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大気汚染から森を救え~森の中のゴブリン編

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●小さな村にて
「けほっ、けほっ」
「最近、なんだか妙に煙いわねぇ……」
「なんだか、変なにおいもするし……」

 ここはアックス&ウィザーズ世界の、トラ・トワニ村という小さな村。そこで一つの異変が生じていた。霧だろうか。いや、違う。これは悪臭を放つ、煙である。これは一体どうしたことか。その煙のせいで、体調を崩す村人が続出しているのだ。被害は人だけにとどまらない。近隣の森でも、倒れる野生動物が現れ、その死体が腐臭を放ち、一層住環境を悪化させている。

「一体、どうして……」
 住民の一人が、嘆くように空を仰いだ。
 それに答えるのは、一陣の腐敗した風だった。

●グリモアベースにて
「はーい。みなさん、ようこそお集まりくださいましたー。事件ですよー」
 ぺこりと頭を下げるのは、グリモア猟兵の東風・春奈(小さくたって・f05906)。頭の上下にあわせて、つけ耳飾りがぴょこりと揺れる。ドワーフの低身長のおかげで、その動きはよく見えるだろう。

「オブリビオンの活動によって、大気が汚染されてしまっているんですー」
 春奈は、より詳細な説明を続ける。問題は、『トラ・トワニ村』という場所で起きている。この辺りは、一定の方向から風が常に吹いており、その風上には、本来綺麗な森があるという。おそらく、大気汚染の原因はその森に何かがあるからではないかと考えられる。森へ様子を見に行った村人が、木々を伐採するゴブリンを見たという報告もあるんだとか。
「このタイミングでの目撃情報。無関係とは考えられません。ゴブリンの密度が多い方へと進んでいけば、きっと原因が見つかるはずですー」
 私の予知が、そういってますなんて、とぼけた顔で春奈は笑う。

「それも、まずいことにですねー。汚染の影響で、オブリビオンが一層活性化しているらしくー、はっきり言ってピンチ、大ピンチなんですー」
 汚染の原因と、汚染によって暴れだしたオブリビオン、両方を対処しなくてはならないのだという。
「暴れだしたオブリビオンへの応援も大歓迎とのことでー、そちらに興味があれば遠慮なくお願いしますー」
 どちらも大切で、どちらも看過できない事件ですからー。
 おすきな方に手を貸してくださいねー。
 そう言って、少女はグリモア・コンソールを起動させる。

「そういえばですねー」
 汚染の原因を排除すれば、森はたちまち元の姿を取り戻すだろう。もともと、『雨已まぬ森』と呼ばれる清らかな森。森の木々で遊んだり、汚染から解放された動物と戯れたり、雨を利用して何か遊んでみるのもいいかもしれませんねーなんて、春奈は微笑む。

「おしごとが済んだら、少し羽を伸ばしてくるのも、いいと思いますよー」
 それじゃあ、いってらっしゃいと、トリノが言い終わるかどうかの内に……コンソールが強く光り、猟兵たちの周りを光が囲み――――。

 遮られた視界が再びクリアに戻ると――、気づけばそこは森の中だった。


隰桑
 お世話様です。隰桑(しゅうそう)と申します。

 本シナリオは、夜一MSとのコラボシナリオとなっております。
 とても素敵な文章を書かれるMSで、隰桑は個人的に大ファンです。
 両シナリオの参加者及びNPCが直接的に交流することはできませんが、同世界・同時刻に起きた二つの事件というシチュエーションで遊ぼうという企画です。

 なお、同時刻という設定ではありますが、どちらのシナリオにも参加したい方がおられましたら、そちらを制限することはありません。
 楽しんでいただければと思います。

●依頼について
 アックス&ウィザーズ世界です。戦って、戦って、騒ぐ依頼です。
 目の前の敵を倒すプレイングを書いていただければ、話は勝手に進行します。
 一章・二章については、戦い方に関するプレイングのみで十分です。
 しかし、反映できるかは別にして、絡め手の記載も歓迎です。
 こういう風に道を調査するよ~みたいな内容があれば、採用するかもしれません。

 三章は、自由な日常シナリオとなります。
 今シナリオの案内人、東風・春奈は呼ばれれば登場します。

●プレイングについて
 自由に送っていただいて結構です。隰桑への気兼ね、遠慮は不要です。
 なるべく多くのプレイングを採用したいと思っています。
 得意なこと、やりたいことを書いてください。
 皆様の自由な発想で、事件の解決を。

 ただし、オープニング提出時点で二章と三章のフラグメントは確定していますので、その点ご留意くださいませ。

 あわせプレイング歓迎しております。
 複数人の場合は名前(相互に、呼び方・キャラIDなどあると嬉しいです)
 団体様の場合はそれに加えて人数がありますと、迷子が減るかと思います。

 逆に誰かとプレイングを一緒にしてほしくないソロ希望の方は、その旨記載していただけますと助かります。記載ない場合、どなたか別の参加者の方と同時に採用、リプレイに反映することがあります。

 隰桑はアドリブが大好きです。アドリブがどうしても困るという方は、別途プレイングにその旨記載いただけますと助かります。(【アド禁】の三文字で十分です)

 それでは、熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ゴブリン』

POW   :    ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●現れる小鬼
「ゲギャ、ゲギャ、ゲゲゲ、ゲギャギャ」
「マタ、来タ」「邪魔モノ」「邪魔、邪魔」「邪魔ジャ魔邪魔マ」
「邪魔モノハ、殺セ」「殺セ」「殺セ」「殺セ」
「見ラレテハ、ナラヌ!」「ナラヌ!」
「王様ノ命令ハ」「絶対!」「絶対!」
「ナラバ」「ゲギャ、殺セ」「コ、ココ、コロセ!」
「殺セ」「殺セ」「殺セ」「殺セ」「殺セ」

「「「「「殺セ!」」」」」

 猟兵たちが足を踏み入れたのは、鬱蒼とした森であった。垂れ下がる蔦、湿り気を帯びたシダ植物。土と黴の入れ混ざったにおいの中に、どこか饐えた不快感が潜む。それを満たすのは、湿気と、煙が混ざった白いもや。目に染みるような痛みは、何が成したものなのか。それはきっと、この先にある。

 だが、猟兵の行く手を遮るものがいる。赤い髪、野卑に光る鋭い瞳、隆々とした筋骨が握る刃こぼれの酷い薄汚れた剣。それが一匹、二匹。いや、数えられるものではない。無数の緑の影、オブリビオン。『ゴブリン』と呼ばれる、もっとも普遍(コモン)な敵。その語源はノルマン=フランス語で『ならず者の悪霊』であるとも言われるが、その真偽のほどは別にして、行儀の良い善性の存在とはとても言い難いものであった。
アイシス・リデル
きたないのもくさいのもいや、だよね
それで誰かが病気になったり死んだりしちゃうのは、もっとだめ、だよ
うん。大丈夫
わたしたちが、なんとかしてくるから

森のきたない空気をわたしの体内に取り込んで、きれいにしながら進む、ね
その分、わたしの身体はきたなくなっちゃうけど、毒耐性があるから大丈夫
うまくやったら、きたない空気が流れてくる方もわかる、かなぁ?

身体がきたなくなったら、その分、おっきくもなれるから
その身体でゴブリンたちを圧倒してみせる、よ
おっきくなった身体で、他の猟兵の人たちへの攻撃をかばったりもできる、よね

攻撃にはわたしのバラックスクラップを使って
もし戦いで壊れても、ちゃんと、ゴミは回収していくね


エルト・ドーントレス
ゴブリン退治なら初仕事にちょうどいいと思ったんだけど違うのか…。環境汚染なんてUDCアースじゃよくある話だけど、こっちじゃ工業なんて発展してないしなぁ。だとすると原因は…って、考えるのも面倒くさい。現場で確認すりゃいいだけだし、ちゃっちゃと片付けちまおう。

【POW】選択
最悪なのは複数に群がられて袋叩きにされることだし、接近戦は避けて引き撃ちに徹する。あんまり距離が取れないようなら、敵が殴り掛かれない【空中戦】で仕切り直し。こっちが動き続けて主導権を握らないと。で、焦れて動きが単調になったところに【フルバースト・マキシマム】。この後にも戦闘はありそうだし、リスクは避けて焦らずじっくりやるつもり。



●汚泥の少女と初仕事
「こっち、かな」
 ずず、ずずと進む粘った音がした。灰色をした空気を取り込んで、それは進んでいく。どろりとしたかたちが、歪み、撓み、弾み、沈み、また進む。不見識な人間が見れば、それに怖気を感じるだろうか。気持ち悪いと思うのだろうか。だがもし心があるというなら、その様子をもっとしっかり観察して欲しい。彼女の歩んだ道が、少し澄んで見えることに気づけるかもしれないのだから。泥のような黒の真ん中に光る、橙色をした丸いものが、暖かな光を灯す瞳なのだと気づけるかもしれないのだから。
 彼女の名前は、アイシス・リデル(下水の国の・f00300)。
 ブラックタールの聖者である。

「……ほんと、よくわかりますね。煙の来る方向……でしたっけ」
 それに感心するような声をあげるのは、でもどこか感動にかける瞳をしているのは、エルト・ドーントレス(スペースノイドの鎧装騎兵・f14009)という猟兵。なんと猟兵としてはまだぴかぴかの新人。初仕事であるという。考えるのも面倒くさいし、目の前に頼りになりそうな先輩がいたから、それをそのまま利用――もとい、頼らせてもらうことにした。
 スペースシップワールド出身の彼にとって、このアックス&ウィザーズ世界は未開の地に他ならない。つまり、何が起こるかわからない。煙で満たされた木々の間から、いつ敵が現れてもいいように警戒しながら、ずるずると這う先輩を追う。

「そう。こっちの方から、たくさん来てる。……でもね、なんというか、足りないの」
 不平があるのだと言わんばかりに、ブラックタールは口を尖らせる。
 心の中で、"この世界っぽくない" と付け加える。
「足りない? 何がです?」
 ともすれば投げやりな印象すら与えかねない、冷めた声で尋ねる。
「……この煙、ただ燃えてるだけ。途中にあった死体も、ただ殺されただけ」
「なるほど。――っと、敵が来たみたいです。予知にあったゴブリンかな?」
 その答えがどういう意味なのかを考える時間は、エルトに与えられなかった。
 とはいえ与えられたとして、考えたかは疑問だが。

「ゲゲゲ!」「ゲギャギャ!」「ギャギャギャ!」
「侵入者!」「排除ダ!」「殺セ!」
 湧き出るように現れる、赤い瞳。ゴブリンだ。

「……あれが、ゴブリンですか」
「うん、そうみたいだねぇ」
「さっさと片付けます。いいですか?」
「うん。大丈夫」
 アイシアが笑う。エルトが離れる。

「きたないのもくさいのもいや、だよね。それで誰かが病気になったり死んだりしちゃうのは、もっとだめ、だよ。だから、なんとかしなくちゃ、ね」
 黒い体が広がる。ぼたぼたと、何かが垂れ落ちる。どたどたと音を立てて土を踏み、愚直にも飛び込んできた緑の小鬼の一体へ、それが落ちる。
「ガ、ア、アガガ、グェ――――」
 じゅうと音を立てて、緑色が爛れて溶ける。それは、ユーベルコード【母なるアイシス】のひとつ、【暴食者】。取り込んだ【もの】を吐き出す技。ただし、その威力はいささか物足りない。
「……やっぱり、ダメ、だね」

 先ほども触れていた。足りないのだ。
 何が?
 決まっている。汚れが。

 彼女の【暴食者】の力は、捕食した【毒】の量と質によってその性能が規定される。その【毒】が大したことなかったとしたら、どうだろう。アックス&ウィザーズ世界という未開の世界ではそれなりの被害を出しているものでも、他の世界の【毒】と比べたときに見劣るものだったとしたら。すなわち、ユーベルコードと事件の相性の問題。おそらくは、じきに暴かれる事件の真相にすら直結している。
 つまるところ、汚染は大したことないのだ。
 ただしそれが、少女の戦いにかえって悪影響を及ぼしていた。

「あは。……ちょっと、まずいかも」
 ゴブリンたちが黒い少女に集う。何体かが溶ける。それでも止まらない。止まる知能を持たない、下卑た笑いが聞こえる。如何なる人生を送っていようと、小鬼の笑い声を快く思う者は少ないだろう。だって、女の子なのだ。ぷにぷにとした体を掴もうと、緑の腕が伸び――。

「……させないよ」
 先輩を盾にして――というと、語弊があるだろうが、リスクを冒さず、十分に距離をとっていた鎧装騎兵は、集うゴブリンたちにきっちりと狙いをつけていた。感情を湛えぬオレンジ色の瞳が、静止する。グレネードランチャーの引き金にかかる指の力が、強まる。先輩に当てず、かつゴブリンたちを一掃できる場所は――。
「――――ここかな」
 黒色のぶよぶよした液体が地面に伏せる。赤い色した爆発が起きた。一発命中。ばらばらと緑色の破片が舞い上がり、落ちる。そのいくつかは黒い粘液の上に落ちて、沈んでいく。
 それを見て、エルトは構えていたランチャーを下ろす。敵の姿は、ない。

「無事ですか?」
「うん。平気、だよ。ありがとう」
「……どういたしまして」
 美味しい餌とは言わないが、これを放置したら森が汚染されたままになる。敵だったものをすべて飲み込むその様は、まさしく聖者といえようか。起き上がったアイシアの周りは、まるで何もなかったかのように。

「じゃ、行きますか」
「うん、うん」
 小柄な少年は、さっきまで進んでいた方向へ歩き始める。
 それを追うように、ブラックタールの少女が慌てて駆けだした。
 森の奥には何があるのか、彼らが知るのは少しあと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜橋・ゆすら
…嗚呼、もう、厭
血が足りないからどうにも苛立ってしまう
いつもより肌も身体も調子が悪い
ゆすら、穢いものは何よりも嫌いなの
…そう、だからゆすら自身も嫌い

森の中でゴブリンを見つけたなら肉薄し、『朱き思ひ出』を使用
狙うは首筋
一応、血は通っているでしょう?
【手をつないで】離さず、【呪詛】を込めて
深く、深く、突き刺してあげる
こんな醜い相手、触れたくもないけれど

…厭だわ、もう
この森の空気も相まって、此奴から摂取した穢い血液もすぐに吐き出しそう
『雨已まぬ森』だなんて、素敵な呼び名だと思うけれど
本当に此処は、そんなに綺麗な森になるの?
それが本当なら見てみたいわ

…ゆすら、綺麗なものはすきだもの

アドリブ・連携等歓迎



●惜しからざりし
「……嗚呼、もう、厭」
 血が足りないのと彼女は言う。かりかりと掻きむしるような、声がした。神経質そうにひそめられた眉、不健康な印象すら与える白い肌。桜色の女袴は清楚な印象を与えてもおかしくないのに、なんとも不釣り合いな姿をしていた。不快な灰色に包まれた森の中で、黒檀の髪をした少女は自らを囲むような緑の小鬼を睥睨する。

「ゲギャ!」「ゲギャ!」「女!」「女ダ!」
「殺セ!」「奪エ!」「何もかもヲ!」
 沸き立つ小鬼たちを、桜橋・ゆすら(きみがため・f13614)は、憎悪すら感じさせる嫌悪で見つめる。かりかりと腕をなぞるように、ほっそりとした指が動く。真白の肌が、不快で満ちた森の空気を浴びて火照る。動きを繰り返すように、細い指が撫でる。どこか官能的な印象すら与えるその様相に、群がる小鬼のなんたる惨めさか。
 その衝動に耐えきれず、一匹の小鬼が跳ねる。口をあんぐりと開けて、見える尖った牙、伸びる赤い舌、垂れる黄色い粘りし液。爛と輝く赤い目は、愉悦に歪む。

「――ゆすら、穢いものは何よりも嫌いなの」
 その熱が、一挙に凍てつく。冷えた目線を、哀れなゴブリンは間近で見た。

「――ギ!? ギ!?」
 一瞬の攻防だった。跳ねたゴブリンは少女の眼前で着地し、袴の中に隠された足の動きを奪わんと蹴りを放つ。だが、それは届かない。それよりも早く、枯れ枝のようにか細い腕が伸びた。枝の先には、緑の首。ゆすらの人差し指が、小鬼の脈打つ頸動脈の、ゴムのように弾力のあるそれを撫でる。愛おしむように、慈しむように。

「一応、血は通っているでしょう?」
 つぷ、と音を立ててそれが沈む。その刺激を、なんと形容すれば伝わるだろうか。それは身体の奥底を弄るような、冒涜的な侵略であった。離して与げないと言わんばかりに、深く、深く突き刺されて。ぴくぴくと体が揺れて、力を喪う。とすんと音を立てて剣が地に落ちる。虚ろな眼光には、最はや光は宿らない。
「……こんなに醜くても、血は赫いのね」
 赤い軌跡を描いて、抜かれたのは萬年筆。インキで満ちたそれを一筆虚空に描くように振れば、地に撒かれた。何かに、誰かに重ね合わせるように、嫌悪の瞳が蔑視する。

「……お次の相手はだあれ?」
 薄桃色の瞳が、緑の群れを向く。蒼玉色した邪視の守りが揺れた。
 今宵、未だ飢えは満たされず。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
久々の狩りの相手としては物足りないが……手加減してやれる程に俺は強くない。
ただ無感動な作業になりそうだ。

樹の枝上に目立たぬ様に狙撃銃を携えて潜伏。
優れた視力・聴力・直感を生かしてゴブリンの気配や物音を探る。
狙撃圏内に適性存在を感知すれば狙撃開始。

それは宛ら、静かに獲物に牙を向く――鋼鉄の銀狼の様に。

狙撃しようにも森の中では射線が遮られる?
ああ、普通のスナイパーはそうかも知れないな。

先天的に優れた感覚に加えてユーベルコードを併用。
観察眼を以て敵の行動を完璧に予測。
幹や枝葉に隠れる姿すら存在の情報として捕捉。
高位の化物や物語の英雄ならいざ知らず、お前らに俺の狙撃から逃げられる道理が何処にあると?


アルフェニア・ベルメル
『雨已まぬ森』ですか
その名前だけでも、とても気になります
なので、そこが汚染されているというのは、とても悲しいです
(森育ちで特に水の精霊と親しいので)

戦いは苦手なのですが、私なりに皆さんを支援するつもりです
戦闘前に『自然と共に在る者』で精霊達に来て貰います
森に慣れている子達に索敵及び情報収集をお願いしますね
皆、森の状況に怒ってやる気満々です
この森にまだ精霊達が居るなら、最近の出来事を聞きたいところですけど

木々と煙で視界が悪いと思うので、敵が来る方向や数など分かれば報告です
それと風の精霊も呼び、出来るだけ煙を遠ざけて貰います
視界のためだけで無く、原因に近づくほど、臭いもきつくて大変でしょうし


上野・修介
※絡みOK
【POW】敵の殲滅
「悪臭を放つ煙に伐採するゴブリン。ふむ、なんか燃料にでもしてんのか?」

攻撃前に偵察し、大まかな敵の数と位置を把握し、味方に共有。

得物は素手格闘「グラップル」
己が間合いは相手の間合い。「覚悟」を決め「ダッシュ」で飛び込み、「捨て身」で相手をぶっ潰す。

基本的にはヒット&ウェイ。
数では向こうが有利だが、遮蔽物が利用し、なるべく動き回り、一対多は避け、相手の懐に肉薄し、一体ずつ確実に始末する。
囲まれそうになったら迷わず退く。

UCは動き回ってる間は命中重視、肉薄している間は攻撃力重視で。

殲滅重視だが、倒した相手の所有物から何か情報を得られれば、他の猟兵共有する。



●少女の友達
「おー、おー、情報通り。たくさんいるな」
 煙に囲まれた森の木々の梢のひとつに、青年が乗っている。左頬に特徴的な傷が見える。黒い瞳が向けられた、その視線の先には、がさがさと走るゴブリンの群れ。今挑めば、何秒で鏖殺できるかな――なんて空想を弄ぶように、掌を見つめ、握りしめる。オープンフィンガーグローブが、ギュッと音を立てて鳴らされる。しかし、実行には移さない。今はあくまで偵察で、相手の数を侮るような真似はするほど彼は愚かではない。敵の位置と数を認めたからには、用は済んだとばかりにひらりと降りる。足音を立てるへまはしない。それを為すのは、身体能力の高さゆえ。上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)は、殺意を抑えた猛獣のように仲間のもとへ駆け戻る。

「アルフェニアさんの言う通りでしたよ。北に7匹、西に3匹。密度が高くて、何かを警戒してるのは北の方ですね」
 そのあたりの煙は晴れていた。穏やかで暖かな風がふわりふわりと吹いていた。その中で待っている仲間たちへ、見てきたことを伝える。精悍な見た目ながら、その口調は丁寧そのもので。
「えっと、ありがとうございます。修介さん」
 白銀の少女の水色の瞳は、澄んでいた。人見知りの、少し怖じを感じさせる声で応じるのは、アルフェニア・ベルメル(森の泉に揺蕩う小花・f07056)というエルフの少女。その周りには、きらきらと光るものが浮かんでいた。少し知識があれば、その正体が精霊であると気づけるかもしれない。ただし、この森の精霊ではない。それらは、アルフェニアの友だち。ユーベルコード【自然と共に在る者】の在るべきかたち。精霊たちが、契約者を守るように旋回する。煙を晴らしているのもそのひとり、風の精霊。
「やっぱり、広さに対して木が少ないです。残ってる子も元気がない……。森の精霊たちも、散り散りになっていて……全然見つかりません」
 悲しそうに眼を伏せる。心優しいエルフの少女を慰めるように、精霊たちがその頬に寄る。ありがとうという言葉のかわりに、白い指が穏やかな色を放つ花の精霊を撫でた。
「木は切り倒された……ってことですかね。燃料にされた、とか」
 癖のついた黒髪をくるくると指に巻いて、修介は相槌を打つ。
「そうかも、しれません。嫌な臭い、止めなきゃ……ですね」
 精霊術士は決意を込めて、北に向けて歩みを進める。そんな彼女を守るように、バーバリアンの青年は歩調をあわせた。

●グラップル
「見えました。そしたら、俺が先陣切りますから――」
「――はい、囲まれないよう、支援しますね」
 木の影から、その様子を窺う二人。頷き合う。
 修介の顔が少し意地悪く歪む。まるでにらめっこでもしていたかのように。
「……ふふっ」
 アルフェニアは、つい噴き出してしまう。
「良い顔です。……格闘技では、気を張り過ぎたら逆にやられるんです。ほどよく肩の力を抜くこと、これがコツなんですよ。あとは、なるようになります」
「そう、そうなんですね。やってみます、ありがとう」
 優しく笑ってお礼を言うエルフの少女の表情は、天下のあらゆるものの中でも、最も不快さから遠いひとつであると言えよう。少しだけ贅沢を楽しんだ青年は、意を決して、ゴブリンの群れに飛び込んだ。

「――シッ!」
 声を発することはない。不意の一撃に、緑の頭がぐしゃりと歪む。まず一体。一瞬で絶命したその身体に回し蹴りをくらわせれば、死体が跳ねて別の小鬼を弾き飛ばす。一度体勢を立て直すように、その場でとんとステップをひとつ踏んで、正面から迫る小さなオブリビオンの、剣を振りかぶった右の脇に向けてまっすぐに拳を突く。緑色の肉の内側で、あばらがゴキリと音を立てて砕ける感触を得た。その快感に、僅かに頬が緩む。
「残念だったな」
 彼に気づいた小鬼どもが、囲うように集いだしても、彼は慌てない。ヒット&アウェイの必要もなかった。彼には、頼もしい味方がいるのだ。
「――リーン、お願い!」
 少女の鋭い声がした。ゴブリンたちの足が、腕が地面から唐突に生えた蔦に縛られる。やる気まんまんの樹木の精霊『リーン』の力が、それを成した。リーンの作った一瞬の隙を突いて、修介の拳が小鬼の身体を打ち砕く。まるで建物を破砕するように、鈍い音がする。そのあとは、一方的な戦闘だった。アルフェニア一人だったら、修介一人だったら、こうはならなかっただろう。しかし、近接に特化した修介と、支援に長けるアルフェニア、二人の連携で、敵は瞬く間に殲滅されていく。

「……よかった。これで――」
 争いを厭うエルフの少女が、ほっと胸をなでおろす。

「今ダ!」「今ダ!」「今ダ!」
「「「ゲギャギャギャギャ!!!」」」
 甲高い笑い声、下卑た声が、アルフェニアの頭上から聞こえた。
 樹上から、降ってきたのだ。ゴブリンが。
 赤い瞳は、エルフの少女を屠れる悦びに満ちている。
 その暴虐な獰猛さを前にして、思わずアルフェニアは両の目を閉じた。

「しまった――――」
 すわ、修介は間に合わない。素手格闘に長ける彼の戦いはインファイト。相手の内側に潜り込むもの。逆に言えば、後衛の味方とは距離を離して戦うということ。身体能力が高かろうと、瞬間移動ができるわけではないのだ。

 鮮血が、飛び散るのだろうと思われた。

 ――だが。

「悪いな、そこは射程範囲内だ」

●狼の遠吠え
「――つまらない獲物だ」
 乾いた音が森に木霊する。それは、さながら狼の遠吠え。
 その銀の狼は鋼鉄でできていた。
 無感動に、淡々と、静かに、ただひたすらに事務的に、牙を剥いた。
「――目を瞑って、耳を塞いで。……それが叶うのなら、どれだけ幸せな事だろうか」
 続けざまに二発目。ユーベルコード【No title night.】によって強化された感覚を十全に活かして、緋翠・華乃音(prelude finale.・f03169)は、少女を襲う粗野な緑を打ち抜いた。

「ギ、ギギギ……!?」
 未だ狙撃されていない幸運な一体のゴブリンが、銃声に尻もちをついて逃げ出す。その幸運は、すぐに不幸へと転ずる。いかに離れていようと、どんなに頑張って走って逃げようと、それはもはや意味をなさない。
 何故って?
 狼が獲物を見逃すわけがないからだ。

「……全く。高位の化物や物語の英雄ならいざ知らず、お前らに俺の狙撃から逃げられる道理が何処にあると?」
 瑠璃の色を浮かべた瞳は、つまらなそうに開かれたまま。
 その視線の遥か先で、緑の塊が地に伏しても、変わることはない。【to be alone.】と名付けられた、長身の銃の先から漏れる硝煙だけが、ゆらゆらと揺れていた。敵の撃滅を確認して、音もなく梢のひとつから飛び降りる。それはさながら、気まぐれな猫のように。

「……なるほど、スペシャルなスナイパーなら、この森も戦場にできるんですね」
 修介は、誰の銃撃かすぐにわかった。ゆえに舌を巻く。
 それから慌てて戦友に駆け寄って、手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?」
「死んじゃうかと、思いました。でも、おっしゃる通り――なんとか、なりました」
 本当にそこまで考えていたわけではないけれど、自然とそんな風なことを口にしていた。もちろん、なんとかなった理由も、アルフェニアは理解している。驚きで、まんまるに見開かれた視界の端に、ひらひらと舞う光が見えた。彼女には、それが何か一目でわかった。
「すみません――待って、そこの精霊さん!」
 先ほどの激戦はどこへやら。ひらひらと、柔らかな衣服をはためかせて、エルフの少女が森の精霊さんのもとへと駆けて行く。協力をお願いすること二分。信じてもらえた。そして、精霊さん――彼の言うには。

「――工場、ですか?」
 森の精霊さんはその言葉を知らなかった。だが、木を切り倒して、それを燃やしてエネルギーを得て、何か工作しているのだというそれは、工場のようにしか聞こえない。その中心には、なにやら強そうな、ひときわ大きいゴブリンがいるのだという。森の奥には、どうやらそれがあるらしかった。
「ゴブリンが、猟兵の技術を真似しようとしているのかもしれない。意味のあるものが作れるとは思えないが……」
 その声は、安全を確認して二人の様子を確認に来た華乃音のもの。
「仮に意味がないとしても、放置することはできません」
 修介は、左頬に触れながら呟く。
「行きましょう、確認しなくてはいけません」
 両の手でぎゅっと本を抱きしめて、アルフェニアは歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
アドリブ歓迎

ようは斬って斬って斬りまくればいいんだな
任せろ

【青星の盟約】を歌い速度をあげることで攻撃の手数を増やす
さあこっからは単純な力比べといこうじゃねえか
ダッシュで近寄り先制攻撃
まず一閃
斜めに跳ねあげ
返す刃でもう一閃
斬りつけながら敵陣のど真ん中まで突っ込み
第六感も働かせつつ攻撃を見切りカウンター
剣を受けられたらあいた胴体を、靴に風の魔力を込めつつ蹴り
敵が群れてる方向へ吹っ飛ばそう
悪いな足癖が悪くてよッ!

うじゃうじゃいやがると鬱陶しいが
的が多くて当てやすいなァ
旋風のように回転して斬りつけて
敵のど真ん中で
舞い踊るように敵を倒す


アレクシス・アルトマイア
木々を伐採するゴブリンですか……。
強くはなさそうでも、数は力。油断せずに参りましょう。
【従者の時間短縮術】で仲間のサポートをして戦いますよ。
二丁拳銃にダガーで援護射撃に二回攻撃に、とばしばし倒してしまいましょう。
森中を忍び足で進んで、木々を使って暗殺的に動いていくのも良いですね。
こんにちは、そしてさようなら。

大気汚染の原因は、煙……。
何かが燃えているか、腐っているのか
どちらにしろ、困った活動は止めてもらわないといけませんね。

お掃除ならば、得意分野ですから、張り切っていきましょう。



●剣の舞
「なぁに、簡単な依頼じゃねぇか」
 男らしく、彼は歯を見せて笑う。楽しそうに動くたびに、黒く長い髪が踊る。それはさながら鳥の羽ばたきのように、ふわりふわりと揺れ動く。青い瞳は、緑色から赤色が生まれるのを当然のことのように見つめる。しかし、その手に固く握られた剣の閃きは、本気の一撃というには程遠い。別に、セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)が手を抜いているという話ではない。むしろ逆だ。シンフォニアたる彼の歌声は、数々の依頼を経て、一層研ぎ澄まされた美しさで響いている。
「――要は、斬って斬って斬りまくればいいんだからよ」
 またひとつ、純白の剣が軌跡を描いて、ゴブリンが地に伏せる。
 手数を重視した一撃は、必殺ではない。しかし、羽のように軽く、次々と繰り出されるそれは、群れ為す小鬼の形をしたオブリビオンを相手取るのに、これ以上なく適していたのだ。
 それは、さながら剣舞のように、華麗な剣捌きだった。一の舞は、斜めに跳ね上げた。続けざまに放たれた、二の舞は返す刃で袈裟斬りに。背の低いゴブリンの一匹が駆け寄って、刃こぼれの多い鈍い金属光を放つ剣を振るう。黒い鳥が大きく羽ばたいたように見えた。それはセリオスが跳躍し、黒い髪が広がったから。猟兵のブーツのつま先が、緑の胴に食い込めば、小鬼はたちまち絶命する。
「……おっと、つい足が出ちまった。悪いな、足癖が悪くてよッ!」
 からりと笑う。それを聞く相手は、まだまだたくさんいるのだ。

●援護射撃
「うじゃうじゃいやがると鬱陶しいが、的が多くて当てやすいなァ」
 セリオスは絶好調であった。その歌声は、まるで煌めく星のように白煙漂う森の中で、その存在を主張する。しかし、オブリビオンとてやられっぱなしの存在ではない。意識してかは定かでないが、彼らは群れであることを活かそうとしていた。

「――ちっ!」
 地を這うゴブリンたちが、一斉に盾を投げつける。思いもかけぬ距離をとった攻撃に、セリオスの目は驚きをもって見開かれる。剣で弾き落とすわけにもいくまい。エールスーリエが渦巻く風を産み、即座に踵を落とせば、軽々その盾を叩き落とす。しかし、それで終わらない。
(「挟み撃ちかよ」)
 上から、飛び掛かる二体の小鬼。高らかに剣を振り上げて、重力の力をもってその一撃を黒鳥に叩きつけんと踊りあがる。下から迫るも二体の小鬼。先ほど盾を投げつけたことで身軽となった彼らが、一気呵成に走りこむ。
(「とりあえず、近い――上から!」)
 考えている時間がない。だから、迫りくる上へ向けて、剣が舞う。
 振り上げ、下ろす、二本の直線が、そのまま斬撃となってゴブリンの腹を裂く。
 それを見て、振り返る。しかし、ゴブリンの一撃に間に合わない。

「――ならば、お任せを」
 それはレースのように瀟洒な声。目隠しをしているその表情は読めない。間違いないのは、彼女は焦るどころか、その状況を楽しむような自信に満ちていたということ。もちろん、それに見合う実力を持っていた。戦場となっていた森の中の、木々の少ない草原に、ひらりと舞い降りたアレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)は、手に構えた二丁の拳銃を無造作に撃つ。叫ぶような甲高い銃声がゴブリンの赤い瞳に撃ち込まれ、その脳髄を破壊する。
「――ゴブリン退治は、おまけです。ここは効率優先で、おねがいします!」
 空を歩くように、ブーツが草原を蹴り、残っていた裸の木の枝に乗る。見下ろすように、レースの目隠しごしにアレクシスは狙いをつけて、乾いた音を二連鳴らす。正確に撃ち込まれた弾丸が、小鬼の動きを止めれば、それに目掛けてセリオスの白剣が振るわれる。
「――お見事です」
「おうよ。良い援護をもらったんだから、当然さ」
 微笑みを湛えて樹上から声をかければ、それに答える自信満々の声。
 結果的に、ゴブリンは彼らに傷一つ負わせることはできなかったのだった。

●目的地へ
「大気汚染の原因は、煙……。何かが燃えているか、腐っているのか」
 木々の間を踏み分けて、従者の少女は進んでいく。
「……原因なんて、いいじゃねーか。とりあえず殴って進めばなんとかなるだろ」
 両の手首をまげて、至極どうでもよさそうな風の黒鳥。
「確かに解決できれば、それに越したことはないのですが……こっちですね」
 そちらの方が、腐臭に満ちていた。
 きょろきょろとあたりを見回すように警戒していたゴブリンに、音もたてずに近づいたアレクシスが、その首をダガーで掻き切る。その死体を木の影に隠す。その奥には20体以上の小鬼たち。それと戦うのは、いくら力自慢でも骨が折れるに違いなかった。

「考えながら進めば、苦労せずに済むんですよ」
 彼女はふわりと笑う。
 両の手の銃に弾丸を込めなおして、先ほどのダガーの血を拭って、歩いて行く。
 そういうものかと納得して、セリオスはあとを追っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八幡・茜
困っている人が居るのならば放っておけないわね!
ふふふ、この美人のおねーさんがきっちり解決してあげるわ!

そういえばゴブリンの人たちは平気なのね?
何か知ってるかもしれないから、お話を聞いてみるわね!
一番強い子はだーれ?
って
動き回るのは得意じゃないから、正面からなぎなたで薙ぎ払いつつ近づいて、近づけたら手を繋いでお友達になりましょう!
何も知らなくても動きを止められれば、その間に仕留められるかしら!
相手の攻撃は動きを予測して回りの木を利用してひっかけるか、なぎなたで逸らす感じで
あとは多少の傷ついても気にしないわ

数が多くて面倒だったら、倒したゴブリンの頭を踏みつけて恐怖を与えれば逃げてくれないかしらね?


カチュア・バグースノウ
ふぅん。村が大変なのは大変ね
さくっと助けてあげましょうか!

ゴブリンがいるほうに向かえばいいのね
隠れて追跡するわよ

辿り着いたら先手必勝!
アックスソードブレイクで一撃必殺!
油断せずに戦いましょ
敵の攻撃は武器受けでガードしつつ、隙をみて反撃!

でもあれよね、腐敗臭の中でそれの正体があれだとね…
おえってなるわ
えっもっと女の子らしい表現しろって?むりむり

アドリブ、共闘歓迎



●一番強い子、だーれ?
「これは確かに、困っている人がたくさんいそうな天候ね!」
 煙たくて、饐えた香りのする煙の中なのに、その白い狐は楽し気だった。彼女のまわりを囲うのは、無数のゴブリンたち。ただの女の子なら怖気づいてもおかしくない状況で、長い白髪を浮かせてくるくると回るその様は、まるでお祭りにでも来ているように身軽だった。ぴんと尖った耳の持ち主は、八幡・茜(妖狐の戦巫女・f04526)という猟兵。彼女の青い目は、鬱蒼とした森の中でも、輝いて見えた。

「でも、あなたたちは平気なのね?」
 そんな動きが、ぴたりと止まる。回転にあわせて浮いていた草摺が、重力にひかれて落ちると、ちらりと見えていた女性的な腰つきが隠れる。ゴブリンたちが、何か言いようもない恐怖感に襲われて、にじりよる動きを止める。
「お話聞かせて欲しいわ! ねぇ、ねぇ、一番強い子はだーれ?」
 ゴブリンたちが、互いに顔を見合わせる。本来、意思疎通など困難なはずのオブリビオン。だがどうしたことだろう。彼女にそうお願いされて、彼らは従わずにいられなかった。むしろ、可憐な狐の少女にいいところを見せたいゴブリンたちが喧嘩を始めて、それを猟兵がにこにこ眺める始末である。やがて決着が着いた。
「……ゲ、ゲギャ」
 一人のゴブリンが、茜の前におずおずと進み出て、ひざをつく。女王陛下の叙勲を待つ騎士のように、うやうやしい仕草である。それを見て、唇を撫でる茜の様子は、まさしく妖狐という言葉が相応しい。猟兵は応えるように、一歩進み出て、勝者であるゴブリンの手を取る。そしてそれこそが、ユーベルコード発動の合図。

「それで、あなたたちは何をしていたの?」

 その声を聴いて、哀れなゴブリンはうっとりした瞳を浮かべるのだった。
 茜の背で、薙刀がきらりと光った以上のことを、この場で敢えて語るまい。

●たどり着いた先
「こっちの方だと思うんだけど……」
 ゴブリンたちは、哀れであった。これ以上情報がないと知れるや、表情の変わった茜によって、まず傅いていたゴブリンの頭がつぶされた。周囲に残っていた戸惑う小鬼たちを、煌めく薙刀の一閃がなぎ倒す。慌てて反撃しようとした勇猛な、そして不幸な小鬼の頭を、竜騎士の黒い斧がへし潰す。残された僅かなゴブリンは、賢明で、やはり不幸だった。彼らは一目散に逃げ出すも、その行先は、知能の低い彼らにとって、唯一知りうる強烈な力の持ち主のいる場所以外にありえない。そしてそれを、狐の少女とさらに合流したエルフの竜騎士が追ってきたのだった。

「なるほど、これが彼らの工場ね」
 興味深そうにつぶやく、青い瞳のエルフは眼前に立つ歪な石造りの建物を見る。工場があるらしいという情報は、すでに他の猟兵からもたらされていた。
「そうね。あの子たちから聞いた限り、そこで何かを作っていて、煙はよくわかんないけど作ってる途中に出た――って言ってたし、たぶんそれなんでしょう」
 自分がその頭をつぶした存在を、まるで懐かしい友達を語るかのように語る様は、夏の虫を弄ぶ小学生のような無垢さで満ちていた。

「連絡はとったから、じきに他の猟兵たちもやってくるわ。どちらにしても、中身を見てみないといけないし……先に入ってみる?」
 興味があるのを隠せない表情で、白い髪のエルフ、カチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)は提案する。ええ、いいわよ!と狐の少女の同意をとれば、こそりこそりと扉を開ける。

●工場?
 そこには、工場と呼ぶには、あまりにも稚拙な何かが広がっていた。
 製造ラインでは、動物の骨らしき何かを、筋骨隆々のゴブリンが、砕いて粉々にしては、首をかしげている。ベルトコンベヤは、その上に幾重もの葉っぱが載せられた丸太をゴブリンたちが回している様子。極めつけは、溶鉱炉と思わしき何かで、ゴブリンの死体と、森の木々を燃料に、様々な動物の残骸がごちゃまぜにされた窯がぐらぐらと煮詰められていた。そこから発する煙は、酸っぱいにおいで満ちている。

「おぇ……」
 上品な表現を敢えて選べば、カチュアは口に手をあてた。窯で煮られている動物だった何か、幾らか妖精の死骸もあるのだろうか、とにかく多様な死体のスープは、いつから煮られているのかも知れたものではない。あますところなく腐食し、直接熱されない場所に逃げるように蛆たちが蠕動して集まっていく。お食事時に読むには相応しからぬ、グロテスクな光景が広がっていた。これで、アックス&ウィザーズ世界の魔力までもが煮込まれているものだから、その呪術的作用により、湧き上がった蒸気と灰が入れ混ざって、有毒な煙となっていたのだろう。

「大丈夫、カチュア?」
 心配そうに茜が尋ねる。そっと、柔らかな和柄のハンケチを手渡す。
「ありがと。……これ、新しいの買って返すわ」
 口を綺麗に拭いて、申し訳なさそうに微笑を浮かべる。

「それより、茜。気づいた?」
 カチュアが女性的な声で尋ねる。その青い目と口調は、真剣だった。
「この工場が、何も産み出さないってこと?」
 翡翠でできた勾玉型の佩玉を弄りながら、茜が応える。
「そう。そして、それにすら気づかないようなマヌケなボスが、いないってこと」
 そうなのだ。工場(と呼ぶにふさわしいかは別にして)を動かすゴブリンがいても、工場長がいないのだ。そしてそれこそが、今回倒さねばならない相手に相違ない。

「――でさ。私にいいアイデアがあるんだけど」
 蒼空の色をした瞳のようなピアスが揺れる。黒い斧がずんと鳴る。
「――そのアイデア、乗った」
 出来の良い悪戯に乗る笑顔で、白い狐耳がぴくぴくと動く。
「まだ、何も言ってないんだけど」
 真面目な風に、エルフが戸惑った声を出す。
「だって、カチュアの顔見たら。面白そうなんだもの!」
 とっておきのおもちゃを買ってもらった子供のような笑顔で、茜が笑う。
「……じゃあ、後悔しないでよ?」
 たぶんこの子は、後悔なんてしないんだろうなと内心思いつつ、白い髪のエルフは斧を持って跳躍する。

「先手必勝! ――よいしょっ!」
 破壊音が響く。腐臭をあげていた溶鉱炉(ゴブリン称)の竈が壊れる。
「なるほど、それは……わかりやすくっていいわね!」
 八幡の茜はそれを楽しそうに眺めて、逃げ惑うゴブリンを切り裂いた。

 単純な策だった。工場に主がいるなら、工場を壊せば出てくるだろう。
 先手必勝、周辺を破壊する一撃は、もっとも効果的な結果をもたらした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ゴブリンキング』

POW   :    ゴブリン親衛隊の召喚
戦闘用の、自身と同じ強さの【杖を持ち、炎の魔法を放つ、ゴブリンメイジ】と【剣、盾、鎧で武装した、ゴブリンナイト】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    王の激励
【王による、配下を鼓舞する言葉】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    ゴブリン戦奴の召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【奴隷ゴブリン】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ゴブリンの王
「貴様ラ、何をしていル!!!」
 それは、ゴブリンたちに比べるといささか低音の、威厳ある声だった。
 猟兵たちの破壊活動の音を聞きつけて、彼は現れた。
 緑の身体は筋肉と活力に満ちていて、赤い瞳は一層の悪意と僅かばかりの知性に満ちていて、手に執る杖はどこか禍々しい魔力を秘めている。その周囲には、護衛するように精悍なゴブリンたちが控えている。ゴブリンの王、【ゴブリンキング】だ。

「何って、壊してるんだけど?」
 白い花のようなエルフが、きょとんとした顔で答える。目の前の存在など、まるで他人事のように。それは油断ではない。目の前の敵に負けるはずがないという自信の為すもの。彼女にはその力があった。

「儂ノ! 兵器を量産しテ、猟兵どもに勝つ計画ヲ! 邪魔するというのカ!」
 どんどんと足を踏み鳴らす。がんがんと杖が地面を打ち付ける。

(「いや、……私たちが何もしなくても、その計画は上手くいかないと思う!」)
 白い狐の戦巫女は、率直な感想を心に秘めた。そしてそれは、おそらく正しい。

「ええイ、許さン! 許サん! 貴様ら全員まとめて、強制労働ダ!」
 工場の意味も、労働の意味も、本当に理解しているのか怪しいゴブリンの王が、怒りに任せて部下に命ずる。その視線の先には、駆け付けた猟兵たち。どこから得たのか付け焼刃の知識。放置すれば、また似たようなことをしでかして、自然を汚すに違いない。

 つまり、猟兵たちの出番だ。


●マスターコメント(補足)
 【二章プレイングの受付は、2月22日8時30分以降とさせていただきます】
 夜一MSと受付時間をそろえる形で、時間を指定させていただきます。
 ただし、早めに投げてもらうぶんには問題ありません。その場合、投げ返しをお願いすることになると思いますが、隰桑は目を通し、早めに文章を考えることができます。どちらでも構いません。

 集団戦お疲れさまでした&魅力的なプレイングをありがとうございました。
 ボス戦です。
 基本的に、倒せば解決します。ただし、工場の後始末などをプレイングに記載していただければ、採用する可能性はあります。特になくても、皆さんやグリモア猟兵がきっとなんやかんやで上手いことしくれたと扱われるだけですので、必須ではありません。しかし、気になる方はぜひとも書いてもらえたら隰桑が喜びます。

 それでは、引き続き熱いプレイングをお待ちしております。
カチュア・バグースノウ
悪趣味なことしてるのはあんたね!
配下もなんかうじゃうじゃ多いけど、頭を叩けばなんとかなる!

猪突猛進、ボスに一直線よ!
うじゃうじゃいる配下は武器受けではけつつ、無理やり進む
武器を構えていない敵には体当たりで吹っ飛ばせれば

ボスにはアックスソードブレイクで攻撃よ!
相手の攻撃は武器受けでガード
本人は攻撃手段を持っていないようだからボコボコにしてやるわよ

後片付けしましょ
これだけ混ざってたら、ひとつひとつは無理ね
まとめて埋葬しましょ
(安らかに眠れますように)
あとはざっと掃除しましょうか
それで綺麗にしたらここも後で見つけた誰かが使ってくれる…かもね

アドリブ、共闘歓迎


アルフェニア・ベルメル
『自然と共に在る者』を継続中
精霊たちに協力して貰い、皆さんが戦いやすいように支援します

先ずは風の精霊に煙を遠ざけて貰い、視界の確保と臭いの軽減です
……よくこの臭いの中心で、生活できてましたね、驚きです

そして数の多い配下を警戒して、他の子たちに周囲の索敵をお願いします
工場近くで木などは控えめかもしれませんが、道中では不意を突かれてしまったので、同じ手を食らわないようにしないと
悪戯が得意な『リーン』主導の精霊たちが周囲にスタンバイ
樹上もしくは壊れた建物を利用して、奇襲や回り込みをしようとするゴブリンたちを妨害してくれます
(密かにあの奇襲を許してしまったことを気にして、かなり本気な精霊さんたち)


緋翠・華乃音
さっきの奴らよりはマシだが、どうにも言葉の意味をよく理解していないみたいだな。

教えてやろう、労働には対価を支払わなければならないという事。
――そしてお前がやってきた非道の対価は、その命を以て支払わなければならないという事もな。


基本的な戦術は先程と同様。
潜伏可能な箇所から狙撃にて猟兵を援護。
射線が読まれそうなら何度か狙撃箇所を移動。
範囲攻撃は苦手なので、召喚されたゴブリンは一体ずつ早業で仕留める。
メイジやナイトの召喚の際、キングに射線が通るならキングに狙撃。

――で、狙撃手が穴熊を決め込んでいるとでも思ったか?
粗方片付いたらコードを発動。本来の暗殺者として影のように忍び、背後から一撃喰らわせる。


セリオス・アリス
アドリブ◎

げぇ…まだうじゃうじゃいやがんのかよ
ゴブリンの顔もそろそろ飽きてきたところだ
さっさと終わらせようぜ

歌で身体強化
まずはめんどくせえメイジを潰す
正面から『ダッシュ』
飛んでくる魔法を『見切り』避けながら突っ込んでいって雷の『属性攻撃』で『2回攻撃』

遠距離のヤツがいなくなったらいちいち付き合ってやる義理はねえ
ショートカットで本体を狙いにいく
助走をつけて走り『ジャンプ』
空中で靴に魔力を送り旋風を炸裂二段構えで跳び
キングの前に躍り出よう
着地の勢いをバネに
下から斬りあげ敵を浮かせ
【星球撃】をブチ込んで地面に叩き落とす

いい音がなったなぁ
工場破壊も進んで一石二鳥ってな♪


アレクシス・アルトマイア
まあ。大きなゴブリンさん。
おうちの片付けは、きちんとしなくてはいけませんよ

難しいなら……手伝って差し上げましょう

森の中、木の上。敵の頭の上。
足場も死角もたくさんありますね。
どうやら一撃当てれば無効化出来る攻撃も多いみたいですし、
【従者の礼儀指導】で野蛮な方々には退場頂きましょう。
大掃除、大掃除。

隙があれば【閨への囁き】で一気に片付けてしまいましょう。

さてと、ではこれからが本番ですね。
ひどい有り様な工場を見て、うきうきと弾む心でお掃除に取り掛かりましょう
なかなか手応えのありそうな案件ですっ

燃やしたり、浄化したり、埋めたり。
どなたか、協力して貰えたら嬉しいですね
もちろん、一人でも頑張りますがっ


エルト・ドーントレス
アドリブ歓迎

【SPD】選択

道中はちょっと楽しすぎだったかなぁ。
頼りっぱなしは主義じゃないし、今回は少しだけ頑張ってみますか。

というわけで露払いの為に突貫するよ。
王の鼓舞に耳を傾けている所に【ダッシュ】して、取り巻き共目掛けて両手の銃を乱射。【フルバースト・マキシマム】で薙ぎ払う。
連携&強化なんて面倒な事させるわけないでしょ。

その後は【空中戦・ジャンプ・ダッシュ】を組み合わせた高速機動戦闘で雑魚共をひっかきまわし続けるよ。
ボスのほうは任せるね。

…で、工場もどきの片付けなんだけど、とりあえず薪だとかにリサイクルできるものの分別はやっとくんで、あとはよろしく。



●先駆けたるは早い者勝ち!
「あいつがボスね! ならやることはひとつ!」
 カチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)は、王の号令でその工場の装置の裏から、機械の間から、工具箱の影からも、わらわらと現れるゴブリンたちを掻き分けて、一直線に走り出す。黒い斧がひとたび振るわれるたびに、悲鳴をあげて一匹のゴブリンが倒れ伏す。白いエルフは、それに目もくれない。彼らの内の幾らかは、それなりにしっかりとした作りの鎧(ゴブリン比)を装備しており、ところどころ刃こぼれしながらも、刺されたら痛そうな槍を装備している。あっ、その槍が折れた。黒い旋風のごとき一撃を前にして、ゴブリンたちになす術はない。またひとつ、吹き飛ばされた緑の兵士が荒い石造りの床にその血をまき散らす。
「――猪突猛進、ボスに一直線よ!」
 突入したばかりのときとやってることが、思想が変わっていないことに言及してはならない。むしろそれこそが彼女らしさなのかもしれない。カチュア・バグースノウというとびっきりの猟兵には、それを叶える力があった。その見た目からは想像できないほど、とびきりの力を足に籠めて、一挙に跳躍する。
 ――いや、思えば当然なのかもしれない。エルフという種族は、その多くが樹上生活を得意としている。小高い梢に飛び乗る力なくしてそれができないことを思えば、原種の解剖学的あるいは運動科学的特徴であるのかもしれない。当然ながらこれはエルフの一般論、カチュアの樹上生活経験の有無は別にしての話。
「悪趣味なことしてるのはあんたね!」
 余談はともかくとして、白い長髪が翼のようにふわりと広がる。その青い瞳は、眼下にオブリビオンの王の姿を捉えていた。にやりと笑う端正なその顔を見れば、並の男が裸足で逃げ出すことだろう。
「――配下もなんかうじゃうじゃ多いけど、頭を叩けばなんとかなる!」
 言ってることはたしかに正しいのだけど、その言い方はなんとも脳まで筋肉でできているがごとしであった。黒い斧が偽工場の照明(蛍光灯ではなく、松明)に照らされて、重々しく光る。それを掴む手首にまきつけられたブレスレットが、続けてきらりと光る。
 それは、必殺の一撃――のように見えた。そして、彼女の一撃を阻んだのはゴブリンキングでも、その部下のゴブリン親衛隊でもない。味方だ。すなわち、脳まで筋肉でできている猟兵は一人ではない。二人いた。

「――んじゃ、さっさと終わらせようぜ!」
 その声は、まるで歌うようであった。深く響くような声、調和のとれた声、聞きほれるような歌声。それは、カチュアと同じぐらい――でも少し低く、幾分かゴブリンキングに近い高さから発されていた。そしてその拳には、たっぷりの魔力が詰まっていた。ユーベルコード【星球撃】の一撃は、至近距離の相手を逃さない。
 セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)の青い瞳が、傍らを飛ぶもう一人の青い瞳――カチュアに向けられる。黒い鳥の顔が、ニヤリと歪む。それはまるで、――悪いな――と詫びるようですらあった。
「さあ、王様さんよ。俺の一撃を受けてみなッ!」
 一撃が降る。開幕速攻の一撃が。セリオスの拳が、ゴブリンキングの顔を打ち、そのまま地面へと叩きつける。ぐしゃりと地面が歪む。王の赤い瞳が、黒き猟兵に向けられる。ぎろり。しかし、両者は次の瞬間慌てることとなる。黒い斧が、落ちる。
「――ああもう、こうなったら、止められないんだから!」
 私知らない!と振りかぶった斧をそのまま落とす。そのままだったらあたったかもしれないが、体勢を崩したゴブリンキングには完全に当たらない。かすめる形で足場を打つ。彼が立っていたのは、工場全体を見渡せる、王様専用の見張り台。ゴブリンの施工が、本気猟兵の一撃……いや、二撃に耐えられるほど、完璧で堅牢なものであるはずがない。
 がしゃりと崩れる。石でできた足場が崩れる。がらがら崩れ、ゴブリンキングが落ちていく。べちゃり。慌てて駆け寄るゴブリン親衛隊たち。それらを下敷きにして、ゴブリンキングが二人の下方でわめく。何を言っているのかは聞こえない。とにかく敵意と悪意と、こう……ひどい目にあわせやがって!的な文句の籠った赤い目が、ぎろりと二人へ向けられた。ただし、二人はそれに気づかない。それどころではなかった。
 ぎろりと睨む目がもう一つ。
「ほんっと! 信じらんない! 普通邪魔する!!? 共闘するのが筋でしょ!?」
 頭あるの? とカチュアが尋ねる。
「そりゃこっちの台詞だ、ゴリラ女! 足場外しやがって!!」
 お前こそ! とセリオスが反論する。
「ゴリラってなに!? 誰かさんが欲張って先取りしようとするからですー!」
「こんなもん、早いもん勝ちに決まってるだろ!」
「その発想がおかしいのよ!」
「なんだと!?」
「なによ!」
 その口論が止まらない。ぎゃーぎゃー。ぎゃーぎゃー。ただし、二人の名誉のために弁護しておくと、今回現れた、今回のゴブリンキングという敵は、二人が十分油断して余りある程度には大したことはないし、何より彼らの仲間の猟兵たちは、とびきり頼りになる連中揃いであった。だから問題ない、ないのだ。

「――あいつら、何やってるんだ」
 それを見て、隙あらばゴブリンキングを狙撃してやろうと、スコープ越しに見張り台を覗いていた緋翠・華乃音(prelude finale.・f03169)はため息をつくのだった。高い場所から落とされたせいで射線が通らなくなっていた。戦い方を変えるしかないと判断し、銀の猫は音もなく動き出した。

●弾丸の雨降る中
(「道中はちょっと楽しすぎだったかなぁ」)
 そう述懐するどこか冷めた目は、その数無限とみまごう群れをなすゴブリンの様子を、どこか他人事のように捉えていた。彼にとって、目の前の敵はFPSの大勢いる的と大差ない。エルト・ドーントレス(スペースノイドの鎧装騎兵・f14009)の身に着けたパワードスーツの装甲が、ギチギチと鳴る。
「――頼りっぱなしは主義じゃないし、今回は少しだけ頑張ってみますか」
 そうつぶやいて、脚部スラスターのスイッチを入れる。
 ホルスターからビームライフルを取り出し、走り出す。目指すはゴブリン・キングのいる場所へ。あまり離れすぎていては支援にならない。そこでは、王が部下に言葉をかけていた。
「貴様ラ! 気合ダ! 気合を入レて撃退せヨ! さすれば恩賞ハ思いノままダ!」
「ギギ! ゲギャ! わカりまシタ! 王様!」
「おイ、オンショウってなんダ?」
「知るもんカ。きっトくイモンだロ」
「バ鹿、温かクテ、気持ちの良イ水のことだヨ!」
「――それはね、温泉だよ」
「じゃア、傷ツイて動けなくなルことダ!」
「――それは、損傷」
「なんダ、じャアやッパり食イ物だロ!」
「――もういい?」
「……だ、誰ダお前!」
 ゴブリンたちは驚いた。それを見て、なんだこいつら阿保かとばかりの冷めた声。エルトのオレンジ色の瞳が、声より一層低い温度でゴブリンたちを見下ろしている。『レッキス』の脚部ブースターを地面に向け急速噴射、ふわりと浮き上がって、その両手の銃を放つ。ユーベルコード【フルバースト・マキシマム】の乱れ撃ちが、ゴブリンの緑の身体を、鎧を着た親衛隊ゴブリンの鎧の隙間を、無慈悲にも打ち抜いて、彼らの体を骸の海へと返す。
(「……こいつらの連携と強化されたところで、平気だったんじゃないかな」)
 ちょっとだけそう思ったけど、でもまあ依頼は依頼だしなと思い直して、戦場に立ち戻る。きょろきょろあたりを見回して、あっちの方が敵の数が多そうだと見れば、ことりと音をたて着地。これが初仕事とは思えないほどおちついた貫禄を、ゲーマー猟兵は見せるのだった。

●ナイフの雨降る中
「まあ。大きなゴブリンさん」
 おうちの片付けは、きちんとしなくてはいけませんよ、と嗜めるように微笑む。女性的な肉付きの唇に指を当てる様は、見る者を恋に落とすに違いない。アレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)という少女は、魅力で満ちていた。残念なことに、全国の健全な男子中学生が家庭教師の大学生のお姉さんにそれをされた日には(一日限定で)勉強に身が入ってしまいそうなくらいの仕草を前にしても、ゴブリンたちはそれを改めようとはしなかった。むしろ獣欲を露わにするような者すら現れたのだから、始末に負えない。
「貴様たチ、あの猟兵を排除しロ! 排除しタラ、好きにシテいイ!」
 ゴブリンキングがそう宣えば、彼らのやる気は天元突破。みるみる群がる緑の群れ。

「強引な方は、嫌いではありませんが……」
 排煙で煙る工場の中で、アレクシスという従者は華麗に踊る。彼女がひらりとステップを踏むたびに、その手から黒い短剣が踊る。ユーベルコード【従者の礼儀指導】は、マナーのなっていない小鬼たちを、ぱたりぱたりと指導していく。目隠しした少女の、ゴブリンへの礼儀指導の成功率はおよそ150%であった。一度指導されて負傷する確率が100%なのと、その後運よく生き延びてももう一度刺され死ぬ確率が50%の意味である。
「おや。お掃除はもう終わりですか……あっけないですね」
 あたりに緑の死体の山を築いて、少し蒸れた目隠しの下に新鮮な空気を吹き込む。煙は、少しずつだが晴れていた。だが残念なことに、その目隠しの下にある瞳の色までは見えない。一体どんな色をしているのか、それはきっと彼女にしかわからない秘密なのだろう。

「アレクさん、危ないです……!」
 そんな彼女にかけられるか細い声。青い瞳が警鐘を鳴らす。彼女の一瞬の隙をついて、機械と機械――正確には、機械と呼べないようなお粗末な石造りと木造りの箱だがそれはおいておいて――の間から、ゴブリンの一個小隊が突撃を仕掛ける。手には短槍、短剣、下卑た笑みを浮かべている。
「――リーン、守ってあげて!」
 そのゴブリンたちが、一斉に転んだ。足下にはひらひらと舞う、まるで初夏の木々を思わせるような爽やかな新緑色の精霊が一匹。まるで、クククと笑っているような動きである。ゴブリンたちの足元には、小さな根っこ。突如として石造りの床を割って生えたそれは、まさしくアルフェニア・ベルメル(森の泉に揺蕩う小花・f07056)の家族の一人、木の精霊『リーン』の悪戯である。いや、彼女に悪意はないのだから、きちんと戦闘支援と呼ぶべきなのかもしれない。
「――これは、楽しい技ですね。ありがとうございます」
 にこりと笑う。笑いながらアレクの手からは漆黒の短剣が放たれて、転んだゴブリンたちの頚髄を突きさす。刺された哀れな小鬼は、しばらくぴくぴくと胸郭が揺れたあとで絶命した。
「もしかして、さっきから煙が晴れているのも、あなたが?」
「……はい。精霊さんに、お願いしました」
「ふむふむっ! それはすごいですねっ! 助かりました」
「……いえ、これくらい。支援は、得意ですから」
 『リーン』の力を褒められて、『家族』の力を褒められて、嬉しそうに、はにかむアルフェニア。二人が連れ立って歩き出し――――

●銀の鱗粉舞わす、モルフォ蝶
「――あとは、自分の身も大事にしなくちゃな」
 ――少し離れた場所できぃきぃと吠える声がしたから、必要を感じて飛び込んだ。後から聞くと、それは精霊の声だったらしいのだが、俺にはよくわからない。とにかく、その猟兵は高い場所から飛び降りるようにして、アルフェニアへの襲撃を企てたゴブリン親衛隊の中へ分け入る。緋翠・華乃音は、ブラックダイヤを散らした刃で、その首を切り、着地する。数が少し多い。いささか劣勢か。
「――少し、借りるぞ」
 足元に転がるゴブリンの死体に突き刺さった漆黒のナイフ――アレクシスのもの――を抜いて、利き手の逆に持ちかえる。くるりと手で回し、とっさに投擲。また一体のゴブリンが、頭を割られて息絶える。
 靴の働きか、足音も立てず、振り返り、斬る、殺す、斬る、殺す。それは目にもとまらぬ早業で、それでいて自由に殺してまわる一撃でもあった。
「――悪いな、身体は鈍っていないようだ」
 残念だったなと笑う。ゴブリンたちに伝わっているかどうかはわからないが、少しは自慢しても褒められるだろうさ。
「……あの、ありがとう、ございます」
 アルフェニアがぺこりとお辞儀する。少しだけ恥ずかしそうにして。
「そこの妖精が、しきりに呼ぶからな。つい、来てしまった。来なくても乗り越えられただろうが、許してくれ」
 華乃音は淡々と事実を伝える。声の小さな『リーン』が、直前に気づいて警鐘を鳴らしていたというのだ。それを聞き取れる耳を、彼は持っていた。そして、それをもって恩着せがましい態度をとろうとはしなかった。

「――さ、二人とも、こいつらをさっさと片づけて、王様に対価を要求するとしよう」
「……対価、ですか」
「そうさ。労働には対価を支払わなければならない。――ゴブリンの親玉がやってきた非道の対価は、その命を以て支払わなければならないという事さ」
 彼の表情は、確かな自信で満ちていた。モルフォ蝶は大きく羽ばたいて、この集団を統べる長を狙える位置へと走り出す。それを追うように、二人の少女もまた駆けていく。

 戦いはもう少し続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイシス・リデル
ゴミ、だね
機関(エンジン)や工場は、確かに水や空気を汚しちゃうけど……それだけじゃないもん
でもこれは違う、よね
誰かを傷つけるだけ、誰かを汚すだけ
だったら片づけなきゃ、ね

スクラップには困らない、から
それを集めて、武器改造で組み込んで、バラックスクラップをおっきく、つよくするよ
数が多いのは、それでまとめてなぎ払って
ゴブリンキングは思いっきり叩き潰す、ね

終わったら、工場を解体してわたしたちでお掃除、していくね
毒物は直接わたしの中に取り込んで
それ以外のゴミも収集体のわたしたちで手分けしてわたしの中の集積場に
うん、大丈夫。これぐらいなんともない、よ
それに遺体があるなら、ちゃんとお弔いもしてあげなきゃ、ね


八幡・茜
あなたが一番強い子なのね!
ふふふ、兵器のことは良くわからないけど、しっかり被害を出すものを作るなんて凄いわ!
ご褒美に、この美人なおねーさんがたっぷりお相手してあげるわね!

ゴブリン戦奴をなぎなたで払いつつ、鈴を鳴らして正面から近づくわね
仲間も居るし正面からでも行けると思う!
上手く近づけたら首根っこを掴んで離さないようにしつつ、神雷を発動できるように頑張りましょう
ふふふ、おねーさんと遊びましょう?
あなたがやってた遊びみたいに、きっと楽しいわよ
って耳元で囁くのも良いかもしれないわね!

後始末は埋めても土地が汚れそうだし、完全に蒸発するまで焼くのが一番かしらね
料理と同じでとりあえず焼いとけば何とかなる!


上野・修介
※絡み・連携OK
【POW】
「大将のお出ましか」
――さて、どの程度のモノか

得物は変わらず素手格闘【グラップル】
【覚悟】を決め【ダッシュ】で飛び込み、【捨て身】で相手をぶっ潰す。

・初撃奇襲
攻撃前に【目立たない】ようボスへ接近。
開始直後に懐に飛び込んで喉を潰し敵UCによる戦力強化を阻害する。
成否に関わらず即座に退く【ダッシュ+逃げ足】

・雑魚殲滅
一撃で倒せるとはいえ雑魚の戦闘力もそれなりにある。
囲まれては厄介なのでまずは頭数を減らす。
味方を孤立させないよう、特に後衛には近づかせないように立ち回る。
雑魚を全滅させるまではボスは無視。

自UCはボス相手は攻撃強化、雑魚殲滅時は防御強化。


桜橋・ゆすら
…そう、これが大気汚染の原因なのね

ええ、とても、とても気味が悪いわ
本当に、あなたは“王”なの?
威厳も何も感じられない
ただ醜悪な賊に、王冠も杖も似合いやしないわ

そう睥睨しながら、【恐怖を与え】、【呪詛】を込める
ゆすらは『エレメンタル・ファンタジア』で、『木』の属性による『吹雪』を試みる
木の葉や花びらを建物内に集め、ゴブリンの王を吹き飛ばすわ
…森の植物たちにも、この呼びかけは届くかしら?
もし届くのなら、力を貸して

――ゆすらもこの工場の後始末を、手伝いたいわ
喩えば…死体のスープや死骸たちを、UCで吹き飛ばし、土に還れるようにしたい
これが、ゆすらにできる、精一杯の供養

他猟兵との連携・アドリブ歓迎



●心優しき少女は砕く
「ゴミ、だね」
 目の前の、工場と思しき何かを見て、悲しそうにつぶやく。
「機関(エンジン)や工場は、確かに水や空気を汚しちゃうけど……それだけじゃないもん」
 でもこれは違うよねと続けて呟く。アイシス・リデル(下水の国の・f00300)という、浄化を得意とする猟兵は、その存在の意義を理解していた。様々な未熟と軽慮と、ある程度の悪意があったとしても、工業技術というものは副産物だけをもって判断されるべきではない。それが成し遂げるものもきっとあるはずなのだ。理解されずとも、その汚れを引き受ける彼女だからこそ、綺麗なものの価値を知っていた。
「誰かを傷つけるだけ、誰かを汚すだけ。だったら片づけなきゃ、ね」
 その体には、赤黒く汚れた歪な腕があった。

●木の葉と花びらの舞
「ええ、とても、とても気味が悪いわ」
 桜橋・ゆすら(きみがため・f13614)の桃色の唇が噛まれて、たわむ。
「本当に、あなたは“王” なの? 威厳も何も感じられない。ただ醜悪な賊に、王冠も杖も似合いやしないわ」
 神経質そうな瞳に浮かぶ苛立ちの底に、おぞましい何かがあった。
「――ひ、ヒ!? な、なんダ! お前ハ!」
「――私? 私は、ゆすら。美しいものを愛する者。醜いものをこの世から、消し去る者。あなたの醜い何もかもを、破壊しにきてあげたのよ。ふふ、ふふ――」
 笑顔には、少しも好意的なかけらが含まれていない。その意味を理解できないゴブリンキングにも同情の余地はあろう。ただし、それこそが彼女の思い通りの展開である。恐怖を感じる瞬間を分類するとすれば、ふたつある。ひとつは、すでに体験して、知っている恐怖。たとえば強大な力を持つ敵に負けたことがあれば、それを恐怖するのは想像に難くない。だが、もうひとつ。知らない恐怖というものが存在する。未知のもの、自分では対応できないかもしれないと想起させるものを前にしたとき、本能的に臆病な動物たちは生存のためにより原始的に恐怖する。そして、ゴブリンの王にもそれはあった。
「――や、ヤバいゾ! おイ、者共ッ! 儂を守レ!」

「あーあ。怖いって、思ってしまったのね」
 五つの音を形にせず、口だけが動く。

 か、わ、い、そ、う。

 心からの同情だった。目の前で消えゆく命を見て憐れむ感情は、誰にだって湧くだろう。ただそれは、夏場のアスファルトをふと見たら、自分の足元に蟻の死体があったときに見せる視線と大差ない。あら、踏んでしまったのね。
 だれが小鬼を責められよう。そんな彼女への恐怖を引き金として、それは起きる。
 ユーベルコード【エレメンタル・ファンタジア】の起こす奇跡。幾舞もの木の葉と花弁を呼び起こし、吹雪となって醜悪な緑のちびたちを駆逐せんとする。
「――でも、森の木々が、足りるかしら?」
 一つ懸念があるとしたら、このゴブリンたちのせいで傷を負った木々に負担をかけないかということ。だが、それを解消する力を持つ猟兵がいた。
「平気です。ねぇ、お願い。……『リーン』、助けてあげて」
 澄んだ、優しい声がする。チチと羽音のような音を立てて、アルフェニアの友たる木の精霊が吹雪の中をものともせず舞えば、色とりどりの葉と花びらがそれを彩る。自らの魔法だけでなく、リーンが、ゆすらの呼びかけを森の木々へと伝えていけば、その色は一層鮮やかさを増して、時が過ぎるごとに緑の死体が増えていく。
「ありがとう、そのお洋服、綺麗ね」
「どういたしまして、……えっと、ありがとう。綺麗なお姉さん」
 吹雪のふもとでひらひらと揺れる黒檀の髪を抑えて、青い瞳をじっと見て、ゆすらが口を開けば、少しだけはにかんで、でもどう答えればよくわからなくって、エルフの少女はただお礼を返すのだった。

「ぐ、グ、ググヌ……退却ダ! 貴様ラ! 足止めしロ! 足止メ!」
 ゴブリンキングが呼びだしたゴブリン奴隷が、猟兵たちの前に立ちはだかる。
 まさしく脱兎のごとし。どかどかと足音を立てて、ゴブリンキングは背を見せた。

●次々と減る
「雑魚に囲まれるのも面倒だしな――おら、くたばれや!」
 狂暴な声と共に、放たれた拳が、ゴブリン親衛隊の鎧ごとその頭蓋を砕く。くらりと揺れて、ゴブリンの身体が倒れ伏す。味方を孤立させないよう戦う上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)の背には、常に少女たちの姿があった。(男性陣は、セリオスが遥か遠く前衛にいて、エルトは単独ホバーを駆使しての機動戦の真っ最中、華乃音の隠密行動はそもそも意識したところで容易に捉えられるものではない。女性しかいないというのが、おそらく正しい)
「あら、ふふ。優しいのね、ありがとう」
 守られながらも、薄紅色の吹雪は耐えることなく。ゆすらの笑顔はまるで花咲くように、ふわりと空気を和らげる。
「いえいえ、当然のことですよ。荒事は任せてください」
 からりと笑う。女性を前にしても、憶せずあくまで男らしく、ストイックに。ただし口調は丁寧に。それが、上野・修介という男の流儀だった。
「あら、私も守ってもらうポジションに鞍替えしようかしら!」
 ちょっとからかうような口ぶりで、白い狐の青い瞳が黒髪の青年に向けられる。
「勘弁してくださいよ、茜さん。この人数、前衛が俺一人じゃキツいです」
 実際はどうかな――どこまでやれるかな――なんて好戦的な空想を弄びながら。でも目の前の美人猟兵の薙刀の冴えを知っていたし、有利を維持するのは戦いの基本だった。
「冗談よ、冗談。さあ、どこからでもかかっていらっしゃい! この美人なおねーさんがたっぷりお相手してあげるわ!」
 ぱちりと右目を軽く閉じ、ウィンクしてみせるその様は、国すら容易に傾ける蠱惑に満ちている。それを修介が味わえたのは束の間。凛と鳴る雨音にも似た鈴の音と共に、薙刀が空を裂き、ゴブリンの首が落ちる。八幡・茜(妖狐の戦巫女・f04526)の白い髪が、斬撃に続くようにしてその背に落ち着いた。
 拳と斬撃、花びらと木の葉の吹雪、銃の乱射と狙撃。猟兵たちは進んでいく。
「……あら、追いつけたかしら?」
 茜がころころと楽しそうに呟いたその先に、暢気なことに王がいた。

●逃げればよかったものを
「おイ、おまえタチ、逃げるんじゃナイ! 戦エ! 粉みジンニしロ! ――あアン! ソ、ソソソ、ソこハもう少シ優シくダ!」
 ゴブリンキングが、部下のゴブリンに命じて、尻もちをついた場所に薬草を貼らせながら、怒鳴り声をあげる。逃げれば良いものを、先に落ちたときに打った場所が痛んだらしい。暢気なものであるが、所詮はその程度の敵。キングの中でも、いっとう小物なのだろうか。薬草が染みたらしく、最後には情けない声をあげる。

「あなたが一番強い子なのね!」
「ゲ!? もウ追い付イたのカ!?」
 座り込んでいて、咄嗟に逃げ出せないゴブリン王。たらりと汗が垂れる。
「ふふふ、兵器のことは良くわからないけど、しっかり被害を出すものを作るなんて凄いわ!」
「ソ、ソうカ!? 儂の工場ノ凄サがわカルとハ、見所があるナ! 第二王妃ぐライにハシてヤッてモイいゾ!」
 褒められて、ご機嫌になる王様。ちょろいものである。その言葉を受け、てけてけとゴブリンの群れの中を、軽快に歩いて行ってぴとりと身を寄せる茜と言う名の白狐。ゴブリンたちが嗅いだことのない良い香りがする。それが一層強まってかげるくらいにまで、体を近づける。王の耳に口を寄せる。
「ふふふ、おねーさんと遊びましょう?」
 つつ、と茜の指がゴブリンキングの胸板を辿る。緑色の中の、尖った何かがつんと押される。緑色の怪異の王者は、その小物さゆえに一度も体験したことのない感覚に襲われた。背筋を、ぞくぞくと走る何者かを感じる。
「――あなたがやってた遊びみたいに、きっと楽しいわよ」
 白い女が、にやりと笑う。この甘美なひと時を、ずっと――――そう、近視眼的な王が考えたとしても不思議はない。しかし幸か不幸か、彼はそれを自ら終わらせてしまった。いや、やはり不幸だったに違いない。嘘に塗れていたとしても、幸せなまま死んだ方がよっぽど良いに決まっている。ゴブリンキングは狐の表情を見てしまったのだ。
 整った美少女の顔であるはずなのに、どうしても。その口は尖り、裂けて、貪婪な光を放つ犬歯が覗いているようにしか見えなかった。

「――見たわね?」
 紫の閃光が走る。ゴブリンキングの身体を、雷霆が撃つ。巻き込まれぬようにと、白い狐が大きく宙を跳ねる。その移り身の速さは、いかんとも形容しがたい。
「――あの、女狐ヲ――!」
 王の命に従って、銀を被った緑色の親衛隊の兵士たちが現れて茜を追おうとする――

「させねーよ」
 男子たるものかくあるべきと誰しも思うだろう声が、響く。
(「――力は溜めず」)
 軽い拳の一撃が、ゴブリン兵の目をつぶす。
(「――息は止めず」)
 その頭を掴んで、別のゴブリン兵の頭にぶつける。ぐしゃり。
(「――意地は貫く」)
 残った親衛隊兵を、回し蹴りでなぎ倒す。

「――ギャ!?」
「シッ――――悪いな」
 小さく息を吐き、一歩踏み込んで、拳を尖らせ喉を突く。これでもう、かの愚かなる小鬼の王はユーベルコードを使えない。あっという間の出来事に、目を白黒させていたゴブリンキングは、ようやく事態を飲み込んで、その非常事態に気づいた。だが後の祭り。せめて目の前の猟兵を逃すまいと、大きく杖を振るうも、もはや修介はそこにいない。軽々身を翻し、距離を取っていた。そうなのだ。もう焦る必要はない。ただの狩りだ。

 だが、トドメの一撃はすぐ直後に迫っていた。

●解体の時間
「――ゲ!?」
 彼が追撃を命じようと振り向いたとき、"それ" はあった。最初から、確かに歪で巨大で汚れた腕だった。そして、その下には、なぎ倒された無数のゴブリンたち。ぐじゅぐじゅと動くその中心には、アイシス・リデルがいた。

「ばいばい、汚い人――あなたが台無しにしたもの、有効活用する、ね」
 工場の破片を目いっぱい取り込んで、巨大な塊となったバラックスクラップを大きく振り上げて、下ろす。単純な一撃。だが、当たるならば、それ以上の脅威など存在しえない。王を庇おうとするゴブリン戦奴もろとも、べしゃりと潰す。
 単純な終わり、それだけだった。

「終わった、んですか?」
 ひゅぅと口笛を吹いて、感心したように青年が尋ねる。
「ん、そう。終わった。ここからは、お片付けの、時間」
 こくりとブラックタールの少女が頷いた。

●お片付け
「お片付けの時間よ! 頑張りましょう。えいえい、おー!」
 白い狐の茜さんが、楽しそうに拳を突き上げる。
「「おー」」「おー……?」「……」
 めいめいの反応が返って来る。
「じゃあ、とりあえず全部燃やして――」
「いやいやいや」
 一層楽しそうに笑う茜に対し、たまらずエルトが突っ込む。
「だって、埋めたら土地が汚れそうだし……とりあえず焼いとけば何とかなる。料理と同じ!」
 茜さん、どうやらあまり考えないタイプらしい。

「え、えと……私が、汚れたもの、浄化できる、から」
 割り込むのに少しためらいを覚えながらも、勇気を出してアイシスが名乗りをあげる。
「おお、それは凄いですね。アイシスさんの特技、この依頼にぴったりです」
 アレクシスが、まるで目を丸くしたように感心した声でアイシスを褒める。目の形は目隠しに覆われていて見えないなんて、野暮は言ってはならない。
「えへへ……だから、汚れてそうなものは、持ってきて」
 ランタンのようにキラキラと輝く瞳が、自信を孕んで細まる。

「空気を綺麗にするのは、私と……みんなで、やっておきます」
 白い髪を揺らして、アルフェニアがはにかんで言えば、家族同然の精霊たちがその周りを、自己主張するがごとく楽し気に飛ぶ。
「……戦っていたときから、空気を綺麗にしていただろう」
 おかげで視界がクリアだったと華乃音が補足すると、恥ずかしそうにエルフの少女が顔を伏せる。それを聞けば、猟兵たちが口々にお礼を言いだし、一層恥ずかしそうに小さくなるのだった。でもよく見れば、どこか少し嬉しそうに。

「それじゃあ僕は、リサイクルできそうなものを片付けておくから、それ以外はよろしく」
 宇宙空間では、使える資源が限られる。「コアマシン」があるとはいえ、なんでも無尽蔵に消費できるわけではないのだ。ゆえに、その視点も資源を有効利用する方向に向けられる。そうでなくとも決まっている。ゲーマーは、いかに効率良く物事をクリアするかで腕が問われるのだ。無駄遣いなんてしてる暇がない。エルトは素っ気なく告げて、立ち去った。それを冷淡だと勘違いする猟兵は、いなかった。

「……これが、私のできる精一杯の供養」
 汚れをゆすらの花吹雪がかき集め、浄化すべきものはアイシアへ。残りをまとめて、ゴム手袋をはめてシャベルを持ったカチュアと一緒に埋めていく。大雑把にアイシアが埋めて、細かな部分をゆすらが補っていく。犠牲となった哀れな森の動物たちの死体が、次々へと埋められていく。
「さあ、次は掃き掃除ね!」
 カチュアが元気よく言えば、アレクシスが手際よく箒と塵取りを配る。
「はい、頑張りましょう!」
 アレクシスが、胸の前でぐっと手を握る。口はどこか、戦いのときより楽しそうに歪んでいた。うっきうきである。

「はい、セリオスさん――そこはもう少し丁寧にお願いしますね」
「げっ、なんでそんなところまで見えてるんだよ……」
「当然です。さあ、時間がもったいないですよ。手早く終わらせちゃいましょう!」
 大雑把に済ませようとしていたセリオスの手抜きを、プロの従者であるアレクは見逃さない。以前ダークセイヴァー世界の洋館で、黒焦げの鹿を持ち込んだのを彼女は忘れていなかった。自分の仕事をしながらも、セリオスに任せた部分もきっちり見ていた。
 とはいえ必要以上に咎めたてず、指導と共に、てきぱきと自分の掃除も進めていく。白と黒の従者服が揺れると、みるみる内に綺麗な床が広がっていった。それはまさしく理想的なお掃除の教師であったろう。生徒に掃除を学ぶ気はあまりなかったことが不幸だった。

「おっ、綺麗になってるじゃん」
 そんなアレクからそろりそろりと逃げるように、セリオスがアイシスの許へと歩み寄って、声をかける。
「うん、毒物は私の中に取り込んで……私の中で、集積場で分別中」
 どこか様子をうかがうような笑顔で、アイシスが答える。
「結構な量があります。それだけ取り込んで、大丈夫なんですか?」
 いつの間にか近寄ってきたアレクが尋ねる。髪が揺れる。
「うん、大丈夫。これぐらいなんともない、よ」
 そうはにかんで答えると、良かったですと従者の少女が胸をなでおろした。
 でも無理すんなよと黒い髪の青年が屈託なく笑って励ましてくれた。
 この二人は、ここにいる人たちは、私を異様とは思わないらしい。
 目の前の白い髪と青い瞳は、綺麗だなと思った。

 後片付けが終われば、猟兵たちの多くが、犠牲となった物の冥福を祈るのだった。
「これだけ綺麗にしたんだから、ここも後で見つけた誰かが使ってくれる……かもね」
 そんな風に、カチュアが笑った。
 きっといつかそうなるに違いないと、誰しもが思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『雨已まぬ森』

POW   :    木上に登り滝を望んだり、上からの光景を楽しむ

SPD   :    森の動物達と戯れたり、植物を調べたりする

WIZ   :    降り注ぐ雨を利用し魔法で色々試してみる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●森は姿を取り戻す
 それは、まさしく圧巻の光景だった。
 猟兵たちが外を出ると、晴れているのに、雨がさあさあと降っていた。
 それは、全ての穢れを流すように、汚れた煙を晴らしていく。
 木々の中に取り残されていた死体も、もはや見えない。
「――これが、狐の嫁入り?」
「まさか。これに比べたら、だいぶささやかよ」
 誰かが問うと、白い狐がこんこんと笑う。
「これが、この森の姿なんですね」
 白い従者がそうつぶやいた。きらきらと輝く陽光と、それを反射する雨粒ひとつひとつが、自然の息吹を感じさせる。なるほど、『雨已まぬ森』であった。

 依頼終了まで、ほんのわずかだがまだ時間がある。
 この森で過ごしていくのも悪くないだろう。

●マスターコメント補足
 ご参加くださった猟兵の皆様、戦闘お疲れさまでした。
 日常フラグメントです。基本的に失敗判定はありません。
 どうぞ自由にお過ごしください。
【第三章の受付は、2月28日(木)午前8時30分以降から開始と致します。
 それ以前に送って頂いたものは一度ご返却いたします。(再送は歓迎です)
 お手数おかけしますが、ご確認よろしくお願い致します。】

 なお、当シナリオは、『大気汚染から森を救え!~森の中の花畑編(作者 夜一)』(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=4314)とのコラボシナリオとなっております。そちらの、第3章 日常 『果物取りしましょう!』と連携した内容も可能です。同時参加もおすすめです。夜一MSの文章はとても愛らしく、キャラクターをイキイキ描いてくださります。隰桑イチオシです。知らないなんて、もったいない。ぜひとも参加をご検討くださいませ。
 もちろん、当依頼の『雨已まぬ森』もよろしくお願いします。
 なお、隰桑担当のグリモア猟兵、東風・春奈は当依頼では呼ばれれば登場します。
 興味があれば、お声掛けくださいませ。
 夜一MSの依頼にも春奈は参加させる予定です。ご参考までに。
エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

POW選択

雨を避けられる、見晴らしのいい木陰にハンモックを掛けてくつろいでる。

湿気で錆びても困るし『レッキス』は「自前の武器庫」に仕舞っとくよ。

…それにしても、不思議な光景だよねぇ。
あくまで宇宙育ちの俺にとっては、の話だけどさ。
故郷じゃ飲料水もカツカツだったし、あいつらがこれ見たらなんて顔するんだろ…。



…それにしても、やっぱ世界は広いなぁ。
こういう光景に出会えるのも猟兵の特権と思えば、少しは仕事に張り合いも出るかもねー。

(うーんと伸び)

ぼーっとしてたら眠くなってきた…。
まだ時間あるよね。
じゃ、おやすみー。


上野・修介
※絡みOK
森の清涼な空気を吸いながら鍛錬をするの乙なモノだろう
「さて、やるか」(軽く柔軟しつつ)
太極拳の套路のような、それでいて空手、ボクシング、ムエタイ、柔術など様々な格闘技の動き、技が綯い交ぜなった型稽古ようなモノを行う。

呼吸を整え、できるだけゆっくりと丁寧に。

鍛錬しながら考える。

戦闘は文句なしの結果だった。

――心残りがあるとすれば

前半の反省点を踏まえて、ボス戦では味方が不意を突かれないよう立ち回ったが、故にボスと殆ど戦えなかったこと。
――ならもし、積極的に前衛に出て戦っていたら?
――ボスとタイマンで闘り合うなら?
――もしあれがこうなら?

思考も動きも、途切れずひたすらにと練り上げる。



●微睡みの時間
 さらさらと音を立てて、雨が降っていた。

 明るい陽射しを受けて、雨粒がきらきらと輝く。そこは『雨已まぬ森』を一望できる高台の上。誰かが剪定したかのように灌木がまばらに生え、丁度良く雨粒と陽射しを遮るのは中央に生えた広葉樹。そのすぐそばには、清らかな水を湛えた小さな湖。湖面を叩く雨音は、まるで楽器のごとく心地よく。暗みがかった緑色の影の下でハンモックに寝転がるのは、黒髪の猟兵、エルト・ドーントレス(灰色猟兵・f14009)である。ラフな格好で、武装などかけらも見当たらない。ただ、自然を満喫するのみ。
「……それにしても、不思議な光景だよねぇ」
 (「あくまで宇宙育ちの俺にとっては、の話だけどさ」)なんて、心の中で呟き加えたあと、なんとなく、水筒を傾けて中身を飲む。口をいっぱいに満たすのはただの水。本当に、なんのへんてつもない水で、特別な力などかけらもありはしない。ただ、この世界の綺麗な雨水であるというだけ。汚染が予想された依頼で、水の現地調達はできないから持ってきていた。道中、中身は飲み干してしまっていた。体を害する恐れはなかった。科学検査なんてするまでもない。汚れる要素は、全て雨粒によって地面の中へと沈められていた。

「あいつがこれ見たら、なんて顔するんだろ……」
 ふと、懐かしい顔を思い出した。黒い宙に囲まれた、遠い昔の記憶だった。
「この水が、溢れて捨てられてるんだよねぇ」
 水筒の中の水がわずかな光を反射して黒々と輝くのを見て、しみじみと呟く。
 きらきらと降り注ぎ、地面の落ちて、消えていく雨粒が見える。

「ああ、いい景色だ――――あれさえなければ」

 オレンジ色した冷めた視線が向けられる。
 そこには、おそらく音もなく拳を振るう姿があった。汗が飛び散り、雨粒とぶつかってしぶきをあげる。激しい動きは一切ない。ただ、何かを練るように。思案するように。哲学するように。ゆっくりと、丁寧に。まるで止まっているかのように静かな動きは、まさしく達人のなせる技だった。あれほどの使い手は、なかなかいるものではない。それぐらいは、エルトにもわかる。そんなことは、エルトは知っている。ただ。
「――なんで、こんなところで稽古してるの」
「いやなに。森の清涼な空気を吸いながら鍛錬をするの乙なモノだろうと」
「――ここでやることかなぁ!?」
「不満ですか」
 それはまるで套路のようでありながらも直の動きが織り交ぜられ、柔の本質を失なっていない。まさしく、芸術である。ぴたりと止まる。その静止する様は、まるでひとつの彫像のようであった。勘違いしてはならないことだが、彫像とは決して時の固定を意味しない。むしろ真の芸術たる彫刻は、堅牢な大理石から柔らかい質感を作り出し、そこに動きを与えるものである。上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)の静止は、そのような芸術性を孕んでいた。
「――いや、見なければいいだけなんだけど……」
 それも、エルトはわかってる。寝転がれるように、ハンモックを持ってきたのだ。目を閉じれば、雨音だけが聞こえてくるのもわかってる。ただ、気になるものは気になるのだった。そして、修介がどことなく残念そうなのも罪悪感を煽った。
「――戦いが終わったばかりなのに、そんなすぐ特訓したいものかなぁ」
 さあさあと雨音が鳴る。修介は答えない。
「――もしかして、何か物足りないの? 心残りがあるとか?」
 エルトの問いに、修介は目を見開く。
「わかるの――ですか」
(「いや、あてずっぽうだけど」)
「そう……ですね。確かに、心残りがあるといえば、嘘になります。それを晴らしたくて、こうしているのかもしれません」
(「……あ、話してくれるんだ」)
 内心突っ込むエルトも、それを笑うようなことはしなかった。
「今回の道中、森の中でゴブリンたちに不意を突かれてしまいました。それを受けて、ゴブリンたちに不意をつかせぬよう慎重に戦ったんです、俺は。いや、それ自体には後悔はありません。作戦の目的も、俺の行動目的も果たせたんですから。ただ、どうしても――俺の中で気になってならないんです。あのゴブリンの王とタイマン張るには、どうしたらよかったんだろう……って」
「んー……そんなタイマンって張りたいもの? 倒せればいいじゃん」
「力を試せる機会があるなら、試したくなるものですよ」
「そんなものなの」
「そんなものなんです」
 どう答えようか、エルトは少し言葉に詰まる。彼は警備隊員としての経験はあれど、猟兵としての戦闘経験は少ない―ーというか、今回が初めてだった。それだけに、少し困ってしまう。
「わかんないけど、もうちょっと近接戦が得意そうな相手を選べば良かったんじゃないかな。武闘家のオブリビオンとかさ、たぶんどこかの世界にいるでしょ」
「敵を選べ……と」
「……別に依頼(ゲーム)はこれひとつじゃないしね」
 それきり、修介は考えこむように黙ったあと、しばらくしてお礼を言った。
「ありがとうございます。少し、考えてみようと思います」
「大したこと言ってないけど、役立ったならなによりだよ」
 頭を下げる修介に投げやりな返答をして、エルトはハンモックへと寝転がる。修介は音もなく、修行に戻っていた。脳内へと、再び思考を纏める旅に出かけていた。拳が動く。足が動く。反省をして、次に生かすために。ただひたむきに、自らを高めていく。

 エルトはぼんやりと空を見上げる。雲に隠された陽射しの穏やかな光を感じる。きらきら光る雨粒の中に、虹が見える。その袂には汚れなどまるでなかったかのように森が広がっている。尽きることのない無限の木々。その中には、清らかな水を湛えた湖。
 もしまた"彼" と出会えたら、俺はこの広大な光景をなんと説明するだろう。もしかしたら、宇宙(ここ)では見られない光景だよとしか言えないかもしれないなと自嘲して、彼は瞳を閉じた。帰るまでもうしばらく時間がある。その時間こそ、初依頼で健闘した猟兵に微睡という名の至高の褒美だった。

 二人の身体を、暖かな雨が優しく包む。さらさらと。
 不快とは、最も遠いひとつだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カチュア・バグースノウ
はー狐の嫁入りね
青空に降る雨がキラキラと光ってとても綺麗だわ

滝の上にいって景色を眺めましょ!

なんていうか、ファンタジーね
あたしの故郷にも狐の嫁入りはあったけど、そっちは不思議でひたすら静かだった
でもこっちは晴れやかでしんとしていて、そしてとても大きな世界
どっちがいいってわけじゃないけど、広大なこっちのがあたし好みね

…あら春奈さん、いらっしゃい
雨の静かなワンシーン、一緒に過ごさない?
…イケメンじゃなくてごめんなさいね(ケラケラ

春奈さんはこういう景色、見たことある?どう思う?
あたしは好きだけど、世界に一人きりになったみたいで
ああ、今は春奈さんが隣にいたわね

アドリブ、絡み歓迎



●滝の上
「なんていうか、ファンタジーね」
 ため息は、滝の上の白いエルフの感嘆。ひと際高いところから眺めるその景色は、アックス&ウィザーズと呼ばれる広大なファンタジー世界の息吹を十分に感じさせるに足りた。サンダル履きで、軽々と滝上のゴツゴツした岩を伝い、中でも小高いそれに腰掛けて、あたりを眺める。視界にあるものはすべて柔らかな雨に包まれていた。あそこには森、あそこを川が流れて行って、湖に繋がっているのが見える。あっちはちょっと離れてるから、沼があるのかな。おっ、あんなところを鳥が飛んでいるわね。雨が平気なのかしら。
 カチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)は広大な景色を存分に楽しんでいた。その世界はあまりに広すぎて、聞こえる音はほんの近くの落ち行く水の音だけ。
 ……いや、違う。カチュアの白く、尖った耳がぴくりと動く。

「……あら春奈さん、いらっしゃい」
「ふふー、こっそり近づいたのですが、バレてしまいましたかー」
 のほほんと笑って、グリモア猟兵の東風・春奈(小さくたって・f05906)がお辞儀する。特別驚きはしない。カチュアという猟兵に、それだけの力があることを知っていた。
「わかるわよ、それぐらい。こんなに静かなんだもの。で、何か御用?」
「帰りの時間など、いくつか連絡がありましてー」
 飾り耳がふりふり揺れて、事務的な連絡をいくつか済ませる。
「りょーかい、りょーかい。ありがとうね」
「いえいえ、これもお仕事ですからー」
「ね、このあとって時間ある? ……雨の静かなワンシーン、一緒に過ごさない?」
「あらあらー、ナンパですかー?」
 きらきらと輝く青い瞳を見て、ドワーフの少女が面白がる。
「……イケメンじゃなくてごめんなさいね」
「ふふー。デートのお誘いは、大歓迎ですよー」
 カチュアがけらけらと笑うのにあわせて、ピアスがきらきらと揺れる。森の木々が見渡せる岩の上、カチュアの横に春奈が座る。すぐに話し出すのも無粋な気がして、そのまましばらく、広がる緑を眺めていた。穏やかな風がそよいで、二人の髪を揺らす。雨粒がしとしとと降りゆく。

「ねぇ、春奈さんはこういう景色、見たことある? どう思う?」
 しばらくして、カチュアが立ち上がる。両腕をぴんと横に伸ばして、くるりと一周、あたりの景色をぐるりと示すように動いたあとで、楽し気に口を開く。
「私は出身がキマイラフューチャーですので、こういった光景にはほとんど縁がありませんでしたー。ですが、こうして出かけてみるとー、一目で好きになれちゃいますねー。カチュアさんはー、……ふふー、聞くまでもないでしょうか?」
 足をぷらぷらと揺らしながら、小柄な少女が上目遣いのまま笑う。見下ろすような構図のまま、白いエルフはにかりと笑顔を見せる。それは言うまでもない、肯定の証だった。
「もちろん、あたしは好き。なんだか世界に一人きりになったみたいで。……ああ、今は春奈さんが隣にいたわね」
「もう、忘れないでくださいよー」
 口を尖らせれば、ごめんごめんと笑って謝る。
 やがて、自然とまた視線が景色へと戻っていった。

 そんな二人の穏やかな時間を守るように、暖かな雨は降り続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルフェニア・ベルメル
無事に終わってほっとしました
特に心配していた、森にとって毒になるものを回収してくれたアイシスさんにはとても感謝しています
もちろん他の皆さんにも、です

えっと、後、心配なのは、この森に居た精霊さんたち、かな
先程の森の精霊さんと合流して、事情を説明しておきます
他の精霊さんにも会えれば、説明して安心して欲しいです
それと、もしまだ困り事があるなら、今のうちに叶えてあげたいですね
そのついでに、この森で、特におすすめな場所とか教えて貰えたら、後で行ってみようかな、とも思っていたりします

そういえば、この雨を司る精霊さんも居るのでしょうか?
普通の雨とは少し違うみたいですし
そちらとも、もし出会えたら、嬉しいですね



●祝う雨
 雨粒が葉に当たって、ぽとぽとと音を立てる。そんな木々の間を、きらきらと輝く精霊を連れて、エルフの少女が何かを探すように歩いていた。足元を小さな栗鼠が駆けて行くのを、目を細めて見送った。アルフェニア・ベルメル(森の泉に揺蕩う小花・f07056)は、湿った草を踏みしめて歩きゆく。その傍らには、きらきらと輝く精霊たち。悪戯っ子が穏やかな子をからかって、逃げるように飛んだ先で、しっかり者が窘める。清らかな森の中でのびのび遊ぶ、家族同然の精霊たちを見守るアルフェニアは、まるで彼らのお母さんのようだった。
「……ん、このあたりでしょうか」
 その問いに頷くのは、お礼に訪れていた森の精霊さん。ここまで彼らに案内されてやってきていた。乱暴なゴブリンたちに追い払われ、時には殺されていた彼らも、すぐに戻ってきていた。彼らはこの場所が好きだった。幾らか会話を躱すうちに、アルフェニアは彼らともすっかり仲良しになっていた。見るからに優しげな少女が「もう心配いりませんよ」なんて伝えてくれたのだから、安心しない精霊さんの方が少なかった。会話の終わり際に、アルフェニアが問うた。「この雨を司る精霊さんはどこかにいるのでしょうか」、と。森の精霊さんはちょっと困ってしまった。雨を司る精霊さんは、なにしろ臆病で、この雨が生み出した虹のふもとに隠れているという。
 言うまでもなく真っ当な科学法則に従う限りたどり着けるはずのない場所だが、ここはファンタジー世界。精霊さんの加護があれば、たどり着けることに不思議はない。そこまで歩くのには相当な体力が必要なはずだが、アルフェニアの息は全く整ったままであった。森育ちは伊達ではない。

 そこは、森の木々が少しひらけた場所だった。小さな沼(といっても、水は清らかに澄んでいる!)が広がっていて、その真ん中に鎮座する切り株の上に、ちょこんと座る三匹の雨の精霊たち。アルフェニアの到来に気づいて、とっさに切株の影に隠れだす。他の精霊たちに、ここで待っていてと手で合図して、白銀のエルフがちょこちょこと歩み寄る。

「……はじめまして、この雨の精霊さん。あなたたちと、お友達になりにきました」
 きらきら光る青い瞳が細まって、ふうわりと笑みが浮かぶ。白銀の髪についた雨粒のひとつひとつが、木漏れ日に照らされてきらきらと光る。その様子を、雨を司る精霊たちはじっと見ていた。そのあとのことを語るのは野暮というものだろう。

 結ばれた絆を祝うように、暖かな雨は降り続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシス・アルトマイア
このお掃除しがいのある事件を教えてくれた春奈ちゃんに、お礼がてら声をかけて、森の探検と参りましょうか。
他にもご一緒する方がいれば、きっと楽しいでしょうっ

木に登って、てっぺんから顔を出して、雨がどこから降ってきているのか
さーち致しましょう。
登れない方には手助けを。

これほどの雨が続くとなると、変わった植物とか、生えて無いでしょうか……。
動物さんとともに植物の観察をするのも良いですね……
そして油断したところをキャッチしましょう。
森の掟は弱肉強食なのですからね。
……ふふ、冗談ですよ?

どうあれ、楽しく森の中をお散歩してから、帰ることに致しましょう


色採・トリノ
森でお遊び
リノ、あまり森で遊んだことないのよね
どんなことができるのかしら
他の人たちがしていることも参考に見て決めましょう

ハルちゃん(春奈さん)を見かけたら、ご挨拶
ハルちゃんは、何をするか決めている?
良かったら、リノとも遊びましょう?
あ、これ、さっき採ってきた珍しい果物なの
良かったらどうぞ?(ハンカチに包んでいた鉱石みたいな見た目の果物差し出し)

色々見てみて、ううん、そう、ね
木登りとかは得意ではないから、動物さんと遊ぼうかしら
獣奏器を演奏して動物さんたちを呼ぶわ
森の空気も綺麗になったから、きっと喜んでくれるわよね?
踊ったり、歌ったり、きれいな自然の中みんなで遊ぶと、ずっと、ずっと楽しいわ、ね?


八幡・茜
こんこーんっと!
おねーさんの嫁入りの時はこのくらい派手に雨が降って欲しいものね!

それにしても、ここまで濡れてしまったらもういろいろ気にすることはないかしら
なかなか見れない光景だし草の上に寝転がって、落ちてくる雨の様子を見ようかしら
ふふふ、どんな景色なのかしらね? 楽しみだわ
ここまで派手だと水浴びをしているようなものかしらね!

それから森の動物たちが居たら、体を洗ってあげようかしら
気持ち悪い煙で嫌だったでしょうし、せっかくの雨だから有効活用しないとね
洗うついでに濡れた毛皮をもふもふーとしてぎゅーっとしちゃうわ!
ふふふ、こんな美人のおねーさんに体を洗ってもらえるなんて、あなた体は幸せものね!



●雨に包まれる
 雨がしとしとと降る森の中。あたりを興味深げに見回しながら、小柄な少女が首をかしげる。見えるのは左目だけ。色採・トリノ(光に溢れ・f14208)という名前の白色のスクリーンに、雨の降りしきる緑の森が映る。色とりどりの模様が描かれた傘がくるくると回る。
「ねえ、ハルちゃんは何をするか決めている?」
 その傍らにいた一層小柄なドワーフの少女に、トリノは人懐っこい笑みで問いかけた。
「いえー。どこも興味深いですのでー、色々と見て回ろうと考えている最中ですー」
 グリモア猟兵の東風・春奈は、見上げるようにトリノを見て、のほほんとマイペースな本音を伝える。迷っちゃいますねー、なんて笑いながら。
「じゃあ。良かったら、リノとも遊びましょう?」
「まあ、いいんですかー」
 それを見て、じゃあじゃあ!ときらきら笑って誘うトリノ。無邪気な誘いを、誰がどうして断れるだろうか。ふんわりと笑顔を向け合えば、もうすっかりお友達。

「ふふふ、二人で何か悪だくみ? おねーさんも混ぜて欲しいわ!」
「おっと、抜け駆けはダメですよ。私も一緒です」
 そんな二人を認めて、機を逃さずにっかり笑顔を向けるのは、白い狐のおねーさんと瞳の見えないミステリアスな従者さん。茜の大人びた青い瞳がくりくりと動く。整った顔立ちはただでさえ人目を惹こうものだが、今日の八幡・茜(妖狐の戦巫女・f04526)はさらに一味違う。
「茜さん、傘……いいの?」
 トリノがびっくりして尋ねた。しとしと降りゆく雨の中、傘もささずににこにこ笑うおねーさんは、それはもう妖艶というか、若い男の人が見たら鼻血を吹いて倒れてしまいそうなぐらいにはセクシィな姿になっていた。なんせただでさえ、普段から生肌がちらつく巫女服姿。それが布地が透けそうなほどたっぷり水を吸って、ぴったり張り付いて、柔らかな体のラインを見せているのだから……なんともはや、水も滴る良い女。
「ここまで濡れちゃったら、もう関係ないわよ。ここまで派手だと水浴びをしているようなものかしらね!」
 まわりの雨を示すように、両腕をぴんと横に伸ばして、狐のおねーさんが、つま先立ちでくるくる回る。
「茜ちゃんの言うとおりです。こんな森に来れるのは二度とないかもしれません。満喫しないと勿体ないですよ」
 白黒の従者服もまた、たっぷり水を吸っていた。こちらはより過激かもしれない。アレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)というとびきりスタイルの良い体つきが、これぞとばかりに強調されていて、年齢制限すらかかりそうな様子。ちなみに、アレクの胸部を妬まし気に春奈がじーっと見ていたとかなんとか。
「雨が降りしきる森なんて、珍しい光景――もっと楽しむなら、こうかしら!」
 まわる茜がぴたりと止まり、そのまま後ろ向きに地面に倒れこむ。
 アハハとご機嫌な声で笑う様は、見る人を引き込む楽しさに満ちている。
「なるほどー、一理ありますねー」
「ハルちゃん!?」
 それを見て、傘を放り投げる春奈。びっくりするトリノ。おねーさんに倣って草地に身を投げたドワーフの少女の、淡い色したエプロンドレスが雨を吸い込んでいく。それを春奈は気持ちよさそうに楽しみ、目を細める。
「トリノさんも、ご一緒にどうですかー?」
「えっと、じゃあ……」
 トリノも倣って川の字になるように寝転がれば、すぐにずぶぬれになれた。でも、それが不思議と心地良い。暖かな自然が、白い瞳の少女を優しく包む。
「ふふ、どう? 気持ちいいでしょ?」
 なんて自信満々のおねーさん。
「うん、うん、なんだか不思議な気持ち。でも、気持ち良い!」
 にへらと笑う、白い少女。
「どうやら、トリノちゃんもすっかり気に入ったようですね」
 うんうんと頷く白黒従者。
「他の人には見せられない、内緒ですねー」
 冗談めかして笑う一番小柄なドワーフ。
 そんな小柄な二人の頭を、わしゃわしゃ撫でる狐のおねーさんだった。

●動物のダンス
「雨の楽しみ方を教えてもらったから……、リノも何かお返ししなくっちゃ」
 しばらくして、トリノが起き上がる。何かごそごそとまさぐる。ポケットから獣奏器を取り出して、その音色を奏で始める。柔らかな旋律は、騒がしいものでないはずなのに、雨のさあさあと降る音を割いて森に広く響き渡った。
「それは、なんなんですかー?」
 春奈がきょとんと尋ねれば、トリノは自信ありげに人差し指を口に当てる。
「まだ内緒、もうすぐわかるわ!」
 その言葉は本当だった。数分もすれば、ぞろぞろとやってくる森の動物たち。
 小鳥や鹿、栗鼠にアライグマ、ヤマネコに……熊まで!
 色とりどりの動物たちが、その音色を聞きつけて駆け付けた。ただし、どこか表情に怯えがある。当然だ。この森は、ほんの少し前までゴブリンが支配していたのだ。彼らの仲間が数多く死体となって、燃料としてくべられていたのを猟兵たちは目撃している。だから、穏やかに、心配しなくていいんだよと迎える。
「いらっしゃい。さあ、一緒に遊びましょう?」
 トリノの心優しい笑顔を見せられて、数分も一緒に過ごせば、彼らの警戒も解けようというものだ。ぐるるると唸っていたその喉が、ごろごろと音を立てている。トリノの奏でる旋律にあわせて、動物たちがころころ動き回る。ここは小さな森のダンス・ホール。雨の拍子とトリノの獣奏器にあわせて、猟兵たちが動物たちと戯れる。

●洗いっこサービス
「そうだ! 折角だから、この子たちの体を洗ってあげましょうか」
 しばらく歌って踊った後のこと。雨に打たれているとはいえ、ゴブリンによる汚染はひどいもので毛と毛の間にはびっしりと汚れがこびりついていた。それを目ざとく見て取った茜が、そう提案する。
「丁度近くに、小川がありますねー」
 春奈が今依頼担当のグリモア猟兵らしさを見せる。トリノの音色を先頭に、動物の集団が楽し気に移動していく。やがて、たどりついたのは清らかな小川。広さは十分だった。そこでぴたりと茜が立ち止まる。そういえば、うっかりしてたと言わんばかりの、ちょっぴり困った顔。そんな茜に、声をかけたのはアレクだった。
「お困りのようですね。お探しのものは、これで代用できませんか?」
 従者の両腕には、この地に生えていた葦の穂たち。太く、吸着性の高い線維は、体を洗ってあげるのにぴったり。
「へぇー! すごい、こんなのよく見つけたわね!」
「ふふ、丁度良く見つけることができました」
 歩きながらもしっかり植物観察をしていたアレクが、これまた目ざとく見つけてきた最適の原生植物。それを掴んでわしゃわしゃとこすってあげれば、黒い汚れがみるみる落ちる。清らかな水の中にそれが落ちればたちまち拡散して、消えていく。
「ねぇ、アレクさん。汚れを川の中に流しちゃって、平気なの?」
 トリノが少しだけ心配そうに尋ねる。
「大丈夫ですよ。呪詛による汚染はありませんし、物理的な汚れはこれだけたくさんの水があれば、十分に薄まってしまうんです」
 ふふと笑って、アレクが優しく教える。自然の力ってすごいんですよと付け加える。それを聞いて、トリノが安心した笑みをこぼす。

「ほら、気持ち悪い煙で嫌だったでしょう? おねーさんがたっぷり綺麗にしてあげちゃうわ!」
 ごわごわの黒い毛を、ごしごしと洗う狐のおねーさん。大柄な熊が気持ちよさそうに低く唸る。それを白い尖った耳が聞きつけて、機嫌良さそうにころころ笑う。
「ふふふ、こんな美人のおねーさんに体を洗ってもらえるなんて、あなたたちは幸せものね!」
 だからこれぐらいはご褒美よね!と、ぎゅーっと抱きしめる。もふもふ。
 抱きしめた動物の温かな鼓動は、猟兵たちが守った命のそれだった。

●木々の上
 動物たちを洗い終えて、ひとしきり満足した彼らが帰っていくのを、猟兵たちは見送った。とたんに雨の音しかしなくなった空間で、アレクが口を開き、提案した。
「木に登って、森の雨を見てみませんか?」
 冒険心に富んだ、わくわくするような口調を前に、おずおずと困り気な声が返る。
「ううん、でも……リノ、木登りとかは得意でないのよね」
「大丈夫です、手助けしますよ。それに、きっとてっぺんから眺める景色は、地面から眺めるのとは違ってまた良いものです」
 安心を促すアレクの笑顔は、トリノの心配を吹き飛ばした。
「それなら! ええと、お願いするわ!」
 愁いがなくなり、花開くように白い瞳の少女が笑う。

 登りやすくて、座りやすい梢のある、背の高い木を選んで、四人の猟兵が登っていく。やがてそれぞれ座りやすい場所に陣取って、樹上で雨已まぬ森を眺める。それはまさしく幻想的な光景だった。きらきらと光る雨粒と、清らかな木々。汚れで弱っていた木々も、恵みの雨を受けてその活力を取り戻し、深い緑を湛えている。ところどころに虹がかかり、ぱたぱたと飛ぶ鳥の群れも見える。さあさあと降りしきる雨は、激しいはずなのに、荒っぽさは微塵も感じさせない。
「おねーさんの嫁入りの時は、このくらい派手に雨が降って欲しいものね!」
 その景色を楽しみながら、茜は冗談めかす。
「茜ちゃんの旦那さんになる方は、それぐらい素敵でないと釣り合わないでしょうね」
 すかさずアレクが返せば、茜が確かに!とご機嫌に笑う。
「ハルちゃん、どういう意味なの?」
 とトリノがこっそり耳打ちで尋ねれば、
「狐の嫁入り――天気雨は、新婦の感動の涙が由来であるという説があるんですよー」
 なんて春奈が教える。穏やかな時間が過ぎていく。

 ふと思い出したように、トリノがごそごそとポケットを再び探る。
 ハンケチの中から出てきたのは、まるで石ころ。
「あ、これ、さっき採ってきた珍しい果物なの。良かったらどうぞ?」
「美味しそうですね。いただきましょうっ!」
「ルスタリね! じゃあ、この綺麗な朱色のルスタリをもーらい!」
「私のぶんも残しておいてくださいねー」
 ルスタリの酸っぱかったり、溶けるように甘かったり、幸せな味が口に広がる。

 四人の猟兵の少女たちが味わう時間は、もう少しだけ続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
ホセア書10章12節『汝ら自分の為に正義を蒔き、慈しみの実を刈り取り、汝らの新地を拓け。今は主を求むべき時である。主は救いを雨のように、汝らに降り注がれる』

……まあ、俺は神を一切信仰してはいないけどな。
俺が祈るのは運命だけだ。どれだけ強大な神だろうが、お伽噺の英雄だろうが、伝説の怪物だろうが、運命には逆らえない。
いつ自分が運命の車輪に轢殺されるか分からない。"明日は我が身"という言葉もある。

さて、少しだけこの森を歩いて見て回ろうか。
瑠璃の蝶も少しは羽根を伸ばしたいだろうし。まあ、自由に飛び回るのは勝手だが、間違っても森を燃やさないように。
……どうしてか、少しだけ誰かと話がしたい気分だ。


セリオス・アリス
アドリブ歓迎

はー…自然っつーのはすげぇな
ちゃーんと自分で綺麗にするようにできてんのか

しかし雨のせいでびしょ濡れだな…これは帰ったら怒られそうだ
いや、でもまあ…ここまで濡れたらいっしょだろう
開き直った顔で湖のような場所を探す
見つけたら軽く歌を歌い炎の魔力を体に巡らせて
そうしてそのままの格好で入る
…はっ、さすがに冷てぇなぁ
けど、いい眺めだ
水に浮かび空を見ながら雨を受ける
水面に反射する光りも眩しくて
水を叩く雨は音楽みたいだ

一通り堪能したら水からあがり
かるーくだけ絞って戻る
※乾かしたりはしない
ベースに戻る前に怒られそうだが
雨に濡れてるヤツとそうかわんねえだろ



●信じるか、信じないか
「……ここは、湖か」
 森の木々を抜けて、瑠璃の蝶たちに続いてやってきた銀髪の猟兵が呟く。蝶は水場に集まる習性があるという。なるほど、清らかな水を湛える湖は、蝶にとって天国なのかもしれない。あたりには、小さな花々が咲いている。緋翠・華乃音(prelude finale.・f03169)は、手近な樹を背にして、腰を下ろす。
「汝ら自分の為に正義を蒔き、慈しみの実を刈り取り、汝らの新地を拓け。今は主を求むべき時である。主は救いを雨のように、汝らに降り注がれる――か」
 紫色の瞳を閉じて、旧約聖書の一節を暗唱する。雨を見て、ふと浮かんだのだった。
 蝶がひらひらと舞っている。

「それ、映画の台詞かなんか?」
 ざぱぁと音を立てて、湖から男が現れた。にかっと笑う。セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)は、その長い黒髪が吸い込んだ水を、振り払うように顔を振る。水面に水滴がぼとぼとと落ちる。額に垂れられても面倒だから、左手で前髪を豪快に掻きあげる。尊大なまでに自信満々な青い瞳が、気だるげに身体を休めていた華乃音を見る。

「――旧約聖書だ。ホセア書10章12節」
 声で誰かぐらいわかる。目を閉じたまま、そう答える。
「へぇー。おまえ、神様を信じているのか」
 意外からか、青い瞳がまんまるに見開かれる。
「……まあ、俺は神を一切信仰してはいないけどな」
 悪いなとばかりにくすりと笑う。
「なんだそりゃ。じゃあ、なんで読んでるんだよ」
 困ったような顔で、黒い鳥が歌うように尋ねる。
「俺が祈るのは運命だけだ。どれだけ強大な神だろうが、お伽噺の英雄だろうが、伝説の怪物だろうが、運命には逆らえない」
 銀の猫は答えない。まるで、何かを観念しているかのように。
「あのゴブリンの王様がやられたのも、運命ってことか?」
 ぶっきらぼうに、まるでその言葉を信じていないようにセリオスは空を見上げる。
 ぽたぽたと降る雨の雫が光っている。
「いつ自分が運命の車輪に轢殺されるか分からない。"明日は我が身" という言葉もある」
 華乃音が首を振る。彼の言葉は、敵だけでなく、味方にも、自分にも向けられているのだと示唆していた。
「そんなもんかねぇ。俺はそんなものに従ってやる気はさらさらないけどな」
「従うとか、従わないとかじゃないのが、運命だよ」
「関係ねぇ。俺は俺のやりたいようにやる。だいたい物事は簡単なんだよ」
「――というと?」
「俺が殴れば、相手は死ぬ」
「単純だな」
「単純なんだよ、全部。考えるから、複雑になる」
「どうだかな。そうであれば、どれだけいいか」
 どちらかが正しい、正しくないの話ではない。強いて言えば、どちらも正しいと言えるのかもしれない。背負っている過去が違うのだから、結論も違うのだ。それぐらい二人ともわかっていた。ただ、それを差し引いてもあまりある単純さに、華乃音は苦笑する。

 そして、目を開けてセリオスを見て、口を開く。
「それからな。」
「なんだよ?」

「――服を着ろ」
 セリオス・アリスは全裸だった。自信満々に話している間、ずっと。
「おいおい、いいじゃねぇか。男同士、恥ずかしがることもねぇだろ!」
「そういう問題じゃない」
 あっけらかんと笑う黒い猟兵に、苦笑する銀の猟兵。
「……だいたい、寒くないのか」
 長身の色白の体は、筋肉質であると同時に引き締まったスリムさを保っており、男らしさがあると同時に女性的な美をも孕んでいる。どうしてこの体からあそこまで単純な思考回路が生まれているのだろうか、と紫の瞳で観察しながら華乃音は思案する。
「ははっ、そこで心配かよ。でも問題ねぇ。俺はシンフォニア。歌の魔力で常に温めているから、むしろ快適なぐらいさ」
「準備がいいな」
「せっかくだから、目いっぱい遊ばなきゃ勿体ないだろ?」
 にかっと笑う。純粋さを感じさせる笑みは、それが本心であることを示していた。
「まあ、それは確かに――――――」

 二人の会話は続く。雨の中、水場で休む瑠璃の蝶だけがその続きを聞いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイシス・リデル
(夜一MSのシナリオのプレイングと対になってます)
(問題ありそうなら却下して下さい)

お天気でも、雨って降るんだ、ね
きらきら光って、すっごくきれい
これなら、この森もまた、すぐきれいになる、よね
その景色を眺めながら、「あっち」のわたしを待ってるね

おかえり、わたし
そっちはどうだった?
? 果物じゃない、よね……嘘?
……そうなんだ。すごい、ね
その果物も、そんな珍しい果物を知ってる事も
でも、宝石みたいにきらきら、ぴかぴかしてて
なんだか、食べるのがもったいない、かも

そんな風にわたしたち同士でお喋りして、笑い合った後
1人のわたし戻って、お土産の実をいただきます



●二人で一人
 きらきらと光る雨粒を、少女はじっと眺めていた。黒い液状の体にぽたぽたと水滴が落ちるたびに、それが爆ぜてくぼみを作り、やがて消える。トパーズのように輝くオレンジ色の瞳は、一粒一粒が光輝く雨の雫に囲まれて、興奮と感動の色で満ちていた。
「お天気でも、雨って降るんだ、ね」
 狐の嫁入りって言ったり、天気雨って言うんですよと誰かが教えてくれた。
 へぇ、そう、なんだ。てんきあめ。
 やがてその人も笑顔で去っていった。探検するんですと意気込んでいた。
「きらきら光って、すっごくきれい」
 一心不乱に雨粒を眺めていた。森の緑色に照らされて、時々色を変えて落ち行く雨は、已む様子などまったくなく、全てを洗い流すように降りしきる。アイシス・リデル(下水の国の・f00300)は背の高めの広葉樹の下で雨宿りしながら、嬉し気に眺めている。
「これなら、この森もまた、すぐきれいになる、よね」
 それだけの力が、きっとこの森にはあった。
 温かな雨が降りゆく中で、わたしはわたしを待っていた。

「ただいま、わたし」
 やがて、「あっち」のわたしがやってきた。
「おかえり、わたし」
 黒い少女が二人。にへらと笑う。少しだけ、崩れた笑顔で。
 そっちはどうだった?と尋ねれば、大丈夫ちゃんと綺麗にしてきたよ、と。聞こえてくるのは大冒険。妖精さんが投げてきた色々なもの。大気はやっぱり汚れていたこと。ありがとうって言われたこと。ドラゴンの体を綺麗にしてあげたこと。こっちの話もしてあげた。お互いに、良かったね。楽しかったねと笑いあう。
 わたしの知らないわたしの話。とっても楽しい、わたしの話。
 ひとしきり思い出して語らいあった後で、「あっち」のわたしが自信満々に握った手のひらを差し出した。頭に?が浮かんでいたわたしだけど、何をするのかじっと見ていた。やがて、「あっち」のわたしが掌を開いたら、その中には輝く小さな石ころがひとつ。
「果物じゃない、よね……嘘?」
 これ、石でしょ?と本気で尋ねる。「あっち」のわたしはどろりと崩れた貌で、ニヤニヤと笑って、本当なんだよと胸を張る。ちょっぴり不安になったのか、さいごに"たぶん" はついたけど。
「……そうなんだ。すごい、ね」
 オレンジ色のルスタリの実は、希少な宝石のように独特の色を湛えていた。空想世界の大地の力をめいっぱい吸い込んだ実の色は、深く深く、見ているこちらまで吸い込まれそうになる。すごい果物だと思った。そんな珍しい果物を知ってるなんて、「あっち」のわたしはすごいねとも。
「なんだか、食べるのがもったいない、かも」
 心から、惜しい気がした。宝石みたいにきらきら、ぴかぴかしたルスタリの実は綺麗だった。でも、食べなかったら、この実の綺麗さもやがて損なわれてしまう。だから今この瞬間を大事に。笑いあいながら、お互いに見せあって、落とさないように丁寧に、丁寧に。
 その時間は、ほんの一瞬のように感じられた。
 お互いにわたしだから、満足するのも同時だった。

 準備はいい?とどちらかが尋ねた。
 もちろんだよとどちらかが答えた。

「いただきます」

 たった一つの黒い影の、小さな口の中で、甘く優しい味が広がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神影・鈴之
依世・凪波◆f14773と行動
アドリブ歓迎

雨…綺麗だな
他の人と馴れ合う気にもならないけど
一人は寂しいから【神獣招来】でリンを呼ぼう
リンにまたがって森の奥まで
ここなら人もあんまりいないよね
雨がお日様でキラキラ光ってるのをリンにもたれながら堪能する

「…誰」
急に降りてきてリンに触る人に眉を寄せる
名乗られてもふーんとそっぽを向くけど
リンはいやがってないから…リンの名前くらいは答えてあげてもいい
たっぷり間を開けて「リン」と答え

違うそれはこの子の名前
ああもう…!僕は鈴之
これでいいでしょ
…って言うかさっきから濡れた手でリンに触らないでよ
いいからこっち来て
雨に濡れた子狐を手拭いで乾かそう
これはリンの為だから


依世・凪波
神影・鈴之f09607と行動
アドリブ歓迎

へへっ、やっぱ森の姿はこうでなくっちゃ
元の姿に喜びを歌いつつ歩く
でっかい木を見つけて上に登って森を眺めていると下に気配を感じ

あーっ!キラキラのでっかい狼!凄ぇっ
目を輝かせ一目散に木を飛び降り狼に抱きつく
人が居た事に一瞬驚くも笑顔を見せて
「俺は凪波!すげーこんな大きな狼初めて見た!」
狼を撫でてもふもふ堪能
「なぁ、名前は?なんつーの?」
背後振り返って首かしげ
「リンって言うんだ!リンよろしくな~!」
相手の名前を勘違いしたままににぱっと笑い
手を差し出し
鈴之?そっか鈴之にリンだな~
言われたことに手を見てぷるると水滴を払うように頭を振る
あ、こいつ優しい…良い奴だ!



●狼に乗る少年
「へへっ、やっぱ森の姿はこうでなくっちゃ」
 きらきらと目を輝かせて、ひときわ背の高い針葉樹の梢につま先だって灰色の少年は森を眺めていた。しとしとと降りしきる雨粒が緑の森に吸い込まれていくのが見える。白銀の渦を巻く小川が見える。あっちは滝。おおっ、綺麗だな!と何かを見つけるたびに、心のどこかが沸き立つのを感じた。
 ぴょんぴょんと梢を渡り、森を探検していく。ふと、ぴくりと獣の耳が動く。黒い耳が、下の方にただならぬ気配を感じた。琥珀色の瞳が、その気配の原因を探る。いた。あれは――
「あーっ! キラキラのでっかい狼! 凄ぇっ」
 認識と同時に、声が出ていた。勢いよく、一目散に飛び降りてそれを捉える。
 落下と同時に、狼に抱き着く。白銀の毛並みが、もふっと灰色の狐を受け止める。
 もふもふ。もふもふ。
 一心不乱にその毛並みを堪能する。比較的雨を受けない道を通ってきたのか、濡れてはいない。しっとりと湿った毛並みは、むしろ柔らかさを増していた。

「……誰」
 怪訝そうな声が、頭の上から聞こえた。
「俺は凪波! お前が飼い主? すげー、こんな大きな狼初めて見た!」
 きらきらと輝くような声がそれに答える。亜麻色の髪の少年は、それを見てどうしたものかと思案する。でも、不思議とリンは嫌がっていないようだった。それだけに余計に始末に困って、目線を逸らした。
「なぁ、名前は? なんつーの?」
 そんな様子を意にも介さず、わくわくした声で追撃する。
「―――――」
 答えない。普通、ここで聞くか?と言いたげな目線を送る。
 きらきらした琥珀色の目は、じっと返事を待っている。
「―――――」
 じー。

「――…………リン」
 ま、嫌がってはいないんだし……と、答える。

「リンって言うんだ! リン、よろしくな~!」
 にぱっと笑い、手を差し出す。少年へ。
「違う! それはこの子の名前」
「あ、そうなの? じゃあお前の名前は?」
「なんで名乗らなくちゃいけないのさ」
「いいじゃんいいじゃん! おーしーえーろーよー」
 べたべたぱたぱたと周りをうろちょろ。黒い尻尾ぱたぱた。
「ああもう……! 僕は、鈴之。これでいいでしょ」
 名乗らないで逃げる手もあったろうけど、不思議と口にしていた。
 理由はよく、わからない。
「鈴之? そっか! 鈴之に、リンだな~」
 宝物を見つけた盗賊のように、満面の笑みで名前を繰り返し呟いてみせる。

「……って言うかさ。さっきから、濡れた手でリンに触らないでよ」
 不満全開の声で、狐の少年を窘める。
 おお、気づかなかった!と狐の少年は目をまんまるに。手をぷるると振り、頭をぶるぶると回し、水滴が散らばる。雫のひとつひとつが、雨已まぬ森の湿った大地に吸い込まれていく。
「いいからこっち来て」
 それから、彼の手をぐいっと掴んで、ひと際雨の当たらない乾いた草地へ連れてきて、手ぬぐいで拭いてやる。ごしごし、わしわし。
(「あ、こいつ優しい…良い奴だ!」)
 と狐は直観した。
(「優しさとかじゃない。これはリンの為だから」)
 と少年は自分に言い聞かせた。

 それが二人の、出会いだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜橋・ゆすら
※終始、一人称ゆすらで敬語口調
春奈さん(f05906)と会話

降りしきる雨に思わず目を瞬かせる
…そう、これが話に聞いていた「雨已まぬ森」なのですね
寄ってくる動物さんとも仲良くしたいです
わ、わっ。思ったより人懐っこいのですね…!
ゆすらは猫さんがすきです

春奈さんは如何です?楽しんでいますか?
こののどかな光景が本来の日常ならば
ゆすら達猟兵も、守っていかねばなりませんね
ね、頑張りましょう春奈さん
この森のように平和を取り戻せるように

―だなんて、綺麗事
上っ面の笑顔で言えば彼女には見透かされるかしら
ゆすらの心も狐の嫁入りみたいに、気紛れですもの

ああ、けれど
この森が美しいと感じたのは、いつまで経っても本心です



●雨想ふ
「……そう、これが話に聞いていた『雨已まぬ森』なのですね」
 その少女のまわりは、雨已まぬ森の中でひと際華やいでいた。ひらひらと舞う白い雨粒のなかで、ゆっくりと目を細めてその色を楽しむ。切株にちょんと腰掛けて、ただ静かにその様を楽しむ少女は、戦いとは最も縁遠い存在に見えた。雨音にあわせて、桜橋・ゆすら(きみがため・f13614)のおさげが揺れる。
 足元には大きな毛玉。あとで聞いた話ですけど、森に住まう猫は人が思うよりもずっとずっと大きいものの、心優しい少女はそれに動じない。ヤマネコは子猫ですら成猫と同じぐらいの大きさで、大人ともなれば1メートル近くまで成長するんですって。
 それと戯れるとなれば、ひと作業でした。そのせいで少し乱れた髪を整えて、足元に感じる熱を愛おし気に捨て置いていたら、彼女がやってきました。

「お楽しみのところ、お邪魔しますー」
「あら、春奈さん」
 桜色の瞳が揺れた先には、小柄なドワーフの猟兵さん。
「実はそろそろ、帰還の時間となりましてー」
「まあ、もうなんですか。素敵な場所だったから、もっといたかったです」
「そうですよねぇ、すみませんー」
 ぺこりと腰を折った春奈に、ああいえそういう意味じゃないんですと手を振りました。
「……そうだ。春奈さんは如何でした? 楽しまれましたか?」
「はい、それはもう。滝の上に行ったり、冒険したり、色々しましたよー」
 ふふーと自慢げに胸を張る小柄な少女の語り口を、楽し気に聞きました。ゆすらさんはどうでしたかー?と尋ねられたから、ゆすらもおんなじ気持ちですよと答えました。

「この……のどかな光景が本来の日常ならば、ゆすら達猟兵は、守っていかねばなりませんね」
 そう、口にしました。
「ね、頑張りましょう春奈さん。この森のように平和を取り戻せるように」
 これからも……と決意を籠めて、春奈さんをじっと見ます。とびっきりの笑顔で。
 青い瞳が、ゆすらの目を見つめ返してきました。

「そうですね。ふふー、頑張りましょうー。頼りにしてますよー」
 なんて、ふわりと笑顔を向けられました。その真意は、どうなんでしょう。

 ゆすらの言葉は、綺麗事です。
 ゆすらの笑顔も、柔らかな外見も、ぜんぶぜんぶ上っ面。
 内に潜むものに宿っただけの存在。
 ゆすらの心も狐の嫁入りみたいに、気紛れですもの。
 本当のことなんて、誰にも、何にもわからない。
 そんなことも全部全部見破られて、お見通しなのかしら。

 ああ、けれど。
「この森が美しいと感じたのは、いつまで経っても本心です」
 自然と口にしていた。
 傍に立つ春奈さんは、優しい笑顔で雨已まぬ森の空を見ていました。

 暖かな雨が、しとしとと少女のまわりを包んでいた。
 グリモアの光が輝いて、それが見えなくなるまで、ずっと、ずっと。

 猟兵たちが去ったあとも、雨は降り続ける。
 白い煙をすべて押し流して、しとしとと。
 あるべき形を保ち続ける。猟兵たちの意思など無関係に。
 そうあることこそが、守ったものの在り方なのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月07日


挿絵イラスト