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7thKING WAR㉔〜散りゆく華にくちづけを

#デビルキングワールド #7thKING_WAR #召喚魔王『ゼルデギロス』

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#召喚魔王『ゼルデギロス』


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 グリモアベースの一角で、お疲れ様です、と微笑んだフィオリーナ・フォルトナータ(ローズマリー・f11550)は、けれどすぐにその表情を幾許か険しいものにした。
 デビルキングワールドにおける大戦の最中、どの戦場にあってもその姿を認めることができていた――山よりも遥かに巨大な身体を持ち、都市ひとつはあろうかという巨大な槍を携えた、魔王への道が開かれた。
 伝説の1stKINGにしてオブリビオン・フォーミュラ――魔王ガチデビルが特級契約書で呼び寄せた、異世界の魔王。
「その名は、ゼルデギロス。ですが、どうやら少し、事情があるようなのです」
 というのも、かのゼルデギロスなる魔王は、どちらかと言えば猟兵たちに協力的なのだ。
「彼女は……顔の仮面を破壊すれば死ぬのだそうです。ですが、並大抵のことではありません。近づけば山よりも巨大な槍――天槍と呼ばれるそれを振るいながら、皆様に襲いかかってきます」
 そして、同時に。彼女の弱点でもある“仮面”が、こちらの精神と肉体を侵食しようとするのだという。
「彼女は皆様にこう告げるでしょう。――“心を強くお持ち下さい”と」
 彼女自身もまた、仮面に精神と肉体を侵食されている。
 その力は猟兵にまで及ぼうとしており、身体に現れた不気味な仮面によって強制的に真の姿へと変貌させられ、彼女だけでなく、己を蝕む仮面とも戦うことになる。
「彼女が言うように、どうか、心を強くお持ち下さい。精神を汚染しようとするゼルデギロスへの対抗策がなければ、最悪……オブリビオン化の危険があります」
 猟兵と言えども、呑まれてしまえば終わってしまう。
 だが、強き心を持って抗うことができれば、彼女が望むように、仮面――ゼルデギロスを破壊しにゆくことができるだろう。
 彼女の元へ続く道を開きながら、フィオリーナは真っ直ぐに猟兵たちを見つめ、紡ぐ。
「皆様ならば、きっと彼女の望みを叶えて差し上げることができると信じています。……どうか、ご武運を」

●散りゆく華にくちづけを
 ――戦いが始まった時から、その姿は見えていた。
 開かれた道を辿り、猟兵たちが近づいたその時。
 山よりも遥かに大きな彼女は、都市ひとつはあろうかという巨大な槍を手に、高らかにこう告げるだろう。
「顔の仮面を破壊すれば、私は死にます。六番目の猟兵たちよ――いざ、尋常に勝負!」
 そして、同時に。
『おのれ若津姫め……言うことを聞いて戦え!』
 若津姫――そう呼ばれた“彼女”の顔を隠す不気味な仮面が、苛立たしげに声を響かせる。
 どうやら、この仮面こそがゼルデギロスの本体のようだ。
 ――その時、巨大な彼女がわずかに焦燥を滲ませた声で猟兵たちへと告げる。
「ゼルデギロスが、仮面(マスカレイド)を使います……心を強くお持ちください!」


小鳥遊彩羽
 ご覧くださいましてありがとうございます、小鳥遊彩羽です。
 今回は『デビルキングワールド』、『7thKING WAR』でのシナリオをお届け致します。

●プレイングボーナス
『マスカレイドの精神抵抗に抗う方法を考え実行する。』

●真の姿
 戦闘中は体に不気味な仮面が現れ、強制的に真の姿となります。
 上記とは別に真の姿によるプレイングボーナスを得ますが、精神を汚染しようとするゼルデギロスへの対抗策を考えないと、最悪【オブリビオン化】の危険があります。
 真の姿につきましては、イメージが有る場合はだいたいこんな感じと入れて頂けると助かります(イラストをお持ちの場合も軽く触れて頂けると齟齬が少なくなるかなと思います。どちらもない場合はただ真の姿とだけ描写します)

●その他の補足など
 ご一緒される方がいらっしゃる場合は【お相手の名前(ニックネーム可)とID】もしくは【グループ名】をご記載下さい。
 👑達成に必要な人数(+若干名)でのご案内となります。なるべく頑張りますが全採用のお約束は出来ません。ご了承の上でのご参加をお願いします。
 がっつり心情メインでプレイングをかけて頂いても大丈夫です(ただ攻撃自体は行いますので、ユーベルコードの指定は忘れずにお願いします)

 以上となります。どうぞ宜しくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『魔王ゼルデギロス・マスカレイド態』

POW   :    マスカレイド・バインド
【呪力でできたトゲ 】が命中した部位に【魔王ゼルデギロスの悪しき呪い】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD   :    マスカレイド・ポゼッション
対象の【肉体のどこか 】に【不気味な仮面】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[肉体のどこか ]を自在に操作できる。
WIZ   :    ワールドエンド・マスカレイド
戦場内に【無数の『不気味な仮面』 】を放ち、命中した対象全員の行動を自在に操れる。ただし、13秒ごとに自身の寿命を削る。

イラスト:色

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セレナリア・アーチボルト
……仮面……棘……アレは良くないものだと本能的に感じ取れます。
ならば私の為すべきことを成しましょう。その終焉、終わらせます!

真の姿も見た目は変わりませんが力が漲っているのは分かります。
【狂気耐性】をもって精神汚染に抵抗します。
身体が動くうちにUCの【悪を断つ炎の剣】で自身の仮面を切り離します。キズ? 痛み? 侮らないでください、覚悟の前では些細な事です。
なにより簡単に操られては若様に合わせる顔もありませんしね!

舞い踊る黄金の蝶、電撃槍、そして神火斬妖剣!
真の姿であれば僅かながら思い出せます。終焉を終焉させる者の力、是非ともゼルデギロスにも思い出して頂きましょう!



「……仮面……棘……」
 遥かな山のごとく聳える魔王ゼルデギロス。否、若津姫と呼ばれた彼女が纏う“アレ”は良くないものだと、セレナリア・アーチボルト(ストレンジジャーニー・f19515)は感じ取っていた。
 まるで、世界を超えた瞬間に失われてしまったはずの記憶が叫んでいるかのようで。
 打ち砕かねばならないと、何故だかそう、強く思ったのだ。
「ならば、私は私の為すべきことを成しましょう」
 若津姫を真っ直ぐに見上げ、セレナリアは勇ましく声を張り上げる。
「――その終焉、終わらせます!」
「その意気です。さあ、私を超えてゆきなさい、六番目の猟兵たちよ!」
 若津姫が天槍を構えると同時、セレナリアの身体に不気味な白い仮面が生えてきた。
 心身を蝕もうとする悪しき力――それにより、セレナリアだけでなく、この場にいる猟兵たちはみな自らの意思とは関係なく真の姿へ変じることになる。
 とは言え、セレナリアの場合は見た目に変化はなく、着慣れたメイド服もそのままだ。
 しかし、セレナリアは全身にかつてない力が漲るのを感じていた。
(「これならば……!」)
 揺るぎない想いを胸に、セレナリアは精神を蝕む仮面の力に抗う。
「私は、絶対に諦めない!」
 そして、身体が動く内にと――神火宿す剣を迷いなく己に向け、身体と繋がった仮面を無理矢理切り離した。
 仮面と繋がっていた部分から勢いよく血が噴き出して――。
『何だと……!?』
 若津姫の目元を覆う仮面から、驚愕に満ちた声が響く。
 まさか己を傷つけてまで仮面を切り落とすなど、ゼルデギロスにしてみれば想定外のことだったのだろう。
「侮らないでください、覚悟の前では些細なことです」
 真っ赤な血が、服を染めていく。
 凄まじい痛みが、全身を駆け巡っていく。
 だが、傷も、痛みも、今のセレナリアにとっては然程大したことではない。
「なにより簡単に操られては、若様に合わせる顔もありませんしね!」
 胸に在る、顔も名前も思い出せぬただひとりの主を想いながら、セレナリアは毅然と告げた。
 真の姿を取った今ならば、僅かではあるが思い出せることがあった。
 若津姫目掛け解き放つは偽りを照らす黄金の蝶に、不義を討つ雷の槍――そして悪を断つ炎の剣。
 これらは全て、“マスカレイド”に対抗するための“力”だと。
 かつての己は、そう、このように――。
「終焉を終焉させる者の力、是非とも思い出して頂きましょう! ――魔王ゼルデギロスよ!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソウジ・ブレィブス
(真の姿:水着2021な感じ、少しだけ大人っぽい雰囲気に)
仮面に対して思うことはヘーンな感じ、それだけ
汚濁に抵抗はするけど、具体策はあんまり思い浮かばないねぇ

……そうでなくとも、僕は速攻で結果を出すほうが好きなんだよ
昔も、今も、それからこうして困難に立ち向かうときも
双鳴慈突を構えて、UCは早々に放っちゃおうか
僕は飛ばない、ちょっと身軽なだけさ
けれど、武器から放つオーラは迅速に届くでしょう?
手や腕に仮面が無いかどうかは祈るところだね

仮面の破壊は、なんだか慣れたものなんだけど
これ(仮面)、僕はちょっと許せないんだ
操るなら一人だけにしなよ、そんなんだからゼルデギロス
君はいつも日の目を見れないんだ



 常よりも少し大人びた、ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)の真の姿。
 趣味の悪い髪飾りのように側頭部に生えた仮面にも、心が蝕まれてゆく感覚にも、特に深く思うことはなく。
「……ヘーンな感じ」
 ただ、それだけだ。
 仮面の力には抵抗こそするけれど、特に具体的な策が思い浮かぶわけではない。
 かと言って、そう容易く己を明け渡すつもりなど毛頭ない。
 それに、何より。
「……僕は速攻で結果を出すほうが好きなんだよ。昔も、今も、――こうして困難に立ち向かう時も」
 魂が乗っ取られるのが先か、この戦いが決着するのが先か。
 ――なんて、考えるまでもないことだ。
 構えるは双鳴慈突。蒼と紫、二匹の管狐が柄頭から刀身まで疾走る意匠のアックスソード。
 手に馴染みきった感覚を今一度確かめてから、ソウジはそのまま軽やかに踏み込み、裡で高めた闘気を刃に乗せて放った。
「オーラエッジシュート――!」
 鋭利な速度で振り抜かれた斧剣から、大量のオーラの刃が紫の狐火と共に躍り出る。
 宙に描き出される無数の光刃。凄まじい速度で飛来するそれらを若津姫は天槍の穂先で針の穴を突くように器用に叩き落としていくけれど、すべてを弾くことはできず――。
 間隙を縫って至った刃の群れが、彼女の双眸を覆う仮面に突き刺さった。
「――お見事です」
 思わずといった風に零れ落ちた若津姫の声音は、どこか懐かしむようでもあり。
 ソウジも柔く微笑んで、けれど、改めて斧剣を構え直した。
 理由も、理屈も関係なくて。
 そこに“仮面”が在るならば、やるべきことはひとつしかない。
 ――仮面の破壊は、慣れたものだけれど。
「これ、僕はちょっと許せないんだ」
 ソウジが見上げる先には、若津姫が纏う忌まわしき仮面。
 それが辿る終焉など、視ずともわかりきっていた。
「操るなら一人だけにしなよ。そんなんだから、ゼルデギロス――」
 そこに在る本当の悪意を見つめる眼差しは、冷え切った色を宿していて。
「君はいつも、日の目を見れないんだ」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウル・トールフォレスト
仮面からいやな感じが流れ込んでくる…これは、呪い?確かにまずいかも…

けれど、けれども。乗り越えなきゃ
でないと、目の前の彼女に申し訳ない
命を賭けられたのなら、全力で答えてあげないと

これが――わたしの全力
『怪物』の真の姿
大樹の如き巨体になって、彼女と並び立ってみせる

とは言え、呪いが残る身体は少し動かしづらい
だからお願い、エンキドゥ。彼女と、そしてあの仮面を縛り付けて
【蛮戦技巧・地縛錨鎖】
無数の光の鎖となったエンキドゥを放って、わたしと彼女を繋いでもらう
今のわたしのバックアップを受けるエンキドゥは無敵だよ。仮面にだって止められない

動きも、ユーベルコードも止めたなら
後は、彼女の顔に手を伸ばすだけでいい



「いやな感じ……」
 身に取り憑いた仮面から流れ込んでくる気配に、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)は僅かに眉を下げた。
(「……これは、呪い? 確かにまずいかも……」)
 ――けれど。
「……乗り越えなきゃ」
 アウルは首を横に振り、言い聞かせるように呟く。
 そうでなければ、目の前の“彼女”に、申し訳が立たない。
 彼女はその命を、魂を賭けて、猟兵たちに道を示そうとしてくれている。
 ――ならば、こちらも全力で応えなければならないだろう。
「これが――わたしの全力」
 仮面によって解き放たれた、アウルの――“怪物”の、真の姿。
 若葉の双眸は金色に染まり、頭に生えた二本の樹の角は、いくつも枝分かれして花冠を咲かせ――それだけでなく。
 アウルの身体そのものが大樹の如く巨大化して、若津姫と呼ばれた彼女と並び立つ。
「――大きく、なりましたね」
 きっと、言葉通りの意味だろうけれど。
 若津姫がそう感嘆の声を零すものだから、アウルはつい、微笑ってしまった。
「いつか、きっと。あなたよりも大きくなってみせるよ」
 だってまだ、アウルは成長期の真っ最中だから。いつかの未来は、誰にもわからない。
 手を伸ばせば、彼女の仮面に手が届きそうだった。
 とは言え、呪いに蝕まれつつある身体は、思ったように動いてはくれない。
 だから、アウルは手を伸ばす代わりに、傍らにある人形の名を呼んだ。
「お願い、エンキドゥ。彼女と、そしてあの仮面を縛り付けて」
 ――蛮戦技巧・地縛錨鎖(オウガバトル・バインドアンカー)。
 アウルの声に応えたエンキドゥは忽ちの内にその身を無数の光の鎖へと変えて、鳥のように空を翔けていく。
「今のわたしのバックアップを受けるエンキドゥは無敵だよ。仮面にだって止められない」
 そう告げたアウルと若津姫を、エンキドゥの光の鎖が確りと繋ぎ止めた。
 アウルは今度こそ、若津姫の顔を覆う忌まわしい仮面に手を伸ばし――。
 終わらせるための確かな一撃を、刻みつけた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
※真の姿絵参照
※真の姿に精神が近付くほど口調、性格共に冷淡に

澪の【破魔】の力を借りて自分を【浄化】
【狂気耐性】や【呪詛耐性】で汚染に耐え
少しでも効果遅延

澪なら…君を救う術でも考えたかもしれないけど
あいにく僕は優しくないから

翼の【空中戦】で直接攻撃による致命傷だけ回避しながらも【血花葬】発動
精神に少しでも異常を感じたら敢えて自ら傷を受けに行ったり
植物魔法で生成した花弁の斬撃で自身を切り刻む

言葉に、視線に【誘惑】という名の狂気を淡々と乗せて

痛みは正気を取り戻す手助けにもなる
自分をどう扱おうと僕の自由でしょう?
本当の僕に、価値など無いんだから

麻痺毒で動きを封じた隙に接近
花弁の斬撃で仮面に攻撃するよ



 ――仮面によって引き摺り出された、真の姿。
 常より長く伸びた金の髪は、毛先を赤く染め上げて。
 冱えた瞳は琥珀ではなく、銀灰と薔薇、ふたつの色彩を宿す。
「澪なら……君を救う術でも考えたかもしれないけど。……あいにく、僕は優しくないから」
 心と身体を蝕もうとする仮面の声を狂気や呪詛に抗う力と破魔の光で浄化しながら、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は二対四枚の白翼を広げて空高く舞い上がった。
 足に絡みついた白花の枷も、何ら今の澪を縛るものではない。
 山のように聳える“彼女”は、仮面越しに澪の姿を捉えるや否や、天を穿たんばかりの巨大な槍を繰り出してくる。
 狙い澄ました穂先は寸分の狂いもなく的確に、澪の心臓を穿とうとしていた。
 大きく翼を羽ばたかせながら、澪は紙一重でそれを躱す――けれど。
 同時に若津姫の周囲に生み出された仮面の群れが、一斉に澪へと襲い掛かった。
 周囲をぐるりと取り囲む無数の仮面の、嗤う声が聴こえてくるようで。
 先程よりも強い、抗いがたい力が澪の裡に潜り込む。
 だが、心が塗り潰されるよりも早く、澪は纏う花弁で自らを切り刻み――その“痛み”で、心を繋ぎ止めた。
 自らを傷つけるその行為に、息を呑んだのは若津姫だろうか、それとも――。
 透き通るような白い柔肌から噴き出す血が、花弁を重ねたような薄桃色のドレスを赤く染めていく。
 けれど、そんなことはどうでもいいとばかりに、澪は物憂げな眼差しを若津姫と彼女の顔を隠す仮面へ向けて。
「自分をどう扱おうと僕の自由でしょう? ……本当の僕に、価値など無いんだから」
 そう、吐き捨てた。
 ――刹那。
 溢れる澪の鮮血が、美しい花々へとその姿を変えて。
 若津姫の、あるいは仮面の心を揺さぶった感情が、強力な麻痺毒を帯びた蔦と花弁の刃を導き、その巨躯を束の間縫い留める。
 儚くもうつくしき血の花を散らしながら、澪は空を翔けて若津姫の元へ至り――。
 そうして、咲かせたいくつもの花びらで、嗤う仮面を斬り裂いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンティ・シェア
【奇縁】
ははぁ、頼もしい連れが居たものだ
私はね、既に中に二人いるから
自分以外の誰かと共に在ると言うのは、慣れてるけどね
だからこそ、生憎と私の内側はもう満室さ
不法入居者は早々にご退場願おう
真の姿は、私のもの。黒髪の羅刹の姿で、挑むとしよう

さぁ、不穏な仮面は早々に叩き割ろうじゃないか
少々肌の上を失礼するよ
精神に干渉してくる不届き者が居るようだが
知ったことではないね
言っただろう、満室だ
支配など、出来るものならして見せるがいい

共に駆ける彼が傷を負うのは、見て見ぬふりだ
それが君の矜持なら、私は、君を無事に帰すことに、努めよう
まぁ、私も仮面が生えるのを許容する気はないからね
魔力の花を、二人の周りに散らしながら進もうか
棘も、呪いも、仮面も、纏めて全て赤々と萌え咲かれ
彼の背にも、そっと一輪花を添えておこう
君が背を無謀にするとは思わないが、保険だよ

私の手にも、少しずつ花を増やして束にしていこうか
愛しき慈母の元へ向かう道すがら、花を摘んで歩くようにね
ほら、焔の花は、君に成りすました輩を屠るのに、ぴったりだ


クロト・ラトキエ
【奇縁】
心を強く…
えぇ、はい。問題無く
強いですよー?
特に
乗っ取りとか操られるとか、剰え勝手に姿を変えられるとか…
いっとう嫌いなんで。俺
傲慢で傲岸で自信家な悪人の心
…間借りすらさせては遣るものか

仮面が現れたなら
届くなら刃、見えぬ場なら鋼糸で以て、切り裂き
己が傷になろうと構うものかと
削るか抉り取れるなら潰し、傷口は応急で塞ぎ
…帰ったら怒られそうだな、これは
その事にだけ、微かに苦笑い

UC使用、風の魔力を防御力に
纏うそれに加え、進行方向へ掛けた鋼糸を引き、移動速度を底上げ
地形の、又は姫の陰、登る際も衣服の皺や弛みなど利用し、
仮面の視界外を位置取るよう立ち回り
トゲが来ようとナイフ投擲、撃ち落し、当てられぬ様

ああ。とっとと消えて貰おうか
姫さんみたいな気風のイイ女に、ゼルデギロス
手前みたいなお飾りは不要
…同じ骸の海に墜ちる事すら烏滸がましい

仮面を射程に捉えたなら…
抜き放つのはアイスレイピア
最早、防御は不要と
UCの属性変更、冷の魔力を攻撃力に全振って
紐を、目隠しを――斬り、突き、裂く、連撃を叩き込もうか



「心を強く……成る程、強く――ですか。えぇ、はい。問題無く」
「……ははぁ、頼もしい連れが居たものだ」
 吐息に感嘆を絡めてそう零したエンティ・シェア(欠片・f00526)の傍ら。
「強いですよー?」
 にっこりと人の好さそうな笑みを浮かべて応じるクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は、けれど、すぐに紺碧の双眸に冷ややかな色を差し込んだ。
「――特に。乗っ取りとか操られるとか、あまつさえ勝手に姿を変えられるとか……いっとう嫌いなんで。俺」
 綺麗、なんて言葉からは程遠い、根っからの悪人ではあるけれど。
 この身体も心も、己と、そして唯一の灯のためのものだから。
 とは言え、かの魔王は己の力で引き摺り出した骸にさえ叛かれているような――言わば、ただの“小物”だ。
 そんな小物に負けるなどとはクロトも、そしてエンティだって微塵も思っていない。
 山よりも巨大な若津姫。その顔に飾られた仮面が嗤う。
 同時に、二人は仮面の力によって否応なしに真の姿へと変じさせられていた。
「私はね、既に中に二人いるから。自分以外の誰かと共に在ると言うのは、慣れてるけどね」
 白の着流しに黒の羽織、艶めく長い黒髪の羅刹はエンティだ。
「――だからこそ、生憎と私の内側はもう満室さ。不法入居者は早々にご退場願おう」
 若津姫が振るう天槍から、魔王の呪力を帯びた無数の“棘”が降り注ぐ。
 棘も、仮面も、見ているだけで不快さだけが込み上げてくるのは。精神も、肉体も、それらを本能的に拒絶しているからだろう。
 こちらの魂を奪おうと干渉してくる“不届き者”――だが、そんなのは知ったことではないし、一欠片とて渡すつもりはない。
「言っただろう、満室だ。――支配など、出来るものならしてみせるがいい」
 穏やかな口調ながら、冷えた声音でエンティは紡ぐ。
「さぁ、不穏な仮面は早々に叩き割ろうじゃないか」
 一方、黒髪から金髪へと変じたクロトは、己の身体から生えた仮面に躊躇いなく鋼糸を巻き付けていた。
「……間借りすらさせては遣るものか」
 そう、低く吐き捨てながら。
 深い傷になるとわかっていて、されど僅か一秒たりとも許容せず。
 クロトはそのまま鋼糸を手繰る指先に力を加え、仮面を無理矢理切り落とした。
 途端に噴き出した鮮血にも、肉が削がれるような痛みにも慣れている。
 慣れていても、そう味わいたいものではないのは全くもってその通りなのだけれど――得体の知れないものに取り憑かれるくらいなら、このほうがよっぽどましだ。
『貴様、そうまでして……!』
 遥かな高みから驚愕の声が注ごうとも――どうでもいい。
 剥がした仮面をすぐさま完膚なきまでに潰し、傷口は応急処置で強引に塞いで、けれどいのちが流れ出してゆく感覚に小さく息をつく。
「……帰ったら怒られそうだな、これは」
 血が勿体ない、なんて軽口を聞ければ御の字か。
 そのことにだけ微かに苦く笑んでしまうのは、仕方のないことだろう。
「……姫、少々肌の上を失礼するよ」
 繰り出された天槍を最初の足掛かりに、エンティは若津姫の身体を軽やかに駆け上がっていく。
 烈風の魔力を守りの力に変え、共に駆け出したクロトが自らの意思で刻んだ傷には、敢えて見て見ぬふりをして。
(「――それが君の矜持なら、」)
 エンティとしては、クロトを無事に帰す――ただ、それだけのこと。
「……まぁ、私も仮面が生えるのを許容する気はないからね」
「ああ。とっとと消えて貰おうか」
 二人の周囲に淡く輝く魔力の華を散らし、ぽつりと零すエンティにそう答えながら。
 纏う風に加え、進行方向へと引っ掛けた鋼糸を然るべきタイミングで巧みに引いて、移動速度を底上げさせつつ。
 注ぐ棘の雨は守りの風とナイフとで的確に撃ち落とし、クロトは若津姫自身や彼女の衣服の皺などを利用して身を潜め、仮面の視界から逃れつつ頂を目指して進んでいく。
 そんなクロトの背に、エンティはそっと魔力の花を一輪添えた。
 生き残る術に長けた彼が、今更己の背を無謀にするとも思わないけれど――万が一のための、保険くらいにはなるだろう。
 同時に、エンティは手の中に少しずつ華を増やし、束にしていく。
 まるで、そう――愛しき慈母の元へ向かう道すがら、彼女を想って可憐な花を摘んで歩くように。
 ――そうして、遙かなる高みへと至ったなら。
 クロトはアイスレイピアを抜き放ち、最早守りは不要と水冷の魔力を剣に纏わせて。
 間近に至ればより気高さを感じさせる若津姫が纏う仮面へと、その切っ先を向けた。
「六番目の猟兵たちよ、いざ、尋常に!」
 若津姫が高らかに声を上げ、天槍でクロトを貫かんとする。
 迷わず急所を狙い繰り出されたそれを紙一重で躱したクロトは、そのまま巨大な槍を伝って一息に距離を詰めた。
「姫さんみたいな気風のイイ女に、ゼルデギロス――手前みたいなお飾りは不要」  
 ――同じ骸の海に墜ちることすら、烏滸がましい。
 斬って、突いて、裂く――海へ還ることなく散ってゆけとばかりに絶え間なく叩き込まれる氷剣の連撃に合わせ、エンティも焔の花を解き放つ。
「棘も、呪いも、仮面も、纏めて全て――赤々と萌え咲かれ」
 それは、彼女へと捧ぐ艶やかな華焔。
 花束は忽ちの内に花吹雪へと姿を変えて、忌々しき仮面を赤く染め上げる。
『ギャアアアア――!!』
 響く耳障りな悲鳴に、エンティはやんわりと笑みを深めて告げた。
「……ほら、焔の花は、君に成りすました輩を屠るのに、ぴったりだ」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レザリア・アドニス
真の姿というより『元であるべき姿(イラスト)』かもしれない
強制的に死霊ちゃんと離れさせられてそれに戻る

弾き出される死霊ちゃん(蛇竜形態)に守ってもらいつつ
マスカレイドを追い払うように全力で再融合しようとする
悪いけど先客…こいつらがいるの
お前なんかに横取りさせるか…っ!

精神を汚染しようとする仮面の囁きを必死に無視して
魂の繋がりで死霊ちゃんを呼び戻そうとする
そちらも必死に再融合しようとすることを、なんとなくわかる
いや、なんとなくというより
魂の一部だから、全て分かっているよ
死霊ちゃんを掴んで、全力で胸に、心に、魂に押し込む
死霊…オブリビオン…デモン…なんと呼ばれようと
あなたさえいれば
あなたじゃなくちゃ
あなただけが、私のオブリビオンだから
既に黒に染まった魂が、もう二度と他の色に塗り直せない
…塗り直したくも、全然ないよ

死霊ちゃんがマスカレイドを食いちぎるように指示
自分の体が戦場になっても、激痛を耐える
仮面を内部から食い破る時は
私たちの勝ちですね
そしてあのでかいマスカレイドも、打ち砕こう!



 その姿は、レザリア・アドニス(死者の花・f00096)にとっては――本来の在るべき姿とも言えるものだった。
 身体から生えた仮面によって、魂まで染まった唯一の死霊が剥がされて――。
 髪を、翼を染めていた“黒”が抜け落ちたレザリアの姿は、純白の天使そのもの。
「死霊ちゃんっ……!」
 仮面と棘が飛び交う中、変わらぬ翠の双眸が、裡から弾き出された死霊の姿を捉える。
 蛇竜へと姿を変えた死霊は、迫り来る仮面の群れを威嚇するように牙を閃かせ、懸命にレザリアを守ろうとしていた。
 レザリアもまた仮面を追い払うように力を振るいながら、死霊へ手を伸ばす。
「悪いけど先客……こいつらがいるの。お前なんかに、横取りさせるか……っ!」
 無数の仮面が、一斉に嗤ったような気がした。

 ――“これは、お前にとって邪魔なものではないのか?”

 無理矢理切り離されたことによりぽっかりと空いた穴を埋めようとするかのように、抗いがたい誘惑の声が耳元で囁く。
 レザリアを守ろうと仮面の群れへ鋭い牙を剥く死霊は、言わば、レザリアの世界を塗り替えた呪いの楔。
 死霊さえいなければ、レザリアは家族と呼べる存在を失うことも、故郷を追放されることもなかった。
 手放して、在るべき姿へ戻れば楽になれる――耳の奥で反芻する声に、心が軋みそうになる。
「煩い……煩いっ!」
 仮面の囁きに必死に耳を塞ぎながら、レザリアは死霊へと手を伸ばした。
 たとえ切り離されても、絶対に断ち切れない――魂を繋ぐ細い糸を手繰り寄せるように、レザリアは己の裡に死霊を呼び戻そうとする。
 手を伸ばすのは、レザリアだけではなく。
(「……わかっているよ、死霊ちゃん」)
 死霊もまた、レザリアの元へ戻ろうと手を伸ばしてくれているのを、レザリアは感じ取っていた。
 死霊という存在は、レザリアにとってはもう、とうの昔に魂の一部で。
 だから、死霊が何を想っているのかだって、レザリアにはすべてわかっている。
 レザリアが伸ばした手が、死霊の端っこを掴む。
 そこからぐっと死霊を引き寄せたレザリアは、そのまま全力で胸に、心に――そして魂に押し込んだ。
 白かった髪には黒が滲み、翼も緩やかに灰色へ染め上げられてゆく。
 髪を彩っていた白花もはらりと散って、すぐに黄色い福寿草が蕾を綻ばせた。
 ――死霊、オブリビオン。あるいは、デモン。
「なんと呼ばれようと、あなたさえいれば……」
 呟きかけて、レザリアは小さく首を横に振る。
「ううん、あなたじゃなくちゃ。……あなただけが、私のオブリビオンだから」
 無理矢理切り離された心に、欠けた魂に、ぴたりと嵌った死霊の確かな気配に、レザリアはただ安堵する。
「……これが、“私たち”の在るべき姿」
 黒く染まってしまった魂は、もう二度と他の色には塗り直せない。
(「……でも、塗り直したいとも、全然思わないよ」)
 だって、この色は。
 何にも染まることのない、唯一の――“あなた”の色だから。
「――死霊ちゃん、この仮面を食い千切って」
 レザリアは何の躊躇いもなく、自らの身体に生えた仮面を喰らえと死霊に命じる。
 そうして、嗤う仮面へ死霊が牙を突き立てた瞬間、全身に激痛が走った。
 まるで、己の身体そのものが戦場と化したような心地になるけれど――。
 死霊と切り離された先程の痛みに比べれば、大したことではない。
 やがて、ぴしりと仮面に罅が入り――。
 レザリアの裡から、死霊が仮面を食い破る。
 鮮血に塗れながら砕け散っていく仮面には目もくれず、レザリアは、巨大な山のように聳える若津姫の仮面を静かに見上げて告げた。
「……私たちの、勝ちですね。――死霊ちゃん」
 共に見据えるは同じ景色。
「あのでかいマスカレイドも、打ち砕こう!」
 レザリアの声に応えて舞い上がった死霊が、若津姫の顔を覆う忌まわしき仮面へと牙を剥き。
 魔王――ゼルデギロスの本体である巨大なそれを、噛み砕く。
「……ありがとうございます、六番目の猟兵たちよ」
『何故だ、何故……我は破れなければならない……!!』
 若津姫の感謝の声と、仮面の怨嗟を残して。
 山よりも巨大なその身体は、淡い光に包まれて消えていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月11日


挿絵イラスト