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7thKING WAR⑩〜想いは異世界で煌めいて

#デビルキングワールド #7thKING_WAR

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●グリモアベースにて
「デビルキングワールドで始まった7代目のデビルキングを決定する『7thKING WAR』……悪魔王遊戯(デビルアトラクション)の攻略は続々と進んでいるみたいね」
 集まった猟兵たちの頼もしくも、時にはワルい活躍のおかげだと、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)も力強く微笑むと、もうひと頑張りよとエールを送る。
「魔王ガチデビルが7thKINGの座を勝ち取るようなことになれば、『悪魔契約書』によって、『他世界への悪魔輸出』なんてことが起こってしまうわ。そんなことをさせないためにも、あたしたち猟兵がこの戦いに乱入し、悪魔輸出計画を阻止しましょう!」
 そしてエリシャは集まった猟兵たちに向かって欲しい、悪魔王遊戯の場所を示す。
「異世界の妖精さんが作ったと言われている工房よ。ここに『思いの詰まったアイテム』を持ち込むと、その物の中に眠る『小さな異世界(フェアリーランド)』に飛び込むことが出来るんですって」
 不思議だけど素敵よね、とエリシャ。アックス&ウィザーズで、フェアリーの作り出すフェアリーランドの世界で遊んだことがある猟兵にとってはイメージがわきやすいのでは、と語るのだった。
「この小さな異世界はみんなの思い出に即した世界よ。まさに夢の世界ね。そこに一般の悪魔たちを招待してあげてほしいの。彼らはあなたたちの語る思い出話を聞いたり、思い出を追体験したりして、それがすごいものであればあるほど、きっと猟兵を支持してくれるようになるから」
 そうすれば魔王ガチデビルが王位に就くという目論見を阻止する助けになるだろう。
「みんなの思い出の詰まったアイテムで、この戦いを有利に運んでしまいましょう。大切な思い出をもう一度体験するチャンスでもあるしね。楽しい思い出もあれば、そうじゃないこともあるかもしれないけれど……どうか、よろしく頼むわね」
 そう言うと、エリシャは星型のグリモアを輝かせ、不思議な巨大工房への道を開くのだった。


湊ゆうき
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「7thKING WAR」における「⑩フェアリーランド〜思い出の空間っス!」のシナリオとなります。

 こんにちは。湊ゆうきです。
 デビキンにも異世界との繋がりがいろいろあるんですね。

 異世界の妖精さんが作った巨大工房に思いの詰まったアイテムを持ち込めば、そのアイテムの中に眠る小さな異世界へと飛び込めます。何もせずとも一般の悪魔たちは勝手にやってきますが、ご希望の悪魔がいればご指定ください。
 アイテムにまつわる思い出を語ってもいいですし、思い出に即した体験を追体験したりも出来ます。どのようなアイテムでどのような思い出があるかをしっかり書いていただければと思います。楽しい思い出でなくても構いません。

 プレイングボーナスは「思いの強さを示す/思い出を具体的に語る」です。

 プレイングの受付については、タグやMSページにてお知らせいたします。
 皆様のご参加、お待ちしております!
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第1章 日常 『巨大工房の小異世界(フェアリーランド)』

POW   :    思い出の中でパワーや漢気を示してみせる。

SPD   :    思い出の中で器用さや抜け目なさを示してみせる。

WIZ   :    思い出の中で賢さや器のデカさを示してみせる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

栗花落・澪
悲しいお話はもう沢山したからね
★泡沫の舞謡を持ち込もうかなって

これは、僕にとって憧れの人からもらったものなんだ
男らしくて背も高くてかっこよくて
ちょっと意地悪だけど、僕を気遣ってくれる優しい人
同じ男としてはさ
あんな風になりたいなって思うわけですよ

これ、僕の為に特注してくれてさ
世界でたった一つの宝物だよ

一見ただのサングラスだけど
遊ぶ時は勿論戦う時だって、ずっと一緒なんだ
別世界の戦争
カルロス、フライングダッチマン
そんな強敵達と死闘を繰り広げる時も
僕にとってはお守りみたいなもので

金蓮花は勝利の証で僕の象徴
柄には無いけど、これをくれた彼の漆黒
そして共に戦った時の鮮やかな炎を思い出す

温かくて、落ち着くんだ



●勝利はいつも共にある
 魔界にある異世界の妖精さんが作ったという巨大工房。『思いの詰まったアイテム』を持ち込めば、その物の中に眠る『小さな異世界(フェアリーランド)』に飛び込むことができる場所。
「悲しいお話はもう沢山したからね」
 今回の戦争でも持てる力を発揮して、全力で駆け抜けている栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。もうすでに何度もこの工房を訪れている彼は、そう言って笑顔で大切な思い出の品を取り出した。
 すぐさま小さな異世界へと飛び込んだ澪に続いて、興味を惹かれた悪魔たちが続々とやってくる。
 集まった悪魔たちの前で改めて澪が披露した思い出の品は――【泡沫の舞謡】。それは一目見ただけでお洒落なサングラス兼伊達眼鏡。サングラスというかっこいいアイテムに、悪魔は俄然興味を惹かれたようだ。
「かっこいい!」
「それかけて悪いことしたい!」
 根は素直でいい子な悪魔たちは純粋にお洒落なサングラスに憧れを抱いている様子。
「これは、僕にとって憧れの人からもらったものなんだ」
 澪はこの品を贈ってくれた相手を脳裏に思い浮かべながら誇らしげにそう紹介した。
「男らしくて背も高くてかっこよくて。……ちょっと意地悪だけど、僕を気遣ってくれる優しい人」
 どうしても外見と服装で可愛いと評されがちな澪にとって、まさに男らしい彼は憧れの存在でもある。
「同じ男としてはさ、あんな風になりたいなって思うわけですよ」
 そんな存在からプレゼントしてもらったかっこいいサングラス。
「これ、僕の為に特注してくれてさ。世界でたった一つの宝物だよ」
「すごい! 世界でひとつだけ!」
「どんな時にかけるの?」
 悪魔だって特注品や一点ものに弱いのだろう。ますますサングラスに興味を持った様子で、悪魔たちは質問を投げかける。
「うん、一見ただのサングラスだけど……遊ぶ時は勿論、戦う時だって、ずっと一緒なんだ」
 例えば、ここではない別世界での戦争の時も。果てしない海を舞台に、七大海嘯と呼ばれる強敵たちと死闘を繰り広げた時も身につけていて。
「僕にとってはお守りみたいなもので」
 サングラスや伊達眼鏡としての機能だけでなく、持っているだけでも力を与えてくれるのだといつも思わされて。
「ねえ、横の部分に何か模様が入ってるの?」
 目ざとい悪魔が、泡沫の舞謡のテンプル部分に精緻な彫刻があしらわれていることに気づく。
 うん、と頷いてから誇らしげに澪は説明する。
「これは桜珊瑚と金蓮花。金蓮花は勝利の証で僕の象徴でもあるんだ」
 オラトリオの澪の琥珀色の髪を彩る花も金蓮花で。それは澪自身を表している。
「すごいすごい! さすが特注!」
 贈り主がそこにこめた想いを感じ取り、悪魔たちもうっとりと羨ましそうにしている。
「そう、僕にとって本当に大切な持ち物のひとつだよ」
 このサングラスを身につけていれば、柄には無くとも、これをくれた彼の漆黒……そして共に戦った時の鮮やかな炎を思い出すのだ。
「……温かくて、落ち着くんだ」
 その想いと絆は、目には見えなくとも確かに悪魔たちの心を打った。
「猟兵は真っ直ぐでかっこいい!」
「悪いことしてなくてもかっこいい!」
 そんな悪魔たちのキラキラとした眼差しと応援の言葉をこそばゆく感じながらも、澪は微笑み、泡沫の舞謡を大切に抱きしめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堺・晃
思い出、ねぇ…
まぁ、悪魔目線なら思うところもあるかもしれませんね
何せ僕は、父親殺しの暗殺者でしたから

★龍狼剣
一方には龍が、一方には狼が刻まれた小型の剣

僕と母は、父に虐待を受けていた
商人でもあった父は外面だけは良くて、慕われていて
けれど酒癖は最悪で、僕も母も、いつだって生傷が絶えなかった
その父の命を奪ったのがこの剣だった
母を守る為
後悔なんて無いけど、汚れた手で母の傍に居るのは忍びなくて
僕は家を去った

それからは見ず知らずの人々を生きる為に殺した
この刃はそれだけ多くの血を吸ってきた
こびり付いた匂いが取れなくなる程に

不気味ですか
でもね、僕にとっては一番の相棒なんですよ
罪を背負うべき僕には似合いの武器だ



●強き者の証
「思い出、ねぇ……」
 悪魔たちに支持してもらうため、この不思議な工房に思いの詰まったアイテムを持ち込み、小さな異世界に飛び込む必要があるらしい。
 悪魔たちが感動できるような思い出の品などあるだろうかと考えた堺・晃(元龍狼師団師団長・f10769)だが、逆に悪魔目線で見れば思うところがあるかもしれない品があることを思い出す。
「何せ僕は、父親殺しの暗殺者でしたから」
 さらっと重すぎる過去を告白する晃。一見すれば、柔和で爽やかな笑顔が印象的な優しく親切そうなお兄さんにしか見えない晃であるが、その本性は腹黒くて、超がつくドSの鬼畜悪魔でもあるのだ。
 早速そのアイテムを取り出しては、小さな異世界へと吸い込まれる。
「おお、かっこいい剣だな!」
「それがお兄さんの思い出の品?」
 早速やってきた悪魔が興味深そうに晃が手にした剣を指差しては問いかける。
「そう、龍狼剣と言うんですが……見えますか? 一方には龍が、一方には狼が刻まれているんです」
 なるほど、龍も狼も強そうだと、その意匠にもこだわりを感じ、悪魔たちは晃の言葉の続きを待つ。
「小さな剣に見えるでしょうが、斬れ味は抜群ですよ……」
 すると辺りは晃の思い出に即した世界へと変わり始める。そこにいるのは幼い晃と母親。二人は家で仲良く夕食をとっていたのだが、帰って来た父親が、何が気に入らなかったのか二人を見て暴力を振るい始める。
『やめて!』
 母親が晃を庇おうとしてくれたけれど、結局二人とも殴られ、蹴られ、生傷や青痣が絶えなくて。
 父がいつもこんなだったわけではないけれど。
 商人であった父は商売人らしく外面だけが良く、多くの人に慕われていて。だから世間一般には幸せな家庭だと思われていたのだろう。
 けれど酒癖は最悪で。酔った勢いで罵倒され、殴り蹴飛ばされるのもよくあることだった。
 このままじゃ、母が死んでしまうかもしれない。
 少年は決意とともに小さな剣を握りしめた。そうして――。
「その父の命を奪ったのがこの剣だった」
 少年だった晃が手にした剣は確かに父の身体に突き刺さって。溢れる血が手を汚したけれど後悔なんてなかった。
 母を守ることができたのだ。けれど、肉親殺しの汚れた手で、母の傍にいるのはやはり忍びなくて。
「僕は家を去った」
 それからも龍狼剣は晃と共にあって。その後も見ず知らずの人々の命を奪うことになる。
 ――それは自らが生きるために必要なことだった。
「この刃はそれだけ多くの血を吸ってきた……こびり付いた匂いが取れなくなる程に」
 しん、と悪魔たちの顔から表情が消え、静まり返る小さな異世界。
「不気味ですか。でもね、僕にとっては一番の相棒なんですよ。……罪を背負うべき僕には似合いの武器だ」
 自嘲的にそう呟くが、悪魔たちの顔に浮かぶのは嫌悪の色ではなかった。背負うべき罪と向き合い、守るべきものを守ろうとした孤独な青年へ抱く言い知れない感情だった。
「俺だったら、思い出すのも辛くて見えないところにしまっちまう」
「強くないとできないことね……」
 こんな話はあまり人にすべきものでもないと思っていたけれど。悪魔たちにとっては心に響くものだったらしい。
(「この先も、ずっと……」)
 母を守った少年の勇気と肉親殺しの咎と共に、この相棒と歩いて行くのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・焔
アドリブ・他猟兵との連携歓迎

●心情
思い出の詰まったアイテムかぁ、焔も色んな道具を持ち歩いているけど
やっぱり思い出のアイテムはこれかな?

●アイテム
『飾紐』ブルーデージーの髪留めリボン

焔の義理の姉(シホ姉)からの誕生日プレゼントとして頂いた物だよ。
身に付けると、傷が徐々に癒えていく神秘的な力に満ち溢れていて
様々な冒険で重宝してきたリボンだね。
シホ姉が、焔の為に頑張って作ってくれた
心の籠ったアイテムだから、焔も宝物にしているよ。

さて、このアイテムの『小さな異世界』に飛び込んで
一般の悪魔たちを招待してあげるよ。
悪魔の皆……焔たち猟兵たちを支持してあげてね!



●幸福を招くブルーデージー
「思い出の詰まったアイテムかぁ」
 悪魔王遊戯(デビルアトラクション)のひとつ、異世界の妖精が作ったという不思議な工房にやって来た四王天・焔(妖の薔薇・f04438)は、うーんと自身の持つアイテムからどれを選ぼうか思案する。
 無邪気で純粋で甘えん坊な焔は、四王天姉妹の末っ子として愛され可愛がられ、贈り物としてもらったものもたくさん持ち歩いている。その中のひとつ、魔界に咲くシロツメクサの漆黒の四つ葉なんかもこの世界にはある意味ぴったりだけれど。
「やっぱり思い出のアイテムはこれかな?」
 考えた末に焔が選んだのは可愛らしい青と白の縞々模様のリボンだった。すると、そのリボンへの思いに呼応するように、気がつけば小さな異世界へと飛び込んでいた。
「さて、それじゃあここに一般の悪魔たちを招待して……」
 焔がそう言うと、早速どこからともなく悪魔が姿を現した。招待したい気持ちが強ければより多くの悪魔が来るのか、わいわいとその数を増やしていく。
「ようこそ、焔の異世界へ!」
 和服メイド姿の愛らしい妖狐の娘が微笑めば、悪魔たちも焔を中心に円を描くように集まってきた。
「焔の大切な思い出のアイテムはね……このリボンだよ」
 じゃーんと取り出して掲げたのは、青と白の縞々リボン。よく見れば瑠璃雛菊の花柄がうっすらと見え、それが手の込んだ一点ものであることがわかる。
「可愛いリボンだね」
「おねえちゃんによく似合ってる!」
 小さな悪魔からも好評で、焔はにっこりと笑うと説明を続ける。
「これは焔の義理の姉……シホ姉から誕生日プレゼントとして頂いた物だよ」
 四王天姉妹の次女である姉の恋人――義理の姉に当たる女性は優しく気高い素敵な人。
「これは可愛いだけじゃなくてね、身につけてると、傷が徐々に癒えていく神秘な力に満ち溢れていて……」
 これまでの様々な冒険で重宝してきたリボンなのだと、エピソードを交えながら誇らしげに焔は語るのだ。
「贈り主の思いがこめられているんだね」
 うっとりとした瞳でリボンを見つめる悪魔に焔は頷いて見せて。
「シホ姉が、焔の為に頑張って作ってくれた心の籠ったアイテムだから、焔も宝物にしているよ」
「手作りなんだね!」
「素敵! いいなあ、こんなの欲しい!」
 盛り上がる悪魔たちに焔はにっこりと笑って頷いて見せる。
「じゃあ、作ってみる?」
 ここは不思議な異世界。いつの間にか辺りはリボン工房に変わっていて。色とりどりの布やテープが並び、机の上には手芸道具が用意されている。
 わあわあと興味を惹かれた悪魔たちが早速布やテープを物色し始める。机の上には、丁寧にリボンの作り方の説明まで置かれている。これならきっと悪魔たちでも作ることが出来るだろう。
 盛り上がる悪魔たちにひとつ言っておかなければいけないことがあると焔は思い出して。
「悪魔の皆……焔たち猟兵たちを支持してあげてね!」
「猟兵……いろんな冒険しててかっこいい!」
「ファンになっちゃった!」
 根は素直な悪魔たちはそう言って次々に猟兵の支持を表明する。
「よーし、じゃあ素敵なリボン作っちゃおっか?」
 焔は大切なブルーデージーのリボンを抱きしめ、満面の笑顔で悪魔たちにそう語り掛けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鎖木・茜
アドリブ◎

心から滲み出たのはお母様の笑顔
故郷で過ごした懐かしくも愛おしい日々
美しいお母様
優しいお兄様
皆の笑顔に胸が熱くなり
差し出される手に縋りかけた時
舞台目録が落ち開き具現化

主人公は生真面目な銀行員
親や社会の期待に沿うことだけを考えていた彼が
色々な事件を経験して人間性を取り戻し
最後は銀行を辞めて子供の頃夢見ていた
ダンサーとして歩み出すという名作
サムライエンパイアの清浄な朝靄は
アルダワのスチーム煙る街並に変化
お母様は主人公の母親役に
わたくしは主人公となり
奇抜な衣装で踊りましょう
今なら彼の心情が手にとるように分かりますの

幕が下り悪魔達が拍手喝采
アンコールでスポットライトを浴びて一礼
笑顔で応えますわ



●真新しい地図
「ここが異世界の妖精さんが作ったという工房ですのね……?」
 魔界と呼ばれるその場所で、大きな戦いが行われているらしい。グリモアベースで受けた説明のまま、思い出の品を手にやって来た鎖木・茜(自由を手にした姫君・f36460)は、少し不安げに辺りを見回した。
 いつも一緒にいた魂の親友はそばにいない。つい最近新しく手に入れた身体には慣れてはきたけれど、一人で行動することにまだまだ慣れなくて。新しい自分になってから猟兵として赴く依頼で一人なのは初めてだった。
「いいえ、わたくしだって一人でできますもの。アカネがいなくても一人でやってみせます」
 そう自分を鼓舞して、持ってきた思い出の品を胸に抱きしめていると……いつのまにか、小さな異世界へと入り込んでいたようで。
「ここは……?」
 故郷であるサムライエンパイアのような風景。家族と一緒に過ごしたあの神社で何度と見た清浄な朝靄。
 ああ、思い出すのは――。
(「お母様……」)
 優しく聡明で茜が大好きな母。その笑顔に守られて育ったのだ。
 身体が変わったとはいえ、忘れることなどない。あの故郷で過ごした懐かしくも愛おしい日々。
 美しいお母様が笑顔で微笑み、優しいお兄様が名を呼んでくれる。
 そう、茜がいるべき場所はやはりここで。
 胸が熱くなる。大好きな家族は茜の姿が変わってもちゃんと理解してくれている。愛してくれる。
 差し出された手を取ろうと手を伸ばしたその時。
 大切に抱きしめていた舞台目録が地面に落ちると、景色が一変した。
 サムライエンパイアの清浄な朝靄は、アルダワの蒸気機械から立ち昇るスチーム煙る街並みに変化していく。
 そうして一つの舞台の幕が上がる。
 主人公は生真面目な銀行員の青年。毎日ぴったりと数字が合わなければいけないその厳格な職場は、ある意味彼には似合いの職業だったのかもしれない。
 ただ彼が銀行員になったのは、親や社会の期待に沿った形であり、彼の夢ではなかった。
 そんな主人公の銀行員となった茜はしわひとつないぴっちりとしたスーツを着て、毎日ただただ機械的にルーティンワークをこなして日々を過ごしていた。
 けれど一日たりとも全く同じ日などないように。同じように思えた職場でも小さな事件は起こりうる。
 夢を追う人々の眩しい笑顔。常識にとらわれない斬新な価値観。
 決められたレールを親の期待通りに進むのが正しいと思っていた。けれど。
 まるで機械のように仕事をこなしていた彼に、やがて人間らしさが戻ってくる。
(「あの時は、彼の気持ちが理解できませんでした。お母様の言うとおりにしてれば万事うまくいくのです。お母様の期待に応えることが全てでしたから」)
 主人公の青年は、最後には銀行を辞めると、彼が子供の頃に夢見ていたダンサーとして歩みだすという名作。
 最後の見せ場は、常識にとらわれない奇抜な衣装を身につけた主人公が他のキャストと一緒に躍る圧巻のダンスシーン。
 茜は初めてこのお芝居を見た時、この主人公の変化に戸惑い、恐ろしく感じたものだ。ひょっとして自分もいずれこうなるのではと、恐ろしくなってもう一人の自分――アカネの人格を生み出したのだ。
 だが今は違う。新たな身体を手に入れた茜は、誰の庇護も受けず自由と共に歩き出すのだ。自分だけの道を。
 主人公の母親役には大好きなお母様が。一緒に手を取り踊りだす。
 お兄様も故郷の人々も、それぞれの役になって一緒に躍ってくれて。
(「ああ、今なら彼の心情が手にとるように分かりますの」)
 親が与えてくれた真っ直ぐなレールを歩くだけが人生ではなくて。自由は時には怖いけれど、それでも無限の可能性が広がっているから。
(「わたくしも新たな自分に出会えました」)
 お母様もお兄様も、今でも大切な存在に変わりない。大切な人たちが舞台の上で、茜の門出を祝福してくれる。
 舞台の幕が降りると、拍手喝采。いつのまにか集まっていた悪魔たちの熱いスタンディングオベーションに緞帳は再び上げられる。
 アンコールに応えた茜はスポットライトを浴び、笑顔で一礼。鳴りやまない拍手に何度も笑顔で応えるのだった。
(「そう、わたくしも以前はテアトル・リエーブルで舞台の主役を務めていたのでした……」)
 それが茜の夢なのかはわからない。けれどその可能性に、万雷の拍手に、茜は胸に手を当て、そっと目を閉じるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
悪魔達が支持したくなるような思い出か
なかなか難しいなぁ

私に良い考えがありますの
悪魔の方々はワルが大好きですの
ですから魔界学校での思い出を語りますの
もっていくアイテムは改造学ランですの

宵闇の衣の見た目を変えただけで
フリル満載の学ランと言い張ってるだけの何かだろ、それ

学園を牛耳っていたグループが
銀行強盗で集めてきたDを強奪したり
そのグループのメンバーを買収して
仲間を増やしたりと晶のワルい行いを話しますの
ガチデビル様だけがワルではありませんの

仲間を増やすとこについては
絶対お前も裏で糸引いてたろ

ちょっと晶の活躍を宣伝しただけですの
それに学ランのデザインは私の案ですけれど
その後の作戦立案と実行は晶ですの



●悪道武勇譚
「悪魔達が支持したくなるような思い出か……なかなか難しいなぁ」
 異世界の妖精が作ったという不思議な工房にやってきた佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、そう言うと一度考え込む。
 良い子過ぎる悪魔たちのせいでデビルキング法が制定されたぐらいである。彼らにとっては悪い奴はかっこいい、欲望は素晴らしいという当然のルールが前提としてあるので、一般的な思い出話ではパンチ力が足りないのは、今までのこの世界での戦いにおいて、晶は嫌というほど思い知らされていた。
「私に良い考えがありますの」
 わくわくとした楽し気な声に、晶はなんだか嫌な予感がした。
 もちろん私も手伝いますわと、やたら前のめりに出てきた晶と融合した邪神の分霊がうきうきとした様子で何かを手に晶の前に現れる。
「それってもしかして……」
 見覚えのあるその思い出の品に、晶はやっぱりこの世界ではそうなるかと納得のような諦めのような感情を抱く。
「ふふ、晶にとっても思い出ですの? 悪魔の方々はワルが大好きですの。ですから魔界学校での思い出を語りますの」
 嬉しそうに邪神が差し出したのは、いつも着ているふりふりの漆黒のドレスではなく。
「もっていくアイテムは改造学ランですの」
「宵闇の衣の見た目を変えただけで、フリル満載の学ランと言い張ってるだけの何かだろ、それ」
 邪神が広げて見せたそれは、忘れもしない名門魔界学校に潜入……カチコミ? した時のものである。フリル付きの白いブラウスに黒いスカート。学ランには「紗衣鬼 鴉輝羅」と刺繍されているこだわりぶり。
「可愛さも大事ですの。ブロマイドも大人気でしたの」
「ああ、もうその話はいいから……」
 最終的に晶を旗印にした一大番長グループとなったのは、もはや黒歴史と言える。邪神の思い出話はせめて悪魔たちに聞かせようと、二人は改造学ランに眠る小さな異世界へと飛び込むのだった。
「わあ、猟兵だー」
「次はどんな思い出話を聞かせてくれるの?」
 もはや呼ばなくても勝手にやってくる悪魔たちは、他の猟兵にも話を聞いたのか、わくわくした目でこちらを見てくる。
「これからとびっきりワルい話を聞かせて差し上げますの」
「……なんで自分からハードル上げるんだよ」
 なんだか得意げな邪神が改造学ランを示して見せると、集まった悪魔たちは熱い視線を送る。
「うわあ、めちゃくちゃかっこいい!」
「番長? 番長なの?」
 掴みはばっちりである。そうしてなぜか邪神が主体になってあの学園での一部始終を語るのだった。
 突如やって来た転校生悪魔が学園に番長として君臨し、生徒に銀行強盗や悪事でDを集めるように指示していたところ、晶は改造学ランを身に纏い、彼らが銀行強盗して集めてきたDを校門前で問答無用で強奪。
「ええ、それはもう理不尽かつ容赦なく。なおかつそのグループのメンバーを買収する悪徳っぷりですの」
「清々しいまでのワル!」
「そんな可愛い格好で容赦なさ過ぎてクールで痺れるっす!」
「ガチデビル様だけがワルではありませんの」
 強奪したDで相手を買収し裏切らせる。そして良い子の悪魔たちは、この裏切りという悪い行為に瞳を輝かせ、ころっと裏切ってしまうので、どんどんと仲間は増えていったわけだが。
「仲間を増やすとこについては、絶対お前も裏で糸引いてたろ」
「ちょっと晶の活躍を宣伝しただけですの」
 どう考えても増え方がおかしかった。それにあの例のブロマイドをみんな持っているのがおかしい。
 邪神は晶の追及をさらっとスルーしては、さらに裏切った悪魔たちから彼らが集め貯蔵していたDの場所を聞き出し奪取し、さらにそれを元手にグループメンバーを買収し……一大番長グループになったことを面白おかしく話すのだった。
「すごい……ワルい、ワルすぎる……!」
 言葉とは裏腹に、晶を見る眼差しはヒーローに対するものである。
「やってることは事実だけどさ、なんか脚色が入ってない?」
「そうですの? 全て晶が企てたワルい計画ですの。学ランのデザインは私の案ですけれど、その後の作戦立案と実行はぜーんぶ晶ですの」
 まあ確かにそうだけれど。悪いことをしなければいけないから、それにそってやっただけなのにこの言われようだ。
「い、今からでもグループに入れる?」
 きらきらとした瞳で悪魔たちに見つめられ、いくら猟兵に対する支持が必要とは言え、さすがに勘弁してほしいと思う晶だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルインク・クゼ
ヒナスミちゃんアイテムは、ちと違うかも知れんけど、体内にメガリスがあるからなぁ

『ぷぅぷーっ!』

ヒロアスに流れた時からヒナスミちゃんおったし、何時から一緒やったんやろう?

【ヒナスミ(の体内のメガリス)のフェアリーランド】
あれ?あたしの体が……赤い蜘蛛童
もしかして銀雨の明石の海辺

『ぷぅーっ!』

そう言えば、あたし……巣穴から時々
人間に見つからん様お忍びに

ヒナスミちゃんと出会って
意気投合して、色々遊んで

その内、あたしの所の集落で
一緒に住むようになって

あっ、ヒナスミちゃんが
明石焼きの銅板拾ってきた

『コレは明石焼きの銅板ですな、姫様これに興味おありで?』

鋏角衆のおじさんが、明石の事を教えてくれながら、明石焼きを作ってくれて、ヒナスミちゃんと一緒に食べた明石焼き……この時からあたしは

『ぷぅぷぷっ!』

穴子の明石焼き美味しい?ヒナスミちゃん。何だか眠く……

気付いたらオブリビオンの土蜘蛛達に囲まれて、おじさん達も殺されて

繭の中のあたしをヒナスミちゃんが守って、時空の歪み?吸い込まれる!

[アドリブ歓迎]



●始まりのシーアクオン
「ここが異世界の妖精さんが作ったって言う工房やね」
 魔王ガチデビルが王位に就くという目論見を阻止するため、一般の悪魔たちに支持してもらおうと、それぞれ思いの詰まったアイテムを持ってきた猟兵たち。
 その不思議な工房を前にして、ルインク・クゼ(蛸蜘蛛のシーアクオン参號・f35911)は、もう長い間一緒にいる気がするジャイアントオクトパスの【ヒナスミ】へと視線を向ける。
 過去の記憶を失っているルインクではあるが、思いの詰まったアイテムはもちろんあって。大好きな明石焼きを作るのに必要な料理道具一式もそのひとつではあるけれど。
「ヒナスミちゃんをアイテムと呼ぶのは、ちと違うかも知れんけど……体内にメガリスがあるからなぁ」
 大切な相棒であるヒナスミは、ルインクにとって何よりも思い入れのある存在でもある。その体内にメガリスがあるのなら、小さな異世界への扉を開いてくれるのではと思ったのだ。
『ぷぅぷーっ!』
 当のヒナスミはルインクの思いに応えるように元気に声を発している。
「そういえば、ヒロアスに流れた時からヒナスミちゃんおったし……一体何時から一緒やったんやろう?」
 いつも一緒にいることが当たり前になっていたから深く考えたことはなかったけれど、神隠しにあってヒーローズアースへと転移したルインクは、その際に記憶を失っているのでその辺りの経緯が思い出せなかったのだ。
『ぷぅーっ!』
 ヒナスミとの出会いを思い出そうと、その真っ赤な顔の愛嬌のある瞳と見つめ合ううちに、ルインクはいつの間にか、小さな異世界へと飛び込んでいた。
「あれ? あたしの体が……赤い蜘蛛童……」
 まず異変を感じたのは先程よりも低く感じる視点。おかしいと思って自分の身体を見渡してみれば、蜘蛛としては巨大ではあるが、人間からすれば小さい身体は、どうやら蜘蛛童の姿に変わってしまったようだ。
 ルインクが今のような人の姿を取れるようになったのは、神隠しにあってヒーローズアースへと転移した日。だからこれはそれ以前の時間軸ということなのか。
 そうして辺りを見渡してみれば、どこかで見たような風景。
「もしかして明石の海辺……?」
 地球は地球でも、銀色の雨が降り注ぐ世界。
『ぷぅーっ!』
 そこに響くヒナスミの声。段々とおぼろげだったはずのルインクの記憶が蘇っていく。
「そう言えば、あたし……巣穴から時々、人間に見つからん様お忍びに……」
 蜘蛛童だった頃、人目を避けながらもこうして海辺に足を延ばしていたことを思い出して。
「そこでヒナスミちゃんと出会って。意気投合して、色々遊んで……」
 それがヒナスミとルインクの出会い。ようやく思い出したその記憶に目の前のヒナスミが嬉しそうに声を上げる。
 約束をしていたわけではないだろうが、何度となくそうして二人で会っては遊んで、そうしていつしかルインクが暮らす集落で一緒に暮らすようになって。
 この不思議な異世界でそんな過去を追体験しながら、ルインクはかつての記憶を取り戻していく。
『ぷぅぷーっ!』
「あっ、ヒナスミちゃん、それは……」
 海岸で拾ってきたのだろうか、銅板に丸いへこみがいくつかあって、持ち手がついている見たことのないもの。
『コレは明石焼きの銅板ですな、姫様これに興味おありで?』
 集落に持って帰って観察していると、鋏角衆のおじさんがこれを何に使うのか教えてくれて。さらに明石のことを教えてくれながら、この銅板で明石焼きを作ってくれたのだ。
 本来はタコを具材に入れるらしいのだけれども、ヒナスミが一緒な手前かその明石焼きには穴子が入っていて。とても美味しかったのを覚えている。
(「ヒナスミちゃんと一緒に食べた明石焼き……この時からあたしは……」)
 忘れていた記憶が思い出されると、隣のヒナスミが明石焼きを食べながら嬉しそうに声を上げる。
『ぷぅぷぷっ!』
「穴子の明石焼き美味しい? ヒナスミちゃん。それにしても何だか眠く……」
 上機嫌で食べているヒナスミを笑顔で見つめていたルインクだが、どうしてだが急に眠気がやってきて……一瞬のうちに視界が暗転。再び気が付いた時には、辺りに立ち込める血の匂い。
「えっ、ここは……あ、おじさん!!」
 辺りにいたのはオブリビオンだろうか。仲間ではない土蜘蛛達がルインクを狙うように囲んでいて。明石焼きのことを教えてくれた優しい鋏角衆のおじさんも血を流して倒れていた。ぴくりとも動かない様子は恐らくもう絶命しているのだろう――この目の前の土蜘蛛達の襲撃を受けて。
『ぷぅぷーっ!』
 ヒナスミの声に我に返ったルインクは、咄嗟に身を守るように蜘蛛の糸で繭を作り出す。その中に入れば少しでも攻撃がしのげるだろうと。
 土蜘蛛達が迫る中、ヒナスミはルインクを守るように立ちはだかって。
「ヒナスミちゃん、あたしを守って……?」
 でも大勢の土蜘蛛を前にして果たして無事でいられるのかと思った時だった。
 ぐらり、と視界が揺らいだ。まるで天地が逆さになったようなひどい浮遊感の中、咄嗟にヒナスミに手を伸ばす。
 やがて何か強い力に吸い込まれていって――そうして気が付いた時には、ルインクはヒーローズアースへと世界を越えて辿り着いていたのだ。
「そうか、あたしは……」
 この異世界でヒナスミの体内のメガリスがルインクに過去の記憶を取り戻させてくれた。
『ぷぅぷーっ?』
 記憶の中でない現実のヒナスミが少し心配そうにルインクを覗き込んでいた。
「ありがとう、ヒナスミちゃん」
 その柔らかい頭を感謝の気持ちで撫でていれば、辺りにはいつの間にか悪魔たちが集まっていて。
「おねえちゃんが蜘蛛さんなんだよね?」
「タコさんもおねえちゃん守ってかっこよかった!」
 先程のルインクの過去の追体験を映画でも見るように見ていたのだろう。
「これはあたしが猟兵として活動を始める切欠の話。今もまだ自分のルーツを知るために動いてる途中なんよ」
『ぷぅぷぷっ!』
「じゃあ、応援するね!」
 ルインクはありがとうと悪魔たちに言葉を返して笑顔で頷く。
 あの光景は、大切な人たちの命が奪われた酷く残酷な記憶ではあったけれど。
(「少しずつでも思い出せたんやから……きっとあたしがすべきことはまだまだあるはず」)
 ヒナスミとの出会いも、そこで生まれた絆も、かけがえのない大切なものだから。
 気持ちを新たにしたルインクは、相棒へと視線を投げかけると力強く頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリロット・エカルネージュ
思い出のアイテムかぁ、何にするか色々迷ったけど、今回は【餃子パフェ】にしようと思うけど………

食べ物系アイテム大丈夫だよね?

●餃子パフェのフェアリーランド
UDCアースで餃子専門店を食べ歩いていた時に、とあるお店が目に留まったんだ

今日で店じまいするって看板張り付いていたけど、何か気になって入ってみたんだけど、メニューに餃子パフェって言うのがあって注文してみたら

中身にプリンが!?餃子の皮のモチモチとあってるし、カラメルとのハーモニーもたまらないっ!……これ、作り方気になるよね

「お嬢ちゃんにそう言って貰えるのは嬉しいんだけど、時代が早すぎたのかも知れないと思ってね、餃子とスイーツを分けて考えたいお客様が多かったのかな」

……そうだとしても、こんな美味しいの先入観だけで過去に埋もれさせるの勿体ないよっ!店じまいするならレシピをボクに教えてっ!

そこから、なんやかんやあって
今に至るけど、悪魔のあなた達も
良かったらコレ食べるかな?

とUCで人数分餃子パフェを『料理』して振る舞うよ

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



●受け継ぐのは想いと味
 悪魔たちに支持してもらい、戦況を有利に運ぶためには、この不思議な工房に思いの詰まったアイテムを持ち込んで、小さな異世界に飛び込む必要があるようだ。
「思い出のアイテムかぁ、何にするか色々迷ったけど……」
 工房に到着したエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)が取り出したのは、餃子の大地の力を操る餃心拳の伝承者たるエミリロットが大好きであり得意料理である餃子を使った餃子パフェ。そう、何よりも思いの詰まったものと言えるだろう。
「……食べ物系アイテム大丈夫だよね?」
 ただひとつ気になるのは食べ物も大丈夫かということ。いつでも作り出せるが、食べる度になくなってしまうものでもあるので、ずっと昔から使い続けていたものではない。それでも上手く小さな異世界へと飛び込むことが出来るだろうかとエミリロットは心配していたのだ。
 もちろん他にも候補はいろいろとあって、散々迷ったのだけれどもやはりこれにしようと決めたのだ。
 その強い思いが伝わったのだろう。エミリロットの心配をよそに、気がつけば一瞬にして餃子パフェの中に眠る小さな異世界へと飛び込んでいたのだった。
「ああ、よかった。……そうそう、初めて餃子パフェに出会ったのは確かUDCアースだったよね」
 小さな異世界が見せる風景は、たくさんの人々が行き交う街並み。服飾雑貨や飲食店。多種多様な店があり、エミリロットはその日、餃子専門店で食べ歩きをしていたのだ。
「次はどんな話が聞けるの?」
 いつの間にか目の前にはたくさんの悪魔たちが集まっていて、エミリロットの思い出話をねだるのだった。
「ふふ、聞いてくれる? ボクと餃子パフェの出会いの話……!」
 手にはもちろん思い出の餃子パフェ。悪魔たちは見たこともないスイーツに視線を注ぎながらエミリロットの話にわくわくと耳を傾けるのだった。
「今から数年前のことかな。UDCアースで餃子専門店を巡って食べ歩きをしていた時に、とあるお店が目に留まったんだ」
 小さな異世界はまるで映画のスクリーンのようにその景色を変えて。かつてエミリロットが行ったという一つのお店を映し出す。
 表の看板には、今日で店じまいをするという旨が書かれていて。そんな最後の日を迎えた店が気になってしまったエミリロットは、気づけば店の中へと入っていた。
 案内された席に座って、メニューを眺めていたら、なんとそこに餃子パフェの文字を見つけたエミリロットは心底驚いたものだ。初めての出会いに、これはもう頼むしかないとすぐさま注文。
 やってきたのは、フルーツや生クリームがたくさん詰まったパフェグラスに入った美味しそうなパフェ。けれどもちろん見間違うはずもなく、餃子がトッピングとして堂々と一番上に鎮座し、燦然と輝くように主張していて。
「これが、餃子パフェ……!」
 しっかりとその見た目を観察してから、スプーンを手にしてパフェをいただくエミリロット。気になるのはやはり餃子だ。まずは一口。
「……! 中身にプリンが!?」
 予想外の展開にエミリロットは驚いた。けれど、その美味しさにたちまち夢中になる。
「餃子の皮のモチモチとあってるし、カラメルとのハーモニーもたまらないっ! ……これ、作り方気になるよね」
 この店の餃子が皮からしっかりと作られた良いものであり、そしてその餃子の良さを生かして作られたものだとすぐに気づく。料理人のエミリロットらしく、自分でも作ってみたくて思わずそんな言葉が漏れる。
「お嬢ちゃんにそう言って貰えるのは嬉しいんだけど、時代が早すぎたのかも知れないと思ってね」
 エミリロットが感激しながら餃子パフェを食べる様子を見ていた店主が、そうにこにこと声をかけてきて。
「餃子とスイーツを分けて考えたいお客様が多かったのかな」
 確かに斬新な発想であり、他で類を見ないメニューではある。けれどこうして食べてみれば、その完成度の高さがわかる。餃子はおかずという常識は、あまりにも馴染みすぎて、スイーツにするという発想が受け入れがたかったのかもしれない。
「……そうだとしても、こんな美味しいの先入観だけで過去に埋もれさせるの勿体ないよっ!」
 エミリロットは真剣な表情で店主にそう訴えかけた。この店は今日で閉店するという。もうこの味を食べることは二度と叶わないのだ。
「最後の日に、そう言ってもらえて本当に良かった……作った甲斐があったよ。ありがとう、お嬢ちゃん」
「終わりになんてしたくないよ……ねえ、店じまいするならレシピをボクに教えてっ!」
 エミリロットの熱意は店主に伝わった。そうしてスイーツ餃子の乗った餃子パフェのレシピを教えてもらい、今でも中のスイーツ餃子を季節ごとに変えたりしながら作り続けているのだ。
「すごいね、運命の出会いだね!」
「お店の人も受け継いでもらえて喜んだだろうね」
 エミリロットがあの日あの店を訪れなければ、あの店の餃子パフェの味はきっと失われていたことだろう。
「ボクは大切なものをいくつも受け継いできたんだ……亡き老師から教えてもらった餃心拳の奥義も、餃子パフェも。これからも大事にしていくんだ。受け継いでくれた人たちの思いと共に」
「かっこいい……!」
「ドラマみたいなこと、ほんとにあるんだね!」
 悪魔たちがエミリロットを見る目がキラキラと輝いて。すっかり猟兵のファンになったようだ。
「そ、それでその餃子パフェはどこに行けば食べられるの?」
 失われなかったのならきっと食べられると、悪魔の少女が期待に満ちた目で問いかける。
「今ここでボクがみんなにご馳走するよ。良かったら食べてね」
 こうなることは予想済み。しっかり材料を持ち込んでいたエミリロットはユーベルコードであっという間に餃子パフェを作り上げる。
「人数分あるからね、スイーツ餃子の可能性をご賞味あれっ!」
「うわ、ほんとプリンと餃子合う!」
「こっちはチョコバナナだ! もちもちで美味しい~」
 悪魔たちもこれには大喜びで。猟兵の支持を得るだけでなく、スイーツ餃子の一大ブームを悪魔たちにも巻き起こすことになるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…この世界にも斯様な場所があろうとは…、いえ、或いはこの世界なればこそとも申せましょうか。

基とするのはアイテム『師よりの選別』
構成される世界は師より武術を学ぶ場となった道場の風景

…幼少の頃、私は自らの生まれも知らず雪原に生き、ただ本能のまま狩り喰らうばかりの獣でした。
その本能は消えたわけでは無く、今この時も変わらずこの身に息づいています。

されど白い満月の夜、師に拾われ名を与えられ、力の在り様を知るべくと武の業、
そして何よりも衝動を律す精神を教えをこの身に授かりました。

師は命を壊す術たる己が武の業の失伝をこそ望んでいたが故に私もこの業の名は知らず聞くことも無く、そしてこの先も伝える事は無いでしょう。
されど今の世に生きる術、命の尊きを学んだ教え。
武の力では無く、力に呑まれぬ武の精神…。それだけは、いつの世も受け継がれて欲しいものですね。

道場には初老の男性と、牙も爪も剥き出しの幼い己の姿が映る。
爪も牙も届かぬ師より武の教え、礼儀作法、命の在り様を説かれ、
いつしか幻影の姿は、今の己へと重なった。



●何よりも大切な教え
「……この世界にも斯様な場所があろうとは……」
 魔界とも呼ばれるこのデビルキングワールドでの戦いは、良い子すぎる悪魔たちがデビルキング法にのっとって日夜悪事に励む世界。7代目のデビルキングを決定するというこの戦いにおいても、野生のバスがバスジャックするのを止めるだの、魔界銀行街で銀行強盗をするだの、家賃を滞納しているマンションの住人の立ち退きを迫るだの、およそ他世界では考えられないことが行われ、猟兵たちがそれに対処しているわけだが。
「……いえ、或いはこの世界なればこそとも申せましょうか」
 異世界の妖精が作ったという工房へと足を踏み入れた月白・雪音(月輪氷華・f29413)は、どこか納得したように頷きもするのだった。
 異世界から召喚したという魔王と、雪音もこの戦争において何度か戦った。この世界で異世界の気配を感じることはいくつもある。そしてありえないことはないと思えるくらいなんでもありなこの世界において、それは不思議なことではないのだと。
「……」
 小さな異世界に飛び込むには、思いの詰まったアイテムを持ち込む必要があるという。雪音は、持参した手紙に視線を落とした。
 師より餞別として渡されたそれは雪音にとって武の心得だけでなく、未来への指標ともなりうる言葉がしたためられた大切なもの。
 師との出会いは、雪音という名を持つ前から彼女が育った深い雪が降り積もる雪原でのこと。
 キマイラである雪音はヒトの体に虎の特徴を有する。雪原で雪と同化してしまいそうな色素が欠乏した真白きアルビノの少女は、この雪原を訪れた人間によってつけられた、相応しい名を得ることになる。
 雪音の想いに呼応するように、辺りの風景は深い雪が降り積もる雪原に変わっていて。気がつけば手紙の中に眠る小さな異世界へと飛び込んでいたのだった。
(「……幼少の頃、私は自らの生まれも知らず雪原に生き、ただ本能のまま狩り喰らうばかりの獣でした」)
 ヒトの姿を有してはいるものの、獣の本能のまま、生きるために狩りを行っては獲物を喰らい、目的もなく雪原という過酷な環境で生きていくのみだった。
 まるで映画を見ているように、雪音の前に幼い頃の雪音が現れ、雪原をひた走り、狩りを繰り返す姿が映る。
 今でこそスマートフォンも使いこなし、お気に入りのスイーツを食べては幸せを感じ、傍目にはヒトらしく振舞っているようにも見えるだろう。
(「けれど、あの頃表出していた本能は消えたわけでは無く、今この時も変わらずこの身に息づいています」)
 あの夜。煌々と輝く白い満月が雪原を照らしていた夜に、雪音は師と呼ぶ人間に拾われ、名を与えられたのだ。
 日ノ本出身だという人間の師は、古い武術を修めていたので、雪音もまた体術による戦の術を自然と学ぶことになる。戦いを学ぶことによって、もともと息づいていた獣の闘争本能は殺戮衝動を呼び起こすが、師が教えてくれたのは武術だけでなく、鍛錬によってそれらを律する精神の在り様だったのだ。
(「そう、何よりも衝動を律す精神を、教えを……この身に授かりました」)
 雪音の師は命を壊す術たる己が武の業の失伝をこそ望んでいたようで、それを教えた雪音にもその業の名を教えることはなかった。雪音もそれを訊ねることはせず、知らぬままではあるが、師の望み通りこの先に伝えるつもりはない。
 ならばなぜ、師は雪音に自らの武術を教えたのか。
 幼い雪音が虎の牙と爪を露わに、その本能のまま闘争心を剥き出しにしている姿を、どこか冷静に眺めている雪音。
 親の顔も知らずただ本能のまま雪原で生きてきた幼い少女は、師に出会わなければあるいは厳しい自然の掟の前に力尽きていたかもしれない。師は雪音に生き抜く強さと命の尊さを教えてくれた。本能を律するためには、強くなる必要があったのだろう。力だけではない強さをも示してくれた。
(「武の力では無く、力に呑まれぬ武の精神……。それだけは、いつの世も受け継がれて欲しいものですね」)
 たとえ師の武術が失伝しても、師が教えてくれた大切なその精神は名を変えてでも受け継がれてほしいと願うのだ。
 いつしか場面は道場へと移り変わっていて。そこには初老の男性と、牙も爪も剥き出しに戦意を露わにした幼い雪音の姿。
 雪音は獣の俊敏さを活かして跳躍し、爪を振るうが、その攻撃はあっさりとかわされる。野生の本能が相手の急所を狙い、一撃で仕留めようとするのだが、その爪も牙も全く師には届かない。
 師の武術はただひたすらに「拳を以て敵を殺す」術であった。故に禁じ手も、音も気合の声もなく、相手に肉薄し、最大限の威力をもって壊すのがその在り様。
『故に拳を振るわぬ事こそ真髄、その力に呑まれる事無かれ』
 何よりも衝動を律する精神の在り様こそを第一と定めることこそが、師の最初で、最大の教えだったのだ。
(「力に呑まれぬ武の精神……そして……」)
 目の前で見ているかつての自分の幻影の姿が、今の雪音の姿と重なる。
 師の教えを受け、自分は強くなったのだろう。だが、人外の身でありながら、異能を操る才には恵まれなかったようだと自覚して。ならばと得たのは人間業の極地。武具や爪牙、闘気すらも用いぬ徒手空拳を極限まで練り上げた純粋な武術。
(「武の心得と共に『広く世界を見よ』としたためられた手紙が私の歩む道の背中を押してくれているのです」)
 感情の表出が不得意な雪音であるが、その凛とした表情と真っ直ぐに前を見据える赤い瞳に、いつの間にか集まっていた悪魔たちも息を呑み、雪音の辿って来た歴史に深く感銘を受けるのだった。
 白い満月の夜、一人雪原で生きていた幼い少女は、今その教えを胸に抱き、望む未来を掴むため邁進しているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ビスマス・テルマール
アイテムの中の小さな異世界、と言う訳ですか……ここは【なめろうフォースセイバー】を

●なめろうフォースセイバーの思い出
これは……只のフォースセイバーでは

「ビスマスは察しが良いですね、これは『なめろう』の気(大地の力)を光の刃として出力する様に調整した物で」

使い方も、恩師から教わったんですよね

「手元のなめろうをセイバーに意識を向け、やはり貴女はセンス良いですね、初めてにしては上出来ですよ、では次は想像のみで」

上手くいかない、先生っ!さっきは青と銀と黒色のアジの形の光刃だったのに今度は形がふにゃふにゃでっ!

「大地の力への感受性とセンスは良いですが、想像力は要鍛練でしょう、大丈夫貴女ならすぐ物に出来ますよ」

●悪魔にアピール
先生がわたしに授与してくれた物ですが、修行の時期から長い付き合いで。

なめろうの種類によって刃の色や形や性質を変える代物で、今も色々ななめろうを作って、どんな性質に反映されるか
試していて

とサンマなら銀と黒色
ハワイアンなら虹色と色々見せたり
なめろうを『料理』しご馳走を

※アドリブ歓迎



●想像力から広がる世界
「本当に、デビルキングワールドにはいろいろな場所があるんですね……」
 異世界の妖精が作ったとされる工房へと足を踏み入れたビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は、物珍しそうに辺りを窺った。7代目のデビルキングを決定するという大きな戦いが起こるまでは、この世界に来る機会がなかったビスマスにとって、悪い奴こそカッコいい、欲望は素晴らしいという悪の道徳を持つデビルキング法には少し戸惑うこともあった。だが先日は悪魔テレビ局において、心を込めて作った美味しいなめろう料理を振舞うという勇者のごとき行いで、デビルキング法を犯す重犯罪者として悪魔たちの注目と憧れを集めてきたところだ。
「ここでは、思いの詰まったアイテムを持ち込むことで、そのアイテムの中の小さな異世界に飛び込めるということですか……」
 そうしてその自分だけの世界の中で、一般の悪魔たちへと思い出を語ったり体験してもらうことで、ガチデビルでなく猟兵を支持してもらうようにして、ガチデビルが王座を勝ち取るのを阻止するのだ。
「わかりました。では……ここはなめろうフォースセイバーを」
 ビスマスが選んだのは、長年愛用している【なめろうフォースセイバー】だ。それは実体を持たないなめろうの気を含んだエネルギー武器である。併用したなめろうの種類により、形状や色が変幻自在に変わる、なめろう猟兵を自称するビスマスにぴったりの武器である。
「これには思い出がたくさん詰まっているんです。……なめろうフォースセイバーの小さな異世界……一体どんなところでしょうか……」
 そうして大切な品を見つめて、思いを馳せているうちに、辺りの風景が一変。気がつけば、小さな異世界へと飛び込んでいたのだった。
 目の前には、ビスマスが恩師と慕うクリスタリアンの男性。まだビスマスが小さかった頃、親から虐待やネグレクトを受け、そのことに耐え切れず家を出ては、居場所を求めて彷徨っていた時、ビスマスになめろうを勧めてくれた大切な人。ご当地ヒーローを称する彼との出会いでビスマスの人生は変わった。恩師が食べさせてくれたなめろうの美味しさと人々の善意がビスマスの未来を切り開いてくれたのだ。
 そんな恩師がビスマスに初めてなめろうフォースセイバーを授けてくれた時のことを、ビスマスはまだ今より幼かった自分の視点で追体験することになる。
「これは……只のフォースセイバーではないですね……?」
 受け取ったその武器がスペースシップワールドでは馴染みのあるフォースセイバーとはどこか一線を画していることに、ビスマスはすぐに気づき、恩師へと問いかけていた。
「ビスマスは察しが良いですね」
 利発な教え子を称えると、恩師は一度ビスマスからなめろうフォースセイバーを受け取ると、手本のようにそこに光の刃を出現させて見せた。
「これは『なめろう』の気を光の刃として出力する様に調整した物で……」
 なめろうの気とは、すなわち大地に眠るその土地に根付いた力。恩師は言いながら光の刃を様々な色や形に変形させて見せる。
「それがなめろうの気……! なめろうにもたくさん種類があるように、どのなめろうをベースにするかで色や形も変わってくるというわけですね」
「本当にビスマスはすぐに理解してくれますね」
 褒められくすぐったさを感じながらも、ビスマスはこの自分だけの武器がとても気に入って、すぐさま使いこなしたいと思ったのだ。
(「使い方も、恩師から教わったんですよね」)
 幼い自分の視点から見るとなんだか初々しくも微笑ましいが、なめろうへの純粋な愛情や情熱がこの頃から深く根付いていたことがわかる。
「では、やってみましょうか」
「はい!」
 手渡されたなめろうフォースセイバーと、イメージするための手助けとして渡されたなめろうを前にビスマスは意識を集中させる。
「そう、手元のなめろうをセイバーに意識を向け……」
 ビスマスの手に、なめろうの主たる食材であるアジを模した青、銀、黒色の光の刃が出現する。
「先生、できました!」
「やはり貴女はセンス良いですね、初めてにしては上出来ですよ」
 さすが吞み込みが早いと、恩師は誇らしそうにビスマスを見つめ、そうして先程渡したなめろうを回収した。
「では次は想像のみでやってみましょう」
 ビスマスはそっと目を閉じ、想像力をもってなめろうフォースセイバーを具現化しようとするが……。
「上手くいかない、先生っ! 今度は形がふにゃふにゃでっ!」
 先程はきちんと目の前のなめろうからアジの形と色を再現できたのに、今度はイメージがまとまらなかったのか、形がふにゃふにゃと歪み、色も定まらない。
「大地の力への感受性とセンスは良いですが……想像力は要鍛練でしょう」
 目の前にないものを正確に想像し、形作ることはやはり難しい。だが、それは鍛えさえすれば上達する分野でもある。自然と持って生まれた呑み込みの早さと努力を惜しまない情熱があればすぐに改善するに違いない。
「わたしにできるでしょうか……?」
「大丈夫。貴女ならすぐ物に出来ますよ」
 恩師の言葉通り、ビスマスは少し鍛錬すると、すぐになめろうフォースセイバーを自在に操れるようになったのだった。
「……というのが、わたしと恩師となめろうフォースセイバーの思い出です」
 気がつけばたくさん集まっていた悪魔たちが、ひとつの映画を鑑賞するようにビスマスの思い出を眺めては、そのアイテムにまつわる深い物語に胸を熱くしていたのだった。
「大切なものなんだね」
「はい、先生がわたしに授与してくれた物ですが、修行の時期から長い付き合いで」
 大切そうになめろうフォースセイバーを持つビスマスは誇らしげに微笑んだ。
「他にはどんな形に変えれるの?」
「ねえ、なめろうってどんな料理?」
 悪魔たちの質問攻めに応えるために、ビスマスはまずなめろうについて説明し、そうしてそれぞれのなめろうを模した光の刃を出現させる。
「なめろうは元は船の上で作られたと言われる漁師料理で、新鮮な魚をおろして味噌や香味野菜などとたたきあわせたものです」
 アジなどの青魚が一般的ではあるが、新鮮な魚であれば何でも美味しく、そのバリエーションも豊富だ。
「なめろうの種類によって刃の色や形、性質を変えることができますので……これならサンマですね」
 細長いシルエットに、銀と黒の刃が一瞬にして現れる。
「今も色々ななめろうを作って、どんな性質に反映されるか試している最中なんです」
 ハワイアンなめろうはマグロにアボカドにバナナといった変わり種にも思えるが、恩師が初めて食べさせてくれたビスマスにとっても思い出の味。マグロの形の光の刃が虹色に輝くのを悪魔たちはキラキラとした瞳で見つめていた。
「ひとつの武器なのに何種類も形を変えるってこと?」
「何十種類……ひょっとしたらそれ以上かもしれませんね」
 日夜なめろうの布教と探求を続けているビスマスのレパートリーは相当な量だ。
「では、皆さんにもなめろうをご馳走させていただきますね」
 ここは小さな異世界。ぱっと世界がキッチンへと変われば、エプロン姿のビスマスが早速なめろうの調理にかかる。
「たくさん作りますから、好きなものを食べてくださいね」
 歓喜の声を上げる悪魔たちの胃袋を満たすべく、ビスマスは自分の未来を切り開いてくれたなめろうを心を込めて作っては、振舞うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小雉子・吉備
アイテムの中に異世界があるってゆーの、斬新とゆーか色々興味あるし

キビも色々迷ったけど、コレかな?

[九頭雉鶏精メダルの思い出]
メカニカルな鎧を着た桃太郎のお話、幽世の追憶で知ったんだけど現世でも同じのがあって、猟兵になった時に

ヒロアスって世界を知ってコレは
似た物(+九頭雉鶏精モチーフ)作って貰おうって、九頭雉鶏精メダル持って
作れそう人を探してて

「この世界にも、貴女が言う様な桃太郎作品はあったけど、酔狂な子にゃんよ、でも面白そうだし、わたしもアレ好きだからにゃ、張り切って作ってそのメダルと連動する様にしたにゃ」

ありがとーっ!ケットシーの科学者ちゃんっ!わぁ、赤色で頭と肩と足装甲に雉の頭のデザイン凄くカッコいっ!

あっ、ケットシーちゃんもあの作品のファンなんだぁ、ヒロアスでもやってるんだねっ!

「今日丁度、再放送あって……あっ!半分ほど見逃して戦闘シーンにゃ!」

ナイス、キビも早速テレビにあわせてUC〈九頭雉鶏精メタル〉併用使用を

あの後、ケットシーちゃんとあの作品談義楽しかったなぁ

[アドリブ大歓迎]



●憧れのヒーロー
「デビルキングワールドでの依頼は、キビにはそんなに縁はなかったんだけど……」
 初めてやって来た魔界にやや戸惑いつつも、目的の場所である異世界の妖精が作ったという工房に辿り着いた小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)は、興味深そうに辺りを眺めた。
 何しろ吉備は東方妖怪の正義の味方である。桃太郎のような正義のヒーローを目指す身としては、何かにつけて悪事をこなさなくてはいけないこの世界では、依頼とは言えワルいことをするのは気が引けるというもの。
 そんな吉備が今回やって来たのはもちろん理由があって。
「アイテムの中に異世界があるってゆーの、斬新とゆーか色々興味あるし」
 魔界の中でも、さらに異世界の気配が漂うこの場所では、特に悪事をしなくても良さそうだし、何なら吉備が猟兵として今まで活躍してきた経験で悪魔たちの支持を得られるかもしれない。正義の味方としても何ら問題はなさそうなので、安心してやってきたのだ。
「思いの詰まったアイテムかあ……」
 幽世に流れ着いた時には、それまでの記憶を失っていた吉備だが、もちろん思い入れのあるものはたくさんある。
 憧れのヒーローである桃太郎の刀との説もある御神刀をモチーフにした【桃乃花吉備男】や幽世らしい駄菓子兵器【黒蜜かけキビダンゴアイスバー】などなど。
「キビも色々迷ったけど……コレかな?」
 最終的に吉備が選んだのは、手のひらで輝くあやかしメダル。ただのあやかしメダルではない【九頭雉鶏精メダル】は、吉備にとってそれは思い出の深いものなのだ。
 そのメダルをじっと見つめているうちに、吉備はいつの間にか九頭雉鶏精メダルの中に眠る小さな異世界へと飛び込んでいたのだった。
「幽世に流れ着いたあと、自分探しのために放浪してたんだよね」
 記憶を失い、右も左もわからなかったところを骸魂に襲われ、巻き込まれそうになったところを、とある猟兵に助けられた吉備。困っている人を善意で助ける正義のヒーロー。それがきっかけだったのだろう。その後、現世から幽世に流れてきたあらゆるヒーローを扱った作品の追憶に触れ、正義の味方を目指そうと決意し、猟兵になったのだ。
「桃太郎をモチーフにした作品はたくさんあったけど。幽世の追憶で知ったのは、メカニカルな鎧を着た桃太郎で」
 現世にも同じものがあり、そして猟兵となり世界を渡れるようになった後、ヒーローズアースという、ヒーローがたくさんいる世界の存在を知った。
「鎧を着た桃太郎?」
「何それかっこいい!」
 いつの間にか集まった悪魔たちが吉備の話を興味津々といった様子で聞いている。辺りの世界は、吉備が触れたヒーローたちの追憶が浮かんでいるのか、ありとあらゆるヒーローの映像が浮かんでは消えていく。
「だよね? だからキビ、ヒロアスって世界を知ってから、これに似たものを作ってもらおうって思って、この九頭雉鶏精メダル持って作れそうな人を探してて」
 そうして出会ったのだ。吉備の理想を完璧に再現し、叶えてくれる作り手に。
「この世界にも、貴女が言う様な桃太郎作品はあったけど、酔狂な子にゃんよ」
「作ってくれるんだね、ありがとーっ!」
 桃太郎が着ている鎧をアレンジして作ってほしいというオーダーを叶えてくれたのは、なんとケットシーの科学者だった。
 吉備がこの作品のこういう鎧のイメージで、でもそこは雉鶏精の妖怪らしく雉のモチーフを入れてほしいということを熱く語れば、ケットシーは最初は驚いていたようだが、ついにはその熱意に大きく頷いた。
「まあ、酔狂ではあるけれど……面白そうだし、わたしもアレ好きだからにゃ」
 実はケットシーもその作品のファンであることがわかれば、二人は意気投合。吉備の熱い気持ちと九頭雉鶏精メダルを見て、むくむくとアイデアが浮かんだらしい。
 完成した九頭雉鶏精テクターは、鮮やかな赤色の鎧に同色の足装甲。そして雉の頭をデザインした頭部が何よりもかっこよく唯一無二の一品。
「わぁ、赤色で頭と肩と足装甲に雉の頭のデザイン凄くカッコいいっ!」
 想像以上の出来栄えに、吉備も瞳を輝かせ、何度も何度も眺めては触って。
「張り切って作ってそのメダルと連動する様にしたにゃ」
「え、そうなの!?」
「ああ、あの作品でも変身シーンは見せ場だからにゃ。そこは重要なのにゃ」
 なんだかんだいいながら、楽しんで作ったらしいケットシーは自慢げに猫の髭をそよがせる。
「ケットシーちゃんもあの作品ほんとに好きなんだね。あ、ヒロアスでもやってるんだねっ!」
「今日丁度、再放送あって……あっ! 半分ほど見逃して戦闘シーンにゃ!」
「ふふ、ナイスタイミングだねっ!」
 ちょうど今やっているらしい放送を、一緒に観ることになった吉備は、ケットシーが見せ場という変身シーンに合わせて九頭雉鶏精メダルを掲げると、正義の誓いを立て、真の姿に変身する。
「テクターアップ!」
 九頭雉鶏精メダルで召喚した魔法陣から、ケットシーが作ってくれた九頭雉鶏精テクターが現れると、アニメばりの変身シーンで吉備は雉鶏精の面影が色濃く表れた真の姿で鎧姿に変身する。
「うん、メダルとの連携もばっちりにゃ!」
 拍手と共に満足げに頷くケットシー。吉備もまた自分の望み通りの仕上がりに、憧れのヒーローに近づけたようで嬉しく思うのだった。
「変身ヒーローはかっこよすぎ!」
 目の前で見事変身して見せた吉備に、子どもの悪魔中心に大盛り上がりである。
「あの後、ケットシーちゃんとあの作品談義をして……楽しかったなぁ」
 桃太郎が鎧姿に変身するだけでなく、お供の動物とも合体したりする要素もあったので、そんな話で大いに盛り上がったのだ。
「そのお話、ぼくも見たいよー!」
「あ、みんなも興味ある?」
 変身ヒーロー。日曜朝にやっていそうな作品はどこの世界でも子供の心を掴んで離さないようだ。
「よーし、じゃあ今から上映会しちゃおっか? 見終わったらみんなで一緒に語り合おうっ!」
 小さな異世界は、にわかに楽しい上映会場へと変化して。
「ヒーローかっこいい!」
 悪いことが良いこととされるこの魔界においても、ヒーローを支持する悪魔が続出。
 吉備は悪魔たちの支持をそれはそれはたくさん得ることになるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月31日


挿絵イラスト