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7thKING WAR⑳〜ここは私にお任せを

#デビルキングワールド #7thKING_WAR #西のラスボス『アイスエイジクイーン』

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#西のラスボス『アイスエイジクイーン』


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『猟兵……遂にここまで来たか。見事な快進撃だ。どうなさいますか、アイスエイジクイーン様』
 ここは西のラスボス、アイスエイジクイーンが支配する地――妙に高い所から猟兵達を見下ろす黒い影があった。
『お〜っほっほっほっ、問題ありませんわ! 魔界随一の高貴なる者たるわたくしが狙われる事はこの世の摂理。猟兵もスーパーカオスドラゴンもガチデビルも、終末の氷河に飲み込んでさしあげますわ〜!』
 ピシャーン!(落雷)
 闇の中に浮かび上がる謎のシルエットは、四人……四人?
 いや、百人ぐらいかな? なんか凝ったキャラデザの強そうな奴が、すごいうじゃうじゃいた。一人につき最低16000Dぐらいかかってそうな鬼の作画コストだ。
 彼らはアイスエイジクイーンが率いる四天王。四天王だが、全部で百人いる。
 百人揃って四天王、戦国時代ではよくある話だ。戦国時代ならね。

『しかし……ボス自らが出るまでもないのでは。ここは我々四天王にお任せを』
 彼女の前に片膝をつき、深い忠誠を示す黒衣の青年。
 長い前髪が片目を隠し、いかにも私が腹心ですという雰囲気を出しているが、百人いる四天王の一人である。
『クハハハ、グリースの言う通りだぜぇ! あんな弱っちい奴ら俺様の敵じゃねぇ。ダイヤモンドも粉砕するこの炎の拳で叩きのめしてやる、テメェら手出しすんなよ』
『黙りなさい愚かなロッソ、そのような慢心が命取りとなるのです。彼らの戦力の分析は完了、計算によると私の勝率は100パーセント……私が出るべきでしょう』
『えぇ〜? ブラウちゃんのお話、むずかしくてヴェルテちゃんよくわかんないよぉ。ねぇねぇクイーンさま、ヴェルテちゃんが先に猟兵ちゃんたちと遊んできてイイよね☆』

 全身に筋肉の鎧を纏い(要するに防御力を無視した謎の半裸)、大地に拳を叩きつけ己の力をアピールする、血気盛んな大男。
 謎のコンピューターみたいなのを操り、スマートなスーツに身を包んで眼鏡をクイッとやる、知性派ムーブに余念がない青年。
 ふわふわのロングヘアにフリフリのワンピースを着て、天真爛漫でぇすみたいなポーズをしつつ、グイグイ前に出てくる少女。
 全員四天王である。ただし、全部で百人いるうちの三人。
『お前ら、ボスを困らせるんじゃない』
 グリースと呼ばれた青年が苦言を呈するも、まっとうに支配地を拡大してきたアイスエイジクイーン様は、寛大かつ冷静な御方であった。
『わたくしと貴方がた百人で同時に襲いかかるのが得策ですわ。猟兵も数の暴力の前には無力でしょう。加えて、わたくしには例の物があります。心配ご無用ですわ』
『氷の自動鎧、絶晶(ぜっしょう)……確かにあれに優るものは』
 しかし、百人の四天王たちは、みんなあんまり話を聞いていなかった――。

『『『『アイスエイジクイーン様、ここは私にお任せを!!』』』』

●四大元素とか司りがち
「四天王しぐさがくどい」
 予知で百人ぶんの四天王ムーブを見せられたらしい柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)はうんざりしていた。
 西のラスボスであり、7thKINGの候補者のひとりであるアイスエイジクイーン。
 「氷河期魔法」と、氷の自動鎧「絶晶」を操るニセ高飛車で、百人の四天王を従える氷の女王だ。配下の四天王も全員強者で、本当にまともに殴りあったら、猟兵側の損害も甚大であろう。
「弱点はある。すげえどうしようもないやつが」
 彼女の従える四天王たちは、四天王しぐさが強すぎて何となく単騎で挑んでくるため、主たるアイスエイジクイーン以外の仲間とは全く連携が取れないのだ。ひどい。
 また、例に漏れず彼らも良い子なので、いかなる劣勢に陥ろうと、くどい四天王しぐさはきちんと守ってくれる。
 アイスエイジクイーンを(単騎で)守ろうとする彼らの弱点をつき、順番に倒しつつ本体を叩くのだ。
「とはいえ『絶晶』の力は強大だ。自動鎧の攻撃や防御を退けて、敵にダメージを与える手段も忘れず考えてくれ。
 奴らはオブリビオンじゃないが、頑丈だから全力で殴って大丈夫だ。解決は頼んだぜ」


蜩ひかり
 蜩です。四天王あるあるです。
 よろしくお願いいたします。

●プレイングについて
 受付状況はタグでご確認ください。
 今回は採用人数を定めず、概ね先着順で書けるだけ書く方針です。
 初見の方、お久しぶりの方、過去流してしまった方は極力優先します。
 フォームが物理的に閉まった時が締切となります。
 MSページも一度ご確認いただけますと幸いです。

●四天王たち
 当シナリオでは、100人のうちとりあえず4人が登場します。
 以下のいずれか1人+アイスエイジクイーン本体への対処をお書きください。
 誰と戦うかの指定がないプレイングは採用率が下がります。

 ①火の悪魔『ロッソ』
 自分が四天王最強だと信じて疑わない脳筋ゴリマッチョ。
 猟兵の実力を甘く見て、真っ先に攻撃を仕掛けてくるが、返り討ちに遭い「ば、バカな……この俺様が!」とか言うタイプ。
 燃える拳が武器だが、攻撃前に何となく何かを破壊し、力を誇示しないと気がすまない。ブラウの眼鏡を割りたい。

 ②水の悪魔『ブラウ』
 自分こそ四天王のブレーン担当だと思っているクールな眼鏡男子。
 敵の分析が趣味で、技能値などを持ち出して行動を予測しようとするが、予想外の技や行動で対抗されると「こんなのデータにないぞ!」とリアクションしてしまう。
 魔法特化型のため、殴り合いに持ち込まれるとつらい。ロッソとは犬猿の仲。

 ③風の悪魔『ヴェルテ』
 100人いる四天王の紅一点を狙っている腹黒系ふわふわ女子。
 天然&無邪気を装ってワル行為をはたらき、そんな自分を超可愛いと思っているナルシスト。甘やかしてもらえないとブチ切れて周りが見えなくなる。
 後方支援担当を装った怪力。実は土の悪魔グリースが好きだが、想いは一方通行。

 ④土の悪魔『グリース』
 この四人の中ではリーダー格。ミステリアスで物静かな青年。
 他の四天王とは一線を画す存在でありたいらしく、いかにも何か知っている風なことを言い、シリアスっぽい会話や空気にはつい便乗してしまう。
 バランス型で弱点は少ないが、技を出す前のモーションがいちいち長い。実は仲間想い。

 ネタでもシリアスでも大丈夫です。
 皆様のプレイングをお待ちしております。

●プレイングボーナス……四天王しぐさを利用する/絶晶に対処する。
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第1章 ボス戦 『西のラスボス『アイスエイジクイーン』軍』

POW   :    絶晶融解体
自身の【氷の自動鎧「絶晶(ぜっしょう)」】を【融解変形モード】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD   :    絶極双晶舞
【もう1つの自動鎧「極晶(きょくしょう)」】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    超絶凍結刃
【氷の自動鎧「絶晶」の凍結魔力】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【超凍結】の状態異常を与える。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイン・セラフィナイト
『水の悪魔』
四大属性使ってるって聞いて来てみたんだけど……クセが強い……。

悪魔たちの属性魔法見てみたかったんだけど、じゃあブラウさんと戦おうかな。

それで、ボクの戦い方はすでに分析済みだよね。どのくらい把握してるの?って聞いてみよう。
口を開いて喋り始めたところで『早業』で『境界術式』展開、豪雨のように魔弾を射出!

魔法使いは詠唱しなきゃだよね。でもこの魔導書の束、すでに魔術が励起してる状態だから詠唱いらないんだ。

魔弾射出後UCも『高速詠唱』しておくよ!
戦場を覆う砂嵐でクイーンとブラウさんの体や武器防具もその超重量で行動不能にしてみよう。

砂の槍に炎の魔力を『全力魔法』で付与!そのままクイーンに投擲!



●1
 特に意味もなく雷鳴が轟き、いかにもな決戦感をかもし出す、仁義なき四天王バトルフィールド。
 そこへ真っ先に召喚されてきた猟兵は、漆黒の鴉を従えた、小柄な少年であった――。

『クハハハ、これが猟兵かよ!? 早速カモが来やがったぜェ! オイ、ここは俺様に戦らせr』
『どきなさいロッソ。鴨と鴉の見分けもつかないのですか』
『ぶへらっ!?』
 さっそく猟兵舐めプモーションを開始した火の悪魔・ロッソに鉄砲水をぶちまけ、先陣を切ってきたのは、四天王いちの知性派を自認する水の悪魔・ブラウだ。
 ……え、出るの早くない? 
 捨て駒を先に戦わせ、相手のデータを収集してから出てくるポジション、ゆえに二番手か三番手のはずである。でも、出る時は出るのが四天王だ。第一、こいつらは百人いる。
『調べはついています。登録番号15171、アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)。鴉の使い魔と四元素の精霊を使役し、世界の情報を蒐集する探求者であり観測者だそうで』
「あっはい」
 メガネをクイッされたアインは、思わず丁寧語で返事してしまった。けしてこのデータマンに敬意を抱いたとかではなく、ドン引きした時つい出てしまう類の丁寧語である。
「四大属性使ってるって聞いて来てみたんだけど……クセが強い……」
『フッ、我々をデビルズ豆つかみゲーム担当や、デビルズグミからオブラートを綺麗に剥がす担当レベルと一緒にしていただいては困ります。彼らは四天王の中でも最弱……』
「……あー、多分そうだろうね。そうかもしれない」
 自身の予知でうっかり見えたクセスゴ面子を思い出し、アインは頭が痛くなった。あれらのデザインにも推定16000Dかかっているとしたら、よく領民が暴動を起こさないなと思う。
 ブラウの指摘どおり、四元素の精霊を操るアインとしては、ほかの三人が使う属性魔法も気になるところだ。
 ふとそちらへ目を向けると、残りの三人はなんか強そうなポーズを取りながら、律儀に待機していた。まるで格ゲーのキャラセレクト画面だ。
「本当に協力して戦う気ないんだ……じゃあブラウさんと戦おうかな」
『お〜っほっほっほっ、わたくしをお忘れでして!? 無謀な坊やは超絶凍結刃の前にひれ伏すがよいですわ、お友達と一緒に氷像におなりなさい!』
 ブラウの背後に控えるアイスエイジクイーンが、アイン三人分の丈はありそうな杖に、超凍結の魔力を溜めはじめた。
 すぐさま妨害したいところだが、アインの前にはブラウが立ちはだかる。渦巻く水が枷のような形状となり、アインの手足に纏わりつこうとしている。
 ただで通してくれる気はなさそうだ――そこで、アインは一計を案じた。

「ブラウさん、ボクの戦い方はすでに分析済みだよね。どのくらい把握してるの?」
 ブラウは、待ってましたとばかりにメガネクイした。
『ええ、当然です。全力魔法122、動物使い97、属性攻撃41……四大属性に加え、時空間をも掌握する強大な魔力の持ち主。私と同様の魔法特化型ですね。一撃の火力を重視しつつ、手数が必要になる撃ち合いにも強いようです。高速詠唱と鴉達の動向にも注意すべきでしょう……ですが、純粋な腕力には不安材料があります。ゆえに、この水の枷で魔法を封じれば我々の勝率は100パー』
 ブラウは気づくべきだった。
 得意げにペラペラとデータを喋っている間は、呪文の詠唱ができないと――。

 四天王しぐさで詠唱が中断されている隙に、アインは抜け目なく【境界術式:叡智ノ書架】を展開。2260冊もの魔書が、彼の私有する書架からただちに召喚され、ブラウに向かっていっせいに魔弾を射出する。
 その勢いはさながら豪雨。水を操る四天王には屈辱的な反撃だ。
『なッ……魔法を使うには詠唱が必須な筈。なぜ一瞬でこのような技が!?』
「そうだよね。ブラウさんの分析、結構いい所まで行っていたよ。でもこの魔導書の束、すでに魔術が励起してる状態だから、詠唱いらないんだ!」
『何だとォ!? そ、そんなのデータにないぞ!』
 百天王をゆうに超える数の暴力へも、律儀にテンプレ分析メガネリアクションがきた。
 ただでさえもうそんな暇ないのだが、アインは追撃の手を緩めない!
「渇きの回廊、無形の楼閣、今此処に白き災厄は吹き荒れる――! 境界を敷け、豊穣の祖よ!」
 空中の魔書から降りそそぐ魔弾が弾け、天候は一瞬で砂嵐に変わった。大量の砂粒はブラウとアイスエイジクイーンに纏わりつき、自由な行動を許さない。
『くっ、「絶晶」が重くて動けませんわ……何とかなさいブラウ!』
『お、お待ちください。今分析を……貴様、水が土に弱いと知っての事か!?』
 四大属性、雷がないので、水の弱点が土になりがち。
 さすが四元素を司る知の探求者アイン、その辺りのお約束も理解していた。仕上げに、砂を固めて形成した槍へ炎の魔力をこめ、燃えさかる槍を創造する。
『そ、それは……おやめなさい狼藉者!』
「ブラウさん、キミの計算違いはもうひとつある。ボクも槍を投げるぐらいはできるんだよ……それっ!」
『きゃあああーっ!!』

 アインの投げた炎の槍が突き刺さり、無惨にも溶けゆく『絶晶』。氷属性の弱点は炎、叡智ノ書架の本にも1000000回書いてある。読まなくてもわかる。
 四天王あるあるばかりか、ファンタジーあるあるまで網羅した、見事な攻略法であった。
 データキャラ、一人目に出てくると、めっちゃダサい――四天王の皆は気をつけよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

咲凍・しぃら
なあ、グリースよ
“理解”るよね
しぃらさんの初陣が
他でもないあんたである意味が
※特にないけど

この色違いの瞳が見えるか?
悪いね
グリースの能力はこれでスキャンできちゃうんだ
※できないけど

しかしグリース直々に説明してくれてもいいぞ
しぃらさんは敢えてそれを聴こう
それが“闘い”の暗黙の了解だ
そうだろう?

流石は大地を統べる者
ヨッ、地球もびっくり
あんたが大将
とか適当な相槌を入れつつ
口上の途中で無慈悲に攻撃させてもらうよ
すまんね

クイーンにはUCで対抗
数で押すよ
何かがごっそり落ちていくけど
しぃらさんには今がある

クイーンちゃんさあ
部下百人もいたら大変じゃない?
どういうマネジメントしてるの?
雑談で気を逸らしつつね



●2
『えぇ〜っ、ブラウちゃんもうやられちゃったのぉ。しょせん四天王で一番の近眼か〜。きゃっ、ホコリっぽいからこっち来ないで☆』
 猟兵の攻撃で砂まみれになった一番手、ブラウからささっと距離を取りつつ、風の悪魔・ヴェルテは新たな猟兵、咲凍・しぃら(無色盗名・f28572)に目をつけていた。
 美少女同士の乱闘には絶対需要がある――この女はそう思っていた。
『じゃ〜ん☆ お待たせっ、次はみんなのヴェルテちゃんの登じょ』
「なあ、グリースよ」
『無視っ!?』
 しぃらはヴェルテを無視し、傍らで意味深に腕を組んで立つグリースに話しかけた。
「“理解”るよね。しぃらさんの初陣が、他でもないあんたである意味が――」
 含みを持たせる絶妙な間。ラジオパーソナリティなら朝飯前のかましシリアスだ。
 ――グ、グリースくん、この女とどういう関係なの!?
 グリースへ密かに想いを寄せるヴェルテをも焦らせる迫真の演技だが、因縁は特にない。
 初陣からポッと出の四天王に因縁を生やす強者。それが、咲凍・しぃらの生き様であった。

 ありもしない過去を匂わされた敵側も、当然困惑すべきなのだが、グリースはその辺り一味違っていた。
『まさかお前は……数年前我が軍が焼き討ちにしたヒソイログ隔離地域の残党の娘』
 えっ、そんな事件あったの? 知らん。
 しかし、しぃらも普通にアドリブで対応する。
「あぁそうさ。1000人いた一族も、今やあたし一人ぼっちだよ。“シランス・フィニ999事件”……忘れたとか言わせねぇから。あの日以来、あんたへの復讐だけを考えて生きてきた!」
『あり得ませんわ。ヒソイログには、焼き討ちにする一ヶ月前から入念に退避勧告を出していた筈。“シランス・フィニ999事件”は、わたくしに嫉妬する弱小魔王勢力の捏造ですわ!』
 おまけにアイスエイジクイーンまで乗っかってきた。架空の事件ですよね?
 だが、誰も止まる気配ない。しぃらは思わせぶりに前髪をかき上げ、深紅と灰緑に染め分けられた、特徴的な瞳を見せつける。
「この色違いの瞳が見えるか?」
『それは……確かに、シランス・フィニ族の特徴……』
 グリース、しぃら側が出してきた設定を素早く盛りこんできた。
「理解ってくれたかい、あたしが“生き残り”である証をさ。悪いね。グリースの能力はこれでスキャンできちゃうんだ」
『……我々が恐れた力が覚醒したか。やはり、お前はあの時殺しておくべきだった……』
 アドリブを生やしては打ち返す二人。ロールプレイ強者とはこういうものである。

 無論、実際には、シランス・フィニ族の秘められし力など特にない。
「しかし、グリース直々に説明してくれてもいいぞ。しぃらさんは敢えてそれを聴こう。それが“闘い”の暗黙の了解だ――そうだろう?」
 それでこの言い草である。
 堂々たるニセ格上ムーブで敵の情報を引き出す作戦、しぃらさんも四天王の才あるのではないだろうか。
『後悔しても知らんぞ。――覚醒せよ、我が左眼に秘められしゴーゴンの身を知る雨よ』
 グリースもおもむろに長い前髪をかき上げる。隠された左眼には、いかにも禍々しい石が嵌まっていた。
『この眼が輝いた時がお前の最期。俺の魔眼を見た者は石に変わる』
 マジ?
 ゴーゴンの身を知る雨、思ったよりヤバい能力だ。しかししぃら、退かない。
「そうそう、そんな感じ。ヨッ、流石は大地を統べる者!」
 ゴゴゴゴゴ……。
 魔眼に力が貯まるまでの間、グリースは左眼の上に手をかざし、大地を揺るがすオーラを放ち続けている。その振動エネルギー無駄じゃない?
「ヤバ、今震度6ぐらいあるくね? ヨッ、地球もびっくり!」
『余裕を見せていられるのも今のうちだ……閃け、ゴーゴンの身を知』
「おっとそこまでだ、口上の途中ですまんね!」
『ぐあッ!?』
 グリースの魔眼がいよいよ輝きを増し、カットインとかが入る寸前で、しぃらのソーシャル・レーザーが至近距離から火を噴いた。グリースは吹き飛び、地面に倒れ伏す。
『く……これも因果応報か。見事だ、シランス・フィニの娘よ……』
 危なかった。もうちょっとこいつの話を聞いていたら石化する所だった。いかにも死ぬような気配を出しているが、一時戦闘不能になっただけです。

『グリース! くっ、よくもわたくしの部下を二人も!』
「クイーンちゃんさあ、こんな部下百人もいたら大変じゃない? どういうマネジメントしてるの?」
『月一回の個人面談でわたくし自らキャリアアップやメンタルケアの相談に乗り、賞与や休暇、福利厚生などのサポートを充実させ、四天王として働きやすい環境を整えておりますわ。“なりたいワルになれる国”、これぞ我が王国の理念!』
「すごいまっとうな事言ってる!」
『おーっほっほっほ、貴方も領民にしてさしあげてもよろしくてよ!』
 どや顔でニセ高飛車ムーブをかましつつ、『極晶』を繰り出すアイスエイジクイーン。ふたつの巨大な鎧がしぃらを挟むように囲み、追い詰めようと襲いかかる。
「そっちが2体で来るならしぃらさんも分身するまでだ。そらっ、持ってけ!」
『な……12体に分身したですって!?』
 シランス・フィニ族の皆さん……もとい、コアなラジオリスナーの方々の応援がソーシャル・レーザーに集まり、アイスエイジクイーンの自動鎧を四方から狙い撃って、融解させた。
 分身したしぃらの影が、脆くなった氷へナイフを突き立てれば、さすがのラスボスも無傷ではいられない。

 彼女の纏う氷を剥ぎ取るごとに、自分のなかのなにかも、一緒にごっそり削れ落ちている気がする。氷の欠片にうつるのは、ここにあるはずのない景色だ。
(……高校の教室?)
 どこだっけ。わかんない。でもイィや――続々と寄せられる応援コメントを見ながら、心に牙を隠した“彼女”は、にまりと笑う。
 しぃらさんには今がある。
 そう、シランス・フィニ族の呪縛から解き放たれ、自由に生きる未来が――!(※違います)

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
水の悪魔
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:『疾き者』から借りた漆黒風、四天刀鍵
属性:氷雪、たまに水

ほぼ属性かぶってますね?まあ良いですが
ここに来た理由は、氷河期魔法が気になって

ところで、そのように分析が得意なら。私が『誰』だかわかりますねー?(わざと語尾伸ばした。『疾き者』の特徴)
正解は『静かなる者』ですよ。とか言いながら、四天刀鍵で氷雪属性と雷属性を増幅したUCを早業で展開
白雪林出してないの、わざとですよ

ちなみに、『我ら』の特徴として。四天霊障伝って他の人も攻撃するんですよ
ええ、炎(『侵す者』)+風(『疾き者』)属性での押し潰しがね?



●3
『やれやれ……先程はとんだ失態をお見せしましたが、猟兵に関するデータの精度は上がりました。クイーン様。改めて、ここは私にお任せを』
 そう言ってスッ……と馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の前に現れたのは、先程一番手で出てきてコテンパンにされていた筈の、水の悪魔・ブラウだった――。

 えっ?
 ここでまたこいつが出てくるんですか?
 まだ出番が回ってこないロッソとヴェルテは、明らかにイラついていた。悪いな皆、この戦場概ね先着順なのよ。ローテとか考えてないのよ。
 体力に不安のあるメガネキャラとはいえ、ブラウもまた、頑丈と善性が売りの悪魔である。先程受けたダメージはどこへやら、もうすっかりピンピンしていた。
『貴方についても無論調査済みです。登録番号28057、馬県・義透様ですね。故郷が滅ばれたそうで、ご愁傷様です。そののち四人で一人の複合型悪霊として顕現し、生前は戦友の間柄でいらっしゃったとか。いわば一人四天王というわけですね』
「一人四天王ですか。うーん、言い得て妙というか、そうなりますかねー」
『羨ましい事です。私も他の四天王を吸収合体できれば、いつかはラスボスに……いえ、話を戻しましょう。
 属性攻撃50……風林火山に対応した属性攻撃を操り、人格によって得意属性が異なるのでしたね。疾き者は風、静かなる者は氷雪、侵す者は炎、不動なる者は重力……おや?』
 ブラウのメガネが光った。彼はただならぬ気迫で、メガネをクイッする――。
 そう。彼は気づいてしまったのだ。
「私達、ほぼ属性かぶってますね? まあ良いですが」
 義透と我ら四天王、めっちゃキャラ被りしとる。
 むしろ、義透一人でこちらの四人分の属性を網羅している――!
『ぐはあ! メ、メガネがッ!!』
 パリーン!
 氷河期魔法が気になって来ただけだったのだが、義透、出現しただけでブラウのメガネを大破させた。
 ただでさえ百人いるので、キャラ被りは四天王の精神に多大なダメージを与えるのだ。おまけに、ブラウはさっきも四大属性を操る人にやられている。なんで?
「おやおや。大丈夫ですかー? 大切なお眼鏡が」
『え、ええ。予備がありますので……』
 やっぱり戦争ランカーってスッゲェや……! こんな所までご足労お疲れ様です!

「ところで、そのように分析が得意なら。私が『誰』だかわかりますねー?」
『フッ、無論分析済みですとも。貴方は先程から常に間延びした喋り方をしていらっしゃる。それは【疾き者】の特徴……その手裏剣、疾き者の武器【漆黒風】が何よりの証拠。
 ご自慢の高速かつ緻密な投擲を妨害する、鈍足の霧を発生させましょう。これで私の勝率は100パーセント……!』
 あっ、言っちゃった。負けフラグのセリフ。
 義透は柔和な笑みを絶やさぬままに、手にした漆黒風を……手放した。武器がからんと地面に落ちる音を聞き、ブラウは勝ち誇る。
『私の完璧な分析の前に負けを認めましたか? 自ら武器を手放すとは愚かな』
「愚かなのはそちらですよ。正解は、私――」
 密かに隠し持っていた四天刀鍵を抜いた義透は、オーブを通して増幅された魔力を、大量の呪詛の矢へと変えて、霧の中に解き放つ。
 対象を追尾する特性を持つこの矢は、まるで呪いのように、どこまでも敵を追って霧を突き抜ける。視界が阻害されようと、速度が落ちようと逃げ場はない。1250本の矢がブラウを追い詰める――!
『なっ……こんなのデータに』
 ないぞ、と言おうとしたブラウを、更なる『計算違い』が襲う。
 矢が刺さっても風属性、たいした致命傷ではないと侮っていた。ところが、刺さった無数の矢はブラウの身体を痺れさせ、凍らせる。どちらも水属性にはつらい一撃だ。
 ここでブラウは初めて気づいた。矢に付与された属性は、風ではなく氷雪……つまり、今の義透の人格は『疾き者』ではない!
『貴様……【静かなる者】か!』
「ようやく気づきましたか。白雪林出してないの、わざとですよ」
 義透の策にはまったブラウは屈辱に震える。義透は口調と武器を変え、他の人格だと誤認させることで、操る属性も対応策も間違えさせたのだ。
 相手が自分を入念に調べ上げているだろうことを利用して――自称知性派としては、あってはならない失敗だ。

『一度のみならず二度までも。申し訳ありません、クイーン様……!』
『おーっほっほっほっ、部下の失態をカバーするのはラスボスの務め! よくやりましたわブラウ。このわたくしに氷雪属性が効くと思って? 真の超凍結をお見せしますわ!』
 しかしアイスエイジクイーン様は寛大だった。ブラウを狙う矢を自動鎧で潰し、へし折り、義透へ肉薄する。
 鋭く尖った杖の矛先が迫ろうとする中、氷河期魔法の威力が多少気になりはすれど――既に勝負はついていた。
「ちなみに、『我ら』の特徴として。四天霊障伝って他の人も攻撃するんです――ええ、『侵す者』と『疾き者』の押し潰しがね?」
『な、何ですって? まさか……』
『そ、そんなのデータにないぞ。いや本当にない!』
 やられポーズを取りながらもデータをチェックするブラウ。
 アイテム説明、あれ上限40字だからね、書けんよ。プレイングこそワル、いや正義――!
『嘘ですわよね? 何て奴らですの、猟兵ーっ!』

 ……そんなわけで。
 哀れ、炎と風と雷と呪詛の力が宿ったヤバすぎる攻撃が、アイスエイジクイーンをメタメタに貫き尽くしたのだった。まあ、次のターンでは元気に復活してくるんですけどね……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…氷河の女王、並びに百の四天王。有り様に疑問が無いでも御座いませんが…、
我らと道は違えど、この世界を守らんと立って下さる事に感謝致しましょう。


対象は水のブラウ
UC発動にて野生の勘、見切りにて相手の行動の起こりを分析よりも早く察知し
アイテム『薄氷帯』の効果にて身体を霊力で覆い相手の魔法をカウンターで弾きつつ残像の速度にて肉薄
怪力、グラップルでの無手格闘にて打ち抜く


…対となるもう一つの自動鎧。
なればその【絶晶】と同等の強度と重量を有するということですね?

【極晶】の稼働機関を怪力、グラップル、部位破壊にて潰した後、
アイテム『氷柱芯』を巻き付け怪力にて振り回し、
自動鎧そのものを武器として絶晶を叩き潰す



●4
『あはっ、ブラウちゃん二度もやられちゃった☆ やっぱり四天王最弱?』
『クハハハ、野郎は四天王の面汚しだぜぇ!』
 猟兵vs四大元素四天王の戦いも四回戦。
 順当に行けばもう全員に出番が回ってくるはずだが、まだ指名のないヴェルテとロッソの二人は、遠くで吠え面をかいていた――。

「……氷河の女王、並びに百の四天王。有り様に疑問が無いでも御座いませんが……、我らと道は違えど、この世界を守らんと立って下さる事に感謝致しましょう」
 そんな四天王(?)とアイスエイジクイーン達にも、月白・雪音(月輪氷華・f29413)は武人らしく、立礼で敬意を示してみせる。
 元々善良な悪魔達とラスボスは、つい「あっどうもお世話になっております」みたいな雰囲気で、浅礼を返しかけ……急に自我を取り戻した。
『わたくし達が世界を守るですって? お〜っほっほっほっ、ご冗談も大概になさい! わたくしは西のラスボス! 魔界銀行街を牛耳る大!悪!党! ですのよ!』
「ですが、嘗ては銀行街最強の警備員として名を馳せていたと伺いました。今日に至るまでの道程は決して平坦なものではなかったでしょう。如何なる性質のものであれ、貴女の弛まぬ研鑽は讃えられるべきかと」
 無表情ではあるが、椿の紅を宿した雪音の瞳は、心なしかきらきら輝いていた。眩しい。
『虎視眈々と7thKINGの座を狙うわたくしをクソ真面目に褒めるとは良い度胸ですわね! よいでしょう、氷河期魔法の恐怖に震え上がりなさいませ。ブラウ!』
『はっ。必ずや先の失態を挽回してみせましょう。クイーン様、ここは私にお任せを!』
 水の悪魔・ブラウ。まさかの二連勤、これで三戦目である。
 急なブラック企業ムーブで極悪をアピールするのが狙いだろうか。しかし、当のブラウがやる気満々なので、雪音は結束力の強さにも感銘を受けただけだった。逆効果。

 さっき他の猟兵にやられたばかりの二人だが、もう完全復活している体力は、さすが魔界の住人といったところか。ブラウは早速、敵戦力の分析をはじめる。
『貴女の情報も調査済みですとも。登録番号29413、月白・雪音様ですね。ふむ、人間に育てられた獣ですか……可憐なお姿からは想像できぬ興味深い経歴をお持ちで。特筆すべき能力は――』
 雪音のデータに改めて目を通したブラウは、算出された数値を疑った。
『野生の勘1216だと!? 怪力、グラップル、落ち着き、残像、見切り……全てレベル1240……!』
 もうデータが出ていてもどうしようもないレベルの強さだ。
 数値というものは、時に残酷である――そして、目に視えぬものを感じとる野生の危機感知能力は、概して人為的な計算を凌駕する。
 ブラウの喉が動き、唇がひらくより疾く、雪音はみずからの身体を不可視の霊力で防護した。
 その膜は、触れれば砕ける薄氷のようにおぼろげな存在だが、孕む性質は真逆。凛として静かながら、彼女自身の芯の強さを宿し、堅牢な鎧となる。
 霊力の膜は高速詠唱で放たれた水の矢を反射し、ブラウ自身に刺さった。雪音の勘は、飛び交う水の弾幕の中で、計算高く首や額を狙う一筋の殺意を鋭く見抜き、振るう拳で掴み、破壊する。
 弾も、矢も、刀も、戦さ場に存在するあらゆるものを、鍛え抜かれた彼女の武は、すべて儚い雪と散らすのみだ。なおも迫る水の嵐は、獣のように迫る雪音の四肢を捕らえること叶わず、残像をかすめたのみに留まる。
 勝てない。
 あまりにも分が悪すぎる――ブラウがそう考えた時には、既に雪音の姿は、彼のすぐ目の前にあった。衝動を律し、かたく唇を結んだままあくまで無表情をつらぬく、ひとなる猛虎の心を読む事は叶わなかったろう。
 其処に在るのは、武の頂。無の境地だ。
 雪音の繊細な指先がブラウの襟首を掴み、空いた左手が鳩尾に痛烈な一撃を見舞う。
 襟首を捉えた右腕はぐるりと逆時計に回され、長身の男を頭から地面に叩きつけたのだった。

『……少しはやるようですわね。ならば、わたくしも銀行街最強を誇った者として、正々堂々卑怯にお相手致しましょう!』
 アイスエイジクイーンが発動した、もうひとつの自動鎧『極晶』が雪音の背後より迫る。振り下ろされた拳を、素早く横に転がってかわせば、重量を込めた一撃が大地に大穴を開けた。
 あまりに巨大な質量。動きを感知するのは容易なれど、ふたつの自動鎧は、逃げ場を奪うように雪音を囲い込む。四本の腕と脚からくり出される、激しい攻撃の僅かな隙間に滑りこみ、雪音は苛烈な攻撃を凌ぐ。
 圧倒的な破壊力。先程の水の弾幕とは違い、霊力での防御はし切れるかどうか――そのような窮地においても、心の凪が揺らぐことはない。
「……対となるもう一つの自動鎧。なればその『絶晶』と同等の強度と重量を有するということですね?」
 一か八か。雪音は振り抜かれた『極晶』の拳めがけて跳躍し、腕の上に飛び移った。
『なんですって!?』
 まずは腕の関節をねじ曲げ、指をすべて握り潰す。もう片方の腕にも飛び乗り、同様に。
 アンカーを空いた頭部に引っ掛け、腰を両腕で抱きかかえて砕き、仕上げに膝関節を叩き割る。ワイヤーに絡めとられ、可動部を破壊し尽くされた『極晶』は、もはや木偶の氷塊と化した。
「お手合わせに感謝致します。魔王の座……なるは如何なものかと感じますが、我ら猟兵は必ずや、この世界を守り抜くと誓いましょう」
 それは静かなる勝利宣言。
 ワイヤーの先端を掴んだ華奢な腕がおおきく振り抜かれる。
 その先に繋がれた『極晶』が、生き物のように宙へ跳ねた。
 雪音の恐るべき膂力により、巨大な鈍器と化した『極晶』が、繰り返しアイスエイジクイーンへ襲いかかる。ぶつかり合ったふたつの自動鎧は、雪音の剛力に耐えきれず、粉々に粉砕されていく。

『くっ……さすがわたくしの部下ですわ。ブラウの分析は実に正確でしたわね……!』
 劣勢にあれど、どこか満足げに部下の能力を讃えるアイスエイジクイーン。
 氷河の女王と称するだけの冷ややかさからは程遠い有様に、雪音はひとなる心を見出す。
 なればこそ、この悪の世の為、鍛えた拳を振るわんと改めて誓うのだ。
 拳を振るわぬ事こそ真髄、力に呑まれる事無かれ――彼らと己の歩む道は、まるで表と裏。
 しかしその真髄には、かつて師の語った言葉が、まっすぐに通っていることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スピカ・ネビュラスター
①火の悪魔『ロッソ』

やれやれ……
本当に強いラスボスなら、配下なんて必要ないよね?
雑魚がいっぱいいても邪魔なだけじゃない?
(ロッソを雑魚と挑発)

怒って殴り掛かってきたところで、『ミューテーション・ダークマター』を発動するよ
物理攻撃は勿論、多少の炎くらいでは暗黒物質をどうにかするなんて出来ないよ
そのままロッソをおちょくりながら、アイスエイジクイーンの側まで連れて行こうかな

十分に近づいたところで、ロッソを煽って全力の攻撃を誘い、ウィッチクラフトの重力操作でその攻撃をアイスエイジクイーンにぶつけてあげよう!

絶晶の冷気や斬撃も、極寒の宇宙空間に存在する暗黒物質なら、そんなに効かないはずだよね



●5
『自動鎧がこれほどの損傷を受けるとは……グリース、急いで修復なさい!』
 先ほどの戦いで手も足も出なかった水の悪魔・ブラウは、頭から地面にめり込んだまま気絶していた。アイスエイジクイーンも、粉砕された『絶晶』と『極晶』の修復作業を急ピッチで進めている。
『ボス、ブラウは……』
『クハハハ、ほっとけ! データなんぞに頼るからだぜェ。この魔界を支配するのは暴力だ!』
 惑星型ラスボス部位に腰かけたスピカ・ネビュラスター(銀河の魔女・f31393)は、右往左往する敵陣営をじっとりと眺めていた。
(あのうるさいのが火の悪魔・ロッソか。典型的な単細胞だね)
 本当は「奴は四天王最弱……」って言われるポジションなんですけどね。まだ無傷だった。使える――スピカはそう判断し、密かにほくそ笑む。
『そろそろ待ちくたびれたぜ。次こそは俺様に戦らせろ!』
 そう言って、わざわざ近くにあった岩を粉砕してみせるロッソ。スピカは破片が当たらないよう、魔星『アークツルス』の高度を上昇させつつ、大げさに肩をすくめてみせた。
「やれやれ……本当に強いラスボスなら、そもそも配下なんて必要ないよね? そんな雑魚がいっぱいいても邪魔なだけじゃない?」
『あ”ァ!? このクソチビ、俺様にケンカ売ろうってのかァ!?』
『お〜ほっほっほっ! 貴女、さてはわたくしの人望に嫉妬なさっているのね! いいでしょう……四天王達への侮辱は直ちに撤回していただきますわ!』
 スピカの物理的にも精神的にも上から目線の挑発は、ロッソにもアイスエイジクイーンにも大変有効だった。今、ラスボス対ラスボスの仁義なき戦いが始まる――!

『いい石コロ持ってんじゃねぇか。俺様の炎の拳の破壊力を見せてやるぜ!』
 ロッソはスピカの乗るアークツルスに目をつけたらしい。とりあえず何かをぶっ壊さないと気がすまない彼にとっては、さぞかし壊し甲斐のある標的に映ったのだろう。
『それがなきゃ浮いてることも出来ねェだろォ!? 俺様は四天王一のならず者、ガキでも容赦しねぇ!』
「四天王一のならず者かあ……でも自称だよね? 毎日真面目に筋トレしてたりしてね」
『テメェ、バカにしやがって!』
 ロッソは鍛え抜かれた腕を振りかぶり、アークツルスを粉砕しようと殴りかかる。だが、それもスピカの狙い通り――神秘的な輝きを放っていたアークツルスが、月食のように闇へ飲まれていく。
 ロッソの拳がアークツルスを捉えた。しかし、自慢の拳に手応えはない。
 魔星からひろがる謎の漆黒は、じわじわと滲むように広がって、異質な空間をつくり出していく。やがて、スピカ自体もその闇に喰われた……ように見えた。
『な、なんだコイツァ!?』
「ボクの身体を宇宙を満たす暗黒に変えてやったのさ。キミには理解できなくても無理はないかな」
『深追いはやめなさいロッソ、それは暗黒物質です!』
 いつのまにか復活したブラウが解説してくれた通り、今のスピカは、肉体をダークマター――暗黒物質へ変化させた状態。地球の現代科学でも未だ解明できぬ、正体不明、観測不能の、仮説上は宇宙に広く存在するとされる粒子。それが暗黒物質だ。
 その特性は、謎。すくなくとも物理的な力や、多少の炎でどうにかできる代物ではないだろう。
 常識があればそれ位わかるのだが……悲しいかな、敵は脳筋だった。

『クハハハ! 暗黒物質だか何だか知らねぇが、俺様に殴れねぇモノはねェ!』
 ロッソは次々に必殺の拳を打ち出すものの、暗黒物質と化したスピカには全然効いてない。
(うーん想像以上にアレだな。逆にどんな挑発なら伝わるのかが難しくなってきたよ)
 スピカはしばし考えたのち、暗黒物質化した身体で「バーカ」とか「アホめ」とか描きながら、じわじわとアイスエイジクイーンへ近寄っていくことにした。
 得体の知れない攻撃にクイーンも困惑しているようだったが、そこはラスボスの威厳を保ち、ただちに「絶晶」を融解変形させる。
『ロッソの攻撃が効かないならば、機動力を犠牲にしてでも、わたくしの氷河期魔法の出力を上げるしかありませんわね……来なさい猟兵、わたくしは逃げも隠れも致しませんわよ!』
 どうやら、彼女は移動力を犠牲にし、攻撃力を通常の五倍にする作戦に出たようだ。凍てつく氷河期の寒波が押し寄せ、吹雪の純白と、宇宙の漆黒が激しくぶつかり合う。
 通常ならば、脅威と言っていい一撃だ。しかし、極寒の宇宙に存在する暗黒物質は、氷河すらも闇の中へ取り込んでしまう。さすがに少々堪える寒さだが、生身で受けるよりは確りと防御できている。
『わたくしの氷河期魔法が効いていない……!?』
『ふーん、西のラスボスってこの程度なんだね。7thKINGの座はボクがいただいちゃおうかな?』
 スピカは――闇の中で嗤った。誰もその顔を見ることはなかったが。

『このガキィ……さんざんおちょくりやがった上に、ボスまでバカにしやがって……許さねェ!!』
 スピカの煽りで怒りが頂点に達したロッソは、あらゆるものを溶かす灼熱の炎を拳に宿し、闇を焼き払わんと全力をこめて打ち出した。その瞬間――ロッソの巨体が、宙に浮いた。
『あ……?』
 重力を操作し、ロッソの拳がアイスエイジクイーンへ引き寄せられるようにしてやったのだ。
 移動力を犠牲にした彼女が逃げることは不可能だろう。自分の身に何が起きているのか、理解できないロッソは無様にもがく。
『バ……バカな! この俺様がァーーーッ!!!』

 灼熱と氷河のエネルギーが衝突し、水蒸気爆発が起きる。もとの姿に戻ったスピカは、悠々と戦場を後にした。
「作戦大成功だね! くふふ……これでまた一歩デビルキングの座に近づいたかも」
 はじめから勝敗は決していた。
 まっとうなラスボスが、真面目で善良な悪魔たちが、この一見愛らしい少女に勝てるはずがなかったのだ――外見は内面を写す鏡なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
直情型っぽいからヴェルテの相手をしようかな
雑魚に用は無いと言って
無視してクイーンに集中するふりをするよ
実際は情報収集用ドローンで周囲を上から撮影し
多機能ゴーグルに情報転送して対処はするんだけどね

パワー型って事で殴りかかってくるならありがたいかな
クイーンとの位置取りに注意して同士討ちを狙えるといいんだけど

飛行して攻撃を回避しつつ
ワイヤーガンをヴェルテの足に絡めてクイーンに突っ込ませたり
絶晶の武器攻撃の軌道を射撃やワイヤーガンでずらして
ヴェルテの方に向けたりできるといいな
クイーンも何だかんだ人が良さそうだし
部下に何かあったら動揺したりしないかな

隙が出来たらガトリングガンの射撃で
クイーンを攻撃するよ



●6
 宇宙的暴力によって引き起こされた水蒸気爆発の余韻が残る中、風の悪魔・ヴェルテのイライラはMAXに達していた。
 ――どうしてヴェルテちゃんの出番がこないわけ!?
 人気投票をやったら恐らく最下位グループ、「四天王でも一番の小物……」と呼ばれるポジションのロッソに先を越され、何故かデータメガネ野郎に尺が割かれる状況である。
 自分が一番カワイイ☆ヴェルテちゃんとしては、屈辱オブ屈辱だった。まあ、本当にそうなら、他人を押しのけて前に出ればいいんですけどね。

(やっぱり根が良い子だからルールは守るんだ……なんか気の毒だし、直情型なのは本当っぽいから、相手をしてあげようかな)
 携行型ガトリングガンを携え、そこに現れた救世主・佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)さん。ありがとうございます、あなた様のおかげで全員に出番が割り振れました。
「この姿になるのは小っ恥ずかしいんだけど……」
 晶はみずからの肉体に融合した邪神の力を一部解放し、魔力から生成された宵闇の衣を纏う。背には魔力の翼が生え、先ほどロッソが叩き割った岩から生まれた炎の妖精が、マスコットのように晶へ寄り添う。
 まばゆい光と花びらを散らしながら、宵闇の衣は可憐なドレスへ変わる――その美しさは女神が降臨したよう。しかし、率直な感想を述べるとこうなる。
(やだ、ヴェルテちゃんの相手にふさわしい魔法少女!!!)
 ヴェルテのテンションは明らかに上がっていた。しかし、美少女中学生は仮の姿。
 晶さんのマインドは、迷惑邪神に取り憑かれた28歳一般男性である。きらきらした目線を送られても困る。

『じゃ〜んっ! 真打ち登場っ、みんなのヴェルテちゃんだよぉ☆ がんばっちゃうから、ここはヴェルテちゃんにまかせてねっ☆』
 あー早く一般人に戻りたいなあ。
 そう思いながら、晶はカワイイ決めポーズで飛び降りてきたヴェルテの前を、すたすたと素通りした。
『無視っ!?』
「ごめん、雑魚に用は無いから。僕の狙いはボスだけだよ」
 雑魚――!!
 やっと出番がもらえたヴェルテちゃんの怒りは一瞬で沸点まで達した。
 晶は使い魔の生み出す炎でアイスエイジクイーンを牽制しつつ、「絶晶」の動きを見極めることに集中している。背後にいるヴェルテはガン無視だ。
(なんなのこいつ☆ 衣装派手だしクソムカつくわ☆ はっ、ダメダメ、可愛いヴェルテちゃんはロッソちゃんとは違うんだから……!)
『しゅぅん……どーせヴェルテちゃんはかよわいもん。クイーンさまっ、お手伝いするね☆』
 そう大声でアピールしつつ、ヴェルテはファンシーな木でできた魔法の杖を振るう。
 癒しの風でアイスエイジクイーンを回復したり、炎を軽減するバリアを張ってみたりしたが、晶、相変わらずガン無視。
『おいてめえいいかげんにしろよ☆ 支援キャラは先に倒しとくのが常識だぞ☆』
 ヴェルテちゃんはキレた。しかし、丁寧に攻略のヒントを喋ってしまうあたり悪魔的だ。
 意外と重量のある木の杖を振りかざし、ヴェルテは晶を背後からぶん殴ろうとした。よし。作戦通りだ――晶は、実はヴェルテを無視してなどいない。
 晶の眼には、今まさに自分へ殴りかかろうとしているヴェルテの姿がしっかり映っていた。上空のドローンで周囲を撮影し、その映像を多機能ゴーグルにリアルタイムで転送していたのだ。
 すかさず魔力の翼で空へ逃れ、ワイヤーガンを発射。狙いはヴェルテの足元だ。
『……えっ!?』
 足に絡まったワイヤーを引っ張り、ヴェルテを転倒させる。その先にいるのは、一瞬前まで晶の相手をしていたアイスエイジクイーンだ。ヴェルテちゃんの怒りの一撃は、あろうことかボスを直撃し、自動鎧に大きな亀裂を入れた。
『ク、クイーンさまっ!?』
『……こ、この程度問題ありませんわ。絶晶のおかげでわたくし本体は無傷ですもの、お〜っほっほっ!』
(逆に言うと、絶晶には痛い一撃だったってことだよね。僕に当たっていたら大変だったな……)
 予想以上のパワー特化ぶりに戦慄しつつ、晶は引き続き、自分とクイーン、そしてヴェルテの位置取りを、ドローンから送られる映像で監視する。
『それにしても貴女……どことなくわたくしとキャラが被っている気配が致しますわ! 本性をお見せなさいな!』
 ……ひょっとして、晶の中に巣食う邪神の話をしているのだろうか。
 おそるべしニセ高飛車の勘。クイーンからの嫉妬まで買ってしまった28歳一般男性、晶――本当になんでこんな目にと思いつつ、突きつけられた氷の槍にもワイヤーガンを発射する。
 ワイヤーに引っ張られ、軌道をそらされた矛先には、ヴェルテがいた。クイーンさまを攻撃してしまったことが余程ショックだったのか、素でおろおろしているようだ。
『クイーンさま……いいのよ。悪い子で役立たずのヴェルテちゃんは、超凍結でおしおきされる運命なの……』
 いや、なんか悲劇のヒロインぶっていたので大丈夫だろう。
 暴走しておきながら、最期で好感度を取りにいく四天王しぐさだ。抜け目がない。

『……くっ。ひ、卑怯ですわよ!』
 しかし、そこはラスボスの貫禄。アイスエイジクイーンも馬力を発揮し、ワイヤーを引きちぎる。晶の読み通り、自分の攻撃で部下を傷つけることはなんとしても避けたかったらしい。
 攻撃が外れ、ほっとする女王の背へ、鉄の塊が突きつけられる。
 晶のガトリングガンだ。彼女は、いや彼は、すこし申し訳なさそうな顔をしていた。
 一般人が抱く、人並みの罪悪感ゆえに。
「やっぱり何だかんだ人が良いんだね。本当は一緒に戦ってもらえたら良かったんだけど」
『お〜っほっほっほっ! わたくしは西のラスボス、猟兵などと手を組む気はありませんわ。早く発射なさい、わたくしは不滅ですわよ!』
 アイスエイジクイーン、敵へのフォローまで手厚かった。
 そこに彼女の人望の理由を垣間見つつ――晶は、ガトリングガンの引き金をひいたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

風見・ケイ
ブラウさん
たしかにあなたの言うとおり、私はできることは情報収集や追跡程度
多少星の力を使うことはできますが、あなたの魔法に比べれば願いごとでしかない
探偵が頭脳で負けてはお手上げですね……さすがはアイスエイジクイーンのブレーンです

(なんておだてつつ近づいたら、瞬く間に青い瞳に)

ほんますごいわぁ……もう僕にはこんなんしかできひんで
(星屑から作った粘度の高い適当な毒を怪力まかせに眼鏡にシュート)
眼鏡がダメになった眼鏡キャラなら僕でもそんな怖ないで
投げ飛ばしてどかしとくわ

さて、氷なら塩化カルシウムあたりでもええんやけど……オブリビオンでもないみたいやしなぁ
……関節や締めなら装甲の上からでも関係あらへんね



●7
 六戦目にしてようやく敵の出番が一巡した直後、風見・ケイ(星屑の夢・f14457)が現地入りした。
 前回と前々回ボコボコにされた火の悪魔・ロッソと、風の悪魔・ヴェルテも既に再スタンバイが済んでおり(なんで?)、誰が出てきてもおかしくない状況である。そんな中――。

『フッ……今度こそ完璧なデータが取れました。クイーン様、ここは私にお任せを』
 またしても猟兵達の前に立ちはだかったのは、水の悪魔・ブラウだった(※四回目)。
「あなたが相手ですか……何だかスーツが妙に埃っぽくありませんか?」
 私立探偵・風見ケイの鋭い観察眼が光る。
 砂まみれになり、1250本の矢を受け、頭から地面にめり込んで、なお性懲りもなくブラウは復活したのだ。眼鏡も2本ぐらい割れた。もう知性派という名のギャグ担当である。
『困ったものです……後程クリーニング代は請求させていただきます。
 貴方も調査済みですよ、登録番号14457、風見・ケイ様。元警察官の経歴をお持ちのようで。魔界では汚職の代名詞、子供たちのなりたい職業ランキングでも常に人気の職業ですが……引退して現在は探偵をなさっている』
「……はい。猫探しや浮気調査程度のものですが」
『ふむ、情報収集40、追跡20、失せ物探し14……これらが裏付けておりますね。しかし少々気になるデータが幾つか』
「ブラウさん。たしかにあなたの言うとおり、私にできることは情報収集や追跡程度」
 ケイはブラウの長台詞を遮りつつ、さりげなく彼へ歩み寄る。
「気になる項目……やはり調査済みなのでしょう。はい。多少星の力を使うことはできますが、あなたの魔法に比べれば願いごとでしかない」
『フッ。絶対幽霊屋敷に生息するアンディファインド・クリーチャーですか。どういう訳か、貴方はあれの力を行使できるようですね』
「そんな最新の情報まで調べ上げているとは……驚きです。ちなみに屋敷へ出向かれた事は」
 ケイにおだてられ、上機嫌のブラウは、ペラペラ喋りながらメガネをクイした。
『当然ありません。君子危きに近寄らずというものです』
 ……やはり、こいつもお化けは怖いみたいだ。せめて非科学的だからとか言ってほしい。

 ブラウのどうでもいい個人情報を入手したところで、ケイはトドメのヨイショ攻撃を放つ。
「そこまで調べられては私も打つ手がありません。探偵が頭脳で負けてはお手上げですね……さすがはアイスエイジクイーンのブレーンです」
 拳銃を捨て、抵抗の意思がないことを示すパフォーマンスも忘れない。悪魔は良い子なので、拾って反撃するような事もないだろう――案の定、ブラウもアイスエイジクイーンも、得意げにメガネを光らせたり、高笑いするだけだった。
『お〜っほっほっほっ! よくお分かりですのね、我が精鋭達の素晴らしさを!』
 その裏で。

 ――クイーン様、この者どうします?
 ――攻撃してこないと正直やりづらいですわね……スカウトしようかしら。
 ――いえ、無抵抗な者に容赦ない攻撃を加えてこそ悪の鑑では……。
 ――それは一理ありますわ。しかし万が一にも猟兵側との関係悪化に発展しては……

 ……等と二人がひそひそ話を交わしている間に、ケイの左眼が青色に染まった。人格の切り替えに要する時間は、星がまたたくよりも刹那。『彗』から事件解決を丸投げされた『荊』は、目覚めるなり、急に弱気な表情を見せる。
「ほんますごいわぁ……もう僕にはこんなんしかできひんで」
 とか言いながら、なぜか戦場を漂っていた暗黒物質を右手で掴み、力任せにコネコネし始めた。
 暗黒物質と星のかけらが合成され(???)、誕生したのは『粘度の高い適当な毒』なる、リアルダークマター。錬金術が失敗した時できる物体Xみたいなのを想像するといいと思う。
「何なんここ? 暗黒物質撒いたの誰なん? 嫌やわぁ、怖……近寄らんといて」
 ――ブンッッ!!
 ――べちょっっ!!!
 ケイは物体Xをブラウのメガネめがけてぶん投げた。えっ何この人、怖っ。
『ぐわあっ!? メ、メガネが!!』
『ブラウ!? お待ちなさい、今スペアのメガネを用意しますわ!』
 もうやめて、ブラウのメガネのスペアもそろそろゼロや。
 さすがは日常の謎をコツコツ解明してきた名探偵・風見ケイ。特に情報がなくても、データメガネキャラの隠れ弱点をばっちり把握していた。
「眼鏡がダメになった眼鏡キャラなら僕でもそんな怖ないで。ちょっとそこどいたって」
『こ、こんなのデータに……いや、不審な数値はあった! 怪力22、グラップル10、あれはまさか』
 ――ブンッッ!!
 せっかく伏線に気づいたブラウだったが、哀れ、ぶん投げられて夜空のお星様になった。
 きっと、メガネ座として魔界の星空を彩ってくれることだろう――。

「さて、氷なら塩化カルシウムあたりでもええんやけど……オブリビオンでもないみたいやしなぁ」
 ぎくり。
 いきなりの超展開についていけず、唖然としていたニセ高飛車(まじめなせいかく)のアイスエイジクイーンは、表情だけは「はわわどうしよう」みたいな面をしている暴力探偵を、こわごわと見た。
『……絶晶! わたくしには絶晶がありますわ、貴方の怪力もこの装甲には敵わない筈……!』
 絶晶の厚みを五倍にし、防御を固めるアイスエイジクイーン。攻撃回数は諦め、一撃の重さでケイを仕留めようと、氷の槍を振り回す。
「ひぃぃ、どないしよ……そや。関節や締めなら装甲の上からでも関係あらへんね」
『えっ』

 ゴキッッ!(腕ひしぎ十字固め)
『痛たたた痛い痛い痛いですわ!!』
「うわ固いし冷た……これならどやろ」
 ガシッッ!(袖車絞)
『ぐえっ! く、首が!』
「ま、まだ意識あるん……もうこれで壊れてや!」
『ギ、ギブ! ギブですわ〜っ!』
 ――ドッッカーン!!!

 カンカンカンカンカンカーン!
 試合終了。
 決まり手はジャーマンスープレックス。勝者は青コーナー、風見、ケイ――!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

プリ・ミョート
くどいとはなんだべくどいとは! プリチャンぷんすこだべよ! 四天王しぐさは四天王のマナー、その短いフレーズにアピールポイントを込めて……そこのあんたらもわかるべよな? あんたらとはうまい酒が飲めそうだべ!
おらのプランはこうだべ。四天王トークで調子に乗っけてるうちに、髑髏塔の呪詛でもりもり呪ってやるべさ。呪詛は触れましねえし氷もしねえからな。おらこう見えてなかなかの四天王力(ヂカラ)だから四天王トークはノリノリだんべ!
弱り切ったところでガトリングをお見舞いしてやるべさ。とびきりの呪殺弾をたっぷり喰らうべさ! けっへっへ!



●8
 百人の四天王vs猟兵軍団の対決もいよいよ最終局面。四天王のひとり、水の悪魔・ブラウは星になり、アイスエイジクイーンはプロレス技でKOされていた。なんで? どういう展開?
 一方その頃。

「くどいとはなんだべくどいとは! プリチャンぷんすこだべよ!」
 自らも一大勢力『魔王国』が誇る四天王のひとりに名を連ねる、プリ・ミョート(怪物着取り・f31555)は、その名のごとくぷりぷり怒っていた。くどいって言ったのはグリモア猟兵のあいつなので、苦情はあいつに言ってやってください。すみません。
 彼女の正体はそれはもう、この場にいる四天王全員が裸足で逃げ出しそうな程おぞましいものだが、知恵の布をかぶっている間は布おばけそのものなので、ファンシーな光景だ。かわいい。良かった良かった。
「四天王しぐさは四天王のマナー、その短いフレーズにアピールポイントを込めて……そこのあんたらもわかるべよな?」
『オレは雷の悪魔! オレより強いヤツに電光石火で会いに来たぜ!』
『わたしは光の悪魔! 争いはもうやめて、いやーっ、来ないでーっ!』
『我は闇の悪魔。ククク……遂に我が目覚める時が到来したようだ』
『ぼくは無の悪魔。みんな消えてなくなればいいんだ……』
「おぉ、四大元素でも氷でもねぇがよくある属性四天王発見だべさ! それぞれの属性を擬人化したようなわかり易いキャラ設定……おらにはわかる、あんたらも相当キマってるべ。あんたらとはうまい酒が飲めそうだべ!」
 プリチャンのっょぃ四天王力(ヂカラ)は、なんと、予知では影も形もなかった選考漏れ属性みたいな連中を引き寄せてしまった。すごい。
 べっ、別に、わざわざネーミング辞典を引いて個別の名前をつけるのが面倒だったわけじゃないんだからねっ!
 予知で出てきた四人には、実はちゃんとそれぞれのイメージカラーの名前をつけてあるけど、もうプレイング失効まであんまり時間がないからしゃーないとか、絶対考えてないんだからっ……!
 ――そんな感じで。

『あいつらたまたま四大元素だからって調子こいてるよな! オレの方が絶対個性が強い!』
「わかるべわかるべ。んだのに、雷鳴の演出だけに使われて……気の毒だんべ」
『ヴェルテちゃんよりわたしのほうがヒロイン力高いのに……出番なしなんてひどい……』
「敵側なのに争い事はやめて! って言ってるやつが一番うさんくさいべなー」
 四天王トーク、というか、楽屋裏愚痴大会みたいになっているよくある属性四天王たちの話を、プリチャンは熱心に聞いてあげていた。現役四天王として、後学のためになる話だ。
 それはそれとして、その間にも、プリチャンが髑髏塔を召喚するための呪詛はガンガン溜まっていた。たぶん、出番がろくになかったこの人たちの恨みつらみのせいで。
 🔴? なければ生やせばいいんですよ生やせば。ていっ!

『な、なんだ、この禍々しい塔は……?』
『力が……抜けていく、ような……』
「今だべ。とびきりの呪殺弾をたっぷり喰らうべさー!」
『『『『グアアアアアアア』』』』』
「うんうん、四天王がまとめて倒される時のセリフはやっぱそれに限るべ! けっへっへ!」
 プリチャンの邪悪で無邪気な笑い声が響く中、暗黒物質やらUDCのかけらやら、なんかいろいろが混ざったやばい弾がデビルガトリングから連射される。
『痛っ! こ、今度はなんですの!?』
 その流れ弾は、KO中のアイスエイジクイーンにもうっかり命中し、ダメージを与えたのだった。
 魔界よ見るがいい。これが、真の四天王力(ヂカラ)だ――!

成功 🔵​🔵​🔴​

オネスト・ファッション
※アドリブ歓迎!
服によって変わる言動も自由に設定してOK


四天王とラスボス勢揃いなんてめちゃくちゃ熱い展開だぜ!クイーンは冷たそうだけどな!
自校の四天王筆頭として、同じ四天王No. 1には負けたくないぜ!
土の悪魔グリース、勝負だ!

[環境耐性]でクイーンの冷気に対応
指定UCを発動して技の発動に追いつかない速度で防具を[早着替え]して戦闘だ!

グリースが疲れてきた頃にシリアスな雰囲気を出しながら僕達の因縁の話(でっち上げ)を語り出す
なぁグリース、覚えてるか?5年前のあの日のことを…

話に乗って来た隙に『チャイニーズ・スタイル』に着替えて[功夫]で連撃を叩き込むヨ!

思わせぶりなこと言ったけど我と你は初対面ネ!騙された方が悪いヨ!


四天王を突破したら『アサシン・スタイル』に着替えて[迷彩]で姿を眩ませ、クイーンの視界から消える
そのまま死角に回り込み[暗殺]の一撃をお見舞いしてくれよう

よもや四天王が魔王に一矢報いる時が来るとは思わなんだ
だがこれもまたワルの一つ、悪く思うなよ?



●9
 猟兵達の度重なる攻撃により、アイスエイジクイーンも遂に追い詰められていた。
『絶晶が使えるのも恐らく次が最後……しかし! お〜ほっほっほっ! わたくしと我が四天王達は、最後まで諦めませんわよ!』
 そんなボスを守るように立ち塞がる、火の悪魔ロッソ、水の悪魔ブラウ、風の悪魔ヴェルテ、土の悪魔グリースの四名。全員ここまでに最低一回は敗れ去っているが(ブラウだけ四回やられている)、悪魔なので何事もなかったかのように復活していた。
 雷鳴が轟き、張りつめた空気が充満する。ゲームならまさにエンディング直前、これから五連戦といった雰囲気だ。
 そこに、物凄くちょうどいいタイミングで現れた、オネスト・ファッション(見せ掛け以上・f31551)は――デビスタに投稿する用の記念写真を撮影していた!!

「四天王とラスボス勢揃い……めちゃくちゃ熱い展開だぜ! ロッソさんマッスルポーズお願いします! ブラウさんはメガネクイッで! ヴェルテちゃんそのポーズかわうぃ〜ね〜!」
『クハハハ、俺様の鍛え上げた僧帽筋がもっと欲しいかァ!?』
『やれやれ、何故私がこんな事を……まあ良いでしょう』
『ハッシュタグは#vertekawaiiでおねがいしま〜す☆ ヴェルテちゃんのデビスタもフォローしてね☆』
 アイスエイジクイーンを中心に、ポーズを決める四天王達の中へするっとinするオネスト。
 陽キャ属性が強い魔武断学園を率いる、生徒会副会長兼ファッションリーダーにはできて当然のコミュ強ムーブだ。
 大体、クイーンと四天王もファン(ではない)には好意的だった。グリース以外は。
 クイーン、思ったより親切な人だったなと考えつつ、オネストは一人端っこで「光の当たる場所は俺には似合わない……」みたいな塩対応をキメているグリースに着目した。
「聞いてるぜ。お前が(自称)四天王筆頭だな?」
『……。ならばどうした?』
 他の三人が特に怒らないあたり、本当にそうらしい。
 先の戦いで判明した事だが、グリースは、目が合っただけで相手を石化させてしまう、呪われし魔眼『ゴーゴンの身を知る雨』の持ち主である。なんか色々バックボーンとかあるのだろうが、ここでは割愛する。
「自校の四天王筆頭として、同じ四天王No. 1には負けたくないぜ! 土の悪魔グリース、勝負だ!」
『やはり最後は俺が出るべきか……ボス、お任せを。我ら四天王が貴女を7thKINGの座へ導きます』
『ええグリース、猟兵など叩き潰してさしあげましょう! お〜ほっほっほっ、お覚悟ですわ!』
 ラスボス戦の直前に、これまで何度も戦ってきた四天王筆頭が立ちはだかる展開、燃えますよね。非常にわかります。
「グリース、お前とは理解し合えない運命なのかっ……それでも僕は……!」
 テンションが上がってきたオネストは、フライング気味に意味深ムーブを始めていた。
 なお、戦況的にここまで追い詰められても、他の四天王は遠くで見てるだけである。
 加勢などはしない。しっかりルールを守って四天王をやっていた、皆良い子なので。
 
『おいでなさい、極晶!』
 アイスエイジクイーンの呼びかけに応じ、もうひとつの自動鎧『極晶』がオネストへ襲いかかる。部下からの人望厚く、心は温かそうな西のラスボスであるが、その身に纏う氷河期魔法の威力は伊達ではない。
「くっ、寒い……だが僕にはこれがある! つらい冬の通学にも耐えうる魔武断学園の制服だ!」
 オネストが着用する魔改造ブレザーは、暑さ寒さに強いだけでなく、着るだけで元気が高まり、学習意欲を向上させてくれる、悪魔的優れものである。
 ワルぶって胸をはだけようが、腕まくりしようが、一年を通し生徒のすこやか不良ライフを守ってくれるのだ。地球にも輸出してくれませんかね?
「この戦いの為に新作も用意してきたぞ! オネスト・ファッション・チェンジ! 今この時の、相応しき姿に!」
 オネストがばっと両腕をひろげてみせると、彼の背後に、四次元クローゼットへつながる扉が出現した。中に収納されているのは、あらゆるジャンルの最先端なワル衣装だ。ちなみに、全部オネストの手縫いらしい。
『あの扉は、かの学園の伝承に聞く禁断の……』
『ええ。ビジュアルの悪魔たるオネストは、着替えた服に合わせて言動や行動を自在に変える事で、その服が本来持つパワーを引き出す事ができるのです』
 グリースが何となくそれっぽい反応をすると、ブラウ(水の悪魔)がすかさず場外から解説してくれた。これが、四天王vs四天王の四天王しぐさバトル……一進一退のくどいパフォーマンスが火花を散らしあう。
『ボスに手出しはさせん。覚醒せよ、我が左眼に秘められしゴーゴンの身を知る雨よ』
 前髪に隠されていたグリースの左眼が輝きはじめると共に、「絶晶」と「極晶」の二体が迫ってくる。どうやら、オネストを石化させてから、自動鎧の膂力で粉砕する算段のようだ。さすがラストバトル、本気と書いてガチだ。
「甘いでござるよ! チェンジ、シノビ・スタイル!」
『なっ……シノビですって!?』
 衣装チェンジに要する時間はわずか0.05秒。サイバーニンジャから着想を得た、テックウェア風のワルスタイリッシュな忍者装束に身を包んだオネストは、高く跳躍してクイーン達の頭上を飛び越えた。空中からグリースに手裏剣(ハンドメイド)を投げつけ、攻撃動作を中断させる。
『ちっ、邪魔が入ったな……』
「ううむ、最新の流行と和の要素を取り入れてみたが、やはりお主にはこれでござるな。チェンジ。ヴィジュアル・スタイル――」
 今度はゴシッククロスを纏い、罪深き堕天使の宿命†――さだめ――†に覚醒めるオネスト。伸ばした右腕からグリースの生命力を吸収し、さらに妨害を加速させる。
 そして、オネストは、おもむろに口をひらいた――。

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「鎮まれ、我が右腕よ。……グリースよ、覚えているか? 五年前、我らの血塗られし因縁が闇の使徒よりもたらされた『審判の日』を……」
『……審判の日か。ああ、忘れもしない。五年前、魔武断学園と対立する頭兎喪学院に籍を置いていた俺は』
 そうなの!?
『腐敗し、悪行を怠る当時の頭兎喪生徒会に対し、仲間と共にクーデターの決行を画策していた……そこに現れたのが、我がゴーゴンの身を知る雨と対をなす、呪われし右腕を持つお前だった』
 そうなの!?!!?
 頭兎喪と書いてズットモと読みます。
「嗚呼。今でもあの狂おしき祝祭の詩が我が胸を焦がす――あの日、我らは出会ってはならぬ運命だったのだ……」
 そーーーなの!?!!!?!!!!?!?

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「……って、そんな因縁ないアルよ! アチョー!!」
 ですよね! 良かったァ!
『ぐッ!?』
 チャイニーズ・スタイルに早着替えしたオネストは、鍛え抜かれた功夫でグリースに拳の連打を叩きこみ、致命傷を負わせた。
「思わせぶりなこと言ったけど我と你は初対面ネ! 乗ってきた方が悪いヨ!」
 五年前設定だとオネストさん12歳ですからね……そのあたり、微妙に詰めが甘かったグリースの敗北である。頭兎喪学院はあるかもしれないし、ないかもしれない。
『……やりますわね、猟兵。我が四天王が敗れ去るとは……ですが、わたくしは西のラスボス。絶晶はわたくしのプライド。簡単には砕けませんわよ、かかっていらっしゃいな!』
 さすがのアイスエイジクイーンも、ここまでの8連戦で蓄積した疲労の色が隠せない。それでも悪役らしく、高笑いを響かせる彼女の威厳は、けして“見せ掛け”だけのものではないのだろう。
 ならば、こちらも悪役(ワル)らしく――華麗に、卑怯に、正々堂々、とどめを刺してやるだけだ!

 「絶晶」と「極晶」を操り、オネストへ襲いかかるアイスエイジクイーン。だが、突如として、オネストの姿が彼女の視界から消えた。
『消えたですって!?』
「チェンジ……アサシン・スタイル。よもや四天王が魔王に一矢報いる時が来るとは思わなんだ。だが、これもまたワルの一つ」
 限界を超克したオネストのワル力(ぢから)が高まり、とてつもないカリスマが輝き始める――!
 辺りを包む闇に姿を紛れさせたオネストは、本物の暗殺者のごとくアイスエイジクイーンの背後に回りこむと、輝くワル力(ぢから)をアサシンダガーに変え、その矛先を彼女へと向けた。
『ボス! 奴が後ろに、お逃げくださ――』
 地面に膝をついたままのグリースが叫ぶ。
「高飛車な女王様は暗殺されるもの……お似合いの最期じゃねぇか、悪く思うなよ?」
 オネストはダガーを突き立てた。
 自動鎧に覆われていない場所……アイスエイジクイーンの首元を狙って。
 百人の四天王達から絶叫と怒号が上がり、続いて、痛いほどの静寂が場を支配した。
 下克上だ。西のラスボスが、他所から来た四天王に敗れたのだ。声をあげる間もなく、氷河を支配する氷の女王は、雪となってはらはらと消えていった――。



 ……などというような事はなく。
『く、首を痛めましたわ。わたくしとした事が、不覚ですわ……ですが、次の戦場では必ずわたくし達が勝利致します。四天王も残り96人いますわよ! 首を洗って待っていらっしゃいな、お〜っほっほっほっ!』
 すぐ起き上がったアイスエイジクイーンは、素直に負けを認めて引き下がると、ほかの猟兵達が待ち受ける戦場へと急いで走っていった。
 オブリビオンとは違い、一人しかいない彼女はやる事が多い。すごく多い。
 ともあれ、無事に勝利をおさめたオネストは、デビルズスマホを取り出し、戦闘前に撮影した記念写真をあらためて確認する。
 皆とてもいい顔、もとい、ワルい顔で写っていた。明るく楽しいアットホームな職場そのものだ。オネストは、デビスタのアカウントに勝利記念画像をアップロードする。
「#7thKINGWAR #IceAgeQueen #EliteFour100 #vertekawaii……よし、投稿!」
 すると、早速通知が一件。
『あなたの投稿に、アイスエイジクイーンさんが「ワルいね」しました』……だそうだ。

(クイーン、今移動中だよな? 戦闘中に歩きスマホとか……やっぱ相当なワルだぜ!)
 物凄い勢いで増えていくワルいねを眺めつつ、オネストは思わず、にんまりと笑みを浮かべた。
 仲間を傷つける悪や、異世界への侵略は許さない――彼女らもきっと、同じ悪の美学を持って、魔王ガチデビルの暴挙へと立ち向かおうとしているだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月15日


挿絵イラスト