4
銀河帝国攻略戦⑯~真空を貫く絶唱

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#スペースシップワールド
🔒
#戦争
🔒
#銀河帝国攻略戦


0




 ミディア・スターゲイザーが辛くも生き延びた事に端を欲する、銀河帝国攻略戦は銀河帝国の圧倒的な物量に苦しめられながらも、猟兵たちの目覚ましい活躍もあってなんとか解放軍優位に進んでいた。
 宇宙を往くこの支援船もまた、前線で戦う猟兵たちの支援に向かう一隻である。
「いよいよ……いよいよ本当の意味で、この宇宙が解放される時が来るんですね」
「ああ、彼らのおかげだ。このままいけば、必ずや彼らはあの憎き帝国を打ち滅ぼしてくれる」
 未だ緊張の色は濃いが、乗組員たちも、悲願の達成を目前にして高揚感を隠し切れない。
 だが、そんなとき。宇宙の大海に響く、ひとつの歌があった。
「……ぐっ、な、なんだこの歌は!」
「どうした!しっかりしろ!歌?何を言って――」
 専用の設備を通して宇宙に響くその音色は、勇壮にして重厚。宇宙図が帝国一色に染まっていた彼の時代には、その曲調を耳にするだけで、人々の心胆寒からしめた、この世界において知らぬ者のいない曲――そう、帝国軍行軍曲である。
「奴らが……奴らが来たんだ!」
「あ、ああ……。俺たちは何を考えていたんだ!あんなやつらに、あんなやつらに敵うはずがなかったんだ……!」
 そのメロディーが音量を増す度に、船員たちは一人、また一人と無力に武器を取り落し、船の操縦をやめてしまう。だが、それも無理のないことであった。彼らの魂には、この曲とともに蹂躙された父祖の恐怖が染みついているのだ。ましてや、この曲はそれだけではない。帝国の特殊艦隊『クライングシェル』による『洗脳音楽通信』として放送されている。
 刻み付けられた恐怖が、帝国の最先端の科学技術による精神攻撃として彼らを襲う。今はまだ、なすすべなく倒れ伏すだけの彼らだが、やがて恐怖に屈服し、帝国の先兵と化すことすらありうるだろう。
 ――この恐怖から彼らを解放するには、同じ音楽の力しかあるまい。だが、誰がいよう。この恐怖に打ち勝ち、音楽を奏でることのできるものなど。


「皆様、銀河帝国攻略戦、お疲れ様です」
 グリモアベースに訪れた猟兵たちを、アルレクリア・ジャストロウは糖度の高い健康飲料と、真空パックの宇宙食をお茶請けに出迎える。
「皆様の健闘の甲斐あって、戦線は着実に此方が押しています。ですが、一筋縄ではいかないのが銀河帝国。ここにきて新たな障害が現れました」
 それこそは、音響洗脳型電子戦艦『クライングシェル』。彼の船に乗り込んだ帝国軍軍楽隊の持つ、精神干渉効果のある行軍歌の効果を最大限までに高める恐るべき兵器だという。
「精神干渉には精神干渉。こちらも音楽によって対抗することができるという試算が立ちました、なのですけれど……」
 と、彼女は愁うように唇に指を添える。なるほど、対抗手段がわかっても、一般人の音楽家では、そもそも音楽を奏でることすら難しいのだろう。
「そこで、皆様の出番です。解放軍の持つ芸能船を改修し、戦域一帯に皆様の音楽を響かせることを可能にしました」
 猟兵たちの熱い音楽があれば、解放軍の同志たちを洗脳から解放することが可能だろう。
「皆様の熱い反骨精神を、宇宙に響かせてくださいませ」


月光盗夜
 お世話になっております、月光盗夜です。
 このオープニングが無事提出されているということは、私も戦争シナリオに一枚噛むことに成功したようですね。みなさん、よろしくお願いいたします。音楽シナリオと聞いては黙ってはいられません。

 というわけで、歌の力で帝国に対抗しましょう。物理戦闘に負けない最高に熱い魂の音楽を見せてください。
 ……ただし、現実に存在する楽曲の曲名や歌詞、替え歌等が記載されているプレイングは採用することができません。くれぐれもご注意くださいませ。

 ※戦争シナリオルールについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
137




第1章 冒険 『洗脳音楽通信を撃ち破れ!』

POW   :    激しいビートで、魂を揺さぶり、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

SPD   :    超絶的な技巧で、聴く者を圧倒して、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

WIZ   :    心に響く歌声で、感情を揺り動かして、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒白・鈴凛
音楽……アルカ
いくら美声をもつワタシでも本物の歌手には及ばないアルナ
かと言って何もせずというのは性に会わないネ

だからワタシがやるのは演奏
芸能船から太鼓を見つけてきて叩くアル

太鼓の音は人の心を鼓舞するもの
ワタシの音で沈んでいる奴らを全員立ち直らせて見せるアル!

【野生の勘】で周囲の雰囲気を感じとりながら、強弱を着けて高揚させるような勇ましい音楽を奏でるアルヨ。



 この宙域に、銀河帝国の行軍曲が鳴り響き始めてから、早くも数時間が立とうとしていた。恐るべきは『クライングシェル』の洗脳音楽。戦端を交わしてすらいないというのに、この一帯の解放軍船団は完全に無力化されている。
「駄目だ……しょせん俺たちなんかがどれだけ集まった所で帝国に敵うはずがなかったんだ……」
 この宇宙に暮らすものなら誰しも持ちうる無力感を刺激され、武器を捨てゆく人々。だが、そんな絶望を打ち砕く、大きな大きな重低音が、解放軍船団のありとあらゆるスピーカーから鳴り響いた。
 ――どぉん!
「哎呀。何を腑抜けたことを言ってるアルカ!」
 太鼓の音だ。黒白・鈴凛(白黒娘々・f01262)の打ち鳴らす太鼓の音が、芸能船の集音装置を通じて、全ての解放軍船団に鳴り響いているのだ。
「体が竦むなら顔を上げるネ!顔すら上がらぬならせめて耳だけでも傾けるヨロシ!」
 美貌のみならず、己の美声にも自信はあるが、歌唱ばかりは自信がない。さりとてなにもしないのは性に合わぬと、結果今、芸能船のスタッフに無理を言って用意させた大太鼓を力強く叩いているのであった。
「太鼓とは、人の心を鼓舞するものネ!」
 初めは乱雑にすら聞こえるほどの、力に任せた轟音の連打。だが、それによって、洗脳されつつあった人々の注意が、帝国の行軍曲からこちらに移ったのを確信すると、太鼓を打ち鳴らすリズムは次第に強弱をつけ、人々を高揚させるような音楽を奏で始める。
「――さあ、出番アルヨ!思いっきり歌ってくるネ!」
 そして彼女は、同じく芸能船に乗り込む猟兵たちに呼びかける。任せてやるのだ、いい所を見せろよ、と言わんばかりの呼び声に、躍り出るように響きだす歌声が返事となった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クリスティーヌ・エスポワール
ニコと連携(f02148)

軍歌は元々、兵の士気を上げる為のもの
それは転じて恐れにもなるだろうけど……邪道ね
音楽は洗脳の道具じゃない!

行こう、ニコ!【演出家は情熱を謳う】!


光の空を 愛で羽撃け Flying High!
逆境(ヤミ)を超えて 風を切って 此処(アナタ)へ!
墜ちたら 何度だって Catching you!

●戦闘?
UCは攻撃力強化
ニコの後ろでバーチャルキーボードを弾き、彼女を目立たせるようにスポットライトを当て、宇宙に飛ぶ輝く鳥を映した映像を投影
『早業』で畳み掛けるようなサウンドを作りつつ、星空の様に静かな輝きを纏うドレス姿で歌う

●ニコ
双子の姉
普段はいがみ合う仲、でも今日は息ぴったり


ニコレット・エスポワール
クリス(f02149)と連携

何これ、軍歌?もー、堅くてダサい!
でもだからこそ、負けらんないね♪

…やるよ、クリス!《歌姫は輝きの向こう側に》!


闇の宙(ソラ)を 愛で劈け Shooting Star!
逆光(ヒカリ)背負い 翼広げ 未来(ハテ)まで!
堕ちても 何度だって Fly Away!


●戦闘?
ユベコは攻撃力(戦意高揚力?)重視で起動
戦意喪失した解放軍を庇う位置にスピーカーを複数展開
ナノマシン衣装(戦乙女風の豪奢なドレス)を着て
ダンス用エンチャントを活かし『空中戦』の様に舞いつつ絶唱
勇猛果敢に飛ぼう!…そんな『祈り』を籠めた『パフォーマンス』

●クリス
双子の妹
普段はいがみ合うが今回は完全に連携



「何これ、軍歌?もー、堅くてダサい!でもだからこそ、負けらんないね♪」
「軍歌は元々、兵の士気を上げる為のもの。それは転じて恐れにもなるだろうけど……邪道ね。音楽は洗脳の道具じゃない!」
 感情的な言葉と、理屈っぽい言葉。それぞれの言い方は違えど、ともに音楽への情熱を語る言葉を紡いで、双子の姉妹、ニコレット・エスポワール(破璃の黒百合・f02148)とクリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)がマイクを手に取る。
「……やるよ、クリス!」
「行こう、ニコ!」
 そういって、二人は歌い始める。

 ――闇の宙を 愛で劈け Shooting Star!/光の空を 愛で羽撃け Flying High!――
 ニコレットが高らかに歌い始めれば、クリスティーヌの弾くバーチャルキーボードの生み出す音色がその厚みを増し、さらにその音楽を仮想空間に多重展開された音響演出用スピーカーが反響させることで、音は無限の広がりを見せる。
 ――逆光背負い 翼広げ 未来まで!/逆境を超えて 風を切って 此処へ!――
 ナノマシンによって織りなされた、戦乙女の如き輝くコスチュームを纏った歌姫が、空を舞うかのようなジャンプパフォーマンスを交えつつ華麗に歌う。芸能船からの音響通信に映像を乗せることが可能なのかはわからない。あるいは無理なのかもしれないと思っていても、少女は全力で歌い踊るのだ。解放軍の人々のために祈るかのように。
 そして、そんな双子の姉の魅力を最大限引き立たせようと、演出家は伴奏を行い、スポットライトで照らし出し、舞台演出すらも行って、ここに幻想を作り出す。歌姫という幻想を。
 ――堕ちても 何度だって Fly Away!/墜ちたら 何度だって Catching you!――
 酷似した、しかしはっきりと異なる二つの声が、美しいハーモニーを作り出した。二人が紡ぐのは別々の曲、なれど真に連携の取れた二人がそろって歌うことで、その曲は真の姿を見せる。まるで、歌い手を移すかのような双子の歌。

 二人の歌は偶像めいて、解放軍の船団に響いていく。解放軍の人々の心に火が灯る。希望の灯が。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミーユイ・ロッソカステル
……なんて、おあつらえ向きの戦場ですこと。
出来すぎじゃない?

なんて呟きながらも、口元は笑みを隠しきれず
別の戦場にて歌で戦艦を1隻落としたかと思えばこれだから

軍歌には軍歌……いえ、圧政を打ち破ることこそが目的ならば
否定してみせましょう、その勇猛を

脳裏に浮かび上がる楽譜から選び取った曲目は「聖なる勇者の行軍 第3番」


何ぞ勇猛か 何ぞ正義か
悪逆非道の帝国こそが まさしく災魔に他ならぬ
立ち上がり 打ち破れ 我ら猟兵 我らこそ反逆者


その場で憎き軍歌へのアンサーを紡ぎながら
(……「魔物」の2番に寄せすぎかしら。まぁ、即興ならどうしても手癖は抜けないものね)

などと思考しつつも、宙にたゆたいながら歌いましょう



 猟兵たちの奏でる音楽によって、解放軍の人々の心を縛る洗脳音楽は緩まったかに思われた。しかし、敵は彼の帝国。その程度で終わりはしない。
 ――従えよ星々を 支配せよ宇宙を 銀河帝国の御旗の下
 猟兵たちの歌声が流れていたスピーカーを再び乗っ取るようにして、帝国軍の行軍歌が響き始める。曲を構成する軍楽隊の人数は増え、それに呼応するように、曲に込められた洗脳サイキックもその出力を増す。
 ――我らこそが正義 我らこそが秩序 我らこそが栄光ある銀河帝国軍
  “個人”の色の感じられない無機質な歌なれど、あるいはそれこそが帝国軍の強さなのかもしれない。ともあれ、再び流れ始めた洗脳音楽によって、またしても、いや、先ほど以上の勢いで、解放軍は苦しめられていた。

 再び猟兵たちの歌で対抗せんとするも、全力全霊の歌を歌い終えた猟兵たちは、すぐには新たな曲を歌えない者も多かった。だが、そこにカツカツとヒールの音を響かせて、新たな歌い手が現れる。
「……やれやれね。いいえ、怒ってなどいないわ?お誂え向きの戦場すぎて、出来すぎじゃないかと思ってしまうほど」
 その言葉通り、その口元には隠し切れない笑みが浮かんでいた。その笑みは、見る者によって、慈母のようにも、酷薄な悪魔のようにも見えるだろう。
「軍歌には軍歌……いえ、圧政を打ち破ることこそが目的ならば。否定してみせましょう、その勇猛を」
 そういって、己の豊かな胸の上で、祈るように手を組んで、ミーユイ・ロッソカステル(眠れる紅月の死徒・f00401)は歌を紡ぎ始める。脳裏に浮かび上がるいくつもの楽譜の中から、此度選び取ったのは、相手に合わせるかのような行軍曲。“聖なる勇者の行軍 第3番”。

 ――何ぞ勇猛か 何ぞ正義か
 夜の歌姫は、曲の上に即興で歌詞を紡ぎ重ねていく。それは、憎き軍歌への返歌とでもするかのように。
 ――悪逆非道の帝国こそが まさしく災魔に他ならぬ
 いつか歌った歌に、随分と似てしまっているな、などと考えながらも、そのことを悔やむのではなく、むしろ自分の特色として楽しむように、戦歴として誇るように。
 ――立ち上がり 打ち破れ 我ら猟兵 我らこそ反逆者
 桃から紅へと移り変わる神秘的な髪を揺蕩わせながら、娘が一曲を歌い終えるのと同時。その曲が、ユーベルコードとしての力を発揮する。軍歌には軍歌。彼女が歌う前に呟いた言葉をなぞるように、放たれた歌が、行軍歌の洗脳効果を打倒せしめるのであった。

「……さ、最終楽章よ?」
 少し疲れたように。しかし、満足したようにミーユイはマイクを置いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
*アドリブ、絡み歓迎

「歌は僕の唯一で僕の全てで誇り。歌おう、心揺さぶらせ昂らせる、僕達の勝利を。希望と凱旋の歌を」
――そんなちゃちな洗脳の歌なんて打ち消して止める

これは僕の意地
艶やかに微笑んで

靡く鰭があるからドレスはいらない
心奪う魔性の歌声があるから怖いものは無い
そうこれは僕の舞台

空中戦で游ぎ
【歌唱】と【パフォーマンス】を駆使して響かせ、歌い魅せるのは【凱旋の歌】
熱く激しく嫋やかに艶やかに歌い上げる
他の音色なんて聴いてる余裕なんて与えはしない
心挫かれてる暇があるなら僕の歌を聴いて

解放軍の、聴く者の心を奮い立たせる歌を
前を見て
こんなものに負ける君達じゃないだろ?

嗚呼
歌うのってなんて
楽しいんだろう


雪華・グレイシア
【WIZ】

正直、戦争のやり方にまでケチをつけるつもりなんてないし、興味もないんだけど……
歌をそういう風に使うのは気に入らねーよ

なーんて思っていることは周りの人にはばれないよーに!
私の歌が少しでも皆さんの役に立てるなら、私、【歌唱】で頑張っちゃいます!

私が歌うのは冬の歌
冷たく、寂しく。冬の寒さを感じさせる透明な歌
冬は寒くて、冷たくて、厳しいもの
でも、その先にはいつだって暖かい春が待っているんです
銀河帝国なんていう冬を乗り越えて、平和という春を皆さんで迎えるんです!
歌に【シンフォニック・キュア】も乗せて、聴いてる皆さんの疲れも癒しちゃいますよぉ!

【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】



 軍歌と軍歌がぶつかりあう、まさしく戦場のような一幕を経て、宙域には一瞬の静寂が訪れた。クライングシェルはユーベルコードを相殺する力によって一時的な機能不良に陥らされ、一方で全身全霊の歌を歌った猟兵たちもすぐさま次の曲というわけにはいかない。
 そんな静けさの中に、透明感のある、清らかな歌声が響き始めた。冷たく、寂しく。冬の寒さを感じさせるような歌だ。
 可憐なソプラノボイスを響かせて雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)は歌を紡ぐ。帝国軍の戦火を、厳しい冬と見立てて。しかし、人々はこんな冬を強く生き抜いて、皆で平和という暖かな春を勝ち取るのだと。
(正直、戦争のやり方にまでケチをつけるつもりなんてないし、興味もないんだけど……歌をそういう風に使うのは気に入らねーよ)
 内心でそんな風に毒づいているということは、誰にも悟らせることはなく。可憐な歌姫の如き仮面を被って、静かに、高らかに歌い上げる。春の訪れを待ち耐え忍ぶ人々を湛えるその歌声は、間違いなく、疲弊した解放軍の人々の心を確かに癒したことだろう。

「いい歌だ。いい歌だけど――僕は、“癒す”だなんてチャチなことは言わないぜ」
 穏やかな余韻の残る中、間髪入れずリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)が、希望の歌を歌い始める。その曲の名は“凱旋の歌”
 ここは宇宙船。他の皆の受けている重力補助を彼は受けない。人魚の如き風貌を持つ歌い手は、水晶の檻を抜け出して、無重力の船内を大海のごとく見立てて自在に泳ぐ。鰭をドレスのごとくたなびかせ、芸能船全体を自分の舞台と言わんばかりのパフォーマンス。
「歌は僕の唯一で僕の全てで誇り。歌おう、心揺さぶらせ昂らせる、僕達の勝利を。希望と凱旋の歌を」
 何物にも縛られず、歌うことそのものを楽しむかのようなそのパフォーマンスは、帝国にすら囚われることのない自由さの象徴のようで。
 奮い立てと。前を見ろと。それは、挫かれ続けてきた彼らには、重くすらある激励の言葉。普段なら素直に受け止められないかもしれない、その言葉は、しかし、癒された解放軍の人々には、力強い勇気を沸き立たせた。

「乱暴だなあ……。――っとと!ふふっ、いい歌ですね!私も燃えて来ちゃいました!」
 二人の歌い手は勝気な笑みを交わし。響く歌声は、気力を失い果てた人々の心に、強い希望をもたらすのだった。
『さあ、最後は君の番だ!』

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジェニファー・ジェファーソン
わたくし向きですわねわたくし向きでしたわこのミッションは!
音楽を使った圧政を行うと言うならば!!
わたくしがそれを止めるのが道理!!ええわたくしの中では!
POW判定しかありませんわ!!!ロックですから!!!

…ですが問題は、わたくし歌もアコースティックギターも技巧としてはまだまだ未熟も良いとこですの。100人が100人下手というくらい!
そこで!ユーベルコードの出番ですわ!わたくし自身の技量で人々を解放出来ないのはくやしいですが!デストラクションロックにより適当に帝国の何かをぶっ壊しながら演奏します!

…わたくしが望むのはただ一つ。みなさんが心のままに生きること。
みなさんが、ロックに生きることですわ。



「わたくし向きですわねわたくし向きでしたわこのミッションは!」
 饒舌に語りながら、女がギターを構える。彼女の名はジェニファー・ジェファーソン(ジェニー・B・グッド・f03855)。ロックを愛し、ロックに生きる女。なればこそ、帝国軍の音楽を使った圧政を許せぬと立ち上がるのは当然であった。
 しかし彼女には、熱意はあれども技巧は未熟であった。彼女にもその自覚はあり、なればこそ、自分は人々の心を直接解放するのではなく、敵船の音響兵器を破壊することで力になろうと考えていた。
 だが、同じく芸能船でパフォーマンスをする猟兵たちを見ていると、心が疼く。彼らの中には、本職と言えるような者もいる。上手く、そして心揺さぶられるような音楽なのは当然なのかもしれない。だが、それに甘んじたくはなかったのだ。
 女はギターをかき鳴らし、歌声を張り上げる。お世辞にも上手とは言えぬ歌。だがしかし、その旋律には、心を揺さぶる何かがあった。
 なぜならば。既成概念への反抗。理不尽に対する叛逆。暴力に対する反撃。そう、それこそが。
「ロックンロ―――ル!!」
 クライングシェルの音響兵器が復旧し、洗脳音楽を再び奏で始める。しかし、最早解放軍もされるがままではない。応戦するような砲撃による轟音が宙域に響く。銃声と破砕音によるオーケストラが、戦場にいるものすべてを否応なく昂揚させていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​


 歌声と旋律。そして戦闘音による合奏は何時までも続くかに思えた。だが、永遠に思えるライブにも、いずれは終わりの時間が訪れる。
 それは、猟兵たちのユーベルコードによってもたらされた破壊だったのかもしれないし、勇気づけられた解放軍艦船による砲撃が実を結んだのかもしれない。ともあれ、この宙域に展開されていた、クライングシェル部隊が壊滅的な被害を受けたのだけは確かであった。

 遥か昔、スペースシップワールドの人々に消えない怖れを刻み付けた、帝国軍行軍歌。しかし、今ここに彼らは勝ったのだ。怖れを捻じ伏せ、勝利の第一歩を掴み取ったのである。

最終結果:成功

完成日:2019年02月18日


挿絵イラスト