7thKING WAR②〜ノラ猫バスジャック事件!
●バスはバスでも……
そこは、どこか長閑な雰囲気が漂う魔界の一画。
『行ってきまーす!』
「行ってらっしゃい。くれぐれも、野生バスには気を付けるのよ〜」
『ハーイ』
魔界幼稚園の園児達が今日も保護者に見送られ、幼稚園バスに乗り込もうと列を成していた。
その時だった。
園児達を無理やり体内に乗車させ、幼稚園までの道中、気性の荒い運転で園児達を楽しませる『野生バス』が姿を現す。
その姿は、まさにキャット!
そう、あの有名なバスの遠い親戚を名乗る物(バス)もいる。その名も『ノラ猫バス』!
当然、園児達は悲鳴(歓声)を上げながら、ノラ猫バスへと吸い込まれていく。そして、飛んだり跳ねたり、スピード違反したり、そもそも幼稚園に向かわなかったり……。でも通りがかるバス停には律儀に停車しながら、今日も気ままに幼稚園児を楽しい場所へと誘っていく『ノラ猫バス』であった。
●グリモアベース
「……という、少し変わった野生バスがデビキンには存在するのだそうです」
ナノ・ナノン(ケットシーの聖者・f18907)は、グリモアベースを訪れた猟兵たちを丁寧なお辞儀で出迎えると、そう話す。
そんな彼ら『ノラ猫バス』がピンチに陥るという。
「【予知】によれば、ノラ猫バスが『バスジャック平原』で、バス停に立っていた1体のオブリビオンを乗せてしまうようです」
そのバスには既に、別のオブリビオンの手によって爆弾が仕掛けられている。
ターゲットはもちろん、悪魔幼稚園に通う園児達とその保護者である。
「この爆弾は、有名な『スピードが遅くなると爆発する爆弾』だという事です」
そこまで聞いて、一部の猟兵が「あぁ〜」と色々と理解してしまい頷いた。
このまま放っておけば、乗車したオブリビオンは次のバス停に到着した際に爆死する。それだけならまぁ、「めでたし、めでたし」の話だが。困った事に、バス停には幼稚園バスを待つ悪魔幼稚園の園児と保護者がいる。
そして、何よりも重要な事は、そのバスが『ノラ猫バス』である事だと、ナノンが珍しく泣く。
「同じ猫でとして、どうかどうか『ノラ猫バス』を助けてあげてほしいのです……」
ナノンはボロ泣きしながら、グリモアの力を宿した杖で転送用魔法陣を素早く描いていく。
やがて猟兵たちの足元で、魔法陣が悲しそうに輝き出す。
「今回のコンプリート条件は、バスが爆発する前にバス内部でオブリビオンを倒す事です。が、ついでに爆弾も解除できれば最高です。ノラ猫バスも怪我せず済みますし、なんと『アイスエイジクイーン』のKING到達を妨害できます!」
ちなみにノラ猫バスには『野生の本能』が備わっており、色々と察してくれるらしい。
「そででば、お願いぢばずッ!」
泣き過ぎて鼻づまりを起こしたナノンに見送られ、猟兵たちは次々と魔法陣へと飛び込んで行くのであった。
柚子胡椒
こんにちは、MSの柚子胡椒です。前回の戦争シナリオの題名では、うっかり文字数オーバーをやらかしました(汗)
では、以下補足説明です。
プレイングボーナス……暴走するバスの中で戦う/爆弾を解除する。
バスの内部は最大で野球ドームぐらい広がる不思議で快適、ふわふわ空間です。
戦うには十分の広さである事と、やたら丈夫であることを保証します。
爆弾は時速1キロを下回ると爆発しますが、1キロを下回ることはまずありません。停車する時だけでしょう。
また爆弾は、車内の座席の下に鞄に入った状態で置かれていますので、すぐに見つかると思います。解除方法は至って簡単。タッチパネルで『解除』と入力するだけです。
それではよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『もちぷに悪魔・ホワイトサラマンダー』
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POW : 悪魔の怪力
レベル×1tまでの対象の【尻尾や足や角】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : 意思ある激流
【口から激流】を放ち、命中した敵を【水球】に包み継続ダメージを与える。自身が【口をオープン】していると威力アップ。
WIZ : 愛のしるしの誘惑
【胸のハートマーク】を披露した指定の全対象に【もちぷにボディを愛でたい】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:十姉妹
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ロスティスラーフ・ブーニン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ノラ猫バスジャック犯(真犯人は乗っていない)
ノラ猫バスは、なんとなく野生の勘で察していた。
自分の中に、物凄くヤバイ『ブツ』が紛れ込んでしまっている……。
1つは、凶悪過ぎるほどの危険な香りがぷんぷんする、大爆発的なモノ。
もう1つは、何も知らずに乗車した白い物体が、己の「可愛さ」を武器に悪事を働きまくる憧れの「オブリビオン」という存在であること。
ノラ猫バスは今、恐怖と興奮でエンジンが爆爆させながらバスジャック平原を暴走していた。
もはや暴走バスと化したノラ猫バス。それは、ある意味オブリビオンに乗っ取られた形となってしまったのだった。
マリーア・ダンテス
「私達は直接バス内に転送されるのでしょうか?乗せるためにバスが止まったら、爆発してしまいますもの」
「それでは行って参ります…神のご加護を」
バスに乗り込んだらすぐ周囲見回し臨戦態勢
「てめぇが、子供を傷つけようとしたバスジャック犯かぁ?チンケな事しやがって。死ねや、おらぁ!」
中指おっ立ててから背中のアイアンメイデン兼ねた戦闘用BOXを風切り音が出るほど高速で鎖で振り回し挑発
敵に掴み掛かられたらニヤリと笑い
「神のルールよ!哀れな子羊を救い給え!」
UC発動し敵をメイデンに閉じ込めそのままメイデンを振り回して窓の外にぶん投げる
「邪魔者は居なくなったからなあ。ゆっくり探すぜ」
後は爆弾見つけてパネル押す
●生き物には慈悲を、オブリビオンには鉄槌を
「私達は直接バス内に転送されるのでしょうか? 乗せるためにバスが止まったら、爆発してしまいますもの」
セクシーな修道服を着こなすマリーア・ダンテス(サイボーグの処刑人・f37225)は手を胸の辺りに軽く組み、言った。
彼女の足元には既に転送用魔法陣が輝いている。
「それでは行って参ります……神のご加護を」
マリーアは祈りを捧げると魔法陣の中へと飛び込んだ。
次の瞬間、地にカッコよく着地するマリーア。同時に、視界に飛び込んできたのは、ふわふわの毛に包まれた車内の光景だった。
……但し、かなり広い。
マリーアは直ちに、『サイバーアイ』を装着した眼でバス内部を分析する。
「爆弾の位置は……大凡わかりました。あとは」
開いた窓の方へと視線を移し、景色がかなりのスピードで動いている事を確認すると、今度はもちもち、ぷにぷにした美肌の悪魔『ホワイトサラマンダー』の姿を捉える。
ここまでに掛かった時間、わずか1秒。そして、その1秒後ーー。
「てめぇが、子供を傷つけようとしたバスジャック犯かぁ? チンケな事しやがって。死ねや、おらぁ!」
敵に向け、中指を「ビッ」と立てながら叫ぶと、背負っていたアイアンメイデン兼武器BOX『棺桶型武器BOX』から垂れ下がっていた鎖を握り、高速でぶん回し、挑発する。
マリーアの頭上で高速回転する『棺桶型武器BOX』が唸りを上げ、周囲にある種の恐怖心を抱かせる。
案の定、身の危険を感じたホワイトサラマンダーは、ピンクの大きな眼をウルウルさせながらマリーアへと飛び付こうとした。そして、ぷにぷにオテテでマリーアの美脚を掴まんとする。
カワイイ仕草で近寄れば、老若男女問わず、無防備に抱きつかせると思っていたのかもしれない。
だが残念ながら、いくら見た目がもちぷにで可愛くても、所詮オブリビオンはオブリビオン。
猟兵モードに突入しているマリーアの鉄の心には、一切響きはしない。
「舐めんじゃねぇぞ、こらぁ!」
こっそり【悪魔の怪力】でマーリアをぶん回そうと目論んでいたホワイトサラマンダーに対し、マリーアがカウンターを繰り出す。踵に刃が付けられた『レッグギロチン』で右足から蹴りを放ち、そのまま回転蹴りで左足からも追撃を行う。
罪人の首を苦痛なく刎ねる研ぎ澄まされた刃が、ホワイトサラマンダーご自慢の肌を斬り付け、遠ざけると、マリーアはニヤリと笑った。
「神のルールよ! 哀れな子羊を救い給え!」
【聖葬メイデン】を発動し、戦場内に「ルール:生物を傷つけるなかれ」と宣言したマリーアの言葉に、翼持つ鉄の処女『聖葬メイデン』の扉が静かに開く。
実際は、園児と保護者、そしてノラ猫バスを気付けようと目論んでいたのは別のオブリビオンなのだが……。
結局、このオブリビオンがノラ猫バスを(意図せず)暴走させた事によって、爆弾を抱えたまま園児達と保護者のいるバス停に突っ込み、ノラ猫バス諸共大爆発を引き起こすことになる。
つまり、「生き物を傷付ける行為に繋がる行為をしている」時点でアウトであった。
公平にして無慈悲なる処女(メイデン)は、その冷たい体にホワイトサラマンダーを取り込むと、静かに扉を閉じた。続いてマリーアが両手に鎖をしっかり巻き付け握ると、砲丸投げの要領でメイデンを振り回し、最後に窓の外へとぶん投げた。
これで暫くは、戻って来ないだろう。
「邪魔者は居なくなったからなあ。爆弾をゆっくり探すぜ」
というわけで、ホワイトサラマンダーが戻ってくるまでの間、爆弾見つけては解除し、安全の為に窓の外へと放り投げていくマリーア。
彼女は生き物には優しいが、オブリビオンに対しては非常に厳しいシスターなのであった。
大成功
🔵🔵🔵
月隠・望月
猫なのにバスでもある、これは一体……いや、デビルキングワールドの事象を深く考えても仕方がない。ここではそういうものなのだろう。
なぜか猫の中は広い、戦うのには十分。だが、走行している猫の中である以上、大きく揺れることもあり得る、ので今回は徒手空拳で戦おう。刀等を使って万一猫に刺してしまったら悪い、からね。
敵の攻撃は厄介。激流に当たらないよう【呪符壁展開】を使って自分の周りに結界を張っておこう。
しかし、結界の耐久にも限界がある。高威力の攻撃は受けたくない。敵が口を開けていると攻撃の威力が増す、ようだ。敵が口を開けようとしたら【ダッシュ】で接近し、顎に一撃入れておきたい(【グラップル】【怪力】)
索・緑蘭
※アドリブ・共闘歓迎
可愛いノラ猫バスちゃんや子供達がケガしちゃったら大変ね。
爆弾を見つけたら、『スティール・カード』ですかさずこちらに引き寄せるわ。
解除作業中にホワイトサラマンダーが襲い掛かってきたら【オーラ防御】と【だまし討ち】で応戦するわね。
大丈夫よ、ノラ猫バスちゃん。私がちゃんと守ってあげるからね❤
●
「猫なのにバスでもある。これは一体……」
サムライエンパイアの、とある忍びの里の若頭、月隠・望月(天稟の環・f04188)は説明を聞き終え、無意識に『忍びの首巻き』で口元を隠した。
姿形は間違いなく猫であるのにバス。そもそも、バスという乗り物が生き物のように自然に発生し、野生で存在している……。
「いや、デビルキングワールドの事象を深く考えても仕方がない。ここではそういうものなのだろう」
すると、索・緑蘭(魔界のイカサマ雀天使・f31867)が望月の隣に並び立ち、にっこり微笑む。
「そうそう。考えても、なんだか得体の知れない『沼』にハマっていくだけよ。私は緑蘭。よろしくね❤️」
チャイナドレスをセクシーに着こなし、背に翼の眼を持つ彼女は、デビルキングワールドでプロとして活躍中のイカサマ雀士だと名乗る。
「可愛いノラ猫バスちゃんや子供達がケガしちゃったら大変ね」
緑蘭が足元を見つめる。2人の足元では、転送用の魔法陣が光り輝いていた。
「行こう」
「ええ」
望月と緑蘭は軽く息を吸うと、トンと軽やかに床を蹴り、魔法陣へと飛び込んだ。
重力に引き寄せられるまま落下していくと、やがてモフモフの地面へと着地する。そこは広々としたバスの中だった。座席も、荷物棚も、床も、全てがふわふわの毛で覆われている。
「へぇ、なかなかね」
「まぁ、戦うには十分か」
野生バスというのは本当に不思議な存在だと、望月が関心していると、一瞬浮遊感に襲われる。
「そうだった。このノラ猫バスは走行中でだったな」
走行中である以上、大きく揺れることもあり得ると考えた望月は、刀剣から徒手空拳に攻撃手段を変更する。
「刀等を使って万一猫に刺してしまったら悪い、からね」
「ねぇ、アレがオブリビオンかしらね?」
見れば、ふかふかの床の上に大きなマシュマロのような『もちぷに悪魔・ホワイトサラマンダー(こいつはオブリビオン)』が、気持ちよさそうに昼寝している。しかし、見た目に騙されてはいけない。そいつこそ、己の可愛さを武器に相手の隙を突き、不意打ち上等で襲ってくる悪魔中の悪魔なのである。
「アレの相手を任せても良いかしら? その代わり、私が爆弾の解除を請け負うわ」
緑蘭はそう言うと『予告状』を構えた。
望月がこくりと小さく頷く。
バスが更に加速しているのが分かり、ゆっくりしていられないと判断した2人は己の役割を果たすべく動き出した。
望月が寝ている敵の上へと素早く移動すると鋭い手刀を放った。しかし、望月の僅かな殺気を感じ取ったのか、攻撃は紙一重でかわされてしまう。それどころか、昼寝を邪魔されたホワイトサラマンダーがピンク色の瞳を潤ませながら望月を見つめ、【意思ある激流】を放って来たのである。パックリと大きく開かれた口から吐き出された大量の水が激流となって、容赦なく望月を襲う。
『守り通す。必ず』
望月は両手で印を結ぶと、【呪符壁展開】が発動する。
呪符の模様が浮き沈みする結界壁は、ホワイトサラマンダーの激流を押し退け、望月を守る。
すると今度は、激流が結界壁のまわりを取り囲み水球へと姿を変えた。水球がドクンドクンと大きく鼓動を打つ度に、物凄い水圧で防御壁を押し潰そうとする。しかし、防御壁が砕ける前に水球の方が先に弾け飛んだ。
どうやら、水球にも活動限界があるようだ。それでも……。
「(結界の耐久にも限界がある)」
ホワイトサラマンダーが再び口を開き、次の攻撃を放とうとした時だった。望月が駆け出す。敵の正面でしゃがみ込み、下から顎に向けてアッパーを食らわせた。しかし、望月の攻撃は終わらない。流れるような動きで腹部に鋭い手刀を叩き込み、背後に回ると頸部を一気に締めた。
『きゅっ……』
敵が短い悲鳴を上げ、丸い頭がガクリと項垂れる。
「緑蘭さん、今のうちに」
「了解よ」
オーラ防御で身を守っていた緑蘭が爆弾解除に専念する。
「大丈夫よ、ノラ猫バスちゃん。私がちゃんと守ってあげるからね❤ スティール・カード!」
緑蘭は魅惑的な笑みを浮かべながら『予告上』に軽く口付けすると、座席の下にあった鞄の1つに向けて放った。
予告状が当たった爆弾は、瞬く間に『どろぼう袋』の中へと転移する。緑蘭は、すぐさま袋から爆弾を取り出すと、構造を確認した。
何本ものコードに繋がったガラス瓶の中で、ピンク色の液体が揺れている。
「ふんふん、これが爆薬ね」
爆弾はノラ猫バスの速度を自動で感知する仕組みになっていた。爆弾の中央に設置されたパネルには現在の時速と文字盤が表記されている。
緑蘭が静かに文字盤に触れ、『解除』と入力するとパネルの表記が消えた。やや遅れて、ピンクの爆薬が色褪せていく。
「ふぅ〜、解除成功ね。この調子でどんどん爆弾を解除しちゃうわよ❤️」
緑蘭と望月は、その後も即席とは思えない息の合った連携プレイで爆弾を次々と解除していくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マリア・ルート
安全で安心できるハチャメチャバスにするためにどうにかオブリビオンと爆弾を対処しないとね。
近接戦を挑むと絶対相手に捕まれて大変なことになるから遠くから【指定UC】を使って蜂の巣にしていくわ。相手をとにかく近寄らせない。
その間に中にいる悪魔たちをこっち側に寄せて大丈夫、今倒すからと慰めておきましょう。
こっちは悪魔たちの命もかけてんの、あんたなんかに負けてたまるもんですか!
倒したりして余裕が持てたら爆弾の方も解除しておきましょう。
あっ、下手に押すんじゃないわよ?
●次は、悪魔幼稚園児まえ〜
鮮やかな赤い髪が目を惹くマリア・ルート(紅の姫・f15057)は、説明を聞き終えると「ふむふむ」と何度も頷いた。その足元には既に転送用魔法陣が輝いている。
元皇族の出であり自由を愛する元王女さまは、しっかりデビルキングワールドに馴染んでいた。
(メチャクチャであるのに根が優しく純粋な悪魔達は、悪事を働いても死者を出すようなマネは犯さない。だけど、オブリビオン達は違う。このままでは、爆弾で園児達とその保護者は間違いなく……)
「安全で安心できるハチャメチャバスにするために、どうにかオブリビオンと爆弾を対処しないとね」
マリアはそう言うと魔法陣に飛び込んだ。
ふわりとした感覚が足裏から伝わってくるのと同時に、目の前にフワフワの毛に覆われた不思議な光景が広がる。
かなりの広さがあるが、座席の配置、吊り革がぶら下がっている様子からバスの内部だと分かる。
自然と電光掲示板が目に飛び込んでくる。そこには『まもなく、悪魔幼稚園児まえ〜』という文字が流れていた。
「……と言うことは、あまり時間もないわけね」
マリアは『マグナムルート・β』を構えると、車内を飛んだり跳ねたりして遊んでいたオブリビオン『もちぷに悪魔・ホワイトサラマンダー』に狙いを定めた。
「(接近戦は絶対に避けたいわね。相手に捕まると大変なことになるから……)」
マリアは敵のユーベルコード【悪魔の怪力】を警戒し、常に一定の距離を保ったまま銃撃を開始する。
一方でホワイトサラマンダーは、なかなか近寄らせてくれないマリアに瞳を潤ませ、キュルンキュルンと鳴いて媚びる。
確かに可愛い姿ではある。もしも、この場に園児達が同席していたら園児達は間違いなく捕まっていた事だろう。だが……。
「こっちは悪魔(園児)たちの命もかけてんの、あんたなんかに負けてたまるもんですか!」
マリアは気高く言い放つと、【血見猛猟・百器野行(ワイルドハント・ウェポンズカーニバル)】を発動する。
『あんたは見たことある? 目の前を埋め尽くす、武器の大群を』
無敵で、尚且つ個々でバラバラに操作できる600以上の銃火器が想像から創造され、車内を埋め尽くす。その銃口の全てがホワイトサラマンダーへと向けられ、一斉射撃が行われる。
バスの内部に無数の銃声が響き、続いて火薬と煙の匂いが充満する。
やがて、ノラ猫バスが本能的に換気をする為、全ての窓が開け放たれた。煙と火薬臭が窓から速やかに排出され、視界がクリアになる。床には蜂の巣にされたホワイトサラマンダーが目を渦巻きにして倒れていた。暫くするとその体が透け、最後パチンと弾けて消える。
こうして、実は1被害者でもあったオブリビオンを討伐し、爆弾も全て解除することに成功したマリアとその場に居た猟兵たちは、しばらくノラ猫バスを堪能するのだった。
程なくして、バスが減速していくのが分かり、マリアは窓から少し身を乗り出し外を見た。
園児達の元気な声が響き、次の瞬間悲鳴(歓声)があがる。
「きゃーー!」
「やったーー、ネコさんバスだぁ!!」
一方で保護者達が盛大にため息を吐いていた。
「あ〜、今日はおサボりだわ」
「まぁ、私達が小さい頃もこんな感じだったし。仕方がないかぁ」
「うんうん。ノラ猫バス来るの、いつも楽しみにしてたっけねぇ」
昔を懐かしみながら満更ではない保護者達の反応に、マリアは思わず笑ってしまう。
「あれぇ? お姉さん、一番乗り?」
「ねぇ、この箱なぁに??」
園児達がマリアに気が付き、声をかけてくる。
マリアはニッコリ微笑むと、「あっ、下手に押すんじゃないわよ? それ、爆弾だから」と少しだけ『悪い』お姉さんを演じてみせるのだった。
大成功
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