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櫻郭猟兵事件簿『揺らめく煙と怪しいクスリ』

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 示されたのは、とある温泉郷。その外れにある知る人ぞ知る温泉宿。
 それぞれの部屋に個別に花見が楽しめる露天風呂があり、美味しい料理や芳しい香煙を楽しめるのだという。
 湯質も良く、知名度に反してなかなか予約も取れない隠れ宿。
「その温泉宿からペアでの招待が来たってんで、猟兵のお前さんがたにおすそ分けってこったあ!」
 子墨・次郎吉(ねずみ小僧・f30682)はそういった。猟兵ならば無理を言えば、部屋を開けてもらう事も出来なくはない。だが、危険があるなどの事情もなしに他の客を押しやってまで享楽を愉しもうという猟兵は殆どいない。
 そんな猟兵に日頃の感謝をということで宿の方から空室を用意してもてなしてくれるのだという。
 一部屋は二人部屋で、今回は二人一組のみの招待なのだという。
「オブリビオンの気配もねえし、一丁息抜き肩抜き、楽しんでってくれよ!」
 と男らしい口調で次郎吉はいうのだった。

◇◇◇

 ふふ、ふふふふ。と男は笑う。
「ついに君達が舞台に上がる時が来たよ」
 男が語りかける先には誰もいない。いるとすれば、それは様々な色のついた薬液の瓶達だ。その一つを手にとって中の液体を揺らしてみせる。
「君達は水の中へ自由になれば一日も持たずに、効果を失う……けれど、一定温度の湯の中であれば10分もすれば生物の皮膚から吸収されてその効果を現す……、ふふ、証拠は残らず、好きな効果を相手に発揮させることが出来る」
 全身から吸収させれば、幻を見せることも、欲情を興奮させることも、語尾に『にゃあ』がついてしまうようにすることも、薬剤次第では可能になるのだ。
「……ふふ、ああ、分かってるよ。すぐに始めよう……狙うはあそこだ。個別温泉があるあの温泉宿……あそこならば、多くの君達の効果を観測出来る」
 準備を始めよう。と男は真剣な眼差しで温泉宿の外観を見つめた。侵入は簡単だ。ならば、あとは仕掛けを施すだけ。
 ニヤリと笑う。その視線の先には、数日後猟兵達が招かれている温泉宿があった。


熱血漢
熱血漢です。ゆったり系。でもいつもの感じです。
ペア参加優先になります。

第一章
 温泉に入ります。
 しばらくすると、温泉に混ぜられた薬の作用が出始めます。
 幻を見せることや、欲情を興奮させることや、語尾に変な語尾がついてしまうようにすることも、できます。

第二章
 薬の解毒薬を行う為、それを行った人物の元へ向かって、施設を襲撃します。
 場所とか犯人は断章で軽く書きます。


第三章
 解毒を試しながら、部屋でゆったりと過ごします。
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第1章 日常 『花見温泉』

POW   :    湯の暖かさと桜を堪能する

SPD   :    湯の効能と桜を堪能する

WIZ   :    飲食物と桜を堪能する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

テンジン・イナリ

フレデリック(f32986)と温泉っすー!お部屋に露天風呂、風情っす、ブルジョワジーっすー!

いくら入ってもいいっすよね。温泉街帰りの昼風呂、夕食前に、夕食後の晩酌風呂もいいっすね!そんで朝風呂っす!(温泉好き)

手を繋ぐのって、ちょっと照れくさいっすけど…嬉しいっすね
宿に向かいがてら街を散策っす!
(尻尾を絡めにいく)

ふんふん、お部屋に入ったら服脱いで温泉っす! お部屋からいけるんっすから問題ないっすよね?

フレデリックもどうっすか?オレの隣、空いてるっすよ?(テンション高く調子乗って誘い)


ふあー、いい気持ちっすー。なんかこう染み渡るっていうんすかね。
なんか、段々…

これ…なんか、変っすよ…ね?


フレデリック・ハーディン
テンジン・イナリ(f34592)と行動。

アドリブ◎

■心情
恋人のテンジンと温泉旅行に来た訳だが、プライベートで一緒に誰かと共にしたのは初めてだ
すごくドキドキする…
愛おしい人と共に過ごすのはこんなにも愛おしいものなのだな
今日はめいいっぱい遊ぶか

■行動
温泉街帰りの昼風呂、夕食前に、夕食後の晩酌風呂…とても楽しみだ。
その前に温泉の宿までテンジンの手を握りたいな
私はそっと彼の手を握り部屋に着く
はは、相変わらずだなお前は
私はテンジンの誘いに乗り温泉に入ることにした
私はテンジンとともに温泉に浸かるがどこかへんだ…なんだか、ぼーっとする



「宿、楽しみっすー!」
「テンジン、はしゃぎすぎて落ちるなよ」
 フレデリック・ハーディン(麗姫に従順する闇の執事(プリンセス)・f32986)は、お湯が流れている川を手すり越しに覗き込むテンジン・イナリ(蒼天霹靂・f34592)に声をかけた。
 どこか子供っぽい言動に拍車がかかっているのは、テンジンが温泉好きだからだろうとフレデリックは咎めない。むしろ好意的に彼の振る舞いを見ていた。とはいえ、まさかとは思うが本当に置いて行かれそうな不安もあるにはある。
「テンジン」
 フレデリックはテンジンの傍に寄ると、そっとその手に触れた。少し驚いたようにテンジンはフレデリックを見てから、照れくさそうに笑ってその手を握り返す。
「手を繋ぐのって、ちょっと照れくさいっすけど……嬉しいっすね」
「……そうだな」
 へへ、と笑うテンジンの言葉に、噛みしめるようにフレデリックは相槌を打った。するりといつかのようにテンジンが尻尾を絡ませてくる。愛おしい人と時間を共有する、その何とも言い難い幸福感が重なる指から伝わってくる。
「宿に向かいがてら、温泉街散策するっす!」
 一人で走り出しそうだったテンジンは、フレドリックと絡めた指と尻尾を離さないように落ち着いた足取りでフレデリックの手を引いては再び歩き始めた。
 射的やお菓子掬いのような出店を回り、テンジンはフレデリックと共に件の温泉宿に到着していた。買い物や遊びに興じている間は手を離していたが、それが終わればもはやそうしていることが自然と言うようにどちらともなく手を繋いでいた二人は、部屋を案内される最中も互いの手を握ったままだった。
 のだが。
「お部屋に露天風呂、風情っす、ブルジョワジーっすー!」
 と部屋に着いた途端、部屋の奥から繋がる温泉を見たテンジンは何の未練もなくフレデリックの手を離していた。
 フレデリックは、複雑な表情で中途半端に浮いたままの手を見つめていた。温泉に負けたのか。と無機物……どころか有形物ですら無い温泉に嫉妬の念を浮かべながら、テンジンの分も靴を揃えて部屋に入る。
 全裸のテンジンの後ろ姿があった。
「ンン……っ」
 すっぽんぽんである。彼の服は丸まって部屋の隅に放られているのを目の端で確認しながら、テンジンから目を離せないままに失笑する。
「はは、相変わらずだな、お前は」
「ん? なんっすか?」
「なんでもない、もう入るのか?」
 と隠す素振りもなく振り返ったテンジンに、目のやり場に困りながらフレデリックは問いかける。
「そうっすよ! 昼風呂、夕食前風呂、夕食後に晩酌風呂、そんで朝風呂っす!」
 いくら入ってもいいっすよねー! とテンション高くテンジンはうきうきと陽気を振りまいている。
「フレデリックもどうっすか? オレの隣、空いてるっすよ?」
 と少し調子に乗っているようなおちゃらけた言葉を放ちながら誘うテンジンに、フレデリックは一つ頷いて服を脱ぎ始めた。

◇◇◇

「ふあー、いい気持ちっすー」
「ああ、心地いいな」
 テンジンはフレデリックの肩と触れ合いながら温泉に浸かっていた。暖かなお湯がじんじんと身体を温めてくれている。
「なんかこう、染み渡るっていうんすかね……なんか……」
 リラックスしているからか、男としての一点が雄々しくなっている。いや、それだけではない。隣のフレデリックに触れたいという欲求が徐々に膨らんでいくのだ。
 まるで、夢心地のような感覚。
 それはフレデリックも同じなのか、とろんとした瞳がテンジンのことを見つめていた。
「……なんだか、ぼーっとするな」
 呟くフレデリックと湯の中で手を繋ぐ。僅かな接触に快感をちりちりと感じる。テンジンはフレデリックの首筋に鼻先を埋めながら体を寄せていた。足の間に手を泳がせてみれば、テンジンと同じように昂ぶった熱が指先に触れる。
「ん……、テンジン……」
「フレ、デリック」
 フレデリックの手がテンジンの頬に触れると、そこに擦りつけるように頬を動かして、心地よさに目を細める。
「……やっぱ、これ……なんか……」
「ああ、どこか妙だ……」
 欲に流されるよりも前に、二人の頭で冷静な状況判断がくだされていた。湯に浸かり始めてから数分。それだけで異常が発生したのは、温泉に何かがあると見て間違いない。
 二人は、そのまま少しだけ触れ合った後に気を切り替えて調査へと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アニエス・ベルラン
ビビ君(f06666)と同行

宿の方から空室を用意してもてなしてくれるとは…いやいや、中々いい話もあったものだね、ビビ君
…え、この話に違和感がある?いやいや、それは考え過ぎというものだよ
君は身体を酷使することが多いんだから、この機会にゆっくりと休むといい
…いや、間違いなく酷使してるんだよ君は

はー、やれやれ、やはり温泉はいいものだにゃあ…
…にゃんだ!?何故偉大なる魔法使いたるこのぼくが猫語を喋らにゃあ…
ビビ君まで…にゃあ、上手い話には裏があった…ということかにゃ…?
ぐ、く、屈辱にゃ、今すぐ犯人を捜しにいくにゃ!


ビビ・クロンプトン
アニエスさん(f28971)と同行

サクラミラージュの温泉…楽しみだね、アニエスさん
でも、中々予約が取れない宿なのに、猟兵が沢山来て泊まっていいのかな?
…オブリビオンの気配がない、っていうのもちょっと気になるけど
…気にしすぎ?…気のせいなら、いいんだけど
…私、そんなに身体酷使してないよ?

ふう、でもやっぱり温泉って落ち着くぴょん…
…あれ?なんか、変、ぴょん
お、落ち着くぴょんアニエスさん
私の勘だけど、多分この温泉が変じゃないかな、ぴょん
…調査するのは賛成だけど、まずは温泉からあがって、服を着てからの方がいいぴょん



「宿の方から空室を用意してくれるとは……いやいや、中々いい話もあったものだね」
 アニエス・ベルラン(自称知識人の幼い老婆・f28971)は案内された部屋で柔らかな座椅子の上に片膝を立てて座りながら、ガラス引き戸の向こうに見える桜景色を眺める。
 前情報通り、部屋に備えられた露天温泉が温かそうな湯気を立ち上らせている。美しい庭園の景色を大きく開かせている。小高い場所にある為に柵も視界を邪魔しない程度のもので、山々と庭園の折り合いは、水々しく画かれた絵画のようでもあった。
「そう、ですね……」
 少しでも口が軽くなれば、滔々と庭園の造りや温泉の効能等について知り得る情報を語りだしてしまいそうなアニエスは、共に訪れているもう一人の少女が思案気に呟いた返事にその弁舌を引っ込ませていた。そして、ビビ・クロンプトン(感情希薄なサイボーグ・f06666)に首を傾げてみせる。
「どうかしたのかい、ビビ君?」
「いえ……、あの」
 と辿々しい口調ながらどこか強い意志を感じさせるビビが、部屋を警戒するように見渡した。豪奢ではないが、間の使い方などが細部まで拘っているのだろう、安らぐ空間。座椅子一つとっても上等なものだ。案内される間のもてなしも自然で、尚且つ、配慮の行き届いたものだったと思う。
 中々予約が取れない宿だというのも納得だ。それ故に。
「猟兵が、沢山来て泊まって、……いいのかな」
 呟く声は、宿の心配というよりも何か腑に落ちないという憂慮が篭もるものだ。
「違和感があると?」
「……オブリビオンの気配も、無いってのも、ちょっと」
 不穏な空気のない穏やかな空間。それがむしろ落ち着かないとでも言うようにビビは周囲へと注意を向けている。
「考え過ぎというものだよ」
 そんな見知らぬ家に運ばれた愛玩動物めいた仕草にアニエスは思わず失笑して、安心させるように言う。
「宿の従業員達は本心からもてなしを行ってくれているのは、君も分かっているだろう?」
「……うん、悪意は……何も感じない、けど……」
「君は身体を酷使することが多いんだから、この機会にゆっくり休むといい」
「私、そんなに身体酷使、してない、よ?」
「……してるんだよ、まず間違いなくね」
 呆れたというように、無表情ながらに本気で分かっていないらしいビビに目を細める。
「仕方がない、では気の抜き方というのを教授してあげよう」
 アニエスは座椅子から立ち上がると、徐にその衣服に手をかけた。ブラウスとワンピースという少女然とした服装を脱ぎ捨てればただ下着一枚の姿だ。細っこい幼いシルエットでどこか成熟した立ち姿。腰に手を当てながら、アニエスはビビを振り返る。
「温泉宿に来たんだ、茹で上がる程度には満喫しようじゃないか」

◇◇◇

 絵画に描かれるような白磁。全ての父親が慈しむ少女の清らかな肌。ビビは円やかに柔らかな曲線を描く肢体をゆっくりと湯気上る水面にくぐらせていく。
 アニエスを真似るようにして、ビビは胴の半ばほどまでを温泉に浸けて湯船のそこに腰をつけた。温かな温度が全身を包む。
「ふう……」
「いい気の抜きようじゃないか」
 心地よさに思わず吐き出した声にアニエスが言う。先程までの警戒も少し解けていたビビはそれにゆっくりと頷いた。
「うん……やっぱり、温泉って落ち着くぴょん」
「ああ、温泉はやはりいいものだにゃあ……」
「ん?」
「ん?」
 一瞬違和感なく発した言葉にアニエスとビビは互いに顔を見合わせていた。相手の言葉を聞くまで違和感に気付けなかった、という事実と、滑るように出てくる言葉。
「にゃ、にゃんだ!? 何故偉大なる魔法使いたるこのぼくが猫語を喋らにゃあと……ッ」
「お、落ち着くぴょん、アニエスさん……」
 意識してもどうしても出てしまう猫語に顔を赤らめるアニエスをビビが宥める。
「私の勘ぴょんけど、……多分、この温泉が変じゃないかぴょん」
「二人同時ににゃ……にゃあ、上手い話には裏があった……ということかにゃ……?」
 アニエスは少し震えていたかと思うと、ザバア! と立ち上がるとそのまま部屋に戻ろうとする。そんな彼女の背中をビビが止める。
「屈辱にゃ! 今すぐ犯人を捜しにいくにゃ!!」
「まつぴょん、アニエスさん」
「何にゃっ?」
「……まず、身体を拭いて、服を着てからの方がいいぴょん」
「……にゃあ」
 珍しい混乱状態のアニエスにビビが、濡れたままの足で部屋に踏み込もうとしている彼女に用意されていたタオルを差し出した。そのままだと、本当にそのまま外に飛び出していってしまいそうですらあったのだ。
 そして、恐らく割りと図星だったのだろうアニエスは大人しくそのタオルを受け取って、赤い顔を隠すように上等な柔らかなそれに埋めこんだ。
 そうしてアニエスにゃんとビビぴょんは事態の調査に赴くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ブリッツ・エレクトロダンス
☆温泉旅行、久々だが悪くねえな。
問題は―――うん、あいつだよなあ(ヤコの方をちらり。逸般人でちょっとやべー奴という印象)
まあ、だいたい暴走しなければ問題ねえだろうし、そもそも温泉旅行に暴走する余地あるか?って事だ。

しかし、いい湯加減だな。
もう少し入って―――ん?微かに妙な香りが…っ、くそっ、気づくのが遅れた。
興奮するタイプの薬剤か何かを仕込まれたか…って、待て!お前!べたべたするな!そこに触るな!聞いてんのかこのチキ…んぁっ!?


ヤコ・ナゴ
☆ええ、ええ。久々に特にお菓子でもない方の温泉旅行でして。
問題は…ええ、これがペアチケットという訳でしてね。1人用ではないという事です。
なのでブリッツさんに無理を言って、ついてきてもらいました!

しかし、無理言ってついてきてもらって正解でしたよお。
こう、普通の温泉ってのもいいですからねえ。

……
………(無自覚に興奮する系の薬剤の作用をモロに受けている)
うん、折角ですからブリッツさんともっと仲良くなっちゃいましょう!気持ちいい方面で!



「温泉旅行か……まあ、久々だが悪くはねえよな」
「ええ、ええ。久々にお菓子とかでもない方の温泉旅行ですね」
「あ、うん、……ソウダネ」
『お菓子の温泉旅行』なる謎ワードに突っ込むこともなく、ブリッツ・エレクトロダンス(★3:DJ.Blitz・f01017)は隣の鳥人にバレないように警戒の視線を向ける。
 ヤコ・ナゴ(チキンレッグ・f29509)という男はブリッツにとって顔見知りの猟兵でありながら、要注意人物でもあった。ブリッツもそこそこ酷い目に遭っているが、それでも、噂に聞く彼と比べればまだ軽い方だと思える。出自から経歴までスペクタクルに事欠かないくせに、自分では一般人だと思っているらしい。人狼のストーカー紛いに狙われているだの、ヤバイトラップだらけのダンジョンに潜らされただの。それで「温泉ですよー」と花を振りまくようにはしゃげているメンタルとフィジカルは。
(……逸般人なんだよなあ)
 完全にブリッツの中でヤコは『ヤベー奴』認定されているのだった。
「いやあ、ブリッツさんに無理言ってまでついてきてもらって正解でしたよお」
 とヤコが満面の笑みで振り返る。
 今回の旅行、ペアと聞いてヤコは偶々通りがかった知り合いの猟兵であるブリッツに頼み込んだのだ。キマイラフューチャーで似た労働環境に置かされた共通点もあり、ヤコ的には信頼の出来る相手だったりする。
「こう、普通の温泉ってのもいいですからねえ」
 そんな風に無邪気に喜ぶ顔を見せられると、ブリッツも気が緩むというものだ。
「そうだな、ゆっくりしようぜ」
 ブリッツはヤコに朗らかに返した。
 そう、暴走をしなければヤコも自称の通りに一般人と変わらない。ちょっと尾が蛇になっている位のものだ。
(そもそも温泉旅行に暴走するなんて余地なんてあるか? って事だよな)
 そんなフラグめいた事を思いながら、ブリッツはヤコと共に温泉街を行くのだった。

◇◇◇

「暴走の余地あんのかよ、クッソ!」
 ブリッツは慌ただしい水音を立て、もがくように抵抗しながら吐き捨てた。
「大丈夫ですよ! もっと仲良くなりたいだけですから!」
「目指すナカヨシの種類が違えよなァ!?」
 単刀直入に、今ブリッツはヤコに襲われていた。
 部屋に入るまでは、極々心地よい休暇だった。いや、入ってからも暫くはそうだった。事件は小休憩もしたし、ひとっ風呂浴びようかという段になってから起きた。
「あ、じゃあ私も入りますよー」とヤコと共に露天風呂へと出たブリッツは、微かに鼻をくすぐる香りに湯を見つめた。不快な香りでもないので温泉特有の香りだろうかとその時は深く考えなかった事を今は後悔している。
 とはいえ、過去は戻らない。手で温度を見て、いい湯加減だ。などと能天気に湯に浸かり。
(……? なんか、あれ、だな……)
 ブリッツは自分の身体の変化に気がついた。血流が良くなったからか、湯の中でブリッツのブリッツがエレクトロダンスしていたのだ。そして、それに熱い眼差しを向ける鳥が一羽。他でもないヤコ・ナゴである。
「今日はありがとうございます、ブリッツさん」
「ん、ああ、構わねえよ。俺も……」
 寛いでるし、と返そうとしてヤコの視線が妙に俺の顔から下に向かっていることに気づいて口を閉ざした。
「折角ですからブリッツさんともっと仲良くなりたいと思っててですね」
 と離れていたヤコが何故かブリッツの隣に移動する、と見せかけてブリッツの身体と向かい合うようにしゃがみ、ブリッツの身体にその手を這わせ――。
「って待て、お前! ベタベタするな……、くそ、この匂い、この感じ。興奮するタイプのなんか仕込まれ――そこに触るなっ、おい!」
 敏感な場所を刺激しようとするヤコの手を掴み取り、そして冒頭に戻る。

 ヤコは無自覚であった。
 なにやら疲れ立ちでもしてるらしいブリッツのソッチの疲れも取ってあげよう的な、完全に薬剤にやられた思考でブリッツに襲いかかっていたのだ。げに恐ろしき、善意である。
 ついでに自分の都合もあったが。
「さわ、脚ィッ! 聞いてんのかこのチキ……んぁッ!?」
 ヤコは手が使えないので仕方なく膝の辺りでそれを擦ってあげた。健康的な反応だ。硬さ的に恐らくほぼ最大にまで至っている。もみ合いをしている接触刺激も相まってか侵食されていく理性によって、ヤコが優勢を勝ち取っていく。と、その時。ブリッツの抵抗が僅かに乱れた。 
「隙ありですよ!」
 水中を見れば、ヤコの尾の蛇が太ももに絡みついて脚を開けさせていた。通常の尾しか持たないブリッツにはできない芸当だ。
 その足の間にヤコはすかさず身体を詰め、鳥人特有の裂け目へとブリッツを招き入れる。実は少し前から湯の中で準備していたソコは難なくブリッツを受け入れ。
「しま、ァ――ッ!」
 ブリッツとヤコは深く友情でつながりあったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『非人道的影朧研究施設の摘発』

POW   :    真正面から突入。片端から構成員を拘束し影朧達の居場所を聞き出す。

SPD   :    密やかに潜入し施設情報を入手。施設の運営目的を探る。

WIZ   :    突入時、一人も逃がさぬような工作を施す。解放した影朧達のケアも行う。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「温泉に混ぜ物が……!? いえ、そんなはずは……」
 従業員に詰め寄れば、即座に支配人と女将が猟兵の前に姿を見せていた。その表情はただ焦りと困惑。警備もちゃんとしていて、湯に薬剤を混入できる者がいるはずはないと。
 従業員も、流石にそんな大それた実験を行える暇も知識もなく――と言う支配人の横で女将がはっと目を見開いた。
「まさか……」
 と女将が語ったのは、この旅館で提供している香煙の業者。彼の香煙は香りが部屋に沈着することもなく、重宝していた。山の中の大きな工房で様々な香煙を作成しているそうで、部屋との相性を考えるために客室へもよく出入りをするのだという。
 彼ならば堂々と客室に入り込み、温泉に仕掛けを施すこともできる。
「でも、一体何のために……いえ、ですがそんなことが出来るのはあの工房の方々です」
 女将の言葉に支配人も頷いた。
 どうやら、工房の人間とお話をする必要がありそうだと、まだ薬の効果を万全に残した猟兵達は、その工房へと向かうのだった。

◇◇◇
 第二章、香煙工房へ乗り込みます。
 何も知らない工房員と、知ってる工房員がいるので、『お話』をして解薬方法を聞き出したりしてください。
ブリッツ・エレクトロダンス
☆ちいっくしょう!!なんでこうなったぁーーーー!!
(さらに"仲良く"なろうとするヤコのせいでロクに着替えられないまま、かろうじて拳銃を握ったまま工房を襲撃)
どこのどいつだこんな真似しやがった奴は!!お前か!?それともお前か!?
…ってチキン野郎いい加減追ってくるのをやめろっ!!
(反応見て知ってるであろう奴を銃で脅はk…ohanashiしつつヤコに抵抗中)


ヤコ・ナゴ
☆ブリッツさぁーん…どうして…どうして逃げるんですかぁー…
(逃げるブリッツを追いかけるヤコ。
 歩く実験サンプルとも)
もっと仲良くなりましょうよぉー…

…おや?このお薬、もしかしてもっと仲良くなるのに使えたり…しますかねえ?そこんとこどうなんでしょう?
(だいぶトンでる癖に頭は回る)



「ちいっくしょう!!なんでこうなったぁーーーー!!」
 ブリッツ・エレクトロダンス(★3:DJ.Blitz・f01017)は腰タオル一枚で工房に突入……いや、逃げ込んでいた。
「ブリッツさぁーん……」
 悪態を吐きながら、ブリッツは後ろを振り返る。そこには目がちょっとやばい感じになっているヤコ・ナゴ(チキンレッグ・f29509)の姿があった。湿った毛皮を晒してブリッツの名を呼ぶその様子はどこかウォーキングデッドじみている。
 温泉でヤコに襲われ押しのけて原因の追求へと飛び出したブリッツだが、ヤコに追われてマトモに服も着れていない状態だ。
「どうして……どうして逃げるんですかぁー……」
「いや、そりゃ、どこだろうとヤろうとしてくるからだろうが!」
 ヤコは服を手に取っている間も『仲良く』なろうとしてくるのだ。薬の影響が残っているブリッツは、その影響を正直隠せていない。手の届く範囲にいればなんなくヤコはそれを受け入れてしまえるし、受け入れようとする。なまじっか、具合が良いのもたちが悪い。
 達しはしなかったものの、欲を昂ぶらされた今の状況でヤコと仲良くしたいというその誘惑を振り払うのにも中々気力がいることだった。
「お前か!?」
「ひ……な、何が……」
「違うか、次!」
 仲良しゾンビに追われながら、ブリッツは拳銃を手に工房員とお話をしていた。首根っこを掴んで書棚の影に隠れるようにして、ヤコがブリッツを見失っている間に詰め寄る。
 だが、この工房員は何も知らないらしい。拳銃を上げると、工房員はブリッツの怒張する銃口に目を移していた。処理しろと言われることを恐れたのかもしれない。そんな事をするつもりはないが、だからといって気遣っている暇があるわけでもない。
 そろそろ、ヤコが妙に鋭い勘やら洞察力でこっちを発見してくる頃のはず。
「……ん」
 そう思ったブリッツは、しかし、例の誘い慣れていない(身体は慣れている辺り闇が見える)甘い声を発する鶏野郎の襲撃が無いことに首を傾げた。
 そして、少し離れたところから、ヤコの声。
「素晴らしい……、それで……?」
「今、数値をちらっと見ただけなんですが、このお薬ならば、私の現状とシナジーがあるのではないですかね。そこんとこどうなんでしょう?」
「……ふむ、確かにその通りだ。湯に溶かしてあるものがこれだが。試してみるかね」
「ふふふ。どうやらブリッツさんと仲良くなるためには魅力パラメータが不足しているようですからね、お受けしましょう」
 そんな会話が聞こえてきた。
 ブリッツは頭を抱えてしまっていた。
 犯人となんか意気投合してやがる上に、自ら実験サンプルとなろうとしている。
「ソイツだ」と叫びたい気持ちもあったが、だいぶトンでる癖に頭が回る様子のヤコに近づきたくないというのも正直な所であった。
 思考のネジが吹き飛んでる状態で回転が早いのだ。不足しているパラメータは魅力ではないし、どうせ馬鹿になるなら馬鹿になって欲しい。
「あ、やべ……じゃあ、そういう事で!」
 工房員が視界にブリッツを捉えたらしく、薬剤入りの試験管をヤコに押し付けた男は踵を返して駆け出した。それを大人しく見逃す手はない。
「逃げんじゃねえ!!」
 ブリッツは全身をバネに飛び出した。揺れる硬い肉が邪魔くさいがそれでも常人以上の駿脚を見せるブリッツに工房員も中々の速度を見せる。
「止まりやがれ、てめえーッ!!!」
「ブリッツさんも止まってくださいよおー!」
「このチキン野郎、いい加減追ってくるのをやめろっ!!」
「あんなにいい声出してくれたじゃないですかぁ……!」
「ああーッ!! うるせえ、ちょっとその口閉じてろ!」
 他の工房員が何事かと注目する中暴露するヤコに構っていればそれだけ被害を被ると考えたブリッツはさっさと逃げるアイツをとっ捕まえる事に専念するのだった。

◇◇◇

「……ブリッツさぁん……ようやく、止まってくれましたねぇ……」
 ブリッツの鍛えられた胸板を撫でるヤコを背中に張り付け、ブリッツは工房員に銃口を突きつけていた。
「ここまで顕著に効果が発露するとは……体質かそれとも……」
「考察は十分だ、この薬の抜き方を教えやがれ」
「なぁんだ、ブリッツさん、そんな事知りたかったんですかぁー?」
「は?」
 前からではなく後ろから聞こえた声にブリッツは、思わず動揺を口にだしていた。
 ブリッツに抱きつき、尻尾を足の間に通して濡れた感触を滲ませるヤコが割り込んできた事にブリッツは既に嫌な予感を感じていた。
「さっき、見つけておきましたぁ……どうです? 褒めてくれます?」
 蕩けた表情のヤコ。その顔は明らかに「良いことをしたから褒めてもらえる」事と確信しているようで。だったら早く言え、とも言いにくいお花畑具合だ。
「ねえ?」
「ああ、それは君達に投与した愛しの彼らを消し去る香だ……姿も形も失せて消える、ああ、なんて素晴らしいだろう……」
「だから、仲良くしましょうよぉ……」
 薬を陶酔する表情で解説する工房員、ガマン出来ないとタオルの下を握ってくるヤコ。そんな二人に挟まれながら。
「……なんで来ちまったんだろうなあ、俺」
 悲しげにポツリと呟いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テンジン・イナリ

ゆっくりまったりデートだったっすのに、落ち着けなくするなんて酷いっすー!

怪しい匂いをしてる工房員を誘き出して『お話』っすー!
抵抗したり逃げたりするなら紫閃霆撃で制圧っす!稲妻になって、フレデリックのナイフを道標に攻撃っす、でもちゃんと外したり床を攻撃したりで殺さないようにするっすよ!

尋問はフレデリックにお願いするっす。
んーカッコいいっす…ちょっと怖いっすけど…

あと、オレを庇おうとしてくれたフレデリックには、ちゃんと自分も大事にするようお説教が必要っすね!
オレちょっとムスッとしてるっす!ふん!
嬉しいっすけど!ありがとうっすけど!ダメっすー!


フレデリック・ハーディン
テンジン・イナリ(f34592)と行動

アドリブ◎

■心情
これ以上温泉に浸かってしまっては仕組んだ相手の思うつぼですからね
女将や支配人の情報をもとに香煙工房とやらの襲撃に向かいましょう
テンジンの雷光のような激しい攻撃のサポートとして今回は立ち回りましょう

■行動
まず私はUC【蒼輝のナイブスストーム】でテンジンの支援ともにナイフによる自動攻撃で香煙工房を襲撃します
肝心の攻撃はテンジンに任せます
彼への信頼は私は大きいですからね
もし彼が危険な目にあったら身を呈して守りましょう
そして大元の人物を追い詰めてなぜあんなことをしたのか問い詰めましょう



「ゆっくりまったりデートだったっすのに、落ち着けなくするなんて酷いっすー!」
 工房へと向かうフレデリック・ハーディン(麗姫に従順する闇の執事(プリンセス)・f32986)はテンジン・イナリ(蒼天霹靂・f34592)のそんな言葉に緩む口角を引き締めながら、その後を追いかける。
「これ以上温泉に浸かってしまっては、仕組んだ相手の思うつぼですから」
「そうっすけどお! フレデリックは違うんっすか?」
 と少し拗ねたように言うテンジンにフレデリックは「そんなわけないだろう」と思いながらも素直にも言えず「拗ねないでくれ」と笑いを零した。
 湯の影響が残っている今、テンジンに強く誘われてしまえば、事件の事など忘れて事に耽ってしまいそうな己をどうにか律しながらフレデリックは眉尻を下げた。
 とはいえテンジンとしても本気で拗ねているわけではない。ちょっとした甘えだ。あとで存分に構ってもらえるのなら、その実こうしてフレデリックと事件を解決しようと共同作業に勤しむ事は悪くないとも思っていた。
「さて、例の工房だ」
 とフレデリックは、香煙の工房を発見してテンジンに目配せをする。
 さて、どうする? と。
「ふふん、フレデリックが女将さんに香煙の匂いを聞いてくれたお陰で、お湯の薬剤との匂いの違いはバッチリっすよ!」
「ああ、頼もしいよテンジン……なら、私はサポートに回ろうか」
「頼りにしてるっす!」
 そうして、二人は工房の中へと潜入していく。
 工房、といってもどちらかと言えば工場のような広さだ。匂い、というものを商品にしている以上、精製にも材料にも他の匂いが移ることを危惧してか幾つかの工房に分かれている。そんな中をテンジンは一人の研究員に目を付けていた。
 行ってくるっす、と残して

「あ、すみませんっす……ちょっと道に迷っちゃったんすけど……」
「……、道に? いや、しかし……お前まさか」
 とテンジンが声を掛けた瞬間に眉を顰めた研究員は、懐に手をしまい込んだかと思えば、香水のような何かの液体が入った瓶を開けて、テンジンへとふりかけようとする!
 だが、その時、密かに近づいていたフレデリックがテンジンの前に踊り出していた。舞う飛沫。こちらの動きを封じるのか、もしくは即効性の毒か。どう考えても楽観視できるものではない液体に身を晒したフレデリックを、テンジンは引きずり倒すようにして諸共に地面に転がった。
「……っ、大丈夫っすか!」
「こっちのセリフだ、……、じゃない、逃がすなテンジン!」
「ぁ、そうだったっす!」
 ガバ、とフレデリックの胸に埋めていた顔を引き剥がしたテンジンは、フレデリックの言葉に体を起こした。視界には既に研究員の姿はないが、しかしフレデリックは慌てずに次の手を打っていた。
 テンジンの身体の周りにサファイアのナイフが浮かび上がる。そしてそれが、敵対者へと向けて自動攻撃を行う。UCの範囲にまだ研究員が隠れているという証拠だ。
「――ッ!」
 フレデリックが何を言うまでもなく、テンジンは己の身を稲妻に変えてそのナイフの軌跡を追いかける。正しく光に迫るような速度で駆け抜けたテンジンは、近くの木の陰へと飛び込んだ。
 そこには誰もいない――、いや居ないように見えていた。だが。テンジンはフレデリックを信じている。稲妻から転身する瞬間、鼻を鳴らす。あの匂い、湯の中似合ったものと同じ――。
「そこっすッ!!」
 雷撃、四閃。刻まれた4つの攻撃によって地面を刻んだテンジンの目の前に、透明化が解除されたさっきの研究員が、腰を抜かして崩れ落ちていたのだった。

◇◇◇

「さて……聞きたいことは色々ありますが、まずはなぜあんなことを?」
「……っ、は、はい……」
 テンジンが質問しても黙っていた研究員だったが、フレデリックがテンジンに聞こえないように小さく耳元で少しの間言葉を聞かせている内に、みるみるとその顔色を青ざめさせた研究員は、そんな怯えきった返事をフレデリックに向けていた。
 なお後ろで見ているだけだったテンジンは天然な様子で「カッコいいっすー」と呟いていた。
「こ、この研究で我々の素晴らしい技術の結晶……あの子達を世に知らしめるのだ……そ、そうすれば……」
「そうすれば? なんでしょうか」
「……そうすれば、……? なんだ、……? そうすれば、どう、なるんだ……?」
 フレデリックは異常な素振りを見せた男を観察しながら、即座に思考を切り替える。踏み入りすぎて本来の目的を忘れてはいけない。
「解毒方法はありますよね?」
「ああ、解毒香がある。それを身体に染み込ませれば薬効は消え去るさ。跡形もなくな」
「そうですか」
 急にはきはきと話始めるようになった男に、何者かの精神的な干渉の痕跡を嗅ぎ取りながらも、そこには触れずに置いて、解毒の香煙がすでに旅館にあることまでを聞き取ってから、男を気絶させる。あとは帝都桜學府に任せればいいだろう。
「終わったっすか?」
「ああ、あとは二人でゆっくりと……テンジン?」
 振り返ったフレデリックは、目の前で冷えた視線を向けてくるテンジンに思わず言葉を止めた。さっきの振りのような拗ね方ではない事ははっきりと分かる。
「なら、言うっすけど。……ちゃんと自分も大事にして欲しいっす」
 それだけ言うとふん、と鼻を鳴らしてテンジンはフレデリックに背を向けて一人旅館へと戻ろうとする。そんな彼を追ってフレデリックも旅館へと走る。
 そして、テンジンの不機嫌は暫く続いていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『香煙を薫らせて』

POW   :    元気の出る香りを楽しむ

SPD   :    リラックスする香りを楽しむ

WIZ   :    ロマンチックな香りを楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 旅館に戻った猟兵達は女将達に顛末を説明するとすぐに香煙を準備してくれた。
 妙な事件は終幕を迎え、あとはただ穏やかに過ごして薬が抜けるのを待つだけだ。

◇◇◇

第三章
良い香に癒されながら薬効が少しずつ収まっていく場面です。
完全に抜けきって場面終了。あとは旅行を楽しむことになりますがそこは描写しません。お好きにどうぞ
テンジン・イナリ

ふー、無事解決っすー!

えっと、香煙で解毒っすよねー、焚きながらフレデリックと過ごすっす。
プンプン継続っす、ちゃんとフレデリックが反省するまで撫でるのもハグもいやっす

ちゃんと分かってくれたっすか…?オレもフレデリックの気持ちは分かるっすから、あんまり怒り続けるのもできないっすね

オレも大好きっすよ、フレデリック…

ハグしてフレデリックと布団に転がる。フレデリックに甘えながら、布団の中でゆっくり朝まで過ごすっす


フレデリック・ハーディン
テンジン・イナリ(f34592)と行動。

アドリブ〇

■心情のみ

テンジンを怒らせてしまったな…とりあえず私たちは解毒を試してみてあとはテンジンとゆっくり話すか
テンジン、あの時はすまなかったな。私も少し無理をした…だから許してくれ。
私は彼に寄り添い肩を抱き寄せるなり手を繋いだりと機嫌を取ろうとした(ここのスキンシップは基本おまかせします)
テンジン、こっちを向いてくれ…お前の顔をもっとみたい…愛してるよ
私はゆっくりテンジンを押し倒してたっぷり愛でてあげようか



 説明と怪しい研究をしていた犯人の引き渡しを行っている間にすでに夜になってしまっていた。
 夕食を終えた後に、フレデリック・ハーディン(麗姫に従順する闇の執事(プリンセス)・f32986)はテンジンと共に自室に帰ってきた。食事の間に旅館の従業員が布団を敷いてくれていたらしく、畳の上に布団が並べられている。
「んっと、香煙を入れて、火をつけて……それでこの蓋を閉めるんっすねー」
 テンジン・イナリ(蒼天霹靂・f34592)が布団の枕元から少し離れた所で、説明を受けたどおりに香煙を焚き始める。
「ん、煙が出てきたっす……なんだか、安らぐ匂いっすねえ」
 香炉の溝に液体のように流れ落ちる煙。それと同時におそらくは透明な香りの成分が室内に微かに漂い始めていく。
 テンジンはそんな香りに表情をほころばせる。
「……なあ、テンジン」
 そんないつも通りに見えるテンジン。だがフレデリックが近づけば「疲れたっすねー」と布団の上を這いフレデリックから離れていく。テンジンの尻尾がフレデリックの伸ばした手を躱し、その手は宙を彷徨っていた。
 呼びかけた言葉には「疲れたっすねー」の一言で会話をバッサリと切るように、最低限の返ししか返ってこない。話したくないというわけでもないけれども、それでも、フレデリックの手に撫でられる事を受容するような気分でもないということなのだろう。先程から、目も合わせてもらえない。
 理由はわかっている。というか先程あの工房でも聞いた通りなのだろうとフレデリックは、執事としてお転婆なお嬢様に従う上で得た洞察力でテンジンのどこか子供のような拗ね方を見抜いていた。
 そんなあどけない彼が、そしてその怒りが自分を想ってのものだということがいじらしく、今にも愛でたくなる感情を抑えてフレデリックは視界の端には見えているだろうと予想して、布団の上に座したまま頭を下げた。
「テンジン、あの時はすまなかった」
「……」
「テンジン……」
 ぷいと、こちらを見てくれないテンジンにフレデリックはゆっくりとテンジンに近づいてみる。
 逃げない。触れられる距離に近づいて、もう一度頭を下げた。そしてテンジンの手を取る。振り払われはしなかった。
「私も少し無理をした……だから許してくれ」
「……分かってくれたっすか? これからは無理しないって言ってくれるっすか?」
 テンジンはフレデリックの目を見つめながら、口を開いた。それに対してフレデリックは一瞬言葉に惑う。もちろんだ、と言っておけば良いとフレデリックの思考は言うのだが、それを行動に出来なかった。
 理由は単純だ。もし、本当にテンジンが危ない場面に出くわしたなら、フレデリックは迷わず身を挺してしまうだろうから。
 フレデリックが一瞬迷いながらも口を開こうとした、その時。
「オレもフレデリックの気持ちは分かるっすから、あんまり怒り続けるのもできないっすね」
「え?」
 苦く笑うようにテンジンはそう笑っていた。フレデリックが掴んだ手を握り返される。
「ごめんなさいっす」
「……いいや、いいんだ」
 フレデリックは、柔らかくなったテンジンの言葉に安堵しながら、彼の頬に手を添えた。
「テンジン、こっちを向いてくれ……お前の顔をもっとみたい」
 心地よさそうにフレデリックの手に頬を擦り付けるテンジンに、仄熱い感傷を口にする。
「愛してるよ」
 テンジンはその言葉にはにかむようにして。
「オレも、大好きっす」
 そう返した。
 テンジンとフレデリックは布団の中に身を沈めていった。
「もー、フレデリック。当たってるっすよ」
「仕方ないだろう。まだ薬湯の効果が残っているんだ」
「ふーん」
 テンジンは、存在を主張するそれを浴衣の上から軽く撫でながら、肩ゆするように笑う。
「薬のせいだけっすか?」
「……」
 フレデリックの腕枕で上目遣いに見上げてくるテンジン。その挑発的な視線に思わず我を忘れて欲情をぶつけてしまいそうになってどうにか押さえつける。
「テンジン……」
 フレデリックはそのテンジンの胴体を抱くように背中から尻尾の付け根までを撫で下ろす。その下の柔らかな膨らみを意識するように。だが、欲のままに流されればテンジンを傷つけるかもしれない、と耐える。
 だが、その忍耐もテンジンの攻勢にやがてはもろく崩れ去ってしまう事を、まだフレデリックは知らない。
 いや、もしかしたら既に気づいていたのかもしれない。
 結局、二人のためにしかれた布団は、片方は綺麗なまま回収されることになるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年06月04日


挿絵イラスト