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#UDCアース

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#UDCアース


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 人気の少ない暗い団地。何かを畏れるように人の気配の絶えたその場所。
 あまり通りたくないと思いながら、残業を終えたその女性は家への近道を進む。
 しとしとと降り続く雨は、夕方から夜半まで止むことなく。陰気なその暗闇を、更に重く人の足を遠ざけている。
 そんな雨の降る夜の事。何気なく見上げた、家からいくつも離れた建物の屋上で、ぼう、と火が灯る。
 雨の中で何を馬鹿なと。そう思わせるそれはしかし、ゆらゆらと風に揺れるように揺らぐ炎の様。
 青い、青い炎。空の青ではなく。深い深い、海の底のような。底無しの暗さを伴う蒼。
 それが、一つ。二つ、三つ…少しずつ、しかし確実に増えている。
 暗い明かりとなったそれが照らし出すのは、灰色の怪異。人型のナニカを侍らせるそれが、感情を見せぬ瞳で。下界を見下ろしていた。
 それが何かを理解するより早く、ただ見ることなく走り去った彼女は賢明だったろう。そうして逃げた彼女が自宅に戻り、人心地付く。
 飲み干したドリンクのボトルを流しに放り込み、思い出す。昔、祖母に聞かされた話。
 夜に燃える青い炎は、人の魂が燃えているのだと。

「ああ、忙しい中良く集まってくれた。」
 グリモアベースに集った猟兵達に、叢雲・秋星(悪を削ぐ太刀・f02120)が軽く礼を述べた。
 UDCアースで活動が確認されたオブリビオンについて、早速で悪いがと前置きし話を始める。
 確認されたのは、蒼い炎の尾を持つ狐型のUDCだ。元々、この日本では稲荷信仰という狐の神を崇める信仰があったのだが、それと類似した信仰が、この街の元となった地域にはあったのだという。
 狐神を農耕神としたその土着信仰も、時が経つにつれて忘れ去られていき、今となっては信仰する者も信仰があったという証拠も残されていない。
 そんな信仰の残骸が形を持ったのがこのUDCとなり活動を行っているという。
「今はまだ、かつて信仰されていた時ほどの力は無い。それに、かつては農耕神として人々の生活を支えていたが、今のソレにそんな力も意志もない。忘れ去られた事への報復、それくらいしか、な。」
 勿論、そんなものは八つ当たりでしかない。許していいものでは到底ないのだから、このUDCを討滅せねばならない。
 該当の個体は、とある地方都市にある団地を根城にしている。この団地では昨今、住人の死が相次ぎ入居者が減っているという。恐らくは住民の命を餌にその力を取り戻そうとしているのだろう。
 まずはこの個体の根城の把握と、眷属の排除から行うといい。
「…それでは皆、健闘を祈っている。」


宗嗣
 初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。マスターをさせていただいております宗嗣です。
 今回もまた、UDCアースでの事件となります。パートとしましては、探索→集団戦→ボス戦の流れとなります。

 お狐様、昔から色々な逸話があったり信仰があったりするのを見ると、本当に私たちに身近な存在だったんだなぁと思います。残念ながら今回は倒さねばなりません、皆さまのプレイング楽しみにしております。
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第1章 冒険 『団地の亡霊』

POW   :    捜査は足から! 団地の住人に聴き込む

SPD   :    まずは資料から。新聞や捜査資料から当たる

WIZ   :    我々には異世界の力がある。魔法などを使う。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鶴来・桐葉
【心情】なるほどお狐様ねぇ。一度会いたいとは思ってたんだよなぁ。軽く探してみるか。
【作戦】いきなり住人に尋ねても怪しまれそうだしなぁ。ここは当時の新聞やら資料やらを当たってみるかね


榎木・葵桜
神様は人の信仰が力で支えだから、忘れ去られちゃったら本当に辛いと思うの
神社の娘としては、そういう神様の気持ちは全部じゃないけどわかる気がする
でも、忘れ去られたからって祟っちゃったら神様ではなくなっちゃうと思うの
だから…神様がこれ以上落ちてしまわないように、ここで止めなくちゃ

POW
お昼から夕方にかけて、団地内の公園に集まる人に話かけてみようと思うよ
【コミュ力】【第六感】【情報収集】活用
お年寄りや主婦の方には、【礼儀作法】も意識して丁寧に対応するね

「私、最近この辺に引っ越してきて、右も左もわからなくて
もしよかったら、オススメの場所とか、知っておいた方がいい話とかあったら教えてもらえると嬉しいです」



 昼にも関わらず人気の少ない通りを、一組の男女が歩いている。和風の服装という共通項から、人が見れば伝統芸能に携わる者か神職かとも思うだろう。
 それも、半分は当たっている。
「神様は人の信仰が力で支えだから、忘れ去られちゃったら本当に辛いと思うの。神社の娘としては、そういう神様の気持ちは全部じゃないけどわかる気がする。」
 隣を歩く男性に聞かせる訳ではないが、愁いを帯びた表情で榎木・葵桜(桜舞・f06218)がそう呟く。時の流れとはそういうものであり、化学と信仰は相反するところが多い。人の生活を考えれば仕方のないこととは思うが、神としてはやりきれない部分もあるのだろう。
「…ま、難しく考えるのは後にしようや。俺としては、一度狐様とは会いたいと思ってたしな。探してみるとしようや。」
 後頭部をがりがりと掻き、鶴来・桐葉(サイキック剣豪・f02011)が快活に笑う。今悩んでもどうしようもない事。それに会えた時にまた考えればいい、と。
 それぞれの探索方針もあり、一旦ここで二人は分かれる。その時の葵桜の言葉が、間に漂った。
「忘れ去られたからって祟っちゃったら神様ではなくなっちゃうと思うの。だから…神様がこれ以上落ちてしまわないように、ここで止めなくちゃ。」

 図書館へと足を進めた桐葉が求めたのは、過去の資料。現代の信仰でないなら、過去を当たった方が良いだろうとの判断だ。
 この国の急激な近代化に伴い信仰は人々の間から消えていったが、それでも消えていくには時間が掛かっていた。
 昔の新聞、資料を探していくと見出しの文字が右から左へと書かれているような年代に差し掛かる。
「お、こいつはビンゴか?」
 その中での地方紙の文面には、丁度この辺りの地域の神社の事が書かれていた。
 内容は別に特筆すべきことでもない。季節は丁度秋ごろ、稲の収穫が終わって一段落着くころだろう。
 神社での秋祭りを行うという事を喧伝するものだった。気になったのは、その神社の場所。
 住所を当時の地図を探し出して現代のものに当てはめてみると、丁度件の団地にその神社はあった事になる。
 恐らくは今のコンクリートで作られた建物達のどれかの下に、かつては神社があったと推測出来た。
「あー…地鎮とかしなかったのかね、その時の人らは…。」
 桐葉は見つけた資料を当てに、更に昔のものを探していった。

 桐葉と離れた葵桜は、団地の公園に赴いた。人はまばらとはいえ、居ない訳ではない。買い物帰りの主婦や散歩に興じるお年寄りらがぽつぽつと見られた。
「すみません、ちょっとよろしいですか?」
 その中でも声を掛けやすそうな主婦に狙いを付け、声を掛ける。訝し気に葵桜を見る彼女に、にこりと人好きのする笑みを浮かべて、
「私、最近この辺に引っ越してきて、右も左もわからなくて。もしよかったら、オススメの場所とか、知っておいた方がいい話とかあったら教えてもらえると嬉しいです。」
 高い【コミュ力】と丁寧な口調の【礼儀作法】を持つ彼女の物腰は柔らかで、悪印象を持たれ辛い。勿論主婦の女性も、彼女に悪印象は無く笑顔で対応する。
「そうねぇ…あっちにある料理屋さんは安くて美味しいのよ。それからあそこのスーパーは…。」
「そうなんですね、それは素敵です。」
 相槌を合わせてくれる葵桜に気を良くした彼女は、更に色々と教えてくれる。町内会長の人柄や、ゴミ出しの日の注意、買い物するならここがいい、近道はあそこで…。それから…。
「そうそう、あのあたりのマンションって昔は神社があったらしいのよ。狐の神様がいたらしいんだけど…それを団地にしたバチかしらね。最近、お葬式が多くって…。」
 そう言って彼女の指さした方角のマンションを、葵桜が見る。
 幻か、その屋上に蒼い炎が見えた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花鶏・美珠
【WIZ】

狐神さんの報復…うぅ、怖い…(がくぶる)
で、でもこれ以上犠牲になる人を増やしたくないです…!

報復とそれによる死…なら呪いや怨念が漂っていてもおかしくは
ないはず、です。
団地に行って死霊術士の力を扱える人間らしく【呪詛】の知識と力を
頼りにそれらの痕跡を探してみます。何か分かるといいのですが…

あと、念のため【呪詛耐性】も使いますね。
相手がUDCなのは分かっているのですがその…祟りとか…怖いので…


八坂・操
【SPD】

不吉な前兆はホラーの前触れ! 操ちゃん映画で見たから知ってるよ☆ 廃れた稲荷信仰とか、もう怪しい予感しかしないね♪
かつてお狐様を信じ崇め奉っていたなら、それがなくなった今、そこには何が鎮座してるんだろうね?

操ちゃんは警察に『変装』して『情報収集』しよう! 地元団地の入居者が相次いで亡くなっているなら、その記録ぐらいは取ってあるよね☆
署内は『忍び足』で『目立たない』よう動きつつ、資料室の記録を漁りまくろう! ついでに【虫の知らせ】で署内の噂話も聞ければ万々歳だね☆
手付かずのパソコンがあれば『ハッキング』で更に調べられそうだけど……そこまで期待するのは欲が過ぎるかなー?



 (不吉な前兆はホラーの前触れ!操ちゃん映画で見たから知ってるよ。廃れた稲荷信仰とか、もう怪しい予感しかしないね♪)
 楽し気に、警察署内を歩き回る婦警がいる。真っ当に考えれば怪しい事この上ないのだが、それが【目立たない】のは彼女の【忍び足】故か、その技術故か。
 署内に居る他の警官からの目を受けず、八坂・操(怪異・f04936)は警察署内の資料室へと入り込む。
 入居者が相次いで亡くなっているのだから、その記録くらいはあるはず。そう見当をつけて、壁一面に片付けられたファイルの中から例の団地絡みのものを探し出す。
「お、あったあった。」
 目当ての書類を見つけ出すと、テーブルでそれを広げる。
 思った以上に分厚いその中で、目的とする記述を探す。猟兵ならば兎も角、一般人の警察では事件性を疑うには証拠不足だろう。あくまで、ただの不審死。
 彼らの常識で言えば、不審ではあるが事件性は無いものになってしまう。
 纏められた資料を読めば、操のような猟兵ならばそう感じるかもしれない。その中に書かれている不審死の件数は数えるのが面倒な程だ。
 そしてそれは団地に点在しているが…その中心、最も早く起きた場所であり最も多く起きた地域がある。
「なーる、この辺りってことね。」
 ぺろりと唇を舐めると、その情報を素早く彼女は他の猟兵達へと拡散した。

 「狐神さんの報復…うぅ、怖い…。で、でもこれ以上犠牲になる人を増やしたくないです…!」
 人が減り、半ば廃墟じみたマンションの群れを震えながら歩く。きょろきょろと辺りを見回しても人影はなく、橙色の古びた街灯に照らされた陰影はどこか、病に侵された臓腑を思わせる。
 そんな妄想が頭を過り、ぶるりと大きく背筋を震わせる。だが、いつまでも怯えている訳にはいかない。
 提供された情報を元に、本命のマンションを探す花鶏・美珠(ミステリアスワンダラー・f13026)一度、自分の頬をパシリと打ち、気合いを入れる。
 先ほども自分で口にしたばかりではないか、ここに来たのはこれ以上の犠牲を防ぐためだと。それならば、いつまでも怯えてばかりいる訳にはいかない。
 強く決意を新たに、周囲を見回す。【呪詛】使いとしての視界は、亡者の霊魂や怨念、その形跡も逃さない。
「うっ…。」
 そうして僅か、それを使ったことを公開する。
 辺りに漂う怨念の、なんと多いことか。なんと深いことか。
 あまりの瘴気に頭痛すら感じる程のそれ。だが、視線は逸らさない。その中に、あるはずなのだ。事件の核心へとつながる一本の線、狐神自身が漂わせる、怨念。
 意識を強く保ち、人々の怨嗟に飲まれまいとしながら、足を進める。
 一体どれだけの人を、喰らったのだろうか。この団地一帯がまるで墓所を思わせる程の深く、静かな怨嗟。
 もうここは、人の住むべき場所ではない異界だ。
 そうして、彼女は辿り着く。
 蒼い、深海のような、炎。その呪詛を宿す、一棟に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『風魔衆・下忍』

POW   :    クナイスコール
【ホーミングクナイ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【クナイ手裏剣の連射】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    サイバーアイ演算術
【バイザーで読み取った行動予測演算によって】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    居合抜き
【忍者刀】が命中した対象を切断する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達がそのマンションへと迫った頃、それを階上から見下ろす影がある。
 否、影達、というべきか。
 蒼く染まった苦無を手にしたその人影。女性の忍者を思わせる姿をしたそのUDCは、狩るべき敵を目に一人、また一人と暗闇へと姿を消していく。
 すべては、主の命のままに。
 主が本来の力を取り戻し、人の世に己の存在を知らしめる為に。
榎木・葵桜
貴女達が、神様の遣い?
お仕事に忠実なのはいい事かもしれないけれど
貴女達の主がこれ以上この一帯で悪さをする事を、私としては赦すわけにはいかないんだよね
邪魔させてもらうよ、猟兵として全力でね!

【サモニング・ガイスト】使用
田中さん(霊)には、可能な限り【槍】で敵の攻撃を防御してもらうね

私は田中さんの背後で【見切り】も使いながら敵の動きを観察
【戦闘知識】【情報収集】【第六感】で敵の弱点の当たりをつけてみるよ
敵は人型だから、苦無や忍者刀を扱う手や肩にダメージを与えれば攻撃力下げられるかな?
試す価値はあると思うから、隙を狙って【衝撃波】で攻撃仕掛けてみるね

出来る限り仲間と連携
臨機応変な立ち回りを意識するよ


八坂・操
【SPD】

わぉ! マンションにハイスクールニンジャ! 良いね良いね、映画っぽさが出てきたじゃん♪ こりゃ大当たりの予感☆
でも、こんな事故物件に操ちゃん達だけだと不安だからね♪ 【メリーさんの電話】でもう一人呼んじゃおっか☆
「もしもしメリーちゃん? 隠れ鬼ごっこしない?」
メリーちゃんや他の猟兵ちゃん達に先導して貰って、操ちゃんは『忍び足』で『目立たない』よう後従だ☆
戦闘があれば、操ちゃんは背後に回り込んで『だまし討ち』を仕掛けよう♪
「つーかまえた♪」
決まり手は『鎧無視攻撃』の『串刺し』貫手……ちょーっとタッチにしては物騒過ぎるかな?



 二人の猟兵が先立ち、マンションへと立ち入る。周囲を常に警戒しつつ、ゆっくりと。ただし表情は対照的。片方は愉快気に、もう片方は真剣に。
「田中さん、防御任せたよ。」
 いざという時を考え、榎木・葵桜(桜舞・f06218)が【サモニング・ガイスト】を使用する。彼女によって呼び出された英霊、田中さんは槍を携え、こくりと一つ頷き返答する。
「マンションにハイスクールニンジャ!良いね良いね、映画っぽさが出てきたじゃん♪こりゃ大当たりの予感☆」
 それとは真逆に楽し気に声を上げ、辺りを見回すのは八坂・操(怪異・f04936)だ。
 無論、そこに油断は無い。外見上とはいえ、相手は忍の姿を取るものだ。隠形、暗殺はお手の物だろう。首を斬られては元も子もない。
 かつん、かつん。二人分の足音がコンクリートに反響する。異様なまでの静けさは、まるで世界に人が消えてしまったような錯覚を覚えさせる。
 そんな、僅かな意識の切れ間。隙とも言えないような刹那。斬光が、奔る。

 ―――ガギャリッッ!!

 耳障りな音を立て、少女の姿の忍者の放った【居合抜き】が田中さんの槍によって食い止められた。もし、彼が居なければその太刀筋は葵桜の首へと阻まれる事無く突き進んだだろう。
 ざわりと嫌な汗が葵桜の背を伝う。不意打ちを防がれ二人を囲む眷属に、気丈に敵を見据えた彼女が宣言する。
「貴女達の主がこれ以上この一帯で悪さをする事を、私としては赦すわけにはいかないんだよね。邪魔させてもらうよ、猟兵として全力でね!」

「わぉっ、ニンジャ良いねー。っとと、慌てない慌てないーっ。」
 振るう忍者刀を、『ドス』で受け止める。甲高い金属音が響き、火花が散る。返す刀で忍者の胸を射抜こうと操が刺突を繰り出すが、あっさりと回避され逆に回し蹴りを受ける羽目になってしまう。
 否、受ける寸前だったというべきか。
 即座に間に入り込んだ田中さんが掲げた腕でそれを受け止めた。更に反対から葵桜へと向かう忍者へと、槍の穂先が迫る。牽制の刺突は当たる事は無いが、彼女を守るには十分だ。
「おーっ、槍のお兄さんやるじゃない?」
「ありがとう、田中さん!」
 『胡蝶楽刀』を振るい、葵桜が奮戦する。薙刀の切っ先がコンクリートの壁を削り、迫る忍者を薙ぎ払う。
 間合いの外だ、届かない。そう慢心していた彼女らは、その刃から放たれる【衝撃波】に呑み込まれていく。倒すには遠いが、武器持つ腕を集中して狙ったそれは確実に敵の戦力を削いだ。
「それじゃ私も呼んじゃおうかなっ。もしもしメリーちゃん?隠れ鬼ごっこしない?」
 手にしたスマートフォンで掛けるのはよくわからない番号。【メリーさんの電話】は繋がるはずのない番号を、確かに誰かに繋げる。その対象たる刃を持った少女が顕現する。
 さて、メリーさんの都市伝説。最後に彼女が現れるのは一体どこ?答えは――。

「今、貴女の後ろにいるの。」

 一体の忍者が、背後に現れた刃を持った少女に首を裂かれた。
 隠形に特化した彼女らですら捉えることの出来なかった現出に、忍者達が動揺する。その刹那、英霊が見逃す筈もない。
 刺突三連。眉間、喉、心臓。三つの急所を同時とも思える速度で刺し穿つ、田中さんの魔技。血振りするように、抜いた槍をくるくると回し、脇に挟んで構える。
 歴戦の兵の雰囲気は、更に敵の連携を乱し……不意に、彼が膝を付く。
「あなた達のお仕事、終わらせてもらうよっ!」
 大きく跳躍し、田中さんの背後から躍り出た葵桜が『胡蝶楽刀』を薙ぐ。刃が肉を斬り裂き、衝撃波が大きく敵の態勢を崩す。
「今だよっ!」
「つーかまえた♪」
 合図を聞いてか否か、操が背後から忍者の肩に手を添える。ぞくりと、彼女が悪寒に身を震わせた刹那。
 ぞぶり。肺腑を射抜き握り潰す、絶対の死。相手の守りの隙間を縫う【串刺し】の『貫手』は、確実にその命を奪い去り。抜いた手は、赤くぬらぬらと輝く。
「ちょーっとタッチにしては物騒過ぎるかな?」
「だと思いますよー。」
 苦笑を浮かべ、操の独り言に葵桜が応じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花鶏・美珠
ちょ…直接見たことないけどアトリちゃんが出たー!?
(すぐ雰囲気が変わり仮面をつけ…『アトリ』にチェンジ)

美珠の叫びに即反応だオラァ!
いやー同じ趣味のヤツに会えて…ねぇ。似てるようでほぼ違うじゃねぇか!
武器も仮面も違うし、しかも忍者…オレ違うし!?

…いや待て?てことは速さ勝負は相性最悪?
チッ…だったら【先制攻撃】でリザレクト・オブリビオンを使用。
オレと敵の間に入り攻撃役兼壁になる形で動いてもらうぜ。
ソレで殺れたらOKだが、もし2体とも消されるかオレが攻撃喰らって
解除された時は…ぎゃー!お助けー!
…なフリをして【早業】で【呪詛】込めたダガーで【だまし討ち】攻撃。
あっさり殺られてたまるかってなァ!



「ちょ…直接見たことないけどアトリちゃんが出たー!?」
 仮面を付けた忍者達を見て思わず、花鶏・美珠(ミステリアスワンダラー・f13026)が叫び声をあげる。
 多重人格である彼女のもう一人の人格はまさに、仮面を付けて戦う少女。そう思えば、確かに同一と言えなくもない。いや、言えないか。
「いやー同じ趣味のヤツに会えて…ねぇ。似てるようでほぼ違うじゃねぇか!武器も仮面も違うし、しかも忍者…オレ違うし!?」
 自身に付けた仮面をスイッチに切り替わる。ハイテンションなアトリのノリツッコミだが、シーフという事を考えると重なる部分が無い訳でもないだろう。
 つまり身上は、速さという事だ。
「ちっ、ってことは速さ勝負は相性最悪ってコトじゃねぇかっ。」
 気が付けば、忍者刀を携えた影が自身を射程に捕えている。あと一瞬気づくのが遅ければ、アトリの【先制攻撃】は相手によって無効化されていただろう。
 だが気づけたのだから問題ない。後ろに跳びつつ横薙ぎに両腕を払う。行使されたユーベルコードはその任を着実に遂行する。
「オラッ、来やがれ!」
 【リザレクト・オブリビオン】により召喚されたのは死霊の騎士と蛇竜。骸の兵は主の命に従い、彼女の壁となるように立ち塞がる。
 無論、それだけではない。当然降りかかる火の粉は払わなければならない。刀を抜き放つ忍者に騎士が手にした剣を合わせる。
 激しい金属音を響かせて激突する刃。ガチガチと噛み合う刃金。仮面の奥と、骸の奥で、視線が交錯する。
 そこを、蛇竜の尾が薙ぎ払った。豪、と風を巻き上げながら奔る尾は忍者の胴体を圧し折るように叩き込まれる。
「ッシャアッ!」
 その様にガッツポーズを一つ。上手く行ったことに唇を吊り上げ笑みを浮かべる。
 残念ながら、その隙は見逃されない。

 ―――トトトトッ。

 冗談のように軽い音。死霊騎士の首に襟巻でもしたように、突き立つ苦無達。噴き出る血もなく、ぽろりとその首が落ち。傍らに二人、忍者が立つ。
 その姿がフッと消える。不味いと思い即座に蛇竜に行動を命じる。自分を守り敵を討てと。
 大きく開けたその顎が一体の忍者を捕え、噛み砕く。ぼり、ごり。鈍い音を響かせて、その総身を呑み込み。更にその首が、刎ねられる。
「ゲッ、これって…ギャーッ、お助け―!」
 自身を守っていた【リザレクト・オブリビオン】が消えた事で、アトリを守るものがいなくなった。
 これ幸いと、忍者がその刃を翻し彼女を襲う。
 銀色の閃光が交錯し、二人の影が離れる。
 パッと、アトリの肩口が裂け血が噴き出す。それと同時、忍者がその身を横たえた。
 その腹部には、深々と斬り裂かれた傷痕。
 アトリの手にしたダガーが、目にも止まらぬ【早業】で切り捨てたのだ。
「なんて、あっさり殺られてたまるかってなァ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

鶴来・桐葉
【心情】おいおい、狐の使いがクノイチかよ…不思議な組み合わせだねぇ。可愛らしいが仕方ねぇ、サクッと倒しちまいますか
【作戦】味方と連携。なかなかトリッキーな技を使うみてぇだな。攻撃には【残像】と【盾受け】で、対処しつつ、手品(超能力)を刀に宿すサイコソードで一気に切りつけるぜ。強化は攻撃回数を重視だ。これで【2回攻撃】を使った攻撃で一気に斬り伏せていくぜ!「クノイチもすげえが、サムライの兄ちゃんもなめんなよ!」

アドリブ・絡みOK


江戸川・律
マジかよ
到着早々熱烈なお出迎えとか大歓迎じゃん?

バイクを走らせマンション近くまで来た俺を迎え(?)てくれた
「風魔衆」に気さくに声を掛けます

まぁ攻撃してくるだろうから
【ペンは剣よりも強し】で10秒先を予測しながら攻撃を避けつつ
お返しとばかりに普通にブラスターで応戦します

…なるほど
俺と同じような感じ?
まぁ読み合いは割と嫌いじゃないけどさ
悪い、出遅れた分取り戻したいんだ
今日は急いでるから機会があればまた今度な

話ながら、今度は戦闘知識・先制攻撃・早業・2回攻撃を合わせた
【クィックドロウ】で攻撃
おまけに誘導弾を付けましょう

初手から手の内を見せない
まぁコレも奥の手ですら無いけどね
一つ勉強になったかな?



「マジかよ、到着早々熱烈なお出迎えとか大歓迎じゃん?」
 愛車のバイクでマンションへと駆けつけ、戦場となっているそこに銃を片手に乗り込んだ江戸川・律(摩天楼の探求者・f03475)へと忍者の少女が苦無を投擲する。
 弾丸じみた速度で飛来するそれに向け、『ディテクティブ・ブラスター』の銃口を向けて引鉄を引く。
 予知技能を駆使しその軌跡を読み切った律がブラスターの熱線で苦無を蒸発させる。さらにそれを投擲した相手へ目掛け熱線を放つ。
 相手もさるもの。それを読んでいたように、音より早く飛来する熱線の軌跡を潜り抜けて律へと迫り、その刃で斬り裂かんとする。
「チッ!?」
 前哨戦でしかない相手に全力を出す訳にもいかない、隠し玉は持たねばならない。確かに道理だ。道理だが、それが隙となる瞬間もある。
 不味い、背筋に悪寒が走る。
 律を刃が斬り裂く寸前、刃金のぶつかり合う音が響いた。
「危なかったな、あんた!さぁて、可愛らしいが仕方ねぇ、サクッと倒しちまいますか。」
 間へ割り込んだ青年の振るう太刀が忍者刀を受け止めていた。快活に笑うその青年、鶴来・桐葉(サイキック剣豪・f02011)がその太刀を振るう。
 振るったその瞬間だ。大振りであるはずのその太刀が、小太刀程の大きさへと変化した。
 間合い、重さ、重心に取り回し。あらゆるものが変わってしまうそれは相手にとって脅威だが、担い手にしても的確な対応力が求められる極めて扱い辛い代物。
 にも拘らず桐葉はそれを手足のように操り、速度重視の【2回攻撃】を繰り出す。
「クノイチもすげえが、サムライの兄ちゃんもなめんなよ!」
 一太刀目で忍者刀を弾き、返す二太刀目で忍者を袈裟に斬り裂く。
 パッと咲いて散る赤い華。ぐらりと傾ぐ、忍者の少女。その、バイザ―越しの瞳は、桐葉を捕え――。
 熱線が、頭を撃ち抜いた。
 その手に握られていた苦無は、放たれる寸前で。刀を振り切ったばかりの桐葉では回避は困難だった代物。
「…危なかったな、あんた?」
 先の礼、とばかりににっと笑う律に、桐葉が微笑みを返す。
 残る忍者は数名、一気に仕留める!視線を交わした打ち合わせ。
 自在にその形を変える刀を操る侍、桐葉が舞うように忍者達へ切り込んだ。雨のように降り注ぐ苦無を守る事を捨てて足を止めることなく突き進む。守りなど考える必要はない。なぜなら――。
「あと二足踏み込んだら右側の相手からだ!」
 ブラスターの熱線がそのどれ一つとて、触れさせることは無い。律の未来予知の技能が最適な殲滅ルートを知り、それを桐葉に伝える。
 言われた通りに踏み込み、伸ばした太刀を横薙ぎに払い忍者の首を断つ。
 その対称にいた敵は、律の銃が仕留めている。
 刀と銃、武器の代名詞とも言うべき二つの組み合わせは瞬く間にその道を阻む全てを断ち、撃ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『禍罪・擬狐』

POW   :    恐レヨ。
【燃え盛る前肢】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    惧レヨ。
【長い尾】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    畏レヨ。
【炎の尾から青い狐火】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は榛・琴莉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 …忌々しいな、秩序の飼い犬…。

 屋上にて、灰色の体躯を持つ狐が呟く。蒼い炎の尾が八本、ゆらゆらと揺れる。
 あと暫しの時があれば、この身はかつて人々に豊穣を自在に齎していたころと変わらぬ力を取り戻せたというのに。
 ぼう、とふらふらと揺れる鬼火。
 人の、魂。
 それを躊躇う事無く大口を開け、喰らい付く。咀嚼することなく一息に呑み込み、唸る。
 そう、あと少しだった。ならば――だ。少なくとも、その質はただ生きているだけの人間よりもいいだろう。
 秩序の飼い犬…その命を奪い、魂を喰らえばこの身は完全となれるだろう。
 それを思えば、留飲も僅かに下がった。
榎木・葵桜
【巫覡載霊の舞】使用
敵からの攻撃は【見切り】【激痛耐性】で凌ぎ
【戦闘知識】【第六感】も活用しながら動きの癖と弱点を【情報収集】していくよ
攻撃を仕掛ける際には出来る限り前に踏み込んで【なぎ払い】【衝撃波】で積極的に動くね



ねぇ、狐のカミサマ
忘れられたってマイナスの念に支配されて、
人の命を奪い、魂を喰らって、得た力に溺れて
神の威厳はどこに置いてきちゃったのかな?

もちろん、ね
今までいただいたものへの感謝も崇める事も忘れてしまった
私達人間にだって責任はあると思うよ
でも、報復の念と自らの力に溺れてしまったあなたは、もう神様じゃない、ただの化物
堕ちてしまったあなたの罪は、あなたがその身をもって償わなくちゃ


八坂・操
【SPD】

ヒヒヒヒヒヒッ! 他人を食い物にして、ようやく生き永らえてるような狐が、取らぬ狸の皮算用……ヒヒヒッ! 操ちゃんお腹痛い!
ちょっとー、笑わせないでよー♪ こんな時なんだから、もう少し真面目にさ☆
本気? それはそれで面白い冗談だよね、そうは思わない【狐狗狸さん】?

「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり」
真正面から挑む。
「娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす」
『フェイント』をかけ『カウンター』を狙う。
「奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢の如し」
貫手で『串刺し』『傷口をえぐる』。
「猛き者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ」
永久に続くものなどない。神でさえ、衰退からは逃れられない。



 しゃんと、鈴の音が鳴る。暗く、昏いその屋上の闇にあって、其は闇を祓う静けさを伴って。
「ねぇ、狐のカミサマ。忘れられたってマイナスの念に支配されて、人の命を奪い、魂を喰らって、得た力に溺れて。神の威厳はどこに置いてきちゃったのかな?」
 そう問いかけるのは、神へと使える者の装束に身を纏った少女。榎木・葵桜(桜舞・f06218)は静かに、厳かに、そう問い掛ける。
「知れた事、秩序の飼い犬。我が身、我が有様こそ神なれば。」
 傲慢に、しかし神聖を伴う声音で深く重く、狐神が彼女に答える。
 成程、それはある意味真理である。こと極東において、「神」とは人智の及ばざる全てを指す。人の営みを乱す荒魂とて、かつては「神」と呼称された。
 だが、だからと言って。その暴虐を、許すわけにはいかない。ぎり、と。『胡蝶楽刀』を握る手に力が籠る。
 その時だ。
「ヒヒヒヒヒヒッ! 他人を食い物にして、ようやく生き永らえてるような狐が、取らぬ狸の皮算用……ヒヒヒッ! 操ちゃんお腹痛い!」
 奇声じみた笑い声をあげ、狐神へと八坂・操(怪異・f04936)が突撃を仕掛けた。
 別段、理由があった訳ではない。強いて言うなら、この愉快な存在に我慢が出来なくなった。それだけだ。
 ゆらり。
 炎の尾が揺れる。虫を睥睨するように、疾駆する彼女に対処する様子もない。
「ちょっとー、笑わせないでよー♪こんな時なんだから、もう少し真面目にさ☆本気?それはそれで面白い冗談だよね、そうは思わない【狐狗狸さん】?」
 そう彼女が口にした刹那、それまでと段違いに跳ね上がった加速で一息に狐神の懐へと潜り込む。
 召喚した存在に肉体の主導権を明け渡し、その性能を限界まで引き出した彼女のそれは、敵の目算を狂わせるに十分だ。
「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。」
 がら空きだ。そう見た彼女の貫手が狐神の胸へと迫り。
 暗転、視界が空を見上げる。
 一瞬で振るわれた尾に薙がれ、宙を舞う操。ぼう、と。彼女の周囲に鬼火の群れが顕現する。
「燃えろ、飼い犬。」
「させないよっ!」
 狐神の宣言。殺到する蒼い炎に思わず身を固くしたのも束の間、割り込んだ葵桜の放つ【衝撃波】がそれを霧散させる。
 態勢を立て直し、着地した操とその前で薙刀を構える葵桜。
「報復の念と自らの力に溺れてしまったあなたは、もう神様じゃない、ただの化物。禍津神へと堕ちてしまったあなたの罪は、あなたがその身をもって償わなくちゃ。」
 【巫覡載霊の舞】にて肉体を神霊体へと移行。今度は葵桜が先行し、狐神へと迫る。
「この身を禍津神と呼ぶか…痴れ者がっ。」
 豪ッ!
 狐神の尾が振るわれるや、炎の壁が現れる。津波のように広がったそれは、圧倒的な速度で猟兵達を呑み込み、肉だけでなく魂魄すらも焼き尽くさんと迸る。
「痴れ者でもいいよっ、それであなたみたいな神様を倒せるならっ。」
 斬、と。葵桜の咆哮と共に津波が真っ二つに断ち裂かれた。
 頬を、腕を、黒ずんだ火傷に襲われ半ば炭化させながらも足を止めなかった彼女の刃は禍津神の炎を斬り裂き、道を作る。
「娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす。」
 その隙を突いた。葵桜の作った道が開けた瞬間を狙って踏み込んだ操の【カウンター】。
 その『貫手』が、呟く古き物語の一説さながらに狐神の肩口を抉り取る。
 咲いた血の色は、沙羅双樹とは異なる赤い色。
「貴様ッ!」
 自身の血など、見たのは果たして何時以来か。怨嗟に染まった瞳が操を射抜く。大きく開いた顎が彼女へと喰らい付き、ごり、と鈍い音を響かせる。
 放り投げられた彼女が赤い糸を引いて放物線を描く。だが、その視線は敵を捕らえて離さない。
 ふわりと。桜の花弁のように。葵桜が舞う。
「あなたを、止めるよっ!」
 その胸元を、『胡蝶楽刀』が深々と斬り祓う。肉を、魂を、怨念をすら斬り裂く刃が、狐神へと深手を与える。
 しゃんと。闇を晴らす鈴の音が響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花鶏・美珠
(人格はアトリのままで)
出遅れたアァァァ!!もう始まってんじゃねぇか!

【先制攻撃】で【呪詛】【呪殺群刃】を使用。最悪1本でも当たればいい。
四方八方から攻撃するように複製を操作するぜ。
成功しても行動全部封じれるとは思ってねェが…まあ、普通に動けねェんだ。
『いつも通りに』はムリだよな♪
攻撃・反撃には【早業】と【逃げ足】で回避か攻撃範囲外まで退避を
試みるぜ。

神とかどーでもいいが秩序の飼い犬つったか…?ソレは訂正しろ。
オレは美珠にも別の何かにも飼われた覚えは無ェからなァ!


江戸川・律
【SPD】メイン

『ペンは剣よりも強し』を使用
常に10秒先の世界を読みながら行動します

【罠使い】【早業】を重ね『レプリカクラフト』で錬成した
「鉄の壁」や「鉄の柱」を巧に使い敵の攻撃を受け止めつつ
妨害・防御共に仲間のサポート回ります

攻撃を仕掛ける際時は
ブラスターをホルスターから抜き
10秒先を読んだ上で
【戦闘知識】【先制攻撃】【2回攻撃】に
弾丸に【誘導弾】【破魔】【属性攻撃】を込めて
早打ちで目標箇所に撃ち込みます

島の時の俺並みに無茶しすぎだっての…
手伝いに来たけど大きなお世話だったかな?

一応人払いは頼んであると言ってもさ
少し暴れすぎだな…
人を喰った時点で神としてはもう終わりさ
悪いけど祓わせて貰う!!



「チィッ、出遅れたアァァァ!!もう始まってんじゃねぇか!クソッ、避けれるもんなら避けてみなァ!」
 出掛けの駄賃とばかり、十七本のダガーが顕現する。狐神の周囲全てを囲むように配置されたそれは、赤いオブリビオンの瞳がそれを睥睨するのを待っていたかのように、一斉に飛来する。
「ふん、温い、な。」
 一瞥。それが、禍津神が下した裁定だ。豪、と唸る蒼炎の尾鎚。十七全てのダガーがそれで防がれた事に、花鶏・美珠(ミステリアスワンダラー・f13026)、現状アトリは舌打ちを漏らす。
 一本でも当たれば御の字と思ってはいたが、その一本も通らないのは流石に業腹だ。その怒りが、反応を遅らせた。
「【恐レヨ】…。」
 蒼炎に包まれた右の前肢。赤い己の血に濡れたそれが、アトリに迫る。巨大な剛腕、燃え盛る蒼炎。一薙ぎでこの身が壁の染みになるだろう未来が透けて見える。
「下がれッ!」
 ゴンッ!!
 アトリの眼前に突如無骨な鉄の柱が立ちはだかる。我に返った彼女が咄嗟に後方に跳ぶのと同時、鉄柱が砕けて弾け飛んだ。
「助かったぜ、アレが無かったらオレは死んでたな。」
 衝撃波で裂けた頬の傷を拭い、アトリは【レプリカ・クラフト】で援護してくれた青年、江戸川・律(摩天楼の探求者・f03475)に礼を述べる。
「そいつは何より。しかし、島の時の俺並みに無茶しすぎだっての…手伝いに来たけど大きなお世話…じゃなかったみたいだけど。」
 ホルスターから抜いた『ディテクティブ・ブラスター』を構え、応じる。一瞬たりとて敵から目を逸らすことは出来ない。
 冷や汗が冷たく流れる。
 律のユーベルコードは10秒先の未来が視える。そのそのものは非常に強力だ。強力だが、難点がある。
 視た未来への対処は、自身の能力が限界という点だ。例え10秒先を視たとて、その時間で対処しきれない速度、威力、その他の要素を以て攻撃されればどうしようもない。
 そしてこの狐神は、その10秒を覆しかねない怪物だということだ。その事実に、不敵に笑い律は己を鼓舞する。
 あの龍の時も、不可能かと思えた未来を否定したのだ。今もそうしなければ、どうする。
「人を喰った時点で神としてはもう終わりさっ、悪いけど祓わせて貰う!!」

 律の宣言と同時、再度【レプリカ・クラフト】が起動する。鉄の柱は数本。コンクリートの床から屹立する。
「しゃぁっ、行くぜ!」
 その意図を理解したアトリが疾駆。【呪殺群刃】で生み出した刃を纏うように、漂わせた。
「…狗が…っ。」
 一拍遅れ、律の行動を理解した狐神が憎悪に世界を焦がす。複数の鉄柱は、禍津神の巨躯からすれば細枝でしかない。
 だが、人の身を隠すには十分な林だ。
 それに身を隠し、この身を射抜く毒を以て迫る敵を。目ではない感覚で的確に捉える。
 そして、その身に宿した憎悪を解き放つ―――蒼炎として。
 狐神から放射状に放たれた蒼い炎の津波は鉄の柱も、それに隠れた猟兵も全てを呑み込み焼き滅ぼす。
 一掃した世界を、己が勝利し矮小な狗が滅びるという現実に、にぃ、と嗤う。

「そんな現実、俺は認めねぇよっ!!」
 バツン、と。熱戦が胴を射抜いた。
 馬鹿なと。耐えられる筈がないと。その現実を否定するように、半身を捨てて耐えた律の銃口が禍津神を睨む。
「おのれ…っ。」
 そして。完全にアトリから意識の切れる瞬間を。律の作るその刹那を、ワイヤーアクションで深手に成り切る前に跳んで脱出していた彼女は待っていた。
「神とかどーでもいいが秩序の飼い犬つったか…?ソレは訂正しろ。オレは美珠にも別の何かにも飼われた覚えは無ェからなァ!」
 ぞぶりと。呪詛を纏った『Quick Raven』の刃が、灰色の体躯を抉った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

赤月・句穏
九条・文織(f05180)と同伴/アドリブ歓迎

・心情
文、どちらにいかれるのでしょうか。首を傾げて、相棒についてゆきます。
手負いの狐?そう、…でございますね。私の文の視界内で獣が魂を食い荒らすのはいただけません

・攻撃
文織の援護をする形で戦います
【全力魔法】、【高速詠唱】、【2回攻撃】を駆使してユーベルコードで魔法攻撃
敵の動きを封じるように追い込みましょう
隙があれば、致命傷を狙います
「…眷属のない野良狐でしょうか。狐鍋にしましょうか?」
狐の【料理】の方法を考える(もちろん冗談

・防御
敵の無差別攻撃には【第六感】も頼りに敵の狐炎ごと【なぎ払い】
「蒼い炎ですか。私は蒼色が好きです…でも同じくらい嫌い。」


九条・文織
赤月・句穏(f05226)と同行する

・心情
手負いの獣は厄介だからね。
早めに祓ってしまった方が良いんだよ。

そもそも、幾ら魂を食らっても完全にはならないよ。
だって過去は過去だからね。
それが理解できない時点で破綻してるんだ、早く祓ってしまおう。くおん。

・防御
「水行を以て火行を克す。炎よ、静まれ」
【破魔】を乗せた水の膜で、狐火を抑え【見切り】で回避しようとし。

・攻撃
「貧狼から破軍。その身を縛る剣先とならん。七星七縛」
『七星七縛符』を使用し敵の動きを封じ、【気合】をいれた句切の【二回攻撃】で斬り裂こうとする。

「好きだけど嫌い、か。」
句穏の蒼に対する言葉に無意識に自身の瞳に手をやるように顔をなぞり。



「手負いの獣は厄介だからね。早めに祓ってしまった方が良いんだよ。」
 銀の髪が夜闇に映える。白い外套を翻し、男装の麗人が嘯く。九条・文織(界渡りの旅行者・f05180)が傍らの大切な女性を守るように、愛刀の鯉口を切り一歩、前へと出る。
「手負いの狐?そう、…でございますね。私の文の視界内で獣が魂を食い荒らすのはいただけません」
 すぅ、と青い瞳を細め赤月・句穏(界渡りの旅行者・f05226)が敵意を露わにする。大切な人との平穏を乱すのであれば、それは許されざる敵だ。
 『魔霊杖』を構え、冷たく狐神を見据える。
「秩序の飼い犬共が…殺す。その魂魄、我が食と成れ…ッ!」
 二人の物言いに憎悪に染まった狐神が、二人目掛け蒼炎の矢を放った。

「遅いな…。」
 抜刀一閃。踏み込むと同時に二人分の矢を文織が斬り払う。
 無論、この敵が万全であればこうも容易く斬り払うような真似は出来ない。重ねられた猟兵達の攻撃が、確実にオブリビオンを蝕んでいた。
「…眷属のない野良狐でしょうか。狐鍋にしましょうか?」
 句穏がくつくつと嗤う。『魔霊杖』の先端が、刈り取るべき自身の敵を示す。
 それに従い、業と炎が立ち上る。蒼炎を操る禍津神と対極するように、赤い炎。
 津波のように走ったそれと、狐神が再び繰り出した狐火の津波。ぶつかり合った二つの波濤は、僅かな拮抗を見せ――赤が蒼を呑む。
 驚愕に見開いた目の一つを文織の『句穏』が斬り裂く。瞬間、赤い波が狐神を喰らった。

「所詮野良狐ですね。呆気ないです。」
 ふぅ、と。句穏が武器を下げる。それと対称に、刀を握る力を緩めなかった文織が彼女の油断を咎めようとした、その時。
 不意に、蒼い爪撃が横合いから文織を殴り飛ばした。
「文!?」
 床を跳ね転がっていく彼女を見て、句穏がそれを成した手合いを睨む。
 怒りに染まった彼女の視線を、それすら燃やさんという憎悪に燃える視線が喰らった。
「死ね、狗共。」
 振るわれた尾鎚を、咄嗟に『魔霊杖』で受け止める。みしりと、嫌な音が柄から響く。
 宙へと浮いた句穏を喰らおうと、禍津神が顎を開く。
「文にやったこと、許しません…っ。」
 受けきれなかった衝撃が、句穏の体を苛む。オブリビオンに向けようとした両手は、右手しか動かない。妙な方向に歪んだ左腕は、折れたか否か。
 それは今は、どうでもいい。
「氷結の柩で眠れ…っ!」
 息をするように紡がれた術式。一秒にも満たない言葉の内に築かれた式はしかし、強固な鎖のように強く。
 巨大な氷がダウンバーストのように狐神へと叩き付けられた。
 着地と共に、倒れそうになる体を杖で支える。向けた視線の先。割れた額から赤い血を流す敵が、蒼い双腕で句穏を引き裂かんとしていた。
 背筋が泡立つ。いかに彼女とて、このタイミングで可能な術式は無い。無論、この蒼い爪撃を受けて生きていられる自負もない。
 死が、脳裏を過る。
 その予想を、銀閃が断ち切った。
「ギャアァァァァアァアッッ!!」
「貧狼から破軍。その身を縛る剣先とならん。七星七縛…。句穏はやらせない…。」
 絶叫と共にまるで標本でも作るように、禍津神の双腕がコンクリートに縫い留められた。
 符の代わり、咄嗟に投擲されたのは文織の愛刀。『句穏』が右を、『句切』が左を、『句霧』が尾を。【七星七縛符】となり、禍津神を封じる力となる。
 三振りの愛刀が敵を縫い留める。代わり、振るうべき愛刀を手元より失った文織。その彼女の手へと投げ渡されたのは、動く力のない句穏からだった。
 『Grim Reaper』、具象化された死を意味するその大鎌を、大切な人の力を手に、文織が狐神目掛け跳躍する。
「過去と今は違う。それが理解出来ない時点で、破綻しているんだ。…お前は『私達』が、斬り祓う…ッ!」
 死が、禍津神の咎を濯ぎ落した。

「私は蒼色が好きです…でも同じくらい嫌い。」
 狐神の残り火、散りゆく蒼炎を見やり、ぽつりと句穏が呟く。
「好きだけど嫌い、か。」
 つい、と。傷ついた彼女の頬へと文織が手を伸ばす。血に汚れ、煤に塗れたその顔を。
 天上の空を思わせる、その青を。
 文織は、綺麗だと思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月25日
宿敵 『禍罪・擬狐』 を撃破!


挿絵イラスト