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銀河帝国攻略戦⑮~我が赴くは砲の群~

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●戦闘宙域AK-7445:『白城』艦隊三番艦『ヴォールフスムンド』艦橋
 狼の顎と綽名される艦があった。
 士気・練度ともに軒昂。鉄壁を誇る『白城』のなかで、なお気高く堅き護り。
 強襲。奇襲。特攻。一点突破。挟撃。波状攻撃。
 数多の戦術に対し、自ら矢面に立ち抗い続けた鋼の艦。
 味方からは敬意を込めて、敵からは恐れと憎悪を以て。
 それは、狼の顎と呼ばれた。

「報告いたします! 第二十三番隊、解放軍艦隊の攻撃により撃沈しました!
 現在敵前線の進攻率は46%。予測値を233秒上回っております」
 連絡兵による手短で簡潔な報告。
 それを受けた巌のような男は、唇を固く引き結んだまま頷いた。
「ご苦労。二十四から三十三番隊へ通達せよ」
「はっ!」
「全員撤退し、敵に前線を開けろとな。行け」
 連絡兵が疑問を呈しようとするより先に、指揮官は顎でしゃくった。
 兵士は敬礼ののち即座にブリッジをあとにする。
「各員に通達する! これより我が艦は単独で前線へ移動。
 以てこれを最前線とし、来たる敵艦隊を撃滅する!」
 自殺行為である。戦艦が自ら前に出るなど常識外の戦術だ。
 だがこれが狼の顎なのだ。狼は獲物を前に退きはしない。
「面舵一杯、全速前進。我らの堅牢さを見せつけてやるときだ!」

 ――おお! 銀河皇帝に栄光あれ! 我らの指揮官、プレスタインの名のもとに!

 兵士たちはみな口々にいと高き君と我らの主君を仰ぐ。称える。

 そこに恐れはない。ただ敵への怒りと覚悟がある。
「我らの名の意味、叩きつけてくれるぞ。解放軍よ」
 巌のような男、名をプレスタイン。
 狼の顎を率いる、無慈悲にして恐るべき指揮官であった。

●戦闘宙域AK-7445:解放軍艦隊〈レインフォース号〉艦橋
「敵は練達にして精強たる鉄壁艦隊。対して我らは即席の解放軍。
 ……っておじいちゃんたち張り切ってるけど、大丈夫かしらねえ」
 呆れた様子で肩をすくめる黒髪の少女。メガネだけは理知的だ。
 彼女の名は白鐘・耀。グリモア猟兵である。
 さて、と一息つくと、彼女は微笑みすら浮かべて振り向いた。
「こういうときってあれよね。ゲームとかだと主人公がガーンと突撃してやるじゃない?
 まさに私たちにうってつけ。さあ、正面対決の時間よ!」

『白城』。
 それがいま解放軍を遮る、恐るべき大艦隊の名だ。
 堅牢さは城壁に通じ、攻め手の激しさは万の兵の如く。
 名に違わぬ大火力と鉄壁戦術、常であれば抗うことは不可能である。

「けど、解放軍の人たちも、ここまで私たちと一緒に戦い抜いてきた。
 おかげで、いまのところは互角の戦いが出来ているのよ」
 いまは。長期化した戦闘において、もっとも重視されるべきは何か?
 ……気力である。戦意が萎えてしまえば、数も兵も意味をなさない。
「あっちは銀河皇帝大好きな兵隊さんたち。こっちは寄せ集めの愚連隊。
 勢いを失えば、まあ、結果は見えてるわよね」
 ゆえにこそ、この機を逃してはならない。
 一点突破、少数精鋭による中核艦隊の撃破。これが猟兵の仕事だ。

「私たちの担当は、最前線に躍り出てきた帝国宇宙戦艦よ。
 あっちじゃヴォールフスムンド……狼の顎、と呼ばれているらしいわね」
 曰く。辿り着くは堅く、通るはなおも困難。
 されど彼方より来たりて、此方を喰らいし鋭き牙。
 ゆえに狼の顎。獲物を寄せず、逃さず、生かさずの狩人と。
「とはいっても、装備は他の戦艦と同じよ。ようは戦術と士気の差ね。
 あっちから前に出てきて、バカスカ砲撃をかましてくるってわけ」
 これを叩くのは大きな意味を持つ。猟兵たちの腕の見せ所だ。
 出迎えるのは文字通りの弾幕。
 かいくぐり、防ぎ、こちらから叩き潰すことで道は拓けるだろう。
「ヴォールフスムンドさえ落とせれば、私たちの仕事は終わりよ。
 覚悟はいいわね? ここが踏ん張りどころよ」
 耀が火打ち石を取り出した。そしてカッカッと小気味いい音がする。

 かくて獣と猟兵の一騎打ちが始まる。
 喉元に喰らいし牙はいずれのものか。
 さあさ、結果を御覧じろ!


唐揚げ
 狼よ、狼よ! 唐揚げです。
 さっそくですがおなじみのいつものあれです。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 よろしいですね? ではまとめです。

●敵戦力
 『白城』第三番艦『ヴォールフスムンド』(1隻のみ。つよつよのつよ)
 指揮官名『プレスタイン』(指揮能力は優秀。併せて備考欄を参照)

●目的
 敵艦の撃沈。

●備考
 リプレイでの基本描写は『敵の砲撃をかいくぐり戦艦を叩く』というものになります。
 指揮官に関する設定は、あくまでオプションです。
 もう一味ほしいなーとか思った時に、プレスタインとの戦いを盛り込む予定です。
 一騎打ちとかしてみたい! という方はプレイングに盛り込んでみても面白いかも。
 あくまで基本は『戦艦の攻撃を防ぎ、叩く』点に絞られることにご留意ください。

 大火力をどう防いだりかわすか。
 味方の突撃をどう支援するか。
 そして敵戦艦をどう叩くか。
 このへんを意識してみると楽しいと思われます。

 では前置きはこのへんにして。
 皆さん、嵐の中でお会いしましょう。
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第1章 ボス戦 『帝国宇宙戦艦』

POW   :    フルバースト・コズミック
【全砲一斉射撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    デストロイレーザー
【10秒間のエネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【主砲からのレーザー砲撃】で攻撃する。
WIZ   :    インペリアル・マカブル
【自身の稼働可能時間】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【帝国式鏖殺形態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑15
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●戦闘宙域AK-7445:『白城』艦隊三番艦『ヴォールフスムンド』艦橋
「解放軍、前線を後退しています!」
「各方面からも同様の報告あり!」
 オペレーターが戦況を伝える。プレスタインの表情は不動。
 すべて想定通り。であれば奴らは必ず――レーダーに、光点がいくつも浮かんだ。
「当艦に接近する、複数の熱源反応を感知しました!」
「状況、正面モニターに回します!」
 大型液晶に、宇宙が映し出された。急速ズーム。向かってくる小さな粒たち。
 否、否である。たしかに大きさは我らより小さく、か弱いものどもなれど。
「見るがいい、あれが猟兵どもだ。あれが我らの敵だ」
 機関士、歩兵、オペレーター、工兵、近衛兵。
 皆がそれを見た。そして識った。なぜなら彼らはオブリビオン。
 過去の化身。未来の破壊者。
 ゆえに識った。それらの名を。それらの意味を。それらの本懐を。
「来たぞ。我らの敵だ。思ったとおり、まっすぐにこちらへ来たぞ。
 ……総員、特級戦闘配置。全砲門開け」

 ガコン――ググ、ゴゴコン。

 無数の砲門がそれを狙う。戦艦よりもはるかに小さな生命の粒たちを。
「敵は猟兵。我らが食いちぎるべき獲物どもだ。
 一斉砲撃、準備。……――ッてぇ!!」

 ――VOWVOWVOWVOWVOWVOWVOWVOW!!

 死の牙が。大口径・小口径、問わず数多の砲門が一斉に火蓋を切った。
 弾幕など生ぬるい。それは嵐だ。有象無象を引きちぎる弾丸の雨嵐。
「次弾装填用意、急げ! 敵は侮るな。言うまでもないがな」
 指揮官の目は、狼めいて鋭い。
明石・真多子
戦艦って大きなエネルギーの船とかに反応するんだよね?
ならエネルギーの無い移動方法で近付けば気付かれないじゃん!(素人の浅知恵)

周りのデブリとか隕石を【ヒッパリダコ】で集めて敵艦に向かって放り投げるよ!
ついでにアタシもデブリに【タコフラージュ】で「迷彩」しながら引っ付いて敵艦に向かおう!
(奇跡的にもイヴ・シュプリームの索敵妨害で気が付かれないはず)

近付けたら【ヒッパリダコ】で触手を伸ばして敵艦に引っ付こう。
壁の薄そうなとこに這っていったら【オクトバニッシュ】のタコドリルで中に入り込むよ!
アタシは親切だから穴はデブリで塞いどくね。

あとは「迷彩」したまま砲兵を探して味方の大型兵器のために隙を作るよ!


ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
こういう敵嫌いじゃないな。
まさに戦艦って感じ。できれば味方にいてほしかったな。

正直な話、艦橋やエンジンにアインスを撃ち込みに行きたいところだけど、敵の火力は侮れないよね。
今回も私は『援護射撃』に徹するよ。
味方に対する敵の砲撃を、【無効化の矢(フュンフ)】で妨害。味方が敵戦艦に突撃や取り付きやすくなるように支援するね。
常に警戒は怠らないようにして、敵の不審な動きを見逃さないようにしなくちゃね。
私も攻撃に参加できそうな場合は、【貫通する矢(アインス)】で艦橋やエンジンを狙っていきたいね。艦橋にいるだろう指揮官やエンジンを潰したら動きもだいぶ鈍るはずだよ。


イヴ・シュプリーム
【WIZ】
心情:戦艦……相手にとって不足はないわ……『魔導士』の恐さ……教えてあげる……!

戦術:手始めに【掌中ニ顕現スル太陽】により核爆発及びEMPを発生させ、戦艦の電子機器に打撃を与えることで、索敵及び攻撃手段の極限を狙います。これによって後に味方が接近する際における脅威の排除も行います。
その後、【守護スル従者達】を展開し、さらに【叡知ノ光】を収束させたものを、【全力魔法】【2回攻撃】【一斉発射】を使用して攻撃を行います。
なお、空間戦闘においては、【空中戦】によって機動を行います。

「狼の口を閉じる『魔法』……見せてあげるわ……!」

(アドリブ等はお任せします)


エドゥアルト・ルーデル
敵の指揮官は優秀な野郎でござるか、だが運の無い野郎ですぞ
何しろ味方に拙者が居ないんだからな!

作戦は陽動、及び敵艦の火力を削ぐ事に重点を置いた攻撃でござる

ありったけの【爆撃機部隊】を召喚、4つの均等な部隊に分けて進撃させますぞ
自身は爆撃隊と距離を保ちながら、【迷彩】を使い敵レーダーに探知されぬよう接近でござる

戦域に付いたら味方猟兵の攻撃に合わせ、1隊は陽動の為、【帝国式鏖殺形態】の敵に正面から艦橋部に向けて突撃させるでござる
残りの3隊はそれぞれ推進機、大口径砲郡、小口径砲郡を爆撃し敵の火力を削ぎますぞ
また爆撃に合わせ【スナイパー】で対空砲を狙撃しちまちまと嫌がらせするでござるよ

アドリブOK


マルグリット・ツバキ
狼だと?舐めんじゃねぇこっちは魔狼ガルムだ!
【ラグナロクグライド】で突っ込み内蔵火器、【範囲攻撃】で味方と共に弾幕を張る。
味方の弾幕と攻撃に乗じて敵の弾幕を掻い潜り直上をいただく!バリアも貼りながらな。
嵐だろうが何だろうが乗りこなしてやるよ。
艦橋上に来れたらこっちのもんだ。カメリアを宇宙バイクに着いた只の大型ブラスターだと思うなよ?
【落椿】を【鎧無視攻撃】で放って艦橋をぶち抜いてやる!
カメリアの名前の意味を思い知らせてやるさ……!
そしてよぉく憶えておくんだな……ツバキとガルムの名を!
(アドリブ、連携歓迎です)



●作戦会議
 〈狼の顎〉攻略のため、猟兵は複数班による波状攻撃を策定した。
 そして第一陣に名乗りを上げたのが、この世界を根城とする旅団『芋煮艇』の面々だ。

「自ら最前線に躍り出る、か。こういう敵は、正直嫌いじゃないな」
 感心した様子のルエリラ・ルエラに、髭面の迷彩男が皮肉げな笑みを浮かべる。
「だが運のない野郎ですぞ、拙者達を敵に回したんでござるからな!
 拙者いまだいぶいいこと言いましたぞ? イヴ殿もそう思いませぬか?? ん???」
「……? どうして私に聞くの?」
「適当に流しておいたほうがいいよ。いつものことだから」
 きょとんとした顔で首をかしげるイヴ・シュプリームに、ルエリラは苦笑した。
 一方その隣のマルグリット・ツバキは、フルカウルバイクに跨り準備万端といった様子だ。
「何が〈狼の顎〉だ、魔狼ガルムをナメんじゃねぇ。喉笛噛みちぎってやる!」
 その銘を与えられた相棒が、主の威勢に応えるようにエンジンを唸らせた。
「みんな気合十分だね~、そんな気負わなくてもいいんじゃない?
 だってほら、戦艦って乗り物とか使わずに移動すれば気づかれないんでしょ?」
 アタシは詳しいんだ! とドヤ顔を見せる明石・真多子に、全員真顔。
 そのあまりの自信ぶりにどうやらマジらしいと気づいた。ヤバい。
「いや、普通に動体センサーとかあんだろ。何言ってんだこのタコ」
「嘘っ!? てかアタシたしかにタコだけどそれ別の意味じゃない!?」
「ま、まあまあ。マルグリットも悪気はないと思うんだよ。
 それに索敵の問題はイヴがクリアできるはず。そうだよね?」
 二人の間に割って入ったルエリラが、同い年の少女へ目を向ける。
「ええ……危険だから、絶対に私に近づかないで……ね」
「デュフフフ、拙者死にたくないから今回は言われたとおりにするでござるぞ」
 爆撃機部隊を召喚しながら笑う黒ひげ男。完全に不審者だ。
「決まりだな! おいタコ、ワタシ達が突入役だ。気を抜くなよ?」
「了解~……ってだからアタシ、たしかにタコだけどぉ!」
 などと軽口を叩き合いつつ、マルグリットと真多子も準備を整えた。
「じゃあ行くわ……『魔導士』の、そして私達の恐さ……教えてあげましょう……!」
 作戦は決まった。イヴを先頭に、五人の猟兵が弾幕に飛び込む!

●〈狼の顎〉艦橋
「敵猟兵、5名が接近。おそらくは波状攻撃を考えているものと思われます」
「妥当な策だな。……しかし陣形が妙だな、なぜ一人だけ特出している?」
 接近する敵影を睨みつけるプレスタイン。沈思黙考ののち命令する。
「映像をズームしろ。先頭の者だけで構わん、顔は確認できんか」
「はっ!」
 大型モニターの映像がぐんぐんと倍率を上げ、イヴの姿を映し出した。
 口許に手を当て、考え込む。あちらにも何か策が……いや、この娘はもしや。
 にやりと、狼が笑った。そしてすぐに引き締められる。
「映像はもういい、元に戻せ。それよりもだ、電算室および機関部に緊急通達!」
 プレスタインがなんらかの指示を出す。驚いた兵士が声を上げた。
「お言葉ですが指揮官殿、それでは敵の接近を許すどころか……」
「私が冗談を言ったことなどなかろう。なに、じきにわかる」
 それ以上のやりとりはない。プレスタインは視線をモニターに戻した。
「失望させてくれるなよ、猟兵。歯応えのない獲物ではつまらんぞ」
 狼の狩りが、幕を開ける。

●第一次会戦
 いよいよ五名は弾幕に接触した――が、そこで異変が起きる。
「……砲撃が、止んだ?」
 むろん対空砲火や機銃は健在だ。しかし副砲のいくつかが突然砲撃を停止した。
 さては主砲にエネルギーをチャージし、一網打尽にしようという腹づもりか。
「それなら……逆効果。その大きな口を閉じてあげる……!」
 イヴは接近速度を増す。弾幕が薄くなったぶん、接近は容易だ。
 だが彼女が目指す距離は、ユーベルコードを直撃させるためではない。
 直接当てずとも、イヴの『魔法』は効果をもたらす。たとえば。
「これも……『魔法』のちょっとした応用……」
 おもむろに両掌を差し出す。そこに生み出されたのは、太陽のような輝き。
 扱いには細心の注意が必要だ。なぜならこの球体、核融合反応を引き起こす!
「掌中ニ顕現スル太陽(シャイニング・カタストロフ)――喰らいなさい……!」
 破滅の種子が放たれた。イヴは即座に防御陣を展開、衝撃に備える。
 直後、光がひときわ強まり――KRA-TOOOOOOOOOOOM!!
「……これなら」
 イヴの狙い。それは爆発による直接攻撃ではなく、核融合反応の余波にある。
 すなわち、電磁パルス:EMPによる電子機器および砲撃機能の破壊!
 いかに強固な装甲を持とうと、見えない電磁波を浴びればひとたまりも――。

「ヤバい! ボケっとしてないで下がれ!!」
「え」
 光が消える刹那、マルグリットが少女の身体をさらい、全力離脱する。
 何故? ……炎の中から全速力で現れた、いかつい船首がその答えだ!
 奈落の底じみた主砲口の奥、致命的エネルギーが収束し……放たれる!
「どおおおおっ!? なんでござるかぁ!?」
 イヴのやや後方にいたエドゥアルトたちは、咄嗟に散開しこれを回避。
 突然マルグリットが飛び出してから、わずか10秒も経っていない。
「あっちちちち! な、なんで? なんであっちから近づいてきたの!?」
 膨大な主砲のエネルギー余波から逃れつつ、真多子は混乱する。
「……まさか、私たちの手が読まれていたの!?」

 敵艦橋、狼どもの指揮官が笑う。
「気づいたところでもう遅い。全砲門、目標両翼! 撃てぇい!!」
 沈黙していた副砲が一斉に左右をそれぞれに狙い、その爪を剥き出しにした!

「マルグリット殿が危ないでござる! ええい、爆撃隊出撃だ!」
 足並みを乱されつつも、即座に対応したエドゥアルトの判断力は見事。
 だがこの状況で一挙両得は望めまい。陽動を優先するか、火力を削るか?
「……チッ、やってくれるじゃねえか帝国野郎!!」
 エドゥアルトの選択は後者。このままでは仲間の接近どころではない。
 1部隊を捨て石として先行させ、対空砲火の狙いを引き付ける。
 残る3部隊は、先遣隊が撃墜された隙に砲塔群と推進機を目指し潜行した。
 これを迎撃しようとする対空砲を、エドゥアルト自身が狙撃し破壊する。
 もともと陽動のためではあった。だからこそ業腹だ。踊らされるとは。
「おかえしにたっぷり嫌がらせしてやるよ、俺はねちっこいからなぁ!」
 もはや不審者じみた口調もかなぐり捨て、全神経を射撃に集中させる!

 一方、間一髪で回避に成功したイヴとマルグリットの二人。
 合体変形した乗騎の速度と内蔵火器を全力で引き出し、弾幕をかいくぐる。
「これじゃ直上を取るどこじゃないな、くそっ!」
 致命的砲弾をきりきり舞いでくぐり抜ける手腕は業前の一語に尽きる。
 だが被弾は免れない。展開したバリアによる威力減衰にも限界がある。
「あの面……ふざけやがって。腹が立つ」
 実のところマルグリットはイチかバチかで艦橋への突入を試みた。
 無論それは敵わなかったのだが、その時彼女はたしかに目を合わせたのだ。
 透過された強化ガラス越し、挑むように己らを睨む老指揮官の姿を。
「あの野郎……!」
 不敵に歪んだ笑みを。間違いない、あれがプレスタインだ。
「ど、どうして……私の『魔法』が……」
 抱き抱えられながら呆然とした様子のイヴに叫び返す。
「んな理由ひとつきりだろ、野郎はアンタを知ってたんだよ!」
 イヴは目を見開いた。オブリビオンが? 何故? ……問うまでもない。
 そうとも、彼女の用いる魔法は強力だ。それ自体が争いを引き起こすほどに。
 オブリビオンは過去の化身。ならば理屈は通るが、しかし……!
「とにかくシャキっとしろ! このままだとまとめて死ぬぞ!」
 電子妨害は成功した。弾幕を回避できているのは敵が目視射撃を行っているためだ。
 敵が機能を回復する前に生き残らねばならない。イヴは思考を切り替えた。
 頷き、自ら機動戦に突入。魔導レーザーを一斉発射し弾幕を相殺する!

「ど、どどどどうしよう!? 二人がヤバいよぉ!」
「大丈夫、マルグリットとイヴなら無事に切り抜けられるはずだ。
 それよりも私たちのほうだよ。真多子、君が行くんだ」
 思わずルエリラの目を見返し、その真摯さに息を呑む真多子。
 混乱を落ち着かせ、息を整えながら頷く。彼女たちは彼女たちで戦わねば。
「わかった。じゃあ援護よろしくね、ルエリラ!」
「もちろん。あちらにはエドゥアルトもいるんだからね、心配ないよ」
 エルフの少女はにこやかに頷き、矢をつがえる。
 本当なら、彼女こそ前線に躍り出て、あの艦橋部に一矢をくれてやりたいところだ。
 だが。
「友達を犠牲にするわけにはいかないよ、それに援護は得意だからね!」
 さるエンペラーズマインドコアにおける死闘を思い出す。気力が湧いてくる。
 見れば真多子は、周辺のデブリや隕石を触手で集め即席の弾幕としていた。
 無論全力砲撃に追いつけるはずもない。そこでルエリラの出番だ!
「私が見ている前でそんなことはさせないよ! 行け、フュンフ!」
 シュパッ! と放たれた矢は、まさにいま真多子を捉えた砲門を破壊。
 目の醒めるような速度で次の矢を連射する。砲弾を空中相殺しているのだ!
「その練度、判断力。味方にいてほしかったよ、心の底からね……」
 冷や汗が頬を伝い、顎から落ちて宇宙空間に浮かび上がる。
 実のところ彼女に余裕はない。友を前にした、精一杯の強がりだった。

 ……再びの敵艦橋!
「敵影1、ロストしました! 右翼に回り込んだ軟体生物型の猟兵です!」
 オペレーターの報告を無表情で受け取るプレスタイン。焦燥はない。
「接近してくるデブリ群に注意しろ。おそらく……」
 ドウ! 指示を爆音が遮り、かすかに船体が揺れた。
「状況は!」
「機関部より入電、推進機に爆撃を受けたとのことです!
 現在の非常用電源ではこれ以上の出力は見込めず。撤退を要請する、と」
 プレスタインの笑みがわずかに渋くなる。敵に大分"慣れた"兵がいるらしい。
「対空砲、4門が沈黙! これ以上は弾幕を維持できません!」
「左翼離脱した宇宙バイク、および例の小娘をロストしました。
 電算室の報告では、復旧まではと数十秒とのことですが」
 指揮官は高速思考する。おそらく右翼で消えた敵はデブリに身を隠している。
 目的はなんだ? あのスターライダーと同じく艦橋部か? あるいは……。
「……致し方あるまい。弾幕を維持しつつ後退開始、これ以上は荷が勝つ」
 狼の顎にあるまじき命令であった。獲物を前に腰を引くなど。
 だがプレスタインの判断は正しい。深追いすれば猟兵は必ず牙を剥く。
 ガラス越しに見た、あの赤い髪の女の凄絶な視線。彼は敵を侮らない。
「よもや我が艦の一斉射撃を弓で凌ぐとはな、砲兵に引き入れたいものだ」
 ひとりごちた。猟兵との初陣は痛み分けに終わるだろう。
 あの『集大成』を退けることが出来ただけでも僥倖と考えるべきだ。
 彼はそう結論した。そして部下たちに一時後退のための命令を続ける。

 ……しかしプレスタインですら、見落としがあった。。
 敵はデブリに身を隠して潜伏した。それは正しい。だがそれでは不足だ。
「……ば、バレてない? よね? よし、さすがアタシ!」
 船体下部。真多子は安全を確認した上で、触手をドリルめいて束ねた。
「軟体忍法、螺旋触手の術~! ……こそこそ」
 気付かれぬよう慎重に、しかし可能な限り迅速に船体を抉る。
 とはいえこの術は、回転速度を高めるのにある程度の時間が必要になる。
 穿たれた穴は小さく、人が通るには心もとない。
「けど、皆がこれをなにかに繋げてくれるはず。ぺちっとな」
 船体そのものに擬態させた触手を切断、穴に貼り付けることで即席のカモフラージュ。
 イヴとエドゥアルトによる破壊工作。敵はそちらの気を取られるだろう。
 再びデブリに捕まり、そっと船体を離れる。当然、回避手段はない。
 が、マルグリット、イヴ、そしてルエリラの弾幕が彼女の離脱を支援した。

●後退
 かくして第一次会戦は終了した。すでに第二陣は待機済だ。
「やれるだけのことはやったでござるよ。あとは後続の方々次第」
 全員の無事を確認したあと、エドゥアルトがそう言い、続けた。
「忌々しいがな。……俺たちをナメたツケは、絶対に払ってもらうぜ」
 狼の顎。その名の意味と敵の練度を理解させられた形だ。
 だが楔は打ち込まれた。五人はその手応えを戦果とし撤退する――。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

黒川・闇慈
「相手が狼だというならば、狩り出して差し上げましょう。我々は猟兵ですので。クックック……」

【行動】
wizで対抗です。属性攻撃、全力魔法、高速詠唱の技能を用いて炎獄砲軍を使用します。
相手は砲撃に自信があるようで。ではこちらも撃ち合ってみましょうか。
UCの炎で敵弾を迎撃しながら距離を詰めます。十分に接近できましたら、炎を合体させて特大の一撃を差し上げましょうか。

「砲兵は戦場の神と申します。さあ、どちらの神が撃ち勝つのでしょうね?クックック」

【連携・組み合わせ・アドリブ歓迎】


ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
――砲撃戦ならば本機の領分だ。
ミッションを開始する。

(ザザッ)
SPDを選択。
狼の咆哮と豹の唸り、どちらが勝るか。
勝負と行こうか。
――電脳体の拡散を開始――

(ザザッ)(ザッ)
(ザ――――)

"砂嵐"を敵艦体の侵攻を遮るかの様に広域に展開。
砂塵の如き電磁ノイズを迷彩の如く展開し、その中に本機の虚像をデコイとして拡散。
(技能:範囲攻撃+迷彩+残像+フェイント)

デコイによる陽動で敵艦体の砲撃を回避しつつ解析。
解析完了後、"複製"した砲撃を敵艦体へ狙いを定め放出。
――ターゲットロック。目標:敵指揮官と思しき個体。
(技能:二回攻撃+スナイパー)

本機の行動指針は以上、実行に移る。
オーヴァ。
(ザザッ)


シーザー・ゴールドマン
【POW】
「狼の顎」かなかなか洒落た異名だね。
ならば我々はヴィーザルの靴となって引き裂き滅ぼそう
戦術
『シドンの栄華』で強化。
戦艦に接近するまでは[オーラ防御]に『維持の魔力』を注ぎ込み、真っ向から防ぎます。
接近の後は『破壊の魔力』をオーラセイバーに注ぎ込み、斬艦の一撃を。
(描写的に可能でしたら『ラハブの割断』で)

指揮官と相対する機会があれば
「優秀で勇敢な指揮官だ。敬意を表して首を頂こう」


フェルト・フィルファーデン
オオカミ、というには大きすぎるわね?それに……可愛く無いわ。……いえ、それどころではなかったわね。手早く、片付けましょう?

とはいえ、まずは接近する必要がありそうね……
なので、【Firewall-protection】で炎の壁を作り出し、重ね合わせて1つの大きな炎の壁にするわ!
ええ、わたしはみんなを戦艦まで送り届ける役。先行して、炎の壁で攻撃を防ぎながら前へ進むの!
でも、どこまで防ぎきれるかはわたしにもわからないわ……【激痛耐性】も使って出来るだけ耐えてみせるから、もしダメな時は、後をお願いね……!


ヴィクティム・ウィンターミュート
ヒュー!いいねぇ、ディクタトルは落としたことがあるが…ありゃ防壁がガッバガバでつまんなかったんだよな。今回の大物は、ちゃーんと対策してあんだろうな?すぐ落ちるなよ?出し抜いてやるぜ──ヴォールフスムンド。

さーて、データシーフの時間だ。ユーベルコードによる演算能力拡張で【ハッキング】を仕掛ける。【毒使い】で各種ウィルスを蔓延させて、【破壊工作】かまして機能不全にしてやる。主に武装の無力化、あわよくば自壊を狙う。
無理やり回線を切るかもしれねーから、切った瞬間に【罠使い】で仕掛けておいたデータ爆弾とか作動させておきたいな。

あーあー、ドンパチ騒がしい。静かにしてくれよ
──俺が凍える程の静寂をくれてやる


神元・眞白
【SPD/アドリブ絡みは存分に】
たまにはおじいちゃん達の相手…こほん、抑えておかないと突っ込みそう。
前の時みたいに、今回は出られると危ないし、ちゃんと言ってから出発。
……嫌な予感はしないでもないのが本当の所。

落とせればいいんだし、狙うなら駆動部がよさそう。足を止めたら的。
でも相手もそこは分かってると思うし、数でかく乱。人を隠すなら人形の中。
未完成でも簡単な指示ぐらいは動いてくれるから、少し耐久できる盾に。
貯めこんでた在庫の一掃。とにかくたくさん作ったけど、完成しないのは反省。
こっちは防御と支援の指示で手一杯になるから、攻撃は飛威と符雨にお任せ。
戦艦を落とすより中の操者を倒すのが一番早い、かも?


ゼン・ランドー
大火力の砲撃を掻い潜り敵艦に接近する・・・?
いやいやいやいや・・・

一個人で宇宙戦艦に対応する等、余りにも無茶ですよ!?
失敗したら滅茶苦茶エゲツない拷問の末処刑されそうですし・・・

・・・というわけで、それが出来る猟兵の誰かに
ユーベルコードで便乗させて貰うと致しましょうか!

主に「戦闘知識」「第六感」で突破出来そうな猟兵の支援を行い
突破できればそこに相乗りします



●第二波
 第一陣と入れ替わる形で、後退する〈狼の顎〉へ迫る影あり。
 その後方、ヴィクティム・ウィンターミュートがわざとらしく口笛を鳴らした。
「いいねぇ! ディクタトルは防壁がガッバガバでつまんなかったんだよなぁ」
 電脳魔術士としての血が騒ぐらしい。彼は後方支援役である。
 そんなカウボーイの軽口に、隣にいた七三分けの妖狐が慌てて手を振る。
「いやいやいや! そんな楽しそうな話じゃないですよ!
 戦艦の砲撃を掻い潜って接近、ですよ? 無茶でしょう!」
「ではなぜ君はここにいるのかね? 一蓮托生だよ、諦めたまえ」
 シーザー・ゴールドマンの言葉に、ゼン・ランドーはもごもごしつつも黙った。
《――本機に不安要素はない。優秀なメンバーが集まっているからだ》
 ジャガーノート・ジャックは頼もしげに面々を見やる。
 親交のあるヴィクティムや黒川・闇慈は言うに及ばず。
 シーザー、そして背後に続く神元・眞白とも肩を並べた経験があるからだ。
「それに、俺たちはツイてるぜチューマ。なんせ妖精のお姫様がいるんだからな」
 ヴィクティムが云う。彼曰く、『すごい』使い手というのが……。
「あらあら、嬉しい言葉ね! お世辞でも嬉しいわ、ふふっ」
 と瀟洒に返すフェルト・フィルファーデンである。
「それにしても、狼……というには、大きすぎないかしら? 可愛くもないし」
「おかげで、おじいちゃんたちを止めるの大変だった」
 うんうんと頷く眞白。レインフォース号の乗船員たちのことだろう。
 先の艦隊戦において、彼女は彼らと親交を持った。今回は最前線に出る形だ。
「でも、第一陣が十分な戦果を残してくれてる。私たちはそれを繋げばいい」
「あるいは我々で討ち取ってしまうか、だね。私はそれでも構わんよ」
 リラックスした女性陣、そして自信たっぷりな様子のシーザー。
「我々は猟兵です。ならば狩人らしく、狼を狩りだして差し上げましょう」
 くくっ、と陰気な笑みを浮かべる闇慈。ちぐはぐな面子である。
「本当に大丈夫ですかねえ……もちろん働きはしますけど」
 なおも不安げなゼン。
「神頼みでもしますか? ならジャックさんにお祈りなさるといいでしょう。
 砲兵は戦場の神、とも申しますからね。クックック」
 闇慈にとっては冗談のつもりらしい。一方、ジャガーノートは最前列に躍り出た。
《――期待に応えられるよう、本機の領分を果たすとしよう。
 敵が前進を開始した。これより、ミッションを開始する。オーヴァ》
 一同に緊張が走る。見据える先には砲口を向けた巨大戦艦!

 狼の顎との第二ラウンドが幕を開ける。

●〈狼の顎〉艦橋
 ……プレスタインは渋面を浮かべていた。
 先の第一陣から、なにか妙な不安が拭えないのだ。
 EMP障害は予想以上の被害をもたらした。だが修復可能な機器は全て復活している。
 推進機へのダメージも甚大ではあるものの、迎撃する上では問題ではない。
「あの会戦で士気をへし折るつもりだったが……ふむ。骨はあるということか」
 だが今は目の前の敵に集中すべきだ。モニターへ視線を移す。
 そこには砂嵐が舞っていた。おそらくは敵のユーベルコードだろう。
「電算室の様子はどうだ?」
「はっ! 対空防衛および索敵システムへの執拗な電脳攻撃が以前継続中。
 防壁の維持は出来ておりますが、接続元の逆探知は難しいとのことです」
「フン。EMPの次は電脳魔術士か。搦め手好みが多いと見える」
 だが電脳防御に関してもまた鉄壁を誇るのがこの戦艦である。
 とはいえ敵の練度は高く、電算室の処理能力は低下させられている。
「どのみち猟兵どもを叩けば問題あるまい。あの砂嵐の除去を急がせろ」
 しかしそこで事態が変わった。オペレーターが声を上げる。
「どうした、報告急げ!」
「は、はっ! ご、ごらんください! これは……!」
「……なんだと」
 プレスタインは目を疑った。
 そこに広がっていたのは!

●衝突
 砂嵐が薄らぎ、現れる無数の影。
 然り、無数である! だが猟兵はたった7名であったはず!
「皆、行って。完成させてあげられなくてごめんね」
 無数の大群はふたつの要素で構成されている。
 その一要素、大量の戦術器=からくり人形を指揮するのは眞白だ!
 無論、初戦は未完成のものがほとんど。いわば在庫処分のようなものか。
「その調子で頼むぜ? こっちはまだまだかかりそうだ」
 最後方、周囲に立体映像を投影したヴィクティムは愉しげに笑っていた。
 今回の敵は"いい"。これだけ歯ごたえのあるICEは久々である。
「だからって棒立ちはまずいですよ! ほら、また来ます!」
 ゼンの第六感が彼らの命綱だ。弾幕は後裔だろうと容赦なしに狙い撃つ!

 では残る四名は? ……彼らは戦艦への接近に挑んでいた!
《――電脳体拡散、および解析継続。デコイ展開率78%。順調だ》
 砂嵐の正体は強力な電磁ノイズだ。そして術者は他ジャガーノート。
 次々に自らのデコイを複製、展開する。大群の片翼はこれに他ならない。
「とはいえ、ヴィクティムさんの足止めもそろそろ限界でしょう。
 私はジャックさんとともに砲撃準備に入ります。お二人はどうぞ先へ」
 闇慈は慇懃に一礼し、一繋ぎの音にしか聞こえぬ速度で詠唱を開始する。

 そんな彼を追い抜く形で前に出たのはシーザー、そして……フェルト!
「信頼しているよ、姫君殿」
「ええ、ええ! やれるだけはやってみせるわ!」
 砂嵐がさらに薄らぐ。二人はデコイや人形の影を飛び石めいて渡っていく。
 だが砲火は大量だ! フェルトは覚悟を決め、口訣を叫んだ!
「電子の炎よ、壁となりて我らを護り給え……お願い、私たちを守って!」
 見よ。二人の前に現れたのは分厚い炎の壁。それが幾重にも重なったものだ。
 少なからぬ砲撃が命中するものの、ほとんどは壁炎に焼かれ減衰する!
「さて、我慢比べといこうか! 私たちに勝てるかね!?」
 シーザーもまた瞳を輝かせ、『シドンの栄華』によってオーラを強化する。
 迎え撃つ砲火へと飛び込む妖精と紳士。だがあまりにも無謀だ……!

 狼の顎艦橋!
「チィ、先の攻撃さえなければ……!」
 プレスタインは歯噛みする。あの五人の猟兵が、より直接的に飛び込んできていたなら。
 電子機器と推進機への少なからぬ被弾、獲物を逃したという屈辱。
 これらはじわじわと、レバーブローめいて彼らに影響しつつあるのだ。
「電算室は何をしている! いつまでハッカーと遊んでいるつもりだ!」
 激高したプレスタインの言葉に対し、オペレーターが戦き報告した。
「それが、突然すさまじい速度で攻撃頻度が高まったとの報告が……!
 かろうじて防壁は維持できておりますが、推定演算能力は当初の3倍近くとのことです!」
「バカな、まだ電脳魔術士が潜んでいたというのか……!?」
 プレスタインは歴戦の指揮官である。だがここで、ヤツは二度目の読み違いを冒した。

「――全デバイス、コアクロック同期開始。〈冬寂〉、出力オーヴァーロード。
 演算能力拡張完了。これが、Arseneの本気だ!」
 第二陣における電脳魔術士は、たったひとりなのだ。
 皮肉にもそれは、敵を引きつけてから全速前進するという先の第一陣における戦術と酷似していた。
 リミッターを解除したヴィクティムは、回避と防御を仲間に任せ電脳世界へ没入する!
 絶え間ないハッキングで電算室を釘付けにしながらも、無数のウィルスプログラムを散布。
 敵はたしかに精鋭だった。だが第一の『魔法』がそれを弱らせた。
「今度は俺が電脳の『魔法』を見せてやる。――凍えるほどの、静寂をな」
 カウボーイは、ガラスの破片をがっちり掴んで思い切り突き出した。
 狼の顎を覆う堅くて冷たい永久凍土に、大きな大きなヒビが走った。

《――解析完了。電脳体収束、複製開始……ターゲット、ロック》
「頃合いですか。それでは盛大に参りましょう!」
 ジャガーノート、そして闇慈が同時にユーベルコードを起動する。
 砂嵐によって解析され、まさにいま複製された無数の砲塔群が出現。
 さらに闇慈の背後や周囲に無数の炎球が現れ、彼に侍るようにして躍るのだ。
 さながらそれは、遠き惑星に封じられた恐るべき炎の邪神の如く。
 あるいは地獄の軍団を率いる大公の如く、禍々しいものだった。
 いまや彼らを阻む弾幕はない。たった数秒、されど致命的な静寂(ミュート)。
「戦場を満たすは、灼炎の王威なり。一切全て灰に帰せ。
 クックック――炎獄砲軍(インフェルノ・アーティラリ)!!」
《――Copy that,砲撃支援(OVERKILL)を開始する!》
 火球のしもべたちが、そして電脳によって複製された砲塔の群れが!
 たった数秒の静寂を切り裂き、がら空きとなった狼の顎へ襲いかかる!
「今。飛威、符雨、お願い!」
 味方の防御と支援に徹していた眞白も、この機会を逃さぬと側近たちを送り出す。
 逆襲の攻撃の雨の中、それでも反撃を試みようとする砲塔を妨害するのだ!
「おっと。それじゃあ私も出番ですかねえ」
 ふと何かを見やるように、手でひさしを作って戦場を俯瞰していたゼン。
 あっけらかんと言えば、ふいにその姿が眞白とヴィクティムのそばから消えた。
 入れ替わり、そこ残ったのは狐の影一つ。これぞ凶兆狐影(フォックステイル)!
 では彼はどこへ? 驚くなかれ、この混戦の中にあって最前線たる場所である!

 フェルトは耐えた。炎の壁を貫かれ、弾丸の破片が肌をかすめようと。
 必死に意識を繋ぎ、ユーベルコードの手綱を握り。攻撃に耐え続けたのだ。
 そして今、シーザーを白兵攻撃圏内へ送り出した。だがそこで限界が来た。
「ああ、ごめんなさい……私、もう……」
「十分だとも、姫君殿。あとはエスコート役にお任せしよう」
 シーザーはただそう言って懐から何かを取り出し、最後の加速で艦体に肉薄。
 そして取り出されたものは狐の影。すなわちこれと入れ替わって現れるのが――。
「おっとと! 大丈夫ですか? いやあお見事でした!」
 傷ついたフェルトをぽすんと大きな手で受け止めたゼンというわけだ。
「い、いつのまに……あ、ありがとう、ゼン様」
「いや何、お姫様に送迎を任せるというのも……うわっとぉ!?」
 ゼンはフェルトを抱えたまま慌てて軌道を変える。そこを通過する砲撃!
 ヴィクティムの稼いだ制限時間が終わり、敵の砲塔群が復帰し始めたのだ。
 砲塔は逃げたゼンたちに狙いを定めるが……そこへ砲撃役二名の波濤が着弾!
 火球が、複製された砲台たちが、無数の砲塔を次々に相殺爆破していく。
 それだけではない。白兵戦距離まで飛び込んだシーザーもまた健在だ。
「では、収奪を開始するとしよう」
 オーラの刃を大きく伸長し、小型の対空砲や手近な砲塔を次々に切断!

「クックック、どうやら女神の微笑みは我々に向いたようですねえ」
 次々に火球を生み出しながら、闇慈はニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
《――これでもまだ撃沈しないとは、驚嘆すべき防衛能力だ。
 第三陣との同時攻撃を提案。ヴィクティム、打電を依頼する》
 いまや戦場全体に広がった砂嵐を伝い、ジャガーノートの声はカウボーイのもとへ。
「ハ! いいぜチューマ、最後のバカ騒ぎと行こうじゃねえか!」
 狼の顎は全力でシステムと兵装を修復回復し、圧されながらも弾幕を張り直しつつある。
 ここだ。ここで押し込めるか否か、戦闘の趨勢はここからにかかっている!

 そしてついに、その軛を断つため最後の猟兵達が出撃する――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

轟・富士王
うーん、おじさんの場合有効打を与えられるUCが無いんだよねえ。支援に専念させてもらうよ。
レーザーの利点はその速度と直進性。欠点はチャージに時間がかかるところと、曲線的な動きに弱いところ。
よっておじさんの取れる有効な行動は『レーザーが発射されるよう派手に動いて囮になり、エネルギーチャージを確認したら退避姿勢に。飛閃・流れ星も駆使してレーザー回避を行う』、これだね。
「さあ、こっから10秒間はレーザーは無い! 一気に近づいて乗り込むなり、主砲を曲げちゃうなりより取り見取りだ! みんながんばってねー!」


パル・オールドシェル
戦艦の装甲を活かした突撃も、大火力による殲滅も、一歩違えれば集中砲火で撃沈されかねない危険な戦術……
それを成立させるヴォールフスムンドの練度は驚嘆に値しますね。
けれど、その一歩を違えさせるのが僕ら猟兵だと、そう認識しています。

人型機動兵器ヒューマン・カウル、ウォーマシン、パル・オールドシェル。
これより対艦迎撃戦闘を実施します。
敵の全砲門斉射は対艦ミサイルの半数をデコイとして発射することで密度の低下を狙い、その間隙を縫って肉薄攻撃を実行。
狙うは敵の艦砲銃座です。
後続の猟兵戦友への突入支援及び弾薬庫や動力機への誘爆を期待します。
僕は決して矛にはなりえない。
けれど、誰かの刃を守る盾には、なれます!


ノイエ・ノイラート
戦闘モード:全身鎧姿で参る
この場合は冷静沈着、寡黙な性格で任務に忠実

小細工など無用
正面突破、真っ向勝負で切り伏せる…
フルブーストをで速攻をかけ速度重視に突っ込む

SPD
見事な砲塔を備えているがチャージの時間が命取りのようだな
チャージ完了の時点で主砲の死角に回り込む等で攻撃を回避する
「紅き機動を見切れるものか…。」

疾紅断を叩き込み、加えてこの攻撃でトドメになる場合に装備している全身鎧をパージして更に威力を高める
「終わりにする…。」

「ふー!これでトドメッ!? よっしゃ!これで終わり終わりぃ!」
全身鎧が脱げる=戦闘終了及び終了間近という認識
その場合普段の口調、性格に戻る
「さー、帰ってゲームするぞぉ!」


東郷・三笠
精鋭艦隊か
腕が鳴るな!
さぁ、行こう諸君!

鼓舞6、存在感5で鼓舞
怯むな!数を撃っているだけだ
足を止めるな
そうそう当りはせん!

空中戦12、ジャンプ6、ダッシュ5で三次元移動をしつつ残像1、見切り1で攻撃を躱しながら接近

先制攻撃4、一斉発射11、範囲攻撃3を用いて『タケミカヅチ』を使いフルバースト・マキシマムを使用
範囲内の敵を全て潰す
砕け散るがよい!

勇気2、覚悟2、恐怖を与える2、殺気2、怪力11、鎧無視攻撃10、先制攻撃4を用いて『布都御魂』を使ってブリッジを強襲
指揮官を潰してしまえば機能不全にできよう

敵の攻撃は盾受け9を用いてアサルトシールドフィールドで防御

アドリブで他の方との絡み歓迎


ネヴィス・マキヤーベイ
アドリブ共闘大歓迎
SPD

初手UC使用
人の限界を越えたGを押さえつける
全身の人工筋が血を胴へ押し込める
神経が生物より早く反応する
全身への苦痛を薬物でチャラに

獰猛な笑みで嬉し涙のように血を零し

これぞ兵の本懐!貴艦か自分が沈むまで、死の舞踏を踊りましょうぞ!

操縦ダッシュ空中戦で砲火を食いくぐる
全身のプラズマ推進機を
全身をふりたくり
可動肢のある機動兵器の全力

青白い軌跡が艦の周囲を流星のように何度も飛来

一斉射撃で
ランチャーからミサイルを放ち
交差できる砲を剣で斬る

このような珠玉の艦を沈めるのを誉と取るか惜しいと取るか!
まこと奇縁でありますなぁ!

放電する砲身を重要区画へ向け
柱のような荷電粒子束を数秒間放つ


トルメンタ・アンゲルス
ハハッ、なるほど。砲撃の嵐を纏った狼ですか。
――面白い。その牙、圧し折ってやりますよ!
Let's dance with the angels!

行くぞNoChaser!
変身!
『MaximumEngine――Mode:Formula』

アクセルユニゾンを使用し、相棒を攻撃力重視の装甲として変身合体!
ブースト最大、最高速で宇宙を駆けます!

見切りや第六感、残像などを生かし、物理法則を無視した出鱈目なダッシュで砲撃を翻弄し、掻い潜り、接近!

その艦隊、蹴り穿つ!

OverDrive!
『OverDrive――Thunderbolt』
コアマシン最大出力、右足にエネルギー収束!

追撃のォ!!
ブリッツランツェェェ!!!


壥・灰色
その戦場、ヴォールフスムントを視認可能な最も遠くに転送して貰う
その瞬間から、おれはただ一発の砲弾だ
ただ、貫くための一弾だ


壊鍵……
起動、過剰装填

衝撃と応力を司る魔術回路「壊鍵」に魔力を限界まで突っ込み、衝撃を四肢に装填

ここは宇宙
空気抵抗も何もない
脚の衝撃を発露、反作用で加速を開始する

——宇宙を走る

対空砲火、レーザーの照準は、手から発露した衝撃の反作用で真横に急激にスライド回避
前進する運動エネルギーをロスせず、音速を遥かに超え最大加速

先行した猟兵らが作った隙は逃さない
狙いは艦の横っ腹だ

ブチ抜く

最大加速から姿勢制御
右足を突き出しての流星の如き跳び蹴りで、船を貫かんと吶喊する



●最後の一押し
 混迷の戦場より遥か彼方。そこに6人の猟兵たちがいた。
 ふと、鋭角的なフォルムが特徴的なウォーマシンが、ぴくりと顔を上げる。
『"ランナー"より入電。敵弾幕の大規模削減に成功、現在も砲撃を継続中。
 第三陣は大至急宙域へ突入し、最終攻撃を開始せよとのことです』
 彼女の名はパル・オールドシェル。連絡役として第三陣に配置された電脳魔術士だ。
 そして彼女の言葉に、巨大なアームドフォートを装備した騎兵が頷いた。
「頃合いだな。我々が待機していた甲斐がある。いよいよ決戦だぞ、腕が鳴るな!」
 隻眼の女軍人、東郷・三笠の声はうきうきと弾んでいた。
 一方、銀髪を靡かせるサイボーグの女もまた、好戦的な笑みを浮かべてみせる。
「砲撃の嵐とやらを破ってみるのも一興でしたが、こういうのも悪くない。
 追い詰められた狼の牙を圧し折り、天使らしく最期を看取ってやるとしましょう」
 何よりも疾さを愛し、悪夢と悲鳴の嵐を駆け抜けた緑色の流星。
 トルメンタ・アンゲルスにとって、あとから全てを抜き去るなどお手の物だ。

 いかにも、彼女たち第三陣の役割は単純だ。最大戦速&火力による強襲。
 第一、第二陣による敵迎撃能力の減衰はこのための布石である。
「準備は万端。さっさと終わらせるとしよう」
 赤と白が特徴的な鎧装を纏う騎兵、ノイエ・ノイラートは怜悧な声で言った。
 と、そんな彼女の真面目な台詞に、巨大な機影がわざとらしく肩をすくめてみせる。
「真面目ねぇ~。もうちょっと仕事の後の楽しいこととか考えない?
 ほらほら、せっかく女の子が揃ってるんだし恋バナとかどう!?」
 ネヴィス・マキヤーベイの声も台詞もいかにも年頃の若者らしい。
 ……が、言いながら女の子っぽい仕草をするのは、8m級の巨大装甲服である。
 13という若さでありながら、これほどの装備を扱えるのは、彼女がサイボーグであらばこそ。
「いやいや、ここにおじさんいるでしょ? ただでさえ肩身狭いんだからさあ」
 ちょっと離れたところで居心地悪そうにしていた轟・富士王が思わず口を挟む。
 何の因果か鎧装騎兵は女性ばかり。しかも彼は生身、かつ剣豪である。
「せっかくのんびり出来てたんだがねえ。はあ、おじさんも働かないとダメかあ」
 やれやれと言った様子の富士王はいかにも昼行灯めいた印象だ。
 そんな彼の背中を、自信に溢れた表情の三笠がバァン!! と思いっきり叩く。「いっでぇ!?」
「年長者がそんなことでどうする。なに、輸送はネヴィス君がしてくれるとも。
 我々だけでは、火力と速度はあれど敵の攻撃に対応できん。頼りにしているぞ」
 実際、富士王は『のんびりデキそうだから』と真っ先にここを希望したのだが。
 戦場に出ている以上、戦意がないはずはない。三笠はそれを理解しているのだ。
「……小細工など無用。正面突破、真っ向勝負で斬り伏せれば事足りる」
「ほんと真面目ねえあなたって。もうちょっと楽しようとか思わない?」
 至極シリアスな声音で言い切るノイエに、頬杖をついて呆れるネヴィス(8m)。
「敵迎撃能力が大きく減衰しているとはいえ、無策での突撃は自殺行為かと。
 油断すれば我々が喉笛を噛みちぎられるでしょう。敵の練度は脅威的です」
 送られてきたデータをその場で解析し、最適な突入経路を計算しながらパルが居う。
 敵がそうであるように、彼女にも油断はない。戦友を無事に帰すことが任務なのだ。
「ともあれ、そろそろ行くとしましょう。C'mon,No Chaser!」
 パチン! と指を鳴らし相棒を呼べば、その名を与えられたバイクが彼女に応える。
 トルメンタの腰部に巻かれたベルトが起動し、人機一体の変身を成し遂げた!
「ほう、これは素晴らしい! 一体どの鎧装騎兵が最初に辿り着くか、見ものだな」
 などと呑気なことを言いながら、ネヴィス機の掌の上に乗り込む三笠。
「……任務は遊びではない。レースに興じるつもりはない」
「だからぁ~、そういうところが堅苦しいって言ってるんだけどねえ」
 ノイエとネヴィスのやりとりは相変わらずである。相応の自信があるのだろう。
「……"彼"は、やはり我々より後方から出発するのですか?」
 そんな中、ふとパルがトルメンタに問いかけた。
 いまや重装の騎兵と化したトルメンタは、しかし肩をすくめてこう答える。
「ええ。まあ、彼らしいと言いますか。心配は要りませんよ」
 彼女たちが云う"彼"。それは無論、富士王のことではない。
 その男は、彼女らよりもはるか後方の宙域に一人浮かんでいた。

●その魔剣を見よ
 そこは戦闘宙域の外縁部。
 かろうじて狼の顎の機影と、それを取り巻く砲火の輝きが見えるほどの地点だ。
「……時間か」
 チカチカと瞬いた信号を視認し、灰髪灰眼の男はうっそりと呟いた。
 若者らしくラフに衣装を着こなせど、表情は死人じみて欠落している。
 壥・灰色。いまの彼が纏う気配と同じように、その名もまた色彩に欠けた。
 UDCアースのとあるカフェならばまた別の一面も見れようが、ここは戦場である。
 ゆえに彼は自らこの最後方を選び、静かに待機していた。
「壊鍵、起動」
 ぐらり、と周囲の真空がたわむ。灰色の体内を巡る魔力の余波だ。
 ……何も彼は一匹狼を気取るとか、そういうわけではない。
 ただ彼のやり方――正しくはその機能――では、これが最も効率がいいのだ。
 遥か彼方、鎧装騎兵たちが圧倒的速度で移動を開始したのが見えた。
 流星のようだ、と彼は思う。だとすれば己はなんだろうか?
「――おれは。ただ貫くための、一発の砲弾だ」
 それが男の在り様だった。危険な魔力回路のオーバーロードも平気で行う。
 以て発生した"衝撃"を、四肢に過剰装填。再び真空がたわむ。
 騎兵たちは自慢のブースターで闇を駆ける。では灰色の弾丸は如何にするのか?
 ……直後、馬鹿げたほどの衝撃が両足から爆ぜた。

 弾丸は、撃針で雷管を叩くことで発火し、燃焼によって撃ち出される。
 男は弾丸であり、己を撃ち出す撃針であり、そのために魔力を廻す。衝撃を放つ。
 無慈悲なまでの一直線。そこに、流星のような彩りはない。

●狼の顎:艦橋
 ブリッジが絶え間なく揺らぐ。レッドアラートが艦橋を染め上げる。
「右舷被弾率、35%を突破! 消火作業間に合いません!」
「左舷弾薬庫に被弾! 対空砲稼働率、50%を下回りました!」
 阿鼻叫喚であった。狼の顎、始まって以来の――否。
「何年ぶりだったかな。この鉄火場は」
 プレスタインは笑っていた。いかにも、彼らはオブリビオンである。
 過去の化身なれば、彼らは死人である。いかに誉れ高き精鋭部隊と言えど。
「前大戦の第八次会戦だったか! 思い出すだろう!」
 指揮官は愉しげに言った。兵士たちもまた笑っていた。
「ええ、忘れるわけがありません! 我らが撃沈したあの戦い!」
「降り注ぐ砲火、断たれていく退路! 今とまったく同じですね!」
 彼らはオブリビオン、過去の化身。一度滅びし骸の海の残骸たち。
 狼の顎は砕けたのだ。死闘の末、放火と怒涛に飲まれて宇宙の塵に消えた。
 だが――否、だからこそ。彼らはこの二度目の修羅場を心から楽しむ。
「わかっているな。我らは皇帝陛下に再び忠義を見せる機会を得たのだ!
 退艦など許可せん、前進あるのみ! 弾薬をかき集めて砲塔を構えろ!」
 狼たちはいよいよ牙を剥き出しにした。追い詰められ、餓狼が現れた。

 一度は減衰し、静寂すら迎えたはずの砲塔たちが唸りを上げる。
 歓喜のような、断末魔のような放火を撒き散らし吠えたける。
 来るがいい猟兵たちよ。我らはただでは死なぬ。死なば諸共なり。
 壊れた推進機から炎を吹き出し、燃え盛る戦艦が捨て身の突撃を開始する。
 皇帝陛下よ照覧あれ! 我らが忠義、我らが戦ばここにあり!
「狼の顎は決して退かぬぞ。最大戦速、エンジンが爆ぜようが構わん!
 敵を、解放軍を一人でも多く食いちぎる! 狼の顎の本領を見せてやれ!」
 兵士たちは笑っていた。笑いながら死地を走っていた。
 狂った獣どもの狂った進軍。それを迎え撃ち止めたのは――。

 宇宙の闇を劈き、真正面より来たる流星たち。

●最終決戦
 初めに現れたのは二条の彗星だった。
 片方はわずかに緑の軌跡を残す、物理法則を無視した恐るべき嵐。
 いま一方は、赤白の残影を宇宙に刻む寡黙なる双剣士。
「――オオォオオオオオオッ!!」
 緑の流星の名をトルメンタと云い!
「――紅き機動、貴様らに見切れるか……!」
 紅白の閃光を、ノイエと云った!
 二機は速度を落とさぬままに敵艦船首へ、強烈な剣戟/蹴撃を叩き込む!
 KRAAAAAASH!! 捨て身の全速前進を決行せんとした戦艦はぐらつき、大きく後退。
 なおも残存する砲塔郡がその軌跡を追おうとし――飛来したミサイルの雨に妨害された。
『SSM-84及びLSSM-109対艦誘導弾、命中を確認。次弾装填、撃ちます』
 まず現れたのは、人型機動兵器ヒューマン・カウル。またの名をパル。
 そして彼女に並ぶ形で、3倍はあろうかという巨大な装甲機が見参する。
 すなわちネヴィスの操るJ-SAA-601『ゼファー』! 両掌には三笠と富士王の姿あり!
「うむ、待たせたな! 第三陣、これより攻撃を開始する!」
 意気揚々と三笠は宣言し、自慢のアームドフォート『タケミカヅチ』を変形展開。
「おじさんは囮を務めさせてもらいましょうかねぇ。ネヴィス君、ありがとね!」
 ネヴィスの応答はない。コクピットの中で一体何が起きているというのか?

 ……サイボーグの少女は、無数の管に接続され赤い涙を流していた。
 神経伝達加速剤と痛覚排除剤が浸透し、脅威的反応速度と痛覚の除去を行う。
 さらに人工筋肉制限解除コードが打ち込まれ、パイロットスーツの下でぎちりと軋んだ。
 並のサイボーグならば自我崩壊の危険すらある過剰出力を受け、騎兵は獰猛に笑う。
「これぞ兵の本懐……! どちらかが沈むまで、死の舞踏を躍るとしましょうぞ!」
 別人のような声音がゼファーから外部に響き、富士王だけでなく全員が息を呑む。
 瞬間、8m級の特別攻撃機が青白の流星となった。殺人的加速を伴って!
 いまや宙域を舞う流星は三つ。敵艦はそれを捕捉しきれない。
『猟兵戦友の回避、および接近攻撃の支援を継続します。次弾装填、発射』
「我も続くぞ! タケミカヅチ充填完了――砕け散るがよい!」
 パル、そして三笠が砲火に加わり、デコイおよび弾幕を張って敵を牽制。
 ならばと主砲が猟兵たちを狙おうとするが、ここで富士王が動く。
「それじゃあ、おじさんも星になるとしようか!」
 と、飛んだ! 生身の剣豪、37歳初老の男性が! 超高速飛行をした!
 これこそ飛閃・流れ星。厄介なことに彼の位置取りは極めて効果的だ。
 トルメンタが急速接近し、蹴撃によって敵装甲を損壊させる。
 離脱した瞬間にノイエが対角から接近、生き残りの砲塔を切断破壊。
 ならばと対空銃座を起動すれば、ネヴィスの熱溶断兵器『婚星』がこれを断つ。
「しかしまこと耐えますな! これも狼の顎の妄執が為せる技でありましょうか!?」
『……ありえない話ではない。奴らはオブリビオンだ』
 ハイテンションなネヴィスの言葉に、意外にもノイエが同意した。
『追い詰められてしぶとくなっていると? まるで餓狼ですね……!』
 散発的な一撃離脱戦法を繰り返しながら、トルメンタは唸る。
「どでかい一発が必要ってわけだね! となると――ああ、ほら来た!」
 富士王は快哉を上げた。遥か彼方、宇宙を走る灰色の弾丸が彼らにも見えたからだ。

 加速する。宇宙を一心に疾走する。その速度、もはや音を越えているだろう。
 灰色の視線はいささかも揺らがない。決然と、燃える妄執の餓狼を見据えている。
 狙いは一点。先の第一波において、猟兵たちが穿った穴。そこが彼の着弾点。
 狼の顎を完膚なきなまでに破壊、撃沈する。以て帝国軍艦隊の士気を挫く。
 穿ち、破壊することに関してなら、自分は誰よりも得意だという自負があった。
 それは自認とも言うべきか。死人めいた無表情の裏、思考は読み取れず。
 灰色の弾丸は最後の加速を伴い、戦場めがけて一気に突撃した!

『来ましたか! 併せますッ!』
『同時攻撃か、了解した。支援は任せる』
『盛大でありますなあ、自分も付き合いましょう! いざ!』
 トルメンタ、ノイエ、ネヴィスはそれぞれの方向に大きく散開。
 緑・紅・青白の軌跡を追う砲撃は、ワイルドハントの両雄が尽く妨害・撃破せしめる。
『僕は矛になれなくとも、誰かを守る盾にはなれます!』
「タケミカヅチにはこういう使い方もあるのだ、まだまだいくぞ!」
「するとでかいのをぶっ放そうとするよねぇ、おじさんそういうの感心しないなぁ!」
 EMP障害および執拗な電脳攻撃により、主砲部の照準システムは事実上沈黙している。
 結果として敵は肉眼による主砲照準を余儀なくされる。そこを突くのが富士王だ。
 執拗な陽動に痺れを切らし、彼を捉えんと戦艦が回頭する。横っ腹が露出した!

 悪魔の右腕、最悪にして災厄の六。魔剣と呼ばれた男はその隙を逃さない。
「――ブチ抜く」
 ブースター。
 ライオット。
 アンプリファイア。
 各回路過剰励起。閃杭、起動。衝撃収束。
 悪夢じみた魔力が体内をリレイし、破滅的衝撃を結実させる。
 壊鍵起動・壱式(ギガース・ドライブ・ゼロワン)、楔を穿つ!

 莫大な衝撃余波が解放軍の艦隊を大きく揺らす。それに合わせ三騎兵も最大加速!
《OverDrive――Thunderbolt》
 トルメンタの右足が強い緑の光を帯びる。内蔵コアマシンの出力最大!
『追撃のォ――ブリッツランツェエエッ!!』
 その対角線上、第二の騎兵ノイエが二刀を構え、赤い像を残し消失した。
『終わりにする……紅と散れ!!』
 外装パージによる超加速。疾紅断が闇を裂く!
 緑、紅、そして灰色の三つの閃光が宇宙の虚空を切り裂き、まったく同時に着弾!

 ……艦橋!
「ば、バカな!?」
 プレスタインは狂乱した。いかに猟兵と言えど、いかに同時攻撃と言えど!
 狼の顎の艦体ならば耐えきれる。耐えきれるはずなのだ、だのに!
「船体破損率80%を突破! も、もう保ちません!」
 あのときか。第一次会戦、いやに行儀よく引き下がったあの五人。
 奴らが。奴らが打ち込んでいたのか、この破滅の楔を!
「ならば構わん! このまま全速で解放軍艦隊に突撃を――」
 そしてヤツは見た。
 特別装甲服用増設火砲一九型乙改、通称『サザンカ』。その砲口が狙いを定めるさまを。
『――安全装置全解除。一切合切吹き飛ばす!』
 超過駆動した荷電粒子砲――光の柱が、死すべき狼どもを飲み込む。
「ありえん、ありえん! 我々が、狼の顎が! あ、あああ、あああああ!!」
 断末魔はない。光が全てを飲み込んだ――。

 ――KRA-TOOOOOOOOOOOOOOM!!

 末期の絶叫があるとすれば、それはこの盛大な爆発音だろう。
 妄執によって生き足掻き、三度の波状攻撃を生き延びた恐るべき帝国戦艦。
 だがたゆまなき猟兵たちの攻撃と連携は、ついにその巨体を破滅の闇へと叩き落とした。
『白城』艦隊三番艦、狼の顎(ヴォールフスムンド)、ここに撃沈。
 解放軍艦隊、いざ快進撃を開始する!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト