7thKING WAR⑳〜四天王無法地帯
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轟轟(ごうごう)と唸りをあげて吹き荒ぶ氷原の風が、厚く降り積もった雪を攫って、寒々しい景色に白銀の御簾(みす)を下ろしている。
吹雪の中に聳え立つ、氷で築かれた女王の城。その謁見の間に城主たるアイスエイジクイーンの高笑いが木霊する。
「お~ほっほっほっ! 集いなさい! アイスエイジクイーン四天王!」
デビルキングワールドに悪名を轟かせる実力者。西のラスボスと謳われる氷河期の女王が、自身に忠誠を誓う四天王を集結させる。
アイスエイジクイーンが座す玉座の前に、一騎当千の強者(つわもの)たちが揃って頭(こうべ)を垂れている。
「四天王。地のミリョーネ。此処に」
「四天王。水のナッツォ。此処に」
「四天王。風のリシア。此処に」
「四天王。火のカンテ。此処に」
「四天王。黒のベーザ。此処に」
四天王という名称に背いて、何故か五人目の四天王が名乗りを上げる。
それだけに留まらず、六人目、七人目と、次次(つぎつぎ)に四天王を名乗る者の数が増えていく。
それもそのはず。アイスエイジクイーンには百人の四天王が付き従っているのである。
西のラスボスは、律儀にも百人全員の名乗りを聞いてから玉座より立ち上がる。
「お~ほっほっほっ! わたくしの四天王たち! ついに貴方たちの出番がやってきましたわよ! このアイスエイジクイーンの野望を阻まんとする不逞の輩! 猟兵(イェーガー)が、わたくしの領地にまで攻め込んできましたわ!」
「ふっ。身の程を弁えぬ奴らよ」
「我ら四天王ある限り、アイスエイジクイーン様には指一本触れられぬ」
「くくく。久しぶりに我が剣が血を欲しておるわ」
「ゲハハ! アイスエイジクイーン! 俺様に任せな! どんな相手だろうとペシャンコにしてやるぜ!」
百の四天王たちが各各(おのおの)の個性に満ちた四天王しぐさを披露して、氷河期の女王へと意気込みを伝える。
「お~ほっほっほっ! エクセレント! 貴方たちのやる気、確かに伝わってきましてよ! さぁ! 猟兵たち! 何処からでも掛かってきなさい! わたくしの忠実なる四天王と! 無敵無敗の自動鎧『絶晶(ぜっしょう)』が! 貴方たちの挑戦を受けますわよ!」
アイスエイジクイーンの覇気に満ちた声が謁見の間に木霊する。
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葛葉・御前(千年狐狸精・f36990)は歴戦の猟兵(イェーガー)たちをグリモアベースに集合させる。
「ついにアイスエイジクイーンが戦場に現れたの。猟兵たちの攻勢に対抗するべく、配下の四天王を居城へと集結させているようじゃ。四天王と言いながらも百人ほどが、その地位に就いておるらしいがの」
百人の四天王という言葉に、猟兵たちが少なくない矛盾を感じて首を傾げている。
相手は西のラスボスとも称される魔界屈指の実力者である。
百人の配下がいることは決して不思議なことではない。
単純に四天王という肩書が持つイメージと実態とが乖離しているだけである。
「アイスエイジクイーンは終末をもたらす氷河期魔法をもって堅実に領土を拡(ひろ)げてきた実力者じゃ。その配下である四天王も曲者(くせもの)ぞろいのようじゃの。もっとも付け入る隙がないでもない。四天王しぐさを利用するのじゃ」
四天王しぐさとは果たして何ぞやと猟兵たちの間に疑問符が乱舞する。
「四天王しぐさとは、すなわち四天王らしい立ち居振る舞いのことじゃ。百人の四天王は各各(おのおの)のイメージに基づいた四天王らしい言動をしてしまうようじゃの。そのために全員の力を結集させることは滅多にない。四天王とは個別に挑んでくるものじゃという共通したイメージのもと、それぞれが得意分野を駆使して順番に勝負を挑んでくるようじゃ。この四天王しぐさを上手く利用して勝負を仕掛けることができれば、御主たちが闘う相手は四天王の中の一人のみで済むぞ」
そして四天王さえ撃破すれば、アイスエイジクイーンとの直接対決を邪魔する者は存在しない。
次代のデビルキング候補の一人である西のラスボスを撃破することができれば、彼女に代わって猟兵がデビルキング候補者になることができる。
それはオブリビオン・フォーミュラである魔王ガチデビルの野望を挫くための一手になるだろう。
「首尾良く四天王を撃破したとしても、アイスエイジクイーンが強敵であることに変わりはないのじゃがの。氷の自動鎧『絶晶(ぜっしょう)』に搭乗する難敵じゃ。四天王と同時に、こちらへの対策も忘れてはならぬぞ」
葛葉御前の掌中にあるグリモアが霊験あらたかなる光輝によって猟兵たちを照らしあげる。
デビルキングワールドはアイスエイジクイーンの居城。その謁見の間へと繋がる界渡りの門が開く。
能登葉月
能登葉月です。
よろしく御願い致します。
これは『7thKING WAR』に関係するシナリオになります。
特別ルールとして『四天王しぐさを利用する』『絶晶に対処する』とプレイングボーナスが発生いたします。
山田・二十五郎(人間の探索者・f01591)様。
一名のフラグメントを採用させて頂きました。
この場を御借りして御礼を申し上げます。
皆様の御参加を御待ちしております。
第1章 ボス戦
『西のラスボス『アイスエイジクイーン』軍』
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POW : 絶晶融解体
自身の【氷の自動鎧「絶晶(ぜっしょう)」】を【融解変形モード】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD : 絶極双晶舞
【もう1つの自動鎧「極晶(きょくしょう)」】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 超絶凍結刃
【氷の自動鎧「絶晶」の凍結魔力】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【超凍結】の状態異常を与える。
イラスト:屮方
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
地籠・陵也
【地籠兄弟】アドリブ歓迎
何か倒したと思ったら後ろから襲ってきそうな名前の奴とか、
戦う前に必ず回復してくれそうな奴とか、
手だけになって重要アイテムさらっていきそうな奴とかいるな……
四天王でも連携を取るのか。
ならこっちも双子コンビネーションを見せてやろう。
凌牙がUCで竜化するから、それに乗って上から魔術で援護する。
【高速詠唱】【多重詠唱】で【結界術】【オーラ防御】、さらに【氷結耐性】を高める強化(【肉体改造】)の術を。
【破魔】の術で牽制しつつ、122秒後にアイスエイジクイーン狙いで【指定UC】をしかけて置いたので四天王すっ飛ばして叩く。
【浄化】のブレス122体分はさぞ効果抜群なことだろう。
地籠・凌牙
【地籠兄弟】アドリブ歓迎
四天王って何だったっけ(遠い目
「ククク、奴は四天王の中でも最弱……」
とか言って連携もへったくれもねえようなイメージだが連携すんのか。
でも俺たちだって連携にゃ自信がある、簡単には負けねえぞ?
【指定UC】で黒竜に変身!
『穢れを喰らう黒き竜性』で"陵也が狙われる不運"を喰らい俺にヘイトを集めて【おびき寄せ】るぜ。
絶晶はブレスと身を切り裂けば出てくる炎である程度威力を削げば、陵也がかけてくれた術もあって耐えられるハズだ。
【継戦能力】でゴリ押しつつ、陵也のUCが発動するまで【時間稼ぎ】するぜ。
っていうかあのさあ、一言言っていいか?
交代交代に一人ずつ戦うのは連携とは違うんだが???
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黒髪白鱗の兄と、白髪黒鱗の弟の、地籠兄弟はアイスエイジクイーンとその四天王が待ち構える謁見の間に転移した。
地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は百人の四天王の姿を見回すと、その姿かたちも個性的な集団に対しての既視感を覚えていた。
(何か倒したと思ったら後ろから後ろから襲ってきそうな奴がいるな……)
四天王、地のミリョーネ。初めて遭遇する筈なのだが、何故か見知っている感じが拭えない。
(あっちは戦う前に回復してくれそうだし、倒されても手だけでクリスタルを奪っていきそうな奴もいる……)
それは火のカンテや黒のベーザに対しても同様だ。
「四天王って何だっけ……」
地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は兄の隣で遠い目をしていた。
「お~ほっほっほっ! わたくしの四天王に挑戦なさいますのね、竜の兄弟たち! どうやら連携には覚えがありそうですわ! それでは、わたくしの四天王の中でも連携に秀でた者が相手を務めましょう!」
言葉にせずとも自然体で互いの隙を補い合う兄弟の立ち姿を一瞥しただけで、ふたりが連携に秀でた猟兵であると看破した西のラスボスが、配下の四天王に迎撃を命じた。
「四天王でも連携をとるのか。こっちも双子のコンビネーションを見せてやろうか」
「『ククク、奴は四天王の中でも最弱……』とか言って、連携もへったくれもねえようなイメージだがな。いいぜ。かかってきな。俺たちだって簡単には負けねぇぞ?」
戦闘態勢をとるふたりの前に進みでてきたのは、気品を漂わせた端正な顔立ちの技師と、筋骨隆々とした肉体を誇る武道家だった。
「機械の四天王。ドガー。相手が男では私の口説きのテクニックを披露する事は出来ないかな」
「必殺技の四天王。シュウ。派手にやらかそうぜ、兄貴」
陵也は、進み出てきた四天王の姿に再びの既視感に覚えていた。
「凌牙。あのふたり〝も〟危ない。色んな意味で」
「ああ。速攻で片付けようぜ! 地獄への片道切符、押し付けてやらぁ! 飛翔せし煉獄の黒竜(フェーゲフォイエ・リンドブルム)ッ!!」
凌牙の肉体が異音と共に全長二〇メートルに達する黒鱗の竜に変貌した。
その背にある偉大な翼が羽ばたくと、大気と重力の戒めが竜の暴威によって捻じ伏せられる。
黒き竜の威容が空中へと舞い上がった。
陵也は飛翔する黒竜の背に騎乗すると、得手とする神秘を操る技法を言霊により紡いでいく。
アイスエイジクイーンの頭上を許しもなく飛び回る凌牙の無礼を誅さんと機械の四天王の機械弓や、必殺技の四天王の爆裂する拳が放たれるも、それらはすべて陵也の魔術により堅固となった黒竜の鱗に弾かれた。
「あのさぁ。一言いっていいか? てめぇ等のは、まるで連携になっちゃいねぇ。力任せにひとりずつ戦うだけなら、頭数が増えただけだ。怖くも何ともねぇぜ!」
「何だと!? ぐ、うわぁぁぁっ!?」
黒竜の口腔から咆哮とともに放たれる灼熱の吐息が、四天王を一蹴する。
猛り狂うの竜の炎は、そのままアイスエイジクイーンの肉体までもを飲み込まんとして奔った。
「お~ほっほっほっ! 見事! これは四天王では相手になりませんわね! しかし! わたくしには届きませんわよ! 刮目なさい! これが『絶晶(ぜっしょう)』、防御形態ですわ!」
氷河期の女王が登場する自動鎧が融解し、液体となってその形状を変化させると再び凝結する。
十重二十重(とえはたえ)の個人要塞とも呼べる形態となった氷の鎧が、凌牙の炎を塞ぎきる。
「お~ほっほっほっ! それでは、わたくしの絶晶の護りは破ることはできませんわよ!」
危うげなく炎を弾く堅牢な氷壁を前にしても、凌牙の表情には焦燥の陰りはない。
「……そろそろだな」
黒竜のつぶやきに、その背中に騎乗する白竜の兄が応える。
「ああ。確かに一二二秒だ。凌牙。俺の仕掛けは完成した。……其は代行者。尊き御名の下、地を這う穢れし魂に裁きを雨と降らせ給え!」
陵也が高らかに鍵言(けんげん)を詠いあげると、破魔の光輝を宿す白き竜の軍勢が参集する。
その数、実に一二二体。アイスエイジクイーンの四天王を上回る数の竜の群れの咆哮が、女王の居城を揺るがした。
「この術の完成には時間が掛かる。流石に四天王と戦いながら完成させるのは凌牙がいてくれなければできなかった。これが、俺たち兄弟の連携だ。――【昇華】響き渡れ、神竜の裁吼(ピュリフィケイト・ドラゴネスジャッジメント)!!」
一二二体の白竜の口腔から、全くの同時に不浄を滅する閃光の吐息が放たれる。
「くっ……この威力は……!? わたくしの……絶晶が……!?」
一点に収束した白光の吐息が、アイスエイジクイーンの堅固なる氷の守護を突破する。
光の本流が収まった後、その後には全身を焼き焦がした女王の姿があった。
「……絶晶の防御形態を破られたのは、初めてのことですわね。見事ですわ! しかし。わたくしはアイスエイジクイーン! この程度では倒れませんわよ!」
「ははっ! 強がりだが、その根性は認めてやるぜ!」
「あれを耐えるか。厄介なのは鎧の方ではないな。アイスエイジクイーン。流石に西のラスボスと謳われるだけの実力者だ」
大成功
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アルテミシア・アガメムノン
ほほほ、アイスエイジクイーンさんとその四天王の皆さん、ごきげんよう。
無敵無敗と言われれば魔王としては挑戦しない訳にはいきませんわね!
『氷獄の魔帝』で真の姿を顕現。
無限のパワーで四天王を一人、サクッと撃破してその後、残りが四天王しぐさをしている間にクイーンへ。
ほほほ、氷河期魔法、素晴らしいですわね!
わたくしも実は冷気魔法、得意ですの。
無限のパワーで【絶対零度】(属性攻撃×全力魔法)を現出。
わたくしのこれは真の絶対零度。零点振動すら許しません。
この世界では全てのモノは動きを止める。それは絶晶とて例外ではありません。
絶晶を凍らせて万物を斬り裂く『クロノスの大鎌』の一撃で打ち砕きましょう!
プリ・ミョート
四天王しぐさ、それは選ばれし悪魔にのみ許された上流マナー……すなわち! ここでしぐさを見せられなきゃ四天王が廃るべ! こほん。改めて、おらは魔王国四天王が1人、プリチャンだべさ! 他の四天王が出るまでもねえ、ここはおらに任せるべさ
ちなみにポイントは「四天王しぐさを戦場にいる方にマナーとして強要する」とこだんべ。ちゅーわけでクイーンもよろしくどうぞ。
くくく、部下の四天王がバリバリ決めてるところでクイーンが慌てふためく様子が目に浮かぶべ。その慌てたところにデビルガトリングの銃弾をご馳走してやるべさ。部下ができることは上司もできて当然。そう思うべな、な?
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黄金の女帝と、ガトリングガンを携えたブギーモンスターが、氷の城の謁見の間に転移する。
アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)はアイスエイジクイーンとその配下の四天王を前に泰然自若としていた。
その隣ではプリ・ミョート(怪物着取り・f31555)が忠実なる執事のように控えていた。
「ほほほ。ごきげんよう。アイスエイジクイーンさん。魔王国の王、アルテミシア・アガメムノンですわ」
「そして魔王国四天王、プリ・ミョートだべ! おらが相手をするべ!」
単騎で四天王を名乗るブギーモンスターの出現に、氷の女王の配下が色めき立つ。
「何だと! わずかひとりで四天王を名乗るとは! 身の程知らずめが!」
「ふっ。魔王国だと。聞いたこともないわ! 大方、身の程知らずの田舎娘であろう! アイスエイジクイーン様を差し置いて魔王を僭称するなどとは無礼者めが!」
「あら。試してみます?」
「くくく。魔王国を知らないとは田舎者ばっかりだべ。他の四天王が出るまでもねえべ。プリちゃんだけで十分だべな!」
不敵に微笑むふたりの挑戦に、アイスエイジクイーン四天王の中でも最強と謳われる者たちが応じた。
「ふむ。ならば我らが相手となろう。この四天王筆頭、ヤーラ・レヤークと!」
「グハハ! 俺様! マルデー・ザーコー様の剛腕に潰されたいのはどちらだ!」
強者たる風格を漲らせて進み出るヤーラとマルデー。そのふたりを前にしてもアルテミシアの美貌の面差しは優雅な微笑により輝いて見えた。
「それでは。わたくしの御相手はおふたりだけでよろしいのですわね?」
黄金の女帝が、豪奢な巻き髪を手で払う所作と同時に、暁の色を宿す双眸が光を放つ。
背に六対十二枚の翼が広がると共に、周囲の大気が凍り付き、極低温の暴威が空間を支配する。
「なにっ! 馬鹿な、これは……女王の氷河期魔法……!?」
「わたくしも実は冷気魔法は得意ですのよ。お休みなさいませ。わたくしの舞踏(ダンス)の相手は貴方たちでは務まりませんわ」
無造作に放たれた絶対零度の凍気が、四天王を氷の棺の住人へと変える。
「お~ほっほっ! まさか、あのふたりを倒すとは。良いですわ! 貴女の申し込み、受けて差し上げますわ! 絶晶(ぜっしょう)! 世界に終焉をもたらす氷河期魔法、その真髄を知らしめなさい!」
アイスエイジクイーンの宣言と共に美しい造形の氷の自動鎧が機動する。
絶晶の腕に握られた巨大な氷槍の一閃が、アルテミシアの無限の魔力と激突した。
「あら。これは……」
氷嵐を纏う槍の一撃が黄金の女帝の冷気を圧していく。
「お~ほっほっ! わたくしが単純な力だけとでも思いましたかしら。わたくしの氷河期魔法は、相手が強くなれば強くなるほどに、その力の根源を凍結させますのよ! 貴女の魔力は確かに絶大ですわ。しかし、それが仇となりましたわね! さぁ。凍り付きなさい!」
両者の冷気が激突する余波が、周囲の存在を敵味方の区別なく凍結させていく。
力の弱い四天王の幾人かは、すでに物言わぬ氷像と化していた。
その時である。
「おっと。おらのことも忘れてもらっては困るべ! ブギブギワールドワイドアワード!」
黄金の女帝と氷河期の女王の激突する戦場の光景が、一瞬にして善意に満ちた悪魔が犇く世界へと交換された。
「世界の交換? それがどうしましたの! 交換された世界ごと、わたくしの氷河期に沈めてさしあげますわ!」
「おっと。おいらが交換したのは世界だけじゃないべ! 世界の〝法則〟もだべな! おらこそは魔王国で一番小柄な四天王、プリチャンだべ! さぁ。アイスエイジクイーン! あんたも四天王として名乗りをあげるね! 違反者は罰則だべな!」
「はぁ? それはいったい、どういう意味ですの……っ……!? わ、わたくしの氷河期魔法が……絶晶の出力が落ちていますわ……!? 何故……!?」
突然の事態に困惑する氷河期の女王とは対照的に、黄金の女帝は高らかに四天王としての名乗りを上げる。
「わたくしの名はアルテミシア・アガメムノン! 黄金の四天王ですわ!」
世界そのものの法則に縛られて出力を落としたアイスエイジクイーンの魔力を、アルテミシアの無限の魔力が凌駕する。
「くくく。四天王しぐさとは選ばれし悪魔のみに許されし上級マナー。おらの世界では、誰もが四天王しぐさをしなくてはならないんだべ!」
「くぅ……わたくしは西のラスボスですわよ!? 四天王しぐさだなんて、そのようなこと――」
「アルテミシア様はできてるべな! 部下ができることは上司もできて当然。そこが、あんたとアルテミシア様の差だべな! そして、できなかったお仕置きは弱体化(デバフ)だけじゃないべ!」
プリの携えた魔界のガトリングガンが瘴気の弾丸を咆哮とともに吐き出した。
出力の低下した氷鎧の装甲が、瘴気の弾幕にひび割れていく。
「ぐっ、うぅ……四天王しぐさ、四天王しぐさ……! ええと……我こそは黄金の四天王――」
「ブー! だべ! 他人のパクりは四天王以前に悪魔(ひと)として御法度だべなー!!」
「ちょっと!? きゃぁぁ……っ!! ワ、ワンモア! ワンモアチャンスですわ……!」
プリの痛烈な駄目だしとともに更なる勢いで弾丸を吐き出すデビルガトリング。必死で自分に相応しい四天王しぐさを考えるアイスエイジクイーンの眼に、万物を両断する黄金の処刑鎌を携えた堕天使の威光が焼き付いた。
「時間切れですわよ! アイスエイジクイーンさん! 審判の時ですわ! 氷獄の魔帝(サタン)――」
零点振動すら許さぬ絶対零度の冷気が、氷の女王が頼みとする絶晶すらも凍てつかせる。
そして。
「――クロノス。貴女の時間(とき)は、ここで終焉(おわり)ですわ」
無慈悲に振り下ろされた大鎌の一閃が、空間ごとアイスエイジクイーンの肉体を切り裂いた。
「あ、あぁぁぁぁ……!?」
「ふっ。今は眠るべ。アイスエイジクイーン。目覚めたら、もういちど四天王しぐさを勉強し直すべな」
氷の女王が、その意識を暗闇に閉ざして崩れ落ちる。
かくして魔王国の女帝と、一番小柄な四天王の連携が、アイスエイジクイーンに引導を渡したのである。
大成功
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