7thKING WAR⑧〜秘書のコメント「うるせぇ」
●突然ですが依頼です
「オーッホッホッホッホ!!」
「オーッホッホッホッホ!!」
グリモアベースに女性2人の馬鹿笑い、もとい高笑いが響き渡る。
「御機嫌よう猟兵の皆様! 今回のブリーフィングを務めますのは次期デビルキング候補のアイスエイジクイーンと!」
「株式会社UAI代表取締役社長の南六条・ヴィクトリア三世(株式会社UAI最高経営責任者(現職)・f30664)ですわッッ!!」
グリモアベースに集まった猟兵たちは死んだ目でアイスエイジクイーンとヴィクトリアの高笑いを聞かされていた。なんか濃いやつが2名いる。いや1名──アイスエイジクイーンは通信越しなのだが。どうもこいつら似た者同士で出会って3秒で意気投合したらしい。
「なにしろわたくし、魔界銀行の警備員として下積みを重ねてきましたもの」
「奇遇ですわね、わたくしも昔は株式会社UAIの製品開発部勤務だったんですの」
こいつらに下積み時代があったのか、と猟兵たちは信じ難い目で見ている。当然だ。一般行員や一般社員に混じってこんな濃い連中が働いている姿を想像するのは極めて困難である。
「さて、今回ご紹介するのはこちらですわ!」
画面の中のアイスエイジクイーンが用意したのは氷漬けの金庫である。あまりの冷気に周囲の空気中の水分が凝結し、微細な水の粒子となって煙のように白く漂っていることからも、その冷たさがうかがえる。
「ふむ、これが噂の氷河期大金庫ですわね。ご説明をお願いしてもよろしいかしら、アイスエイジさん?」
「よろしくてよヴィクトリアさん。わたくしが考案したこの氷河期大金庫は、私自らの氷の悪魔としての権能を余すところなく利用した金庫ですわ」
アイスエイジクイーンが開発したこの金庫は、空気中の水分を圧縮して凝固させることで通常の氷塊以上の硬度を実現。加えて、その凄まじい冷気により空気中の水分を吸着しては凝固させていくことから、なんと氷塊が壊れたり溶けたりしても再生してしまうのだ。さらに、生き物が直接触った場合は体内の水分が凝結することで氷漬けになってしまうというおまけ付きである。
「氷の悪魔の権能として、水の凝固点や凝結点を引き上げておりますわ。熱して溶かすという方法も現実的ではありませんわね」
「流石ですわ。物理科学面での考証をきっちり行っているんですのね」
「氷を扱う以上、水や氷に関する物理科学的特性について死物狂いで学びましたもの」
ともあれ、この強力無比な金庫はデビルキングワールドの強力な悪魔たちでも突破不可能という結論が出されていた。しかし、これによりひとつの問題が生じたのである。
「実は……この金庫、最大の欠点があるのですわ」
「えぇ、ここまで強固なロックをかけたことで、開けることは困難になってしまった。即ち、追加で物を入れたり凍結前に入れたDを取り出すことが出来なくなってしまったわけですわね」
「Exactly! その通りですわ! わたくしとしたことが、セキュリティの三大要素のひとつ、『可用性』を失念してしまうとは不覚の至り……ッ!」
歯噛みして悔しがるアイスエイジクイーン。
「ちなみにセキュリティの三大要素とは、部外者には絶対にアクセスさせない『機密性』、セキュリティで守られている内部のものが損なわれていない『完全性』、そして必要なときに適切な権限を持つものがセキュリティで守られているものにアクセスできる『可用性』の3要素で構成されておりますわ」
ヴィクトリアが解説を入れた。「本来は情報セキュリティの領域で使用される用語ですわね」、という補足情報も忘れずに付け加える。
「さて。可用性が損なわれているということは、現在これはアイスエイジさんでも開けられない、そうですわね?」
「仰るとおりですわヴィクトリアさん。これ、わたくしでも開けることができませんの」
エヘ、と舌を出して笑うアイスエイジクイーン。エヘじゃねぇ、というブーイングが飛ぶがアイスエイジクイーンは一向に意に介さない。
「ですがしかぁし! わたくしに挑む猟兵の皆様であればこの金庫を開けることができるはず! そう! この金庫を突破しなければわたくしの氷の悪魔としての権能を突破することは難しいですわ!」
「それと……実は氷の自己再生能力を突破したとしても最後の関門が待ち構えておりますわ」
ここでヴィクトリアが厳かに告げる。
「えぇ、いいものを教えて下さいましたわ。流石はヴィクトリアさん」
「そう! 最後に待ち構えるのはこちらでございますわ! 株式会社UAI社訓第三条! 困ったときは──」
「「斜め45度!!」」
なんということだろうか。氷の自己再生能力を突破して開けようとすれば、アイスエイジクイーン本人が猛然とダッシュしてきてヴィクトリアより伝授された斜め45度チョップを金庫に食らわせ、氷を再び元に戻してしまうという賽の河原もびっくりな所業を繰り出してくるのである。余計なことしやがってというブーイングが今度はヴィクトリアに飛ぶがヴィクトリアも一向に意に介さない。
つまり、今回の依頼内容は「通常よりも硬く、自己再生能力を持ち、直接触れたら氷漬けになる氷を突破して、さらにアイスエイジクイーンが全力疾走して金庫にたどり着く前に、素早く金庫を開けて中身を取り出す」という非常にシビアなものであったのだ。
「さぁ、わたくし達からの挑戦を受けるものはいらっしゃいますの!?」
「わたくし達は逃げも隠れもしませんわ!! 受けて立ちます!!」
「「オーッホッホッホッホッホッホッホッホッホ!!」」
そして再び馬鹿笑い、もとい高笑いする女性2名。猟兵達は過去最大級の頭痛を覚えながらも、ヴィクトリアによって開かれたポータルへと向かうのであった。
バートレット
どうも、バートレットです。
ダブルお嬢様はカロリー過多でした。反省している。
今回のプレイングボーナスは以下のとおりです。
=============================
プレイングボーナス……大金庫を破る手段を考案する。
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OPで説明のあったとおり、この大金庫は非常に硬い氷でできており、並の衝撃では砕けません。また、欠損があると自己再生します。融点と沸点も調整されている念の入れようです。さらに直接触ろうとすれば氷漬けになってしまう上に、これら全てを突破するとアイスエイジクイーンが自ら氷を修復すべく全力疾走してくるので、金庫に辿り着く前に中身を取り出す必要があります。
これらすべての障害を突破して金庫を攻略する必要があります。頑張って金庫を突破する方法を考えてください。
OP承認後即座に募集を開始します。締切はシステム的に閉まるまで受け付けますので、奮ってご参加ください。可能な限り執筆いたします。その他諸注意はMSページをご確認いただければ幸いです。
では、皆さんのアツいプレイングをお待ちしております!
第1章 冒険
『『氷河期大金庫』を破れ!』
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POW : 再生速度を上回る勢いで金庫を攻撃する。
SPD : 金庫の特殊な錠前を破る。
WIZ : 金庫の凍結効果に魔法を使って対抗する。
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フカヒレ・フォルネウス
SPD アドリブ連携歓迎
難攻不落では……?
いやまあ、できるだけのことはやってみますが……。
(この人が、ベルゼさんの上司ですか……)
《鮫喰場》を展開して、氷河期大金庫の冷気に対応できる鮫を生やして行動させましょう。
周辺地域一帯を操作することでセキュリティは解除します。
僕は外から鮫の活躍を見届ける高みの見物ワルをいたしましょう。
さあ、冷める(サメる)前に中身を取り出すのですよ。鮫だけにね。
……そういえばアイスエイジクイーンが全力疾走して来るとか。
ならば床に水魔法を撒いて水浸しにして、凍結&スリップを目論んでおきますかね。
……ここまでしても、不安がよぎるのが何とも。
(どんな目に遭っても大丈夫です)
地籠・陵也
【アドリブ連携歓迎】
ヴィクトリア……ベルゼの胃痛を増やすのも程々にしてやってくれないか??
はあ、後でベルゼに胃薬追加で半年分送っとこう。
骨が折れるなあ、ちょっと穴を開けても本人がやってくるし……いや、それを逆手に取るか。
【属性攻撃(氷)】でレンズのように透き通る氷を作って、虫眼鏡を通して太陽光で穴を開ける要領で金庫のどこかに【レーザー射撃】で穴を開けて溶かす。二分弱ぐらい。
悪魔の権能なら俺の【浄化】の術を噛ませて相殺すれば穴は開くハズだ。
アイスエイジクイーンがきたタイミングで【指定UC】が発動して【範囲攻撃】で巻き込んで、ダウンしてる間に1Dだけでも回収できないかやってみるぞ。
アドナ・セファルワイド
見える……見えるぞ……
ベルゼの胃が『ヤッダーバァァァ』と叫んでいるのが……
さて、氷には氷を……並みの氷ではなく、時間をも凍結させる氷の結晶をぶつける事で、破壊しよう
時間凍結氷結晶を具現化し、大金庫を構成する氷を『内包する時間質量そのもの』を凍結粉砕し、触れずに大金庫を構成する氷を粉砕していくぞ
クク、余にとって氷属性は既にこの域に到達している……
取り回しも非常に良いしな
さて、素直に氷を粉砕していき道を作っていくとしよう
アイスエイジクイーンにも注意して時折別方面に回りながら、進んでいくとしようか
アルテミシア・アガメムノン
ちょっと冷えますわねえ。
それにしてもこれ金庫というより冷凍庫ですわよね?
『地母神の戦域』を発動。
戦場(銀行)全体に輝く霧を行き渡らせた上で魔力を激増させる『サマエル』を一口。出力を上げた神炎で氷壁に穴をあけましょう。
このUCはLV分持続可能という事で穴の外側を燃やし続けることで再生を阻害してDをGETです。
後は……アイスエイジクイーンさんが全力疾走してくるということですから、神炎にて金庫に続く道の下側を融解させることで踏んだら落ちる、灼熱の落とし穴を作っておきましょうか。
彼女なら死なないでしょうし、時間も稼げるでしょう。
ソニア・シルヴァーヌ
一度入れたものは二度と誰にも取り出せない、成程完璧な防護ですね…
え、そういうことではない?
まあともかく、何とかこの金庫を破れるよう頑張ってみましょう。
さて、どうやって入り込むか、ですが。
私が取れる中で一番適していそうな手段、全ての終わりを閉ざす炎を撃ち込み入口を溶解させます。
流石に、いくら融点を上げたといっても一兆度は超えないと思いますので。
…ノリでここまでの熱にしたのが活きる日が来るとは思いませんでしたが。
侵入可能になりましたら、後はアイスエイジクイーンさんが来る前に事を済ますのみ。
残酷な光翼での【空中浮遊】からの【推力移動】で侵入、触手も駆使して手早く中身を回収していきましょう。
アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎
アイスエイジさんからの
挑戦状ですね…
って…ヴィクトリアさんまで☆
『金庫破りって…ワルい事なんですよね…(どきどき☆』
味方と連携
うっかり触れて凍結しない様
【念動力】で金庫を
遠隔で
動かし作業
この金庫が『無機物』なら
つけ入る余地は
ありそうかも…?
UCで
金庫を
『破壊し易い柔らかい物質』に
金庫の扉等
一部分だけでも『変換』させ
変換している内に
『クイーンオブハートキー』を使い
【ハートのA(アリス)】も
展開
『時間』の【属性攻撃】の
【全力魔法】&魔法【誘導弾】の【一斉発射】で
金庫の『再生』を少しでも
遅らせつつ攻撃
金庫を破る事を試みます
『これで破れれば…そういえばこの金庫の中身には…一体何が…?』
エメラ・アーヴェスピア
…うん、また濃い依頼人達ね…
まぁ仕事である以上は遂行するけれど
…色々と仕事を受けて来たけれど、ここまでの人(?)は中々いなかったわよ…
さて…最初は炎熱兵器搭載魔導蒸気巨人兵を召喚し、
金庫を上空に投げたうえで魔導の炎を灯した腕で叩き割る…という方向で考えていたのだけれど
上手くいけば、非常に簡単に何とか出来る手段があったのよね…
作った本人にも制御できない、という事で意思はない物だと判断させてもらうわ
特殊な部品を内蔵した魔導蒸気製のコインのような物を指ではじいて接触させて…
『歓待するは我が戦城』、金庫のみを対象とし、私の兵器庫に移すわ
中身があればいいのでしょう?
※アドリブ・絡み歓迎
シン・フォーネウス
なあ、いつから仲良くなったんだあの二人。
いや別に良いんだぜ? でもワルの頂点に立つ(かもしれない)アイスエイジクイーンのサインぐらい一つ……は? ダメ?
……さっさと壊すか。
UC発動、掃除の時間だ!
『ソロネ』と『エーギル』のビーム砲塔、その数230✕29だからえーと……今そんなことはどうでもいいんだよ!?
たくさんのビーム砲塔からイオンビーム照射! 金庫の氷をがしがし削っていくぜ。
おおっとアイスエイジクイーン、邪魔させるわけにはいかねぇ。出てこい『カーリ』、クイーンを足止めしろ!
これで終いだ。アイスエイジクイーン、めちゃくちゃ悔しいだろ?
んなら……あの、ちょっとここにサインをだな。
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【SPD】
※アドリブ絡み連携歓迎
アタシにも勉強の時期はあったしね…
戦後にプレジデントも加えトロイカ体制フラグ?
ベルゼさんの処方とか再考かな…
破壊が面倒でも金庫破りはイケるさ
『開けずに済む手段』を封じてないしね
【S・トリックスター】で装甲ドレス化した愛機に
【マトリクス・メモリ】で『防寒能力の発生源』付与
次に【セレス】短距離跳躍で直接庫内へ転移
【クリュザンテーメ】の推力で接触も回避
後はオペ18番【アドヴェント・クレスト】開始
庫内床面一帯に転移用リング出現
行先は【ファルマコン】ドック車内リフト
作業中のイリスちゃんがビーコンなのさ
中身をリフト降下でラック毎根こそぎ奪ったら
アタシも潜り脱出…さ、温まろ♪
ポーラリア・ベル
【誰かのプレイングに乗っかるサポートほぼ前提】
わーい!万年真冬の氷河期さんと見ました!挑戦するー!
基本、氷漬け効果は【凍結耐性】で耐えます。
まず金庫をあちこちから、何処かに隙間や鍵穴が無いか調べ回ります。
見つけるか、誰かが金庫をこじ開けようとした時、メルティアイスイリュージョンを使います!
小さな隙間から小さな氷のポーラが素早く中に潜入!
入ったら元に戻って、中のブツをUCで小さくしつつ、【怪力】で外へぽーいぽーいしちゃうのよ!
万一閉じ込められちゃったら【アート】で金庫の中にポーラの氷のお家作って、誰かが空けるまで楽しくくつろいでくね!
万年真冬の氷河期空間だから、ポーラとっても快適!きゃっほー♪
鬼鉄・マオ
悪いが、私は殴る事しか取り柄のない女でな。やることは一つだ。…真正面からぶっ壊す。
(『無銘』を正眼に構える。ゆっくりと【力溜め】をした後、弾けるように【怪力】による連撃を叩き込む)
オラオラオラァ!どれだけ防御を固めようが、どれだけ再生力を高めようが、それを上回る【暴力】を一点に集中して殴り続ければぶっ壊せない物などない!!【気合い】だ!【根性】だ!
なにが機密性だ!そんなものはまとめて潰してやる!そしてそれを邪魔しようとする妙な策略さえも!
(アイスエイジクイーンを視界の端に捉え、UCで金庫ごと攻撃し、吹き飛ばす)
…まとめて吹っ飛ばしてしまえば関係ない。そうだろ?
(破壊した金庫から中身を取り出す)
プリ・ミョート
魔王国のみんなが参戦してるなら……やっぱもうぼっこんぼっこになってるべね。これならもうひと息……待てよ。いや待つべさ。これは、料理人魂が沸々と燃えてきたべ。こういうのはインスピレーションが大切だからに。
再生速度を上回る勢いで金庫の氷を削ってやるべ! 無限に湧いてくる天然氷を使ったかき氷、アイス、あっつい戦争中にはぴったりだべよ。みなさんも食うかね? 金庫自体も料理できればええべが、ま、いいべさ。作り過ぎた分は金庫の中にでも放り込んでおくべ。
ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
氷の悪魔の強みを、武器をたっぶり詰め込んだ大金庫かー。ボクには手も足も出なさそうだね。
それなら【デモン・フェイカー】で中身のDごと本物のような存在感「偽氷河期大金庫」を宙に生やして。大量のニセモノ金庫を餌に最後の関門、アイスエイジクイーンの修復行動を妨害するよ。
でも金庫破りには挑戦しないって言ってないよ?ボクのユーベルコードは贋作生成と同時に贋作対象になった「本物」の操作権を盗むものだからね!本物の大金庫と中身のDを操って解錠&盗っちゃえ。
それに何度も斜め45度チョップを繰り出すお母さんの言いつけなんて守る必要ないよ、一緒にワルい子になろう!(本物の氷河期大金庫、悪墜ちへの誘惑)
メンカル・プルモーサ
……頑丈・再生・凍結の上にアイスエイジクイーンが全力疾走してくる…かぁ…
…あれ?全力疾走してくるって言うことはここを見てるのか…
(アイスエイジクイーンに通信で連絡を入れる)
…ちょっと確認したいのだけど…この金庫…中に何を入れたの…?
…大半はDだと思うのだけどどのぐらい入れたのかなって…
…ふむふむ…なるほど…あと金庫の中の大きさを…ふむ…
(言いくるめて金庫内部の情報をゲット)
話が合ってるか各種センサで中身を確認…ふむ…これで中は『認識』できた
…それじゃあ……【彼方へ繋ぐ隠れ道】を発動…
…中身をそっくり味方…即ち私の手元にテレポートさせるとしよう…
中小路・楓椛
面倒な事になっていますね、ダゴン焼き屋です。
ばーざい全技能行使、【神罰・呪詛・封印を解く・限界突破】併用にてUC【とりにたてぃす】起動。旧支配者の「塵を歩むもの」クァチル・ウタウスの神威召喚。
権能から対象を周囲から隔離しエントロピーを強制的に急速低下させる竜巻を噴出させる複数のダクテッドファンを装備、金庫に向け噴出。
存在の終焉に誘う竜巻に触れたら無事では済みませんよ。竜巻の一部でクイーンを牽制し続けます。
対象の再生が追い付かない内に【谺】で扉と床の脆そうな箇所を破壊しつつ構造体に直接触れないように中身を取り出します――金庫は扱い易いように再設計して作り直す事をお薦めしますよ。
●激闘! 猟兵VS氷河期大金庫withアイスエイジクイーン(社長魂インストール)
猟兵達はこの上なく無表情でポータルを潜っていた。
「ヴィクトリア……秘書の胃痛を増やすのも程々にしてやって欲しいもんだが」
「あー……あの方が上司でしたか」
地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)がポツリと呟く内容に、フカヒレ・フォルネウス(鮫の悪魔の四天王・f31596)はなんとなく得心したように頷く。アドナ・セファルワイド(セファルワイド初代にして最後の皇帝・f33942)も沈痛な表情を浮かべていた。
「見える……見えるぞ……秘書の胃が『ヤッダーバァァァ』と叫んでいるのが……」
「処方とか再考かな……」
リーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)もかかりつけ医としては完全に今回の事態は見過ごせなかった。
「だって考えてもみなよ。この戦争でアイスエイジクイーンがキングの座を手にしたら……ヴィクトリア・プレジデント・アイスエイジクイーンのトロイカ体制が成立するのは火を見るよりも明らかなわけでしょ?」
「濃いよ! 登場人物全員濃いんだよ!! 下手なカタストロフよりも性質が悪いよ!!」
シン・フォーネウス(悪魔の掃除屋(文字通り)・f31485)がその言葉を聞いて頭を抱える。しかもそれ以上に解せないことがあった。
「というかだな、あの2人いつから仲良くなったんだ? いや別に良いんだぜ? でもワルの頂点に立つ(かもしれない)アイスエイジクイーンのサインぐらい一つ……」
「あら、それは我が魔王国の覇道が途絶えるということで?」
ニッコリと笑顔で圧を向けるアルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)。ぎくり、とシンは肩を震わせた。
「いやそんな事は一言も言ってねぇよ! それに仮にアイスエイジクイーンがキングの座についても後から簒奪すりゃいいだろ?」
「まぁ、それは追々考えるとして……それにしても冷えますわねぇ」
アルテミシアの視線の先には問題の氷河期大金庫が鎮座している。冷気は金庫から放たれており、周囲の気温を大きく下げている。
「あたしは平気だけど、皆はそうはいかないもんねぇ」
唯一平気な顔をしているのが冬の妖精ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)。万年真冬の氷河期は彼女にとってホームグラウンドに等しい。しかしポーラリア1人だけでは如何ともし難いのもまた事実。何しろ──。
「──頑丈、再生、凍結の上にアイスエイジクイーンが全力疾走してくる……かぁ……」
「……難攻不落では?」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が状況を再確認すべく呟いた言葉に、フカヒレは腕組をして渋い顔をする。一方、ソニア・シルヴァーヌ(玻璃の白百合ラスボス仕立て・f31357)はいつものぽやんとした笑みを崩さない。
「一度入れたものは二度と誰にも取り出せない、成程完璧な防護ですね……」
「問題は取り出せなくなったことで中のDが死蔵されている状態っていうね……タンス預金ってレベルじゃないよコレ」
リーゼロッテは曖昧な笑みを浮かべた。そんな中、純真無垢な感想を抱く者もいる。この中では最年少のアリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)だ。
「でも難攻不落の金庫破りって……ワルい事なんですよね……」
ドキドキと胸の高鳴りを感じてしまうアリスだったが、
「いや、私には真相が見えたわ。これ金庫破りというよりも『金庫が開かなくなっちゃいました助けてください』ってクライアントに泣きつかれた鍵業者の役目をさせられてるのよきっと」
エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)が容赦なく言い放ったその言葉に、アリス含めた猟兵全員の目のハイライトが消えた。
「いや待つべ! それならなんでアイスエイジクイーン自らダッシュして修復しに来るんだべ!? 合理的じゃないべさ!」
プリ・ミョート(怪物着取り・f31555)がその点について指摘するが、弟ほどではないにしろある程度のトンチキ事態を目の当たりにして耐性のある陵也曰く、
「あの2人の辞書に『合理的』って言葉があると思うか? 常人の理解の範疇を超えた思考回路してるんだよきっと」
……との弁に、全員が重苦しい頷きを以て同意する。
「……職業猟兵として色々と仕事を受けて来たけれど、ここまでの人(?)は中々いなかったわよ……うん……ホント濃い依頼人達よね……」
経験豊富なエメラですらこの評価。ある意味猟兵たちにとっては最大の危機である。どんな気持ちで取り組めばいいのか全くわからないし、グリモア猟兵とラスボスが揃って高笑いしている光景は誰もが頭痛を覚える。
「とっ……ともかくっ! 来たからにはやろう、金庫破り! この金庫を攻略すればアイスエイジクイーン攻略の糸口だってつかめるんだし、ねぇ!」
「あ、あぁそうだ! やるぞ! アイスエイジクイーンとグリモア猟兵から叩きつけられた挑戦状、受けて立ってやろうじゃねぇか! なぁ!」
ユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)と鬼鉄・マオ(怪力特攻傭兵・f33724)が重い空気を変えるように皆に呼びかけ、果たして氷河期大金庫への挑戦が始まった。
「……ん? アイスエイジクイーン自らダッシュ……?」
一方、メンカルはある一点でひっかかりを覚え、首を傾げた。
◆◆◆
アプローチは3つだ。削り出すか、熱で溶かすか、中身を移動させるか。まず、削り出しを試みたのはフカヒレ、アドナ、アリス、シン、マオ、プリの6名であった。フカヒレは防寒対策を施したサメを召喚し、牙や体当たりを用いて氷の破砕作業を行う。アドナは氷同士をぶつけるという発想で、時間凍結氷結晶を射出。時間すら凍結しているので、氷同士が接着してしまうということもない。氷同士が接着するには水の分子が動かなければならず、分子ごと動きが止まっている氷結晶であれば氷がくっついてしまうこともない。
直接打撃で氷を削りにかかるのはマオとプリ。直接打撃と言っても、マオの場合は衝撃波をぶつけているし、プリは知恵の布と執事手袋越しに触れているので素手で直接触っているわけではない。プリはさらに、削り出した氷を使ってかき氷やアイスを作り、作業の合間の甘味として皆に振る舞う。熱を扱うにしろ、削り出しにしろ、やはり頭や身体を動かすので身体が熱を持ってしまうだろう。そう考えて、クールダウンの手段を用意するというプリなりの気配りであった。
そして、お掃除ロボット『ソロネ』と高圧洗浄機『エーギル』各115体のビーム砲塔を並べてイオンビームによる氷の切断を試みるシン。その数6670基である。あらゆる方向から削り出しを図る上ではシンの操るロボットたちのビーム砲塔は強力な味方となった。アリスもユーベルコード「女王の錬金の部屋」で氷を柔らかい別の物質に変換した上で、クイーンオブハートキーと「ハートのA」の魔法弾を次々と射出して攻撃する。時間に干渉する魔法を混ぜ込んであるので、再生を遅らせるおまけ付きだ。
一方、そんな削り出し組をサポートすべく、熱による溶解を狙うのが陵也、アルテミシア、ソニアの3名。とは言え、全てを溶解させるわけではない。まずは陵也が氷結魔術で氷の凸レンズを作る。同時にアルテミシアが視界を妨げない輝く霧を作り出し空間全体に行き渡らせる。魔力を増大させる飴、サマエルを一口舐めて次に放つ魔術の出力を引き上げる。その上で、ソニアと陵也に声をかける。
「では、同時に行きますわよ」
「よし、こっちはいつでもOKだ」
「同じく、行けます」
3人が息を合わせて同時に魔術を放つ。陵也は浄化の光をレンズで収束させたレーザービームを浴びせ、アルテミシアは輝く霧が放つ神炎を同じく一点に収束させて穴を開ける。ソニアも1兆度のプラズマ化した小型の火球を2人が開けた穴にねじ込み、穴を広げていった。
そして、そんな作業を行っている彼らを他所に、メンカルと彼女の意見を聞いた一部の猟兵たちは「あるもの」を探していた。そう、今回の依頼においては絶対に欠かせないものだ。
「あったよ!」
ポーラリアが声を上げる。メンカル、リーゼロッテ、エメラ、ユニはポーラリアが見つけた「それ」を見てやはり、と頷いた。
「これがないと多分アイスエイジクイーンは私達の動きを把握できないからね……つまり、『全力疾走で斜め45度チョップをしに来る』ことが出来ない……」
「確かにその通りだね。お手柄だよメンカルさん」
メンカルたちが探し、ポーラリアが「それ」の正体は、Webカメラであった。ご丁寧に「株式会社UAI」のロゴが入っている。今回の依頼を出したグリモア猟兵がグリモア猟兵なだけに、どうやら協賛企業となっているらしい。
「ちょっと待ってね……今あっちの映像出すから……」
メンカルが軽くVRキーボードを叩くと、中空に投影された仮想ディスプレイにアイスエイジクイーンの姿がデカデカと映し出される。
《オーッホッホッホッホッホッホッホッホッホ!! よくぞこの監視カメラがわかりましたわね我が精鋭たちよ!!》
「風雲ナンチャラ城じゃないんだから……」
エメラは再び見ることとなったキャラの濃い依頼人に深い溜め息をつく。メンカルは早速自らの乾坤一擲の策を実行に移す。
「単刀直入に要件を言うよ……ちょっと確認したいのだけど……この金庫……中に何を入れたの……? ……大半はDだと思うのだけどどのぐらい入れたのかなって」
《そうですわねぇ、まずは現金が2000万D突っ込んでありますわね。それと800万D分の小切手。後は貴金属類が現在の時価換算で……5000万D相当かしら?》
「結構入ってるなぁ」
《もちろん無事に開けられた暁には半額近くを謝礼として差し上げますわ》
正直いくら積まれてでもいいからとっとと終わらせたいというのがこの場に集った猟兵たちの概ねの総意ではあるのだが、という内心の思いを飲み込み、次にリーゼロッテが質問を重ねる。
「でもそれだけの物が入ってるとなると内部の構造ってどうなってるの? いや純粋な興味として気になるんだけど」
《札束関連は空気を抜いて圧縮、貴金属類もパッケージしておりますわ。内部の物体は氷の悪魔としての権能を利用した圧縮冷凍状態に置かれております。加熱すればもとに戻る可逆圧縮ですわね》
その言葉を聞いて5人は内部の状況を整理する。圧縮冷凍状態を維持する以上、やはり内部も冷気が充満していると考えていいだろう。つまり、防寒対策を施さなければ開けた後、迂闊に内部に手を突っ込めば凍傷の危険性がある。ましてや内部へ人員を転送、内側から開ける場合に関しては、転送された人員が冷気への対策を従前に施さなければならない。
「ふむ……ひとまず内部の状況は把握できた」
「もうすぐ氷も完全に破砕と融解が終わりつつあるね。その隙に準備しないと……」
《む、どうやら……あんなに砕けてるではありませんの! そろそろ出番ですわね!!》
モニターの向こうではアイスエイジクイーンが屈伸とアキレス腱のストレッチを始めた。何故か「ICEAGE QUEEN Devil King World [World Record Holder]」というスポーツ中継のようなテロップが表示されている。目がマジだ。
「まず、話があってるかを確認しよう」
「それならアタシがひとっ走り確認してくるよ。ポーラさんも来る?」
「もちろん! 内部が冷たくってもへーきへーき!」
リーゼロッテとポーラリアは金庫内部へのワープを行うべく準備を開始。ユニは氷河期代金この贋作を構築する準備に取り掛かる。情報が多ければ贋作はそれだけ真に迫りやすくなるのだ。裏を取るためにメンカルとエメラが電脳魔術を駆使して金庫を解析する。エメラはさらに、内部に入るリーゼロッテとポーラリアに特殊な部品を内蔵した魔導蒸気製のコイン状の物体を渡した。
「これは?」
「私のユーベルコード、『歓待するは我が戦城』で作った転送装置よ。弾いて触れた物体を私の兵器庫に飛ばせるようになっているわ。内部のDや貴金属類は無機物、意思なき物体であるから転送に対して抵抗は当然しないでしょうし」
リーゼロッテが愛機のナインス・ラインを装甲服として身に纏い、ポーラリアを肩に乗せる。念のため、ポーラリアは「メルティアイスイリュージョン」で小さくなりさらに透明化。これでワープドライブの短距離転移にポーラリアを巻き込む形で金庫内部への転移を行うことができる。いざ転移を開始しようとしたその時であった。遠方から地響きが響き渡る。
「まさか……ッ」
「そぉぉぉぉぉのぉぉぉぉぉぉまぁぁぁぁぁさぁぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁですわァァァァァァァァァァァ!!」
陵也がはっと顔をあげると、そこには土煙をもうもうと上げながら短距離走特有の前傾姿勢で全力疾走するアイスエイジクイーンの姿があった。凄まじい形相で迫りくるアイスエイジクイーンの姿を見て、猟兵たちは悲鳴をあげる。
「「「「「「う、うわあああああああ出たあああああああああ!!」」」」」」
アイスエイジクイーンの表情は鬼気迫るものであり、目は爛々と光り口からは煙にも似た吐息が放出されている。並の障害物は全て吹っ飛ばしてしまいかねない勢いで全力疾走する彼女の姿は、傍から見れば暴走機関車を思わせる。そんなド迫力の姿には、百戦錬磨の猟兵と言えど思わず気圧されるというもの。
「い、急げ! アイスエイジクイーンを止めるんだ!!」
「水魔術でアイスバーンを作ります!!」
フカヒレが水魔術を行使して地面に水を散水。アイスエイジクイーンの全力疾走を食い止めるべく、アイスバーンでのスリップを狙う。その奥にアルテミシアは神炎を打ち込み灼熱の落とし穴を形成。
「これでヒートショックのひとつでも起こしてくれれば……!」
「それは危険では?」
「アイスエイジクイーンが血圧の乱高下で死ぬような方だと思いまして?」
「……確かに!」
アドナが指摘するも、アルテミシアの回答には妙な説得力があり押し黙らざるを得ない。もちろんそれすら乗り越えることを考えて、陵也の召喚した白竜、シンが呼び出した全自動洗濯機「カーリ」、さらには拳を構えたマオ本人が立ちはだかる。
「ここはオレたちに任せて先に行け、2人とも!」
「表面はかなり溶けている、転移は容易なはずだ!」
「サンキュー! ポーラさん、しっかり掴まっててよ!」
リーゼロッテとポーラリアはマオと陵也の力強い言葉に頷き、ワープドライブ「セレス」による短距離ワープを実行に移した。内部へと潜入に成功した2人は金庫内を確認する。リーゼロッテは「防寒能力の発生源」を自身に付与しているため、ポーラリア同様冷気をものともせず行動可能だ。
「見えてる、メンカルさん?」
「見えてるよ……こっちもセンサーで追ってる、アイスエイジクイーンの情報通りか。じゃあ手分けして中身を転送していこう……」
「贋作も出来た! 中身を操作して転送を手伝うよ!」
そう、メンカル、ポーラリア、エメラ、リーゼロッテ、ユニの5名は中身を移動させる戦略を取っていた。ユニの贋作の悪魔としての権能の一つに、「贋作を作った対象の操作権を握る」というものがある。そのために、リーゼロッテとポーラリアによる内部の確認が必要だったのだ。また、この内部の確認はメンカルが行使する術式「彼方へ繋ぐ隠れ道」による認識範囲のテレポートを実現するためにも必要な工程だった。そして、そのためにはスムーズな内部情報の把握を行う氷は邪魔になる。氷の破砕と溶解は中身の転送を行うために必要不可欠なプロセスだったのだ。
リーゼロッテも内部から外へと放り出すための準備は整えている。
「オペ18番『アドヴェント・クレスト』開始! ビーコン、座標特定。WD機関オーバードライブ。PPゲート構築。EB側ジャンプブースターリンク正常……イリスちゃん、準備はイイ?」
「OKです、いつでもどうぞ!」
「ゲートオープン! よし、ポーラちゃん、一緒に中身を投げ込むよ!」
「任せてー!」
リーゼロッテはファルマコンのドック内で待機するイリスと協力して、金庫の底面に転移ゲートを作る。そこへポーラリアと共に中身を転移ゲートからファルマコン内部へと移し替えていく算段だ。
各人の働きが功を奏して、次々と運び出されていく金庫の中身。一旦分散して保管し、後でアイスエイジクイーンへの返却分も含めて全員に再分配するプランであった。時間はあまり残されていない。
一方、外ではアイスバーンを踏み砕き、落とし穴に落下しても執念で這い出てきたアイスエイジクイーンが、白竜が放つ重圧を齎すブレスを真正面から受けつつ、洗濯機「カーリ」に放り込まれながらも、マオとがっぷり四つに組み合い、互いに押し合いを行っていた。
「さぁ、今すぐお退きなさいマオさん、わたくしは今すぐこの斜め45度の手刀を叩き込みたいのですわァァァ……!」
「させるかァ!! 悪いがこちとら殴る事しか取り柄のない女でね……当然退くことも出来ねぇって訳だ……!」
じりじりとアイスエイジクイーンの執念がマオの身体を押し、全自動洗濯機からの脱出を許していく。陵也とシンも必死の抵抗を続けるが、まもなく突破されてしまいそうだ。
「ごきげんよう、ダゴン焼き屋で……いやはやカオスすぎませんかこの状況」
そこへ猟兵たちに助け舟がやってきた。流浪のダゴン焼き屋、中小路・楓椛(ダゴン焼き普及委員会会長・f29038)の登場である。
「いいところに来た! お前ちょっと手伝え!」
「ふむ、いいでしょう。ばーざい全技能行使、模造神権能限定召喚術式:とりにたてぃす起動。ちょっと強めの風出しておきますね」
マオの要請に楓椛は応えた。旧支配者の「塵を歩むもの」クァチル・ウタウスの神威を召喚し、対象を周囲から隔離しエントロピーを強制的に急速低下させる竜巻を噴出させる複数のダクテッドファンを装備する。この竜巻をアイスエイジクイーンに浴びせてしまったのだ。
「これぞまさに向かい風……! ですが負けませんわァァァ!!」
強烈な風に煽られて髪や顔が顔芸レベルで凄いことになっているアイスエイジクイーンだったが、気合と根性で、ついに、ついに氷河期大金庫に到達してしまった。
「行きますわよ……困ったときは斜め45度……ッ!!」
小気味いい音と共に斜め45度チョップが振り下ろされるが、しかし。
「おや、それって正しい対象でしたっけ」
「あー、それボクが作った偽物だ。念のため大量にバラ撒いておいたんだよねぇ」
「ぬぅわんですってぇぇぇぇ!?」
アイスエイジクイーン、ここへ来て痛恨の見落とし。そう、ユニの作った偽物が大量に立ちはだかっていたのだ。もはやどれが本物かもわからない状態。だが、とアイスエイジクイーンは執念と気合と根性でその1つ1つを虱潰しに斜め45度チョップして回る。
「全部にチョップを食らわせればそのうち本物にたどり着きますわね!!」
「こいつ俺以上の脳筋か何か!?」
「もう最後は執念の戦いだべ!!」
「急げ急げ……!」
偽物へと片っ端から高速チョップを繰り出していくアイスエイジクイーン、少しでもその時間を引き伸ばすべく妨害を続ける金庫外部の猟兵達、そして金庫から全てを取り出す回収班。全員が必死の形相を浮かべる激闘は続き、そして……。
「全部、……運び出した……」
「ま、間に合いませんでしたの……?」
エメラが疲労困憊しながら作業の完了を宣言し、アイスエイジクイーンはその瞬間膝から崩れ落ちる。自分の負けだ。
全員がその場にへたり込み、肩で息をする中。
「これで終いだ。アイスエイジクイーン、めちゃくちゃ悔しいだろ? んなら……あの、ちょっとここにサインをだな」
「さ、サインですの……? わたくしので良いなら喜んで……ええと、ペンはどこにしまったかしら……」
勝利宣言のついでにアイスエイジクイーンにサインをねだるシンの姿がそこにはあったそうな。
大成功
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