちょま、おきゃく――お客様ァアアアアァ!!
「十分」
正確には――スヴァローグの杭部分でロットワイヤーの首輪を引っ掛けて、吊り上げたのである。
「だネ」
な、なんたる…なんたる。
いぬせんしゃからはくるり背をむけ運転席のシートに立ち、右足を後ろに引くようにしてハンドルに引っ掛けて運転補佐をしながら――
「ご覧ッ!|F××k'nBoyz!《クソッタレ》ども!!」
ここまで追いかけてきたロットワイヤーバギー集団に示したのである。
「これからアタシが狼の狩りを教えてア・ゲ・ル♡」
ぎらりと眼鏡に日光を反射させ、歯を剥き出して笑う。
「逆らったら――“だれ”が“どう”なるか――わかってるネ?」
なん――…。
なんということでしょう!!!!!!
のりあわせた犬をダシに――いぬせんしゃといぬ同士を戦わせようという!!
鬼!!!鬼の所業である!!!
『マジかよ』「マ〜〜ジ♡」威圧が終わったのでいぬをそっと助手席に置く。
「こちとら鳴く子も黙る狼サマさ、|Puppy《ワンチャン》♪とは違うンでね」
『いや知らんし』
「|Dog Run《アソビ》じゃ無い――|The Wilderness《ホンモノの戦場》ッてヤツを教えてやろうじゃないか?」
『いや誰?“にゃーん” とか言ってたの?』
「ヤー、仲間を率いるなんていつぶりかしらン?」
『きいてる?てかめっちゃ“遊ぶ”って聞こえてたんだけど?ちょっと??』
「ンフフフフ……!」『ちょっと???マスター?』
ヴァシリッサはいぬを下ろしたスヴァローグをたかだかと掲げる。
「C'mon!!!――“Metzgerhund”チャンたち♪」
コード・|群狼の旗頭《ヴォルフス・シャンツェ》 発動ッ!
そう。
すげーわかりにくかったけど、すげーわかりにくかったけど。
「全軍ッ」『全軍!?』
ヴァシリッサも結構トンチキに当てられて――
「突撃ィイイイイ!!!!!」
わ り と お か し か っ た の で あ る!
『ちょっとォオオオオオオオ!?!?』
飛び出した|ヴァシリッサ《おかしら狼》に、忠誠深きロットワイヤーたちがどんなふうに本能を刺激されて突撃していく。
……。
久々にイッヌを率いて駆け抜ける|1/8《ワンエイス》のダンピールがどんなふうにはしゃいだかなど語るまい。
すげーたくさん戦車が爆破された。
ちなみに。
『……』
残されたヴィッキーは『アー、もしもし?……さっきぶり』おもわずおなじ戦場にいた同胞に無線で連絡を飛ばし『さっきはカタツムリって言って悪かったわ』素直に謝った後『あたしの愚痴聞いてく……何?何してんの?』同胞に愚痴を聞いてもらおうとして『え、ちょ泣いてるの?あんた泣いてんの?』『|あるべき姿《ガラクタともふもふ》に返した?は?』 『ヤ。いいわ、いい。忙しい時に連絡してごめん、悪かった、おつかれ』さらなる混沌を抱え『アー…あんたそういうところほんと律儀ね。じゃあひとことだけ聞いてくれる?』
『かえりたい』
生まれて初めて本気で吐き出した愚痴の向こうでヴァシリッサが行ういぬせんしゃ爆破といぬはなび(※いぬは無傷です)が上がっていた光景を描写として添えておこう。
大成功
🔵🔵🔵
梅桃・鈴猫
槐守(と一応宝船)には、「仙術」で守りを施して、霊糸でしっかり繋ぐのを忘れなく。
あら、楽しいあまりに"待て"も出来ないと。仕方ありませんわ。
エンストを起こしただろう宝船を引っ張り、「グラップル」でかるーく持ち上げて。
UC発動しつつ、そーれ♪ と。わんこ様達の方向へ、私共々投げます。
その方が手っ取り早く到着しますし♪
さぁさ、鈴猫と宝船はこちらにございますわ! あなた方の砲弾、果たして私達という的に当たるでしょうか?
まぁ、当てさせませんけれど♪
的当てゲーム、開始です♪
砲弾がわんこ様方に当たって吹き飛ぶように、かわしていきましょう♪
誠心誠意尽くすには、これくらいはしませんと♪
ね、そう思うでしょう?
●|侍女のおもてなし《全員駆逐の心意気》
結んだ手を解けば――そこにあるのは結界であった。
「これで、よし」
式神槐守の瞳が困惑の色で梅桃・鈴猫(天翔の桃花・f33163)を見つめていた。
にっこり♡
鈴猫はそれはそれはすてきな笑顔で槐守に頷きかける「これは必要なことなのですわ、槐守」ほんまか?ほんまにほんまか?槐守も鈴猫も預かり知らぬところであるが古今映画小説漫画アニメそのほかでその台詞を口にするのはこれから死ぬやつか悪役のどちらかである。もちろんこんなところで死ぬ気のない鈴猫であるので必然と後者であることが確定してしまうんですがほんまか?なあほんまに必要なんかその結界の硬度。
「これならきっと最悪宇宙船がつっこんできても大丈夫です♡」
いややっぱおかしいよちょっと待ってくださいよ鈴猫さァん!!!!!!これはアポカリプスヘルシナリオなので宇宙船が登場す余地はないんですが一体コレから何をなさりあそばすおつもりなんですかほんとマジでなんで???
「そしておつぎは、と」
花も恥じらうにっこり笑顔のまま鈴猫は霊糸で槐守と乗ってきた宝船をしっかりと結ぶ。ついでに自分にも余裕をもって結ぶ。しっかり。それはそれはしっかりと、繋ぐ。
「まったくもう」
鈴猫の咎める口ぶりは形だけで、口元の笑みは至極楽しそうである。
ここまで乗ってきた宝船の土手っ腹にはいぬせんしゃキャノンがぶちあたってしまいエンストを起こしてしまっていた。
「楽しいあまりに“待て”もできないだなんて」
「“|わっふ!!わふわふ、わっふわふーーーーーーーーん!!《めいちゅう!いぬ!めいちゅうできました!》 ”」
長い袖で唇を隠し、笑いをこぼす。うふふ!「はいはい、ええ、ええ」このやりとりだけで槐守はその背に冷たいものが走ったという。
「そのとおり、わんわん様は命中されました」
きゅっ。
霊糸の最後の結びがつくられるおとがこんなに大きく響くことがあるだろうか。そのしずけさに響く重みはジェットコースターの坂のごとく槐守の耳に届いたという。
そんな槐守の様子を一切スルーして、鈴猫は糸の想定する長さ通り、|宝船から降り《・・・・・・》、船のかたわら、両足を肩幅に開いて軽く腰をおとす。
「仕方ありませんわ」
深呼吸。
コード――…練武・仙花繚乱。
気を練り、自らに満たし。
「そぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
|宝船を持ち上げて《・・・・・・・・》、
「れっ♪」
いぬせんしゃへ、投擲。
……。
投擲ィ――――ッ!!!!!?!?
「“|わっふ!?《えっ!?!》|わっふわっふわふう!?《なになにどゆこと!?》 ”」
いぬせんしゃ想定外!想定外である!!
奇遇だねMSもだぞ⭐️
「“|わふわふ!!わおーーーんんッ!《きんきゅー!きんきゅー!!》 ”」
思わず遠吠えしてむれの絆で召喚されるいぬせんしゃ!!!
必然起きてしまう大渋滞!!!
そして
そ こ に ぶ っ こ ま れ る 宝 船 !!!!
あーね!?
『宇宙船がぶつかっても大丈夫』の宇宙船って
宝 船 の こ と な の ね!?
いぬせんしゃと宝船の正面衝突ッッッ!!!!
当然巻き起こる爆発「きゃ〜〜〜〜〜ッッ♡♡」これは宝船にきちんと自らを結びつけておき投擲の勢いで甲板にバンジーよろしく舞い戻る鈴猫さんッッッッッッッ!!きゃー♡でいいんですかきゃー♡でいいんですかそこんとこの悲鳴!!!!!!!!!
巻き起こる爆発・爆炎・きのこ雲ッ!!!!
巻き起こった砂塵・爆煙が晴れたその先に立っているのは――
「おまたせいたしました♡」
宝 船 だ ァ ーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!
爆発したいぬせんしゃから射出されたぷくぷくのポンスキーが楽しそうに宙でパラシュートしている。そう!ご安心ください!!いぬは無事です!!!
……。
泡吹いてる槐守のことは見ないふりしておこうね。
うすれゆく意識のなか、槐守から“ドウシテ…?”みたいな視線が向けられた鈴猫は口元を隠してウィンクして答える。
「だってこの方が手っ取り早く到着いたしますもの♪」
それは味方を投げていい理由にはならねえんだよなあ……。
神格に仕える侍女とかいて|狂戦士《バーサーカー》というのではないか。
槐守が何を思ったのか、ここでは鈴猫とそして何より槐守のために秘匿をしておくとして――ともかくこの時点で槐守の意識は途切れた。
「よし♡」鈴猫はぐっとこぶしを握る。ほんまか??????
渋滞したうち後ろにいたために無事だったいぬせんしゃがきゅらきゅらと仲間の機体を盾におそるおそる出てくる。いぬ、いまびっくりしました。なにですか?なんでしたか?みたいなおそるおそる感がたっぷりであった。
そんなかれらがピカピカの宝船と
「さあわんこの皆様――ご希望通り遊んでさしあげます♪」
十指に糸をつないだまま両腕を広げる鈴猫の微笑みを見るわけである。
|本気《マジ》の|遊び心《殺意》にあふれていた、滅多に見れないその|表情《ツラ》をッ!!!!!
「鈴猫と宝船はこちらにございますわ!」
ぐっ。
鈴猫は前に半歩踏み込んだ右足に体重をかけながら――
「あなた方の砲弾――果たして私達という的に当たるでしょうかっ?」
おもいきり霊糸をひく。
「あ」上に引かれたことで宝船の船首から前部分が天に向かって突き上げるようにかしぎ――
「そぉ〜〜〜〜〜〜〜れッ♪」
突撃してぶちぬいたいぬせんしゃを台に宙へ飛び出すッ!!!!!
……イメージとしては坂を下る轌遊びで跳躍するテクニックに似ている。
似ているんだけどさあ…ちげえのよ…規模がちげえのよ…!
宝船のサイズはおおよそ軽トラックをもう半まわりほどおおきくしたものである。
それを少女にしか見えぬ乙女が引っ張り上げて浮あげてるからそいつはトンチキがひでえのよ…。
「的当てゲーム、開始ですっ♪」
しかもそれで自分を的当てにしてるのは狂気がひでえのよ!!!!!
「“|わん!!わんわんわーーーーん《そうしゃーーーーー!!!きゃのん、はっしゃーー!!》”」
「「「「“|わぉーーーーーんっっっっ!!!《はっしゃーーーー!!》 ”」」」」
宙を飛び回るビームはさながらライブの発光効果のようであった。
宝船が宙を飛んで光線がひかるたびッ!!!
どっかのいぬせんしゃが爆発していぬが宙を飛びッ!!!
宝船が着地するたびッ!!!
着地されたいぬせんしゃが爆発していぬが宙をとぶッ!!!
そう!!!!
読者の皆様はもうおわかりいただいてるだろうッッ!!!
ほがらかに笑っている鈴猫の内心は――こうである。
ま ぁ 、 当 て さ せ ま せ ん け れ ど ♪
鬼――…!!
砲弾は常にフレンドリーファイアになるよう計算された斜線を通りッ!
着地のたびにいぬせんしゃをスクラップにする起動を叩き出しているのであるッ!!!!
挑んでくるなら容赦なくボッコボコのボコにしようという、これはそういう笑みなのであるッッッッッ!!!侍女ッッッッッ!!!おそるべしッッッ!!!!!
先に意識を落としていた槐守は間違いなく幸運だった。
激しい|いぬせんしゃのむれ《あらなみ》をブチ抜いていく宝船の軌道は、間違いなく垂直水平360度、見事な球を豪速で描いていた。
高笑いしていないのが不思議なほどのスーパーテクニックであった。
……。
あれほんまに侍女って言っていいのかな?
|侍女《バーサーカー》の方が正しくない?
ねえ、ちょっと、マジで 。
「あら、心外ですわ」
えっ、鈴猫さん?
今誰に話しかけてます?私?
「それ以外にどなたが?」
わァ…次元の壁…こえられちゃっ た…ッ!
「あくまでもこれはおもてなしですわ♪」
ほんっとうに楽しそうに笑いながら宝船プレスでまたひとついぬせんしゃを叩き潰す。
「誠心誠意尽くすには、これくらいはしませんと♪」
……。
えー。
「ね、そう思うでしょう?」
浮かべた笑みは、たしかに清らかに澄んで、輝いておりましたとさァーーーーーーーーッッ!!!!
大成功
🔵🔵🔵
ダンド・スフィダンテ
なるほど!わからんけどわかった!!
これはあれだな!MSにおまかせで投げておけばいい感じにしてくれるってことだな!
爆発オチにでも使ってくれ!
え?まじめにプレイング書いた方が良い?マジで?
えーっと、このスキルあんまり使わないから上手く発動するといいんだけど……
『聞け』
『お手』
『おかわり』
『伏せ』
『自爆』
犬はちゃんと脱出するってMS言ってたから!言ってたから!!
……それにしても自爆装置……あるのか……無かったら今頃もみくちゃにされてた気がするな……ん?あっ、脱出してきた犬に囲まれてる!かわいい!いやまてそうじゃない!
くっ!でもかわいい!よーーしよしよしよし!ちゃんと自爆できてえらかったな!!よーしよしよし!!あーー犬かわいいーーー
(MSにすべておまかせします)
(いぬかわいい)
■本日快晴犬日和
荒野、人類によって開かれた道路のラストスパートをひとりの男が、征く。
駆るはチキンバイク――びっくりした顔しててお腹あたりを掴むとすげえ音がする、あのあれ、あのチキンバイクである。どうかしてると思う?それは本当にそう。
「――なるほど」
ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)は人の声などかき消されそうな暴風とチキンシャウトの中でも聞き取れるほど重々しくつぶやいた。
「これは俺様がオチの予感――…!」
プピーーーーッ…!これは加速チキンシャウトの音ッ!!
「おっかしいなあ……」
イケメンが秒で崩れた。
「俺様確かにゴールデンレトリーバーと戯れてた、戯れてたけどぁ…」
ダンドにあるのは涙目の露骨な困惑顔である。「おっかしいなあ…」ぶちぶちと呟く。
必死に加速するせいでチキンが暴力的な悲鳴をさっきからあげまくっている。
ピェーーーッ!ピェーーーー!!プピェーーーーーーッッッッ!!!
「俺様ぜったいあのいぬせんしゃが見えたときにはレースの中で1か2、3番目にはいたよお…」ぷっぴーーー!!(加速)「この数分でここまで抜かれてるの絶対おかしいよぉ…」ピピェーーー!!(※原則)
「なんでかなあぁ〜〜〜〜〜〜」
あ、それはMSおまかせで投げておけばいい感じにしてくれるというありがたくも嬉しいご信頼をいただいたのなら爆発オチにでも使ってくれというご要望と合体させてもはやオチを担当していただくしかないと|天啓があった《ひらめいちゃった》からですねー、しかたないです。「どうしてかなあ〜〜〜〜〜〜」ごめんね。
もちろん|MSのつぶやき《地の文》など聞こえるはずもないダンドはチキンを鳴かせて、道路をひたすら走るだけである。
激戦を忍ばせる改造車の山をチキンコーナリングでなんとか抜け――視界が、開ける。
まずうつるのは赤い炎だ。天を焦がさんと求める火の手に神よ堕ちよと伸ばされた数多の手をおもわす黒煙。「む」ダンドは半泣きべそになりかけていた表情を引き締める。
「たしか予知では――戦車、だったか」
おそらく炎の灯りに影になっているあの攻撃的なフォルムが件の戦車であろう。
ダンドが素早くアンブロジウスを呼べば、小竜は槍と変わる。
炎の中の影を数える、ひい、ふう、みい――「戦車、戦車か」口内で転がす。戦車。制圧用移動式兵器。兵器、と浮かんだだけでまだ胸のどこかが少しだけ痛み、眉が寄ってしまう。「一番良いのは軌道を潰して砲撃が来る前にぶちぬいてしまうことだが」わざわざ口に出す思考は浮かぶ露をいまだけは振り払うための呪文だ。「数がいるともなればどうなるか」幸い騎乗しているのはチキンだがバイクである。すげえうるせえチキンバイクだけどバイクである。加速と減速であのチキン悲鳴が聞こえるのはマジでどうかしてると思うけれど速度はきちんとホンモノのバイクである。戦車という巨体に対し機動で大きく勝る。この利点をどう活かすか。
「搭乗者の――」うかぶ、うかんでしまうちいさなこども。きっと、おなじように戦場の空をかけているのだろう。「搭乗者の、腕次第」
炎と煙が晴れる。
ダンドの前に、アポカリプス・ヘル。
黙示の地獄で犬達が従う戦車が――
「“|わぉーーーーーーーーーーーーーーん!!!!《はい!!いぬですっ!》 ”」
いぬせんしゃが登場――…!!
「いぬ!!?!?!?」
シリアスぜんぶふっとんだ。
「えっ!?はっ!?!?いぬ!?!?いぬ!!!?!?いぬ!?!?せんしゃ!?」
ダンド思わず急ブレーキッッ!!叫ぶチキンッ!!!!ピエーーーーーーッ!!
「“|わぅーん!わんわんっ!!《はいっ!いぬいです!!》 !」
そしてこれはっ!
「|わおんおんおうぅーん!!《いぬせんしゃです!!》 ”」
きちんとご挨拶して
「“|わっふっふっわきゅーーーーーーーんっ!!!《よろしくおねがいしまーす!》”」
いぬキャノンをぶっぱなすいぬせんしゃッ!!!
ファイアーーーーーーッ!!!!
「オアアアアアアアア!!」ダンド選手急ブレーキを踏んだがもういちど急加速でこれを回避ッ!!!叫ぶチキン!ホゲエエエエエエエ!!!!!
えぐれる大地!爆散!変わる地形ッ!!!
「エッグ!!!!!」これは卵という意味ではなくえげつないという意味のダンドの悲鳴ッ!!!
「なるほどな!?」自慢の金髪が巻き込まれかけたので咄嗟にバイクから両手を離し髪を引っ張ってゆわえあげながらダンドはいぬせんしゃの周りを一周する。
「いぬ!」「“|わんっ!《はいっ》 ”」「せんしゃっ!」「“|ばううっ!《はいっ!!》”」
「いぬせんしゃっ!!!!!」
「“|わぉーーーーーーーん!!!《そうでーーす!!》 ”」
ふたたびのいぬキャノン!!!
「 な る ほ ど !」
間一髪のところでいぬきゃのんをかわ「あっやべ」きれなかったのでダンドはチキンバイクから飛び降りる。
ポピエーーーーーーーーーー!!!!!
当シナリオにおけるチキンの最期の悲鳴と|チキンバイク大炎上《チキン・ファイア》の炎を後に、ダンドは堂々と立った。
「な る ほ ど わ か ら ん け ど わ か っ た ッッッッッ!!」
ダンドは肩で息をしながらアンブロジウスを槍から小竜へ戻す。
ぎゃう?アンが心配そうにダンドを見上げた。それわかっていいやつでござるか??
「いぬ!」
「“|わんっ!!《はいっ!!》”」
うーんほんとにいいお返事!
「“|わんわんわぉーんっ!!《いぬせんしゃです!》 ”」
「そっかあ」ダンドはへちょんと表情を崩す。
「俺様な〜〜〜いまちょっとな〜〜〜いぬは虐められないんだよなあ〜〜〜〜……」
「“|わぷん?きゅぅるるる〜〜〜〜??《にんげん、ばりけーどなじきですか?》”」
苦笑するダンドにいぬせんしゃは無邪気にきゅらららら、とキャタピラで寄ってくる。
「デリケートな」戦車じゃなければほっこりする光景といいたいがいぬせんしゃなので大きさに目をつぶらなくてもほっこりする光景だった。
「“|わっふわっふ!!くるるる!《そういうとき、いぬ、おやくにたちます!》”」
でも無邪気に近づいてきて大砲構えてるのはやっぱりほっこりしねえ光景であるのは間違いない。
「“|わん!わっふ、わん、わお〜〜〜〜〜ん!!《いぬと!いぬせんしゃとあそびましょう!!》 ”」
「ああ」
ダンドは苦笑のまま、鷹揚と頷いた。
頷き。
「“聞け”」
|抗いがたき言葉《ユーベルコード》をブッパした――…!
「“|わふ???わふ〜〜〜〜〜〜〜!!《はい?いぬ、きいてます〜〜》!! ”」
コ ー ド 、 素 通 り ――…!
いやしかたない、だって相手はいぬである。せんしゃだけど。
いぬせんしゃだけど、いぬである。
かしこいイッヌは人の言葉をよく聞く素直なお耳と心を持っていた。
ダンドは微笑んだまま手を差し伸べ
「 “ お 手 ” 」
い ぬ に 効 く 究 極 呪 文 を唱えた。
きゅら…?いぬせんしゃのキャタピラが戸惑いがちに揺れる。
きゅら…ちょっと前進…きゅらら…後退…。
おそらくお手と言われてどこを差し出そうか迷ったらしい。そりゃそうだろう。このデザイン、頭部つけて左右キャタピラである。
お手どっち?
と思ったら
「わう!」
さしだしたダンドの手にそ…っと大砲のふちを乗せてきた。
「お手そこなんだ?????????」
どういう操作技能なのかわからんが、そ…って置かれている感じが絶妙である。
ダンドなど余裕で入る砲門の暗闇が開いているのは背筋を冷たくさせるものがあるが、その向こうの眸がきらっきらかがやいている。
ダンドは一度瞼を閉じて、大きく息を吐いた。
かわいいやつめ――…!
「“待て”」「わんっ!!」「“おかわり”」「わんわんっ!!」
「“ふせ”」「わんわんっわぅーーーーっ!!」
何がどうなっていたか、多くなど語るまい。
いぬせんしゃはいぬだった、確かな現実はそれだけである。
ひとしきりいぬせんしゃに命令したダンドは一歩、いぬせんしゃから後退し。
最後の命令を出すことにした。
即ち。
「“自爆”」
きゃうーーーーーーーーーーーーーん…!
いぬせんしゃ、だいばくはつ。
あがる無数のいぬ無傷パラシュート射出こと、いぬはなび……!
「あるのか……自爆装置…」
ありましたね。
「あってよかったなー…なかったらいちいち破壊と救出で今頃もみくちゃだ」
宙を舞うパラシュートイッヌはめったにない空中遊泳を楽しんでいるらしい。
きゅいんきゅいんわぉーーん!!たのしそうに吠えている。
いいことだ。かわいい命がのびのびと生きているというのは。
ほんとうに、ほんとうにそれが何よりで、尊いことで。
「……これで一件落着、だな」
ダンドは微笑んで――輸送隊が礼を述べながら通り過ぎていくのを見届ける。
そして彼らの背がルール・レルと思しき建物に到着したのを見届けて――踵を返した。
え?行かないのか?
地平線にみえるあの建物、ルール・レルへ…?
だってあそこ今回チキンバイクなんていうオブリビオン以上のトンチキバイクをかしやがった原因ですよ?行く?行っちゃうそんなとこ?どう考えても胡乱の匂いしかしないよ??行く理由がない。
荒野に救いのバトンがまたひとつ、確かに渡った。
|猟兵《イェーガー》は、 それだけで良――
|わぉんっ!!!《こんにちわ!》
「おわっ!?」
踵を返したダンドはしかし、その先に進むことはできなかった。
なぜって?
|わんわん!わぉんっ!《こんにちわ!いぬです!》
イッヌである。
い と こ ろ で 終 わ る と 思 っ た か ッ!!
バカめ!!ぬるいわ!!!
「えっ」ダンドは思わず後退しようとして――それもできない。
ふんす!シベリアンハスキーが膝の後ろに鼻を入れて見事に転ばされてしまう「オアアア!!!?」
今まで――多くのいぬがうちあげいぬはなびとなってパラシュート逆ボッシュートされてきた。
だが冷静になってほしい。
その犬はどこへ行ったのか?
ど こ へ も 行 か ん が 。
普 通 に 地 面 に 降 り て く る が ?
そう!!!
パラシュートされたいぬたちは!!!
普通に!!降りてきて!!
いぬテレパスで!!集合していたのである!!
つ ま り 今 ダ ン ド は う ち あ げ た イ ッ ヌ に か こ ま れ て る っ て こ と さ!
くそ、いぬせんしゃでもかわいかったしゴールデンレトリーバーもかわいかったからダンドはわかっている。こんなに囲まれると思うしかないッ「くっ」
「かわいい!!!!」
そうだね、いぬかわいいね。
わん!!嬉しそうなイッヌの声ッ!「よーしよしよしいいこいいこ」思わず撫でて「そうじゃないッ!!!」正気を取り戻そうとするが戻る隙なくわんわん!!!イッヌの一匹がダンドの袖をくわえるッ!きゃうんきゃうんとというかわいい鳴き声を翻訳するなら「かくほー!」の一言であろう。
わんわん!きゃうんきゃうん!!
「あーはいはいよーしよーし離してくれるか!?」わんわんわおーん!!「はいはいよしよしよーしよーし」わうんわうんおーん!「いいこで自爆できたないいこだなよーしよーし待ってもうドッグフードはないんだってあれっえっちょっと待って俺様どこに連れていかれるのちょっと待ってそろそろ転送がアッレェ始まらないちょっとイージー殿!?イージー殿!?わは、わはははは待て待て顔を舐めるなくす、くす、わは、ふははは!!あーはいはいかわいい!かわいいいなーあーもーイッヌかわいい!かわいいなーーー待って待ってはいはい、わかったわかった行くいく、今いく!はいはい引っ張らない!かわいいぞよーしよーしよーし!」
……。
ダンドの顛末?
省略。
幸せな思いをしたのは確かである。
ここは黙示録の地獄、アポカリプス・ヘル。
希望は乾き、簡単な風ひとつでぱらぱらに崩れてしまう場所。
そのはずの地――なのだが。
さわやかな青い空。
ひとを慕ってはしゃぐいぬの声はずいぶんと大きく伸びやかで、ほがらかで。
こんなからっぽな地でも駆ける喜びに踊り。
いきるしあわせにみちあふれて、はしゃいだ音色をしていた。
わふ!だう!!!!
(what's the “Won”derfulday today!――完)
大成功
🔵🔵🔵